[東京 10日 ロイター] - 寄り付きの東京株式市場で日経平均は、前営業日比5円85銭高の3万8689円78銭と、小幅に反発してスタート した。寄り付き後は上げ幅を広げ、一時170円超高となった。為替の円安進行を受けて輸出関連が買われているほか、保険、銀行など金融セ クターがしっかり。一方、半導体関連などハイテク株はまちまち。 個別では、主力のトヨタ自動車(7203.T), opens new tabが1%超高。ホンダ(7267.T), opens new tabは2%超高でしっかり。指数寄与度の大き いファーストリテイリング(9983.T), opens new tabが小幅高、ソフトバンクグループ(9984.T), opens new tabは1%超高で推移している。三井住友 フィナンシャルグループ(8316.T), opens new tab、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T), opens new tabも値上がり。 東京エレクトロン(8035.T), opens new tab、アドバンテスト(6857.T), opens new tabは小幅安、レーザーテック(6920.T), opens new tabは2%超 高と、堅調に推移している。
2023/11/28 日本経済新聞 朝刊
「銀行の経営者」と聞いて浮かぶ一般的なイメージがあるとすれば、およそかけ離れた特異なバンカーだった。25日に亡くなった三井住友フィナン
シャルグループの太田純社長は「カラを、破ろう」と行内を鼓舞し、因習が残る銀行の改革をけん引してきた。
霞が関や永田町との折衝を担う企画畑がエリートとされる銀行にあり、ビジネスのにおいがするまれな経営者だった。
原点にあるのが、キャリアの前半期に身を置いたプロジェクトファイナンスの経験だろう。不動産などの担保に基づく融資が主流を占めるなか、大
規模な発電所など事業が生み出す収益を裏付けに融資を実行する当時新しい融資の形態だ。
膨大な英文の契約書と格闘し、海外を飛び回るなかで黎明(れいめい)期のビジネスをゼロから立ち上げた。学者と論文を著し、この道では第一
人者のバンカーだ。相当な収益もあげたことだろう。本人に「投資銀行からのオファーはすごかったでしょうね」と水を向けると、「ビックリするような
報酬も提示されましたよ」と笑いながら振り返っていた姿が印象に残る。
ビジネスで磨いた決断力はうるさ型ともされる経営者を引き寄せた。2022年7月に資本参加したSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長と
は随行者を伴わずに会談を重ね、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭会長とは自宅を訪ねる仲でもある。
こうした関係が実を結んだのが、今年3月に始めた金融サービス「Olive(オリーブ)」だ。銀行口座やクレジットカードといった金融取引をスマートフ
ォンに一体化したサービスで、登録者は半年で100万人を超えた。太田氏のリーダーシップで連結純利益は今期、過去最高を更新する見通しで
、1兆円の大台も視野に入ってきた。
ライバル行の幹部はオリーブを実現させた太田氏を「実行力と先見性に秀でていた」としのぶ。北尾氏は訃報に接し「戦略的思考のもとに決めた
ことをパパッと実行に移すなど個人的にウマが合った。金融界の巨星落つという感じで非常に悲しい」と述べた。
さらにケンカの強さをのぞかせたのが、00年当時、東京都の石原慎太郎知事が銀行を狙い撃ちにした外形標準課税を導入してからの行動力だ。
外形標準課税は、不良債権処理の影響で課税対象となる所得が大幅に減っていた銀行から税金を取り立てるために都が繰り出した異例の策だっ。
条例の効力凍結を求める行政訴訟の中心にいたのが、住友銀行(当時)から全国銀行協会の幹部に加わっていた太田氏だ。本人に思い出深か
った仕事を尋ねると、初公判で銀行の主張を訴える原稿を自ら書き上げたことを少し誇らしげに語っていた。最終的に最高裁で和解に至ったが、東
京地裁と続く控訴審の東京高裁では条例を無効とする判決を引き出した。
その剛腕は銀行の利益だけに向けられていたのではない。
中期経営計画で掲げたのは「Fulfilled Growth」(幸せな成長)。脱炭素社会の実現や格差の解消、イノベーションの創出に具体的な数値を交
えて取り組むと宣言した。
それは「社会的な課題が顕在化するなか、かつてのような成長の時代に戻すだけでは不十分だ」との思いがあったからだ。脚本家の倉本聰氏と
交流を深め、持続可能な地球のあり方について考えを深めるなかで導き出したひとつの解だった。
今年秋以降は体調が優れなかったが、最後まで前線に立ち続けた。10月3日には日本経済新聞社が主催するシンポジウム「金融ニッポン」で
金融の未来を語り、10月28日には三井住友銀行が協賛するプロ野球・日本シリーズに合わせて開かれた植樹式にも顔を出した。
「退屈な社内会議なんて寝ているよ」。形式にこだわる銀行の文化に厳しさをみせる半面、将来を担う若手や中堅に注ぐまなざしは優しかった。
かつてプロジェクトファイナンスで損失が出かねない失敗をしても、再挑戦を許してくれた銀行の懐の深さに感謝の念を口にしていた。だから若手
が伸び伸び働ける環境を整えることが自らの使命と自覚していたのだろう。
「これからは金融だけでは生き残れない」と公言し、社内のアイデアをもとに新会社を作っては「社長製造業」として若手や中堅の発案者にかじ取
りを任せてきた。才能の開花を見届けられなかったことが心残りだったのではないか。
2023/11/29 日本経済新聞 朝刊
日銀のマイナス金利政策の解除が近づきつつある。日銀は春季労使交渉や個人消費などの動向を見極め、早ければ2024年前半にも解除を
判断する。解除すれば17年ぶりの利上げとなり、脱デフレに向けて緩和一辺倒だった金融政策は転換点を迎える。日銀だけでなく政府も企業も
、超低金利のぬるま湯から抜け出し、成長を取り戻す覚悟が問われる。
「いよいよマイナス金利解除への地ならしが始まった」。10月下旬、日銀が水面下で金融機関に依頼したある調査が波紋を呼んだ。
過去25年間の債券市場の機能度を調べる債券・市場サーベイの特別調査だ。マイナス金利や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YC
C)導入後の局面も調査対象とし、影響や副作用を聞いた。結果は12月にも公表される見通しで、市場関係者は「日銀は調査結果を根拠に解除
に踏み切るのではないか」と身構える。
日銀は16年1月にマイナス金利政策の導入を決め、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用している。解除
は「0.1%の利上げ」(内田真一副総裁)で、これまで日銀は「(解除までには)まだ距離がある」と否定し続けてきた。
だが、日銀内のムードは着実に変わりつつある。植田和男総裁は6日、名古屋での金融経済懇談会でマイナス金利解除の前提となる物価2%
目標の達成について「確度が少しずつ高まってきている」と踏み込んだ。
ある日銀関係者は「日本も物価高が長期化している。欧米と同じようにインフレ対応でビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)のリスクが出てきた」
と警戒する。別の関係者は「(解除を)永遠に先延ばしはできない。解除後の金融政策の進め方も内部では当然検討はしている」と話す。
判断のカギを握るのが、もうデフレには逆戻りしないという確信を抱けるかどうかだ。日銀が注目するのが24年の春季労使交渉。連合は賃上げ
目標を昨年を上回る「5%以上」とする方針を発表。植田総裁も「来年の賃上げがそこそこのものになる可能性は、少し前に比べると高まっている」
と手応えを感じている。
そんな日銀の変化を感じ取り、金融市場は早期解除を織り込み始めた。QUICKの月次調査(11月、外国為替市場)で解除時期は「24年4月」
との回答が32%と最多で、「24年1月」も20%に上った。合計で7割の回答者が24年前半での解除を予想する。
17年ぶりの利上げは、超低金利で債務を膨らませた企業には試練となる。国内銀行が融資する際の約定平均金利(新規)は異次元緩和開始
前(13年3月)の0.962%から、マイナス金利導入後の16年3月には0.69%まで下がった。足元では金利に上昇圧力がかかり、23年9月時
点で15年12月以来となる0.878%まで上昇した。
東京商工リサーチによると、10月の企業倒産(負債額1000万円以上)は前年同月比33%増の793件だった。新型コロナウイルス禍で実質無
利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を利用した企業倒産が増えており、融資金利の上昇が加速させる可能性もある。
読み切れないのが政治の動きだ。円安による物価上昇をどう抑えるかが政治テーマとなっており、岸田文雄政権がマイナス金利解除に強く異を
唱える展開には今のところなっていない。ただ、ひとたび為替相場が円高に振れたり、中小企業の倒産が増え始めたりした場合、政治を取り巻く
空気は一変しかねない。
財務省関係者は「政治の調整には時間がかかる。もし日銀が解除を決めたとしても、緩和的な環境は当面続ける必要がある」と話す。日銀関係
者は「解除後はゼロ金利に戻して様子を見た上で、その後の金利引き上げの余地を検討することになる」と話す。ショックを避けながらどのように
利上げの道筋を描いていくかが焦点となる。
四半世紀にわたって続く超低金利政策の最大の弊害は、金利が果たしていた事業の選別などの機能が緩み、日本経済全体に非効率がはびこ
ったことだ。政府や企業の改革を停滞させた側面は否めない。現状維持や縮小均衡に傾きがちだったデフレ時代の思考から抜け出せるのか。金
利のある世界への回帰は日本経済が成長を探る上で避けて通れない道となる。
2023/11/30 日本経済新聞 朝刊
11月20日、日銀本店に金融機関の短期金融市場の担当者らが集まった。毎年1回、定期的に開いている実務者会合で、通常であれば大き
な脚光を浴びることはないが、今回は違った。関係者によると、この日の会合でマイナス金利解除に向けた各社の準備状況などについて意見交
換があったという。
「日銀は解除後の市場動向に目を向け始めている。解除はそう遠くないだろう」。ある関係者はこう話す。日銀が政策金利を動かしたときに真っ
先に影響を受けるのが、金融機関が日々の資金をやりとりする短期金融市場だ。金利正常化を見据え、日銀が市場との対話に動き始めた可能
性がある。
日銀はすでに、7月と10月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を柔軟化し、長期金利のある程度の上昇を容認した。ある大
手銀行の幹部は「日銀はYCCから事実上、抜け出すことに成功した。大きな混乱もなく、今の日銀には安心感がある」と評価する。
日銀は市場の予想よりも早く動くことで、2021年にオーストラリア準備銀行(中央銀行)が金利操作を撤廃した際に金利が急騰したような混乱
を未然に防いできた。11月には定期的に行っている5年超10年以下の国債の購入量を2回にわたって減額。市場参加者からは、宣言なく緩和
を縮小する「ステルステーパリング」が進んでいるとの声も聞かれる。
日銀関係者も「出口が近いというのは否定しない」と認める。次の焦点は、本丸のマイナス金利政策の解除となる。
日銀で、政策運営の中心にいるのが副総裁の内田真一氏だ。金融政策の企画・立案を担う企画畑が長いエースで、植田和男総裁の右腕とい
える。
内田氏は7月の政策修正の直前、日本経済新聞とのインタビューで「(YCCが)市場機能に影響を与えていることは強く認識している」と語り、
政策修正を市場に織り込ませた。サプライズを避け、出口に向けて慎重に歩を進めるのが内田流といえる。
そんな内田氏にとってマイナス金利政策の解除は特別な意味を持つ。16年のマイナス金利導入時、銀行からの激しい批判の矢面に立たされ
たのが、企画局長として準備を進めた内田氏だった。
日銀は当時、国債の大量購入を進めていたが、これ以上買い入れ量を増やすことは難しいとする緩和の限界論が広がっていた。円高・株安の
リスクが意識されるなか、追加緩和のカードを増やすための起死回生策がマイナス金利政策だった。
「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる」。16年1月の日銀の決定文からは、限界を取り払い、新たな緩和余地を生み出したことへの高
揚感がにじむ。
だが、日銀がマイナス金利の領域に足を踏み入れたことで、金利に一斉に低下圧力がかかり、銀行収益の悪化などの副作用が高まった。当時
、三菱UFJフィナンシャル・グループ社長だった平野信行氏は「銀行界にとっての短期的な影響は明らかにネガティブ」と異例の日銀批判を行った。
日銀は結局、マイナス金利をそれ以上深掘りできなくなった。異次元緩和は短期決戦から持久戦へと装いを改め、16年9月のYCC導入につな
がった。当時の日銀審議委員で野村総合研究所の木内登英氏はマイナス金利導入で「(利下げの副作用が効果を上回る)リバーサルレートが意
識されるようになった」と振り返る。
行(ECB)、スイス中銀なども政策金利を次々にプラス圏に引き上げた。現在も維持しているのは日銀だけだ。
QUICK・ファクトセットによると、世界のマイナス利回りの債券はピーク時の20年ごろに一時18兆ドル程度(約2700兆円)に膨らんでいたが、
いまでは急減。マイナス金利は世界から消えようとしている。
マイナス金利解除には警戒もある。日本の投資家が米欧から金利のつき始めた国内へと資金を動かせば「為替や債券など複数の市場でボラ
ティリティー(変動)が高まる可能性がある」(米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスのマダビ・ボキル氏)。
日銀関係者も「(利上げという)長年動かしていなかった機械のスイッチを入れる怖さ」を感じているという。金融市場の混乱を避けるためには、
利上げのペースをできるだけ緩やかにすることが欠かせない。
政策決定が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」に陥れば、日銀は物価上昇を抑えるために急ピッチの利上げを強いられ、経済にも混乱が広が
りかねない。拙速は避けるべきだが必要と判断すればためらわずに動く大胆さも求められている。
2023/12/01 日本経済新聞 朝刊
「預金金利も上がってきますから」。ある都内のメガバンクの支店では、担当者が取引先を訪れ貸出金利引き上げの交渉に挑んでいた。交渉は
新規融資と既存の融資枠の更新が軸で、担当者にとっては絶対に落とせない案件だ。
これまでであれば、金利を下げてでも契約を取り付けることを優先していたはず。だが、いまのメガバンクはそんなデフレ時代の常識を何とか変え
ようとしている。支店長は「(融資の金利を)下げるくらいなら(契約を)落としてもいい」と担当者を鼓舞した。
日銀の相次ぐ政策修正で市場金利が上昇したことを受け、9月の銀行の新規融資の金利(貸出約定平均金利、新規)はマイナス金利政策導入
前の2015年12月以来の高水準に達した。30日公表の10月分も含め6カ月移動平均でみると2年10カ月ぶりの高さで、長く続いた低落傾向に
ようやく歯止めがかかってきた。
「政策金利が変わるかが(収益には)一番大きい」(みずほFGの木原正裕社長)。各行は貸出金利上昇につながる日銀のマイナス金利解除に
期待を強める。みずほは解除後、粗利益で350億円の押し上げ効果を見込む。三井住友FGは短期金利が0.1%上昇すると純利益を約200
億円押し上げると試算する。
ただ、貸出金利を引き上げていくにはハードルもある。
日銀の資金循環統計によれば、民間企業部門(金融除く)の現預金残高は6月末時点で343兆円と前年同期比で3.7%増えた。マイナス金利
導入前の15年12月末と比べると1.5倍の規模で、金利復活後もカネ余りの状況は変わらない。
「無借金経営で現預金は十分ある。銀行の担当者は営業に来るが、融資を受ける予定はない」(都内のインフラ企業の経営企画担当役員)。複
数の銀行が一部の優良企業の限られた資金需要を奪い合う構図が変わらなければ、貸出金利の引き上げは絵に描いた餅となりかねない。
長らく続いた低金利環境で「貸す側も、借りる側も金利交渉に慣れていない」(精密機械メーカーの財務責任者)という問題もある。コーポレートガ
バナンス(企業統治)や温暖化ガス排出ゼロに向けた環境対応の助言などと組み合わせながら適切な金利水準を探っていく。そんな知恵が銀行
に求められている。
一方で、ゼロ近傍に張り付いていた預金金利の一部が、貸出金利に先行して上がり始めている。引き上げ競争の口火を切ったのがSBI新生銀
行だ。22年6月に6カ月物などの定期預金金利をそれまでの10倍に引き上げ、23年9月末の預金残高を引き上げ前より6割も多い10兆5000
億円に増やした。
「10年定期に移したい」。三菱UFJ銀行も11月6日、5年以上の定期預金の金利を引き上げた。10年では0.2%と従来の100倍の水準。都
内の支店には、毎日複数の顧客が問い合わせに訪れているという。
金利復活の恩恵が家計に届くためには、長期の定期預金だけでなく、普通預金などの金利が幅広く上昇していく必要がある。銀行が企業の成
長分野への投資を支え、貸出金利を引き上げていけるかが、金利のある世界が定着する条件となる。
2023/12/02 日本経済新聞 朝刊
1日の日経平均株価は前日比55円安の3万3431円と小反落で終えた。円高傾向に押され今週の高値更新はお預けとなったが、日本株高を
けん引してきた海外投資家の目線はなお高い。政策保有株の削減やMBO(経営陣が参加する買収)といった日本企業の変身を映すニュースも
関心の的で、一段高を見据えた仕込みが続く。
割安株投資を手がける米ハリス・アソシエイツが今、日本株で最も多く持っているのが富士通だ。独立社外役員が取締役会議長を務める企業
統治体制や、新光電気工業の売却をめざすなど非中核事業の整理を進めている点を高く評価している。デジタルトランスフォーメーション(DX)分
野での成長も期待し、2023年に大きく買い増したという。株価は7~9月期業績の回復を材料に10月下旬の年初来安値から約3割上げた。
「経営者がマインドセットを本当の意味で改め、変化を受け入れる会社を探している」。ハリスで米国外株式の運用を担うエリック・リュー氏は今
週、企業調査で訪れた日本滞在中にトヨタグループによる株式持ち合い縮小の報に接した。「これほどの大企業が政策保有株の削減に乗り出し
たことで中堅以下の企業も始めるかもしれない。一朝一夕に変わらなくても重大な変化が起き始めたと信じている」と話す。
アクティビスト投資家の鼻息も荒い。企業価値向上を期待する追随買いも誘っている。「資産は現在の株価の2倍の価値がある」として米バリュ
ーアクト・キャピタルが1%の株取得を公表したリクルートホールディングス株は、11月29日に年初来高値をつけた。
サッポロホールディングスは社外有識者も加えた「グループ戦略検討委員会」を9月に設けた。同社にはシンガポールの3Dインベストメント・パ
ートナーズが「不動産賃貸収入による経営の甘え」を指摘し、酒類など中核事業の低収益性の是正を求めている。3Dは10月19日にサッポロ株
5・09%の大量保有報告書を提出し、11月下旬にかけて保有比率を10・56%まで急激に引き上げた。サッポロHD株は約32年ぶりの高値水
準まで上昇している。
食品株では日清食品ホールディングスや東洋水産などが、11月に上場来高値を塗り替えた。大和証券の守田誠シニアアナリストは「難しいと
みられていたコスト高の価格転嫁を実現してM&A(合併・買収)など構造改革も進め、日本の食品メーカーは駄目との見方が変わり始めている」
と話す。
海外勢の日本株買いは24年も続くのか。JPモルガン証券のクオンツチームは景気循環などの定量分析をもとに動向を展望。海外マネー流入
は続き、2024年の買越額は4兆円規模とはじく。高田将成クオンツストラテジストは「益回り」からみた、日本株の世界株に対するリスクプレミ
アムの上乗せ幅と海外勢動向の関係にも注目する。出遅れ是正の途上にあり「自己資本利益率(ROE)を引き上げていけるかが課題」と語る。
スイス運用大手ピクテのシャニール・ラムジー氏は担当するマルチアセットファンドで23年、日本株への配分比率を5%から20%程度まで高
めた。「企業と対話して経営陣の意思を十分理解し、日本経済の活性化を感じた」という。まだ兆しの段階にある変化の着実な進展が24年の
日本株一段高のカギを握る。
詳細
「痛恨の極み」「言葉もない」「耐えがたい思い」――。およそ経営トップの交代会見とは思えない、重苦しい言葉が並んだ。
11月30日、三井住友フィナンシャルグループ(FG)は中島達(なかしまとおる)副社長が社長に昇格する人事を発表した。12月1日付という異
例の人事の背景にあるのが、太田純前社長の急逝だ。「剛腕」と称されたトップの喪失で、三井住友FGは新たな局面を迎える。
■「脱銀行」を掲げ矢継ぎ早に改革を推進
「脱銀行」。太田氏は2019年4月に社長就任後、伝統的な銀行業務からの脱却を掲げて、矢継ぎ早に改革を進めた。
「社長製造業」と銘打ち、若手・中堅社員を社内ベンチャー事業の社長に抜擢したほか、2023年3月には銀行や証券、カード、保険など個人向
け金融サービスを一元化したアプリ「オリーブ」を投入した。
SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長やCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の増田宗昭会長兼CEO(最高経営責任者)など、個
性派の経営者とも交友を深めた。海外では、アメリカ証券大手ジェフリーズや東南アジアの現地金融機関への出資を進めた。
三井住友FGは2023年3月期決算で過去最高純利益を更新するなど、順風満帆かと思われた。だが、その中で発覚したのが太田氏の膵臓が
んだ。
太田氏は4月に経営陣に罹患を打ち明けた後も精力的に活動を続けたが、抗がん剤の副作用からか持ち前のがっしりとした体躯はみるみる痩
せていった。
周囲には、がんに苦しむそぶりを見せなかった。今秋、ある会合で同席した別のメガバンク首脳から「体調はいかがですか」と痩身ぶりを案じられ
た際、太田氏は「ダイエットですよ」と涼しい顔で答えたという。
一方、三井住友FGの指名委員会では、健康問題が顕在化する前の2022年頃から、太田氏の後継者選定が水面下で進んでいた。
FG社長の任期は6年が慣例で、通常なら太田氏の任期は2025年まで。だが、2023年4月に中核子会社の三井住友銀行頭取が交代するの
に合わせて、「FGの社長人事も並行して審議した」(三井住友FGの國部毅会長)。そこで浮上したのが、太田氏とともに企画部門で仕事をしてい
た中島氏だった。
中島氏は1986年に旧住友銀行入行後、支店勤務などを経て企画畑を歩んだ。2001年の住友銀行・さくら銀行の合併に際しては住銀側の事
務局を務めたほか、消費者金融大手のプロミス(現SMBCコンシューマーファイナンス)の買収も手がけた。
中島氏が2012年に投資銀行統括部へ異動になった際、直属の上司となったのが太田氏だ。その後も企画部長やグループCFO(最高財務責
任者)など、太田氏の下で要職を歴任。こうした経緯もあり、次期社長ポストの「最右翼」として指名委員会の合意を得た。
おりしも、三井住友FGは2023年度から「コンティンジェンシープラン」を導入していた。経営トップに不測の事態が発生した際の対応計画で、太
田氏が経営の指揮を執れなくなった際には、中島氏が社長業務を代行することが決められた。
皮肉にも、コンティンジェンシープランは導入後に、早速発動されることとなる。太田氏は11月初旬に体調を崩し都内の病院で治療を行っていた
が、容体が急変。同14日に予定されていた決算説明会を急遽欠席した。業務継続が困難と判断した太田氏は同21日、指名委員会に辞意を表
明した。
「1週間ほど前、國部会長から『近いうちに社長として推挙される可能性がある』という話をいただいた」(中島氏)
本来であれば、社長交代の時期はもう少し後に予定されていたようで、太田氏は治療を継続しつつ、特別顧問として経営の後ろ盾となるはずだ
った。だが太田氏は11月25日早朝に65歳で息を引き取り、急転直下のトップ交代となった。
動揺が続く中で、舵取りを任された中島氏。「太田社長が推し進められたことをしっかりやる」と意気込むが、目先の課題は2023年度から始まっ
た中期経営計画の見直しだろう。
三井住友FGは11月、2024年3月期決算の純利益見通しを従来の8200億円から9200億円へと上方修正した。株売却益などの特殊要因が
あるとはいえ、中期経営計画の「2026年3月期に9000億円」という最終目標をあっさり超過してしまった。
身内からも、「最終年度の目標をわずか半年で達成してしまったことは、(中計の目標設定が正しかったのか)きちんと分析しないといけない」(三
井住友銀行の福留朗裕頭取)という声が上がる。
中・長期的には、他メガバンクに見劣りする領域の挽回がカギになりそうだ。三井住友FGは個人や中堅・中小企業取引、デジタル化などで先行
する一方、「大企業取引は3メガの中でも十分なものになっていない」(中島氏)。直近では大企業部門の責任者を務めていた中島氏の手腕が、早
々に試される。
海外展開でも、アメリカの証券業務はモルガン・スタンレーを抱える三菱UFJフィナンシャル・グループや、現地の投資銀行買収で拡大するみずほ
フィナンシャルグループに後れを取る。
太田氏は2023年6月に実施した東洋経済のインタビューで、「アメリカの投資銀行部門の強化は長年の目標だ。ボンド(債券)の引き受けではS
MBC日興証券もそこそこの競争力があるが、エクイティ(株式)やM&Aの強化は、今からではとても間に合わない」と話していた。
太田氏の置き土産であるジェフリーズとの資本提携の効果を発現できるかが、今後重要になりそうだ。
「2028年度に純利益1兆円が目標。でも、金利環境が変わったら(達成時期も)変わりますよ」。国内金利の上昇機運が高まる中、太田氏は東
洋経済のインタビューでこう期待をにじませていた。「1兆円の大台」の遺志を継ぐ中島氏に、重責がのしかかる。
2023/12/05 日本経済新聞 朝刊
消費者金融に貸し倒れ拡大のリスクが浮上している。新規顧客が急増したことで、アコムなど大手3社の2023年4~9月期の貸倒関連費用
が1200億円程度と前年同期比で3割増えた。市場金利の上昇に伴い、同期間の資金調達費は日銀が異次元緩和に踏み込む前の12年以降
で上半期として5年ぶりに増加。低金利の恩恵を受けてきたノンバンクの経営は転機を迎えている。
23年4~9月期の貸し倒れ関連の費用はアイフルが前年同期比48%増の271億円、「プロミス」を手掛けるSMBCコンシューマーファイナン
スが30%増の461億円となった。アコムは前年同期に比べて3割近く増えた。
貸し倒れが増えたのは、新型コロナウイルス後のリベンジ消費に動く個人顧客への貸し付けが膨らんでいるためだ。3社合計の新規顧客は
60万人強と4年前比で6割近く増えた。大手の一角では貸し出しから2年以内の債権の件数が全体の半分近くを占める。
この増加ペースを支えるのがスマートフォンだ。店舗にある無人契約機ではなく、スマホ経由で借り入れることが一般的となり、心理的なハード
ルが下がった。かつては顧客の大半が男性だったが、足元では「女性や若年層がけん引している」(アコム)という。
返済の延滞は取引歴の浅い貸出先で多い。これに「コロナ禍の前半で貸した顧客の貸し倒れが積み重なり」(アコム幹部)、貸し倒れ関連の
費用増につながった。
各社とも1人当たり貸付残高は減少傾向にある。アコムの場合は49万円と3年前比で6%減っており、消費者金融各社からは「リスク管理で
きている」との声もあがる。
だが俯瞰(ふかん)してみると、リスクの芽が浮かびあがる。個人の債務情報を管理する日本信用情報機構(JICC)によると5件以上借り入れ
ている債務者の数は10月時点で14万5000人と前年同月比で26%増えた。前月比での増加が継続しており、多重債務者の数が増加してい
る。経済環境の変化で、新規顧客が返済に苦しめば損失が増加する可能性は増す。
消費者金融業界にとって、前門の虎が貸し倒れリスクの拡大なら、後門の狼(おおかみ)となるのが市場だ。
アコム、アイフル、SMBCコンシューマーファイナンスの資金調達にかかる「金融費用」を集計した。プロミスが三井住友フィナンシャルグループ
に完全子会社化された12年4~9月期に200億円弱だった費用は平均で年1割弱のペースで低下を続けていたが、23年4~9月期に約70億
円と前年同期比で0.1%増と、増加に転じた。
背景には日銀の金融政策の修正観測がある。消費者金融各社は銀行借り入れや社債の発行で調達した資金を顧客への貸し出しに充ててお
り、収益面で金利低下の恩恵を受けてきた。日銀の政策修正により昨年末に0.4%程度だった長期金利は一時1%近くにまで上昇。足元の借
り入れや社債発行の金利が上昇圧力を受けている。
銀行と異なり預金を抱えておらず金利上昇が資金調達費用の増加に直結する。年15~20%の利息制限法上の上限に近い利率の貸し出しが
多数を占めるため、貸出金利への転嫁も難しい。長期金利が高止まりすれば、調達費用の増加が利幅を圧縮することになる。
各社は対応に乗り出し始めた。アコムは財務体質を強化して格付けの引き上げにつなげる方針を示す。固定金利でも借り入れているため短期
的には収益減に直結しないが、中長期でみると収益の下押し要因になる。木下政孝社長は金利上昇の影響について「1%の上昇で(残高から
みて年間純利益の1割に相当する)55億円のインパクトになる」として対応を急ぐ。
アイフルも格付けが「BBB」から「BBBプラス」に上がり、調達費の増加を抑えたという。SMBCコンシューマーファイナンスは一部資金の借り
入れで期間を短期から長期に振り替えた。
米国ではクレジットカードの支払いができずに延滞した割合が7~9月に11年以来12年ぶりの高水準となった。金利ある世界は借り入れのハ
ードルを高める側面がある。ノンバンク各社はリスク管理能力を試されそうだ。
[東京 5日 ロイター] - 「金利のある世界」が近付く中、収益の押し上げ機会を逃すまいと金融機関が態勢を整え始めた。超金融緩和が続き、
金利なき世界に浸ってきた各社にとって金利を稼ぐ原資となる預金は宝の山に転じる。顧客ニーズの変化への対応に加え、金利を知る行員が
現場にいないなどの問題を解消すべく、各行が試行錯誤で動き始めている。
<新組織立ち上げ、勉強会>
大和証券グループ本社 (8601.T)で秘書室長を務めていた山本聡氏は、今年4月から新たな部署を立ち上げることを命じられた。
新部署グローバル・マーケッツ戦略企画部は、これまで以上に法人客向けのホールセールと個人客向けのリテールが連携するための役割を果
たす。山本部長は「30年に1度の転換期にある今、そこでちゃんと稼ぐため。環境の激変に応じて、先手を打つ」と立ち上げの意図を明かす。
現在の陣容は兼務15人を含む38人。
金利上昇で機関投資家がポートフォリオを組み替え、売却も増加する中、富裕層を中心としたリテールが受け皿になり得るという。リテール側
のニーズを同じ部署で把握していれば、在庫を持つことなくつなぐことができ、利益率も高まるとみる。
ゼロ金利やマイナス金利という超金融緩和が長く続いた日本は、金融機関と顧客との会話で円債は影が薄かった。みずほ信託銀行の菊地睦・
総合戦略運用部次長によると、足元で金利が動き出し、先々、マイナス金利解除など金融政策の正常化も期待される中で、ヘッジ付き外債が
厳しくなり円債にシフトする動きが出ている。「これまで光が当たってこなかったが、円債回帰の動きは出始めている」という。
ただ、短期金利が0.5%を上回るような本当の「金利のある世界」を知るのは、バブル期入行の社員が最後になる。今後、金利の上昇が本格
化した場合、銀行の収益のみならず、顧客のニーズなどにも変化が予想されるが、肌感覚でわかる社員は限られる。
りそなホールディングス (8308.T)の南昌宏社長は「金利の上昇局面で顧客と対峙するのが初めての経験の人が多い」とし、チャネルの変化や
テクノロジーの進化などを背景に「金利上昇局面で、顧客がどのようなスピードで行動を変えるかをしっかりと見定める必要があり、変化に適応
する準備が必要になる」と話す。
同社では、先月まで基礎編と応用編に分けて2回の勉強会をオンラインで実施、支店長を中心に数百人が参加した。インフレとはどういう世界
かというところから始まり、日銀の政策が金融機関にもたらす影響、銀行や顧客のバランスシートの変化まで内容は多岐に渡った。
三菱UFJ銀行でも今年度に入り、国内営業店のデリバティブなどの市場取引を推進するチームを作り、金利上昇時に出てくる顧客ニーズに対
応する態勢を作った。また、今年1月からは営業店で計70回超にわたり金利変動時に顧客にどのような提案を行うかという勉強会を開催。さら
に6月からは円金利上昇に関連したセールス・マーケット情報の配信も始めた。来年4月に入行する新人研修にも金利ビジネス講座を新設す
る予定だ。
日銀ウオッチャーとして著名な加藤出・東短リサーチ社長のところには、10月以降、金融機関からの勉強会などの依頼が数倍に増えている。
加藤氏によると「マイナス金利解除でどういう短期市場になるかの意見交換」をしており、3階層になっている当座預金の扱いや先行きの利回り
曲線(イールドカーブ)などがポイントになっている。
通常は資金の出し手となっている金融機関でも、一度、取り手になってみるという動きはみられるという。ただ、2006年の量的緩和解除やゼロ
金利解除時に比べると「今局面は、当座預金に付利が付いて、かつ3層になっていることから、金融機関が資金繰りを行う体制は維持されてお
り、事務的な面での混乱は起きにくい」とみている。
日銀はすでに長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化に動き、金利も動き始めているが、金融機関収益に対しては「Y
CCはあまり関係ない。政策金利が変わることが一番大きい」(みずほフィナンシャルグループ (8411.T)・木原正裕社長)という。
三菱UFJフィナンシャル・グループ (8306.T)の亀澤宏規社長は「資金収益が落ちる中で、収益の多様化、経費構造見直し、リスク・リターンの改
善をしてきた。それが成果を出し、マイナス金利前と同じ業務純益に戻った。ここから金利が上がるとプラスになる」と、今後に期待感を示す。
三井住友フィナンシャルグループ (8316.T)の伊藤文彦最高財務責任者(CFO)は「コストをかけずに預金獲得に対応していきたい」と語り、スマ
ートフォンのアプリで口座管理やクレジットカードなどの金融取引を一体化したサービス「オリーブ」を国内戦略の中核に据える。各社とも国内で
の預金獲得に力を入れる。
三井住友銀は、マイナス金利が解除されると資金利益で約300億円のプラスになると試算。三菱UFJ銀は、マイナス金利の解除・10年利回
り1.0%などを前提として資金収益を500億円押し上げるという。みずほ銀は、マイナス金利が解除されれば資金収支で350億円のプラス、
短期金利をはじめ一律で0.1%金利が上がると平均500億円のプラスになるとしている。
マイナス金利解除、そしてプラスの政策金利という世界に向けて、大和証券の山本氏は「人員は増やしたい。商品開発部隊を作りたいと思って
いる。金利系も為替系も、プライベートアセットもいくらでもニーズは出てくると思う」と話す。
みずほ銀行の30代行員は「金利のない世界で入行したので、できることが増えるのではないかとワクワクしている」と話す一方で「これまでな
かったリスクが膨らむ可能性がある」と、未知の世界に向けて気を引き締めていた。
2023/12/05 日本経済新聞 朝刊
2024年末の日経平均株価は3万5000~3万9000円程度と、4日終値(3万3231円)から1~2割の上昇を見込む予想が出ている。日本
経済の脱デフレやコーポレートガバナンス(企業統治)の改善など23年の株高要因が引き続き追い風になるうえ、1月から始まる新たな少額投
資非課税制度(NISA)も援軍になるとみる。
市場関係者の多くが日本の脱デフレは継続すると指摘する。野村証券は24年の春季労使交渉(春闘)の時期にデフレ脱却への期待が再度高
まるとみる。
企業は「値上げカルチャーの浸透による利益率改善効果で増益トレンドを維持」するとして24年末の日経平均は3万8000円への上昇を見込む。
日経平均が史上最高値の3万8915円を更新できるかが焦点だ。SMBC日興証券は「24年も健全なインフレサイクルが続く」とみて最高値更
新を予想する。
大和証券は米連邦準備理事会(FRB)が24年前半にも利下げを始め、年度末までに米長期金利が3%台後半まで低下すると予測する。
「金利低下は半導体や情報技術(IT)関連株だけでなく日本株全体のバリュエーションを引き上げる」とし、24年度末に日経平均が3万9600
円と、4万円に迫るとみる。
2023/12/05 日本経済新聞 朝刊
大統領選の影響焦点
2024年の日米株式相場をどうみるか、金融大手の予想が出そろった。米国景気の先行きを巡っては予想が分かれるなかで、堅調な企業業
績を支えに株価が1割程度上昇するとして「景気減速下の株高」を予想する声が出ている。一方、個人消費の弱さへの懸念から株価下落を予想
する声もある。景気の行方が市場に与える影響をどう見るかも一様ではない。
(大道鏡花、吉井花依)
24年末のS&P500種株価指数の目標について各社の予想を集計した。ドイツ銀行やバンク・オブ・アメリカ(BofA)は足元の水準(1日終値
は4594)から1割程度上昇し、史上最高値(4796)を更新すると見込む。ドイツ銀は米景気の減速が短く緩やかなものになるため、株価の下
落は小幅で一時的にとどまり、年末にかけて5100まで上昇すると予想する。
景気が前提通りであれば企業の1株利益(EPS)は10%増加するとみる。仮に国内総生産(GDP)が2%成長するとEPSの伸びは19%に達
するという。ドイツ銀は「労働市場の逼迫は企業の生産性改善の前兆で、潜在的な株価上昇余地がある」とし、景気減速下でも株高になるとみる。
BofAは(景気の過熱も冷え込みもない)ゴルディロックスを予想し、24年末にS&Pが5000に達するとみる。GDPが減速してもS&PのEPS
は6%増を見込む。「設備更新需要の増加や人工知能(AI)による企業の効率化が進み、コスト削減で利益率も改善する」という。
ゴールドマン・サックスも軟着陸を予想し、緩やかなペースで米景気が拡大するとみる。ただ、S&Pの目標株価は4700と小幅な上昇にとどま
るとの見立てだ。堅調な経済成長が市場の米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始期待を年後半まで遅らせるため、本格的な株価上昇は
下半期にずれ込むとする。
株価下落を予想する弱気派の代表格はJPモルガン・チェースだ。24年末のS&P予想は4200と足元の水準から9%低い。米国の家計が新
型コロナウイルス禍でため込んだ現金などの資産は「24年4~6月期までにほぼ枯渇する」と予測しており、消費の軟化を警戒する。
モルガン・スタンレーは「中期的な業績見通しは明るいものの、短期的には依然として厳しい」と指摘。24年末のS&Pは4500を予想している。
現在約19倍のS&Pの予想PER(株価収益率)は過去20年平均(15倍台)と比べて高く、24年末には17倍まで落ち着くとみる。
24年は米大統領選挙などが予定される「政治の年」でもあり、影響を指摘する見方も多い。ゴールドマンは「大統領選の不透明感がリスク選
好を抑制する」と指摘。選挙後は結果にかかわらず不透明感が薄れるとし「年後半になれば不安解消が米株相場を押し上げる」との見方を示す。
株式相場のけん引役に変化が見られるかも焦点だ。UBSは24年末のS&Pを4600とほぼ横ばい圏で予想。「(米国の巨大テック7銘柄の)
マグニフィセント・セブンよりアジアのハイテク銘柄に強気」としている。
2023/12/06 日本経済新聞 朝刊
2024年の対ドルの円相場は日米金利差縮小を背景に緩やかな円高を見込む声が多い。米連邦準備理事会(FRB)が利下げを始めればドル
高に転機が訪れるとの観測が背景にある。21年以降の円安局面が転換し「強い円」が戻るのか。日銀がマイナス金利政策を解除しても日米金
利差は大きく、円の上値は重いとの見方もある。
国内外の金融機関による2024年の為替相場の見通しをみると、野村証券は6月末が1ドル=140円、12月末が135円。三菱UFJモルガン
・スタンレー証券は6月末が142円、12月末が138円と予想する。4日の円相場は一時146円台前半と約3カ月ぶりの円高水準をつけたが、
24年末に向けてはさらに円高圧力が強まるとの見方だ。
米国では11月以降、利上げの打ち止め観測が高まった。景気の減速を示す経済指標の発表が相次いだうえ、FRB高官も利下げの可能性に
言及。米金利先物市場は24年3月の利下げを織り込み出した。みずほ証券も24年3月の利下げ開始を予想。金利先物市場の値動きから政策
金利の先行きを予想する「フェドウオッチ」では、5月までの利下げ確率は約9割を占める。
日本の金融政策も円高要因となりそうだ。日銀は10月31日に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を再修正し、長期金利の1%
超えを容認した。市場では日銀が24年にマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切るとの思惑が広がる。
もっとも、日米金利差が縮小しても日米の絶対的な金利差は大きく、22年3月の米利上げ開始直前の水準である110円台よりは円安方向の
予想が目立つ。米経済が急減速を回避しつつインフレが鎮まる軟着陸期待が背景にある。軟着陸の成功でFRBの利下げ幅はインフレ率の鈍化
分に限られ、米金利は高止まりするとの考えだ。米ゴールドマン・サックスは24年に「米国が景気後退に陥る可能性はせいぜい15%」とみる。
日銀の利上げ幅も小幅にとどまるとの見方が多い。米国の実質金利のプラス幅はおおむね一定に保たれる一方、インフレ率を差し引いた日本
の実質の政策金利はマイナス圏を維持することが「極端な円高の進行を妨げる防波堤になる」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チ
ーフ為替ストラテジスト)との指摘もある。
低金利の円を借りて高金利通貨で運用する「円キャリー取引」も「下火になる可能性は低い」(英バークレイズ証券)との見方もある。日銀の緩
やかな利上げペースを前提に、24年も引き続きキャリー取引がドルを下支えし、円の上昇余地は限られそうだ。
2023/12/07 日本経済新聞 朝刊
事業会社の間で株式の持ち合い解消が広がっている。日本型グループ経営の象徴であるトヨタ自動車がグループ会社株の売却に動き出した。
安定株主という「よろい」を捨て市場と向き合い評価を高められるか。持ち合い解消を機に投資家の選別が進む可能性がある。
6日の日経平均株価は前日比670円高と反発し、前日の下げを取り戻した。3万3000円台の高値圏での攻防が続く中、上値が重いのがデン
ソー株だ。11月にトヨタ、豊田自動織機、アイシンの3社が同社株を売り出すと発表。需給悪化を懸念した売りが重荷だ。
企業や金融機関などで株式を持ち合い、経営を安定させる――。政策保有株は日本株市場の特殊性を示す象徴だった。トヨタグループが重い
腰を上げたことは日本企業全体の変化につながる可能性がある。保有株を売った企業は資本効率を改善できる。問題は、株式を多く持たれてい
る側だ。
「『スタブトレード』が広がる可能性がある」。SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは親子上場の解消を狙う同戦略が持ち合い
解消でも使われるとみる。
スタブ(stub)は「切り株」の意味で、企業の時価総額から保有株の価値を引いた自社単独の価値を指す。このスタブ価値が低い銘柄は保有株
売却を迫られやすい。保有企業を買って被保有企業を空売りして利ざやをとるペアトレードの対象になり得る。
KDDI、味の素、アサヒグループホールディングスなど、直近で大株主の売り出しを発表した銘柄は直後に株価が下落した。自社株買いを組み
合わせれば売り出しによる需給悪化を軽減できるが「現金が少なく業績不振の企業は対抗手段が限られる」(伊藤氏)。
例えば関西フードマーケット。2023年3月期末時点で上新電機や雪印メグミルクなどに持たれており、11月の被保有時価に対する現預金のカ
バー率は21%にとどまる。すべての持ち合いが一気に解消されるわけではないが、財務的に緩衝材の役割は期待できない。
注目すべきは需給要因で短期的に売られても市場の評価を取り戻した企業だ。リクルートホールディングスは20年11月に電通グループやTOP
PANホールディングスなど8社による持ち合い解消を発表。海外向けに株式を売り出した。株価は直後に3%下げたが、21年1月には持ち直した。
その後、米求人検索サイト「インディード」が業績をけん引し、株価をさらに押し上げた。足元では急成長の反動に苦しむが、11月にはアクティビ
スト(物言う株主)の米バリューアクト・キャピタルの保有が判明。リクルートHDも対話に前向きな姿勢を示しており、市場では企業価値向上への
期待が高まる。
デンソーも潜在的な買い手は多い。これまで持ち合い解消は散発的には出ていたが、今回のような大規模な売り出しは「初めて」(同社)。売り
出しの一部は自社株買いで吸収するが、残りは引受主幹事の証券会社などが販売する。
日本取引所グループによると、先行した金融機関や保険会社などによる持ち合い解消で、日本企業の株主構成は22年度時点で外国人や個
人投資家などの「アウトサイダー」が58%を占める。成長戦略を示して地道に収益改善を進め、アウトサイダーを新たな「安定株主」にできるか。
企業の市場との向き合い方が試される。
2023/12/08 04:00 日経速報ニュース
岸田首相の経済対策は評判が悪く、内閣支持率を急低下させた。一体何が悪かったのか。各種世論調査では、所得減税は選挙対策だという
評価が目立つ。物価対策として1人当たり4万円の減税をしても、物価上昇それ自体が止まる訳ではない。2024年6月のボーナスに合わせて、
減税するとしても、それはまだ半年近く先のことだ。物価対策として遅すぎる。ほかに、減税で選挙民の歓心を買うよりも、もっと優先すべき政策
があるだろうという指摘もある。民意を読み誤った岸田首相が挽回する手段は乏しい。
本稿では「じゃあ、物価対策として岸田首相は何をすればよかったのか?」という問いを考えたい。岸田首相は必ずしも経済問題について強く
ない。むしろ苦手科目かもしれない。だからこそエコノミストや経済学者は、正しい提言を訴えて、経済政策を間違うことがないようにする必要が
ある。筆者には、専門家が世の中全体に正しいオピニオンを訴える力が弱いようにも感じられる。
不十分な対応策
世の中でよく耳にするのは①中小企業が価格転嫁を進めて利益を圧迫されないようにすること②賃上げをして物価上昇に苦しむ勤労者をサポ
ートすること③実質賃金を上げて消費拡大を目指すこと、などがある。筆者もそれは確かに正しいと思うが、それだけでは十分ではないと考える。
①?③だけでは処方箋として完全なものではない。
ロジックとして弱いところは、すべての企業が100%の価格転嫁をすると消費が冷え込んで逆に企業収益を減らすことである。企業収益が増え
ないと賃上げもできない。物価上昇を上回るくらいに賃金を上昇させることを考えながら、価格転嫁をすることを考える必要がある。
読者は、このパズルをどう解けばよいとお考えだろうか。筆者は、輸出拡大を通じて企業収益を増やすことが正解だと考える。すでに円安は十
分すぎるほど進んでいる。海外では国内以上に物価上昇が起きている。為替レートの下落と物価格差によって、実質為替レートは極端なくらい
まで低下している。例えばコロナ前(19年10?12月の平均水準)に比べて、足元のドル円は38%も割安で、それに物価変動を加味して実質化す
ると47%も割安になる(図表)。訪日外国人の購買力は日本人を100として147まで上昇しているのが実情だ。輸出数量の増加は現状よりももっと
大幅に伸ばせるはずだ。輸出増→企業収益増→賃上げで、実質賃金をなるべくプラスにする努力をする。国内総生産(GDP)統計では、23年7?
9月の実質輸出はコロナ前に比べて8.5%増である。実質47%も円安が進んでいるのだから、もっと輸出数量を伸ばすことができるはずだ。そのポ
テンシャルを引き出すことが岸田政権がやるべき政策になる。
なぜ日本の輸出は伸びにくいのだろうか。ひとつは競争力の低下がある。半導体など電気機械分野では価格だけが競争力の源泉ではなくな
っている。自動車も伸びているように見えて欧米・中国では急速にEV化が進んでいる。
国別の実質輸出の伸び率を23年10月とコロナ前で比較してみると、米国向けが21.5%、EU向けが20.2%、中国向けがマイナス2.3%となっている。
中国経済の悪化は中国以外のアジア向けの輸出にも波及している。アジア新興工業経済群(NIES)・東南アジア諸国連合(ASEAN)向けは5.2
%の伸びにとどまっている。
22年の輸出相手国で中国は首位である。その中国が伸びにくいことも円安メリットが乏しく感じさせる。また、対中国貿易では経済安保も微妙
に影を落としている。岸田外交は米国の対中政策にならうことが多い。バイデン政権は、安全保障担当の大統領補佐官が経済政策にまで強い
指導力を行使していると言われている。米国の外交にそのままならってしまうと、日本は経済的悪影響を大きく受けてしまう。本来、日本から中
国向けの約8割は経済安保と関係ない品目だから、そちらを伸ばすことはできる。中国側にも問題はある。処理水放出の問題で日本からの水産
品輸入を止めている。岸田政権は、そうした外交面での摩擦を我慢強く改善しながら、輸出など経済分野での中国との交流を活発化していくこと
が望まれる。
日本の対中輸出は19兆円、日本の中国現地企業の売上高は60兆円もある。オーストラリアは、経済と安全保障を分離する方針を採り、一時
期は最悪だった中国との関係を見直し始めた。中国側も経済的威圧がたたって、国内への直接投資が急減して困っている。振り上げたこぶしを
下ろしたくても下ろせないという事情がある。
成長のためのチャネル作り
ここまでの説明で、コロナ後の日本がなぜインフレに悩まされているかがわかったと思う。内外物価格差が1.47倍もあるのだから、輸入価格が
国内価格を押し上げる。これを是正するには日銀のマイナス金利を見直して、緩和の行き過ぎを修正するのが望ましい。是正と言っても強烈な
利上げでなくてもよい。もしも1.47倍の格差を為替レートだけで行うとすれば、1ドルを150円から102円にしなくてはいけない。それは暴論だろう。
日銀短観の23年9月調査では、23年度の想定為替レートは1ドル=135円である。その水準まで円安が修正されるだけで、輸入物価の価格差は
約10%改善する。24年春に日銀がマイナス金利解除をすれば、ドル円は135円近くまで円高になり、食料品やエネルギーに対する上昇圧力は随
分と解消するはずだ。
日銀の超緩和の是正を行ってもまだ十分に内外価格差があるのだから、輸出拡大を促進することはできる。すでに海外展開をしている日本企
業は、現地生産・現地販売に重点を置き、輸出拡大を目指すことはしにくい。だから、日本の地方にある中堅・中小企業が、新たに海外向けの販
路を開拓することが有望だ。地方には海外展開をサポートできそうな金融機関がある。過去、海外支店を持った先も少なくない。そうした金融機
関が、海外業務を経験した人材を使って、もっと積極的に中堅・中小企業の海外展開を後押しできる。現在は、従来よりも越境電子商取引(EC)
を通じて製品・サービスを海外と取引できるようになった。訪日外国人の消費が急増していることで、多くの地場企業が海外市場でもっと自社製
品を売れるのではないかと気付き始めている。インバウンド消費をきっかけにして、自らのビジネスチャンスに気付き、EC取引を手掛けることがで
きれば、地方経済にも多大な恩恵が及ぶ。
筆者はここ数年の内外物価格差がインフレ要因になっていると考えるので、その物価格差を利用して国内の経済のパイを拡大することで賃金
をもっと増やせるとみている。単に実質賃金がマイナスであることを問題視しても何の解決にもならないので、もっと戦略的に物価を押し下げつつ
、賃金をどう上げていくのかを考えていく必要がある。決して選挙のアピールにはなりそうにないが、岸田政権は円安メリットを追求する作戦を立
てることが大切だ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333120
総裁は7日の参院財政金融委員会で、今後の金融政策運営への抱負を問われ、こう答弁した。
「年末から来年にかけて一段とチャレンジング(挑戦的)な状況になると思っている」
「挑戦的」とは、マイナス金利や長短金利操作といった金融緩和策の「出口」に向かうことを意味しているとみられる。
「『来年』ではなく『年末から来年にかけて』との発言から、市場では早期に緩和を修正するのでは、との観測が広がっています。12月18~19日か
来年1月22~23日の金融政策決定会合で修正が行われるとの見方が出ています」(市場関係者)
植田発言を受け、長期金利は上昇。日米金利差が縮小し、円相場は約4カ月ぶりに1ドル=141円台を付けた。
6日の大分市の講演では、氷見野良三副総裁が「出口を良い結果につなげることは十分可能だ」と発言。緩和修正による経済への悪影響は比
較的少ないとの見方を示した。出口への地ならしに聞こえる。
なぜ、ここへ来て日銀は突然、出口に前向きな姿勢を示し始めたのか。
「植田総裁が緩和の出口に向かうにあたり、最大の障壁はアベノミクス推進の安倍派でした。しかし、いま安倍派は、検察やメディアから、パーテ
ィー券の裏金疑惑のターゲットにされ、ガタガタです。日銀を牽制する余裕はありません。植田総裁はその間隙を縫って、出口に向けカジを切り始
めたとの見方があります」(金融関係者)
裏金疑惑が日銀の金融政策に影響を与えているとすれば衝撃だ。金融ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。
「中央銀行は政治の影響を強く受けます。政権内の勢力の変化で金融政策がやりやすくなったり、やりにくくなることはあることです。安倍派との
関係で日銀が動きやすくなった面は少なからずあると思います。いずれにせよ、金融政策が正常化されれば、円安にブレーキがかかり、輸入物
価の上昇は落ち着くはず。国民生活にとってはプラス面が多いでしょう」
植田は7日、岸田首相と面談。出口の話題は出なかったとした。裏金捜査が大詰めの「年末から来年にかけて」が、脱アベノミクスの好機だ。
https://www.sankei.com/article/20231212-TVES25C7DFJPLJT4VHF3462BWY/
自動車保険の保険金不正請求問題に端を発した経営危機が続く中古車販売大手ビッグモーター(BM、東京)に対し、取引銀行団が計300億
円のつなぎ融資を行う方針であることが12日、分かった。社会的な信用が低下したBMへの融資はリスクを伴うが、伊藤忠商事など3社が再建
支援を検討中で、破綻回避を優先し資金繰りを支える必要があると判断した。
主力行の三井住友銀行が実行する方針を固め、みずほ銀行などが参加を検討中。伊藤忠などが検討中の再建支援は、可否の判断が来春に
なる見通しだ。支援交渉が不調に終われば、融資の回収が困難になる恐れがあるため、銀行団はBMの不動産や売掛金など十分な担保を取る
方針だ。
2023/12/13 日本経済新聞 朝刊
米独立系証券のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループは資本提携する三井住友フィナンシャルグループ(FG)との協業を米国以外にも広げる。
ブライアン・フリードマン社長が日本経済新聞の取材に「協力関係を北米に次いで欧州や中東、アジア・太平洋地域に拡大する」と話した。
三井住友FGは2021年にジェフリーズと資本業務提携を結び、5%弱を出資した。23年4月には25年までに議決権を持たない優先株を追加取
得し、持ち分を最大15%まで引き上げることも発表。米国で共同の営業体制を構築した。
ジェフリーズは23年までの4年間にアジア太平洋地域の管理職を3倍に増やした。インドではM&A(合併・買収)のチームを立ち上げた。フリード
マン氏は「今後2~3年で活動のレベルをさらに高める」と話した。
フリードマン氏は注目する市場に日本株市場を挙げた。日本企業が自己資本利益率(ROE)を高めるための再編に動くとの見方を示し「日本の株
式市場がパフォーマンスを上げることは間違いない」と指摘した。
2023/12/13 日本経済新聞 朝刊
中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の経営再建をめぐり、主力行の三井住友銀行は300億円のつなぎ融資を実行する方向で調整
している。12月中旬にも実行する方針だ。ビッグモーターの買収を検討している伊藤忠商事などが支援を決めるまでの資金繰りを支え、経営破綻
を回避する狙いがある。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)は2024年春までに買収の可否について検討
を進めている。
融資は三井住友銀行が単独で300億円を実行する方向だ。返済の期限は24年4月末とする。三井住友銀行はビッグモーターの保有不動産な
どを担保として確保する方針で、三菱UFJ銀行やみずほ銀行の同意を得るための調整を続けている。
自動車保険金の水増し請求が横行していたビッグモーターは顧客離れから資金繰りが逼迫している。年内にも手元資金が枯渇するとの見方もあ
り、運転資金の確保が課題になっていた。
2023/12/12 18:30 日経速報ニュース
米独立系証券のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループは資本提携する三井住友フィナンシャルグループ(FG)との協業を米国以外にも広げる。
ブライアン・フリードマン社長が日本経済新聞の取材に「協力関係を北米に次いで欧州や中東、アジア・太平洋地域に拡大する」と話した。
三井住友FGは2021年にジェフリーズと資本業務提携を結び、5%弱を出資した。23年4月には25年までに議決権を持たない優先株を追加取得し
、持ち分を最大15%まで引き上げることも発表。米国で共同の営業体制を構築した。
ジェフリーズは23年までの4年間にアジア太平洋地域の管理職を3倍に増やした。インドではM&A(合併・買収)のチームを立ち上げた。フリード
マン氏は「今後2?3年で活動のレベルをさらに高める」と話した。
フリードマン氏は注目する市場に日本株市場を挙げた。日本企業が自己資本利益率(ROE)を高めるための再編に動くとの見方を示し「日本の株
式市場がパフォーマンスを上げることは間違いない」と指摘した。
欧州経済はロシアによるウクライナ侵攻など課題を抱えるが、フリードマン氏は「欧州経済と市場は回復力を維持している。欧州のグローバル企
業が今後も成長し続けると信じている」と語った。
三井住友FGによる出資比率を将来さらに高める考えはあるかとの問いには「ジェフリーズとしてはビジネスの機会獲得のためだけにさらなる資本
を必要としている状況ではない」と述べるにとどめた。
ジェフリーズとの資本提携を決めた太田純前社長は11月25日に死去した。フリードマン氏は「太田氏はSMBCが世界のリーディングバンクのひと
つになるという明確なビジョンを持っており、そのために組織全体を引き上げ、拡大していく使命を担っていた」と故人を悼んだ。「中島達新社長を支
援し、SMBCとジェフリーズに最大の成長と成功をもたらす」と話した。
2023/12/15 日本経済新聞 朝刊
米銀がドル決済を中心とする資金管理サービスで日本市場で攻勢をかける。日本の金融機関との取引が多かったJPモルガン・チェースは
海外口座の残高照会や資金融通を迅速にできるシステムで大手の事業会社も本格的に開拓する。邦銀に外貨決済を委託していた日本の
企業が外銀に乗り換える動きもあり、3メガバンクはサービスの拡充に動く。
トランザクションバンキングと呼ばれる資金管理・決済ビジネスは企業活動のグローバル化で成長が見込める。調査会社のグランドビューリ
サーチは、企業の資金を一元的に管理するキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)の市場規模が2020~27年に年平均12.6%伸び、
27年に253億ドル(約3兆6000億円)超になると試算する。
JPモルガンで決済事業部門のトップを務めるタキス・ゲオルガコプロス氏は日本経済新聞の取材で「(日本の)大手の多国籍企業と取引を
拡大し、世界進出を支援したい」と語った。JPモルガンは日本でのドル決済の2~3割程度を担うとされる。これまで地方銀行など金融機関向
けの国際送金仲介事業が中心だったが、CMSで商社やメーカーなど事業会社との取引拡大をめざす。
CMSを使う企業はお金が余っている子会社から足りない子会社に送金したり、余った資金を運用に回したりする。基軸通貨ドルの取り扱い
が多く、幅広い外貨をそろえる米シティグループやJPモルガンなどが伝統的に強い。米ドルの国際送金なら同じ米銀内での資金移動で済む
ため、即日決済が可能な場合が多い。
邦銀は決済スピードで劣る。企業が子会社間の送金で豪ドルを動かす場合、邦銀のシステムを使う企業は前日までに銀行へ通知しておく
必要がある。邦銀はドルなど外貨調達に制約があり、リアルタイムで外貨で調達したい企業に応じるのは難しい。ある邦銀の営業担当者は
「企業向けにドル建てで融資できる金額には厳しい上限が課されている」と明かす。
現状では送金の受付時間やリアルタイムの残高把握で米銀のサービスに軍配が上がる。邦銀に外貨決済を委託していた財閥系企業が外
銀に乗り換えた例もある。米銀を利用する商社の担当者は「子会社への資金融通などお金の管理には米銀のCMSが必須だ」と話す。
米銀は欧州や南米でも攻勢を強めている。JPモルガンのトランザクションバンキング事業の世界シェアは足元で9%と5年前の2倍に増え
た。金利上昇で投資銀行部門が落ち込んでいるのとは対照的に、安定して収益を伸ばしている。
米銀は国内外の金利が上がる局面を日本企業との取引を増やす好機とみている。4月には米ゴールドマン・サックスがトランザクションバン
キングで日本市場に参入した。メガバンクの幹部は「米銀があまり目をかけてこなかった企業にもアプローチしている」と警戒する。
邦銀はサービスの拡充を急ぐ。みずほフィナンシャルグループ(FG)はアジア向けサービスに力をいれる。22年に英スタンダードチャーター
ド出身者をアジア・太平洋地域のトランザクションバンキング事業の責任者にした。アジアでは同分野の人員を数年で2割増やした。
邦銀で外貨決済に強い三菱UFJ銀行はCMSを中期経営計画の重点領域としている。グローバル送金システムで画面などの操作性を改
善する投資を続ける。
三井住友銀行は25年度から順次稼働する次期勘定系システムで国際送金の対応時間を延長する方針だ。従来は前営業日午後6時まで
だった。幹部は「時差があるため海外送金は夜間対応してほしいという要望があった」と話す。23年には請求から決済、入金確認まで一貫で
できるサービスを始め、中堅・中小企業の決済需要を開拓している。
資金決済に詳しい麗沢大学の中島真志教授は「外銀は高品質なCMSで高い料金をもらい、それを原資にさらにシステム投資をしている。
邦銀は外銀に比べてトランザクションバンキング部門の行内での位置づけが低く、ニーズがあるのに対応できていなかった」と分析する。邦銀
が劣勢なのはドル確保の問題だけでなく、システム投資を怠ってきた側面もある。
2023/12/19 12:28 日経速報ニュース
日銀は19日に開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めた。マイナス金利政策の解除は見送り、長短金利操作(イールド
カーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)買い入れといった措置も現状のまま維持した。物価、賃上げの動向をさらに見極める必要が
あると判断した。
植田和男総裁は19日午後に記者会見し、決定内容を説明する。
日銀は公表文で、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用するほか、長期金利の上限のめどを1%とする現行
の大規模緩和策を維持する方針を示した。
国内景気の現状については「企業収益や業況感は改善している。設備投資は緩やかな増加傾向にある」との見方を示した。雇用・所得環境も
緩やかに改善し、個人消費も物価高の影響はあるものの緩やかに増加しているとした。
足元の物価状況は「プラス幅を縮小しているものの、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から足元は3%程度となっている」とし、予
想インフレ率も緩やかに上昇しているとした。
ただ今後のリスク要因について「海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、我が国経済を巡る不確実性はき
わめて高い」と指摘した。マイナス金利解除の前提となる賃金・物価の好循環の見極めにはなお時間が必要と判断したとみられる。
今後の政策修正のカギを握るのが賃上げだ。24年の春季労使交渉を前に複数の企業が賃上げを表明した。
今会合での解除は見送ったが、市場では24年前半にも金融政策を正常化するとの観測が広がる。氷見野良三副総裁は6日の講演で、金融
緩和からの出口が家計や企業へ与える影響を前向きに評価した。7日には植田総裁が国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングに
なる」と発言したことも正常化への思惑に拍車をかけた。
午後の記者会見では植田総裁が金融政策の先行きにどう言及するかも焦点となる。マイナス金利解除をサプライズで実施すれば、経済全体
に混乱を招く可能性がある。米欧の主要中銀も利上げ局面の開始前には、事前に予告している。
【関連記事】
・日銀、物価・賃上げの持続力見極め 19日に植田総裁会見
・大規模金融緩和「できるだけ早く正常化を」 経団連会長
https://news.yahoo.co.jp/articles/5e3c05062a0f5b918cc5b17dd33f5a94d4c3a2d6
日銀は19日の金融政策決定会合で大規模金融緩和を維持することを全員一致で決めた。植田総裁は7日の国会で「年末から来年にかけて
一段とチャレンジングになる」と答弁。年末の今回、緩和を修正するとの観測も一部あったが、大方の見方通り、現状維持となった。
維新の会にも裏金疑惑…売り上げ「8200万円」が消えた? 刑事告発の過去に注目集まる
■日銀内では早期修正に慎重論
会合は来年1、3、4、6月と続く。市場ではマイナス金利の解除時期が焦点となっている。QUICKと日経ヴェリタスが市場関係者74人に実施した
12月調査(11~13日実施)によると、解除時期は1~3月が36%、4~6月が43%で約8割が6月までに解除に踏み切るとみている。しかし、解除
は遠くないとの観測は、市場の過剰反応である可能性がある。日銀内ではマイナス金利の解除について、慎重な見方が強まっているという。
「国民がマイナス金利などの金融緩和を批判するのは、円安・物価高を招いているからです。ところが、FRB(米連邦準備制度理事会)は今月13
日の会合で来年の利下げ回数の想定を従来の2回から3回に拡大しました。来年は円高トレンドが見込まれ、日銀が緩和を修正しなくても、過度
な円安は収まり、少しは物価高も落ち着く見通しが出てきた。内田副総裁は緩和による副作用の懸念は大したことがないとの立場。わざわざ、
金融を引き締めて、賃上げムードに水を差す必要性は乏しいとの見方は日銀内で少なくないようです」(金融関係者)
植田総裁も19日の会見で「焦って政策変更するような考え方は不適切だ」と早期修正論にクギを刺した。
こうした日銀内の変化に頭を抱えているのが岸田首相だ。岸田首相はマイナス金利解除のタイミングで、政府・日銀共同の「デフレ脱却宣言」
を打ち出す構想を描いているとされる。すべてがうまくいかない政権が“デフレ脱却”を反転攻勢のきっかけにしようということだが、金融政策の
早期修正が遠のけば、そうはいかなくなる。
「安倍政権ベッタリの黒田前総裁と違い、植田総裁は政治的配慮をするような人ではありません。岸田首相が困っているからと、金融政策を歪
めることは考えにくい」(日銀関係者)
植田総裁は「チャレンジング」発言について、「一段と気を引き締めて、というつもりだった」と説明。学者出身の総裁が気を引き締めれば、岸田
首相への配慮など、ますます期待できない。岸田首相の「デフレ脱却宣言」構想もうまくいかなそうだ。
2023/12/20 14:00 日経速報ニュース
2023年最後の日銀の金融政策決定会合から一夜明けた20日。東京外国為替市場で円相場は1ドル=143円台後半を中心に、前日17時時点
よりも円高・ドル安の水準で推移している。日銀がマイナス金利政策を早期に解除するとの観測は後退したが、もともと市場で多かった来春(3月
か4月)解除の「本命予想」に戻っただけともいえる。きたる24年に向けては、マイナス金利を解除した後の利上げの開始時期とそのペースに市場
の関心が移りそうだ。
日銀は19日の会合で大規模金融緩和の維持を決めた。市場で警戒されていた金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)の修正やマイナス
金利の解除に向けた予告めいた発信はなく、会合前までに高まっていた来年1月など早期のマイナス金利の解除観測は下火になった。記者会見
した植田和男総裁は、賃金動向を注視する姿勢を強調し、賃金と物価の好循環が強まっていくかを「なお見極める必要がある」として、政策修正を
急ぐ様子は見せなかった。
19日の一連の動き自体は「サプライズ」であり、円が会合結果の公表前の142円台前半から144円台後半まで急落する引き金になった。だが冷
静に考えれば、市場ではかねて来年の春季労使交渉(春闘)の結果を大方見極めた後の3月か4月にマイナス金利を解除するとの予想が支配的
だった。日銀会合を終え、当初の予想に再び落ち着いたにすぎない。
こうした空気を映し、円は徐々に底堅くなっている。20日の東京市場で円は144円09銭近辺まで伸び悩んだものの、下落に転じることはなかった。
「米連邦準備理事会(FRB)の来年の利下げ観測から主要通貨に対するドル売り圧力が強いほか、日銀のマイナス金利解除観測が健在」(ソニー
フィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリスト)という。
マイナス金利解除までの距離感は徐々に固まってきた。その後はどうなるだろうか。市場では日銀が利上げを開始した後のペースを予測しようと
する動きも出始めている。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、来年の円相場の最大の注目点は日銀の金融政策に尽きると断言する。そのうえで「マイナス金利の
解除は正常化の終わりではなく始まりだ」とその道のりの長さを推し量った。
武田氏の見方はこうだ。2%のインフレが実現しているのであれば、中立的な短期政策金利は2%で、これを下回る状態では金融緩和が続いて
いることを意味する。2%のインフレが本当に継続するなら、景気の過熱を抑えるためにもマイナス金利の解除だけで終わりではないはずだ。当然
金利を一気に引き上げていくことは予想していないが、市場情勢を確認しつつ、日銀が金利をどういうペースで引き上げていくかは来年重要なポイ
ントになってくる――。正常化の着地点はまだだいぶ先にあるというわけだ。
「前のめり気味に市場の期待値が変化する可能性は否定できない」。こう話すのはSMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストだ。奥村
氏は、日本で2%インフレの定着が強く見込めることが前提だとしたうえで、「来年の米国の利下げが1?2回で終了し、なお米経済の底堅さが続
けば、日銀が想定以上のペースで利上げするとの織り込みを市場が先回りして進めることはありうる」と語った。その場合、現在市場で織り込まれ
ているような今後2?3年で0.50?0.75%の利上げというシナリオは上方修正を迫られるだろうと指摘する。
前提条件は一筋縄ではいかないが、誰も予想できないような事態が起きない限りは来年が日銀の金融政策にとって大きな転換点になりそうだ。
伊藤忠総研の武田氏は「マイナス金利の解除で金融政策のステージは変わる。同時に長期金利の目標も撤廃し、上場投資信託(ETF)など質的
な資産買い入れについても抜本的に一新する」とも予測している。現実となれば、市場参加者が「屋上屋を架す」と皮肉ってきた日銀の複雑な政
策運営は転機を迎える。
日銀の前回の利上げは08年のリーマン・ショックよりも前の出来事だ。「低金利政策が長くなりすぎていて、金利のある世界を知らない人が増え
た。利上げをまだなかなか想像できていない雰囲気がある」(岡三証券の嶋野徹シニアエコノミスト)なかで、来年の金融政策を見通すのは容易で
はない。だが、市場参加者は何とかして金利ある世界を視界に入れようとしている。
2023/12/21 日本経済新聞
「鉄道銀行」の誕生で金融業界に地殻変動が起きている。京王電鉄グループが9月に国内の鉄道会社として初めて銀行サービスを始めたほか
JR東日本も参入する。いずれもネット銀行と組む。交通フィンテックとしての顔を持つ鉄道事業者と金融機関は共存しつつも、顧客の獲得競争は
熱を帯びる。
「人流に依存せず、長期的な顧客接点をつくるにはどうしたらよいか」。京王電鉄にとって転機は2020年以降の新型コロナウイルス流行だった。
テレワークの普及など生活スタイルの変化は行動制限解除後も残り、23年4~9月の輸送人員は19年同期を16%下回った。
22年に水面下で接触したのがネット銀行大手の住信SBIネット銀行だった。同行が強みとするのは、銀行機能を外部に提供するバンキング・ア
ズ・ア・サービス(BaaS)だ。預金や決済は日常的に顧客接点を持てるため、人流が減った穴を埋められると踏んだ。
両社が最初に接点を持ってからわずか1年半で「京王NEOBANK(ネオバンク)」を開始した。「京王ポイント」を手掛ける子会社が銀行代理業を
取得した。スマホアプリで預金や決済などを提供し、利用で京王ポイントがたまる。特に住宅ローンは最大12万ポイントで、京王不動産などを通じ
て買うとさらに1万ポイント付与する。
融資の資金は住信SBIが出すが、住宅ローンは「人流依存でないビジネス」として京王が力を入れる不動産業と相性が良い。住居からローンま
で一貫して提供し、沿線住民を獲得する。銀行サービスとの連携などで、24年度の不動産販売売上高を21年度比5割増やす計画だ。預金や決
済のデータを小売業などに活用する案もある。
JR東日本も24年春、預金や住宅ローンを提供する「JRE BANK」を始める。定期や「JREポイント」と銀行口座を組み合わせ、JR東の商業施
設などの利用頻度を高める。
子会社のビューカードが銀行代理業を取得し、楽天銀行がBaaSで銀行機能を提供する。最大の特徴はビューカードが駅構内に展開するATMで
引き出し手数料が無制限無料となる点だ。鉄道利用者を金融サービスに送客して差別化する。
ネット銀行は鉄道事業者の強い顧客基盤を通じて預金や融資を獲得できる。住信SBIの担当者は「個別の銀行のファンはなかなかいないが、鉄
道のファンはいる。地元密着のため(京王経由の預金は)粘着率が高い」と話す。
楽天銀行の永井啓之社長は「BaaSは数を追わず、銀行では持ち得ないユニークで強力な資産やノウハウを持つ企業と連携する」と話す。
住信SBIは日本航空にも銀行機能を提供するなど交通事業者の顧客基盤を取り込んでいる。BaaS事業の口座数を25年3月期に23年3月期
比4.3倍の350万超にする計画だ。将来は全体の利益の半分程度を稼ぐ事業にする青写真を描く。
銀行の支店を訪れる顧客が減る中、ATM網を持つJR東などの銀行サービス参入は既存銀行から顧客を奪う可能性があり、メガバンクも鉄道会
社を開拓する。三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友カードは、ANAホールディングスが5月に刷新した「ANAペイ」に決済基盤を提供
した。マイルをポイントのように決済で使い、経済圏構築を進める。
事業会社がBaaSで銀行サービスに参入する事例は米ゴールドマン・サックスと組んだ米アップルなどがあるが、鉄道会社は世界でも珍しい。民
間鉄道網が発達した日本ならではといえる。自前で銀行免許を取得するのは規制対応などのコストが大きく、資産も膨張する。BaaSを活用した銀
行代理業であれば身軽に参入できる。
国内市場は人口減少で、交通事業者も銀行も若年層を中心とする顧客獲得が課題だ。収益を多角化したい交通事業者と顧客基盤を得たい銀行
の利害が一致した形だが、住宅ローンを中心に個人向け金融は競争が激化する。サービスが乱立すれば消費者も混乱しやすく、思うような成果が
出るかは見通せない。
2023/12/22 日本経済新聞 朝刊
クレジットカードのタッチ決済で改札を通過できる鉄道やバスが増えている。首都圏では東急電鉄が実験的に導入し、大阪・関西万博に合わせ
阪急電鉄なども対応を予定する。鉄道事業者がSuicaなど交通系ICカードで長年築いてきたキャッシュレスの牙城を崩す可能性が出てきた。
「外国人観光客の増加でタクシー不足や渋滞が顕在化しており、利便性を高めて地下鉄の利用を促していきたい」。全線でクレカ決済を導入し
た福岡市地下鉄を運営する福岡市交通局の担当者は力を込める。利用率はまだ数%に過ぎないが、足元では訪日客だけでなく福岡県民の利
用も増加している。後払いというクレカの性質を生かして一日の運賃に640円の上限を設けたことなどが奏功した。
旗振り役の三井住友カードは米ビザやJCBなどと組み、2023年度末までに120の事業者でタッチ決済の導入をめざす。東急電鉄は8月に実
証実験を始め、東京地下鉄(東京メトロ)は24年度に実験を予定する。
裏側を支えるのは三井住友カードの公共交通向け決済プラットフォーム「stera transit(ステラ トランジット)」だ。クレカを改札にかざすだけで入
場できる。
交通事業者はカード利用の手数料を負担してでも、訪日客の混雑緩和や人件費削減に効果があるとみている。交通系ICは発行すればするほど
コストが発生するからだ。福岡市交通局によれば外国人観光客には3日程度の滞在中のみ交通系ICを使い、返却する人も多いという。そのたびに
1枚500円超の発行コストがかかるICカードが破棄されている。
各国の大都市では導入済みで、750の公共交通機関まで拡大している。14年にクレカのタッチ決済を導入したロンドンの地下鉄では、係員の
案内業務などのコストを約3割削減した。
ビザ・ワールドワイド・ジャパンのシータン・キトニー社長は「(交通系ICによる)既存の非接触決済が普及する日本では難しいかと思われていた
が、グローバルに標準化された決済手段の利便性が認識されている」と指摘する。
鉄道各社は新しいサービスを模索する。たとえば定期券の代替だ。先払いの定期券の代わりに、クレカで乗車してもらう。最初は正規運賃で精
算し、一定の回数から定期料金に切り替える方法が考えられる。移動データが正確に把握できるため、利用に応じた割引きも可能だ。
首都圏ではJR東日本と私鉄が複雑に乗り入れ、どこでも対応できるシステム構築にも時間を要する。クレカのタッチ決済を広げるには超えるべ
き課題が多い。
2023/12/26 05:00 日経速報ニュース
2024年1月の新しい少額投資非課税制度(NISA)開始が目前に迫る。生涯で利用できる非課税の投資枠が最大1800万円と現行の一般NISA
の3倍に拡大し、期間も無期限になる。幅広い世代の利用が期待される半面、金融機関側はむしろ顧客1人あたりの収益機会が減る可能性が
ある。各社は消耗戦が一段と激しくなると警戒を強めている。
NISA口座の変更手続きが始まった10月、純増を保っていたある3メガバンクの口座開設が純減に転じた。すでに口座を持つ個人投資家が10月
を待ち構えていたかのようにネット証券2強のSBI証券や楽天証券へ流れ始めたためだ。この銀行では12月に純増へ転じそうだというが、関係者
は「(顧客基盤の厚い銀行が)草刈り場になっている」と嘆く。
NISA口座は1人につき、1つの金融機関でしか口座を開設できない。受け皿となっているのがネット証券だ。長期投資を想定した「つみたてNIS
A」では200本前後の投資信託をそろえる。数本から数十本にとどまるメガバンクとは対照的だ。
日本証券業協会によると、つみたてNISAの口座数は23年9月末時点で623万と1年間で34%増えた。口座開設者のうち投資未経験者が占め
る割合は上昇し続け、23年9月末では91%にのぼる。SBI証券に口座を開いた大学生(20)は「周りも始めているし、そろそろ始めないとまずいと
思った」と話す。
非課税の優遇措置がない一般の証券口座の開設も急増している。SBI証券では23年3月に1999年のサービス開始以降、初めて1000万口座を
突破したが、そこから半年間でさらに100万口座が積み上がった。年換算では直近3年間の開設ペースを約2割上回る。SBI証券の担当者は「想
定を上回るスピードで口座数が増えている」と話す。
金融機関にとって追い風ばかりではない。むしろ新NISAで各社は体力を削られ、淘汰が進むとの見方が強い。ネット証券の大手各社は初心
者の心理的ハードルを下げるため、NISA口座の売買手数料を無料にしており、新NISAでも無料を維持する。手数料を徴収すればサービスの改
悪とみなされ、顧客が他社に流れてしまうためだ。ネット証券首脳は「いつまでたっても『稼げる顧客』にはならない」とこぼす。
新NISAに伴い、システム更新の費用は少なくとも数億円規模で発生する。口座数の増加に合わせてコールセンターなどの人員も増やす必要
があるため「豊作貧乏になりかねない」(別のネット証券幹部)。信用取引や外国為替証拠金(FX)取引など、株や投資信託以外のサービスでど
れだけ補えるかの勝負になっている。
こうした状況を踏まえ、大手をはじめ対面証券はNISAをきっかけとする初心者の囲い込み競争とは距離を置く。大手証券の首脳は「初心者は
『株って何?』『何を買えばいいの?』と聞いてくる。そんな人には正直なところ、来店してほしくない」とこぼす。
野村ホールディングスでは23年度に富裕層顧客への人員配置を大幅に拡充した。24年4月には個人向け部門の名称を「営業部門」から、主
に富裕層が持つ資産の総合管理サービスを指す「ウェルス・マネジメント部門」に変更する。
新NISAは政府が掲げる資産運用立国に向けた政策の柱だ。投資の裾野は広がり始めたが、およそ2000兆円にのぼる家計の金融資産のうち
1000兆円はほぼゼロ金利の預貯金だ。国内で長期投資を根付かせるには、個人の資産形成を支える金融機関が持続的に稼げる収益構造の
構築も求められる。
2023/12/27 05:00 日経速報ニュース
「資産運用ビジネス強化策について検討頂きたい」。今から2カ月前の2023年10月、金融庁が大手銀行に出した1通の要請文は、監督当局が
出す行政文書としてはかなり趣が違っていた。
【新NISA 始動前夜】新NISA「1人1口座」で消耗戦 メガバンクが草刈り場
通常は金融庁への報告で済むが、今回は「可能な限り来年(24年)1月末までにグループとして対外発信」するよう求めた。しかも「グループに
おける経営戦略上の位置づけ」「人材育成を含む運用力向上の方針」「ガバナンス改善・体制強化」の3点を条件に付けた。
ビジネスモデルや人事に口を挟む細かい内容に、受け取ったメガバンク関係者は「こんな要請文は初めて」と戸惑った。
政府は23年12月に「資産運用立国実現プラン」をまとめた。24年1月からは非課税措置を拡大した新しい少額投資非課税制度(NISA)が始ま
る。「貯蓄から投資へ」を実現するには貯蓄大国の看板返上は欠かせない。金融庁が異例の行政文書を出したのは大手銀行の意識を改革する
必要があったためだ。
政府が初めて「貯蓄から投資へ」を政策に掲げたのは2001年。三井住友信託銀行の調べによると、当時7.7%(評価損益除き)だった個人の投
資率は23年9月末には13.7%までほぼ倍増した。
貯蓄率は同じ期間、53.9%から52.5%へ1.4ポイント程度しか低下せず、ほぼ横ばいだ。金融庁のある幹部は「50%を超えるのは異常。30?40
%になるのが日本の姿ではないか」とした上で「銀行が動かなければ実現できない水準だ」と語る。
デフレが長く続き、預金に置いていても価値は目減りしなかった。日本の不良債権問題やリーマン・ショックのような金融危機が発生しても、銀
行も預金者も公的資金で守られてきた。ゼロ金利時代の預金は収益化が難しかった。その結果、銀行への預金集中が進んだ面は否めない。
インフレ時代が到来し、日銀が金融政策を正常化しても預金離れが起きるかは見通せない。金利のある世界に戻れば、預金量が収益に比例
するため、大手銀行は預金調達強化へ走り始めたからだ。23年に入って、3メガバンクは預金集めを強化していることを金融庁に伝えていた。金
融庁が異例の要請文を出したのは、預金回帰へのメガバンクの動きと無縁ではない。
ただ、注目すべき動きを始めた大手銀行がある。三井住友信託銀行だ。24年春にも発売する予定の「元本補?付き信託商品」は地殻変動を促
す可能性を秘める。
大山一也社長は「厳密に言えば法令上異なる存在だが、令和版の貸付信託を復活させる意味合いがある」と解説する。貸付信託とは高度成長
期に人気を博した信託商品で、預金の競合商品だった。
最大のポイントは集めた資金を特定の産業に供給する産業金融を意識している点だ。今回はサステナブルファイナンスに資金を振り向けること
を想定し、経済成長を促すリスクマネーとして活用しようという思惑がある。
商品名が示すように、万が一、金融機関が破綻しても元本が保証される点で預金と同じだ。貸付信託の復活は「貯蓄から投資へ」の政策が金
融構造改革と結びつく意味で興味深い。
01年に出した「証券市場の構造改革プログラム」の狙いは間接金融から直接金融への転換を促し、当時、問題になっていた不良債権問題の
再発防止だった。間接金融中心の金融構造が多額の不良債権を生み出した遠因と考え、解決策として直接金融拡大を狙った。
現実は逆コースを歩んでしまう。強固な信用力を誇るメガバンクが誕生し、貯蓄大国の土台を強固にしてしまう。金融庁が銀行に証券業務を段
階的に解禁し、窓口で投資商品を販売できるよう手当てしたものの、仕組み債など高リスク商品の販売に走る銀行もあり、逆に投資へのアレル
ギーを醸成してしまった面は否定できない。
今年4月、岸田文雄首相が金融庁に資産運用立国プランの策定を求めた指示書に幻の一節がある。「メガバンクの改革」。銀行ビジネスにメス
を入れなければ、真の「貯蓄から投資へ」は実現しない。木原誠二元官房副長官が集めた私的勉強会「金融問題研究会」も5月に「本邦金融機関経営に関する5つの提言」をまとめており、お蔵入りになったメガバンク改革が再び脚光を浴びないとも限らない。
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2023/12/28 05:00 日経速報ニュース
「我々の運用力は世界でも十分に戦える。今後はさらに磨いていこう」。2024年1月から新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まるのを前に、
三井住友DSアセットマネジメントの荻原亘運用部門長は社員を鼓舞する。政府が掲げる資産運用立国の担い手として、運用力向上を目指す決意
を共有する。
【新NISA 始動前夜】
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政府は13日、資産運用立国実現プランをまとめた。真っ先に課題として指摘したのが、運用力の向上やガバナンス体制の強化だ。
メガバンク、証券、保険会社系の運用大手は成績低迷に危機感を強めている。三菱アセット・ブレインズが算出する運用会社別の運用リターン
ランキングでは、外資や独立系が上位を独占。日系大手では最上位のニッセイアセットマネジメントが25位で、野村アセットマネジメントや大和ア
セットマネジメントなどは業界平均を下回る。
23年1?11月までのインデックス型の株式・債券ファンドの純資金流入額では、三菱UFJアセットマネジメントに次いでSBIアセットマネジメントと
楽天投信投資顧問がランクイン。運用成績でもそれぞれ9位と7位で大手運用会社を上回った。
両社の強みは圧倒的な価格競争力だ。SBIアセットは手数料を低コスト投信並みに抑えたアクティブファンドを12月に設定し、残高は設定から
10営業日ほどで100億円を突破した。楽天投信は10月末に世界株と米国株に投資する2つのファンドを設定。信託報酬はどちらも業界最低水準
とした。
大手が700?1000人程度の従業員を抱える一方で、SBIアセットや楽天投信の従業員数は数十人程度。1000万口座を有するグループ内の
ネット証券が強力な販売網を抱え、営業費用も大手と比較して少ない。SBIグローバルアセットマネジメントの朝倉智也社長は「損益分岐点は
大手運用会社よりはるかに低い」と話す。
優勝劣敗が鮮明になっており、運用大手は巻き返しに動き始めた。三井住友DSアセットマネジメントは成長性のある銘柄に選別投資するアク
ティブ運用で勝負する考えだ。自己資金を投入する試験ファンドの運用を通して運用技術の開発に取り組む。外部の金融機関に委託することが
多い高利回り債券などの運用手法を研究し、その知見を活用する。自己資金の投入額は22年3月末の約140億円から24年4月末には約270億
円まで拡大する見通しだ。
金融機関系の運用会社に所属するサラリーマン・ファンドマネジャーは、とがった運用ができないと指摘されて久しい。運用各社は採用や人事
評価体制の改革を進めている。ニッセイアセットマネジメントは24年度から新卒採用に運用専門コースを設ける。大手運用会社に内定が決まった
理系学生は「企業選びの際には専門採用の有無も考慮した」と話す。
政府が掲げる資産運用立国の実現には、預貯金に眠る家計の金融資産を投資に回す必要がある。日本の個人からも世界からも投資される国
になるためには、成長企業を発掘し資金を供給する運用会社の目利き力向上が欠かせない。
2023/12/28 09:47 日経速報ニュース
(9時20分、プライム、コード8306)三菱UFJが小幅に反落している。前日比10円(0.82%)安の1199円50銭を付けた。前日のニューヨーク市場で
米長期金利が一時3.78%と7月以来ほぼ5カ月ぶりの低水準を付けた。金利低下による利ざやや運用収益の縮小を懸念した売りが優勢となった。
第一生命経済研究所の藤代宏一主席エコノミストは「世界的な金利上昇局面が一服したことで銀行株への追い風が弱まっている」との見方を示
す。一方、日銀の政策修正期待や低PBR(株価純資産倍率)の是正期待は一定の支援材料になっているとみられ、下値では買いも入っている。
きょうの取引終了後にかけては東証株価指数(TOPIX)のリバランスに伴う売りが出るもようだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-27/S61O7IT1UM0W00
銀行以外の金融株を選好、欧米証券ストラテジストと対照的見方
不動産や鉄道、中型バリュー株も狙い目-マンGLGのバッジャー氏
日本銀行の超金融緩和政策の終了が近づいている兆しが見える中、一部のヘッジファンドマネジャーとストラテジストの間で日本の銀行株の
運命を巡り意見が割れている。
relates to ヘッジファンドの英マンが邦銀株敬遠、日銀修正後の見方で市場は二分
ヘッジファンド運用会社の英マン・グループ傘下のファンド、マンGLGは日銀が今後金融引き締めに動くメリットを日本の銀行株は既に織り
込んだと判断し、投資を減らす一方、インフレの恩恵が及びそうな銀行を除く金融株や不動産株、鉄道株に関心を移している。
英国に拠点を置くマンGLGのポートフォリオマネジャー、エミリー・バッジャー氏はブルームバーグのインタビューで岸田文雄首相による資
産運用強化の取り組みは銀行以外の金融企業を助けることになるだろうと語った。また、日本でのインフレの進行は土地や建物などの固定
資産を大量に保有する不動産株や鉄道株などにも利益をもたらすとの見方も示した。
バッジャー氏の見解は野村証券と一致し、日本の銀行株に強気な米ゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレーとは対照的
だ。後者は東証銀行業指数の年初来上昇率が最近の下落で30%以下に縮小した後、再び上昇に転じると予想している。
JPモルガン・チェースもデフレからの脱却や今後予想される金融政策の正常化、賃金上昇などを理由に日本の金融株をオーバーウエート
推奨しており、UBSグループも最近の株価調整後、銀行株は特に魅力的とみている。一方、野村証のチーフストラテジストは銀行株は既に
ピークアウトしたとし、世界経済のさらなる減速と債券利回りの低下が銀行の収益の重荷になるとの見方を示す。
バッジャー氏によると、今年日本株市場に回帰した海外投資家は以前からなじみがあり、流動性の高い銘柄を買ったため、大型バリュー
(割安)株のパフォーマンスを押し上げたという。そのため、中型バリュー株は魅力的な水準にとどまっている上、大型株よりもコーポレートガ
バナンス(企業統治)改革の恩恵を受けやすいとみて、同氏のチームでは投資に向けた「機会を狙っている」と語った。
バッジャー氏は「マンGLGジャパン・コアアルファ・エクイティー・ファンド」の共同運用者であり、ブルームバーグのデータによると、過去3年
間のリターンは約2倍で、同種ファンドの98%に対しアウトパフォームしている。保有上位銘柄は三菱地所、三菱UFJフィナンシャル・グループ
、パナソニックホールディングス。
2023/12/31 04:00 日経速報ニュース
「秋以降も中南米の年金基金などから新規の問い合わせが入ってきた」。BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストのもとには2023年春
以降、海外投資家からの面談の要請がひっきりなしに届く。
大納会を迎えた12月29日の東京株式市場で日経平均株価の終値は3万3464円だった。年間では28%の上昇となり、57%高だった13年の「
アベノミクス相場」以来の上昇率となった。
33年ぶりの高値に沸いた日本株市場を目にし「年金や政府系など中長期視点で投資先を探すファンドが本格的に『勉強』を始めている」(圷氏)。
こうした動きが24年の株価の一段の押し上げ要因となると予想する。
日経平均株価、4万円超え予想も
日経ヴェリタスが市場関係者を対象にしたアンケート(回答者は68人)で、24年の日経平均株価予想の高値平均は3万6971円、安値平均は3
万0599円だった。1989年12月29日につけた史上最高値(3万8915円)を更新するとの予想も2割あった。
原動力は企業の業績拡大を背景にした日本経済の「デフレ脱却」による成長期待だ。「値上げカルチャーの浸透による日本企業の利益率改善
がカギだ」と野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストはみる。定着すれば、日経平均は「11月に4万円の節目にのせる」と予想す
る。
「『じゃがりこ』は値上げ後もほぼ数量を落とさず、強いニーズを実感している」。カルビーの江原信社長は23年4?9月期を振り返った。6%の値上
げにもかかわらず、主力商品の「じゃがりこ」の販売は13%増加。全体でみても原材料・動力費高騰の46億円の減収要因に対して、価格改定効
果が91億円と大きく上回った。
24年3月期通期も増収増益を見込む。原材料費の圧迫は続くうえ、ポテトチップスのパッケージにRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会
議)の認証マークを表示するなど付加価値を向上させ「的確に価格に転嫁していく」(江原氏)方針だ。
値上げが受け入れられ始めたこともあり、東証プライム市場上場の24年3月期決算企業(親子上場の子会社などを除く)約1020社の純利益は
3年連続で過去最高となる見通しだ。
賃上げもデフレ脱却の確度を高め、相場を押し上げる。23年の春季労使交渉(春闘)で3.58%と30年ぶりの伸びとなった賃上げ率は、24年予想
が平均で3.94%に達した。「賃金上昇を伴う適度なインフレ経済への転換」(アイザワ証券の三井郁男ファンドマネージャー)で、政府による「デフ
レ脱却宣言」も視野に入る。
日銀・為替が焦点に
米国の利下げ観測も含め好材料がそろう中、「24年の日本株にとって最大の懸案は、日銀の政策変更とそれに伴う円高進行だ」(大和証券の
壁谷洋和エクイティ調査部長)。
値上げと賃上げの定着は大規模な金融緩和を堅持してきた日銀が引き締めに向かう条件を整えることになる。「賃金と物価の好循環が強まり
、2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現する確度が十分高まれば、金融政策の変更を検討していく」。日銀の植田和男総裁は12月25日、
経団連の会合で明言した。
日銀が24年に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃し、現在マイナス0.1%の短期金利をゼロ%以上に上げるとの予想は55%
にのぼる。うち8割が年前半の実施を見込む。
日銀が短期金利を24年中に0.1%以上にし、「金利ある世界」が戻るとの予想も4割を超える。「24年10月頃に0.3%程度まで引き上げられるので
はないか」(三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリスト)。トランプ政権復活に市場が身構える11月の米大統領選とともに、株価の重荷になる可
能性がある。
日経平均は23年、卯(う)年の相場格言「跳ねる」の通り高値をつけた。戦後6回あった辰(たつ)年の日経平均の年間騰落率は28%上昇と十二
支のなかで断トツだ。24年は「昇り竜」がごとく上昇気流相場を実現できるのか展望する。
2024年の株式相場はどうなるか。日経ヴェリタスが実施した市場関係者へのアンケートでは、力強い上昇相場が続くとの見方が大勢を占めた。
企業業績の改善や日本経済の「デフレ脱却」による成長期待、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ予想が背景にある。生成AI(人工知能)といっ
た技術の普及も、日経平均株価が史上最高値をうかがう原動力になる可能性がある。
市場関係者66人の24年の日経平均株価の予想によると、高値平均は3万6971円、安値平均は3万0599円だった。高値をつける時期は12月と
の予想が7割と最多だった。回答者の2割にあたる13人が1989年12月につけた史上最高値(3万8915円)を超えると予想した。
日経平均の上昇要因として企業業績の改善をあげる回答が最多だった。デフレからの脱却による、日本の景気拡大をあげる声も多かった。カギ
を握るのが春季労使交渉(春闘)における賃上げ率だ。
予想の平均は3.94%となった。23年の賃上げ率(3.58%)を超えるとの見方が大勢で、「4%以上」と回答した割合も5割近くにのぼった。SMBC信託
銀行の山口真弘投資調査部長は「春闘での賃上げに伴い、実質賃金の伸びがプラスに転じる。インフレが企業業績の改善につながる」とみる。
米利下げ観測も株高を後押し
さらに株高の要因になるのがFRBの利下げへのシフトだ。「米国の利上げ終結・利下げ開始は、グローバルなリスクオン要因になる」(東海東京
調査センターの長田清英チーフストラテジスト)。年前半にも利下げが始まるとの見方から、足元で米長期金利は4%を下回る水準まで低下してい
る。
いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は「金利が低下する中で米国の景況感が底堅く、ゴルディロックス(適温)環境が持続する」とし
て、日経平均は12月に3万9800円まで上昇するとみる。
注目の投資テーマはAI・防衛・DX…
物色面では利益成長期待が高いことから「グロース株優位」と予想した割合は62%と、23年調査に比べ約10ポイント増えた。23年は銀行などの
バリュー(割安)株の上昇が目立った。
「生成AIがもう一段盛り上がる」(りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジスト)との予想も見逃せない。注目の投資テーマでは8
割が「AI」と回答した。2位の「防衛」、3位の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を50ポイント以上引き離した。
23年はAI向け半導体をてがける米エヌビディアの株価が大幅に上昇したほか、東京市場でもアドバンテストやレーザーテックが大商いを見せた。
生成AI利用率は米国でも3割程度との調査もあり、市場拡大の余地は大きい。AI関連は24年でも引き続き「本命」テーマとなりそうだ。
米市場についても堅調な見通しが多い。ダウ工業株30種平均の高値予想の平均は3万9223ドル、安値は同3万3368ドル。ファイブスター投信
投資顧問の大木将充取締役運用部長は「米利下げがあれば、黙っていても米国株は上がる。米中摩擦の緩和が実現すれば、(さらに)株価上
昇が加速する」とみる。
「11月の大統領選の通過による不透明感の払拭などから、年末に向けて過去最高値の更新が期待される」(岡三証券の松本史雄チーフストラ
テジスト)との声もあった。
2024/01/01 04:00 日経速報ニュース
2024年の日銀の金融政策や対ドルで円相場の行方はどうなるか。日経ヴェリタスが実施した市場関係者へのアンケートでは、日銀が年前半
にもマイナス金利解除に踏み切るとの回答が最も多かった。米国は利下げ、日本は金融正常化により金利差が縮小することで、対ドルで円には
上昇圧力がかかりやすいとの見方が多かった。
「低インフレ環境を脱し、物価安定目標が実現していく確度は少しずつ高まってきている」。日銀の植田和男総裁は12月25日、経団連で講演し
た。近い将来の金融政策の修正を示唆する内容だが、金融市場で材料視する動きは限られた。
市場ではすでに、2024年中の短期金利の引き上げが確実視されている。日銀の政策修正の「次の一手」の予想は「長短金利操作(イールドカ
ーブ・コントロール、YCC)を撤廃しマイナス金利を解除」が55%でトップで、4?6月の実施が57%、1?3月が23%だった。
オフィスFUKAYAコンサルティングの深谷幸司代表は1月の金融政策決定会合での変更を予想する。「賃上げの状況もおおむね見えてきており
、デフレでないなら『普通の緩和』に移行すべきだ」。
「YCCを維持してマイナス金利を解除」も次点の36%。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「長期金利の急上昇を抑えるため
に一定の制限を残す可能性はある」とみる。ただし「YCCを形式上撤廃しても、日銀が保有する国債は5割を超えており国債市場を事実上コントロ
ールしている状況は変わらない」。
日銀が24年中に短期金利を0%からさらに引き上げるとの見方も4割にのぼる。ケイ・アセットの平野憲一代表は「物価と賃金の好循環が実現し、
年央には政府が『デフレ脱却宣言』を出す」との見方。「それに伴い金融政策も正常化され、年末にかけて短期金利を0.5%程度まで引き上げるの
ではないか」と予想する。
ただし日銀が引き締め方向の金融政策正常化を進められるかどうかは米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を含む世界経済の動向にも左右さ
れる。クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストはYCC撤廃や金融引き締めは25年にずれ込むとの見方だ。「グローバルに景気が
減速し市場がFRBの利下げを織り込むなか、円高による輸出の鈍化と内需を抑制しかねない金融引き締めに踏み切るのは常識的には考えにく
い」と分析する。
23年4月に就任した植田氏の評価も聞いた。「大いに評価する」(21%)、「やや評価する」(61%)を合計すると8割超が植田氏の仕事ぶりを前向
きにとらえた。「どちらともいえない」は13%、「あまり評価しない」は5%。「まったく評価しない」はゼロだった。市場とのコミュニケーションを評価す
る声が目立った。
伊藤忠総研の武田淳社長兼チーフエコノミストは「会見で質問に丁寧に回答し、政策運営の透明性が高まった」とする。丸紅経済研究所の今村
卓所長も「金融市場はもちろん、国会、経済界、社会に分かりやすく説明を尽くしている」と評価した。
為替、年後半にかけ円高へ
2024年の為替相場見通しでは、ゆるやかな円高・ドル安が進むとの予想が目立った。米国の利下げ転換のほか、米大統領選をめぐる不透明
感がドル売り要因になるとの見方がある。
高値予想では、市場関係者の4割が「1ドル=130?135円未満」と答え、最多だった。高値の平均は1ドル=131.6円、安値の平均が149.4円だ
った。円相場は11月に1ドル=151円台後半をつけた後、やや円高に持ち直した。高値が「130円未満」との回答も28%あり、円高方向の予想が比
較的目立つ結果になった。
「日米の金融政策の方向感の違いが出始める」(富国生命保険の野崎誠一有価証券部長)ことをあげる声が多い。アセットマネジメントOneの
清水毅調査グループ長は「米国は利下げ、日本は金融政策正常化を進めるため、年を通じて円高圧力がかかりやすい」と指摘する。
安値の時期の予想は1月が49%、高値をつける時期は12月(57%)が最多だった。「年後半に向けて円高進行」が市場のコンセンサスと言えそう
だ。
た後のリスクオフ」を理由として、12月に1ドル=130円までの円高を予想する。
「円相場は年後半(7?12月)に24年の安値をつける」との予想も2割あった。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「日銀は金融引
き締めを進めるがインフレ期待の上昇に利上げが追いつかず、実質金利の低下が円安要因になる」と予想。12月に再び1ドル=150円まで円安が
進むとみる。「米国の利下げは市場が織り込むほどハイペースで進まない」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長)との見方もあった。
岸田首相「秋に退陣」予想が48%
日本の政治の先行きに注目が集まっている。2023年12月に政治資金問題をきっかけに主要閣僚が次々に辞職し、政権運営への不信感が高
まった。アンケートの回答者の半分近くが24年中にも岸田文雄首相が退陣するとみており、相場への影響を注視する必要がありそうだ。
予想される国内政局について聞いたところ、「岸田首相が秋の自民党総裁選で敗北し、退陣する」との回答が48%にものぼった。日本経済新聞
社とテレビ東京が23年12月中旬に実施した調査で岸田内閣の支持率は26%と、「危険水域」とされる水準まで落ち込んでいる。
背景にあるのは「政治とカネ」をめぐる不信感だ。自民党内の最大派閥である安倍派(清和政策研究会)で政治資金問題が明らかになった。12
月には経済産業相を担っていた西村康稔氏ら主要な閣僚が相次いで辞職する事態となり、岸田内閣は厳しい批判にさらされている。
少数ながら市場関係者からは「『政治とカネ』問題の顕在化により24年初に岸田首相が退陣し、新総裁下で衆院解散を先延ばしにする」(インベ
ストメントLabの宇根尚秀代表)との予想もあった。
もっとも、内閣の退陣があったとしても株式市場へのマイナス影響は限定的との見方が多い。「岸田首相が秋の党総裁選で敗北し、退陣する
」と予想した回答者(30人)に株価への影響を聞いたところ、半数にあたる15人が「株価は上昇する」、43%にあたる13人が「株価に影響なし」と答
えた。
経験則では選挙があった場合に日本株は上昇しやすい。1979年以降の衆議院選挙において、投票日の20営業日前から投票日までの東証株
価指数(TOPIX)は15回中14回で上昇した(三菱UFJモルガン・スタンレー証券調べ)。大統領選を控える米国市場とあわせ、選挙のタイミングで
の相場変動には注目が必要となりそうだ。
期待する現政権の掲げる政策を聞いたところ、5割近くが「賃上げ促進・半導体投資などへの税制優遇」と回答した。米中関係や台湾をめぐる情
勢に緊張感が増すなか、「経済安全保障面から半導体産業の強化が焦眉の急」(三菱UFJアセットマネジメントの石金淳チーフファンドマネジャー)
との指摘がある。政策の後押しを受けて、市場で半導体関連株への注目が増す可能性もある。
2024/01/02 05:00 日経速報ニュース
万物は流転する。古代の哲学者が喝破したように、あらゆる存在が時の流れとともにその姿を変えていく。通貨も例外ではなく、米や布のような
現物からコイン、紙幣、さらにはデジタルへと変化してきた。変わりゆく通貨を飼いならすことができなければ、インフレなどの災禍を招きかねない。
新しいお札の発行を2024年7月に控え、通貨の現在地と未来を探る。
新札は日銀本支店でスタンバイ
「7月3日の発行日、どの支店に何時にどのくらい新しい紙幣を用意できるだろうか」。大手銀行の担当者は半年先の大イベントを控え、頭を抱え
る。
新紙幣は全国4カ所の工場で着々と製造され、日銀本店や地方支店に順次運ばれて発行日を待っている。金融機関は発行日以降に新紙幣を
受け取り、窓口やATMに運ぶ流れだ。紙幣の刷新は20年ぶりで、1万円札の「顔」が変わるのは40年ぶり。初日にどれだけの愛好家が店舗に並
ぶのか、他行より準備が遅れれば評判を落としかねないだけに検討課題は山積みだ。
日銀によると、新紙幣は3月末までに渋沢栄一が描かれた1万円札、津田梅子の5千円札、北里柴三郎の千円札の合計で45.3億枚を準備す
る計画だ。04年に現行の紙幣を発行した際には50億枚程度を用意した。今回も発行日までにさらに備蓄が進む予定で、日銀の金沢敏郎発券局
長は「前回と遜色ない水準」になると強調する。
デジタル技術の進展と矛盾するように紙幣の流通量は増えてきた。20年前は65兆円(65億枚)程度だった1万円札の流通量は23年11月に7割
増の112兆円分(112億枚)まで膨らんだ。経済規模の拡大に伴い流通量が一定程度増えるのは自然だが、この間名目GDP(国内総生産)は7%
しか伸びていない。ここまで拡大する背景には日本特有の事情がある。
超低金利で現金好きに拍車
日本は現金大国だ。国際決済銀行(BIS)によると、21年のGDP比の通貨流通量は日本が23.1%と突出する。ユーロ圏は12.8%、米国は9.2%と差
が開いている。日本のキャッシュレス決済比率は経済産業省の試算で22年時点で36%程度。10年前(15%)の倍以上と増えたが、5割前後の海外
主要国と比べると遅れが目立つ。
のため借金の意識を抱く人がいるといわれる。「使いすぎる心配が少ない」も上位だった。現金であれば財布からどのくらいお金が減ったかわかり
やすい。
日本はATMの台数が多く現金の利便性が保たれていることや、ニセ札が少なく通貨への信頼度が高いことなども挙げられる。治安がよいため、
現金を持ち歩くリスクも意識されにくい。その結果、政府が目指す将来のキャッシュレス決済比率(8割)は遠いというのが現状だ。
だが、これだけでは1万円札が100億枚も出回っていることを説明しきれない。専門家が指摘するのは、現金を自宅の金庫などで保管する「タン
ス預金」の存在だ。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「流通している現金のおよそ半分がタンス預金に回っている」と語る。日銀がマイナス金利政策を続けていることで預金の金利がほとんど付かず、銀行に預けるメリットが薄いことが一因だ。
タンス預金は動くのか
変わる兆しは出てきた。23年11月の1万円札の流通量は前年比ではほぼ横ばい。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「物価高で現金を保有
すれば価値が目減りしていくため、タンス預金を増やす動きは減るのではないか。株や投資信託、また金利が上がってくれば一部は預金に流れ
るだろう」と分析する。
遅れているとはいえ、キャッシュレスの進展は今後、流通量の伸びを抑制していくはずだ。日銀のアンケート調査では、半年前に比べて現金の
利用頻度が「減った」と答えた人が23年9月調査で4割になった。「まだ現金の流通量が減るほどではない」(日銀関係者)が、ようやく現金離れが
進み始めたのは確かだ。
市場では日銀が24年早期にもマイナス金利を解除するとの観測が広がっている。物価が持続的に上がり、預金や融資で金利が付く「金利のあ
る世界」が復活すれば、現金大国にとって転機となる可能性がある。
日本各地の13世紀後半から16世紀ごろの遺跡からは現在でも、つぼなどに入れられた大量の銭の出土が相次いでいる。銭不足のなか、銭の
価値が上がることを見越して蓄えられていたともされる中世のタンス預金のなれの果てだ。
天下の回り物であるはずのお金を眠らせていても何の価値も生まれない。死蔵されている現金を動かし、いかに経済を活性化させるか。「日本
資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一もそれを願っているはずだ。
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2024/01/03 05:00 日経速報ニュース
「すこぶる戦慄の至り」。1877年に西郷隆盛率いる鹿児島士族が起こした西南戦争の直後、のちに千円札の肖像画にもなる伊藤博文は盟友の
井上馨への手紙にこう書きつづった。次なる士族の反乱を心配したわけではない。当時の年間歳出の9割近くにも達した「征討費」が、発足まもな
い明治政府の財政と経済の重荷となることを恐れたためだ。
インフレが日銀を生み出す
その懸念の通り、金や銀と交換できない不換紙幣である政府紙幣の増発は深刻なインフレをもたらした。明治政府は増税や公債発行、歳出削
減で紙幣の流通量を抑えることを強いられる。価値が安定した兌換(だかん)紙幣の導入が急務となり、1882年に設立されたのが中央銀行であ
る日銀だ。
通貨は経済を活性化させて豊かさをもたらす一方、過剰に出回れば人々の生活を苦しめるインフレを引き起こす。政策金利などを通じて通貨
の供給量をコントロールし、物価を安定させる中央銀行が必要なのはそのためだ。好景気を望む政府の思惑に振り回されないように、現在では
独立性も認められている。
問題は、過剰な通貨がインフレを生み出した例があるとして、デフレに陥った際に通貨の供給を増やせば、インフレに転じるのかどうか。2013年
4月に日銀が始めた異次元緩和はそんな実験だった。当時総裁だった黒田東彦氏は2%の物価目標を「2 年程度」で実現すると約束。マネタリー
ベース(資金供給量)を2年で2倍に増やす方針を打ち出した。
資金供給量と物価は連動せず
結果はすでに明らかなように、はかばかしいものではなかった。2年後、マネタリーベースは確かに2倍になったが、消費者物価指数(CPI)上昇
率はゼロ近辺に張り付いたまま。物価が明確に上昇に転じるのは、新型コロナウイルス禍などによる供給制約が強まった22年以降になってからだ。
お金の量が増えれば単純に物価も上がっていくというのが貨幣数量説だとすれば、日銀の実験は明らかな反証になったといえる。ある日銀OB
は「貨幣数量とインフレ率に比例的な関係は見当たらない」と冷ややかだ。
日銀が金融機関の国債を大量に買い取るだけでは、お金は銀行が日銀に開設している当座預金に積み上がるだけ。資金需要がなければ、銀
行による貸し出しは増えず、市中にお金は流れない。国債購入で長期金利が下がれば需要は押し上げられるが、短期金利の引き下げと比べれ
ば効果は限定的だ。
なお続く国債の大量購入
もちろん日銀はそんなことは百も承知のうえで、大胆な金融緩和によって将来の物価は上がるという人々の「期待」を一気に高めることに賭けた。
誰もが物価が上がると思い始めれば消費が促され、緩やかなインフレにつながる。当時の幹部によれば、日銀はデフレに対して無策との批判が
強まるなか、できることはすべてやっていることを示す必要もあったという。
元日銀理事でみずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏は「資金供給量でインフレ期待が変わるという考え方自体がもともと正しくなかった
」と指摘する。一方で、緩和に積極的なリフレ派の元日銀審議委員、原田泰氏は「異次元緩和がデフレ脱却の足がかりになったことは間違いない」
と話す。
日銀は16年9月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の導入を決め、政策の軸足を量から金利へと戻した。だが、いまでも物価が2%
を安定的に超えるまでマネタリーベースの拡大方針を続ける「オーバーシュート型コミットメント」を堅持しており、長期金利が低下傾向にあるにもか
かわらず大量の国債を買い続けている。
「日本人は、マネーサプライ(通貨供給量)と物価が直接関係しているとする、過度に単純化され欠陥のあるマネタリストの教義を信頼していた」。
市場参加者の間では最近、日本に金融緩和を促してきた元FRB議長のベン・バーナンキ氏が著書「21世紀の金融政策」で、2000年代初めの日銀
の量的緩和をこう評したことが話題になった。
日銀のバランスシートには500兆円を超える国債が残された。日銀の国債購入に支えられ、政府の債務残高は国内総生産(GDP)比で200%を
超える水準に膨らんだ。超低金利の常態化によって、拡大する財政赤字に対して「戦慄」する感覚が失われてしまったのだとすれば、日銀の実験
の代償は大きい。
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「中央銀行であるがゆえにベータ版(試用版)で提供するわけにはいかない。走りながら試行錯誤し、アップデートしていけたらいいのだが」。デジ
タル円の準備を担う日銀の関係者はそう胸の内を明かす。
PayPay、NTTドコモも参加
中央銀行が発行するデジタル通貨を「中銀デジタル通貨(CBDC)」と呼ぶ。デジタル通貨を民間任せにせず、誰でもどこでも使える通貨を中銀の
責任で用意するという考え方から生まれた。デジタル円は日銀が準備するCBDCで、2023年4月から実用化を見据えた「パイロット実験」を開始し、
実験用のシステム構築に取り組んでいる。
成功に向けたカギは、一般の利用者と接点を持つ民間企業をいかに巻き込んでいけるか。日銀は23年7月から「CBDCフォーラム」を開き、民間の
技術や知見の取り込みを進める。メガバンクをはじめとする金融機関だけではなく、QRコード決済大手のPayPayやソニー、NTTドコモ、JR東日本な
ど約60社が参加する。
「最終的なゴールは何か」。11月下旬、日銀の会議室で開かれた会合では、将来のデジタル円のシステムと既存の決済インフラとの接続につい
て意見が交わされ、参加者が鋭く質問した。日銀はこのフォーラムを「何かを決める場ではない」とし、あくまでヒアリングや意見交換の場と位置づ
けているが、情報を引き出そうと意欲的な参加者もいる。
ある参加企業の関係者は「将来実用化された際に他社に後れを取りたくない。今からビジネス環境を考えておきたい」とデジタル円に商機を探る。
その一方で、中央銀行がデジタル決済サービスを手掛ければ「手数料次第では民業圧迫にもなりかねない」(別の関係者)との警戒も根強い。
通貨主権は誰のものか
CBDCは中国などの新興国で導入の動きが先行している。中国では一般の人々を巻き込んだ実証実験が広範囲に進んでおり、一部では公務員
の給与振り込みにもCBDCであるデジタル元が使われ始めた。先進国でも、欧州中央銀行(ECB)が23年11月から発行に向けた2年間の「準備段
階」に入った。
デジタル円が突きつけるのは、通貨というインフラは誰が提供すべきかという問いだ。今でこそ通貨は政府・日銀が発行するのが当たり前だが、
19世紀後半までは幕府が発行する貨幣のほか、各藩が発行する藩札や、日本最古の紙幣といわれる山田羽書のような民間紙幣も流通していた。中世の時代には、政府が発行した貨幣ではなく、中国から輸入した宋銭などが通貨の役割を果たしていた。
ビットコインのような暗号資産が誕生し、民間のデジタル通貨が普及しようとしているなか、政府と中央銀行が独占的に通貨を発行することが当
然とは言い切れなくなってきた。中国はアリペイなどの民間デジタル通貨の普及に、ECBは米国の巨大IT企業にデジタル決済を握られることに強
い危機感を抱き、CBDCの準備を進める。
デジタル円は最後発に?
日銀の黒田東彦前総裁は在任中の22年1月、デジタル円の導入について「26年までに判断する」と述べた。政府・日銀の関係者は「(導入の是
非は)国民的な議論のなかで決まる」と話す。デジタル円の発行を決めても使われなければ意味がないため、日銀は実験参加者の範囲を段階的
に広げていくという。
ただ、ある日銀幹部は「ある程度導入できるめどが立たないと市民を巻き込んだ実験はできない。(そうした実証実験は)何年か先になるのでは
ないか」と話す。日本は主要国でも突出して現金選好が強い。日銀の初代のフィンテックセンター長を務めた京大大学院の岩下直行教授は「国民
全体の合意形成が必要になるため、日本のデジタル通貨導入は世界で最後になる可能性もある」と語る。
米や布のような現物から銅銭など金属の貨幣、そして紙幣へ。進化を続けてきた通貨がこれからデジタルの時代に入る。多くの人に受け入れら
れ、使われるようになれば、ますます広がっていくという通貨の性質は、勝者総取りとされるSNSとも似通う。デジタル円は未来の通貨になれるの
か。その答えは決して自明ではない。
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㊥通貨が増えれば物価は上がる? 異次元緩和不発の必然
2024/01/09 日経産業新聞
2024年の共通ポイント業界は一段と競争が激しくなりそうだ。スマートフォン決済のPayPayが共通ポイント事業に本格参入し、競争は一段と
激しくなる。共通ポイントの草分けのTポイントは三井住友フィナンシャルグループ(FG)のVポイントと24年春に統合する。動きの激しいポイント
の動向について、業界を担当する記者が展望した。
デスク「ポイント業界は様々な動きがあったね」
記者A「そのひとつがPayPayだ。23年8月末、サイバーエージェントなど2社と提携し、PayPayは共通ポイントに本格参入した。2社にPayPay
ポイントを販促手段として活用してもらう狙いがあるよ」
デスク「PayPayといえばキャッシュレス決済に強い。共通ポイントとして使えれば便利になりそうだ」
記者A「PayPayは18年10月のサービス開始から5年でアプリ登録者数が6000万人を超えた。キャッシュレス決済の市場シェアは約7割と
圧倒的な強さを誇ってきた。ただポイント発行額と新規利用者数の引き上げに大きく寄与してきた政府のマイナンバーカードの普及促進策『マイ
ナポイント』が23年9月で終了したのは逆風となったはずだ」
デスク「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTポイントの名前がなくなるのは感慨深いね」
記者B「Tポイントと、三井住友FGのVポイントが24年春に統合し、名称も『Vポイント』に統一される。Tポイントの知名度と三井住友FGが持つ
決済サービスを掛け合わせ、ポイント経済圏を広げてきた楽天グループやPayPayなどに対抗する考えだよ」
デスク「楽天も様々な施策を打っている」
記者C「23年12月からサービス利用に応じてポイントを付与する『スーパーポイントアッププログラム(SPU)』の還元率を変更した。楽天モバ
イルの利用者が電子商取引(EC)サービス『楽天市場』で買い物する際の還元率は一律で5倍となった。一方で、ポイントの付与上限は下がっ
た。楽天はモバイル事業における契約者増が喫緊の課題で、ポイントをフックに経済圏のユーザー獲得を狙う」
デスク「ユーザーからは『改悪』と批判される変更もあったけど」
記者C「たとえば年会費が有料のクレジットカードはポイント還元率が無料会員と同じになった。さらに無料で使える海外空港のラウンジにも回
数制限ができた。楽天側も批判は覚悟のようで、年会費の返金も受け付け始めたよ」
デスク「共通ポイント事業で成長するには経済圏という言葉も24年以降のテーマになりそうだ」
記者D「NTTドコモは23年10月にマネックス証券の子会社化を決めた。マネックスの取引でのドコモのポイントサービスや決済手段の導入、
ドコモのスマホ決済サービス内での投資サービスの提供などを検討していくようだ。ドコモの井伊基之社長も『手軽で簡単な資産形成サービス
を提供していく』としており、金融と通信、決済の融合をテコに傘下のdポイントの利用拡大を目指すとみられる」
新料金プラン『ペイトク』の提供を開始した。契約すれば通常のポイント還元に加え、1~5%(上限あり)多いPayPayポイントが付与される。追加
分の原資はソフトバンクが払うこととなり、グループでPayPay経済圏の拡大を援護する戦略だよ」
記者C「ポイントと金融事業の連携は楽天も早くから傘下の銀行・証券と進めてきた。23年8月には子会社の楽天カードの傘下に、同じく子会
社でスマホ決済などを手がける楽天ペイメントを置く組織再編を公表し、金融や通信、ネットサービスなど一体で経済圏の拡大に動いている。さ
らに楽天ポイントの導入拡大に向け、中小店舗での導入数を24年内にも23年比で2倍に増やす目標だ。ただ中小店舗の開拓はPayPayも力を
入れる。ポイントカード機能を備えたキャッシュレス専用端末を展開しているけど、どこまで広がるかは未知数だ」
記者B「CCCが狙うのは決済サービスの強化だ。これまで電子マネー『Tマネー』やクレジット機能付きTカードを展開してきたものの、認知度は
高くなかったようだ。三井住友FGは三井住友カードや対応するVisaタッチなど有力な決済サービスを持っている。世界に1億店以上あるVisa加
盟店でもポイントが使えるようにして巻き返しを狙うと思われるよ」
記者A「識者からは今後の共通ポイント業界はこれまでのような会員規模やポイント流通規模といった量から質へと争点が変わっていくと指摘す
る声もある。スマホ決済のように毎日使われるアプリで顧客との接点を増やしたり、加盟店の利益につながる販促を提案したりと、総合力が問わ
れそうだ」
2024/01/11 日本経済新聞 朝刊
日経平均株価が高値の更新を続けている。日本企業の成長を期待した買いが続いているのはもちろんだが、上値で売る投資家が減っている
ことも見逃せない。2023年に「踏み上げ(売り方の損失覚悟の買い戻し)」で傷を負った個人投資家が空売りをためらっていることが、米株相場
が弱含むなかでの意外高に一役買っている。
10日の東京株式市場で日経平均は3日続伸し、前日比678円高の3万4441円まで上昇。バブル崩壊後の高値を連日で更新した。外資証
券のトレーダーは「3万4000円を上抜けたことでグローバルマクロ系のヘッジファンドが株価指数先物を買っているようだが、値幅の大きさもタイ
ミングもかなり意外だ」と話す。
前日9日の米株市場ではダウ工業株30種平均が下落していた。10日は主要なアジア市場も軟調で、日本株の強さが突出している。急な株
価上昇を受けた追随買いが日本株を押し上げているうえ、普段なら上値を抑える「逆張り勢」の動きが鈍い。
「古参の投資家もショート(空売り)はもうからないと気づき始めた」。ベテラン個人投資家の村上直樹さん(44)は投資家仲間の心情を代弁する。
投資歴の長い層ほど日本株のレンジ相場の経験が染みつき、高値では相場反転を狙った空売りを出しがちだ。ただ昨年以降、相場の下落局
面でも外為市場での円安・ドル高などが支えになり下値が限られた。株の売り手は思ったように下がらず、苦境に立たされる局面が多かった。
例えば昨年、低PBR(株価純資産倍率)対策で話題になった大日本印刷(DNP)でも、空売り勢は撤退を余儀なくされた。1月に米エリオット
・マネジメントによる投資が判明し大幅高になった局面では空売りが急増し、信用売り残は10倍の約40万株まで膨らんだ。
ところがその後もDNPは自己資本利益率(ROE)目標や大規模な自社株買い計画を相次ぎ発表し、株価はそのたびに急騰。売り手は損失限
定の買い戻しを迫られた。足元で同社株は昨年来高値圏にあるが、再び売り向かう動きは見られない。
空売りが増えていないことは、「逆日歩」が発生している銘柄の数をみれば分かる。逆日歩は空売りにかかる追加コストで、信用取引の売りが
買いを大きく上回った際に発生する。株高局面で空売りが増える傾向にあり、逆日歩銘柄数と日経平均のグラフを重ねるとほぼ似た動きになっ
てきた。
この相関が、昨年11月以降崩れている。日経平均は10月末比で3000円あまり上がったが、東証上場で逆日歩が付いている銘柄数は今年
1月9日時点で263と、小幅な伸びにとどまる。
松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「足元の株高でも買い手の利益確定売りばかり。新規に売りを積み上げる動きは乏しい」
と話す。
日経平均と逆方向に2倍動く野村アセットマネジメントの上場投資信託(ETF)の口数は日経平均が前回高値をつけた23年7月をピークに足元
でも減少傾向にある。株高でも新たな売り手が現れず、むしろ弱気ETFへの売りが上昇に拍車をかけている。
日本株が長期低迷する局面では、上昇時に売りを出すことは合理的だった。相場の長期上昇を前提にするなら、この行動は変化する。逆張り
個人が順張りに転じつつあるのは、この兆候かもしれない。
2024/01/18 18:40 日経速報ニュース
東京証券取引所が18日に発表した1月第2週(9?12日)の投資部門別株式売買動向(東証と名証の合算)からは1月に始まった新たな
少額投資非課税制度(NISA)による日本株への資金流入が確認できなかった。相場急伸を受け、逆張り志向が強い個人投資家の売りに
かき消されたためだ。財務省が同日朝に発表した対外及び対内証券売買契約からは、外国株がNISAマネーの受け皿になっているのが
浮き彫りとなった。
この週の日経平均株価は2199円69銭(6.59%)の大幅高を演じた。国内企業の資本効率改善への期待から日経平均は15日まで6連騰し
33年11カ月ぶりの高値を更新した。市場では新たなNISAの開始による個人投資家の新規資金の流入が日本株を押し上げたとの指摘が
多かった。
新NISAによる2024年の日本株への資金流入額を年間2兆円と試算するSMBC日興証券の安田光チーフ株式ストラテジストは、今年に
日本株が堅調なスタートを切った理由の一つに新NISAによる個人投資家の買いフローが株価を押し上げた可能性が高いと指摘。年初から
の動向をみるとNISAでの保有する銘柄として個人の人気が高い大型株や高配当銘柄の買いが目立った。
東証が毎週第4営業日の15時に開示する株式売買動向は、取引参加者である証券会社が執行した注文を東証に報告する際にどの属性
の投資家かを申告し、東証が集計して公表している。個人投資家が新NISAの成長投資枠で現物株を買った場合、売買動向では個人の現
金売買として反映される。
今回の投資部門別株式売買動向では個人投資家の売買動向がいつも以上に注目されたがフタを開けると、NISA口座を通じた個人の買
いは明確に確認できなかった。1月第2週の個人の現金取引の数値をみると、8163億円の売り越しだった。14年11月第1週(9564億円)以
来の大きさだった。過去に日経平均が6%上昇した22年3月第3週(2258億円の売り越し)、16年の4月第2週(2595億円の売り越し)と比
べても大きい。NISAを通じた資金流入によって売越額が小さくなる可能性があったが「個人投資家の逆張りは鮮明だ」(東海東京調査セン
ターの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリスト)。株数ベースでみても同様の傾向だ。
一方、18日午前に財務省が発表した対外及び対内証券売買契約などの状況(7?13日)では一足早く新NISAの影響が見て取れた。国
内投資家による海外株式への投資は7833億円の買い越しで、23年1月1?7日(8294億円)以来の大きさだった。市場でも新NISAの開始
をきっかけに買いが増えたとの見方が出ている。
新NISAはまだ始まったばかりとあって定量的にNISA効果をデータで推し量ることは難しいが、来週以降の東証の投資部門別売買動向や
財務省の対外及び対内証券売買契約などを通じて継続的に個人の動向を確認することが重要になりそうだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-01-24/S7QTHLDWRGG000?srnd=cojp-v2
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は24日、資産運用業務の強化策を発表した。傘下の投資信託関連サービス会社で資産運用会社の
評価や調査、投資助言などの機能を拡充した上で、運用会社と販売会社をつなぐ司令塔の役割を持たせて、グループ一体で質の高いサービ
スの提供を目指す。
発表資料によると、機能や体制拡充の中核となるのはFG子会社の「日興グローバルラップ」。専門人材の外部採用やグループ内からの人材
活用を通じてサービスの提供体制を強化する計画。社名変更も検討するとしている。
政府は「資産運用立国の実現」を掲げ、家計金融資産を貯蓄から企業の成長投資に振り向ける流れの加速や、金融機関の資産運用力の強
化を促している。既に大手銀行や証券会社は個別に具体的な方針を示しており、三井住友FGの発表もその一環と位置付けられる。
運用力強化の観点では、三井住友DSアセットマネジメントで運用チームやファンドマネジャーを外部採用する。グループ内で運用に強みを持
つ人材の配置転換も行う。国内外の資産運用会社への新たな出資や提携も模索する。
関連記事:
野村HD、運用力向上へ1000億円超に投資拡大-新興や外資も対象
MUFGが運用資産残高200兆円へ、29年度までに倍増目指す-亀澤社長
みずほ、資産運用強化へ出資や買収積極化-残高10年で1兆ドル目指す
https://jp.reuters.com/markets/global-markets/DFGV7CKJYROPREBW2FHPUH67HQ-2024-01-24/
[東京 24日 ロイター] - 三井住友フィナンシャルグループ (8316.T), opens new tabは24日に発表した資産運用に関するグループ戦略で
資産運用力強化に向け、特色ある資産運用会社への出資や買収、提携機会を模索する方針を示した。
グループの資産運用の中核を担う三井住友DSアセットマネジメントで、アクティブ運用の強化やオルタナティブ分野の新たな運用に取り組み
国内資産運用に次ぐ柱の構築を目指す。
また、SMBCグループ版EMP(新興運用業者促進プログラム)を導入し、新興の運用チームやマネジャーの採用、実績がない新興マネジャ
ーに対する資金拠出等を通じて、運用戦略の拡充を図る。
同グループは、運用会社と販売会社の間に立って、ファンドのデューデリジェンス(価値やリスクなどの調査)やモニタリング(監視)、投資
見解(ハウスビュー)などを行う「ソリューションプロバイダー」態勢を整備する。昨年9月にSMFGの直接子会社へ再編した「日興グローバル
ラップ」をソリューションプロバイダーの中核として位置付け、新しい役割も含めた業容拡大や人材の異動を行い、社名変更も検討する。
面川秀之執行役員は「規模も大事だが、業者目線になるのではなく、顧客にどういうバリューを提供できるかという顧客目線を大事にしたい」
と述べた。
2024/01/29 05:00 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は2024年春から個人向け金融サービス「Olive(オリーブ)」の機能を拡充する。従来のクレジットカード
機能は加入時の新規発行分のみだったが、発行済みの同社と提携するクレカも登録して使えるようにする。米ビザと三井住友カードが開発し
た「世界初」(同社)の仕組みで、会員数の3割にとどまる中高年層の開拓を進める狙いだ。
オリーブは23年3月に始めた個人向けサービスだ。銀行とクレカなどの決済、証券、保険の取引を1つのアカウントで管理し、スマホ上で一体
的に提供する。キャッシュカードを兼ねるプラスチックの専用カードを1枚発行し、クレカ、デビットカード、ポイント払いの3種の支払い手段をスマ
ホで切り替えて使う。
スマホ上でネット証券などとも連携できる点がデジタル世代に評価され、特に初めてクレカを持つ新入社員など若者の間で裾野を広げている。
足元で会員数は約170万人。23年秋時点で30代以下が7割を占め、40代以上は3割にとどまる。
中高年世代など既存の使い慣れたクレカを複数枚持つ顧客からは、オリーブを使いたくても既存のカードと連携できない点で不満の声もあっ
た。オリーブで使えたのは加入時に新規発行したカードのみで、過去に作ったクレカはオリーブでは使えず、財布に入れて持ち歩く必要があっ
たためだ。
24年春からはオリーブとは別に使っていた既存のクレカも登録できるようにする。利用者が持ち歩くのはオリーブの専用カード1枚で、決済前
にスマホで番号を切り替えれば、登録した複数のクレカで決済できるようにする。提携企業のブランドで発行するクレジットカードや、企業の経
営者が使う法人用クレカを5種類まで登録できる。
追加できるカードは大きく分けて2つある。一つは三井住友カードが提携企業のブランドで発行する提携カードだ。同社のホームページによれ
ば現在「ANAカード」や「JR東海エクスプレス・カード」をはじめ、交通機関や小売店など向けに約300種の提携カードがある。どの提携カードを
オリーブ上で使えるようにするかは未定という。
提携カードは、提携先の商品購入やサービス利用でポイントがたまるなど優遇を受けられる場合が多い。三井住友FGの「Vポイント」がたま
る提携カードもある。
もう一つは、三井住友カードが発行している法人代表者や個人事業主向けの法人カード「ビジネスオーナーズ」だ。日本クレジット協会による
と、国内の法人カードの発行枚数は23年3月時点で1201万枚と5年前に比べて2割増えた。商取引の仲介や経費精算で需要が増えている。
オリーブと連携すれば利便性の面で競合と差別化できる。
オリーブは、プラスチックのカード1枚でスマホ上で決済手段を切り替えられる「フレキシブルペイ」と呼ばれるシステムを採用している。ビザ
と三井住友カードが開発した世界初の機能という。
ビザのネットワーク上でクレカの番号などを切り替える仕組みで、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのシータン・キトニー社長は「(フレキシブル
ペイを)日本で導入してから他国でも非常に関心が高くなっている。他の市場でも拡大していきたい」と話す。三井住友カードには欧州の金融
機関などがオリーブの視察に訪れているという。
リテール分野は楽天銀行の口座数が1500万をうかがう水準まで増えるなどフィンテックとの競争が激しさを増している。三井住友FGは昨
年2月、オリーブの目標を「5年で1200万アカウント」としていた。目標を達成するには単純計算で年平均240万人を獲得する必要がある。
三井住友カードの大西幸彦社長は日本経済新聞の取材に「オリーブは毎年バージョンアップをしていきたい。(経験則として)過去の新型
カードも2年目以降で獲得ペースが上がっており、オリーブも今後加速するだろう」と話す。
2024/01/29 18:52 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(FG)が出資する航空機リースのSMBCアビエーションキャピタル(AC)は29日、カナダの年金基金大手の
ケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)と共同で航空機向けに投資するファンドを立ち上げたと発表した。自己資金による投資を抑え、外部の資金で
航空機の管理・運用台数を増やす。
SMBCACは三井住友ファイナンス&リース(FL)と三井住友銀行が出資する世界2位の航空機リース会社だ。投資額の目標は3年間で15
億ドル(約2200億円)で、30機弱の購入額に相当する。
CDPQが新ファンドの資金の大半を出し、SMBCACが機体の発注や管理などを担う。環境性能が高い中型機を中心に投資するという。
航空機は1機あたり数十億?数百億円と高額で、自己資金での投資には限界がある。年金基金など投資家から資金を集めて機体を購入すれ
ば、資産を膨らませずに航空機リース事業を拡大できる側面がある。
三井住友FG・三井住友銀行・三井住友FL、傘下の航空機リース会社がカナダCDPQと航空機投資合弁会社を設立
2024/01/29 17:40 日経速報ニュース 1212文字
【プレスリリース】発表日:2024年01月29日
SMBC Aviation CapitalによるCDPQとの航空機投資合弁会社の設立について
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(執行役社長グループ CEO : 中島 達、以下、当社グループを総称して「SMBCグループ」)、株式会
社三井住友銀行(頭取 CEO : 福留 朗裕)、および三井住友ファイナンス&リース株式会社(代表取締役社長 : 橘 正喜)は、傘下の航空機リ
ース会社SMBC Aviation Capital Limited(CEO : Peter Barrett、以下「SMBC Aviation Capital」)が、カナダの年金基金のケベック州貯蓄投資
公庫(以下「CDPQ」)と、航空機投資に係る合弁会社を設立したことをお知らせいたします。
SMBC Aviation CapitalとCDPQはMaple Aircraft Company Holdings Limited(以下「Maple社」)を設立し、Maple社およびその傘下の子会社に
おいて、燃費効率の高い次世代型の航空機に特化して投資およびファイナンスを行います。投資金額は、3年間にわたり年間5億米ドル、合計
15億米ドルを目標とし、SMBC Aviation Capitalが航空機の調達および管理などを実施いたします。
SMBCグループでは、機材数ベースで世界第2位の航空機リース会社であるSMBC Aviation Capitalによる上述の取り組みを通じて、引き続き
、世界の航空会社に対して主に航空機のセールアンドリースバックによる資金調達ソリューションを提供していきます。さらに、今後は、グループ
が有するオルタナティブ資産を活用し、お客さまの投資ポートフォリオの多様化にも貢献する方針です。
今後とも、航空機を含むオルタナティブ資産への投資に係る施策を強化し、海外で培った経験を活かして、日本の投資家に魅力を感じていただ
ける投資機会を提供していきます。
【SMBC Aviation Capitalの概要】
・社名 : SMBC Aviation Capital Limited
・本社 : アイルランド・ダブリン
・設立年 : 2001年
・事業内容 : 航空機オペレーティング・リース
・総資産 : 236億米ドル(2023年9月現在)
【CDPQの概要】
・社名 : CDPQ
・本社 : カナダ・ケベック州
・設立年 : 1965年
・事業内容 : 公的年金制度、保険基金の投資・管理
金融、プライベートエクイティ、インフラ、不動産、プライベートファンド等の分野へ投資
・純資産 : 4,242億カナダドル(2023年6月現在)
※SMBCグループの資産運用ビジネスに関する対応方針はこちら
https://www.smfg.co.jp/news/pdf/amsp.pdf
2024/01/31 日本経済新聞 朝刊
上場企業が自社株買い(総合2面きょうのことば)を拡大している。2023年の取得枠は約9兆6000億円と2年連続で過去最高となった。余剰
資金を株主に積極的に還元している。東京証券取引所が企業に資本効率の改善を要請したことも背景にあり、足元の株高の要因になっている。
自社株買いは企業の株式数を減らし、自己資本利益率(ROE)やPBR(株価純資産倍率)など財務指標の改善につながる。配当よりも機動的
に実施でき余剰資金を株主還元に回しやすい。以前は株高局面で一服することが多かったが、足元でも活発な動きが続く。
日本経済新聞が上場企業の自社株取得枠を取締役会決議日ベースで集計したところ、23年は9兆6020億円と前年から1350億円増えた。
増加は3年連続。取得枠を設定した企業数は延べ1033社と2年連続で1000社を超えた。
目立つのはPBRが相対的に低い企業だ。三菱商事は計4000億円の自社株を取得した。25年3月期までの3年間で配当と合わせ1兆5000
億円以上を株主に還元する方針を掲げる。PBRは22年末の0.78倍から1.1倍台に上昇した。伊藤忠商事も計1250億円を取得した。
ホンダは前年比2.7倍の2700億円の自社株買いを実施した。自動車生産の回復で手元資金が急増している。2000億円規模の自社株買い
について「短中期的な観点からは今後もあり得る」(青山真二副社長)と話す。PBRは22年末の0.4倍台から0.6倍台に上昇した。
大株主の放出する政策保有株の吸収を狙った自社株買いも多い。リクルートホールディングスは大日本印刷とTOPPANホールディングスの株式
売り出しに合わせ、約1100億円の自社株買いを実施した。KDDIはトヨタ自動車から約2500億円で自社株を取得した。
企業が自社株買いを積極化するのは、余剰資金が膨らんでいるためだ。上場企業(金融などを除く3月期決算)の23年9月末の手元資金は10
1兆円、自己資本比率は43%といずれも過去最高水準となった。株主還元を厚くしており、23年の自社株買いと配当の合計は約28兆円、純利
益に対する割合は5割強に上る。
東証のPBR改革も後押ししている。1月からは資本コストや株価を意識した経営に取り組んだ企業の開示が始まった。大和総研の鈴木裕主席
研究員は「企業は対応を迫られており、自社株買いの動きは今後も強まるだろう」と指摘する。
市場への自社株の再放出懸念を払拭しようと、取得した自社株を消却する動きも広がる。23年は過去最多の324社が消却した。日産自動車
は23年12月に自社株買いした2億1100万株(発行済み株式総数の5%)を消却した。
半面、株主還元以外にも資金を振り向けるべきだとの指摘は多い。企業の投資行動には慎重姿勢が見られ、政府は1月の月例経済報告で国
内の設備投資の判断を「持ち直しに足踏みがみられる」と据え置いた。人材の確保を含め、持続的な成長につながるような資金の活用も課題とな
る。
2024年2月1日 11時22分
去年3月の金融不安で経営破綻したアメリカの銀行の預金の一部などを引き継いだ、銀行の持ち株会社、ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ
の去年12月までの3か月間の決算が最終赤字に陥りました。企業の貸し倒れに備える費用が増えていることが主な要因で、株価が急落するなど
経営に懸念が出ています。
ニューヨーク・コミュニティー・バンコープは、去年3月の金融不安で経営破綻したアメリカの銀行、シグネチャーバンクの預金と資産の一部を買収し
たフラッグスターバンクを傘下におく銀行持ち株会社です。
31日、去年10月から12月までの3か月間の決算を発表し、最終的な損益は2億5200万ドルの赤字、日本円でおよそ370億円の赤字と最終赤字に
陥りました。
今回の決算では企業の貸し倒れに備える費用が前の年の同じ時期の4.4倍に急増したことが最終赤字につながりました。
決算を受けて31日のニューヨーク株式市場ではこの銀行持ち株会社の株価が終値で37%の急落となり、経営に懸念が出ています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240205/k10014347271000.html
橋や水道などのインフラの老朽化が全国各地で課題となる中、JR西日本やNTTグループ、メガバンクなど大手6社が共同で自治体を支援する
新たな事業を始めることになりました。複数の自治体の連携を促し、資金調達なども支援します。
高度成長期に作られた橋やトンネル、水道などのインフラの老朽化が全国各地で課題となり、国土交通省は2048年度までの30年間で全国の
インフラの維持管理や更新に最大で284兆円のコストがかかると試算しています。
こうした中、関係者によりますと、JR西日本、NTTコミュニケーションズ、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、それに日本政策投資銀
行の6社は、近く業務提携を結び、自治体を支援する新たな事業を共同で始めることになりました。
デジタル技術を活用した効率的な施設の点検や、大規模な修繕や更新に必要となる資金調達を支援します。
さらに、人口の減少が進む地域で、インフラの集約に向けて複数の自治体が連携する提案や調整などを行うということです。
6社は、インフラの更新や管理などを総合的に支援する“プラットフォーマー”と事業を位置づけ、今月中に事業を開始する見通しです。
2024/02/07 日本経済新聞 朝刊
三井住友カードとGMO系2社は6日、クレジットカードを使わない後払い決済「バイ・ナウ・ペイ・レイター(BNPL)」サービスを7日から始めると
発表した。BNPLはネット通販での利用が一般的だが、QRコードを使って店頭でも使えるのが特徴だ。
会員登録すると6回まで手数料無料で分割払いもできる。将来は三井住友カードのポイントとの連携も視野に入れる。
新サービスの名称は「アトカラ」で、2種類のBNPLを提供する。1つ目は会員登録不要の決済だ。電話番号とメールアドレスの入力のみで使
える代わりにネット通販での利用限定で、分割払いもできない。上限は5万5000円とする。
2つ目は事前に会員登録と審査をしたうえで利用するBNPLだ。三井住友カードの決済端末を置く店頭でQRコードによる後払い決済ができる
ほか、最大36回まで分割ができる。分割手数料は6回まで無料となる。
2024/02/08 日本経済新聞 朝刊
三井住友銀行は7日、マイナンバーカードの読み取りでオンライン口座開設時の本人確認ができるようにしたと発表した。従来は運転免許証
や顔写真の撮影が必要だったが、スマートフォンでマイナカードのICチップを読み取って本人確認を完了する。まずスマホ上の総合金融サービ
ス「Olive(オリーブ)」で導入した。
マイナカード読み取りによる口座開設は大手銀行で初。ICチップの読み取りとパスワードの入力で本人確認を済ませられる。氏名や住所、
生年月日などの情報もマイナカードから自動で読み取るため、手作業による個人情報の入力も一部省略できる。
従来、口座開設などをオンラインでする場合、顔写真や本人確認書類をスマホなどで撮影するのが一般的だった。撮影の手間がかかるほか
、本人確認書類の偽装の懸念があった。政府は銀行口座の開設に関する本人確認をマイナカードに集約し、運転免許証などの手法は廃止す
る方針を示していた。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)子会社で電子本人確認システムを手掛けるポラリファイの公的個人認証サービスを使う。今後、オリ
ーブ以外のグループの金融サービスでもマイナカードを利用した本人確認システムの導入を検討する。
2024/02/12 05:00 日経速報ニュース
KDDIがローソンをグループに引き入れる。両社が運営面で協力してきた共通ポイント「Ponta(ポンタ)ポイント」は楽天グループなどに押され
気味で、4月には新生「Vポイント」も誕生する。KDDIは出遅れた経済圏の巻き返しに向け、カギとなるポンタをどうテコ入れするのか。推測する
上で参考になりそうのは、ある競合の動きだ。
KDDIはTOB(株式公開買い付け)によりローソン株を追加取得し、同社への出資比率を三菱商事と同率の50%に高める。約5000億円の投資
額はKDDIのM&A(合併・買収)として最大規模だ。
50%出資の狙いとは
その理由を同社首脳は「意思決定を早くしたかった。だから数パーセントではなく50%出資することにした」と説明する。どういうことか。
KDDIはローソンの店舗を「未来のコンビニの実験場」と位置づけ、通信サービスと結びつけたオンライン接客や在庫管理で店舗運営の効率化
を目指す。今回のTOBの狙いは店舗の収益力改善にとどまらない。
視線の先にあるのが、通信サービスを軸に金融や決済、電子商取引(EC)などで構成する「au経済圏」の拡大だ。経済圏にコンビニを組み込
み、先行する「楽天経済圏」を追撃する。
通信大手で全国展開する小売りチェーンをグループ内に置くのはKDDIだけ。50%を出資して店舗運営への発言力を高められれば、au経済圏
の活性化に向けた施策を試しやすくなる。岩井コスモ証券の川崎朝映氏も「強いリアルの売り場であるコンビニを持てば他のキャリア系経済圏
との違いを打ち出せる」とみる。
ポンタ、今は4位
「絶対に強化する。核になるからね」。KDDI首脳が重視するのがポンタだ。決済のたびにたまる共通ポイントは経済圏への集客に欠かせず、
その強さが経済圏の規模を左右する。
ポンタは共通ポイントの中では古株ではあるが、PayPayや楽天が加わった5陣営時代での存在感はそれほどではない。急成長したのがソフ
トバンク子会社のPayPayだ。22年度のポイント発行額は6000億円相当と楽天ポイントの6400億円相当に迫り、「2強時代」となった。
MMD研究所(東京・港)が7日公表した調査によると、「最も活用しているポイント」として楽天ポイントを上げたのは回答者の34%と最多だった。
2位はNTTドコモの「dポイント」(14%)、3位は「PayPayポイント」(12%)で、ポンタは8%と4位に沈む。
同調査では「最も意識しているポイント経済圏」も聞いた。こちらはau経済圏との回答は8%にとどまり、携帯4社のうち最下位だった。首位の
楽天経済圏(46%)、PayPay経済圏(18%)、ドコモ経済圏(16%)の背中は遠い。
4月22日には新たな競合も誕生する。「Tポイント」と三井住友フィナンシャルグループのポイントを統一した新生「Vポイント」だ。金融や決済と
の連携が弱点だったTポイントがクレジットカード「三井住友カード」などと連動するようになり、競争は一層激化する。
PayPayは100億円キャンペーンで顧客拡大
ポンタはどう勝算を描くのか。推測する上で参考になるのが後発ながら強力な還元策で利用者を増やしたPayPayだ。
サービス開始とともに還元総額100億円のキャンペーンなど展開し、ブランドの認知度を高めてきた。19年5月にはソフトバンクグループがPay
Payへの460億円の出資を発表し、ソフトバンクも携帯販売で高い実績を持つ営業部隊も投入して全国でPayPay加盟店を開拓してきた。
グループ一丸で支援したからこそ、5年で決済の利用者数は6000万人超にまで増えた。
KDDIやローソンもポンタの利用を伸ばすには、人・モノ・カネ全てで投資が必要となる。KDDIの投資余力は十分だ。安定した通信収入を支え
に営業キャッシュフローは17年3月以降、毎年1兆円を超える。現金及び現金同等物も23年12月末で6235億円あり、還元キャンペーンなどを
しかけられる体力はある。
株式市場の見方は厳しく、今回のTOBについて「戦略的な合理性は理解しにくい」(証券アナリスト)との声もある。KDDI株はTOB発表翌日の
7日終値で4599円と6日比で2%下がった。日経平均株価が34年ぶりの高水準をつけた9日終値も4467円とさえない。
au経済圏でローソン店舗をどう使い、ポンタを活用するのか。ドコモがマネックス証券子会社化を発表するなど消費者の囲い込みを急ぐ中、
KDDIも早急に具体策を示す必要がある。
【関連記事】
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・ローソン、歴史を繰り返すな 既視感のあるKDDI会見
・KDDIがローソンにTOB、5000億円 三菱商事と共同経営
2024/02/13 05:00 日経速報ニュース
1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)の口座開設が加速している。主要証券会社19社の1月末時点のNISA口座数は合計で
約1530万口座と新NISA開始後の1カ月間で4%増えた。開設ペースは直近3カ月間の平均の2倍に達し、増加分の9割をネット証券が占めた。
2月13日は語呂合わせで「NISAの日」で、日本証券業協会や日本取引所グループ(JPX)などが東京都内で記念イベントを予定している。
日本経済新聞社が集計したところ、証券19社のNISA口座数は2024年1月の1カ月間で差し引き約64万口座増えた。23年10?12月の
3カ月間の増加数が約87万で、この間の1カ月平均の2倍のペースで伸びたことになる。
口座開設は新NISA開始前から増えており、23年10?12月の増加数も前四半期より2割多かった。旧制度で開設すれば24年1月から同じ
金融機関で自動的に新NISA口座となるため駆け込みでの開設が増えた。
1月の増加数のうちネット証券5社(楽天、SBI、マネックス、auカブコム、松井)で約60万と全体の9割強を占めた。大手証券5社(野村、SM
BC日興、大和、みずほ、三菱UFJモルガン・スタンレー)は約3万4000、東海東京証券など準大手・中堅9社は合計でも約7000で、ネット証
券の優位が鮮明だ。
1月末時点のNISA口座数全体のうち、ネット5社は1100万と全体の7割強にのぼる。最も多いのが楽天証券で524万口座だった。
大手証券でも新NISAの利用は広がる。野村証券ではNISA口座を通じた株式や投資信託の買い付け額が1月26日までの1カ月弱で、23年
通年の買い付け額の3分の1以上に達したという。
野村ホールディングスの北村巧財務統括責任者(CFO)は「新NISAをきっかけに、個人の『貯蓄から資産形成』の流れが本格的に始まった」
と話す。
口座開設の急増で主にネット証券ではコールセンターに問い合わせが殺到している。松井証券では着信に対する応答率が平常時は9割を超
えるが、足元では6?7割に下がっている。他のネット証券大手でも年明け以降、コールセンターがつながりにくい状態が続く。税務署審査を含
めて開設までに3週間程度かかる場合もあるという。
ネット証券各社はNISA口座での売買手数料を無料にしている。投資初心者の心理的ハードルを下げるため旧NISA当時から無料化し、移行
後も顧客をつなぎとめるため無料を維持した。このため口座数の増加が証券会社の収益に結びつきにくくなっている。
国内で長期投資を根付かせるには、個人の資産形成を支える金融機関が持続的に稼げる収益構造の構築も求められる。
【関連記事】
・株暴落時に真価、新NISAで始まる家計革命
・新NISA1カ月、オルカン3400億円流入 海外熱は為替材料
2024/02/13 11:30 日経速報ニュース
新しい少額投資非課税制度(NISA)開始から1カ月が経過し、対面・ネット証券10社の口座を経由した購入額が合計で1兆8000億円を超えた。
単純比較はできないが、旧NISAの3倍ペースの資金流入を記録した形だ。購入総額の過半は投資信託で、米国など世界の株式に投資する商
品に人気が集中している。若い世代や投資初心者を中心に投信の積み立てが広がりつつある。
ネット証券5社(SBI、楽天、マネックス、松井、auカブコム)と、対面中心の大手証券5社(野村、SMBC日興、大和、みずほ、三菱UFJモル
ガン・スタンレー)に、NISA口座を使った1月の投資状況を聞き取りした。
24年1月に始まった新NISAは個別株と投信を購入できる「成長投資枠」と、投信を毎月積み立てる「つみたて投資枠」の二本柱からなる。購入
可能額は2つの枠を合計した年間360万円に拡大した。非課税で運用できる期間も恒久化され、個人投資家は長期の資産形成がしやすくなって
いる。
新NISA口座を通じた購入額は証券10社合計で1兆8413億円に膨らんだ。単純比較はできないが、日本証券業協会が集計した会員証券会
社経由の23年1?3月期の購入額は1兆8625億円(旧NISAの「つみたて」と「一般」の合算)だった。新制度開始からわずか1カ月で旧制度3
カ月分の購入額にほぼ並んだ。
証券各社には投信と個別銘柄(上場投資信託=ETF、不動産投資信託=REIT=を含む)の内訳も聞いた。投信の購入額は合計で9788億円で全
体の53%を占め、個別銘柄の購入額(8643億円)を上回った。若い世代の利用が多いネット証券のみで集計すると、投信の購入比率は6割近く
に高まった。一方、中・高齢者層の顧客が多い対面証券では7割が個別株だった。
新NISA開始で投信を毎月一定額積み立てる層が広がっている。524万のNISA口座を抱える楽天証券では1月末時点の投信積み立て設
定額が1773億円となり、前年同月に比べて75%増えた。1人当たりの平均積み立て設定額も同44%増の5万757円に拡大したという。
若い世代や投資初心者ほど投信を選ぶ傾向が強い。これから投資を始める30代の女性は「最初から個別株をうまく選べるとは思えず、とりあ
えず全世界株式型の投資信託から始める予定」と話す。楽天証券によると新NISA口座開設者のうち半数は30代以下が占める。女性の比率も
5割を超える。
ル・カントリー)」の3142億円、2位は同じシリーズの「米国株式(S&P500)」の2465億円だった。上位10本の購入総額7858億円で、投信購入額
全体の8割を占める。
投信購入ランキング上位10本のうち9本が全世界株や米国株で運用する指数連動型の商品だった。つみたて投資枠で買える投信は約270本
、成長投資枠で買える投信は約2000本あるが、個人マネーの流入は一握りの低コスト投信に限られている。日本株ファンドや高い収益を狙うア
クティブ投信は人気薄だ。
個別株でも新NISA経由で買われた銘柄は一部に集中している。個別銘柄を買い付け額順に並べると上位10銘柄の買い付け額は計2114億
円で、個別株の買い付け額の25%を占める。上位はJTやメガバンクなどの高配当銘柄が占め、新NISAを見据えて1株を25分割したNTTは4
位だった。
NISA経由の購入では業績や株価の安定成長が見込める高配当銘柄が好まれる。NISA口座内で損失が発生しても、他の証券口座と損益通
算や繰越控除ができないからだ。東海東京調査センターの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリストは「旧NISAで人気だった銘柄に引き
続き買いが集まっている」と指摘する。
個人投資家全体でみると日本株売りが優勢だ。東京証券取引所が発表した1月の投資部門別株式売買動向によると、個人は9370億円の売り
越しとなった。旧NISAで個別株投資を始めた30代の女性は「年初から株高だったので保有株を一部売却した」と明かす。新NISAになってから新
規投資は控えているものの、相場下落局面では「保有銘柄数を増やしたい」という。
市場関係者が注目するのは2月以降の個人マネー流入ペースだ。例年1月はNISA経由の投資額が膨らみやすい。個人は冬のボーナスで投資
に使える余裕資金が多いほか、年初に限度額いっぱいまで投資する層が存在するからだ。
一方で年明け以降もNISA口座の新規開設ペースは衰えていない。業界内では「NISAを使って初めて投資をする人が入ってくるのはこれから」
(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)との見方もある。
【関連記事】
・新NISA口座、開設ペース2倍に 9割超がネット証券で
・新NISA始動 投資戦略に役立つ注目記事7本
2024/02/19 12:00 日経速報ニュース
新しい少額投資非課税制度(NISA)を追い風に、年明けから投資信託への資金流入が急増している。国内公募の追加型株式投信(上場投
資信託=ETF=を除く)の2024年1月の資金流入額(推計値、以下同)は1兆2794億円と、16年5カ月ぶりの高水準だった。
資金流入額の多さでみるとタイプ別では海外株式型に人気が集中しているが、堅調な日本株相場を背景に1月は国内株式型にも約1300億
円の資金が集まった。そこで、国内株式型ファンドを対象に資金流入額が多い順にランキングしてみた(図表参照)。
資金流入額のトップは、SBI岡三アセットマネジメントの「日本好配当リバランスオープン」で286億円だった。同ファンドは日経500種平均株価
採用銘柄の予想配当利回り上位70銘柄程度に等金額で投資し、組み入れ銘柄や比率を毎月調整しながら運用する。運用実績が18年を超え
る長寿ファンドだが、足元で相対的な好成績が目立ち、昨年初めごろから資金流入額が増加傾向にある。運用規模を適正に維持するため、24
年2月7日を最後に新規購入申し込みの受け付けを一時停止した。
このほか、3位にSBIアセットマネジメントが運用する「SBI日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)<愛称:SBI日本シリーズ-日本
高配当株式(分配)」、4位に野村アセットマネジメントの「日本好配当株投信」、5位に三菱UFJアセットマネジメントの「日経平均高配当利回り
株ファンド」など、ファンド名に「高配当」や「好配当」とつくファンドが並んだ。
明治安田アセットマネジメントが1月31日に運用を始めた7位の「岐阜・愛知地域応援ファンド<愛称:ノブナガファンド>」も、岐阜県と愛知県
に関連する企業の株式に高配当株を組み合わせて投資する。
上位10本のうち3本は1月に新規設定されたファンドだった。10本中の8本はアクティブ型(積極運用型)で、残り2本がインデックス型(指数
連動型)。新しいNISAの投資枠で区分すると、上位10本はいずれも成長投資枠の対象となっており、このうち3本はつみたて投資枠でも購入
できる。
2024/02/20 日本経済新聞 朝刊
日銀による早期のマイナス金利解除を見越し、大手銀行が水面下で資金運用の見直しの検討を始めた。これまで「ゼロ」が続いてきた大手
銀行の当座預金残高に連続してマイナス金利が適用されたためだ。市場では銀行の意図を探る動きが活発になっている。
日銀は2016年2月にマイナス金利政策を導入した。金融機関が日銀に預けている当座預金を(1)0.1%の金利が付く基礎残高(2)ゼロ
金利のマクロ加算残高(3)マイナス0.1%の金利が付く政策金利残高――の3階層に分け、(1)(2)を上回る(3)の部分にマイナス金利を
課す仕組みだ。
顧客から巨額の運用資金を預かる信託銀行や外国銀行などがマイナス金利の適用を受けてきた。一方、大手銀は余剰資金を海外での投
融資に振り向けるなど工夫を凝らして日銀にあずける当座預金へのマイナス金利適用を免れてきた。
日銀関係者は「大手銀は少しくらい損失が出ても無理してマイナス金利の適用を避ける資金運用をしてきた」と話す。実際、21年12月に三
菱UFJ銀行、22年7月にみずほ銀行がマイナス金利の適用を受けたほかは、導入当初を除き適用残高はほぼゼロが続いてきた。
潮目が変わったのは23年10月だ。1年3カ月ぶりに大手銀全体で2000億円強の預金にマイナス0.1%が適用された。さらに11月に約
5700億円、12月には過去最大の約3兆1600億円まで適用額が膨らんだ。
直近1月には再び大手銀のマイナス金利適用額はゼロに戻ったが、これまでなかった事態に市場関係者の間で複数の見立てがささやかれ
ている。
一つは市場環境の変化だ。余剰資金の運用先である短期国債金利は海外投資家の取引が活発化した23年12月にマイナス0.2%程度
まで沈む場面があった。市場で運用するより日銀に預けてマイナス0.1%を課された方が合理的と判断したとの見立てだ。
もう一つがマイナス金利政策の解除をにらんだ動きとの見方だ。日銀の内田真一副総裁は8日の講演でマイナス金利政策導入前の当座
預金に言及した。当時は法定枠を超えた超過準備分に0.1%の金利をつけていた。
当時の枠組みに戻すとすれば、銀行は当座預金に預けるほど日銀から金利収入を得られることになる。ある証券会社のトレーダーは「当座
預金にあらかじめ多めに資金を積み、マイナス金利解除後の運用を有利にしたかったのでは」とよむ。
足元で金利は上昇傾向にある。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「政策修正も意識され、金利変動リスクを避ける意図もあったのでは」と
指摘する。あるメガバンク関係者は「マイナス金利がなくなれば銀行の運用の姿は大きく変わる」と話す。大手銀の資金運用で起きている異変
は、8年間続いた異例な政策が終わりに近づいていることと無縁ではなさそうだ。
2024/02/20 12:56 日経速報ニュース
20日午前の東京株式市場で日経平均株価は小幅に続落した。半導体関連株の過熱感を意識した売りは重荷だが、バリュー(割安)株への
買いが続き下値は限られた。ゴールドマン・サックス証券はこのほど、米国の「マグニフィセント7(壮大な7銘柄、M7)」と呼ばれる大型テック株
に相当する日本の7銘柄「セブン・サムライ(七人の侍)」を選定した。日本企業の資本効率改善への期待が相場を支え、日経平均の最高値更
新への素地が整いつつある。
前日の米市場がプレジデントデーの祝日で休場とあって手掛かり難のなか、午前は年初からの日本株の上昇をけん引してきた一部の半導体
株の売りが日経平均を下押しした。前引けは前日比31円74銭(0.08%)安の3万8438円64銭だった。
日本株の先高観は引き続き支えとなり、上げ幅を200円超に広げる場面もあった。トヨタ自動車が上場来高値を更新し、三菱UFJフィナンシャ
ル・グループは17年ぶりの高値となる1500円台に上昇した。市場では「21日の米半導体大手エヌビディアの決算発表を控えてハイテク株は手
掛けづらく、当面バリュー株物色が続きそうだ」(国内証券)との声が出ている。
ゴールドマンは18日付で、SCREENホールディングス、アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロン、トヨタ、SUBARU、三菱商事の7銘柄を
黒沢明監督の世界的に有名な映画になぞらえて「七人の侍」として暫定的に選んだ。流動性の高い銘柄を対象に、年初来と過去12カ月の株価
のパフォーマンスが良好で、2020年以降営業赤字や最終赤字に陥っていない企業が条件だ。この銘柄の中では、スクリンが午前に一時4%
高まで上昇した。
日本企業の資本効率の改善に対する投資家の期待は高い。東京証券取引所は1日に、「資本コストや株価を意識した経営」について、国内
外の投資家から支持を得た取り組みの事例集を公表。「七人の侍」に含まれる三菱商や三菱UFJなど29社が取り上げられた。東証が上場企
業に取り組みを要請した23年3月から昨日までの株価の騰落率を調べると、事例集の29社は単純平均で49%の上昇だ。同期間の日経平均
(約37%)や東証株価指数(TOPIX)(約32%)を大幅に上回る。
政策保有株の縮減も進みつつある。総合物流のセンコーグループホールディングスは19日、MS&ADインシュアランスグループホールディン
グス傘下のあいおいニッセイ同和損害保険や、三菱UFJ傘下の三菱UFJ銀行、三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友銀行などが
保有株を売り出すと発表した。
金融庁は株式の持ち合いを通じた企業とのもたれ合いが不正の温床になったとして損保各社に売却の加速を求めた。野村証券の池田雄之
輔チーフ・エクイティ・ストラテジストらは16日付のリポートで「金融庁からの働きかけの有無にかかわらず、銀行は今回の件を理由に政策保有
株の売却を加速させる可能性が考えられる」と指摘していた。
ゴールドマンのブルース・カーク氏らはリポートで、2020年3月以降の株価の変動要因を分析し、米国の「M7」が売上高の拡大であるのに対
し、日本の「七人の侍」は「ほとんどが利益率とPER(株価収益率)の拡大によるもの」と指摘した。あらゆるコストを削って利益を確保するのは
日本企業の「お家芸」ではあるが、ここまでの上昇は長年割安に放置された日本株の見直し買いにすぎないとも言える。
日経平均の史上最高値(3万8915円)の更新は間近に迫りつつある。4万円超えの市場予想も増えている。上値追いには効率を追うだけで
なく、米国のように売上高や利益の「規模」の拡大も必要になってくるだろう。
2024/02/22 日本経済新聞 朝刊
リース大手の三井住友ファイナンス&リース(FL)は出資先を通じてリース用ヘリコプター21機を取得する。購入総額は500億円強とみられ
る。主に医療現場での救急搬送や災害救助用としてリースする。安定した需要拡大が見込める分野とみて、世界で事業を拡大する。世界の
リース業界でも最大規模の発注になるとみられる。
三井住友FLが35%出資するLCIインベストメンツと、三井住友FLとLCIが共同出資するSMFLLCIヘリコプターズ(SMFLH)が取得する。
28年までに順次引き渡しとなる。
取得する機体の大半は中型機だ。地方自治体や医療現場での利用を想定する。欧州やアジアを中心に医療現場や災害救助でヘリの活用
が増えているが、1機あたり十数億円と高額なため、自前で購入するのが難しい自治体も多い。初期投資を抑えられるリースの需要が増える
とみている。脱炭素に向けて新設が進む洋上風力発電所の保守管理用に、準大型機も数機購入する。
購入の原資は銀行借り入れでまかなう。社会課題の解決に資するソーシャルローン(社会的融資)の枠組みを使った資金調達を想定する。
通常の借り入れと比べて低い金利で調達することができる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-26/S7FV4WT0AFB400
2024/03/03 05:00 日経速報ニュース
日銀が金融機関からお金を預かる当座預金の構造をマイナス金利前に戻す案を検討している。マイナス金利の解除後に当座預金の大半に
金利がつく公算が大きい。大手銀行は資金運用の見直しに着手しており、日銀当座預金の積み増しに動く方向だ。金融機関が日銀にお金を預
けるほど「ペナルティー」として利払いを課されてきた現在の構造は転換することになる。
「2%の物価目標の実現が視野に入ってきている状況だ」。日銀の高田創審議委員が2月29日の金融経済懇談会でこう述べたことで、3月か
4月のマイナス金利解除の観測が大きく強まった。
銀行はマイナス金利解除後をにらんだ資金運用の見直しに水面下で動き始めている。「当座預金に多く預けるというインセンティブは働きやす
くなる」(大手銀幹部)。大手短資会社幹部は「銀行が資金調達に積極的になり、国債購入で余った資金を当座預金に積む構図が加速する」と
指摘する。
金融機関は資金決済を行うため日本銀行に当座預金口座を開設し、資金を預けている。日銀はいわば銀行の銀行といった位置づけだ。
日銀は2016年、その当座預金の一部にマイナス金利を課す仕組みを導入した。当座預金を①マイナス0.1%の金利(ペナルティー)が付く政策
金利残高②金利0%のマクロ加算残高③金利0.1%の基礎残高の3階層に分けている。
金融機関は多額のお金を預けて政策金利残高の層まで積むと、日銀にお金を支払う必要があるのが今の構造だ。しかし、市場には日銀が大
半の当座預金に金利をつけた昔の構造に戻すとの見方が広がる。内田真一副総裁が2月上旬の金融経済懇談会で「仮にこの状態に戻すとす
れば」とし、16年2月のマイナス金利導入前の当座預金構造を紹介したためだ。
マイナス金利導入前の当座預金は、日銀に預けることを法律で定められた最低限額の「法定準備」、それを上回った分の「超過準備」の2つに
分け、法定準備の利息はゼロ、超過準備のほうに0.1%の金利を付けていた。
この構造の場合、金融機関は超過準備額が多くなれば多くなるほど、より利息を受け取ることができる。今は当座預金全体の8割超を超過準
備が占めている。
野村総合研究所の木内登英氏は、現在の当座預金の規模でマイナス金利導入前の構造に戻すと、銀行などの利息収入は年間で2500億
円増えると試算する。
日銀内では、元の構造に戻すのは「金融機関への補助金との批判が出る可能性はある」との懸念があった。「激変を避けるために、解除時に
は現在の3層構造は維持し、その後従来の当座預金に戻していく」(木内氏)との見方もある。それでも「3層構造よりシンプルな構造にすべき」
「(金利支払いは)政策運営には必要なコスト」と支持する声が広がる。
日銀の当座預金は1月時点(平均残高)で536兆円だった。日銀が大量の国債買い入れを進めて市場に資金を供給したことで、マイナス金利
を導入した16年2月時点と比べて2.1倍に増えた。金融機関が金利を求めて資金を預けようとすれば、当座預金残高がさらに大きく膨らむ可能
性がある。
金融機関の運用にとっては追い風となる当座預金構造の変化だが、日銀にとっては課題もある。当座預金が膨張したなかでの利上げは「不
確実性が大きく、オペ(公開市場操作)も手探りとなる」(日銀関係者)。
「逆ざや」のリスクもある。マイナス金利解除後の利上げ局面で、日銀が当座預金に対して支払う利息が国債などの利息収入を上回れば逆
ざやとなり、日銀の財務にとってはマイナスだ。中央銀行は赤字や債務超過になっても基本的に政策運営に支障はないが、財務が悪化する
過程で信認が揺らげば、思わぬ円安や金利急騰につながる懸念も捨てきれない。
早ければ3月にも、日銀がマイナス金利を解除するとの見方が市場で広がるなか、日銀内外で政策変更を円滑に進めるための備えが着々と
進む。
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[東京 7日 ロイター] - 三井住友フィナンシャルグループ(8316.T), opens new tabは7日、2021年に連結子会社化したインドのノンバンク
SMFGインディア・クレジット・カンパニー(SMICC)の持ち分25.1%を取得し、完全子会社化したと発表した。取得額は7億ドル(約1040
億円)相当。
SMFGは2021年11月、フラートン・フィナンシャル・ホールディングスから中小企業や個人向けノンバンク事業を手掛けるフラートン・インディ
ア(現SMICC)の株式74.9%を取得。将来的に完全子会社化を目指す方針を明らかにしていた。
2024/03/07 19:10 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は7日、インドのノンバンクで子会社のSMFGインディア・クレジット(旧フラトン・インディア)に6日付で
7億ドル(約1000億円)を追加出資したと発表した。出資比率は74.9%から100%に高まり、完全子会社となった。人口増と成長が見込める
インドで個人向けのローンなどを拡大する。
シンガポールの投資会社、フラトン・フィナンシャルホールディングスの子会社から持ち分を取得した。三井住友FGは21年に2200億円で
旧フラトン・インディアの株式の74.9%を取得し、将来は完全子会社化する方針を示していた。今後は農村部などの支店網を拡充し、22年度
に6000億円だった貸出金を25年度以降に1兆2000億円とすることを目指す。
2024/03/08 日本経済新聞 夕刊
金融庁は新型コロナウイルス禍で導入した中小企業向け資金繰り支援の緊急措置を終える。苦境に陥った中小企業を支えるため、事業の先行
きが不透明でも融資を受けられるよう不良債権の分類ルールを事実上緩和していたが、2024年度から正常化するよう全金融機関に通達した。
緊急の資金繰りから事業再生支援に軸足を移すよう促す。
8日、経済産業省、財務省と共同で「再生支援の総合対策」をまとめて業界団体に通達を出し、全金融機関に要請した。すでに実質無利子・無
担保融資(ゼロゼロ融資)の新規受け付けは終えているが、既存融資の緊急支援も今年度内に打ち切る。
平時のルールでは返済猶予など融資条件を緩和した貸出先は抜本的な経営再建計画をつくらなければ銀行は不良債権に分類する。不良債権
になれば多額の貸倒引当金を積むため新規融資のハードルが高まる。再建の見込みが低ければ融資の回収に走る懸念もある。
このため、金融庁は21年10月、コロナ禍で苦境に陥った中小企業に貸し渋りや貸しはがしが起きないよう、この不良債権の分類ルールを事実
上緩和した。
8日に業界団体に出した通達文では「事業者の経営改善・事業再生を先送りしないため、早期に経営再建計画等の策定支援を行う」よう会員金
融機関に周知徹底するよう求めた。緊急措置を解除する「コロナの影響収束の見通しが立つまで」という前提条件を満たし、正常化に向けた環境
が整ったと判断した。
緊急措置の終了に伴い貸し渋りや貸しはがしが起きないよう監視体制も強める。具体的には金融庁が4月以降、全金融機関にアンケートを実施
し、中小企業の経営再建計画づくりを支援しているかチェックする。計数を把握し、取引姿勢に問題があれば、「必要に応じて追加的ヒアリングを実
施する」としている。
貸し渋りや貸しはがしが起きる予兆を見つければ、安易に不良債権として処理し、取引を打ち切っていないか個別に確認する。
金融庁は4月1日付で監督指針も改正し、中小企業のサポート体制について、資金繰り支援中心から経営改善・企業再生支援へ軸足を移すよう
明記する。
https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202403100028
「いま優先すべきは金融株への投資!近づくマイナス金利解除の足音」
●市場が困惑するマイナス金利解除と円高のトレードオフ
マイナス金利の解除はOKだけれど、それに伴う円高が怖い。東京市場はこんなトレードオフに困惑中だ。両方同時にわれわれの願望を満たし
てくれないものか。こんな期待をするのだが、「あちらが立てばこちらが立たない」状況は基本的には解消しない。
しかし、片方が上がるともう一方は下がるシーソーと異なり、人間の心情が関わるトレードオフでは、片方をわれわれが受け入れてしまえば、両
立することもあり得る。
金利と為替なら、利上げによって円高になったとしても、市場心理が円高でも構わないと許容するか、マイナス金利解除による金利の上昇がマ
イルドなものになれば、双方がほどほどの痛みで共存し、株式市場は騰勢を取り戻すことになる。
それに、このところ日銀の政策委員がマイナス金利の解除を匂わせる発言をしているのも、実際に解除した場合のショックを抑制しようとしている
と見るべきだ。先月29日、高田創審議委員が、経済の不確実性はあるものの「2%物価目標実現がようやく見通せる状況になってきた」と言明し、
微妙な言い回しながら、マイナス金利の解除が近いことを仄めかした。
今月に入ると7日、中川順子審議委員が島根県金融経済懇談会で挨拶し、企業の賃金引き上げ姿勢など、より明確な変化の兆しが見られ、経
済・物価情勢は2%物価目標の実現に向けて「着実に歩を進めている」と述べた。
同日午後には植田総裁が参議院予算委員会に出席し、金融政策の転換の前提となる2%の物価安定目標について「実現する確度が少しずつ
高まっている」との認識を改めて示している。
これらの発言を、今月18~19日に開催予定の日銀金融政策決定会合の日程に重ね合わせると、今月中のマイナス金利解除の方針表明、これ
があると見るのが自然だ。そのため、前述したように市場は困惑し、7日~8日と方向感を失った格好となったのだが、上昇トレンドが壊れたわけで
ない。それは日経平均株価のチャート(日足、週足、月足のいずれも)を見れば明らかであり、しかも出来高も増加を続けている。
●地銀株の好パフォーマンス再演に期待
では、このような状況を踏まえた場合、どんな投資戦略が適切か。金融関連株への投資――いまはこれを優先したい。中核銘柄は三菱UFJフ
ィナンシャル・グループ <8306> [東証P]になるが、同社株はこれまで幾度も取り上げているので今回は別の銘柄を紹介したい。
まずは山梨中央銀行 <8360> [東証P]になる。同行は山梨唯一の地銀であり、県内シェアは4割を超す。地方銀行株が浮上に転じると、株価は
これまで素晴らしい上昇をみせてきたが、今回もそれが見込める。私の地元の銀行、横浜銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグルー
プ <7186> [東証P]も、すでに高値圏ながらなお上昇余地ありと見てよい。
熊本が半導体メーカーの集積地となるため、九州フィナンシャルグループ <7180> [東証P]の有望度は変わらないが、北海道にはラピダスが拠点
を置くことを考えると、札幌に拠点がある北洋銀行 <8524> [東証P]を忘れてはなるまい。株価は3月に入り騰勢を強めているものの、私にはまだま
だ評価は低いように見える。
銀行ばかりでは面白くないだろうから、リース企業にも目を向けると、NECキャピタルソリューション <8793> [東証P]がある。また、投資関連では
「ひふみ投信」で知られるレオス・キャピタルワークス <7330> [東証G]に注目したい。
2024/03/11 15:14 日経速報ニュース
11日の東京株式市場で日経平均株価は急落し、終値は868円45銭(2.2%)安い3万8820円49銭となった。下げ幅は2021年6月21日(953円
安)以来の大きさ。取引時間中の下げ幅は一時1190円を超えた。外国為替市場での円高進行で、企業業績期待がやや後退した。年初から続
いてきた円安と株高の流れが途絶え、日経平均は2月22日に34年前のバブル期につけた最高値(3万8915円)を更新したが、そうした楽観相場
に冷や水を浴びせた格好だ。
11日の外国為替市場で円相場が一時1ドル=146円台半ばをつけた。8日に発表された2月の米雇用統計で平均時給の伸びが市場予想を下
回り、米連邦準備理事会(FRB)による利下げを見込んだドル売り・円買いが広がっている。来週に開かれる日銀の金融政策決定会合を控え、
マイナス金利解除を意識した円買いも優勢だ。
2月末に円相場は150円程度で推移しており、10日程度で3円以上円高が進んでいる。2月は米国のインフレ減速ペースが鈍化していること
から利下げが遠のくとの見方が強まり、日米金利差の高止まりを意識したドル高が進んでいた。ドル高の長期化を見込み、ヘッジファンドなどの
投資家による円売り・ドル買いが大きく積み上がっていただけに、持ち高の解消が急激な円高圧力につながっている。
日銀の金融政策をめぐる観測も円買いを加速させている。日銀は来週18?19日に金融政策決定会合を開く。物価と賃金の上昇がみられ、市
場では「マイナス金利解除に必要な材料はそろっている」との見方が多い。米国の金融引き締め姿勢、日銀の金融緩和姿勢がそれぞれ転換す
れば円高圧力は大きく、先回りの円買い・ドル売りが広がっている。
円高進行は輸出関連銘柄の下げにつながりやすい。輸出株の代表格であるトヨタ自動車は一時5%下落した。7日に上場来高値を更新しており
、高値圏で利益確定売りが出やすかった。マツダ、日産自動車ともに一時5%安などほかの自動車株も下げ、業種別日経平均の「自動車」の終
値は2.6%安だった。
自動車以外でもクボタやキヤノンといった輸出株が幅広く売られた。岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは「来期(25年3月期)の業績を考
える上で前提となる為替が円高に動き、アナリストや企業の業績予想が切り下がるとの警戒感が広がっている」と指摘する。
半導体関連の利益確定売りも日経平均の重荷となった。前週末の米株式市場では主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体
株指数(SOX)が4%下落。ここまで日米の株式相場をけん引してきたエヌビディア株は利益確定売りに押され6%近く下落した。
米半導体株安を受け、東京市場でも半導体関連の売りが広がった。東京エレクトロンは一時6%安、アドバンテストは一時7%安まで下げた。
ソフトバンクグループ株も一時7%安まで売られた。
とはいえ市場参加者は冷静さを保っている。T&Dマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは「SOXは年初から異常なほど上げており、このよ
うな下げはその反動としてやむを得ないこと」と指摘する。
東エレクは寄り付き直後に取引時間中の安値をつけたが、下値では買いが入り下げを縮める場面もみられた。T&Dアセットの酒井氏は「パニッ
ク的な売りならもっと大きく下げるはずで、海外投資家の買い意欲が途切れたわけではないだろう」という。
日本株の上昇を支えてきた円安加速による業績拡大期待と半導体株高が同時に見直され、日経平均は大きく下げたものの、日本企業の経営
改革への期待は途切れていない。前週末に500億円を上限とする自社株買いを発表した大日本印刷は一時6%高と逆行高を演じている。
日銀の決定会合を通過するまでは積極的な買いを入れにくいとの声も上がる。資本効率の向上期待のような材料を手掛かりに、調整局面の
下値を早期に固められるかが焦点となる。
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2024/03/12 日本経済新聞 朝刊
リース大手の三井住友ファイナンス&リースは11日、子会社を通じてシンガポールの不動産投資ファンドARAアセットマネジメントの私募ファンド
事業を買収すると発表した。買収額は約400億円。経済成長が見込まれるアジアやオーストラリアで不動産などへの投資を加速する。
アジア有数の不動産運用会社であるARAが私募ファンド事業をカーブアウト(事業切り出し)し、売却する。カーブアウト後の新会社名はARAvest
で、運用資産残高は1兆1000億円。完全子会社のSMFLみらいパートナーズのシンガポール現地法人が7割、連結子会社のケネディクスが3割
を出資する。
2024/03/14 日本経済新聞 朝刊
日本企業の政策保有株を巡る「岩盤」が崩れつつある。損保大手が政策保有株をゼロにする方針を示し、次の候補に銀行が注目される。
ガバナンスを問われる株主総会シーズンに向け企業と投資家双方の動きが活発化する中、政策保有株の処遇は大きな株価材料だ。
13日の東京株式市場で日経平均株価は3日続落した。東証プライム市場では約7割の銘柄が下落する相場で気を吐いたのが保険株だ。
東証業種別株価指数「保険業」は0・6%の逆行高となり、業種別で値上がり率は3位となった。
「事業の成長につながらない政策保有株は許容されない時代になる」。クエストハブ最高経営責任者(CEO)の大熊将八氏は指摘する。
2月末にかけ損保大手4社は政策保有株をゼロにする方針を打ち出した。
政策保有株の売却を通じて市場から期待されるのは「得意分野へと経営資源を大胆に投入し、中長期での業績拡大の確実性を高める
こと」(シティグループ証券の丹羽孝一アナリスト)だ。
次に注目されるのが銀行だ。PBR(株価純資産倍率)が1倍を割れる銀行株にとって政策保有株の削減による保険株の急騰は他人事で
はない。野村資本市場研究所の集計では損保が保有する上場株(時価)が市場全体の時価総額に占める比率は22年度末時点で1・0%。
対して銀行は2・6%と相対的に大きい。
さらに国際的な資本規制「バーゼル3」の最終化では株式のリスクウェート引き上げが予定され、政策保有株がこれまで以上に「リスク資
産」とみなされる。「各行は政策保有株を減らさない限り(財務の健全性を示す)中核的自己資本(CET1)比率の重荷になり得る」(ゴールド
マン・サックス証券の黒田真琴アナリスト)
ゴールドマンは大手邦銀について「政策保有株を23年12月末の時価で10%売却した場合」に利益や資本効率性指標に与える影響を試
算した。3大メガバンク以外で影響が大きいとみられるのがりそなホールディングス(HD)株だ。
りそなHDは23年末時点で9410億円分の政策保有株を持ち、含み益は6740億円。10%を売った税控除後の利益は24年3月期の純
利益の会社予想(1500億円)の3割に相当する。自己資本利益率(ROE)は7・9%に改善する計算だ。りそなHD株は13日、一時3%高
まで上昇する場面があった。
投資家が政策保有株に向ける目線は厳しい。アセットマネジメントOneは4月以降の株主総会で、政策保有株が純資産の40%以上の金融
会社の代表取締役選任に原則反対する。これまでは数値を明記していなかった。
13日は春季労使交渉(春闘)の集中回答日で、製造業各社で労組側の要求に応える賃上げ回答が相次いだ。賃金と物価の「好循環」に
よって日銀の金融政策の修正が近いとの認識が市場のコンセンサスとなっている。
「銀行株は日銀の政策修正後に材料出尽くしとなる展開が予想されるものの、融資の伸びといった利益の成長余地を考えれば拾い場にな
る」(ファイブスター投信投資顧問取締役運用部長の大木将充氏)。政策保有株の売却も加われば、新たな銀行株相場が訪れるかもしれない。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-14/SAB6S0T0G1KW00
22年12月のYCC修正後に銀行指数は68%上昇、TOPIX上回る
前回の利上げ局面、06年3月の量的緩和解除時が銀行株のピークに
日本銀行が金融引き締めに転じた最初の局面は、銀行株の上昇が終わりを告げると過去の歴史は語っている。ウォール街の相場格言
「うわさで買って事実で売れ」にも当てはまりそうだ。
日銀が2022年12月に市場予想に反してイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策を微修正して以降、東証株価指数(TOP
IX)の銀行業指数は68%上昇し、TOPIXの39%を大きくアウトパフォームしている。10年国債利回りは一時1%近くまで上昇した。
将来の給付に備えて「国内株式、海外株式、国内債券、海外債券」を25%ずつ保有する方針で運用している。いずれかのプロダクトの保有比
率が上がったり下がったりすれば、「リバランス」と言って投資比率を均等にする手法を取る。リバランスは1つのプロダクトのウェートが大きく
なりすぎたり、小さくなりすぎたりする弊害をなくし、比率が上がれば売却して利益を確保し、比率が下がれば購入して将来の利益機会を仕
れるという意味合いがある。リバランスはグローバル投資の基本スタイルであり、GPIFに限らず幅広くおこなわれている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d8e01f12b771e93f27a6c632993eefcd45010298
はずの銀行株をさらに買い上げることに投資家が慎重になっている。政策修正を織り込んだ買いで、金利上昇による業績改善が既に株価に
反映されてきたためだ。
野村アセットマネジメントの宮崎義弘チーフ・ポートフォリオマネジャーは、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループ
などの持ち高を利益確定売りで減らしてきた。銀行株の「オーバーウエート」は維持しているが、日銀が2022年12月に政策修正に踏み出す前
から銀行株に投資してきた同氏は「今の水準からウエートを増やすことはしない」と考えている。
JPモルガン・アセット・マネジメントの坂井美智子ポートフォリオ・マネジャーは、ゼロ金利までの利上げは市場である程度織り込まれてきたと話
す。銀行株は収益性などの観点から「持ちたい企業群ではある」とした上で、金融セクターではコーポレートガバナンス(企業統治)の改善期待
などが高い保険会社をより多く保有していると明かした。
日銀が22年12月にイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を修正して以来、金利上昇の追い風を受けた銀行株は日本株上昇を主導
するセクターの一つになってきた。修正翌日以降のTOPIX銀行業指数の上昇率は68%と、東証株価指数(TOPIX)の39%高や日経平均株価
の46%高を上回る。
だが、足元で銀行株の長期金利への感応度は低下。1に近づくほど似た値動きであることを示す相関係数(20日間)はマイナス0.25と、負の相
関であるマイナスに下がった。金利上昇が銀行株買いにつながっていないことを意味する。
物価の高止まりや企業の力強い賃上げ機運を受けて3月のマイナス金利解除の見方が急速に増える中、日経平均は史上最高値からの調整
を強いられている。金利上昇局面では相対的な割高感が高まる株式に売り圧力がかかりやすい。支えとなってきた銀行株に勢いが戻らなけれ
ば、日本株相場は金利上昇により脆弱(ぜいじゃく)になり得る
銀行株の先行きを占う上で市場参加者が注視するのは、マイナス金利解除後の利上げ動向だ。シュローダー・インベストメント・マネジメントの豊
田一弘日本株式運用総責任者は、昨年から円高や金利上昇がポートフォリオにややプラスに働くよう、銀行や保険株などをオーバーウエートに
してきたと話す。「さらにウエートを取っていく運用はしない」としつつ、市場に追加利上げへの期待がある間は銀行株にはポジティブだとみている。
金利スワップ市場は日銀がマイナス金利政策を終えた後、10月末までに1回の追加利上げを100%織り込んでいる。
JPモルガン・アセットの坂井氏は、日本経済の好循環が生まれ日銀がどんどん利上げをしていく場合には、銀行株には「かなりポジティブに動くのではないか」との見解を示した。
2024/03/18 10:42 日経速報ニュース
藤代宏一・第一生命経済研究所の主席エコノミスト 18日の東京株式市場で日経平均株価の上げ幅が800円を超えたのは、日銀の政策修正
を巡る悪材料の出尽くしが意識されていることが大きい。3月の金融政策決定会合での政策修正の可能性が最初に報じられてから株式相場は
調整局面が続いたため、先週末のマイナス金利政策の解除を巡る報道で見直し買いが入りやすくなっている。政策修正をしても当面は緩和的な
金融環境が維持される見通しであることが支援材料だ。日経平均は再び節目の4万円を目指す展開になると想定している。
報道などによると、日銀当座預金の超過準備に付く金利(付利)を0.1%に戻す観測が浮上している。これまでマイナス金利政策の対象になって
いた金融機関にとっては収益環境の改善につながる。銀行株には追い風となりやすい。
2024/03/18 10:00 日経速報ニュース
日銀はきょうから2日間、金融政策決定会合を開く。日本経済新聞は16日、今回の決定会合で「マイナス金利政策を解除する見通しになった」
と報じた。同時に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃し、上場投資信託(ETF)の新規買い入れを終える見込みだ。日銀の
動向には海外の関心も高まっており、海外市場の専門家からもリポートが相次いでいる。
■「解除後、1年から1年半後までに0.5?0.75%利上げ」
エバコアISIの中央銀行戦略責任者、クリシュナ・グーハ氏
4月よりも3月に政策正常化に踏み出すとなれば、市場に対しては(引き締めに積極的な)タカ派的な印象を与える可能性がある。マイナス金利
の解除とともに(長期金利の上限のめどを1%としている)YCCの撤廃ともなればなおさらだ。
日銀は今後、政策運営上では国債買い入れに重点を移すだろう。YCCは完全に撤廃せず、日銀は長期金利のめどに対するソフトな基準をなん
らかの形で維持するのではないか。必要に応じて国債買い入れを増額するなど政策の柔軟性を持たせると考えている。
植田和男総裁は(会合後の記者会見で)さらなる利上げには慎重と強調するとみられる。一方、日銀の執行部はイールドカーブの上昇に対し(物
価動向次第など)柔軟かつ条件付きで受け入れるだろう。マイナス金利解除は一回きりの利上げではなく、慎重かつ限定的な正常化プロセスの
開始に当たる。日銀はマイナス金利解除後、1年から1年半をかけて計0.5?0.75%の利上げを実施すると予想する。
■「ドル下落すれば買い」
バンク・オブ・アメリカの外為・金利戦略責任者、クラウディオ・ピロン氏
今週は複数の中央銀行が政策決定の会合を開く。日銀だけが政策変更を実施すると予想している。マイナス金利解除とYCC撤廃を予想する
が、すでに市場は織り込んでいるため、相場の反応は限定的だろう。日銀は過剰とも思える国債購入を継続する可能性が高いとみており、債券
利回りの上昇は抑えられるはずだ。フォワードガイダンス(先行き指針)がタカ派的になる可能性も低く、仮に結果発表後に円高・ドル安となれば
、ドルを買い向かう流れとなる。
■「円キャリー取引は引き続き魅力」
ゴールドマン・サックスの通貨・金利・新興市場戦略責任者、カマクシャ・トリベディ氏
3月会合で日銀がマイナス金利を解除したとしても、円相場のトレンドを大きく変えることはないだろう。円高になるためには日本の企業や機関
投資家が本国に資金を還流する「リパトリエーション(リパトリ)」が発生する必要があるが、日銀はマイナス金利解除後も国債利回りをそれほど
上昇させるつもりはないようだ。YCCが撤廃されても、国債購入を通じて市場に大きく介入し続けるとみられている。
さらに重要なのは、海外(米国)資産のリターンが優位なことで、リパトリが本格化するとは考えにくい。マイナス金利の解除は日米金利差の
縮小にはほとんど寄与せず、日本を拠点とする投資家にとって米国株のリターンは国内リターンをはるかに上回っている。マクロ環境が引き続き
円相場の主要な原動力であり、日銀の政策修正がそこに割って入る余地はないというのが我々の見方だ。低金利の円を借りて高金利通貨の
資産で運用する「円キャリー取引」は引き続き魅力的だ。
バンク・オブ・アメリカの米金利ストラテジスト、ラルフ・プレカーサー氏
日本企業の設備投資意欲の高さや春季労使交渉での大幅な賃上げ率、これまで相次いだ観測報道など、すべてが3月の政策正常化の開始
を示唆している。マイナス金利解除とYCCの撤廃を予想するが、発表後も日本国債はそれほど売られることはないだろう。すべては、新たな政策
枠組みの詳細と、将来の利上げに関するガイダンスにかかっている。
日銀の動きが米国債に与える影響は限られるだろう。日銀は国債買い入れを続ける可能性が高い。バンク・オブ・アメリカの日本の金利ストラ
テジストは日銀が最近のメディア報道に沿った金融引き締めに踏み切った場合、長期金利は0.75?0.80%の間で取引されると予想している。
米長期金利に与える影響はせいぜい2?3ベーシスポイント(0.02?0.03%)とみている。日銀の動きは市場参加者の心理にマイナスの影響は
与える可能性はあるものの、日米金利に大きな影響をもたらす可能性は低い。
■「長期債購入に関するコミュニケーションが重要」
ゴールドマン・サックスのグローバル戦略担当者、プラビーン・コラパティ氏
日銀が3月にマイナス金利を解除しても、大幅な国債買い入れの縮小が伴わなければ、利回り曲線(イールドカーブ)はより平たん(フラット)に
なると予想する。(債券相場が動くうえでは)政策金利に関するフォワードガイダンスだけでなく、長期債購入に関する日銀のコミュニケーションが
重要になるだろう。
現在と同水準である月間6兆円の国債買い入れが継続されれば、長期ゾーンのボラティリティー(変動率)の上昇は抑えられる。買い入れ政策
をどこまで長期化するかのメッセージが焦点になる。我々の想定よりも日銀が国債市場での存在感を積極的に低下させる姿勢を示した場合、
イールドカーブがスティープ(急勾配)化することはリスクになる。
2024/03/19 日本経済新聞 朝刊
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、上場を目指す社内発スタートアップの役員に対し、ストックオプション(株式購入権)を付与する制度
を設けた。2023年に設立した働きがいを測定する新会社のストックオプションを同社の社長らに付与する。上場すれば個人が大きな利益を得ら
れる可能性を示し、社員のアイデアによる新会社設立を後押しする。
上場を前提に新会社のストックオプションを発行する取り組みは銀行では珍しい。発行対象のSMBC Wevox(東京・港)は、顧客企業の従
業員の働きがいや帰属意識を数値化した「エンゲージメントスコア」を算出するサービスを手がける。アトラエとの共同出資で設立した。
SMBC Wevoxの杉本秀和社長ら2人に対し、上場後に1株を10万円でそれぞれ最大20株(200万円分)まで買い取れる権利を付与する。
条件は現在の株式価値から算出した。同社の発行済み株式は現在1000株のため、それぞれ2%に相当する。
三井住友FGは中堅や若手の社員をIT新会社の社長に就ける「社長製造業」を進めている。これまでに10社以上を設立した。ストックオプショ
ンを動機づけとし、新事業の創出と成長を促す。
2024/03/18 11:20 日経速報ニュース
【プレスリリース】発表日:2024年03月18日
個人のお客さま向け総合金融サービス「Olive」新機能
「定額自動入金サービス」「Olive アカウントランク切替機能」「家族カード発行」開始について
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(執行役社長グループ CEO : 中島 達、以下、当社グループを総称して「SMBC グループ」)傘下の
株式会社三井住友銀行(頭取 CEO : 福留 朗裕、以下「三井住友銀行」)および三井住友カード株式会社(代表取締役社長 : 大西 幸彦、以
下「三井住友カード」)は、2023年3月より提供している個人のお客さま向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」に、新機能を追加することを
お知らせいたします。
2023年3月からスタートした「Olive」は、銀行口座、カード決済、ファイナンス、オンライン証券、オンライン保険などの機能を、アプリ上でシー
ムレスに組み合わせた新しい金融サービスです。今般、大手行初の定額自動入金サービスを含む3つの新機能を2024年3月18日以降、順次
提供することを決定いたしました。各機能の詳細につきましてはサービス開始以降、三井住友銀行ホームページおよび三井住友カードホーム
ページよりご確認ください。
■新機能の概要
[1]定額自動入金サービス : 2024年3月18日より、順次提供開始(※1)
毎月、お客さまご本人名義の他行口座からご指定の金額を引落し、Oliveアカウント申込代表口座へ自動で入金するサービスです。手数料
無料でお使いいただけます。本サービスをご利用いただくことで、都度入金や振込のお手続きを行うことなく、本人名義口座間の資金移動が
可能となります。
―「緩和環境継続」で安心感、想定超えの賃上げでカギを握る企業の価格決定力―
日銀の金融政策がマイナス金利政策の解除という大きな転換期を迎えた。本来は悪材料である政策金利の引き上げとETF(上場投資信託)
購入策の終了が宣告されたにもかかわらず、日経平均株価は頑強な動きをみせ、4万円台を回復した。「超」緩和環境が終了しても、緩和環
境自体には変わりがない――。市場ではそんな声も聞かれるが、想定を超える伸びとなった賃上げそのものは、来期以降の企業のEPS(1株
利益)を圧迫する要因となる。個人消費の先行きに不透明感がくすぶる現状では、コスト上昇分を製品・サービス価格に転嫁するための価格
決定力を持つ企業への関心が、これまで以上に高まることとなりそうだ。
●政策公表後に不動産株が上昇
今回の政策変更と市場の反応を改めて整理してみる。日銀の発表内容はほぼ事前報道に沿ったものとなったが、まずマイナス金利の解除
である。これまで日銀は金融機関が資金を預ける日銀当座預金を3階層に分け、「基礎残高」にプラス0.1%、「マクロ加算残高」に0%、「政策
金利残高」にマイナス0.1%の金利を適用していた。マイナス金利が適用される政策金利残高の存在ゆえ、「マイナス金利政策」と表現されて
きたのだが、今回、日銀は無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を「0~0.1%程度」とする形に見直した。
オーバーナイト物の金利はイールドカーブ(利回り曲線)の起点となり、その上下動は教科書的には、期間が1年以内の短期から5年以内の
中期、10年以内の長期、10年超の超長期のそれぞれの金利の変動要因になる。今後は日銀当座預金でのマイナス金利適用を回避する目
的で銀行がコール市場などで資金を貸し出すことがなくなるため、需給要因で短期金利には上昇圧力が掛かることとなる。更に、日銀当座
預金の超過準備にはプラス0.1%の付利金利が適用されることも決まった。金融機関の収益にはプラスの要因となるが、政策公表後の 銀行
株は方向感を欠く展開となった。
対照的に気を吐いたのが三井不動産 <8801> [東証P]や住友不動産 <8830> [東証P]、三菱地所 <8802> [東証P]といった、金利上昇デメ
リットセクターである 不動産株だ。今回、マイナス金利政策の解除とともに、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃も公表
されたが、長期国債の買い入れについては「これまでと概ね同程度の金額」で継続する方針が示された。需給面では長期金利の上昇を抑え
る要因となるため、政策公表後の新発10年債利回り(長期金利)には低下圧力が掛かった。そもそも短期金利が上昇したとしても0~0.1%と
歴史的にみれば低水準である。国内要因での金利の上昇余地は乏しいとの見方が銀行株を圧迫し、不動産株には刺激材料となったようだ。
加えて、日銀からはETFとREIT(不動産投資信託)の購入を停止する方針が示された。コロナ禍初期に金融市場が大きく混乱し、日経平均が
一時1万6300円台まで調整した4年前の2020年春、日銀は立て続けに1日あたり1000億~2000億円規模の巨額のETFの買い入れを行った。
だが、東証1部だった当時と比べ、足もとの東証プライム市場の売買代金は大きく、リスクオフ局面において日銀がETFの買い入れを行ったとし
ても、その下支え効果はかつてほどのものではないとの指摘も出ていた。
日銀がETFを市場に放出すれば、需給要因で日本株にはマイナスとなる。しかし投資家のセンチメントの悪化をあえて招く愚を犯す必然性など
ないだろう。市場の一部には政府が永久債と引き換えに日銀からETFを買い取り、国民に無償配布するとの思惑もある。いずれにせよ、時期は
ともあれ、しばらくは日銀内で塩漬けになる公算が大きい。
これらの金融政策正常化への流れを後押ししたのが、今年の春闘での賃上げ状況だ。連合がまとめた今年の春闘の回答集計(第1回)によ
ると、賃上げ率は大企業で5.3%、中小企業で4.4%に上った。ベースアップ率は明確にわかる654組合で3.7%となっている。企業にとっては
新たな人件費負担分を製品やサービス価格に転嫁できなければ、利益を圧迫する要因となる。
今年の賃上げ結果を受けて、2%の物価安定目標を大きく上回る水準へインフレ圧力が強まる形となれば、日銀は追加の利上げに迫られる
こととなる。銀行株にとっては、政策保有株式の縮減効果への期待もあることから、上値余地を広げる格好となりそうだ。半面、「今年の春闘は
瞬間風速のようなもの」(国内証券ストラテジスト)との声もある。そもそも現役世代には老後などの将来不安が強い。今以上に物価が上昇した
場合には、個人消費が腰折れするリスクも横たわっている。来年も今年と同じような賃上げが実現され、物価上昇との好循環が継続できるの
かどうかを考察すると、かなりのナローパスと言える。
●為替は1ドル=150円台へ突入
為替相場の動向もポイントになる。日銀の政策公表後にドル円相場は1ドル=150円台へと円安が進行し、トヨタ自動車 <7203> [東証P]など自
動車株のサポート要因となった。
日本国内での低金利環境の継続を市場は織り込む一方で、米国ではインフレ環境が長期化するとの見方から、米連邦準備制度理事会(FR
B)による0.25%幅の利下げが年内に3回行われるとの観測が、2回に修正されようとしている。これまで有力視されてきた6月の利下げが見送
られるとすれば、その後米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれるのは7月と9月、11月と12月の4回である。米大統領選が迫る9月と、大統
領選直後の11月のFOMCで、FRBが利下げに踏み切るハードルは決して低いものではない。経済データ次第では、年内の利下げ幅が一段と
狭まる可能性も出てくる。その際は、米国金利の上昇を伴って、ドル高・円安圧力が強まりかねない。
そして、米国の期待インフレ率が2.1~2.5%の範囲内で推移を続けていることを踏まえると、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質
金利が一段と上昇した場合には、金融相場を見込んだ投資資金の巻き戻しを引き起こすリスクが高まることとなり、高PER(株価収益率)銘柄
に逆風が吹きつけることも予想される。
ひとまず市場は3月のFOMCでのドット・チャートや、パウエル議長の記者会見での発言を注目することとなるが、米金利の緩やかな上昇によ
る円安シナリオと、東証による低PBR(株価純資産倍率)是正運動を考慮すれば、中期的な観点で外需系バリュー銘柄は無視できない存在と
言えそうだ。
ニッチな分野で高いシェアを持つ「ニッチトップ企業」も、価格決定力の高さゆえ、賃上げ後の利益創出力という観点で投資対象の候補に加わ
る可能性が高い。こうした観点で「ファクトセット・グローバル・ニッチトップ・ジャパンエンタープライズ指数」の構成銘柄(2月末時点)をみると、
メラミン化粧板国内首位のアイカ工業 <4206> [東証P]や通信計測器のアンリツ <6754> [東証P]、食品トレーのエフピコ <7947> [東証P]は全
体相場との比較で出遅れ感が意識される。ゲーム機向けコネクターのホシデン <6804> [東証P]や、段ボール大手のレンゴー <3941> [東証P]
のPBRは1倍を下回っている。
人件費の増加への対応策として有効なDX(デジタルトランスフォーメーション)も、注目を集め続けることとなると見込まれる。大手ではNTTデ
ータグループ <9613> [東証P]や野村総合研究所 <4307> [東証P]が候補に挙がるが、営業DXツールのアイドマ・ホールディングス <7373>
[東証G]や店舗DX事業のピアズ <7066> [東証G]、製造業・建設業向けDX支援のコアコンセプト・テクノロジー <4371> [東証G]など、着実に
利益を積み上げている企業は多い。DXにとどまらず、日本企業にとって生産性の向上は息の長いテーマとなっている。賃上げ環境下で、関連
企業の成長期待は一段と強まる形となりそうだ。
2024/03/20 日本経済新聞 朝刊
日銀が19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めたことを受け、3メガバンク首脳がコメントを出した。三菱UFJ銀行の半沢
淳一頭取は「日本経済が持続的な成長軌道に回帰する大きな好機だ」とコメントした。「『金利ある世界』における変化を先取りし、顧客の課題に
寄り添いともに解決をはかる」と強調した。
三井住友銀行の福留朗裕頭取は日本経済について「新たな成長の軌道に入っていく大きな転換点」と分析したうえで、「金融政策の修正が
市場に与える影響を注視し、経済環境の変化に対応する」とコメントした。
みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長も「金利がある世界への大きな変化の節目でゲームチェンジになる」とのコメントを出した。融資
などの原資となる預金を持つ重要性が一層増すとし、普通預金や定期預金の金利を今後引き上げる考えを明らかにした。
今後、銀行にとっては調達した預金と運用の利ざやが改善するため、収益を押し上げる要因となる。3メガバンクはマイナス金利の解除を見据
え政策金利が0%になった場合の資金利益などへの影響を試算しており、単純比較はできないが年350億円から450億円以上の押し上げ効
果があるとみる。
地域経済への影響も大きい。城南信用金庫(東京・品川)の川本恭治理事長は「大きな変化の時だ。顧客の資金繰りを支えるのは当然だが、
本業支援をしっかり進めたい」と話す。預金金利については「引き上げも視野に検討を進めたい」と述べた。
2024/03/22 19:54 日経速報ニュース
日本取引所グループが22日に発表した投資部門別売買動向(東京・名古屋2市場)によると、個人投資家は3月第2週(11?15日)に現物株を
4942億円買い越した。個人の買い越しは2週連続で、買越額は2023年9月第4週(5734億円)以来の大きさだった。2024年に新NISA(少額投資
非課税制度)が始まって以降では最大規模となる。
この週の日経平均株価は週間で981円(2.5%)下落した。上昇基調が続いていた半導体関連株を中心に利益確定の売りが優勢だったほか、日
米の金融政策決定を前に海外投資家の様子見姿勢も広がった。相場の流れに逆らう「逆張り」戦略をとる傾向の強い個人投資家が下落局面で
押し目買いを入れたとみられる。
海外投資家は現物株を3週ぶりに売り越した。売越額は875億円だった。現物と株価指数先物の合計では6675億円の売り越しで、売越額はお
よそ5カ月ぶりの大きさだった。
年金基金などの売買を反映するとされる信託銀行は現物株を10週連続で売り越した。売越額は6851億円だった。期末を控えたリバランス(調
整)の売りが優勢だった。
来週の株式相場に向けて=バリュー株物色でTOPIXは最高値を視野に
22日の東京株式市場は日経平均株価が一時4万1000円台に乗せるなど堅調に推移し、連日での史上最高値を更新した。半導体関連株
が上昇し、東京エレクトロン<8035>は初の4万円に乗せる場面もあった。ただ、朝高後は半導体関連の主力株は値を消す展開にとなり、後場
に入り日経平均株価は一時マイナス圏に転じた。しかし、その後再び買い直され上昇に転じるのが、いまの相場の強さだろう。
三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>や三井住友フィナンシャルグループ<8316>は後場に高値圏に買われたほか、トヨタ自動車<7203
>など自動車株や三井物産<8031>など商社株、三菱地所<8802>など不動産株が一日を通して底堅い値動きとなった。全体相場は「半導体
株と銀行株などバリュー株の循環物色の流れが強まっている」(市場関係者)。そんななか、さすがに買い疲れ感もみえる半導体株に対し、
バリュー株が優勢な展開となりつつあるようだ。
3月に入ってからの日経平均株価の上昇率は4.4%に対して、TOPIXは5.1%。とりわけ、TOPIXは1989年12月につけた最高値(28
84.80)に迫っている。日経平均株価の最高値更新には一歩遅れているが、内需株のウエートが高いTOPIXの最高値更新が持つ意味は
小さくない。
来週は3月の年度末を迎え、27日が権利付き最終日、翌28日が権利落ち日となる。配当の権利取り後も銀行などバリュー株が底堅い
値動きを続けるかがポイントとなりそうだ。また、その後の配当再投資の動きも注目される。来週は29日引けにかけ、日経平均株価の春の
入れ替えに伴うリバランスが予想されている。新規採用のディスコ<6146>やソシオネクスト<6526>、ZOZO<3092>などの動向が注目される。
上記以外のイベントでは、海外では26日に米3月消費者信頼感指数、28日に米10~12月GDP確定値、29日に米2月個人消費支出
(PCEデフレーター)が発表される。29日は聖金曜日(グッドフライデー)で休場となる。
国内では25日に1月開催分の日銀金融政策決定会合の議事要旨、28日に3月開催分の同決定会合の「主な意見」が公表される。29
日に3月東京都区部消費者物価指数(CPI)が発表される。
2024/03/25 日本経済新聞 朝刊
日銀がマイナス金利政策を含む大規模緩和の解除を決め、金融政策の正常化に一歩踏み出す。長期緩和は負の遺産も残した。企業も家計
も政府も「金利ある世界」に戻れるのか。17年ぶりの利上げは日本を再起動する転換点となる。
財務改革も着手
「一部資産の売却を含め、不動産事業に外部資本をいれるべきだ」。サッポロホールディングス(HD)の外部有識者も含むグループ戦略検討
委員会は1月末、目指す方向性を取締役会に答申した。マイナス金利解除の観測が高まった時期で、今後の金利上昇を見込んで議論が進ん
でいた。
尾賀真城社長などサッポロHDの取締役会は答申を受けて、2月に酒類、不動産、食品飲料の3事業の集合体から酒類を中心とした事業構
造に見直すことを決めた。不採算事業を見直し、オフィスビルなどの売却を検討する。その資金を海外でのM&A(合併・買収)などに充て「ビー
ルを中心にもっと稼げる体質にし、資本効率を上げていく」(松風里栄子取締役)方針だ。
サッポロHDは恵比寿ガーデンプレイスや銀座に複合ビルを持ち、業績を支えてきた。だが、不動産事業は借り入れが多い。財務健全化を進
めるなかで祖業であるビールに十分な投資ができない状況も招いてきた。
2016年から続くマイナス金利下では負債の大きさを気にしなくてもよかった。金利が復活すれば、資金調達コストの上昇も想定され資本効
率の悪さは放置できなくなる。短期借入金の利率は21年12月期の0.46%から22年12月期には2.29%に上昇していた。
ソニーグループは7日に償還期限が3~10年の普通社債1500億円を発行した。5年前に10年債を発行した時の利率は0.3%だったが、
1.001%まで上昇した。
金利が低いうちに成長分野に回す長期資金を確保する。半導体やエンターテインメント分野での投資や事業拡大に備える。
企業が利上げを受け入れる背景のひとつには経済情勢の回復がある。日経平均株価が4万円台に乗せるなど17年前より力強い指標が目
立つ。
悪化したものもある。国際経営開発研究所(IMD)によると、世界1位だった日本の競争力は23年に世界35位まで下がり、過去最低を更新
した。超低金利という「ぬるま湯」(経団連の十倉雅和会長)につかっている間に停滞が続いた。
19日の日銀の決定を受けて、中外製薬の奥田修社長は「市場を正常化し、健全な成長を促進するという点でも日本企業を支援する」と評価
した。AGCの平井良典社長は「(マイナス金利で)日本企業から成長や変革への意欲が奪われた。資金調達コストを超える付加価値を創造し
たい」と強調する。
新陳代謝促す
日銀内部からは「こんなに反対論が出ない利上げは初めてだ」と驚きの声が上がる。1985年のプラザ合意後は「円高恐怖症」と言える状況
で、日銀の金融政策も円高との戦いでもあった。円高につながりかねない利上げは輸出企業を中心に抵抗が強かった。
1ドル=105円前後まで円高が進んだ19年夏、日銀はマイナス金利の深掘りを真剣に検討していた。今は「円安による資材やエネルギー
価格の高騰でコスト上昇の影響を受けてきた」(大成建設)と過度な円安への懸念が強い。
ここから先の利上げで金利による規律が働くようになれば、企業は低採算事業の見直しを迫られる。産業の新陳代謝が進みやすくなる。政府
による財政の大盤振る舞いも期待しにくい。次の日本は日銀依存を脱して自律的な成長を取り戻せるかにかかっている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-24/SAVFJYT0AFB400
25日の東京株式相場は反落か。先週の大幅上昇を受けていったん調整が入りやすいほか、四半期末に向けてリバランスの売りに押されやすい。
また、米国金利が大幅に低下したことから金融株には下押し圧力がかかりやすい一方、ハイテク株などにはバリュエーション面でサポートになる。
米シカゴ先物市場(CME)の日経平均先物(円建て)の清算値は4万0555円と、大阪取引所の通常取引終値(4万0710円)に比べ155円安
米国株はまちまち-米10年債利回りは4.20%程度と約7ベーシスポイント低下
市場関係者の見方
東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジスト
急激に相場が上昇した後での利益確定売りが米国市場でも出ており、きょうの日本市場でも同じような展開となるだろう
金利が下がったことでハイテク株のバリュエーションは上昇するが、金融株は売られやすい。全体としては調整気味になり、ハイテク以外ではディ
フェンシブ銘柄が上位となるだろう
先週のFOMCを受けて米国での利下げ期待が高まっており、それが継続できるが、今週末のPCE価格指数などのマクロ指標で検証されることに
なるだろう
背景
パウエルFRB議長、雇用市場を支援する用意-インフレ高止まりでも
アトランタ連銀総裁、年内利下げは1回のみと現時点で予想
ヘッジファンド、円の弱気ポジション積み増し-日銀利上げはハト派的
ゴールドマン、S&P500種は6000にも-大型ハイテク株の上昇続けば
グッチの衝撃、中国での販売急減-高級品業界で消費減速の影響顕在化
【要人発言】ラファの大規模軍事作戦は大きな間違いになる-ハリス氏
けさのドル・円相場は1ドル=151円前半で推移、前営業日の日本株終値時点は151円49銭付近
2024/03/26 日本経済新聞 朝刊
全国銀行協会は企業買収の際、相手先のキャッシュフローなどを頼りに銀行が買収資金を融資するLBOファイナンス市場の健全化に乗り出
す。過去に実行した案件の融資額や金利など貸し付け条件をデータとして整備し、融資を検討する金融機関の参考にしてもらう。大手銀行に融
資の約8割が偏る構図を改め、国内外の機関投資家など担い手を広げる。
25日に報告書を公表した。全銀協が事務局の勉強会には3メガバンクに第一生命保険や農林中央金庫、金融庁、日本銀行が参加。ゆうちょ
銀行もゲストとして招き、昨年8月から今年2月にかけて議論を重ねてきた。
LBOファイナンスは買収先となる企業のキャッシュフローに着目して融資する手法で、買収側には少ない自己資金でM&A(合併・買収)を実
行できる利点がある。日本では2000年代に定着した。投資ファンドが組成し、銀行に融資を求めることが多い。金融庁によると、大手行の貸出
残高は5兆円規模と5年間で2.5倍に増えた。
最近では株式の非公開化をめざす東芝の案件に対し、大手行が1兆2000億円の融資を実行した。上場企業が資本コストや株価を意識した
経営を迫られるなか、成長や採算性を見込めない事業を売却する流れが加速している。後継者がいない中堅・中小企業を買収し、事業の継続
を図る動きも活発になってきた。
こうしたM&AではLBOファイナンスが活用されることが多い。3月上旬にMBO(経営陣が参加する買収)の成立を公表したベネッセホールデ
ィングスの案件では、大手行を中心に2000億円を超える融資を実行した。
今後の市場拡大が見込まれるなか、課題も浮き彫りになっている。
現状では3メガバンクと三井住友信託銀行に与信リスクの約8割が集中する。担い手が限られる現状について大手行の首脳も「我々だけでは
リスクを抱えきれず、もっと多様なプレーヤーに参加してもらう必要がある」と訴える。
重い教訓となったのが22年6月に経営破綻したマレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)の案件だ。約3400億円の債権放棄を含め
、みずほ銀行や三井住友銀行が多額の金融支援を余儀なくされるなど銀行界に深い傷痕を残した。
LBOファイナンスのデフォルト率は限定的とはいえ、景気の悪化などでひとたび変調を来せば与信リスクの多くを引き受ける大手行の経営に
も影響を及ぼしかねない。
全銀協は担い手の多様化には、市場の透明性を高めるデータの整備が欠かせないとみる。米国では業界誌を含めて統計がそろう一方、日本
では融資の判断に生かせる情報が足りないという。LBOファイナンスは一般的な企業向け融資に比べると信用リスクが高いだけに、審査や与
信の管理には細心の注意が必要だ。
LBOファイナンスのスプレッド(上乗せ金利)は3%程度とされる。一般的な融資に比べれば高い水準だが、米国の5%前後に比べるとなお見
劣りする。中堅・中小企業の事業承継に絡むLBOファイナンスが増えるなか、案件の小型化による地銀の積極化で「金利のダンピングが目立
ってきた」(関係者)との指摘もある。
健全な市場の成長にはリスクに見合ったリターンの確保が欠かせない。かつて日本のLBOファイナンス市場では外資系の金融機関が存在
感を示していたが、リターンの低さなどを理由に手を引いてきた経緯がある。
勉強会には企業買収を主導する複数の投資ファンドも加わった。買収側は借入金利を低く抑えたいのが本音で、入札を通じて複数の銀行に
条件を競わせる現行の方式が理にかなう。様々な関係者の利害を調整する必要が今後出てくる。
2024/03/26 日本経済新聞 朝刊
クレジットカード大手の三井住友カードは25日、持ち運びができる決済端末を開発したと発表した。クレジットカードやQRコードなど様々な決済
手段に対応でき、主に飲食店や宅配事業での利用を想定する。
三井住友カードの大西幸彦社長は25日の発表会で「新しい決済シーンに対応すべく開発した」と話した。たとえば持ち運び可能な端末を飲食
店で導入すればテーブル会計の待ち時間を短縮でき、レジの省人化も可能だ。
中小事業者向けには、自身のスマートフォンを決済端末に代替できるアプリを提供する。専用アプリを入れたスマホにクレカをかざすと決済が
完了する。加盟店の手数料は2.7%と業界最安水準に設定し、追加の手数料引き下げも検討中だ。
[25日 ロイター] - 米資産運用大手ブラックロックは25日、日本株のオーバーウエートを高めたと明らかにした。緩やかなインフレ、好調な業績
株主に有利な改革がプラスに働くとの見方を示した。一方、日本国債についてはアンダーウエートを拡大したという。
市場に関する週次のコメントで「株式により魅力的なリターンを見い出している。日本国債には最も魅力的でない部類のリターンが見られるため
資金調達源として利用している」とした。
債券と株の引き受け回復、資本市場部門は過去3番目に好調な四半期
投資銀行部門の収入は31%増の7億3970万ドル
米ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループの2023年12月-24年2月(第1四半期)決算は、資本市場の好調と投資銀行業務の回復に
支えられ増益となった。
27日の発表資料によれば、12-2月期の総収入は35%増の17億4000万ドル(約2600億円)。インフレと金利を巡る懸念が落ち着き始め
たことから、債券と株式の引き受けが持ち直した。資本市場部門は過去3番目に好調な四半期となり、増益に寄与した。投資銀行部門の
収入は31%増の7億3970万ドルとなり、ディールメーキングが回復する可能性を示唆した。
リチャード・ハンドラー最高経営責任者(CEO)はインタビューで「市場活動は全体的に回復しており、年内の見通しにかなり良い兆しと
なっている」と述べた。
発表資料によると、セールス・トレーディング・チームの収入は前年同期比8.8%増の7億1160万ドル。売買高の増加などで株式のパフォ
ーマンスが堅調さを増したことが業績を後押しした。
12-2月の純利益は前年同期比12%増の1億4960万ドル(1株当たり66セント)。
ジェフリーズの決算は、高金利と根強い地政学的懸念でディールが鈍る中でウォール街の大手銀行が今年最初の3カ月間をどう乗り
越えたかを前触れするものだ。昨年は、ディールメーキングと証券の新規発行の低調が続いたのが痛手となり、多くの投資銀行が多数の
人員削減を余儀なくされた。ウォール街の大手銀行は来月、1-3月(第1四半期)決算を発表する予定。
2024/03/28 12:30 日経速報ニュース
28日午前の東京株式市場で日経平均株価は反落した。前日比の下げは一時500円を超え、3月期決算企業の配当落ち分(約260円)を考慮
しても300円近く下げた計算だ。政府・日銀による為替介入への警戒に加え、年度末に向け年金基金が膨らみすぎた株式の持ち高を減らすと
の観測が日本株を下押ししている。
午前の終値は前日比479円29銭(1.2%)安の4万0283円だった。
日銀による為替介入への警戒感が相場全体の上値を抑えている。日本時間の27日夜に、財務省・金融庁・日銀が国際金融資本市場に関
する緊急の情報交換会合(3者会合)を実施した。前日の東京外国為替市場で円相場は1ドル=151円97銭まで下落し、1990年7月以来、
約34年ぶりの円安水準をつけていた。
28日午前11時時点の円相場は1ドル=151円30銭前後の水準にある。実際に為替介入に踏み切れば急速に円高に振れるとの警戒感
から、輸出関連銘柄は基準値を下回っている銘柄が目立つ。
トヨタ自動車は前日比で58円(2%)安の3795円まで下落した。配当分を考慮した基準値(3818円)に比べても安い。日野自動車やスズ
キも基準値を下回る水準まで下落している。年始以降円安と並行して株高が進んできただけに、円高に振れれば支えを失うとの警戒は強い。
為替の影響を受けやすい双日や住友商事、三菱商事などの商社株や精密機器株なども基準値を下回り、上値が重くなっている。市場では
「円高に振れるリスクを警戒し、買いが手控えられている」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)との声が聞かれる。
加えて「年度末の年金の売りが相場を押し下げている」(アイザワ証券の三井郁男ファンドマネージャー)との見方もある。
国内年金基金は四半期末や年度末に向け株式など保有資産の比率を調整するとされる。例えば公的年金を運用する年金積立金管理運用
独立行政法人(GPIF)は運用資産に占める国内株の比率を25%としている。株高によって比率を上回った分を四半期末にかけて調整する必
要がある。年度の最終売買日(29日)にかけて持ち高を減らすための株売りを出すとの警戒が強い。
年金の売り需要は巨額に上るとの試算もある。大和証券の阿部健児チーフストラテジストは22日付けのリポートで、GPIFなど主要な年金基
金をあわせて「売却必要額は信託銀行の12月末以降の売越額と約2.2兆円の乖離がある」と指摘している。23年末以降の必要な売却額を5.
8兆円と見積もったうえで、年金の売買を反映する「信託銀行」の売越額の合計(約3.6兆円)が2.2兆円下回っているとの計算だ。
売り圧力が強まっている一方で、目立った買い手は乏しい。決算期末の週は上場企業が自社株買いを手控えるとされる。一方で持ち合い
解消の売りは淡々と続けるため、差し引きでは売り越しになりやすい。東京証券取引所の投資部門別売買動向をみると直近は4四半期連続
で信託銀行と事業法人がともに最終週に株を売り越している。
年金基金の売りは一時的な需給要因だが、日米金利差を背景とした円安基調は当面は続くとの見方が根強い。この日から実質的に新年度
入りした日本株相場。市場の目線は25年3月期の企業収益に向かう。T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは「企業の来期予想が保守的でも、あとから上方修正するとの期待感は高い」と話す。
2024/03/28 12:30 日経速報ニュース
28日午前の東京株式市場で日経平均株価は反落した。前日比の下げは一時500円を超え、3月期決算企業の配当落ち分(約260円)を考慮
しても300円近く下げた計算だ。政府・日銀による為替介入への警戒に加え、年度末に向け年金基金が膨らみすぎた株式の持ち高を減らすと
の観測が日本株を下押ししている。
午前の終値は前日比479円29銭(1.2%)安の4万0283円だった。
日銀による為替介入への警戒感が相場全体の上値を抑えている。日本時間の27日夜に、財務省・金融庁・日銀が国際金融資本市場に関
する緊急の情報交換会合(3者会合)を実施した。前日の東京外国為替市場で円相場は1ドル=151円97銭まで下落し、1990年7月以来、
約34年ぶりの円安水準をつけていた。
28日午前11時時点の円相場は1ドル=151円30銭前後の水準にある。実際に為替介入に踏み切れば急速に円高に振れるとの警戒感
から、輸出関連銘柄は基準値を下回っている銘柄が目立つ。
トヨタ自動車は前日比で58円(2%)安の3795円まで下落した。配当分を考慮した基準値(3818円)に比べても安い。日野自動車やスズ
キも基準値を下回る水準まで下落している。年始以降円安と並行して株高が進んできただけに、円高に振れれば支えを失うとの警戒は強い。
為替の影響を受けやすい双日や住友商事、三菱商事などの商社株や精密機器株なども基準値を下回り、上値が重くなっている。市場では
「円高に振れるリスクを警戒し、買いが手控えられている」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)との声が聞かれる。
加えて「年度末の年金の売りが相場を押し下げている」(アイザワ証券の三井郁男ファンドマネージャー)との見方もある。
国内年金基金は四半期末や年度末に向け株式など保有資産の比率を調整するとされる。例えば公的年金を運用する年金積立金管理運用
独立行政法人(GPIF)は運用資産に占める国内株の比率を25%としている。株高によって比率を上回った分を四半期末にかけて調整する必
要がある。年度の最終売買日(29日)にかけて持ち高を減らすための株売りを出すとの警戒が強い。
年金の売り需要は巨額に上るとの試算もある。大和証券の阿部健児チーフストラテジストは22日付けのリポートで、GPIFなど主要な年金基
金をあわせて「売却必要額は信託銀行の12月末以降の売越額と約2.2兆円の乖離がある」と指摘している。23年末以降の必要な売却額を5.
8兆円と見積もったうえで、年金の売買を反映する「信託銀行」の売越額の合計(約3.6兆円)が2.2兆円下回っているとの計算だ。
売り圧力が強まっている一方で、目立った買い手は乏しい。決算期末の週は上場企業が自社株買いを手控えるとされる。一方で持ち合い
解消の売りは淡々と続けるため、差し引きでは売り越しになりやすい。東京証券取引所の投資部門別売買動向をみると直近は4四半期連続
で信託銀行と事業法人がともに最終週に株を売り越している。
年金基金の売りは一時的な需給要因だが、日米金利差を背景とした円安基調は当面は続くとの見方が根強い。この日から実質的に新年度
入りした日本株相場。市場の目線は25年3月期の企業収益に向かう。T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは「企業の来期
予想が保守的でも、あとから上方修正するとの期待感は高い」と話す。
2024/03/28 22:00 日経速報ニュース
三井住友銀行は4月1日、資金使途を社会課題解決につながる融資に限定したドル建ての定期預金「ソーシャル預金」の提供を始める。
低所得者向け住宅の建設や公共インフラの整備、医療技術開発などへの融資に使う。通常のドル定期預金と同じ金利水準で個人や企
業からお金を集め、サステナブル(持続可能性)関連融資の残高拡大を目指す。
個人向けは期間1年の定期預金を用意する。金利は通常のドル定期預金と同じ年4.5%とする。最低預入金額は50万ドル(約7600万円)
で、資金に余裕のある富裕層向けに始めるが、将来は最低預入金額を引き下げて顧客層を広げることも検討する。金融機関や一般企業
など法人向けも用意する。
金融包摂や教育、食糧などに関連する融資にも利用するが、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った融資に使い道を絞る。使途を限定
した預金商品には環境対策向けの「グリーン預金」があるが、貧困支援などに使途を限定した外貨預金は珍しい。ソーシャル預金の枠組
みは第三者機関の認証を得る。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は2030年までの10年でサステナブルファイナンスの実行額を累計50兆円にする目標を掲げる。
ソーシャル預金の導入で原資となる預金を集める。
https://i.imgur.com/it3uAw6.jpg
https://i.imgur.com/kkxJn9W.jpg
2024/04/02 13:13 日経速報ニュース
2日午前の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前引けは前日比50円(0.13%)高の3万9853円だった。日経平均は上げ幅を300円以上
に広げ、4万円台に乗せる場面もあった。例年、4月第1週は前年度の株高で国内機関投資家が含み益のある保有株を売却する「期初の益出
し」が出やすいとされる。想定外の大幅下落となった前日で期初の益出しはピークアウトしたとの見方が、押し目買いを誘った面がある。
期初の益出しは銀行など国内の機関投資家の特有の動きとされ、例年4月や下半期入りに当たる10月第1週の恒例イベントとなっている。含
み益のある株式を売却して新年度入り早々に実現益を計上することで、運用者の達成ノルマへの安心感を高める。あるいは、持ち高の現金化
でその後の運用をしやすくするといった狙いがある。
益出しを行う日本の機関投資家は、自身と同様の投資行動を他の機関投資家も取るであろうと想定し、我先にと益出しの売りを行う傾向があ
るとされる。誰かが売る前に自身の益出しを少しでも株価水準が高い場面で行いたいためだ。そうした横並びの動きが一斉に強まると、前日の
ような急落につながる。
恒例行事ながら1日の下げが大きかった一因に2023年度に日経平均が1万2327円(44%)も上昇し、史上最高値を更新するなど、歴史的な
株高だったことが影響しているようだ。前年度の株高の程度が大きかったほど、新年度入り早々に評価益が出ている持ち高を実現益にする動
きが大きく出やすい。それだけに2日も取引開始前は「益出しで前日のような下げに見舞われるのでは」との警戒感もあったが、午前の相場動
向を見るかぎり、投資家の懸念は杞憂(きゆう)に終わった。
株価指数に連動するパッシブ投資家は数日に分けて期初の益出しに伴う売りを出す傾向がある。そのため、今週いっぱいは売り継続が警戒
されるが、「前日で売りはピークアウトしたと市場ではみられている」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)。個別銘柄の値動
きからもその様子がうかがえる。1日は特段の売り材料がなくとも4%強下げた三菱重工業は2日午前は1.84%高と反発。1日に6%安だった
川崎重工業は0.50%高、5%安だった野村ホールディングスは0.77%高となった。
期初の益出しのピークが過ぎたとの見立てに立てば、押し目買いを入れやすい。さらに、4月は海外投資家の資金流入で株価が上昇しやすい
アノマリー(経験則)があることも株買いを後押しする。
04?23年までの直近20年間の4月の日経平均の月間騰落率を調べたところ、上昇した年が12回となった。フィリップの増沢氏の集計によると
、海外投資家は直近20年間で現物と先物の合計では4月に17回買い越しており、他の月と比べて買い越しの回数が最も多かった。欧米は12月
期決算が主流のため、この時期に企業からの配当金が投資家の手元に届き、その資金の一部を再投資として日本株にまわす動きと分析する。
野村証券の藤直也エクイティ・ストラテジストは1日付リポートで「海外投資家の先物買いの持ち高はニュートラル(中立)に近く、今後は買いが
入りやすい」としたうえで、「短期的な需給の見通しは株価の押し上げ方向に傾斜している」と指摘した。藤氏は外資系証券が日経平均先物を
21年4月以降のピーク水準まで積み増せば、日経平均は4万3500円程度まで上昇する可能性があるとも想定する。需給面では期初の益出しを
通過すれば、春の外国人買いが後ろ盾になるといったところか。
2024/04/03 日本経済新聞 朝刊
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は2024年度にグループ内のノンバンクのリテール事業を再編する。持ち株会社傘下の消費者金融
「プロミス」のSMBCコンシューマーファイナンス(CF)を、三井住友カードの完全子会社にする。ノンバンク市場で存在感を高める異業種を見
据え、スマートフォン(スマホ)を通じた金融サービスの拡充に布石を打つ。
近く発表する。旧プロミス(現SMBCCF)は12年、三井住友カードは19年に三井住友FGが完全子会社化した。大手銀では出資先のノン
バンクは消費者金融、カード、信販など業態別に独立して運営しているのが一般的だ。再編は今年度の下半期を予定している。グループの
カードと消費者金融の一体運営は3メガバンクで初めてとなる。
三井住友FGはクレジットカード大手の三井住友カードを中心にリテール事業の再編を進めている。23年に消費者金融のSMBCモビット、
24年4月にカードや信販を手掛けるSMBCファイナンスサービスを合併した。再編後は三井住友カードが個人向けノンバンク戦略を一手に
担う形となる。
SMBCCFの社長には4月1日、三井住友カードの専務執行役員を兼務する高橋照正氏が就いた。消費者金融とカードを一体運営すること
でデジタル化を進める。三井住友カードが持つアプリなどのノウハウをSMBCCFに共有し、プロミスのアプリを使いやすくする。与信判断
もカードのノウハウを取り入れて高速化する。三井住友FGのポイント事業「Vポイント」でも連携を深める。
背景にあるのは消費者金融を中心とした貸し付けの増加だ。日本貸金業協会によると、24年1月のノンバンク3業態の消費者向け無担保
貸し付け(住宅向けを除く)は前年同月比6.5%増の4兆2051億円だった。新型コロナウイルス禍後の「リベンジ消費」を取り込んだ。米国
でも消費者信用残高は市場予想を上回る伸びを確保する。
消費者金融大手のアコムでは新規顧客数が23年4~12月期に前年同期比で5割増えた。若年層の需要を取り込む。ある大手では貸し出
しから2年以内の債権の件数が全体の半分近くを占める。消費者金融会社の幹部は「将来の自分と『割り勘』して支出をする習慣が根付いて
きた」と強調する。
もう一つの背景にあるのが、新型コロナウイルス禍に伴いノンバンク市場で急速に存在感を高めてきた通信会社やIT(情報技術)など異業種
の参入組だ。LINEクレジットの「LINEポケットマネー」は23年に累計貸付金額が1000億円を超えたと公表。小口資金などの需要を取り込み
、業界大手に迫る規模の申込件数を確保した。
通信会社ではKDDI系の「au PAY スマートローン」が存在感を高めるほか、NTTドコモが22年に申し込みや返済、借り入れをスマホで
完結できる「dスマホローン」を始めた。累計貸付実行額は24年2月時点で370億円を超える。同社は事業の拡大をにらみ3月、中堅信販の
オリックス・クレジット(東京・港)を傘下に収めた。
異業種勢に共通するのはスマホでの手続きや顧客獲得に特化していることだ。既存の消費者金融各社もスマホでの借り入れ、返済ともに
対応するが、新規顧客の獲得にはテレビやインターネットでのCMに依存する傾向が強い。対話アプリや通信会社などから気軽に借り入れで
きることから異業種勢が顧客獲得で優位に立ち始めている。
楽天グループが相乗効果をにらみ銀行やカードなど金融子会社の再編について協議を始めるなど、組織形態を見直す動きも相次ぐ。消費者
保護と両立させながらどう個人の資金需要を開拓するかが問われている。
2024/04/04 12:33 日経速報ニュース
4日午前の東京株式市場で日経平均株価は反発し、4万円を上回った。前日は終値で下値支持線となっていた25日移動平均を下回ったが、
すかさず押し目買いが入った。海外勢の見直し買いに加え、新しい少額投資非課税制度(NISA)を使った個人の買いが想定以上に国内株に
向いていることが背景にある。国内外の投資家の日本株への強い買い意欲により、深い押し目のない上昇が続くかもしれない。
前日の米長期金利の上昇一服を受けた米ハイテク株高の流れを引き継いで、朝方から半導体関連を中心に買いが先行した。東京エレクトロ
ンが株式分割を考慮した実質的な上場来高値を更新。日経平均の上げ幅は一時700円を超えた。前引けは前日比649円(1.65%)高の4万
0101円だった。
3日午後に発表した今期の株主還元方針を好感して、伊藤忠商事がきょうも買われて上場来高値をつけた。香港のヘッジファンド、オアシス
・マネジメントがマーケティングの改善を要求した花王にも物色が向かった。日本企業の資本効率改善に期待した海外勢の買いが日本株の
上昇をけん引している。
上昇基調が続くもう1つの背景には新NISAによる日本株買いがある。日本証券業協会が3月に公表した証券会社10社(大手5社・ネット5社)
の2月末時点のNISA口座の開設・利用状況によると、1?2月の買付額(1カ月平均)は、成長投資枠とつみたて投資枠がともに前年1?3月の
月平均の3倍に達し、合わせて1兆7700億円となった。
海外株を投資対象とする投資信託の人気が圧倒的に高いとみられていたなかで、このうち46%が国内株(上場投資信託=ETFや不動産
投資信託=REITを含む)に振り向けられたことが市場関係者の間では驚きを持って受け止められている。
モルガン・スタンレーMUFG証券はこれまで、新NISAによる2024年の国内株の買付規模を2兆4000億円程度と見込んでいた。日証協調
べの月平均を12カ月換算して国内株の割合を乗じると、9兆7000億円程度となる。同証券の中沢翔株式ストラテジストらは3日付リポートで
「我々の想定の4倍で日本株に投資していることになる」と分析。「日本株に対する強気姿勢を維持する当証券としてはうれしい誤算だ」と指
摘した。
UBS証券は3日付で24年末の日経平均の見通しを4万5000円に設定した。担当の守屋のぞみストラテジストは「24年後半以降は、円高に
よる外需株を中心とした収益の悪影響を織り込むが、企業の為替前提との乖離(かいり)は限られるため、大幅な株価調整は想定しない」と
指摘する。日本株は年初からの急ピッチの上昇を経て、今後の上昇ペースが鈍る可能性が高いが、じりじりと水準を切り上げる展開となりそ
うだ。
2024/04/05 20:49 日経速報ニュース
証券株に売りが広がっている。5日の東京株式市場では業種別日経平均株価の「証券」が前日比2.4%安の3147.07となり、2月下旬以来
およそ1カ月ぶりの安値水準となった。大幅反落となった日経平均の下落率(2.0%)を上回った。株高が一服し、売買手数料収入が伸びると
の期待が後退。利益確定の売りが優勢となった。
指数構成銘柄では、大和証券グループ本社が3.2%安、東海東京フィナンシャル・ホールディングスが2.8%安、野村ホールディングスが2.6%
安、マネックスグループが2.0%安だった。
証券株は年初から3月下旬にかけて上昇基調が続いていた。業種別日経平均の「証券」は3月22日に直近高値の3395.59をつけ、23年末
から29%上昇していた。株高で売買が活況となり、手数料収入が伸びると期待された。
足元では米国の利下げ観測の後退や中東情勢の悪化を受けたリスクオフの流れから株高が一服。収益拡大期待がしぼみ、利益を確定さ
せる売りが広がった。
もっとも、「市場全体の商いはしっかりしており、証券会社にとってアゲンスト(向かい風)の状況ではない。一時的な売りにとどまる」(りそ
なアセットマネジメントの下出衛チーフ・ストラテジスト)との見方がある。東証プライム市場の売買代金は1月末から足元にかけて4兆?6兆
円台で推移する。前年同期は2兆?4兆円台だった。
ピクテ・ジャパンの糸島孝俊ストラテジストは「昨年からの株高や新NISA(少額投資非課税制度)がどれだけ収益貢献しているか、今後の
決算で見極めたい投資家もいる。しばらく様子見の姿勢が広がりそうだ」と話す。
2024/04/06 日経プラスワン
4月22日にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の共通ポイントの「Tポイント」が三井住友フィナンシャルグループの「Vポイント」と統合し
名称を「Vポイント」に統一します。今持っているTカードやTポイントは統合後も新Vポイントの仕組みに乗って使えます。
Vポイントは三井住友銀行や三井住友カードなどの利用でたまります。年会費無料のクレジットカード(クレカ)の三井住友カード(NL)などを
対象店舗で使うと、スマートフォンのタッチ決済は利用額の最大7%、プラスチックカードのタッチ決済は同5%のVポイントをもらえます。スマホ
アプリの「Vポイント」に1ポイント=1円で入金しVisa加盟店で使えます。統合後は「VポイントPayアプリ」になります。
今のTポイントとVポイントをID連携すると22日以降、両ポイントを合算できます。例えばTポイント加盟店でTカードを提示し三井住友カードの
クレカでタッチ決済すると、今はTポイントとVポイントが付きます。統合後はVポイントがダブルでたまります。連携しないとポイント合算や一部の
サービス利用ができないので要注意です。
新Vポイントの有効期限は今のTポイント方式で最終利用日から1年です。現在のVポイント利用者はクレカの種類によって異なる有効期限が
利用ごとの自動更新に変わり、失効の恐れが少なくなりそうです。
21日まで「カウントダウン祭」を開催中です。エントリーすると、モバイルTカード提示でポイント付与が2倍(新規登録会員は10倍)、対象の
コンビニと飲食店で三井住友カードの対象カードでスマホのタッチ決済をすると通常最大7%の還元率が同10%になります。他のポイントも
新Vポイントを意識しキャンペーンを行うかもしれません。
2024/04/10 日本経済新聞 朝刊
三井住友DSアセットマネジメントは米ニューヨーク証券取引所で日本株の「アクティブ上場投資信託(ETF)」をこのほど上場させた。アクティブ
ETFは指数連動ではなく独自に選んだ銘柄で運用する。ニューヨークでの上場は日本株対象で2例目とみられ、国内運用会社では初めて。海
外投資家は日本株への関心を高めており、需要を取り込む。
「レイリアントSMDAMジャパン・エクイティETF」を上場させた。ファンド設定などを香港の運用会社、レイリアント・グローバル・アドバイザーズ
(RGA)が担い、三井住友DSアセットが銘柄選びなどの実質的な運用を請け負う。
約30銘柄に集中投資し、東証株価指数(TOPIX)を超える成果を目指す。投資対象は電気機器や機械、IT(情報技術)など幅広く想定する。
中長期で成長するとみる銘柄に投資する。
日本ではアクティブETFが2023年9月に解禁されたばかりだが、米国では手数料や税金などのコストの低さなどから急速に普及している。
残高の規模は日本の100倍超とみられる。
三井住友DSアセットとしても実質的に運用するアクティブETFを米国で上場させるのは初めてだ。市場が広がる米国で個人の資金などを取
り込みつつ、本格的な市場でノウハウを得る狙いもある。
海外で日本株への関心が高まっていることもニューヨークで上場した理由の一つだ。日経平均株価は2月に34年ぶりに最高値を更新し、足
元でも最高値圏にある。アクティブETFの上場が続けば、米国の個人マネーを日本株へ呼び込む流れが加速する可能性がある。
2024/04/11 日本経済新聞 朝刊
日銀が10日発表した3月の貸出・預金動向(速報)によると、全国の銀行と信用金庫の貸出平均残高は前年同月比3.2%増の619兆
5660億円になった。不動産やM&A(合併・買収)向けの資金需要が引き続き強く、新型コロナウイルス禍後の経済活動の改善に伴って
残高の拡大が続いている。
銀行・信金の貸出残高の増加率は、2月(3.0%増)より拡大した。特に都市銀行などの伸びが4.2%増と高く、2021年3月以来の増
加幅だった。信金は増加幅が縮小傾向にあり、3月は前年同月比0.4%増にとどまった。
預金残高も増加した。3月の平均残高は前年同月比2.0%増加し1039兆8999億円だった。2月(1.9%増)からわずかに伸び率は
拡大した。
日銀が3月にマイナス金利政策を解除し、金融機関では預金金利を引き上げる動きが活発になっているが、全体の残高に目立った影響
はないとみられる。
2024/04/14 日本経済新聞 朝刊
超低金利下で敬遠されてきた預金の位置づけが変わってきた。「金利ある世界」では金融機関の稼ぎの源泉として預金の重みが増すためだ。
各行とも金利を上げて獲得に動いているが、相続に伴う資金移動が預金の東京集中を加速させる要素として浮上してきた。60兆円規模の資金
移動は地方金融機関にとって試練となる。
「メガバンクに流れないよう、相続分を定期預金してくれたら金利を上乗せしている」。奈良県の信用金庫幹部は打ち明ける。この信金の預金
は前年比プラスだが、縮小傾向にある。預金者も高齢層が多く、相続に伴う預金流出への危機感は強い。
三井住友信託銀行は相続に伴い、今後30年間で58兆円の家計の金融資産が全国から東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)に流入すると
試算する。東京圏から他地域への流出分を引いても東京圏の純増額は38兆円にのぼる。奈良や秋田、愛媛など17県では家計の金融資産の
3割以上が県外に流出する可能性があるという。
三井住友信託の青木美香主任調査役は「東京圏の吸収力はブラックホール並みで、家計の金融資産の集中は一段と進む」とみる。地方在
住の親が亡くなり、都市部に住む子供が預金を相続する際、営業地域が限られる地域金融機関は「流出超過」になりやすい。
信金の中央機関である信金中央金庫によると2024年2月時点の全国の信金の預金残高は162兆円。前年同月比1600億円増えたが伸
び率は0.1%に縮んだ。20~21年は新型コロナウイルス禍の支援金で8%を超えるときもあったが、足元では実質無利子・無担保融資(ゼロ
ゼロ融資)の返済に伴う預金流出も起きている。
直近23年11月時点で全国11地区のうち東北や北陸、中国、南九州など6地区の預金残高がすでにマイナスになった。信金の預金が全体
でも減少すれば21年ぶりとなる。
すでにマイナスに転じたのがJAバンクだ。23年5月に前年割れとなり、24年2月までの10カ月間のうち9カ月は前年実績を下回った。信金
とJAバンクに共通するのは高齢化が進む地方が地盤という点だ。
相続マネーの受け皿になっているのが大手行だ。日銀によると大手行の預金残高は24年2月までの1年間で15兆円増えた。信金より営業
地域が広い地銀の預金は全体では伸びを維持しているが、個別にみると残高が前年を下回る地銀もでてきた。
「これからは預金をとりにいく」。日銀が3月にマイナス金利政策を解除した後、みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は行員に意識
変革を訴えている。資金の振り向け先が乏しかった超低金利下では預金はコストのかかる重荷で、余剰資金を抱えて日銀にあずければマイナ
ス0.1%を課されてきた。
マイナス金利解除で前提が変わった。3メガバンクは0.001%だった普通預金の金利を0.02%に引き上げ、長めの資金を確保しようと定
期預金の金利も引き上げた。
ポイント経済圏の利便性や比較的高い金利を武器に預金を伸ばすネット銀行の存在も大きい。楽天銀行の預金残高は23年12月に10兆3
100億円と、1年間で1兆4700億円増えた。口座数も1400万を超え急成長が続く。ネット銀のサービスで満足すれば地域金融機関で口座
開設する動機は薄れる。
銀行や信金にとって預金は運用の元手でビジネスの基盤だ。預金が減れば運用リスクを取って収益をあげにくくなり、不良債権処理や融資
先への経営支援の余力は落ちる。
預金が増えた時代の終わりは地域金融の地殻変動の導火線になる可能性がある。
(湯浅兼輔、北島空)
2024/04/15 04:00 日経速報ニュース
住友グループの源流である別子銅山(愛媛県新居浜市)で使う機械の工場として、1888年に産声を上げた住友重機械工業。長い歴史の中で
事業の裾野を広げてきたが、強みが見えにくくなり現在の企業価値は理論値の7割にとどまっている。実はある半導体製造装置の分野では世
界最大手の牙城を崩せるほどの実力もある。半導体銘柄への転身を図れば、企業価値の毀損を脱する可能性も秘める。
「一般商船の建造の新たな受注は2024年度以降止める」。下村真司社長は2月の決算説明会でこう語った。別子銅山での機械工場と並んで
祖業の一つとして続けてきた造船事業から撤退することを決めた。事業規模が小さく、撤退による業績への影響は限られる。それでも大きく打ち
出したのは「株式市場に事業再構築への本気の姿勢を示す」(同社)狙いがあったからだ。
国の防衛費拡大などを背景に重工各社が株価を上げるなか、住友重機械の上昇率は相対的に小さい。同社は機械の動力伝達に使う変速機
・減速機、建設機械など幅広い事業を手掛ける。業界では複合経営ゆえに企業価値が割り引かれる「コングロマリット・ディスカウント」のきらいが
少なからずあるが、同社での影響は深刻だ。
複合企業の企業価値分析に使う「サム・オブ・ザ・パーツ(SOTP)法」で理論価値を出すと、その影響が浮かび上がる。日経バリューサーチの
データを活用し、各事業の営業利益と、それぞれの事業が属する業界内で事業価値(EV)が利益の何年分に当たるかを示すEV/営業利益倍率
を掛け合わせて事業ごとの理論価値を導き出した。
試算した事業価値の合計は1兆円に迫る。足元での株式の時価総額(5831億円)に、純有利子負債を加えた企業価値は6497億円となり、3割
下回る。企業価値は各事業の相乗効果を生み出すどころか事業価値の合計にも満たない。
企業価値を損なっている証左は他にもある。PBR(株価純資産倍率)は三菱重工業(2.4倍)や川崎重工業(1.4倍)などで1倍を超えるのに対し
、0.9倍にとどまる。
コングロマリット・ディスカウントを解消する手掛かりはあるか。
造船業の後を継ぐ子会社と大型の鉄鋼構造物を手掛ける子会社が組み、洋上風力発電用の設備ビジネスに乗り出すなど、複合経営を生か
そうとはしている。だが、こうした事業間シナジー(相乗効果)を創り出す取り組みは限られる。
板となるシリコンウエハーに注入し、ウエハーに半導体としての電気的な特性を与える工程を担う。半導体の製造に欠かせず、市場調査会社
グローバルインフォメーションによると同装置の世界市場は30年に113億5000万ドル(1兆7000億円程度)と22年の2.3倍となる。
1980年代、オイルショックのあおりでエネルギーを多く使う重厚長大産業が不況に陥った。そんななかメカトロニクスの技術などを生かして進
出したのがイオン注入装置をはじめとする半導体製造装置だった。
実は住友重機械はイオン注入装置の世界シェアで半導体装置の巨人、米アプライドマテリアルズ(AMAT)などに次ぐ3位にある。同装置の
シェアは6?7割のAMATに対して1割だが、スマートフォンや車載用カメラなどに使うイメージセンサー用では過半のシェアを占める分野がある。
生成AI(人工知能)向け半導体の需要もある。
稼ぐ力は高い。2023年12月期の連結営業利益率は7%で、そのうち傘下で事業を手掛ける住友重機械イオンテクノロジー(SMIT、東京・品川)
の利益率は20%に達する。試算によると事業価値は約2600億円に及ぶ。岩井コスモ証券の斎藤和嘉氏は「用途によってはAMATのシェアを
奪える。実現すれば評価もあがる」とみる。
2月、26年12月期まで3年間の中期経営計画をまとめた。連結営業利益で1000億円(前期743億円)、事業活動に投じた資金を使い効率よく
利益を上げているかを示す「投下資本利益率(ROIC)」で8%(前期7%)をめざす。株式市場では「まずPBR1倍へのシナリオは示された」(大和
証券の田井宏介氏)と評価する声もある。
だが資本コスト経営の徹底は欠かせない。住友重機械は資金の出し手である株主や債権者が期待する最低限のリターン「加重平均資本コ
スト(WACC)」を6?8%と見込む。30年12月期までに全事業のROICでWACCを上回る目標を掲げるが、プラントなど一部で目標を下回る状況
が当面続き、及第点にとどまる。資本効率を改善する具体策も乏しい。
「我が社を活性化させる切り札だ」。半導体装置への参入当初、当時の同社首脳は期待を込めてそう語っていた。ただ今では「事業を切り出し
上場すれば注目される。他の事業と同じ会社で抱えるのは残念」(半導体セクターの証券アナリスト)と皮肉る声もある。「重機械」の名を捨
て半導体銘柄になるくらいの覚悟で資本を傾斜配分することが、真の企業価値への近道かもしれない。
【関連記事】
・住友重機械、造船事業から撤退 洋上風力や建機に注力
・機械株の株価上昇率、「脱造船」企業が上位 23年末比
・住友重機械子会社、愛媛新工場で半導体製造装置生産2倍
2024/04/17 日本経済新聞 朝刊
日銀が16日公表した3月の当座預金残高によると、3メガバンクを含む都市銀行の残高が前月から約23兆円増加し、208兆3940億円に
なった。3月16日から4月15日までの平均残高で、当座預金の一部にマイナス金利を適用する政策が廃止されたことで残高が増えた可能性
がある。
金融機関は資金決済を行うため日銀の当座預金口座にお金を預けている。日銀は2016年からこの当座預金の一部にマイナス0.1%の
金利を適用していたが、3月19日にマイナス金利の終了を決めた。
マイナス金利の解除以降は、法定準備を除く超過準備額に0.1%の金利をつけている。法定準備分を除く約202兆円の残高が維持される
と考えると、日銀は年換算で2000億円規模の利息を大手銀に支払うことになる。
これまでは日銀にお金を預けすぎると、金融機関側に利払い負担が生じる構図だったため、銀行はマイナス金利の適用を回避するため余剰
資金の運用先を模索してきた。短期の資金をやりとりする市場に資金を放出するなどしてマイナス金利の適用を免れていた。
マイナス金利解除後は「当座預金に積めば0.1%の金利がつくため、短期市場では大手銀が資金の取り手に転じている」(短期市場関係
者)とみられる。りそな銀行の担当者は「無担保コール翌日物や5年以下の国債などで柔軟な運用ができるようになってきた」と話す。
2024/04/18 日本経済新聞 朝刊
住信SBIネット銀行は17日、短期融資の基準となる短期プライムレート(短プラ)を0.1%引き上げて年1.775%にすると発表した。5月1日
から適用する。短プラは変動型住宅ローン金利の基準で、同行で借りたローン金利は上がる可能性が高い。
日銀が3月にマイナス金利政策を解除してから短プラの引き上げが表面化するのは初めて。預金金利の引き上げに伴う調達コストの上昇を反
映したとしている。日銀が2016年2月にマイナス金利政策を導入した際、住信SBIは短プラを据え置いていた。
住信SBIの4月時点の変動型住宅ローンの基準金利は2.775%で最優遇金利は0.298%。銀行は一般的に住宅ローンの基準金利を毎年
4月1日と10月1日に見直している。
10月までに再び短プラを下げなければ、10月から変動型の基準金利は上昇。25年1月の返済分から影響する。
住信SBIは23年3月期の住宅ローン実行額が1兆4000億円超で、メガバンクを上回る。残高ベースでは23年12月末時点で6兆円を超え
このうち変動金利型は93%を占める。
短プラは1年未満の短期融資の基準となる金利。住信SBIが短プラを上げるのは07年に営業開始してから初めて。日銀によると最も多くの
銀行が設定している水準(最頻値)は09年1月以来、1.475%で据え置かれてきた。変動型の住宅ローンの基準金利は多くの大手行が短
プラに連動して決めている。
2024/04/22 05:00 日経速報ニュース
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と三井住友フィナンシャルグループ(FG)のポイント事業統合で「新生Vポイント」が22日にスタートす
る。会員数は8600万人程度と国内有数の規模となる。世界1億店以上のVisaカード加盟店で使えるなど金融面の強みを生かし、共通ポイント
で先行する携帯大手に挑む。
「2つのポイントの良さを合わせ、みんなが自由にどこでも使えるポイントになる」。2023年6月、三井住友FGの太田純社長(当時)はポイント事
業統合の記者会見で力を込めた。
CCCのTポイントと三井住友FGのVポイントを統合し、新生Vポイントに統一する。共通ポイントの草分け的な存在で約20年の歴史を持つTポイ
ントの名称は消えることになる。会員数は単純合算で1億5000万人規模で、重複を省くと8600万人規模になるとみられる。運営会社にはCCC
側が6割、三井住友FG側が4割を出資する。
最大の強みは世界200カ国以上に1億店以上あるVisa加盟店でポイントをためて使えることだ。CCCの高橋誉則社長は「世界で使える場所が
急速に広がる」と話す。実際にVポイントは会員1人あたりの年間ポイント獲得額がTポイントの8倍だ。1000円以下の決済が多いTポイントに対し
数千円、数万円単位のVポイントはたまりやすかった。
さらに三井住友FGはスマートフォンを起点とした金融サービスへの転換を進めている。核になるのが、総合金融サービス「Olive(オリーブ)」だ。
銀行、カード、証券、保険などのグループの金融サービスの利用状況に応じてポイント還元率を高める。
Tポイントは知名度が高い一方、決済面の機能が弱い。CCCの本業であるDVDレンタル市場の縮小などもあり、ここ数年は苦戦していた。一方
Vポイントはクレジットカードのタッチ決済など利便性は高いが、知名度に劣る。
両社の思惑が一致し、ポイントの統合交渉はわずか1カ月でのスピード合意だったという。CCC創業者の増田宗昭会長は「太田さんに会った時
一発で『おもろいオッチャンやな』と思った。一緒にやりたいと思った」と話す。その太田氏は膵臓がんにより23年11月に65歳で急逝した。
国内のポイント市場は成長が続いている。矢野経済研究所(東京・中野)によると、27年度の年間ポイント発行額は22年度比37%増の3兆39
99億円に膨らむ見通し。
共通ポイントでは携帯大手の4社の存在感が強い。楽天グループの「楽天ポイント」、NTTドコモの「dポイント」、KDDI系の「Pontaポイント」、ソフ
トバンク系の「PayPay」は通信や金融サービスを融合させて顧客を囲い込もうとしている。
NTTドコモはアマゾンジャパン(東京・目黒)と連携し、弱点だった電子商取引(EC)を補強している。楽天グループは18日、決済やポイントなど
のアプリを統合すると発表した。
MMD研究所の24年1月の調査では「最も活用しているポイント」は、TポイントとVポイントの合計で約8%にとどまる。ある共通ポイントの関係者
は「脅威だとは思っていない」と話す。
複数のポイントを活用する30代会社員の女性は「その時々にお得なポイントを集めている。早速Vポイントへの移行キャンペーンも利用している」
と話す。MMD研究所の伊藤南美研究員は「Visaの加盟店で利用できることは大きいが、VポイントがVisaだと消費者に分かりやすくアピールでき
るかが鍵だ」と話す。
【関連記事】
・楽天、決済アプリ統合 ポイントと一本化でPayPay対抗
・ドコモ、Amazonと決済・ポイント連携 経済圏拡大へ
・JR東日本、「Suica経済圏」再構築 金融サービスに参入
2024/04/26 日本経済新聞 朝刊
【シンガポール=佐藤史佳】米ブラックロックとシンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスが設立した資産運用会社、デカー
ボニゼーション(脱炭素化)パートナーズは、1号ファンドで14億ドル(約2200億円)の調達を完了した。みずほ銀行と三菱UFJ銀行も参画する。
1号ファンドには18カ国から30の機関投資家が参画する。みずほと三菱UFJのほか、米保険大手のオールステート、スペインの大手銀行BB
VA、デンマークの投資会社KIRKBIなどが機関投資家として出資する。年金基金や政府系ファンド、富裕層の資産を管理するファミリーオフィス
からも資金を集めた。
新ファンドは脱炭素関連の事業に取り組む企業やレイターステージ(成長後期)のスタートアップに投資する。
2024/04/26 05:00 日経速報ニュース
日銀は26日に金融政策決定会合を開く。会合後に初めて示す2026年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)の前年度比上昇率は2%程度
となる見通しだ。低金利が円安進行の一因になっているとの指摘もあるが、日銀は3月会合でマイナス金利政策を解除したばかりで、市場関係
者の多くも金融政策の「現状維持」を見込む。
植田和男総裁が26日午後に記者会見し決定内容を説明する。
日銀は3月会合でマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切った。市場は追加利上げの時期に注目しているが、今回の会合での政策
変更を見込む声は少ない。
QUICKが15日発表した4月の外為月次調査によると、日銀が追加利上げに動くタイミングは年内では10月(22%)が最多で、4月の利上げを見込
む声は2%だった。
日銀は一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率が2%に達する可能性が高まっているか見極めた上で追加利上げを判断する意向だ。植田
総裁は23日の国会で基調的な物価上昇率が「現状は2%をやや下回っている。緩和的な金融環境を維持するのが適切だ」と答弁した。
3カ月ごとに示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も焦点となる。26日の会合後は24?26年度の3年間の物価見通しを盛り込んだ最新
のリポートを公表する。
日銀は3月会合でマイナス金利を含む大規模な金融緩和策を解除した際に、政府と掲げる物価2%目標の実現が「見通せる状況に至った」と
説明していた。今回のリポートで初めて示す26年度の物価上昇率見通しは2%程度とするとみられ、2%目標に近い水準が5年連続で続くことに
なる。
1月会合時点で2.4%の上昇とした24年度見通しも引き上げる可能性がある。足元で円安が進んでいることに加え、中東情勢の緊迫化で原油
など資源価格が上昇するリスクがある。5月検針分の電気料金から再生可能エネルギーの普及のために上乗せする賦課金が引き上げられるこ
とも上振れの要素になりそうだ。
市場は政策変更の有無だけでなく、植田総裁の円安に絡む発言に注目している。外国為替市場で円は1ドル=155円台とおよそ34年ぶりの
水準まで円安が進んだ。植田総裁は18日のワシントンでの会見で円安で基調的な物価が上がって「無視できない大きさの影響になれば、金融
政策の変更もありうる」と将来の利上げに含みを持たせている。
長期国債の買い入れを巡る対応も焦点だ。3月会合でこれまでと同程度の買い入れを続ける方針を決めた。「将来的には買い入れを減額」(
植田総裁)する考えだが、具体的な時期は示していない。日銀の国債保有割合(国庫短期証券を除く時価ベース)は発行残高の過半に達して
おり、市場は日銀がいつ量的引き締め(QT)に踏み切るかも注視している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-26/SCHAWVT1UM0W00?srnd=cojp-v2
銀行株は過去数十年放置、インフレ本格化なら新フェーズ入りの声
バリュー株、足元で対グロース株のアウトパフォーム度合い強める
マイナス金利政策の終了とともに、いったん勢いが衰えるかに見えた銀行株を含むバリュー(割安)株。だが、外国為替市場で円安が止まらず
市場では日本銀行が再度の金融引き締めに向けたタカ派的な姿勢を強めるのでないかとの見方がくすぶり、再びバリュー株への追い風が吹く
可能性が出てきた。
円相場が対ドルで34年ぶりの安値を更新し、円安による国内経済への悪影響を懸念する声が経済界でも日増しに高まっており、植田和男総
裁が早ければ今回の会合で再利上げに向けた布石を打つのではないかとの観測が浮上している。市場参加者の金融政策見通しを映すオーバ
ーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は10月までの0.25%への利上げ実施を織り込み、7月までの可能性も5割程度織り込まれてきた。
住友生命バランスファンド運用部の村田正行部長は「植田総裁は円安が物価に与える影響を考慮するだろう」と予想。今回の会合で利上げは
考えられないが、「利上げをにおわせるスタンスを打ち出す可能性がある」と述べ、こうした思惑が最近の銀行株の堅調につながっていると指摘
した。
日銀の年内利上げ予想が8割占める、最多10月は4割に増加-サーベイ
3月のマイナス金利解除に際し、日銀は当面緩和的な金融環境が継続すると強調。市場も追加利上げは当分ないとみて、銀行株を含むバリュ
ー株相場は終わるのではないかとの見方も出ていた。
UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストは、多くの投資家はマイナス金利の終了で日銀の政策変更はひ
とまず終わりと考えてきたが、日銀がいずれ利上げに動く大きな方向性は変わらないと指摘。こうした点が市場で見過ごされており、「銀行は
過去数十年にわたり放置されてきたセクターだけに、日本が本当にインフレになるのなら新たなフェーズだろう」と語る。
2024/04/30 11:37 日経速報ニュース
「日本は他の先進諸国に比し、与党政権が安定している」
これが、外国人から見た日本株のメリットの一つであった。
国賓待遇で訪米。議会英語演説でスタンディング・オベーションを受けた岸田首相の姿が全米に放映されたことで、つい最近まで米国内での
印象度は悪くなかった。
それが今や、補欠選挙の与党全敗で、日本株を取り巻く政治環境の不透明性がにわかに海外でも醸成されつつある。週末にも外国勢から、
日本の政治に関する質問が相次いだ。筆者は、日本発ニュースへの注目度が高まり、補選結果まで彼らが把握していることに、日本株への
本気度を感じている。
そこに、円も迷走していることで、日本株保有見直しの動きが、徐々に出始めた。
確かに、1ドル=160円ともなれば、日本株市場は、外国人投資家から見れば「バーゲン会場」とも映る。
とはいえ、春闘で大幅賃上げの事例が多く見られたことで醸成された、実質賃金増加による物価と賃金の「良い循環」実現の期待感に、超
円安は冷や水を浴びせる展開になっている。期待感で日本株を購入、あるいは、検討を始めた外国人投資家の心理が、今や揺れていること
が、彼らとの対話から伝わってくる。
特に、円安に関しては日銀と米連邦準備理事会(FRB)の情報発信の違いが話題になっている。
筆者が最も印象的と感じた質問は「日銀会合で参加者たちはドット・チャート(政策金利見通し)のような個人的金利予測を行わないのか」。
「日銀総裁の記者会見での発言が断片的に英訳されて伝わってくるが、よく理解できない」という素朴な疑問も目立つ。
「確か、今回の日銀会合では、利上げ見送りが事前予測であったと聞いている。緩和継続も想定内であろう。それが、結局、総裁の円安に
関する直接的発言が不十分、あるいは分かりにくいとの理由で、円相場はレッドラインを突破した感がある」「市場は円安について、日銀総裁
から不安感を除去するような発言を事前にそれほどに期待していたのか。我々遠く観客席から見ていた視点では、なにやら試合中にゴール
ポストが移ったような印象だ。これでは、まさしく投機筋の思うつぼではないのか」。これは、日本株を買ったものの、円迷走に不安感を覚える
というヘッジファンドの本音の感想だ。
筆者も、日銀会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)の際の中央銀行トップ記者会見を見続けてきたが、たしかに、日銀のほうが日本人で
も解釈が難しい。行間を読まねばならず、禅問答のごとく難解だ。しかも、同じような質問が繰り返される。対して、FRBのほうは、若手の女性
記者らが、「ハロー!ミスターチェアマン」と明るく切り出すシーンなど、フランクな印象で、質問の内容も多岐にわたる。FRB高官らが、常日頃
、利下げ回数など具体的に意見を述べているので、日銀に比し、かなり突っ込んだ議論が交わされる。
いっぽう、円売り投機に走っているヘッジファンドは「高笑い」かと思いきや、介入当局との我慢比べの様相で、緊張感がひしひしと伝わって
くる。140円台後半から150円程度で円を売った人たちは、声高に、「介入があっても150円に戻すのは難しい」と強調する。しかし、円という
通貨を持っていないのに、円を売った人たちの心理は、早々に円を買い戻さねばという焦りに揺れるものだ。そもそも損切りより利益確定のほ
うが「欲との戦い」で難しい。まして、相手が介入当局となれば、これは我慢比べとなる。先週金曜日に発表された米シカゴ・マーカンタイル取
引所(CME)の通貨先物取引(IMMポジション)の円ショート件数はネットで17万9919枚と記録的な高水準まで膨張したが、この数字は先週
火曜日時点のもので、日銀会合後の円売り枚数はまだカウントされていない。いずれにせよ、市場の底流には、円買い戻しマグマがふつふつ
と蓄積している。当面、円売り優勢論が圧倒的だが、投機筋の本音は、いつ臨界点に達するのか、戦々恐々なのだ。彼らの悪夢は、米インフレ
が今後意外に順調に収束して、FRBも安心して利下げできる市場環境になることだ。FRBの制御不能な地政学的リスクやら、財政赤字膨張に
よるインフレ再燃は米金利高止まり要因としてひそかに「期待」しているところとなる。
現時点では、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が明確に円安方向を示唆している。とはいえ、市場の大多数が同じ方向を向くことは
不気味なものだ。
2024/05/02 日本経済新聞 朝刊
3メガバンクの2024年度の採用計画が出そろった。三菱UFJ銀行は中途で23年度比7割増の600人を採用し、新卒を初めて上回る見通し
だ。3メガ銀全体で中途比率は45%と5割に迫る。デジタル化や富裕層向けビジネスの重みが増すなか、新卒一括採用で様々な部署を経験
させて人材を育成してきた従来の手法が転機を迎えている。
三菱UFJ銀行は24年度に中途600人、新卒400人を採用する計画で、中途の数がはじめて新卒を上回る見通しだ。23年度は中途347人
新卒354人だった。システムやデジタル関連などに重点を置き採用する。25年3月期から新しい中期経営計画が始まったのを見据えて人材を
手厚くする。面接回数の削減などで採用の裾野拡大を急ぐ。
三井住友銀行の中途採用は過去最高だった23年度と同水準の200人となる見通し。持ち株会社や銀行などのグループ各社で従業員を一
括採用するみずほフィナンシャルグループ(FG)は、23年度実績比では減少するが22年度比では2割以上多い400人を採用する。
24年度の3メガ銀の中途採用は1200人に達する見通し。中途、新卒を合算した3メガ銀の採用数は2650人となり、中途比率は45%と
5割に迫る勢いだ。
これまでは3メガ銀の中途採用の割合は18年度で5%にとどまるなど、新卒一括採用を優先する色が濃かった。日本経済新聞社の採用計画
調査では同じ時期に主要企業は20~30%程度で推移しており、24年度は4割に達した。3メガ銀の中途採用の割合は新型コロナウイルス禍
を経て主要企業とほぼ同水準に追いついたことになる。
17年度以前も各行中途は数十人規模といい、全体の割合からみてわずかだった。24年度の中途比率45%は過去最高とみられる。
3メガ銀が中途採用を強化するのはデジタル技術の活用やウェルスマネジメント(富裕層向け資産運用)、プロジェクトファイナンスなど広い分
野で即戦力の人材を採用する必要が高まっているためだ。外部で知見を得た人材を採用しなければ事業強化で異業種も含めた競争におくれ
をとりかねない危機感がある。
みずほFGは専門職に絞った中途採用に限らず、異業種を経験して間もない人材を対象にした第二新卒の採用を始めた。リテール(個人向け
営業)や大企業、IT(情報技術)をはじめ必要な人材を採用するための事業部門が主導した形での採用も始めている。従来は人事部門が採用
を主導していた。
新卒でも専門性への志向が強い人材を採ろうとする動きが目立つ。三井住友銀はデジタルやIT分野で採用する人材を3倍程度に増やす。
「IT・デジタルコース」と位置づけ、採用数はこれまで15人程度だった。採用の割合がIT・デジタル分野で1割程度まで高まることになる。
3メガ銀の新卒採用はマイナス金利環境のもとで効率化を進め、減少傾向が続いてきた。直近のピークだった15年度は3メガ銀合計で新卒
を5000人超採用していたが、一時1000人強にまで減少。近年は「金利ある世界」も見据えて採用を強化したものの、24年度計画で5%減
の1450人と頭打ちの色が強くなっている。
雇用市場の流動化で転職が活発になっていることもあり、異業種や同じ大手行の中で転職する動きも珍しくなくなっている。各行にとって即
戦力人材の確保は喫緊の課題となりつつある。JPモルガン・チェースが年1兆円規模をデジタルに投資するなど、特にデジタル人材の確保で
投資を進める国外の大手行に劣後できない事情もある。
メガ銀では採用戦略の巧拙が競争力に影響するという危機感が強まる。採用市場ではコンサルタントや大手商社が高給を武器に新卒や
中途の人材をひきつけ、人材会社経由の採用では年収の3割程度とされる紹介料の負担も重くなる。3メガ銀は従業員の紹介やアルムナイ
(卒業生)の採用を強化して人材の確保を進める方針だ。
2024/05/02 12:51 日経速報ニュース
2日午前の日経平均株価は小幅に反発し、前引けは前日比25円66銭(0.07%)高の3万8299円71銭だった。米利上げ懸念の後退などが
押し目買いを誘ったとみられるが、朝方は節目の3万8000円を割り込む場面があるなど地合いの弱さも目立った。これまで日経平均を歴史
的な高値圏に押し上げてきた材料のうち、半導体関連の業績期待と外国為替市場での円安進行という「二本柱」が揺らぎつつあるなか、上
値追いの機運もしぼみ始めてきたようだ。
日経平均は朝安後急速に下げ渋ったが、市場では「米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
の発言というより、日本の4連休を前にCTA(商品投資顧問)などによる売りポジションの縮小など需給的な動きだったようだ」(明治安田アセ
ットマネジメントの竹田太樹トレーダー)との見方が多い。
1日の米株式市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が3.5%安と急落した。半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が発
表した4?6月期の売上高見通しが慎重との見方が広がった。生成人工知能(AI)関連の需要が市場の期待ほど盛り上がっていないうえ、
スマートフォンやパソコンなどの回復も遅れている。
国内ではイビデンが1日、25年3月期(今期)の連結純利益が前期比17%減の260億円になる見通しだと発表した。パソコンや汎用サーバ
ー向けの需要回復が遅れるためで、市場予想平均のQUICKコンセンサス417億円(12社、4月23日時点)を下回った。前週に今期見通しを
発表したアドバンテストも市場予想を大きく下回るなど、今回の日米の主なハイテク企業決算は、市場の高い期待に届かず失望売りを浴び
る例が続出している。
FOMCの直後、ニューヨーク外国為替市場で円相場が1ドル=153円台まで急速に円高が進行する場面があった。日本政府・日銀が円買
い介入に再び踏み切ったという思惑も出ている。市場では「介入したかどうかは分からないが、当局がこれ以上の円安は許容しないと考え
る投資家が増えてきた」(運用会社のファンドマネージャー)。今期も円安による輸出企業の利益上積みを期待していた投資家は、むしろ円
高に振れるリスクを意識する必要が出てきた。
SMBC日興証券によると、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄で1日までに業績見通しを発表した224社の会社側の営業利益計画は前期
比0.1%増にとどまる。期初は保守的な見通しを立てることが多いうえ、開示率も現時点で15.8%と低いため参考数値ではあるが、少なくとも
企業側は今期の世界経済の現状などを楽観的にみていないことは間違いないだろう。
もちろん日本株は半導体の業績や円安進行への期待だけでなく、デフレ脱却やコーポレートガバナンス(企業統治)の改革といった他の
買い材料もある。りそなアセットマネジメントの戸田浩司シニア・ファンド・マネージャーは「期待感が完全に消えたわけではないので持ち高を
減らす理由はない」と話す一方、「米国の金融政策や景気が読めないので無理に上値を追いたいと考える投資家も少ない」とみていた。
日経平均は当面、金融政策や為替、企業業績をにらみつつ停滞感の強い展開が続く可能性がありそうだ。
2024/05/03 日本経済新聞 朝刊
日銀がマイナス金利解除後の地域金融機関の不動産融資動向を警戒している。低金利下で利ざやを厚めにとれる不動産向けは重要な
収益源となってきた。日銀の集計では地域金融機関の不動産向け融資残高はこの10年で約6割増加したが、金利上昇や市況変化によっ
て地銀の収益を下押しするリスクが重荷になっている。
地域金融機関の不動産融資の残高は、36兆円となった2009年に大手行の伸びを追い越し、その後も拡大を続けてきた。直近(23年
9月)は大手行より3割多い67兆円にまで膨らんだ。異次元緩和下の低金利で不動産融資は過熱し、特に人口減少で経営環境が厳しい
地方銀行・信用金庫が収益源として頼ってきた構図が浮かび上がる。
宮城県地盤の仙台銀行は、直近23年9月末の不動産向け融資残高が約2150億円と16年3月末比で2倍に膨らんだ。同行の担当者
は「震災からの復興需要や再開発など不動産事業者の資金ニーズは強く融資が増えた」と話す。足元で地価上昇による過熱感が指摘され
ているが、「適正な審査のもとで融資を続ける」としている。
静岡銀行を傘下に持つしずおかフィナンシャルグループも23年度からの中期経営計画で、静岡県外でも不動産向けの貸し出しを強化す
ることを盛り込んでいる。
地方都市の大規模な再開発も今後数年間続くと見込まれている。引き続き不動産向け融資に力を入れる地銀は多い。電子商取引(EC)
サイトの発展で倉庫などの需要が高まり、オフィスビルや倉庫など物流施設向けの物件も増えている。
日銀は今後の金利上昇に伴う収益へのリスクを警戒している。日銀が居住用賃貸業向け融資(アパートローン)の金利を調べたところ、
地銀では金利の変動リスクをとらない固定金利での貸し出しが6割程度を占め、融資期間も平均24年と長期間に及ぶ。
一方、融資の「原資」となる預金の調達コストは足元で上昇傾向にある。日銀が3月にマイナス金利を解除し、地銀を含む多くの銀行が
普通預金金利を従来の0.001%から0.02%に見直した。大半の金融機関にとって、普通預金の金利を引き上げるのは日銀が最後に
利上げした07年以来17年ぶりだ。
「固定貸しの金利収入が変わらない一方で、預金金利が上がれば利ざやが縮小し、収益に下押し圧力が生じることに留意する必要がある」。
日銀の担当者はこう解説する。変動金利の場合でも、金融機関の競争環境が厳しいなかで十分に貸出金利を引き上げられるかも分からない
といった事情がある。
不動産市場悪化の影響が広く連鎖する懸念もある。日銀は4月にまとめた金融システムリポートで、米欧での金利上昇による不動産不況の
あおりが日本にも波及すると想定してストレステストを実施した。国内の三大都市圏のオフィス物件でバブル崩壊時に相当する価格下落が起
こるなどの条件をおいた。実際、米国などでは金利の高止まりでファンドが借り換えに苦しみ、ローンの延滞や債務不履行が増えている。
ストレステストの結果、国内金融機関全体でみた経済損失は限定的だと評価したが、細かくみると不動産融資を増やしている地銀や信金
への影響も考えられる。不動産関連企業やファンド向け融資などを通じて一定の損失が生じる金融機関の割合が、06年は全体の4割程度
だったが、直近では8割まで拡大したという。
大手行だけでなく一部地銀でも不動産ファンド向けの貸し出しが増えていることが背景にある。地銀の不動産融資のうちファンド向けは17年
6月末に残高全体の3%だったが足元で7%まで増えた。「収益性が高い案件が多い首都圏に集まるのは自然」(地銀関係者)だが、それは
都市圏の不動産価格下落の影響が広がりやすいことを意味する。
一方、不動産投資信託(REIT)を通じた損失は、有価証券運用の一環で投資を増やしてきた信金で目立つという。その結果、日銀のスト
レステストでは地銀・信金への波及が大きくなったと考えられる。
「局所的に高額帯の取引が増えており、一部に割高感がうかがわれる」。日銀はリポートで不動産市場のリスクに注意を促した。ショックの
引き金はどこで発生するかわからない。マイナス金利政策を解除したばかりの日本では、金利の本格的な上昇局面までには少し時間があり
そうだが、今のうちから丁寧なリスクの点検が求められる。
2024年05月05日 21時00分時事通信
新NISA始まり国内株に追い風
2024年05月04日 15時34分時事通信
今年1月に始まった新たな少額投資非課税制度(NISA)を通じ、5割近くの資金が国内株式へ流入していたことが日本証券業協会の調べ
で分かった。海外投資家主導で日経平均株価が初の4万円を突破した勢いを、個人投資家もうまく捉えたようだ。
日証協が野村証券やSBI証券など対面・インターネットの大手10社を対象に実施した調査によると、1~3月のNISA経由の買い付け額の
うち、国内株が47%を占め、投資信託の50%に肩を並べた。株価が上昇基調を強めたことに加え、非課税投資枠が大幅に拡大されたこと
が後押ししたとみられる。
大和証券の吉田光太郎常務執行役員は「NISA経由の買い付け額は前年同期比3倍強。8割が株式、2割が投信で、株式のほとんどが
日本株だ」と説明する。
特に人気なのは、安定して高配当収入が得られる銘柄だ。SBI証券によると、今年度の1株当たりの年間配当予想が194円の日本たば
こ産業(JT)が首位で、NTT、三菱UFJフィナンシャル・グループと続く。東証が昨年3月、上場企業に「資本効率や株価を意識した経営」を
要請し、配当を含む株主還元を重視する企業が増えている。国内株投資は為替変動リスクも低い。
一方、ハイテク企業が主導する米国などと異なり、日本では人口減少で市場縮小が見込まれ、国内企業の成長性を悲観する向きもある。
新NISAでは海外株を中心に構成する投信の人気も高く、「家計資金の海外流出」(市場関係者)を嘆く声も多い。
初心者向けに投資ノウハウを発信する人気ユーチューバーの小林亮平氏は、海外株中心の投資スタイルを提言。日本への投資を前向き
に考えるには「移民の積極的な受け入れや、人工知能(AI)の活用を通じて不足する労働力を確保することが条件になる」と指摘している。
【時事通信社】
2024/05/06 04:00 日経速報ニュース
世界の流れと逆行する日本では日銀の追加利上げの時期が焦点になっている。4月の金融政策決定会合後の記者会見で、植田和男総裁
からは早期利上げにつながる発言はなかった。それでも市場では、これまで0.5%程度とされてきた利上げの終着点がより高まる可能性も意識
されている。長期金利は1%台前半まで上昇(債券価格は下落)するとの声が増えている。
「目先の円安を止めるために金融政策を変更するとの市場の思惑からは距離を取った」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チー
フ債券ストラテジストは4月26日の日銀の政策決定会合の内容を見てこう話した。日銀は同日、政策金利の据え置きを決めた。
25年秋まで2回利上げか
市場の一部で高まっていた、円安リスク対応での7月利上げ観測はやや後退した。翌日物金利スワップ(OIS)市場は10月に1回目の追加利
上げ、2025年秋までに2回目の追加利上げの実施を織り込んでいる。
では、長期金利への影響はどうか。PGIMジャパンの国沢太作社長は「仮に2回の追加利上げがあっても、長期金利の上昇は1%台前半まで」
という。金利が上昇するにつれ銀行や保険など国内投資家による国債買いの需要が強まるためだ。
長期金利の指標になる10年物国債利回りが1%となれば、30年物国債利回りは2%の節目を超えると予想される。多くの生保は「30年債が2%
程度になれば積極的に買う」方針を示す。
「長く続いてきた低金利で国債離れしてきた銀行も、資金を戻すタイミングをうかがっている」(オールニッポン・アセットマネジメントの森田長太
郎チーフストラテジスト)。国内投資家の買いに支えられることで、長期金利が1%を大きく超えるとの見方は少ない。
日銀の国債買い入れ減額はいつか
需給面では日銀が国債買い入れ額をいつ減額するかも論点の1つになる。4月会合で日銀は政策内容の声明文を大幅に簡素化した。3月は
月6兆円程度としていた国債の買い入れ額に関して、4月は「2024年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する」とし
た。減額を表明してはいないものの、「政策の自由度を確保した」との解釈が広がる。
野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストは「6月にも正式に買い入れ額の減額を表明する」と予想する。日銀は5月下旬に「金融政策の多角
的レビュー」の第2回ワークショップを予定する。国債買い入れの副作用や弊害への理解が深まり、買い入れ減額の正当性が強まるとの見立
てだ。
ただ、日銀の分析を基にした試算では国債の買い入れ額を年10兆円減らしても、長期金利の押し上げ効果は年0.04%程度と限定的な水準に
とどまる。
政策金利が想定よりも高い水準まで引き上げられるリスクへの目配りは必要だ。過去20年の政策金利の上限である0.5%までの引き上げを想
定する国内投資家は多い。だがインフレ圧力が続く中、「世界的な景気後退などが生じなければ2?3年内に1.5%程度までの利上げがあり得る」
(野村証券の松沢氏)との声も出始めている。
4月会合で日銀が公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)も、より高い水準まで利上げが続く可能性を示唆する。展望リポートでは26
年度の生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数(CPI)を2.1%とした。「見通し期間後半には『物価安定の目標』とおおむね整合的な水準で
推移すると考えられる」と記した。
景気をふかしも冷やしもしない「中立金利」に関する植田総裁の発言も注目を集めた。植田総裁は4月26日の記者会見で見通し期間の後半に
物価が日銀の想定通りに推移するなら、「政策金利は中立金利の近辺にあることになる」と発言した。
中立金利の具体的な水準には言及しなかったものの、日銀は景気に対して中立な実質金利である「自然利子率」をマイナス1.0%からプラス0.
5%と推計していると見られる。インフレ率が安定的に2%になるとすれば、自然利子率に期待インフレ率を足して出す中立金利は1.0%?2.5%にな
る。26年度に向け0.5%を超える利上げの現実味が増す。
政策金利の終着点が0.5%よりも高くなるのであれば、長期金利はより高い水準まで上昇する可能性がある。追加利上げの時期だけでなく利上
げペースや回数など読み切れない部分は大きい。日銀の金融政策の先行きを巡り、債券市場では神経質な展開が続きそうだ。
個人投資家も投資先は多彩
債券の利回りが高まる中、個人投資家にとってもうまみが増しそうだ。新たな少額投資非課税制度(NISA)でも一部の債券ファンドに投資できる。
個人が買える債券の代表にあがるのは国が発行する「個人向け国債」だ。固定金利の3年物、5年物のほか、変動金利の10年物の3種類があ
る。1万円から購入可能で、国が保証するため元本割れのリスクはない。発行後1年経過すれば原則いつでも中途換金できる。
満期までクーポン(利息収入)が一定の固定型に対して、変動型は実勢金利に応じ半年ごとに適用利率が変わる。変動10年は新発10年国債
の入札利回りに0.66をかけて決まる。5月発行分の税引き前の利回りは0.5%。100万円分購入した場合の利息収入は年間5000円と低い
今後の金利に応じて上下する。
保有するリスク資産の一部を低リスクの債券に回しつつ、クーポンを得たいと考える人は多いだろう。ファイナンシャルプランナー(FP)の高橋忠
寛氏は「資産の多い人であれば、安全資産の置き場として活用するのも一案だ」と話す。
株式と異なり、元本割れすることはないため、リスク分散につながる。ただ満期前に換金すると、額面金額に経過利子を加えた金額から直前の
2回分の利子相当額が差し引かれる点は注意が必要だ。
新NISAでは債券自体に投資できないが、債券に投資する上場投資信託(ETF)や投信を買うことができる。債券型ファンドは成長投資枠(年
240万円、生涯1200万円まで)で購入できる。
利回りの高い投信もある。三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」や大和アセットマネジメントの「iFree新興国
債券インデックス」は直近3年間の1年あたりの平均利回りはそれぞれ5.12%、9.30%だ。ファンドが管理するため、償還期日などを気にする必要
がなく、個別に債券投資するよりも手軽に運用できる点が魅力だ。
外国債や公募社債なども候補にあがる。米10年物国債の利回りは足元で年4%超に及び、満期まで保有すれば単純計算で元本の4割を利息収
入として受け取れる。ただ、「円からドルに替えて投資する際、為替リスクに注意が必要だ」(FPの竹川美奈子氏)。今後、日銀が追加利上げに
踏み切り、円高が進めば、外債は円ベースで損失が発生する恐れもある。
債券投資のリスクを押さえよう
元本保証型の債券を除き、金利上昇リスクにも気を払いたい。金利が上昇すれば、債券価格は下落する関係にある。金利の上昇局面では債券
の評価額は元本割れすることもある。FPの深野康彦氏は「債券投資は満期保有を基本としてほしい。直近で使う予定のある資産を振り向けるべ
きではない」と指摘する。
信用リスクもある。例えば楽天グループが4月に発行したドル建て債は年限5年で利率が年9.75%に上り、話題を呼んだ。ただ、米S&Pグローバル
の格付けは投機的水準とされる。FPの高橋氏は「社債の発行体の信用リスクは個人では判断が難しく、利回りの高さにつられて安易に手出し
しない方が良い」とも話す。
社債は流動性が低い点にも注意が必要だ。満期前に売却して現金に換えたくても買い手がいない場合、売却できない。流動性が高い国債に比
べ、業績が低迷した企業が発行する社債などは買い手が現れないこともある。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-08/SD5293DWX2PS00?srnd=cojp-v2
為替変動の物価への影響大きくなっている、基調上昇なら緩和調整
為替は経済・物価に重大な影響、金融政策のコントロール対象でない
日本銀行の植田和男総裁は8日、為替動向次第では金融政策による対応が必要になるとの見解を示し、円安に対するけん制姿勢を強めた。
衆院財務金融委員会で答弁した。
植田総裁は円安の影響に関して、「為替相場は経済・物価に重大な影響を与え得る」と指摘。「従来の局面と比べ、為替変動が物価に影響
を及ぼしやすくなっている」とも述べ、「政策運営にあたって最近の円安の動きを十分に注視している。動向次第で金融政策運営上の対応が必
要になると考えている」と語った。
具体的には、物価変動から短期的な変動を取り除き、需給ギャップや予想物価上昇率などを反映した基調的な物価上昇率への影響を重視
していると説明。円安が基調的な物価上昇率に与える影響については「これまでのところはそれほど大きな影響ではない」としつつ、「今後は
影響してくる、あるいは影響するリスクがあるとみている」と述べた。
植田総裁は4月の金融政策決定会合後の記者会見で、円安が現時点で基調的な物価上昇率に大きな影響を与えていないとの見解を示し
た。今回の発言は、為替変動の影響を踏まえた政策対応について、これまでよりも踏み込んだ形だ。7日の岸田文雄首相との会談でも為替
が経済・物価に与える影響について議論しており、日本経済の回復力が弱い中、日銀は難しいかじ取りを迫られそうだ。
植田日銀総裁が首相と為替を議論、基調物価への影響を注視-連携確認
8日の東京外為市場で、円相場は1ドル=155円台前半に下落している。植田総裁が円安のこれまでの影響について慎重な見解を示した
ことをきっかけに、円が一段安となっている。
円は155円台前半に下落、植田日銀総裁の慎重発言で一段安の展開に
日銀は3月の金融政策決定会合で17年ぶりの利上げを決めたが、その後も日米金利差などを背景に円安が進行し、政府・日銀は日本の大
型連休中に2回の為替市場介入に踏み切ったとみられている。
同委員会に出席した鈴木俊一財務相は、円安にはプラスとマイナスの両面があるとしながらも、「輸入物価を押し上げるというマイナス面に
ついて私も強い懸念を持っている」と発言。政策課題として物価高騰への対応が極めて重要とした上で、為替市場の動きを注視して「取るべき
ときには適切な対応を取っていきたい」と語った。
緩和度合い
総裁は基調的な物価上昇率が上がって行けば、「それに応じて金融緩和の度合いを調整していくことが適切だ」と表明。目標である2%前後
で先行きの物価が推移する見通しを示した4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)に言及し、「1年半後とか2年後を待って利上げをすると
いうことではなく、パス通りに基調的な物価が上がっていけば、それに応じて金融緩和の度合いを適切に調整していくつもりだ」との認識を示した。
金融政策運営は「為替市場を直接のコントロール対象とはみていない」と改めて指摘。金融政策運営はあくまで物価の安定を目標にしている
とし、「政策運営が、私どもの財務への配慮から必要な遂行を妨げられることはない」と語った。
他の発言
消費者物価、賃金と物価の好循環に起因する部分の割合は強まってきている
2%の物価上昇を支える需要サイドの伸びが伴う必要がある
2024/05/09 日本経済新聞 朝刊
日銀の植田和男総裁が円安に関する発言を軌道修正している。4月の記者会見では「基調的な物価上昇率に大きな影響を与えていない」と
繰り返し円安が進行した。5月に入り「政策運営上、十分注視していく」と表現を改め、8日には「過去と比べ物価に影響を及ぼしやすくなってい
る面があることは意識しておく必要がある」と述べた。
8日の読売国際経済懇話会(YIES)の講演で語った。仮に物価見通しが上振れしたり、上振れするリスクが大きくなったりした場合には「金利
をより早めに調整していくことが適当になる」と発言した。
物価を巡るリスクの一つとして「今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、その輸入物価や国内価格への波及」を挙げた。「原油高や
円安は輸入物価上昇を起点とするコストプッシュ圧力が落ち着いていくという見通しの前提を弱める可能性がある」と指摘した。
講演後の質疑では「為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因であることは言うまでもない。金融政策の対応が必要になる可能性がある」
と言及した。「急速かつ一方的な円安は、例えば企業の事業計画の策定を困難にさせるなど不確実性を高めて経済にマイナスだ」との懸念も表
明した。
日銀が円安を容認しているとの市場の見方を払拭し、円安の進行に歯止めをかけようとしている可能性がある。
4月26日の金融政策決定会合で市場には日銀が円安の食い止めにつながる対策や発言を打ち出すとの見方があったが、金融政策は維持さ
れた。
その後の記者会見で植田総裁はこれまでの円安が基調的な物価上昇に与える影響について現時点で無視できる範囲か問われて「はい」と
答えた。
こうしたやりとりを市場は円安容認と受け止め、会見中から円相場は下落した。29日には1ドル=160円台と34年ぶりの水準まで円安が進
んだ。政府・日銀は認めていないが、29日、5月2日の2日間で財務省による円買いの為替介入があったとみられている。
日銀は円安を通じた輸入コストの上昇による物価上昇は一時的と捉え、賃上げを伴う「基調的な物価上昇率」を重視している。そのため植田
総裁は「引き続き為替市場の動向や経済・物価への影響を十分注視していきたい」と4月に強調した。
これを5月からはより直接的な表現に改めた。
7日に首相官邸で岸田文雄首相と面会後、記者団に「円安については日銀の政策運営上、十分注視をしていくことを確認した」と話した。「基
調的な物価上昇率にどういう影響が出てくるかについて注意深くみていく姿勢だ」と触れた。
8日の衆院財務金融委員会では「最近の円安の動きを十分注視している」と改めて主張した。「過去と比べ為替の変動が物価に影響を及ぼし
やすくなっている」との見解も示し、円安が物価上昇につながりやすくなっていることを示唆した。
日銀は4月会合で公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で「基調的な物価上昇率が上昇していけば金融緩和度合いを調整する」と
追加利上げの姿勢を示した。
ただ時系列だけみれば会見をきっかけに為替介入にまで発展した可能性があり、市場からは日銀が発言を修正しているとの見方が出ている。
野村総合研究所の木内登英氏は「4月の会見で植田総裁が円安容認と受け止められかねない説明に終始したことを問題と捉え、日銀が修正
する機会をうかがっていた可能性がある」とみている。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024050900859&g=eco&utm_source=top&utm_medium=topics&utm_campaign=edit
日銀が国債買い入れの減額に向け検討を本格化させていることが、9日公表した4月25、26日の金融政策決定会合の主な意見で明らかに
なった。ある政策委員が「(減額は)機を捉えて進めていくことが大切だ」と主張するなど、同会合では国債購入縮小に関する意見が相次いだ。
歯止めがかからない円安をにらみ、日銀が追加利上げを含めて金融正常化を加速させる可能性もある。
日銀は3月の会合で、マイナス金利政策の解除に踏み切ったが、国債買い入れについては月間6兆円規模で継続することを決めた。
これに対し、4月会合では「市場機能回復を志向し、減額することは選択肢だ」「どこかで削減の方向性を示すのが良い」など、国債買い入れ
の減額を巡り議論が本格化。日銀の国債保有量の圧縮など、量的引き締め(QT)も視野に入れるべきだとする意見もあった。
同会合では、声明文から「6兆円」という購入額の表記を削除し、実際の買い入れをある程度柔軟に行えるよう布石も打った。
日銀の植田和男総裁は会合後の記者会見で、円安の影響は限定的との考えを示し、市場では一段の金融正常化に慎重だと受け止められ
た。このため円安が加速し、円相場は一時1ドル=160円台まで下落。政府・日銀はその後、円買いの為替介入で対抗したとみられている。
4月会合では、ある委員が「円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にある」
と指摘するなど急速な円安を警戒する声も目立った。為替の動向次第で、追加利上げや国債買い入れ減額などの正常化に向けたタイミング
が前倒しされることもありそうだ。
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/Q33IKTYFMJNT7BQBLYCXUVOPVU-2024-05-10/
[東京 10日] - 2年以上にわたって続く円安局面を前に「何か対応策はないのか」という照会が確実に増えている。円安抑止策は、為替介入
や利上げといった裁量的なマクロ経済政策を脇に置けば、対内直接投資促進とインバウンド奨励が注目されやすく、いずれも正しい対応と言え
る。
しかし、策はほかにもある。例えば「日本企業が保有する外貨を国内へ送金する際の法人税を減免する」といういわゆる「リパトリ減税」は為替
市場で耳目を引いており、ロイターなどの報道では政府・与党が6月にまとめる経済・財政政策の基本方針「骨太の方針」に盛り込まれるという
観測もある。
リパトリ減税に関しては、2022年9月の寄稿「進む円安、抑止に『リパトリ減税』という処方箋」で詳しく議論した。
直感的に、すでに海外子会社から受けとる配当益金の95%相当額が非課税所得とされている以上、残り5%部分を非課税にしても大きな効
果は期待できないという印象は強く、実際そういった声は多い。
一方、日本に残されたカードはさほど多くないことを思えば、実質的に大きな効果を期待できなくても残る「5%の摩擦」にこだわるべきという考
え方もある。確かに、政府が主導して円買いフローを創出しようという姿勢は投機的な円売りに対抗するメッセージになり得る。米国や英国、シ
ンガポールといった国際金融センターと呼ばれる国では100%非課税だ。対応策を問われた時に、まだやれることはあるという意味で言及はし
ておきたい。
<NISA国内投資枠という円安抑止策>
しかし、リパトリ減税は文字通り対症療法であり、効果もワンショットで終わる可能性が高い。もちろん「ワンショットでも、時間稼ぎは必要」という
考え方も尊重すべき現状ではあるが、対策がこれだけというのも心もとない。
より持続的な円安抑止策として、筆者はNISA(少額投資非課税制度)国内投資枠の新設という考え方に注目している。
周知の通り、年初来の円安相場には新NISAに伴う海外株式の購入、いわゆる「家計の円売り」が寄与している側面も大きいと言われる。財
務省データによると、投資信託経由の対外証券投資は今年1─3月期だけで約3.5兆円に達しており、これは例年で言えば1年分に匹敵する。
それが主因かどうかはさておき、円安地合いに寄与しているのはほぼ間違いないだろう。過去の本コラムでも「家計の円売りこそ本当の円安
リスク」として危惧してきた経緯があるが、その懸念は半ば実現しつつあるように思える。
このペースで投資信託経由の対外証券投資が出続けると仮定した場合、年間で優に10兆円を超える円売りが家計から出てくることになる。
まだ資産運用に着手していない層も多そうであるから、潜在的な拡大余地も大きいだろう。看過できる論点ではない。
<国内投資枠で海外投資は減る可能性>
では、現行の「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に加えて、「国内投資枠」を設けた場合、どのような効果が期待されるのか。内外の成長率
格差を踏まえれば、今後も海外株への投資意欲が相応に強い状況は続く可能性はある。とはいえ、ここまで進んだ円安相場を踏まえ、ここ
からの為替リスクを取ることに及び腰になる層も増えてくる可能性はある。国内投資枠はそうした層の受け皿になり得る。
いだろう。
というのも、現行の年間360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)の枠を使い切る個人投資家は多数派ではないからだ。
金融庁の「NISA口座の利用状況調査」によれば、2023年9月末時点のNISA口座数は2034万7312口座、その買い付け額は34兆02
81億4597万円だ。単純計算で1口座当たり167万円だ。年間360万円の枠が拡大されても、元々使い切っていないのだから大勢に影響
はない。
国内投資枠が新設された場合、海外投資に流れていた資金の一部は国内投資へと代替される展開が予見される。つまり国内投資枠が増え
た部分は選択可能性の拡大でしかない。
国内投資に配分された分、海外資産への投資(円売り)が減ることになるのであれば、それは立派な円安抑止策になる。主要7カ国(G7)の
一角である日本では資本規制が難しいものの、インセンティブ設計として流出を減らす工夫は可能だ。
<英国で先行する国内投資枠>
この動きはすでに英国が検討し始めている。今年4月、英政府は春に発表された予算編成方針においてNISAの原形とされるISA(個人貯蓄
口座)に関し、英国株投資の非課税枠を現在の年間2万ポンドから2万5000ポンドに引き上げる意向を表明した。
ただ、同国では今秋に総選挙を控えており、政権交代の可能性なども踏まえれば、同案自体がどう転ぶかはまだ分からない。しかし、この方
針が固まった際には日本でも同じ方針を求める機運が高まる可能性はあるように思う。
家計部門の運用資金が海外ではなく国内に配分されるようになれば、日本株は上昇し、円売りも抑制されて一石二鳥となる。新NISAは稼働
の初年度であり、新しい選択可能性を提示するには良い時期であることも助けになるだろう。
少なくとも、円安の一因として注目されている「家計の円売り」に対抗する手段として、NISA国内枠の新設は利上げや為替介入は元より、冒
頭で紹介したリパトリ減税案と比較しても持続力を持ち得るように思えるし、政府の掲げる資産運用立国の方針とも合致する。
裏を返せば「家計の円売り」を早い段階でけん制しておかねば、そのまま一部が「帰ってこない外貨」となってしまう恐れがあるため、早めに手
を打った方が良いようにも思える。
<抜本的な政策は別>
もっとも、リパトリ減税は元より、NISA国内投資枠の新設も円安相場を反転させるような抜本的な政策とまでは言えない。そもそも市場に存在
する全ての円売りを吸収する政策など存在しない。身もふたもない話をしてしまえば、変動為替相場において為替市場の流れを根本的に変え
られるのは米国だけだ。
そう割り切った上で当面の日本に求められているのは「持続的な時間稼ぎの手段」であり、リパトリ減税やNISA国内投資枠もその一環だと筆
者は考える。少しの時間であっても、為替市場の平準化(スムージング)も図ることができれば、事業法人などにとって良好な市場環境を確保
することができる。そこにも意義はある。
様々な対症療法を組み合わせて時間稼ぎをしている間に、対内直接投資の積み上げであったり、電源構成の修正であったり、労働力の確保(
および移民政策の是非)であったりを議論することで中長期的な円相場の需給改善を図るという姿勢が王道であると考えておきたい。
2024/05/13 11:55 日経速報ニュース
13日午前の東京株式市場で日経平均株価は小幅に続伸し、午前終値は前週末比14円48銭(0.04%)高の3万8243円59銭だった。下げ幅は
200円を超え、取引時間中としては2日以来およそ1週間ぶりに節目の3万8000円を下回る場面もあったが、下値では好業績銘柄を中心に買い
が入った。ただ、日銀の政策正常化の観測が投資家心理の重荷となり、積極的な買いは見送られた。
13日午前の国内債券市場で長期金利は一時、0.935%まで上昇(価格は下落)した。日銀は同日通知した定例の国債買い入れオペ(公開市
場操作)で、長期債の購入予定額を減らした。国内債券市場での金利の上昇に歩調を合わせて日経平均も下げ幅を260円近くまで拡大する場
面があった。日銀が政策正常化を早めるとの思惑が強まり、金利上昇が業績拡大につながりやすい三菱UFJや三井住友FGなど銀行株が上昇
した。半面、金利上昇が債務の返済負担増につながりやすいとみられる三井不や菱地所など不動産株は下落した。
日経平均はマイナス圏で推移する時間帯が長かったが、前引けにかけては上げに転じた。前週末の米株式市場で半導体関連銘柄で構成す
る米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は上昇しており、東京市場ではアドテストなど一部の半導体関連株に買いが入った。大引け後に決算
発表を控えるソフトバンクグループ(SBG)も上昇し、指数を下支えした。
東証株価指数(TOPIX)は反落した。前引けは0.18ポイント(0.01%)安の2728.03だった。JPXプライム150指数は続伸し、0.73ポイント(0.06
%)高の1189.21で前場を終えた。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で2兆3774億円、売買高は10億1361万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は755。値
下がりは844、横ばいは47だった。
10日に2024年3月期決算を発表した東エレクは前週末終値を挟んで一進一退となった。KDDIやオリンパス、資生堂は上げた。一方、セコム
やトヨタ、クボタが下げた。
2024/05/14 日本経済新聞 朝刊
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は2025年3月期に、1兆円超の連結純利益の見通しを示す方針だ。これまで29年3月期に1兆円以上
を見込み、4年ほどの前倒しになる。投資銀行業務が拡大するほか、国内の個人顧客の拡大が収益に貢献して24年3月期も最高益となる見通
し。国内外の金利上昇で邦銀の収益拡大が軌道に乗り始めた。
三井住友FGは15日午後に24年3月期の決算と25年3月期の業績予想を公表する。現在の中期経営計画の最終年度にあたる26年3月期
でこれまで9000億円以上としてきた純利益の計画を1兆1000億円規模に引き上げる新たな見通しを示す。24年3月期も9000億円台後半
と前の期比で2割程度の増益を確保し、10年ぶりの最高益を更新するもようだ。
メガバンクで三菱UFJFGに続く2社目の純利益1兆円超えとなる。純利益で1兆円以上を確保する企業はトヨタ自動車や大手総合商社などに
とどまり、産業界全体で見ても有数の水準だ。
9月末を基準日に株主総会での承認を前提に1株を3株に分割する株式分割の実施も調整する。三井住友FGの足元の株価は9000円前後
で推移しており、投資には90万円ほどが必要になる。東京証券取引所の個人投資家が投資しやすい環境を整備するため、投資に必要な額を
50万円未満に引き下げるよう要請しているのに対応する。
25年3月期の純利益は24年3月期に比べて1割程度の増益になる見通しだ。国内でも企業のM&A(合併・買収)をはじめとする旺盛な資金
需要が続き貸出金が引き続き拡大する。
三井住友FGが1兆円超の純利益を確保する見通しとなった背景には国内外の収益力の向上がある。足元で顧客が200万人を超えた総合金
融サービス「オリーブ」による顧客基盤拡大が収益に貢献。日銀のマイナス金利政策の解除などによる「金利ある世界」への回帰が利ざやの拡
大につながる。足元でも大企業向けの利ざやは拡大傾向だ。
海外では資本提携する米証券大手のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループと米国や各地域で共同の営業体制を構築。大型M&Aのアドバ
イザリー業務などの連携で23年4~9月期に海外投資銀行業務の粗利益が前年同期比100億円規模で増えた。23年には米貨車リース事業
を売却するなど事業構成の入れ替えも進める。
アジアでも23年にベトナムの民間銀行2位のVPバンクに日本円換算で約2000億円を出資して持ち分法適用会社化。インドでは3月にノンバ
ンク子会社のSMFGインディア・クレジット(旧フラトン・インディア)を完全子会社にした。アジアへの出資による純利益への貢献は26年3月期で
500億円規模に達する計画となる。
3メガバンクでは三菱UFJFGが15年3月期に純利益で1兆円を超えたが、マイナス金利政策の導入以降は低金利で各社業績が低迷してい
た。24年3月期は3メガバンク合算で発足以降の最高益となる前の期比2割増の3兆円程度の純利益を確保する見通しだ。三菱UFJFGが1兆
3000億円、みずほFGが6400億円の通期の純利益予想を示している。
ただ、三井住友FGのPBR(株価純資産倍率)は足元で0.86倍程度と、解散価値にあたる1倍を下回る。米大手銀ではPBRは1倍を上回る
例が多い。PBRを高めるためには低採算事業の売却による成長資本の捻出が欠かせない。PBRを向上するためには一段の事業構成の入れ
替えや政策株の売却が必要になる。
2024/05/14 21:21 日経速報ニュース
りそなホールディングスは14日、2030年3月末までに政策保有株式を簿価ベースで約3分の1まで削減する計画を示した。24年3月末時点で
簿価で約2600億円あるが、6年間で1800億円程度を売却する。これまでは22年度からの4年間で800億円減らす目標だった。
同日の記者会見で南昌宏社長は売却で得た資金を「次の成長への投資に充てたい」と話した。
03年3月末時点で約1兆4000億円の政策株を抱えていたりそなは、03年5月に公的資金の注入が決まってからメガバンクを上回るペースで
政策株を減らしてきた。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は26年3月末までの3年間で少なくても2000億円、みずほFGも同期間に3000億円減らす計画を打ち出
している。
りそなは同日、25年3月期の連結純利益が前期比4%増の1650億円になるとの予想を発表した。
現行の中期経営計画で、最終年度の26年3月期に掲げる純利益の目標は1700億円だ。傘下のみなと銀行で発生するシステム統合の費用
を除くと、実質的に1年前倒しで目標の達成をめざすことになる。
24年3月期の連結決算は、純利益が前の期比1%減の1589億円だった。融資先の焦げ付きに備える与信費用が約2倍の356億円となったこ
とが響いた。
本業のもうけを示す実質業務純益は8%増の2113億円だった。国内企業の資金需要が旺盛で、今年3月末時点の貸出金残高は約43兆100
億円と前年同月比で4%増えた。
2024/05/15 17:15 日経速報ニュース
3メガバンクは15日、2025年3月期に大幅な増配に踏み切る方針を発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は24年3月期の41円か
ら50円に、三井住友FGは270円から330円に、みずほFGは105円から115円にそれぞれ引き上げる。三菱UFJと三井住友はそれぞれ1000億
円を上限に自社株買いも実施する。
米地銀シリコンバレーバンクの破綻などが起きたことから、昨年春は資本に余裕を持たせようと株主還元の強化を控えていたが、好調な業績
を受けて積極的な株主還元にかじを切る。
14日に2024年3月期決算を公表したりそなホールディングス(HD)は200億円を上限とする自社株買いを公表した。1回あたりの金額としては
過去最多という。三井住友トラストHDは創業100周年の記念配を含め、年配当を前期から35円増やす方針を明らかにした。
23年春は米国発で金融システムに懸念が浮上したことを受け、自己資本の充実を優先しようと自社株買いを抑えていた。金融環境の正常化
で23年11月には三菱UFJが4000億円、三井住友は1500億円を上限に自社株買いの実施を公表するなど株主還元の強化に動き出した。今期
の業績も堅調に推移する見通しで、各社は株主還元の強化を進める。
日銀によるマイナス金利政策の解除で国内でも金利の先高観が強まり、利ざやの拡大と収益増への期待感から銀行株は上昇している。三菱
UFJの株価は3月上旬に17年半ぶりの高値を付け、PBR(株価純資産倍率)も11年ぶりに1倍台へ戻した。三井住友やみずほのPBRは0.7?0.8
倍台にとどまるものの、株価は高値圏を保つ。
三井住友は15日、1株を3株とする株式分割の実施も公表した。1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)では個人投資家の資金が
業界トップの銘柄に向かいやすいとされる。実際に買い付け額の上位にはJTやNTTなどが並ぶ。「(個人投資家への浸透で)三菱UFJに出遅れ
ている」(関係者)ことから投資単位の引き下げを決めた。
大手行は自己資本の充実、収益力の強化に向けた成長投資、そして株主還元の強化に目を配ってきた。自己資本が安定的に積み上がるな
か、3メガバンクは今期にそろって最高益を更新する見込みだ。株主還元の充実を打ち出した各社がM&A(合併・買収)などでどんな成長戦略を
打ち出すかも次の焦点となる。
2024/05/15 17:15 日経速報ニュース
3メガバンクは15日、2025年3月期に大幅な増配に踏み切る方針を発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は24年3月期の41円
から50円に、三井住友FGは270円から330円に、みずほFGは105円から115円にそれぞれ引き上げる。三菱UFJと三井住友はそれぞれ1000
億円を上限に自社株買いも実施する。
米地銀シリコンバレーバンクの破綻などが起きたことから、昨年春は資本に余裕を持たせようと株主還元の強化を控えていたが、好調な業
績を受けて積極的な株主還元にかじを切る。
14日に2024年3月期決算を公表したりそなホールディングス(HD)は200億円を上限とする自社株買いを公表した。1回あたりの金額としては
過去最多という。三井住友トラストHDは創業100周年の記念配を含め、年配当を前期から35円増やす方針を明らかにした。
23年春は米国発で金融システムに懸念が浮上したことを受け、自己資本の充実を優先しようと自社株買いを抑えていた。金融環境の正常
化で23年11月には三菱UFJが4000億円、三井住友は1500億円を上限に自社株買いの実施を公表するなど株主還元の強化に動き出した。
今期の業績も堅調に推移する見通しで、各社は株主還元の強化を進める。
日銀によるマイナス金利政策の解除で国内でも金利の先高観が強まり、利ざやの拡大と収益増への期待感から銀行株は上昇している。
三菱UFJの株価は3月上旬に17年半ぶりの高値を付け、PBR(株価純資産倍率)も11年ぶりに1倍台へ戻した。三井住友やみずほのPBRは
0.7?0.8倍台にとどまるものの、株価は高値圏を保つ。
三井住友は15日、1株を3株とする株式分割の実施も公表した。1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)では個人投資家の資金
が業界トップの銘柄に向かいやすいとされる。実際に買い付け額の上位にはJTやNTTなどが並ぶ。「(個人投資家への浸透で)三菱UFJに
出遅れている」(関係者)ことから投資単位の引き下げを決めた。
大手行は自己資本の充実、収益力の強化に向けた成長投資、そして株主還元の強化に目を配ってきた。自己資本が安定的に積み上がる
なか、3メガバンクは今期にそろって最高益を更新する見込みだ。株主還元の充実を打ち出した各社がM&A(合併・買収)などでどんな成長戦
略を打ち出すかも次の焦点となる。
2024/05/15 19:39 日経速報ニュース
5大銀行グループの2024年3月期決算が15日、出そろった。合計の連結純利益は前の期比19%増の3兆3708億円と05年度に現在の3メガ
バンク体制となってから最高益を更新した。25年3月期も10%増の3兆7150億円と2期連続の最高益となる見通しだ。利ざやの改善と低金利
下で続けてきた構造改革が収益拡大に結びつきつつある。
25年3月期の連結純利益予想は、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が前期比10%増の1兆600億円と同社として初の1兆円台を目標に
掲げる。三菱UFJFG、みずほFG、三井住友トラスト・ホールディングス(HD)も最高益を見込み、りそなHDも4%の増益を予想する。三井住友な
ど中期経営計画で設定した利益目標の前倒し達成も相次ぐ。
金利の先高観で国内の貸出金利も上がり始めた。3メガの大企業向け貸出金利ざやは24年3月期に前の期比で0.05%拡大して0.59%とな
った。三井住友FGの中島達社長は15日の記者会見で「国内の大企業、中堅企業の活動は非常に活発だ」と話した。米連邦準備理事会(FRB)
は高水準の政策金利を続け、外貨建ての貸出資産は高い収益性を保つ。
これまで銀行は預かった資金の運用で苦戦を強いられてきた。マイナス金利政策の解除で日銀の当座預金には0.1%の付利がつき、各行は
収益源となる預金の獲得に方針を転換した。マイナス金利の解除は3メガだけで25年3月期に収益を1000億円規模で押し上げる。
利上げに伴う収益の改善は、貸出金利の引き上げが円滑に進むかどうかが前提だ。りそなの南昌宏社長は「市場金利の上昇分に連動する
(貸出金)利回りの上昇が確認できている」と話す。融資のほかにも「金利上昇は資産運用や資産管理の残高拡大による報酬の増加につなが
る」(三井住友トラストの高倉透社長)。
各社は日銀が政策金利を現行のまま据え置く前提で今期の収益計画を策定した。日銀が追加利上げに踏み切れば業績は上振れする可能
性がある。りそなは政策金利が0.5%まで上昇すると、自己資本利益率(ROE)が9?10%に高まるとの試算を示した。
国内の企業業績は底堅く、焦げ付きに備えて計上する与信費用も大手行の合算で7%減の9256億円と低位にとどまる見通しだ。
合計の純利益はこれまで14年3月期の2兆8669億円が最高だった。日銀が16年にマイナス金利政策を導入してから国内の預貸業務を中心
に利益が落ち込み、20年3月期には2兆円を割り込んだ。
2期連続で最高益を更新する見通しなのは、長引く低金利下で大手行が経営の効率化を進めてきたことも要因だ。本業のもうけを示す実質
業務純益(傘下行の合算)は24年3月期に19%増の3兆927億円。採算性が低いリスク資産を減らしたり、店舗網を効率化したりした成果が表
れた。三菱UFJの亀澤宏規社長は「3~4年とり組んできた構造改革が実を結んだ」と強調する。
規制緩和の追い風も生かし、証券業務など業容の拡大を進めてきた面も大きい。旧三菱銀行の1990年3月期決算では一般企業の売上高
にあたる業務粗利益のうち、貸出金利息を中心とする資金利益が約8割を占めていた。現在の大手行では多い場合で5割程度まで下がり、
収益の多様化が進んでいる。
懸念材料は米国の利下げだ。インフレを背景に遅れているFRBの政策金利引き下げが本格化すれば、利益を押し上げてきた海外向け貸し
出しの利ざやに縮小圧力がかかる。一方で、みずほの木原正裕社長は「米国の金利高止まりが続くと経済へのショックが大きい」と指摘する。
大手行の業績は、政策株の売却益や円安で外貨建て資産が円換算で押し上げられている面もある。15日の会見で三井住友FGの中島氏が
「ゲタを履いている面がある」と評した。好業績を続けているうちに成長戦略を着実に進め、逆風への備えを手厚くできるかが重要になる。
[東京 15日 ロイター] - 三菱UFJフィナンシャル・グループ (8306.T), opens new tab(MUFG)など大手銀行3グループが15日に発表した
2025年3月期の連結純利益予想は、3社合計で前期比5.7%増の3兆3100億円となった。05年度にMUFGが発足し3メガバンク体制に
なってから過去最高を更新した前期を上回る見通し。3社とも、企業の旺盛な資金需要や海外の利ざや改善を織り込んだ。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)(8316.T), opens new tabは15日、2025年3月期の連結純利益が前期比10.1%増の1兆0600億
円になる見通しと発表した。グループとして初めて1兆円を超える もっと見る 。MUFGは同0.7%増の1兆5000億円 もっと見る 、みずほフ
ィナンシャルグループ(8411.T), opens new tabは同10.4%増の7500億円 もっと見る をそれぞれ予想する。いずれも、市場予測を上回った。
三井住友FGの中島達社長は決算会見で「相場環境、顧客の行動など全てが銀行業績にプラスに働く環境がそろった」と指摘し、「経営者の
マインドは非常に前向きになっており、日本経済についてはポジティブにみている」と述べた。
みずほFGの木原正裕社長は、今期目標設定について「収益力が上がったので高みを目指す」との意気込みを語った。みずほFGは、現中期
経営計画の最終年度である25年度目標を前倒しで達成する見込み。
MUFGの亀澤宏規社長は「24年度は、国内が金利がある世界に入り(業績に)プラスになる。成長はアジアが大きい」との考えを示した。MU
FGは23年度に持ち分法適用会社である米モルガン・スタンレーの損益計上の期ずれ影響を除くと900億円超の増益となる計画だ。
日銀の金融政策変更による金利上昇も収益拡大の追い風で、銀行が持つ日銀当座預金への付利も収益増につながる。
三井住友FGは、マイナス金利解除は24年度業績に税前粗利益で400億円の効果があるとみる。みずほFGとMUFGも同様に、業績にプラ
スの効果を織り込んでいる。
MUFGは25年3月期からの新中期経営計画も公表し、最終年度にあたる27年3月期の連結営業純益を23年度の1兆6000億円から2兆
1000億円にする方針を示した。アジアの成長を取り込むため、プラットフォームの強靭化や国内の富裕層ビジネスの強化を図る。
政策保有株式の削減についても新たな見通しを示し、MUFGは5000億円としていた前期末までの削減目標を達成し、新中計期間中に350
0億円を売却する方針。亀澤社長は「前倒しで実行していきたい」と述べた。
三井住友FGは26年3月末までの3年間で政策保有株を2000億円削減するとしているが、すでに1340億円を売却済みでさらなる削減計
画の検討を開始する。みずほFGは22―25年度に3000億円削減する計画を維持している。
24年3月期の連結決算では、3社合計の純利益は前期比約26%増の3兆1300億円だった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-15/SDI11JT0AFB400
「利ざや改善などでポジティブ」、金利は「見極めにくい」のと声も
前期はMUFGと三井住友FGが最高益、みずほも今期に達成へ
3メガバンクグループの今期(2025年3月期)純利益は合計で前期比5.7%増の3兆3100億円と前期(24年3月期)に続き2期連続で最高益
を更新する見込みだ。日本銀行による利上げ効果が本業の貸し出し業務などに浸透し、収益を押し上げる。
15日に出そろった今期計画は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が前期比0.6%増の1兆5000億円、三井住友FGが10%増の1兆6
00億円、みずほFGが10%増の7500億円。前期の純利益合計は3兆1327億円だった。
前期は貸し出し業務では利ざやが大きい海外事業が円安・ドル高もあり収益を押し上げたほか、国内も法人向け融資が堅調に推移。国債
取引などの市場部門も好調で、合計の純利益は10年ぶりの最高となった。個別ではMUFGと三井住友FGが最高益を更新した。
日銀が3月に17年ぶりの利上げに動いたのを受け、市場金利は上昇傾向にある。今期は追加利上げも予想され、国内貸し出し業務での
利ざや拡大など収益環境のさらなる好転が期待されている。
前期決算について、MUFGの亀澤宏規社長は、「顧客部門中心に稼ぐ力が拡大し、過去最高益につながった」と評価。三井住友FGの中島
達社長も「非常に好調な結果。業務環境が非常に良かったことが要因」と振り返った。
金利上昇へ
日銀は3月の金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)やマイナス金利を解除した。4月の決定会合では大き
な政策変更はなかったが、今後は日銀の追加利上げの時期やペースに関心が集まっている。
MUFGの亀澤社長は利上げ効果について、「前期決算にはそれほど入っていないが、今期はプラスになっていく。利ざや改善などでポジテ
ィブだ」と言及した。三井住友FGの中島社長は金利の「正常化に向けた動きが継続していくことを期待する」と語った。
みずほFGの木原正裕社長は、「政策金利の引き上げがあるかは見通しが難しい。ある程度見極めてからではないと動けない。難しい局面
だ」と述べた。
その一方で、三井住友FGの中島社長は今後のリスク要因として、与信関係費用の増加懸念を挙げた。「海外の金利高止まりやインフレに
よる将来の信用不安に備えフォワードルッキングな引き当て計上」により、与信費用は増加していると説明した。
みずほFGの木原社長は、直近で1ドル=156円台の円安水準で推移している為替相場について、「中小中堅にとっては円安はきついと思う。
円高方向にいってもらいたいという思いは強い」と述べた。
2024/05/16 日本経済新聞 朝刊
5大銀行グループの2024年3月期決算が15日、出そろった。合計の連結純利益は前の期比19%増の3兆3708億円と05年度に現在の
3メガバンク体制となってから最高益を更新した。25年3月期も10%増の3兆7150億円と2期連続の最高益となる見通しだ。利ざやの改善と
低金利下で続けてきた構造改革が収益拡大に結びつきつつある。
25年3月期の連結純利益予想は、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が前期比10%増の1兆600億円と同社として初の1兆円台を目
標に掲げる。三菱UFJFG、みずほFG、三井住友トラスト・ホールディングス(HD)も最高益を見込み、りそなHDも4%の増益を予想する。
金利の先高観で国内の貸出金利も上がり始めた。3メガの大企業向け貸出金利ざやは24年3月期に前の期比で0.05%拡大して0.59
%となった。三井住友FGの中島達社長は15日の記者会見で「国内の大企業、中堅企業の活動は非常に活発だ」と話した。米連邦準備理
事会(FRB)は高水準の政策金利を続け、外貨建ての貸出資産は高い収益性を保つ。
これまで銀行は預かった資金の運用で苦戦を強いられてきた。マイナス金利政策の解除で日銀の当座預金に0.1%の金利がつき、各行
は収益源となる預金獲得に方針を転換した。マイナス金利解除は3メガだけで25年3月期に収益を1000億円規模で押し上げる。
国内の企業業績は底堅く、焦げ付きに備えて計上する与信費用も大手行の合算で7%減の9256億円と低位にとどまる見通しだ。
合計の純利益はこれまで14年3月期の2兆8669億円が最高だった。日銀が16年にマイナス金利を導入してから国内の預貸業務を中心
に利益が落ち込み、20年3月期には2兆円を割り込んだ。
2期連続で最高益を更新する見通しなのは、長引く低金利下で大手行が経営の効率化を進めてきたことも要因だ。本業のもうけを示す実質
業務純益(傘下行の合算)は24年3月期に19%増の3兆927億円。採算性が低いリスク資産を減らしたり、店舗網を効率化したりした成果
が表れた。三菱UFJの亀澤宏規社長は「3~4年とり組んできた構造改革が実を結んだ」と強調する。
規制緩和の追い風も生かし、証券業務など業容の拡大を進めてきた面も大きい。旧三菱銀行の1990年3月期決算では一般企業の売上高
にあたる業務粗利益のうち、貸出金利息を中心とする資金利益が約8割を占めていた。現在のメガバンクでは多い場合で5割程度まで下がり
、収益の多様化が進んでいる。
懸念材料は米国の利下げだ。インフレを背景に遅れているFRBの政策金利引き下げが本格化すれば、利益を押し上げてきた海外向け貸し
出しの利ざやに縮小圧力がかかる。一方で、みずほの木原正裕社長は「米国の金利高止まりが続くと経済へのショックが大きい」と指摘する。
大手行の業績は、政策株の売却益や円安で外貨建て資産が円換算で押し上げられている面もある。15日の会見で三井住友FGの中島氏
が「ゲタを履いている面がある」と評した。好業績を続けているうちに成長戦略を着実に進め、逆風への備えを手厚くできるかが重要になる。
2024/05/16 日本経済新聞 朝刊
3メガバンクは15日、2025年3月期に大幅な増配に踏み切る方針を発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は24年3月期の
41円から50円に、三井住友FGは270円から330円に、みずほFGは105円から115円にそれぞれ引き上げる。三菱UFJと三井住友は
それぞれ1000億円を上限に自社株買いも実施する。
米地銀シリコンバレーバンクの破綻などが起きたことから、昨年春は資本に余裕を持たせようと株主還元の強化を控えていたが、好調な
業績を受けて積極的な株主還元にかじを切る。
りそなホールディングス(HD)は200億円を上限とする自社株買いを公表した。三井住友トラストHDは記念配を含め、年配当を前期から
35円増やす方針だ。
2024/05/16 12:47 日経速報ニュース
16日の東京株式市場でメガバンク株の明暗が分かれている。前日に発表した2024年3月期決算で1000億円を上限とする自社株買いを発表
した三井住友フィナンシャルグループは年初来高値を更新した一方、還元策が市場の期待に届かなかったとして三菱UFJフィナンシャル・グル
ープとみずほフィナンシャルグループは軟調に推移した。足元の金利上昇によって銀行の収益環境は改善しているものの、銀行株全体を再評
価する状況には至っていないようだ。
三井住友FGは一時2.61%高の9444円まで上昇し、2008年6月以来およそ16年ぶりの高値を付けた。一方、三菱UFJは一時5.56%安、みず
ほFGも2.48%安まで下げる場面があった。明暗を分けたのは、自社株買いの規模感に対する市場の受け止めだ。
三井住友FGの自社株買いの金額である1000億円について「好印象」(野村証券の担当アナリスト、高宮健氏)との受け止めが多い。一方、
三菱UFJの自社株買いも1000億円だが、前期(年4000億円)に比べるとペースは鈍化しており、市場では「ネガティブサプライズ」(SMBC
日興証券の担当アナリストである佐藤雅彦氏)との声が聞かれる。みずほFGは自社株買いの発表がなかった。
3メガバンクの収益環境はそろって改善している。3メガの24年3月期の大企業向け貸出金利ざやは前の期に比べて0.05%拡大し、0.59%と
なった。今期(25年3月期)の連結純利益予想は、3行とも市場予想であるQUICKコンセンサスを上回った。
ただ、株式市場は金利の先高観による利ざや改善をすでに織り込んできた経緯があり、改めて材料視する動きにはつながっていない。三井
住友FGは年初来高値を更新したものの、3銘柄ともPBR(株価純資産倍率)は節目の1倍を下回る水準にとどまる。
前日の米株式市場では4月の米消費者物価指数(CPI)などを受けて米連邦準備理事会(FRB)による年内の利下げ観測が強まり、米長期
金利は4.34%とおよそ1カ月ぶりの低水準で終えた。海外の金利上昇という追い風は弱まりつつある。
3メガは今期の増配を決め、ともに3%台と高い配当利回りに着目した買いは支えとなりそうだ。もっとも、再び銀行株が物色の主役となるため
には「日銀が金融政策の正常化に向けて次の一手を打つことが必要」(国内証券のトレーダー)との見方が多い。しかし、16日発表の2024年
1?3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は2四半期ぶりにマイナス成長となった。「日銀の正常化はいったん後退した」との見方は、きょうだ
けでなく当面、銀行株の重荷となる可能性が高い。
2024/05/16 16:33 日経速報ニュース
国内金利に上昇圧力がかかるなか、メガバンクが円金利に食指を動かし始めているようだ。15日に出そろった三菱UFJフィナンシャル・グル
ープ(8306)などの2024年3月期決算では、一部でデリバティブ(金融派生商品)を使って金利リスクを取る様子が明らかになった。市場参加
者からは「銀行勢が円金利のポジションを部分的に復元している」との声が出ている。
メガバンクの決算のなかで債券市場参加者が注目したのが、固定金利と変動金利を交換する金利スワップ取引の残高だ。「固定金利受け
・変動金利払い」の残高(ヘッジ会計適用分、想定元本ベース)をみると、三菱UFJは24年3月末時点(連結ベース)が41兆964億円だった。
23年9月末時点(31兆4935億円)から約9.6兆円増えた。
このスワップ取引は固定金利を受け取る代わりに変動金利を支払うもので、国債を買うのと同じ経済効果を持つ。三菱UFJは年限別で「
1年超5年以下」の取引を半年前から11.8兆円も増やし、全体の残高を押し上げた。みずほフィナンシャルグループ(8411)も傘下2行合算
で、固定金利を受け取る取引の残高が昨年9月末から3.4兆円増えた。
SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは「預金者への支払利息や経費などを考慮した銀行の資金調達コストを中期ゾーン
のスワップ金利が上回り、日銀の大規模緩和下で削減してきた円金利のポジションを復元する動きが一部出始めたとみられる」と推察する。
一方、日本国債の現物については残高を減らしていた。例えば三菱UFJ(傘下の2行合算ベース)の国債保有残高は24年3月末時点で
35.9兆円(23年9月末は36.4兆円)、平均残存年限(デュレーション)は1.0年(同1.3年)だ。みずほFGも3月末の国債保有残高が10.9兆円
(同19.9兆円)、ヘッジ考慮後のデュレーションは0.3年(同0.7年)と円債のリスクを落とした形だ。
銀行勢が国債残高を減らす一方、金利スワップのポジションを積み上げたのはなぜか。SMBC日興証券の奥村氏は「国債利回りよりスワ
ップのほうが絶対的な金利水準が高かったことや、日銀が長く続けたイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を撤廃し中長期ゾーンの
国債利回りの先高観が強かったためではないか」と指摘する。
日銀が年内に追加利上げへと動くとみられるなか、市場では6月にも国債購入の減額方針を決めるとの思惑がくすぶる。債券需給が緩め
ば金利の先高観が強まりかねず、「銀行勢による円金利のポジションの復元が本格化するのはまだ先」(国内証券のストラテジスト)との声
も漏れる。
しかし、15日に中期経営計画の見直しを発表したゆうちょ銀行(7182)の笠間貴之社長は記者会見で「国内金利が上昇基調に転じたこと
から、預金から日本国債へのシフトを積極的に進めていく」と語った。金利上昇に伴い、負債のコストと比べて投資を検討できる水準まで国債
利回りが上昇すれば徐々に投資家の買いが入り始める。メガバンクの決算はそうした市場環境にいずれ戻るとの見方を強めたといえそうだ。
[東京 17日 ロイター] - <10:45> 日経平均は下げ幅縮小、日銀国債買い入れオペ据え置きで安心感
日経平均は下げ幅を縮小し、前営業日比約170円安の3万8700円半ばで推移している。日銀の国債買い入れオペのオファー額が据え置き
となり、市場では「減額されるかもしれないとの懸念もあったので、ひとまず安心感が出ているようだ」(国内証券・ストラテジスト)との指摘が聞
かれる。外為市場ではドルは155円台後半と、やや円安に振れて推移している。
個別では、東京エレクトロン(8035.T)b、ファーストリテイリング(9983.T)b、ソフトバンクグループ(9984.Tが引き続き軟調。アドバンテスト(6857.T)
は小幅高。
一方、銀行株がしっかりで、三井住友フィナンシャルグループ(8316.Tが2%超高、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)が約3%高、みず
ほフィナンシャルグループ(8411.T)が約1%高で推移している。
2024/05/17 11:29 日経速報ニュース
(11時10分、プライム、コード8316)三井住友FGが7日続伸している。一時、前日比261円(2.77%)高の9661円まで上げ、連日で年初来高値
を更新した。好調な業績見通しや株式還元の姿勢を評価した買いが続いている。
三菱UFJ(8306)やみずほFG(8411)も高い。3メガバンクは15日に2024年3月期(前期)の連結決算を発表し、25年3月期(今期)の連結純利
益が市場予想(QUICKコンセンサス)を上回る見通しを示した。
三菱UFJは決算と同時発表の自社株買いの規模感が物足りないとの受け止めなどから前日に下落。
みずほFGは自社株買いの発表がなく、下げた。
市場では「先行き日銀の金融政策の正常化が進めば、メガバンクの収益が一段と伸びるとみられるため、あらためて見直し買いが入っている
」(アイザワ証券の三井郁男投資顧問部ファンドマネージャー)との見方があった。
■最高益なのに「ネガティブサプライズ」
メガバンクの業績が絶好調だ。5月15日に発表された2024年3月期決算は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの
いずれも過去最高益を更新した。3社合計の純利益は3.1兆円で、金融緩和が始まった2013年以降の最高益である2.5兆円を軽々と上回った。
過去最高益を発表した翌日、三菱UFJとみずほの株価は下落の憂き目に
ところが、好業績に対する株主の評価は「失望」だった。翌16日、三菱UFJFGの株価は終値ベースで4.28%下落し、みずほFGも1.04%の値下
がり。上昇したのは、三井住友FGの2.14%だけだった。会社と投資家がすれ違うきっかけとなったのは「株主還元」だ。
「極めて力強い決算だ」(三菱UFJFGの亀澤宏規社長)、「業務環境が非常に良かった」(三井住友FGの中島達社長)、「実力がついている」(み
ずほFGの木原正裕社長)。15日の記者会見で、各社の首脳は決算内容に自信をのぞかせた。
企業の設備投資や企業買収などに伴う資金需要が旺盛で、国内外の金利上昇に伴い利ザヤも拡大。大型の企業倒産は少なく、株高で資産
運用ビジネスも伸長。円安による為替差益まで享受できた。
その勢いは衰えず、メガバンク各社は2025年3月期も最高益更新を見込む。年内にも日本銀行が追加利上げに動けば、純利益はさらに上振
れる。
ところが、そんな期待をよそに、市場は「失望売り」で反応した。
「ネガティブサプライズ」。5月15日付のSMBC日興証券・佐藤雅彦シニアアナリストのレポートは、こんな見出しで始まった。「自社株取得が
1000億円(中略)に留まり、24年3月期の年4000億円や弊社予想の年5000億円を下回るペースとなった」。
投資家が注目していたのは、三菱UFJFGの約1.5兆円という過去最高益よりも、その活用法だった。同社は2023年度に4000億円、2022年
度にも4500億円の自己株取得を行っている。過去最高益がすでに織り込まれる中、市場の関心は「還元」の規模だった。フタを開ければ、三
菱UFJFGは決算と同時に自己株買いこそ発表したものの、上限は1000億円にとどまった。
■資本の制約で自己株買いを躊躇
三菱UFJFGも、市場で高まる大規模還元への期待を察知していなかったわけではない。だが、資本の制約がそれを阻んだ。同社の自己資
本比率は、3月末のCET1比率(普通株式Tier1比率)が10.1%。その0.1ポイントに当たる1000億円分の自己株を買い戻せば、ちょうど10%に
収まる計算だ。
買いが)最適だと判断した」(亀澤社長)。だが、財務規律を守る事情があるにせよ、結果的に投資家の失望売りを招いた。
同じく失望売りに見舞われたのがみずほFGだ。三菱UFJFGや三井住友FGと比べて自己資本に乏しい同社は、2008年を最後に自己株買い
を行っていない。
そのため三菱UFJFGや三井住友FGと比べて、みずほFGに対する自己株買いへの期待はもともと小さかった。だが、銀行業界で相次ぐ好決
算に加え、みずほFGのCET1比率(その他有価証券評価差額金を除く)が2023年末時点で9.7%と、10%の大台が見えていた。
市場では16年ぶりの自己株買いもささやかれたが、「成長投資もしないといけない。(自己株買いを行うには)もう一段資本が欲しい」(木原社
長)とやはり見送り。これが一部投資家の売りを誘ったようだ。
唯一前向きな評価を受けたのは、上限1000億円の自己株買いを発表した三井住友FGだ。同社はコロナ禍の2020年3月期を除いて、年間
1000億~1500億円の新規取得枠を設けており、今回も順当な還元策と受け止められた。同時に発表した1対3の株式分割も、株価を押し上
げる一因になった。
■かつてなく高い投資家の期待
次の焦点は、今期の中間決算で株主還元が上乗せされるかどうかだ。「収益状況も見て、中間期に議論したい」(三菱UFJFGの亀澤社長)、
「視野に入っていないとは申し上げない」(みずほFGの木原社長)。首脳の発言からは、自己株買いへの関心がうかがえる。
各社が目標とするPBR(株価純資産)1倍は、しばらくは逃げ水を追う状況となりそうだ。一般に、PBRの分母となる1株当たり純資産は、直近の
本決算期末の数値を参照する。本決算をまたげば純資産が膨らむため、その分だけ株価が上がらなければPBRは下がってしまう。
3月に1倍を取り戻した三菱UFJは、決算発表を受けた株価下落で再び1倍を割ってしまった。三井住友FGは0.8倍台、みずほFGも0.7倍台で
くすぶる。
青天井とも言える投資家の期待。「ポジティブサプライズ」を与えるハードルは、かつてないほどに高い。
[19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)など米金融規制当局は、国際的な銀行資本規制「バーゼル3」の最終規則で大手銀行に義務
付ける資本上積みを20%近くから大幅に削減する新たな計画を検討している。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が19日に報じた。
JPモルガン・チェース(JPM.N), opens new tabのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)ら業界トップによるロビー活動を受け、上積み幅
は平均で従来案の半分程度になる可能性があるという。
WSJによると、FRB、米連邦預金保険公社(FDIC)、米通貨監督庁(OCC)は現在も実質的・技術的な修正について協議中で、合意は確実
でない。
FRBなどは昨年7月、バーゼル3最終化の実行細則案を公表。資産が1000億ドルを超える銀行について、損失吸収のための資本計算を見
直す案などを示した。 もっと見る
これに対し業界側は、既に十分な資本を確保しているとして規制強化に反発している。
2024/05/20 16:53 日経速報ニュース
日本経済新聞社と日本経済研究センターは20日午後、景気討論会を開いた。三井住友銀行の福留朗裕頭取は日銀の利上げについて
大企業が持つ有利子負債が少なくなっている点などを指摘し、「企業業績に及ぼす影響については、さほど悲観的になる必要はない」と
述べた。また、タンス預金を銀行に預ける高齢者の増加などを例に挙げ、「眠っていた資金が世の中に回り始めている」と話した。今後の
注目テーマは「若い人にとって預金金利と(企業などが発行する)ポイントのどちらがより大事なのか」とした。
ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員は、金利の上昇に伴い住宅ローンの支払いが増加すると指摘。「金利ができるだけ低いうち
に借りたい」と考えて住宅ローンを組む人が増えているとして、「消費者として微妙なバランスで不動産を買っている」との見方を示した。
2024/05/21 日本経済新聞 朝刊
三井住友ファイナンス&リース(FL)は出資先を通じて欧州エアバスにリース用のヘリコプターを16機発注する。購入総額は300億~350億
円程度とみられる。緊急医療や災害救助、洋上風力発電設備の補修向けにリースする。
2024年に入り、2回目の大型発注となる。海外を中心に成長が見込めるヘリ需要を取り込む狙いがある。
三井住友FLが35%出資するLCIインベストメンツと、三井住友FLとLCIが共同出資するSMFLLCIヘリコプターズ(SMFLH)が取得する。機
体は28年までに順次引き渡される。
発注するのは中型機と準大型機だ。準大型機は洋上風力発電の設備補修や、北海油田の運用で人を派遣する際の利用を見込む。
欧州やオーストラリアなどでは自治体が災害救助や緊急医療で使用するヘリコプターをリースで導入する動きが高まっている。ヘリは1機あた
り数十億円と高額で、自前で購入する負担が大きいためだ。
リースなら初期投資が抑えられるほか、環境に配慮した新しい機材を柔軟に導入しやすい。
日本では地方自治体が地銀などから融資を受け、購入する方法が一般的だ。リースの導入は遅れていたが、資金面での負担を減らすために
機運が高まってきている。
2024/05/22 日本経済新聞 朝刊
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの2024年3月期連結決算は、純利益の合計が前の期比26%増の3兆
1327億円と3メガバンク発足後の最高益を更新した。個別でも最高益の達成が相次ぐメガバンクの実力と課題を分析する。
「極めて力強い決算だった」。三菱UFJの亀澤宏規社長は15日の記者会見で、連結純利益で過去最高を3割更新する1兆4907億円の水
準にこう胸を張った。25年3月期計画は純利益で1兆5000億円と2期連続で最高益をうかがう。新しい中期経営計画の最終年度にあたる2
7年3月期には1兆6000億円以上の純利益を目指す。
増益幅はアジア関連が約3割を占め、国内企業営業・リテール部門合算の15%に比べ大きい。大手行では「地政学リスクを起点としたイン
フレ再燃のリスクが怖い」(幹部)との見方がある。中東などの紛争のほか、米大統領選などが金利リスクに直結する。大手行では中国戦略も
課題になる。与信費用などへの目配りが重要になる。
三菱UFJは決算と同時に発表した27年3月期までの新中計のテーマを「成長を取りにいく3年間」と銘打った。中計期間中の金利は米国の
政策金利が3%まで低下するが円金利は据え置きの前提。それでも自己資本利益率(ROE)は中長期目標の9%程度を目指す。「良くない
環境」(幹部)でも実力を高める意欲を示す計画といえる。
ポートフォリオ改善の損失処理の反動がある市場部門を除けば国内事業ではなく海外事業が増益を支える。国内大企業営業を担うコーポレ
ートバンキング事業本部の本業のもうけを示す営業純益は27年3月期に24年3月期比横ばいの想定。4割近くの増益となる海外商業銀行
部門(GCB)と同3割増の海外投資銀行部門(GCIB)がけん引する。
亀澤氏は「アジアの成長が大きい」と指摘する。インドのノンバンクやアジアのフィンテック事業者への出資が成長戦略の中核になる。24年
3月期の間でもインドではDMIファイナンスに出資したほか、アジアでもインドネシア自動車ローン大手のマンダラ・ファイナンスの買収を決めた。
これまで三菱UFJのアジア事業の収益は伸び悩んできた経緯がある。アジアの出資先の商業銀行で構成するGCB部門の営業純益は20
年3月期以降2000億円台で推移してきた。近年は2000億円を超える規模で出資を加速させており、新中計で大幅増益を期す。
円金利が上昇すればさらなる増益要因となる。三菱UFJは政策金利が0.15%上昇すれば3年後に1500億円規模の傘下行合算の資金
収益ベースの増加につながるとの試算を示す。政策金利が0.5%になればさらなる上積みも可能になる。
三菱UFJの増益は低金利下での構造改革によってきた面が大きい。18年3月期に515だった店舗数を約320に減らしたほか、企業向け
の貸し出し利ざや拡大でも先行した。傘下行合算の本業のもうけを示す実質業務純益は24年3月期で6年ぶりに3メガバンクで最大となった。
円金利の追い風も受け成長銘柄に転換する構想を描く。
米銀の純利益はJPモルガン・チェースで495億ドル(7兆7300億円)、バンク・オブ・アメリカが265億ドルに達する。三菱UFJのPBR(株
価純資産倍率)は0.9~1倍前後で推移し1.1倍台のウェルズ・ファーゴなど米銀と距離を縮めるが、利益の絶対額はなお差がある。成長
戦略は世界の大手金融の一角として存在感を高めるためにも重要だ。
投資家はこれまで三菱UFJを成長期待ではなく、投資家への還元力で評価してきた面がある。決算発表の翌日の株価は前日比で4%安(
終値ベース)の1522.5円まで下落した。公表した1000億円規模の自社株買いが市場予想比で「ネガティブサプライズ」(国内証券)と受け
とられたためだ。
資産管理業を手掛ける豪社の買収費用などを勘案すれば自社株買いは資本余力から適切な水準ともいえる。それでも「市場との目線の差
が浮き彫りだ」(市場関係者)との評が漏れた。成長を結果で示し投資家の目線を変えられるか。20年の就任以降、収益力強化で実績をあ
げてきた亀澤氏にとって越えるべき高いハードルとなる。
2024/05/21 10:24 日経速報ニュース
(10時20分、プライム、コード8316)三井住友FGが9営業日ぶりに反落している。前日比94円(0.95%)安の9775円を付けた。15日発表の
2025年3月期の業績見通しが好感されたことなどから、前日までの8日続伸で株価は1068円(12.13%)上昇した。チャート上では25日移動
平均からの上方乖離(かいり)率が10%を超えるなど、短期的な過熱感が目立っていた。きょうは利益確定目的の売りが優勢となっている。
三菱UFJ(8306)とみずほFG(8411)も安い。
もっとも、日銀の金融政策の正常化観測による金利上昇の思惑で銀行株の先高観は根強い。ゴールドマン・サックスのジョージ・コール氏
は17日付のリポートで日本の長期金利の見通しを引き上げ、2026年末に2%に上昇する予想を示した。日銀が持続的な利上げサイクルに
入ったとの見方から、27年に政策金利を1.25?1.50%まで引き上げ、イールドカーブ(利回り曲線)も全般的に上方修正が進むと説明した。
2024/05/22 日本経済新聞 朝刊
「金利ある世界」が訪れ、邦銀の業績が上向いている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など5大銀行グループの2024年3月期は
連結純利益が3兆3千億円を超え、05年度に3メガバンク体制になってからの最高だった。銀行は好業績を経済成長につなげる責務がある。
マイナス金利政策解除による貸し出し利ざや改善の恩恵が本格化する25年3月期は、三井住友FGが初の1兆円超の純利益を見込むなど
増益基調が続く。経済の要である銀行の収益が上向き、財務が安定するのは好ましいことだ。
海外事業が好調だった大手行には見劣りするが、地方銀行の業績もおおむね堅調だ。24年3月期は上場地銀73行・グループの7割に当
たる51行が最終増益となり、収益改善の裾野は広がっている。
三井住友FGの中島達社長は「相場環境、お客様の行動といったほとんどすべてのものが銀行業績にプラスに働く状況だった」と語った。
収益を押し上げる追い風が吹く間に、本当の意味での稼ぐ力を高める必要がある。
銀行に求めたいのは、顧客である企業や個人との関係を深め、時代の変化に即した多彩なサービスを提供することだ。そのためにはIT(
情報技術)システムなどへの積極的な投資も欠かせない。国内をベースに海外の事業を育て、収益源を多様にしたい。店舗も柔軟に見直し
てほしい。
「金利ある世界」になると利払い負担は重くなり、経営が苦しくなる企業も出てくるだろう。銀行は取引先の経営に今まで以上に注意を払い
ときには巧みに導いていく力が問われる。銀行は単に個々の取引先を守るだけでなく、経済や産業の新陳代謝を促す大きな視点に立つべ
きだ。
前期決算ではあおぞら銀行や山形県のきらやか銀行のように、国内外の取引にまつわる予想外の損失が発生して赤字に陥るケースも出
てきた。銀行を取り巻く環境が良くなってきたとはいえ、油断は禁物だ。リスクを見極め管理する腕を磨かなければならない。
邦銀にとって歴史的な利益水準も米銀と比べればなお低い。邦銀大手のPBR(株価純資産倍率)が軒並み解散価値の1倍を下回ってい
るのは、銀行の稼ぐ力に対する株式市場の厳しい評価を物語っている。銀行の経営者は市場の評価を一変させるような成長シナリオを描い
てもらいたい。
2024/05/22 19:06 日経速報ニュース
「(過去の)業績予想の設定の仕方が投資家に過度に保守的に見え、自信のなさと捉えられてしまった」。三井住友フィナンシャルグループ
(FG)が17日に都内で開いた説明会。中島達社長は冒頭、異例の「反省」から始めた。終わった2024年3月期は10年ぶりに最高益を更新した
にもかかわらず、厳しい表情を崩さなかった。
三井住友FGはこれまで業績予想が保守的で、期中に上方修正するケースが多かった。リスク要因の顕在化を考慮した「必達目標」として予
想を位置づけていたためだ。銀行がリスクを考慮するのは当然だが、一方で金利ある世界が近づくなか、控えめな三井住友FGに物足りなさを
感じる投資家も少なくなかった。
これまでとは違う三井住友FGをどう見せるべきか。その答えの一つが、今期(25年3月期)純利益で1兆円超えという目標だ。1兆円超えは29
年3月期に目指していたが4年ほど前倒しする。今回示した中期経営計画には26年3月期に1兆1000億円台半ばという利益目標も盛り込んだ。
株式分割、自社株買いも市場の期待に見合う水準にした。
社長に就任して初の決算発表となった今回は「積極的にアップサイドにも挑戦しようという意気込みを含めた水準」(中島氏)として利益目標を
出した。成長投資に転じる日本企業の動きを意識したとみられる。
利益押し上げの原動力が大企業を中心とするホールセール部門だ。中計の3年間で見込んでいた500億円の増益を1年で達成。中島氏は「国
内の大企業、中堅企業の活動は非常に活発だ」と話す。足元で顧客が230万人に達した総合金融サービス「オリーブ」も金利上昇局面での収益
の底上げにつながる。
海外も成長を支える。三井住友FGはアジアで過去5年、7000億円以上を投資してきた。成長加速で26年3月期には500億円規模の利益貢献
を見込む。資本提携する米証券ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループとの連携で約100件の融資などの案件を獲得、協業効果による収益は
前期で2倍に増えた。
中島氏は太田純前社長の急逝を受けて昨年12月に社長に就任した。企画部門の経歴が長く4年にわたり最高財務責任者(CFO)として世界
の投資家と相まみえてきた。経営の方向性としては腹心として支えた太田氏の路線継承を掲げながら、細部には独自色がにじみ始めているよ
うに映る。
財務指標の説明にも東証基準の自己資本利益率(ROE)に力点を置いた。前期の7%から29年3月期までに9%程度へ引き上げる。これまでは
他行と同様に資本の含み益を評価しない銀行独自基準のROEに重点を置いていた。業界の理屈を優先した開示ではもはや幅広い投資家の関
心は得られないとみて、より一般的なROEの説明を徹底した。
背景にあるのは三菱UFJFGとの差への危機感だ。三菱UFJとの純利益の差は前期で約5300億円にまで広がり、PBR(株価純資産倍率)1倍
回復も一時的だが先を越された。三菱UFJとは21年までPBRがほぼ同じ水準だったものの、米国で金融引き締めが始まった22年以降、差が広
がった。
前期の各グループ会社の出資比率を加味した純利益で三菱UFJと比べると商業銀行以外の差が目立つ。米ジェフリーズとの提携や信託銀行
など収益を上乗せできる役者はそろいつつある。「中島カラー」で三菱UFJとの差を詰める。
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2024/05/23 日本経済新聞 朝刊
「クレジットカードの決済データをより生かせるサービスにしよう」。Vポイント運営会社CCCMKホールディングス(東京・渋谷)の取締役、
撫養(むや)宏紀(49)は、約500人の社員を総動員して戦略を練る。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTポイントと三井住友フィナンシャルグループ(FG)のVポイントを統合して、新生Vポイントと
して4月22日にスタートした。当初はアプリの不具合に見舞われたが、約1カ月で新規モバイル会員が100万人を超えた。ポイントが当
たる「ガチャ」など様々な販促で認知度を高める。
共通ポイントの草分けで約20年の歴史を持つTポイントだが、MMD研究所の1月の調査では「最も活用しているポイント」は、Tポイント
とVポイントの合計で約8%にとどまり、低空飛行が続いていた。
「一気に視界が開けた」。撫養は三井住友FGと組んだ利点を実感している。加盟店開拓では同FGの顧客基盤も活用して共同で営業を
始めた。
成果の一つが牛丼店「すき家」を展開するゼンショーホールディングスだ。早速Vポイントを導入した。「耐久消費財を買って得たポイントで
ランチを安く利用してもらえる」。物価高の中、執行役員の丹羽清彦(67)は客数の底上げを期待する。
金融を軸にしたポイント経済圏が立ち上がるインパクトも大きい。世界200カ国・地域以上に1億店以上あるVisa加盟店でポイントをため
て使える。Tポイントの提携先の15万店超から大幅に増える。
会員数は8600万人規模となり、1億人規模の楽天ポイントやdポイントに近づく。Vポイントは1人あたりの年間獲得額がTポイントの8倍
だ。ひとりで8人分の優良顧客を抱える計算になり、共通ポイントで先行する携帯大手を追いかける。
三井住友FGにとっても預金口座の獲得や「ポイント投資」による経済圏拡大につながる。クレジットカードの新規入会会員は23年度に
500万人と25年度目標を前倒しで達成し、Vポイントでさらに弾みをつける。
ただVポイントは複数のアプリがあるなど分かりづらい面もある。「財布にあふれるポイントカードが1枚になればいいのに」とスタートした
共通ポイント。原点回帰の使いやすさが求められている。
2024/05/24 日本経済新聞 朝刊
「まずPBR(株価純資産倍率)で三井住友フィナンシャルグループを上回る」。みずほフィナンシャルグループ(FG)の木原正裕社長は社内で
こう発破をかけている。総資産や利益の規模で他のメガバンクに劣るみずほがこだわるのは収益の質、とりわけPBRだ。
上場企業にとってPBR1倍超えは重要課題だが、みずほのPBRは0.77倍と解散価値とされる1倍にはまだ遠い。三菱UFJFGの0.93倍
三井住友FGの0.87倍にも劣る。日銀の金融政策修正による成長期待を受け、0.5倍台だった2022年度から上昇したが「まだまだ努力が
必要だ」(木原社長)と受け止めている。
「円金利の上昇や株高の局面で機動的な運営ができて収益を稼げた」。15日の決算記者会見で、木原社長が自信をのぞかせる場面があっ
た。背景にはPBRの向上に結び付く自己資本利益率(ROE)の改善がある。
みずほFGの24年3月期連結決算は、顧客部門や市場部門がけん引して純利益が前の期比22%増の6789億円となり、ROEは7.6%と
22年度に比べて1ポイント上昇した。25年3月期の連結業績予想は「市場予想を上回る水準」(モルガン・スタンレーMUFG証券のアナリスト)
の7500億円と、最高益の更新を目標に掲げる。中期経営計画で目標とするROE8%も24年度に1年前倒しでの達成をめざす。
3月にはマイナス金利政策が解除され、追加利上げへの期待も高まる。みずほFGは24年度の収益改善効果を450億円程度と試算する。
ただ、金利上昇局面では総資産が収益力に直結し、他のメガバンクより規模が劣るみずほにとってはビハインドになり得る状況だ。
木原社長は「収益の水準か質か、という意味では質を高めたい」と話す。目下進めるのは低採算から高採算への資産の入れ替えだ。高採
算分野に資金を投じて資本効率を上げる。23年度は収益性の高いM&A(合併・買収)などに2兆円を投下する一方、低採算の資産を2.1
兆円削減した。
低採算の資産を削減する取り組みの一つが、海外取引の見直しだ。海外では大企業や優良企業が中心だが、融資枠だけを提供しているケ
ースは特に採算が悪い。取引業務の幅を広げられないか交渉し、改善が難しければ取引の解消も視野に厳しく採算を管理する。量より質を重
視した結果、3月末のリスクアセット利益率(RORA)は3.1%と前年に比べて0.4ポイント向上した。
みずほFGにとってPBR1倍超を達成する上で重荷となるのは経費だ。23年度の経費率は62.9%と前年度比1.6ポイント改善したが、経
費の合計額は1兆6819億円と14%増えた。
経費額の増加率は過去5年で最も高い。海外を中心にインフレの影響や賃上げなどで人件費がかさんだ。北米ではスピード感を持って人材
を入れ替えるなどコストコントロールを強化し、25年度には経費率を60%程度まで抑制する計画だ。
みずほFGはこの1年を「変化の兆しを大きな潮流へ」と銘打つ。ROEをもう一段引き上げるために、資産形成・運用、日本企業の成長支援、
海外のCIB(投資銀行)ビジネスの3つを収益ドライバーに位置付ける。実績を積み上げて市場からの期待感を得られるか。「やれることはす
べてやる」(木原社長)覚悟で臨む構えだ。
2024/05/24 日本経済新聞 朝刊
米銀最大手JPモルガン・チェースは2024年のテクノロジー分野への支出を170億ドル(2.6兆円)と前年比15億ドル(10%)増やす。人工
知能(AI)を中心にテック投資を積み増し、生産性を上げてコストを減らす。投資額は日本のメガバンクを大幅に上回る。日米間の大手銀行の成
長力の差が一段と広がる可能性がある。
人件費などを除くテック投資は76億ドルと5億ドルほど増やす。クラウドやデータセンターの最新化、サイバー防御などにもあてる。
20日に開いた年に1度の「インベスター・デー」で計画を示した。登壇した首脳や各事業部門の幹部から発言が相次いだのは、AIの活用を通じ
た生産性や競争力の向上、コスト削減への期待だ。
ダニエル・ピント社長兼最高執行責任者(COO)は一例として、顧客取引の本人確認プロセスの効率化を挙げた。25年末までに22年比で2割
少ない人員で、約5割多い案件を処理できる見通しだという。
資産運用・富裕層ビジネス部門トップのメアリー・エルドース氏は顧客の運用助言における利用を例示した。社員が電話で顧客の運用相談に
乗る際、例えば「大型成長株のファンドを知りたい」と問われれば、AIが社員の端末上で瞬時に候補になる商品を提示する。情報収集にかかる
時間を大幅に短縮したという。アナリストの業務も効率化が進み、人によっては1日2~4時間浮くようになったとも説明した。
ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は4月公表の株主への手紙で、AIが社会や銀行ビジネスに与える影響は「蒸気機関や電気など
の発明と同じくらい驚異的で変革的なものになる」と指摘した。「現在2000人を超えるAIと機械学習の専門家やデータサイエンティストが在籍
している」とも述べ、専門人材の確保と活用が銀行の競争力を高めるうえで決定的に重要だという認識を示している。
銀行のAI活用の調査・分析を手がけるエビデントによると、JPモルガンはAI分野の研究論文の発表件数や関連特許の出願数で軒並み上位
を占める。世界の主要金融機関50社のAIへの取り組みを人材やイノベーションといった観点で評価したランキング(23年11月時点)でJPモル
ガンは首位だった。
日本勢では3年間の中期経営計画のIT(情報技術)投資枠として、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は8000億円、三井住友FGは75
00億円と設定する。
いずれもJPモルガンに比べると少ない水準だ。三菱UFJFGは「規模の違いはあるが、必要な投資を加速し重要な領域で後れを取らないよう
にする」と説明する。
三菱UFJFGはシステム開発のうち、AIを含む戦略分野の割合を3割に高める枠組みを導入した。三井住友FGは総額のうちトップの裁量でIT
分野に機動的に投資する予算「CEO枠」に2800億円を充てる。
みずほFGは、テクノロジーの進化も踏まえ「事業変革や成長に向けた投資にも注力する」。23年度から3年間の中計では、IT投資のうち収益
や生産性向上につながる投資比率を2割から3割弱に引き上げる方針だ。
SMBC日興証券の村木正雄シニアアナリストは「JPモルガンはAI投資などによる業務プロセスの簡素化と成長投資を両立してきた」とし、「
長年の投資の積み重ねが経費率の低さに表れている」と指摘する。メガバンクにとって、投資を加速するJPモルガンの背中は一層遠のく可能
性がある。
2024/05/30 11:02 日経速報ニュース
(10時45分、プライム、コード8306)三菱UFJが底堅い。朝方に前日比24円(1.46%)安の1613円まで下落したが、その後は上昇に転じる場面
がある。日経平均株価の下落率が2%を超えるなど大幅安となるなかで、下値では買いも入っている。30日の国内債券市場で長期金利の指標と
なる新発10年物国債利回りは一時1.1%を付けた。2011年7月以来およそ13年ぶりの高水準で、金利上昇による収益改善期待が支えになってい
る。銀行株では三井住友FG(8316)やみずほFG(8411)も朝安後に小幅ながら一時上昇に転じた。
日銀が近く追加利上げや国債買い入れの減額など金融政策の正常化に動くとの見方から、金利の先高観が強まっている。米国では底堅い景
気が米連邦準備理事会(FRB)の利下げ転換を遅らせるとの観測が浮上し、29日には米長期金利が4.6%台に上昇するなど海外金利の上昇圧
力が国内に波及している面もある。
市場では「金利上昇で預貸業務の改善が見込める一方、日銀が追加利上げをしても当面は実質金利がマイナスの状態が続くとの見方は多く、
利上げによる実体経済への悪影響が小さいことは金融機関の業績に追い風」(国内証券の情報担当者)との声が聞かれた。
モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)は2024年05月14日、世界規模で各国のスタンダードインデックス構成銘柄の
定期見直しを発表しました。
見直しにおいては、構成銘柄の業種は考慮されません。各国のMSCI Indexを構成する個別銘柄はそれぞれ米ドル建に換算され、各国間
で比較されます。日本円の独歩安の結果、Japan Indexの構成銘柄の各時価総額は世界規模ランキングで低下しました。よって新規採用
はアシックス1銘柄のみ。除外は、清水建設、飯田グループHD、ユー・エス・エス、ヒロセ電機、シャープ、アズビル、朝日インテック、ヤマハ
東武鉄道、小田急電鉄、スクウェア・エニックス、ミスミグループ本社の12銘柄。加えて、GLP投資法人、日本都市ファンド、KDX不動産投資
法人の3投資法人。新たな指数は05月31日(金)の終値で算出されます。
MSCI Japan Index に連動するETFは世界各国で組成されていますが、最も時価総額の大きいETFは、米国で上場されているティッカーコー
ドEWJです。その時価総額は05月17日現在$16,547,632,438。発行済口数は240,750,000です。
最後の1分間で倍増、午後2時59分時点は3兆8729億円
今回は東武や小田急、清水建など15銘柄が除外、アシックスを採用
31日の東京株式市場で、東証プライムの売買代金が7兆7612億円と市場再編以降で最大となった。MSCIの銘柄入れ替えに伴う売買があり
商いが増えた。
取引終了前の約1分間で取引が急増し、午後2時59分時点の3兆8729億円から倍増した。今回の銘柄入れ替えでは15銘柄がMSCIのオー
ル・カントリー・ワールド(ACWI)指数から除外された。2月の銘柄入れ替えでは8銘柄が除外され、同月末の売買代金は6兆404億円だった。
昨年5月末の6兆9552億円も上回った。
今回の入れ替えに伴う個別銘柄の売買代金の変化を見ると、除外された東武鉄道は約605億円と前日から約12倍に増えた。同じく小田急
電鉄も約12倍、清水建設は6.4倍にそれぞれ拡大した。
2024/06/03 02:00 日経速報ニュース
従来型の金融サービスの会社から、社会の様々な課題を解決する会社に変わっていくには、これまでと異なる意思決定の仕組みが必要だ。
2023年11月に亡くなった三井住友フィナンシャルグループ(FG)の太田純・前社長は自身がチーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー(CDIO)
になった17年、ある会議の開催を呼びかけた。
それが「CDIOミーティング」だ。グループ内からデジタル関連の新事業とその社長を生み出し続ける「社長製造業」を実現するドライバーとなっ
ている。
原則月1回開かれ、既に開催回数は60回近く。グループ社員であれば誰でも提案可能で、毎回必ず出席する社長とデジタル担当役員、シス
テム担当役員、CDIOに、新事業を提案できる。
磯和啓雄CDIOは「最大の特徴は特定の部署にひも付かない独自の予算を持っていることにある」と話す。部署ごとに割り振られる予算では、
目先の結果が出なさそうだと判断されれば実行が後回しにされがちだからだ。「デジタルの新規ビジネスには、5年以上かけて取り組めば市場
で圧勝できるようになるものがある。CDIOミーティングでは、そこに予算を果敢に付ける」(磯和氏)という。
参加者への根回しは一切なし。特にマーケットの規模や事業の社会的な意義を巡って、激しい議論が飛び交う。詰めが甘ければ、数百万円
の調査費をかけて翌月の再提案を求めるケースもある。
磯和氏は、ミーティングが向かう次のステップを考え始めている。それは、社内の人材ではなく外部から直接持ち込まれるプロジェクトを扱うも
のだ。「三井住友FGや銀行を調べ尽くしたアイデアに触れられれば、もっと面白い事業や会社が生まれるはず」と意気込む。
「歴史のある大企業なのにベンチャー並みのスピードを備えている。スタートアップにいる身としては、驚きだけでなく脅威すら感じる」。人材情
報サービスのアトラエで営業責任者を務める川本周氏は、三井住友FGの意思決定の速さと仕組みに舌を巻いた。
川本氏は、アトラエによる社員のエンゲージメント測定システム「Wevox」を開発した中心メンバー。20年にサービスを三井住友FGに導入した。
その後、三井住友FG側からの協業提案を受けて23年10月、両社による共同出資会社「SMBC Wevox」を立ち上げて副社長に就いた。CDIOミー
ティングでゴーサインが出てから、わずか半年後のことだった。
「攻めの仕事は面白い」
同様に立ち上がった会社は、これまでに10社以上になる。ニフティ(現富士通クラウドテクノロジーズ)から18年1月に三井住友銀行に移った
三嶋英城氏は、19年10月に電子契約のSMBCクラウドサイン(東京・港)を設立した。「金融業はリスクを最優先で考えるカルチャーがあるが、
法務や情報システムなどの部門が『攻めの仕事が面白い』と前向きに協力してくれた」と振り返る。
新型コロナウイルス禍で「脱はんこ」など書類の電子化が加速するという追い風も生かし、起業から1年半で黒字転換し、有償ユーザー数の
シェアは国内トップ。23年3月期決算の純利益は1億3522万円だ。三嶋氏は「いち銀行子会社で終わらせない。海外にも進出し、数年以内の
新規株式公開(IPO)を目指す」と意気込む。
家族間で健康状態などを把握できるアプリ「ファミリーネットワークサービス」を提供するのは、SMBCファミリーワークス(東京・千代田)。横川
花野社長は、三井住友銀行プロパーだ。「非金融の事業でも、上から下まで『とにかくやってみる』ことを勧めてくれる組織。若手も何でも挑戦で
きる風土はグループの強みだ」と語る。
前社長の太田氏は社長製造業の予算を「CEO枠」として確保し、23?25年度は計1800億円と、その前の3年間から3割増やしている。
保守的な文化が完全に拭い去られたわけではない。だが、進取の気風は着実に巨大組織の中で定着し始めている。
2024/06/03 11:53 日経速報ニュース
3日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前週末終値からの上げ幅が一時500円を超えた。大型バリュー株が買われる中、3メガバンク
の上昇が目立つ。金利上昇による利ざや拡大期待に加え、企業の堅調な設備投資で資金需要が出るとの見方も強まった。日経平均が3万90
00円台を一時回復する原動力になった。
日経平均の3日午前の終値は前週末比361円(1%)高の3万8849円だった。前週末5月31日に発表された4月の米個人消費支出(PCE)物価
指数はおおむね市場の想定通り。米国でインフレが続くとの懸念が和らぎ、同日の米株式市場でダウ工業株30種平均が大きく上昇した流れを
引き継いだ。
3日は大型バリュー株が上昇し、東証株価指数(TOPIX)コア30は3月22日につけた直近高値(1481.94)を一時上回った。
中でも金融銘柄の上昇が大きい。三菱UFJフィナンシャル・グループが一時3%高、三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグ
ループが一時2%高まで上げた。東京海上ホールディングスとMS&ADインシュアランスグループホールディングスは一時3%高まで上昇した。
金融銘柄のこのところの上昇は長期金利の上昇が背景にある。銀行側で貸出金の利ざやが拡大し、収益が伸びるとの期待が強まっている。
決算に併せて発表された大規模な自社株買いや政策保有株の売却も材料視されている。
加えて、3日は設備投資の増加観測も買い材料となった。財務省が3日朝発表した1?3月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業
を除く)のソフトウエアを含む設備投資は17兆6628億円で、前年同期と比べて6.8%増えた(季節調整済の前期比は4.2%減)。
この日は安川電機が一時6%高と値を飛ばすなど、機械株を中心に設備投資関連株が軒並み買われた。オークマやアマダも午前は2%高だ
った。
みずほ証券の土屋諒太郎エコノミストは「足元で小売など一部業種には設備投資の一服感もあるが、今後の賃上げ効果で最終需要が上向
いてくれば、企業が設備投資を進めやすくなる。24年度後半に設備投資額が一段と伸びる可能性もある」とみる。
東海東京インテリジェンス・ラボの安田秀太郎マーケットアナリストは「設備投資が拡大すれば企業の資金需要が強まり、銀行の国内の貸し
出し事業の恩恵になる」と指摘する。「3大銀行株のPBR(株価純資産倍率)は足元でまだ1倍前後と低く、追加の株主還元策も期待される状
況」(安田氏)で、投資家にとって買い進めやすい銘柄群だ。
一方、値がさの半導体関連株は引き続き上値が重い。今期の業績予想が低調だったことが尾を引く。長期金利の上昇から高PER(株価収益
率)の半導体関連株は割高感が意識されやすい。足元の日本株相場は銘柄群で強弱がつきやすくなっている。
今週は米国で3日に5月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数、7日に5月の雇用統計が発表される。しんきんアセットマネジ
メント投信の藤原直樹シニアファンドマネージャーは「米国の金融政策の行方を見極めるために、週後半にかけて日本株相場は様子見の姿勢
が強まる」とみる。3日の金融株高と半導体株の上値の重さは、強気一辺倒になれない市場のもどかしさを映している。
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・経常利益15.1%増、サービスけん引 1?3月法人企業統計
2024/06/04 08:29 日経速報ニュース
3日の欧米外国為替市場で円相場が急伸した。一時は1ドル=155円90銭台と東京市場の安値の157円台半ばから1円50銭程度、円高方向
に振れた。ヘッジファンドなどの投機筋は5月の早い段階から対主要通貨でのドル買い戦略を後退させてきたが、対円だけは日米金利差を手掛
かりに買いをむしろ増やしていた。そんな「逆張りの円売り」が米景況感の悪化と米長期金利の低下で打撃を受けた。
米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週まとめるデータをもとにドル全体の建玉をみると、投機的なドルの買い持ち高は5月28日まで5週連続
で減少した。対ユーロや対英ポンドでのドル売りが目立つ。いったん消えかけていた年内の米利下げ観測の復活がドル売りを促しており、3日発
表の5月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数の悪化はそのシナリオを補強したはずだ。
28日時点のCFTCのデータではその前の週に続いて円の売り持ち高も増えていた。5月は日本政府・日銀による円買いの為替介入の観測が
あった後に151円台後半まで上げたものの、滞空時間は短かった。中旬にはもう156円台へ押し戻された。ドル買いの平均コストは上昇傾向で、
円が持ち直した場面で為替差損が発生しやすくなっていたと考えられる。
もしファンド勢が何らかの理由でリスクをとる余裕を失えば、不利になった持ち高は圧縮したいとの心理が働く。日米で金利上昇と株安が共振
した前週後半に円が大きく上げた記憶は新しい。3日は米景気への懸念から米長期金利が低下した一方でダウ工業株30種平均は下落した。
さらに、投機筋にとってより重要だったとみられるのがニューヨーク原油先物相場の大幅安とメキシコ市場で起きた「トリプル安」(通貨と債券、株
式がすべて下落)だ。
産油国で銀の主要産出国でもあるメキシコの市場は、これまで多くのリスクマネーを受け入れてきた。その原油が3日、ロシアなどによる自主
減産が縮小することへの懸念から売られた。2日投開票のメキシコ総選挙、大統領選挙を受けて誕生する新政権の放漫財政に対する警戒感も
加わってメキシコ市場は混乱に陥った。
メキシコペソは、円を元手に高金利通貨建て資産で運用する円キャリー取引の対象としても人気が高かった。ペソの対円相場が3日だけで
約5%も下落した衝撃は小さくない。
円キャリー取引で利息収益を積み上げるには時間がかかる。5月中に割高なコストでドルなどを買い進めてきた投資家の体力を問う局面はし
ばらく続くだろう。
2024/06/05 11:53 日経速報ニュース
5日午前の東京株式市場で日経平均株価は続落し、午前終値は前日比309円86銭(0.80%)安の3万8527円60銭だった。前日の米株式市場
で半導体関連銘柄が下落した流れで東エレクやアドテストがそろって下落して相場を押し下げた。一方、日米の長期金利低下で不動産株などに
は買いが向かい、相場を下支えした。
日経平均は500円近く下落する場面があった。主要な米半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が4日に0.7%下落し
たのを受け、東京市場でも半導体関連に売りが膨らんだ。米空売り投資家が「不正会計の典型的な事例」と指摘したレーザーテクはきょうを入れ
て7日続落と下げが目立っている。
4日発表の4月の米雇用動態調査(JOLTS)では非農業部門の求人件数が2021年2月以来の低水準となり、発表後に米長期金利は低下した。
米長期金利の低下につれて5日の国内債券市場では長期金利が一時1%を下回った。業種別では金利の上昇局面で買われてきた保険や銀行
といった金融セクターが大きく下げた。半面、金利低下が業績の追い風になりやすいとされる不動産株は上昇した。日経平均の構成銘柄では
三井不や住友不が買われた。
厚生労働省が5日朝に発表した4月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比
で0.7%減少し、25カ月連続でマイナスとなった。日銀の早期利上げ観測を後押しする材料にはなりづらいとの受け止めが多かった。
国債買い入れを巡っては、ブルームバーグ通信が4日夕に日銀が来週の金融政策決定会合で「長期国債の買い入れの減額についてより具体
的な方針を示すことの是非を含めて議論する公算が大きい」と伝えた。ただ、減額のペースなど踏み込んだ方針まで示すかは慎重な見方もある
なかで、日銀の政策修正を織り込む動きはきょうの午前は強まらなかった。日経平均も前引けにかけては下げ渋った。
東証株価指数(TOPIX)は続落した。前引けは32.24ポイント(1.16%)安の2755.24だった。JPXプライム150指数は反落で前場を終えた。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で2兆3978億円、売買高は8億6061万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1164と全体
の約7割を占めた。値上がりは430、横ばいは54だった。
リクルート、トヨタ、KDDI、豊田通商が下落した。一方、ソフトバンクグループ(SBG)、ファストリ、ソニーG、ニトリHDが上昇した。
[東京 5日] - 2024年3月期の金融機関の決算は絶好調だった。3メガバンクの合計当期利益は3.1兆円と過去最高を計上した。銀行だけ
ではなく、損保大手3社も同じく、計1.5兆円で3社とも過去最高益となった。
これらを支えた大きな要因が海外事業である。事業自体の好調さもあるが、為替の影響が大きかったのが当期の特徴だ。一例として、三井住友
フィナンシャルグループ(FG)は、24年3月期の連結業務純益の増益幅2838億円のうち、28%に当たる800億円は円安の効果だったと明ら
かにしている。
今期についても、引き続き為替が収益のカギを握る。3メガバンクの25年3月期収益計画上の想定レートは1ドル135─140円となっている。
一方、もし円安が続いた場合の連結業務純益は、10円の円安につき各行350億円─800億円の増益となるとみられる。会社計画上の利益を
4─6%押し上げる計算だ。
ちなみに10年前の2014年度の円安の影響額は、連結業務純益に対し各行とも200億円程度とされていた。為替感応度は10年で2─4倍に
拡大したことになる。特に銀行ごとの格差が広がっており、現在メガバンク中最大とみられる三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の為替
感応度は、トヨタに次ぐ規模という試算もある。
<邦銀にとって手痛い資本余力への影響>
しかし、円安を喜んでばかりではいられない。海外資産に絡むリスクアセットが膨張しているためだ。開示のある三井住友FGは、昨年度の円安
でリスクアセットがおよそ3兆円膨張した。大手行合計では、10円の円安で、5.6兆円程度リスクアセットが膨張すると試算される。
貸出のリスクウエートが平均30%程度と仮定すると、リスクアセットの金額の3.3倍に当たる18.5兆円程度の貸出を積み上げたのと同じだけ
のインパクトを円安が与えてしまった。この分、資本が余分に食われてしまい、他の投融資を行う余力が圧縮されたと考えられる。
また、そこまで影響は大きくないが、トレーディングリスクも為替の変動の影響を受けていると思われる。メガバンクのトレーディングリスク量のうち
、為替にかかわるリスク量(バリュー・アット・リスクの計算による)は、トレーディングリスク全体の5%程度を占める(2022年9月末時点)。金利
リスクに比べればはるかに小さいが、それでも3メガバンク合計で3000億円超となっており、前年同期比で6割増加した。その後の為替のボラ
ティリティーの上昇で、リスク量が一層増加していると考えられ、その分、その他のトレーディングでのリスクテイク力が若干そがれている可能性
もある。
もちろん、資本比率に余裕があればこれらの影響は気にならない範囲だろう。しかし日本のメガバンクの24年3月末時点の普通株式等から成る
自己資本「ティア1」の比率は、10.5─11.5%(バーゼルIII完全実施ベース、有価証券評価差額金を含むベース)となっている。規制の最低
基準は十分満たしているものの、欧米の主要行の13─17%程度と比べると低い。米銀などと比べ利益の積み上がりが遅かったことや、株価
低迷対策で株主還元も充実させてきたこと、還元などに対し欧米ほどの当局介入がなかったことなどが背景にあるとみられる。
日本国内の与信リスクの低さを考えればそこまで違和感はないものの、これ以上の資本比率低下は、国際的に営業を行う大手行としてはリスク
となる。
<円安が銀行の成長戦略に影を落とす可能性>
円安には、もう一つ、邦銀の戦略にとって大きな問題がある。海外投資が極めて高価になってしまっていることだ。
一般に日本企業による海外M&Aは実を結びにくいと揶揄(やゆ)されるが、金融機関の場合、大きな成功事例も出ている。2008年9月にMU
FGが行ったモルガン・スタンレーへの出資は、今や期中3000億円を超える収益貢献だけでなく、自前の証券会社との協業のシナジーなども
生んでいる。MUFGが今モルガン・スタンレーに出資しようとしたら、当時の約9500億円は、為替影響だけで1.5兆円にも跳ね上がる。
献した。この買収についても、タイバーツが円に対し当時から3割程度上昇していることから、5360億円という当時の買い値は今なら7000億
円程度になっていたとも想定できる。もちろん、円安で将来的な収益も大きくなるのだが、まずは資本へのストレスが大きくのしかかる。
買収価格が上昇しても、既に海外買収を済ませた金融機関ならば、平行して拡大する外貨建ての収益を充てることができる。大きな先行者メリ
ットだ。しかし、これから株価純資産倍率(PBR)1倍達成に向けて、海外買収を通じて成長戦略を加速しようとする金融機関にとって、円安は痛
手だ。実際、23年の邦銀の海外M&Aを見ると、最大でも2000億円規模と、かつてほどの迫力はない印象だ。
もちろん、良質なディールが特別に持ち込まれれば別だが、特に後発組にとってそのような機会は多くないだろう。円安は、短期的には金融機
関の利益に総じてプラスとなったが、中長期的には成長力格差を広げる諸刃の剣となるかもしれない。
2024/06/06 02:00 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(FG)が「脱・金融」を掲げると、伝統的な金融事業を中核で担ってきた事業会社は複雑な思いにかられた。
三井住友銀行幹部は「自分たちが否定されているようなイメージを持った」と明かす。
しかし太田純・前社長の動きからは、真逆の思いが見て取れる。「金融にはこだわらない」と公言していたが、そこには間違いなく、金融事業
という屋台骨への叱咤(しった)激励という面があった。外部の知恵をかき集め、人材の高度化を図っていたことがその証左だ。そして今、銀行
・証券の社内から閉塞感を吹き飛ばすような動きが活発化している。
片道切符のはずだった
その最たる例が三井住友銀行頭取の福留朗裕氏だ。「トヨタ自動車系から帰ってくるだけでも意外。頭取なんて夢にも思わなかった」と語る。
1985年に旧三井銀行に入り、海外・市場部門畑を長く担当。2015年から常務執行役員を務め、18年にトヨタの金融子会社トヨタファイナンシ
ャルサービス(TFS)に社長として転籍した。ところが21年、執行役専務として三井住友FGに復帰。23年4月に三井住友銀行頭取に就いた。
三井住友FGの複数の幹部が「福留氏の人事には、太田氏が相当こだわっていた」と証言する。
トヨタの豊田章男社長(現会長)から福留氏は大きな影響を受けた。「豊田氏は会社の変革が実現せず、フラストレーションを抱えていた。
悩みながら、あえて会社を揺らし続けていた」と振り返る。
福留氏が率いたTFSは、トヨタの新車サブスクリプション(定額課金)サービス「KINTO」の開発を主導。19年7月から全国で展開した。「スケー
ル感を持ちつつ素早く動く、トヨタ流を経験させてもらった」(福留氏)
「脱・金融」を掲げてきた三井住友FGだが、現実には銀行ビジネスの比重が高まっている。福留氏は「過去20年間の成長ドライバーは、海外
事業やグループ会社だったが、国内事業こそ宝の山だ。金利のある世界で利ざやが拡大し、経済が低体温の状態からダイナミズムが働くよう
になれば、顧客が動き出す」と話す。
「銀行法上の規制緩和が前提だが、やはり事業をやっていかなければ駄目。顧客やその事業に関わる金融を一緒に手掛けたり、金融が得意
な事業会社になったりする。例えば米アマゾン・ドット・コムのように多様な事業を立ち上げて周囲の金融を育てれば、巨大な金融会社になり得
る」。銀行の「外」の発想を学んできた福留氏は、銀行の未来像を思い描いている。
米国で独自のデジタルバンク
「最先端のシステムで、顧客ニーズの変化に応じてサービスを改良できるようになった。中長期的な視点に立って戦略を貫きたい」
こう意気込むのは三井住友FGが23年7月に米国で開業した「ジーニアス・バンク」のトップ、ジョン・ローゼンフェルド氏だ。米地銀大手でデジタ
ルバンクを率いた手腕を買ってスカウトした。
日本のメガバンクが、米国で独自にデジタルバンクを提供する。そんな飛躍した挑戦への構想がスタートしたのは、18年4月だった。
「我々は、米国でどうしていくべきか」。三井住友銀行米州戦略統括部の副部長として着任した田中大輔氏は、連日議論を重ねていた。
米国でこれまで事業を展開していなかった領域を開拓するには、その原資となる米ドルを調達する基盤の多様化が欠かせない。銀行ビジネ
スにおける重要な資金調達先は顧客からの預金だ。米国地銀に出資するというプランも検討したが、そうした銀行は店舗網を構築済みで、実
店舗は重要性を低下させていくことは間違いない。
そこで浮上したのが、デジタルのリテールバンク構想だった。田中氏は三井住友FG前社長の太田純氏が渡米した際に基本方針の了承を
取り付ける。
従来の流儀なら、グループ内の人材がジーニアス・バンクのトップに就いていたかもしれない。だが、三井住友FGが米国でリテール向けビジ
ネスを手掛けるのは初めてで、事業ノウハウに乏しい。米当局から事業化の承認を得るためにも最適な人物として、外部のローゼンフェルド氏
に白羽の矢を立てた。
ジーニアス・バンクは現在、個人向けローンと貯蓄性預金のサービスを展開する。ローゼンフェルド氏は「デビットカード、クレジットカードや
自動車ローンにも進出していきたい」と事業拡大に意欲を示す。
資産運用を手掛ける三井住友DSアセットマネジメントの猿田隆社長は、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)や野村アセットマネジメントを
経て、20年4月に社長に就いた。同業他社に見劣りする預かり資産の拡大ペース引き上げを、運用ビジネスに精通した猿田氏に委ねた。
猿田氏は「言い方は悪いかもしれないが、外資系の運用会社と比べると日本の運用会社はもっと能力を高める必要がある」と一刀両断する。
顧客資産を集めるには、魅力的な運用商品を実現する優秀なファンドマネジャーが必要だ。そこで、猿田氏は就任後、新たな資産運用の
担い手を育てるユニークなプログラムを立ち上げた。国内最大級となる500億円の投資枠をつくり、優秀な運用商品の開発に充てるというものだ。
三井住友銀行も資産運用ビジネス強化の動きに呼応する。国内400店舗のうち、150店を富裕層向けビジネスのチャネルに転換し、SMBC
信託銀行やSMBC日興証券も集まる拠点にする計画だ。
GS出身者が北米戦略を加速
「三井住友FGのミッシングピースである海外の投資銀行ビジネスを強化してほしい」。ゴールドマン・サックス証券に21年間在籍し、金融法人
グループの統括責任者や経営委員会のメンバーを務めた梅谷俊彦氏に、SMBC日興証券副社長への就任を頼んだのは、三井住友FGの太田
前社長と中島達社長だった。
梅谷氏は北米戦略を加速させた。23年4月、米証券会社ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループに追加の資金を拠出し、持ち分を最大15%
まで引き上げると発表した。梅谷氏は「日本は最も重要な市場だが、グループ全体の成長を考えると米国市場を避けては通れない」と力説する。
ジェフリーズとの連携強化を起点に、業務の大幅な再編も主導した。競争力に劣る米国株式の引き受けやM&A(合併・買収)の助言業務に
ついて、ジェフリーズに機能を移管した。「協働の枠組みに従い、両社の得意分野について収益を分配する仕組みにした」(梅谷氏)
連携を強化して以降、三井住友FGはジェフリーズと合同で30件以上の株式・債券の引き受けを実現。24年1月には、欧州や中東・アフリカ
地域まで協業範囲を広げることで基本合意した。
外部の知見を積極的に取り込むことで、改革が進む三井住友FGの銀行や証券のリテール業務。日本銀行がマイナス金利を解除した今、さら
にアクセルを踏めるのか。
S&Pグローバル・レーティング・ジャパンの吉澤亮二マネジングディレクターは、足元の収益構造でリテールの貢献度が約1割にとどまって
いる点に注目する。「リテール業務のデジタル化をきっちり収益化するのは、各国の銀行に共通する課題。三井住友FGは『Olive(オリーブ)』
をはじめプラットフォーマーになろうとする意思は感じられるが、まだ稼げているとは言えず、業績への貢献は期待と不安が半々だ」と語る。
「金融がほとんど現物を扱う時代が去った中で、三井住友FGはトップに引っ張られ、デジタルビジネスを推進する意欲が強い」と評価するの
は、ピクテ・ジャパンの大槻奈那シニア・フェローだ。
しかしグローバルを見れば、歴然とした格差が横たわる。大槻氏によると、米国の大手行が年間2兆円前後をITに投資している一方、三井
住友FGを含む日本勢はほぼ2000億?3000億円にとどまる。「日本の企業全体に言えるが、人員配置も含めたリソースの大胆な変革ができ
ていない」(大槻氏)のだ。
国内のメガバンクグループ内の競争において、三井住友FGの存在感が急速に増していることは衆目が認める事実だ。だが、世界の金融
市場で伍(ご)する存在になるまでに、残された課題は多い。
2024/06/05 12:55 日経速報ニュース
5日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前引けは前日比309円(0.80%)安の3万8527円だった。下げ幅は一時400円を超えた。外国
為替市場で円高・ドル安が進み、輸出関連を中心に売りが優勢となった。最近上昇が目立っていた割安(バリュー)株物色の勢いには陰りがみ
えつつあり、金利低下が追い風になるはずのグロース(成長)株も波に乗りきれない。当面、相場上昇のけん引役が見当たらない状況に陥る可
能性が出てきた。
午前は川崎汽船、日立製作所、三菱重工業、三井住友フィナンシャルグループなど大型株の下落が目立った。認証不正問題に円高進行が重
荷のトヨタ自動車は4カ月ぶり安値を付けた。海運や保険、商社などはセクター全体で下げており、これまで続いてきた「バリュー相場」の巻き戻
しが強く意識される。
4月以降の日本株は金利上昇などを背景にバリュー株の優位が続いていた。日経平均が3万9000円前後で足踏みするなか、相対的にバリュ
ー株の影響を大きく受ける東証株価指数(TOPIX)は週初に3月22日の最高値(2813.22)に接近。JPX日経インデックス400は3日に算出来高
値を更新した。半導体などグロース株の比率が高い日経平均をTOPIXで割って算出する「NT倍率」は5月31日時点で13.88倍と今年最低水準
まで低下していた。
バリュー有利の展開に待ったを掛けたのが日米の金利低下だ。4日の米市場では市場予想を下回る米雇用指標を受け、労働市場の過熱感
が薄れつつあるとの見方から、長期金利は4日連続で低下した。5月29日には4.6%台だった長期金利は4日には4.3%台まで急低下した。日本
国内でも日銀の政策修正の観測が強いなか、5日午前に長期金利は節目の1%を割り込んだ。「金利上昇=バリュー株買い」の意識で割安株
を買う流れは一転して、巻き戻された。
頼みの綱の金利低下の恩恵を受けやすい国内のグロース株もさえない。午前は東京エレクトロンやアドバンテストが下落したほか、米空売り
投資家が「不正会計の典型的な事例」と指摘したレーザーテックは一時8.65%安に沈んだ。市場では「米半導体大手のエヌビディアが業績好調
でも国内銘柄に対する波及効果は慎重にみるべきだ」(大和証券の細井秀司シニアストラテジスト)との声があり、最近は上値を試すエヌビディア
に明確に追随できなくなっている。
主力バリュー株の失速に加え、日経平均の最高値更新に貢献した半導体株に一昔前のような勢いがみられない日本株――。ブルームバーグ
通信は4日夕、日銀が13?14日に開く金融政策決定会合で「長期国債の買い入れの減額についてより具体的な方針を示すことの是非を含めて
議論する可能性が大きい」と伝えるなど、日本固有の不透明材料も相場の重荷となる可能性が出てきている。
ニッセイ基礎研究所の前山裕亮主任研究員は「企業業績に対する期待後退や円高進行など懸念材料が少なくない」と指摘する。日経平均の
最高値回帰はまたしても遠のいたと言えそうだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-07/SELBXPT1UM0W00
トヨタによる自社株買いを活用して段階的な売却を検討
日本企業の政策株削減の取り組み加速を示す象徴的な動きに
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三井住友フィナンシャルグループ(FG)の2メガバンクが、政策保有株として持つトヨタ自動車の
株式売却を検討していることが7日、分かった。大手金融機関による大規模なトヨタ株放出の動きが明らかになるのは初めて。
複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。2社のトヨタ株保有総額は時価で1兆3200億円。政策株をゼロにする方針を打ち出している損害
保険会社4社の保有分を含めると、合計で3兆2000億円を超える規模のトヨタ株が売却されることになる。
2メガと損保4社の保有総額は、トヨタの時価総額の約6%に相当する。トヨタによる自社株買いを活用して段階的に売却することで市場への
影響を最小限に抑えるという。
資本効率を低下させるなどの理由から政策株削減の動きは国内で広がっているが、依然として海外投資家などからの削減圧力は強い。国
内最大の企業であり、メガバンクなど大手金融機関との持ち合い解消が遅れていたトヨタ株の売却が実際に進めば、日本企業の政策株削減
の取り組み加速を示す象徴的な動きとなる。
国内3メガ銀は政策保有株の売却を進めている
出所:各社資料
注:MUFGと三井住友FGは取得価格、みずほFGは簿価
ブルームバーグのデータによると、時価ベース(6日終値)でのトヨタ株の保有額は、MUFG傘下の三菱UFJ銀行が約7000億円、三井住友
FG傘下の三井住友銀行が約6200億円。
複数の関係者によると、2メガバンクが保有するトヨタ株を複数年かけ、段階的に売却していく案が出ている。最終的に保有をゼロにするか、
大幅に削減する。みずほフィナンシャルグループはトヨタ株を大規模に保有していない。
政策株の売却を巡っては、企業向け共同保険料の事前調整問題を受けて、大手損保が保有をゼロにする方針を打ち出している。同問題を
起こした一因が政策株にあったとして、金融庁は各社に売却加速を要請した。損保問題をきっかけに、政策株を多く保有している銀行など他
業界でも売却加速が進むとの見方が市場では出ていた。
トヨタ自身も保有する政策株を削減する方針を示している。昨年後半からサプライヤーであるデンソーへの出資比率を引き下げるなど、一部
で見直しに着手した。また、取引先による同社株の売却要請にも備えるとして、25年4月30日を期限に上限1兆円の大規模な自社株買い枠
を設定している。
トヨタ株の売却について三菱UFJ銀と三井住友銀の広報担当者はコメントを控えた。トヨタの広報担当者からのコメントは得られていない。
関連記事:
3メガ銀が10兆円の持ち合い株式売却を加速へ、損保問題が契機に
損保大手6兆円超の政策保有株ゼロへ、MS&AD29年度末までに
トヨタグループが持ち合い見直しへ、手始めにデンソー株を売却
トヨタは後場に下げ幅を拡大、2メガバンクが政策保有株式の売却検討と伝わる
トヨタ自動車<7203>は後場に下げ幅を拡大した。7日、米ブルームバーグ通信が「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三井住友
フィナンシャルグループ(FG)の2メガバンクが、政策保有株として持つトヨタ自動車の株式売却を検討していることが7日、分かった」と報じた。
株式の需給悪化を警戒した売りが出たようだ。
三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>と三井住友フィナンシャルグループ<8316>の2社のトヨタ株保有総額は時価で1兆3200億円と
なり、政策保有株式をゼロにする方針を打ち出している損保会社4社の保有分を含めると合計で3兆2000億円を超える規模という。メガバ
ンク2社では複数年かけて段階的に売却する案が出ており、最終的に保有をゼロにするか、大幅に削減するとしている。
7日の東京市場で日経平均株価は前日比19円安の3万8683円と小幅反落。東証プライム市場の売買代金も3兆4000億円台と低調
だった。今晩は米国の重要経済指標である5月雇用統計が発表されるほか、来週は11~12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、13
~14日に日銀金融政策決定会合と日米中央銀行の決定会合が予定されていることから、ビッグイベントを前に積極的な売買は手控えられた。
市場には「日経平均株価が3万9000円を抜けきれずに膠着状態となるなか、来週の中銀ウィークは今後に向けた大きなポイントとなる」
(市場関係者)との見方が出ている。東京市場は14日が先物のメジャーSQ(特別清算指数)となることもあり、週末にかけボラタイルな値動
きとなることもあり得る。
6月FOMCに関しては金融政策は現状維持が予想されており、焦点は早ければ9月とみられている利下げの確率が高まるか、どうかだ。
今回のFOMCではドットチャート(政策金利見通し)やGDP成長率の予想などが示される。足もとでは5割強の確率で9月利下げが行われる
と予想されているが、FOMCを経て早期利下げの可能性が高まるかがポイントだ。利下げに前向きな内容となれば、エヌビディア<NVDA>を
中心とする半導体関連株は一段と買われ、東京市場でも東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>などへの追い風が強まることも
予想される。
一方、FOMCに比べて「より不透明感が強い」(アナリスト)とみられているのが、日銀金融政策決定会合だ。市場には「利上げはあっても
7月以降だろうが、国債買い入れ減額は6月会合でもあり得る」(同)との声が出ている。日銀が資産残高を縮小する量的引き締め(QT)へ
の方向を示せば、国内金利の一段の上昇とともに三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>や三井住友フィナンシャルグループ<8316>など
銀行株は一段の上昇も見込めるだろう。来週は、FOMCでは半導体関連、日銀会合で銀行株などを中心に荒い値動きとなることも予想される。
上記以外のイベントでは、12日には米5月消費者物価指数(CPI)が予定されており、その結果が注目される。13日には米5月生産者物
価指数(PPI)が公表される。10日からアップル<AAPL>のイベント(WWDC)が開催される。国内では10日に1~3月GDP改定値、11日に
5月工作機械受注が発表される。10日にミライアル<4238>、11日にロック・フィールド<2910>、12日にANYCOLOR<5032>、13日に神戸
物産<3038>、14日にエイチ・アイ・エス<9603>などが決算発表を行う。更に、11日にD&Mカンパニー<189A>、14日にChordia Therap
eutics<190A>が東証グロース市場に新規上場する。来週の日経平均株価の予想レンジは3万8000~3万9300円前後。
出所:MINKABU PRESS
2024/06/08 日本経済新聞 朝刊
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券2社が顧客の同意を得ずに重要情報を共有していたとして、証券取引等監視
委員会は来週にも金融庁に行政処分を勧告する検討に入った。銀行と証券が連携して顧客の利益にかなう提案をしやすくするために規制緩
和が進んできたが、法令順守の姿勢が問われている。
鈴木俊一金融相は7日の閣議後の記者会見で「監視委は金融庁から独立した立場で職務を行うこととされているので、委員会が行う個別の
検査や勧告などの対応についてコメントは控えなければならない」と述べた。そのうえで「今後、監視委でしっかりと対応されるものと思う。その
結果についてはいずれ発表がある」と話した。
監視委による勧告の対象は三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社で、勧告されれば、
金融庁は6月中にも業務改善命令などの行政処分を検討する。
2点を問題視
監視委が問題視しているのは(1)同じグループの銀行と証券会社間の顧客情報共有を制限する金融商品取引法のファイアウオール(FW)規
制違反(2)銀行には認められていない有価証券の勧誘行為――の主に2点のもようだ。
もともとFW規制は銀行が子会社をつくって証券業務に参入できるようになった1993年、銀行が優越的な地位を使って営業するのを防ぐため
に導入された。加えて証券会社間の公正な競争の確保も狙った。
米国では大恐慌を教訓にできた商業銀行と投資銀行の分離を求めるグラス・スティーガル法の考え方が残るが、グループ内で顧客情報を共
有することには特に制限はない。欧州の金融機関は銀行と証券双方を兼ねた「ユニバーサルバンク」として活動している。国内の金融業界も
「過度な規制だ」と緩和を求めてきた経緯がある。
このため銀行と証券の垣根を下げて企業側の多様なニーズに応えやすくする狙いからFW規制は段階的に緩和されてきた。
2009年には法人顧客の非公開情報の共有についてあらかじめ共有すると通知した上で拒否する場合は申し出る「オプトアウト」の形式を
導入した。それまでは事前に企業側の同意を得る必要がある「オプトイン」の手法がとられていた。
22年6月には上場企業などに限って、銀行などのウェブサイトに情報共有する旨を掲載していればよいことにし、企業側が明示的に情報共
有を拒否しない限り共有できるように緩められた。
23年6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では規制緩和の方向を念頭に「検討を行う」と明記。さらに金
融庁は24年5月下旬、金融審議会の作業部会でFW規制の緩和について「モニタリングの結果を踏まえ検討を行う必要がある」との考え方
を示していた。
「議論は停滞」
金融庁は規制緩和の一方で、情報管理が十分かどうかのモニタリングを強化していた。MUFGの今回の案件はこのモニタリングの一環で
発覚したものも含まれる。国内最大の金融グループであるMUFGでこうした法令違反が疑われる行為が見つかったことで「FW規制緩和の
議論は停滞が避けられない」(関係者)との見方がある。
一連の法令違反に役員らが関わっていた可能性があることで、国内最大の金融グループ全体の法令順守への姿勢が問われることにもなる。
銀行や証券2社が単体で法令に違反する行為に及んでいたのか、グループとしての法令順守体制が問題だったのかは、金融庁が近く判断
することになる。持ち株会社としてのMUFGには傘下の銀行や証券のガバナンスを適切に管理する義務が銀行法で課されている。
FW規制の緩和は、垣根を下げることにより、協調融資の組成や社債発行など企業の財務状況に応じて総合的な金融サービスを提案しや
すくするのが狙いだ。この趣旨に照らせば情報共有は要になるが、あくまで法令にのっとった対応が大前提だ。MUFGの今回の事例も企業
側の同意を得ていればそもそも問題にならなかった。
22年のSMBC日興証券の相場操縦事件をめぐる問題では、金融庁は相場操縦と別に見つかったFW規制違反で持ち株会社の三井住友
フィナンシャルグループ(FG)と三井住友銀行に銀行法に基づく報告徴求命令を出した。行政処分ではなく、対処が甘かったのではないかとの
見方があった。
6/8 18:11 配信 FISCO
■株式相場見通し
予想レンジ:上限39300円-下限37500円
週末の米国株式市場は下落。ダウ平均は87.18ドル安(-0.22%)の38798.99ドル、ナスダックは39.99ポイント安(-0.23%)の17133.13、
S&P500は5.97ポイント安(-0.11%)の5346.99で取引を終了した。注目の5月雇用統計は、失業率は市場予想(3.9%)より悪化し4.0%と
なったものの、非農業部門雇用者数や賃金の伸びが予想以上に拡大したため、早期の利下げ観測が後退。10年物国債利回りは前日比
0.14%上昇の4.43%まで上がり、為替は一時1ドル157円台に乗せた。
13-14日に開催される日銀金融政策決定会合では、長期国債の買入減額についてより具体的な方針を示すことの是非を含めて検討する
といった関係者の話が伝わっており、何かしらの発表が行われる見通し。現在、日銀は月間6兆円程度の買入を継続しているが、長期国
債の買入方針について、減額が適切なのかどうかを慎重に見極めるとのことだ。今時点では、市場に対する影響を軽微に留めるため、段階
的な緩やかな減額の方向性が示される公算が大きい。一方、追加の利上げ実施に関しては、早くて9月頃と見られていたが、5月末に大手
金融機関幹部が「早ければ7月にも政策金利を0.25%程度引き上げる可能性は十分にある」と発言したことで、「7月利上げ観測」が強まり、
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは5月30日に1.100%まで上昇。その後は米長期金利低下などを受けて、0.9%台まで低下
したが、日銀会合への思惑で長期金利は動きやすいことから、株式市場は金利動向をにらんだ展開が続く。
一方、日銀会合開催前の11-12日には、米連邦準備制度理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。結果発表及び
パウエルFRB議長の記者会見は、東京時間13日未明に公表される。今回は「政策金利は据え置き」「ドットチャートは、2024年の利下げ
回数が3回から2回に修正」が想定線となっている。2025年、2026年の利下げ見通しも注目ではあるが、パウエルFRB議長は「政策判断は
データ次第」という基本姿勢を示すと見られることで、市場への影響は限定的か。6日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会では、0.25
%の利下げが実施されたが、今後の利下げスケジュールは「データ次第」と市場想定通りの発表に留まったことでユーロへの影響は限定的
となった。今回のFOMCも市場想定通りの結果となれば、ECB理事会後のユーロ同様、ドルの急変動など為替市場の乱高下は回避されよう。
■為替市場見通し
来週のドル・円は底堅い値動きか。米連邦準備制度理事会(FRB)は引き締め的な政策方針を維持する公算。6月12日発表の米5月消費者
物価コア指数(CPI)は前年比+3.5%と上昇率は4月実績を下回る見通し。ただ、2%のインフレ目標を早い時期に達成するために引き締め
的な金融政策を長期間継続するとみられる。5月消費者物価コア指数が市場予想と一致した場合、ドル買い・円売りがやや強まる可能性が
ある。FRBは11-12日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、現行の金融政策を堅持する。インフレ指数は伸びが鈍化しているものの、
目標値に収まらず、タカ派的なスタンスを堅持すると予想されており、金利高・ドル高に振れやすい。
一方、日本銀行は13-14日開催の金融政策決定会合で、国債買入れ減額などを決定する可能性がある。ただ、実質賃金の長期間マイナス
により金融正常化論議が本格化するかどうかは不透明。市場参加者の間では日銀は現行の緩和的な政策方針をおおむね堅持するとの見
方が多く、国債買い入れの減額が決定されてもリスク回避的なドル売り・円買いがただちに拡大する可能性は低いと予想される。なお、日本
政府は4月末から5月にかけて9.8兆円規模の為替介入を実施したが、ドルの上昇圧力は強い。イエレン米財務長官の為替介入けん制発言
はドル買い・円売り要因とみられ、ドル・円は下げづらく6月中に160円レベルを再度目指す展開となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
6月10日(月):経常収支、国内総生産(GDP)速報値など
6月11日(火):英・失業率など
6月12日(水):中:消費者物価指数、中・生産者物価指数、英・鉱工業生産指数、英・商品貿易収支、米・消費者物価コア指数など
6月13日(木):米・連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利、豪・失業率、欧・鉱工業生産指数、米・生産者物価コア指数など
6月14日(金):日銀金融政策決定会合、欧・貿易収支、米・ミシガン大学消費者信頼感指数速報など
2024/06/09 日経MJ(流通新聞)
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は三井住友銀行と共同で新型店を開発し、銀行にラウンジなどを併設した。同行の持ち株会社、
三井住友フィナンシャルグループ(FG)とは2023年に資本業務提携を結んでおり、24年4月には共通ポイント事業を統合した。CCCの店
舗運営ノウハウを生かし、若年層との接点を増やす。
「銀行を『行く場所』から『いる場所』に変えていく」。三井住友FGの中島達社長は新店舗のコンセプトについて、こう言及した。西武渋谷店
(東京・渋谷)にあった三井住友銀の店舗を改装し、新型店「オリーブラウンジ渋谷店」をオープンした。ラグジュアリーな雰囲気に仕上げ、貸
金庫をリノベーションした個室などユニークな意匠も凝らした。
窓口や相談スペース、ATMに加え、CCCが運営する「シェアラウンジ」やスターバックスコーヒージャパン(東京・品川)のカフェを併設した。
利用客はシェアラウンジなどで過ごす合間に、口座開設の手続きや資産運用を相談できる。
改装前は「平日の昼間は特に60歳代が多かった」(担当者)が、新NISA(少額投資非課税制度)の普及などで若年層の資産形成への
関心が高まっていることに対応し、セミナーなどを今後開催する。
両社は4月にCCCの「Tポイント」と三井住友FGの「Vポイント」を統合し、共通ポイント事業を開始した。しかし関連アプリが複数あるなど、
まだ使い方がわからない消費者も多い。
渋谷の店舗では、専門スタッフがスマートフォンのアプリで利用できる総合金融サービス「Olive(オリーブ)」やVポイントの使い方を案内す
る。オリーブで決済すると決済額の10%相当のVポイントを還元する。「街に開かれた銀行」(CCCの増田宗昭会長)にするため、営業時間
は午前7時~午後10時までとした。
三井住友銀行の国内の有人店舗は400店舗で、最近は商業施設内などに移転している。デジタル化を進めて、23年に銀行やクレジット
カード、証券、保険などを1つのアカウントにまとめたオリーブを始めた。開始1年で230万アカウントを獲得したが、渋谷の店舗などを活用し
、若年層の取り込みにつなげる。
渋谷区には1600社超のスタートアップがあるとされており、その人口もターゲットに見据える。渋谷の店舗は年間153万人の来客を見込
む。両社は渋谷を含めて、オリーブラウンジを東京や大阪で計3カ所開設する。顧客の利用動向を見ながら今後の出店拡大を検討していく。
CCCは共通ポイントや市場調査によるデータマーケティングで店づくりを支援してきた。例えば、ベビー・幼児用品店の「アカチャンホンポ」
では、顧客ニーズが高いベビーカーを旅行やお出かけのシーンごとに提案するなど、きめ細かい店づくりを強みとしており、そのノウハウを渋
谷の店舗でも生かす。
ただTSUTAYAなどの低迷により、CCCの23年3月期の営業利益は11億円と、19年3月期の1割に満たない。Vポイントやオリーブラウ
ンジなど、三井住友FGとの連携を最大限活用し、業績の底上げにつなげられるかも焦点となる。
[東京 10日 ロイター] - 寄り付きの東京株式市場で日経平均は、前営業日比5円85銭高の3万8689円78銭と、小幅に反発してスタート
した。寄り付き後は上げ幅を広げ、一時170円超高となった。為替の円安進行を受けて輸出関連が買われているほか、保険、銀行など金融セ
クターがしっかり。一方、半導体関連などハイテク株はまちまち。
個別では、主力のトヨタ自動車(7203.T), opens new tabが1%超高。ホンダ(7267.T), opens new tabは2%超高でしっかり。指数寄与度の大き
いファーストリテイリング(9983.T), opens new tabが小幅高、ソフトバンクグループ(9984.T), opens new tabは1%超高で推移している。三井住友
フィナンシャルグループ(8316.T), opens new tab、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T), opens new tabも値上がり。
東京エレクトロン(8035.T), opens new tab、アドバンテスト(6857.T), opens new tabは小幅安、レーザーテック(6920.T), opens new tabは2%超
高と、堅調に推移している。
2024/06/10 09:59 日経速報ニュース
10日午前の国内債券市場で長期金利が大きく上昇(債券価格が下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは1.015%と前週末から
0.045%上昇した。7日発表された5月の米雇用統計で雇用者数や賃金の伸びが市場予想を上回った。雇用の引き締まりがインフレにつな
がるとして米連邦準備理事会(FRB)による早期の利下げ観測が後退。7日に米長期金利が上昇し、国内金利の上昇を促した。
2024/06/13 15:00 日経速報ニュース
日本株相場が戻りを試している。12日まで開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて、米国の利下げの方向性は変わらないとの
受け止めが広がった。アジアの投資家の間でも日本株への期待は根強く、米運用会社フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ香港拠点
の卓兆源シニアバイスプレジデントは「日本では株高につながる好循環が起きていて、投資余地が大きい」とみる。主なやり取りは以下の通り。
■日本市場に広さと深さ、金融・高配当株に投資
――運用ファンド「Templeton Select APAC Equity Income Fund」は、4月末時点の国・地域別の組み入れ比率で日本株が3割と最も高い
です。三井住友フィナンシャルグループやソフトバンク、武田薬品工業などが上位銘柄ですね。
「日本は投資先としてとても良い環境にある。30年間のデフレから脱却しつつあり、企業が稼いで春闘(春季労使交渉)で賃上げも実現する
好循環が起きている。コーポレートガバナンス(企業統治)の改善や市場改革も進んでいる。運用するファンドはボトムアップで銘柄を選んで
いるが、結果として日本株の比率が最も高くなった」
「金融株は、日銀のマイナス金利解除が追い風だ。運用ファンドは投資先の成長とインカムゲイン(配当)の両方を狙い、銘柄を組み合わせ
て投資している。日本でも通信や製薬は高配当株だ。日本市場は広さと深さがあり、投資先候補も多い」
■アジアテックのエコシステム取り込む
――アジアのテック株への投資も目立ちます。
「銘柄ごとの保有比率では台湾積体電路製造(TSMC)が最も高く、次が韓国サムスン電子だ。米エヌビディアなどがテック産業のエコシス
テムを完成させるためには、アジアのパートナーが必要だ。台湾のファウンドリー(製造受託企業)やハードウエア企業がないとチップやデータ
センターを作れない。私も6月上旬の(アジア最大級のIT見本市の)台北国際電脳展(コンピューテックス台北)に参加するなど、調査に力を
入れている」
――中国や香港株への投資はどうですか。
「投資比率は合計で25%近くと、日本に次いで大きい。中国は内需、外需で稼ぐ企業ともに成長余地が大きい。保有比率が最も高いのは
中国ネットサービスのテンセントだ。国内のゲーム業界を主導する企業で、経営陣の施策も評価している。他にハードウエア分野の企業を
継続保有するなどしている」
――アジア株投資で注意しているリスクは何ですか。
「グローバルで地政学リスクや景気後退の可能性が引き続きある。米国が大統領選後に政策を変更する恐れもあり、輸出企業などへの
悪影響が気がかりだ」
2024/06/14 08:00 日経速報ニュース
14日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日終値(3万8720円)より150円ほど安い3万8500円台後半で始まりそうだ。足元では
米株高も日本株買いに波及しにくい展開が続いている。その後は、日銀の金融政策決定会合の結果と円相場の反応次第で上下に大きく
動く可能性がある。
13日の米株式市場でハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は前日比0.33%、多くの機関投資家が運用指標にするS&P500種
株価指数は0.23%とそれぞれ上昇し、連日で過去最高値を更新した。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測を背景に、アップルやエヌビ
ディアなど主力ハイテク株が上昇した。
14日早朝の大阪取引所の夜間取引で日経平均先物は下落し、9月物は前日の清算値に比べ150円安い3万8570円で終えた。14日早
朝の外国為替市場で円相場は1ドル=157円ちょうど近辺と前日夕時点に比べやや円高・ドル安で推移している。
東京証券取引所によると、海外投資家は6月第1週(3?7日)に現物株を3週連続で売り越した。売越額は1986億円と、4月第3週以来
およそ1カ月半ぶりの大きさ。3週連続の売り越しは2023年12月第1週(4?8日)以来、半年ぶりだ。日銀の金融政策を巡る不透明感など
から日本株を売る動きが続いており、「今週も大型の主力株の下げ方をみれば、海外勢の売りが続いている可能性が高い」(外資系証券の
トレーダー)との声があった。
日銀はきょうまで金融政策決定会合を開く。会合では長期国債の買い入れ額を減らすことを議論するとみられ、市場はどの程度のペースで
減額し、保有国債の残高を減らしていくのかに関心を強めている。市場予想に沿った結果だった場合、材料出尽くしから株式市場では見直し
買いが入る場面もありそうだ。日銀は次回7月の会合では追加利上げに動くとの見方も多く、植田和男総裁が今後の金融政策の運営につ
いてどう説明をするかに注目が集まっている。
寄り付きで株価指数先物・オプション6月物の特別清算指数(SQ)が算出される。東証グロース市場に抗がん剤開発を進めるChordia
Therapeutics(コーディア・セラピューティクス)が上場する。米国では6月の米消費者態度指数(ミシガン大学)が発表される。
〔日経QUICKニュース(NQN) 張間正義〕
【関連記事】
・日銀きょう総裁会見、国債減額・円安への言及焦点
・日本株、好循環で投資余地大きく 米運用会社の卓氏
・国債購入減額ペース焦点に 日銀、政策決定会合で議論
日本銀行は14日の金融政策決定会合で、月間6兆円程度としていた長期国債の買い入れを減額する方針を決定した。具体的な計画は
次回会合で決める。政策金利の無担保コール翌日物金利を0-0.1%程度に誘導する金融市場調節方針は維持した。
ブルームバーグのエコノミスト調査では、今会合で国債買い入れの減額方針が決まるとの見方が54%と過半を占めていた。一方、政策
金利については、ほぼ全員が据え置きを予想し、10月会合と並んで最多の33%が7月会合での追加利上げを見込んでいた。
日銀の国債保有が国内総生産(GDP)に匹敵する規模に膨らんでおり、植田和男総裁は国債買い入れの減額とそれに伴ってバランス
シートを圧縮していく方針を重ねて表明していた。タイミングについては、3月の政策変更が「消化される様子を見てからと考えている」との
見解を示していた。
関連記事
日銀会合注目点:追加利上げ巡る植田総裁発言、国債購入減額の具体策
国債買い入れ減額、具体的方針示されるかが焦点-13日から日銀会合
過半が今月日銀会合で国債減額予想、年内利上げ9割に増加-サーベイ
日銀、早ければ今月会合で国債購入減額を具体的に検討も-関係者
[東京 14日 ロイター] - 日銀は13?14日に開いた金融政策決定会合で、国債買い入れについて、市場参加者の意見も確認した上で
次回7月の決定会合で今後1―2年程度の具体的な減額計画を決めることを決定した。次回会合までは3月会合で決めた月間6兆円程度
の買い入れを継続する。7月会合後、金融市場で長期金利がより自由な形で形成されるよう、国債買い入れを減額していく方針を示した。
日銀は5月13日に5―10年の国債買い入れを500億円減額。3月会合以降で初の減額となったが、市場にサプライズのタイミングで実施
されたことで国債買い入れの減額を巡る不透明感が高まり、10年金利上昇の一因となっていた。
国債買い入れ減額に関する決定は賛成8対反対1。中村豊明審議委員は、国債買い入れの減額の方向性は賛成だが、7月の展望リポー
トで経済・物価情勢を改めて点検してから決定すべきとして反対した。
政策金利である無担保コールレート翌日物の誘導目標は、全員一致で0―0.1%程度で維持することを決めた。
景気の現状については「一部に弱めの動きみられるが、緩やかに回復している」として4月の展望リポートで示した判断を維持。生産につい
ては、基調としては横ばい圏内だが、足元では「一部自動車メーカーの生産・出荷停止による下押しが続いている」とした。個人消費は、
物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の下押しが続いているものの「底堅く推移している」とした。
経済の先行きは「所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続ける」とし、4月時点と
同様の見方を示した。
消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環の強まりで中長期的な予想物価上昇率が
上昇していくことが見込まれ、2026年度を最終年度とする「展望リポート」の見通し期間後半には物価目標とおおむね整合的な水準で推移
するとの見方を示した。
日銀は、引き続き海外の経済・物価や資源価格の動向、企業の賃金・価格設定などがリスクになると指摘。日本の経済・物価を巡る不確実
性は「引き続き高い」とし、金融・為替市場の動向やその日本経済・物価への影響を十分注視する必要があるとした。
2024/06/15 05:00 日経速報ニュース
「時間稼ぎ」「先送り」「引き延ばし」「肩すかし」――。さまざまな悪評が寄せられた。日銀が14日の金融政策決定会合で国債購入の減額方針
を決めた半面、具体的な計画は7月末の次回会合で固めると表明したことに対しての市場関係者らの反応だ。
それでも日銀の植田和男総裁や執行部の事務方が一安心したのは間違いない。総裁の記者会見中、円安がどんどん進む事態は避けられた
からだ。
要所にちりばめたタカ派発言
4月の前回会合後は植田氏の会見でのやり取りが円安の影響を軽視するかのような印象を持たれ、円安が加速した。一時1ドル=160円台ま
で下落し、財務省が円買い介入に動くきっかけとなった。
今回はこの轍(てつ)を踏まなかった。植田氏はとくに円相場の問題で揚げ足をとられぬよう、ひと言ひと言に細心の注意を払った。事務方も相
当、神経を使って会見を準備したようだ。
意識的にタカ派的な発言も要所要所にちりばめた。
国債買い入れについては「減額する以上、相応の規模になると考えている」と語り、大規模な減額になることをにおわせた。
次回7月会合での利上げは減額計画の決定と重なるため見送り観測が強まったが、「当然ありうる話」と踏み込んでみせた。
決定内容の発表後、市場は「具体的な内容がなかった」とみて円相場は一時158円台まで下落した。だが会見中には円売りの勢いが鈍り、夜
にかけて156円台後半まで円が買われる場面もあった。
重要なのはファイティングポーズ
一時、政府との協調のあり方すら問われた今の日銀にとって重要なのは、円安に対して明確なファイティングポーズをとり続けることだ。
もちろんポーズだけではすぐに行き詰まる。そこで、3月に異次元緩和を解除した際に金融政策の本筋から外した「長期国債の買い入れ」につ
いて、少しずつ減らしていく量的引き締め(QT)が俎上(そじょう)に上がった。
日銀もQTに動いたところで円売り勢に「勝てる」とは思っていない。それでも、せっかく何かをするのであれば、ある程度の耐久力のある枠組み
をつくる必要があると考えたようだ。
2013年から11年続いた量的緩和の末に、日銀が持つ長期国債は590兆円と発行残高の5割超に及ぶ規模に膨らんだ。財政と金融政策の事実
上の一体化は、黒田日銀が残した負の遺産だ。この異常事態が続く限り、日銀による債券市場の支配は変わらないし、本当の意味での金融政
策の正常化も訪れない。市場を大混乱に陥れることなく少しずつ残高を落としていく作業は、いつかは始めなければならないものだった。
ただし、いま急いで着手する必要があったかどうかは微妙なところだ。いみじくも総裁自身が会見で語ったように、「望ましい国債保有残高とか
(それに対応する)超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかるので、(方針決定が)短期的に1カ月、2カ月後先になること自体
のコストはそれほどない」からだ。
日銀はむしろ円安対応を迫られた事態を奇貨として、早いうちからQTの本格的な枠組みを整える道を選んだともいえる。
異次元緩和を解除した際、日銀は国債買い入れの規模をひとまず解除直前と同じくらいの月6兆円規模に据えた。ならしてみると償還とほぼ
同じ規模のため、保有国債の残高はおおむね保たれる。
ここから月間の購入額を減らしていくと、購入が償還をはっきりと下回り、保有残高が徐々に減っていくことになる。これが日銀版QTだ。会合
に先立ち、市場では月間の購入額を6兆円から5兆円に減らす案がささやかれたが、市場との対話を経てじっくり仕組みをつくる以上、もっと複
雑なものになる可能性もある。
「具体的な減額の幅やペース、減額の枠組みなどについて市場参加者の意見も確認しながら、しっかりとした減額計画をつくっていきたい」。
植田氏もこう語った。
たとえば、数カ月に1度の頻度で削減幅を段階的に広げていき、月間購入額を1年ほどかけて2?3兆円規模まで縮小させるといった案もあり
うる。
7月に固まる減額計画の期間は1?2年程度。本当に重要なのはそのあとだ。「長期的に望ましい状態にまで1?2年で到達できるとは思って
いない」と植田氏。日銀には、その後継としてもっと期間の長い計画をつくり、望ましい資産規模の最終形を探るアイデアもある。
正常化への工程表が定まれば、市場にとって日銀の金融政策の予見可能性が高まる。円安が収まらない日本側の要因の一つは、海外の投
資家に「日銀はインフレ下でも超緩和状態を放置したまま、何もしようとしない」という見方が広まったこともあった。
日銀の政策を巡る投資家の予想が安定すれば、やがては円相場の落ち着きにもつながりうる。円安圧力への無力ぶりをさらけ出しつつ船出
する日銀版QT。もっと長い時間軸でみれば、意外にも漢方薬のようにじわじわと円安を癒やす効果が出てくるかもしれない。
2024/06/15 日本経済新聞 朝刊
日銀が異次元緩和の解除から3カ月で、国債買い入れの減額方針を決めた。金利に加えて、今夏以降は保有国債の残高縮小に着手し、事
実上の量的引き締め(QT)局面に入る。日銀は国債市場で過半を保有しており、長期戦は避けられない。(1面参照)
「中長期的なターム(期間)でみて市場における金利形成の自由度を高めていく」。植田和男総裁は14日の記者会見でこう説明した。6月会
合では7月会合以降の減額を「予告」(植田総裁)する形で減額方針を決めた。
事前予告は利上げなど通常の金融政策プロセスでは取り入れていない「例外的な措置」だ。透明性を高めた形で市場参加者から意見を募る
ため、今回のような判断となった。植田総裁は「丁寧にプロセスを進めたい」と説明した。
日銀が段階を踏んだ背景には、まず日銀の国債市場での存在感の高さがある。日銀は2001年に世界の主要中銀で初めて、市場に大量に
資金を供給する緩和策である量的緩和を始めた。13年4月から10年超続いた異次元緩和では大量の国債を買い入れた。
日銀の国債保有の減額はいわば「池の中の鯨」(日銀関係者)が動き出すことを意味する。市場の混乱を避けるため「予見可能性を担保した
い」(植田総裁)と考えた。
3月に日銀は異次元緩和を解除し、17年ぶりに利上げした。日銀は慎重に市場や経済への影響を見極めて金融政策の正常化の道筋を進
める姿勢を示し、3月以前と同程度の国債買い入れを続けた。植田総裁は国債購入は「減額することが適当」との認識を示しつつも、具体的な
時期や判断軸は明示してこなかった。
日銀は早期の減額は「想定していなかった」(政府関係者)。6月会合の直前になっても、日銀内では国債買い入れの減額に関して「能動的
な政策手段ではないのだから、急ぐ必要はない」「市場が混乱し、利上げ判断に影響が及ぶのは好ましくない」(関係者)との声があった。一方
、4月会合で政策委員からは減額に前向きな声が相次ぐなど、日銀内でも意見は割れた。
財務省も個人消費がさえないなかで、緩和の度合いが急速に縮小すれば景気を冷やすと懸念し、早期の減額には慎重だった。
日銀に早期減額着手を促した一因は円安だった。円相場は3月会合以前は1ドル=140円台後半で推移していたが、3月会合の記者会見
で植田総裁が「当面、緩和的な金融環境が継続する」と強調し、円安が進行。4月会合時は円安が基調的な物価上昇率に「今のところ大きな
影響を与えているということではない」などと述べたことが円安軽視と受け止められ、4月末には一時1ドル=160円台まで円安が進んだ。
植田総裁は5月7日に岸田文雄首相と面会後、円安について「政策運営上、十分注視をしていく」と述べ、それまでの発言を軌道修正した。
官邸は日銀の判断を尊重しつつも、円安への危機感を伝えたとみられる。
ある政府関係者は今回の減額決定に関して「日銀が官邸の意向をくみ取り、円安に『無策』との批判を避けるために動いた」と指摘する。岸田
首相は主要7カ国首脳会議(G7サミット)でイタリアを訪問中だ。前回の円安進行は岸田首相の外遊時と重なった。首相の不在時に再び円安
が進む事態を避けたいとの官邸の意向も透ける。
4月会合では植田総裁の記者会見中にも円安が進んだが、今回の会見では二の舞いを避けることができた。
市場では日銀が次回7月会合での利上げを見送るとの見方が出ている。だが植田総裁は会見で7月会合に関して、経済・物価情勢次第で
利上げは「当然あり得る話だ」と指摘し、国債減額の開始と同時に追加利上げに踏み切る可能性に含みを持たせた。
植田総裁は「減額する以上は相応な規模」とも述べた。SMBC日興証券の丸山義正氏は同発言を受け、減額幅が「市場の共通認識だった
1兆円より多い2兆円程度に膨らむ可能性がある」とみる。
もっとも、日銀が急激に国債購入を減らすことは想定しづらく、長期金利の上昇圧力は限定的と見る向きが大きい。
米連邦準備理事会(FRB)による利下げ見通しが年内は1回に減り、日米の金利差を理由とした円安圧力もくすぶり続ける。丸山氏は長期国
債の買い入れ減額は「円安に歯止めをかける材料にはならない。米国の利下げ開始までは円安は容易に反転しない」と指摘する。
「減額過程で長期債市場に不安定な動きが大きく起こることは避けたい」。植田総裁は記者会見でこう述べた。前例のない額の保有国債を抱
える日銀による減額で、手探りの市場との対話が始まる。
2024/06/17 09:16 日経速報ニュース
17日午前の国内債券市場で、長期金利が低下(債券価格は上昇)している。指標となる新発10年物国債の利回りは一時、前週末
を0.010%下回る0.925%をつけた。フランスの政局混迷で、14日の欧州の主要株価指数が軒並み下落した。投資家がリスク回避の
姿勢を強め、17日の日経平均株価は大幅に下落して始まっている。相対的な安全資産とされる欧米の債券が買われ、週明けの国内
債にも買いが先行している。
2024/06/17 13:05 日経速報ニュース
フランスや英国の政治の流動化リスクが金融・株式市場にも広がってきた。とりわけ日本株は今年、英国勢の買いで押し上げられた面が
大きい。こうしたマネーが逆回転を起こすと、日本株の急落や円安加速をもたらす可能性がある。注意が必要だ。
欧州では先週、フランスや英国の国債の保証料率が急騰し、株価が急落した。国債の債務不履行に備えるデリバティブ(金融派生商品)
「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の保証料率(5年物)は14日、フランスが0.387%と1週間で0.156%も上昇。約4年1カ月ぶりの高水
準に跳ね上がった。英国も0.258%と0.03%上昇した。
17日は日経平均株価も急落し、下げ幅は一時800円を超えた。円の対ドル相場は弱含んでいる。グローバル・リスクオフは従来、世界最大
の対外純資産国通貨である円の買い材料だったが、これからは円安が加速する可能性がある。理由は2つ挙げられる。
第1に、欧州投資家のリスク負担能力が低下し、日本株を売りに回る可能性だ。英国投資家は自国の政治リスクに敏感だ。財政拡張が
発端で市場が混乱した「トラス・ショック」が起きた2022年9月は日本株を2兆2300億円売り越した。ブレグジット(欧州連合離脱)が決まった
16年は年初からの半年で3兆4900億円売り越した。
財務省のデータによれば、海外投資家は今年1月から4月までに日本株を約5兆円買い越したが、その8割近く(3兆9000億円)を英国が
占める。日本株最大の買越国だ。こうしたマネーが本国回帰を強めれば、日本株安と同時に円安が加速する可能性がある。
フランスは1?4月に2400億円買い越し、英国、香港(2600億円)に次ぐ「大口投資家」だった。フランスは、高度な数学的手法で分析す
るクオンツ運用に定評があるヘッジファンドや超高速取引業者(HFT)の手口が多いとされ、資金の回転が速い点に注意が必要だ。
第2は日本の個人投資家による海外投資ブームだ。米S&P500種株価指数が約9%下落した23年8?10月は、個人のマネーフローを反
映する投資信託が外国株式(投資ファンド持ち分を含む)を2兆2000億円買い越した。以前は海外の株式相場が急落しても、個人による
逆張りの外国株投資は限定的だったが、近年は増える傾向にある。新NISA(少額投資非課税制度)の導入をきっかけに、そうした傾向に
拍車をかける可能性があり、円安圧力となる。
2024/06/17 11:22 日経速報ニュース
木野内栄治・大和証券チーフテクニカルアナリスト 17日の東京株式市場で、日経平均株価が一時800円超下落した。14日に日銀が金融
政策決定会合で、国債買い入れを減らす方針を決めた。発表を受けて、量的引き締め(QT)に踏み切ると「誤解」した海外勢の売りが膨らん
でいるようだ。
植田和男総裁は会合後の会見で国債買い入れの減額がQTであるかどうかを問われ「金融政策的な色彩は無しか、極めて最小化させた
うえで運営していきたい」と発言し、QTではないと示唆した。ただ、そのニュアンスがうまく海外勢には伝わっておらず、緩和的な政策を継続
する姿勢を示しているのにもかかわらず引き締めに転じると誤認されている。海外勢が日銀の政策姿勢を正しく理解できれば、下落基調が
続く可能性は低い。
日足チャートをみると、4月19日の安値(3万6733円)や5月30日の安値(3万7617円)よりは高い水準にあり、特に警戒する必要はないだろ
う。また、米国や中国に比べれば、欧州の影響は日本経済にとって限定的とみており、欧州での政局不安などを背景にした株安の影響も
日本株には限られたものになるだろう。
2024/06/18 10:44 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は18日、参院財政金融委員会に出席した。日銀は次回7月の金融政策会合で国債買い入れの具体的な減額計画を
決める方針を示している。植田総裁は「国債買い入れの減額と政策金利の引き上げは別のもの」としたうえで、次回までに入手可能になる経
済・物価のデータや情報次第で「場合によって政策金利が引き上げられることも十分あり得る」と語った。
6月会合で政策金利の据え置きを決めた背景について、4月以降に得られた情報や経済データは「おおむね見通しに沿ったものと考えられ
る」としたうえで、「現時点では基調的な物価上昇率がしっかり高まっていくかもう少し点検する必要がある」と説明した。
今後の判断を巡っては、基調的な物価上昇率が「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の見通し期間の後半にはおおむね2%に達すると
見通しているものの、「確実に実現するかは確信を持てていない」と言及。確信の度合いが上がったところでは短期金利の水準を引き上げる
ことで「金融緩和度合いを適切に調整する作業をしたい」との認識を示した。
[東京 18日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は18日、参議院財政金融委員会で7月の金融政策決定会合までに入手可能になる経済
・物価・金融情勢に関するデータや情報次第だが、「場合によっては(7月会合で)政策金利が引き上げられることも十分あり得る」と述べた。
7月の決定会合では国債買い入れの減額計画を決めるが「国債買い入れの減額と政策金利の引き上げは別の物」と述べた。
植田総裁は半期に一度の「通貨及び金融の調節に関する報告書」の説明をしたのち、柴慎一委員(立憲)、藤巻健史委員(維教)らの質問
に答えた。
日銀が6月会合で利上げしなかった背景として、植田総裁は4月会合以降の情報やデータはおおむね日銀の見通しに沿ったものだったが
「現時点で基調的な物価上昇率がしっかりと高まっているか、もう少し引き続き点検していく必要があると考えた」と説明した。
国債買い入れ減額については、「金融政策的な色彩」を込めると「イールドカーブ・コントロール(YCC)の復活みたいなものになりがちだ」と
話し、「金融政策としての強いメッセージを出すのは控えていきたい」と強調した。
14日の会見で植田総裁は国債買い入れの減額は「相応の規模になる」と述べたが、18日の質疑では「今後1か月間の検討の結果、決ま
ってくる」とするにとどめた。
<物価が賃金上回れば消費下押しも>
厚生労働省が公表している実質賃金は25カ月連続で前年比マイナスが続いており、日銀や政府が掲げる賃金と物価がともに上昇する好
循環は実現していないのでは、との質問に植田総裁は「実質賃金の低下ペースは足元弱まっている」と指摘。「今後名目賃金上昇が期待
されたように広がれば好循環実現に向かう」との見解を示した。
同時に「足元の円安や輸入物価動向には注視が必要」と述べ、「物価が名目賃金を上回る場合に実質所得や個人消費を下押しする可能性
がある」との懸念も示した。
<日銀の債務超過、考えられない>
日銀の国債買い入れ減額など金融正常化ペースが市場などの期待と比べて遅いのは、日銀が利上げに伴う財務内容悪化を懸念している
のでは、との質問に対して「日銀の財務配慮のため必要な政策が妨げられることはない」と答えた。
日銀が債務超過に陥り通貨の信認が毀損する可能性をめぐり、植田総裁は「通貨の信認は適切な金融政策による物価の安定によって確保
される」とした。
さらに、保有国債は「満期まで保有する方針のため評価損が実現することはない」とも述べた。新たに日銀が国債買いオペを続けることで「受
け取り利息が増加する効果もある」と述べ、緩和縮小局面で「大きな収益下落により日銀が債務超過になると考えられない」と明言した。
「日銀の財務について必要以上の心配することないが、いろいろな可能性があるため財務に留意する」とも付け加えた。
半期報告で植田総裁は、金融・為替市場の動向や、その日本経済への影響を十分注視する必要があると語った。また、長期金利がより自由
に市場で形成されるよう、市場参加者の意見も確認し、次回決定会合で今後1-2年程度の長期国債買い入れの具体的な減額計画を決定
すると述べた。
物価については、足元2%台前半となっており、先行きは輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては
政府による経済対策の反動などが前年比を押し上げる方向に作用すると指摘。基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、「展望リ
ポート」の見通し期間後半には2%の「物価安定の目標」とおおむね整合的な水準で推移すると考えていると述べた。
2024/06/18 11:31 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は18日、参院財政金融委員会に出席した。日銀のバランスシートの規模について「国債買い入れを減額することに
なると、国債保有残高は償還に伴い減少していく」と語り、マネタリーベースや日銀の総資産の対国内総生産(GDP)比率は「低下してい
くことになる」と指摘した。もっともバランスシート縮小で先行する欧米の中央銀行をみても「最適な着地点を見いだす作業が完了していない
ようにみえる」として、バランスシートの最終的な着地水準を見極めるのは難しいとの認識を示した。
2024/06/19 日本経済新聞 朝刊
大手企業の旺盛な資金需要に比例するように大手銀行で貸出金残高が伸びている。全国銀行協会によると、大手5行の5月末の貸出金
残高は前年同月比6.2%増加した。新型コロナウイルス禍の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)で貸出金が大きく伸びた特殊要因を
除くと統計を遡れる2001年以降で最高の伸び率となった。
全国銀行協会は三菱UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行の5行を含む都市銀行のほか、地方銀行、第
二地方銀行、信託銀行の国内店分の月末の貸出金残高を集計し公表している。
大手5行の5月末の貸出金残高は233兆円で01年以降、過去最高となった。ゼロゼロ融資で20年に残高が急増した反動で21年5月末
は2%のマイナスとなったが、22年5月末は0.6%、23年5月末は3.6%のプラスとなり、24年5月末は6.2%とさらに拡大した。
日銀の統計でも貸出金は拡大傾向だ。バブル崩壊後の1991年時点で都市銀行などの貸出金は340兆円(月中の平均残高、大手5行に
加えてSBI新生銀行やあおぞら銀行など含む)あった。米リーマン・ショックなどを経て12年に194兆円まで減少したが、24年5月末には
250兆円まで回復した。
背景には、経済環境の変化がある。特に大企業では市場からの要請で事業の成長ストーリーを示す必要性が増している。全国銀行協会の
福留朗裕会長は「会社経営者と話をしていると、日本経済が失われた30年を脱却し各企業で前向きな資金需要が増大していることを日々
実感している」と話す。
特に大企業では設備投資が活発になっている。りそなグループでは中小企業向けの貸し出しが3月末に前年同月比2.3%増だったのに
対し、大企業向けは10.5%増と伸び率が開いた。大企業では「主に設備資金の貸し出しが増勢基調にある」。
日銀の3月調査によると、大企業製造業の24年度の設備投資額は前年度比8.5%増と、バブル期だった1989年以来の高い伸び率を
見込む。半導体材料や電気自動車(EV)向け電池材料などの生産能力を増強したり、小売りでは人工知能(AI)発注システムなどデジタル
化を進めるための投資などが増えている。
ファンドによる大型M&A(合併・買収)が貸出金の増加に寄与した可能性もある。米投資ファンドのカーライル・グループが5月に日本KFC
ホールディングスをTOB(株式公開買い付け)を含めた約1300億円で買収すると決めた際、三菱UFJ銀行は約280億円、横浜銀行は約
230億円を上限にカーライルに融資するとした。
米金融大手ゴールドマン・サックスによるマンション管理大手の日本ハウズイングの買収でも、約940億円のうち三菱UFJ銀と三井住友
銀行がそれぞれ300億円を上限に融資する予定だ。ただ、大手外資ファンドの一部からは「銀行のM&A案件への融資はまだ慎重姿勢が
根強い」との声も聞こえる。
け皿となるファンド向けのファイナンスが貸出金の伸びの要因だと分析する。23年度は前年度に比べて国内の貸出金残高が1.2兆円伸びた
がそのほとんどが大企業向けだという。
三菱UFJ銀行も「大企業を中心に事業拡大や再編に伴うM&A関連・設備資金の融資をしっかりと取り込むことができている」とする。
将来の金利上昇を見越して借り入れに動く企業もある。日銀は3月に長期金利を低く抑え込む長短金利操作(イールドカーブ・コントロール
、YCC)を撤廃し、今後想定される金利上昇を前に低めの金利で固めておきたいという行動が起きやすくなる。
三井住友銀行では「金利先高観を意識して前倒しで固定金利での借り入れを行う企業も出ている」という。一方で金利上昇は緩やかにな
ると想定し足もとの低金利のメリットを享受するべく変動金利で借り入れる企業もいるなど、金利動向に対する企業の考え方によって行動も
異なってきている。
業態別の伸び率では、都銀と地銀で二極化が目立ち始めた。5月末の地銀(全国地方銀行協会加盟)の伸び率は3.0%、第二地銀は
1.9%だった。23年5月末は地銀が4.5%、第二地銀が4.0%伸びていたのと比べると緩やかに伸びが鈍化傾向にある。
地銀は取引先に中小企業が多く、23年夏からゼロゼロ融資の返済が本格化し4月に最後の返済ピークを迎えていることもある。企業が
余剰に借りていた面もあり、返済開始で金融機関の残高がじりじりと下がっている。
都銀の高い伸びの要因について、日本総合研究所の大嶋秀雄主任研究員は「都銀は貸し出しを積極化している可能性がある」と指摘する。
大手行にとって目下の課題はPBR(株価純資産倍率)の向上に結び付く自己資本利益率(ROE)の向上だ。長引く低金利下で貸し出し
以外の収益源を多様化してきた大手行だが、金利ある世界で利ざやが稼げるようになることから、国内の貸し出しに軸足を戻している面も
ありそうだ。
[東京 20日] - 日銀は、次の利上げをいつ実施するのだろうか。筆者は、7月末の金融政策決定会合で、政策金利を0.25%に引き上げる
可能性は高いとみている。
だが本稿はそのことを詳しく検討しようというものではない。それとは別に、追加利上げをすると、日銀が巨額の利息を当座預金の超過準備に
対して支払わなくてはならなくなるという点を検証したい。この利息は、主に銀行収益をかさ上げすることになるが、その金額は多くの人が考え
るよりもはるかに大きい。つまり銀行収益を極めて大きく押し上げて、金融仲介機能にも多大な恩恵を与えるのだ。この論点も後ほど考えてみ
たい。
<国債買入減額幅が「相応の規模」になる意味>
まず、この問題が日銀の長期国債の買入減額と深く関係していることを明らかにしておく。
6月14日の植田和男総裁の記者会見では、7月末の会合で具体的な長期国債買い入れの減額幅を決めるとした。そして、その減額幅が「相
応の規模」だと表現した。ニュアンスは、思っているよりも大きいですよ、という感じだろう。
筆者は、今後1─2年という段階的縮小(テーパリング)の期間が終わると、減額幅が月間3兆円くらいにまで拡大してもおかしくはないとみて
いる。なぜ日銀が金融機関にわざわざ1カ月以上かけてヒアリングするのかと言えば、その「相応」の額がきっと大きいからだろう。もし減額幅
が1兆円程度であるならば、6月会合でさっさと発表しているはずだ。わざわざヒアリングをするのは、1兆円程度ではなくもっとインパクトのある
大きな金額を減額したいという思惑があるからに違いない。
公表資料から現時点での長期国債の償還額を計算すると、月平均6.4兆円。つまり、買入が6兆円程度あったこれまでの状況では長期国
債の保有残高はほとんど減らない計算だ(月0.4兆円程度)。この買い入れ額を例えば、3兆円ほど減らすと何が起こるのかを考えると、毎
月3.4兆円のペースで日銀のバランスシートが圧縮される。すると同時に日銀当座預金も減る。年間マイナス41兆円くらいだ。
ところで日銀は、準備預金制度を適用している金融機関に、当座預金に所要準備額(法定準備預金額)を積むことを義務付けている。その残高
は、2024年5月で13.2兆円になる。一方で日銀は、国債を買い入れる際、主に民間銀行が保有する長期国債を購入し、その代金を各銀行
が保有する当座預金に振り込んできた。これが所要準備を超えた超過準備の拡大を招き、その残高は469兆円に達している。
3月のマイナス金利解除の後、日銀はこの超過準備に対し、0.1%の付利を行っている。年間4690億円の支払利息になる。
もしも、7月に追加利上げをして0.25%とすると、その支払利息は年間1.17兆円に膨らむ。仮に、政策金利を1.0%まで引き上げると4.7
兆円だ。22年度の全国銀行の経常利益は4.2兆円になる。日銀の支払利息がいかに巨額かがわかると思う。
これで、なぜ日銀が超過準備をなるべく大きく削減したいのか、またなぜそれには国債買入の減額が必要なのかという動機がわかっただろう。
しばしば、日銀のバランスシート問題が騒がれるが、フローの赤字も深刻だ。2023年度の日銀決算では、経常利益が4.6兆円だった。下手
をすると、追加利上げの影響で日銀の納付金は吹き飛んで、赤字に転落してしまいそうだ。日銀が政府に納付して、その他の収入に充当され
ている金額がゼロになるのは、政府にとっても手痛いことだろう。だから、日銀の長期国債買入額はなるべく早期に減額したいというのが、植田
総裁の思いであろう。
超過準備469兆円を先々どのくらい圧縮できるかを計算すると、年間マイナス41兆円の削減額が12年間続けば、超過準備はゼロになる。植田
総裁は、超過準備ゼロを目指している訳ではないと言うが、極力減らしたいと思っているはずだ。
<受取利息の使い道>
読者の中には、銀行収益が日銀からの支払利息によってかさ上げされるのならば、銀行がその分を預金金利の引き上げに回せばよいと考える
人もいると思う。日銀が赤字になっても、マイナス金利で奪った分を返還するのだから仕方ないだろうという意見も出てきそうだ。
しかし、銀行は銀行で増加する受取利息を使うあてがあると思う。それは、日銀の利上げに伴って増加が予想される不良債権コストへの充当だ。
ここには、その損失に備えた引当金の上積みもあるだろう。
また、金利上昇局面では、銀行の保有国債にも含み損が発生する。満期保有以外の部分は、時価評価をしなくてはいけない。もちろん、長期金
利が上昇するので、銀行が受け取る利息収入でカバーできる部分も大きくなると考えられる。金利上昇が起きても、全体では収支が改善して、
それで回っていく世界になるだろう。
筆者は、日銀が銀行に支払うことになる利息も、金融取引が正常化していくための原資になっていくと考えるので、不当な利益を供与することに
はならないと理解する。いずれにしても、超過準備は遠い将来にはなくなっていく存在であろう。
<政府債務の重荷>
ここまで、日銀が超過準備に支払わなくてはいけない利息が、いずれ巨大化する可能性があることを中心に考えてきた。これは、日本の国全体
では部分的な問題でしかない。なぜなら、政府は1000兆円を超える債務残高を持ち、その支払利息もまた巨大化するリスクを抱えているからだ。
これは時限爆弾と同じで、10年満期の長期国債が満期になった時点で、それまでよりも高い金利に洗い替えされる。つまり、支払利息の巨大
化は、今後、10年満期の長期国債がロールオーバーされたときに徐々に進んでいく。
政府は今年度の骨太の方針で、基礎的財政収支(プライマリー・バランス、PB)黒字化目標の達成を25年度に据え置くことを確認した。これは
きっとギリギリの選択だったのだろう。名目国内総生産(GDP)を膨らませるとしても、PB黒字化で債務残高を減らし始めることが、債務の発散
を食い止める条件になる。
おそらく、政治の世界ではそうした認識が乏しく、日銀がマイナス金利解除でルビコン川を渡ったことに気付いていないと思われる。もはやデフレ
ではなくインフレの世界、金利がある世界に変わったことを正しく理解しなくてはいけない。
2024/06/21 17:53 日経速報ニュース
日経平均株価は今週、一度も3万9000円を上回ることなく取引を終えた。上値の重い展開が3カ月にわたって続く。隠れた売り手として市場
関係者の注目を集めているのが上場投資信託(ETF)からの巨額の資金流出だ。
「企業の業績予想は減益が多いうえに、金利は上昇していく。上値を追うセンチメントではない」。21日、早々に下げに転じた相場を横目に、
T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーはこぼした。
4月以降のさえない相場では、海外勢の売りを個人の買いや自社株買いが吸収する需給の綱引きが起きていると捉えられている。ところが
、ETFに生じた異変はほかの売り手の存在を示唆する。
5月月間の日本株ETFからの資金流出は全体で1兆2348億円と、米サブプライムローン問題が浮上した2007年7月以来の規模となった。
誰がETFを大量解約したのか。最大の保有者である日銀は3月に購入をやめたが、売却は見送っている。個人投資家の売却だけで膨らむ金
額ではない。市場には金融機関との観測がある。
ETFを一つ一つ丁寧にみていくと、2つの説が浮かび上がる。
1つは「短期トレードの利益確定説」。5月の流出額が最も大きかったのは野村アセットマネジメントが運用する「NEXT FUNDS 日経225連動
型上場投信」。ほぼ同額が4月に流入しており1カ月程度で利益確定した可能性がある。
数カ月単位のトレードの動きもみられる。三井住友DSアセットマネジメントの「SMDAM 日経225上場投信」は、2月に500億円近い純流入が
あり、5月に700億円流出した。他のETFにも同じような流出入がみられる。
2つ目は「益出し説」だ。金融機関は新年度に入る4月から、含み益のあるETFを売却し、実現益を早めに確定することが多い。ほかの資産の
損失処理の穴埋めに益出しを使うこともある。
今年は4月に純資産が急減したETFがある。農林中金全共連アセットマネジメントのETF「NZAM 上場投信 日経225」は、3月末には2500
億円近くあった純資産が4月10日には900億円を下回った。
農中アセットの担当者は「個別の投資家の動きは承知していない」とするが、21年2月に純資産が急増した経緯があり、3年ほど保有した金
融機関が解約に動いた可能性がある。
益出しの理由は複数ありそうだ。三菱UFJアセットマネジメントの八木孝幸商品マーケティング企画部副部長は「外債など他のアセットで多
額の損失を出していた金融機関が、まとまって利益確定に動いた可能性がある」とみる。
ある地銀の資金運用担当者は、期初にETFの益出しをしたという。「予算繰りのため」だが、さらに注目するのは5月の国内の長期金利上昇
(国債価格の下落)だ。「日本国債の評価損で損失が膨らむのを避けるために、含み益が大きいETFを売る戦略は十分考えられる」という。金
利上昇をきっかけにETFの益出しを進めた金融機関もあるとみられる。
短期トレードに国内外の債券の含み損を意識したETFの売却も重なり、5月の流出額が巨額になったようだ。
ETFの売却は現物株の株価に響く。東京証券取引所の調査によると、大手銀行や地銀は証券会社のOTC(相対取引)を使うことが多い。金
額が大きいため一度に売買すると値動きに影響するからだ。ETFを買い受けた証券会社はまず先物を売り建てて株価変動をヘッジした後、
ETFを現物株のバスケットにして市場で段階的に処分していくといった取引をする。
投資部門別売買動向を見ると、日本株の上値が重い4?5月の主な売り手は証券会社の自己売買部門で約2.4兆円と巨額だ。ETFの売却の
一部が証券自己の売りに表れたもようだ。
金融機関のETFの売りは、日本株の弱さを嫌気したものではない。外債の含み損はおおむね処理が完了したとの指摘もある。夜明け前が
一番暗いという。益出しが一巡すれば、需給上の重荷がなくなり、株価もおのずと上がりやすくなるはずだ。
・日本株ETFアブダビ上場 現地投資会社「投資家を魅了」
・海外勢、日本株を4週連続で売り越し 様子見姿勢強く
日本株、短期的には調整リスクが大きい-シティグループ証券
投資家は円安、企業改革の進展度合い、日銀政策見通しを懸念
今年に入ってからの日本株の記録的な騰勢は、すでに遠い記憶になりつつある。特に目立つのが外国人投資家による売りだ。
コーポレートガバナンス改革や日本銀行の金融政策見通しが依然不透明であることを理由に、シティグループやアバディーンなどは日本株に
対して悲観的な見方を強めている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のファンドマネージャー調査によれば、回答者の約3分の1は日本株がピーク
に達したと考えている。
数カ月前に日経平均株価を史上最高値に押し上げる原動力となっていた外国人投資家だが、最近では6月14日までの4週連続で売り越し
となった。東京証券取引所のデータによれば、これは昨年9月以来の長さとなる。
日経平均は3月22日に史上最高値を更新して以来、失速が鮮明となっている。3月22日以降の下落率は5.6%。同期間のMSCIアジア太平
洋指数が1%高、S&P500種株価指数が4.4%高となっているのとは対照的だ。
投資家は、日銀が7月の会合で追加利上げに踏み切るかどうかを注視している。利上げに伴って銀行の利ざやが改善するとの見方を背景
に、TOPIX銀行業指数は年初来で30%上昇。TOPIX全体の約2倍の値上がりとなっている。
7月会合での追加利上げ、「場合によっては十分あり得る」-日銀総裁
しかし最近では、利上げ後ずれ観測が銀行株の重しとなっており、同指数は今月に入って5.2%下落した。TOPIX全体では月初来で1.7%安。
アバディーンのインベストメント・ディレクター、デービッド・チョウ氏は、今後3-6カ月については日本株よりも中国株やインド株を選好すると
している。
同氏はインタビューで、適切な政策実施によって中国株とインド株には資金が流入すると指摘。日本株については、外国人投資家の資金流
入を増やすにはコーポレートガバナンス改革がさらに進展する必要があるだろうと述べた。
2024/06/24 09:18 日経速報ニュース
日銀は24日、13?14日に開いた金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で示した見通し
が実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくなら「政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになる」との意見があった。
コストプッシュに伴う価格転嫁で物価が上振れする可能性があり「リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要だ」と
の声もあった。
物価の上振れリスクが出てきており「次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時
に金利を引き上げることが必要だ」との意見が出た。円安が金融政策に与える影響については「円安は物価見通しの上振れの可能性を高め
る要因だ」との声が聞かれた。この委員は「リスク中立的な適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべきだ」と指摘した。一方、
金融政策は物価の基調や賃金動向を見極めるべきで「為替の短期的な変動には左右されない」との意見もあった。
個人消費の盛り上がりが欠くなかで一部自動車メーカーが出荷を停止し、これらの影響を確認するために「当面は現在の金融緩和継続が
適当だ」との声も聞かれた。政策金利の変更を考えるタイミングは「消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期のインフレ率の上振れ
などを経済指標で確認してからで良い」との意見もあった。
日銀意見、国債減額「市場の見方確認した方がしっかりとした規模の削減できる」
2024/06/24 09:33 日経速報ニュース
日銀は24日、13?14日に開いた金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。国債買い入れについては「金融市場において長期金利が
より自由な形で形成されるよう、国債買い入れを減額していくべきだ」との意見があった。減額の進め方を巡っては「削減額やペースのほか、
枠組みの作り方を工夫することで、市場の混乱を起こすことなく削減を行うことができる」との声があった。この委員は「市場参加者の見方を確
認するプロセスを踏んだ方が、よりしっかりとした規模の削減ができる」と主張した。
国債の買い入れ減額については「債券市場の需給や機能度の改善状況を踏まえつつ、中期的な計画を策定して、これに沿って淡々と減額
を行うことが望ましい」との声が聞かれた。もっとも減額の最適なペースを設定する必要があるとして「時間をかけて慎重に検討すべきだ」と指
摘した。
日銀のバランスシートを巡り、日銀が国債市場における圧倒的に大きなプレーヤーであることや大量の国債を保有しているとの大規模緩和
の副作用が残るなかで、「市場と対話しながら、適時適切に、バランスシートの正常化を進めていく必要がある」との意見があった。バランス
シートの縮小は日銀の市場への関与を減らすことが目的で「金融政策とは切り離して行うものだ」との声も出た。
2024/06/24 09:34 日経速報ニュース
日銀は24日、13?14日の金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。物価が上振れするリスクを念頭に「(7月末の)次回会合に向け
てもデータを注視し、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要だ」といった指摘が出た。
3月会合でマイナス金利や国債を買い入れて長期金利を抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)など異次元緩和策を終え、政
策金利を無担保コール翌日物金利とし、0?0.1%程度に誘導すると決めた。4月と6月の会合は追加利上げを見送っていた。
6月会合では追加利上げに関する発言が出た。政策委員から「コストプッシュを背景とする第2ラウンドの価格転嫁によって物価が上振れる
可能性もある。リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要だ」との意見が出た。
円安についての言及もあった。「物価見通しの上振れの可能性を高める要因で、リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、適切な
政策金利の水準はその分だけ上がると考えるべきだ」といった考え方を示した委員もいた。
一方、「個人消費が盛り上がりを欠くなか、一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続き、これらの影響も確認する必要があ
る。当面は現在の金融緩和の継続が適当だ」といった慎重な意見もあった。
「政策金利の変更を考えるタイミングは、消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想インフレ率の上振れなどを経済指標で
確認してからで良い」との議論もあった。
日銀意見、物価「目標に向けて着実に進んでいる」
2024/06/24 09:41 日経速報ニュース
日銀は24日、13?14日に開いた金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。物価動向について「4月の展望リポート(経済・物価情勢
の展望)時の見通しに沿って推移している」との意見があった。今年の春季労使交渉(春闘)の結果が賃金統計に十分に反映されていない
ものの、企業物価指数などをみると「『物価安定の目標』に向けて着実に進んでいる」との評価もあった。
輸入物価の上昇を巡っては現時点では2022年以降にみられた価格転嫁をもたらすとは考えにくいが、価格を変えないノルム(社会通念)の
転換で「24年後半に向けて価格引き上げの波が再び生じる可能性もある」との声が聞かれた。国内景気については、物価高の影響で「個人
消費は強さに欠ける」との意見があった。賃上げや政府の政策が今後の消費を押し上げるかどうかを注視する必要があるとの見方があった。
2024/06/26 日本経済新聞 朝刊
3メガバンクが保有する政策保有株は2024年3月期末時点で3兆3000億円弱(簿価ベース)となり、前年比で12%減少した。減少額は
約4300億円と、20年3月期以来4年ぶりの高水準となった。これまで継続保有してきた企業の株式も売却する例もあり、大手損害保険会
社が政策株の保有解消を掲げる中で銀行も解消を加速できるかが焦点だ。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクが25日までに関東財務局へ提出した有価証券報告書で
政策保有株の売却額や主要な企業の保有高を明らかにした。政策株を含む株式売却額は非上場企業でない企業の株式の合算で約1兆25
00億円と、前年比75%増加した。
取引先との関係強化が目的の政策保有株式への批判は根強く、メガバンク各社は売却計画を加速する。各社の中で保有額が大きい個別
企業ではトヨタ自動車などの株式数は前年比で横ばいだった。一方、三菱UFJはオリンパス、みずほは味の素、三井住友FGはアサヒグルー
プホールディングスで保有がゼロになった。
市場では損保各社が政策株の保有解消を進めているのを背景に、銀行の政策株売却への期待が大きくなっている。メガバンクはこれまで合
計で年間数千億円規模で政策保有株の削減を進めており、残る銘柄は「岩盤」と呼ばれ交渉が難しい先が多いとする見方も強かった。損保の
政策株売却による需給悪化の影響も見極めて交渉を進める。
2024/06/25 18:35 日経速報ニュース
3メガバンクが保有する政策保有株は2024年3月期末時点で3兆3000億円弱(簿価ベース)となり、前年比で12%減少した。減少額は約4300
億円と、20年3月期以来4年ぶりの高水準となった。これまで継続保有してきた企業の株式も売却する例もあり、大手損害保険会社が政策株の
保有解消を掲げる中で銀行も解消を加速できるかが焦点だ。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクが25日までに関東財務局へ提出した有価証券報告書で、政策
保有株の売却額や主要な企業の保有高を明らかにした。政策株を含む株式売却額は非上場企業でない企業の株式の合算で約1兆2500億円と、
前年比で74%増加した。
取引先との関係強化が目的の政策保有株式への批判は根強く、メガバンク各社は売却計画を加速する。各社の中で保有額が大きい個別企業
ではトヨタ自動車などの株式数は前年比で横ばいだった。一方、三菱UFJはオリンパス、みずほは味の素、三井住友FGはアサヒグループホール
ディングスで保有がゼロになった。
市場では損保各社が政策株の保有解消を進めているのを背景に、銀行の政策株売却への期待が大きくなっている。メガバンクはこれまで合計
で年間数千億円規模で政策保有株の削減を進めており、残る銘柄は「岩盤」と呼ばれ交渉が難しい先が多いとする見方も強かった。損保の政策
株売却による需給悪化の影響も見極めて交渉を進める。
政策保有株は少数株主の意見が反映されにくくなるとされ、海外投資家などの目線が厳しくなっている。米議決権行使助言会社や国内の運用
会社は純資産に占める政策保有株の割合が多い場合、取締役の選任議案に反対する方針を掲げる。資本効率も悪くなりやすいとされ、一般事業
会社でも売却に乗り出す事例が目立ちつつある。
【関連記事】
・政策保有株巡る「岩盤」崩れるか 損保の次は銀行が焦点
・りそな、政策保有株を3分の1に 6年間で1800億円削減
・損保、寡占の甘えにメス 政策保有株6兆円でなれ合いに
2024/06/26 11:31 日経速報ニュース
2024/06/27 日本経済新聞 朝刊
取引先との関係維持や強化が目的の政策保有株の削減を表明する企業が相次いでいる。カルテル不正などを受け、大手損保各社はゼロに
する計画を公表したが、売られる側は買収リスクが高まるとして抵抗を強める。戦後の日本企業の特徴的な慣習は投資家らの圧力で本当にか
わるのか。
「政策株を減らすって言ってるけど本当にうちの株を売れると思ってるの?」。ある損保の営業担当者は物流大手の取引先からこう言われた。
大手損保4社は2月29日にそろって政策保有株をゼロにすると表明した。損保ジャパンの石川耕治社長は政策保有株式を「2030年度末に
は必ずゼロにする。ぶれずにやる覚悟だ」と話す。
2月末からの株価上昇率は6月25日時点でSOMPOホールディングスが16%、東京海上ホールディングスが32%、MS&ADインシュアラ
ンスグループホールディングスが36%。横ばいだった日経平均株価に比べると上昇は際立ち、市場や投資家は評価している。
ただ現場では取引先のけん制にあっている。別の大手損保の営業担当者は取引先から「うちの株の売却を最後にしてくれれば保険のシェア
を上げる」と持ちかけられた。
政策保有株は1960年代ごろに始まった慣習とされる。財閥解体後に銀行を中核として形成された三菱や三井、住友といった企業集団が相
互に持ち合い、緩やかな形でつながりを再形成しようとしたのが起源だ。持ち合いの文化はメーカーと下請けなどに広がった。
足元の売却圧力は主に3つある。1つは損保各社の不適切な取引慣行の一因として持ち合いを指摘し、政府が売却を促していることだ。政策
株の保有比率に応じてシェアを決めるなど、もたれ合いの商習慣をコンプライアンス上、問題視した。
2つ目は海外を含めた機関投資家らの圧力だ。持ち合いによる安定株主の多さなどが企業の事業再編を阻んでいるとみる。もたれ合いがガバ
ナンスを失わせているとの声が上がる。
あるメガバンク担当者は「実は地方のスタンダード銘柄が売りにくい」と漏らす。時価総額100億~200億円規模の上場企業にとって銀行は
最大の安定株主だ。銀行が売却に動き、流動性が急に高まれば「アクティビスト(物言う株主)に狙われる懸念がある」。
約3800社ある上場企業のうち、スタンダード市場は約1600社あり、うち6割にあたる900社が時価総額100億円を下回る。政策株による
安定株主が本来あるべき投資家目線を曇らせ、企業価値の向上を阻んでいるともいえる。
3つ目の要素は東京証券取引所が2023年3月から資本コストを意識した経営を企業に求めるようになったことだ。
UBS証券の守屋のぞみ株式ストラテジストの試算によると全ての政策保有株が自社株の取得や消却で解消された場合、日本企業の自己資
本利益率(ROE)は現状の9%から10%に改善する。
ただ、こぞって解消を求める持ち合いだが現実との乖離(かいり)は大きい。
「田舎に都市銀行はない。株主がうるさいので地銀との持ち合いを解消させてくれと言えるわけがない」。中堅の機械メーカーの首脳はこう語
る。業績が厳しい協力会社に資金支援してくれる地銀をないがしろにはできないとの感情がにじむ。
ケイレツやグループを支える仕組みとして日本の成長を支えたとみる向きもある政策株。成功体験にとらわれ、そのまま保有し成長投資に踏
み出さないのか。「岩盤」と称される政策株の売却を宣言通りこなせるかは、旧弊から脱し次の成長をつかめるかを左右する。
2024/06/27 12:00 日経速報ニュース
円安進行が止まらない。26日夜に一時1ドル=160円台後半と37年半ぶりの円安・ドル高水準をつけた対ドルでの円相場は27日も160円台
半ばで推移する。物価高を通じて経済に悪影響を与える円安対策を求める声が強まっていたが、逆にガソリンや電気代補助など貿易赤字の
拡大を通じ円安を助長する政策が出てきたことで、市場にちぐはぐな印象を与えた。為替介入に頼る政府・日銀の姿勢を見透かす市場は円
売り圧力を強めている。
「ニューヨーク時間の終わりにかけて断続的にドルを買って円を売る取引が出ていた」。大手邦銀の為替ディーラーは、26日夜から27日朝に
かけて進んだ円安について語る。別の邦銀ディーラーも「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿った動きで、投機的ではない」と話す。
外国為替市場では1ドル=160円が抵抗ラインとして意識されていたが、26日夕に1ドル=160円を割ると、4月29日に政府・日銀による為
替介入のきっかけになった水準(160円24銭)もあっさりと突破。そのまま160円台後半まで進み、1986年12月以来の円安水準となった。介入
効果はわずか2カ月で切れた。
市場が円売り圧力を強めるのは、政府による円買い介入の限界を見透かしているためだ。鈴木俊一財務相はかねて「介入は『過度な変動』
への対応」との認識を示す。過度な変動の解釈の参考になるのが、為替介入の司令塔である神田真人財務官の3月の「2週間でドル円で
4%はなだらかなものとは到底言えない」との発言だ。
ただ、直近の円安進行は、1日に数円ではなく数十銭規模で円が下落する「じり円安」。過去の介入局面(22年9?10月)直前には、円の
下落率(14日前比)が6%程度に達することもあった。足元ではせいぜい2%程度と小さく、4%にも達しない。
主要7カ国(G7)の合意では「為替レートの過度の変動や無秩序な動き」が経済に悪影響を及ぼす場合は介入を許容する。ただ「この変動
率では介入に踏み切りづらい」(三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジスト)との声が大勢だ。
円安を助長しかねない政策が出てきた。電気・ガス代の補助を8?10月に追加実施しガソリン補助金も年内に限って続ける物価高対策だ。
日本はエネルギーの大半を輸入に頼っている。国内の原子力発電所の再稼働が進まないなかで、原油や液化天然ガス(LNG)の輸入が
増えれば貿易赤字が拡大するため、夏場の円安要因になりかねない。
21日に閣議決定した24年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)では、中長期的に円の需要を高める施策は限られた。ドイツ証
券の小山賢太郎チーフ・エコノミストは「『デフレ脱却』を掲げて大勝した12年の総選挙の記憶からか、脱デフレに固執し目先の対策が重視さ
れた印象」と語る。円買いを促すには「研究開発拠点を国内に増やし、半導体ら輸出財の競争力を高めることが必要だ」と指摘する。
政府内では海外の内部留保を円に交換する「リパトリエーション」を実施する企業に対する税制優遇(リパトリ減税)を円安対策にする案も一時
浮上した。ただ財務省が「円安対策の制度ではない」と難色を示したほか効果も薄いことから、骨太の方針に明記されることはなかった。
「円安が家計や日本経済に与える悪影響が論じられる中で、その場しのぎのエネルギー補助金でさらなる円安を促してしまったのはがっか
りだ」。大和証券の末広徹チーフエコノミストは、骨太の方針の印象をこう語る。
市場では骨太の方針は日銀の手足を縛ったとの見方も浮上した。日銀の金融政策運営に関して「賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の
物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する」と明記したからだ。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「好循環
が確認される前に利上げに踏み切らないよう、政府が日銀に釘を刺したともとれる」と語る。
13?14日の金融政策決定会合以降、日銀が7月に追加利上げに踏み切るとの観測は後退している。「金利の急上昇リスクを背負ってまで
国債買い入れの減額計画の決定と追加利上げを7月に同時に踏み切るとは考えにくい」(岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジスト)
ためで、日銀の利上げは後にずれるとの見方が多い。日米金利差の縮小が遠のいた分、円高圧力も弱まる。
物価と賃金の好循環を目指す岸田政権が物価高の痛みを和らげる経済政策を打つことが間違っているわけではない。悩ましいのは為替相
場は相対的に決まる点だ。米連邦準備理事会が「より長くより高く」金利を据え置く姿勢を見直さない限り、米金利の高止まりを通じたドル高
に変化が起きず、円安の波が続くことになる。
BofA証券はこのほど、円相場の予想を円安方向に修正した。9月時点で1ドル=163円まで下落するとみる。市場の一部では1ドル=170円台
を見通す向きさえある。為替介入への警戒をこなしつつ、1ドル=160円台に見慣れた市場参加者が次なる節目に向けて円売りを膨らませるの
は時間の問題かもしれない。
【関連記事】
・円160円台後半で鈴木財務相「必要な対応をとる」
・為替介入とは 誰が?何をする?直近の事例は?
・日経平均一時400円安 「円安恩恵組」にも売り広がる
・続・円安攻防24時 「じわり円安」で起きていること
2024/06/28 05:00 日経速報ニュース
株価水準の高い企業が株式分割する動きが広がっている。最低投資額が50万円以上で2024年1?6月に分割を発表した企業は前年同期
比8割増の72社と18年ぶりの高水準となった。7月1日には日立製作所や三井物産などが実施する。最低投資額を下げて新しい少額投資非
課税制度(NISA)で買いやすくし、個人株主を取り込む。
日本株の売買単位は100株で、株価に100をかけた値が最低投資額となる。株式分割しても理論上の企業価値は変わらないため、分割した
分だけ株価が下がる。
例えば1000円の株を2分割すれば、理論値は500円だ。東京証券取引所は22年10月、個人が株式投資しやすいよう最低投資額を50万円
未満に下げることを企業に求めた。
日本経済新聞の集計によると、24年1?6月(6月26日発表まで)に株式分割を発表したのは131社と前年同期に比べて7割増えた。このうち
発表時の最低投資額が50万円以上の企業は8割増の72社となり、全体の55%を占めた。50万円以上の企業の分割は年間ベースでも23年
(84社)を上回る可能性がある。
株式分割は今秋にかけても相次ぐ。7月1日は22社が予定しており、うち半数に当たる10社の最低投資額が50万円以上(発表日時点)だ。
日立製作所は1株を5株に分割する。豊田通商は初めて分割を実施し、1株を3株に分ける。
三井物産の堀健一社長は「長期保有していただける個人の株主は大変ありがたい。株式をなるべく買いやすくすることで流動性が高まる。
社会ニーズを見て、流動性を上げる施策は今後も取りたい」と話す。
10月1日も分割が集中しており、最低投資額が50万円以上の企業はソニーグループや日東電工、石油資源開発など18社にのぼる。ソニ
ーGは2000年5月以来24年ぶりの分割となる。
背景にあるのは、1月から始まった新NISAだ。個別株に投資できる成長投資枠は非課税の上限が年240万円とされた。株価の高い企業の
株式だとこの枠内で買うのが難しいが、分割して最低投資額が下がれば投資しやすくなる。
新NISA経由の資金流入が大きいことも後押ししている。金融庁によると、1?3月の成長投資枠の買い付け額(全金融機関)は5.1兆円と
23年の旧NISA時に比べて4.4倍に増えた。企業はこれまで株価への影響が大きい機関投資家を重視する傾向が強かったが、個人投資家も
軽視できなくなってきた。
個人に長期投資してもらおうと、分割に伴って株主優待を拡充する企業も目立つ。ソフトバンクは10月1日に1株を10株に分割するのに合わ
せ、株主優待制度を新設する。100株以上を1年以上保有する株主にPayPayポイントを1000ポイント付与する。あみやき亭や王将フードサービ
スも優待を拡充する。
「政策保有株を縮減する受け皿として新たな株主を呼び込む狙いがあるのでは」(BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジスト)との指摘
もある。あずさ監査法人によると、3月末までに東証プライム企業の7割に当たる約1100社が政策保有株の削減方針を示した。長期保有の株
主を求める企業は多い。
市場でも株式分割は評価されている。24年1?6月に分割を発表した131社の分割発表日の終値と翌営業日の終値を比べると、平均で4%高
となった。社数ベースでも8割に当たる101社の株価が翌営業日に上昇した。
131社の昨年末から6月26日までの株価上昇率も平均22%と、日経平均株価(19%)を上回る。企業価値は変わらないが投資家層が広がり
株式需給の改善につながるため、投資家から買い材料視されているようだ。
分割が増えた結果、上場株の最低投資額は下がっている。東証プライム銘柄の平均は6月中旬時点で約20万6000円と、バブル期である
1989年3月末の10分の1になった。ソニーGは分割で約135万円から約27万円に切り下がる見込みだ。
東証の上場企業(プロ向け市場は除く)のうち、最低投資額が50万円以上の銘柄は6月26日時点で259社だ。社数ベースでは7%だが、時価
総額ベースだと35%となお多い。今後はSMC(約758万円)やキーエンス(約705万円)など直近で分割していない企業がどう対応するかが焦点
となる。
MS&AD、三井住友海上火災が三井住友銀行とスタートアップ関連ビジネスでパートナーシップ
MS&AD<8725.T>グループの三井住友海上火災保険は28日、三井住友<8316.T>グループの三井住友銀行と、スタートアップ関連ビジネス
の持続的発展を目的とした戦略的パートナーシップ構築に向け、同日から協業を開始すると発表した。
今回の協業は、宇宙関連スタートアップ企業に向けた宇宙保険などのリスクソリューションを活用したファイナンス手法の検討などにおける両社
の連携を目的とする。両社は、今回の協業により、スタートアップ企業が直面する多様な課題に対する包括的なサポートを提供し、日本のイノベ
ーションエコシステムの発展に貢献するとしている。
2024/06/28 21:30 日経速報ニュース
28日の東京株式市場で3メガバンク株がそろって大幅高となった。三菱UFJフィナンシャル・グループは一時前日比4%高の1738円と2006年
5月以来約18年ぶりの高値をつけた。外国為替相場で円安が進行したことを受けて日銀が7月に利上げをするとの観測が強まり、金利上昇
による収益拡大期待が高まった。
三井住友フィナンシャルグループは一時前日比3%高の1万760円、みずほフィナンシャルグループは同3%高の3390円まで上昇した。三井住
友FGは07年7月以来、みずほFGは08年10月以来の水準となった。
起点となったのは円安の進行だ。28日の東京市場では一時1ドル=161円20銭台と、1986年12月以来およそ37年半ぶりの円安・ドル高水
準となった。日銀が早期の政策修正に踏み切るとの思惑から、新発10年物国債利回りは一時1.085%と約1カ月ぶり水準に上昇した。預貸の
利ざや改善による業績拡大を見込んだ買いが集まった。
銀行株は金利上昇を手掛かりに上昇基調をたどっている。岡三証券の田村晋一シニアアナリストは「7月の日銀支店長会議で中小企業に
も賃上げが波及していることが分かれば、7月中に利上げに踏み切る可能性は十分ありうる」とし「銀行株は強含みな展開が続きそう」とみる。
地銀でも上昇する銘柄が相次いだ。いよぎんホールディングスは3%高、しずおかフィナンシャルグループは2%高で終えた。三井住友トラスト
・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは「地銀はメガバンクよりもさらに利ざやの収益貢献度が大きい」と分析する。
銀行株上昇は相場全体の押し上げにもつながった。東証株価指数(TOPIX)は28日に一時1%高の2821となり、3月22日につけた終値ベース
のバブル崩壊後高値を上回る場面があった。
2024/07/01 02:00 日経速報ニュース
【この記事のポイント】
・持ち合いは安定株主づくりの一環
・少数株主の意見が反映されにくい
・この慣習なくなれば国際的な評価向上
財閥やグループ間で持ち合ってきた政策保有株式の売却が進んできた。2024年3月期に三菱電機は24銘柄を売却、豊田通商とトヨタ紡織は
互いにすべて売却した。海外から批判を受けてきた日本企業の慣習がなくなれば、国際的な評価向上にもつながる。
日本企業は戦後、安定株主作りの一環として取引先や財閥、グループ間で株式を持ち合ってきた。互いが「物言わぬ株主」となるため、経営
の規律が緩んで少数株主の意見が反映されにくくなるとして海外の機関投資家などから批判されてきた。
23年3月には東京証券取引所が上場企業に資本コストを意識した経営を求めた。企業は利益をほとんど生まず資本効率が悪化する政策保有
株の売却を検討するようになった。
持ち合い解消の動きが目立つのがトヨタグループだ。デンソーは24年3月末までにトヨタ紡織や東海理化など8銘柄、豊田合成も紡織や豊通、
デンソーなど18銘柄、アイシンもデンソーや豊通など7銘柄を売却した。アイシンは政策保有株の「ゼロ化」を掲げる。売却で得た資金を電気自
動車(EV)など成長投資や株主還元に充て、PBR(株価純資産倍率)を1倍超に高める。
トヨタ自動車も1年で政策株を含めて合計約3300億円の株式(非上場株含む)を売った。「ケイレツ」と呼ばれるサプライヤー間で株式を持ち
合う構造を改める動きは今後も続き、トヨタとデンソー、豊田自動織機は7月にアイシン株を売却することを決めている。
三菱や三井、住友といった戦前の財閥を源流とする持ち合いも解消が進む。三菱電機は24年3月期に上場株式49銘柄を一部またはすべて
売却。三菱ガス化学の保有株はゼロになった。三菱グループでは三菱重工業が三菱商事と三菱倉庫を、ニコンが三菱電機と三菱商事、三菱
倉庫が三菱重工と三菱マテリアルをすべて売却した。
三井や住友グループでも解消が進む。三井住友建設は住友不動産や三井不動産、住友商事や住友化学などグループを中心に29銘柄をす
べて売却。住友化学も住友不や住友大阪セメントなどを売却した。
財閥系に限らず取引先の株式を保有してきた三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と三井住友FG、みずほFGの3メガ銀行も売却を進める。
株式売却額(非上場株含む)は合計約1兆3500億円と前の期比で4割弱増えた。三菱UFJはオリンパス、みずほFGは味の素、三井住友FGは
アサヒグループホールディングスをすべて売却した。
地盤が同じ企業同士で持ち合ってきた関係も崩れつつある。関西地盤のダイキン工業は小野薬品工業、積水ハウス、大阪ガスなどの保有
株を減らした。京都に本社を置く宝ホールディングスは同じく京都地盤のオムロン株をすべて売却した。
野村資本市場研究所によると、上場企業の持ち合い株が時価総額に占める比率は22年度に7.7%と10年で3.6ポイント低下した。24年度以降
も削減ペースは緩みそうにない。
住友不動産は5月、政策保有株の比率を28年3月末までに10%以下にすると表明した。当初目標から3年前倒しし、売却益は事業効率化や
従業員の生産性向上への投資などに充てる。
カルテル不正などを受け、損害保険大手4社は23年3月末時点で約6.5兆円に上る政策保有株をゼロにすると表明している。損保ジャパンの
石川耕治社長は「30年度末には必ずゼロにする。ぶれずにやる覚悟だ」と話す。
投資先企業に政策保有の解消を促す投資信託を運用するシンプレクス・アセット・マネジメントは6月総会で557人の取締役選任に反対票を
投じた。議決権行使を担当する金賢氏は「政策株の売却資金の活用法も厳しく見ていく必要がある」と強調する。安定株主が減るなか、企業
は投資家と対話を深めていくことが求められる。
【関連記事】
・政策株縮減方針、4割が総会招集通知で開示 トヨタなど
・デンソーなど、アイシン株売り出し トヨタ系縮減加速
・損保の政策株売却、生保が飛び火警戒 純投資の実態焦点
2024/07/03 日本経済新聞 朝刊
財務省は2日、日銀が国債買い入れの減額方針を決めてから初の新発10年物国債入札を実施した。2013年からの異次元の金融緩和
以降、日銀が発行済み国債の半分を保有する構図となった。政府は市場の混乱を心配することなく、大量の国債発行で財政を拡大できた。
今後は安定的な買い手を確保し、日銀頼みの財政から脱却できるかが焦点となる。
財務省が2日実施した10年債入札は市場で「無難な結果」(岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジスト)と受け止められた。投資家
の応札額を落札額で割った「応札倍率」は3.23倍だった。毎年支払う利息を示す「表面利率」が11年12月以来の高水準となる1.1%に
上がった。利回り上昇で投資対象としての魅力が増し、一定の買い需要が集まった。
今回の入札について、市場参加者の間では今後の日銀の減額計画を占ううえで重要な入札との位置づけになっていた。国債市場の安定
には日銀に代わる買い手が必要になるからだ。2日の入札が波乱なく終わったことで日銀内にも一定の安心感が広がった。
日銀は13年4月に異次元緩和を始めて以降、大規模な国債買い入れを進めてきた。日銀の資金循環統計によると、保有額は600兆円近
くで、国債発行残高に占める割合は約半分に達する。現在も月6兆円ペースで買い入れている。
日銀による大量購入の弊害として国債市場の流動性低下や、金利上昇時に日銀が含み損を抱える問題などがある。財政規律が失われて
いるとの指摘もある。
今後、日銀はどの程度まで国債の保有を減らしていくべきなのか。明確な基準は存在しないが、参考になるのが既に量的引き締め(QT)を
進めている海外中央銀行の国債保有比率だ。国際通貨基金(IMF)のデータによると、国債等の中銀保有比率は米国が15%、英国や仏独
などは20%台(23年末時点)。これに対して日本は46%だ。
日銀が国債発行額や国内総生産(GDP)でみた比率を米欧並みの水準まで落とすには、200兆~500兆円程度の減額が必要との試算も
ある。
今後の国債の買い手として財務省が期待するのは銀行だ。日銀が異次元緩和に着手する前の12年末時点で、銀行など預金取扱機関は
全体の39%を占める最大の国債保有者だった。日銀による大規模な金融緩和は銀行が保有する国債を買い入れる形で進められてきた。
日銀は30~31日の金融政策決定会合で今後1~2年程度の買い入れ減額の計画を決める。減額幅やペースを決める参考にするため、
9~10日には銀行や証券、機関投資家などの実務担当者から意見を聞く会合も開く。
財務省や日銀が頼りにする銀行だが、買い入れ可能な国債の量には限界があるとの見方は根強い。PGIMジャパンの丸山誠二投資運用
本部長兼最高投資責任者は「現行の金融規制を考慮すると銀行の国債買い余地は200兆円程度」とみる。
入札に臨んだ大手銀行からも「まだ積極的に応札できる金利環境ではない」との声が漏れる。日銀が国債買い入れ減額に加え、追加利上
げを決める可能性があり、金利の天井が見えないからだ。
政府が6月下旬に決めた今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では、3年ぶりに国と地方の基礎的財政収支(プライマリ
ーバランス)を25年度に黒字化させる目標が明記された。財務省は海外投資家や個人の購入を促す施策も検討している。
日銀に代わる国債の買い手が確保できなければ、多額の国債発行に依存した財政運営が立ちゆかなくなる。政府への信認がゆらぎ、金利
の高騰(=利払いの増加)として跳ね返る。東短リサーチの加藤出社長は「今までよりも財政規律を意識しなければならない」と指摘する。
2024/07/03 12:55 日経速報ニュース
3日午前の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前日比350円68銭(0.88%)高の4万0425円37銭となった。前日の米ハイテク株高を
追い風に半導体関連に買いが先行し、日経平均を押し上げた。一方、東証株価指数(TOPIX)は1989年12月18日に付けた最高値(2884.
80)を目前に一進一退。TOPIXをけん引してきたバリュー(割安)株に利益確定売りが出て上値が重くなっている。
午前の東京市場は東京エレクトロンやファーストリテイリングなど一部の値がさ株が買われる半面、前日まで上昇していた銀行や保険など
のバリュー株に売りが出た。三菱UFJフィナンシャル・グループや東京海上ホールディングスはおよそ2週間ぶりの反落だ。TOPIXは年初来
高値を連日で上回る場面もあるが、前日終値(2856.62)の近辺で動きは鈍い。このまま大引けを迎えれば、最高値の更新はひとまずお預け
となる。
TOPIXの上昇基調は崩れていない。東海東京インテリジェンス・ラボの長田清英チーフストラテジストは「国内金利の先高観が根強く、銀行
業や保険業の収益環境は一段とよくなる。きょうの金融株の下げは一時的な調整だろう」と指摘する。3日午前の国内債券市場で長期金利の
指標となる新発10年債利回りが一時1.100%と、新発10年債利回りとしては5月30日以来の高水準をつけた。日銀が30?31日に開く金融政
策決定会合では、国債買い入れの減額計画を決めるほか、追加利上げを決定する可能性も意識されている。
足元はバリュー株の優位が続いている。日経平均株価は年初から前日までに19.7%上げたが、バリュー株の影響が大きいTOPIXは20.7%
上昇した。同期間のTOPIXバリュー指数の上昇率は25.9%と、成長株で構成するTOPIXグロース指数(15.5%高)のパフォーマンスを大きく
上回る。楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは「相場のけん引役となっていた一部の半導体やグロース株が軟調と
なる場面があっても、主力大型株を中心としたバリュー株へと物色がスムーズに移行している」と指摘する。
金利上昇局面は、金融株などを除くと株価にマイナスとなる面もある。ただ、岩井コスモ証券の林卓郎投資情報センター長は「国内経済が
堅調との認識を株式市場が強めれば、金利上昇はネガティブ視されなくなる。そのためには好調な企業業績が再確認されるとともに、物価高
と賃金増の好循環が生まれることが必須になる」とみる。
外国為替市場で円相場は1ドル=161円台後半まで下落しているが、バリュー株の代表格ともいえる自動車メーカーの多くは通期の想定為
替レートを140円台前半と、実勢よりも円高に設定している。7月中旬ごろから主要企業の決算発表が始まるが、楽天証券経済研究所の土信
田氏は「円安を追い風にした業績拡大に加え、海外投資家からみた日本株の割安感の強さなどが、日本株買いの要因となっていく」と話す。
TOPIXの高値更新は時間の問題かもしれない。
2024/07/03 14:04 日経速報ニュース
国内長期金利が上昇している。指標となる新発10年債利回りは3日、一時1.1%に上昇し5月30日につけた2011年7月以来の高水準に
並んだ。長期金利を押し上げているのが、止まらぬ為替の円安だ。輸入物価を通じた国内物価の上昇をにらんで日銀が追加利上げに動く
との思惑がくすぶっている。
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3日はこの日から新発債となった10年375回債の利回りが一時、1.1%をつけた。2日に財務省による入札があった375回債は、同日まで
新発10年債だった374回債より償還期日が3カ月先で、その分利回りが高くなる。2日の入札後は1.105%をつけた375回債利回りは3日に
は前日と比べると低下(価格は上昇)したが、新発10年債の利回りとしては5月30日以来の高い水準となった。
日銀が6月13?14日の金融政策決定会合で7月の会合で国債購入の減額計画をまとめる方針を決めると「同時に利上げは難しい」との
見方が広がった。今月1日にQUICKが公表した債券月次調査では「10月利上げ」観測が有力になっている。
日銀の利上げを巡るこうしたメインシナリオを揺るがしかねないのが為替の円安だ。円相場は1ドル=161円台後半と37年半ぶりの安値
圏となっている。対ドルだけでなく、対ユーロや対豪ドルでも円の下落は止まらない。円売りの背景には日銀の政策金利が他の主要中銀
と比べて低位にとどまっているのが大きい。このため「日銀はもしかしたら7月に利上げするのではないか」(国内運用会社のファンドマネ
ジャー)との思惑がじわじわと浮上している。
無担保コール翌日物金利(TONA)を参照とする変動金利と固定金利を交換する翌日物金利スワップ(OIS)市場では、政策金利の予想
を映す「会合間取引」のレートが上昇している。7月会合後から9月会合までの期間を対象とするレートは2日時点では0.13%台半ばとなっ
ている。6月27日の直近ピークである0.15%前後からは低下したが、前回の日銀会合直後である6月17日の0.11%台半ばから切り上がっ
ている。「7月利上げ」の織り込みが少しずつ進んでいる。
国債購入の減額計画を巡っては「相応の規模になる」(日銀の植田和男総裁)と見込まれている。具体的な計画の輪郭がまだみえない
現状、国債投資家が慎重姿勢を保っている面も金利上昇につながっている。
6月半ばに4.2%台まで低下した米長期金利が4.5%近くまで戻ってきたのも、国内債への売りを促す。今年11月の米大統領選でトランプ
氏が勝利して返り咲けば、その政策はインフレ圧力を高めるとの見方も米国債売りにつながっている。
国内債の運用でも「米金利の先高観を考慮する必要が出始めた」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジス
ト)という。止まらぬ円安と米長期金利の再上昇が、国内長期金利を押し上げている。
2024/07/04 17:49 日経速報ニュース
4日の東京株式市場で日経平均株価が5日続伸し、終値は前日比332円89銭(0.8%)高の4万0913円65銭と史上最高値を約3カ月ぶりに更新
した。東証株価指数(TOPIX)はバブル経済期の高値を約34年半ぶりに上回って史上最高値を更新した。前日の米主要株価指数が最高値を
つけた流れを引き継ぎ、リスク選好度を高めた投資マネーが日本株にも流入した。
トヨタ自動車やキーエンス、三菱商事など時価総額の大きい主力銘柄にまとまった買い注文が続き、午後に一段高となった。ソフトバンクグル
ープは5%上げてITバブル期の2000年2月以来約24年ぶりに上場来高値を塗り替えた。
日経平均は3月22日の高値(4万0888円43銭)を上回った。6月17日の直近安値からの値上がり幅は2800円を超えた。国内金利の先高観か
ら、利ざやなど収益環境の改善につながる銀行や保険といった金融株が買われた。三井住友フィナンシャルグループ株は4日、PBR(株価純資
産倍率)が14年1月以来の1倍を回復した。
相場の底上げを映すのがTOPIXだ。日経平均が2?3月に最高値を更新するなかで出遅れていたが、7月4日は1989年12月18日につけてい
た従来の高値(2884.80)を上回って2898.47となった。野村証券の柏原悟志エグゼキューション・サービス部担当部長は「日経平均だけでなく
TOPIXも最高値となったのは、一部銘柄だけでなく日本株全体が買われたことの証左だ」と指摘した。
スイス系運用会社UBPインベストメンツの富永逸朗社長兼最高投資責任者は「企業の収益性やガバナンス向上を期待する海外投資家の日
本株への関心は高く、投資先として引き続き有力視されている」と話す。
為替の円安が海外で稼ぐグローバル企業の収益を押し上げる期待に加え、ドル建てで運用成果をみる海外投資家に割安感から買いを誘っ
ている面もある。東海東京インテリジェンス・ラボの安田秀太郎マーケットアナリストは「日本企業の収益が堅調に推移するとの見方から海外
勢が日本株を買う動きが出てきている」と指摘する。
【関連記事】
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・6月の米雇用、15万人増で予想下回る 民間調査
2024/07/08 08:15 日経速報ニュース
市川雅浩・三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト 8日の東京株式市場で日経平均株価は反発するだろう。
先週末に発表された6月の米雇用統計は労働市場の需給が緩和しつつあると市場で受け止められ、米主要3指数はそろって上昇した。
きょうの東京市場でも、米株高の流れをうけて半導体関連株を中心に上昇しそうだ。ただ、日経平均は2週間ほどで2000円超上昇して
おり、過熱感が出始めている。高値圏では利益確定の売りも出て上値を抑えるだろう。上値のメドは4万1150円程度とみている。
きょうは上場投資信託(ETF)の分配金捻出に絡む売りが出ると予想されている。需給の悪化要因にはなりそうだが、一時的なものに
とどまるだろう。市場はETFの分配金捻出を折り込んでいるうえ、分配金捻出に絡む売りを吸収できる程度に地合いは改善してきている
と考えている。
2024/07/08 09:25 日経速報ニュース
8日午前の国内債券市場で長期金利が上昇(債券価格が下落)している。指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.010%高い
1.080%をつけた。8日発表された5月の毎月勤労統計調査で基本給にあたる所定内給与は前年同月比2.5%増と1993年1月以来の高い
伸びとなった。春季労使交渉(春闘)を受けた力強い賃上げが確認され、日銀が追加利上げなど政策正常化に動きやすくなるとして国内債
に売りが出た。
2024/07/08 12:03 日経速報ニュース
投資信託を通じた家計の円売りが膨らんでいる。今年1?6月の海外の株式・ファンドの買越額は6.1兆円と、同期間の貿易赤字額(4兆円
前後)を上回る見通しだ。1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)を活用した積み立て投資は長期投資が多く、海外への投資マネ
ーの流れは簡単には細らない。月1兆円ペースの円安圧力は今後も続くとの見方が強まっている。
財務省が8日発表した対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、国内の投信運用会社や資産運用会社による
海外株・ファンドの買越額は6月単体で1兆5億円だった。
1?6月の合計は同期間として過去最高の6兆1639億円で、年明け以降はおおむね月1兆円ペースになる。主体別にみても銀行(2207億
円の買い越し)を上回る。年金は9兆4380億円売り越しており、投信経由の投資が機関投資家以上の存在感を示している。
海外に投資マネーが流れる背景にはインフレをきっかけに貯蓄から投資への流れが加速していることがある。国内の消費者物価指数(CPI
、生鮮食品・エネルギー除く)の前年同月比の上昇率は2022年秋以降、2%を超えて推移してきた。5月時点でも2.1%となお、日銀が目指す
「2%の物価上昇目標」を上回る。
日本国内には2%の利回りを得られる金融商品が少ない。預金金利は6月時点で定期(1年、300万円以上)と普通ともに0.1%を下回る。
7月募集分の個人向け国債でも利回りは固定金利型(3、5年)、変動金利型(10年)いずれも1%を下回る。日経平均株価の予想配当利回り
も1.75%とインフレに負ける。日本総研の立石宗一郎研究員は「企業や経済全体の成長期待が高い欧米など海外に投資マネーが流れやす
い状況だ」と話す。
日本の居住者がドル建ての株式や債券に投資する投信を為替リスクを回避せずに購入すると、円を売ってドルを買う為替取引が発生する。
NISA残高が増えることで、円売り圧力が増す構図だ。利益確定によりその資金を日本に戻せば将来的な円高要因になるが、NISAなど長期
投資を前提にした投資行動が増えるなかでこの円高要因が働きにくい。
日本経済の構造的な円売り要因の一つとして、輸出額が輸入額を下回る輸入超過状態を示す貿易赤字が指摘されてきた。原油などエネル
ギーを輸入するため、2011年の東日本大震災以降は貿易赤字が定着しており、1?5月の貿易赤字は3兆4540億円。6月上・中旬分を合わ
せても3兆8307億円だ。家計による海外投資はこの金額を上回っており、貿易赤字と並ぶ円売り要因となる。
国際収支に関する財務省の有識者懇談会が2日にまとめた報告書は、家計の外国資産への投資が「新NISAの影響もあり増えている」と分
析する。会議を主催した神田真人財務官は「これ自体が悪いというわけではないが、収支上は懸念材料になる」と語る。懇談会の3?6月の
議論では、有識者が「新NISA を通じて日本の働き手の資金が海外に流出している」として危機感を示した。
年初に1ドル=140円台だった対ドルの円相場は足元で160円前後まで下落している。月1兆円ペースの円売り圧力が和らぐためには株式
など国内の金融商品の投資妙味を高めることが欠かせない。「収益力や資本効率向上のための企業行動は出始めている」(ニッセイ基礎研
究所の井出真吾主席研究員)が、流れを大きくするには時間がかかる。円安基調は簡単には崩れないとの見方が多い。
【関連記事】
・37年半ぶり円安、若者の資金逃避加速 家計の外貨率最高
・新NISAとiDeCoを併用、定期預金も継続(山崎俊輔氏)
2024/07/09 日本経済新聞 朝刊
米投資ファンド大手のアレス・マネジメントが東京に拠点を開き、日本での事業に本格的に乗り出す。国内投資家に運用商品を販売するだけ
でなく、日本の未公開株や不動産などへの投資を始める。国内外の金融機関が注力するプライベートアセット(未公開資産)の市場拡大につな
がる可能性がある。
政府の掲げる資産運用立国の流れもあり、国外も含めた大手金融機関は未公開資産への投資に力を入れている。市場が広がれば未公開
株への投資や、魅力的な不動産の運用商品の購入の機会を投資家が得やすくなる。
日本部門のトップには三井住友銀行(SMBC)元副頭取の大島真彦氏を据えた。新設したアレス・マネジメント・アジア・ジャパンのパートナー
兼会長に8日付で就任した。東京事務所は年内にオープンする。
大島氏はSMBC副頭取や三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の執行役副社長を務めた。欧州三井住友銀行社長、SMBCのグロー
バルコーポレートバンキング部門責任者を歴任し、国際金融ビジネスに精通している。7日付で三井住友銀行上席顧問から退いた。
アレスは1997年創業で、ファンドによる企業向け融資「プライベートクレジット」分野の先駆者として知られる。企業買収や不動産などにも投
資領域を広げ、運用資産総額は3月末時点で4280億ドル(約68兆円)に達している。
英調査会社プレキンによると、アレスの過去10年のプライベートアセットに関する資金調達総額は1712億ドル(28兆円程度)と、世界4位だ。
未投資の待機資金も推計で548億ドルあり、十分な投資余力がある。
三井住友銀行は2020年にアレスに出資し、出資比率が4.9%の株主となった。新設する日本事業のトップに出身者を充てることで、連携を
一段と深める。
アレスは日本で保険会社や年金基金などの機関投資家向けに運用商品をこれまで販売してきた。今後は機関投資家だけでなく、富裕層向け
にも対象を広げていく。日本市場での未公開株や不動産にも投資を広げていく。
アレスはアジアを次の成長市場と位置づけ、投資規模の拡大や人材の獲得を進めてきた。香港やシンガポールの投資会社を買収し、太平洋
地域の主要市場9拠点で約90人の投資の専門家を抱えている。
日本政府が資産運用立国の実現に向けて取り組む改革などにより、日本市場での商機は大きいと判断。東京に拠点を開き、アレスのアジア
投資の中核にする方針を決めた。
アレスはプライベートクレジットのほか、プライベートエクイティ(未公開株=PE)や不動産などのオルタナティブ(代替)投資に強みを持つ。代替
投資の比率を高めたい日本の投資家の需要は大きいとみている。
プレキンの調べでは日本でのプライベートアセットの運用残高は23年9月時点で1509億ドル(およそ24兆円)と、世界全体の1%程度しか
ない。海外勢は米欧に比べて大きい運用の余地に着目し、日本での動きを活発にしている。
未公開株投資が広がれば日本の企業が規模の小さい状態で上場する「小粒上場」の問題の緩和につながる可能性もある。
2024/07/08 17:39 日経速報ニュース
【ニューヨーク=伴百江】米投資ファンド大手のアレス・マネジメントが東京に拠点を開き、日本での事業に本格的に乗り出す。国内投資家に
運用商品を販売するだけでなく、日本の未公開株や不動産などへの投資を始める。国内外の金融機関が注力するプライベートアセット(未公
開資産)の市場拡大につながる可能性がある。
政府の掲げる資産運用立国の流れもあり、国外も含めた大手金融機関は未公開資産への投資に力を入れている。市場が広がれば未公開
株への投資や、魅力的な不動産の運用商品の購入の機会を投資家が得やすくなる。
日本部門のトップには三井住友銀行(SMBC)元副頭取の大島真彦氏を据えた。新設したアレス・マネジメント・アジア・ジャパンのパートナー
兼会長に8日付で就任した。東京事務所は年内にオープンする。
大島氏はSMBC副頭取や三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の執行役副社長を務めた。欧州三井住友銀行社長、SMBCのグローバル
コーポレートバンキング部門責任者を歴任し、国際金融ビジネスに精通している。7日付で三井住友銀行上席顧問から退いた。
アレスは1997年創業で、ファンドによる企業向け融資「プライベートクレジット」分野の先駆者として知られる。企業買収や不動産などにも投資
領域を広げ、運用資産総額は3月末時点で4280億ドル(約68兆円)に達している。
英調査会社プレキンによると、アレスの過去10年のプライベートアセットに関する資金調達総額は1712億ドル(28兆円程度)と、世界4位だ。
未投資の待機資金も推計で548億ドルあり、十分な投資余力がある。
三井住友銀行は2020年にアレスに出資し、出資比率4.9%の株主となった。新設する日本事業のトップに出身者を充てることで、連携を一段
と深める。
アレスはこれまで日本で保険会社や年金基金などの機関投資家向けに運用商品を販売してきた。今後は機関投資家だけでなく、富裕層向
けにも対象を広げていく。日本市場での未公開株や不動産にも投資を広げていく。
アレスはアジアを次の成長市場と位置づけ、投資規模の拡大や人材の獲得を進めてきた。香港やシンガポールの投資会社を買収し、太平
洋地域の主要市場9拠点で約90人の投資の専門家を抱えている。
日本政府が資産運用立国の実現に向けて取り組む改革などにより、日本市場での商機は大きいと判断した。東京に拠点を開き、アレスの
アジア投資の中核にする方針を決めた。
アレスはプライベートクレジットのほか、プライベートエクイティ(未公開株=PE)や不動産などのオルタナティブ(代替)投資に強みを持つ。代替
投資の比率を高めたい日本の投資家の需要は大きいとみている。
プレキンの調べでは日本でのプライベートアセットの運用残高は23年9月時点で1509億ドル(およそ24兆円)と、世界全体の1%程度しかない。
海外勢は米欧に比べて大きい運用の余地に着目し、日本での動きを活発にしている。
未公開株投資が広がれば日本の企業が規模の小さい状態で上場する「小粒上場」の問題の緩和につながる可能性もある。
■プライベートアセットとは? 未公開株など主に4種類
株式や国債、社債といった市場などで公開された「伝統的資産」と対比して、上場されていない未公開の資産を指す。①プライベートエクイティ
(PE=未公開株)②ファンドによる企業向け融資の「プライベートデット」③不動産④インフラ――の4つが主要な資産だ。
売買できる市場がないため、すぐに現金化できない制約がある。その半面、伝統的資産に比べて相場変動の影響を受けづらく、相対的に高い
リターンが期待できる。
年金や生命保険などの機関投資家、富裕層の個人など、長期の運用益を求める投資家が関心を高めている。伝統的資産と異なる性質を持つ
ので資産の分散効果も望めるためだ。
米国の大学基金は2022年時点で運用資産の約4割をプライベートアセットに振り向けた。05年の6%程度から増加傾向が続いている。
米欧に出遅れた日本でも投資家の裾野が広がりつつあるが、公開情報が少なく、リアルタイムでの価値算定が難しい点に注意が必要になる。
投資の経験や判断が十分な投資家に対して売っているかの確認や、販売を担う証券会社などの営業担当者の育成が課題となっている。
【関連記事】
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・ブラックロック、オルタナ投資の指数作成 狙う業界標準
・買収ファンド、日本に巨額投資 米ベイン5年で5兆円
2024/07/09 14:25 日経速報ニュース
木内登英・野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト 9日午後の東京株式市場で日経平均株価の上げ幅が900円を超え、4日に付けた
過去最高値(4万0913円)を上回って推移している。足元の日本株の急伸は米株高によるものが大きい。6月の米雇用統計で労働市場の緩み
が示唆されたことから米金利が低下し、米国株は堅調だ。米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げに動く確率は7割程度に高まった。
日本では日銀による利上げ観測が強まっている。だが、日銀は経済と株高の流れを大きく損なうことなく、情勢をみながら漸進的に利上げを
実施していくとの見方が広まりつつある。
もっとも、株高の持続性については懐疑的だ。足元の日米株は米経済のソフトランディング(軟着陸)を織り込み、スイートスポット(最適な場所
)にあるとみている。今後、FRBによる利下げが始まれば、外国為替市場では円高・ドル安の流れとなり、日本株は頭打ちになる可能性も出て
くる。春以降、米国では市場予想を下回る経済統計の発表が増えており、米経済の減速が想定以上に早く進んでいると警戒させる点もある。
こうしたマイナス面への意識が高まれば、早くて7月後半から8月に調整局面がきてもおかしくはない。仮に米経済が景気後退(リセッション)入
りとなれば、年末から2025年初頭に日経平均は3万5000円まで下がってもおかしくはない。
2024/07/09 19:12 日経速報ニュース
日銀は9日、国債の買い入れ減額を巡って市場から意見を聞く「債券市場参加者会合」を開いた。市場参加者の意見は業態や規模で割れ
る結果になったようだ。日銀は7月末の金融政策決定会合に向けて、今後1?2年程度の最適な買い入れ減額計画を探る。
日銀は異次元緩和を終えた後も月6兆円程度で国債買い入れを続けてきた。6月に開いた決定会合で国債買い入れを減額していく方針を
決めた。市場参加者の意見を確認してから、7月30?31日に開く決定会合で具体的な計画を決める。
会合の日程は9?10日の2日間で、初日は銀行や証券会社が参加した。10日には生命保険会社などの担当者と意見交換する。日銀から
市場参加者に適切な減額の幅やペース、公表方法などを聞くのが目的だ。
日銀は会合に先立ちアンケートを実施し、市場参加者から集まった回答例を9日に公表した。減額幅については、最終的にゼロを目指すべ
きだとの意見から月2兆?3兆円程度、いったん月5兆円までの減額にしておくのがよいという意見まで幅広い結果となった。
減額ペースについても意見は割れた。「当初大きく減額」「段階的な減額は不要」という意見があった一方で「急激な減額は市場に不必要
なボラティリティーを発生させる可能性がある」といった懸念も寄せられた。
日銀の買い入れが減る分の引き受け手は大手銀行になるとの見方が多い。資金循環統計によると、日銀が異次元緩和に着手する前の
2012年末時点で、銀行など預金取扱金融機関は全体の4割を占める最大の国債保有者だったが、足元では1割程度だ。
岡三証券の長谷川直也氏は「海外金利の水準にもよるが、10年債が1.2?1.3%程度まで上がれば銀行も買いやすいのではないか」とみ
る。SMBC日興証券の奥村任氏も「減額で金利には上昇圧力がかかるが、銀行勢の需要により急騰にはならない」との考えだ。
「銀行が本音でどこまで(国債保有による)金利リスクをとれるか知りたい」。日銀関係者はこう明かす。銀行はバーゼル規制で自己資本に
占める金利リスク量の割合を一定以下に抑えることが求められているからだ。
23年6月に三菱UFJ銀行が財務省に提示した試算によると、金利リスク量を考慮した購入余地は、銀行を含む預金取扱金融機関全体で
22年末時点の日銀保有分に対して3割前後という。他の大手銀関係者の見込みでも100兆?200兆円が相場観だ。今後1?2年程度であ
れば日銀の大幅な減額があっても、「規制上の上限にはまだ達しない」「まだ相当余力がある」(大手銀)などの声が聞かれた。
業態や規模によっても購入姿勢にばらつきがあるため、日銀に多様な意見が集まったと考えられる。例えば、保有国債の含み損を警戒
する地銀にとっては慎重な減額ペースが望ましい。財務省内にも大幅減額には慎重論が根強い。日銀に代わる国債の買い手が確保でき
なければ、多額の国債発行に依存した財政運営が難しくなる。
日銀は異なる意見を踏まえ、最適な減額方法をどのように絞り込むのか。QUICKの債券月次調査では、日銀の2年後の国債買い入れ額
は中央値で月3兆円程度になるとの見立てだ。市場のコンセンサスと大きく離れれば混乱が生じるとの見方もある。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-09/SG5ABFT0AFB400
日本銀行が9日午後に開催した債券市場参加者会合では、メガバンク3行と複数の証券会社が、日銀に国債買い入れの積極的な減額を
求めた。複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、銀行との会合で、三菱UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行の3行のうち、1行が早い段階で大きく一気に減額すべきだ
と発言。別の1行は最終的に月間1兆円への減額を主張し、もう1行は3兆円に減額すべきだと述べた。地銀からはより慎重な姿勢が示され
たという。メガ3行の広報担当者はいずれも、コメントを差し控えると回答した。
また、証券会社などとの会合では、複数の社が8月に即時に3兆円に減額した上で1年間継続するよう要望したほか、1年をかけて徐々に
3兆円に減らすことを求めた社も複数あったという。日銀は現在6兆円程度を毎月買い入れている。
日銀は6月に国債購入の減額方針を決定。市場の意見は30、31日の金融政策決定会合で決める「今後1-2年程度の具体的な減額計
画」を議論する上で重要な材料となる。きょうの会合では減額の幅やペースに関する日銀の情報発信や参加者の意見が注目を集めていた。
日銀は具体的な減額計画を提示しなかったが、参加者からは積極的な姿勢が示された形だ。
日銀は会合を開催した経緯やヒアリングで寄せられた意見などについて説明した上で、参加者の意見を聞いた。日銀からは金融市場局長
や市場調節課長らが出席。10日には機関投資家からも意見を聞く。会合の議事要旨を作成する予定だが、公表日は未定という。通常はお
おむね3週間後に公表されている。
植田和男総裁は6月会合後の記者会見で、「減額する以上、 相応な規模になる」との見解を表明。ブルームバーグがその後実施したエコ
ノミスト調査では、まず5兆円程度に減額し、半年ごとに段階的に縮小して、2年後に3兆円程度まで圧縮する姿が中心的な見方となった。
それ以上の減額となれば、市場にインパクトを与える可能性がある。
ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長は、債券市場参加者会合の焦点は「買い入れ額を見極めるためにマーケットがどれくらいの
国債発行分をカバーできるかをヒアリングし、懸念点を解消することにある」と指摘。各社にどれくらいの年限でいくら買えるかを質問するとみて
おり、「重要な2日間になる」と述べた。
鈴木俊一財務相は9日午前の閣議後会見で、債券市場参加者会合に関する記者からの質問に対し、協議の場について具体的に説明を受
けている訳ではないとした上で、「ある意味、重要な協議」であり、その行方を「注意深く見ていきたい」と語った。特に財務省側から要望する
ことはないとも述べた。
追加利上げ
日銀の減額方針を踏まえて、財務省は国債の発行年限を短期化することで、日銀に代わる買い手となり得る銀行が保有しやすい環境を整
えるなどの対応に動き出した。国庫短期証券を除く日銀の国債保有割合が過半を超える中、日銀の購入減は市場に大きな影響を与え得る
要素になっており、植田総裁は減額に際して「市場参加者の意見等も伺って、丁寧に進めたい」としている。
次回の決定会合を巡っては、今月初めに38年ぶりの水準となる1ドル=162円台寸前まで進んだ円安による物価の上振れリスクなどを背景
に、国債買い入れの減額計画と同時に追加利上げを決めるとの見方も市場に浮上している。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは8日付リポートで、債券市場参加者会合に関して「日銀からある程度の目線を提供する
ことが期待される」と指摘。その上で、金融政策運営について「市場が減額内容を十分に織り込めば、追加利上げの検討を俎上(そじょう)に
載せやすいだろう」とみている。
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(会合に関する関係者情報を追加して更新しました)
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2024/07/11 22:07 日経速報ニュース
11日のニューヨーク外国為替市場で円が急激に上昇した。一時1ドル=157円60銭前後と、6月20日以来3週間ぶりの円高・ドル安水準を
付けた。11日に米労働省が発表した6月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、幅広い通貨に対してドル安が進んだ。足元で円売
りが歴史的な水準まで膨らんでいたため、円を買い戻す動きも強まった。
6月の米CPIは総合指数(季節調整値)で前月比0.1%下落と、市場予想(0.1%上昇)と比べて下落に転じた。米連邦準備理事会(FRB)
が早期に利下げに動くとの見方が強まり、米金利が急低下。日米金利差の縮小を受けた円買い・ドル売りが膨らんだ。
円はCPI発表前には161円台半ばで推移しており、発表後に4円超も円高・ドル安が進んだ。投機筋による円売りが膨らんでいたため、CPI
の下振れを受けて円を買い戻す動きが一気に強まった。37年半ぶりの円安水準で政府・日銀が為替介入に動くとの警戒感も根強く、円買い
がさらなる円買いを呼ぶ展開となった。
2024/07/12 09:44 日経速報ニュース
11日のニューヨーク外国為替市場で円相場が急伸した。一時1ドル=157円台半ばとこの日の安値の161円70銭台から4円強も円高・ドル安
方向に振れた。市場予想を下回った6月の米消費者物価指数(CPI)で円の弱気派の腰が砕けかけたところに、日本政府・日銀の為替介入が
疑われる大量の円買いが入った。前週から急速に円売りの持ち高を増やしてきたヘッジファンドなど投機筋は深い傷を負った可能性が高い。
市場参加者は円が急伸した直後、日本の当局の介入について半信半疑だった。だが、財務省の現場責任者である神田真人財務官がそう間
を置かずに省内でメディアに対応し、空気が変わった。神田氏は日本時間の11日夜、「介入の有無についてはコメントする立場にない」と語った。
相変わらず煙に巻いたものの、市場では「介入を実施した可能性は高い」との見方が広がった。
米国でCPI発表など相場を動かしやすい材料があった後に介入観測が出るのは、5月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表後
に円が急速に買われて以来だ。この時もイベントに便乗するかのような動きに多くの市場参加者は意表を突かれた。米国の庭先で暴れ回った
円買いには当時、「米当局の立場を考えれば同じ手はもう使えないのではないか」との声も出ていた。それだけに、もし今回も円買い介入があっ
たとすれば、マーケットにとっては完全な不意打ちだったといえる。
もちろん効果は大きかった。米CPIの発表前、ファンド勢はかなり極端な円売りに傾いていた。CPIで浮足だったコンピューターは介入絡みかも
しれない想定外の円買い注文に惑わされ、損失覚悟の円買いを急いだ。対ドル以外でも膨らませていた円売りの持ち高解消も進んだ。
日米の金利差や実需などを考慮すれば11日の円高はオーバーシュート(行き過ぎ)の域に入る。円の上値では、日本で外為証拠金(FX)を手
掛ける個人が戻り待ちの円売りに傾いたほか、過去に介入期待で積み上がっていた円の買い持ち高整理を加速させる場面がみられた。
米国では利下げ観測が改めて強まっているものの、開始時期は早くても9月と予想されている。利息収入を狙う投資家がすぐに撤収するわけ
ではない。
次の焦点は日銀の出方だ。介入が日銀の政策修正までの時間稼ぎである構図は何も変わらない。「円安一服で余裕が生まれ、政策正常化
の歩みを緩めてしまっては元の木阿弥になりかねない」(バルタリサーチの花生浩介氏)。次回の金融政策決定会合の重要性は再び高まって
きた。
2024/07/13 日本経済新聞 朝刊
アシックスは12日、三菱UFJフィナンシャル・グループやロート製薬など自社が保有する政策保有株式を2024年中にすべて売却すると発表
した。併せて三井住友銀行や三菱UFJ銀行などが保有するアシックスの株式も国内外で売り出す。海外の機関投資家などから日本企業の慣
習として批判を受けてきた株式の持ち合いの解消を進める。
日本企業は投資目的ではなく取引先などとの関係を維持するなどの狙いから政策保有株を持ち合ってきた。ただ、利益を生みにくく資本効率
を悪化させることから海外投資家の批判が強く、23年に東京証券取引所が上場企業に資本コストを意識した経営を求めたこともあり、持ち合い
解消の動きが進んでいる。
アシックスも協業相手のロート製薬、取引先のイオンやゼビオホールディングスなどグループで25の上場企業の株式を保有してきた。12日に
開いた取締役会で全ての政策保有株式の売却を決め、24年中に実際に売却する。6月末の株価で計算すると売却額は総額約110億円で、
約70億円の売却益が出るという。
広田康人会長兼最高経営責任者(CEO)は12日の会見で「安定株主はいなくなるが、緊張感のある経営をしていく」と語った。海外売上高比
率は8割を超えており、「グローバルな資本市場に正面から向き合っていく」とする。今後も政策保有株は持たない方針だ。
12日には三菱UFJ銀行やノーリツなど国内15社が保有するアシックスの株式を売り出すことも決めた。最大で発行済み株数の11%にあた
る8500万3900株を売り出す。売り出し価格は今後決まるが、12日終値で計算すると約2180億円。アシックス側から金融機関や事業会社
に政策保有株の売却を求めた。
損保や生保では損害保険ジャパンや明治安田生命保険がアシックス株を全て手放すかたちになる。このほか三菱UFJ銀や三井住友銀、み
なと銀行など金融機関のほか、竹中工務店や上新電機なども売却する。23~26日のいずれかの日の終値から最大で1割の割引価格で売り
出す。
株式売り出しの半分は米国など海外市場で実施する。アシックスの株主に占める海外機関投資家の比率は23年12月末で40.7%だが約
46%に高まるとみている。アシックスは7月1日に1株を4株に分割し、個人投資家も買いやすいようにした。国内での売り出しは新しいNISA
(少額投資非課税制度)などを活用した個人投資家の保有を期待する。個人投資家の比率も昨年末の9.6%から15%程度まで高めたい考
えだ。
2024/07/14 05:00
日銀は9?10日、7月末に決める国債買い入れの減額の仕方を巡り、市場参加者の意見を聞く会合を開いた。国債の保有余力を期待される
銀行だが、業界内でも温度差が大きい。各行の願望のような提案が寄せられたため全方位が納得する正解はなく、正常化に向けた国債市場
の「日銀離れ」は難路が予想される。
「忌憚(きたん)のない意見をお聞きしたい」。非公開で開かれた会合では日銀の藤田研二金融市場局長が口火を切った。複数の参加者に
よると「意見を聞く」という言葉通り、日銀から具体的な案が示されることはなく、コンセンサスを形成しようという意思も感じなかったという。
日銀は異次元緩和を終えた後も月6兆円程度で国債買い入れを続けてきたが、正常化に向け、6月に開いた金融政策決定会合で買い入れ
を減額する方針を決めた。7月30?31日に開く決定会合で今後1?2年程度の具体的な減額計画を決めるため、今回、市場参加者から話を聞
いた。
会合は①銀行②証券会社③生損保らバイサイド――の3グループに分けて開いた。特に銀行などの「預金取扱機関」は、異次元緩和を始め
る前の時点で全体の4割を占める最大の国債保有主体だ。日銀が買い入れを減らしていく過程で、代わりに購入する役割を担うとの期待があ
るが、銀行グループ内でも主張が割れる展開になったようだ。
「ゆるやかな減額では買いにくい」「大規模に減額すべきだ」。複数のメガバンクは大胆な決断を求めた。減額の規模感も、足元の月6兆円程
度から月1兆?1.5兆円まで減らす提案だったという。金利上昇を見込んで国内債の保有を落としてきており、金利の天井が見えれば投資余地
があるとアピールしたというわけだ。
複数の地銀も参加していたが、温度差があったとの証言もあった。日銀の減額で長期金利が急上昇(債券価格は下落)すれば、地銀が保有
している国債の含み損が拡大する懸念があるためだ。
日銀のデータでは、24年2月時点のリスクアセット全体に対する国債の含み損の比率は、大手行では0.2%程度にとどまる一方、地銀では0.7
%、信用金庫では約1.8%だった。23年後半のピーク時よりは縮小したが、運用先が限られる地銀・信金にはなお重荷になっている。
日銀は会合初日の9日、参加者から会合前に募った意見の一部を公表した。その中には急激な減額について「金利リスクを抱えている地域
金融機関等のリスク許容度を低下させ、国債消化の不安定化を招くリスクがある」との声があった。
地銀内も一枚岩ではない。金融政策の正常化に伴って金利リスクを抑える運用をしてきた地銀は、慎重な減額を要望することが地銀の総意
ではないとの考え方をにじませたようだ。残りの証券やバイサイドグループでも月3兆円程度という意見が複数出たもようだが、減額ペースな
どについての意見は割れた。
会合を終え、国内証券関係者からは「ガス抜きのための会合と受け止めた」と冷めた感想もこぼれた。6月会合時に減額計画を決めることも
できたが7月に先送りし、市場意見をもとに決めたという立て付けにすることで「日銀の責任逃れにするつもりではないか」との声もくすぶる。
日銀は市場の意見を踏まえて月末の決定会合で減額計画を決める。日銀関係者は「コンセンサスをつくるのが目的ではなくフラットに意見を
聞きたかった」と話すものの、これだけ意見が割れていると落としどころを探るのは簡単ではない。
SMBC日興証券の奥村任氏は「事前ヒアリング結果からは月3兆?4兆円がイメージされる」との見方だ。日銀が9日公表した意見のなかに
「IRRBB(銀行の金利リスク量の規制)上の制約等」を理由に月3兆?4兆円との提案があった点に注目し「日銀は市場での順調な国債消化を
重視する必要があるため、投資家の保有余力に関する意見は重要視される可能性が高い」とみる。
日銀関係者は減額について「『相応の規模』と既に言っている通り、減らしたい意志は明確だ」と解説する。別の関係者は「上下に極端な提
案が採用されることはないだろう」との見方を示しており、減額幅は市場予想の中央値に近い結果になる可能性が出ている。
11日には対ドルで161円台だった円相場が一時157円台まで急騰し、政府・日銀が3兆?4兆円規模で円買い介入を実施したとの観測が広
がった。12日にも再度1ドル=157円前半をつけた。日銀が7月末に決める減額幅やペースが市場の予想よりゆるやかだった場合、円安進行
の材料になりかねないとの指摘もある。
2024/07/14 04:00 日経速報ニュース
「面談予定はフルに埋まった。日本株への関心が非常に強い状況は変わっていない」。7月上旬に香港とシンガポールを訪れたBofA証券の
圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは、100人規模の投資家とのミーティングを終えた実感を表現する。
日経平均株価は7月に過去最高値を更新。12日終値は4万1190円と高値圏での推移が続く。日本株は日経平均が3万円台を回復した2023
年春、約34年ぶりに過去最高値を更新した24年初と2回の大相場を経験した。足元の急騰ぶりを見て「売り手が見当たらず、『第3波』に入っ
た」(明治安田アセットマネジメントの竹田太樹トレーダー)との声も出はじめた。
短期筋が上昇トレンドをつくるのは同じながら、過去との違いは買い手の広がりだ。「年金など長期の投資家から問い合わせや資金流入が
増えている。日本株のウェートを引き上げる動きは今後本格化するだろう」とBofA証券の圷氏は指摘する。
年度末にかけ上昇
上値余地はどれほどか。日経ヴェリタスは7月上旬に市場関係者へ緊急聞き取り調査をした。年度内の日経平均見通しについて、高値予
想の中央値は4万4000円だった。「年度末にかけ上昇基調が続く」との回答が大勢を占めた。
強気の理由は企業業績の上振れ期待だ。アナリストによる業績予想の上方修正から下方修正の件数を引いた値を全修正件数で割って
算出するリビジョン・インデックス(RI)はプラス方向への改善傾向が鮮明だ。
4?5月に発表された主要企業の25年3月期業績見通しは控え目だった分、秋に本格化する4?9月期決算で、通期見通しの上方修正が
相次ぐとの期待が高まっている。
為替の円安定着もサポート要因だ。今期の想定為替レートを1ドル=145円とするトヨタ自動車をはじめ期初時点では実勢より円高を想定して
業績予想を立てた企業は多い。米国の利下げ開始が当初の市場想定より後ろ倒しされる中、1ドル=160円前後の為替水準が定着。「輸出関
連企業の業績改善への期待が高まっている」(米ファースト・イーグル・インベストメンツのポートフォリオマネジャーのマシュー・ランフィアー氏)
という。
物色にも広がり
けん引役も広がっている。年初は生成AI(人工知能)期待を背景とした一部の高PER(株価収益率)銘柄主導の色が強かった一方、足元で
は伝統的な日本企業が気を吐いている。三菱重工業の年初来の上昇率は2.2倍と6月下旬?7月上旬にかけては11連騰した。日立製作所も
上場来高値の更新が続く。「事業の入れ替えなどで時代に対応した」とマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストはみる。
グロース(成長)株でも出遅れ感の強かったTDKや太陽誘電は7月に年初来高値を更新した。PGIMジャパンの鴨下健・株式運用部長は「6月
に米アップルの『AI搭載スマホ』が話題となり、久しぶりに電子部品銘柄を強気で見ている」とみる。
市場は総楽観に包まれているわけではない。波乱要因になりそうなのが11月の米大統領選だ。現職であるバイデン氏の選挙戦からの降板
がささやかれるほか、トランプ氏の再選シナリオも織り込まれ始めている。大統領選の数カ月前から市場のボラティリティー(変動率)が高まり
やすい。
金融政策の引き締め姿勢を鮮明にしている日銀の動向も気がかりだ。植田和男総裁は7月会合での利上げを否定せず、国債買い入れの
減額も予告している。「緩和的な金融環境を理由に日本に流入していたマネーは、政情不安に一定の落ち着きがみられる欧州などに戻りや
すくなる」と岡三証券の松本史雄チーフストラテジストはみる。
日本株には割高感が意識されており、銘柄選別の重要度は増している。日経ヴェリタスは大型のグロース、バリュー、中小型で買い余地の
ある銘柄を探った。「高所恐怖症」にならず、買える日本株を考えてみよう。
史上最高値を更新した日本株はどこまで上がるのか。市場のプロ10人に日経平均株価の年度内の見通しを聞いたところ、大半が4万4000
円以上と回答した。米大統領選前にいったん調整したのち、不透明感の払拭や企業業績の上方修正を受けて2025年3月末にかけて高値を
つけるとの見方が多い。
「変化への期待で買う相場から、実際に起こり始めた日本経済や企業の変化の持続性がけん引する相場に移りつつある」。UBS SuMi TRU
STウェルス・マネジメントの小林千紗・日本株ストラテジストはいう。日本株が上がり始めた昨年来、「賃金と物価の好循環」と資本効率改善
に代表される「企業統治改革」は投資家が注目する二大テーマだ。当初は日本経済や企業が変わるかもしれないとの期待が先行した。ここに
きて賃上げや高水準の自社株買いなど、変化の「証拠」は増えている。
企業改革が現実に
この流れは続きそうだ。24年4?9月期の決算発表時に、企業はこれまで公表した25年3月期の保守的な業績予想を引き上げると見られる。
資本効率改善の取り組みにも再び注目が集まるだろう。来春にかけて賃上げムードが盛り上がるなど、さらなる証拠がそろえば海外投資家
の日本株買いの動きは強まる。「25年2?3月にかけて日経平均は4万5000円まで上昇する」と小林氏は予想する。
日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストも「日本株への期待が確信に変わり始めたことが株高の背景」と分析する。ここか
ら先は「緩やかな上昇が続き年度末には4万3000円になる」と見る。
バリュエーション(投資尺度)がどこまで拡大するかも論点になる。日本株の予想PER(株価収益率)はおおむね12?16倍だった。PERが
過去のレンジ内におさまるなら「年度末で4万4000円程度が妥当な水準」(PGIMジャパンの鴨下健・株式運用部長)という。一方で「過去の
レンジよりも1?2倍程度高くても許容される」との見方もある。
円安トレンドが転換するかにも注目が集まる。カギを握るのは日米の金融政策だ。日銀は早ければ7月に追加利上げを実施すると見られる。
一方、米連邦準備理事会(FRB)は9月にも利下げを開始するとの見方が広がる。
海外投資家は日本株への関心が高いものの、ドル建てでみると運用収益の目減りにつながる円安進行を警戒している。日米の金利差縮小
を背景に円安トレンドに歯止めがかかれば、「日本株を買う好機になる」(SMBC日興証券の安田光チーフ株式ストラテジスト)。安田氏は25年
1?3月に高値をつけると見るが、円安が止まれば24年7?9月に4万4000円まで上昇するという。
「円高進行のリスクは見ておくべきだ」と岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは話す。足元までの株高の背景には、円安による企業業
績の上方修正期待がある。米景気の減速が意識され始めており、「円安トレードが?落し、株価が調整する可能性がある」と警戒する。
米大統領選も波乱要因だ。6月下旬からトランプ前大統領が有利との見方が広がり、日本株の上昇要因の1つになっていた。ただ、過去の
経験則に従うと大統領選の2?3カ月前からボラティリティー(変動率)が高まり、株価は軟調になりやすい。市場では秋口に3万6000?3万8000円程度まで下落する可能性があるとの見方が多い。
こうした中で有望な投資先はどこか。市場関係者が注目する業種の1つが米アップル向け製品などを展開する電子部品だ。アップルは6月
、iPhoneに生成AI(人工知能)機能を搭載すると公表した。これまでスマートフォンの販売は振るわなかったが「AI搭載スマホの登場で買い
替え需要が喚起される」とPGIMジャパンの鴨下健・株式運用部長は見る。在庫調整が進んだタイミングでもあり、電子部品の収益拡大期待が
高まっている。
金融を挙げる市場関係者も多い。日銀は年内の追加利上げが確実視され、金利上昇の恩恵を受けやすい銀行などが物色されそうだ。個人
消費回復を見込み小売りやレジャー、百貨店など消費関連銘柄を有望と見るプロもいる。
ここまでの日本株上昇は大型株や割安株がけん引してきた。時価総額の大きい30銘柄で構成するTOPIXコア30は昨年末比で3割高だが、
中小型株の上昇率は1割強、グロース市場にいたっては5%安に沈む。今後の株高も海外勢主導との見方が多く、主力大型株がけん引する
構図は変わらない。
ただ、個別銘柄を選別する中長期投資家の参入も増えていると見られ、「超大型株への一極集中ではなく普通の大型株や中型株にも資金
が向かう」(インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジスト)との声もある。有望な個別銘柄を点検しよう。
TOPIXミッド400に注目
ヌビーン ポートフォリオ・マネージャー ピーター・ボードマン氏
円安を受けた企業業績の上振れ期待とコーポレートガバナンス(企業統治)改革を背景に、日経平均株価が最高値をつけた。投資や資本配
分への姿勢も変化しており、日本企業の配当性向は30?40%となっている。余剰資金を自社株買いに回すようになっており、構造的な変化が
見られる。
大企業と中小企業で株価が二極化している。海外資金が大型株に集まり、時価総額と流動性が高い主力の大型株30銘柄で構成する「東証
株価指数(TOPIX)コア30」の強さが続いている。
今後は余剰資金が多い中型株に投資家の関心がシフトしていく。中型株で構成するTOPIXミッド400の4割の企業が割安で、キャッシュポジ
ション(現金比率)も高い。
1ドル160円とした場合、日経平均は年末にかけ4万3000円まで上昇する余地がある。金融株も自己資本利益率(ROE)の上昇を考えると割
安だ。
日本は他国と比べ人工知能(AI)分野においてまだリードできていない。それでも半導体の製造に使用する化学製品を供給するレゾナック・
ホールディングス(4004)や三菱ガス化学(4182)などはAIブームの恩恵を受けることができる。
金利やインフレなどマクロ経済の変動が日本市場にはリスク要因となるだろう。11月の米大統領選でトランプ前大統領が全輸入品への関税
を引き上げる考えを示している。
トランプ氏再選の場合、特に自動車産業のような米国市場に依存している日本の輸出企業に打撃を与える可能性がある。大統領選がある
11月にかけて株価は緩やかに減速する。日本の政治がリスクになることは考えにくい。
英ウェイバートン・インベストメントマネジメント ステファン・ラインヴァルト・株式リサーチヘッド
運用する世界株ファンドでは、日本株の投資割合を全体の約15%と、MSCI世界株指数の3倍に相当する割合までオーバーウエート(強気)
として買い増した。
日経平均株価は過去最高値を付けたが、今後のラリーの3分の1に過ぎないだろう。世界のアセットオーナー全体でみれば、まだ日本株へ
の投資姿勢はアンダーウエート(弱気)とみられるためだ。日本企業への資本効率改善のさらなる浸透をきっかけに強気に転じれば、一段高
が期待できる。
業種別では銀行株に注目している。過去の日本銀行の利上げ局面を研究した結果、収益改善効果は現状の株価にまだ十分織り込まれて
いないと判断した。なかでもアジアのノンバンクへの出資や米証券ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループとの連携が期待できる三井住友
フィナンシャルグループ(8316)が有望だ。
アサヒグループホールディングス(2502)は欧州やオーストラリアなど海外が成功し、コスト削減による自助努力が見込める。注目される業種
ではない分、株価はまだ割安だ。
世界のマネーが低金利下の米国の成長株に向かったため、アベノミクスの日本株高の勢いは長く続かなかった。現状では日米金利差が大
きく開いており、日本株には有利だ。
日本はようやくデフレマインドを払拭できたとみているが、実はこの考えが間違っていると判明する可能性があるのが今後のリスクシナリオだ。
消費が抑制されてネガティブな景気見通しが広がることになる。賃上げコストは企業全体の費用からみれば小さいので難しいことではなく、賃
上げの継続が問われている。
2024/07/15 05:00 日経速報ニュース
歴史的な円安をどうにか食い止めようと、財務省が再び円買いの為替介入に動いたとの観測が広がる。次に問われるのは日銀の対応だ。
7月末の金融政策決定会合では国債購入を減らす具体的な計画を決める。基本方針は公表ずみ。政策催促モードの市場をなだめられる保証
はない。ここで利上げまで繰り出すのかが焦点となる。気になるのが、日銀内に「個人消費が低調なのは物価高のせいなのだから、その原因
である円安にもっと強い姿勢で臨むべきだ」との意識が芽生え始めたことだ。
1ドル=161円台と37年半ぶりの安値圏にあった円相場。財務省は11日夜、6月の米消費者物価指数が予想を下回ったのをみて、ドル売り
の流れに便乗する3兆円規模の円買い介入に踏み切った可能性が指摘される。12日夜にも再介入の観測が浮上した。
円売り圧力を根絶できたわけではない。米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動けば流れが変わる可能性もあるが、目先は利下げ観測が
リスク投資を刺激し、むしろ新たな円売りを誘発する懸念すらある。いきおい日銀の対応に関心が集まる。
企業に円安の負の影響じわり、恩恵はインバウンドに限定
日銀が7月の支店長会議と併せて公表した地域経済報告(さくらリポート)。全国本支店で集めた企業などからの声を地域ごとに整理したコメ
ント集を調べると、「円安」への言及が18件あり、このうちマイナスの影響を訴えたのが7件だった。前回4月の報告(それぞれ5件、1件)から
急増している。
報告の編集過程で意識的に「円安」を盛り込んだ可能性もあるが、それ自体が日銀の姿勢変化を示唆する。具体的な円安の弊害は物価高
による需要減や収益の下振れ、価格転嫁の難航だ。一方でプラス効果のコメント数は11件とマイナスの7件を上回るが、すべてがインバウンド
(訪日外国人)関連だった。
過去、為替絡みの声が多かったのは、2022年秋にかけて円安が急激に進んだあとの23年1月で15件。うち負の影響は3件だった。当時、
円安のプラス効果はモノの輸出増や生産の国内回帰といった伝統的なものづくりに関わる恩恵が目立った。今回、そうした声は影を潜めた。
円安のダメージ面は、23年当時は減産や収益圧迫が目立ったが、今回は主に家計の消費意欲の低下にシフトした。この短い間の変化にも、
ものづくりの地盤沈下で伝統的な円安効果が思ったほど浸透しなくなっている現実と、そのために家計を中心に円安のデメリットに敏感になっ
ている状況が映し出されているのかもしれない。
円安で利上げ余地拡大? 政策委員の認識に変化の芽
円安由来の物価高が家計の消費意欲をなえさせる。この「現実」を日銀も直視し始めた。植田和男総裁は6月会合後の記者会見で「最近の
円安の動きは物価の上振れ要因であり、政策運営上、十分に注視している」と表明した。
そのうえで「消費の現状をどう読むか」をめぐって「一つは、おそらく物価上昇の影響で、特に非耐久財を中心に弱めのデータが出ている」と
語った。間接的にせよ「円安」→「物価上昇」→「弱めの消費」という因果関係を認めたことになる。
もちろん、植田氏が「消費を下支えするために利上げを急ぐ」という思考に変わったわけではない。4月の会合後の会見で円安の影響を軽視
するかのような受け答えが円安に拍車をかけてから「円安にもきちんと目配りしていますよ」というポーズづくりに腐心しており、その域を出ない。
を示す「主な意見」からは、変化の芽もうかがえる。
「円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、リスクマネジメント・アプローチに立って考えれば、リスク中立的な、適切な政策
金利の水準は、その分だけ上がると考えるべきである」
ある委員は、円安が利上げ余地を広げると明確に主張した。「金融政策運営に関する意見」という項目で6番目に載った主張だ。「主な意見」
は各項目での掲載の順番が早いほど、正副総裁の執行部か、それに近い意見だという「クセ」があるともささやかれる。そうだとすれば、主流
から外れた少数意見との見方が成り立つ。
仮に少数意見だとしても、他の見解と併せてみることで様相は変わってくる。次の見解はこの項目で2番目に掲載されている。執行部かそれ
に近い立場のメンバーが発したのかもしれない。
「見通しに沿った物価の推移が続くなか、コストプッシュを背景とする第2ラウンドの価格転嫁によって物価が上振れする可能性もあるだけに
、リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要である」
円安への言及はないが、「リスクマネジメント」という言葉が6番目の意見と共通する。物価が予想以上に上振れするリスクを制御できるよう、
いざというときにスムーズに利上げに動けるように備えておく、というような考え方を意味する。
「主な意見」の極め付きは、3番目に物価高による消費の弱さと利上げの可能性を結びつけるような主張が出ていることだ。
「来年度後半の2%の『物価安定の目標』の実現に向けて、オントラックで進んでいるが、上振れリスクも出てきている。こうした点が消費者
マインドに影響していることも意識しつつ、次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、
適時に金利を引き上げることが必要である」
パズルの片々を集めて推理すると、「円安が物価を上振れさせるリスクと、そのことが消費者マインドに与える影響を注視しつつ、利上げの
機をうかがう」という構図が浮かぶ。
物価高と金利上昇でダブルパンチのリスクも
日銀は個人消費について「底堅く推移」との認識を崩していない。自動車の認証不正問題が峠を越し、名目賃金の伸びが物価高を上回って
実質賃金がプラスに転じれば、消費者心理も改善する、との読みがある。
春季労使交渉での歴史的な賃上げが給与増に効き始めたのは確かだ。読みどおりに回復に向かうなら、賃金と物価の好循環の持続性を
見極めるという王道の理屈で利上げの道を探ればよい。賃金が力強く伸びて消費が持ち直すのなら、円安を抑える効果が不発でも日銀の
傷は浅い。仮に7月末の会合で利上げを決める場合も、裏では円安を強く意識しつつも、表向きは好循環をアピールするだろう。
一方、消費がさえないままなら、円安による物価高が主犯だと明確に位置づけたうえで「消費が弱いからこそ利上げに動く」という逆転の
論理を持ち出さざるを得なくなるかもしれない。
この理屈で利上げを完遂するのは簡単ではない。突き詰めると、消費を支えるためには円安を反転させるまで金融を引き締めないといけない
からだ。最悪の場合、円安抑止にめぼしい効果のないまま金利だけが上がって景気を冷やし、物価高と金利上昇のダブルパンチで消費が
底割れしかねない。
企業や市場が思う物価見通しが2%にきちんと固定される前に物価を抑え込もうとするのだから、2%の物価目標との整合性が問われ、植田
日銀の政策原理にさまざまな無理が生じる懸念もある。
「究極の決断」を迫られる前に、米国のインフレの減速を受けて円安が自然と収束する――。日銀はそんなシナリオを祈っているのかもしれない。
【金融PLUS】
・株式持ち合いは日本だけか 神田財務官の著書が映す課題
・日銀総裁、強まるタカ派発信 財務省の「警鐘」
2024/07/16 08:37 日経速報ニュース
黒瀬浩一・りそなアセットマネジメント運用戦略部チーフ・ストラテジスト 米国のトランプ前大統領が13日、11月の大統領選に向けた選挙
運動中に銃撃を受けた。銃撃を受けた直後にトランプ氏が立ち上がって拳を突き上げるなど暴力に屈しない姿勢を示したことで有権者から
の支持がさらに高まりそうだ。1981年に銃撃された共和党のレーガン大統領は事件後に支持率が上昇した経緯もあるだけに「レーガンの
再来」を予感させ、金融市場ではトランプ氏の再選を織り込む動きが加速しそうだ。財政拡張を背景にした米金利上昇で金融株が買われ
やすいほか、防衛費増額の思惑から三菱重などの関連銘柄に資金が向かいやすいだろう。
16日の東京株式市場で日経平均株価は祝日前の前営業日終値(4万1190円)を挟んで荒い値動きとなりそうだ。米国の利下げ観測の
高まりを背景に15日の米株式市場ではダウ工業株30種平均が2カ月ぶりに最高値を更新したことが日本株の支えとなる。一方、日経平
均は12日に今年最大の下げ幅となった。このところの急ピッチな上昇を背景にした高値警戒感は引き続き上値を抑えそうだ。
2024/07/18 日本経済新聞 朝刊
マネーフォワードは17日、三井住友フィナンシャルグループ(FG)傘下の三井住友カードと共同出資で新会社を立ち上げると発表した。家計簿
アプリなどを展開するマネーフォワードの個人向け事業を分離する。三井住友FGのスマートフォンを軸とした総合金融サービス「Olive(オリーブ)
」と組み合わせた事業を計画する。
新会社にはマネーフォワードが51%、三井住友カードが49%出資する。新会社の社長にマネーフォワードの辻庸介社長CEO(最高経営責任
者)、会長には三井住友カードの大西幸彦社長が就く。17日の記者会見で大西氏は「オリーブとマネーフォワードの組み合わせで新しい世界を
つくっていける」と述べた。事業開始は2024年12月を予定する。
マネーフォワードが24年8月に子会社を設立し、分割する個人向け事業を統合する。マネーフォワードは新会社の株式を三井住友カードに140
億円で売却する。新会社は三井住友カードを引受先とする第三者割当増資を実施し、50億円を調達する。
新会社の株式売却により、マネーフォワードの単体決算で140億円程度の売却益が発生するが、連結決算への影響は軽微という。
マネーフォワードの開示資料によると、分割対象になる個人向け「Home」事業の23年11月期の売上高は35億円と連結全体の1割強に相当
する。マネーフォワードにとって家計簿アプリは祖業にあたる。
分割を決めたことについて辻氏は「(会社設立以来)最も思い切った意思決定だ」と話した。家計簿アプリは利用者が1600万人を超えて国内
最大規模。さらにサービスの質を高めていくには「単独では限界があった」(辻氏)という。
24年春に辻氏と大西氏が懇談する機会があり、提携話は一気に進んだ。背景にあるのがオリーブに対する辻氏の高い評価だ。辻氏は「オリ
ーブは使い勝手がよく、開かれたサービスを標榜している。われわれがやりたかったサービスを一緒につくっていける」と述べた。
三井住友カードにとってもオリーブを拡大していくには自社グループのサービスにとどまらず、ほかの金融機関と組んでいく必要があった。マネ
フォのアプリはさまざまな金融機関と情報連携している。
新会社はマネーフォワードの家計簿アプリにオリーブの機能を入れるような形を想定する。例えばオリーブ口座からほかの銀行の口座にワン
タッチで資金を移したり、家計簿の利用状況に応じて共通ポイント「Vポイント」を付与したりするサービスを想定する。
家計状況により人工知能(AI)が資産運用を提案するようなサービスも検討する。新会社の事業は個人向けが中心だが、法人向けへの展開
も計画する。
新会社の課題は三井住友FG以外の金融機関との連携だ。例えば、スマホでワンタッチで資金移動するサービスを提供する場合、ほかの金融
機関にとって利点が見えなければ提携は進みにくい。
独立色の強かったマネーフォワードだが、三井住友FGの色が強くなることに警戒する動きが出てくる可能性もある。他行などと互いにウィン
ウィンの関係を築いていけるかが焦点になる。
[東京 18日 ロイター] - 全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)は18日の定例会見で、日銀による国債買い入れ減額の影響
について、銀行業績に対して「総じてプラスの影響が見込まれる」と述べた。足元で円高方向に進む為替動向については、円安からの「潮目が
変わる可能性が出てきた」との見方を示した。
福留会長は、日銀が国債買い入れ減額方針を示したことで、金利上昇により銀行が保有する国債の評価損益が悪化する一方で、新規の長期
固定化した資金の貸し出し金利や新規の債券投資利回りが改善すると説明した。「市場の資金量が減少していくため預金の重要性も増す」と
指摘した。
日銀に代わる国債の買い入れ先としては、主に生保、銀行、海外投資家を挙げたが、業態間で投資スタンスは異なるとした。超長期年限に対
しては生保が主体で、「貯蓄から投資へ」の流れの中で、個人による国債保有が進むことも期待されるとの見解を示した。
為替市場については、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長やトランプ前大統領の発言を受けここ数日で、「円安方向のトレンドから潮目が
変わる可能性が出てきた」との見方を示した。そのうえで、「ここから急ピッチで円安が進んでいく雰囲気はなく、時間の経過とともに緩やかな
円高に進んでいく」との見通しを示した。ただ、米国でインフレリスクが再び浮上してくると日米金利差の拡大が意識され、再び円安が発生する
リスクはあるとも話した。
2024/07/19 07:58 日経速報ニュース
19日の東京株式市場で日経平均株価は続落か。前日の米株式市場で主要3指数が下落した流れを引き継ぎ、売りが先行しそうだ。米国に
よる対中半導体規制に対する警戒感も依然強く、利益確定売りが優勢となる可能性が高い。日経平均の下値メドは前日終値(4万0126円)よ
り200円程度安い3万9900円程度と心理的節目の4万円を割り込む場面がありそうだ。
18日の米株式市場でダウ工業株30種平均は7営業日ぶりに反落し、前日比533ドル(1.29%)安の4万0665ドルで終えた。前日までに連日
で最高値を更新しており、幅広い銘柄に利益確定売りが出た。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数、多くの機関投資家が運用指
標とする米S&P500種株価指数も下落した。
日経平均は7月11日の史上最高値(4万2224円)からおよそ2000円下落したが、最近の上昇相場の起点となった6月下旬時点の3万9000円
近辺からは依然高い水準にある。米国の対中半導体規制の強化や日本政府・日銀による円買い介入への警戒感以外に、これから発表が本
格化する2024年4?6月期決算を見極めたいとの思惑から引き続き利益確定売りが進みそうだ。
一方で日経平均は前日に半導体関連株を中心に売られ1000円に迫る下落となったことで、下値では自律反発狙いの買いが入りやすい。日
本株の先高観が崩れたわけではないとの見方は多く、目先の下値支持線となっている25日移動線(18日時点で3万9948円)近辺では押し目
買いも入りそうだ。
個別ではディスコが注目となる。18日発表した24年4?6月期の連結決算は、生成AI(人工知能)向けの精密加工装置の出荷が伸び、純利
益が前年同期比87%増の237億円だった。米国の対中半導体規制の強化への警戒も強まるなかで値動きに注目が集まる。
国内で総務省が6月の全国消費者物価指数(CPI)を発表する。6月の訪日外国人客数が発表される。海外ではボウマン米連邦準備理事会
(FRB)理事やウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が講演する。
2024/07/20 06:08 日経速報ニュース
【ニューヨーク=竹内弘文】トランプ前米大統領への銃撃事件が起きてから20日で1週間となる。15?19日の米株式市場では、同氏の再選
可能性が上がったとみて政策影響を先取りする「トランプ・トレード」が席巻した。エネルギー大手や金融に資金がシフトする一方、半導体株急
落によりハイテク株の時価総額は円換算で150兆円以上消失した。
規制緩和期待、マネーの流れ変える
「大統領就任初日は2つのことをする。ドリル・ベイビー・ドリル(石油の大量生産)と国境の閉鎖だ」。18日、共和党大統領候補の指名受託
演説でトランプ氏は、不法移民の流入抑制とあわせ、石油・ガス採掘の規制緩和を最重要課題の1つに挙げた。
石油・ガス大手の株価は軒並み上昇している。エクソンモービルやシェブロンは12日終値比でそれぞれ2%高となった。バイデン政権による
再生可能エネルギー普及促進は180度転換するとみて、太陽光パネルのファースト・ソーラー株は7%安、太陽光発電インバーターのエンフ
ェーズ・エナジー株も12%安。対照的な動きとなった。
財政拡張や保護主義の高まりも相場を動かした。トランプ氏は自身が政権を握っていた2017年に導入し25年末に期限を迎える個人所得
減税など「トランプ減税」を延長する考えだ。16日公表の米ブルームバーグとのインタビューでは、米国製造業の復活のためにドル高是正や
関税引き上げを進める姿勢を示した。
こうした施策は少なくとも短期的には米国内需要を喚起する。インタビュー内で触れた建機大手のキャタピラーは4%高になるなど、景気
敏感株は幅広く買われた。長期金利が短期金利を下回る「逆イールド」の解消への期待や金融規制の緩和観測は、大手銀行の収益環境
好転を意識させて金融株高を促した。
9月利下げ観測、トランプ相場を支え
前週11日に発表になった6月の消費者物価指数(CPI)が市場予想に反して前月比下落に転じ、米連邦準備理事会(FRB)の「9月利下
げ」シナリオが濃厚となると、株価が出遅れていた景気敏感株などの銘柄を買い戻す動きは生じていた。銃撃事件以降のトランプ・トレード
本格化は、この流れを加速させた面がある。
トランプ氏の発言が冷や水を浴びせた銘柄群もあった。インタビューでは、半導体サプライチェーン(供給網)の要となっている台湾が「米国
の半導体ビジネスをすべて奪った」と述べた。一方で中国の脅威から台湾を防衛する重要性については言及がなかった。半導体関連銘柄は
軒並み急落した。
半導体世界大手のエヌビディアは週間で9%下落。生成人工知能(AI)の基盤開発に注力するIT(情報技術)大手にも売り圧力は波及した。
エヌビディアやマイクロソフト、アップルなど巨大テック7銘柄「マグニフィセント・セブン」にS&P500種株価指数採用の半導体関連銘柄をあわ
せた約20銘柄は時価総額が週間で9680億ドル(約152兆円)目減りした。
トランプ相場の継続性、見方分かれる
株価指数ごとに騰落率で明暗も出ている。ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数やS&P500種株価指数は12日比でそれぞれ
4%安、2%安となった。一方で景気敏感株の比率が高めの大型株指数、ダウ工業株30種平均は1%高、中小型株指数のラッセル2000は2%
高だった。
今後も景気敏感株の優位やハイテク株劣後という「セクター・ローテーション」は続くのか。米運用大手インベスコのストラテジスト、クリス
ティーナ・フーパー氏は「9月利下げシナリオと米景気の軟着陸期待が続く限りはローテーションも継続する可能性が高い」とみる。
一方で「テック株の急落は、極めて有望な押し目買いのチャンス。AIブームは終わらない」(米ウェドブッシュ証券のダニエル・アイブス氏
)との声もある。AIの爆発的な普及という成長性を背景に続いてきたテック株優位の構図が本当に崩れるかは見解が分かれる。ただ、大統
領選を優位に進めるトランプ氏の言動が相場を動かす状況は当面続きそうだ。
2024/07/22 04:00 日経速報ニュース
日本の株式市場で最大の買い手として存在感を高める企業の自社株買い。今年は過去最速ペースで、すでに10兆円近い自社株買い枠が
設定されている。今のところ計画に対する実施率は3割にとどまる。株価が下がった局面で入ることが多いとされる自社株買い。足元で調整
色を強める日本株相場では、買い余力の高さが下値抑止力として機能している面がありそうだ。
大和証券の集計によると、東証株価指数(TOPIX)採用企業の自社株買い枠の設定は、今年に入り7月12日までに9兆9718億円にのぼる。
過去最大で約10兆円の枠が設定された2023年通年にすでに匹敵する。だが、実際に自社株買いが実施されたのは3兆4440億円と、計画に
対する実施率は35%にとどまる。自社株買いは必ずしも期日までにすべてを実施する必要はないが、過去の通年での実施率がおよそ7?8割
であったことを考慮すると、数兆円規模で買い余力があるといえる。
自社株買いの実施状況は企業により差がある。日本郵政(6178)は5月、25年3月末までを期限とする3500億円を上限とした自社株買いの
実施を発表した。実施状況を見ると毎月約260億円ずつ買い入れている。相場動向に左右されず、機械的に同規模の買いで毎月、実施して
いることがわかる。
短期間で自社株買いを終わらせる企業もある。川崎汽(9107)の場合、5月に7月末を期限とした1000億円を上限とする自社株買いの実施を
発表し、6月末時点の実施状況はすでに7割強となっている。野村(8604)は1月末に1000億円を上限とする自社株買いを発表。期間は2?9月
だったが、すでに実施率は100%だ。メガバンクでは実施率が5割を上回っている企業もあり、市場では金融株を中心に追加の自社株買い枠の
設定に早くも期待が高まっている。
一方、自社株買いの実績がゼロの企業もある。代表が日本企業で時価総額最大のトヨタ(7203)だ。トヨタは5月、国内企業では最大となる
1兆円を上限とする自社株買いの実施を発表したものの、6月末までは買い入れを実施していない。トヨタは設定時に「トヨタ株の売却要請に応
えるとの意味合いで、金融機関やグループ会社の持ち合い解消に向けた準備」と説明。実際に市場で解消売りが出るまで実施しない可能性
が高いと市場ではみられている。
企業により姿勢に差はあるものの、過去最大ペースで設定される自社株買い枠。東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木誠一チーフエクイティ
マーケットアナリストは4?5月の自社株買い枠の設定規模が想定以上だったことから、7月に入り24年通年の設定枠の予想を従来の11兆円
から15兆円に引き上げた。アベノミクス初期の13年など過去に海外投資家が大規模に買い越した規模と比べても遜色なく、「無視できない大
きな買い手になる」(東海東京の鈴木氏)。
4?5月の日本株の調整局面でも底堅く推移した要因の一つに自社株買いの存在をあげる市場関係者は多い。海外投資家は4?5月にかけ
日本株を売り越した。だが、そうした売りを自社株買いが吸収し、海外勢がそれなりの規模で売ったにもかかわらず底堅い相場展開だったこと
が、「6月後半から始まった株高につながった面もある」(国内証券アナリスト)との声も出ている。
日経平均は11日に史上最高値を更新した後、急激な調整に見舞われている。だが、企業の自社株買いが無視できぬ下値抑止力として機能
する限り、相場の底堅さを意識した買いで、折に触れて上値を試す展開になる可能性があるだろう。
2024/07/22 13:54 日経速報ニュース
市場では日銀が7月にも追加利上げに動くとの観測がくすぶり続けている。日経QUICKニュース(NQN)がこのほど実施した専門家調査
でも約3割が7月利上げを予想した。日本政府・日銀による円買いの為替介入観測で水準は切り上がったが、歴史的な円安が再開する可能
性は拭いきれない。さらに足元では日銀が重視してきた高めの賃金上昇率が実現し、追加利上げの環境は整いつつあるためだ。
日銀は30?31日開く金融政策決定会合で国債買い入れの減額方針を決める予定だ。NQNが12?17日に実施した金融政策を分析する
民間金融機関の「日銀ウオッチャー」を対象にしたアンケート調査では、日銀は国債減額と追加利上げの同時決定を避けるとして27人中18人
が現状維持と回答。だが、9人は追加利上げを予想した。
7月の「利上げ派」が着目するのは長引く円安だ。3日に1ドル=162円に迫って37年半ぶりの安値をつけた円相場は、政府・日銀による
断続的な円買い介入観測もあって18日には155円台前半まで急伸。しかし、その後は157円台まで値を戻しており「月末にかけて再びじり
じりと円安が進むようなら、(日銀が)追加利上げに動く可能性はかなり高い」(明治安田総合研究所の小玉祐一氏)という。
賃金が日銀が描くように「オントラック(想定通り)」で上昇しているのも追加利上げを後押しする。5月の毎月勤労統計では、基本給にあたる
所定内給与の伸び率が前年同月比2.5%と1993年1月以来31年4カ月ぶりの高水準となった。2024年の春季労使交渉(春闘)での高い賃上
げ率が着々と統計に反映されてきていることがうかがえる。
日銀も賃金上昇には前向きだ。12日発表した「地域経済報告(さくらリポート)」の別冊では、地域の中堅・中小企業の賃金動向を巡って「昨
年を上回るあるいは高水準であった昨年並みの賃上げの動きに広がりがみられている」と説明。大企業だけでなく、中小企業にも賃上げの
裾野が広がっていることがみえてきている。
物価も依然として高止まりしたままだ。6月の全国消費者物価指数(CPI)では生鮮食品を除いた総合が前年同月比2.6%上昇した。政府の
電気・ガス代の補助縮小で足元では再び騰勢を強めつつあり、22年4月以降27カ月連続で日銀が物価安定の目標とする2%を上回っている。
7月利上げを予想するJPモルガン証券の藤田亜矢子氏は「日銀は2%目標達成への確度を一段と上げたと考えられる」とみる。
もちろん、長引く物価高で実質賃金はマイナスが続き、国内消費も精彩を欠く。円安是正に向けて日銀に利上げを求めたとされる河野太郎
デジタル相も釈明に追われ、足元では翌日物金利スワップ(OIS)市場が織り込む7月利上げの確率は2割台まで低下した。しかし条件が
そろい始めているのは確実で、きっかけ次第では「おき火」のような追加利上げ観測が燃え上がる可能性を秘めているといえそうだ。
2024/07/23 日本経済新聞 朝刊
金融政策を巡っては、岸田文雄首相や閣僚、自民党幹部の発言が相次いでいる。首相は長野県軽井沢町での経団連夏季フォーラムに
出席し「金融政策の正常化が経済ステージの移行を後押しする」と述べた。「日銀とも経済の大局観を共有しつつ、緊密に連携していく」と
語った。
河野太郎デジタル相は19日の記者会見で「金融政策は日銀が決めることだ」と軌道修正したものの、17日の米ブルームバーグ通信の
インタビューでは「日銀は政策金利を上げる必要がある」との見解を示した。
22日には自民党の茂木敏充幹事長が都内での講演で「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち
出す必要がある」と語った。
茂木氏は日銀に対し、過度な円安を是正するため、金融市場への情報発信をわかりやすくするよう求めた。金融正常化に関して「日本企
業の経営から言って基本的に十分対応できる」とも発言した。
家計への影響を懸念する声がある中でこうした発言は追加利上げの追い風になる可能性もある。
日銀関係者からは「国内外経済の不確実性は大きい。経済を腰折れさせず、金融正常化をうまく進めてほしいということだろう」との声が
上がる。
2024/07/24 13:21 日経速報ニュース
24日午後の東京外国為替市場で円相場が上げ幅を広げている。13時すぎには一時1ドル=154円76銭近辺と6月上旬以来およそ1カ月半
ぶりの高値をつけた。日経平均株価が下げ幅を広げたのに歩調を合わせ、積み上がっていた円の売り持ちを解消する動きが加速。24日の40
年物国債入札が「弱め」の結果で国内金利に上昇圧力がかかるとの見方が広がったのも日米の金利差縮小を意識した円買い・ドル売りを誘
った。
■On-device AIの普及でMLCCを中心にコンポーネント事業の利益成長が高まると想定、野村が「Buy」継続、目標株価3600円→4200円
野村証券が業績予想を上方修正。レーティング「Buy」を継続し、目標株価を従来の3600円から4200円に引き上げた。
目標株価引き上げの背景は、第1に、為替前提の円安方向への見直し(1ドル150→155円)に加え、スマホやタブレット、PCにAIエージェント
を搭載するOn-device AIの普及が始まることで、同社が強みを持つ小型MLCCは今後更なる小型品の採用が進み、MLCC事業の製品ミック
スが改善する見方とした。この結果、MLCCを中心に、コンポーネントの収益性が改善すると予想。第2に、主力のMLCCの利益成長見通しが
高まったことに鑑み、目標株価算出に用いる株主資本コストを5.2%から4.9%に引き下げた。
今回の業績修正では、On-dvice AIの普及拡大で同社のMLCCの製品ミックスが改善する見方を取り入れた。エージェント型AIを搭載した
On-device AIでは、DRAMの搭載容量とプロセッサの稼働頻度がともに上昇することが予想される。例えば、Apple Intelligenceは4GB程度の
RAM容量を使用すると、我々は推測。AIを用いたワークロード実行に伴うプロセッサ負荷の上昇に対しては、超小型MLCCをプロセッサの近傍
に設置し、省電力や熱対策を行うのが基本。同社のMLCC事業は、小型になればなるほど市場シェアと採算性が高い傾向(例えば、0603以下
のサイズでは60%程度の市場シェアなど)があり、On-device AIの普及がMLCC事業の収益性改善につながると考えた。なお、デバイス・
モジュール事業では、我々の業績予想には今のところ明示的に反映していないが、25年冬に予想される主要顧客の無線プラットフォーム変更
に際して、同社の無線モジュールの採用がどの程度上がるかに注目している。
25年3月期第1四半期(4~6月)は売上高4100億円、営業利益730億円程度と推定。MLCCはAIサーバーとPC向けの需要が強かったほかは
会社計画通りの需要環境であったと見ている。なお6月末の在庫は、3月末比で80億円程度増加したとの前提で予想は作成、と指摘。
今2025年3月期連結営業利益を会社計画3000億円(EPS124.4円)に対し従来予想3200億円(EPS127.5円)から3520億円(EPS141.4円)へ、
来2026年3月期連結営業利益を3850億円(EPS153.1円)から4200億円(EPS168.4円)へ、2027年3月期同4430億円(EPS175.9円)から
4780億円(EPS191.4円)へ増額している。
[東京 26日 ロイター] - 来週の外為市場で、ドルは神経質な動きとなりそうだ。30ー31日に開催される日銀金融政策決定会合や植田和男
総裁会見の内容次第では値幅を伴う荒い値動きとなる可能性がある。米利下げ時期を占う上で、30ー31日開催の米連邦公開市場委員会
(FOMC)の結果に関心が集まる。月末と月初を挟む週となり、フロー主導で上下に振れる場面も出てきそうだ。
予想レンジはドル/円が151.50━155.50円、ユーロ/ドルが1.0700―1.1000ドル。
最大の注目材料は日銀決定会合。国債買い入れをどの程度減額するのか、追加利上げの是非の議論など、市場の関心が集まる。上田東短フ
ォレックスの営業企画室室長、阪井勇蔵氏は「日銀会合の結果次第で円高もしくは円安に振れるか、(ドルの)方向感が決まる可能性がある」と
し「注目度が高いだけに2-3円の値幅が出てもおかしくない」との見方を示す。
米FOMCについては政策金利が据え置かれるとの見方が大勢。米連邦準備理事会(FRB)高官によるタカ派的な発言が徐々に収まる中、
9月会合での利下げが示唆されるかが焦点となる。
日米の金融政策決定会合を経て、市場で米利下げ観測と日銀の利上げ観測が同時に後退するような状況となれば「日米金利差が縮小せず
、円キャリーが再開する可能性がある」とSBIリクイディティ・マーケットの金融市場調査部長、上田真理人氏はみる。
また、米国ではISM製造業景況指数や雇用統計など主要な経済指標が発表されるほか、マイクロソフト(MSFT.O), opens new tabやアップル
(AAPL.O), opens new tabなど大手企業決算も相次ぐ。ドルは材料を見極めながら一喜一憂の動きが予想される中、米株価の調整局面が続けば
リスク回避の流れから「円高/ドル安方向のリスクが警戒される」(阪井氏)との声も聞かれる。
このほか、7月31日に月次ベース(6月27日ー7月29日)の外国為替平衡操作の実施状況が公表される。
2024/07/26 18:25 日経速報ニュース
三井住友銀行は26日、欧州で融資を手掛ける総額4億5000万ユーロ(約750億円)規模のファンドを立ち上げたと発表した。ファンドによる
企業向けの融資は「プライベートクレジット」と呼ばれている。新ファンドは中堅企業のLBO(借り入れで資金量を増やした買収)向け融資など
利回り、リスクともに比較的高い案件に重点を置く。
設立は6月20日付で、専門企業の英キャンベル・ルティエンスなどをアドバイザーとして起用した。三井住友銀の欧州事業のノウハウをベ
ースに、銀行と同様の案件に融資する。別途ファンドを設けると外部の機関投資家の投資を募れるといった利点がある。今後米国やアジア
太平洋地域などでも設立を視野に準備作業を進める。
三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友DSアセットマネジメントもファンドに参画し、海外の機関投資家向けの運用商品の組成
にも活用する。収益率は13%程度を見込む。政府が掲げる資産運用立国に対応し、オルタナティブ(代替)資産分野の運用力を強化する
施策の一環となる。
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2024/08/02 17:30 日経速報ニュース
3メガバンクグループの2024年4?6月期決算が2日、出そろった。合計の連結純利益は前年同期比16%増の約1兆2165億円と、05年度に
3メガバンクの体制になってから四半期で最高を更新した。店舗の統廃合など効率化を背景に「稼ぐ力」が高まっていることを象徴する。
2日に決算を公表した三井住友フィナンシャルグループ(FG)の連結純利益は前年同期を5割上回る3713億円と11年ぶりに最高益を更新し
た。企業部門の預貸金収益や手数料収益が旺盛な設備投資需要や金利上昇を受けて増加したほか、830億円に達した政策保有株式の
売却益が下支えした。
3月にマイナス金利政策が解除された影響で、3メガバンクの4?6月期の収益は合算で400億円近く上積みされた。金利上昇は企業や
個人向け融資に反映されるほか、債券運用の利息収入を押し上げる。7月末の追加利上げの効果を含めると、25年3月期通期で三井住友
は700億円、三菱UFJは600億?800億円の資金収益増につながるという。円安も3メガバンクの4?6月期の収益を600億円ほど押し上げた。
好決算は長引く低金利下で採算性の改善を進めてきた成果でもある。3メガ銀合計の支店数はマイナス金利政策が始まった16年と比べ
て約3割減り、事務職を中心に採用も絞り込んできた。採算性が低い融資からの撤退も進めている。本業のもうけを示す連結業務純益は26
%増の1兆4445億円となった。
25年3月期の通期では、前期比6%増の3兆3100億円の純利益を見込む。各社の業績予想は日銀の追加利上げを織り込んでおらず、11月
に公表する4?9月期決算の公表時などに上方修正を検討する。大手行の幹部は「長期・短期の金利水準や預貸金量の変化による業績へ
の影響を検討する」と話す。
今後の波乱要因となり得るのは海外経済の動向だ。米連邦準備理事会(FRB)は9月にも利下げに転じる方針を示唆し、業績を支えてきた
海外貸し出しの利ざやが縮小に転換する可能性がある。景況感の悪化で「投資銀行ビジネスにも減速感が出ている」(幹部)という。
3メガ銀体制に移行してから四半期ごとの純利益をみると、23年4?6月期の1兆515億円が最高だった。四半期単位では大口の与信費用や
債券売却益の計上が影響しやすく、単純な比較が難しい面はある。それ以前は計8000億円程度が最高だった。
メガバンクは発足からしばらくは不良債権処理に追われ、低金利もあって成長に向けた攻めの経営を進めづらかった。今後は逆風に備えた
上で、将来の収益増加につながる投資を重ねられるかが一段の成長を確保するための条件となる。
りそな、三井住友トラストの両ホールディングスも前年同期比で増益を確保した。5大銀行グループの純利益は19%増の計1兆3386億円と
最高益を更新した。
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2024/08/05 16:31 日経速報ニュース
5日の東京株式市場でメガバンク株が連日で急落した。長期金利の低下などを背景に景気悪化や利ざや縮小を懸念した売りが優勢となった。
これまで日銀の政策修正に歩調を合わせる形で株高トレンドを描いてきた銀行株――。市場は依然として日銀を金融引き締めに積極的な「タカ
派」と受け止めているが、政策修正を見込んだ銀行株物色の一巡が意識され始めた。
三井住友フィナンシャルグループ(8316)は制限値幅の下限(ストップ安水準)となる前週末比1500円(15.52%)安の8162円まで下落した。
2月26日以来の安値となる。売買代金が多い三菱UFJフィナンシャル・グループ(8316)も12%安で午前を終え、年初来高値(7月5日、1849円
50銭)からの下落率が27.87%に達した。みずほフィナンシャルグループ(8411)も11.59%安で終えた。
銀行株は黒田東彦氏が日銀総裁だった2022年12月の金融政策決定会合で長期金利の変動幅拡大が決まって以降、金利先高観やPBR
(株価純資産倍率)是正期待を背景に買われてきた経緯がある。株価は3メガバンクともに倍以上になった。
しかし、24年7月の会合で植田和男総裁が政策金利について「0.5%は壁ではない」と発言したことで空気が一変。「日銀が今までの緩和姿勢
とは異なるメッセージ発信をしたことで株買い・円売りの巻き戻しが起きた」(みずほ証券の小林俊介チーフエコノミスト)。政策修正トレードの
「銀行株買い」の動きに強烈な逆回転が起きたもようだ。
長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは5日午前に一時0.785%と4月9日以来約4カ月ぶりの低水準をつけた。日銀が短期金利に
影響する政策金利を引き上げるなかでの長期金利低下とあって、イールドカーブ(利回り曲線)は米雇用情勢や日本株安といった景気悪化を
織り込んだ「ベアフラット化」が意識される。長短金利差の縮小は短期で借りて長期で運用する銀行業に逆風で、今後日銀が利上げを進めて
も今までのような利ざや改善を見込んだ「銀行株買い」が起きない可能性が強まってきた。
金利上昇による預貸金収益の増加などが貢献し、三井住友FGが24年4?6月期に最終増益となるなど足元の業績は堅調だった。ただ、今
回の株安や金利低下という外部環境の変化は無視できない。「日銀トレード」の中心的存在だった銀行株が再び上昇トレンドに回帰するハード
ルは高いと言えそうだ。
2024/08/13 10:13 日経速報ニュース
13日前場中ごろの東京株式市場で日経平均株価は上げ幅を拡大し、前週末に比べ860円ほど高い3万5800円台後半で推移している。
前日の米ハイテク株高を受け、引き続き東エレクなど値がさの半導体関連株が堅調で、相場を押し上げている。日経平均の上げ幅は一時
1000円を超え、節目の3万6000円を上回る場面もあった。
上場企業の2024年4?6月期の決算発表は前週末にピークを迎えた。好決算を材料にした個別物色の動きも活発となっている。市場で
は「波乱相場でこれまで決算にはあまり目を向けられてこなかったが、全体として4?6月期決算の出足は悪くない」(国内運用会社の
ストラテジスト)との声が聞かれた。業種別では保険の値上がりが目立ち、SOMPOやMS&ADが高い。
10時現在の東証プライムの売買代金は概算で1兆5520億円、売買高は7億1918万株だった。
フジクラや荏原、楽天グループ、キーエンスが上昇している。一方、シャープや明治HD、ヤマトHD、NXHDは下げている。
2024/08/14 日本経済新聞 朝刊
三井住友フィナンシャルグループ(FG)がM&A(合併・買収)といった投資銀行ビジネスの強化を急いでいる。米独立系投資銀行のジェフリーズ
・ファイナンシャル・グループへの出資比率を引き上げた。三菱UFJFGが投資銀ビジネスで先行しており、挽回へ次々に手を打っている。
出資比率を当初の4.5%から10.9%に引き上げた。ジェフリーズが13日までに発表した。10%を超えたこともあり、同社の取締役に三井住友
FGの中島達社長が12日付で就任した。
両社は2021年7月に資本業務提携を結び、クロスボーダーM&Aの助言業務などで連携を深めてきた。FG傘下の銀行や証券会社も連携に加
わり、株式・債券の引受業務(ECM、DCM)を含め23年度に100件弱の案件で協力が実現した。
提携関係は23年以降、矢継ぎ早に強めてきた。主に米国での(1)投資非適格企業向けビジネス(2)ヘルスケア(3)日本企業関連のクロスボー
ダーM&A――の3分野に限られていたが、23年に米投資適格企業などに拡大した。
国内市場が縮小する中で、クロスボーダーM&Aは日本企業の関心が高い。ノウハウが手薄なままでは融資先企業との関係が弱まりかねず、
手数料による安定的な収益を狙うメガバンクが力を入れている分野だ。
「ジェフリーズと組んだ海外投資銀行のビジネスモデルを確立していく」。三井住友FGの幹部はこう強調する。
三井住友FGは米国の投資銀事業をジェフリーズを軸に展開すると決め、欧州・中東・アフリカやカナダなどへと協業の対象も広げた。今後アジア
地域を対象に加えることも視野に入れている。
三井住友FGは「両社の強みを生かした戦略を検討している」とコメントした。
三井住友FGは海外証券業務の業務純益について、26年3月期に23年3月期比2倍の490億円を目指している。
三井住友FGはこれまでジェフリーズに対し議決権を持たない優先株を取得し、25年までに持ち分を最大15%に引き上げる計画を公表して、
段階的に株式の取得を進めてきた。15%以上の出資が実現すれば、ジェフリーズを持ち分法適用会社にすることも視野に入る。
矢継ぎ早に講じる強化策の背景にはクロスボーダーの投資銀業務で出遅れているとの危機感がある。
三菱UFJFGは08年のリーマン・ショックで信用不安に陥った米投資銀大手のモルガン・スタンレーの優先株を引き受けて資本業務提携した。
約23%出資しており、関係は15年に及ぶ。
モルガンがM&A助言や株式引き受け、三菱UFJが融資分野に特化しながら協力して稼ぐ収益モデルをつくった。
みずほFGも投資銀業務の強化を目指して23年12月に米投資銀行グリーンヒルを完全子会社化した。
23年の世界の投資銀行の手数料リーグテーブルでは米欧勢が上位を占めるなか、みずほとして初めてトップ10に入った。成長に向けて注力
する分野の一つとして、米国を含むグローバルの投資銀ビジネスを位置づけている。
三井住友FGの投資銀行ビジネスを直接担うSMBC日興証券は、旧4大証券の流れをくみ、国内の事業基盤は他のメガバンクと比べ見劣りし
ない。証券業務を通じて海外で稼ぐ形をどう示せるかが長年の課題となっていた。
米連邦準備理事会(FRB)の利下げが今後本格化すれば、一時的に収益が落ち込んでいた投資銀ビジネスも復調が予想される。今回の提携
拡大はその流れに沿うものになる。
もっともジェフリーズの出資比率の引き上げは議決権の生じない優先株を通じたもので、協力関係をどこまで深められるかは見通せない面があ
る。世界各地で協業する案件を増やし、提携の果実を示す重要性が高まっている。
2024/08/16 日本経済新聞 朝刊
15日の東京株式市場で、銀行株を買い戻す動きが広がった。みずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループがともに
一時6%高まで買われた。内閣府が同日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)が実質の季節調整値で、2四半期ぶりのプラス成長と
なり、景気改善によって収益が拡大する期待が高まった。
東証業種別株価指数では銀行が2・8%高となり、すべての業種で上昇率のトップだった。三菱UFJフィナンシャル・グループの株価が
一時5%、千葉銀行が5%上昇した。
GDPがプラス成長となり、景気が緩やかに回復するとの見方から、15日は長期金利が上昇した。立花証券の馬場正夫アナリストは
「GDPがプラスに転じたことで、景気回復が意識され、長期金利の上昇に伴う利ざやの拡大や融資の増加への期待が高まった」と指摘
する。GDPが改善したことは「マクロ指標を重視する海外投資家にとっては、銀行株のような大型株を買う上での好材料となった」(アセット
マネジメントOneの浅岡均シニアストラテジスト)面もあるという。
3メガバンクグループの2024年4~6月期の連結純利益の合計は、05年度に3メガバンクの体制になってから四半期で最高を更新した。
業績好調を受け、自社株買いなどが増えるとの見方も出ている。明治安田アセットマネジメントの福川勲シニア・リサーチ・アナリストは
「メガバンクは(財務の健全性を示す)中核的自己資本(CET1)比率が改善しており、今後は株主還元が強化されるとの期待が大きい」と
指摘する。
15日の日本株は、5日までに急落していた銘柄が買い戻され、日経平均株価は前日比284円高と、約1カ月半ぶりに4営業日続伸した。
特に3メガバンクは7月末から8月5日までに25~29%下落していた。同期間の日経平均(20%安)と比べても下げがきつかっただけに、
自律反発の買いも入りやすかった。
足元でも3メガバンクのPBR(株価純資産倍率)はいずれも1倍を下回る。明治安田アセットの福川氏は「今後の自己資本利益率(ROE)の
改善を見込むのであれば、PBR1倍割れは割安感がある」と話す。
7月のピークを超えるまでアト僅か…
2024/08/18 日本経済新聞 朝刊
オリックスは主力事業の一つである航空機リース事業を強化するため、1500億円以上を投資する。中小型の中古機を中心に50機以上を
購入し、保有する機体数を倍以上に増やす。世界的な旅客需要の回復でリースへの引き合いが強まっており、積極投資によって収益拡大を
目指す。
オリックスは6月末時点で、57機のリース用機体を保有しており、保有機数で世界20位前後につけている。2024年度中だけで1500億
円以上の資金を投じるほか、25~26年度にも追加投資を検討し、今後3年間で新たに50機以上を購入。保有機数を100機以上に増やす。
加えて、自ら保有せずに管理を請け負う機体数も現在の140機程度から50機以上上積みする。保有と管理を合わせた機体数を現在の200
機から、3年後の27年度には300~400機に増やす計画だ。
オリックスが多数の航空機購入に動くのは、リースへの需要が高まっているためだ。新型コロナウイルスの感染収束で旅客数が回復する
一方で、欧州エアバスや米ボーイングといった航空機メーカーの生産は需要に追いついていない。航空会社は足りない機体をリース会社から
確保しようとしており需要の増加で直近のリース料は20年に比べ5割程度上昇している。
事業環境の好転によって、オリックスの航空機事業の利益は24年3月期に203億円と、前の期比で56%増えた。
日本航空機開発協会の予測では、43年の世界の旅客需要は19年の2.3倍となり、中長期的にも機体の需要は右肩上がりで推移すると
見込まれている。オリックスはここ数年、保有機体の売却を進め、機体数を19年の100機から半減させてきたが、再び攻勢に転じる。
他のリース会社も需要の高まりを見据え、航空機の確保に動いている。三井住友フィナンシャルグループ(FG)傘下のSMBCアビエーショ
ンキャピタルは23年、小型機を60機発注。購入総額は5000億円超とみられる。今後は航空機リース会社間の契約獲得競争も激しくなる
見通しだ。
2024/09/03 日本経済新聞 朝刊
大手銀行で人事権を人事部から事業部門に移す動きが目立ってきた。三菱UFJ信託銀行は2025年までに従業員およそ7000人の人事権
を各部門に移譲し、人事の原案作成を委ねる。三井住友銀行も26年に専門人材の評価で事業部門の権限を強める。集権的との指摘もあった
銀行の人事運営は転換期にある。
三菱UFJ信託銀は、各部門の主要ポストから異動したり、登用したりする人材の原案を25年春から原則として各部門で作成する。これまでは
各部署が提出した評価をもとに人事部が全社単位で検討して案を決めていた。
背景には銀行の人材確保が難しさを増す中で各事業部門の採用を維持するには、権限移譲により組織を強くすることが重要との見方がある。
今後の事業部門の幹部をどのように育てていくかを各部門で決める仕組みも順次、整える。幹部間で議論する組織などをつくり、将来の部門
長といった幹部の配置を幹部らで協議するようにする。
これまでは人事部で計画を練っており「各部門からはブラックボックスになっていた」という。
段階的に円滑に移行していくため、人事部出身者を中心に各部門に「ヒューマンリソースビジネスパートナー」と呼ぶ担当者を設ける。資格や
経歴などの人事情報の閲覧権も各部門に広げていく。専用の人材マネジメントシステムを先行して導入した。
人事部門は次世代の経営陣の育成などの業務に特化する。各部門の人事運営の取り組みを管理、監督して経営陣とすり合わせる役割も担う。
三菱UFJ信託銀が人事の現場への権限移譲に着手する背景には、将来的な人材確保への危機感がある。
バブル期前後に大量採用した世代が60代に達しはじめ、退職したり、高齢者向けの雇用体系に移ったりしている。事業部門では、減少する
人手を補うために新卒を上回る中途採用に取り組んでいる。
成長性の高い資産管理・運用や不動産などの採用に重点を置くが、外資系の資産運用会社や不動産といった異業種と競合する中、働き方
が異なる各事業にあった人事運営が必要だと判断した。
法人融資をグループの銀行に移管するなど、専門性の高い人材が必要な事業の成長が一段と求められている事情もある。
人事権を現場に移譲する事例は銀行業界の潮流になってきている。三井住友銀は20年に事業部門主導で専門人材を「エキスパート」に認定
し、業域をまたぐ異動をなくしたり、手当を支給したりする制度を導入した。
従業員組合との協議を経て全従業員を対象に専門性を評価する仕組みを26年に導入することも検討している。人事への事業部門の関与を
強める狙いがある。
三井住友銀は26年に入社年次を給与に反映する「階層」を廃止するほか、シニア層の給与を自動的に引き下げる仕組みの撤廃を予定して
いる。
20代の社員でも年収2000万円を得られるようになるなど処遇の自由度を広げる施策を組み合わせ、行員の専門性を高める。
みずほフィナンシャルグループ(FG)は24年度の新人事制度で仕事内容と給与をひもづける「役割給」を導入した。人員計画、配置計画の
策定を各事業部門に委ねた。人事部門は運用の管理などに徹する。
海外の金融機関は人材の採用、解雇も含めた権限を事業部門が持つ例が多い。ポストの差配を人事部が仕切ってきた日本の銀行の慣行
は特殊との見方もある。
年功序列・終身雇用の前提は専門性の高い部署を中心に崩れつつあり、同業の銀行間で転職する例も広がる。雇用の流動化を見据えた
人事制度の見直しは今後も広がるとみられている。
2024/09/03 11:54 日経速報ニュース
3日午前の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、午前終値は前日比86円93銭(0.22%)高の3万8787円80銭だった。上げ幅は一時200円
を超えた。3日の東京外国為替市場で円相場が一時1ドル=147円台前半まで下落し、トヨタやホンダなど輸出関連株への買いにつながった。
国内長期金利の上昇(債券価格は下落)を受け、三菱UFJや第一生命HDなど金融株も買われた。半面、東エレクやアドテストなどの半導体関
連の一角が朝高後は売りに押され、指数の上値を抑えた。
3日午前の東京外国為替市場で、円相場は一時147円20銭近辺まで下落し、2日の海外市場で付けた安値を下回った。円安進行を受け、日経
平均は10時25分に3万8967円まで上昇する場面があった。
日経平均が心理的節目の3万9000円に近づくと上値が重くなった。市場では「米景気の堅調さや米国での年内複数回の利下げが日米株には
すでに織り込まれているため目先は調整リスクが高い。上値では個人投資家や海外のヘッジファンドなどによる戻り待ちの売りが出やすい」
(みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリスト)との声があった。日経平均は前日の取引時間中に一時、3万9000円を上回ったが、その後
は売りが強まり、上げ幅を縮小した。
東証株価指数(TOPIX)は続伸した。前引けは16.75ポイント(0.62%)高の2732.74だった。JPXプライム150指数は反発し、4.45ポイント(0.36
%)高の1225.69で前場を終えた。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で1兆6352億円、売買高は7億6631万株だった。東証プライムの値上がり銘柄数は1336。値下
がりは272、横ばいは36だった。
ファストリやダイキンなどの値がさ株が買われた。投資有価証券の売却益を計上する見込みとなったTBSHDが上昇したほか、外資系証券が
投資判断を引き上げたNTTデータが大幅高となった。一方、TDKや太陽誘電などの電子部品株が下落した。減益決算を発表した伊藤園が下
げたほか、データセンター向けの光ファイバー需要増加への期待から連日で買われていたフジクラがきょうは売りに押された。
2024/09/10 05:00 日経速報ニュース
「信託期間ハ大正拾参年八月七日ヨリ向フ百ケ年トス」――。ちょうど100年前の大正13年(1924年)に結んだある契約がこのほど役割を
終えた。三井信託(現三井住友信託銀行)が東京都文京区の護国寺と結んだ信託契約だ。
活用したのは信託会社が委託者に代わってお金を管理・運用する金銭信託。護国寺が檀家総代から寄付されたお金を100年に渡って保
全・運用し、期間終了後に石灯籠や記念碑などの保存費用に充てる目的だった。
信託とは、財産を代わりに管理・運用してもらう制度だ。護国寺との案件は1924年設立の三井信託が創業時に扱った日本初の信託契約
とみられる。その形式の基本はいまも変わっていない。資産運用を支える投資信託、高齢化に伴う相続、社会貢献のための公益法人への
寄付――。預金として眠る個人のお金が資産形成や寄付などの多様な使い道に向かうにつれて、信託の裾野は広がっている。
2024年3月時点の日本の信託財産総額は1702兆円と、10年でおよそ2倍に膨らんだ。それぞれ約100年の歴史を持つ三井住友信託、三
菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行の3大信託が日本の業界を長らく支えてきた。そんな業界にくさびを打ち込もうとしているのが、野村ホー
ルディングス(HD)だ。
「バンキングを第4の部門にする」。野村の奥田健太郎社長は5月、こう宣言した。担い手は1993年につくった野村信託銀行だ。3大信託に
比べると後発ながら、資産運用に特化した証券会社ならではのサービスで存在感を高める。
野村信託の岡田伸一社長は「銀行と証券の特徴をいかして野村ならではのブティック(独立)型を推進する」と話す。総花的なメガ信託と
異なり、とがった分野を磨くという。
注力するのが投資信託の受託業務だ。信託銀行は運用会社からの運用指示に従って投信に組み込む株式や債券などの売買や管理を
担当する。メガ信託が資産管理を専門とするグループの信託銀行に再信託をするのに対し、野村は1社で完結する。
機動力をいかしてデリバティブ(金融派生商品)や未上場企業株といった値動きが把握しづらい資産を組み込んだ投信など、取扱商品を
増やしつつ柔軟な対応力を強みに顧客を広げてきた。24年3月時点の投信受託残高は33兆円とみずほ信託を上回る業界3位が定着して
きた。
4月には投信の価格を運用会社と信託銀行がそれぞれ算出する「二重計算」をなくした日本初の「1者計算」の公募投信も受託した。「大手
の半分くらいの時間軸で新たな商品にも対応できる」(岡田社長)という。遺言信託、株・債券を担保とした富裕層向けローンなど個人向け
にも力を入れる。
業界に新たな風を吹き込もうとしているのは野村だけではない。三井住友フィナンシャルグループ傘下のSMBC信託銀行は、13年に三井
住友銀行が買収したソシエテジェネラル信託銀行が母体で、15年にはシティバンク銀行のリテール部門が加わった。
外貨預金でトップクラスのシェアを持ち、ためた外貨を海外で直接使えるサービスで転勤者などからの支持を集める。ファンドマネジャーが
個別の顧客の運用方針に基づいて顧客の信託口座を運用・管理するサービスなど、富裕層ビジネスは独自路線で大手と差別化している。
24年3月期は純利益で257億円とみずほ信託(294億円)に近づきつつある。足元ではライバルから人材を引き抜き不動産仲介の陣容拡大
を急ぐ。23年に「ハイアットリージェンシー東京」売却を取り仕切るなど大型案件でメガ信託の牙城を切り崩しにかかる。
約80年ぶりの全面改定となった04年施行の改正信託業法は事業会社にも参入の道を開いた。免許を取得する信託会社は年々増え、24年
6月時点で36社にのぼる。留学支援や再生可能エネルギー開発、知的財産管理など目的も多様だ。
岐阜県高山市に本社を置くすみれ地域信託は地方振興に特化した信託会社だ。地元の小水力発電所や商業施設の管理・運営に始まり、
21年には前橋市で市街地のにぎわいを生み出すために必要な民間資金を管理する事業に乗り出した。
第一生命保険が資金拠出し、歩行者の通行量の達成度合いに応じてリターンが定まる「ソーシャル・インパクト・ボンド」の仕組みを取り入れ
た。井上正会長兼社長は「これからも大手では担いきれないきめ細かい信託サービスを提供し、地域の実情に沿った課題解決を実現したい」
と語る。金融以外にも信託の担い手が広がりつつある。
2024/09/11 05:00 日経速報ニュース
「(株式分類の)銀行セクターから離れたい」。三井住友信託銀行の大山一也社長の口癖だ。個別の企業努力だけでなく金融政策が材料視
され、金利変動の思惑で投資家も株を売り買いする。そんな銀行株の宿命に見切りをつけたいと考えている。
三井住友トラスト・ホールディングス(TH)と傘下の三井住友信託は信託業界の源流だ。信託業法に基づく初の信託会社は前身の一つ、旧
三井信託だ。31年3月期までの計画では資産管理や運用など信託業務の残高を増やす一方、「融資は横ばい」(三井住友THの高倉透社長)
とする。この方針はライバルとの競争関係と無縁ではない。
3大信託の三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行はメガバンクグループの傘下にある。三菱UFJ信託は18年に法人融資の業務を三菱UFJ銀
行に移管し、兄弟会社の商業銀行とすみ分けを加速。4年後の22年3月期には信託財産で三井住友信託を抜いた。
一方、三井住友THは三井住友フィナンシャルグループとの資本関係はなく、日本唯一の独立系信託銀行だ。だが競争が激しく融資に頼る
従来のビジネスモデルでは成長が見込めないとみる。金利ある世界で100周年を迎え信託回帰を鮮明にする。
信託が銀行と兼営する日本独特のスタイルは戦時中につくられた。「兼営法」と呼ばれる銀行と信託の兼営を進める法律が制定され、戦後
はGHQ(連合国軍総司令部)の方針で、信託会社が銀行法に基づく信託銀行になった。
信託銀行に与えられた使命は重厚長大産業に目線の長い資金を供給して経済成長を支えることだった。大きな役割を果たしたのが、バブル
期に「ビッグ」の愛称で知られた貸付信託だ。ただ日本経済が停滞期に入るとともに資金需要が減少。2000年代に幕を閉じ、代わりに融資を
増やさざるを得なかった。
その融資も足元は振るわない。全国銀行協会によると、都市銀行5行の貸出金残高は24年3月までの10年間で2割以上増えた一方、信託
銀行は8%減少した。投資家から自己資本利益率(ROE)の向上を求められるという面でも、バランスシートが膨らむ融資には走りづらくなって
いる。
先行して信託業務への特化を進めてきたのが、法人融資を三菱UFJ銀行に移管した三菱UFJ信託だ。信託協会によると、三菱UFJ信託の
投資信託受託残高はこの7年で2倍以上に増加した。17年3月時点では三井住友信託が上回っていたが、24年は三菱UFJ信託の145兆円に
対して三井住友信託は80兆円と大きな開きがある。三井住友信託の残高はここ数年ほぼ横ばいだ。
三菱UFJ信託は世界戦略で資産管理を中核業務と位置づけており、23年には豪資産管理大手を約1000億円で買収することを決めた。長島
巌社長は「より信託銀行らしいノウハウを生かせる業務に特化するため、融資の移管で余った資本を使って運用受託や資産管理会社を買収
している」と話す。
一方、三井住友THが33%出資する資産管理銀行、日本カストディ銀行ではガバナンスが課題だ。三菱UFJ信託が大株主の日本マスタート
ラスト信託銀行と双璧をなす資産管理専業銀行だが、元取締役の業務などを巡り問題が発覚。4月に第三者委員会が報告書を公表し、その
後日本カストディ銀は任意の指名・報酬委員会の設置などでガバナンスを立て直す方針を明らかにした。
報告書は日本カストディ銀について「金融市場の機能向上と家計金融資産の形成に果たす役割が極めて重大」と指摘する。三井住友THの
経営にとっても重要な銀行だ。
三井住友THは資産管理などの残高を31年3月期に23年3月期比で7割多い535兆円(日本カストディ銀は除く)にする目標を掲げる。米ステー
ト・ストリートや米バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)の管理資産は数十兆ドルだ。世界と戦うには資産管理のてこ入れが避けられない。
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2024/09/11 08:26 日経速報ニュース
市川雅浩・三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト 11日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、3万6000円
が下値メドとなりそうだ。10日の米市場で主要株価指数はまちまちだったが、外国為替市場での円高進行を受けて自動車株や機械株には
売りが出そうだ。国内の長期金利も低下しそうで銀行株にも逆風になるほか、米原油先物の下げもあり原油関連株の売りにつながりやすい。
午前10時からは11月の米大統領選に向け、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の両大統領候補によるテレビ討論会が
開かれるが、持ち高を大きく傾けるような展開にはなりにくいだろう。仮に法人減税を掲げるトランプ氏に勢いがあっても、対外的な強硬姿勢
が政治的な不透明感として意識されやすい。ハリス氏の場合でも法人増税への懸念がある。11月の大統領選まで票読みの動きが続くだろう。
焦点は、日本時間11日夜に発表される8月の米消費者物価指数(CPI)だ。食品とエネルギーを除くコア指数の前月比の上昇率は0.2%と、
7月と同程度と市場で予想されている。物価上昇が落ち着いていることが示されれば買い安心感につながりそうで、日米株にはプラスとなる。
2024/09/13 02:00 日経速報ニュース
新NISA(少額投資非課税制度)口座での個人の買い付け額をネット証券5社に聞いたところ、8月は国内個別株が7月比30%増えた。日本株
安に加え、円高で海外株や海外株投信の円換算での資産価値が目減りし日本株買いが膨らんだ。
日本経済新聞がネット証券5社(SBI、楽天、マネックス、auカブコム、松井)に個人顧客の8月の投資状況を聞き取りした。
8月の日本の個別株(上場投資信託=ETFなど含む)の買い付け額は前月比30%増の2835億円と5カ月ぶりの高水準だった。NISAは年初に
枠上限まで買う層がいるため、例年1月の買い付け額が最も多く、その後は減少する傾向がある。
8月に日本株買いが進んだ背景には、株価水準が急速に切り下がったことがある。米景気減速への警戒感や日銀の利上げに伴う円高進行
で日経平均株価は5日には過去最大の下げ幅を記録した。長期の資産形成に向けて積み立て投資する個人投資家にとっては押し目買いの
好機となった。
買い付け額の上位にはトヨタ自動車(122億円)や三菱UFJフィナンシャル・グループ(114億円)など大型銘柄が並んだ。7月以前と顔ぶれに
大きな変化はないが、買い付け額はトヨタやJTが7月比2.2倍、三菱UFJFGが3.0倍になった。
東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリストは「積み立てを前提にした『売らない買い』による買い支え
効果は大きく、8月の急落後の反発にはNISA勢が一定程度寄与している」と指摘する。
海外株の買い付け額は7月比34%減の286億円、投信は14%減の4855億円だった。円高が進むと海外株の円ベースでの資産価値は目減り
する。「相場の下落と円高で日本株の投資魅力が相対的に高まり、海外株から日本株に資金を振り向けた人が一定数いる可能性がある」
(鈴木氏)という。
投資経験値の差が急落時の投資行動の差につながったとの声もあがる。
松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「日本株は伝統的な逆張り姿勢が鮮明なベテラン投資家が多い」と指摘。一方で、
海外株は「2020年代以降に定着した銘柄が多く、株価下落や円高を経験したことがない投資家層が多い」と分析する。海外株の急落場面で
は「ろうばいし、買いを入れられなかった人も多いのではないか」とみる。
投資初心者を中心に人気を集めている世界の企業を幅広く組み入れた指数連動型投信「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の
買い付け額は8月に1533億円と前月から12%減った。
フィデリティ投信が9月10日に発表した「フィデリティ・ビジネスパーソン1万人アンケート2024年」によると、世代別の新NISAを通じた投資先で
日本の個別株に投資している人の割合が33%と最も高かったのは高齢層(53?64歳)だった。
若年層(28?36歳)の投資先として最も多いのは外国株投信(34%)で、日本個別株は27%だった。フィデリティ・インスティテュートの浦田春河
首席研究員は「変動幅が大きい相場は割安な価格で優良な株や投信に投資する機会だと前向きに捉える考え方が重要だ」と指摘する。
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2024/09/19 05:00 日経速報ニュース
日銀が金融政策を転換し、日本経済は「金利ある世界」に一歩踏み出した。金利上昇は金融機関経営に追い風になる半面、低金利に
慣れた経済には痛みも伴う。相場やビジネス環境はどう変わり、どこに商機を見いだそうとしているのか。10月2日に開く「金融ニッポン」
トップ・シンポジウムに登壇する5人のトップに聞く。初回は三井住友フィナンシャルグループ(FG)の中島達社長。
――金利ある世界に戻ることに伴う日本経済全体への影響は。
「日本経済がいよいよ再成長へ向けて動き出した。それがあっての金利の復活だ。企業のトップと会っても、みな自信を深めている。勝つ
ための投資を考えており、前向きな資金需要も大きくなっている」
「一方、日本企業は必ずしも金利上昇への耐性があるところばかりではない。中堅・中小企業に対しては一定程度、重荷になるリスクは
ある。住宅ローンも変動型金利で借りている個人はけっこう多い」
――負担がかかるセクターにはどのように取り組んでいきますか。
「金利がないことでサポートされてきた中小・零細企業が一定程度あるのは事実だ。新型コロナウイルス禍には企業倒産件数が減った。
金利がつき、政府支援が終わると企業倒産が増えるのはやむを得ない」
「一方で人手不足は深刻だ。従業員がより生産性高く働けるセクターにシフトするのは長い目で見れば日本経済にとって良いことだ。留意
すべきは、企業倒産が増えても、こうしたシフトが進むように従業員を保護して、新しい仕事に就けるようなリスキリングをサポートしていくこと
が金融機関としても必要だ」
――この先の相場をどう展望しますか。
「人手不足に伴う賃上げの動きは大企業から中小企業までかなり続くとみており、インフレ圧力は強まっていく。2%近い物価上昇が長い
期間見通せる前提で考えれば、日銀は政策金利を1%くらいまで上げる方向で考えているのではないかと思う。米国の利下げ転換も踏ま
えれば、円安リスクというのは大きくないのではないか」
――三井住友FGは2025年3月期の連結純利益が1兆円の大台に乗る見通しを公表しています。「金利のない世界」でどのような取り組
みをしてきたのでしょうか。
「三井住友FGが発足してからずっと金利のない世界で奮闘してきた。業務のウイングを拡大することで補ってきた。それは事業の多角化
であり海外ビジネスの拡大だ。コストベースの引き下げにも一生懸命取り組んできた。それがいまの好業績につながっている」
「最初は3メガバンクで3位だった時価総額も今はしっかり2位で、トップとの差も着実に詰めている。今期の純利益見通しは1兆円だが、
1兆円で満足しているわけにもいかないので、これをしっかり伸ばしていくのが私の使命だ」
――金融は国力と直結しており、アジアを含めて各国とも保守的な傾向が強まっています。グローバルでのビジネス環境をどうみていま
すか。
「この夏もアジアの国々をまわったが、必ず『もっと日本から投資してほしい』と言われた。日本企業に対する期待は非常に大きい。たしか
に各国が自国の利益優先に傾いている感じはあるが、歴史を振り返ると、国際協調で豊かになってきた。あまり心配していない」
――富裕層ビジネスの戦略は。
「貯蓄から投資への流れが出てきており、いよいよチャンスが来たなと思っている。気をつけているのは短期的な売買を勧めて手数料を
いただくようなやり方はダメだということ。収益水準は落ちても、長い目で着実に資産が増える提案をする。幸い、SMBCグループのファンド
ラップ残高は首位になった。海外の運用力強化が課題だ」
2024/09/19 14:21 日経速報ニュース
(14時20分、プライム、コード8306など)銀行株が高い。三菱UFJは前日比47円50銭(3.35%)高の1465円を付けた。米連邦準備理事会
(FRB)が18日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.5%の大幅利下げを決めた。ただ、今後の利下げペースは緩やかになる
との見方から、同日の米国債は下落(金利は上昇)した。9月に入り、銀行株は米利下げによる運用収益の悪化を意識した売りに押される
場面が目立っていたとあって、見直し買いが入っている。
三井住友FG(8316)、みずほFG(8411)も高い。外国為替市場でもFOMCを巡る思惑的なドル売りなどで一時1ドル=139円台まで円高
・ドル安が進行していた。市場では「過度な織り込みが進んでいただけに、米利下げ決定後に円売りと米長期金利上昇という教科書的な
動きとは逆の展開となった。銀行株も会合前から収益減を警戒した売りが出ており、きょうは買いやすいのだろう」(国内中堅証券)という
声があった。
2024/09/30 10:23 日経速報ニュース
30日前場中ごろの東京株式市場で日経平均株価は弱含み、前週末比1650円ほど安い3万8100円台後半で推移している。27日の取引終了後
自民党の新総裁に石破茂氏が選出された。石破氏は投資家や企業への課税強化に対して前向きな姿勢を示していたことから株式市場では経
済政策への警戒感が強く、目先の不透明感を嫌気した売りが引き続き優勢となっている。外国為替市場での円高・ドル安基調も輸出関連株の
売りを促している。日経平均の下げ幅は10時前に1800円を超える場面があった。
日経平均は前週(24?27日)に週間で2105円(5.58%)上昇していた。米経済のソフトランディング(軟着陸)観測が高まっていたほか、週末に
は積極財政の高市早苗氏の自民党総裁選での勝利が意識され円安・株高が急激に進んだため、その巻き戻しの動きが大きくなっている。テク
ニカル分析上で中期トレンドを示す75日移動平均線(3万8293円、27日時点)を割り込んだことも売りに拍車をかけた。ただ、心理的節目の3万
8000円近辺では押し目買いを入れる動きもある。
10時現在の東証プライムの売買代金は概算で1兆7211億円、売買高は7億9454万株だった。
ソフトバンクグループ(SBG)が一段安。東エレクやアドテスト、ファストリが下落した。一方、ニトリHDが高い。三井住友FGやみずほFGなど
銀行株の上昇が引き続き目立つ。
2024/09/30 15:06 日経速報ニュース
30日の東京株式市場で日経平均株価が大幅に反落し、節目の3万8000円を下回った。自民党の総裁選で石破茂氏が勝利し、高市早苗氏
の勝利を見込んだ「円安・株高トレード」が逆回転するとともに新政権の政策への不安が広がっている。日経平均は自民党総裁選後の初日の
取引としては1990年以降、最大の下落率となった。
30日の終値は前週末比1910円(4.8%)安の3万7919円だった。
大幅安について、市場では「高市トレード」の逆回転が指摘されている。前週の日経平均は週後半に大きく上昇し、26日と27日の2日間で
1959円(5%)上げた。金融緩和的な政策と「アベノミクス」の継承を掲げる高市氏の勝利を織り込んだ「円安・株高トレード」が水準を押し上げた
反動が強い。
さらに、石破新政権の政策への不透明感も漂っている。りそなアセットマネジメントの戸田浩司シニア・ファンド・マネージャーは「総裁選の結果
が出る前に思惑で上げた分がはがれ落ちた。政策の方向性が十分には見えていない石破氏への警戒感もある」と話す。
日本時間28日早朝の大阪取引所の夜間取引で日経平均先物は急落し、12月物は前日の清算値に比べ2410円安い3万7440円で終えた。
この水準に比べると30日午前の日経平均は踏みとどまっている。背景の一つとされるのが石破氏の「軌道修正」だ。
石破氏は27日のテレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」で経済対策などについて「必要であれば財政出動する。当然のことだ」と主
張。金融所得課税の強化について「少額投資非課税制度(NISA)に代表される貯蓄から投資への流れは加速しなければならない」と表明した。
和キャピタルの村松一之運用本部部長は「課税強化を警戒したマーケットに配慮した格好で、投資家の過度な不安はいくぶん和らいだ」と指
摘する。その上で、「報道される党幹部の顔ぶれをみると緊縮財政の意向がうかがえる。いまは爪を隠しているだけかもしれない」となお警戒する。
石破相場は多難な船出となった。自民党総裁選後の初日の取引を振り返ると、1990年以降では、2003年の小泉純一郎氏再選の際の4.24%
安(終値ベース)が最大だ。30日午前の下落率4.8%はこれを上回る。
2003年の当時は主要7カ国(G7)会議が為替介入をけん制したことによる円高進行が日経平均を下押しした。下落率2位は1999年の小渕恵三
氏の総裁再選時の3.39%安で、日銀が量的緩和を見送ったことで円高が進んだ。石破氏勝利で円高・株安となった今回を含めて、3例共通して
為替相場の変動が打撃になっていることがわかる。
石破氏は週末のテレビ番組などで「金融緩和を継続する」と発言しており円高進行への市場の不安感を一定程度払拭した。ただ、市場では
追加利上げを意識する動きもある。それを示したのが30日の銀行株の上昇だ。
三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループを中心に銀行株はこの日軒並み逆行高
となった。日銀の利上げは銀行にとって利ざやの拡大につながる。為替相場も円高圧力が強く午前は1ドル=142円台で推移していたが、午後
に入り141円台に上昇した。
市場には冷静な声も多い。足元で世界に目を移すと、米国は利下げ転換に動き、中国は景気のてこ入れに金融緩和策に動いた。和キャピタル
の村松氏は「米中が世界景気を下支えするため、本来は株式市場が崩れる環境ではない」と話す。
「日本の脱デフレの方向性は現時点で大きく変わったわけではない。また、解散・総選挙も近く視野にあり、過去の経験則のように株価が上昇
する可能性がある。今日の下げは短期的な買い場を投資家に提供した」(大和証券の坪井裕豪日米株チーフストラテジスト)との声もある。
りそなアセットの戸田氏は「石破氏が短期的に実施すべきことと、中長期で掲げる理想が混在しており、いまはすべてを織り込むことはでき
ない。投資家は今後の行方をじっくり見極めることになる」と話す。
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・10月株価は荒れやすい 米中「景気重視」、市場「政策注視」
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2024/10/01 日本経済新聞 朝刊
三井住友フィナンシャルグループ(FG)傘下でインドネシアで銀行事業を手掛けるバンクBTPNは10月にも行名を「バンクSMBCインドネシア」
に変更する。前身の「年金貯蓄銀行(BTPN)」に由来する名前からブランドイメージを刷新する狙いがある。
現地の金融当局の認可を前提に行名を変更する。ブランドの一元化にあわせて三井住友銀と連携を強める。出資先の商業銀行が「SMBC」の
ブランドを冠するのは初めてとなる。
2024/10/02 日本経済新聞 朝刊
「マイナス金利時代でさえ最高益を達成しているという安心感があり、今後も株主還元を積極的にしてくれるはず」。都内の女性翻訳家は9月
三井住友フィナンシャルグループ株を2回にわたり計200株買い増した。累進配当の導入に加え大規模な自社株買いへの積極姿勢が決め手
だった。
自社株買いは株高を導く要因の一つになった。JPモルガン証券は2024年3月期に約10兆円の自社株買いが東証株価指数(TOPIX)構成
企業の自己資本利益率(ROE)を0・2ポイント押し上げたと試算する。資本効率改善への期待が海外投資家の背中を押した。
株高効果には一定の持続力がある。野村証券が9月末までの1年間に自社株買いを発表したTOPIX500構成企業を分析したところ、発表
20日後もTOPIXの値動きを1・3ポイント上回った。
都内の男性(50)は9月、サンケン電気株を新規に2500株購入した。同社は7月、子会社株売却で得た資金の一部を自社株買いにあてる
方針を示しており、株価上昇を先回りする狙いだ。
自社株買いへの注目はプロも同じ。大和アセットマネジメントで「日本企業PBR向上ファンド」を運用する須田浩仁シニア・ファンドマネージャー
は「自社株買いを継続的に実施している企業は(将来の成長への)信頼度が高い」と話す。キャッシュを生み出し続ける力の証左になるためだ。
中長期的に自己資本利益率(ROE)を押し上げるには、還元だけでなく成長投資による「稼ぐ力」の向上も欠かせない。
米運用大手のファースト・イーグル・インベストメンツなど海外機関投資家が大株主に名を連ねる厨房機器大手のホシザキは5月、08年の上場
後初となる100億円の自社株買いを発表した。羅針盤となったのは資本効率改善に向け26年12月期までの5カ年で株主還元に約650億円、
成長投資に約1750億円を投じる中期計画だ。国内外の販売好調を背景に、23年末時点の現預金は2500億円強と総資産の55%まで積み
上がっていた。
自社株買い発表の翌営業日に株価は一時11%高となり分割考慮後の最高値を付けたが足元では最高値より2割安い。小林靖浩社長は「
一時的な株価上昇のための自社株買いは効果がない。成長投資を第一としつつ、株価を意識しながら自社株買いを機動的に実施していくこと
が必要だ」と語る。
統合報告書で「資本コストは6~7%」としており、前期のROEは10・6%とこれを上回った。今後も資本コストを上回るROEを持続的に達成
するため、新製品開発や海外での増産に加えM&A(合併・買収)にも積極的に取り組む方針だ。
日本企業の株主還元にはまだ拡大余地がある。
QUICK・ファクトセットによると、純利益から自社株買いと配当にどれだけ振り向けるかを示す「総還元性向」は直近決算期の日本企業が50%
だったのに対し、米S&P500種株価指数構成企業は81%だった。
「日本企業は10年後を見据えた投資ができておらず、安易に配当や自社株買いに流れている」(一橋大学大学院の藤田勉客員教授)との
指摘もある。市場は積極的な株主還元だけでなく、成長戦略との両輪を求めている。
2024/10/04 04:56 日経速報ニュース
【シリコンバレー=山田遼太郎】米新興企業オープンAIは3日、米JPモルガン・チェースや三井住友銀行など9行と40億ドル(約5900億円)の
借入枠を設ける契約を結んだと発表した。2日に実質的な増資でソフトバンクグループ(SBG)などから66億ドルの資金調達を発表した。負債も
使って人工知能(AI)開発への投資を急ぐ。
一定期間、限度額内で繰り返し借り入れできる「リボルビング・クレジット・ファシリティ」の仕組みを使う。ゴールドマン・サックスやシティグル
ープ、モルガン・スタンレーといった米金融大手や、英HSBC、スイスのUBSも融資する銀行団に参加した。
オープンAIのサラ・フライア最高財務責任者(CFO)は声明で「借入枠は当社のバランスシートを強化し、成長機会をつかむための柔軟性を提
供する」と述べた。銀行団の多くはオープンAIの顧客でもあるという。
同社は対話型AIの「Chat(チャット)GPT」を手がけ、生成AIの開発競争で先行する。AIの高度な計算にはコンピューターを大量に使うため、
クラウドサービスの利用料が膨らむ。クラウドの利用料金が開発費の多くを占め、年数十億ドルの赤字を計上している。
投資資金を確保するため、ベンチャーキャピタル(VC)の米スライブ・キャピタルや米マイクロソフト、米半導体大手エヌビディアなどから66億ドル
を調達したと2日に発表した。
オープンAIは資金調達の条件を明らかにしていないが、新株予約権付社債(転換社債=CB)の仕組みを使ったとみられている。
同社は非営利組織(NPO)が傘下の営利企業を支配する特殊な組織構造だ。これまで、マイクロソフトなどの投資家はオープンAIから利益の
分配を得る権利を持つものの、オープンAIの株式を保有しないと説明してきた。投資家が得るリターンに上限を設け、超過分はNPOに寄付する
仕組みとしていた。
オープンAIは営利企業を主体とする体制への変更を検討している。再編が完了すると、今回の資金調達ラウンドの投資家はオープンAIの株式
を得るもようだ。
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2024/10/07 09:19 日経速報ニュース
7日朝方の国内債券市場で、長期金利が上昇(債券価格が下落)している。指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.030%高い
0.910%と9月3日以来およそ1カ月ぶりの高水準をつけた。米雇用情勢が市場の想定する以上に堅調だとの見方から米連邦準備理事会(
FRB)の大幅利下げ観測が後退。米金利の先高観が強まり、国内の長期金利にも上昇圧力となっている。
4日発表された9月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が前月比25万4000人増と市場予想を大きく上回った。失業率は4.1%と8月
(4.2%)から低下し、平均時給の伸びも市場予想を超え、米景気がソフトランディング(軟着陸)するとの期待感が高まった。4日には米長期金
利の指標となる米10年物国債利回りが一時3.98%と2カ月ぶりの高水準をつけ、国内債の先物の売りにつながった。
外国為替市場で円安・ドル高が進んでいるのも国内債相場の重荷となっている。7日早朝に円相場は一時1ドル=149円台前半と約1カ月
半ぶりの安値をつけた。円安進行は輸入物価の上昇を通じ国内のインフレ圧力となるため、日銀の追加利上げを後押しするとの見方が改め
て広がり、国内債の売りを促している。
債券先物相場は大幅続落した。中心限月の12月物は前週末比35銭安の144円33銭で寄り付いた。その後は144円24銭まで下げ幅を広げ
る場面があった。
短期金融市場では無担保コール翌日物金利(TONA)先物が下落している。大阪取引所では中心限月となる12月物が前週末の清算値と
比べ0.0175安い99.6725をつけた。
2024/10/07 13:06 日経速報ニュース
(13時5分、プライム、コード8306)三菱UFJが続伸している。前週末比70円(4.72%)高の1550円まで上げた。9月4日以来およそ1カ月ぶり
高値となる。4日発表の9月の米雇用統計をきっかけに米連邦準備理事会(FRB)の大幅利下げ観測が後退し、米長期金利が一時は3.98%
と8月上旬以来、約2カ月ぶりの高水準を付けた。国内の長期金利も上昇しており、銀行株に利ざやや運用収益の改善を期待した買いが入っ
た。第一生命HD(8750)など保険株も高い。
三菱UFJは7月5日に1849円50銭で年初来高値を付けてから伸び悩んでいた。日銀による早期の追加利上げの観測が後退したことが重荷
となっている。市場では銀行株について「日銀の追加利上げの観測が強まれば、見直し買いの機運がさらに高まってくる」(ニッセイ基礎研究
所の前山裕亮主任研究員)との声がある。
2024/10/08 日本経済新聞 朝刊
7日の東京株式市場で銀行株などの金融株が軒並み高となった。日経平均株価は続伸し、前週末の4日に比べて上げ幅は一時900円を
上回った。前週末発表の9月の米雇用統計が堅調な内容となり、「世界景気の敏感株」とされる日本株の再評価につながった。なかでも米
金利高を受けて、日本でも金利高が業績改善期待につながる金融株の値上がりが目立った。
9月の米雇用統計は、雇用者数の伸びや失業率、時給の伸びとそろって好調さを示した。これを受けて前週末の米国市場では主要株価指数
や金利が上昇し、為替市場では円安・ドル高が進んだ。週明け7日の東京株式市場では、輸出関連やインバウンド(訪日外国人)関連に買い
が入った。
もっとも、この日の主役は金融株だった。業種別日経平均株価で「銀行」は4%高、「保険」は3%高と全36業種のうち1位と2位に並んだ。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは「米景気の底堅さを確認し、日銀による年内の利上げに向けて一歩前進した」と
指摘する。特に銀行にとって金利上昇は融資の利ざや改善につながるため、業績期待につながる。
金融株のなかでも地銀株の上昇が目を引いた。ほくほくフィナンシャルグループとちゅうぎんフィナンシャルグループはともに一時7%高となり、
終値でも5%以上の上昇率となった。
アイザワ証券の三井郁男投資顧問部ファンドマネージャーは「地銀各社が地方企業の再生に力を入れていくと発信してきた中で、石破茂首相
の地方創生に取り組むとの表明がプラス効果になった。バリュエーション(投資尺度)も割安で循環物色の対象となりやすい」と指摘する。
もっとも、日経平均は7日に3万9000円台を回復したが、取引終了にかけて上げ幅を狭める展開となった。8月急落後の戻り高値である3万9
829円(9月27日)を上回るか市場には懐疑的な声も多い。
農林中金全共連アセットマネジメントの中尾真也ファンドマネージャーは「世界景気は回復を探ると考えつつも、足元では『全力リスクオン』に
なりきれない」と明かす。
中尾氏が警戒するのが、中間決算発表を控える個別株の動向だ。前週末に2025年2月期の予想営業利益を下方修正した安川電機は一時
2%安に沈んだ。中国需要の回復が鈍い。3月期決算企業の中間決算に先駆けて決算を発表する安川電は各国の設備投資動向や景況感を
占うとして注目度が高い。
中尾氏は、安川電の決算について「受注は期待に届かない内容で、世界景気の本格回復を織り込むには不足」と評し「下期回復を前提に
業績予想を立てている企業が多いなか先行き不透明感は強い」と話す。
7日に大幅高となった金融株だが、日経平均の上値の重さが今後に一段と目立ってくるようだと、その流れにつられて利益確定などの売りに
押される展開も想定される。
2024/10/16 16:51 日経速報ニュース
日本取引所グループ(JPX、8697)のJPX総研は16日、東証業種別株価指数「銀行業」構成銘柄のうち、配当実績の高い15銘柄で構成
する「TOPIX銀行業高配当指数」を12月16日から算出・公表すると発表した。12月13日を基準日とし、基準値は1000とする。銘柄の定期
入替は、年1回で、7月最終営業日に実施する。
構成銘柄には、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)や三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほフィナンシャルグループ
(8411)などメガバンクに加え、ゆうちょ銀行(7182)やセブン銀行(8410)などが組み入れられる予定だ。
2024/10/31 20:30 日経速報ニュース
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は2024年4?9月期の連結決算で、過去に顧客が払いすぎた利息を返す「過払い金返還」の費用を
一括計上する。費用は1000億円規模で調整している。06年以降、消費者金融各社の業績を圧迫してきた「負の遺産」の最終処理と位置づ
け、デジタル分野に集中投資する方針だ。
消費者金融「プロミス」を運営するSMBCコンシューマーファイナンス(CF)の利息返還引当金を計上する。これまでに計上した引当金とあわ
せ24年3月期の過払い金返還に支出した額の約9年分となる。過払い金の返還請求は年々減り、24年3月期は前の期に比べて2割縮小した。
過払い金の時効は取引完了時点から数える。SMBCCFは07年に貸出金利を下げているものの、借り換えて取引が完了していない顧客も
残っている。その分の請求が一定程度続いており、費用計上が必要になっている。
三井住友FGは11月14日に24年4?9月期連結決算を公表する。同社は4?6月期の時点で純利益が前年同期比で約5割増の3713億円と
なり、1兆600億円の通期予想に対して業績が堅調に推移している。4?9月期でも政策保有株式の売却益や国内の金利上昇で預貸金収益
の拡大が下支えし、業績の上振れ分で引当金の計上費用は吸収できる公算が大きい。
過払い金は顧客が消費者金融業者に払い過ぎた利息を指す。かつて各社は旧出資法の上限金利(年29.2%)の範囲で利息制限法の上限
金利(年15?20%)を超えた金利の貸し付けを実行してきた。利息制限法を超える金利での貸し付けを事実上認めない判断を下した06年1月
の最高裁判決を境に、金利の返還を求める訴訟が急増した。
過去にはアコム、アイフルを含む大手3社で年2000億?3000億円の返還金の支払いがあった。24年3月期でも支払額は合計で500億円強
に達する。日本貸金業協会によると、業界全体の返還額は8月で月50億円ほど。武富士が経営破綻した10年と比較すると10分の1ほどの規
模だ。
債務者の請求が支払いの起点となる過払い金の請求は、消費者金融大手の経営上の不安要因になってきた。法律事務所が過払い金請求
を呼びかけるテレビCMを放映するなどの外部要因で業績が圧迫されるためだ。近年ではアコムが19年3月期決算で過払い金請求への引き当
てを主因に、業績予想を200億円規模で下方修正した経緯がある。
三井住友FGは引当金の計上を機に、消費者金融事業でデジタルを軸に積極的な投資へ転換したい考えだ。生成AI(人工知能)を顧客対応
で利用できないか探るほか、将来的に総合金融サービス「オリーブ」との連携も視野に入れる。過払い金の返還が数年単位で費用がかかる
デジタル投資をためらわせる要素になっていた。
SMBCCFは10月に三井住友FGのノンバンク事業の再編で持ち株会社から三井住友カードの傘下に移し、両社の事業を一体的に運営できる
ようにした。SMBCCFは24年3月期で三井住友FGのリテール事業の業務純益の4割を占め、コロナ禍以降の「リベンジ消費」に伴う新規顧客の
増加もあって市場が拡大している。
ただ、LINEクレジットの「LINEポケットマネー」が24年に累計貸付額が2000億円を超えるなど、個人向け金融サービスはスマートフォンで顧客
をつかむIT(情報技術)など異業種の攻勢が激しい。消費者金融はなおテレビCMなど旧来型の顧客獲得手法に依存している面がある。スマホ
時代にあわせた事業モデルの確立が急務となっている。
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