米国の有名な投資戦略の一つに「ダウの犬(Dogs of the Dow)」と呼ばれる手法がある。投資ポートフォリオを配当利回りが高い銘柄 に定期的に入れ替えるこの手法は、高配当株に注目が集まる日本市場でも通用する。専門家の試算によると、最善の始め時は1月、最 悪は9月。ダウの犬はしばらく「待て」とするのがよさそうだ。 ダウの犬とは、米国のダウ工業株30種平均の構成銘柄の中で配当利回りが高い上位10銘柄に均等に投資したまま1年後に売却し、 改めてその時点の上位10銘柄に投資するサイクルを繰り返す手法だ。米国のマイケル・オヒギンズ氏が1991年に著書で紹介し、注目 を浴びた。
米国の有名な投資戦略の一つに「ダウの犬(Dogs of the Dow)」と呼ばれる手法がある。投資ポートフォリオを配当利回りが高い銘 柄に定期的に入れ替えるこの手法は、高配当株に注目が集まる日本市場でも通用する。専門家の試算によると、最善の始め時は1月、 最悪は9月。ダウの犬はしばらく「待て」とするのがよさそうだ。 ダウの犬とは、米国のダウ工業株30種平均の構成銘柄の中で配当利回りが高い上位10銘柄に均等に投資したまま1年後に売却し、 改めてその時点の上位10銘柄に投資するサイクルを繰り返す手法だ。米国のマイケル・オヒギンズ氏が1991年に著書で紹介し、注目 を浴びた。
Bank of Japan Headquarters Ahead of Rate Decisions 日銀本店の外観Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg 銀行株は今年に入り既に40%上昇しているものの、強気派はさらなる上昇余地があるとみている。日銀が利上げに転じるのは時間の 問題で、近いうちに貸出利ざやの拡大が期待できるとの見方からだ。
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(執行役社長グループ CEO : 中島 達 以下、当社グループを総称して「SMBCグループ」)傘下の 株式会社三井住友銀行(頭取 CEO : 福留 朗裕、以下「SMBC」)、SMBC Bank International plc、およびSMBC Bank EU AG は、Jefferies Financial Group Inc.(以下、「Jefferies」)との間で、欧州・中東・アフリカ地域(以下「EMEA地域」)における業務提携の覚書を締結いたしまし た。本提携は既存の業務提携の枠組をEMEA地域に拡大し、同地域における商業銀行ならびに投資銀行分野におけるJefferiesとの協働体制 を構築するものとなります。
2023/08/24 17:30 日経速報ニュース
三井住友銀行は2025年度までに、全店舗の6割にあたる250店超を「ストア」と呼ぶ新型店に転換する。営業時間を土日や夕方も含め
て柔軟に設定する。商業施設内などに移転し、店舗運営などにかかる費用を3年後に年280億円減らす。個人顧客との取引はスマートフ
ォンを中心にするが、行員と相談したい場合には気軽に立ち寄れるようにする。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)が24日に公表した投資家向け資料で明らかにした。ストアの数は23年8月時点で7店。店舗を
小型化することで人件費や賃料などの運営費が1店舗あたり平均1億円超減ったという。千葉県内のストアでは平日夕方や休日も運営
したところ、来客数がストアに変える前の4倍に増えた。来店客の45%が40代以下となっている。
ストアでは資産運用や相続の相談に加えてスマホアプリの使い方なども指南する。三井住友FGは銀行やクレジットカードなどの手続
きをスマホ上で提供するサービス「Olive(オリーブ)」の利用拡大を図っている。24日の資料ではオリーブのアカウント数が80万に達した
ことも明らかにした。3?6月に新規口座開設した顧客の預金残高は前年同期に比べて3割増えた。
2023/08/25 日本経済新聞 朝刊
熟成に時間がかかるお酒を担保に、金融機関が醸造所の資金繰りを支える取り組みが広がっている。三井住友ファイナンス&リースは
ウイスキーの原酒を担保にした融資を実行した。
三井住友リースは津崎商事(大分県竹田市)が製造するウイスキーの原酒を担保にした動産担保融資をこのほど実施した。融資額は最
大数億円。期間5年で、借り換えを含めると最長20年になる。担保の評価が難しい動産担保融資では期限を1年未満とすることが多い。
三井住友リースは原酒が将来生む価値を評価し、担保に組み入れる。企業融資は長らく価値が崩れにくい不動産が担保とされてきた。
一方で在庫などの動産は時間が経過するほど価値が下がってしまう。ウイスキーは熟成期間が長いほど価値が高まるため長期の融資が
実現した。
地方銀行ではブランド牛やランドセルを担保にした動産担保融資の実例はあるが、製品化に至らない状態では市場価値が低いウイスキ
ーの原酒を担保とした融資は国内で珍しい。
2023/08/25 13:10 日経速報ニュース
日銀が7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化して以来、国内長期金利の上昇が続く。株式市場では
利ざやの改善を見込んで銀行株を物色する動きが目立つ。長らく日本が遠ざかっていた「金利ある世界」では、低PBR(株価純資産倍率)
が続く銀行株はどうなるのか。20年以上、銀行セクターを見続けてきたSBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストに見通しを聞いた。
/home/member/news/202308/ucljpg_403e1fd0eabb9eda2ea00404b7d67ece.jpg?format=raw
――「金利ある世界」が国内銀行に与える影響をどうみていますか。
「国内金利の上昇で銀行の利ざや改善や国債運用による収益拡大が見込める。ただ、今のところ国内銀行が国債を積極的に買っている
印象はない。金利上昇のスピードが速ければ含み損が出るため、長期金利が0.7%を下回る水準ではまだ手を出しにくいようだ。日銀は貸
出金利に影響する短期の政策金利をマイナス0.1%で据え置いている。業績に影響を与える短期金利が低い状態が続くのであれば、業績
改善は急速にではなくじわりと進む」
「過去の国内長期金利と銀行の株価動向をみると、相関性は強い。金利上昇を支援材料とした銀行株の上昇基調は続くだろう。これまで
見られなかったような国内銀行による自己資本利益率(ROE)改善への姿勢を踏まえても、銀行株にはまだ上昇余地がある」
「2005年後半から06年初めにも銀行株の上昇トレンドがあった。現在との共通点は金融政策の変更期待だ。日銀は06年7月にゼロ金利
政策を解除したが、銀行株は強い期待が先行して同年3月にはピークを付けた。今後はマイナス金利解除への期待から銀行株が一段高
となるシナリオを想定している」
――多くの国内銀行株はPBR1倍を割り込んだ水準です。
「世界の銀行株をみるとROEが高ければPBRも高い傾向が強い。複数の国内銀行がROE8%を目指す方針を打ち出しているが、PBR
が1倍を超えるためにはROEは10%を超える必要があるだろう」
「現状では10%に到達する道のりは険しい。ROEを上げるためには金利収益以外に手数料収益を上げる必要がある。具体的には、企業
に対して財務分析や販路拡大の提案といった『ソリューション営業』で手数料を稼がなければならない。資金を融資するだけではなく、企業
のM&A(合併・買収)のサポートなどにも注力していくことがROE向上につながる」
――23年に入ってからも地銀再編の動きが続いています。
「依然として業績が厳しい地銀があり、これからも再編は続くだろう。ただ再編で必ずしも収益が上がり、株価が上昇するとは限らない。
例えばコンコルディ(7186)は横浜銀行と東日本銀行が経営統合した16年から時価総額が大きく増えていない。足元では経営統合よりも
業務提携を選択する地銀があらわれている。提携なら軌道に乗らなければ提携を迅速にやめるといった判断ができる」
――格付け会社による最近の米銀の格下げの影響はどう見ていますか。
「本質的に国内銀行に与える影響は軽微だ。今回の格下げは商業用不動産向けローンのリスクや自己資本の脆弱性など、米国固有の
事情に起因するものだ。米国のような自己資本規制が日本国内で適用されるわけではなく、商業用不動産向けローンも国内銀行のエクス
ポージャーは大きくないため、影響は小さい」
――メガバンクの選好順位は。
「長期的には三菱UFJ(8306)、三井住友FG(8316)、みずほFG(8411)の順だ。特に短期的には三菱UFJを推奨する。23年4~6月期
決算が好調で、中間決算では前年同期(1500億円)よりも大きい3000億円規模の自社株買いが期待されているためだ。長い目で見れば
これまで投資してきた東南アジアや米国での事業成長への期待もある。三井住友FGは本業の銀行業が好調なうえ、カード事業にも伸び
余地がある」
「みずほFGは資本面からみて、他のメガバンクが実施した規模のM&Aを通じて事業拡大を進めるのは現状では難しいのではないか。
ただ、注目はしている。これまで再三のシステム障害が発生したうえ、メガバンクの中ではROEがもっとも低い。最近は外部人材を役職に
就けるなど、本腰を入れて企業文化を変えようという機運を感じる。今後、業績に対する期待値が高まれば、大きく株価のパフォーマンス
を上げる可能性もある」
日銀が7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化して以来、国内長期金利の上昇が続く。株式市場では
利ざやの改善を見込んで銀行株を物色する動きが目立つ。長らく日本が遠ざかっていた「金利ある世界」では、低PBR(株価純資産倍率)
が続く銀行株はどうなるのか。20年以上、銀行セクターを見続けてきたSBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストに見通しを聞いた。
――「金利ある世界」が国内銀行に与える影響をどうみていますか。
「国内金利の上昇で銀行の利ざや改善や国債運用による収益拡大が見込める。ただ、今のところ国内銀行が国債を積極的に買ってい
る印象はない。金利上昇(債券価格の下落)のスピードが速ければ含み損が出るため、長期金利が0.7%を下回る水準ではまだ手を出し
にくいようだ。日銀は貸出金利に影響する短期の政策金利をマイナス0.1%で据え置いている。業績に影響を与える短期金利が低い状態
が続くのであれば、業績改善は急速にではなく、じわりと進む」
「過去の国内長期金利と銀行の株価動向をみると、相関性は強い。金利上昇を支援材料とした銀行株の上昇基調は続くだろう。これ
まで見られなかったような国内銀行による自己資本利益率(ROE)改善への姿勢を踏まえても、銀行株にはまだ上昇余地がある」
「2005年後半から06年初めにも銀行株の上昇トレンドがあった。現在との共通点は金融政策の変更期待だ。日銀は06年7月にゼロ金
利政策を解除したが、銀行株は強い期待が先行して同年3月にはピークを付けた。今後はマイナス金利解除への期待から銀行株が
一段高となるシナリオを想定している」
――多くの国内銀行株はPBR1倍を割り込んだ水準です。
「世界の銀行株をみるとROEが高ければPBRも高い傾向が強い。複数の国内銀行がROE8%を目指す方針を打ち出しているが、PBR
が1倍を超えるためにはROEは10%を超える必要があるだろう」
「現状では10%に到達する道のりは険しい。ROEを上げるためには金利収益以外に手数料収益を上げる必要がある。具体的には、企
業に対して財務分析や販路拡大の提案といった『ソリューション営業』で手数料を稼がなければならない。資金を融資するだけではなく
、企業のM&A(合併・買収)のサポートなどにも注力していくことがROE向上につながる」
――23年に入ってからも地銀再編の動きが続いています。
「依然として業績が厳しい地銀があり、これからも再編は続くだろう。ただ再編で必ずしも収益が上がり、株価が上昇するとは限らない。
例えばコンコルディは横浜銀行と東日本銀行が経営統合した16年から時価総額が大きく増えていない。足元では経営統合よりも業務
提携を選択する地銀があらわれている。提携なら軌道に乗らなければ提携を迅速にやめるといった判断ができる」
――格付け会社による最近の米銀の格下げの影響はどうみていますか。
「本質的に国内銀行に与える影響は軽微だ。今回の格下げは商業用不動産向けローンのリスクや自己資本の脆弱性など、米国固
有の事情に起因するものだ。米国のような自己資本規制が日本国内で適用されるわけではなく、商業用不動産向けローンも国内銀行
のエクスポージャーは大きくないため影響は小さい」
――メガバンクの選好順位は。
「長期的には三菱UFJ 、三井住友FG、みずほFGの順だ。特に短期的には三菱UFJを推奨する。23年4?6月期決算が好調で、中間
決算では前年同期(1500億円)よりも大きい3000億円規模の自社株買いが期待されているためだ。長い目で見れば、これまで投資して
きた東南アジアや米国での事業成長への期待もある。三井住友FGは本業の銀行業が好調なうえ、カード事業にも伸び余地がある」
「みずほFGは資本面からみて、他のメガバンクが実施した規模のM&Aを通じて事業拡大を進めるのは現状では難しいのではないか。
ただ、注目はしている。これまで再三のシステム障害が発生したうえ、メガバンクの中ではROEがもっとも低い。最近は外部人材を役
職に就けるなど、本腰を入れて企業文化を変えようという機運を感じる。今後、業績に対する期待値が高まれば、大きく株価のパフォ
ーマンスを上げる可能性もある」
2023/08/27 04:00 日経速報ニュース 1549文字 画像有
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米国の有名な投資戦略の一つに「ダウの犬(Dogs of the Dow)」と呼ばれる手法がある。投資ポートフォリオを配当利回りが高い銘柄
に定期的に入れ替えるこの手法は、高配当株に注目が集まる日本市場でも通用する。専門家の試算によると、最善の始め時は1月、最
悪は9月。ダウの犬はしばらく「待て」とするのがよさそうだ。
ダウの犬とは、米国のダウ工業株30種平均の構成銘柄の中で配当利回りが高い上位10銘柄に均等に投資したまま1年後に売却し、
改めてその時点の上位10銘柄に投資するサイクルを繰り返す手法だ。米国のマイケル・オヒギンズ氏が1991年に著書で紹介し、注目
を浴びた。
配当利回りは配当金を株価で割って算出する。分母となる株価が低いほど配当利回りは高い。株価が低い「負け犬=underdog」銘柄
に投資することが名称の由来とされる。負け犬とはいえ、配当金の減額や経営破綻の可能性が低い有力企業が集まったダウ平均の中
から銘柄を選ぶため、安定した投資収益を得られる。
米金融メディアのモトリーフールによると、米国版ダウの犬の22年における年間リターンは約2%とダウ平均のマイナス7%を大きく上回
った。対象をS&P500にした場合ではマイナス9%だった。
ニッセイアセットマネジメントで投資工学開発センター長を務める吉野貴晶氏に日本株でもダウの犬戦略が有効かを試算してもらった。
日本株版のダウの犬戦略では、時価総額と流動性が特に高い主力30銘柄で構成する「東証株価指数(TOPIX)コア30」を代替とした。
2004年から22年まで毎年のリターンを累積すると、日本株版ではスタート時点から436%に膨れ上がった。同じ期間のTOPIX(配当込み)
は162%、TOPIXコア30の残り20銘柄では77%にとどまった。
さらに、投資対象を配当利回りの上位5銘柄に絞った場合ではリターンが534%となった。通常の10銘柄よりも少ない投資資金でより良
いパフォーマンスを得ることができた。吉野氏は「21年ごろからバリュー(割安)株相場が続いていることが日本版ダウの犬の好パフォー
マンスにつながっている」と分析する。
ダウの犬戦略では売買コストを抑える狙いから、ポートフォリオの入れ替えを年1回としている。投資の開始時期の違いによるリターンの
変化を月ごとに比較してみると、運用成績に大きな違いがみられた。
年間リターンの平均値が最も高かった開始時期は1月の10.2%だ。12月が9.2%、11月が7.6%と続いた。逆に最も成績が振るわなかった
のは9月で、年間リターンの平均値は4.1%にとどまった。同じ9月開始でみたTOPIX(配当込み)の5.3%を下回る低調な結果となった。10月
も4.5%と低い。
年初と年末が好成績を示した背景は、日本株市場では3月期末の権利付き最終売買日に向けて高配当利回り株が買われる「配当取り
」が毎年3月後半に活発になるためだ。実際には1月ごろからその動きが広がり始め、高配当利回り銘柄の株価は上昇トレンドを持続す
る傾向があるようだ。
秋口の相場では7月から8月にかけて好決算を発表した銘柄に投資家の注目が集まる結果、「高配当利回り銘柄の買いが細って株価
が上昇しにくい傾向があり、年末年始に比べると投資の開始時期としては見劣りする」(吉野氏)。さらに9月末の中間配当取りの動きに
ついても「3月末の期末配当取りに比べると弱い」と指摘する。
ダウの犬はシンプルな投資手法で個人投資家に好まれてきた。吉野氏は「配当利回りは長期投資の観点で効果的だ」と話す。ちょうど
24年1月からスタートする新しい少額投資非課税制度(NISA)を活用して資産形成に乗り出す好機となるかもしれない。
2023/08/27 04:00 日経速報ニュース
米国の有名な投資戦略の一つに「ダウの犬(Dogs of the Dow)」と呼ばれる手法がある。投資ポートフォリオを配当利回りが高い銘
柄に定期的に入れ替えるこの手法は、高配当株に注目が集まる日本市場でも通用する。専門家の試算によると、最善の始め時は1月、
最悪は9月。ダウの犬はしばらく「待て」とするのがよさそうだ。
ダウの犬とは、米国のダウ工業株30種平均の構成銘柄の中で配当利回りが高い上位10銘柄に均等に投資したまま1年後に売却し、
改めてその時点の上位10銘柄に投資するサイクルを繰り返す手法だ。米国のマイケル・オヒギンズ氏が1991年に著書で紹介し、注目
を浴びた。
配当利回りは配当金を株価で割って算出する。分母となる株価が低いほど配当利回りは高い。株価が低い「負け犬=underdog」銘柄
に投資することが名称の由来とされる。負け犬とはいえ、配当金の減額や経営破綻の可能性が低い有力企業が集まったダウ平均の中
から銘柄を選ぶため、安定した投資収益を得られる。
米金融メディアのモトリーフールによると、米国版ダウの犬の22年における年間リターンは約2%とダウ平均のマイナス7%を大きく上回
った。対象をS&P500にした場合ではマイナス9%だった。
ニッセイアセットマネジメントで投資工学開発センター長を務める吉野貴晶氏に日本株でもダウの犬戦略が有効かを試算してもらった。
日本株版のダウの犬戦略では、時価総額と流動性が特に高い主力30銘柄で構成する「東証株価指数(TOPIX)コア30」を代替とした。
2004年から22年まで毎年のリターンを累積すると、日本株版ではスタート時点から436%に膨れ上がった。同じ期間のTOPIX(配当込み)
は162%、TOPIXコア30の残り20銘柄では77%にとどまった。
さらに、投資対象を配当利回りの上位5銘柄に絞った場合ではリターンが534%となった。通常の10銘柄よりも少ない投資資金でより良
いパフォーマンスを得ることができた。吉野氏は「21年ごろからバリュー(割安)株相場が続いていることが日本版ダウの犬の好パフォー
マンスにつながっている」と分析する。
ダウの犬戦略では売買コストを抑える狙いから、ポートフォリオの入れ替えを年1回としている。投資の開始時期の違いによるリターンの
変化を月ごとに比較してみると、運用成績に大きな違いがみられた。
年間リターンの平均値が最も高かった開始時期は1月の10.2%だ。12月が9.2%、11月が7.6%と続いた。逆に最も成績が振るわなかった
のは9月で、年間リターンの平均値は4.1%にとどまった。同じ9月開始でみたTOPIX(配当込み)の5.3%を下回る低調な結果となった。10月
も4.5%と低い。
年初と年末が好成績を示した背景は、日本株市場では3月期末の権利付き最終売買日に向けて高配当利回り株が買われる「配当取り
」が毎年3月後半に活発になるためだ。実際には1月ごろからその動きが広がり始め、高配当利回り銘柄の株価は上昇トレンドを持続す
る傾向があるようだ。
秋口の相場では7月から8月にかけて好決算を発表した銘柄に投資家の注目が集まる結果、「高配当利回り銘柄の買いが細って株価
が上昇しにくい傾向があり、年末年始に比べると投資の開始時期としては見劣りする」(吉野氏)。さらに9月末の中間配当取りの動きに
ついても「3月末の期末配当取りに比べると弱い」と指摘する。
ダウの犬はシンプルな投資手法で個人投資家に好まれてきた。吉野氏は「配当利回りは長期投資の観点で効果的だ」と話す。ちょうど
24年1月からスタートする新しい少額投資非課税制度(NISA)を活用して資産形成に乗り出す好機となるかもしれない。
[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 26日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は26日、米ワイオミング州で開催されているカンザス
シティー地区連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で、金融緩和を維持しているのは、基調インフレがなお目標をやや
下回っているためだと述べた。
植田総裁は「基調インフレは依然、目標をやや下回っていると考えている」とし「それが現行の金融緩和の枠組みを堅持している理由
だ」と述べた。
内需は「依然として健全なトレンド」にあり、企業の設備投資も「記録的に高い利益に支えられている」との認識を示した。一方で物価
については、基調トレンドがなお目標を下回っており、今後低下するとの見通しを示した。
2023/08/28 05:00 日経速報ニュース
日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化してから28日で1カ月になる。それまで日銀が強引に金利を
抑え込むことでしわが寄っていた為替相場の変動は緩やかになり、債券市場の機能改善にも一定の効果をあげている。ただし円安は止ま
っておらず、物価の押し上げ要因として残り続けている。
日銀は7月28日の金融政策決定会合で、それまで長期金利の上限としていた0.5%の位置づけを「めど」に変え、上限を事実上1%に引き
上げた。修正は上限を0.25%から0.5%に引き上げた22年12月会合に続く動きだった。
世界の中央銀行がインフレ退治の利上げに動くなか、日銀がYCCで金利を強引に抑え込んだ結果、米欧との金利差は拡大。2022年には
円安の急速な進行や社債の発行減といった副作用が顕在化していた。
植田和男総裁は7月会合後の記者会見で、「長期金利の上限を0.5%で厳格に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場にお
けるボラティリティー(変動率)に影響が生じる恐れがある」と述べた。そのうえで「柔軟化でこうした動きを和らげる」と政策修正の狙いを語
っていた。
7月会合後、債券市場では長期金利の適正水準を探る動きが活発になった。植田総裁が金利の変動を一定程度、市場に委ねる考えを
示した一方で、「金利水準や変化のスピードなどに応じて機動的に国債買い入れの増額などを実施する」とも述べたためだ。
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが23日に0.675%と9年7カ月ぶりの水準に上昇(債券価格は下落)すると、市場の一部で
は日銀が金利上昇を抑え込むために国債買い入れを増やすとの思惑が浮上した。
ただ、その後も日銀は臨時の国債買い入れなどで金利上昇を抑え込まず、「国債売りに安心感が強まった」(国内証券の債券ディーラー)。
日銀が金利を厳格に抑え込まなくなったことで、外国為替市場では円相場の変動が抑えられている。足元の水準は1ドル=146円台と今
年の最安値圏にあるものの、8月の対ドル相場の1日の平均値幅は1円10銭程度にとどまる。
前年同月や前回、同じ145円近辺にあった2022年9月の1円60銭程度と比べて振れ幅は3割強、小さくなった。日銀が無理に長期金利
を抑え込むことで生じていた円相場の急変動が収まっている。
債券市場の機能改善も進んだ。格付投資情報センター(R&I)の格付けが「シングルA」の10年債の流通市場におけるスプレッド(国債利
回りに対する上乗せ)は7月会合前の0.62%程度から足元で0.58%ほどまで縮んだ。政策修正後も長期金利の上昇幅が限られ、投資家の
買い安心感につながっているためだ。
需要の強さを背景に企業も大型起債に乗り出している。アステラス製薬は25日、総額2000億円の2本立て債を起債した。9月以降もパナ
ソニックホールディングスやENEOSホールディングスなどが総額1000億?3000億円程度の大型起債を予定する。
静岡県が2日に条件を決めた10年債のスプレッドは0.16%と7月の10年物地方債(0.21%)から大幅に縮小した。他の地方自治体が発行
する地方債でも傾向は同じだ。
22年後半から23年の春先までは社債を出しにくい環境が続いていた。国内でも物価が上がり始めたことで緩和縮小の思惑が強まり、金
利上昇への警戒から社債の買いの手が鈍ったためだ。4月に就任した植田総裁が粘り強く緩和を続ける姿勢を強調したことで金利上昇へ
の過度な警戒が後退。足元までハイペースの社債発行が続いている。
誤算だったのは、為替の円安傾向に歯止めがかかっていないことだ。7月会合前に1ドル=140円前後で推移していた対ドルの円相場は
足元で1ドル=146円台まで円安に振れている。22年12月の政策修正直後は1日で6円強、円高に振れていた。
もっとも、ある日銀関係者は「7月に政策を見直していなかったらもっと円安が進んでいた」と指摘。一定の効果はあったとみている。
YCCの運用柔軟化は、いまのところ市場機能の改善につながっている。くびきから解かれた市場が本来の「経済の体温計」としての機能
を取り戻し、それを日銀がどこまで許容するのか。追加利上げをめぐる思惑で市場が動く9月の米欧中銀の会合前後が一つの試金石になる。
2023/08/29 日本経済新聞 朝刊
日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化してから28日で1カ月になった。債券市場の機能はある程度
改善したが、円安には歯止めが掛かっていない。日銀は金融緩和を粘り強く続ける構えだが、市場ではマイナス金利撤廃などの「次の一
手」を巡る思惑も浮上している。
「物価の基調をみると、なお2%の物価安定の目標に達していない」。日銀の植田和男総裁は26日午前(日本時間27日未明)の国際
経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で金融緩和を維持する方針を説明した。日銀関係者は講演後、「市場に大きな混乱は起きてい
ない。当面は(政策修正後の)今の枠組みを維持する姿勢に変わりはない」と話した。
日銀は7月28日の金融政策決定会合で、それまで長期金利の上限としていた0.5%の位置づけを「めど」に変え、上限を事実上1%に
引き上げた。上限を0.25%から0.5%に引き上げた2022年12月会合に続く動きだった。
それから1カ月、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは23日に0.675%と9年7カ月ぶりの水準にまで上昇(債券価格は
下落)した。市場参加者は日銀がどれくらいのペースの金利上昇なら許容するのか瀬踏みしつつ、長期金利の適正水準を慎重に探り
続けている。
長期金利の柔軟度が高まったことで、債券市場は機能改善が進んだ。格付投資情報センター(R&I)の格付けが「シングルA」の10年
債の流通市場におけるスプレッド(国債利回りに対する上乗せ)は7月会合前の0.62%程度から足元で0.58%ほどまで縮んだ。
企業は大型起債に乗り出している。アステラス製薬は25日、総額2000億円の2本立て債を起債した。9月以降もパナソニックホール
ディングスやENEOSホールディングスなどが総額1000億~3000億円程度の大型起債を予定する。
静岡県が2日に条件を決めた10年債のスプレッドは0.16%と7月の10年物地方債(0.21%)から大幅に縮小した。他の地方自治
体が発行する地方債も傾向は同じだ。
もっとも、外国為替市場では円安傾向にブレーキが掛からない。7月会合前に1ドル=140円前後で推移していた対ドルの円相場は
足元で1ドル=146円台まで円安に振れている。日銀の政策修正で日本の長期金利はいくぶん上昇したが、経済が好調な米国の
金利も上がっており、日米金利差がいっこうに縮まらないためだ。
物価高も日銀の当初の想定を超えて長引くなか、市場では日銀の「次の一手」を織り込む動きが出ている。QUICKが金融機関や
事業会社の外為市場関係者177人を対象に実施した月次調査結果(8月)によると、日銀の政策修正時期を「23年12月」とする回答
が29%あった。「24年4月以降」(31%)が最も多かったが、早期修正を見込む声も根強い。
想定される日銀の次の一手は「長期金利の変動許容幅を撤廃する」(41%)が最も多い。僅差で「短期金利の目標水準をマイナス
0.1%程度から0%程度に引き上げる」(37%)が続く。長期金利操作の柔軟化だけでなく、マイナス金利の撤廃にも市場の目は向き
始めている。
2023/08/29 19:30 日経速報ニュース
ライフネット生命保険が近く資本を増強し、三井住友カードなどが出資することが複数の関係者への取材で分かった。資本増強は
100億円規模で、このうち30億円前後を三井住友カードが引き受ける。3000万人超の会員を抱える三井住友カードの顧客網を生か
し、個人保険の拡販につなげる。独自のポイントがたまる保険商品の共同開発も検討する。
ライフネット生命は筆頭株主のauフィナンシャルホールディングス(FH)にも新たな資本を20億円前後割り当てる。残りを公募増資
などで調達する方向だ。三井住友カードは出資比率4%前後の大株主となる見込みだ。
ライフネット生命の2023年3月期決算は、最終損益が51億円の赤字(前の期は33億円の赤字)。日本の会計基準では08年の営業
開始から赤字が続くなか、100億円規模の資本増強で財務基盤を強化する。
ライフネットは20年と21年に、海外公募増資であわせて200億円超の資本を調達した。赤字が続くなか、公募増資だけでは資本を
まかないきれず、auFHや三井住友カードからの出資に頼らざるを得なくなったようだ。
三井住友カードとライフネット生命は22年10月に業務提携を発表した。専用サイトを設け、医療保険や自動車保険を取り扱っている。
三井住友カードと三井住友銀行はスマートフォンのアプリでクレジットカードや口座管理の金融取引を一体化した「Olive(オリーブ)」を
展開。同サービス内で保険取引の拡大もめざしている。
サービス開始から5カ月で利用者は80万人にのぼり、20?40代の比較的若い世代が多いという。ライフネットはこうした販売力を生
かし、若年層を取り込んで低迷する保険商品の契約増をめざす。三井住友カードを使って保険料を決済すれば同社の「Vポイント」が
たまる保険商品の共同開発も検討する。
オリーブではSBI証券と連携してネット証券も使えるようにしている。保険取引を強化することで三井住友フィナンシャルグループ
(FG)はデジタル金融に先手を打ち、個人との取引の軸足を支店からスマホに移す。
Vポイントは24年春にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTポイントと統合する予定。利用者(アクティブユーザー)は単純合
算で8600万人規模となる。ポイントサービスを強化し、楽天ポイントなどのライバルに対抗する。
保険業界ではポイント経済圏と連携する動きが進む。日本生命保険グループはNTTドコモのポータルサイトで生命保険の取り扱い
を始めた。スマホ決済の「d払い」を使うとドコモのdポイントを付ける。楽天グループやPayPayもグループの保険会社でポイントがたまる
保険を提供している。決済事業者にとっては保険契約で継続的に決済収入が見込める利点もある。
2023/08/30 17:42 日経速報ニュース
ネット証券最大手のSBI証券と同2位の楽天証券が9月以降、相次いで日本株の売買手数料を無料にする。無料は国内証券会社で
初めて。2024年に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まるのを前に、個人の投資を呼び込む。米国のネット証券で主流の株取
引手数料ゼロが日本でも広がる可能性がある。
SBI証券はオンライン取引を対象に、9月30日の注文分から日本株の現物取引と信用取引両方の売買手数料をゼロにする。現在の
現物株取引では、一部取引を除いて1注文あたり55?1070円かかっている。
楽天証券もSBIと同じく、日本株の売買手数料をゼロにする。開始時期は未定だが、9月以降になる見込み。現在はSBIと同じく1注
文あたり55?1070円かかる。
SBI証券の親会社であるSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長は19年に売買手数料を将来、完全無料化する方針を掲げた。
21年から25歳以下の若年層を対象に日本株の売買手数料をゼロにしてきたが、すべての投資家に広げる。SBIの完全無料化に伴
い、楽天証券も追随する。
足元の証券口座数は最大手のSBI証券が約1000万、2位の楽天証券が約900万で、3位のマネックス証券(約200万)に大きく差を
つけている。手数料の低さやネット取引の手軽さから若年層を中心に支持を得ている。完全無料を前面に出してさらなる囲い込みを狙う。
SBIでは日本株取引の手数料収入は年200億円程度で、営業収益の1割程度を占める。手数料無料化の影響は外国為替証拠金
(FX)取引や暗号資産(仮想通貨)取引、法人営業などでカバーする方針とみられる。
今後、他のネット証券や、野村ホールディングスはじめ大手総合証券が追随するかが焦点になる。
米国では19年にネット証券大手チャールズ・シュワブが株式などの売買手数料を無料にしたのをきっかけに競合他社も相次ぎ無料化
し、業界全体で無料が定着した。米国のネット証券各社は信用取引の金利収入などを主な収益源としている。
2023/08/31 日本経済新聞 朝刊
ライフネット生命保険は30日、104億円の資本増強を発表した。三井住友フィナンシャルグループ(FG)と資本提携し、新たに三井住友
カードから約30億円を調達する。ライフネット生命は直販モデルを掲げて創業したが、足元では個人保険の獲得で苦戦。提携先を増やし、
販路を広げる戦略を鮮明にしている。
三井住友カードの出資比率は5%となる。筆頭株主で約20億円分の第三者割当増資を引き受けるauフィナンシャルホールディングスの
出資比率は18.34%と出資の前後で変わらない。残りの約50億円を公募増資で調達する計画。30日のライフネット生命株の終値は前
日比8%安の1015円。株式の希薄化を嫌気した売りが膨らみ、一時1000円台を割り込む場面もあった。
ネットなど非対面の保険販売に強みがあるライフネット生命は、新型コロナウイルスの感染拡大で大手の営業職員が活動を封じられるな
かで契約を伸ばした。
ところがコロナ禍が明けて対面チャネルが本格的に復活し、競争環境は厳しさを増している。2023年4~6月の個人保険の新契約年換
算保険料(新たに獲得した契約から得られる保険料)は前年同期比23%減の7億4300万円だった。
三井住友FGと提携するのは、販売チャネルの拡大で低迷する個人保険の契約を底上げするためだ。23年度中にも三井住友カードの
「Vポイント」がたまる保険商品を提供するほか、家計管理・相談ツールなどを開発する。ライフネット生命の顧客がクレジットカードをつくり
やすくすることで三井住友側は会員獲得を狙う。
2023/08/31 12:30 日経速報ニュース
31日午前の東京株式市場で日経平均株価は続伸した。前引けは前日比183円77銭(0.57%)高の3万2517円23銭だった。米金融引き
締めへの警戒感が和らぎ、前日の米株の堅調さを支えに幅広い銘柄に買いが入った。日本株は今春以降の顕著な上昇が一服し、踊り場
にある。今後の一段高には「9月は株安」の経験則を打ち返し、海外勢の本格的な買いを呼び込む必要がある。
前日の米株高を受けて、東京市場でも自動車や陸運株に買いが入った。30日発表の8月のADP全米雇用リポートで雇用者数の伸びは
市場予想を下回った。29日発表の7月の米雇用動態調査(JOLTS)とあわせて労働需給の軟化を示し、米連邦準備理事会(FRB)による
追加利上げ観測が一段と後退した。
日経平均は前日までの3日間で700円ほど上昇したが「株先物を売り建てていた海外勢が買い戻しを迫られている」(国内投信のトレー
ダー)との見方がある。株価指数先物・オプション9月物の特別清算指数(SQ)の算出がある9月上旬までは、断続的な買い戻しが続くという。
日本株の一段高への手掛かりは、東京証券取引所が呼びかける株価や資本コストを意識した経営への対応だ。ゴールドマン・サックス
証券の建部和礼氏らは29日付のリポートで、7月以降はPBR(株価純資産倍率)が0.5倍を下回り、かつ流動性の高い銘柄が堅調だと
分析した。そのうえで「相場の先導役が東証の(企業に対する株価・資本コストを意識した経営についての)推奨を最も積極的に取り入れ
ている企業へと明確にシフトしている」と指摘する。
PBRが1倍を下回っている、ある上場企業の取締役は「資本コストの現状分析や収益性改善策の公表の仕方について検討を続けて
いる」と話す。ゴールドマンは今秋にも東証が上場企業の資本コストを意識した経営への対応状況を明らかにすると予想する。今後は
企業による収益性改善策の開示が増え、海外投資家が日本株への関心を再び高める可能性が高い。
相対的に好調な企業業績も支えだ。アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「夏場の気温上昇で季節商材を取り
扱う小売企業の業績は好調が予想される」と話す。そのうえ、主要企業の4~6月期の利益進捗率から「4~9月期の決算発表時に
通期の業績見通しの上方修正や自社株買いを発表する企業が増えるだろう」と指摘する。
9月は株安の経験則(アノマリー)がある。QUICKでデータを遡れる1977年以降の月間騰落率を調べると、日経平均は9月が平均で
0.7%下落し、12カ月で最も下落率が大きい。あすから名実ともに9月相場入りするが、株安の経験則を覆すことができるか、正念場を
迎える。
2023/09/01 13:06 日経速報ニュース
日銀が7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化し、国内の長期金利は上昇余地を試している。「金利ある
世界」への回帰が意識されるなか、今後の銀行株はどう動いていくのか。金融セクターの調査・分析に長らく携わってきた、三菱UFJモルガ
ン・スタンレー証券の辻野菜摘シニアアナリストに見通しを聞いた。
――金利上昇が銀行の業績に与える影響をどうみていますか。
「目先の影響は限定的だろう。YCCの柔軟化に伴い、長期金利の上限は事実上1%となっている。中長期でみると利回りの高い債券運用
を通じた収益拡大が見込まれるが、国債利回りの上昇局面では保有債券の含み損が拡大しやすいため、現時点で銀行は国債購入を増や
すタイミングをうかがっている状況だろう。日銀当座預金に預けていた資金を国債にシフトする動きなどがスムーズに進むかどうかに注目だ」
「もっとも、金利上昇による業績改善を見据えて銀行株は上昇しやすい局面にある。7月のYCC柔軟化で日銀の政策修正が当面の最後
になるとは考えにくい。次の一手として、YCC撤廃やマイナス金利の解除に踏み込む時期は予想しにくいが、マイナス金利の解除まで金融
政策の正常化が進展すれば貸し出しを通じた利ざやも拡大しやすい。政策変化を先取りする形で収益向上の期待が高まり、銀行株を持た
ざるリスクは強まっていくだろう」
――東京証券取引所はPBR(株価純資産倍率)の1倍割れ解消を念頭に改善を求めていますが、メガバンクを含めた銀行株の多くが1倍
に達していません。
「三井住友フィナンシャルグループやみずほフィナンシャルグループは、マイナス金利導入前の自己資本利益率(ROE)が今の水準より高
かった。マイナス金利の解除に伴い、利ざやを改善しつつ利回りの高い国債にも投資できる状況になれば、PBRを決定する要素であるROE
は回復に向かうだろう。時間はかかるとみているが、収益向上とともにPBR1倍台の達成確度も高まる」
――銀行株が市場での評価を高めるために何が必要でしょうか。
「店舗の統廃合や業務効率化を続け、収益性を高めていくことが重要だ。政策保有株の売却を継続し、株主還元などに充てるのも企業
価値の向上につながる。国内の人口減少を考慮すると、収益機会を広げるために海外展開の強化も必要だ。需要が伸びている事業承継
やM&A(合併・買収)支援への対応は大手行だけでなく、後継者不足に悩む中小企業との取引が多い地銀にとっても大きな課題だ」
「地銀は数が多く、依然として過当競争の状況にある。銀行業の収益や競争環境の改善に向け、さらに踏み込んだ地銀再編は必要に
なっていくだろう」
――メガバンクを中心に株主還元への期待が高まっています。
「そもそも今年度の期初に自社株買いなどを発表する期待はあった。ただ、3月ごろから相次いだ米地銀破綻を受け、規制当局による
資本規制強化への警戒が広がり、株主還元には慎重になっていた面があった。現状では規制当局が早期に資本規制を強化する可能
性は低いとみられており、自社株買いを実施する可能性は高まっている。三井住友FGは中間決算で500億?1000億円規模の自社株
買い枠を発表すると見込んでいる」
2023/09/01 15:50 日経速報ニュース
1日の東京株式市場で東証株価指数(TOPIX)が5日続伸した。前日比17.75ポイント(0.76%)高の2349.75で終え、バブル経済崩壊後
の1990年7月以来、33年ぶりの高値を付けた。日経平均株価が年初来高値に届いていないなか、相対的に堅調なTOPIXのけん引役が
時価総額上位の大型株だ。半導体関連など一部値がさ株の構成比が高い日経平均に比べた優位性が鮮明になっている。
1日は主力銘柄で構成される「TOPIXコア30」の上昇率が「中型」や「小型」を上回った。三菱UFJ(8306)や三井住友FG(8316)などメガ
バンクがそろって年初来高値を更新。日立も連日で上場来高値を付けた。東証プライムで時価総額が上位のトヨタ(7203)やホンダ(7267)、
NTT(9432)もこのところ堅調に推移する場面が目立つ。
一方、半導体関連の東エレク(8035)やアドテスト(6857)は逆行安で終えた。7月上旬までの日本株の上昇局面は、生成AI(人工知能)
などのテーマ物色で半導体関連に買いが集中していたが、まだ業績拡大の裏付けが伴っていないとあって物色の圏外に置かれる日が
増えている。アドテストは7月に付けた高値を2割ほど下回る。
日経平均をTOPIXで割ったNT倍率は1日に13.92倍と、3月中旬以来の低水準となった。メガバンクなど時価総額上位銘柄が上値を試
している一方、日経平均への寄与度が高い東エレクやアドテスト、中国の景気減速懸念が重荷となっているファストリ(9983)などが相対
的にさえない値動きとなっていることが背景だ。
市場では「業績が堅調で、円安効果も見込める大型株に資金が向かいやすくなっている」(国内証券の情報担当者)との声が聞かれる。
当面はTOPIX優位の展開が続きそうだ。
2023/09/04 18:00 日経速報ニュース
SMBC日興証券が週内にも、2500億円の資本増強に踏み切ることが4日わかった。親会社の三井住友フィナンシャルグループ(FG)
から調達し、自己資本は約1兆1800億円と2023年6月末時点より3割弱増える。財務を強固にして法人向けの資金調達の支援メニュー
を増やし、競合に対抗する。
関係者によると、三井住友FGを割当先として第三者割当増資を実施する。三井住友FGの出資比率は100%で変わらない。SMBC日
興の増資は09年の三井住友FG傘下入り後で初めて。
増資により自己資本を積み増すことで、企業向け融資などのリスクをとりやすくなる。大手金融機関は国際規制でリスクに応じた資本を
積むよう求められている。
主な狙いは法人営業部門のてこ入れだ。「マージンローン」と呼ぶ、企業が保有する株式を担保とする融資の拡大を想定する。企業は返
済期限を迎えたとき、一般的な現金での返済のほか、担保の株式を返済に充てることもできる。
ソフトバンクグループ(SBG)が主に外資系金融機関を取引相手として、自社で持つ中国電子商取引(EC)大手アリババ集団や英半導
体設計大手アームの株式を活用して多額のマージンローンを調達している。企業側は株式を売却せずに資金調達ができ、資産の有効活
用につながる。
企業がローンを現金の代わりに株式で返済した場合、金融機関は主に担保株式を市場で売却して資金回収する。株式を市場で売却し
た場合の価格の見極めが求められるため、銀行よりも証券会社が得意とするサービスとされる。
デリバティブ(金融派生商品)を活用したヘッジ取引なども企業向けに拡大したい考え。今後は金利の上昇圧力が強まり、企業が社債を
発行する際の利率が上がる可能性がある。利率を固定するデリバティブなどの活用を見込む。
SMBC日興が法人サービスを広げる背景に、従来型の法人営業では収益拡大が難しいことがある。これまで証券会社の法人顧客に
対するサービスはM&A(合併・買収)助言と、株式・債券の引受業務が中心だった。これらのサービスは国内外の金融機関のほか、コン
サルティング会社など多くの事業者が手掛けており、手数料競争は厳しい。
マージンローンやデリバティブのサービスをそろえることで、競合他社との違いを鮮明にする。自己資本が増えれば従来型の株式・債券
の引受業務でも、より多くの資金調達を支えることができるようになる。
SMBC日興は09年に三井住友FG傘下に入った。前身の日興コーディアル証券は個人向け営業に軸足を置き、法人営業は手薄だった。
三井住友FGはSMBC日興のてこ入れと銀行の取引先ネットワークの組み合わせで収益拡大を狙う。
銀行と証券の連携により、SMBC日興が助言や引き受けのランキングであるリーグテーブルで上位に入る機会は増えており、証券最大
手の野村証券などに対抗する。
SMBC日興は22年に相場操縦事件などを巡って行政処分を受け、ガバナンス体制の再構築を進めている。三井住友FGの太田純社
長は事件後「(SMBC日興が)今後も中核証券会社であることは変わりない」と述べており、追加出資はSMBC日興を中心に証券戦略
を進めることを改めて示す。
2023/09/05 04:00 日経速報ニュース
日本のインフレ率が急速に高まっています。7月の総合インフレ率(消費者物価指数=CPIの総合指数)の上昇率は前年同月比3.3%、エネ
ルギーと生鮮食品を除くコアコア・インフレ率(CPIのコアコア指数)は同4.3%に達しています。ガソリン補助金などでインフレを抑えていても
焼け石に水といった状態です。
インフレは一時的にあらず
この期に及んで、日本銀行が「インフレ率2%がまだ安定的に達成できていない」と言い続けているのは理解に苦しみます。日銀は、日本
も高インフレ国になってきている事実を、きちんと認識すべきです。
日本は少子高齢化の国なのでインフレは一時的、どうせデフレに逆戻りするとの思い込みがありますが、私は日本も既に高インフレ国に
仲間入りしていると考えています。
その最大の理由は、異次元緩和をやり過ぎ、通貨を増やし過ぎたことです。財政規律が働かず、これからも政府支出は増え続け、国債
発行量は増え続けることが予想されます。いくら少子高齢化の国でも、ここまで規律の無い金融緩和をやり続ければ深刻なインフレになる
ことを、これから日本は経験すると考えています。
財政規律がまったく働かないことから、日本の普通国債の発行残高は、2023年3月末時点で1000兆円を超えています。それでも日本で
インフレ率・金利の上昇が遅かったのは、日本の家計が約1100兆円もの現預金を抱えているからです。今後、インフレによって実質価値が
目減りしていく現預金を減らす動きが出てくれば、それがさらなるインフレ高進の契機となる可能性があります。
バリュー株優位が継続
21年以降、日本市場ではおよそ3年間にわたってバリュー株優位の展開が続いています。東証株価指数(TOPIX)のバリュー指数と、
同グロース指数の動きを見ると、その事実がわかります。
バリュー株とは、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低い、あるいは配当利回りが高いなど株価指標で見て割安な株のこと
です。金融、資源関連、素材市況関連などには、バリュー株がたくさんあります。
共通点は、インフレが追い風になる「インフレ・メリット株」が多いことです。例えばインフレが高まると長期金利が上がるため、恩恵を受け
やすい金融株も上昇します。特に、低金利で痛めつけられてきた銀行株の上昇が目立ってきます。
グロース優位からバリュー優位への転換点となったのが21年です。その年から、世界中でインフレと金利上昇が進みました。金融、資
源関連、素材市況関連銘柄の業績・株価には追い風となる一方、グロース株に逆風が吹きました。
グロース株には、IT(情報技術)・ネット関連株やバイオ関連株が含まれます。16年から20年まで5年間、グロース株好調・バリュー株不
振が続いていましたが、21年以降は、インフレ・金利上昇によってグロース株は売られるようになり、バリュー株とは対照的な値動きをして
きました。
23年に入ってからは、生成人工知能(AI)がブレイクするとの期待から、米国ではナスダック上場のIT・半導体関連の大型成長株が大き
く上昇しています。日本でも生成AI関連の成長株を買う流れは一時広がりましたが、相場の大きな流れを変えるには至っていません。イン
フレ率が一段と上昇していることもあり、日本ではバリュー株の物色が続いています。
23年後半から24年にかけて、日本経済は「インフレサプライズ」を経験することになるとみています。大方の予想に反し、日本のインフレ
率は3%台の高水準が続くと予想しているのです。
別の言い方をすると、「20世紀に逆戻り」の経済環境がしばらく続くと予想しています。モノが不足し深刻なインフレが起こるというのは
20世紀の経済環境に一時的に逆戻りしていることを示します。物価が上がり、金利が上がるのは、20世紀の経済環境です。
21世紀、特にリーマン・ショック後は、モノの値段や資源価格、さらに金利も下がるのが当たり前となっていました。製造業では稼げない
時代となるなか、ネット関連やIT関連だけが成長する時代となっていました。そうした環境の中で、IT・ネット関連の成長株だけが買い上げ
られ、オールドバリュー株(金融、資源関連、製造業)は低迷し続けました。
今は、一時的に20世紀の投資環境に戻っています。米中によるグローバル経済の分断は、製造業のコストアップ・インフレの長期化を
引き起こす要因となりそうです。ロシアの日米欧経済からの切り離しも、さまざまなコモディティの価格上昇に寄与すると思います。
人類が自由経済・自由貿易・グローバル分業に背を向け、分断を長期化させることが、グローバルにインフレが収まらない要因となりそ
うです。
過去には似た局面も
過去に、日本でバリュー株優位が長く続いた時は、いずれもインフレ率や金利が上昇した時でした。代表的なのは1980年代後半で、円
高と貿易戦争でグロース株(ハイテク株)がさえない中、内需中心にバブル景気が盛り上がり、バリュー株が活躍しました。
2000年代前半にもバリュー相場がありました。金融株や重厚長大産業が構造改革で復活するなか、BRICs(中国・インド・ブラジル・ロシ
ア)と呼ばれる新興国の成長加速で資源価格が急騰し、世界的なインフレ懸念の強まりを受けて金利が上昇しました。
23年以降の日本も2?3%のインフレが定着し、日本株市場ではバリュー株優位のパフォーマンスがさらに長期化すると予想しています。
2023/09/06 12:43 日経速報ニュース
外国為替市場で円相場が急落した。6日午前は一時1ドル=147円82銭近辺と前日夕から1円近く下落し、2022年11月以来の安値を
つけた。急ピッチの円安に神田真人財務官は同日朝、「あらゆる選択肢を排除しない」などと発言してけん制姿勢を強めた。当局の警戒
レベルは1段階上がったとの受け止めが広がるものの、実際に介入へ動くにはまだ距離があるとの見方が市場ではなお優勢だ。
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円は5日の東京市場で節目の147円を下回り、海外市場では5日の米長期金利の上昇で一段安となった。チャート分析上は、相場の
変動率(ボラティリティー)を測る「ボリンジャーバンド」で統計的にはほとんど起きない値動きの目安となるドルからみた「上限」を突破し
た。相場変動は急激といえる状況になりつつある。
神田氏は足元の為替相場について「投機的な行動あるいはファンダメンタルズでは説明できない動きがみられており、高い緊張感を
持って注視している」「こういった動きが続くようであれば、政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応する」などと発言した。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「投機的な行動」と明確に言及した点や、当局による為替相場への発言がこの
ところなく、介入への思惑が後退していた現状を踏まえ「さらなる円安が進めば介入を実施する可能性が一段と高まった」と解説する。
147円60銭台だった円は、神田氏の発言が伝わると一時147円38銭近辺まで急速に下げ渋った。
だが円売り・ドル買いの勢いが鈍ったのは一時的だった。中値決済に向けたドル需要観測もあり、円は再び下値を探る動きとなった。
きょうの安値をつけたのはこのタイミングだ。市場では「実際の介入はまだ距離感がある」(マネースクエアの八代和也シニアアナリス
ト)との声が多い。
円は8月中旬以降、144円~146円程度の比較的狭い範囲での値動きが続いた。外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長
は、足元の円安進行は「ドル高の面が強い」と指摘する。米景気が欧州や中国と比べて相対的に底堅いとみて、主要通貨に対する
ドル買いが入りやすくなっている。
米経済指標や当局による円買い介入への警戒感からスピード調整しつつも、円は次の節目としてささやかれる150円へ下値を切り
下げそうな気配だ。
2023/09/06 日本経済新聞 朝刊
大手銀行がインドにIT(情報技術)や事務処理業務の集約を進める。三菱UFJ銀行とみずほフィナンシャルグループ(FG)は2020年に
設立した新会社の人員をそれぞれ年度内に大幅に増やす。海外業務の拡大や法規制に対応するコストの高まりを受け、英語やITにたけ
た人材の多いインドで業務を集中処理する構想だ。
三菱UFJ銀が要員を増やすのは、20年に設立した「MUFGグローバルサービス」。立ち上げ時には20人程度だった人員を23年3月末
時点で500人に拡大。年度内に1000人規模とし、3年後をめどに2000人規模に増やす方針だ。
欧米からインドへの集約を進めるのは主にリスク管理、送金などに関する事務処理や書類の確認作業だ。グループ内のシステム開発も
受け持つ。各拠点の業務を集約し、効率の良い業務手法に標準化できる効果もあるとみる。米欧に比べ、人件費を単純計算で半分から
3分の1程度に減らせるとされる。
みずほFGは20年に設立したインドの現地法人の従業員を足元で150人程度に増やした。23年度末までに300人規模へ増やす。主
に貿易に関する事務の処理を担っており、東南アジアなどの海外拠点の半分で書類の確認業務を置き換えたという。同社は貿易関連業
務の拡大を進めており、人件費の増加を抑える。
ほかの大手行では三井住友FGがマレーシアに、主にアジア・太平洋地域の事務業務を集約する拠点を置いている。330人程度いる
従業員を年度末に400人近くまで増強する方針だ。
大手行が海外での事務やIT業務を担う会社の増員を進めるのは、マネーロンダリング(資金洗浄)など国際金融の規制強化が背景に
ある。規制対応の手順が増え、コストが近年増えている。
インドはIT教育が盛んなことで知られ、英語に習熟した人材も多いのが強みだ。人件費の増加が続く米欧からインドに業務を振り分け、
効率的に業務をこなせる体制を整える。ある大手行によると、海外での事務の集約は年数十億円以上の効率化につながるという。
新型コロナウイルスの感染拡大も採用の拡大に背中を押した。米欧でテレワークの普及が進んでインドのような遠隔地でも業務を分担し
やすくなったほか、インドの現地でもテレワークの導入で採用がしやすくなったという。
国内の金融機関では野村ホールディングスが08年に米リーマン・ブラザーズのインドIT部門の買収を決めて進出し、人員数が約3000
人から4000人に増えた。インドで育成した人材を各国に転籍させるなどの効果もあるという。スマートフォン決済のPayPayも22年秋に
インド拠点を新設した。
インドなどに置かれるITなどの業務の集中処理拠点は「グローバル・ケイパビリティー・センター」と呼ばれ、米ゴールドマン・サックスや
米JPモルガン・チェースなど米欧の銀行が先行している。進出企業のなかでは人員数が数万人規模におよぶ場合も珍しくない。
国内金融機関のIT業務の外部委託に詳しい国士舘大の税所哲郎教授は「効率を高めるためには世界的な業務の統一や専門人材の
育成が必要になる」と指摘している。
2023/09/07 日本経済新聞 朝刊
三井住友銀行は、温暖化ガス削減効果を日本政府が認証する「J―クレジット」の売買・創出支援を始めた。脱炭素支援のバイウィル
(東京・中央)と業務提携した。銀行の取引先のJ―クレジット購入などを支援する。銀行には脱炭素に関する相談が増えている。支援
策を拡充し営業強化につなげる。
J―クレジットは温暖化ガス削減に関する取り組みを政府が認証し、売買可能にしたものだ。J―クレジットを購入した企業は、実質的
に温暖化ガスを削減しているとみなすことができる。
ただJ―クレジットの認証を受けて削減量を販売するための審査には時間がかかるほか、書類の提出などの手続きも多い。バイウィル
は認証手続きの代行を手掛けており、顧客のJ―クレジット創出を支援する。
J―クレジットは購入方法がわからない顧客も多いという。J―クレジットを仕入れ販売するバイウィルを顧客に紹介することで購入や
売却をしやすい環境を整える。
2023/09/07 14:57 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(8316)が8日に発行条件を決める2本立ての永久劣後債(AT1債)について、総額が2110億円
になることが7日、わかった。5年4カ月以降の任意償還条項が付く1本が1145億円、10年4カ月以降の任意償還条項が付く1本が
965億円の予定。主幹事はSMBC日興証券が務める。
2023/09/09 日本経済新聞 朝刊
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は8日、運用会社の評価などを手がける日興グローバルラップの全株式を三井住友DSアセット
マネジメントから持ち株会社に移すと発表した。資産運用会社から独立させることで評価の中立性を高める。金融庁が運用会社に企業
統治の強化を求めていた。9月29日に実施の予定だ。
2023/09/09 日本経済新聞 朝刊
日本株が底堅い。米金利上昇や中国景気悪化などの逆風下でも米欧株に比べ下げ幅が限られる。背景には国内投資家の買い意欲の
強さがある。7月までの株高に乗り遅れた国内勢が下値で積極的に買いを入れている。日経平均株価は日中の取引時間での上げ幅が
足元で夜間を上回った。
8日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日比384円安の3万2606円で取引を終えた。米中関係悪化への警戒から電子部
品や半導体関連株を中心に下げた。6日までの8連騰で相場に短期的な過熱感があり、利益確定売りが出やすかった面もある。
日経平均は7月3日にバブル崩壊後の高値を更新したのを最後に上値が重い。それでも7月末からの下落率は足元で1・7%と、ダウ
工業株30種平均(3・0%)や欧州のストックス600(3・8%)などに比べ小幅にとどまる。底割れを防いでいるのが国内勢の逆張り買いだ。
「(指数の2倍の値動きになる)レバレッジ型上場投資信託(ETF)を中心に買い越している」(ネット証券)といい、個人投資家の押し目
買い意欲は活発だ。
代表的なレバレッジ型ETFの「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(日経レバ)」。6月後半に770万
口ほどだった発行済み口数(株数に相当)は、旺盛な買い意欲を背景に8月後半には1500万口超と、2カ月で倍増した。下落局面では
「強気型ETF」への買いが下値を支える。
買い意欲が強いのは個人投資家だけではない。地銀など国内の金融機関は、世界的な金利上昇で保有する債券に損を抱え、含み益
の乗った国内株と一緒に売って損を埋める「合わせ切り」を進めてきたとみられる。
ある国内運用会社のファンドマネジャーは「顧客の地銀と話すと、株の持ち高が少ないため押し目を待っている『買いたい弱気』が多い」
と話す。国内の年金マネーも「7月までの株高に乗り切れておらず、8月に下げたことで月末にかけて買いを入れた」(明治安田アセットマ
ネジメントの永田芳樹シニア・ポートフォリオ・マネジャー)という。
国内勢の買い姿勢は株価指数の値動きからも見て取れる。日経平均は2022年末から足元まで約6500円上昇した。これを日中時間
(終値―始値)と夜間(翌営業日の始値―当日終値)に分解すると、日中の上げ幅が約3600円と3000円弱の夜間を上回る。
海外投資家の買いが日本株相場を押し上げた4~7月は夜間の上げが日中を上回る状況が続いた。日中の上げ幅が拡大し始めた7月
半ばは、海外勢が夏休みに入り日本株買いが止まった時期と重なる。株高のけん引役が海外投資家から国内勢にバトンタッチした構図
が浮かぶ。
もっとも、押し目買いだけでは上値を追う力はない。日本株が高値更新軌道に戻るには、国内投資家が下値を支えているうちに再び海外
勢が合流する必要がある。
ゴールドマン・サックス証券の石橋隆行ヴァイス・プレジデントは「海外投資家は国内企業の4~9月期決算発表に向けて日本株を買い始
め、業績の良さを確認しつつ年末にかけて持ち高を増やす」と予想する。
SBI岡三アセットマネジメントの宮地徹郎運用本部長は海外勢の買いが戻ることを見越し、トヨタ自動車や日立製作所など海外投資家
好みの大型優良株の持ち高を増やし始めた。足踏みが続く日本株だが、年末高への期待は徐々に高まっている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0ec4a04fd9378cb0184b3e17a95663903ac474cc
(ブルームバーグ): 三井住友フィナンシャルグループで市場事業部門長を務める小池正道執行役専務は、日本銀行が目標とする安定的な
物価上昇に至った後の長期金利の動向について、10年国債利回りで2%程度まで上昇する可能性があるとの見通しを示した。
小池氏はインタビューで、2%の物価上昇目標が継続的に達成されれば、政策金利は「0.25%や0.5%ではなく、1%以上も当然あり得る」と
指摘。その場合、長期金利は「1.5%-2%になる可能性は十分ある」と話した。ブルームバーグのデータによると10年国債利回りが2%台に
乗せれば、2006年5月以来となる。
日銀は7月28日の金融政策決定会合で、長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)の運用を柔軟化。その後、10年国債利回り
は上昇傾向にある。ただ、日銀の植田和男総裁は、物価の伸びが日銀の目標より依然鈍いことが現行の金融緩和政策を継続している理由
だとの見解を明らかにしている。
小池氏は、政府が「賃金と物価上昇の好循環を目指して財政・金融政策を行っている中、拙速な利上げは必要ない」とも指摘。マイナス金利
政策の解除は「確実に物価上昇率が2%を超えてからの方がいい」と述べ、24年の春闘で一定の賃金上昇が確認された後が好ましいとして
いる。
一方、高インフレ状態にある米国の金融政策については「利下げ幅が浅かったり、すぐにまた利上げをしたりすることもあり、本当に注意が必
要だ」と述べた。価格が下落(利回りは上昇)している米国10年国債の買い増しにも慎重な検討が必要だとの認識を示した。
デジタル人材に特別報酬検討も
小池氏は、国内外で不透明な金利環境が続く中、三井住友銀行の市場部門でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める方針も明らか
にした。専門人材を現在の30人程度から将来的に100人規模へ大幅に増やしたい考え。デジタル技術を駆使してマーケット業務の効率化や
収益機会の拡大を狙う。
増員はAI(人工知能)を活用した資産運用モデルの構築や、運用関連業務の効率化を進めることのできる人材を想定している。小池氏は
「こうした人材は採用難だ。新卒か中途採用かは意識していない」と述べた。増員の時期など具体的な計画については明言しなかった。
三井住友銀の市場部門は国内外で現在約500人体制で、増員が実現すれば2割が高度なプロ人材となる。小池氏は、積極的な採用戦略
を展開するために特別な報酬制度を検討する可能性も示唆した。三井住友FGはリテール部門でも業務効率化や収益力強化のためデジタ
ル化を加速している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-06/S0G1ULT0G1KW01#:~:text=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9-,%E4%B8%89%E4%BA%95%E4%BD%8F%E5%8F%8B%EF%BC%A6%EF%BC%A7%E5%B0%82%E5%8B%99%E3%80%81%E9%95%B7%E6%9C%9F%E9%87%91%E5%88%A9%EF%BC%92%EF%BC%85%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8A,%E4%B8%8A%E6%98%87%E7%B6%99%E7%B6%9A%E3%82%92%E7%A2%BA%E8%AA%8D%E5%BE%8C&text=%E4%B8%89%E4%BA%95%E4%BD%8F%E5%8F%8B%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%81%A7,%E3%81%AE%E8%A6%8B%E9%80%9A%E3%81%97%E3%82%92%E7%A4%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
2023/09/10 05:00 日経速報ニュース
日銀の金融政策を決める政策委員の間で、物価2%目標や政策修正時期を巡る見解に温度差が生まれている。日銀は7月に長短金利
操作(イールドカーブ・コントロール)を一部修正したが、市場には早期の追加修正観測もくすぶる。物価高が長期化する中で修正に前向き
な「タカ派」の意見の存在感も増しつつある。
日銀が7月末の金融政策決定会合で政策修正に動いてから、9人の政策委員のうち、植田和男総裁と内田真一副総裁、さらに4人の審
議委員の計6人が公の場で発言した。特に注目を集めたのは銀行出身でタカ派と目される田村直樹委員の発言だった。
「実現がはっきりと視界にとらえられる状況になったと考えている」。8月30日に北海道釧路市で開いた金融経済懇談会で、物価目標の
達成が近いとの見解を示した。懇談会後の記者会見では「マイナス金利の解除も選択肢」と修正の具体策に言及し、目標達成を判断する
時期の目安も「来年1?3月」と踏み込んだ。
高田創委員も9月6日に山口県下関市で開いた懇談会で、物価目標に関して「達成に向けた『芽』がようやくみえてきた」と期待感を示した。
会見では達成の判断時期は「特定の何月から何月という時期になるという議論ではない」とかわしたが、「この半年間はよく見ないといけ
ない時期ではないか」とした。
慎重姿勢が目立ったのが7月の政策修正で唯一反対票を投じた中村豊明委員だ。8月31日に岐阜市で開いた懇談会で物価目標は「達
成に確信を持てる状況には至っていない」と述べた。「金融引き締めへの転換にはまだ時間が必要」と早期修正に距離を置いた。
中川順子委員は9月7日の高知市で開いた懇談会後の会見で物価目標達成は「見通せる状態になっていない」とし、マイナス金利の解除
時期などを巡る質問にも「はっきりお答えできる状況にはない」と明言を避けた。
政策修正後に発言が伝わってこないのは、氷見野良三副総裁のほか、安達誠司委員と野口旭委員だ。氷見野氏を除く2人の委員は積極
的な金融緩和や財政出動を求めるリフレ派とされる。そのスタンスは中村、中川氏らに近いとみられる。
正副総裁はどう考えているのか。生え抜きトップの内田真一副総裁は8月2日の千葉市の金融経済懇談会で2%目標が「持続的・安定的な
実現を見通せる状況には至っていない」とし、マイナス金利の修正は「まだ大きな距離がある」と述べた。今のところ慎重姿勢を強調している
ようにみえる。
淡はある。その一端がうかがえるのが7月に日銀が公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)だ。
日銀は2024年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率の見通しを1.9%としたが、委員の個別見通し(匿名)
を見ると、最大は2.2%との回答で2人、2.1%も2人いた。うち3人が「上振れリスクが大きい」と考えている。
現時点で追加修正に慎重でも、判断の土台となる物価見通しは来年度も2%を超えて推移するとみる委員がいる。いわば、隠れたタカ派。
あるいは、タカに変わる可能性が高いハトといえるかもしれない。
金融市場ではタカ派の意見への注目が強まっている。6月の金融政策決定会合の「主な意見」では「(YCCは)早い段階で、その扱いの見
直しを検討すべきだ」との主張があったことが紹介された。翌月の会合で日銀は実際に一部修正に動いており、タカ派の発言が政策決定の
先行指標になっていると受け取る参加者も増えつつある。
タカ派の田村委員が2月の前橋市で開いた金融経済懇談会で「(金融政策などの)点検・検証を行い、効果と副作用のバランスを改めて判
断することが必要」と述べ、日銀は4月会合で長期レビューの実施を決めた経緯もあった。
2月時点では日銀内に「(田村委員は)少し踏み込みすぎではないか」と見る向きがあったが、足元では「政策の議論が活発化する。積極
的な発信は歓迎すべきだ」(別の関係者)との受け止めが聞かれる。ややうがってみれば、日銀も田村氏の発言を金融市場の反応を探るた
めの一助としている節がある。
日銀は7月に長期金利の上限を1%に事実上拡大した。物価高や円安傾向の長期化などを理由に、市場には日銀が年内にも追加修正に
動くとの見方が出ている。QUICKの外国為替市場の月次調査(8月)の結果によると、次の政策修正時期は「23年12月」とした予想が29%
で、24年4月以降(31%)とほぼ並んだ。
タカ派寄りの発信がさらに増えれば、早期の追加修正も現実味を帯びることになる。
三菱UFJなど銀行株が高い、植田発言で年末までに政策変更の条件揃うとの思惑高まる
三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>が3日ぶり急反発、1250円台まで上値を伸ばし前週6日の高値を上抜き新値街道に復帰
した。時価は2007年7月以来約16年ぶりの高値水準にある。国内でも物価上昇が顕著となるなか、日銀の超金融緩和策の変更に
対する思惑が拭えない状況となってきた。
そうしたなか、植田和男日銀総裁のインタビュー記事を前週9日に読売新聞が報じ、イールドカーブ・コントロール(YCC)撤廃やマイナ
ス金利の解除などに対する思惑が広がり、同社株を筆頭とする銀行株全般に買いを誘導している。市場では「超緩和策路線の変更が
近いことはマーケットでも既に織り込んでいるが、植田総裁自らの発言として、物価上昇の十分なデータ、つまり緩和策終了の根拠が
年末までに揃う可能性があるとの認識を示したことが、新たなインパクトを生んでいるようだ」(中堅証券ストラテジスト)としている。
[東京 11日 ロイター] - <11:45> 前場の日経平均は続落、日銀政策修正に思惑 金利上昇や円高を警戒
前場の東京株式市場で日経平均は、前営業日比62円80銭安の3万2544円04銭と続落した。前週末の米株高を好感し小反発で寄り
付いたが、日銀の植田和男総裁の新聞インタビューでの発言を受けて、日銀の政策修正を巡る思惑から金利上昇や円高が警戒された。
日経平均は83円高と反発して寄り付いた。米株高が好感されたほか、前週後半の2日間でに600円超下落しており、自律反発を期待し
た買い戻しも入った。その後は短時間でマイナスに沈み、軟調な推移が続いた。
植田総裁の発言を受けて、現物債市場で新発10年国債利回り(長期金利)が0.700%と、2014年1月以来の高水準に上昇。不動産
株の下落が目立ったほか、ドル/円が一時146円後半へと円高方向に振れ、輸送用機器など輸出関連株の一角がマイナスとなった。
一方、銀行や保険などの金融株はしっかり。原油高となる中、鉱業や石油・石炭製品も高かった。TOPIXグロース指数の0.5%安に対
し、同バリュー指数は0.6%高で、TOPIXは小幅ながらプラスだった。
日経平均は、一時196円安に下げ幅を拡大した後は下げ渋ったが、上値を買う様子もなく、市場では「(日銀の政策修正思惑の株価影
響は)ポジティブかネガティブか判断しにくいとの事情が現れているのだろう。海外投資家の受け止めを見極める必要もありそうだ」(りそ
なアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャー)との声が聞かれた。
読売新聞が9日付で掲載したインタビュー(6日実施)では、植田日銀総裁は「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断す
れば(解除を)やる」としたほか、来春の賃上げ動向を含め「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」などとした。
TOPIXは0.1%高の2361.45ポイントで午前の取引を終了した。東証プライム市場の売買代金は1兆5967億8400万円だった。東
証33業種では、値上がりは銀行や保険、電気・ガスなど14業種で、値下がりは不動産やサービス、機械など19業種だった。
2023/09/12 日本経済新聞 朝刊
長期金利の先高観が強まっている。指標となる新発10年物国債の利回りが11日、2014年1月以来の水準となる0.705%を付けた。
日銀の植田和男総裁がマイナス金利政策解除の可能性に言及したためだ。円安へのけん制を強めたとの見方もある。
植田氏は9日付の読売新聞のインタビューで、2%の物価目標の達成が可能と判断すればマイナス金利を解除する選択肢もあるとの考
えを明らかにした。長期金利についても基本的に上昇(債券価格は下落)を容認する姿勢を示した。
為替政策は財務省が所管し、日銀は直接の操作対象にしていない。しかし植田氏は7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール
YCC)を修正した際に、為替相場の変動を抑える目的についても言及した。
このため市場では植田氏のマイナス金利政策の解除を巡る発言について「表向きは言えないだろうが、円安を止める目的があった」(J
Pモルガン証券の山脇貴史債券調査部長)との解釈が支配的だ。
実際、通貨当局は円安に対する危機感を強めている。鈴木俊一財務相や神田真人財務官は前の週に円安について「あらゆる選択肢を
排除せず適切な対応を取りたい」と述べ、口先介入のレベルを引き上げていた。
そこに植田氏のマイナス金利の解除を巡る発言が伝わった。一連の流れを受けて、市場では政府・日銀が歩調をあわせて円安を強くけ
ん制したとの見立てが浮上した。
円相場は11日、一時1ドル=145円台後半まで上昇した。前の週には147円台後半と10カ月ぶりの安値を付けており、その水準から
は2円ほど円高・ドル安方向に振れた。植田氏の発言で、円安にはいったん歯止めがかかった形だ。
日銀は11日、幅広い担保を裏付けとして資金を供給する「共通担保資金供給オペ(公開市場操作)」を14日に実施すると発表した。金
利を抑制する効果が最も強い直接的な国債買い入れを避けたのは、金利の抑制よりも円安の回避を重視したとの見方もある。
米連邦準備理事会(FRB)は当面引き締め的な金融政策を続けるとみられている。日銀が仮にマイナス金利を解除しても利上げ幅は小
幅にとどまり、今後も円安が進む可能性は残る。
2023/09/12 12:09 日経速報ニュース
12日午前の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前引けは前日比197円高の3万2665円だった。前日の米株式相場の上昇を受け
幅広い銘柄に買いが先行した。国内長期金利の上昇が重荷となり、伸び悩む場面もあった。市場ではリーマン・ショック以来の高値圏に
ある銀行株への買いが、相場のけん引役が外需株から内需株に変わる兆しだとの声が出ている。
前日の東京市場では市場の関心が日銀の金融政策に集中した。9日付の読売新聞のインタビューで日銀の植田和男総裁がマイナス
金利政策の解除も選択肢の1つになり得ると示唆したためだ。銀行株の買いを誘い、東証業種別株価指数の銀行業は2008年8月以来
およそ15年ぶりの高値で取引を終えた。12日は利益確定売りに押されているものの、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)などメガ
バンクは上昇して年初来高値を更新する場面もあった。
銀行業指数は11日までに年初来で36.25%上昇と、上昇率は日経平均(24.42%)や東証株価指数(TOPIX、24.78%)を大きく上回っ
た。市場では「リーマン・ショック以降、銀行株への投資を敬遠してきたアクティブ投資家もベンチマークについていくために買いを入れ始
めているようだ」(外資系証券)との声が聞かれる。
日銀がマイナス金利解除を議論し始めているなら、賃金上昇を伴う物価上昇の確度が高まっているためとも受け止められる。東海東京
調査センターの中村貴司シニアストラテジストは「デフレ脱却を前提とした金利上昇が現実のものとして視野に入り始め、銀行株を押し上
げた」と指摘する。
東証による上場企業の価値向上に向けた取り組みも低PBR(株価純資産倍率)銘柄の代表である銀行株の追い風だ。植田総裁インタ
ビューと同じ9日、山道裕己・日本取引所グループ最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞のインタビューで「PBR1倍でも不十分」と
企業に対策を呼びかけるメッセージを発した。
メガバンクは2024年3月期(今期)にそろって年間配当を前期から積み増す。ピクテ・ジャパンの糸島孝俊ストラテジストは「東証改革
は海外の中長期の投資家からの関心が高い。いち早く対策を打った銀行が買われたことは、相場のけん引役が外需から内需のバリュ
ー(割安)株にシフトしていく兆しではないか」とみる。
さらに糸島氏は12日、米投資会社のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)がSBIホールディングス(8473)と資産運用の新会社
設立を発表したことに注目する。日本の個人金融資産に目を付けた動きは「さすが『目利き』と言わざるを得ない」と指摘。そのうえで
「わざわざ日本に会社を設立する狙いには、日本の内需株への投資意欲もあるのではないかと想像させる」と話す。
目利き投資家が注目する日本。今後、本格的に外需株から内需株へ相場の主役交代となるには、上場企業の一段の資本効率向上
への取り組みが求められる。
2023/09/12 12:14 日経速報ニュース
米エバコアISIは11日付のリポートで、日銀がマイナス金利政策を解除する時期は来年1月になると予想した。植田和男総裁が9日付の
読売新聞とのインタビューで、年末までにマイナス金利解除を判断するデータがそろう可能性に言及したのを受け、これまでの2024年4~
6月期よりも前倒しした。
日銀は7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)運用の柔軟化を決定。植田総裁は「政策の正常化へ歩み出すという
動きではない」と説明していたが、9日付のインタビューではマイナス金利の解除について「物価上昇に確信が持てれば選択肢」になる
として「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と語っていた。
エバコアのクリシュナ・グーハ氏はリポートで、植田氏の発言について「(YCC柔軟化以降も進んだ)円安への対応だろう」と指摘。もっ
とも「インフレの見通しやそれに対する日銀の評価は早期にマイナス金利政策を終わらせる信頼性を高める方向にシフトしている」とし、
日銀は24年4~6月期に政策金利をプラス圏に引き上げると見込む。
2023/09/12 11:55 日経速報ニュース
日銀のマイナス金利政策解除は最短でいつか――。市場の大きな関心事項になってきた。
報じられた植田和男総裁の発言を踏まえ、12月との見方も出ているようだが、日銀内には、いくら何でも早すぎるのではという空気もある。
円安防止効果を持つ金融政策修正を前向きに受け止める政府側にも、12月は政治的に難しいとの見方があり、最短で来年1月決定という
のがより現実的なシナリオの印象だ。また解除の実施自体は、実務的な理由から決定より遅れて2月になる展開があり得る。
マイナス金利解除時期をめぐる思惑が一気に強まったきっかけは、9日付の読売新聞に植田総裁のインタビュー記事が載ったこと。
「(総裁は)賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、大規模な金融緩和策の柱である『マイナス金利政策』の解
除を含め『いろいろなオプション(選択肢)がある』と語った」と報じられた。日銀が重視する来年の春季労使交渉での賃上げ動向などについ
て「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と語ったとされたことも関心を集めた。「年末」の12月の金融政策決定
会合で解除が決まるシナリオも排除できないとの受け止め方が市場で出た。
12月決定は政治的に難しいとの見方
ただ、12月会合の開催時期(18?19日)は、税制改正の議論が盛り上がっているかもしれない政治的に微妙な時期で、金融政策は動き
にくいとの受け止め方も政府側にある。どういうことか。
重要なのは「防衛財源確保の件で岸田文雄首相が自民党最大派閥の安倍派の不満を招く展開も想定される」(米金融情報コンサルタン
ト会社、オブザーバトリーグループ)点だ。財源をめぐる増税などに関する議論の内容次第で、積極財政派が多いとされる安倍派の反発を
生むかもしれない。その安倍派には、アベノミクス継続を重視する立場から日銀の利上げに不満を持つ空気もある。12月の時点では、日銀
は同派を刺激する動きを避けた方が得策なのは事実だ。
こうした事情から「日銀が動くのは2024年1月会合(22?23日開催)だろう」(オブザーバトリーグループ)という。同会合では経済・物価
見通し(23?25年度)を更新するので、政策変更の根拠を説明しやすいのもメリットだ。
ちなみに、日銀当座預金の一部金利をマイナス0.1%にする形で運用してきたマイナス金利政策は、解除を決めてもすぐに実施できる
とは限らない。実務的な事情も考慮する必要があるからだ。
即日実施にこだわらない方が無難
同政策を導入したときも、決定は16年1月29日だったが、開始は同年2月16日になった。毎月16日?翌日15日を積み期間とする日銀
の準備預金の原則や金融機関のシステム対応などにかかる時間に配慮した。解除時にも同様の時間差が生まれる可能性がある。マイ
ナス金利政策の実務に詳しい日銀関係者は「制度の複雑さを考えれば、解除も即日実施にこだわらず、導入時と同様に次の積み期間
(原則毎月16日開始)まで待った方が無難」と見る。
もちろん来年1月決定というのは、あくまで最短のシナリオ。実際にはそれより遅くなることもあり得る。金融政策の企画・立案の経験を
持つある日銀OBは「来年1月決定の可能性が少し高まった」と見るものの、「現時点では来年4月決定が中心シナリオ」と語る。春季労
使交渉の結果を十分に見極めた方がいいからだ。同会合では26年度まで含めたより長期の経済・物価予測を出す予定であり、2%物価
目標の持続的・安定的な実現の絵を示しやすい。
いずれにせよ、物価・賃金情勢次第ではマイナス金利政策の解除が遅かれ早かれ実現しそうな情勢だ。負担を強いられる金融機関の
不満を背景に、マイナス金利の適用残高を減らすなどの「骨抜き策」で日銀が対応する局面もあった同政策だが、焦点は全面的な解除の
時期になってきた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-11/S0LMIBT0G1KW01?srnd=cojp-v2
マイナス金利政策は早ければ年内にも解除か-エバーリッチの宇田氏
邦銀株はPBRで割安、株価に上昇余地-アトム・キャピタル
日本銀行が早期に政策修正するとの観測が浮上する中、上位2%の運用成績を誇る日本株ファンドは新しい金融環境に備え、銀行株の
持ち分を増やす用意があるという。
エバーリッチ・アセット・マネジメントの宇田豊社長は、日銀は年内にもイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)やマイナス金
利政策を解除するとみており、銀行株は今後1年半ほどで2倍まで上昇するとブルームバーグとのインタビューで語った。
日銀の植田和男総裁は、賃金や物価の好循環を見極める情報などが年内にもそろう可能性があると、9日付の読売新聞とのインタビュ
ーで述べた。週明け11日の日本市場では、年内のマイナス金利解除の可能性が意識され、長期金利が9年8カ月ぶりの高水準まで上昇
した。金利上昇は銀行など金融機関の業績押し上げ期待につながる。
植田総裁発言受け市場は早期正常化を意識-予想前倒し相次ぐ
宇田氏が運用するファンドで銀行株の保有ウエートは全体の20%に達しているが、「まだ増やす余地はある」と語る。日本経済が力強
く成長する中、日銀の政策先行きを考える上で重要な賃上げも持続的になるとの見方を示した。
今後3年で物価上昇率を2%以下に抑えることすら難しい状況がくるのではないかと宇田氏は指摘。「全く違うマーケットに入っている
ことを認識しなければいけない」と述べた。
同氏の運用するニッポン・グロース・ファンドは約160億円を扱っており、ブルームバーグのデータによると同業ファンドの98%以上を上
回る成績だ。ファンドは年初来で37%以上のリターンを生み出しており、同期間のTOPIXの上昇率25%を大きく上回る。
邦銀株のPBRは米銀株を下回る水準
植田総裁の政策修正を示唆する発言について、アトム・キャピタル・マネジメントの土屋敦子社長は、修正時期は予想していた来年より
も早いと話す。土屋氏は、アトムが算出する適正価格から考えると30%の値上がりは期待できると述べた。ファンドは株価純資産倍率(PB
R)といった指標などを基に株価を評価する。
割安なPBRに加え、政策修正が株価押し上げに寄与するとみている。土屋氏は、2022年12月に日銀が10年債利回りの許容変動幅
を拡大した際に、銀行株を買ったと話す。設立以来の助言や運用成績は年率15%だという。先行きが不透明な中国経済などを背景とした
海外投資家の日本株買いは相場を押し上げるとも述べた。
JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは、同社モデルに基づくと「投資家の銀行株へのオーバーウエート幅は過去最大だ」
と話す。同モデルは08年から計算を始めている。金利上昇への備えとして銀行株を保有する動きがみられるとし、ほぼ全ての投資家の銀
行株持ち分ウエートが多くなると「買い余地は少なくなってくる」と指摘した。
2023/09/13 05:00 日経速報ニュース
銀行が変わろうとしている。三井住友フィナンシャルグループ(FG)が3月に始めたスマホ上の総合金融サービス「Olive(オリーブ)」は会員
がわずか半年で100万人を超えた。三井住友銀行は2025年度までに全店舗の6割を軽量の新型店にする計画で、取引の起点はスマホ、
店舗はその補助という役割分担を明確にする。変化の裏には、デジタル世代の銀行離れへの強い危機感がある。
会員の半数が20代以下
オリーブは銀行とクレジットカードの機能を一体化し、証券や保険などの他社サービスも含めて1つのアカウントで管理する。スマホで多くの
取引や手続きが完結する利便性に加え、コンビニなどでの高いポイントの還元率や振込手数料の優遇で若者を引き寄せている。100万人の
オリーブ会員のうち、半数が20代以下だ。
「ネット専業の金融サービスが存在感を強め、既存の銀行や証券会社では店舗のリストラが大きな話題となっている」。三井住友FGの太田
純社長がオリーブの発表時に漏らしたのは、現状への強い危機感だった。
ネット銀行最大手、楽天銀行の口座数は5年で2倍超のペースで増えており、6月に1400万を突破した。同行は2027年3月期に2500
万口座と、三井住友銀の個人顧客数(22年時点で2700万)に迫る水準を目指す。手をこまぬいていては将来の主要顧客である若者を奪
われ、じり貧になりかねない。
デジタル世代の獲得競争に打ち勝つには「マス(大衆)向けのリテールビジネスは徹底的にデジタル化を進める」(太田氏)ことが不可欠だ。
オリーブで口座を開くと、支店名は「オリーブASH支店」など現実の地名にひもづかない名前となる。新規口座開設は原則オリーブ経由にす
る方針で、これは「取引店という概念をなくす」(三井住友カードの大西幸彦社長)ことを意味する。
店舗に縛られない銀行サービスは新たな顧客獲得につながっている。店舗が手薄だった地方で口座開設が増え、最寄り支店がない顧客
との取引額は4?7月に8割増えた。3?6月の新規口座開設は20代が前年比5割増、30?40代はほぼ2倍となった。
楽天銀行は22年度に口座数を140万以上増やした。一方、三井住友銀のネットバンキングサービス契約者の増加数は同期間に86万人
だ。オリーブの集客効果によって、楽天銀行などを上回る新規顧客の獲得を目指す。
個人客との取引をスマホ起点に転換することで、店舗のあり方も変わる。三井住友銀は、現在400店規模の店舗網を維持しつつ、6割にあ
たる250店超を25年度までに新型店の「ストア」に移行する。新型店の最大の特徴は、家族連れなどを意識した立地と店構えのコンパクトさ
にある。
銀行の店舗はこれまで、駅前一等地の路面店という印象が強かった。ただ、振り込みなど日常的な手続きはスマホで済ませることができる
ならば、通勤時の利用などに配慮する必要は薄れる。商業施設内の小型店に転換した方が賃料などを減らせるだけでなく、家族連れなど資
産運用に関心のある層との接点をつくれる。
千葉県印西市のイオンモール。靴店や服飾店が並ぶ3階の一角に5月、ストアがオープンした。9月の平日に訪れると、開店直後の午前
10時台から複数のブースで行員が顧客の相談に応じていた。待合用の椅子で順番待ちをしている人も目立つ。
来店客を立たせて応対する従来型のハイカウンターはない。3つのブースのほか、2つの個室で手続きや資産運用の相談に乗る。ストアの
名の通り、明るい照明や壁の色で、周囲の服飾店などともなじんでみえる。
三井住友銀は店舗を小型化することで、賃料や人件費などリテールに関わる費用を25年度までに年280億円削減する。8月までに設け
たストア7店では1店舗平均1億円超の経費削減効果があったという。
銀行に店舗は必要か
「銀行店舗は必要がなければ訪れない場所だったが、これからは人が集まるようにしたい」(幹部)。ストアの狙いはスマホでは得られない
リアルの顧客接点を得て、資産運用や住宅ローンなどの取引につなげることだ。三井住友銀によると、現在のストアの来店客のうち8割が「
ふらっと」訪れた客だという。
オリーブの人気が高まっても、デジタルの世界だけで勝負するなら実店舗を持たないネット銀行の方がコスト競争力が高く、金利やポイント
優遇の消耗戦に引きずり込まれかねない。メガバンクが優位を保つには、いざというときは人に相談できるという安心感をコストを抑えながら
提供していくことがカギになる。
スマホと軽量店によるハイブリッド戦略は功を奏するのか。新規顧客争奪でネット銀行との差が縮まらなければ、店舗やリテール部門自体
の不要論が一段と高まりかねない。三井住友の戦略の成否は、この先の銀行ビジネスのあり方を左右する。
2023/09/13 11:30 日経速報ニュース
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外国為替市場で円売り・ドル買いが復活しつつある。13日の東京市場では一時1ドル=147円台半ばまで下落した。日銀の植田和男総裁
の発言がマイナス金利の早期解除観測を促して円買い・ドル売りが強まったものの、一時的だった。読売新聞による植田総裁のインタビュー
が伝わる前の今月7日の水準まであっさり戻った円相場は「植田ショック」を短期間で吸収した。
日銀総裁が植田氏に交代した今年4月以降、日銀の動きや総裁発言で円相場が大きく揺れた「植田ショック」といえるケースは今回で3度
目だ。最初は4月末の植田氏就任後はじめての日銀の金融政策決定会合で、この時は投資家が政策修正に身構えていたのに反して大規
模緩和を維持し、円売り・ドル買いが急速に膨らんだ。だが、米国における景気減速懸念や早期利下げ観測が強まるとすぐに勢いを失った。
2度目は7月末の日銀会合における長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用柔軟化の決定だ。公表直後は円買い・ドル売りが
一時的に集まったが、時間の経過とともにむしろ「日銀は当面、緩和を続ける」との受け止めが強まり、短期間で円安・ドル高トレンドに戻った。
今回も含め、底流には日米金利差はしばらく開いたままという根強い見方がある。日銀サイドの動きだけでは円相場の流れは転換しづら
いようだ。
2023/09/14 日本経済新聞 朝刊
全国銀行協会は加藤勝彦会長(みずほ銀行頭取、58)の後任に三井住友銀行の福留朗裕頭取(60、写真)を充てる人事を固めた。
週内に開く理事会で内定する。任期は2024年4月から1年間。福留氏は初の就任となる。
全銀協の会長職は三菱UFJ銀行を含めた3メガバンクの輪番で務める慣行となっている。みずほ銀行で起きたシステム障害の影響
で21年にみずほが辞退して輪番制は崩れたが、現会長である加藤氏の就任で人事が正常化した。
2023/09/14 05:00 日経速報ニュース
大手銀行が構造改革の名の下に進めてきた店舗の統廃合が転機を迎えている。低金利と手数料率の低下でマス(大衆)向けのリテール
ビジネスは経営の重荷とみられてきたが、金利復活の足音が高まるなか、その価値が見直されようとしている。店舗とネットでどう顧客を引
き付けるか、大胆な戦略の転換が必要だ。
店舗統廃合には限界
店舗網の維持か、さらなる効率化か――。三菱UFJフィナンシャル・グループでは24年度に始まる新しい中期経営計画の議論が始まった
今年春過ぎ、幹部間で議論が交わされた。効率化の観点から店舗を減らす余地は残されているという意見も出たが、将来の顧客基盤を育
てるためにも削減の流れを変える方向で議論はまとまった。
三菱UFJ銀行では17年度に515だった店舗数を、現在の中期経営計画が終わる23年度末時点で約320まで減らす計画だ。19?21年度
の3年間だけで物件費と人件費がそれぞれ10%前後減るなど成果も出たが、「店舗数の減少で現場は苦労している」(幹部)と限界も意識
されていた。
デジタル戦略を担当する山本忠司・執行役常務は「駅ナカやショッピングモールで軽量型の店舗を柔軟に増やしたい」と語る。JR東日本
とは今月29日までの期間限定で東京駅や新宿駅、横浜駅、大宮駅などの構内にあるブースで買い物客や通勤客がオンラインで資産運
用を相談できる試みを始めた。店舗縮小の流れから一転、顧客との新たな接点づくりを模索する。
約500の拠点数を23年3月末までの6年間で126減らしたみずほ銀行は、なお全47都道府県に店舗を構える。遠隔地に拠点を置くコスト
は重く、23年度に始まった新中計の策定では地方からの撤退が議論のテーブルに上がった。それでも統廃合した場合の利用客への影響
も考慮し、撤退論は見送られた。
金利復活で「全く違う世界」へ
大手行の店舗戦略が変わり始めた要因のひとつに、長引く超低金利の出口が近づいてきたことがある。銀行の店舗は入出金や送金など
事務処理の場であると同時に、預金を獲得する拠点だ。超低金利による運用難や資金需要の低迷が続くなか、ときに厄介者でもあった預
金を集めるための店舗を減らすのは必然だった。
金利が上がり、預貸を中心とする伝統的なビジネスが息を吹き返せば、預金量が多い銀行ほど恩恵を受けやすくなる。金利が付く世界に
なれば、リテール戦略の前提が変わって「全く違う世界」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)に銀行は足を踏み入れることになる。東京スター
銀行は9月1日から、給与や年金の受け取りを条件に普通預金の金利を250倍の0.25%に上げた。
日本だけではない。総店舗数の削減を進めてきた米銀最大手のJPモルガン・チェースはこれから数年、年間約130店のペースで新規出
店を進めていく。統廃合は続けるが、店舗数は近く小幅な増加に転じるという。今年春の米欧の金融不安で浮かび上がったのは、粘着性
の強い小口預金をつなぎ留めることの大切さ。デジタル化を急ぐ同行だが、顧客の利便性を高める店舗の価値も見直されている。
もちろん店舗数の縮小に歯止めがかかったとしても、店舗のあり方が昔に戻るわけではない。資産運用や住宅ローンなど相談の業務に
軸足を置き、入出金や振り込みなどをネットに誘導していくという流れは変わりようがない。三井住友フィナンシャルグループが展開するOlive
(オリーブ)のようなネットサービスが、リテール戦略のもうひとつのカギになる。
横並びでは戦えない
三菱UFJ銀行は足踏みを余儀なくされている。クレジットカードだけで3種類のシステムが併存する非効率な運用を改め、システムを一本
化するプロジェクトを目下進めるが「統合が終わる25年度まで身動きを取れない」(幹部)。オリーブで三井住友カードが貢献したように、三
菱UFJではカード会社を含めた戦略を当面描きづらい。2年の空白は大きい。
改めて問われているのは、顧客が求めるサービスに真摯に向き合う姿勢だ。経営が厳しいから店舗を減らし、金利が上がってきたから再
び預金を集めようという銀行の都合によるリテール戦略ではデジタル世代を引き付けることは難しい。
世代が切り替わるこれからの30年を見据え、どんなサービスと価値を提供していけるのか。リテール戦略に求められるのは、それぞれの
銀行のビジョンと洞察力だ。金融サービスを提供できるのは、もはや銀行だけではない。横並びや場当たり的な対応で銀行の未来は開け
ない。
2023/09/14 12:00 日経速報ニュース
田部井美彦・内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト 14日午後の東京株式市場で日経平均株価は3万3000円前後の水準
で堅調に推移しそうだ。為替の円安・ドル高傾向を背景に、東証株価指数(TOPIX)は年初来高値を上回る水準にあり、投資家心理が
上向いている。
前日の米株式市場ではダウ工業株30種平均が続落しており、最近は日米株の動きの乖離(かいり)が大きくなってきている印象だ。
国内長期金利が上昇傾向にあるなか、日本の金融機能の正常化が進んでいる点が世界の投資家に評価されていると考える。
投資尺度の面からは、東証株価指数(TOPIX)の予想PER(株価収益率)が16倍に近づき、日経平均の3万3000円台という水準の
割安感は乏しい。だが、金融正常化に加え、東京証券取引所の主導で資本効率の向上などの企業改革が進んでいる点などを踏まえ
れば、中長期的な株高の素地ができあがってきたとみている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-15/S0YVE0T0G1KW01?srnd=cojp-v2
日本銀行の植田和男総裁の発言を受け、市場でマイナス金利政策の解除など早期の政策正常化観測が強まる中、日銀内では発言内容
と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ている。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、総裁発言は従来と比べ踏み込んだ内容ではないと日銀内では受け止められている。現時点では7月の金融政策会合
会合における経済・物価情勢や先行きのリスクに関して認識を大きく変えるような材料は出ておらず、引き続き不確実性が高い中で上下双
方向のリスクを意識して金融政策を運営していく姿勢にも変化はないとしている。
植田総裁は9日付の読売新聞が報じたインタビューで、賃金と物価の好循環を見極めるのに十分な情報やデータが年末までにそろう可
能性もゼロではないとの認識を示した。賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、マイナス金利政策の解除を含め
ていろいろなオプションがあることにも言及した。
関係者は「ゼロではない」との発言について、一般論にすぎないと指摘した。物価の上振れリスクを引き続き警戒しつつも、賃金・物価に
はようやく好循環の兆しが見られ始めた段階であり、需要を抑制するマイナス金利の解除といった利上げのタイミングを見通せる状況には
ないという。
総裁発言を受けて早期の正常化が意識され、12日の債券市場では長期金利(10年国債利回り)が9年8カ月ぶりの水準となる0.72%
まで上昇した。先週末8日には1ドル=147円台後半までドル高・円安が進んだドル・円相場は、週明け11日に一時146円を割り込む場面
も見られたが、15日は147円台半ばで推移している。
エコノミストも利上げ時期の予想を前倒ししている。ブルームバーグが6-12日に実施した調査では、日銀がマイナス0.1%の短期政策
金利を引き上げる時期は、来年4月の会合までの予想が4月会合の28%を筆頭に39%となった。前回の7月会合直後の調査では、来年4
月会合までの解除は21%だった。
関係者によると、7月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示した見通しに比べて消費者物価はやや強めとの見方が日銀内にあ
り、10月に公表する新たなリポートでは2023年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しの上方修正も視野に入る。
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2023/09/16 05:00 日経速報ニュース
30年後、金融の世界はどうなっているのか。銀行はどう変わっていくべきなのか。日本経済新聞の金融取材チームは今回、そんな問題
意識を抱きながら新たな企画「銀行変身」をスタートさせました。
足元では楽天銀行やPayPay銀行がデジタル世代を引き寄せ、口座数を大幅に伸ばしています。日本の個人金融資産の大半を保有する
のはシニア世代ですが、30年後、いまの若者が社会の中核になるころには、金融の勢力図は大きく変わっている可能性があります。メガ
バンクなどは現に強い危機感を抱き、自ら変わり始めています。
銀行のリテールの最前線の状況から、どんな金融の未来が見通せるのか。「銀行変身」の番外編として、日々現場を駆け回っている日米
の3人の金融担当記者に「いま見えている景色」を聞きました。
(金融グループ次長 石川潤)
手のひらだけには限界(メガバンク・ネット銀担当 北川開)
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は日常的な手続きはスマホで済ませることを前提に、ネット銀行にも見劣りしないスマホ金融サー
ビスOlive(オリーブ)をつくりました。それでも店舗のさらなる削減に踏み込まなかったのは「人のぬくもり」が必要な場面が今後も残ると
判断したことがあります。代表的なのは資産運用や相続など込み入った相談でしょう。
スマホサービスだけでは結局ポイントや手数料などの「お得さ」での勝負が中心となり、新規顧客開拓は消耗戦が予想されます。軽量
の新型店「ストア」は相談業務に特化しつつ、土日や平日夜も相談受付をして個人客を取り込む狙いがあります。千葉県のストアでは常
駐行員を減らしたにもかかわらず、来店客数は以前の4倍になりました。
三井住友FGがオリーブで先行したのは、強い顧客基盤と米Visaとの蜜月関係を持つ三井住友カードを抱えていることが決め手でした。
ただ、「基本的な手続きはスマホで、相談事は対面で」というあり方は大手銀が共通して目指す方向性でしょう。
では、ネット銀行はどうでしょうか。レガシーがないことを生かしたお得な手数料や使いやすい操作画面で大手銀に対して攻勢を仕掛け
ているように一見感じられます。ただ、ネット銀も手のひらに収まる画面の中の勝負だけでは限界を感じ始めています。
住宅ローンでメガバンクを超える実行額を誇る住信SBIネット銀行は、他社と連携して住宅ローンの相談に乗る対面拠点を設けています。
ソニー銀行はソニーグループの技術を使った高画質・大画面のオンライン相談システムで疑似的な対面相談をするサービスを始めました。
銀行機能を他社に提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)が発達した今は、事業会社すらライバルになり得ます。金融業を強
化している高島屋は22年、住信SBIの基盤を使ってネット銀行サービスを始めました。百貨店内のカウンターでは金融商品仲介の子会
社が資産運用の相談に乗ります。商業施設に出店する三井住友のストア戦略と通ずるものがあります。
大手銀がオンライン化を進める一方、ネット銀は人のぬくもりを求める。事業会社も自らの集客力を生かして金融業に参入する。それぞ
れのプレーヤーが目指す方向性は似通っており、リテール金融は業態の境界がいっそうあいまいになるのではないかと思います。
顔認証技術で完全無人店舗も(メガバンク担当 中村雄貴)
「銀行の店舗に行きたいですか。行きたくないですよね」。銀行を取材していて、幹部からこう問われたことがありました。今や振り込みや
残高照会など多くの手続きをアプリでこなせます。店舗やその関連投資は採算に見合うのか。当事者自身から懐疑的な見方を聞きます。
メガバンクも経営にあたり自己資本利益率(ROE)が問われます。金利が戻ってもマスリテールの分野で顧客の相談に時間をかけて対面
で乗り、住宅ローンや投資信託など取引を一件一件こなしていくことでグループ全体の目標に見合う収益性を担保するのは容易ではありま
せん。考え方自体を変えていく必要があります。
三菱UFJ銀行でいえばJR東日本の「駅ナカ」の個室ブースで今月末まで展開するNISA(少額投資非課税制度)の相談サービスがヒントに
なります。契約はインターネットで終えることが可能です。人が集まる場所で接点をつくり、大部分の手続きはデジタルやネットを活用する
――。コストを減らしながら収益を確保できます。
店舗でこうしたモデルを実現するためにはさらに効率化が必要になります。例えば海外では事例がある顔認証技術を使った完全無人型
の店舗の設置などは選択肢になるかもしれません。店舗の「ヒト・モノ・カネ」を減らし、必要な面積を縮めて人の集まる複合施設などに出
店できるようにする動きはさらに広がりそうです。
銀行の支店は公共性の観点から必要とされ、サービスの縮小はリスクもあります。店舗削減のさなか、静岡支局で勤務していたとき「
清水(静岡市)からメガバンクの店舗がなくなる」との嘆きを地元財界幹部から聞いたのは今も印象に残っています。どう銀行に求められる
要求の高さに折り合いをつけていくかも重要な論点になります。
デジタル投資で圧倒、支店も価値(ニューヨーク=大島有美子)
米国のリテール現場の競争は過熱しています。米国の政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は5.25?5.50%で
、22年ぶりの高金利の世界に突入しました。
リテールを取り巻く環境は22年前から様変わりしました。米連邦預金保険公社(FDIC)によると、2001年に8082あった銀行数は22年に
4136とほぼ半減しました。
この間、台頭したのがインターネットでの銀行取引です。JPモルガン・チェースがモバイルバンキングを開始したのは2010年。23年3月の
シリコンバレーバンク(SVB)破綻で、預金者はオンラインバンク時代の取り付け騒ぎの速さを目の当たりにしました。
年間数千億円から1兆円の規模でテクノロジーに投資する大手銀は、オンラインバンクの機能改善に余念がありません。中小行はどうし
ても劣後します。
三菱UFJフィナンシャル・グループは、傘下の米地銀MUFGユニオンバンクを22年にUSバンコープに売却しました。21年末時点の総資
産はUSバンクが全米で5位、ユニオンバンクは27位でした。
ユニオンバンクからUSバンクの口座に切り替わったある利用者は「オンライン取引でできることがずっと増えた」と明かしました。デジタル
投資額の違いを実感したようです。
それでもリテールの競争はデジタル投資だけでは決まりません。興味深いのが2001年から22年にかけての支店数の変化です。2001年
が6万7827、22年が7万1007と今の方が多いのです。米銀の支店数はリーマン危機まで急拡大し、一時8万5000超まで増えてから減って
きていますが、そのペースは緩やかです。
支店が思ったより減らないのは、銀行の規模を問わずその必要性を感じているからでしょう。新規出店を押し進めるJPモルガンだけでな
く、バンク・オブ・アメリカも6月、4州への新規進出と出店拡大を発表しました。
「金利5%」――。ふと通りかかった支店に張られた紙を見ると強烈なインパクトがあります。現場で銀行員の話を聞きたいという要望は
むしろ高金利時代の今こそ高まっているといえそうです。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/724691?display=1
2023/09/17 00:00 日経速報ニュース
東京株式市場で金利の先高観が金融株を押し上げている。日銀が早期にマイナス金利政策の解除に動くとの観測を背景に、融資の
利ざやや運用環境の改善期待から投資資金が流入。銀行株指数は5年半ぶり高水準をつけた。金利復活の前提となる日本経済の
「脱デフレ」がみえてくれば、日本株全体の底上げにもつながる。
ソニーグループとNTT抜き2位に
3メガバンク株は15日にそろって年初来高値を更新した。三菱UFJフィナンシャル・グループの株価は9月に入って11%上げた。11日に
は発行済み株式数をかけた時価総額が16兆円台に乗り、ソニーグループとNTTを一気に抜いてトヨタ自動車に次ぐ日本2位に浮上した。
ドル建ての時価総額は米シティグループや仏BNPパリバを3?4割上回る規模だ。
大手行が中心の業種別日経平均株価の「銀行」は14日、2018年2月以来の高値をつけた。東京証券取引所に上場する民間銀行株
全体に広げると、時価総額は15日時点で合計54.8兆円と、3月末からの約半年間で15.7兆円(40%)増えた。東証株価指数(TOPIX)に
占める時価総額比率は7%超と、こちらも約5年半ぶりの高水準になった。
収益環境の好転期待が背景にある。昨年12月と今年7月、日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を修正したことに加え
植田和男総裁が今月、読売新聞のインタビューでマイナス金利政策を解除する選択肢に言及。遠くない時期の抜本的な緩和修正の可
能性が意識されたためだ。
長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは9年8カ月ぶりの高水準となる0.7%台に上昇した。
保険株にも波及
金利の上昇は銀行にとって、預貸の利ざやと債券運用益の改善という2つのルートから中長期的な収益拡大につながる。ゴールドマン
・サックス証券の黒田真琴アナリストは長期金利が1%、短期金利が0.2%それぞれ上がった場合、メガバンクの純利益は将来的に約3割
増えると試算している。
自社株買いや増配による株主還元の強化に加え、海外展開やデジタル戦略の強化による成長期待もある。三菱UFJは今年6月にイン
ドネシアの自動車ローン大手の買収を発表するなど、東南アジアの事業展開を強化している。
金利復活を先読みする動きは債券の長期運用に追い風となる保険株にも及ぶ。東京海上ホールディングスやMS&ADインシュアラン
スグループホールディングス株は15日にかけて連日で上場来高値を更新した。
英系運用会社オービス・インベストメンツは三井住友フィナンシャルグループ株に投資してきた。オービスの時国司・日本法人社長は
「業績が安定しているうえ金利が上昇すれば収益の上振れも期待できる」と話す。最近は株主還元のさらなる強化などを見込んでSOM
POホールディングス株への投資を増やしたという。
金利の目線が切り上がるなか、銀行株にとどまらず、日本株全体への買いも徐々に戻りつつある。
物価と賃金上昇の好循環カギ
本来、金利が上がると債券と比べた株式の割高感は強まり株価の重荷になりがちだが、7月に日銀が長期金利の上限を事実上1%に
引き上げ、長期金利がじわじわ上昇するなか、日経平均株価も上昇。15日には3万3533円と、7月3日につけたバブル経済崩壊後の高
値(3万3753円)に迫った。
日銀は賃金の上昇を伴う形で物価上昇率が安定的・持続的に2%を上回って推移すると確信できれば金融正常化を目指すとしている。
賃上げで消費が増え、経済が成長する好循環がまわり始めれば日本経済はデフレから脱却することになる。
市場では「2%の持続的な物価上昇が実現すれば、日本経済が再び成長路線に乗ったことになり日本株の投資妙味が増す」(外国証
券の日本株トレーダー)との見方がある。負債規模の大きさから利払い負担増が意識されやすい三菱地所などの不動産株が今年の高
値圏で推移しているのは、こうした脱デフレ期待が底流にある。
足元は物価変動の影響を除いた実質賃金のマイナスが続いている。賃金が伸びずに物価だけが上がれば消費は冷え込む。アセット
マネジメントOneの清水毅調査グループ長は「賃金上昇や設備投資の拡大などを含めた広い意味での経済成長が持続し、投資家が確
信を持てるかが一段高のカギを握る」と話す。
2023/09/19 日本経済新聞 朝刊
三井住友銀行は25日から米ドル建て定期預金の金利を現在の年0.01%から5.3%に引き上げる。引き上げは5年ぶりで、2022年
3月から始まった米利上げに伴う市場金利の上昇を反映する。他の大手行も追随する可能性がある。
6カ月物、1年物の定期預金が対象。三井住友銀はグループのSMBC信託銀行と合算で現在約2兆円のドル建て預金残高を25年度ま
でに倍増させる計画だ。
外貨預金はネット銀行が力を入れている。ドルで預けた場合の通常金利はソニー銀行が1年物で5%、auじぶん銀行が5.1%。SBI新
生銀行なども高い場合で5.3%程度に設定している。円預金に比べて金利は高いものの、円高に振れれば、円換算の元本が目減りする
リスクを伴う。
米国のJPモルガン・チェースやシティグループは日本の定期預金に相当する譲渡性預金(CD)の金利は3~4%台で、普通預金金利は
ほぼゼロだ。今年3月の米地銀破綻で中小銀行から預金が流出したため米地銀などはより高い金利を提示しているが、大手行の預金金
利は低水準だ。
三井住友銀は新型コロナウイルス禍に伴う米欧中央銀行の利下げなどに伴い、20年春にそれまでの年0.1%から0.01%にドル建て
預金の金利を下げた。日本の3メガバンクは現在も金利を0.01%に設定している。
三井住友銀は今後、外貨預金の金利を市場金利に連動させる仕組みに改める。ユーロなど他の通貨の預金金利の引き上げも検討する。
2023/09/19 05:00 日経速報ニュース
4月下旬、三井住友フィナンシャルグループは米独立系証券会社のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループに追加の資金を拠出し、持ち
分を最大15%に引き上げると発表した。その約1年前、キーマンとなるベテランバンカーを招いていた。
梅谷俊彦氏。21年在籍したゴールドマン・サックス証券で金融法人グループの統括責任者や経営委員会のメンバーを務め、銀行や証券
界でその名が知れわたる。現在はSMBC日興証券の副社長として、北米や投資銀行の部門を指揮している。
ジェフリーズとの提携拡大と同時期に、SMBC日興セキュリティーズ・アメリカでも新社長が誕生した。スコット・アシュビー氏だ。米モルガ
ン・スタンレーで債券資本市場部門の共同責任者を務め、SMBC日興アメリカの社長を務める。
梅谷氏と相棒のアシュビー氏が打ち出したのが大胆な業務の再編だ。自前では競争力に劣る米国の株式引き受けやM&Aのアドバイザ
リーから手を引き、ジェフリーズに機能を移管した。
三井住友は23年度からの新しい中期経営計画を策定するにあたり、これまでの証券戦略を徹底的に振り返ったという。梅谷氏は「日本は
マザーマーケットで紛れもない最重要の市場だが、グループ全体の成長を考えたときに米市場を避けては通れない」と指摘する。
みずほがM&A助言会社の米グリーンヒルを5億5000万ドルで買収することを決めたのもそうした流れにある。挑戦権をつかむエントリーチ
ケットになったのが、15年2月に完了した英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)が持つ貸出債権(32億ドル)の買い取りだった。
RBSの顧客基盤を受け継ぎ、取引を深めたことで債券引き受けのリーグテーブル(投資適格債部門)は07年度の20位から22年度に8位
へ上昇。木原正裕社長は株式引き受けやM&Aのアドバイザリーなど投資銀行の本丸で存在感を高めることを課題ととらえ、買収の機会を
探ってきた。
グリーンヒルの買収で米市場における株式引き受けやM&Aアドバイザリーの機能強化につなげる一方、22年7月に完了した米キャップス
トーン・パートナーズの買収は顧客層の深掘りが目的だ。キャップストーンはプライベート・エクイティ・ファンドが資金調達する際、複数の投
資家から出資を募る仲介業務に強みを持つ。
一方、メガバンクでただ一つ米大手投資銀行との提携関係を維持するのが三菱UFJフィナンシャル・グループだ。三菱UFJはモルガンとの
提携から15年目となる今年7月、提携関係を一歩先に進める「アライアンス2.0」を打ち出した。
世界的に投資銀行の業務に逆風が吹く中で、最大市場の米国で邦銀による三者三様の逆張り戦略が目を引く。モルガンやゴールドマン
が人員削減に動くなかで「手が届かなかった優秀なバンカーにアプローチしやすくなっている」とSMBC日興の梅谷氏は話す。
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-09-14 JPモルガン Overweight継続 7460円 → 8200円
2023-09-01 みずほ 買い継続 6600円 → 7350円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-08-22 大和 3 → 2格上げ 6000円 → 7000円
2023-08-07 モルガンS Overweight継続 7280円 → 7880円
2023-08-02 岩井コスモ A継続 6700円 → 8000円
2023-07-14 UBS 新規Buy 7350円
2023-07-07 BofA 買い継続 6000円 → 6850円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023/09/20 日本経済新聞 朝刊
三井住友カードと住友生命保険は19日、ヘルスケア分野で業務提携すると発表した。10月から、住友生命の健康増進プログラム
を三井住友カードの会員向けに提供する。ジムでの運動などに応じて独自のポイントがたまる。デジタルを活用した顧客接点の創出
やポイント経済圏の拡大を図る。
10月2日から、住友生命の健康増進プログラム「バイタリティースマート」を提供する。月額500円で、三井住友カード会員向けの
アプリやウェブサイトから加入する。
2023/09/21 日本経済新聞 朝刊
金利上昇に伴う資金繰り破綻を起こした3月の米欧銀の混乱を踏まえ、世界の金融当局が監督を強化する方向になった。銀行の国際ル
ールを決めるバーゼル銀行監督委員会が年内にも報告書をまとめた上で、追加で検証作業し、2024年にも新たな監督の具体策を示す。
「監督の実効性を強化するための作業を優先する」。日米欧を含む28の国・地域の銀行監督当局や中央銀行で構成し、銀行の国際ルー
ルを決めるバーゼル銀行監督委員会の上位組織が11日、監督の強化に取り組むと宣言した。
具体的には、米シリコンバレーバンク(SVB)のように特殊なビジネスモデルだったり、経営に懸念があったりする銀行を特定し、改善を
促し、経営陣のガバナンスを効かせるため新たな監督手段を開発することを検討する。グローバルで監督上のガイダンスを策定する可能性
もある。
監督強化に動くのは、SVBや欧州のクレディ・スイスが自己資本比率で10%を超す健全行だったにもかかわらず、短期間で資金繰りに
窮して経営危機に陥ったためだ。
リーマン・ショックを受けてつくった自己資本規制「バーゼル3」は自己資本をなるべく多く積むことで危機を防ぐ狙いだったが、今回それで
も信用不安が起きた。バーゼル委は「監督当局が銀行の弱点を特定し、速やかに是正するために早期かつ実効的に行動することが重要」
とした。
バーゼル委が具体策を検討していく上で2つの論点がある。一つは流動性リスク、もう一つは銀行勘定の金利リスクで、「追加の分析作業
を進める」という。
一つ目の流動性リスクは、SNSによる大口預金の急激な流出を指す。SVBは主にスタートアップ企業などから預金を集め、総額の9割
近くが保険でカバーされない大口預金に依存していた。伝統的な銀行に比べ特殊なビジネスモデルだったにもかかわらず、米監督当局が
必要な対応を迫らなかった。クレディ・スイスも数年前からリスク管理に問題を抱え、信用不安が起きやすい土壌ができていた。
バーゼル3は危機時に30日間耐えうるだけの十分な流動資産を持つことを求めている。しかし中堅行に対してはこうした規制が緩く、SV
B破綻時はSNSで取り付け騒ぎが起き、全体のおよそ4分の1にあたる預金が1日で流出した。30日間を前提にした規制が妥当かどうか
も論点になる。
もう一つの銀行勘定の金利リスクは、国債保有によるリスクを示す。関係者によると、参加国の中には銀行による国債保有について世界
共通の規制を導入し、信用不安の土壌を一掃するよう動くべきだという意見も出ている。国債保有規制は14~17年に議論が起き、バーゼ
ル委が一度、規制案をまとめたが、日本などの反対でお蔵入りになった。実効的な手法なのかをめぐり、論点はなおくすぶっている。
背景には欧米の中央銀行の利上げに終着点が見えないことがある。利上げ局面が続く限り、経営が不安定になる銀行が発生しやすい
環境は変わらない。どこにリスクが潜んでいるか、当局が自信を持って対応できるとも限らない。3月の米欧の金融不安はひとまず鎮静化し
ているが「規制見送りと宣言できる環境ではない」(関係者)。
1月に国際合意したバーゼル3の最終規則を23年中に実施するのはカナダ、オーストラリア、香港などにとどまる。日本も前倒し適用を
始め、24年3月期にメガバンクなども適用する。欧州では25年1月からの適用が決まり、米国は25年7月とする案が出ている。規制と監
督の両輪で金融危機をどう防ぐかが課題だ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-21/S1BO3ET0AFB401?srnd=cojp-v2
市場で高まる金融政策の早期正常化観測に対し、日本銀行内では植田和男総裁の発言と市場の解釈のギャップを指摘する声が出るなど
、市場をけん制するかのような動きも見られる。だが、日本の銀行株に強気な投資家の姿勢を変えるまでには至っていない。
Bank of Japan Headquarters Ahead of Rate Decisions
日銀本店の外観Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
銀行株は今年に入り既に40%上昇しているものの、強気派はさらなる上昇余地があるとみている。日銀が利上げに転じるのは時間の
問題で、近いうちに貸出利ざやの拡大が期待できるとの見方からだ。
加えて、TOPIX銀行業指数の株価純資産倍率(PBR)は0.73倍と日本株全体の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)の1.4倍に対
しおよそ半分の水準にとどまる。銀行株のバリュエーションは2007-08年にかけての世界金融危機以降、グローバルに低迷が続いてき
たが、MSCI世界銀行指数の0.96倍と比べても日本の銀行株の割安感が目立つ。
Japan Banks' PBR Still Below Global Peers
22日に金融政策を発表する日銀の政策決定会合では現状維持が予想されているが、オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)な
ど金融市場のデータは投資家らが24年の早い時期にマイナス金利の終了を見込んでいることを示している。
日銀の植田和男総裁は読売新聞のインタビューで、今年末までに賃金とインフレの好循環を見極めるのに十分なデータが得られる
可能性はゼロではないと述べた。しかしこの発言は、政策的なシグナルというよりは一般的な発言であったと、事情に詳しい関係者は
語っている。
植田総裁発言と市場解釈にギャップ、日銀認識ほぼ変わらず-関係者
生鮮食品とエネルギーコストを除く日本の消費者物価指数は、過去4カ月間にわたり4%以上上昇しており、昨年初めは1%前後下落
していた状況から一変した。インフレの大幅な加速にもかかわらず、日銀は今のところ短期政策金利をマイナス水準のまま据え置いている。
足元の10年国債利回りは0.7%台と、日銀による許容変動幅の上限である1%を下回っている。これらの数字から導くと、日本のイン
フレ調整後の実質金利は大幅なマイナスとなっている。
ロベコ香港のポートフォリオ・マネージャー、ケルヴィン・リョン氏は手遅れになる前に日銀はすぐに政策を調整しなければならなくなるだ
ろうと指摘する。
Japan Bank Earnings Recover as Yields Rise
金利引き上げに伴い、銀行のローンポートフォリオからの金利収入は増加、さらに現在日銀の当座預金に預けている大量の資金が、
今後より高い利回りの債券などにシフトしていくことによって、銀行の金利収入は増大していくはずだとリョン氏は語った。
日本の銀行の中でも特にメガバンクの収益性は、日銀の政策変更を待たずに既にかなり改善してきている。アナリストの予想では、
三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループはともに今期(24年3月期)純利益が過去最高に達する見通しだ。
ニッセイアセットマネジメントの伊藤琢チーフ・ポートフォリオ・マネジャーは「日本のメガバンクは既に中身が良くなっている。3月の米
シリコンバレー銀行の破綻を受けて株主還元強化をいったん控えたが、余力は十分にあり、また意欲も高い」と話している。
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日銀巡る市場の思惑、イールドカーブからマイナス金利政策に移る
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2023/09/22 12:55 日経速報ニュース
(12時50分、プライム、コード8306など)銀行株が後場、乱高下の展開となっている。三菱UFJは後場寄り直後に一時、前日比27円
(2.04%)安の1291円まで下落したが、その後は上昇に転じる場面もある。日銀は22日まで開いた金融政策決定会合で現行の金融
政策の維持を決めた。これまで銀行株は、マイナス金利解除など金融政策の修正の思惑で買い進まれてきた面があったため、利益
確定売りに押されたとみられるが、下げた場面では押し目買いも入るなど売買が交錯している。
三井住友FG(8316)やみずほFG(8411)、りそなHD(8308)などもやや荒い値動きとなっている。松井証券の窪田朋一郎シニアマ
ーケットアナリストは「三菱UFJ株が後場上昇に転じたのは、いずれマイナス金利を解除するのであれば、下げた場面は買いだと考え
た外国人投資家が買ったようだ」と分析。今後の金融政策を占ううえで、日銀の植田和男総裁が15時30分から開く記者会見が「注目
になる」と話していた。
配信日時
2023/09/25 10:29:00
詳細
大幅反落。本日は銀行セクターが業種別下落率のトップになっている。先週末には、日銀金融政策決定会合で金融政策の現状維持が
決定されたが、その後も同社などメガバンクは総じて底堅い動きが続く展開であった。ただ、引け後の総裁会見なども早期の正常化観
測をけん制する形になっていたため、銀行株にとってはネガティブな大規模緩和策が長期化するとの見方があらためて強まる状況になっ
ているようだ。《ST》【株式会社フィスコ】
三井住友FG (8316)
日系中堅証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、9,500円。
日系中堅証券が9月25日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(A)に据え置いた。
一方、目標株価は8,000円から9,500円に引き上げた。因みに前日(9月22日)時点のレーティングコンセンサスは4.55
(アナリスト数11人)で「強気」の水準、目標株価コンセンサスは7,598円(アナリスト数11人)となっている。
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023/09/26 15:17 日経速報ニュース
26日のJPX日経インデックス400は反落した。終値は前日比134.03ポイント(0.62%)安の2万1347.75だった。米長期金利の上昇で
高PER(株価収益率)の半導体関連を中心に売りが優勢だった。東エレク、第一三共が下落した。
一方、三井住友FGなど銀行株は買われた。商船三井も上昇した。
2023/09/28 日本経済新聞 朝刊
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、グループ連携で運用人材を育成する。三井住友銀行の自己勘定投資部門から、三井住友DS
アセットマネジメントに転籍する枠組みをつくった。運用成績の高い担当者が成果報酬型のファンドマネジャーとして活躍できるようにし、人
材流出を防ぐとともにアクティブ運用を強化する。
三井住友銀行は株や債券などの自己勘定投資が強みとされる。ただ、運用成績が報酬に直接反映されるわけではないため、より高い報
酬を求めて転職する事例もあったという。銀行で成果を上げた人が運用会社のファンドマネジャーとして成果報酬を得られるようにし、人材の
グループ外流出を防ぐ。
まず3人が転籍して世界の株や債券、為替に投資するアクティブ型のファンドを立ち上げ、10月以降に運用を始める。市場環境に関わらず
収益獲得を目指す絶対収益追求型とする。国内の運用会社が直接運用する同様のファンドは珍しい。まずは三井住友銀からの資金を受け
入れ、将来は機関投資家などによる投資も見込む。
岸田文雄政権は「資産運用立国」を掲げて国内運用会社の強化を目指している。三井住友銀行は25年入行の新卒採用から市場部門の
採用枠を設け、人材の内部育成も進める。銀行の自己勘定投資のノウハウを生かし、グループで運用力を高める狙いだ。
2023/09/28 09:19 日経速報ニュース
(コード@JEF/U)27日夕の米株式市場の時間外取引で、証券会社のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループが下落した。通常取引を
前日比0.02%安の36.24ドルで終えた後、時間外で一時は終値を7%ほど下回る33ドル台後半まで売られた。同日夕に発表した2023
年6~8月期決算が大幅な減収減益となり、市場予想にも届かなかったため売りが出た。
事業会社の売上高にあたる純営業収益は前年同期比22%減の11億8210万ドルとなり、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(
12億5000万ドル程度)を下回った。資産運用部門の大幅減収が響いた。投資銀行部門は前年同期比では減ったものの、企業のM&A
(合併・買収)活動の持ち直しなどを受けて3~5月期比では28%増収だった。会社側は同部門の回復基調は続くとみる。純利益は74
%減の5141万ドルとなり、1株利益は0.22ドルと市場予想(0.33ドル)に届かなかった。
2023/09/28 12:26 日経速報ニュース
28日午前の東京株式市場で日経平均株価は反落し、午前は前日比558円89銭(1.73%)安の3万1813円01銭で終えた。9月期末配当の
権利落ち分約224円(QUICK試算)は差し引く必要はあるが、それを考慮しても足元の日本株は軟調な展開だ。その中でも続いているのが
バリュー(割安)株が優位な状況。米金融引き締めの長期化観測を背景に、この傾向はしばらく続くのではないかとの見方が多い。
市場で注目されるのが、日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割って算出する「NT倍率」の低下。このNT倍率は6月後半から低下基
調で、27日終値ベースで13.60倍と2020年4月24日(13.55倍)以来、3年5カ月ぶりの低水準になった。きょうの前場にNT倍率は一時13.57
倍と一段と下げた。きょうの午前を見れば、日経平均株価は前日比1.73%の下落で、TOPIXは1.49%の下落となっており、TOPIXの下げの
方が小さかった。日経平均の下げがきょうの午前は大きかった影響があるものの、TOPIXへの影響度が大きい割安大型株は相対的に下落
率が小さかったとも言えそうだ。
割安銘柄で構成するTOPIXバリュー指数は5月31日終値から9月27日終値までで20.42%上昇しているが、割高銘柄で構成するTOPIX
グロース(成長)指数は2.97%の上昇にとどまっている。6月からはバリュー優位の状況が続いている。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融引き締め長期化観測が強まり、日経平均は足元で5日移動平均線、25日移動平均線、75
日移動平均線をいずれも下回っている。
一方、TOPIXの日足チャートを見ると、足元では75日移動平均線が下値支持線となっている。4月以降は一度も割り込んでいない。ピク
テ・ジャパンの糸島孝俊ストラテジストは目先についても「日経平均株価の構成銘柄に比べ、東証のPBR(株価純資産倍率)改善要請で
今後の改善が見込める銀行や鉄鋼など割安大型株が多いTOPIXが有利になりやすい」とみていた。目先はバリュー優位を示すNT倍率
の低下が続く可能性が高そうだ。
2023/09/28 13:18 日経速報ニュース
壁谷洋和・大和証券チーフグローバルストラテジスト 28日の東京株式市場では前引け間際から日経平均株価が急落した。後場も下げ幅
を広げているが、正直なところ明確な材料は見当がついていない。28日は9月末配当の権利落ち日であり、機関投資家による期末のリバラ
ンス(資産配分の調整)売りも出やすい。こうした需給面での要因で大口の売りが出たところで心理的な節目の3万2000円を下回った。米長
期金利の上昇など外部環境がリスクオフに向きやすいなかで、売りが売りを呼ぶ形で損失覚悟の売りを招いたのではないか。
もっとも、10月に入れば株式相場は持ち直すとみている。下期入りということで期初特有の仕切り直しの買いが機関投資家から入りやすい。
また、9月25日から10月6日の日程で、日本政府が海外の機関投資家を日本に招き、日本への投資を呼びかける「ジャパン・ウィークス」を
開催している。イベントに参加した投資家はある程度のポジション(持ち高)を積み上げることが見込まれる。
2023/09/29 日本経済新聞 夕刊
金融情報端末QUICKでは21~27日の期間、日米の金融政策の動向や銀行株に関する記事がよく読まれた。
米連邦準備理事会(FRB)が20日に公表した経済見通しは利上げ終了後も高金利が続く慎重な内容だった。パウエル議長は会見で
追加利上げの可能性を否定しなかった。米長期金利が上昇すると相対的な割高感から、米国株は下落した。
日銀は22日まで開いた金融政策決定会合で政策の現状維持を決めた。植田和男総裁は会見で政策修正の時期を明言せず、市場に
広がっていたマイナス金利の早期解除の見方が弱まった。
日銀の政策修正観測の後退で、これまで買われていた三井住友フィナンシャルグループをはじめとする銀行株が軒並み下落するなど
荒い動きとなった。
東芝への関心も高かった。日本産業パートナーズ(JIP)など国内連合によるTOB(株式公開買い付け)が成立したと21日に発表した。
ただ、株価はTOB成立をすでに織り込んでいたため、反応は限られた。
https://www.sankei.com/article/20230930-K4V3CUN5RZFRHA2AK65EUYFFTU/?outputType=theme_weekly-fuji
今の日本経済は消費する力が弱い。つまり消費しようにも可処分所得が不足しているからだ。政府や日本銀行が国民生活を第一に考える
ならば、所得を増やし、消費を強める政策をとるべきだ。だが、植田和男総裁になってからの日銀は、国民生活を優先するよりも、金融業界
への配慮が勝っている。
最近ではイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)を形骸化した。それまで低く抑制していた長期金利の上限を1%と従来の倍ま
で引き上げたからだ。これによって10年物の国債金利は一時、0・7%台半ばまで上昇した。住宅ローンや銀行からの借り入れがきつくなる
だろう。
他方で銀行は預金金利が低いままなので、貸出金利との利ザヤで儲けが増える。植田日銀になってから銀行株が上昇しているのは市場の
素直な反応だ。対して、国民の消費はさえないままだ。
YCCが「形骸化」しているのでこれからも長期金利は上昇していき、アベノミクスが始まる前、つまり大胆な金融緩和を否定してきた時代に戻
るのもそう遠くないかもしれない。
消費の不振だけではない。失業率が増え、倒産件数も増加している中での金利上昇は、明らかに「金融引き締め」的に経済に作用するだろう。
少なくとも日銀の金融緩和への姿勢が弱まると考えるのは必然だ。
21、22日に行われた日銀の金融政策決定会合は現状維持だった。植田日銀が一段の金融緩和の修正をするのではないか、と市場関係者
は憶測を重ねていた。この憶測は、植田総裁が自ら招いたものである。マイナス金利解除が近いととれる植田総裁のインタビューが新聞に掲
載された。インタビューの事前チェックを日銀当局は行っていただろう。つまり市場関係者にマイナス金利解除が次の一手であると匂わせる発
言を、植田総裁はあえて公表したわけである。
黒田東彦(はるひこ)前総裁の時は、金融政策は決定会合で正常に行われていた。だが、植田日銀は昔の日銀と似ている。自分たちの「身内」
である報道機関や金融機関に事前情報をリークした可能性もあるし、このような匂わせもする。そのため政策決定会合よりも植田総裁の記者
会見の方が注目を浴びてしまう。まさに経済政策の退化である。
岸田文雄首相が「思い切った」財政政策をするという。しかし事実上スキャンダルで官房副長官を退任した木原誠二議員が、「政権にいるとき
は言えなかったが、減税をするべきだ」とネット番組で発言していた。首相に最も近かった人物でさえ、減税を言えないという、いまの財務省中
心の政策運営を考えると、日銀とともに情けない政策運営がしばらく続きそうだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-02/S1Q61RT1UM0W01?srnd=cojp-v2
日本銀行が9月21、22日に開いた金融政策決定会合では、2%の物価目標の達成に近づきつつあり、今年度後半は見極めの重要局面と
なるとの認識が政策委員から示された。「主な意見」を2日に公表した。
ある委員は「予想物価上昇率に上昇の動きがみられ、やや距離はあるが、物価安定の目標の達成に近づきつつあるため、今年度後半は
、 来年に向けた賃上げ動向も含め、その見極めの重要な局面となる」と述べた。
他の「主な意見」
物価目標実現見通せず、YCCで粘り強く緩和継続
YCC運用柔軟化で長期金利安定、追加の見直し必要ない
YCCやマイナス金利解除、2%実現とセットで論じるべきだ
日本経済は今が正念場、企業の改革意欲の後押し必要
政策修正の時期や具体的対応、現時点で決め打ちできない
ガイダンス、政策自由度制約されない工夫が望ましい
2%実現がはっきり視界、来年1-3月に見極めの可能性
マイナス金利解除でも、実質金利マイナスなら緩和継続
出口局面、YCCのみならず資産買い入れの要否検討を
消費者物価上昇率、上振れ状態しばらく続く可能性
消費者物価、来年度も上昇続くと考えられる
賃金上昇伴った物価上昇に繋がる好循環、生まれつつある
9月会合では、現行の大規模な金融緩和政策の維持を全員一致で決めた。事前には植田和男総裁の読売新聞とのインタビューを受けて
早期の政策正常化観測が強まっていたが、会見で総裁は、2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況になればマイナス金利
の解除などを検討するとし、現時点で時期を「事前には決め打ちできない」と語った。
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2023/10/02 10:15 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(8316)が個人投資家(リテール)向けに2本立て債の発行を準備していることが2日、わかった。
いずれも実質破綻時免除特約と劣後特約がつき、SMBC日興証券が主幹事を務める。発行額は未定で、需要動向を勘案したうえ
で利率とあわせて13日に条件を決める。申込期間は16~27日で、払込日は30日。
同日付で関東財務局に提出した訂正発行登録によると、2本立て債のうち1本は、年限が10年で6年目以降の期限前償還条項
(NC、ノンコール)がつき、利率の仮条件は当初5年が年1.000~1.600%とした。もう1本は年限が10年で利率は年1.500~2.100
%を仮条件とした。
2023/10/02 20:43 日経速報ニュース
日本株相場は不安定な動きが続く。特に期末前後に特有の売りが上値を抑えているが、10月後半以降にかけての先高期待は根強い。
背景には中間決算発表を控えた上方修正期待がある。日銀が2日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)でも大企業の景況
感は改善が続く。銀行株など好景気の影響を受ける銘柄で下支えができれば、決算発表後の上昇期待は高まっている。
2日の東京株式市場では、米議会が政府機関の閉鎖をひとまず回避したことなどを受けた買い戻しで日経平均株価は前週末比一時544
円高となったものの、売りに押されて97円安で引けた。荒い値動きに「期末に絡んで、売らなければいけない分を売るというシステマティック
な売りが出て先物だけで動いている」とT&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは話す。
9月から10月にかけての需給の悪化は「5月に売って9月に買え」や「ハロウィーンに買え」といった相場の格言になる知られたものだ。
日本株ならば9月末に向けて年金のリバランスや指数の銘柄入れ替えに関する売買や配当の再投資を狙った売りなどが出やすい。こうし
た状況からグローバルマクロ系のヘッジファンドなども売りを出しやすい。
ある欧州系のヘッジファンドの運用担当者は「日本株はもうしばらく売りポジションのまま行く予定だ」と話す。先進国株を売りでポジション
を取っているという。一方で「米金利上昇のヘッジにもなるので日本の銀行株のコールオプション(買う権利)を買い上がっている」という。
業種別日経平均の銀行は前週末比1.6%高と逆行高だった。日経平均が大きく下げた午後もさほど下落しなかった。
銀行株は日銀の政策変更によって金利が上昇すれば業績が改善するという期待から上げている。米金利上昇の負の影響を受けにくく、
世界でも米長期金利上昇でメリットが大きい数少ない銘柄だ。日銀短観で示された国内の景況感が改善していることも追い風になる。
2日は千葉興業銀行(6%高)、筑波銀行(5%高)、滋賀銀行(4%高)など地銀株が株価上昇率上位となった。千葉興銀は9月29日に
4?9月期業績を上方修正しており、地銀の業績回復期待が波及した可能性がある。加えて今回の短観では中小企業の先行きも改善。
「中小企業でも投資意欲が旺盛で地方の経済状況も良好なことで、地銀にも業績改善期待がある」(国内証券アナリスト)。地方経済回復
に伴う融資拡大期待も出始めている。
短観で景況感が大きく改善した自動車のトヨタ自動車やホンダなども逆行高。円安と生産回復を受けて業績期待が高い。日経平均は22
年までの10年間で年初を100として指数化、平均すると、中間決算が始まる10月半ば以降に上昇する傾向がある。特に今年は業績の上方
修正期待が高く中間決算が上昇のきっかけになるとの見方は多い。
こうした楽観論を支えたのが、短観の設備投資だ。23年度のソフトウエア・研究開発を含む設備投資(除く土地投資額)を見ると、大企業
は全業種で13.1%増と前回調査から0.7ポイント改善した。
「設備投資が減らずに続いているのは企業が株主還元だけでなく収益力改善の段階に企業改革を進める意思がある証拠」と三井住友
DSアセットマネジメントの石山仁チーフストラテジスト。低PBR(株価純資産倍率)の修正など業績以外にも影響していくとみる。
ただ決算発表までは売りが優勢となる可能性がある。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「米国株では投資信託の決算
などの関係で10月は損失確定の売りが出やすく、米株に影響された売りが日本株にも及ぶ」とみる。
13日に特別清算指数(SQ)の算出があるオプション市場でも、「ボックス圏を抜けて下落することへの警戒感が強まり、オプション価格が
よく動くようになってきた」とSBI証券の新村昌寛エグゼクティブディレクターは話す。下値警戒も米国の需給の問題も10月中に一服感が
出るタイミングがある。その後に中間決算発表に伴う上昇相場が見えてくるか、統計指標などから様子を探る動きとなりそうだ。
2023/10/03 19:01 日経速報ニュース
3メガバンクと2大証券のトップが金融の役割を議論する「金融ニッポン」トップ・シンポジウム(日本経済新聞社主催)が3日、開かれた。家計
に滞留する現預金を投資に回し、企業の成長を後押しするには、運用力の強化が重要だとの意見が相次いだ。
【関連記事】金融ニッポン 貯蓄から資産形成、銀行・証券が果たす役割
シンポジウムは「貯蓄から資産形成、銀行・証券が果たす役割」をテーマに議論した。日本の家計の金融資産残高は6月末時点で2115兆円。
5割超が金利がほとんど付かない現預金だ。インフレが続けば現金の価値は目減りし、家計にとっても日本経済にとっても大きな課題となる。
野村奥田氏「代替投資に拡大余地」
投資を呼び込むには魅力のある商品を増やすことが求められる。野村ホールディングスの奥田健太郎社長は「各社が同じような商品を並べ
ており、とがったところがない」と指摘した。対応策として、不動産やインフラといったオルタナティブ(代替)運用強化を挙げた。海外の有力投
資家と比べて日本の機関投資家は代替資産への資金配分が小さく「拡大余地は大きい」(奥田社長)。
オルタナティブ運用は米KKRなど海外勢が先行しており、政府も海外勢の参入を促進するため「資産運用特区」を設ける計画を掲げる。大和
証券グループ本社の中田誠司社長は「プレーヤーに厚みが出れば、必然的に正しい競争環境がつくられる」と期待を示した。
大和中田氏「法人税率、参入の壁」
中田社長は海外勢の誘致を巡る課題にも触れた。海外勢にとっては「もうかるかどうかが一番重要だ」と述べ、シンガポールや香港など
と比べて高水準の法人税率が参入の壁になりかねないと指摘した。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など、国内の年金基金が
運用会社に対して支払う手数料率が海外と比べて低い問題があると述べた。
手数料率が低い背景に、日経平均株価などの指数に連動する「パッシブ運用」の割合が大きいことを挙げ、市場平均を上回る成績をめざ
す「アクティブ運用」の拡大も呼びかけた。海外勢の参入はアクティブ運用拡大にもつながると指摘した。
三菱UFJ亀澤氏「M&Aを活用」
三菱UFJフィナンシャル・グループでは海外の運用会社や資産管理会社を相次ぎ買収している。亀澤宏規社長は「M&A(合併・買収)を含め
てやっていきたい」と意欲を示した。資産運用、管理の分野での収益の比率を倍増させていく考えも示した。
2024年には新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まり、個人の資産運用への関心が高まっている。亀澤社長は「社会的使命としてグル
ープ全体で推進していく」と話した。三菱UFJ信託銀行やauカブコム証券などと連携を深める。具体策としてグループ合同でのセミナーの開催
やプロジェクトチームの組成をあげた。
三井住友フィナンシャルグループはNISA口座を5年間で4.5倍の510万口座に増やす目標を掲げた。3月に始めたスマートフォン上の総合金
融サービス「Olive(オリーブ)」の会員数が半年で100万人を超えたことも明らかにした。太田純社長は「資産運用に向けたエントリーのバリ
アーを低くすることに役立っている」と自信を見せた。
太田社長は「駅前の一等地に支店を持つ必要はない」と語り、約400ある支店のうち6割程度を小型店舗にする考えを示した。平日の夕
方や土日でも開いているショッピングモールに設置する構想も披露した。
でなく、資産承継の相談も重要になっている。「今まではバラバラだったが、持っている機能を顧客に説明し、ニーズを拾い上げて、最も見合
った機能を提供することが重要だ」(木原社長)
貯蓄から投資を促すためには魅力のある投資先企業を増やす取り組みも併せて必要になる。みずほは中堅・中小企業に対しても投資銀行
サービスを提供し、成長を後押しするとした。
三井住友太田氏「日銀の選択肢広がる」
足元の金融市場では円安とインフレが同時進行する構図が続く。日銀が追加の金融政策の修正に踏み切るとの観測が絶えず、米連邦準
備理事会(FRB)の金融引き締めの姿勢が続くかも焦点となる。大手金融機関の首脳からはリスクを含めて先行きを注視する発言が相次いだ。
三井住友の太田社長は「日銀が金利の正常化に向けてアクションをとる環境は整いつつある」と強調した。米欧の景気減速の懸念が弱ま
っているとの見方を示した上で「日銀が取り得る施策・オプションは昨年度の今ごろよりずいぶんと広がった」と話した。
みずほ木原氏「物価見通し、楽観視できず」
物価の動向に警戒感を示す発言も出た。みずほの木原社長は「物価の見通しを楽観的に見ていないかが気になる」と述べた。「物価の上
昇は続いていく可能性がある。マイナス金利の修正がいつか起こったときにどういう反応をマーケットがしてくるかは要注意だ」と説明した。
大和の中田社長は金利の上昇について「社債市場は金利が上がっても市場機能が復活するほどワークする。コンスタントに発行は増える
と想定している」と言及した。環境や社会の課題解決につなげる事業に使途を限定する社債「サステナビリティーボンド」の発行増にも期待
感を示した。
三菱UFJの亀澤社長は「日米の金融政策の方向性はだいたい見えてきている。タイミングや時間軸が重要だ」と発言した。野村の奥田社
長はインフラなどオルタナティブ資産への投資などを念頭に「金利水準にかかわらず、個人や機関投資家が多様な商品を運用するニーズ
が広がる」と説いた。
鈴木金融相「ガバナンスの改善必要」
鈴木俊一金融相は「金融ニッポン」トップ・シンポジウムで「成長と分配の好循環を実現するには資産運用セクターの抜本的改革が不可欠
だ」と述べた。大手金融グループに対し「資産運用ビジネスの経営戦略上の位置づけを明確にしながら、運用力を高めてガバナンスを改善
・強化していく必要がある」と話した。
政府は家計金融資産の半分以上を占める現預金を成長投資に振り向け、成果を家計に還元しながら資産形成を促しつつ、さらなる投資
にもつなげようとしている。大手金融グループには「中長期の資産形成に資する商品の組成や提供、人材育成を含めた運営体制の整備
を進めてもらいたい」と話した。
資産運用立国に向けた施策を検討する場として、政府の「新しい資本主義実現会議」の下に「資産運用立国分科会」を設置する。「有識
者の意見を聞きながら関係省庁と密接に連携して政策プランを年内に策定する」と述べた。
世界の金融センターとして機能を評価したり、比べたりする上で「多くの人が納得できる信頼度や透明性の高い指標が存在しない」点を
課題にあげた。「研究機関において新たな指標の策定が進められている」として、新指標などを参考にしながら「国際金融センター構想を
推進していきたい」と語った。
2023/10/04 日本経済新聞 朝刊
奥田氏「代替投資の強化を」/ 中田氏「法人税、参入の壁に」/亀澤氏「M&Aで収益拡大」
3メガバンクと2大証券のトップが金融の役割を議論する「金融ニッポン」トップ・シンポジウム(日本経済新聞社主催)が3日、開かれた。
家計に滞留する現預金を投資に回し、企業の成長を後押しするには、運用力の強化が重要だとの意見が相次いだ。
シンポジウムは「貯蓄から資産形成、銀行・証券が果たす役割」をテーマに議論した。日本の家計の金融資産残高は6月末時点で21
15兆円。5割超が金利がほとんど付かない現預金だ。インフレが続けば現金の価値は目減りし、家計にとっても日本経済にとっても大き
な課題となる。
投資を呼び込むには魅力のある商品を増やすことが求められる。野村ホールディングスの奥田健太郎社長は「各社が同じような商品を
並べており、とがったところがない」と指摘した。対応策として、不動産やインフラといったオルタナティブ(代替)運用強化を挙げた。海外
の有力投資家と比べて日本の機関投資家は代替資産への資金配分が小さく「拡大余地は大きい」(奥田社長)。
オルタナティブ運用は米KKRなど海外勢が先行しており、政府も海外勢の参入を促進するため「資産運用特区」を設ける計画を掲げる。
大和証券グループ本社の中田誠司社長は「プレーヤーに厚みが出れば、必然的に正しい競争環境がつくられる」と期待を示した。
中田社長は海外勢の誘致を巡る課題にも触れた。海外勢にとっては「もうかるかどうかが一番重要だ」と述べ、シンガポールや香港など
と比べて高水準の法人税率が参入の壁になりかねないと指摘した。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など、国内の年金基金が
運用会社に対して支払う手数料率が海外と比べて低い問題があると述べた。
手数料率が低い背景に、日経平均株価などの指数に連動する「パッシブ運用」の割合が大きいことを挙げ、市場平均を上回る成績をめ
ざす「アクティブ運用」の拡大も呼びかけた。海外勢の参入はアクティブ運用拡大にもつながると指摘した。
三菱UFJフィナンシャル・グループでは海外の運用会社や資産管理会社を相次ぎ買収している。亀澤宏規社長は「M&A(合併・買収)を
含めてやっていきたい」と意欲を示した。資産運用、管理の分野での収益の比率を倍増させていく考えも示した。
2024年には新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まり、個人の資産運用への関心が高まっている。亀澤社長は「社会的使命として
グループ全体で推進していく」と話した。三菱UFJ信託銀行やauカブコム証券などと連携を深める。具体策としてグループ合同でのセミナー
の開催やプロジェクトチームの組成をあげた。
三井住友フィナンシャルグループはNISA口座を5年間で4.5倍の510万口座に増やす目標を掲げた。3月に始めたスマートフォン上の
総合金融サービス「Olive(オリーブ)」の会員数が半年で100万人を超えたことも明らかにした。太田純社長は「資産運用に向けたエントリ
ーのバリアーを低くすることに役立っている」と自信を見せた。
太田社長は「駅前の一等地に支店を持つ必要はない」と語り、約400ある支店のうち6割程度を小型店舗にする考えを示した。平日の
夕方や土日でも開いているショッピングモールに設置する構想も披露した。
みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は銀行や証券、信託、運用の連携を課題に挙げた。国内では高齢化が進み、資産形成
だけでなく、資産承継の相談も重要になっている。「今まではバラバラだったが、持っている機能を顧客に説明し、ニーズを拾い上げて、最
も見合った機能を提供することが重要だ」(木原社長)
貯蓄から投資を促すためには魅力のある投資先企業を増やす取り組みも併せて必要になる。みずほは中堅・中小企業に対しても投資
銀行サービスを提供し、成長を後押しするとした。
2023-10-03 モルガンS Overweight継続 7880円 → 8930円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-19 GS 中立継続 7200円 → 8000円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-09-14 JPモルガン Overweight継続 7460円 → 8200円
2023-09-01 みずほ 買い継続 6600円 → 7350円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-14 UBS 新規Buy 7350円
2023-07-07 BofA 買い継続 6000円 → 6850円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-10-03 モルガンS Overweight継続 7880円 → 8930円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-19 GS 中立継続 7200円 → 8000円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-09-14 JPモルガン Overweight継続 7460円 → 8200円
2023-09-01 みずほ 買い継続 6600円 → 7350円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-14 UBS 新規Buy 7350円
2023-07-07 BofA 買い継続 6000円 → 6850円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023-10-04 シティG 新規1(再開) 10000円
2023-10-03 モルガンS Overweight継続 7880円 → 8930円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-19 GS 中立継続 7200円 → 8000円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-09-14 JPモルガン Overweight継続 7460円 → 8200円
2023-09-01 みずほ 買い継続 6600円 → 7350円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-14 UBS 新規Buy 7350円
2023-07-07 BofA 買い継続 6000円 → 6850円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023/10/06 日本経済新聞 朝刊
三井住友銀行は5日、新株予約権の割り当てを受けるスタートアップ(新興企業)向けの協調融資を始めたと発表した。「ミドル」や「レイタ
ー」と呼ばれる事業拡大局面に入った企業を中心に、大型の運転資金や設備投資資金を貸し付ける。
複数の金融機関が加わる協調融資の実行と同時に、企業には新株予約権を付与してもらう。株式上場後に株価が行使価格を上回る場合
には、銀行側が権利行使して株式に転換し、市場で売却してキャピタルゲインを得るしくみだ。
最近では新規株式公開(IPO)市場が冷え込み、株式発行を通じた資金調達が難しくなっている。銀行に融資を求めるスタートアップが増
える一方、貸し手の銀行にとってはリスクに見合ったリターンをあげることが課題となっていた。新株予約権を組み合わせた融資の枠組みを
整え、おおむね15億円以上の資金需要に応えられるようにする。
2023/10/05 07:23
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■三井住友フィナンシャルグループ<8316.T> 7071円 -272
■着実な業績拡大に合わせ総還元成長率15%を予想、シティグループが「買い」で再開、ターゲットプライス10000円
シティグループ証券が総合銀行セクターの投資判断を短期・中期ともに強気(従来:短期強気/中期中立)に引き上げた。理由は2つ。
(1)技術的理由はバリュエーション。足元のβの低下と市場要因(TOPIXのバリュエーションの上昇)に鑑み、バリュエーション面での
評価余地が見出せた。(2)本質的理由は日本経済のインフレ期待、つまり、日本経済・銀行業績が歴史的転換点にあると考えること。
個別企業では、一時中断していた三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)を投資評価「買い」に追加。
三井住友フィナンシャルグループについては、足元の環境を踏まえ、業績見通しをアップデートし、25年度予想を加えた。ターゲットプ
ライス10000円、投資評価「買い」とする。顧客部門収益が底堅く、23年度会社計画純利益は金融市場環境の前提が保守的で、超過
達成を想定する。今後も、低位安定した与信コスト、良好な国内外の与信関連収益、経費コントロールの進展が続くと想定。今後の注
目は上期決算での株主還元のアップデート。
業績見通しのポイントは、(1)国内外与信関連事業拡大(国内海外預貸収支と融資関連手数料)、(2)役務利益引き上げ(消費者信
用と法人向け融資関連手数料)、(3)経費率は小幅引き上げ、である。23年度会社計画純利益は超過達成を予想。
今後の注目は、業績成長の確度を高めること。オーガニックにはこれまで進めてきた成長施策が一気に具現化するステージと期待し
ている。具体的には、(1)個人向け総合金融サービス「Olive」を軸にしたビジネスモデルの進捗、(2)米国での証券投資銀行収益の拡
大、(3)アジアの出資先金融サービス事業の拡大、である。加えて、日本のインフレ到来局面では、同社の日本の金融サービス事業
の強さに注目すべきである。商業銀行のアップサイドに加え、(健全なバランスシートと低い調達コストの下で、)日本トップクラスのコン
シューマファイナンス、リース、証券という多様な金融サービス事業が、同社の規律あるプラットフォームの下で運営されている。楽観
シナリオでは、前回高値(2006年4月)を上回る「カラを破る」シナリオも想定できる、と指摘。
今2024年3月期当期利益を会社計画8200億円(EPS614.9円)に対し8556億円(EPS636.3円)と予想し、来2025年3月期8944億円
(EPS665.2円)、2026年3月期9201億円(EPS684.3円)と予想している。
2023/10/06 09:23 日経速報ニュース
6日前場寄り付きの東京株式市場で日経平均株価は反落で始まり、前日に比べ70円ほど安い3万1000円近辺で推移している。下げ幅は
100円を超える場面もあった。前日の米株式相場が下落した流れを引き継ぎ、主力株に戻り待ちの売りが先行している。
前日の米株式相場ではダウ工業株30種平均が一進一退で推移した後、前日比9ドル安と小幅に下落して終えた。米長期金利が上昇し、
景気を下押しするとの懸念は根強い。東京市場でも自動車株や銀行株といった景気敏感セクターには売りが先行している。
日経平均は足元までの下落で4カ月ぶりの安値圏にある。そのなかで前日に548円高と急反発したため過度な下値不安は後退しており、
相場の底入れを狙った短期目線の買いが下値を支えている。
東証株価指数(TOPIX)、JPXプライム150指数は一進一退となっている。
三菱UFJや三井住友FGの下げが目立つ。トヨタも売られている。一方、サッポロHD、味の素が高い。三井不も買われている。
三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>の株価が5日に前日比247円高と上伸して、オシレーター系指標であるストキャスティクス
が10%台半ばの低水準で%DがS%Dを上回る中、終値で5日・25日の両移動平均線に対するプラスカイ離を回復してきたことから、
目先リバウンド局面入りとなりそうだ。週足でも26週・13週の両移動平均線の上位を維持しており、上昇トレンドが継続していることか
ら、中期的には9月22日に付けた年初来高値である7849円を目指す動きが期待できそうだ。連結PBRは0.7倍台、配当利回りも
3.4%程度の水準にある。
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週1.3%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,193,500百万円から1.3%上昇し
1,208,824百万円となった。対前年実績で見た場合2.8%の増益予想から4.1%増益予想に上方修正されたことになる。
因みにレーティングコンセンサスは4.5から4.6に上昇した。
2023/10/10 19:14 日経速報ニュース
財務省が10日発表した対外・対内証券売買契約などの状況によると、国内投資家は9月に海外の国債など中長期債を3兆3963億円
買い越した。買越額は3月以来およそ半年ぶりの水準となった。米国など海外金利が上昇(債券価格は下落)する中、利回り上昇で投
資妙味の増した海外の債券に銀行などから買いが集まった。
国内勢による買い越しは2カ月連続。週間ごとにみると9月3?9日に国内投資家は海外の債券を3兆6324億円買い越した。8月の米雇
用統計で6?7月の結果が下方修正されるなど、雇用市場の過熱感が後退したとの見方が広がった。野村証券の小清水直和シニア金
利ストラテジストは「米連邦準備理事会(FRB)の利上げが止まり、金利の低下を見込んだ外債買いが進んだ」と分析する。
投資家別の売買動向によると、国内の銀行は9月に海外債券を4兆7607億円買い越した。1カ月の買越額としては2020年3月(5兆57
78億円)以来、3年半ぶりの大きさ。22年以降の利回り上昇で投資妙味の増した海外債券に国内投資家の資金が流入した。
もっとも足元で海外金利の上昇傾向が続いている。10月上旬に米10年債利回りは一時4.8%台後半と約16年ぶりの高水準をつけた。
足元の金利上昇で国内勢が保有する海外債券の含み損が拡大している可能性がある。
三菱UFJ、第一生命HDなどやや売り優勢、米長期金利が低下傾向で上値重い展開に
三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、第一生命ホールディングス<8750>など前日終値近辺で強弱観対立のなかもやや売りに
押される展開。足もとで米長期金利が低下傾向にあることは、米国事業を手掛けるメガバンクや大手生保にとって運用環境改善期待
の後退につながり、株価面でも上値の重さにつながっている。ただ、国内長期金利はジリ高歩調にあり、前日に国内10年債利回りは
上昇一服となったものの、0.8%近辺での水準で推移している。
日本でもインフレ圧力が強まるなか、マイナス金利の解除やイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃などが日銀の金融政策の
俎上に載っており、国内金利の動向を横にらみに銀行や生保など金融セクターの押し目を拾う動きも観測される。なお、三菱UFJなど
全銀ネットのシステム不具合が報じられているが、今のところ株価への影響は限定的となっている。
<きょうの材料と有力銘柄>日銀10月会合に長期金利目標引き上げの思惑
日銀が10月30-31日に開く金融政策決定会合についてUBS証券は10日付リポートで、長期金利の操作目標を0.5%程度(現在は
0%程度)に引き上げると予想した。また、指値オペの金利水準も上方に見直し、1.0%から1.5%に変更するとみている。
日銀は7月の会合でYCC(=イールドカーブコントロール、長短金利操作)の運用の柔軟化を決めた一方、前回9月の会合では政策変更
を見送った。市場では、早期の利上げ観測もくすぶっている。
日銀の緩和修正へ向けた動きは銀行株や保険株に好材料となる。三菱UFJ<8306.T>、三井住友<8316.T>、みずほ<8411.T>のほか、
地銀や第一生命HD<8750.T>などの生保に思惑が向かう可能性がある。
2023/10/13 05:00 日経速報ニュース
「私はいま36歳。人生のほとんどは日本の『失われた30年』と重なっている。自身が所属する組織、ひいては日本をより良いものにしていき
たい」。三井住友フィナンシャルグループ(FG)の杉本秀和デジタル戦略部部長代理は2023年9月15日に開催された説明会で、こう意欲を示
した。杉本氏は新会社SMBC Wevox(ウィボックス)の社長に就任する。
SMBC Wevoxは三井住友FGが55%、人材情報サービス会社のアトラエが45%を出資し、23年10月2日に設立された。三井住友FGの営業
網を活用し、アトラエのエンゲージメント(組織や仕事に対する自発的な貢献意欲)測定サービス「Wevox」を「SMBC Wevox」というブランドで
展開していく。
Wevoxは簡単なアンケートを基に、従業員のエンゲージメントに関する状況を可視化する。三井住友FGは20年にWevoxを導入。部署やチー
ムごとにエンゲージメントの状況を測定し、組織的な改善活動につなげてきた。
当初は国内拠点で従業員2万8000人が導入し、現在は海外拠点を含む約7万人が活用している。新会社では「Wevoxの最大ユーザーとし
て得た知見を強みとして生かす」(杉本氏)考えだ。
「殻を破ろうと常々言ってきた。新会社はその一環であり、大きな成果の1つ」。三井住友FGの太田純執行役社長グループ最高経営責任
者(CEO)は、SMBC Wevoxについてこう話す。
「カラを、破ろう」――。三井住友FGはこのスローガンの下、これまでも様々な取り組みを進めてきた。中堅・若手社員による現場起点のアイ
デアを基に、社内ベンチャーを興す「社長製造業」はその1つだ。SMBC Wevoxを含め、これまでに延べ13社を設立。電子契約のSMBCクラウド
サインや、eKYC(電子的本人確認)のポラリファイもこの取り組みから生まれた。
太田社長は社長製造業について、「この動きは定着しつつあり、殻を破ろうとする社員が増えている」としつつ、「変革しようとする気持ちの
醸成に引き続き努めたい」と語る。ちなみにSMBC Wevoxの杉本社長は今回、同プロジェクトにおける社長就任の最年少記録を更新したという。
目指すは「SaaS企業」
デジタル技術を活用して殻を破る取り組みを進める銀行は、三井住友FGだけではない。セブン銀行が23年9月26日に提供を始めた新サー
ビス「+Connect(プラスコネクト)」も、殻を破る試みとみなせる。
銀行として後発のセブン銀行は、コンビニエンスストア網を生かして本人確認やQRコード読み取り機能を備えるATMを活用したサービスを
展開するなど、そもそも銀行の殻を破る存在といえる。
今回提供を始めた+Connectは口座開設や諸届け情報の変更、届け出情報の変更有無の確認といったサービスをセブン銀行のATMで可
能にするもの。利用者は金融機関の窓口に出向かなくても、近くのコンビニで手続きを済ませられる。口座開設なら約3分で完結できるという。
群馬銀行や静岡銀行などが採用、将来的に金融機関以外にも広げていく考えだ。
実は新サービスには、新たなビジネスモデルへの挑戦という意味合いもある。セブン銀行の松橋正明社長は23年9月12日に開催した記者
説明会で、+Connectによりクラウド経由でソフトウエアを提供する「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業を目指す」と語った。
ットフォーム型ビジネスであり、初期導入費用のほか、定額の利用料に加えてトランザクション量に応じた料金などが収入源となる。「当行の
ノウハウを全て、このサービスに凝縮している」と松橋社長は自信を見せる。
課題残る銀行API
殻を破る取り組みとして、筆者が個人的に今後の成り行きを注目しているのが「銀行API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)
」に関するものだ。
銀行APIは銀行の口座情報をはじめとするデータや機能を、APIを通じてサービス提供事業者に公開するもの。電子決済等代行業(電代業)
の登録を受けた事業者が、銀行と契約して利用できる。銀行口座の入出金情報や残高情報を活用した、家計簿ソフトや会計ソフトといったサ
ービスを提供する事業者の多くは、電代業者として銀行APIを利用している。
筆者が所属する日経FinTechが創刊したのは16年で、銀行APIの歴史とほぼ重なる。日本で初めて銀行API連係が始まったのは16年3月の
こと。17年には銀行にオープンAPI導入の努力義務を課した改正銀行法が成立(施行は18年)。銀行と電代業者との間の契約締結期限を20
年9月とした。
その結果、データの参照に使う参照系APIについて、都市銀行は個人向け・法人向けとも100%が対応。地方銀行も個人向けは100%、法
人向けは96.8%が対応済みだ(金融情報システムセンターの「令和4年度金融機関アンケート調査」による)。
「努力義務にもかかわらず、ここまでできているのは奇跡に近い」。23年8月10日に開催された電子決済等代行事業者協会(電代業協会)
の勉強会で、代表理事を務めるマネーフォワードの瀧俊雄執行役員CoPA(Chief of Public Affairs)兼Fintech研究所長は、こう評した。
が進まない(2)柔軟なAPI施策を打てる銀行が限られる(3)API接続料の高額化――の3点を挙げている。
振り替えのようにデータ更新が伴う処理に使う更新系APIの対応状況を見ると、都銀は個人向けが40.0%、法人向けが100.0%、地銀は同
71.0%、40.3%で、ある程度対応は進んでいるように見える。
だが更新系APIを提供していても、まだ対象とするデータや機能は一部にとどまるケースが少なくない。その背景には、APIを提供する銀行
側にとってメリットが見えにくい、セキュリティー面で懸念があるといった課題もあると見られる。
接続料も大きな問題だ。公正取引委員会が23年3月に公表した「フィンテックを活用したサービスに関するフォローアップ調査報告書」によ
ると、銀行と参照系APIを利用する電代業者との口座情報参照契約は1年で更新されるケースが多い。契約の見直しにより、「契約条件が悪
化した」と回答した電代業者は54.5%と過半数だった。その全てで参照系API接続料の値上げを求められたという。
参照系APIで取得できる情報が限られている実態も、同報告書で明らかになった。「個人口座の住宅ローン」情報を取得できない銀行は全
体の7割、「外貨預金」情報を取得できない銀行は全体の5割に上るという。
「共創」関係を築けるか
電代業協会は23年8月10日、「参照系APIの技術的改善に関する提言」を公表した。「明細取得期間の延長」「取得できる情報範囲の拡大
」といった金融機関側の対応に加えて、「電代業者の体制整備・フレームワークづくり」など電代業者側の対応も求めている点が特徴といえ
る。金融機関からAPI接続先である電代業者の体制が不十分であるとの声が多いことに応えるものだ。
特に銀行APIに関しては、銀行はAPIを用意して情報を提供する側、フィンテック企業をはじめとする電代業者は情報を受ける側であり、どう
しても対等な関係になりにくい。接続料に関して、金融機関側の言い分も当然あるだろう。
銀行APIへの積極的な取り組みで知られる、GMOあおぞらネット銀行の細田暁貴執行役員コーポレートコミュニケーショングループ長は「当
行はAPIが当たり前の時代に生まれており(設立は1994年、GMOインターネットグループが参画してインターネット銀行事業を開始したのは
2018年)、勘定系システムとフロント側を疎結合の形で設計するなど、APIの口をつくりやすかった。多くの金融機関は堅ろうな既存システム
に口をつくる必要があるので難易度が高く、料金を高額にせざるを得ない事情もあるのではないか」との見方を示す。
一方で、主要なフィンテック企業はそれなりの地位を確立しつつある。例えば、マネーフォワードとfreee(フリー)は共に12年の設立から10
年を超えており、株式上場も果たしている。両社ともチャレンジャー精神を保ちつつも、銀行と敵対するようなディスラプター(破壊者)になる可
能性は低そうだ。
瀧代表理事は「銀行と電代業者が互いにビジネス上の恩恵を得る共創関係をつくるまでには道半ば」と話す。
APIの開放をはじめ、フィンテックの発展に一定程度寄与してきた銀行と、その恩恵を受けつつデジタル活用で利用者の利便性向上に努め
てきたフィンテック企業。両者が共にもう一段、殻を破って共創関係と呼べるものを実現できるか。これが可能になれば、フィンテックの次の
10年はさらに意義深い成果を生み出すに違いない。
2023/10/13 11:49 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(8316)は13日、個人投資家(リテール)向け2本立て債の発行条件を決めた。
いずれも実質破綻時免除特約と劣後特約がつく。発行総額は1300億円で、格付けは格付投資情報センター(R&I)と
日本格付研究所(JCR)から、それぞれ「シングルAプラス」を取得する予定だ。主な条件は以下の通り。
・年限=10年
・発行額=450億円
・表面利率=1.758%
・発行価格=100円
・申込期間=10月16~27日
・払込期日=10月30日
・年限=10年(6年目以降の期限前償還条項付き)
・発行額=850億円
・表面利率=当初5年1.276%
6年目以降は5年国債金利+0.958%
・発行価格=100円
・申込期間=10月16~27日
・払込期日=10月30日
清水律子
2023年10月13日午後 2:26 GMT+91
[東京 13日 ロイター] - S&Pグローバル・レーティングは13日、「円金利の上昇が日本の企業と銀行の信用力に与える影響」と題する
リポートを発表し、日本の政策金利が2023年3月末比で24年に0.1%程度と緩やかに上昇する場合、三菱UFJフィナンシャル・グループ
(8306.T)、三井住友フィナンシャルグループ (8316.T)、みずほフィナンシャルグループ (8411.T)の3メガ銀行グループの業務純益には約3%
程度のプラス効果があるとした。
日本の政策金利については、23年3月末比で24年に0.1%程度、25年までに同0.2%程度の緩やかな上昇を予想している。
日本の経済成長率は、金融政策の変化を主因に急ブレーキがかかることはないとの見方。また、一般事業法人で増加する借入金の利払い
費の影響は経常利益を2%下押しする程度で、利払い費増加を主因にの経常利益が大きく悪化することはないとみている。
一方、こうした金利の上昇は、銀行セクターの収益にネットでプラスに働くことになるという。貸し出しなどの利回りの改善による資金利益
の増加効果が、保有債券の含み損増加という負の効果を上回るとみている。3メガ銀行グループの業務純益に与えるネットの影響は、保有
債券の利回り向上の影響を加味しない保守的な見積もりでも、業務純益対比で約3%相当のプラスの効果があるとみている。
2023/10/18 09:55 日経速報ニュース
(9時55分、プライム、コード8306)三菱UFJが続伸している。一時は前日比25円50銭(2.05%)高の1265円50銭まで上げた。債券市場で長期
金利の指標となる新発10年物国債の利回りが0.815%と2013年8月以来、10年2カ月ぶり高水準を付けた。運用収益の改善などを期待した買
いが優勢となった。みずほFG(8411)や三井住友FG(8316)も高い。
米金融引き締めの長期化観測や日銀による政策修正期待が国内金利の先高観を強めている。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは
「イールドカーブ(利回り曲線)の傾きが急になるスティープ化の動きなので金融機関は利ざやを確保しやすく、地域金融機関にも好影響が及び
やすい」とみていた。
日本経済新聞は17日、「連合は24年の春季労使交渉で、基本給を一律にあげるベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせて5%以上
の賃上げを求める方針を固めた」と報じた。市場では来春のマイナス金利政策の解除を予想する専門家が多く、早期解除の見通しと整合的な
結果との声もある。日銀の早期解除を巡る思惑もきょうの銀行株の上昇につながっている面がありそうだ。
三井住友FG (8316)
欧州系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、8,140円。
欧州系大手証券が10月18日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(Buy)に据え置いた。
一方、目標株価は7,490円から8,140円に引き上げた。因みに前日(10月17日)時点のレーティングコンセンサスは4.58
(アナリスト数12人)で「強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,111円(アナリスト数12人)となっている。
2023-10-19 UBS Buy継続 7490円 → 8140円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-10-03 モルガンS Overweight継続 7880円 → 8930円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-19 GS 中立継続 7200円 → 8000円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-09-14 JPモルガン Overweight継続 7460円 → 8200円
2023-09-01 みずほ 買い継続 6600円 → 7350円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-07 BofA 買い継続 6000円 → 6850円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023/10/20 09:28 日経速報ニュース
(9時25分、プライム、コード8306など)銀行株がしっかり。三菱UFJは相場全体の地合いの悪さから下げて始まったが、前日比8円(0.64%)高
の1246円50銭まで上昇する場面があった。現地時間19日夕の米債券市場で、長期金利の指標である10年物国債利回りが約16年ぶりに5%
台に乗せた。米長期金利の上昇に歩調を合わせ、20日の国内長期金利も上昇しており、利ざやの改善を期待した買いが支えとなっている。
三井住友FG(8316)やみずほFG(8411)も前日終値に比べプラス圏で推移する場面がある。19日の米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議
長の発言で金融引き締めが長期化するとの見方が強まった。20日朝方の国内債券市場で長期金利は上昇し、指標となる新発10年物国債の利
回りは一時0.845%と2013年7月以来の高水準まで上昇した。
SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストは10月30~31日に開かれる日銀の金融政策決定会合について、長短金利操作(イールドカーブ・コント
ロール、YCC)の撤廃などは見込んでいないと前置きした一方、「日銀会合で何らかの政策変更があるとの見方が銀行株の支えになっている
面もありそうだ」との声が聞かれた。
2023/10/20 12:42 日経速報ニュース
日銀の政策変更を視野に入れ、投資家は銀行株の買い場を探り始めた。20日午前の東京市場では日経平均株価が下げるなかで、メガバンク
株は上昇する場面もあった。これまでは日銀の緩和継続という「ハト派」姿勢から買いのきっかけをつかめなかっただけに、日銀が動けば買いの
契機になるのは間違いない。むしろメガバンク株にとって最大のリスクは米国に潜む。
業種別の東証株価指数「銀行業」は10月19日時点で昨年末を34%上回る。ただ、9月22日に年初来高値を付けた後は6%安と上値が重い。
同日までの日銀金融政策決定会合で政策変更はなく、会合後の記者会見では植田和男総裁が「物価目標に達する見通しは立っていない」など
と緩和継続を強く示唆した。このため銀行株の売りを誘った。
銀行の業績自体は好調だ。3メガバンクを合計した2023年4~6月期の連結純利益は1兆515億円と前年同期の2倍に達した。欧米の金利上
昇で海外貸出金の利ざやが拡大し、収益を押し上げた。7~9月期も堅調が続くとみられ、野村証券の高宮健リサーチアナリストは「預貸金や
手数料の収益は4~6月期までの基調を維持するだろう」とみる。
もっとも、年初来の株価上昇で今期の好業績はある程度織り込まれてきた。4~9月期決算と併せて発表するとみられる株主還元策は好感さ
れるだろうが、積極的に上値を追うには日銀の政策変更頼みの面は拭えない。
日銀が動いた場合、収益への影響はどの程度か。JPモルガン証券の矢野貴裕氏は現在マイナス0.1%である短期の政策金利を0.25%へ引
き上げれば、メガバンク3行の純利益を平均7%押し上げると試算する。大企業向け貸し出しや住宅ローンの利ざやが拡大し、銀行が日銀に預
けている当座預金残高の半分に0.25%の「付利」が実施されるという前提だ。「日銀当座預金の残り半分を利回り0.5%の円債で運用すれば増
益効果はさらに15~20%に拡大する」(矢野氏)という。
日銀の政策変更の影響は、実は地方銀行の方が大きい。預金残高に対する貸出金残高の比率である預貸率が50%前後と低いメガバンクに
比べ、地銀は80%前後とはるかに高く、預貸金の利ざや拡大の恩恵を受けやすいためだ。矢野氏の推計では円債運用による増益効果を除いて
も、りそなHDと大手地銀5行の平均で純利益は20%増えるという。増益率はメガバンク3行の3倍近い。
19日時点のメガバンクのPBR(株価純資産倍率)をみると三菱UFJが0.82倍、三井住友FGが0.73倍、みずほFGが0.68倍と1倍を大きく下回
る。銀行は貸出金を増やすとリスクウエートに応じて自己資本を積み増す必要がある。純資産が増えてしまうため、通常の事業会社と違ってPB
Rを高めるのは難しい。
それでもゴールドマン・サックス証券の黒田真琴氏は「PBR1倍の達成は可能」とみる。メガバンク3行のPBRはマイナス金利が導入される前
年の2015年には0.9~1.0倍で推移していた。「当時は自己資本の質が悪く(新しい自己資本規制の)バーゼル3に対応するため資本蓄積を優先
する必要があった。今回の方が経営環境が良く、当時よりPBRが改善してもおかしくない」(黒田氏)からだ。
リスク要因は何か。日銀の政策変更が早ければ早いほど銀行株には好材料だ。半面、日銀が慎重姿勢を変えず、マイナス金利の解除を先延
ばししたり、その後もゼロ金利解除へなかなか動かなかったりすれば失望売りを招く可能性がある。
メガバンクにとっては米連邦準備理事会(FRB)の動向や米景気も大きなリスクだ。来年以降、FRBが利下げに動けば海外貸し出しの利ざや
が縮小し、日米金利差の縮小で円高も進むというダブルパンチを受けかねない。三菱UFJと三井住友FGは銀行部門の業務粗利益の50%前後
を海外から稼いでおり、円高は収益の目減りにつながる。FRBが利下げに動くころには米景気が減速または後退に陥っている可能性もある。そ
の点からも、利益のほぼすべて国内で稼ぐりそなHDや地銀の方が有利かもしれない。
2023/10/21 日本経済新聞 朝刊
日銀は20日、金融システムの安定性を評価する金融システムリポートを公表した。国内で1%の金利上昇を仮定すると、邦銀全体では収益
効果が損失リスクを上回ると分析した。保有債券の含み損が一時的には膨らむ可能性があるものの、利ざやの拡大によるプラスの影響が上回
ることになりそうだ。
日銀は金融システムの安定性を評価・検証するため、半年に1度リポートを公表している。リポートでは「3月に米欧金融部門を巡る不確実性
が高まってからも、わが国の金融システムは健全かつ頑健」と評価した。ただ、利上げに伴う海外経済の減速などには注意を促した。同日、全
国信用組合大会であいさつした植田和男総裁は米銀の破綻に触れて「金利リスク管理の重要性は一段と増している」とも指摘した。
日銀は今回のリポートで金利が1%上昇した場合の銀行収益への影響を試算した。「金利リスク量」は金利上昇を想定したときにプラスだと
損失に、マイナスでは益となりうるが、試算では金利リスクは差し引きでマイナスの3兆円となった。
粘着的な預金基盤がリスクを相殺する。日銀の担当者は「(保有債券など)資産サイドのリスクに注目が集まりやすいが、おおむねバランス
した状態だ」と評価した。
銀行が保有する債券については価格が下落するため金利上昇後1年ほどは含み損が悪化するものの、日銀は「(数年たてば)評価損益の
悪化した債券が償還期に近づくことで、債券時価は徐々に改善していく」とみる。
一方で、利ざやをとれるため銀行は稼ぎやすくなる。日銀の試算では、大手行は貸出金の金利収入などを含む「資金利益」が金利上昇直後
から増益となった。
三井住友FG (8316)
米系大手証券、レーティング引き下げ、中立。目標株価引き上げ、7,750円。
米系大手証券が10月19日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(1(買い))から中立(2(中立))に引き下げた。
反対に、目標株価は6,850円から7,750円に引き上げた。因みに前日(10月18日)時点のレーティングコンセンサスは4.58(アナリスト数
12人)で「強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,165円(アナリスト数12人)となっている。
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023/10/24 日本経済新聞 朝刊
金融庁は大手金融機関を対象に内部監査が機能しているか一斉に点検する。不祥事が相次いでいるためで、経営陣の監査部門への協力
姿勢や組織風土などを横断的に検証する。内部監査が現場や経営の暴走を止める実効的なけん制役となり、自浄作用が働く組織への変革
を促す。内部監査に絞った一斉点検は初めて。
金融庁が近く公表する。3メガバンクやりそなホールディングス、三井住友トラスト・ホールディングスなど大手銀行9グループに求めた内部監
査の自己評価の結果やヒアリング内容をもとに実施する。金融庁が自己評価の妥当性や実効性を確認し、認識と差があれば改善に向けて個
別に議論する。
まず大手銀から始め、大手の生命保険会社や損害保険会社、証券会社、地銀にも対象を広げる。点検の背景には金融機関で不祥事が相
次いでいることがある。
22年に相場操縦の疑いで逮捕者を出したSMBC日興証券は、調査委員会から内部監査部門の監査機能が不十分だと指摘された。
23年に仕組み債の販売で業務改善命令を受けた千葉銀行は、監査部が把握した情報を経営陣に適切に報告していなかったなど「3線」と
呼ばれる内部監査が機能していなかったと認めた。
点検で具体的に確認する論点は(1)経営陣や監査役が内部監査の重要性を認識し、内部監査部門を支援しているか(2)内部監査部門が
環境変化に応じて監査基盤を強化しているか(3)組織として監査を受ける部門に内部監査への理解を促しているか――の3つだ。
経営トップがどこまで内部監査部門の体制や質の確保に関与しているか、海外などに事業領域が広がる際に十分な監査体制が整っている
かも確認する。経営上の内部監査部門の位置づけや監査を受ける部門の協力的な風土づくりのための取り組みも点検する。
3メガバンクはグループ内に証券会社など銀行以外の金融機関を抱え、事業構造が複雑になっている。内部監査部門が縦割りを排して連
携できているかが焦点になる。
ある大手銀は監査を受ける部門が認識している課題などを内部監査部門に申告する枠組みを導入した。内部監査部門がこうした取り組みを
評価することで、内部監査への理解を進めている。人工知能(AI)を駆使して内部監査を充実させている例もある。
内部監査を厳しくしすぎると、従業員が萎縮し、むしろ組織内で情報共有を阻む副作用も生みかねない。今回の点検は立ち入り検査や行政
処分など法令上の権限を使わず、個別に議論することで改善を促す。点検結果は最終報告として公表する見通し。
国際的な内部監査の実務基準を策定する内部監査人協会(IIA)は年内にも「グローバル内部監査基準」を公表する。同基準では内部監査
部門のガバナンスに関する取締役会の役割が初めて明確に規定される予定だ。
内部監査部門長の業務や内部監査部門の監督の責任は取締役会にあることが明示されるため、国際基準も加味しながら実効性を確保する
よう促していく。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-23/S302SGT0G1KW01?srnd=cojp-v2
24日の東京株式相場は続落。米国の長期金利が低下し、銀行や証券などの金融株に売りが出ている。個別銘柄では、業績を23日に開示した
ニデックの株価下落率が一時10%を超え、約3年半ぶりの安値を付けた。取引開始時は米ハイテク株高を好感した買いが先行したものの勢いは
続かなかった。
2023/10/25 日本経済新聞 朝刊
リース会社がデジタル人材の育成を強化する。三井住友ファイナンス&リースは2030年度までに3000人をデジタルトランスフォーメーション
(DX)人材に育てる。国内でリース需要が伸び悩むなか、ビジネスモデルの変革を迫られている。業務の効率化を高めながら新規事業などの
底上げにつなげる。
三井住友リースはまず25年度までに約3000人(単体の役職員や出向者)のうち500人をDX人材に育てる。レベルごとに3段階に分けた
社内の認証制度をつくり、基準を満たした社員を役員が直接認定する。認定にはIT(情報技術)の国家資格であるITパスポートなどの取得、
実践的な研修に加え、業務上のデジタルスキルの活用実績を踏まえる。
営業職はデジタル製品の外販の研修、技術職についてはアプリの開発など職種別に学ぶ内容を変える。自社で開発した企業向けの棚卸
し管理システムの外販などを強化する。全社の人材育成費用を25年度に22年度比で3倍の6億円に増やす。
2023/10/25 20:57 日経速報ニュース
25日の東京株式市場で、これまで売られていた大型株に買いが入った。株式時価総額と流動性が高い主力大型株で構成する「東証株価
指数(TOPIX)コア30」は6営業日ぶりに反発し、前日比9.75ポイント(0.9%)高の1134.01で終えた。上昇率は日経平均株価(0.7%)を上回っ
た。米金利上昇の一服を背景にした前日の米国株高を受け、半導体関連や自動車、銀行株などが上昇した。
東証規模別株価指数の「大型」も0.8%高となり、「中型」(0.4%高)や「小型」(0.3%高)を上回った。
大型株では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、東京エレクトロン、トヨタ自動車、三井住友フィナンシャルグループがそれぞれ2%高、みずほ
フィナンシャルグループと信越化学工業が1%高だった。
前日の米株式市場ではダウ工業株30種平均が0.6%高。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は1.4%上昇した。米主要企業で好決算の発
表が相次いだほか、米長期金利の上昇一服も相場を支えた。中東情勢の緊迫化に一服感も出たとの見方もある。これを受け、このところ下落
基調だった大型株を見直す買いが膨らんだ。
半導体株上昇の背景には、半導体製造装置を手掛けるKOKUSAI ELECTRICの上場もあった。25日、東証プライム市場に新規上場した
同社株は、初値が2116円と公開価格(1840円)を276円(15%)上回り、初値より高い2350円で引けた。フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレ
ーディング・ヘッドは「注目された大型IPOの滑り出しが好調で、個人投資家の買い安心感につながった」と指摘する。
ただ買い戻しは一時的との見方も目立つ。銀行株と自動車株について、岡三証券の小川佳紀投資情報部長は「国内の金融機関などによる
利益確定の売りが落ち着いた」と指摘した。足元から11月にかけて発表が本格化する2023年4?9月期決算の発表内容次第では、大型株の
中でも値動きに違いが出てくる可能性もありそうだ。
三井住友<8316>
9月22日に付けた7849円をピークに調整を継続するなか、25日線が上値抵抗線として意識されている。ただし、直近の調整で75日線に接近
したが、同線が支持線として意識されており、25日線突破を想定した押し目狙いのスタンスに向かわせそうである。
一目均衡表では雲上限がサポートとして機能する可能性もあるため、雲の切り上がりに沿った上昇が期待されよう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-27/S34KMKT0G1KW01?srnd=cojp-v2
日生「やや抑制的」、明治安田「やや慎重」、かんぽ「少し慎重」
段と金利が上がれば「それはまたハッピーだ」-富国生命の鈴木氏
生命保険各社の2023年度下期運用計画が出そろった。日本銀行の政策修正とその後の金利上昇を見込んで円債投資を抑制する姿勢が
目立ち、超長期債を中心に買い手不在による金利上昇を招くとともに、日銀の政策修正観測を強める「催促相場」に生保が一役買っている。
東京消費者物価は4カ月ぶり伸び拡大、日銀に一段の政策修正圧力
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-26/S1OS0ZT0G1KW01?srnd=cojp-v2
コアCPI2.7%上昇、コアコア3.8%上昇-いずれも市場予想上回る
強い数字、値上げの動きは予想よりも大きい-第一生命経研の新家氏
全国の物価の先行指標となる10月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、4カ月ぶりに伸び率が前の月を上回った。
エネルギーも除いたコアコアCPIとともに市場予想を上回り、日本銀行に対して政策修正に向けた圧力が一段と増す可能性がある。
2023/10/27 18:26 日経速報ニュース
国内金利の上昇(債券価格は下落)が止まらない。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時0.885%まで上昇し、およそ10年
ぶりの高水準に達した。日銀が30?31日に開く金融政策決定会合で金融政策の再修正に踏み切るとの観測から、海外投資家を中心に債券
売りの動きが広がっている。
26日の国内債券市場で新発10年物国債利回りは一時0.885%と、2013年7月以来10年3カ月ぶりの水準を付けた。日銀の植田和男総裁
が「念のためのキャップ」とした1%に一段と迫っている。2年債利回りは約9年ぶり、20年債利回りも約10年ぶりの高水準を付けるなど、幅広
い年限で国債利回りが上昇傾向にある。
けん引するのは海外勢だ。財務省が26日に発表した対外・対内証券売買契約などの状況によると、海外投資家は10月15?21日に国債な
ど国内の中長期債を9042億円売り越した。前週は9478億円の買い越しだったが、2週ぶりに売り越しに転じた。売り越し幅は4週ぶりの高水
準となる。
背景には日銀が今回の決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正に動くとの観測がある。
市場では「長期金利の変動許容上限を1.5%に広げる可能性がある」(SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジスト)といった予想が
にわかに浮上し始めた。BofA証券やUBS証券など、いくつかの外資系証券会社も今回会合でのYCC再修正を予想する。
金利上昇リスクが高まる中、金融派生商品(デリバティブ)の一種である翌日物金利スワップ(OIS)市場は活況だ。同商品は変動金利と固
定金利を一定期間交換する取引で、金利が上昇した際に損失を回避する手段となりうる。
日本証券クリアリング機構のデータによると、9月の取引高は171兆円と3月(199兆円)以来の高水準となった。特に短い年限の取引が増え
ており、「それだけ日銀のマイナス金利解除への警戒感が高まったことを反映している」(JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長)
マイナス金利の解除を見据え、短期金利の水準を予想して売買する短期金利先物市場も盛況だ。短期金利の上昇局面で事前に先物を売っ
ておけば、実際に金利が上がったタイミングで買い戻すことで利益をあげられる。
東京金融取引所と大阪取引所に上場している無担保コール翌日物金利(TONA)を対象にした3カ月物金利先物の取引高は10月、1日平均
で約2600枚に達し8月以来の高水準となった。
東京金融取引所に限れば、10月は同1700枚弱と3月の上場以来で過去最高だった。「アジアに拠点を置くような欧米系の中小ファンドを中心
に取引が増えており、徐々に国内金融機関の関心も高まりつつある」(同社の瀬尾亮介ホールセール事業部長)
今回会合で日銀が政策修正を見送ったとしても、金利上昇をにらんだ投資家の動きが債券市場を揺らす展開は当面の間続きそうだ。
2023/10/29 04:00 日経速報ニュース
「『小泉相場』の10分の1にまで下げた日本株の保有比率をどこまで戻すべきか」――。JPモルガン証券の西原里江チーフ株式ストラテジスト
のもとには、海外の機関投資家からこんな相談が寄せられた。小泉純一郎元首相の構造改革への期待から日本株が急騰した2000年代半ば
以来、久々に日本株買いに興味を示したという。
今春から初夏にかけて、歴史的な急騰劇をみせた日経平均株価。今も水面下で日本株の買い増しを検討する海外勢は少なくない。当初は
ヘッジファンドの先物買いが相場上昇をけん引したが、今は中長期で現物株を保有するファンドが関心を強めているとの指摘もある。
ただ日経平均は7月初旬にバブル後高値(3万3753円)を更新した後、騰勢が弱まり、3万1000?3万2000円台を中心に一進一退の展開が
続く。米国の長期金利上昇や中国の不動産不況など、海外発の不安材料がくすぶっているのが背景だ。
「日本株を買いたい海外投資家は多いが、足元ではリスクセンチメント(心理)が悪化している」(ゴールドマン・サックス証券の建部和礼・日本
株ストラテジスト)。東京証券取引所の投資部門別売買動向をみても、夏以降は海外勢の売り越しが目立つ。
自動車回復に期待
様子見している海外勢などが再び買いの手を動かし、日本株が上昇の勢いを取り戻すためには何が必要なのか。市場関係者の話をまとめる
と、3つの条件が浮かび上がる。
1つ目は企業業績の上振れ・拡大だ。大和証券は2023年度と24年度に、主要上場企業が連続で最高益を更新すると予測。インバウンド(訪
日外国人)消費の増加などリオープン(経済再開)の恩恵を受ける業種で、予想を超える好業績をたたき出す企業が増える可能性がある。
コロナ禍による物流停滞の解消も好材料だ。特に半導体の供給が正常化し、一時停滞していた自動車生産が回復することが、日本企業全
体の業績拡大をけん引するとの期待は強い。
円安も企業業績全体にとって追い風だ。日銀の9月短観によると、企業の想定為替レートは23年度通期で1ドル=135.75円。足元の150円程
度から円高方向に大きく乖離(かいり)しており、輸出企業を中心に業績上振れ要因になり得る。
2つ目の条件は「値上げと賃上げの好循環を生めるか」(JPモルガン証券の西原氏)。昨年から急ピッチで値上げを進めてきた企業は多いが、
これまでは原材料などコストの上昇も止まらなかった。足元では穀物や天然ガスなどの価格がピーク時から落ち着いてきたこともあり「値上げ
によってマージンを獲得できる環境になってきた」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役)。
もっとも、賃金も上昇しなければインフレで消費が冷え込んでしまい、これ以上の値上げもうまくいかなくなる。連合は24年の春季労使交渉で
「5%以上」の賃上げを要求する方針だ。企業経営者が思いきった賃上げを継続できるか。その成否は日本株の行方も大きく左右する。
海外勢、個人投資家の動き注視
最後の条件は個人マネーの流入だ。日本の家計の金融資産は今年6月末時点で2115兆円と過去最高を更新したが、株式が占める比率は1
割程度にとどまる。5割超を占める貯蓄から日本株に資金が本格的に流れ込めば、相場を押し上げる大きな原動力になる。「海外勢も個人が
日本株を買うかを注視している」(ゴールドマン・サックス証券の建部氏)という。
これまでうまくいかなかった「貯蓄から投資へ」を実現するためには、来年1月に始まる新NISA(少額投資非課税制度)の盛り上がりは不可
欠だ。東証による資本効率改善要請を背景に、増配や自社株買いに力を入れる企業がさらに増えるかも焦点になる。
市場関係者の間では、今年度末までに日経平均が3万5000円を超えると期待する声も少なくない。3つの条件を乗り越えられれば、日本株
は再び高値が見えてくる。
2023/10/30 23:00 日経速報ニュース
【この記事のポイント】
・日銀内で浮上する案は指し値オペ柔軟化
・長期金利の上限「1%」超す上昇も容認
・米金利上昇でも円安進行を和らげる効果
日銀は31日に開く金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正を議論する。現在1%としている長期金利
の事実上の上限を柔軟にし、一定程度1%を超える金利上昇を容認する案が有力だ。米金利上昇を背景に日本の長期金利は1%に迫っている。
日銀が金利を抑えつけることで、市場機能のゆがみが膨らむ事態を避ける狙いがある。
日銀は7月の決定会合で金利操作の運用を柔軟にし、それまで上限としていた0.5%を「めど」に変えた。さらに長期金利1%の水準で国債を無制
限に買い入れる「連続指し値オペ(公開市場操作)」を実施する措置を導入。1%を長期金利の事実上の上限とした。
日銀内で浮上しているのは、連続指し値オペの運用などを改めることで、一定程度1%を上回る金利上昇を容認する案だ。市場実勢に配慮する
ことで日銀の国債購入が過度に膨らまないようにし、投機筋が債券を売り浴びせる状況を未然に防ぐ考えだ。
日銀が金利操作の再修正を議論するのは、7月の政策修正以降、長期金利が日銀の想定を上回るペースで上昇してきたためだ。指標となる
新発10年物国債の利回りは30日に一時0.890%と2013年7月以来の高水準に上昇。「念のための上限キャップ」(植田和男総裁)だった1%に迫
っている。
背景には米長期金利の上昇がある。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日、経済の高成長や雇用の逼迫が続けば「さらなる金融
引き締めが正当化される」と利上げの終結観測をけん制した。引き締めの長期化を予想する声が広がる中で米長期金利は一時5%台と16年ぶり
の水準まで上昇した。
為替動向も日銀の判断に影響を与える。政府内には物価高を助長する円安への警戒感が根強い。26日の外国為替市場で円は対ドルで1ド
ル=150円台後半と1年ぶりの円安・ドル高水準に下落した。日米金利差の拡大を背景に円安基調が続く。
日銀が金利操作で長期金利の上昇を強引に抑え込めば、高金利通貨のドルに資金が流れ込みやすくなり、さらなる円安を招きかねない。
日銀が長短金利操作を修正して一定程度の金利上昇を容認すれば、一方的な円安進行に歯止めがかかる可能性がある。
金利操作を再び柔軟にすれば長期金利が日銀の想定を超えて上昇することもありうる。日銀が大量の国債買い入れを迫られるリスクは残る。
日銀は31日に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価や景気に対する政策委員の見通しを示す。23年度は2.5%、24年度は
1.9%としている消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率の見通しを上方修正する方向だ。
24年度も2%台の見通しを示せば、3年連続で2%以上となり「持続的・安定的」に2%を上回るという目標達成が近づく。日銀は賃上げの持続力
も見極めながら、マイナス金利政策の解除といった金融正常化への道筋を探ることになる。
【関連記事】
・日銀、金利操作の再修正論 長期金利「上限」1%接近で
・日銀、長期金利安定へ「関与」継続の公算 YCC撤廃後も
2023/10/31 09:29 日経速報ニュース
(9時25分、プライム、コード8306など)銀行株が大幅高となっている。三菱UFJは一時、前日比43円(3.49%)高の1273円を付けた。31日付の
日本経済新聞朝刊は「日銀は31日に開く金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正を議論する」と報じ
た。三菱UFJなど金利敏感の銀行株に買いが入っている。三井住友(8316)やみずほFG(8411)も高い。
報道によると、日銀が現在1%としている長期金利の事実上の上限を柔軟にし、一定程度1%を超える金利上昇を容認する案が有力だという。
アイザワ証券の三井郁男投資顧問部ファンドマネージャーは銀行株について「金融政策の正常化まではまだ時間がかかるとみられるが、世界
景気の先行き不透明感が増す中で、バリュー(割安)株の一角としても物色が向かいやすい」とみていた。
2023/10/31 13:06 日経速報ニュース
日銀は30~31日に開いた金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用柔軟化を決めた。長期金利の
上限は1%を「めど」とした。長期債を対象に原則、毎営業日実施する「連続指し値オペ(公開市場操作)」で長期金利の上限を厳格に抑える
ことは副作用が大きくなりうるとして、大規模な国債買い入れと機動的なオペで金利を操作するよう見直す。YCCの運用については、9人の
政策委員のうち8人が賛成し、1人が反対した。
マイナス0.1%の短期政策金利は据え置く。長期金利の目標はゼロ%程度で変えなかった。この金融市場調節方針と整合的なイールドカ
ーブ形成を促すため、大規模な国債買い入れを継続し、機動的に買い入れ増額や指し値オペ、共通担保資金供給オペを実施する方針は維
持した。もっとも指し値オペは「金利の実勢等を踏まえて、適宜決定する」とした。「プラスマイナス0.5%程度」としていた長期金利の変動許容
幅の記述は削除した。
YCC運用柔軟化には中村豊明委員が「企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」として反対した。
国債以外の資産買い入れについては、上場投資信託(ETF)を年約12兆円、不動産投資信託(REIT)を年約1800億円に相当する増加ペ
ースを上限に必要に応じて買い入れることを決めた。企業が資金調達のために発行するコマーシャルペーパー(CP)と社債については、買い
入れ残高をCPなどは約2兆円で維持する。社債などは新型コロナウイルス感染症拡大前の水準(約3兆円)に徐々に戻すとしたうえで、社債
の発行環境に十分配慮して進めるとの方針を維持した。資産買い入れ方針は全員が賛成した。
日銀は2016年9月にYCCを導入。長期金利をゼロ%程度に誘導し、21年3月には変動幅を「プラスマイナス0.25%程度」と明示した。国内
外の物価上昇などを背景に金利上昇圧力がかかるなか、22年12月に変動幅をプラスマイナス0.5%程度と倍にした。23年7月会合では「プ
ラスマイナス0.5%程度」を「めど」とし、連続指し値オペを実施する利回り水準を0.5%から1%に引き上げ、事実上の金利上限を1%に広げて
いた。
マネタリーベースに関しては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで「拡大方針を継続
する」との方針を維持した。
2023/10/31 13:18 日経速報ニュース
日銀は31日に開いた金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正を決めた。10年物国債の指し値オペ
(公開市場操作)の運用を見直し、長期金利の事実上の上限だった1%を「めど」とし、一定程度超えることを容認する。政策運営を柔軟化する
ことで市場機能の低下を避ける狙いがある。
マイナス金利政策や上場投資信託(ETF)買い入れといった大規模な金融緩和策の大枠は維持した。修正措置は31日から運用する。植田
和男総裁は31日午後に記者会見し、決定内容を説明する。
日銀はこれまで0.5%程度を長期金利の上限の「めど」としたうえで、国債を無制限に買い入れる指し値オペで金利を1%以下に抑え込んでき
た。今回、上限のめどを0.5%程度から1%に引き上げた。指し値オペは従来のように毎営業日実施して厳格に金利を抑え込むのではなく、「金
利の実勢等を踏まえて適宜決定する」とした。長期金利が1%を一定程度上回ることを容認する。
日銀は2022年12月に市場機能の改善を目的に、長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度に拡大。7月に「めど」に変えた上で、大
量の国債購入で金利を強制的におさえ込む事実上の上限を1%に引き上げた。7月の政策修正からわずか3カ月で次の一手を繰り出すことに
なった。
日銀が修正に踏み切ったのは、長期金利が日銀の想定を上回るペースで上昇してきたためだ。指標となる新発10年物国債利回りは31日に
一時0.955%と13年5月以来の高水準に上昇。「念のための上限」(植田総裁)の1%に迫っていた。
今回の修正は長期金利が上昇しても日銀の国債購入が過度に膨らまないようにする狙いがある。日銀の国債大量購入は金融市場のゆが
みを膨らますことにつながるためだ。日銀は公表文で今回の修正理由を「長期金利の上限を厳格に抑えることは強力な効果の半面、副作用も
大きくなりうる」と説明した。
ただ金利が日銀の想定を超えて上昇し、結果として大量の国債買い入れを迫られるリスクは残る。決定会合では修正案に「企業の稼ぐ力が
高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」として中村豊明審議委員が反対票を投じた。
物価高も長期化している。31日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の23年
度の前年度比上昇率の見通しを2.8%、24年度は2.8%と7月時点からいずれも引き上げた。25年度は1.7%だった。22年度から3年連続で3%前
後の水準となった。前回7月の見通しではそれぞれ2.5%、1.9%、1.6%だった。
外国為替市場では10月に入って、円が1ドル=150円台をつけるなど円安基調が続いていた。円安は輸入物価の上昇を通じて物価高を助長
する側面がある。
日銀は公表文で2%の物価安定目標に向け「消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていく」とした上で「粘り強く金融緩和を継続する
ことで経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく」と記載した。今後は賃上げや物価動向を見極め、マイナス金利解除といった金
融正常化のタイミングを慎重に探ることになる。
2023/10/31 14:12 日経速報ニュース
日銀は31日、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を再修正した。1%を超える長期金利の上昇を一定程度容認する。再修正の
決定後、外国為替市場では1ドル=149円30銭台から150円台前半まで円安・ドル高が進み、株式相場は上昇に転じた。今後の相場の見通し
を市場関係者に聞いた。
「円安は2023年末にピークアウト、年度末は1ドル=140円」野村証券 チーフ為替ストラテジスト 後藤祐二朗氏
――日銀の発表直後に円安・ドル高が進みました。
「日銀は長期金利を厳格に1%以下に抑えることをやめただけで、1%を上限のめどとする方針を示した。長期金利が1%付近まで上がってき
たときに、日銀が金利の上昇を容認するかどうかは未知数だ。金利の上昇を許さない姿勢を示す可能性も残る。想定ほど(金融引き締めに積
極的な)タカ派的ではないという解釈で円売りが広がった」
「米長期金利は高水準を保ちドル高の圧力は依然として強い。今回のYCC再修正はこのドル高の圧力を継続的に吸収できるほどのパワーは
なく、円安方向への値動きにはなりやすい。円買いの為替介入は1ドル=152?153円前後までは控えられる可能性があり、特に11月中はこの
水準までの円安進行は考慮に入れる必要がある」
――23年度末の円相場をどう予想しますか。
「23年末ごろには米景気と米長期金利のピークアウトの兆候が出てきそうだ。日銀の金融政策の正常化への意識も高まり、円高・ドル安方向
に転換する。23年度末には1ドル=140円まで円が強含むと予想している」
「150円近辺の円安水準続く」SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地慎氏
――YCCの再修正に関連する金融市場の反応をどう分析しますか。
「市場はYCCの再修正報道を受けた30日夜はいったん円高方向で反応した。しかしその値動き自体は極めて限定的だった。米金利が大きく
上昇している局面では、円相場の居所は米金利次第になりつつある。YCCの再修正では大きな円買い要因にはなりにくい」
「日米金利差に伴う円安圧力は残るだろう。円相場は年内に1ドル=142?152円で推移するとみている。日本の鉱工業生産や賃金の動向な
どをみると、マクロ的な経済環境は大きく改善していない。マイナス金利の解除は遠いとみている」
――午後3時半からは植田和男総裁による記者会見があります。
「明確な賃金上昇を認める発言は出てこないとみている。植田総裁は市場が過度な政策修正を織り込まないよう金融緩和の正常化には慎重
姿勢を崩さないだろう。市場は円安方向に反応する可能性が高い」
「長期金利、年度内は0.55?1.05%で推移」 東海東京証券 チーフ債券ストラテジスト 佐野一彦氏
――来年3月末までの長期金利の見通しを教えてください。
「0.55?1.05%での推移を予想する。市場は既に来春までのマイナス金利の解除を織り込んでおり、国内長期金利は米金利が上がれば上昇
していくだろう。米金利の上昇につられて1%を試す展開は十分想定できる」
「もっとも、1%を大きく超える金利上昇は考えづらい。国内銀行は余資を抱えており、1%の節目に達するとそれなりに投資が出てくる。1%を
超えれば、国内勢の買いで金利上昇は止まるだろう。海外勢の国債売りも以前ほど活発ではない。一部で買い戻しが入ると予想する」
「米国はそろそろ景気減速の局面に入るとみている。7?9月の景気が強かった反動で、10?12月は大幅に成長が減速するはずだ。来年に
入ると、景気後退のリスクがある。国内金利にも低下圧力がかかるだろう」
「政策正常化期待で引き続き銀行株に物色」 大和アセットマネジメント 調査部長 長野吉納氏
――日銀の発表直後に日経平均株価は上昇に転じました。
「31日午前の東京株式市場は日銀が金融政策の正常化に向けて一歩踏み込むとの思惑から売りが優勢だった。日銀は長期金利の事実上
の上限だった1%を『めど』としたものの、それ以外に大きな変更点はなく、一定の買い安心感につながった」
――午後に一時的に銀行株が弱含みました。今後物色の対象は変わるでしょうか。
「銀行株はこれまで金融政策の正常化期待で買われてきた。今回の決定会合で大きな政策修正がなかった分、午後は一時的に売られたが
、期待がしぼんだわけではない。マイナス金利の解除が実現して材料出尽くしになるまでは継続して買われるだろう」
――日本株の当面の見通しは。
「このところの国内長期金利の上昇は米長期金利の上昇に連動している面が強い。米長期金利の上昇が続く限りは国内外の株式相場の
上値は重い。米国株は経済統計に一喜一憂する展開が続き、日本株でも同様にしばらく方向感が出にくいだろう」
「米国や中国の景気に不透明感があり、しばらく日本の外需系企業の株価はふるわない可能性がある。一方、内需は堅調に推移している
ことから、小売や食品、サービス系の業種は好まれて買われそうだ」
2023/11/01 日本経済新聞 朝刊
トヨタ自動車や三井住友フィナンシャルグループなど国内企業連合が投資会社と組んで水素産業の育成を後押しするファンドを立ち上げる。主
に水素の製造・貯蔵施設といったインフラの底上げや関連技術を持つ新興企業に投資する。脱炭素達成に向けて日本企業の競争力強化を狙う。
水素関連投資に特化したファンドは国内で初めて。
2050年のカーボンニュートラルを目指す政府は今後10年間で官民合わせて150兆円超の資金が必要になると試算する。このうち政府支援
は約20兆円にとどまり、大半は民間マネーになる。企業連合は水素ファンドを民間主導の脱炭素投資の呼び水にしたい考えだ。
民間企業約280社で構成する「水素バリューチェーン推進協議会」がファンドを設立する。運営は主に国内投資会社のアドバンテッジパートナー
ズ(東京・港)が担う。24年の運営開始をめざす。協議会参加企業のほか、国内外の機関投資家などからも出資を募り、まず数百億円規模での
始動をめざす。
先進技術を持つ海外企業なども投資対象に加えて、蓄積した知見を国内企業に還元する。1件あたりの投資額は数億~数十億円になるもよう。
ファンド運営期間は10年超を見込み、最初の5~6年程度で投資する。将来は後続ファンドを順次立ち上げ、総額で数千億円規模に育てる構想
を描く。
アドバンテッジのほか、三井住友DSアセットマネジメントもファンド運営を担う。アドバンテッジが投資先の選定や実行、事業拡大の支援を、三井
住友DSがファンドの管理業務や投資後の環境面への影響評価をそれぞれ担当する。投資活動では協議会参加企業の知見も生かす。
2023/11/03 日本経済新聞 朝刊
日銀の金融政策修正による金利上昇を受け、定期預金の金利引き上げなどの動きが広がってきた。三菱UFJ銀行、三井住友銀行と三井
住友信託銀行が定期預金金利の引き上げを決め、みずほ銀行も検討に入った。住友生命保険は11月に一時払い終身保険の予定利率を
約7年ぶりに1%台へ上げた。長引く超低金利で家計の受取利息は30年で8割強減った。金融所得への関心を失っていた家計は転機を迎
える。
三菱UFJ銀行は6日から定期預金の金利を、10年物で現行の0.002%から0.2%へ100倍の水準に上げる。期間10年の預金金利上
げは12年ぶりで、2012年以来の水準だ。期限にかかわらず一律0.002%だった預金金利は5~6年物で0.07%、7~9年物では0.1
%とする。
これまで大手行にとどまらず、地方銀行も定期預金の金利を横並びで0.002%としてきた。
定期預金の金利は対応する期間の金利をもとに、営業上の戦略を考慮して決めるのが一般的だ。日銀による相次ぐ金融政策の修正で、足
元の長期金利は0.9%台と約10年ぶりの高さになっている。ある大手行関係者は「日銀が政策修正に動き、5年以上の金利水準の上昇へ
道筋が立ったことで、三菱UFJは預金金利の引き上げに踏み切ったのではないか」と話す。三井住友銀行も三菱UFJ銀行と同水準に引き上
げる。
三井住友信託銀行は満期まで解約できないタイプの5年物の金利を0.1%と現在の10倍にする。通常の定期預金も7年物を0.1%と50
倍にする。6日から適用する。三菱UFJ信託銀行は6日から5年物の定期預金の金利を0.002%から0.07%に引き上げる。
将来的な金利上昇をにらんだ預金量の確保が重要になってきたことも背景にある。大手行の幹部は「預金の収益性が高まり、口座数と預金
量の増加が銀行にとって重要な局面になっている」と話す。三菱UFJ銀行の決定を受け、当面先だと考えていた預金金利の引き上げを検討す
る銀行も出始めた。
住友生命は1日から、保険料をまとめて納める一時払い終身保険の予定利率を0.9%から1.0%に上げた。10月には0.75%から0.9%
に上げており、2カ月連続の上げとなる。明治安田生命保険も12月1日以降の契約分から教育資金の確保を目的とする学資保険の予定利率
を0.75%から1.3%と6年ぶりに引き上げる。
新型コロナウイルスの感染拡大が一巡し、米連邦準備理事会(FRB)など海外の中央銀行はいち早く政策金利の引き上げに動いた。金融商
品の利率上げは米ドル建てなど外貨建ての商品が先行。三井住友銀行は9月下旬から、5年ぶりに米ドル建て定期預金の金利をそれまでの
年0.01%から5.3%へ大幅に引き上げた。
三井住友銀行に触発され、外貨建て預金金利の引き上げ競争は激しくなっている。SBI新生銀行は10月に米ドル建て定期預金の金利を
5.3%から6.0%に、ソニー銀行も10月に5.0%から5.3%に上げた。三菱UFJ銀行は10月20日以降、円からの両替時に限って1年物
の米ドル建て定期預金で年5.5%の利率を設定している。
金利上昇を踏まえた各社の動きは日本の家計を変える可能性がある。家計は約2000兆円の金融資産を抱えるが、受取利子は20年時点
で5.7兆円と家計の利子収入はピーク時である1991年の38.9兆円から85%減った。80年代半ばに5~6%だった大手行の定期預金の
金利は日銀の低金利政策で足元ではほぼゼロ%にとどまり、金融商品の利回りは下がり続けてきた。
もっとも金利上昇は企業の借入金利や個人の住宅ローン金利が上がるなど逆風にもなる。日本の債務残高が国内総生産(GDP)比で約26
0%におよび、先進国では最悪の水準だ。借金の利払いに充てる国債費が膨らめば、財政の持続性という観点では副作用となる。
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を修正した日銀は、なおマイナス金利政策を維持する。三菱UFJ銀行も期間5年未満である定
期預金の金利を0.002%に今回据え置くなど金融商品の利率の引き上げはまだ限定的だ。マイナス金利政策が見直されれば、幅広い金融
商品で利率を変える動きが本格化する可能性がある。
2023/11/06 14:10 日経速報ニュース
6日後場中ごろの東京株式市場で日経平均株価は前営業日比730円ほど高い3万2600円台後半で推移している。値がさの半導体関連
の上昇をけん引役に引き続き堅調だが、上値追いには一服感も出ている。海運株の下げが相場の上値を抑えている。
日銀の植田和男総裁が6日、名古屋での金融経済懇談会で粘り強く金融緩和を続ける姿勢を強調するなかで、三菱UFJなど銀行株も午
後に入って軟調に推移している。
2023/11/07 23:00 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は7日、米現地法人傘下の貨車リース会社、SMBCレール・サービシーズを米投資会社のITEマネジ
メントに売却すると発表した。売却額は非公表。2023年10?12月期に、税引き後ベースで約5億6000万ドル(約840億円)の売却損を計上す
る。
SMBCレール・サービシーズは13年に200億?300億円で買収したフラッグシップ・レール・サービシーズと、17年に約3500億円で買収した
アメリカン・レールカー・リーシングが前身。17年の買収当時は車両数が全米6位となる5万台超に増えた。エネルギーなどの輸送需要の拡
大で安定した成長を見込めると踏んでいた。
米金融当局による銀行への規制が厳しくなる中、傘下のリース会社でも規制対応のコストが増していた。貨車リース同士の競争も激しくな
り、これ以上の成長が見込めないと判断した。
24年3月期の通期業績に対する影響は今後見極める。三井住友は23?25年度の中期経営計画で、資本効率を高めるため海外を中心に
不採算事業を削減するとしていた。
2023/11/08 13:19 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は8日の衆院財務金融委員会で、政府・日銀が掲げる物価2%目標の達成に向け、「物価と賃金の好循環が少しずつ
起きている」との認識を示した。その上で「(好循環が)まだ少し弱いことを考えて現在の緩和政策を維持している」と述べた。
現在の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)やマイナス金利などの大規模緩和をいつまで続けるかについては「(好循環の見
通しが)ある程度の確度で持てる状態になるかだ」と強調した。「(物価を考慮した)実質賃金が必ずプラスに転じていなければいけないかとい
うと、必ずしもそうではない」と話した。
日銀は10月の金融政策決定会合でYCCを修正し、長期金利の事実上の上限だった1%を「めど」とし、一定程度超えることを容認する政策修
正を行った。植田総裁は修正理由について「マーケットのボラティリティー(変動率)を高め、為替レートのボラティリティーにもつながってしまう
副作用を抑えることを念頭に置いている」と説明した。
日銀が消費者物価指数(CPI)の見通しの上方修正を繰り返していることには「誤りがあったことは認めざるを得ない。見通しが適切に行われ
るよう努めていきたい」との認識を示した。
【関連記事】
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2023/11/08 20:11 日経速報ニュース
8日の東京株式市場で銀行株が大幅安となった。業種別日経平均株価「銀行」は前日比5%安の1568.02と、約1カ月ぶりの安値をつけた。
日米で長期金利の上昇が一服し、利ざや拡大による業績改善期待がしぼみ、利益確定売りが広がった。日銀による早期のマイナス金利解
除への警戒感も強まっている。
業種別日経平均「銀行」は4日続落し、1日につけた約6年ぶりの高値(1704.1)から8%近く下げた。8日の下落率は米銀の経営破綻でリス
ク回避が広がった3月14日(6%安)以来、約8カ月ぶりの大きさだ。
主因は金利低下だ。米長期金利の指標となる10年物国債利回りは7日に4.5%台半ばと、10月のピークから0.5%近く低下。経済指標の弱
含みで米連邦準備理事会(FRB)による追加の利上げ観測が後退した。
日本の新発10年債利回りも8日に0.8%台半ばまで下げた。日銀の植田和男総裁は8日の衆院財務金融委員会で「長期金利が1%以上、
大きく上がらないようなオペレーションを続けている」と語った。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「預金金利と貸出
金利の差(利ざや)の縮小懸念から投資家の利益確定売りが出た」とみる。
地方銀行の中でも西日本フィナンシャルホールディングスや九州フィナンシャルグループが7%安と、九州地盤系の下げが大きい。ある外資
系証券の営業担当は「海外投資家はメガバンクだけでなく、半導体企業の進出で成長が見込める九州地銀も物色している」と指摘していた。
足元で海外マネーが逆回転している可能性もある。
市場では日銀が来年初めにもマイナス金利の解除に動くとの警戒も広がる。銀行は預金など短期で資金を調達する一方、住宅ローンなど
長期の資金を貸し出す。GCIアセット・マネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネジャーは「短期金利が長期以上に上昇すれば、利
ざやの縮小に拍車がかかる」と指摘。「銀行株に投資するときに見るべきポイントが金利水準から利ざやの大きさに移っている」と話す。
2023/11/09 08:08 日経速報ニュース
中村貴司・東海東京調査センターシニアストラテジスト 9日の東京株式市場で日経平均株価は反発して始まりそうだが、その後は前日終値
(3万2166円)を挟んで一進一退の動きになると考えている。前日の米債券市場で長期金利が低下し、ハイテク株比率の高いナスダック総合株
価指数が9日続伸した流れから、東京市場でも値がさのグロース(成長)株には買いが先行しやすい。もっとも、前日に銀行株が急落したよう
にバリュー(割安)株から資金が流出してグロースが買われる「セクターローテーション」の様相でもあり、全体相場としての方向感は見えにくい
だろう。
米国や中国などで、景気の「先行指標」とされる統計が悪化している一方、「遅行指標」とされるものは底堅い印象だ。長期目線の投資家は
2024年以降の世界景気の先行きについて見方を定められず、運用リスクを取りに行けない状況が続いているようだ。半面、短期目線の投資家
は景気が悪化する前の「最後の買い場」とばかりに値幅を取るためのしかけ的な売買をしているため、日経平均もボラティリティー(変動率)が
高くなっている。
きょうは取引開始前に10月30~31日に開催した日銀金融政策決定会合の「主な意見」が公表される。仮に金融引き締めに前向きな「タカ派」
寄りな内容だと受け止められれば短期投資家にとっては売りの口実となりやすく、注意が必要だ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-09/S3H2X2T0G1KW01?srnd=cojp-v2
金利の存在する世界へ準備を、市場への情報発信を進めることが重要
目標実現の可能性高まるとの声、十分な角度で見通せないと複数指摘
日本銀行がイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の再柔軟化を決めた10月30、31日の金融政策決定会合で、ある政策委員
はYCCの柔軟化が金融緩和を維持しながら円滑に金融正常化を進める上でプラスに働くとの見解を示した。「主な意見」9日に公表した。
この委員は、YCCの柔軟化は「出口までの間、副作用の発現を抑制し、金融緩和を効果的に継続するため、そして将来の出口以降は金融緩
和を維持しつつ、円滑に金融正常化を進める上でも、大きくプラスである」と述べた。また、金融緩和政策からの出口を念頭に「金利の存在する世
界への準備に向けた市場への情報発信を進めることが重要である」との意見も出た。
企業による価格転嫁が長期化し、日銀の想定を上回る物価上昇圧力が続く中で、賃金と物価の好循環に向けた前向きな動きも見られている。
政策委員からは、物価安定目標の実現による政策正常化の可能性を意識し、市場との対話を含む環境整備の重要性を指摘する声が出始めてい
る。
会合では、YCC政策における長短金利の操作目標を維持した上で、連続指し値オペの停止など長期金利の上限1%超えを容認する柔軟化措
置を決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、YCC修正後の長期金利は、機動的なオペ運営を前提に「1%を大幅に上回るとはみていな
い」と述べた。
ある委員は、柔軟化によって名目長期金利の上振れが起きても、「実質長期金利はマイナス圏にとどまり、緩和効果は強いままと見込まれる」
と指摘。一方で連続指し値オペによって長期金利を厳格に抑制すれば、「市場機能や市場のボラティリティの面で大きな副作用が発生するリスク
は高くなっている」とした。
物価見通し
政策決定と同時に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比上昇率を2023年度から
25年度まで全て上方修正。22年度から3年連続で2%を超える見通しを示した。
ある委員は、2%物価目標の持続的・安定的な実現が「7月の会合時点と比べ一段と高まっていると考えられる」との見方を示した。実現までの
距離感に関しては、「現時点では、物価安定の目標の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には、なお至っていない」といっ
た慎重な意見も複数あった。
目標達成の判断について、ある委員は「今後の賃上げ動向をはじめ、賃金と物価の好循環を双方向からしっかりと確認していく必要がある」と指
摘。別の委員は、来年の賃上げ率は本年を上回る蓋然(がいぜん)性が高いとし、「物価安定の目標の実現が視野に入ってきたと考えているが、
今年度下期はその見極めの重要な局面である」と語った。
他の「主な意見」
YCCの下で粘り強く金融緩和を継続する必要がある
米長期金利上昇の影響を受け、日本の長期金利に想定外の上昇圧力
このタイミングでYCC修正すると金融引き締めと受け取られる可能性
YCC柔軟化、できるだけ市場に金利形成を委ね流動性の確保・回復が重要
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[東京 9日 ロイター] - 11月のロイター企業調査で、日銀がマイナス金利政策を解除した場合の経営に対する影響を聞いたところ、「ある」が
25%、「ない」が23%で回答が拮抗した。同政策に対するこれまでの評価は、借り入れ負担が減ったとの答えが多かった一方で、特段のメリッ
トを感じていない企業も過半を占めた。
解除時期の見通しについては、米金利動向や衆院の解散・総選挙など不透明要因が多く、見方が定まっていない。また、日銀が解除に動いた
場合の為替相場について、120―140円へと現行水準からやや円高に振れるとの見方が7割を占めた。
調査は10月24日─11月2日。調査票発送企業は502社、回答社数は243社だった。
日銀は、2016年1月の金融政策決定会合でマイナス金利の導入を決定。金融機関が保有する日銀当座預金の一部にマイナス0.1%の金利
を適用している。
マイナス金利政策がこれまで経営にプラス効果をもたらしたとする企業は、「大いにプラス」、「ややプラス」を合わせて40%だった。多くの企業は
「借入金利の利払いの縮減」(電機)をメリットとして挙げた。また、その結果として「設備投資をしやすい環境になる」(卸売り)との声もあった。
一方で「どちらでもない」が53%と過半数を超えた。
4月に植田和男総裁が就任して以降、日銀は7月、10月と2度にわたって長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化に動い
た。次の一手として注目されるマイナス金利解除が行われた場合、経営に影響があるかどうかについては「ある」が25%、「ない」が23%とほぼ
並んだ。半分以上が「解除の仕方による」、「分からない」と影響を見通せていなかった。
また、マイナス金利がいつ解除されるとみているかを聞いたところ、24年1─3月期、4―6月期、下期がそれぞれ15%、27%、28%だった。
25年以降との回答も26%で見方が分かれる結果となった。
物価上昇を上回る賃上げを解除の必要条件に挙げる企業が多い中、企業のコメントからは、世界景気の動向や国際的な金利情勢、国内の衆議
院選挙など、政策決定時期を左右しそうな変数が依然多いとみている様子がうかがえた。
YCCの柔軟化などで日本の金利も上昇しつつあり、10年物長期金利は一時0.9%台に乗せた。企業に金利上昇への備えを聞いたところ、37
%が「資金調達手法の変更」、25%が「借入の長期固定化」と回答した。「無借金経営の継続」(サービス)という声もあった。
日米の金利差を背景に円安が進んできた為替相場が、マイナス金利解除でどう動くかは、現在の1ドル=150円付近からからやや円高に振れ
るとの予想が多かった。「120―130円未満」との回答が33%、「130―140円未満」が38%と、120―140円と見込む企業が7割を占めた。
2023/11/09 13:11 日経速報ニュース
みずほ銀行は9日、大企業向けの融資金利の指標となる長期プライムレート(最優遇貸出金利)について、11月分を前月の年1.50%から引き
上げて年1.60%にすると発表した。2011年4月以来の高さとなる。国内社債市場や国債市場をはじめとした、市中金利の上昇などを踏まえて見
直しを実施したという。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-09/S3U785T0AFB401?srnd=cojp-v2
マイナス金利とYCC解除の順序は情勢次第、現時点で表明できず
賃金・物価の好循環の確認が重要、来年の春闘は重要な要素の一つ
日本銀行の植田和男総裁は9日、賃金動向などを反映する基調的なインフレ率が目標の2%に向けて徐々に高まっていくとしながらも、「まだ
十分な自信はない」と語った。参院財政金融委員会で答弁した。
総裁は2%を上回って推移している消費者物価について、輸入物価上昇の価格転嫁といったコストプッシュ型と賃金・物価の好循環に基づく基
調的なインフレ率に大別できると説明。足元の物価上昇の主因である前者の影響は今後減衰していくとする一方、後者は2%に近づく見通しを
持っているが、「もう少し自信を持てるようになりたい」と述べた。
日銀は10月31日の金融政策決定会合後に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年
比上昇率を2023年度から25年度まで上方修正した。3.0%上昇した22年度から3年連続で2%を超える見通しを示したが、持続的・安定的な目
標実現を見通せる状況ではないとしており、総裁はこの日の国会答弁でその根拠を説明した。
総裁は、物価目標実現にある程度の自信を持てるまで現在のマイナス金利とイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の枠組みを維
持するとの見解を改めて表明した。その上で、解除の順序は目標実現が見通せた時の経済・金融情勢に大きく依存するとし、「現時点でそこを
決めたり、決めて表明するということはなかなかできない」と述べた。
目標実現の見通しを持つには、「賃金と物価の好循環が強まっていくかどうかを確認することが重要だ」と説明。一部で積極化している賃金・
価格設定行動が定着するかなどを見極めたいとし、そのためには「来年の春季労使交渉の動向が重要な要素の一つになる」との認識を改めて
示した。
他の発言
物価の先行きを見通すためには、賃金がある程度以上上がることは極めて重要
中央銀行には通貨発行益存在、一時的に財務が悪化しても政策運営能力に支障ない
中銀財務リスクに注目集まれば無用の混乱生じて信認低下のリスク、財務の健全性確保は重要
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為替変動、物価見通しに大きな影響あれば政策変更も-日銀総裁
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-09/S3TZFZT1UM0W01
東京株式市場で銀行株への売りが続いている。市場では、短期的には投資家が強気に傾き過ぎた反動が出ていると見方があり、銀行株高の
基調は変わらないとの予想もある。
東証33業種別の銀行業指数は9日の下落率が一時2%を超えた。4営業日連続で値下がりし、取引時間中で9月1日以来およそ2カ月ぶりの
安値を付けた。8日の終値で4.8%安と8カ月弱ぶりの下落率になった流れを引き継いだ。
銀行株8カ月ぶり急落、金利低下嫌気-日銀総裁発言に失望との声
米国や日本で長期金利の先高観が後退していることが下落の背景だ。ピクテ・ジャパンの松元浩運用・商品本部シニア・フェローは、年内発表
の企業決算に備えたヘッジファンドなどがいったんポジションを軽くしようとしているとみる。短期的には「あまりにも投資家がおなかいっぱいに持
っていた。過熱感を冷ますためには値幅調整は必要かもしれない」と話した。
銀行指数の推移 | 調整色強まる
大和証券が10月に実施した国内外の機関投資家調査によると、強気から弱気を引いたセクター判断で、銀行は33業種中トップの強気だった。
銀行業指数は10月末までの過去半年間で35%上昇し、33業種で2位の上昇率だった。
もっとも、9日の銀行業指数は午前取引終了間際に前日終値を上回る場面があった。野村証券の伊藤高志シニア・ストラテジストは、銀行株は
国内外の金融政策の決定が一巡した後のスピード調整局面にあると分析する。日本銀行の金融政策正常化で収益環境が改善するロジックが
ひっくり返らない限り、「すう勢的な株価の方向性が変わるとは考えづらい」と話した。
[東京 9日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は9日、大規模な金融緩和策からの脱却を慎重に進め、債券市場に大きな変動を引き起こさない
ようにしたいと述べた。2%の物価目標を持続的に達成するためには賃金の伸びが「2%をやや上回る」必要があるとの認識も示した。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)とのオンラインインタビューで述べた。
植田総裁は「インフレ率が持続的に2%を付けるまで、マイナス金利を含めイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を続けることになる
」と述べた。
「目標達成に向け進展が見られるが、こうしたフォワード・ガイダンスを解除するまで依然一定の距離がある」と指摘した。
その上で「この距離がどれくらいになるかはかなり不透明だ」と発言。「現在採用している各措置をどのような順序で終了させるかはまだ決めてい
ない」とした。
短期金利の正常化に当たり、日銀は金融機関や借り手、総需要への影響にも注意する必要があると指摘。「これはわれわれにとって重大な課題
になるだろう」と述べた。
物価については、一時的な要因を除いた日本の基調的なインフレ率は依然として「2%を少し下回っている」とし、日銀が期待するようにインフレ率
が上昇し続けるかどうかは不透明だと語った。
また、米国経済がソフトランディング(軟着陸)を達成できるかどうかや、中国経済の行方など、目標達成への道のりを妨げかねないさまざまなリス
クに言及した。
為替レートの動きが金融政策に与える影響に関する質問には、インフレや生産にどのような影響を与えるかを注意深く分析し、必要に応じて「対応
する」と答えた。
2023/11/10 日本経済新聞 朝刊
日銀による長期緩和の出口が現実味を増してきた。9日公表した10月30~31日の金融政策決定会合の「主な意見」には、「最大限の金融
緩和からの調整」や「円滑に金融正常化を進める」など出口を意識した発言が並んだ。出口の議論を封印してきた日銀はマイナス金利政策の解
除を含む長期緩和の転換に向けた地ならしを始めている。
10月会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を見直し、これまで長期金利の上限としてきた1%を「上限のめど」
にして、1%超の金利上昇を一定程度、容認することを決めた。
「将来の出口を念頭に『金利の存在する世界』に向けた情報発信を進めることが重要だ」。10月会合の主な意見には、出席者の「出口」とい
う発言が3回登場した。9月会合も3回だったが、YCCを修正した7月は1回だった。
YCCの大枠は維持しつつ厳格な上限をなくすことで「マイナス金利解除後も、長期金利の急上昇を抑えるために使える枠組みになった」(日
銀関係者)との見方が浮上する。主な意見では「YCCの耐性向上につながる」との指摘もあった。
出口論が現実味を帯びてきたのは、日銀が「持続的かつ安定的な物価上昇」の実現に自信を深めているためだ。会合では「来年の賃上げ率
は本年を上回る」可能性が高いとの声もあがった。
直近の物価動向や2024年の春季労使交渉に向けた経営者の発言から、物価2%目標実現に向けた「確度は7月の会合時点と比べ一段と
高まっている」と踏み込んだ。
10月の会合でまとめた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、24年度の生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率の
見通しを7月時点の1.9%から2.8%と、大幅に引き上げた。主な意見によると、政策委員は「企業の価格改定が想定以上に広がっている」
との見方を示した。
カギとなるのは「賃金と物価の好循環」を確認できるかだ。日銀は展望リポートで、23年4~6月期に物価上昇が賃上げに一定程度波及した
と分析している。一方、賃上げ分が価格転嫁され、さらなる物価上昇につながったかは「統計的に有意な変化は観察されていない」とした。
日銀関係者は「人件費の割合が高いサービス業の物価指数を詳細にみている」と話す。支店などが企業経営者から直接聞き取る声も重視し
ているという。
[東京 9日 ロイター] - 元日銀理事の前田栄治・ちばぎん総合研究所社長はロイターのインタビューで、物価や金利の上昇圧力を受けて日銀
は来年1月にもマイナス金利の解除に踏み切る可能性があり、その後も段階的に利上げを行う可能性があると指摘した。
マイナス金利解除の際には長短金利操作(イールド―カーブ・コントロール、YCC)も撤廃する可能性があるが、その際に長期金利の急上昇を抑
制するためには国債の機動的買い入れを実施する方針などが考えられるとの見解を示した。
日銀は10月31日、金融政策決定会合で長期金利について、1.0%を「上限のめど」に修正、同水準を一定程度超えることを容認した。
前田氏は今回の決定が「事実上YCCの撤廃に近い」と表現し、来年日銀がマイナス金利を解除する際は現在ゼロ%で上限のめどを1%としてい
る「長期金利目標は撤廃するだろう」との見通しを示した。
同会合で日銀が示した物価見通しは「24、25年度の消費者物価指数・除く生鮮・エネルギーがともに1.9%とほぼ2%の物価目標を達成して
いる」とし、再度の政策修正が自然との見解を示した。
2023/11/10 04:30 日経速報ニュース
「ファンド情報」は、金融庁の栗田照久長官にインタビューし、2023事務年度(23年7月?24年6月)の重点施策や課題を尋ねた。栗田長官は
NISA(少額投資非課税制度)について、「資産所得倍増プラン」に沿って、拡大を推進していく姿勢を示す一方、「新NISAで資産運用を始めた人
へのフォローを金融機関がきちんと実施していくか見ていきたい」と釘を刺した。
──2024年1月から新NISAが始まる。
「NISAは元々、ライフステージに応じた安定的な資産形成を促すツールの1つに位置付けられる。従来は非課税優遇に期限が設けられていた
が、23年度税制改正で抜本的な見直しが行われ、口座開設期間の恒久化や非課税保有期間の無期限化が実現した。これにより、若い世代
からシニア世代まで幅広い層がいつでも非課税優遇を活用できる環境整備が進んだ」
「非課税で投資できる元本総額の上限『生涯投資枠』も1800万円まで引き上げられた。結果、手元に資金があまりないときには少額を積み立
て投資に振り向けたり、余裕があるときには多めの金額を投資したりできるようになった。蓄えのある層が一括で投資することも可能だ。制度の
使い勝手が大きく改善されたので、今後の利用者拡大を期待している」
──具体的な数値目標は。
「政府が22年11月に策定した『資産所得倍増プラン』では、5年でNISA口座数を現在の約1700万から約3400万へ、買い付け金額を約28兆
円から約56兆円へ倍増させる目標を掲げている。この方針に沿って様々な施策を進め、利用者拡大につなげていく」
「最終的な目標は、運用を通じて国民の資産所得を倍増させ、家計が潤いやすくなるようにすることだ。こうした目標の実現に向け、まずは
新NISAの魅力や利便性などを世の中に浸透させ、利用者を増やしていくことが重要だ」
──利用者拡大には金融機関による取り組みが欠かせない。どんな役割を期待しているのか。
「繰り返しになるが、NISAは安定的な資産形成を促すための制度だ。そして、安定的に資産を形成していくためには、各社の施策も金融機関
本位ではなく、顧客目線に立ったものであることが大切だろう。例えば、顧客本位の業務運営の理念を踏まえながら、ニーズをきちんと聞き出
せているか。ヒアリングを踏まえ、顧客のリスク許容度などに見合った商品を提案できているか。提案する商品の特性やリスクリターン、コスト
構造などを丁寧に説明できているか。さらには、NISA口座経由で金融商品を販売した後、売りっぱなしにせず、きめ細やかなフォローを継続で
きているか。こうした観点に基づいて、顧客にアプローチする役割を期待している」
NISAの広報活動を強化
──当局はどうサポートしていくのか。
「制度面では新NISAの使い勝手をさらに良くするため、今年の税制改正要望に利便性向上に向けた措置を求める項目を盛り込んだ。現行制
度では、金融機関側がNISA関連の手続き上、顧客に紙の書類を送付しなければならない場面がある。要望が実現すれば、デジタル技術の活
用による業務効率化などが進み、業務負荷の軽減につながると見ている」
「広報活動も今以上に強化していく。新NISAを周知するために、分かりやすいガイドブックや冊子を作成したり、特設サイトのコンテンツを拡充
したりしていく。各地方の財務局や業界団体とも連携して各種イベントを開催し、世の中の関心を高めていきたい」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-10/S3WCOST1UM0W01
りそなホールディングスの南昌宏社長は10日、日本銀行による金融政策の修正を受けた国内金利の上昇について、「当社にとって非常に大きな
機会」との認識を示した。同日の決算会見で述べた。
南社長は、金利に過度に影響されないフィー収入や、顧客へのコンサルティングを通じたビジネス展開などで収益構造を改革しつつ、「金利上昇
に対してしっかり準備していきたい」と話した。
日銀は10月の金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を再修正し、長期金利の1%超えを容認する運用柔軟化
を決定。これを受け長期金利は上昇基調にある。「金利のある世界」は銀行にとって増収要因となるが、変化への円滑な順応が求められる。
りそなHDは5月、日銀がYCCを撤廃すれば200億円、マイナス金利解除なら100億円の収益増加要因になるとの試算を示していた。今回の決算
資料ではこの見通しを維持した。
同社は同日、150億円、発行済み株式の1.06%をそれぞれ上限とする自社株買いも発表した。取得期間は13日から12月29日。取得分は来年1月
25日に消却する。
2023/11/11 04:00 日経速報ニュース
日本が長い経済停滞からの転換に挑んでいる。政府・日銀の政策運営はどうあるべきか。日本の経済や政策を長くみつめてきた著名エコノ
ミスト、米S&Pグローバル元副会長のポール・シェアード氏に聞いた。
――日銀は10月の金融政策決定会合で7月に続きイールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化を決めました。
「さながらケーキをとっておきつつ(現行の金融緩和策を維持)、食べる(長期金利の上昇を容認)ような矛盾を感じる。長期金利がゼロ%程度
で推移するよう国債を買うと言い続けつつも、1.0%を上限のメドとし、1.0%での連続指し値オペは廃止する。支離滅裂とはいわないが、混乱を呼
ぶ」
「経済・物価情勢を踏まえれば、短期の政策金利をマイナス0.1%に設定し、当座預金残高を区分けする複雑な仕組みこそ続ける根拠が乏し
いのではないか。現行政策のうちマイナス金利の部分を廃止してゼロ%とし、政策を簡素にすればよい」
――一気に出口に突き進む印象を与えませんか。
「あまり意味のない心配だ。長期金利は短期よりも政策効果を金融全体に伝える役割が重いが、すでに上昇を容認ずみだ。短期の微調整
は大問題ではない。目標実現に必要な時まで続けるという約束は枠組み全体に対するもので、金利設定は自由だ。市場が混乱しても、うまく
情報を発信すれば対処できる」
「もちろん出口を焦る必要はない。経済全体のダイナミクスが2%のインフレ期待が深く根づくようなかたちで変化したと真に確信できるまで、
現行の枠組み自体は堅持することだ」
――物価高の「痛み」が政治問題になっています。
「今回の訪日では『物価高』という言葉を頻繁に耳にした。インフレ目標を達成するうえで新型コロナウイルス禍がもたらしたインフレショックは
好機であり課題でもある。好機はインフレ率が足元2%を超え、しばらく続くと見込まれることだ」
「課題は賃金上昇を伴わないインフレの高進が、家計の購買力や生活水準をむしばむことだ。こうした環境では政府が財政政策を活用し、家
計、とくに困窮する人たちの実質所得への負の影響を一部でも相殺しようとするのは理にかなう」
――岸田文雄政権の経済政策は所得減税が批判を呼び、インフレ加速すら懸念されます。
「確かに家計部門への所得移転は他の条件が等しければ景気を刺激し、インフレに作用する。だが日本は特殊な状況にあり、数十年の試み
の末、物価の押し上げを揺るがぬものにしようとしている。いまの環境では財政が刺激的なほど日銀の目標達成への時期を早める」
――財政政策と金融政策の一体化は危険ではありませんか。
「私は長年、財政政策と金融政策の協調が重要だと主張してきた。日銀は黒田東彦前総裁のもと非常にアグレッシブな金融緩和に動いたが
、当時の安倍晋三政権は消費税率を引き上げて家計の購買力をそいだ」
「2013年の政府・日銀の共同声明で財政再建はデフレを脱却してからだと約束していたら、国民のインフレ期待はもっと早く高まったかもしれ
ない」
――すでに日銀は発行済み国債残高の半分を保有します。
「国債は原理的には返済の必要がない。政府、そして国民の負債であると同時に主に国民の資産でもあり、孫やひ孫の世代が引き継ぐこと
になるからだ。中央銀行が国債を持つと銀行の準備預金が増えるが、お札と同じように返済義務はなく、統合政府の観点からは大差ない」
「中銀の独立性を巡る懸念は正当なものだが、中銀が担う『物価の安定』の役割が社会の公共財だという認識があるなら問題ない。だれもか
つてのドイツのワイマール共和国や近年のジンバブエのようなハイパーインフレは望んでいないだろう」
「債務の持続可能性の問題は借金が返せるかどうかではない。問われるのは、国債を含めて多額の資産が若い世代に相続され、供給力に
比べて大きすぎる購買力が生まれるときだ。強いインフレ圧力がかかり、中銀は金融引き締めを迫られる。政府は増税で財政黒字を出し国債
を償還する必要が出てくる」
「消費増税の目的は高齢化社会への対応だったというが、真の備えは十分な資本ストックや財・サービスの生産能力を確保することであり、
増税で消費者の購買力を奪うことではない」
――では、どうしたら供給力を高め、潜在成長力を押し上げることができますか。
「究極的には人口減少の反転だ。出生率の向上をめざす試みは称賛に値するが、岸田政権には過去の政権と同様、決定的な一手に欠ける。
日本独自のニーズと国益に合わせて、明快かつ綿密に練られた移民戦略だ」
「日本には事実上の移民のシステムはあるが、確固たる移民戦略はない。高齢化やインフラ維持といった課題を考えると議論は避けて通れ
ない。外国人を選抜して、より多く受け入れることは『一石何鳥』にもなる」
Paul Sheard 米S&Pグローバル元副会長。日米の投資銀行などでエコノミストを長く務め、日本在住は1970年代から延べ17年に及び、日
本の金融問題に関する著書も。新著は『マネーの力(The Power of Money=邦訳版未刊行)』。オーストラリア国立大博士(日本経済)。
コミュニケーションの重要性説く
ポール・シェアード氏が現日銀総裁の植田和男氏と出会ったのは1980年代前半。それぞれ客員研究員と助教授として大阪大学経済学部
に在籍していた。植田氏を「物静かだが、物事を深く洞察する。日銀総裁のポジションにふさわしい」と評する。
植田日銀には金融緩和の出口を焦らぬよう説くが、政策の枠組みを保ちつつ必要な修正を加えるアプローチを全面否定するわけではない。
複雑さを増す長期金利の操作への苦言にせよ、マイナス金利政策からゼロ%への「微調整」の提言にせよ、根底にあるのは明快なコミュニケ
ーションを重視する姿勢だ。
この先、緩和を続けても出口に向かっても、さまざまな立場から賛否が飛び交うのは必至だ。世論を味方につけたいのなら、簡素な枠組み
と丁寧な説明が円滑な政策運営の生命線となるのは間違いない。
シェアード氏は新著でマネーや政府債務のあり方を巡り、常識に真っ向から異を唱えた。国債は借金ではないといった見解は異端とされる
「現代貨幣理論(MMT)」にも通じ、議論を呼ぶだろう。一方で新著のアイデアは長年の日本研究の蓄積に裏打ちされているという。日本へ
の教訓もあるはずだ。
日本復活への抜本策には移民政策の確立を掲げる。技能実習制度を場当たり的に使って外国人労働者への依存を高めてきたのが日本の
実態だ。同制度の廃止と新たな制度の検討は緒に就いたばかり。問題を正面からとらえよ、との助言は耳が痛い。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3f33ffe1cbb2fa2db08b6ce409ad570a2269e1d1?page=1
(ブルームバーグ): 長期金利の上昇観測を背景に大きく買われてきた日本の銀行株に異変が起きている。直近2カ月は金利上昇に合わせ銀行
株が買われる相関性が崩れており、市場関係者の間では強気相場の終了を示すサインだとの懸念も浮上している。
東証銀行株指数の年初来上昇率は36%(7日現在)と東証株価指数(TOPIX)の23%を上回り、今年の日本株上昇のけん引役となってきた。銀
行株は長年の不人気で割安に放置されていたが、日本経済のデフレからインフレへの転換期待から投資家が見直し買いを活発化。長期金利の
上昇が銀行の貸出金利の上昇につながり、利ざやが拡大するとの見方が強まった格好だ。
しかし、9月後半以降の値動きを見ると、日本銀行の金融政策修正観測や米国金利の急騰を材料に日本の10年国債利回りが上昇する中でも銀
行株は頭打ち。相関係数は直近でわずかながらマイナスとなっている。
JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは両者の連動性が失われていることについて、日銀がマイナス金利の解除など短期の政策金
利を来年早期に実施することを織り込み始めているのではないかと分析する。
高田氏によると、長期金利の上昇は銀行株などを含むバリュー株にポジティブな影響を与えることが多いが、「バリュー株の特徴は配当などで手
元のキャッシュを株主に放出する」点にあると指摘。そのため、短期金利が上昇するとバリュー株の魅力が相対的に低下しやすくなるという。
また、メガバンクをはじめ金融機関は預金や金融市場から比較的短期で資金を調達している半面、借り手には不動産向け融資や住宅ローンなど
長期の資金を供給している。短期金利が長期金利以上に上昇し、イールドカーブ(利回り曲線)がフラット化する局面では利ざやはむしろ悪化する
構造も持つ。
PBRは依然0.7倍台
銀行株指数の株価純資産倍率(PBR)は現在も0.7倍と東京証券取引所が上場企業に対し効率経営の一つの目安として掲げる1倍を下回ってお
り、市場では株主還元策強化への期待感は強い。早ければ、来週相次ぐ7-9月期決算発表での自社株買いの表明を予測する向きもある。
一方、国内銀行の低い利益率を考えると、既に妥当水準まで株価は上昇したとの見方も出ている。銀行株指数の株主資本利益率(ROE)は6%
台と欧米金融機関の10%台よりも低く、世界と比べた株価の高パフォーマンスを裏付けるほど業績の改善が伴っていないためだ。
日本の銀行株の年初来上昇率はドルベースで約20%と22%下げた米国を圧倒し、12%上昇した欧州も上回る。ただ、足元で国内の貸し出しの
伸びは減速しており、海外と比べても見劣りする現状だ。全国銀行協会の統計によると、9月の貸し出し伸び率は3.3%と10%を超す欧米には遠
く及ばない。
コムジェスト・アセットマネジメントのポートフォリオマネジャー、リチャード・ケイ氏は「日本国内で貸し出し需要に構造的な成長は見られない。銀行
の成長にとっては長期的な問題だ」と指摘している。
2023/11/15 日本経済新聞 朝刊
5大銀行グループの2023年4~9月期決算が14日、出そろった。合計の連結純利益は前年同期比56%増の1兆9960億円と05年度に3メ
ガバンク体制になってから最高となった。超低金利環境の修正で低迷していた貸出金利ざやが改善。膨大な資産を抱える邦銀に追い風となった。
株式時価総額も金融危機前の水準を回復したが、デジタル化などで先行する米欧の有力銀行との差はなお大きい。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が持ち分法適用会社の米モルガン・スタンレーの損益を計上する時期をあわせるため同社の9カ月分の
利益を計上した。800億円規模の増益要因となったが、これを差し引いても5社合計で最高益となる。
本業のもうけを示す実質業務純益は傘下行の合算で1兆7754億円と16%増えた。利益を押し上げたのは調達金利と貸出金利の差である利
ざやの改善だ。米連邦準備理事会(FRB)などの利上げで、三菱UFJの海外貸出金利ざやは1年間で0.33%拡大した。調達コストも上昇する
が、貸出金利上昇の影響が先行している。
5大銀グループの総資産は大規模な金融緩和が始まる前の13年3月期から10年間で6割増え、1000兆円を超える。国内総生産(GDP)の
2倍近くで、わずかな金利上昇でも収益への影響は大きくなる。
ゴールドマン・サックス証券の黒田真琴氏の試算によると、日本の10年物国債の利回りが0.6%、5年債で0.1%上昇するとメガバンクで平
均19%超の純利益押し上げ効果がある。
海外の金利上昇の恩恵が大きいものの、国内でも貸出金利ざやは反転している。日銀が16年に導入したマイナス金利政策や新型コロナウイ
ルス禍で縮小が続いていたが、3メガバンク平均の国内大企業向け貸出金利ざやは約0.56%とマイナス金利政策の導入後で最大となった。
低採算のリスク資産を減らしてきた効果も出ている。
日銀は10月の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化した。
三菱UFJの亀澤宏規社長は「YCCの修正による(利ざやへの)影響はこれからだ」と指摘した。三井住友FGの伊藤文彦最高財務責任者(CF
O)は長期金利上昇で期間5年など中長期の固定金利の貸出金利が上昇するとして「初年度で100億円程度の増益機会が生まれる」と下期以
降に増益効果が大きくなるとの認識を示した。
市場では日銀がマイナス金利政策を解除するとの観測がくすぶる。りそなホールディングスの南昌宏社長は「短期金利が上昇すると市場金利
連動の貸出金も含めて利回りが向上し、収益拡大が想定される」と述べ、「金利のある世界」に期待を示した。
三井住友は短期金利が0.1%上昇すると純利益を約200億円押し上げると試算。三菱UFJでは長期金利の上昇とマイナス金利政策の解除
で資金収益を500億円押し上げるという。みずほFGもマイナス金利が解除されれば粗利益で350億円の押し上げ効果があるとはじく。
24年3月期通期の連結純利益も計3兆円程度と過去最高を更新する見通し。
三井住友は好調な顧客部門や政策保有株式の売却などで純利益見通しを過去最高の9200億円(従来予想は8200億円)に引き上げた。み
ずほも前期比15%増の6400億円(従来予想は6100億円)へ上方修正した。
金利上昇を受けて大手銀は5年物などの定期預金金利を上げた。「金利が上昇していく過程で、定期預金もその分上げていく方針」(三井住友
トラスト・ホールディングスの高倉透社長)だ。銀行にとって預金は負債で、金利引き上げは調達コストの上昇を意味する。
それでも金利を上げた預金の全体に占める割合は小さく、収益への影響は限定的だ。JPモルガン証券の矢野貴裕氏は、3年以上の定期預金
の金利が全て0.1%上がっても純利益への影響はメガバンクで0.1%にとどまると試算する。
懸念材料もある。中国経済が減速しているほか、米国も高金利が重荷で資金需要に陰りがでてきた。三井住友は中国経済の減速や金利上昇
による米経済の冷え込みなどを懸念し、市場部門の計画を保守的に見積もっているという。
国内金利の上昇で日米金利差が縮小し、円高に振れれば円換算した実入りは減る。みずほの木原正裕社長は「為替が円高方向に振れるリス
クがある」と円安効果がはげ落ちることへの警戒感を示した。
2023/11/15 日本経済新聞 朝刊
金利上昇に伴う業績拡大への期待から株価も上昇している。三井住友の時価総額が9月に一時、過去最大を記録した。三菱UFJもリーマン・
ショック前の06年以来、17年ぶりの高水準で推移しており、ドル建てではゴールドマン・サックスなどと拮抗する。
市場の評価を反映するPBR(株価純資産倍率)を高めるため三菱UFJは14日、半期では同社として過去最大規模となる4000億円を上限と
した自社株買いを発表した。一時は0.5倍台に沈んでいた三菱UFJのPBRは0.8倍台まで上昇したが、なお解散価値の1倍を下回る。
スマホや人工知能(AI)を活用したデジタルバンクとして知られるシンガポールのDBSや年間1兆円規模のデジタル投資を続けてきた米銀首
位のJPモルガン・チェースのPBRは1.5倍前後。JPモルガンは7~9月期だけで日本円で約1.9兆円の純利益を稼ぎ出した。政策金利が
22年ぶりの高水準にある米国とマイナス金利が続く日本で銀行の収益環境は異なるが、金融危機後に収益モデルを変えてきた効果の違いは
大きい。
メガバンクもリスク資産や経費のコントロールなど自己資本利益率(ROE)を重視する経営にかじを切るが途上にある。デジタル化による効率
化に加え投資銀行のビジネスなど資本に頼らない手数料収入の拡大をさらに目指す必要がある。
低採算事業を見直す動きもある。三井住友は今期の業績が好調なことを織り込み、不振だった米国の貨車リース事業を手放して10~12月
期に840億円規模の売却損を計上することを決めた。
2023/11/16 日本経済新聞 朝刊
15日の東京株式市場では銀行株が逆行安となった。米利上げの打ち止め観測が強まり、日銀が積極的な金融引き締めに動きにくくなるとの
見方が台頭。利ざや拡大による業績改善期待から買いが先行していたが、一旦利益を確定する動きが広がった。東京証券取引所に上場する
銘柄のうち9割が値下がりした。
半導体株などハイテク株主導で日本株相場が活況となるなか、市場関係者の目を引いたのが三菱UFJフィナンシャル・グループ株だ。寄りつき
直後には前日比2%高まで買われたが、利益確定売りに押され2%安で取引を終えた。
三菱UFJが14日の取引終了後に公表した2023年4~9月期の決算は「文句なしで、市場は好感してよい内容だった」(りそなアセットマネジ
メントの戸田浩司シニア・ファンド・マネージャー)。連結純利益は前年同期比4倍の9272億円と市場予想(8570億円、QUICKコンセンサス)を
大きく上回った。同社として半期で過去最大となる4000億円上限の自社株買いも発表した。
それでも売りに押されたのは、金利上昇による利ざや改善期待が後退したためだ。14日発表の米消費者物価指数(CPI)は伸びが鈍化し、米
連邦準備理事会(FRB)による追加の利上げ観測が薄れた。
国内要因で日銀が金融政策の正常化を進めにくくなるとの見方も出た。15日朝発表の7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比
年率2・1%減。3四半期ぶりのマイナス成長で市場予想(0・5%減)を大きく下回った。クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは
「内需の弱さを示しており、マーケットで来春の日銀の引き締め観測は急速に消えていくだろう」と指摘した。
業種別日経平均株価の「銀行」は2%安となった。36業種中「不動産」に次いで下落率が大きかった。東京証券取引所に上場する銀行株79
銘柄のうち、9割に相当する70銘柄が値下がりした。下げ率が最も大きいのが三井住友トラスト・ホールディングスの5%安。七十七銀行(同)や
群馬銀行(4%安)など地方銀行の下げも目立った。
24年3月期の連結純利益予想を9200億円へと市場予想を上回って上方修正した三井住友フィナンシャルグループ株も一時2%高まで買わ
れたが、小幅安で引けた。
米欧では景気の不透明感などから銀行株が全般に低迷している。市場では「本国での地合いの悪さから海外投資家が一旦、日本でも銀行株
を手放す動きが出ている」(スイス系運用会社のストラテジスト)との見方もあった。
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週1.8%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,212,112百万円から1.8%上昇し、1,233,400百万円となった。
対前年実績で見た場合4.4%の増益予想から6.2%増益予想に上方修正されたことになる。因みにレーティングコンセンサスは4.4で変わらずのまま。
2023/11/15 14:05
三井住友FG (8316)
米系大手証券、レーティング据え置き、中立。目標株価引き上げ、8,300円。
米系大手証券が11月15日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを中立(中立)に据え置いた。一方、目標株価は8,000円から
8,300円に引き上げた。因みに前日(11月14日)時点のレーティングコンセンサスは4.42(アナリスト数12人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセ
ンサスは8,240円(アナリスト数12人)となっている。
2023-11-15 GS 中立継続 8000円 → 8300円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-19 UBS Buy継続 7490円 → 8140円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-10-03 モルガンS Overweight継続 7880円 → 8930円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-09-14 JPモルガン Overweight継続 7460円 → 8200円
2023-09-01 みずほ 買い継続 6600円 → 7350円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023/11/16 11:51 日経速報ニュース
16日午前の東京株式市場で日経平均株価は7月3日に付けた年初来高値(3万3753円)を目前に上げ一服となった。15日の米株式市場で世
界的な半導体関連株の上昇をけん引したエヌビディアが11営業日ぶりに反落し、半導体株の寄与度が大きい日経平均の逆風となった。
午前の日経平均は前比227円(0.68%)安の3万3292円で終えた。エヌビディアは14日までの10日続伸で株価は2割上昇。2016年12月以来
の連騰記録となっていた。さすがに短期的な過熱感が警戒され、15日は1.5%安と反落した。午前の東京市場でも人工知能(AI)でエヌビディア
関連銘柄と位置付けられるアドバンテストは3.6%安。前日まで連日で上場来高値を更新した東京エレクトロンも1.2%安と反落した。
日経平均は今月に入り15日までに2660円(8.6%)上昇した。きょうの反落も「当然の一服」との見方が大勢だ。午前の日経平均は上げに転じ
る場面があるなど、先高観は失われていない。
米投資ファンドで物言う株主(アクティビスト)のバリューアクト・キャピタルの株式取得が明らかとなったリクルートホールディングスは一時9%高
と急騰。バリューアクトは米求人サイト「インディード」などリクルートの資産は既に現在の株価の2倍の価値があると主張し、発行済み株式総数の
1%にあたる1800万株超を取得した。リクルートは日本を代表するグロース(成長)株だ。同じグロース株に位置付けられるキーエンスやレーザー
テックも午前は上昇した。
前日に下落が目立った銀行株も上げた。三菱UFJフィナンシャル・グループは0.6%高、三井住友フィナンシャルグループは2.8%高でそれぞれ
終えた。三菱UFJと三井住友FGは14日に半期としては過去最大となる4000億円と1500億円の自社株買いを公表した。三菱UFJの場合、期限
の来年3月末までに全額を実施すると仮定すれば、単純試算で1日当たり売買代金の約6%を買っていく必要がある。三井住友FGも4%程度を
買う必要がある試算となり「金利低下で銀行株の先高観が弱まっても、関与比率の高い自社株買いが株価を支える」(フィリップ証券の増沢丈彦
株式部トレーディング・ヘッド)。
BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストらは15日付のリポートで、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の4~9月期決算発表時点の自社
株買い件数が09年度以降の最高水準を記録したと指摘した。「PBR(株価純資産倍率)の改善やインフレが企業の意識改革につながっている」
(BofA証券の圷氏)。時価総額が相対的に小さい企業の発表も増えており、前日に上限3億円の自社株取得枠を設定した東証スタンダード市
場に上場するジャストプランニングは11%高と急騰した。
米株の年末ラリーの流れに乗り、日経平均は月内にも7月高値を上回るとの見方が増えつつある。米国では10月の消費者物価指数(CPI)と
卸売物価指数(PPI)の下振れや、10月の小売売上高が7カ月ぶりに小幅に減少するなど「ゴルディロックス(過熱も冷え込みもない適温状態)を
示唆するサインが増え始めている」(第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミスト)。
英調査会社オックスフォード・エコノミクスは15日に公表した24年の経済見通しで日本経済に対し、「大規模な金融引き締めを実施していない日
本は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の成長率を上回る数少ない先進国のひとつになる」との見方を示す。来年の成長率は
主要国のランキングで上位に食い込むとの想定で、こうした見方は足元で指摘されている欧州と中国からの日本への資金シフトを強める可能性
がある。きょうの反落も冷静に捉える市場参加者が多そうだ。
三井住友FG (8316)
欧州系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、8,240円。
欧州系大手証券が11月15日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(Buy)に据え置いた。
一方、目標株価は8,140円から8,240円に引き上げた。因みに前日(11月14日)時点のレーティングコンセンサスは4.42
(アナリスト数12人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,240円(アナリスト数12人)となっている。
2023-11-16 UBS Buy継続 8140円 → 8240円
2023-11-15 GS 中立継続 8000円 → 8300円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-10-03 モルガンS Overweight継続 7880円 → 8930円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-09-14 JPモルガン Overweight継続 7460円 → 8200円
2023-09-01 みずほ 買い継続 6600円 → 7350円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023/11/16 18:55 日経速報ニュース
アサヒグループホールディングス(GHD)は16日、三井住友銀行など国内金融機関9社が保有するアサヒGHD株を海外市場で売却すると発表し
た。発行済み株数の6.6%にあたる3347万9200株で、同日終値で計算すると、約1940億円規模になる。金融機関から政策保有株を売却したい
との意向があったという。
アサヒGHD株を売却するのは、三井住友銀のほか、三井住友信託銀行、農林中央金庫など。11月28日から12月1日までのいずれかの終値に
0.90?1.00を乗じたものを売り出し価格とし、価格決定から3営業日後に売却する。
今回の株式売り出しによりアサヒGHDの外国人株主の比率は6月末時点の37.0%から約40%になるとみられる。同社は「中長期的な戦略を支
援いただける株主層の拡大を図るとともに、(売り出しによって)普通株式の流動性を高め、資本市場活性化の一助になるものと期待する」と説明
している。
三井住友銀行 802万8千株 5804円
2023/11/17 18:52 日経速報ニュース
17日の日経平均株価は反発した。11月の上げ幅は2700円を超え、月間で今年最大となる勢いだ。それに比べいまひとつなのが銀行株。メガ
バンク3行は今週、純利益が市場予想を大幅に上回る好決算を発表したが、株価の戻りは鈍い。日銀の金融政策正常化への先走った期待が
?落したためだ。「日銀プレー」再燃の道のりは険しい。
メガ3行の2023年4?9月期決算は文句なしの好決算だった。内外の金利上昇で利ざやが拡大。3行合計の連結純利益は1兆8694億円と前
年同期比71%増えた。
だが、決算後の株価の反応は勢いを欠く。発表直前の終値に比べ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の17日終値は1.6%安。みずほFGは
2.2%高と同期間の日経平均(3.1%高)を下回る。通期業績の上方修正と過去最大の自社株買いを発表した三井住友FGは堅調だが、9月下旬の
年初来高値にはまだ距離があるのは他2行と同じだ。
銀行株は今年の東京市場で主役の1つだった。日本がインフレ型経済に移行するとみて、日銀の利上げを織り込む「日銀プレー」が活発化した。
金利と株価の比較からも鮮明だ。東証株価指数(TOPIX)の銀行株指数は翌日物金利スワップ(OIS)の10年物と連動。OIS金利は市場が予測
する今後10年間の無担保コール翌日物金利(日銀の政策金利の代替)の平均を意味する。将来の利上げを織り込んで株価は上昇した。
中央銀行の利上げに備え、債券投資家は本来なら国債を売る。野村証券の松沢中チーフストラテジストは「日銀の買い支えで価格が下がらな
い国債を売る代わりに、銀行株を買う債券投資家も目立った」と話す。
だが、OIS金利は11月初めをピークに下げに転じた。10月末の日銀の金融政策決定会合で、植田和男総裁がハト派寄りの姿勢を見せたのが
きっかけだ。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止観測が浮上し米長期金利が低下したのも、日本の市場金利低下を促した。それが銀行株
の上値を抑えている。
金融市場では来年4月にも日銀はマイナス金利を解除するとの見方が有力だ。ただ、これだけでは銀行株買いには力不足だ。三菱UFJはマイ
ナス金利解除で資金利益を350億円、三井住友FGは純利益を200億円押し上げると試算する。年間利益の1?2%程度に過ぎない。収益拡大に
は日銀の継続的な利上げが欠かせない。
日銀の植田総裁は10月の会合後の記者会見で「賃金(の上昇)だけでは目標達成ではなく、物価への波及も含めて総合判断する」と述べた。
賃金が上昇しても物価目標の達成は難しいかもしれないという趣旨とも取れる。実際そうだろう。もし円安による輸入インフレが収束すれば、給与
補償としての賃上げの機運は弱まる可能性が高い。
さらに米国の金融政策の転換も逆風となる。来年前半には米国では利下げの議論が始まっているはずだ。その状況下で日銀が利上げに動け
ば、過度な円高と景気抑制につながるリスクがある。連続利上げによる銀行株高を見込むのは難しい。
メガ3行のPBR(株価純資産倍率)は三菱UFJが0.82倍、三井住友FGが0.72倍、みずほFGが0.67倍と1倍を大きく下回る。3行のROEが7%台(今
期予想ベース)にとどまるためだ。もっとも、欧米にはそれと同等のROEでもPBRが0.5倍を下回る大手銀行もあり、日本のメガ3行は決して割安と
はいえない。
SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストは「PBR1倍達成にはROE10%が必要」と指摘する。銀行は貸出金を増やせばそれに応じて自己資本を積み
増す必要があり、事業会社よりROE向上のハードルが高い。資産規模を増やさずに利益を積み上げるには、狭い道といえど最後は「日銀頼み」と
ならざるをえない。
2023/11/18 05:00 日経速報ニュース
大手銀行や地方銀行の決算が出そろいました。日経電子版は大手銀行の決算を「5大銀行、金利上昇追い風に最高益 4?9月56%増」との見出
しで報じました。地銀の決算は「上場地銀4?9月、6割が最終減益 不良債権費用膨らむ」「地銀、債券含み損2.8兆円に 損失処理で7行が本業
赤字」です。金利が上昇すれば貸出金利ざやが改善し、銀行の収益にはプラスに働きそうです。なぜ、大手行と地銀で明暗が分かれたのでしょうか
。決算結果を振り返りながら解説します。
記事のポイント
・大手銀行、最高益の原動力は?
・地銀はなぜ苦戦?
・金利上昇は追い風か、逆風か
大手銀行、最高益の原動力は?
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFG、りそなホールディングス、三井住友トラスト・ホールディングスの5大銀行グルー
プの2023年4?9月期決算は、合計の連結純利益が前年同期比56%増の1兆9960億円でした。05年度に3メガバンク体制になってから最高となりま
した。
利ざやの改善が利益を押し上げました。利ざやとは貸出金利と調達金利の差による利益のことです。銀行は預金や市場から集めた資金に金利を
上乗せして貸し出すことで収益を上げています。
3メガバンクは国内で超低金利が続いてきたため、海外での貸し出しに力を入れてきました。例えば、三菱UFJの海外向け貸し出しは45兆円と全
体の4割を占めます。10年前に比べると17兆円も増えました。
三菱UFJの海外貸出金利ざやは1.33%と1年間で0.33%拡大しました。米連邦準備理事会(FRB)が利上げし、米長期金利は足元で4.5%程度で
推移。この結果、市場から調達するコストも上昇していますが、貸出金利は先行して引き上げているため、利ざやが改善しています。貸出金の絶対
額が大きいので、利ざやの改善効果が決算に表れています。
3メガバンク平均の国内大企業向け貸出金利ざやは約0.56%とマイナス金利政策の導入後で最大となりました。ただ、収益面では国内の利ざや改
善の影響はそれほどありません。海外収益の好転が最高益の原動力となりました。
対照的なのは地銀です。上場地銀74行・グループの2023年4?9月期の純利益の合計は5611億円と前年同期から約6%減少しました。最終減益
・赤字となったのは45行・グループで、全体の6割を占めます。
倒産リスクが高まるなか取引先の経営悪化で不良債権の処理費用が膨らんでいます。例えば、赤字となった富山銀行では取引先の物流会社ア
ペックス(金沢市)が東京地裁に民事再生法適用を申請したことを受けて、関連する引当金を計上しました。
企業倒産は足元で増加傾向にあります。東京商工リサーチによると、倒産件数は10月まで19カ月連続で前年同月を上回りました。大手行が比
較的規模の大きな企業に融資しているのに対し、地銀は中小企業への融資が大半です。融資先の経営悪化や破綻に備えるために、非上場を含む地銀(単体)の与信費用は合計約500億円と、前年同期から1割増加しています。
金利上昇は追い風か、逆風か
金利上昇は利ざやの改善が期待できる一方で、銀行にとってマイナス面もあります。金利が上昇すると、債券価格が下がります。銀行が保有す
る国内債券や外国債券、投資信託などで含み損を抱えるのは大手行も地銀も同じです。
国債や外債、投資信託を合わせた3メガバンクの含み損は9月末時点で約3兆1000億円と6月末から3割弱増えました。地銀97行の含み損は9月
末時点で約2.8兆円と6月末から7割増えています。
大手行は金利上昇への備えを進めてきました。日銀によると、大手行の国内債券のデュレーション(元利金の回収に要する平均期間)は17年度
の約4年から22年度には約3年に短期化しています。デュレーションを短くすれば、市場変動の影響を受けにくくなるからです。
地銀は約4年から約7年に長期化しています。地域経済の空洞化で地銀の貸出先は細っているほか、メガバンクのように海外で収益拡大を狙う
のは難しいです。地銀は融資に回らないお金を運用するために、低金利下で期間の長い円債の保有比率を高めていたことが背景にあります。
債券は満期まで保有すれば損失が発生することはありません。ただ、銀行がとることのできるリスクの量には限りがあるため、期間の長い円債
で含み損を抱えたままだと有価証券に追加投資したり、融資を増やしたりしにくくなります。
日銀の金融政策次第では含み損がさらに増える可能性があります。一部の地銀は保有債券の売却に踏み切りました。石川県の北国銀行、群
馬銀行、山梨中央銀行、岐阜県の大垣共立銀行、岩手県の北日本銀行、長野銀行、大分銀行の7行では債券の売却損が本業のもうけを上回り、
実質業務純損益が赤字になりました。体力のある地銀は早期処理に動くことができますが、体力に自信のない地銀はさらなる金利上昇が逆風と
なりそうです。
2023/11/20 05:00 日経速報ニュース
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの2023年4~9月期連結決算は純利益の合計が前年同期比71%増の1兆8694
億円と、05年度に3メガバンク体制が始まって以来で最高となった。世界的に金利上昇が進み、銀行経営への追い風が強まってきた。「金利のあ
る世界」に向けて動き始めたメガバンクの現状を決算の数字から検証する。
国内外の預金などで集めた資金を比較的高い利回りで運用できるようになり、利ざやの拡大が好決算につながった。利上げで先行する海外で
は三菱UFJの貸出金利ざやが1.33%と22年4~9月期に比べ0.33%拡大。三井住友、みずほも改善傾向にある。国内でも3メガバンク平均の大企業
向け貸出金利ざやは約0.56%と、16年1月の日銀のマイナス金利政策導入決定後で最大となった。
みずほFGの木原正裕社長は13日の記者会見で「金利がある世界で預金に価値が出てくる。預金を取ってビジネスをする原資をしっかり稼ぐ」と
強調した。超低金利のもとでは預金を集めても運用で大きな収益を上げられず、一部では「預金は厄介者」との見方すら広がっていた。金利が上
がり始め、認識が変わろうとしている。
超低金利下で3メガバンクの預金残高は積み上がり続けてきた。3メガの預金の期末残高(譲渡性預金除く)は16年3月期から23年9月期までに
4割増加し、530兆円ほどに達した。資金の振り向け先のない企業などが預金を増やしたほか、新型コロナウイルス禍の給付金がそのまま預金に
積み上がったことなどが原因だ。
こうして集まった預金が、金利上昇局面では収益を大きくするテコの役割を果たそうとしている。定期預金の金利は期間を問わず横並びで0.002
%まで下がっていたが、3メガバンクは預金を引き留めるため、11月にそろって5年物など長期の定期預金の金利を引き上げた。10年物の金利は
0.2%と従来の0.002%の100倍の水準だ。メガバンク幹部は「現場には定期預金などの重要性を再確認させている」と話す。
店舗戦略も変わり始めた。三井住友はSBI証券などと連携した金融サービス「Olive(オリーブ)」を3月に始め、顧客数は100万人を超えた。みず
ほは24年2月、10年ぶりの新店として都内に個人の口座開設に特化した専門店をもうける。三菱UFJもNTTドコモなどと連携した金融サービスで
地方の預金を集める。
もっとも、まだ金利引き上げの規模は限定的だ。三菱UFJの亀澤宏規社長は定期預金に関し顧客の反応は上々と触れつつ「業績への影響は
軽微」と説明した。たとえば三菱UFJ銀行単体の残存期間3年以上の定期預金の残高でみると23年3月末で7260億円で、定期預金全体の2%弱。
金利が引き上げられた長期の定期預金への需要は他のメガバンクも含め限定的といえる。
定期預金の金利は対応する期間の市場金利をもとに、営業上の戦略を考慮して決めるのが一般的だ。日銀によるマイナス金利政策の解除も
現実味を帯びるなか、短期金利に連動する普通預金の扱いが今後の焦点となる。普通預金の金利が上がれば、金利上昇の恩恵が個人にも幅
広く行き渡る。
国内の預貸金利回りをみるとメガバンクの貸し出しの原資となる預金の利回りはそろってほぼ0%に張り付く。貸出金利回りの変動は3メガバン
クで前年同期比でマイナス0.02%?プラス0.03%とわずかだ。長期金利の上昇の貸出金利回りへの波及はこれからとなる。
普通預金の金利引き上げに向けた条件の一つが収益源となる企業への貸出金利が上げられるかどうかだ。これまでのメガバンクの利ざやの拡
大はリスク管理の徹底によるところが大きい。三井住友の伊藤文彦最高財務責任者(CFO)は「営業部隊は利上げ交渉の経験がない」と指摘する。
金利は固定型も含め市場金利にあわせて設定することが一般的だが、企業が受け入れるかは未知数だ。単純に金利を引き上げれば資金需要
の減退を招く可能性もある。日本の企業は金利負担が重くなっても借り入れを増やそうと思えるような成長戦略を描けるのか。メガバンクも企業へ
の提案力が問われることになる
2023/11/20 日本経済新聞 朝刊
大手銀行の業績が急回復している。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など5大行の4~9月期は連結純利益が前年同期の1.5倍に達し
た。海外の利上げや日銀の政策修正が追い風になった。各行は好業績に油断することなく、経済の持続的な成長に結びつける力量が問われる。
3メガ銀とりそなホールディングス(HD)、三井住友トラストHDの5大行合わせた連結純利益は1兆9960億円だった。三菱UFJFGが持ち分法
適用会社、米モルガン・スタンレーの9カ月分の利益を計上した特殊要因を除いても、3メガ銀になった2005年度以降で最高だった。
好業績は日本でも金利が上がり始めた局面で、大手行の規模がものをいった。3メガ銀が国内の貸し出しでどれだけ稼ぐかを示す「利ざや」が拡
大し、三井住友FGや三菱UFJFGの株式時価総額は上昇傾向が鮮明になった。
もっとも、各行のPBR(株価純資産倍率)は依然として解散価値の1倍を下回る。外国の金融大手と比べても株式市場からの評価はなお低い。
規模の大きさに頼るばかりでなく、企業や個人に提供するサービスの対価である手数料を増やすなど、力強い成長の道筋を示す必要がある。
「金利のある世界」で銀行が担う役割は今まで以上に重くなる。いかに預金を集め、社会と経済に資する用途へ的確に振り向けるか。デジタル化
に対応しながら店舗や営業を改めていくべきだ。
負のインパクトにも注意が要る。金利が上がればその分だけ債券の時価は下がる。集めた預金を国債運用に回した結果、9月末時点の債券の
含み損は地方銀行だけで2.8兆円に膨らみ、6月末から7割増えた。環境変化に応じたリスク管理が課題になる。
実質無利子・無担保のゼロゼロ融資などの新型コロナウイルス対応の支援が終わり、企業倒産も増えつつある。各行は引当金を積んで倒産に
備えながら、取引先を再生に導く腕を磨いてもらいたい。
2023/11/21 02:00 日経速報ニュース
【この記事のポイント】
・三井住友系の航空機リース大手が中型旅客機を購入へ
・世界の旅客需要増を見込み、機体数を約1000機に増強
・中型機は利用する航空会社が多く、買い手がつきやすい
三井住友フィナンシャルグループ(FG)が出資する航空機リース世界2位のSMBCアビエーションキャピタル(AC)は、中型旅客機を60機取得
する。購入総額は5000億円超とみられる。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ世界の旅客需要は来年にかけてコロナ前を上回る見通しだ。今後
も市場拡大が続くとみて大型投資に踏み切る。
SMBCACは三井住友ファイナンス&リース(FL)と三井住友銀行が出資しており、三井住友FGの2023年4?9月期への利益貢献は200億円
弱。航空会社は高額の機体を自社で保有せずリースを使う傾向を強めており、足元では47%程度がリース会社が保有する機体だ。
エアバス製の最新中型機「A320neo」を購入する契約をこのほど結んだ。燃費性能が高く、温暖化ガス排出量を減らしたい航空会社からの需
要も見込む。同機種の市場流通価格で換算すると、購入総額は日本円で5000億円を超える規模とみられる。購入資金は銀行借り入れや社債発
行でまかなう。
足元の金利上昇は資金調達コストの上昇につながるものの、発注に伴う支払いは分割のため負担増は限られるとみられる。大規模発注でメー
カーとの価格交渉を優位に進める狙いもある。
A320neoは機内の通路が1本のナローボディーと呼ばれる種類の機体。主に国内線を飛び、世界に流通する機体の7割弱を占める。市場平均
のリース料は月間28万?38万ドル(約4200万?5700万円)前後とみられる。利用する航空会社が多いため売却時に買い手がつきやすく、資
産としての流動性が高い。
SMBCACは今年9月、ボーイング製の中型機も25機発注した。総額は市場価格換算で2000億円規模。エアバスを含めると新規の発注は85
機になる。SMBCACは足元で496機を保有している。すでに発注済みの機体や補修のみを請け負う管理機体などを合わせると同社が扱う機体
数は約1000機となる。
2000機を超す世界最大手のエアキャップには及ばないものの、中型機に特化したリース会社としての存在感が増す。SMBCACは14年度や
18年度にもまとまった規模で航空機を発注したが、コロナ後に大規模な機体の増強に動くのは初めて。
今回発注した機体は28年から31年ごろに順次、受け渡される。国際航空運送協会(IATA)によると世界の旅客需要は24年にコロナ前の19
年を3%上回る見通しで、日本航空機開発協会は2042年の旅客需要が19年の2.2倍になると予測する。
旅客需要の増大が見込まれる一方、航空機メーカーの製造は追いついていない。コロナ禍でメーカーが人員を削減したためだ。資材価格の高
騰もあり、航空機市場は当面、需要が供給を上回る状態が続く見通し。SMBCACは需給の逼迫から機体の価格やリース料も中長期的に上昇
するとみている。
航空機リース事業は巨額の資産を計上するため、国内リース会社では戦略の違いが鮮明だ。オリックスは保有機体を19年3月時点の100機
から23年3月に51機とおよそ半分に減らした。足元では58機保有する。
オリックスの北川慶・輸送機器事業副本部長は「バランスシートを大きくしすぎないように資産を回転させることが重要だ。『買ったら売る』を徹底
する」と話す。
市場の成長が見込まれる半面、不測の事態で打撃を受けることも多い。コロナ禍では航空会社の経営が悪化し、リース料の支払い延滞や新規
のリース契約が取れない事態が相次いだ。ロシアによるウクライナ侵攻ではロシア国内の航空機の回収が困難になり、SMBCACなど世界のリ
ース会社が減損を計上する事態となった。
リース会社の見込み通りに航空需要が拡大し続けるか見通せない面もある。
2023/11/21 05:00 日経速報ニュース
2023年4?9月期決算で最高益となったが、3メガバンクに高揚感はない。株価は金利上昇期待で上昇したものの、PBR(株価純資産倍率)は解
散価値とされる1倍には届かない。「通過点」(三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規社長)と位置付ける1倍を超えて株式市場の評価を高め
るには、デジタル化などもう一段の構造改革が必要になる。
【検証3メガ決算㊤】金利復活で動き出すメガバンク 預金に重み、戦略に変化
「全てにおいて予想を上回った」。JPモルガン証券の矢野貴裕氏は三井住友FGの決算をこう評した。2024年3月期の連結業績予想を1000億円
上方修正し、自社株買いや増配といった株主還元強化策も打ち出した。
三菱UFJも最高益となり、半期で過去最大の自社株買いを打ち出した。みずほFGも通期予想を上方修正し、増配を発表した。国内の格付け機関
が相次いで3メガバンクの発行体格付けを引き上げるなど健全性への評価も高まる。
しかし、決算が出そろった翌15日の終値は3社とも前日比で下落し、その後も株価は伸び悩む。日米の経済指標発表を受け、金利上昇観測が後
退したためだ。メガバンク幹部は「結局、外部環境に左右される」とため息をつく。
シティグループ証券の丹羽孝一氏はメガバンクのPBRが23年度中にも1倍を超える可能性を指摘する。ただ、理由として挙げるのは「伝統的な融
資が中心のビジネスモデルで、金融政策など外部環境の影響を受けやすい」ことだ。個別の決算よりも金融政策への観測が材料視されやすいの
は、資産を膨らませるビジネスモデルから脱却できておらず、支店網などの固定コストも高いことがある。
PBR1倍を超えるのはデジタル投資を続けて旧来型のビジネスから脱却し、自己資本利益率(ROE)を高める銀行だ。米JPモルガン・チェースは年
間1兆円規模のデジタル投資を行い、シンガポールのDBSは産業金融からビジネス領域を広げた。メガバンクのIT投資は保守・運用を中心に3年間
で数千億円規模にとどまり、海外勢との差は大きい。
国内でも、23年に上場したネット専業の住信SBIネット銀行や楽天銀行のPBRは1.9倍前後だ。デジタルを基盤に個人顧客を取り込む銀行の市場
評価は高い。メガ銀が新しいデジタルサービスに本格的に取り組み始めたのは最近だ。三井住友は個人サービスの軸足をスマホに移し、支店の
運営コスト削減と将来の顧客取り込みに動く。みずほの木原正裕社長は11月に発表した楽天証券への追加出資を通じて「デジタルの世界に流れ
ていく顧客をしっかりつかむ」と意気込む。
事業の取捨選択も問われる。三菱UFJは22年に米地銀を売却した。株主還元やデジタルなどへの投資に振り向けるとしている。売却について亀
澤社長は「(市場に)評価いただいている」と手応えを口にする。
三井住友は23年11月に、数年来の懸案だった米貨車リース事業の売却を決めた。「規制強化や競争激化で採算が悪くなっていた」(伊藤文彦最
高財務責任者)という。売却で捻出した経営資源は投資銀行ビジネスや7月に開始したデジタルバンクなど、資本効率の高い米国事業に分配する。
みずほは米M&A(合併・買収)助言会社を買収し、もともと強みとしていた米投資銀行ビジネスを強化。資本に頼らない手数料ビジネスを拡大する。
資産のスリム化と利益捻出ができる政策保有株式の売却も焦点だ。国内株が33年ぶりの高値圏で推移する足元ではより効果が大きい。11月に
は三菱UFJ銀行やみずほ銀行が味の素株を売り出したが、大手銀幹部からは「(今後は)岩盤のように交渉が難しい取引先ばかり残っている」との
声も多い。
外部環境頼みにならずPBR1倍を達成するための道筋は明確だ。不採算事業を見直し、デジタル化などを通じてコスト構造を変えることに尽きる。
取り組むメニューは出そろっており、実行力が問われる段階に入ってきた。
2023/11/22 18:00 日経速報ニュース
金融庁は銀行グループによる事業会社への出資規制を緩和する。現在は投資専門子会社を通じて設立10年未満の企業に限り5%超の出資を認
めているが、10年以上の企業にも5%を超えて出資できるようにする。銀行が新興企業にリスクマネーを供給しやすくし、創薬など研究開発に時間が
かかる新興企業のニーズに対応できるようにする。
一般から意見を公募したうえで2024年6月までに銀行法の施行規則を改正する見通し。スタートアップ育成は岸田文雄政権が掲げる主要政策の
一つ。
財務の健全性維持や産業支配の集中を防ぐため、銀行には事業会社の株式を議決権の5%を超えて原則保有できない「5%ルール」が課されてい
る。ただし、スタートアップに対しては独立性のある投資専門子会社を通じてであれば最大100%まで保有できる特例がある。
現在の特例は「設立10年未満」のスタートアップへの出資に限定しているが、これを10年以上の非上場の中小企業にも対象を広げる方向で検討
している。15年や20年といった新たな年数の上限は業界のニーズも踏まえて判断する。
10年未満の制約を緩めるのは研究開発型のスタートアップは事業化まで時間がかかり、投資から回収までの期間が10年以上になる傾向があ
るためだ。研究開発型スタートアップの6割以上は新規株式公開(IPO)まで10年以上かかった。
とくに創薬分野では開発期間が?く、薬事承認されないと売り上げが立たないなど事業化の難易度も高い。研究から開発に移る段階と開発から
事業化に至る段階でそれぞれ資本調達のニーズがあるが、設立10年以上になると銀行グループから5%を超えて出資を受けることはできない。
「研究開発から製品化まで一貫して支援するとなれば設立10年は短いとの声があり、設立年数要件を引き上げる方向で検討する」(金融庁幹部)
スタートアップへのリスクマネーの供給は本来、ベンチャーキャピタル(VC)やファンドなどの役割だ。日本ベンチャーキャピタル協会によると22年
にスタートアップが調達した資金の出し手はVC経由が41%で金融機関は3・5%だったが、日本のVCによる出資額は米国の100分の1程度にと
どまっている。
銀行預金に個人マネーが滞留する日本ではVCが十分に育っておらず、資金が回りにくいのが実態だ。
預金を扱う銀行による出資には様々な制約があるが、スタートアップ投資については機動的に資本性資金を供給する狙いで1998年に導入され
環境変化にあわせて緩和されてきた。過渡期的な措置として銀行グループへの規制を緩めて、スタートアップの成長を後押しする。
地銀でも地域の課題解決や収益拡大を目指して投資専門子会社設立の動きが広がっている。今年7月以降だけで阿波銀行、秋田銀行、岩手
銀行、京都銀行、福井銀行、鹿児島銀行が立ち上げた。投資専門子会社はスタートアップだけでなく事業再生や事業承継などで課題を抱える企
業にも出資できる。
21年の銀行法改正で経営支援の一環でコンサルティング業務も手がけられるようになり、手数料を稼ぎやすくなったことも設立が相次いでいる背
景にある。
貸出金の回収可能性をみる融資と異なり、成長性を見極めて資本を投じるエクイティ投資はビジネスモデルが全く異なる。今回の出資規制の緩
和は、スタートアップ育成と同時に銀行グループに目利き力の向上を問うことになる。
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2023/11/24 日本経済新聞 朝刊
3つの違いを知って投資 経験や感覚生かし銘柄選び
来年から新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まり、非課税枠も拡大するので初めて株を買ってみようという人も多いだろう。その時、株の規
模別分類である「大型株・中型株・小型株」ではどれを選べばいいのか。安定感のある大型株か、値動きが軽く比較的短期での急成長も見込める
ため個人投資家に人気の中小型株か。株のプロ2人に聞いた。
株の区分や特徴を下の表にまとめた。東京証券取引所は近年は時価総額と流動性を基準に、これらが最も高い100銘柄を大型株、次に高い4
00銘柄を中型株、それ以外を小型株としている。だが投資家側の捉え方は非常に曖昧で、漠然と「大型株は有名大企業で値動きが緩やか」「中
小型株は知名度の低い企業が多く値動きが激しい」と思っている人も多いだろう。
実際、値動きは左上のチャートのように、時価総額日本一のトヨタ自動車の株価と小型株中心の東証グロース市場250指数とではかなり違いが
ある。初めて株を買うシニアで、株価の変動ではらはらしたくないという人は大型株から始めるのが良さそうだ。
ただ東証区分の中型株にもマツダやヤマハ、カゴメなど有名企業は多く、ゆうちょ銀行や豊田自動織機のように時価総額が4兆~5兆円の企業
もある。一方、日本株の大半は小型株で、上場したての無名企業や時価総額が100億円台の企業が多く、TOPIX(東証株価指数)算出対象でな
い銘柄も多い。よく「アナリストが少ないため情報がなく、プロが買わないので『ダイヤの原石』が割安に放置されている」とされるのは小型株のイメ
ージだ。
つまり一般に「大型株か中小型株か」と言われるが、「上位500社の大・中型株か、それ以外の小型株か」の方が実態に近い。それぞれの特徴
を知った上で投資したい。
■日本株は世界の中小型株
この中で初心者はどこを狙えばいいか。アナリスト経験もあり株全般に詳しいピクテ・ジャパンのストラテジストの糸島孝俊さんは「日本の大・中型
株を中心にして、そこで成功したら小型株にも挑戦という順序がいい。10銘柄買うなら大・中型株を7~8銘柄、小型株は2~3銘柄に留める」と助
言する。
「小型株には確かに『ダイヤの原石』もあるが、『上場ゴール』というように株式上場だけが目的で長期視点のない会社もある。資本が少なく借り入
れに頼る会社も多いので、金利上昇にも弱い」とも言う。
興味深いのは「日本株は世界基準で見れば中小型株」という指摘だ。確かに日本企業の時価総額はアップルの約433兆円、マイクロソフトの約
410兆円と比べれば、大型株でもだいぶ小さい。
「だからと言って初めて買うのに外国株はすすめない。為替の問題もあるし、米長期金利は4~5%という高さなので株から債券への資金シフトが
起こっている。むしろ日本の大型株は世界では中小型株だからまだ成長余地があると捉え、その中で真剣に世界に打って出る企業や、ウォーレン
・バフェット氏の言う『世間は気付いていないが自分には良さが分かる企業』を探すのがおすすめだ」
■小型株の難しさと面白さ
三井住友DSアセットマネジメントのチーフファンドマネージャー、苦瓜達郎さんは「大型株と中小型株は野球とソフトボールくらい違う」と説明する。
「特に小型株の世界は会社ごとの違いが大きくバラバラで、株価も世界経済の動きと連動していない」。やはり初心者には難しそうだ。
一方で「世間でいうほど株価のボラティリティーは高くなく、ガバナンスも小さい会社の方がグリップを利かせやすい面がある」とも。その辺をうまく
見抜ければ、大きく成長する銘柄に出合う可能性は大型株より高そうだ。実際、苦瓜さんが運用する「ニッポン中小型株ファンド」は高成績のため
資金が集まりすぎ、市場規模の小ささもあって今は新規購入の受け付けを一時停止している。
では小型株に挑戦したい場合は銘柄をどう選ぶか。「シニアならそれまで働いていた業界での『いい会社、ダメな会社』の感覚を生かす。気にな
る会社でIR(投資家向け広報)が充実している所を丹念に調べ、自分から見て好感が持てるかで判断する。NISAで投資するなら高配当株もいい」
。一方、材料が出て最近急に上がった株、景気や為替の影響を受けやすい株は避けた方がいいとも助言する。
株式保有比率 増加
3205 - (株)ダイドーリミテッド
2023-11-16 UBS Buy継続 8140円 → 8240円
2023-11-15 GS 中立継続 8000円 → 8300円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-10-03 モルガンS Overweight継続 7880円 → 8930円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-09-01 みずほ 買い継続 6600円 → 7350円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023/11/28 05:31 日経速報ニュース
日銀のマイナス金利政策の解除が近づきつつある。日銀は春季労使交渉や個人消費などの動向を見極め、早ければ2024年前半にも解除を判
断する。解除すれば17年ぶりの利上げとなり、脱デフレに向けて緩和一辺倒だった金融政策は転換点を迎える。日銀だけでなく政府も企業も、超
低金利のぬるま湯から抜け出し、成長を取り戻す覚悟が問われる。
マイナス金利の功罪を調査
「いよいよマイナス金利解除への地ならしが始まった」。10月下旬、日銀が水面下で金融機関に依頼したある調査が波紋を呼んだ。
過去25年間の債券市場の機能度を調べる債券・市場サーベイの特別調査だ。マイナス金利や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、Y
CC)導入後の局面も調査対象とし、影響や副作用を聞いた。結果は12月にも公表される見通しで、市場関係者は「日銀は調査結果を根拠に解除
に踏み切るのではないか」と身構える。
日銀は16年1月にマイナス金利政策の導入を決め、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用している。解除は
「0.1%の利上げ」(内田真一副総裁)に相当するため、これまで日銀は「(解除までには)まだ距離がある」と否定し続けてきた。
「永遠に先延ばしはできない」
だが、日銀内のムードは着実に変わりつつある。植田和男総裁は6日、名古屋での金融経済懇談会でマイナス金利解除の前提となる物価2%
目標の安定的・持続的な達成について「確度が少しずつ高まってきている」と踏み込んだ。
ある日銀関係者は「日本も物価高が長期化している。欧米と同じようにインフレ対応でビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)のリスクが出てきた」と
警戒する。別の関係者は「(解除を)永遠に先延ばしはできない。解除後の金融政策の進め方も内部では当然検討はしている」と話す。
判断のカギを握るのが、もうデフレには逆戻りしないという確信を抱けるかどうかだ。日銀が注目するのが24年の春季労使交渉。連合は賃上げ目
標を昨年を上回る「5%以上」とする方針を発表した。植田総裁も「来年の賃上げがそこそこのものになる可能性は、少し前に比べると高まっている」
と手応えを感じている。
の回答が32%と最多で、「24年1月」も20%に上った。合計で7割の回答者が24年前半での解除を予想する。
貸出金利に上昇圧力
17年ぶりの利上げは、超低金利で債務を膨らませた企業には試練となる。国内銀行が融資する際の約定平均金利(新規)は異次元緩和開始
前(13年3月)の0.962%から、マイナス金利導入後の16年3月には0.69%まで下がった。足元ではすでに金利に上昇圧力がかかり、23年9月時
点で15年12月以来の水準となる0.878%まで上昇した。
融資金利の引き上げは企業の資金調達のハードルが上がることを意味する。東京商工リサーチによると、10月の企業倒産(負債額1000万円以
上)は前年同月比33%増の793件だった。新型コロナウイルス禍で実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を利用した企業倒産が増えており、融
資金利の上昇が加速させる可能性もある。
利上げが進めば、家計にも影響が出そうだ。住宅ローン比較サービス、モゲチェックを運営するMFS(東京・千代田)の試算によると、変動型金利
が0.1%上昇するごとに住宅ローン利用者全体で約1100億円の利息負担増になる。
一方で、預金の利息増加などの恩恵もある。23年6月時点の家計の流動性預金残高は約636兆円。国内金融機関の普通預金金利は23年11月
時点で平均0.001%だが、マイナス金利導入前の0.02%程度まで戻れば全体で年間で利息収入が年間1200億円ほど増える計算だ。定期預金で
は多くの金融機関がすでに金利引き上げに動いている。
読み切れないのが政治の動きだ。円安による物価上昇をどう抑えるかが大きな政治テーマとなっており、岸田文雄政権がマイナス金利解除に
強く異を唱える展開には今のところなっていない。ただ、ひとたび為替相場が円高に振れたり、中小企業の倒産が増え始めたりした場合、政治を
取り巻く空気は一変しかねない。
利上げの道筋をどう描くか
財務省関係者は「政治の調整には時間がかかる。もし日銀が解除を決めたとしても、緩和的な環境は当面続ける必要がある」と話す。日銀関
係者は「解除後はゼロ金利に戻して様子を見た上で、その後の金利引き上げの余地を検討することになる」と話す。ショックを避けながらどのよう
に利上げの道筋を描いていくが焦点となる。
四半世紀にわたって続く超低金利政策の最大の弊害は、金利が果たしていた事業の選別などの機能が緩み、日本経済全体に非効率がはびこ
ったことだ。危機回避には効果があったといえるが、政府や企業の改革を停滞させた側面は否めない。現状維持や縮小均衡に傾きがちだったデ
フレ時代の思考から抜け出せるのか。金利のある世界への回帰は日本経済が成長を探る上で避けて通れない道となる。
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2023/11/29 05:00 日経速報ニュース
11月20日、日銀本店に金融機関の短期金融市場の担当者らが集まった。毎年1回、定期的に開いている実務者会合で、通常であれば大きな
脚光を浴びることはないが、今回は違った。関係者によると、この日の会合でマイナス金利解除に向けた各社の準備状況などについて情報交換
があったという。
「日銀は解除後の市場動向に目を向け始めている。解除はそう遠くないだろう」。ある関係者はこう話す。日銀が政策金利を動かしたときに真っ
先に影響を受けるのが、金融機関が日々の資金をやりとりする短期金融市場だ。金利正常化を見据え、日銀が市場との対話に動き始めた可能
性がある。
日銀はすでに、7月と10月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を柔軟化し、長期金利のある程度の上昇を容認した。ある大手
銀行の幹部は「日銀はYCCから事実上、抜け出すことに成功した。大きな混乱もなく、今の日銀には安心感がある」と評価する。
日銀は市場の予想よりも早く動くことで、2021年にオーストラリア準備銀行(中央銀行)が金利操作を撤廃した際に金利が急騰したような混乱を
未然に防いできた。11月には定期的に行っている5年超10年以下の国債の購入量を2回にわたって減額。市場参加者からは、宣言なく緩和を縮
小する「ステルステーパリング」が進んでいるとの声も聞かれる。
日銀関係者も「出口が近いというのは否定しない」と認める。次の焦点は、いよいよ本丸のマイナス金利政策の解除となる。
企画のエースが挑む出口
いま日銀で、政策運営の中心にいるのが副総裁の内田真一氏だ。金融政策の企画・立案を担う企画畑が長いエースで、植田和男総裁の右腕
といえる。
内田氏は7月の政策修正の直前、日本経済新聞とのインタビューで「(YCCが)市場機能に影響を与えていることは強く認識している」と語り、政
策修正を市場に織り込ませた。サプライズを避け、出口に向けて慎重に歩を進めるのが内田流といえる。
そんな内田氏にとってマイナス金利政策の解除は特別な意味を持つ。16年のマイナス金利導入時、銀行からの激しい批判の矢面に立たされた
のが、企画局長として準備を進めた内田氏だった。
日銀は当時、国債の大量購入を進めていたが、これ以上買い入れ量を増やすことは難しいとする緩和の限界論が広がっていた。円高・株安の
リスクが意識されるなか、追加緩和のカードを増やすための起死回生策がマイナス金利政策だった。
「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる」。16年1月の日銀の決定文からは、限界を取り払い、新たな緩和余地を生み出したことへの高揚
感がにじむ。
だが、日銀がマイナス金利の領域に足を踏み入れたことで、金利に一斉に低下圧力がかかり、銀行収益の悪化などの副作用が高まった。当時
三菱UFJフィナンシャル・グループ社長だった平野信行氏は「銀行界にとっての短期的な影響は明らかにネガティブ」と異例の日銀批判を行った。
四面楚歌(そか)となるなか、日銀は結局、マイナス金利をそれ以上深掘りできなくなった。異次元緩和は短期決戦から持久戦へと装いを改め、
16年9月のYCC導入につながった。当時の日銀審議委員で野村総合研究所の木内登英氏はマイナス金利導入で「(利下げの副作用が効果を上
回る)リバーサルレートが意識されるようになった」と振り返る。
マイナス金利政策で先行していた欧州では、住宅バブルと通貨安に直面したスウェーデン中銀が2019年に初めて同政策を解除。欧州中央銀行
(ECB)、スイス中銀なども政策金利を次々にプラス圏に引き上げた。現在も維持しているのは日銀だけだ。
ファクトセットによると、世界のマイナス利回りの債券はピーク時の20年ごろに一時18兆ドル程度(約2700兆円)に膨らんでいたが、いまでは急減。
マイナス金利は世界から消えようとしている。
「スイッチを入れる怖さ」
マイナス金利解除には警戒もある。海外からは、日本の投資家が米欧から金利のつき始めた国内へと資金を動かせば「為替や債券など複数の
市場でボラティリティー(変動)が高まる可能性がある」(米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスのマダビ・ボキル氏)との声が上がる。
日銀関係者も「(利上げという)長年動かしていなかった機械のスイッチを入れる怖さ」を感じているという。金融市場の混乱を避けるためには、
利上げのペースをできるだけ緩やかにすることが欠かせない。
政策決定が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」に陥れば、日銀は物価上昇を抑えるために急ピッチの利上げを強いられ、経済にも混乱が広がり
かねない。拙速は避けるべきだが、必要と判断すればためらわずに動く大胆さも求められている。
2023/11/30 05:00 日経速報ニュース
「預金金利も上がってきますから」。ある都内のメガバンクの支店では、担当者が取引先を訪れ貸出金利引き上げの交渉に挑んでいた。交渉は
新規融資と既存の融資枠の更新が軸で、担当者にとっては絶対に落とせない案件だ。
「契約を落としてもいい」
これまでであれば、金利を下げてでも契約を取り付けることを優先していたはず。だが、いまのメガバンクはそんなデフレ時代の常識を何とか変
えようとしている。支店長は「(融資の金利を)下げるくらいなら(契約を)落としてもいい」と担当者を鼓舞した。
日銀の相次ぐ政策修正で市場金利が上昇したことを受け、9月の銀行の新規融資の金利(貸出約定平均金利、新規)はマイナス金利政策導入
前の2015年12月以来の高水準に達した。6カ月移動平均でみても2年9カ月ぶりの高さで、長く続いた低落傾向にようやく歯止めがかかってきた。
「政策金利が変わるかが(収益には)一番大きい」(みずほFGの木原正裕社長)。各行は貸出金利の上昇につながる日銀のマイナス金利解除
への期待を強める。みずほは解除後、粗利益で350億円の押し上げ効果を見込む。三井住友FGは短期金利が0.1%上昇すると純利益を約200億
円押し上げると試算する。
「カネ余り」は変わらず
ただ、貸出金利を引き上げていくにはハードルもある。
日銀の資金循環統計によれば、民間企業部門(金融除く)の現預金残高は6月末時点で343兆円と前年同期比で3.7%増えた。マイナス金利
導入前の15年12月末と比べると1.5倍の規模で、金利復活後もカネ余りの状況は変わらない。
日本の企業は1990年代後半の貸しはがしや貸し渋りの経験を経て、債務の圧縮を進めてきた。大規模な設備投資やM&A(合併・買収)に踏
み出す企業も増えているが、上場企業では依然として無借金経営の企業が多く、企業の借り入れ需要は弱い。
「無借金経営で現預金は十分ある。銀行の担当者は営業に来るが、融資を受ける予定はない」(都内のインフラ企業の経営企画担当役員)。
複数の銀行が一部の優良企業の限られた資金需要を奪い合う構図が変わらなければ、貸出金利の引き上げは絵に描いた餅となりかねない。
長らく続いた低金利環境で「貸す側も、借りる側も金利交渉に慣れていない」(精密機械メーカーの財務責任者)という問題もある。コーポレー
トガバナンス(企業統治)や温暖化ガス排出ゼロに向けた環境対応の助言などと組み合わせながら適切な金利水準を探っていく。そんな知恵
が銀行に求められている。
野村証券の高宮健リサーチアナリストは「マイナス金利からの脱却はレジーム・チェンジというべき大きな構造的かつ質的な変化」と指摘する。
利ざやの改善などで得た収益を顧客の利便性向上や事務プロセスの簡素化などにつながるデジタル投資に振り向け、収益向上の好循環をつく
り上げていけるかが課題だ。
金利上昇の恩恵、家計に届くか
一方で、ゼロ近傍に張り付いていた預金金利の一部が、貸出金利に先行して上がり始めている。引き上げ競争の口火を切ったのがSBI新生
銀行だ。22年6月に6カ月物などの定期預金金利をそれまでの10倍に引き上げ、23年9月末の預金残高を引き上げ前より6割も多い10兆5000
億円に増やした。
「10年定期に移したい」。三菱UFJも11月6日、5年以上の定期預金の金利を引き上げた。10年では0.2%と従来の100倍の水準。三菱UFJ
銀行の都内の支店には、毎日複数の顧客が問い合わせに訪れているという。
メガバンクやネット銀に追随し、地銀も相次ぎ預金金利を引き上げている。日本経済新聞の集計では、全国の地銀の4割以上が定期預金の
金利を引き上げた。ただ、貸出金利の引き上げ交渉が十分進まないなかで預金金利だけが上がっていけば、地銀の収益は一段と圧迫されかね
ない。
金利復活の恩恵が家計に届くためには、長期の定期預金だけでなく、普通預金などの金利が幅広く上昇していく必要がある。貸出金利と預金
金利は車の両輪で、どちらかだけが上がっていくという状況は長続きしない。銀行が企業の成長分野への投資を支え、貸出金利を引き上げてい
けるかが、金利のある世界が定着する条件となる。
【異次元緩和 近づく出口】
㊤マイナス金利解除、日銀が地ならし ショック回避探る
㊥市場の一歩先へ、動き出した日銀 後手に回るリスク警戒
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週0.9%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,235,144百万円から0.9%上昇し
1,246,811百万円となった。因みにレーティングコンセンサスは4.4で変わらずのまま。
2023/11/30 19:55
三井住友FG (8316)
日系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、8,550円。
日系大手証券が11月30日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(買い)に据え置いた。
一方、目標株価は7,350円から8,550円に引き上げた。因みに前日(11月29日)時点のレーティングコンセンサスは4.42
(アナリスト数12人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,273円(アナリスト数12人)となっている。
2023-12-01 みずほ 買い継続 7350円 → 8550円
2023-11-27 JPモルガン Overweight継続 8200円 → 8560円
2023-11-16 UBS Buy継続 8140円 → 8240円
2023-11-15 GS 中立継続 8000円 → 8300円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-10-03 モルガンS Overweight継続 7880円 → 8930円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023-12-01 みずほ 買い継続 7350円 → 8550円
2023-11-27 JPモルガン Overweight継続 8200円 → 8560円
2023-11-16 UBS Buy継続 8140円 → 8240円
2023-11-15 GS 中立継続 8000円 → 8300円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週2.3%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,235,144百万円から2.3%上昇し
1,263,977百万円となった。対前年実績で見た場合6.4%の増益予想から8.9%増益予想に上方修正されたことになる。
因みにレーティングコンセンサスは4.4で変わらずのまま。
2023/12/05 14:05
三井住友FG (8316)
米系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、9,460円。
米系大手証券が12月1日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(Overweight)に据え置いた。
一方、目標株価は8,930円から9,460円に引き上げた。因みに前日(11月30日)時点のレーティングコンセンサスは4.42
(アナリスト数12人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,373円(アナリスト数12人)となっている。
2023/12/09 日本経済新聞 朝刊
【マニラ=志賀優一】フィリピンで伝統的な銀行と新興勢力がデジタル金融を競っている。同国の金融口座保有率は5割弱にとどまるが、所得
向上やスマートフォンの普及で顧客基盤の拡大が見込まれる。各行はアプリの使い勝手向上や金融商品の充実などによって顧客獲得を狙う。
「フィリピンで最も先進的なデジタル銀行だと自負している」。ユーチェンコ財閥傘下の金融大手、リサール商業銀行(RCBC)のユージーン・ア
セベド頭取兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材で強調した。
同行の一般向け金融アプリ「ディスカーテック」はダウンロード数が500万件以上に達する。内部開発した約50の人工知能(AI)モデルを有
融資審査や不正検出に役立てている。
RCBCには三井住友フィナンシャルグループ(FG)が2021年に資本参加した。三井住友FGは日本で銀行やクレジットカードなどの金融取引
を一元管理するスマホサービス「Olive(オリーブ)」を展開する。RCBCは三井住友FGが持つノウハウを活用していく考えだ。
世界銀行の調べによると、フィリピンの15歳以上の金融口座保有率は21年に46%で、17年に比べて14ポイント上昇した。経済発展が先行
するタイの94%、マレーシアの88%に後れを取るが、逆に言えば伸び代が大きい。
口座保有率は国民の所得水準に比例する傾向がある。フィリピンは平均年齢が25歳前後と若く、中間層の拡大が当面続く見通しだ。ネット利
用時間が世界でも有数に長く、デジタル金融が普及する素地は整っている。
フィリピン中央銀行は安全かつ誰でも使いやすい金融サービスの普及を目指し、デジタル銀行や電子決済を推進している。21年に新興のゴー
タイム銀行など6行にデジタル銀行の専業ライセンスを付与した。支店の開設が不要で、スピーディーに事業を展開できる。
ゴータイム銀は地場のゴコンウェイ財閥が、南アフリカで発達したデジタル銀行「タイム」との合弁で22年10月に事業を始めた。専用端末を通
じて5分で口座開設とキャッシュカードの発行が完了する。支店での手続きが必要な伝統的な銀行では、少なくとも1週間ほどかかるのが一般
的だ。
ゴータイム銀の利用者は24年に500万人を見込み、RCBCの一般向けアプリのダウンロード数に迫る。ゴータイム銀共同CEOのナタニエル
・クラーク氏は「保険や投資などのサービスも順次拡充する」と話す。
デジタル金融を巡る競争は激しい。伝統的な銀行では最大手のBDOユニバンクも意欲的だ。銀行以外でも大手通信社系が手掛ける電子マネ
ーの「Gキャッシュ」と「マヤ」がそれぞれ数千万人規模の顧客を有する。マヤはデジタル銀行のライセンスも取得した。
新興のデジタル銀行は先行投資によって顧客獲得を急いでいる段階だ。ゴータイム銀は預金金利を伝統的な銀行より高い年5%に設定する。
格付け会社フィッチ・レーティングスは4日に公表した調査で、フィリピンの新興デジタル銀行は急速に成長しており「今後2年にわたり預金(獲
得)のため精力的な競争を続ける」と指摘した。ただ、高い預金金利に頼った戦略は安定せず、伝統的な銀行が力を握る状況は続くとみる。
新興勢は融資や金融商品の販売などのサービスを広げ、稼ぐ力をつけることが課題となる。
2023-12-04 モルガンS Overweight継続 8930円 → 9460円
2023-12-01 みずほ 買い継続 7350円 → 8550円
2023-11-27 JPモルガン Overweight継続 8200円 → 8560円
2023-11-16 UBS Buy継続 8140円 → 8240円
2023-11-15 GS 中立継続 8000円 → 8300円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-07-04 野村 Buy継続 7200円 → 8800円
2023-06-26 岡三 新規強気 7250円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2023/12/12 09:31 日経速報ニュース
(9時30分、プライム、コード8306)三菱UFJが反落している。前日比22円50銭(1.75%)安の1258円まで売られた。米ブルームバーグ通信
は日本時間11日夕、日銀関係者の話としてマイナス金利や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃などを「今月急ぐ必要は
ほとんどないとの認識だ」と伝えた。報道を受け、日銀による早期の政策修正観測が後退しており、国内金利上昇による利ざや改善を見込ん
で買いを入れていた投資家から売りが出ているようだ。
三井住友FG(8316)やみずほFG(8411)も安い。日銀の植田和男総裁が7日の参院財政金融委員会で「年末から来年にかけて一段とチ
ャレンジングになる」と発言したことをきっかけとして、日銀が早期の政策修正に踏み切るとの観測が強まった。前週後半から金利上昇の恩恵
を受けやすい銀行株を買う動きにつながっていた。
SBI証券の鈴木英之投資情報部長は「金融正常化を本格的に織り込むにはまだ早い印象。ただ銀行株は高利回り銘柄が多く、24年から
の新たな少額投資非課税制度(NISA)開始による資金流入期待は強い」と指摘した。
2023/12/14 19:16 日経速報ニュース
14日の東京株式市場で金融株が軒並み下落した。日米長期金利の低下で利ざや拡大による業績改善への期待が後退し、利益を確定する
動きが広がった。急速な円高進行により、日銀の積極的な金融引き締めへの思惑も後退した。
業種別日経平均株価の「銀行」と「保険」は前日比4%安だった。三井住友フィナンシャルグループは5%安、みずほフィナンシャルグループや
三菱UFJフィナンシャル・グループは4%安だった。かんぽ生命保険は5%安、東京海上ホールディングスは4%安だった。
日米で長期金利が低下し利ざや改善の思惑が後退した。米連邦準備理事会(FRB)が13日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で
想定以上に金融引き締めに消極的な「ハト派」だったと受け止められた。大和証券の柴田光浩シニアストラテジストは「利ざや縮小で収益拡大
期待が後退し、銀行や保険への利益確定売りにつながった」と指摘する。
FOMCを受け、日米金利差の縮小を見込んだ円買い・ドル売りが加速。円高の進行で輸入コストが下がり、インフレが収まるとの見方が強ま
った。日銀がインフレ鎮静化のためのマイナス金利の解除や利上げを実施するとの思惑が後退した。
これまで長期金利が上昇し、銀行や保険株の利ざや改善期待が高かった反動が出たとの声も聞かれた。
銀行・保険株、4%安、金利低下、利益確定売り
2023/12/15 日本経済新聞 朝刊
14日の東京株式市場で金融株が軒並み下落した。日米長期金利の低下で利ざや拡大による業績改善への期待が後退し、利益を確定する
動きが広がった。急速な円高進行により、日銀の積極的な金融引き締めへの思惑も後退した。
業種別日経平均株価の「銀行」と「保険」は前日比4%安だった。三井住友フィナンシャルグループは5%安、みずほフィナンシャルグループや
三菱UFJフィナンシャル・グループは4%安。かんぽ生命保険は5%安、東京海上ホールディングスは4%安だった。
日米で長期金利が低下し利ざや改善の思惑が後退した。米連邦準備理事会(FRB)が13日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で
想定以上に金融引き締めに消極的な「ハト派」だったと受け止められた。大和証券の柴田光浩シニアストラテジストは「利ざや縮小で収益拡大
期待が後退し、銀行や保険への利益確定売りにつながった」と指摘する。
三井住友<8316>
足もとで25日、75日線を支持線として底堅さが見られていたが、昨日は5%を超える下落で両線を割り込んだ。一気にボリンジャーバンドの
-2σ水準まで下げてきたことから、売られ過ぎによる自律反発狙いの買いが入りやすいだろう。ただし、一目均衡表では雲のねじれの局面
で下放れたことでシグナルは悪化したため、まずは7000円辺りでの底堅さを見極めることになりそうだ。
三井住友FG (8316)
米系大手証券、レーティング引き上げ、強気。目標株価引き上げ、8,700円。
米系大手証券が12月15日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを中立(中立)から強気(買い)に引き上げた。
同様に、目標株価も8,300円から8,700円に引き上げた。因みに前日(12月14日)時点のレーティングコンセンサスは4.42(アナリス
ト数12人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,418円(アナリスト数12人)となっている。
2023/12/15 18:00
三井住友FG (8316)
日系中堅証券、レーティング引き下げ、中立。目標株価引き下げ、7,200円。
日系中堅証券が12月15日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(強気)から中立(中立)に引き下げた。
同様に、目標株価も7,250円から7,200円に引き下げた。因みに前日(12月14日)時点のレーティングコンセンサスは4.42(アナリスト
数12人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,418円(アナリスト数12人)となっている。
2023-12-15 GS 中立 → 買い格上げ 8300円 → 8700円
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週0.6%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,263,978百万円から0.6%上昇し、1,271,670百万円となった。
因みにレーティングコンセンサスは4.4で変わらずのまま。
三井住友FG (8316)
日系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、9,700円。
日系大手証券が12月21日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(Buy)に据え置いた。
一方、目標株価は8,800円から9,700円に引き上げた。因みに前日(12月20日)時点のレーティングコンセンサスは4.36
(アナリスト数11人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,491円(アナリスト数11人)となっている。
2023-12-22 野村 Buy継続 8800円 → 9700円
2023-12-18 岡三 強気 → 中立格下げ 7250円 → 7200円
2023-12-15 GS 中立 → 買い格上げ 8300円 → 8700円
2023-12-11 水戸 新規B+ 8500円
2023-12-04 モルガンS Overweight継続 8930円 → 9460円
2023-12-01 みずほ 買い継続 7350円 → 8550円
2023-11-27 JPモルガン Overweight継続 8200円 → 8560円
2023-11-16 UBS Buy継続 8140円 → 8240円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-09-14 SBI 中立継続 6100円 → 7200円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週3.2%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,263,978百万円から3.2%上昇し、1,304,744百万円となった。
対前年実績で見た場合8.9%の増益予想から12.4%増益予想に上方修正されたことになる。因みにレーティングコンセンサスは4.4で変わらずのまま。
2024/01/09 07:24 日経速報ニュース
(コード@JEF/U)8日夕の米株式市場の時間外取引で、独立系証券のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループが下落している。通常取引を
前週末比1.34%高の40.69ドルで終えた後、時間外では一時39ドル近辺まで売られて終値を約4%下回った。同日夕に発表した2023年9?
11月期決算が減収減益となり、嫌気した売りが出ている。
事業会社の売上高にあたる純営業収益は前年同期比17%減の11億9720万ドルだった。資産運用部門が64%の減収となったのが響いた。
株式や債券の引受業務が堅調だったものの、M&A(合併・買収)の減少で投資銀行・市場部門は小幅な増収にとどまった。純利益は53%減
の6563万ドルだった。
あわせて自社株取得枠を2億5000万ドルに拡大したと発表した。
清水律子
2024年1月16日午後 7:58 GMT+937分前更新
[東京 16日 ロイター] - 三井住友フィナンシャルグループ (8316.T)は16日、米金融グループのジェフリーズ・ファイナンシャル・グループ
(JEF.N)との業務提携を欧州・中東・アフリカ(EMEA地域)に拡大すると発表した。
SMBCグループとジェフリーズは、2021年に米国と日本で業務提携を開始。その後、協働領域を企業の合併・買収(M&A)助言業務や
エクイティ・デットキャピタルマーケッツ事業に拡大している。
EMEA地域では、2年以上にわたって共同で金融サービスを提供してきたが、今回の合意で、協働態勢をさらに強化するとしている。
SMBCグループは2021年にジェフリーズの株式約4.5%を取得したほか、22.5億ドルのファイナンスを拠出。23年4月には、株主総会
や各種規制の承認取得を前提に経済持分を無議決権株式の取得を通じて希薄化後ベースで最大15%まで追加取得することを表明している。
2024/01/17 10:32 日経速報ニュース 1285文字
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【プレスリリース】発表日:2024年01月16日
米国総合証券会社Jefferiesとの欧阿中東地域での業務提携の強化について
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(執行役社長グループ CEO : 中島 達 以下、当社グループを総称して「SMBCグループ」)傘下の
株式会社三井住友銀行(頭取 CEO : 福留 朗裕、以下「SMBC」)、SMBC Bank International plc、およびSMBC Bank EU AG は、Jefferies
Financial Group Inc.(以下、「Jefferies」)との間で、欧州・中東・アフリカ地域(以下「EMEA地域」)における業務提携の覚書を締結いたしまし
た。本提携は既存の業務提携の枠組をEMEA地域に拡大し、同地域における商業銀行ならびに投資銀行分野におけるJefferiesとの協働体制
を構築するものとなります。
業務提携深化の一助として、SMBCグループは2021年にJefferiesの発行済み普通株式数の約4.5%を取得し、また、22.5億ドルのファイナン
スをJefferies宛に拠出しております。2023年4月にはさらなる戦略的資本・業務提携強化を背景に、Jefferiesの臨時株主総会および各種規制
の承認取得を前提に、Jefferiesに対する経済持分を無議決権株式の取得を通じて、希薄化後ベースで最大15%まで追加取得する旨を表明し
ております。なお、追加取得によりSMBCはJefferiesの最大株主となります。
SMBCグループとJefferiesとの提携は2021年に米国並びに日本から始まったものであり、2023年にはその協働領域をM&Aアドバザリー業
務およびエクイティ、デットキャピタルマーケッツ業務に拡大しております。今回の覚書締結は同提携をEMEA地域へと拡大するものとなります。
EMEA地域においてJefferiesとSMBCグループは既に2年以上にわたって共同でお客さまに金融サービスを提供してきましたが、今回の覚書
により、EMEA地域において拡大成長している両社の協働体制をさらに強化していくものとなります。本業務提携は両社が有する包括的な商業
銀行・投資銀行機能およびアドバザリー機能をベースとしたグローバルな知見、金融サービスの提供を通じてお客さまに貢献をしていくものと
なります。
(ご参考)Jefferies Financial Group Inc.の概要
・社名 : Jefferies Financial Group Inc.(NYSE : JEF)
・所在地 : ニューヨーク(米国)
・設立年 : 1968年
・事業内容 : インベストメントバンキング(アドバイザリーおよびキャピタルマーケッツ)、セールス&トレーディング、リサーチ、ウェルスマネジメント、アセットマネジメント、マーチャントバンキング
・総資産(2023年11月末) : 579億米ドル
・粗利益(2023年度) : 47億米ドル
・当期純利益(2023年度) : 2.63億米ドル
以上
2024/01/23 日本経済新聞 朝刊 7
外貨預金の金利競争が変わってきた。米長期金利の低下に伴い2023年末以降、ドル建て定期預金の引き下げが相次ぐ。三井住友銀行や
SBI新生銀行も下げに転じた。金利水準はなお高く、各行は市場金利が下がる逆風下でも融資や運用の原資になる外貨預金の獲得に励む。
金利に依存しない提案の重要性が増す。
三井住友銀は2023年12月、個人向けの1年物のドル定期預金の金利を5.3%から4.8%に引き下げた。9月下旬に3メガバンク横並び
で0.01%だった金利を一気に530倍にして話題になったが、約3カ月で金利水準を見直すことになった。
三井住友銀に続いて1年物のドル定期預金を6%に引き上げたSBI新生銀も12日に5.5%に見直した。ソニー銀行は23年11月の5.3%
を頂点に6回にわたって金利を下げ、足元では4.7%になった。
背景にあるのが米長期金利の低下だ。米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測により23年秋に一時5%を超えた長期金利は4%台
前半に下がった。外貨預金の金利は市場金利をもとに決める。auじぶん銀行なども金利の引き下げに動いた。
引き下げたとはいえ、金利水準はなお高い。全米に店舗展開するバンク・オブ・アメリカの譲渡性預金(日本の定期預金に相当)の1年物は
4%だ。ほかの大手銀行も特別金利を除けばおおむね3~4%としている。
銀行にとって企業向けを含む外貨預金は、外貨の安定的な入手手段という位置づけだ。ドルを市場で調達するコストは高止まりしており、高
い金利を提示してでも預金量を確保したい事情がある。個人預金は満期後も自動継続するなどして口座にとどまり続けるケースが多く、銀行に
とって安定資産になる。
一方、現行の外貨預金の金利では「(調達コストが運用利回りを超える)『逆ざや』になる可能性もある」との見方もある。損失を抑えながら、い
かにして外貨預金を獲得していくか各行の戦略が問われている。
SBI新生銀はSBI証券との口座間の送金手数料を無料にし、外貨預金と外国株投資を組み合わせた利用を促す。ソニー銀は外貨預金での
デビットカード決済に力を入れ、駐在員や留学生を抱える世帯の生活資金として長期保有を提案する。
みずほ銀行は1月からインターネット用の外貨預金で初回の預け入れに限定して上乗せ金利を拡大した。三菱UFJ銀行は期間限定で金利
優遇に加え預入時の為替手数料を無料にする。
日銀によると個人向けの外貨預金の残高は直近23年11月時点で約5兆9000億円と、年初から4000億円ほど積み上がった。金利の見直
しにより、流入ペースが鈍る可能性はある。
個人マネーの受け皿が広がったことの影響も出そうだ。1月に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まり、外国株で運用する投資信託な
どに人気が集まる。円預金でもネット銀行が優遇金利を適用して獲得を積極化しており、満期までの期間が1年未満の円定期に資金が流れ
込んでいる。
日銀がマイナス金利を解除するとの観測もある。日銀の政策変更により為替が円高に進めば外貨預金の円換算での価値は目減りする。銀
行には一段と丁寧な説明が求められる。
銀行が外貨預金を集めるハードルは高まっている。外国株投資との連携をはじめ金利低下局面でも残高の流出を防ぐ提案が重要になってくる。
2024/01/24 11:15 日経速報ニュース
(10時20分、プライム、コード8306)三菱UFJが3日続伸している。一時は前日比53円(4.03%)高の1368円を付け、2007年7月以来、16年半
ぶりの高値を付けた。日銀は23日まで開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を維持した。ただ、会合後に記者会見した植田和男総
裁は、2%物価安定の目標に向けた実現の確度は「引き続き少しずつ高まっている」などと述べた。政策正常化に前向きな「タカ派」との受け止
めがあり、改めてマイナス金利の解除など政策修正観測が広がった。金利上昇観測を背景とした銀行株買いが強まっている。三井住友FG(83
16)とみずほFG(8411)も高い。
24日午前の国内債券市場で長期金利は前日比0.075%高い(債券価格は安い)0.710%とおよそ1カ月ぶりの高水準をつけた。金融政策の影
響を受けやすい2年物と5年物利回りも上昇した。
モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフ・エコノミストは今回の日銀会合に対し「日銀の見通しが実現する『確度』が少しずつ高まって
いるとの表現が追加されるなど、展望リポートの物価見通しの書き振りはややタカ派的になった」と指摘。同時に植田総裁の記者会見と展望リ
ポートの内容を踏まえたうえで、「3月会合でのマイナス金利解除を最も蓋然性の高いベースケースとする」との見方も示した。
2024/01/24 13:31 日経速報ニュース
【プレスリリース】発表日:2024年01月24日
「資産運用ソリューションプロバイダー」へ向けたグループ戦略の方向性について
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(執行役社長グループ CEO:中島 達、以下、グループを総称して「SMBC グループ」)では、昨年5月
15日付で公表した中期経営計画“Plan for Fulfilled Growth”において、「社会的価値の創造」と「経済的価値の追求」を経営の柱に据えて取り
組む方針を打ち出しました。貯蓄から資産形成への流れを後押しする取組は、資産形成と社会課題解決がともに進展する好循環を生み出し、
「幸せな成長」を実現する効果的な施策と捉えております。昨年12月に政府が公表した資産運用立国実現プラン(以下、「政府プラン」)は、こう
したSMBC グループの経営方針と軌を一にするものであり、SMBC グループとして、政府プランに強く賛同するとともに、この度、グループとして
の対応指針を策定いたしました。
今般提示する指針においては、SMBC グループがグローバル総合金融グループとして有するインベストメントチェーンにおいて、新たに運用と
コンサルティングを中立的な立場で結びつけるソリューション機能を加えるとともに、各機能を包括的に強化します。資産運用ビジネスの根幹を
なす運用力の強化に注力することは当然のこととして、預金サービスをご活用頂いているお客さまに対して資産運用の大切さをお伝えし、資産
形成に踏み出す後押しをするほか、グループ一体でお客さまの最善の利益に資する提案態勢を整備することで、中長期に亘る資産形成をサポ
ートいたします。また、ガバナンス態勢を強化し、上述の取組を実行するための強固な基盤を形成します。これら一連の施策を通じて、SMBC
グループは、お客さまの多様なニーズに寄り添いながら最適なプランを提供する「資産運用ソリューションプロバイダー」への飛躍を実現します。
2024/01/30 日本経済新聞 朝刊
QUICKは29日、1月の債券月次調査の結果を発表した。日銀がマイナス金利政策を解除する時期の予想では「24年4月」が約73%と最多
で、「24年3月」が約17%で続いた。4月までにマイナス金利解除に動くとの見方が全体の9割を占めた。
回答者からは「日銀はマイナス金利解除について既にスタンバイ状態と考えられ、景気・物価動向に変調がなければ自然に出口に向かう
」(投信投資顧問)との声が上がった。もっとも、短期金利の政策目標については24年末の予想が中央値で0・00%と、追加的な利上げには
慎重な意見が目立つ。
米連邦準備理事会(FRB)が最初に利下げを行う時期については、「24年6月」との予想が約51%と過半数を占めた。「24年5月」が約14
%、「24年3月」が約13%で続いた。2月末の米10年物国債の予想利回りは中央値で4%だった。4月末は3・975%、7月末は3・8%だった。
調査は1月23~25日に証券会社や生損保、銀行など182人の債券市場関係者を対象に実施、121人から回答を得た。
2024年2月1日 15:32 JST
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は1日、第3四半期(2023年10-12月期)の連結純利益が前年同期比11%増の2664億円だったと発表
した。ブルームバーグがまとめたアナリスト5人の予想平均2299億円を上回った。
4-12月の9カ月累計の純利益は同3.5%増減の7928億円で、今期(24年3月期)の計画9200億円に対する進捗(しんちょく)率は86%となった。
関連記事:
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三井住友FGとジェフリーズ、戦略的提携を拡大-欧州や中東など
金利上昇時の対応力検証、ネット銀の流動性管理も-金融庁審議官
2024/02/01 16:22 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(8316)が1日発表した2023年4?12月期の連結決算は、純利益が前年同期比4%増の7928億円だった。
個人向け営業のリテールで資産運用ビジネスが回復し、決済ファイナンスビジネスの業容も拡大した。ホールセールでは貸出金の増加や利ざ
や改善で預貸金収益が増益となるなど、各事業部門が堅調だった。グローバル部門では金利上昇による預貸金収益の増加なども寄与した。
本業のもうけを示す業務純益(三井住友銀行単体)は2%減の6215億円だった。24年3月期の連結業績予想は、純利益が前期比14%増の
9200億円とする従来予想を据え置いた。1株あたりの年間配当は270円(前期実績は240円)を見込む。
三井住友FG (8316)
欧州系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、8,500円。
欧州系大手証券が2月1日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(Buy)に据え置いた。
一方、目標株価は8,240円から8,500円に引き上げた。因みに前日(1月31日)時点のレーティングコンセンサスは
4.36(アナリスト数11人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,573円(アナリスト数11人)となっている。
2024/02/02 14:05
三井住友FG (8316)
米系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、8,900円。
米系大手証券が2月1日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(買い)に据え置いた。
一方、目標株価は8,700円から8,900円に引き上げた。因みに前日(1月31日)時点のレーティングコンセンサスは
4.36(アナリスト数11人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,573円(アナリスト数11人)となっている。
2024-02-02 UBS Buy継続 8240円 → 8500円
2023-12-22 野村 Buy継続 8800円 → 9700円
2023-12-21 SBI 中立継続 7200円 → 7000円
2023-12-18 岡三 強気 → 中立格下げ 7250円 → 7200円
2023-12-11 水戸 新規B+ 8500円
2023-12-04 モルガンS Overweight継続 8930円 → 9460円
2023-12-01 みずほ 買い継続 7350円 → 8550円
2023-11-27 JPモルガン Overweight継続 8200円 → 8560円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-04 大和 2継続 7000円 → 8200円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2024/02/05 05:00 日経速報ニュース
大手5大銀行グループの2023年4?12月期決算が5日出そろう。合計の連結純利益は14年4?12月期の2兆4501億円を上回り、05年度に
3メガバンク体制となってから9年ぶりに最高益を更新する見通し。大企業向けの貸出金利ざやも16年のマイナス金利政策導入後で最も高く
なりそうだ。米経済の先行き懸念など邦銀の業績には不透明感も残る。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が5日午後に23年4?12月期決算を発表する。純利益だけでなく、本業のもうけを示す実質業務純益
も傘下行の合算で増益を確保する見込み。実質業務純益は三菱UFJを除く三井住友FG、みずほFG、りそなホールディングス(HD)、三井住友
トラストHDの4社合計で前年同期比7%増の約1兆5000億円だった。
堅調な業績の背景には、貸出金利から預金などの調達金利を差し引いた利ざやの拡大と国内を中心とした貸出金の増加がある。
三菱UFJの海外貸出金利ざやは23年4?9月期に前年同期から0.33%拡大した。米国では米連邦準備理事会(FRB)の利上げを背景に貸出
金利が先行して上がってきた。
国内に目を転じると、三井住友銀行の貸出残高は23年12月末で62兆7000億円と前年同月から4%増え、みずほも傘下行の合算で3%の伸
びを確保した。メガバンクの幹部は「M&A(合併・買収)など資本政策に関連する資金需要が活発だ」と言う。レコフデータによると、23年に日本
企業が関わったM&Aの金額は22年から5割増えた。
国内の貸出金利ざやも拡大している。3メガバンクの大企業向け貸出金利ざやは、23年4?9月期時点で日銀によるマイナス金利政策の導入
後で最高を更新。23年4?12月期でさらに拡大した可能性がある。
マイナス金利政策の解除が現実になれば、貸出金利の引き上げも本格化しそうだ。大企業向けの貸出金利は固定型を含め、市場金利に合
わせて設定することが一般的。金利が上がれば企業に示す金利も連動して上がる。支払利息が増える企業側の抵抗も予想され、大手行では
研修を増やすなどして顧客企業の理解を得ようと備えている。
長引く低金利下で収益性の向上を進めてきた側面も見逃せない。たとえば三菱UFJ銀行は17年度に515だった店舗数を約320まで削減。ほ
かの大手行も企業向けの融資で採算性を重視して案件を選別してきたことが利ざやの拡大につながっている。ある幹部は「むしろ今後の金利
上昇で緊張感が緩む事態を警戒している」と話す。
業績の先行きには、FRBの利下げや商業用不動産など不良債権の増加が予想される米経済を中心に不透明感が漂う。金利上昇による金利
負担の増加は企業収益を圧迫する。ある大手行の幹部は「25年3月期は米国で(将来の貸し倒れに備える)与信関係費用を積み増すことになり
そうだ」と身構える。
純利益の通期予想に対する進捗率でみずほは目標を上回り、三井住友も9割に迫るが上方修正は見送った。米金利は5%台に乗せた昨年
秋のピーク時から下がってはいるが、金利上昇による債券価格の下落で保有する有価証券には多額の含み損がある。関係者は「業績予想を
据え置いたのは今後の損切りに備える面もある」と指摘する。
貸出金利を追いかける格好で調達コストの上昇も顕在化してきた。預金を着実に集めるには預金者へ一定の金利を提示する必要があるた
めだ。三井住友FGは銀行単体の海外資金利益が3867億円と3%減った。三井住友トラストも金利上昇を理由に実質的な資金関連利益が7%
の減益となった。
高い水準の利益を出す邦銀だが、利益率で米銀との差は鮮明だ。メガバンクの総資産は約270兆?400兆円。280兆円程度の米ウェルズ・
ファーゴは自己資本利益率(ROE)が10%前後なのに対してメガバンクは6%台。利ざやの水準でも米JPモルガン・チェースが2%台後半なの
に比べて開きがある。
こうした収益力の違いはデジタルなど成長分野に対する投資余力の差につながる。JPモルガンは年1兆円規模のデジタル投資に取り組む
一方、メガバンクは3年間で数千億円規模にとどまる。
国内でも金利上昇が本格化すれば、大手行の収益性は一段の向上が期待できそうだ。こうした収益を原資に、成長分野への投資につなげ
られるかが邦銀の競争力を高めるうえで重要となる。
【関連記事】
・メガバンク、金利復活へ企業と交渉 貸出金利は上がるか
・金利復活で動き出すメガバンク 預金に重み、戦略に変化
・三菱UFJ亀澤社長、資産運用ビジネス「第4の柱に」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-26/S8RME2T1UM0W00
インドでは貧困層にもデジタル融資を可能とする仕組みが急速に整う
日本と異なる商習慣、事業決定に予想外の時間要するリスクも-識者
日本のメガバンクがインドでの事業を拡大している。アジアでのリテール展開で後れを取っていたみずほフィナンシャルグループが今月、現地
ノンバンクへの出資を発表。3メガそろって現地企業に出資する展開となった。政府主導のインフラ構築により、急速なデジタル化の進展が事業
拡大を後押ししている。
インドで中小企業や個人向けにデジタル融資を手掛けるキセツ・セゾン・ファイナンス・インディアに120億インドルピー(約210億円)を出資すると
発表したみずほFG。広報担当者はインド市場の魅力について、若年層が多い人口動態で、経済成長トレンドが長期間続くと想定されると説明し
た。
昨年、中国を抜いて世界最大の人口大国となったインド。国際通貨基金(IMF)の試算によれば、名目の国内総生産(GDP)で今後、日本や
ドイツを抜いて2027年には米中に次ぐ世界3位の経済大国に浮上する。日本では人口減少や低成長が続いてきたこともあり、3メガ各社はアジ
ア事業を成長の柱に位置付けている。
キセツ・セゾンは18年創業の新興企業。クレディセゾンの子会社で日系企業だが、運営は現地主導で行っている。本社があるのはインド南部
のベンガルール。米国のマイクロソフトやインテル、日本のソニーグループなど、世界に冠たる企業が研究開発拠点を置くアジア屈指のIT都市だ。
オフィス内には周囲の企業と同様、エンジニアなどのテック人材が多数いる。来店した顧客が紙の書類で融資を申し込み、融資担当者が審査
するといった伝統的な光景は見られない。申し込みや与信判断などさまざまな手続きにデジタル技術を活用して時間短縮や効率化、与信リスク
の低減を図っている。
事業環境が10年で一変
インドでは「インディア・スタック」とも呼ばれる政府主導のデジタル化政策を推進している。日本のマイナンバーカードに似た個人識別番号制度」
の「アドハー」は足元で9割以上の国民に普及し、本人確認の証明書を持たなかった貧困層も国の給付金受給から銀行取引に至るまで利用でき
るようになった。
16年に始まった送金・決済プラットフォームの「UPI」では、携帯電話による24時間365日の即時送金が可能。こうした政府主導の仕組みは国民
への浸透度も高く、民間にも多くのアクセスが開放されている。ノンバンクやフィンテックによるデジタル融資は、従来型融資を受けることができな
かった層の受け皿となっており、今後も拡大が見込まれる。
クレディセゾンでグローバル事業を統括する森航介・専務執行役員は「ここ10年間で、デジタルで融資業務ができるインフラが政府・中央銀行
主導で急速に整った。少し前とは隔世の感がある」と話す。「英語が通じやすい土地柄も相まって、フィンテックを起点としたレンディング(貸し付
け)が一気に成長した。まだ始まったばかりで、今後のポテンシャルのほうが圧倒的に大きい」と期待する。
ベンガルールから北西に1000キロメートル以上離れたグジャラート州。ここに、インドが政府を挙げて注力する国際金融テックシティー(GIFTシ
ティー)がある。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は22年、邦銀で初めてこの都市に支店を開設。また、23年4月にはデジタルレンディ
ングを行う現地のDMIファイナンスに191億インドルピーを出資した。
MUFGの亀澤宏規社長は昨年12月のインタビューで「国自体も成長するし、ITも強い」と述べ、今後もインドを含めたアジアで金融とデジタルを
掛け合わせた分野で注力する方針を示した。
三井住友フィナンシャルグループは21年に、ムンバイに本社を置くフラトーン・インディア・クレジット・カンパニーを約2200億円で買収。現地で個人
や中小企業向け融資を展開している。中島達社長はインタビューで「この勢いでどんどん伸びる成長が何よりの魅力だ」と説明。預金取引などの
機能が抜けているとして今後は「できるだけフルラインに近いサービスを考えている」と明かした。
期待を集めるインド市場だが課題もある。NRIコンサルティング&ソリューションズ・インディアの郷裕パートナーは「日本人の感覚が現地の商習
慣と一致しないことがある」と指摘する。業務提携などにおいて結論を得るまでに想定より時間を要するリスクがあるという。
三井住友FGの中島社長は「法律や税務が発展途上なので、若干予見可能性に欠けるところがあり、そこは乗り越えなければいけない」と述べ
た。
関連記事:
みずほがインドの日系新興金融に210億円出資、持ち分15%に-正式発表
インド株式市場、香港を抜き世界4位に躍進-時価総額約641兆円
2024/02/26 17:00 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(FG)社長に2023年12月就任した中島達氏は日本経済新聞の取材で「預金をどう増やすかが金利のある
世界で一番大事だ」と話した。中堅・中小企業が決済や経理の業務をデジタルで完結できる新たなサービスを開発し、企業マネーを取り込んで
いく考えを示した。
【関連記事】三井住友FG社長「大企業取引、最強目指す」 一問一答
中島氏は、太田純前社長が23年11月に急逝したのを受けて副社長から社長に昇格した。経営の中枢を担う企画畑が長く、国内外の戦略的
買収や出資を多く主導した。23?25年度の中期経営計画を最高戦略責任者(CSO)として策定した。直近は大企業営業部門の共同トップを務
めた。
中島社長は国内の金利上昇を見据え「バック・トゥー・ザ・ベーシック(原点回帰)となり、預金を頂くことが重要になる」と強調した。これまでは
マイナス金利による運用難を背景に、膨らむ預金が銀行経営の負担となっていた。金利が復活すれば運用収益を得やすくなり、原資となる預金
量を拡大することが重要になる。
「金利のある世界」では利回り競争も予想される定期預金よりも、支払いなどに使う普通預金や当座預金の方が低コストで資金を集められる。
三井住友FGがクレジットカードと銀行サービスを一体化した個人向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」を23年に始めたのも、日常的な支
払いに使う口座となることで調達コストを抑える狙いがあった。
中島社長は「個人はオリーブを強化して預金収益を増やす」としたうえで、法人からもオンライン上で取引を完結するサービスで預金を集める
考えを示した。「特に中小企業向けの決済サービスは日本では向上の余地がある」といい、決済や経理の業務をデジタル化する。
近年は法人間取引でもクレカが急速に浸透しており、国内の法人カード発行枚数は5年で2割増えた。クレカ決済や銀行送金、決済データを
活用した経理の効率化などのサービスをデジタル上で提供することで、省力化と取引の裾野拡大を両立させる狙いだ。提供開始は25年以降に
なる見通し。
政府が掲げる資産運用立国を巡っては「(新たな資産運用の担い手を育てる)エマージング・マネジャーズ・プログラム(EMP)として500億円
の投資枠をつくる」と表明した。ライバルの三菱UFJFGは資産運用残高を2倍の200兆円とする方針を示し、みずほFGも運用会社買収に動く。
中島社長は「規模は追わない」と述べ、EMPを通じて特色ある商品をそろえ、運用の質で勝負する考えを強調した。
傘下で投資信託の評価を手掛ける日興グローバルラップを「SMBCグローバル・インベストメント&コンサルティング」と改称し、グループ全体
の運用戦略の司令塔とする。銀行や証券など販売会社の論理で商品を売るのではなく「運用商品の販売と製造のバランスをとり、顧客の最善
の利益に尽くせるようにする」ことが目的だとした。三井住友銀行の店舗の6割を軽量の「ストア」とする一方、将来的に残り4割を運用や富裕層
向けビジネスのための銀行・証券・信託連携店舗とすることを目指す。
三井住友FGはライバルの三菱UFJFGやみずほFGに比べて大企業取引が弱点とされてきた。中島社長は「融資額での差は縮まったが、海
外や産業金融など質の面では追いついていない」と分析。SMBC日興証券を強化してM&A(合併・買収)助言など投資銀行ビジネスで海外大
手などに食い込んでいく考えを示した。強みである決済ビジネスやリースなども生かし「10年はかかるが、大企業取引で3メガバンク中最強に
なりたい」と話した。
2024年3月期の連結純利益は過去最高の9200億円となる見通し。中島社長は「来期、その次の期も最高益を更新していきたい」と話した。
26年度からの次期中計では「継続的に1兆円を計上できる基盤をつくる」という。アジアで出資する金融機関ののれん償却前純利益を23年3月
期の280億円から、5年後に1200億円程度にすることを目指す。
2024/02/26 17:00 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(FG)の社長に2023年12月就任した中島達氏は日本経済新聞のインタビューに「大企業取引で3メガバンク
中最強になりたい」と話した。法人間決済など独自のサービスやSMBC日興証券の投資銀行業務を強化する。中小企業向けにはデジタルの
決済基盤を新たに提供する考えを示した。一問一答は以下のとおり。
【関連記事】三井住友FG社長、金利復活で「原点回帰」 預金増に軸足
――社長として注力したい分野は。
「まず国内事業を強くしなければならない。リテールや中堅・中小企業取引は国内トップだと言えるが、大企業向け融資はライバルとまだ差が
ある。日本の大企業は足元で業績が良い。脱炭素やデジタル化、PBR(株価純資産倍率)向上などの課題の解決に向けて注力分野への投資
や不採算事業の整理も進めている。伸ばせる余地がある分野だ」
「3メガ銀体制になったときに融資額で三菱UFJFGやみずほFGに大きな差をつけられていたのを、現在はほぼ同水準まで縮めた。もっとも、
海外取引を強みとする三菱UFJや、業界再編への取り組みに一日の長があるみずほと比べると質の面では追いついていない」
――どう大企業取引を強化しますか。
「メインバンクをひっくり返すのは容易ではないが(取引先は)個別案件ごとに良いサービスを提供する銀行を選ぶようになってきた。プロジェク
トファイナンスなどでリスクをとって提案するほか、SMBC日興のM&A(合併・買収)助言を強化する。10年はかかると思うが、3メガ銀の中で
最強と言えるようにしたい」
「カギとなるのはSMBC日興の強化だ。(相場操縦の)不祥事で足踏みしていたが、銀行との連携体制をもう一度強化する。また、現在はク
レジットカードの法人間取引の市場が伸びている。リースや信託などもあわせた総合力で戦う」
――24年3月期の連結純利益は中期経営計画で掲げた26年3月期の目標である9000億円を上回り、最高益となる見通しです。
「中計を作り直すことはしない。今後は円高や米金利低下も予想されるため環境的には逆風になりそうだが、来期、その次の期も最高益を更
新したい。26?28年度の次期中計では継続的に1兆円を計上できる収益基盤をつくる」
――日銀のマイナス金利解除が現実味を帯びてきました。金利のある世界にどう対応しますか。
「銀行は預金があるから融資ができる。ただマイナス金利下のカネ余りで、預金の必要性が薄れていた。今後はバック・トゥー・ザ・ベーシック
(原点回帰)で、顧客から預金をして頂くことが重要になる。金融業界全体でも戦略が変わる」
「いま普通預金などに入っているお金の多くは決済ではなく貯蓄のためのお金だ。現在は定期預金に金利がつかないから普通預金に置いて
いるだけだ。金利が上昇したら当然、定期預金や国債にシフトする。金利上昇時に収益性の高い預金は、決済に使う普通預金や当座預金の
お金だ。これをいかに増やすかが金利のある世界で一番大事だ」
「個人はスマホ上の総合金融サービス『Olive(オリーブ)』で、決済性預金を増やせる。これに加えて、中堅中小の法人でも決済性資金を集め
るプラットフォームをつくりたい。法人決済のデジタルサービスは向上の余地がある。米国の中小はクレカがメインの決済手段だが、日本でも最
近は増えてきた。銀行決済とクレカの決済をパッケージで提供し、経理や経費の処理まで簡単にできるサービスをつくる。デジタルで人手を使わず、取引のなかった会社から預金を置いてもらえるようにする」
「(ドルを潤沢に持つ)米JPモルガン・チェースなどには勝てない。ただ、海外で短期金利が上がると(ドルなど)海外の決済資金の量が業績
に与える影響が大きくなる。(足元の海外金利上昇で)これを痛感したので、海外の資金管理システムの強化はスピードアップする。国内では
三菱UFJが強い分野だが、我々もコストをかけてつくる」
――資産運用立国に向けた戦略は。
「(新たな資産運用の担い手を育てる)エマージング・マネジャーズ・プログラム(EMP)として500億円の投資枠をつくる。(運用残高など)規
模は追わない。規模の大きい信託銀行を持たない我々のアセットマネジメント戦略はアクティブ運用力で勝負するしかない。新たな運用戦略を
つくるファンドマネジャーを育ててその商品を取り込まないと強くなれない」
「日本の運用商品販売会社には、売りたい商品をアセマネに作らせて売りたいものを売っていたという反省がある。我々も全くそうではなかっ
たとは言い切れない。販売と製造のバランスをとって顧客の最善の利益に尽くせるようにするため、アセマネ会社と販売会社の間に司令塔とな
る会社をつくる。(預かり資産を増やす)ストック型ビジネスへの転換を我慢強く進める。ファンドラップでは早晩日本トップの残高になると思う」
「今400ある店舗のうち、150をウェルスマネジメント(富裕層向けビジネス)のチャネルにする。将来はこの全てを銀行・信託・証券が同居す
る拠点にしたい。残りの250店舗は(軽量の)『ストア』となる」
――現地金融機関への出資を進めたアジア戦略の今後は。
「インドネシアは完成形に近づいたが、例えばインドは個人預金や中堅中小との銀行取引ができていない。チャンスがあればこの分野で追加
買収することもありうる。10年ぐらいかかるが、インドも最終的にはフルラインの銀行サービスを提供したい。ベトナムとフィリピンもチャンスがあ
れば提携銀行への出資を増やす。アジアの投資先でのれん償却前の純利益を5年後に約1000億円増やすことが目標だ」
――最高戦略責任者(CSO)として支えた故太田純前社長の路線を引き継ぐとのことですが、「中島色」はどう出していきますか。
「これまでの路線は自分と太田前社長が議論しながらやってきたことだ。今は路線を変える気はないが、うまくいかないことがあれば変えるこ
ともちゅうちょしない」
「太田前社長は銀行が今のままで安住していてはいけないという意味で『カラを、破ろう。』と言ってきた。デジタル子会社をやろうと手を挙げる
人が出てくるなど良い流れができてきている。ただ、グループ全体で健全な危機感や変革への意欲が盛り上がっているわけではなく、局所的だ。
変わらなければいけないという思いを実行に移してほしいという意味で、『突き抜ける勇気。』というキャッチコピーを新たに掲げた」
三井住友FG (8316)
日系大手証券、レーティング据え置き、やや強気。目標株価引き上げ、9,000円。
日系大手証券が2月27日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングをやや強気(2)に据え置いた。
一方、目標株価は8,200円から9,000円に引き上げた。因みに前日(2月26日)時点のレーティングコンセンサスは4.36
(アナリスト数11人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,615円(アナリスト数11人)となっている。
2024-02-28 大和 2継続 8200円 → 9000円
2024-02-21 JPモルガン Overweight継続 8560円 → 9160円
2024-02-02 GS 買い継続 8700円 → 8900円
2024-02-02 UBS Buy継続 8240円 → 8500円
2023-12-22 野村 Buy継続 8800円 → 9700円
2023-12-21 SBI 中立継続 7200円 → 7000円
2023-12-18 岡三 強気 → 中立格下げ 7250円 → 7200円
2023-12-11 水戸 新規B+ 8500円
2023-12-04 モルガンS Overweight継続 8930円 → 9460円
2023-12-01 みずほ 買い継続 7350円 → 8550円
2023-10-22 BofA 買い → 中立格下げ 6850円 → 7750円
2023-10-04 シティG新規1(再開) 10000円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2024/02/28 日本経済新聞 朝刊
27日の東京株式市場で銀行株が大幅高となった。同日発表の物価指標が市場の想定を超え、日銀の政策修正期待が高まったことを受け、
銀行株を買う動きが拡大。3メガバンクがそろって高値を更新するなど好調だった。新しい少額投資非課税制度(NISA)の投資拡大も銀行株の
支えになっている。
業種別日経平均株価「銀行」は前日比1%高の1813・13と4日続伸し、2015年11月以来およそ8年3カ月ぶりの高値水準をつけた。
三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループが一時前日比3%高まで上昇。三井住友は08年7月以来、みずほは09年
1月以来となる高値をつけた。三菱UFJフィナンシャル・グループも07年1月以来の高値となった。
地銀でも高値をつける銘柄が相次いだ。たとえば、九州フィナンシャルグループは一時7%高と急騰し、上場来高値を更新した。
上昇の起点は、27日朝に発表された1月の全国消費者物価指数(CPI)だ。生鮮食品を除く総合(コア)が前年同月比2・0%上昇と市場予
想を上回り、日銀が金融政策正常化を進めるとの思惑が高まった。
長期金利の上昇で利ざや改善による収益向上期待が高まり、投資家の買いにつながった格好だ。
新NISAの引き合いの強さや日経平均株価の最高値更新などを背景に、個人の投資意欲が高まっていることが銀行株の支えとの声も目立つ。
東海東京調査センターの安田秀太郎マーケットアナリストは「日本株に関心が高まることで新NISAを通じた投資が増え、商品を提供する銀
行の収益が拡大するとの期待がある」と分析する。
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週1.5%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,318,857百万円から1.5%上昇し、
1,338,857百万円となった。対前年実績で見た場合13.6%の増益予想から15.3%増益予想に上方修正されたことになる。
因みにレーティングコンセンサスは4.4で変わらずのまま。
三井住友FG (8316)
米系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、11,000円。
米系大手証券が3月4日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(買い(1))に据え置いた。
一方、目標株価は10,000円から11,000円に引き上げた。因みに前日(3月1日)時点のレーティングコンセンサスは4.36
(アナリスト数11人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,687円(アナリスト数11人)となっている。
2024-03-05 シティG1継続 10000円 → 11000円
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週1%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,338,857百万円から1%上昇し
1,351,688百万円となった。対前年実績で見た場合15.3%の増益予想から16.4%増益予想に上方修正されたことになる。
因みにレーティングコンセンサスは4.4で変わらずのまま。
三井住友FG (8316)
米系大手証券、レーティング据え置き、中立。目標株価引き上げ、9,250円。
米系大手証券が3月8日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを中立(2(中立))に据え置いた。
一方、目標株価は7,750円から9,250円に引き上げた。因みに前日(3月7日)時点のレーティングコンセンサスは4.36
(アナリスト数11人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,804円(アナリスト数11人)となっている。
2024/03/11 18:00
三井住友FG (8316)
日系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、10,050円。
日系大手証券が3月11日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(買い)に据え置いた。
一方、目標株価は8,550円から10,050円に引き上げた。因みに前日(3月8日)時点のレーティングコンセンサスは4.36
(アナリスト数11人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは8,804円(アナリスト数11人)となっている。
2024/03/11 22:45
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週2.3%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,338,857百万円から2.3%上昇し
1,369,738百万円となった。対前年実績で見た場合15.3%の増益予想から18%増益予想に上方修正されたことになる。
因みにレーティングコンセンサスは4.4で変わらずのまま。
2024-03-12 BofA 買い → 中立継続 7750円 → 9250円
2024-03-12 みずほ 買い継続 8550円 → 10050円
2024-03-12 BofA 買い → 中立継続 7750円 → 9250円
2024-03-05 シティG1継続 10000円 → 11000円
2024-02-28 大和 2継続 8200円 → 9000円
2024-02-21 JPモルガン Overweight継続 8560円 → 9160円
2024-02-02 GS 買い継続 8700円 → 8900円
2024-02-02 UBS Buy継続 8240円 → 8500円
2023-12-22 野村 Buy継続 8800円 → 9700円
2023-12-21 SBI 中立継続 7200円 → 7000円
2023-12-18 岡三 強気 → 中立格下げ 7250円 → 7200円
2023-12-11 水戸 新規B+ 8500円
2023-12-04 モルガンS Overweight継続 8930円 → 9460円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2024/03/19 13:08 日経速報ニュース
(13時5分、プライム、コード8306)三菱UFJが後場に入り、下げに転じている。前日比54円50銭(3.55%)安の1479円ときょうの安値をつけた。
日銀は19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決め、マイナス0.1%としていた政策金利を0?0.1%(無担保コール翌日物レート)
に引き上げた。金融機関にとっては収益改善につながる要因となるが、株価は年明け以降、上昇基調を強める過程で織り込みが進んできたた
め、当面の材料出尽くしとみた売りが出やすくなっているようだ。みずほFG(8411)や三井住友FG(8316)は前日終値を挟んで一進一退となっ
ている。
日銀はマイナス金利政策として金融機関が預ける日銀当座預金の超過準備分にマイナス0.1%の金利を課していたが、プラス0.1%を付利す
る。市場では「当面は緩和的な金融環境が続くとの見方があるにせよ、日銀の金融政策は利上げ方向に進んでいく可能性が高く、銀行の事業
環境にとってはプラスで株価にとっても追い風だ」(国内運用会社のファンドマネジャー)との声があった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-21/SAL7ABT0AFB400?srnd=cojp-v2
建設株は割安、国土強靭化や防衛関連施設の建設で恩恵-宇田社長
インフラ投資や人手不足で物価上昇、長期金利は2%まで上昇か
日本銀行の金融政策修正を期待して銀行株に強気な姿勢を取ってきたファンドマネジャーは、修正後銀行株の買い増しを視野に入れている
ほか、好景気の恩恵を受ける建設株にも追加投資するタイミングをうかがっている。
エバーリッチ・アセット・マネジメントの宇田豊社長は、銀行株はすでに運用資産の20%程度を占めていることを踏まえ、状況を見ながら買い
増す可能性があると説明、「減ることはない」と話した。出遅れているセクターへの投資も進めるとし、株価の割安さに加えて国土強靭(きょう
じん)化や防衛関連施設の建設などで恩恵が見込まれる建設株が魅力的だとみる。現在は大林組や鹿島に投資をしていると言う。
ブルームバーグのデータによると、同氏が手掛ける運用額約174億円のニッポン・グロース・ファンドは年初来リターンが22%以上で、同業
ファンドの96%を上回る。同期間のTOPIXの上昇率は18%だ。同ファンドの組み入れ上位銘柄は2月末現在、伊藤忠商事や三菱UFJフィナ
ンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱商事、オリックスとなっている。
2024-03-15 SBI 中立継続 7000円 → 7700円
2024-03-12 みずほ 買い継続 8550円 → 10050円
2024-03-12 BofA 買い → 中立継続 7750円 → 9250円
2024-03-05 シティG1継続 10000円 → 11000円
2024-02-28 大和 2継続 8200円 → 9000円
2024-02-02 GS 買い継続 8700円 → 8900円
2024-02-02 UBS Buy継続 8240円 → 8500円
2023-12-22 野村 Buy継続 8800円 → 9700円
2023-12-21 SBI 中立継続 7200円 → 7000円
2023-12-18 岡三 強気 → 中立格下げ 7250円 → 7200円
2023-12-11 水戸 新規B+ 8500円
2023-12-04 モルガンS Overweight継続 8930円 → 9460円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
2024/03/25 17:03 日経速報ニュース
三井住友FG(8316)自己株式消却
2024/03/25 17:08 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(8316)
自己株式消却=2013万2000株(4月20日予定)
2024/04/03 11:54 日経速報ニュース
米資産運用会社レイモンド・ジェームズ・インベストメント・マネジメントのマーケット・ストラテジスト、マット・オートン氏は1日、米CNBCに出演し
「日本は全般的に素晴らしいマーケット」と語った。日経平均株価が年初から2割近く上昇し、「アジアの株式市場の中での上昇率はトップ」と指
摘。最も買いを推奨する日本銘柄の一つに三井住友FG(8316)をあげた。
オートン氏は三井住友FGを推す理由について、日本の金利上昇の恩恵を金融銘柄全般が受けることをあげ、さらに「三井住友FGは日本だけ
でなく世界各国でレバレッジを効かせた資産運用ができる事業を持っている」と述べた。三井住友FGは過去10年間で多くの投資を行い、将来的
に収益拡大を期待できるとの見方を示した。
三井住友FGはこれまで合併や追加投資を通じてインドネシアやベトナム、フィリピンなどのビジネス拠点を強化する戦略を発表してきた。株価
は過去1年で6割あまり上昇した。
2024/04/11 10:19 日経速報ニュース
11日前場中ごろの東京株式市場で日経平均株価は下げ渋り、前日比250円ほど安い3万9300円台前半で推移している。引き続き前日の
米株安を受けた売りが優勢となっているものの、下値では押し目買いが入っている。
10日のニューヨーク外国為替市場で円相場が一時1ドル=153円24銭と34年ぶりの安値を付けるなど、米長期金利の上昇を背景に円安・
ドル高が進んでいる。輸出採算が改善するとの見方から、トヨタやデンソーなど自動車関連株の一角は買われており、日経平均を支えてい
る。続落して始まった東証株価指数(TOPIX)は一時上昇に転じた。
10時現在の東証プライムの売買代金は概算で1兆3527億円、売買高は5億2161万株だった。
東エレクやアドテスト、スクリンなど半導体関連株が引き続き安い。ファストリやソフトバンクグループ(SBG)、ダイキンなど値がさ株も下落
している。一方、三菱UFJや三井住友FGなど銀行株が高い。日立や日立建機、INPEXも上昇している。
2024/04/11 13:25 日経速報ニュース
(13時15分、プライム、コード8306)三菱UFJが反発している。午前に前日比27円50銭(1.79%)高の1563円50銭を付けた。午後も高い。
米国ではインフレ圧力の根強さを背景に米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始が遅れるとの観測が強まり、日米の金利差拡大から外国
為替市場では円安・ドル高が進んでいる。大幅な円安を受けて、日銀は早期の利上げに動かざるを得ないとの見方から、将来の金利上昇
による利ざや改善を期待した買いが銀行株に入っている。三井住友FG(8316)やみずほFG(8411)も高い。半面、金利上昇で資金負担が
増すとの見方から三井不(8801)や菱地所(8802)など不動産株は軒並み下げている。
10日発表の3月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想を上回る伸びとなった。発表を受け、米金利先物市場では6月11?12日の米連邦
公開市場委員会(FOMC)で、FRBが政策金利を据え置くとの予想の確率が8割に急上昇した。市場の一部では年内の利下げ見送り観測
も強まっている。
米金利上昇を受け、外国為替市場では円相場が一時34年ぶりの円安・ドル高水準を付けた。第一生命経済研究所の藤代宏一氏は日銀
の金融政策は為替を直接コントロールする対象とはしていないと前置きした上で、円安による輸入物価の上昇が国内のインフレ率の一段の
上昇につながる展開も念頭に「日銀の利上げは足元で一番予想が多いとみられる10月よりも7月に前倒しされる可能性が高まっている」と
指摘した。
三井住友FG (8316)
日系大手証券、レーティング強気継続。目標株価引き上げ、11,500円。
日系大手証券が4月15日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(Buy)に据え置いた。
一方、目標株価は9,700円から11,500円に引き上げた。因みに前日(4月12日)時点のレーティングコンセンサスは4.3
(アナリスト数10人)で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは9,204円(アナリスト数10人)となっている。
2024-04-16 野村 Buy継続 9700円 → 11500円
三井住友FG (8316)
24年3月期経常予想。対前週0.1%上昇。
三井住友フィナンシャルグループ<8316>の経常利益予想コンセンサスは、前週値の1,376,971百万円から0.1%上昇し
1,378,286百万円となった。因みにレーティングコンセンサスは4.3で変わらずのまま。
[東京 19日 ロイター] - 調査会社のJDパワージャパンが個人株主に保有銘柄の満足度を聞いたところ、自動車業界ではトヨタ自動車
(7203.T), 銀行業界では三井住友フィナンシャルグループ(8316.T),が首位だった。持ち合い株の解消が進み、その受け皿として重要性が
高まる個人株主は、収益性や株主還元だけでなく株主の平等性など企業統治の取り組みも重視していることが浮き彫りになった。
調査は自動車、銀行、証券、保険の4業種を対象に3月上旬に実施し、19日に発表した。収益性や財務安定性、取締役会等の責務など
7項目をもとに保有銘柄の満足度を聞き、6088人が回答した。
自動車業界はトヨタが首位。7項目すべてトップだった。2位はホンダ(7267.T),、3位はSUBARU(7270.T), で、4位の日産自動車(7201.T)
bと5位の三菱自動車(7211.T), は上位3社とポイントが開いた。
銀行業界で1位となった三井住友FGもすべての項目で首位だった。2位は三菱UFJフィナンシャルグループ(8306.T), 、3位はりそなホール
ディングス(8308.T), だった。みずほフィナンシャルグループ(8411.T), は規模でりそなに勝るものの、個人株主の満足度は4位だった。
2024/04/22 17:33 日経速報ニュース
武田薬品工業とアステラス製薬、三井住友銀行は22日、革新的な創薬を後押しするための新会社を設立すると発表した。大学や研究機関
などが持つ創薬シーズ(タネ)の実用化や、ベンチャー企業の設立などを支援する。
2024年半ばに設立する。資本金は約6億円で、出資比率は武田薬品とアステラスがそれぞれ33.4%、三井住友銀が33.2%となる。ライフサイ
エンスの研究開発拠点「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」(神奈川県藤沢市)内に設立する。湘南アイパークを運営するアイ
パークインスティチュート(同)の藤本利夫社長が代表を務める。
新会社では、大学や研究機関、ベンチャー企業が持つ新しい創薬技術や創薬シーズを発掘し共同研究などを通じて育成する。起業家支援
も行う。武田薬品とアステラスはグローバル規模での研究開発の知見を、三井住友銀は金融関連のノウハウをそれぞれ生かして創薬を支援
する。
日本では革新的な創薬に向けて、大学や研究機関の創薬シーズの実用化やベンチャー企業の創出が課題となっている。新会社では初期
の創薬研究から創薬ベンチャー企業の設立までを総合的に支援することで課題の解決を目指す。
【関連記事】
・FRONTEO、創薬AIの解析結果公開 研究者向け
・「湘南アイパーク」、企業と研究シーズをマッチング
2024/05/09 日本経済新聞 朝刊
三井住友カードが中小企業向け加盟店手数料率の引き下げを決めた。当面実質的に赤字になる水準に引き下げてでも加盟店基盤の拡大に
かじを切るのは、加盟店に置く決済端末を通じたデータ事業の拡大に照準を合わせているためだ。(総合1面参照)
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は2023年3月に、スマホ上の総合金融サービス、Olive(オリーブ)を始めた。三井住友カードが手がけ
るクレジットカードはオリーブの中核を占める機能で、三井住友FGはカードや決済端末関連の事業拡大を主要な成長源の一つと位置づける。
その一つがデータビジネスだ。既に利用者の購買動向をビッグデータとして加工処理し、企業のマーケティングに活用してもらう事業を始めて
いる。加盟店が従業員の勤怠管理などを決済端末を使ってできるようにもして、毎月課金もしている。
こうした関連事業で稼ぐには、カード保有者や加盟店舗を増やし、データの量と質を高めることが前提となる。三井住友カードは今回の手数料
率の引き下げをテコに、現在数万店規模とみられる中小の加盟店網を2030年までに50万店超にまで引き上げることを目指す。日本の中小の
店舗数は200万~300万程度とされており、国内全店舗の2割前後に決済端末を設置したい考えだ。
PayPayを中心に急速に浸透するQRコード決済に対抗する意味合いもある。専用機器の導入が不要なQRコード決済が定着すれば、中小店舗
のカード決済額が頭打ちになる可能性がある。三井住友カードの決済端末はQRコード決済にも対応しており、加盟店の拡大と同時に自社端末
の設置を進める方針だ。
三井住友カードに他社が追随して、手数料引き下げ競争が過熱すれば、将来カード事業の収益率が低下していく恐れもある。データの収集効
率や分析力を磨き、代替する売り上げを増やしていかなければ、攻めの一手は空振りに終わりかねない。
2024/05/11 19:00 日経速報ニュース
3メガバンクの2024年3月期連結決算は、合計の純利益が前の期比約2割増の3兆円程度となったもようだ。05年度に現在の3メガバンク体制
が発足して以降の最高益を更新した。貸出金利から預金などの調達金利を引いた利ざやが海外で拡大したのが主因だ。底堅い国内経済を受
け、企業の資金需要が旺盛だったことも追い風になった。
各社は15日午後に24年3月期決算を公表する。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGが通期予想として公表して
いた純利益の合計は2兆8600億円で、想定よりも収益が上振れした。
前の期と比べた増益率は約2割とみられ、23年3月期の5%増と比べても大きい。これまでの最高益は14年3月期の約2兆5000億円だった。
3メガバンクは長引く低金利による収益悪化を受け、店舗網の再編や企業向け融資の採算改善を進めてきた。最終増益は21年3月期から4期
連続となる。
米金利の上昇による海外事業の利ざや改善が業績を押し上げた。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ局面で預貸利ざやが拡大し、融資業
務を中心に金利収入が伸びた。想定の為替レートを上回る円安で円換算した外貨建ての収益も膨らんだ。「正味の実力以上に強い利益が出
ている」(大手行幹部)面もある。
堅調な業績を背景に、国内企業の資金需要は底堅く推移する。業務の効率化や脱炭素に向けた設備投資が活発だったほか、M&A(合併・
買収)に伴う資金需要も旺盛だった。英LSEGによると、23年の日本でのM&Aは金額ベースで前年比47%増の約23兆円と5年ぶりの高水準
だった。一方で、貸出金の焦げ付きに備える貸倒引当金はなお低い水準を保つ。
3月には日銀がマイナス金利政策を解除した。国内の貸出金利の上昇が銀行の業績に反映されるのは25年3月期以降となる。年内の追加
利上げもくすぶっており、金利上昇が本格化してくればメガバンクの収益性は一段の追い風を受けることになる。
【関連記事】
・3メガバンク賃上げ率、合併後最大 採用競争で若手還元
・三菱UFJと三井住友、普通預金の金利を0.001%→0.02%に
2024年5月15日 15:01 JST 更新日時 2024年5月15日 15:28 JST
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は15日、前期(2024年3月期)の連結純利益が前の期比20%増の9629億円だったと発表した。
過去最高益を10年ぶりに更新した。発行済み株式総数の1.1%、1000億円を上限とする自社株買いも発表した。
純利益は会社計画の9200億円を上回り、ブルームバーグがまとめたアナリスト予想の平均9348億円も上回った。
本業のもうけを示す連結業務純益は同22%増の1兆5602億円と過去最高益だった。国内外の企業による旺盛な資金需要を受けたほか
傘下のSMBC日興証券の業績が回復するなど全ての部門で増益となった。
会見した中島達社長は「環境が非常に良かったことが好業績の要因。円安や内外の高金利の継続、国内はゼロ金利が解除されて若干
切り上がった。株高などの相場環境が収益にプラスに働いた」と振り返った。
24年1-3月期(第4四半期)の純利益は前年同期比4.3倍の1701億円だった。ブルームバーグがまとめたアナリストの予想平均1561億
円を上回った。
今期(25年3月期)の純利益予想は、前期比10%増の1兆600億円とした。市場予想の9896億円を上回る。メガバンクグループで1兆円を
超える純利益を確保するのは、三菱UFJフィナンシャル・グループに次ぎ2社目となる。
また、9月末を基準日に、1株を3株に分割する株式分割も行うと発表した。株式分割によって最低投資金額が切り下がり、投資家を呼び
込む狙い。
2024/05/16 日本経済新聞 朝刊
リース会社が航空機を大量発注している。堅調な旅客需要を背景に成長を見込んでいるためだ。新型コロナウイルス禍に伴う需要の落ち込み
で人員を削減した航空機関連メーカーは人手不足で生産が追いつかず、航空会社が支払うリース料はコロナ禍前の水準に上昇している。
リース会社は借り入れや市場から集めた資金などをもとに航空機を購入し、航空会社に貸し出している。航空会社も高額な機体を保有せず、
需要の増減に対応しやすい。格安航空会社(LCC)の拡大もあり、世界の航空機の47%がリース会社の保有とされる。
航空機リース最大手のアイルランドのエアキャップは2023年に欧州エアバスや米ボーイング製の小型機を中心に80機購入した。
2位で三井住友フィナンシャルグループ(FG)傘下のSMBCアビエーションキャピタルも23年11月にエアバス製の小型機「A320neo」を60
機発注した。発注額は5000億円超とみられる。19年にエアバス製の機体を65機発注して以来、4年ぶりの大型発注だった。
日本航空機開発協会は42年の旅客需要は19年の2.2倍になると予測する。英航空コンサルタント会社IBAのマイク・ヨーマンス氏は「これ
まではリース大手同士のM&A(合併・買収)がみられたが、今後は中堅同士の再編も考えられるだろう」と話す。大量発注できる購買力が航
空機リース会社の競争力を左右するためだ。
需要が高まる一方で供給側は制約に直面している。航空機の関連メーカーはコロナ禍での需要の落ち込みに伴って人員削減に踏み切った。
足元では募集をかけて人員を増やそうとしているが、米国などでは賃金上昇や人手不足が目立ち、十分に作業者を集められていないのが実
態だ。
トラブルが続く米ボーイングの737MAX9は24年1月にも不具合が見つかり、生産を減らしていることも響いている。
需給の引き締まりは航空機のリース料の上昇につながっている。エアバスとボーイングの主力小型機は2023年上半期にコロナ禍前の水準
を回復し、24年上半期にコロナ禍前の19年上半期に比べて23%上昇する見通しだ。
IBAの四半期ごとのリポートによると、24年1~6月のリース料は大型機も含めて全般的に上昇傾向にある。国際航空運送協会(IATA)は
24年の航空旅客が47億人になるとみるなど、堅調な需要が背景にある。
特に小型機のリース料の上昇が顕著で、エアバス製の「A320―200neo」が月40万ドル(約6200万円)、ボーイング製の「737Max9」
は月43万ドルになる見通しだ。遡れる19年前半までで最も高い水準になる。
エアバスのこの機体は全日本空輸(ANA)や傘下のLCCのピーチ・アビエーション(大阪府田尻町)が使っている。英航空情報会社シリウム
の航空機鑑定部門コンサルティング統括のロブ・モリス氏は「現在の需給バランスは、貸し手にとって非常に有利だ」と話す。
リース会社を取り巻く環境変化もリース料が上がる要因になっている。リース会社は機体の発注にあたり、ドル建てで多額の資金を調達する。
22年から23年半ばにかけて米金利は上昇した。金融機関からの借り入れや社債発行で資金調達コストが膨らんだため、リース料に上乗せし
ている。
銀行傘下の一部の企業をのぞき、一般的に航空機リース会社は格付けが低い企業が多いが、一部のリース会社では資金調達の8割を社債
が占めるという。
航空各社は機体の調達難が続くとみており、新規のリース契約を結んだり、契約を延長したりする場面で割高なリース料を受け入れるケース
が増えているという。IBAのヨーマンス氏によると契約満了を迎えるリース機体の約9割が延長している。
航空業界はロシアによるウクライナ侵略や緊迫化する中東情勢などの地政学リスク、感染症などの影響を受けやすい。ボーイングの機体は
墜落事故などによるトラブルも続く。金利や為替、景気動向を敏感に映すビジネスだけに強気と慎重さのバランスがより重要になっている。
三井住友FG (8316)
米系大手証券、レーティング強気継続。目標株価9,400円。
米系大手証券が5月16日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(買い)に据え置いた。
また、目標株価は9,400円としている。因みに前日(5月15日)時点のレーティングコンセンサスは4.3(アナリスト数10人)
で「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは9,384円(アナリスト数10人)となっている。
2024-05-16 GS 買い継続 8900円 → 9400円
2024-04-16 野村 Buy継続 9700円 → 11500円
2024-03-25 JPモルガン Overweight継続 9160円 → 10700円
2024-03-15 SBI 中立継続 7000円 → 7700円
2024-03-12 みずほ 買い継続 8550円 → 10050円
2024-03-12 BofA 買い → 中立継続 7750円 → 9250円
2024-03-05 シティG1継続 10000円 → 11000円
2024-02-28 大和 2継続 8200円 → 9000円
2024-02-02 UBS Buy継続 8240円 → 8500円
2023-12-21 SBI 中立継続 7200円 → 7000円
2023-12-18 岡三 強気 → 中立格下げ 7250円 → 7200円
2023-12-11 水戸 新規B+ 8500円
2023-12-04 モルガンS Overweight継続 8930円 → 9460円
2023-09-26 岩井コスモ A継続 8000円 → 9500円
2023-08-29 三菱UFJMS Neutral → Overweight格上げ 6000円 → 7760円
2023-06-02 東洋 買い → 中立格下げ 5500円 → 5800円
2023-04-12 ジェフリーズ Buy継続 5200円 → 6800円
2023-02-10 東海東京 Neutral → OP格上げ 4410円 → 7010円
三井住友FG (8316)
日系中堅証券、レーティング強気継続。目標株価11,000円。
日系中堅証券が5月16日、三井住友フィナンシャルグループ<8316>のレーティングを強気(A)に据え置いた。また、
目標株価は11,000円としている。因みに前日(5月15日)時点のレーティングコンセンサスは4.3(アナリスト数10人)で
「やや強気」の水準、目標株価コンセンサスは9,384円(アナリスト数10人)となっている。
2024/05/18 日本経済新聞 朝刊
17日の東京株式市場で三井住友フィナンシャルグループ(FG)株が7日続伸し、16年半ぶりの高値をつけた。一時前日比336円(4%)高の
9736円まで上げた。好調な業績見通しや株主還元策の強化を好感した買いが続いている。
終値は9723円だった。15日に市場予想(QUICKコンセンサス)を上回る連結純利益の見通しを示したほか、大幅な増配や1000億円を上
限とする自社株買いなどを発表していた。2025年3月期の純利益は前期比10%増の1兆600億円、年間配当は1株330円(前期は270円)
を見込む。16日の株価は2%上昇していた。
SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストは「純利益が1兆円の大台を超え、中期経営計画の利益目標を前倒しで達成する見込みとなった」と
指摘。三菱UFJフィナンシャル・グループなど同業他社と比べても「サプライズの多いポジティブな決算内容や株主還元姿勢だった」と評価した。
三井住友FG株は1年前と比べて1・7倍になったが、PBR(株価純資産倍率)は0・8倍台後半にとどまる。東海東京インテリジェンス・ラボの
沢田遼太郎シニアアナリストは「当面は米国金利の高止まりや円安水準が見込まれることに加え、民間の資金需要も旺盛で事業環境は良い。
PBR1倍割れ解消も十分にあり得る」とみていた。