丁半博打のランダム性について語ろうアーカイブ
1.
Trader@Live!
NjqSs
乱数の偏りの傾向を俯瞰して攻略する
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62.
Trader@Live!
XLtkr
客のほとんどは期待値のマイナス以上に負けているからである。これはあくまで科学的なマクロな話だが、客の大多数が期待値以上に負けたからと言って、長期的かつ平均的に胴元が与えられたプラスの期待値以上に儲けるのはイカサマをしない限り、確率統計的に不可能だからである
63.
Trader@Live!
XLtkr
そして大手のカジノチェーン直営のカジノ(ジャンケットは除く)にイカサマは無いというのがぼくの結論だから、期待値以上に負けてくれるお客様のおかげで、誰か別のギャンブラーが潤うのである。しかし、多くのカジノ客が時間や資金や技倆が高まれば、ゲームのルールは厳しくなってぼくも生き残れなくなるに相違ない
64.
Trader@Live!
XLtkr
だが、まずは博だ。マーチンゲール法という一点突破法のみで戦っていた博は、2年ほどでぴたりとスターシドニーから姿を消した。博と再開したのはそれから10年後のことだった
65.
Trader@Live!
XLtkr
ぼくがエンデバールームのあいかわらず末席でミニバカラをしていた時だ。痩せ細った初老の白髭の見知らぬ男に声を掛けられた。顔をよく見てぼくはあっと声を上げた。博だった。小太りだったかつての面影はまったくなかった
66.
Trader@Live!
XLtkr
「ましかして、博さんですか」と尋ねると、「そうだよ」と博はカラカラと笑った。だが、その目は死んだ魚のようだった。ガリガリに痩せた姿は、まるで高齢のホームレスが高級なスーツを来たかのようだった
67.
Trader@Live!
XLtkr
「武者修行の旅でしたよ」と博。「10年もですか」とぼく。「その土地に住み着いたこともあるし、色々あったよ」博は50代後半だった。ぼくたちはエンデバールームのバーで再開の杯をかわした。博は若い女を同伴していた。カジノに入るにはIDの提示が求められるから未成年者ではないはずだが、女子高校生と言われても疑わないほどの美少女だった
68.
Trader@Live!
XLtkr
マイだ、と博はぼくに紹介した。どういう漢字で書くのかは知らない。「ずいぶん負けてね、ランドウィックの家を売ったんだ。500万ドルで売れたよ。その金で世界中のカジノを回りましたよ。パースには2年も住んだな」博はシーヴァスのストレートを一気に喉奥に落としながら言った。そして咳き込む。悪い咳だった。
69.
Trader@Live!
XLtkr
「稼げた時もあったけど最後はズルズル沈んじゃうんだな」と博。「まだマーチンゲールやってるの?」と聞くと、あれはもうやってないと言い、暫く黙りこんだ。賭人ならいずれはマーチンゲールを卒業する。しかし、博はまだメソッドに未練があるように見えた
70.
Trader@Live!
XLtkr
「ベーシックストラテジー通りに打てば期待値は99.5%ぐらいになるからね。あとはニューヨーク法とか噛ませれば凌げる範囲内だ」あとは聞かなくても分かった。カジノゲームでシステムベットを信じた者は必ず負ける。胴元が必ず勝つてる科学的な設定に対して、科学的にアプローチしても勝てるはずがない
71.
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XLtkr
「カードカウンティングもやってみたが駄目だったな。途中でカウントを間違えてしまう。ただの博打だよ。ベガスで金が尽きて野垂れ死にしかけた時に、親父が死んで遺産が入った。ラッキーだった。神はまだ自分を見捨ててなかったと思ったよ」博は死んだ鯖の眼でそう言った。親が死んでラッキーと言う男を倫理的に裁く気はない。だが、これだけは彼に訊きたかった。「博さん、もしかしてギャンブル依存症なのか?」
72.
Trader@Live!
69VL6
その時、美少女のマイが初めて口を挟んだ。「博さんは依存症じゃありませんよ」ぼくは博に言った。「勝ってるの?」「オーストラリアに戻ってきて成績は悪くない。今メルボルンに住んでいる」
73.
Trader@Live!
69VL6
博の話はほとんと事実だろう。しかし、調子がいいという話には疑問符を付けざる得なかった。今の博にはマーチンゲールでしぶとく凌いでいた頃のオーラは微塵もない。高級服で身を固め、若い女を引き連れてはいても、長年染み付いた負け犬の哀愁は隠せるものではなかった。博はなぜ、ここまで負け落ちているのか。カジノで富を得るという本来の目的を忘れ、ゲームをすることが目的に変わってしまったかのようにぼくには思えた
74.
Trader@Live!
69VL6
その夜、平場で牌九が開かれたのでぼくも参加した。テーブルリミットが低いのでぼくも親をやることにした。前の親が荘家崩れでチェンジとなるタイミングの勝負で運良く大き目の勝ちを得たからだ。親を取ってからも運は続き、ローハンドがゴングの手役でハイハンドがペアとなるゴングボーが決まり、散家のベットを総ざらいした所で親を降りた。2万3千ドル。久々の大きな勝ちだった
75.
Trader@Live!
69VL6
キャッシャーに換金にいく途中のテーブルで博がブラックジャックを打っていた。テーブルリミットは100ドルミニマム、1万ドルマキシマムだった。バカラならそれでもいいが、ブラックジャックでは博やぼく程度のギャンブラーでは100ドルミニマムはキツい。テーブルには博と美少女のマイだけ。予定外の勝ちで気が緩んでいたのか、ぼくも同じテーブルに座ってしまった
76.
Trader@Live!
69VL6
「どうなの?」ぼくが博に話しかけると、「勝ってますよ」とマイが代わりに答えた。「バイインはいくら?」「3万ドルです」また博の代わりにマイが答えた。どうやら博はゲーム中に話かけられるのを嫌っているようだった。これはぼくが知らなかった博の新しい習性だった
77.
Trader@Live!
69VL6
10年も経てば人間は変わる。ギャンブルのスタイルも当然変わるのだろう。それとも博はカウンティングをしていたのか。それなら集中が必要だ。1枚のカードも見逃せない。博の席前にはざっと7万5千ドルのチップが積まれていた。4 万ドル以上の勝利だ
78.
Trader@Live!
69VL6
それでも博は勝負を止めない。昔の博は負け逃げは出来なかったが勝ち逃げは出来る男だった。だが今は勝ち逃げも出来なくなっていた。理由は分かる。今までの負けが大きすぎて、少しぐらいの勝ちでは満足出来ないのだ。カジノでこういう心理状態になったら、もう駄目なのだった
79.
Trader@Live!
SIm2u
過去の大きな負債を忘れることは難しい。でも、いまだ退場させられることなくカジノ通いできるのは幸運なことなのだ。これを納得して気持ちをリセットして1から始める。過去のプレッシャーから自由になることで、またいいゲームができる
80.
Trader@Live!
SIm2u
これはカジノゲームの根幹に関わることだ。慎重に積み上げた利益を一瞬で失った時、賭人は大きなベットで一気に取り戻そうとして傷を深める
81.
Trader@Live!
69VL6
負けを一気に取り戻そうとしてはならない。一気に取り戻せることは、まずないとギャンブラーは心得なければならない。そうでなければ、長丁場のゲームでギャンブラーは生き残れない。サステナブルに勝つためには、負けた時にどのように処理していくか、受け身の対応が大切な生き残り術となる
82.
Trader@Live!
69VL6
大きく負けた時に取り戻しベットを掛けたい衝動は必ず起きるから、負けた時はショートセッションを切る。小刻みに、勝ちを積み重ねていくのだ。辛抱強く、沈みを克服していく。ギャンブラーにとって一手の大きな負けは宿命だから、忍耐で乗り越えるしかない。博打は我慢なのだ
83.
Trader@Live!
69VL6
少しずつ傷を癒やしながら、瘡蓋が乾くのを待つ。リベンジの勝負は満身創痍でやっても勝てない。傷口にピンク色の新しい皮膚が再生してからだ
84.
Trader@Live!
69VL6
「入ってもいいですか」とぼくは5000ドルチップをブラックジャックテーブルに置いた。「カラーチェンジ?」とディーラーが訊き、ぼくは頷いた。「駄目だ!次のシューまで待ってくれ」博が初めて口をきいた。博の額に浮いた脂が天井の照明を反射してキラリと光った
85.
Trader@Live!
ESlSf
博は勝負ハンドのようだった。BJテーブルで新しいボックスが開かれれば、必然的にカードの順番が変わり、博への配カードも変わる。ボックスが増えようが減ろうが確率統計的には何も変わらないが、ツキの波が変わるのを恐れるのはギャンブラーの心理だ
86.
Trader@Live!
ESlSf
ぼくは博が負けた時に恨まれたくなかったので駒を引いた。博が5000ドルのチップをボックスに置く。やはり勝負掛かりだった。ディーラーはソフトハンドからの20、16でステイした博は負けた。博の5枚の千ドルチップはわずか数秒の勝負でディーラーのフロートに納められた
87.
Trader@Live!
ESlSf
博のチップを握る手が震えている。勝負卓で恐れを抱いたら退くべきだ。これはカジノゲームのセオリーだ。負の波が来ていると直感で感じたら、取り返しベットなど掛けてはならない。一手の勝負は独立事象だから確かに運だ。確率統計的には同じ確率でどちらにも転ぶ。しかし、連敗や連勝という賭人の負けツラや勝ちツラという勝敗結果の偏りもまた、確率的に起こりうる。勝負勘が敗北を予感したら、駒を引くべきなのだ
88.
Trader@Live!
ESlSf
これは短期的にどうこうの話ではなく、長期的にそうでないと生き残るのが困難になることをぼくは体験上しっていたからだ
89.
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ESlSf
「退けよ」とぼく。「いや退けない」と博。1万ドルのチップをボックスに置く。ダブルアップだ。ぼくは首を振った。そのハンドも博はあっさり落とし1万ドルがディーラーのフロートに沈められた
90.
Trader@Live!
ESlSf
「入ってくれないか」と博。「嫌だよ」とぼく。流れが悪くなっている。新しいボックスを開いて流れを変えたいという気持ちは察するが・・・。勝てると信じたハンドだって落とすのだから、負けるだろうと思う勝負で勝てっこない
91.
Trader@Live!
ESlSf
ぼくが拒絶して博はしばらく手を止めて考えていた。そして自分で新しいボックスを開いた。ボックスにそれぞれ1万ドルを乗せて2万ドル勝負。確かにマーチンゲールは止めたという。でも、これは
92.
Trader@Live!
ESlSf
博の最新の手札はボックス8、ボックス10でディーラーは5。最初のボックスの2枚目に8のカードが配られてスプリット。右側の手には3が付き11でダブルダウン。そこに7で18。左側は2が起きて、ここもダブルダウン
93.
Trader@Live!
ESlSf
「ピクチャー!」と博は叫んだ
94.
Trader@Live!
C5qFw
ディーラーが配ったのはピクチャに1足りない9でだが19のハードハンドだ。2番目のボックスは10が来てこちらも20。最初のボックスはスプリットでダブルダウンだから4万ドルで2番目のボックスは1万ドルの合計5万ドルの大勝負となった
95.
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JXR6D
博の展開は圧倒的に有利だった。ディーラーはアップカードは5のバストハンドだ。ここから21を絞り出さないとディーラーは勝てない。熱い勝負になりギャラリーが増えていた。美女のディーラーがハウスサイドの2枚目を引く。5が出てギャラリーから吐息が漏れた
96.
Trader@Live!
JXR6D
痩せこけた初老の男は息を詰めている。顔が赤黒く膨れ上がる。美人ディーラーがゆっくりと3枚目のカードを引く。マイが悲鳴を上げた。ディーラーの細い長い指の先でハートのクイーンが微笑んでいた
97.
Trader@Live!
JXR6D
博がエンデバールームの天井を仰ぐ。額に浮いた脂が、照明を反射してどす黒く光る。こめかみに浮かんだ血管は速い脈動を伝える。だが、博は大袈裟な失意を示さなかった。これが10年間の武者修行の成果なのだろうか
98.
Trader@Live!
JXR6D
1番目のボックスに置かれた博の4万ドルのチップがディーラーのフロートに収められた。一方、2番目のボックスは20だからプッシュで1万ドルは博に返金された。4万ドルを失ったが3万ドルから初めて7万5千ドルまで増やした博はまだ5千ドル勝っていた。勝ち逃げは難しい。負け逃げはもっと難しい。だが、これが出来るか出来ないかで、カジノで生き残れるかどうかが決まるというのが、ぼくの見立てだ
99.
Trader@Live!
JXR6D
博は3万ドルからではなく、7万5千ドルから手持ちの3万5千ドルを見ていた。5千ドルの勝ちではなく4万ドルの負け。それは錯覚なんだ、博!ぼくは何も言わず、博の目を見た。本当に10年武者修行したのならそれがわかるはずだ!
100.
Trader@Live!
JXR6D
勝ち逃げだけが博打の極意。5000ドルの勝利で十分だ。ゲームして5000ドルが手に入る仕事がどこにあるだろう
101.
Trader@Live!
JXR6D
ここで席を立てたなら、博はそれなりのギャンブラーだった。だが博は打ち続けた。ぼくは席を立った。知人の話では博は3日間打ち続けたそうだ。無惨な博打を打っていたという。そして持ち込んだ25万ドルをすべてブラックジャックテーブルで溶かし切ると、気化したアルコールのように博は消えた。博が去ったシドニーに、マイという名の19才の美少女がひとり残された
102.
Trader@Live!
uYoiW
博が消えてもマイはスターシドニーのエンデバールームに出入りしていた。マイはVIPカードを持たないから、エンデバーに上がるエレベーターの前で待ち伏せして知り合いの誰かのゲストとしてVIPルームに入り込む。ぼくも4、5回マイをエンデバールームに入れてやった
103.
Trader@Live!
uYoiW
マイは博の連れだったからブラックジャックプレイヤーだった。ぼくはブラックジャックは平素はやらないから、ミホとはテーブルで同席することはなかった。それでも、ぼくがソファで休憩していたりするとマイは時々、ぼくの隣に座りにきた。日本語が話せるのが嬉しかったのかもしれない
104.
Trader@Live!
uYoiW
マイがぼくにした話が事実かどうかは知らないが、マイはS女子大学1年でワーホリのビザを取得してオーストラリアに来た。働くことはなく、メルボルンのカジノで日本から持ってきた金を使い果たし、パパ活をしている時に博と出会ったという。話の辻褄は合う
105.
Trader@Live!
uYoiW
マイは博が消えてからは知り合いのギャンブラーの側に付いて、客が1万ドルなどの大きなベットを当てた時に100ドルチップの小遣いを貰っていた。けれどマイはその金は賭けなかった。「そんな小さなバンクロールでやっても勝てないから」とマイは言った。ツーリストが勝てないのはバンクロールが小さいからたが、マイは一応はその仕組みは理解していた
106.
Trader@Live!
uYoiW
季節は8月末、凌ぎやすいシドニーの冬も終わり街は色とりどりの花に覆われていた。ぼくはエンデバールームのラウンジでマイから、1万ドルたまったからブラックジャックで勝負したい。その時はコーチしてほしいと言われた。ぼくはブラックジャックが苦手である
107.
Trader@Live!
u04Pl
「ぼくはBJは下手だからあまり頼りにはなりませんよ」と言うと、「大丈夫、長期戦にするつもりはないから」とマイは言った。マイは100ドルミニマム、1万ドルマキシマムのテーブルを選んだ。レートが高く1万ドルのバンクロールでは厳しいテーブルだった。一撃離脱戦法か、とぼくは思った
108.
Trader@Live!
u04Pl
「勝負ハンドでオールインワンするつもりですか?」とぼく。「だらだらやっても勝てないと学んだから」とマイは言った。確かにオールインによる一撃離脱戦法なら、ハウスからコミッションを抜かれて沈むことはない。カジノゲーム初心者にはこれしかない。しかし・・・。丁半博打の神はチップの上げ下げという細部に宿るのだ。大数の法則に逆らうことではない
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Trader@Live!
u04Pl
シャッフルが終わった8デックのカードを、マイが黒いプラスチックのカードでカットした。ハンサムなディーラーがバーニングカードをシュー収めると「グッドラック」とマイに微笑んだ。青ざめた顔で、マイは頷いた。勝負の開始だった
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Trader@Live!
u04Pl
初手にマイはミニマムベット100ドルをボックスに乗せた。ピクチャー2枚、ディーラーは18でマイの勝利。ミニマムベットで6連勝したマイは唇を噛む。そう、この6連勝のどこかでオールインしていたら勝てていたからだ。7手目はマイが18、ディーラーがブラックジャックで100ドルが没収されマイは安堵の吐息をつく。マイが決めたいのはオールインの一手のみなのだ
111.
Trader@Live!
u04Pl
出だしの連勝が切れると、往って来いの展開が続き、それでもマイはベットアップで小玉を取っていたから着実に席前のチップを増やしていた。シューも終盤に差し掛かり、勝負は次に持ち越しかと思われた時、3連続のプッシュがあった。ディーラーが拳でテーブルを2度叩き、プッシュの合図をした時、マイは「行きます」とぼくに低いかすれ声で言った。ミニスカートから飛び出した膝が震えていた