徒然なるままにコピペ日記 第8章最終更新 2024/06/19 06:051.名無しさんmgfQOaEw前スレ徒然なるままにコピペ日記 第7章 https://egg.5ch.net/test/read.cgi/cafe60/1538643191/出典 https://egg.5ch.net/test/read.cgi/cafe60/16021391422020/10/08 15:39:02303コメント欄へ移動すべて|最新の50件2.名無しさん5k8xe「夏枯れ」の目玉は中小型株――先行きの安定感を評価(スクランブル)2023/07/27 日本経済新聞 朝刊 株式相場の方向感が乏しいなかで、投資家の目線が中小型株に移りはじめた。にわかに注目されるのが割安株としては利益成長率が高いものの、注目度が低いため埋もれている銘柄、いわば「ゆる成長株」だ。春先からの株高を主導した海外勢が休暇に入り「夏枯れ相場」の様相が強まるなか、中小型株シフトは当分の間続きそうだ。 26日の東京株式市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて売買を手控えるムードが広がるなかで、好決算を発表した銘柄の上昇が目立った。前日の取引終了後に23年1~6月期が大幅増益になったと発表した大塚ホールディングスは、一時前日比6%高まで買われた。 この日は中小型株の一角が相次ぎ年初来高値をつけた。代表例は16年ぶりの高値をつけたタムロンだ。14日付でSMBC日興証券が新規に調査を開始したことが手がかりとなり、株価は14日比で1割高となっている。高い価格決定力があるカメラ向け交換用レンズで得た収益を株主還元や成長事業への投資に活用することが期待されている。 「タムロンはブランド力を確立していながら必需品ではなく、成長イメージも描きにくい点から割安だった」。三井住友DSアセットマネジメントの苦瓜達郎チーフファンドマネージャーはこう話す。運用する「ニッポン中小型株ファンド」に6月末時点でタムロンを組み入れていた。 同ファンドの組み入れ銘柄では製鉄所向けの耐火物を手がける黒崎播磨も、26日に33年ぶりの高値を更新した。両社は「高成長すぎない中途半端な立ち位置の銘柄」(苦瓜氏)で、いわば「ゆる成長株」だ。春先からの株高の波に乗れず割安に放置されていたが直近の決算は好調で、業績の先行きに安定感がある点が評価され始めている。 市場全体の目線も割安な中小型株に向かっている。6月末と比べて東証株価指数(TOPIX)が0・2%安となる一方で、小型バリュー株で構成する指数は2%高となり、25日には算出来の高値をつけた。インバウンドや半導体関連といったテーマから、個別の企業業績へと関心が変化していることがうかがえる。 目線の先には4~6月期の決算発表がある。夏枯れが強まり、海外マネーの流入が一層細るなかでは、サプライズ決算を示した銘柄が一躍脚光を浴びる可能性は高い。 「稼ぐ力を高めているのに割安に放置されている中小型株は多い。流動性に配慮しながら時間を分散して買う」。明治安田アセットマネジメントの永田芳樹シニア・ポートフォリオ・マネジャーは暑さの増す7月も企業訪問を続ける。 こうして見つけた企業の1つが切断機などを手がける小池酸素工業だ。5月の決算発表時点でPBR(株価純資産倍率)は0・3倍台だったが、23年3月期の連結純利益が前期比で2倍に成長したことを受け、株価は4割高になった。 ファンドマネジャーだけでなく、個人も「ゆる成長株」の発掘に動く。ある60代の個人投資家は「自己資本利益率(ROE)や個別企業の稼ぐ力に着目して銘柄選別を進める」と話す。 今週の「中銀ウィーク」を通過した後も、日本企業の4~6月期決算発表は続く。中小型株を主戦場とし、株高に乗れなかった個人には外国人不在の夏枯れ相場はむしろ好都合。銘柄選別の暑い夏は、これから本格化していきそうだ。2023/07/27 06:54:593.名無しさん5k8xe植田日銀に身備える市場 オプションが映す円高警戒-マーケットα2023/07/27 13:30 日経速報ニュース 米連邦公開市場委員会(FOMC)が終わり、市場の視線は日銀の動向に移った。通貨オプション市場では円高への警戒を示す指標が4カ月ぶりの水準となった。日銀が28日に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正に動くことに備える動きが広がっている。 27日の東京外国為替市場で円相場は一時、1ドル=139円台前半と1週間ぶりの円高・ドル安水準をつけた。FOMCを通過し、日銀が28日まで開く金融政策決定会合でYCCを修正することを警戒した円買いが進んだ。 米連邦準備理事会(FRB)は26日のFOMCで0.25%の利上げを決めた。市場予想通りで、先行きも「9月に利上げをする可能性もあるし、ないかもしれない。会合ごとに決める」(パウエル議長)とデータ次第という従来通りの立場を強調した。 このため、国内外の市場ではFOMCは「無難な結果で、むしろ日銀会合への相対的な注目度を高めることになった」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)との受け止めが広がった。 特にYCC修正への警戒の高まりを映しているのは、通貨オプション市場だ。円の対ドル取引で「プット(売る権利)」と「コール(買う権利)」の需要の偏りを示すリスクリバーサルをみると、1週間物はマイナス4.4%台と3月以来およそ4カ月ぶりの水準をつけた。 マイナス幅が大きいほど円買い・ドル売りの需要が強いことを示し、市場の円高警戒の強さを映す。3月は米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻で急速な円高・ドル安が進んだ局面だ。4月に植田和男氏が日銀総裁に就いてからは最も円高への警戒が高まっているといえる。 SBIリクイディティ・マーケットの鈴木亮常務は「1ドル=137円を行使価格とする円コール・ドルプットの大口買いが入っている」と明かす。137円を超えて円高・ドル安が進むと、利益を得られる取引だ。 こうした動きの背景にあるのは、金融政策の正常化に必要な材料がそろいつつあるとの見方だ。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、直近5月の基本給にあたる所定内給与は前年同月比1.7%増(確報値)と約26年ぶりの伸びだった。6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)は同3.3%の上昇と政府・日銀が目標とする2%を1年以上にわたり上回る。 日銀は28日、経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表する。23年度だけでなく、24年度以降の物価見通しも引き上げる観測もある。24年度以降も2%を超えて推移するとなれば、目指す「2%の物価安定目標」の達成に近づく。 日銀は2022年12月、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に拡大した。突然の政策修正に、日銀が金融正常化にカジを切ったとの見方を強めた市場では23年1月、一時1ドル=127円台まで円高が進んだ。 今回は22年末と比べても円買いのエネルギーが大きくなる可能性がある。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋による円のドルに対する売り越しは約9万枚と22年末比でおよそ2.4倍の高水準に達する。YCC修正があれば、円安に賭けた持ち高の解消が急速な円高を生みやすい。 日銀は28日昼ごろに金融政策決定会合の結果を公表する見通しだ。鈴木氏によると、オプション市場では28日に円相場が最大4円程度変動することを織り込んでいる。YCC修正の有無にかかわらず、28日の相場急変動には備える必要がある。2023/07/27 13:49:144.名無しさん0wdFZ割安日本株の逆襲はまだ続く-人生100年こわくない・地球株の歩き方(藤田勉)2023/07/28 04:00 日経速報ニュース 海外投資家の買いを背景に日本株の上昇率が高い。筆者は日経ヴェリタス2月26日号の本欄「割安日本株の逆襲が始まる」において世界の中で日本株が著しく割安であり、とりわけ低PBR(株価純資産倍率)株の投資妙味が強いことを指摘した。ここまでは想定通りとして、問題は株価上昇の持続性である。5?10年に1度、日本株は大きく上がることがあるものの、上昇は長続きせず、その度に「今度こそは」と期待した投資家を落胆させてきた。 しかし、今回の株価上昇は過去とは大きく異なると考えられる。以下、日本株の歴史を振り返りつつ、今回の株価上昇の持続性を分析する。 海外投資家が株高をけん引 バブル崩壊後、日本株上昇は常に海外投資家の買いによって起きた。1999年のITバブル時は海外投資家の買い越しが東証株価指数(TOPIX)を58.4%押し上げた。2005年に小泉純一郎首相(当時)が「郵政解散」を断行して圧勝すると、これを好感した海外投資家が10.3兆円買い越して、TOPIXは43.5%上昇した。2013年はアベノミクスや「黒田バズーカ(日銀による異次元の金融緩和)」を好感して、海外投資家は15.1兆円(史上最高)買い越し、TOPIXは51.5%上昇した。 しかし、これらの株価上昇は持続しなかった。いずれも海外投資家が「いよいよ日本が構造的に変わる」と勘違いして大量に日本株を買ったものの、「さっぱり変わらないではないか」と気が付いて売りに回った、という見方がある。たとえば、2012?14年に海外投資家は18.8兆円買い越したが、15?22年に15.0兆円売り越した。 過去10年間の投資収益率は米国の199.3%、欧州の89.1%と比較すると、日本は69.7%と劣る(現地通貨ベース、出所はQUICK・ファクトセット、7月14日現在)。自己資本利益率(ROE、6月末時点)は米国15.5%、欧州13.1%だが、日本は8.3%と低水準だ。社外取締役が増えたものの、東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件、電力会社談合などに見られるように、コーポレートガバナンス(企業統治)は問題が多い。 このように日本株は不振が長く続いただけに、株価純資産倍率(PBR)が米国の3.8倍、欧州の1.8倍に対して1.3倍と圧倒的に低い。 今年4?6月期に海外投資家は6.1兆円買い越してTOPIXは14.2%上がった。今回、海外投資家には「いよいよ日本が変わる」などという勘違いはなく、日本株が世界の中で著しく割安であるからこそ大量に買い付けているものと思われる。2023/07/28 06:20:035.名無しさん0wdFZ 割安是正に3つの要因 日本株の割安是正相場を引き起こした要因、あるいはきっかけは、以下の通りである。 第1に、ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイによる商社株の買いである。バリュー投資家で知られるバフェット氏の投資は、世界の投資家に対して日本株が著しく割安であるというシグナルとなった。 21年にバフェット氏は総合商社大手5社の株式取得を開始し、現在、これらの発行済み株式の7.5?8.3%を保有している。今後、最大9.9%まで購入するという。過去1年間の株価上昇率は三井物産が80.4%、三菱商事が76.6%、伊藤忠商事が43.2%と、TOPIXの18.3%を大きく上回る(7月14日時点)。それでも大手商社のPBRは1.2?1.7倍と高くはない。 第2に、東京証券取引所が上場企業に対して、資本コストや資本収益性(例えばROE)を意識した経営を要請したことがある。また、東証プライム市場の上場基準を満たさない企業の経過措置を2025年までとして、市場の規律を強化した。こうした取り組みによって、PBR1倍を目指す企業が増加した。 第3に、アクティビスト(物言う投資家)の活躍である。スチュワードシップ・コード導入などによって機関投資家の圧力が高まり、株式持ち合いが減りつつある。加えて機関投資家の議決権行使基準が厳格化された。これにより、アクティビストの提案であっても合理的なものであれば、機関投資家が賛成するようになった。 東洋建設はアクティビストの取締役選任議案が可決承認され、事実上の敵対的買収が成立した。世界最大級のアクティビストファンドである米エリオット・マネジメントが株式を取得した大日本印刷の株価は、今年の安値から高値まで66.6%上昇し、PBRは0.6倍から1倍近くに上昇した。バリューアクト・キャピタルが株式を取得したセブン&アイ・ホールディングスの株価は21年1月安値から23年3月高値まで84.5%上昇した。 自動車への波及が焦点 日本株の割安修正の相場はまだまだ続くものと思われる。東証上場企業のPBRの分布を分析すると、0.6倍台が最も多く、次いで0.7倍台、0.8倍台の順である(0.1倍刻み、6月末時点)。データ取得可能な企業3767社のうち46%が1倍未満である(マイナス含む)。 商社に続く割安株は銀行である。過去1年間の株価上昇率は三菱UFJフィナンシャル・グループが51.0%、三井住友フィナンシャルグループが57.2%、みずほフィナンシャルグループが43.9%と高い(7月14日時点)。ところが、それでもPBRは0.6?0.7倍と低い。まだ上値の余地があるとも考えられる。 これに続くのが不動産である。東急不動産ホールディングスの株価は3月末から7月14日までに25.4%上昇し、TOPIXの11.8%を大きく上回る。住友不動産は同18.7%、野村不動産ホールディングスも同15.6%上昇するなど、オフィスビル事業の依存度が低い不動産会社の株価が上昇しつつある。オリエンタルランド(同23.3%)、日本航空(同16.4%)、と、インバウンド関連も好調である。 以上を総合すると、日本株が年内上昇を続ける可能性は高い。ただし、来年以降も上昇相場が持続するためには、最後に残った割安株である自動車の持続的上昇が不可欠であると思われる。自動車は時価総額が大きく、かつ産業の裾野が広い。 電気自動車(EV)の開発で先行するテスラ(米国)のPBRは20.6倍、ポルシェAG(ドイツ)は6.1倍と高い。一方、日本ではトヨタ自動車こそPBRが1倍を超えたが、ホンダは0.6倍、日産自動車は0.4倍と低い。トヨタ自動車の佐藤恒治社長はEVに大きくシフトする方針を明確にしている。日本の自動車業界がEVに思い切ってシフトできれば、バリュエーションの上昇が期待できる。結論として、割安日本株の逆襲はまだまだ続くと考えられる。2023/07/28 06:22:176.名無しさん0wdFZ歴史に刻まれる「YCCショック」、市場と日銀に3つのリスク(永井洋一)2023/07/28 13:30 日経速報ニュース 日銀による長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化報道をきっかけに、27日の米金融・資本市場から始まった株安・円高・金利上昇は、28日の東京市場へと引き継がれた。「YCCショック」の様相を呈するなか、日銀は動じずに28日まで開かれた金融政策決定会合で柔軟化を決定した。日銀は金融主権を守ったと同時に、3つの代償を抱え込んだかもしれない。 第1の代償は国際金融資本市場の不安定化リスクだ。柔軟化に伴う市場調節運営の変更で、10年物国債の利回りは現在の0.5%程度から理論上は約2倍の1%まで上昇する可能性がある。 日米欧で中央銀行の資金供給量が過去最高水準に近いのは日銀だけだ。いまや日本は世界のリスクマネーの一大供給源だが、その日本の大幅な金利変動は米国から日本へ、株式から債券へ、ドルやユーロから円へというようにマネーの逆流を引き起こしかねない。日本の長期金利が上がり、日本の機関投資家が米国債から日本国債に資金シフトすれば、米国の長期金利も上がる。 心配なのは割高感が強い米国株だ。債券との比較で割高・割安を判断する株式リスクプレミアムは、米S&P500種株価指数が1%程度と過去20年で最低。米ナスダック総合株価指数に至ってはマイナス0.4%と株式益回り(3.6%)が10年物国債の利回り(4%)を大幅に下回る「超割高状態」だ。 S&P500種の予想EPS(1株利益)は切り上がっているが、実績EPSは低位で底ばいが続き、ワニの口のように広がっている。株式市場の期待が先走っている証拠だが、こうした現象はリーマン・ショック前や新型コロナショック前にもみられた。 世界の株式市場を取り巻く環境は株式の割高化や実質政策金利の高さという点で、1987年10月のブラックマンデー(世界同時株価暴落)前に似ている。YCCショックが世界に広がった場合、それがトラウマとなって逆に日銀の金融政策正常化が遅れる可能性もある。これが第2の代償だ。 類例は87年8月。日銀は資産価格の高騰対策で短期金利の高め誘導を開始したが、その直後の10月、ブラックマンデー(世界同時株価暴落)が発生。超低金利が長期化し、バブルとその崩壊を招いた。 第3の代償は政治の圧力で金融政策の手足が縛られるリスクだ。防衛費の増額や子育て支援の財源捻出で自民党は「埋蔵金」活用に傾いている。その柱は時価で4.7兆円にのぼる政府保有のNTT株の売却だ。日銀保有の上場投資信託(ETF)の含み益は20兆円をゆうに上回るとみられ、少子化対策の財源として政府が簿価で買い取る可能性を探っているともいわれる。株安は政府・自民党にとって望ましい話ではない。 いずれにしても、2023年7月28日は経済・金融史に大きく刻まれる一日になる可能性がある。2023/07/28 13:34:507.名無しさん0wdFZYCC運用柔軟化で長期金利の上昇加速、円高・株安の「玉突き」も[東京 28日 ロイター] - 28日の東京市場で大幅な債券安、株安が進行している。日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロールYCC)の運用柔軟化を決めたことで、債券売りが強まり、為替市場での円高と株安がそれぞれ深まる「玉突き」が生じた。国債先物は、日銀会合の結果発表後に下げ幅を拡大。中心限月9月限は一時前営業日比1円62銭安の146円79銭に下落した。新発10年国債利回り(長期金利)は同14.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.575%と、2014年9月以来の水準まで上昇した。日銀が長期金利の変動幅について上下0.5%を「目途」としたことに加え、連続指し値を1%に引き上げたことを背景に、売り圧力が強まった。市場では「0.5%は目途という日銀が得意とする曖昧な表現にして残し、事実上は上限を1.0%まで拡大したことになる」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジスト)との見方が聞かれる。同様の観点から「YCC自体を形骸化させつつあるのだろう」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミスト)との声が聞かれた。為替や株式市場では、結果発表の直後こそ、事前の観測報道の範囲を出ないとの受け止めから、出尽くしが意識された。ドル/円はいったん上昇し、日経平均は下げ幅を縮小した。ただ、長期金利の上昇が勢いづく中で、流れが一変し、それぞれ再び下げを強めた。日経平均は先物が主導する形で一時800円超安に下落。会合結果を消化する中で、目先は不安定な値動きが続く可能性がある。もっとも、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは、日本株は割高とまではみられておらず、米株のようには金利上昇を受けた株安の余地は大きくないと指摘、「押し目を買いたいニーズは根強く、日米の中銀会合の通過を待ってエントリーするにはいいタイミングとの判断があってもおかしくない」と話す。金利の上昇が一服すると、株価は500円安程度に下げ幅を縮めた。目先の焦点は、植田和男総裁の記者会見に移る。仮にタカ派姿勢が明確に確認されれば、さらなる円高進行の可能性もあると、トレイダーズ証券の井口喜雄市場部長は話す。「植田総裁がどのようなスタンスをみせるかで、今後のドル/円の方向性が決まりそうだ」(トレイダーズ証券の井口氏)として、関心が寄せられている。2023/07/28 15:27:108.名無しさんeaIKW日本総合研究所翁理事長「銀行はおじさん文化を脱せよ」-銀行150年 新たな挑戦 私はこう考える⑤2023/07/29 05:00 日経速報ニュース フィンテックの台頭などで金融サービスを巡る競争が激しくなり、銀行はより高い付加価値を求められるようになった。そんな時代を勝ち抜くためには、働きやすく成長を実感できる職場を整え、専門性と提案力をもった人材を引き付けることが不可欠だ。日本総合研究所の翁百合理事長は「おじさん文化」と決別せよと訴える。 ――150年の歴史を振り返って、銀行の役割はどう変わりましたか。 「決済と資金仲介という主要な銀行の機能はまったく変わらない。戦後から高度経済成長期にかけて間接金融は日本経済の成長を支えた。設備投資需要が高まった資金不足の時代で、銀行は旺盛な資金需要に応えていれば十分な収益を上げられた。その後低成長になって資金需要は減退し、大企業は社債や(株式などの)エクイティでの調達も増えたが、引き続き銀行融資が大きい中小企業にとっては特に、銀行は重要な役割を担う。中小企業をいかに成長させられるかが問われている」 ――中小企業、スタートアップに銀行は何ができますか。 「銀行は顧客の預金を預かっていることからあまりリスクの高いものに投資してこなかったが、できる範囲でリスクをとっていくことが求められている。人材も(融資中心の)デットカルチャーの銀行員が多いので、エクイティの人材を獲得し、利益相反などのリスクはコントロールしつつ成長に寄与する支援をしていくことが必要だ」 ――ネット専業銀行やフィンテックとの競争も激しくなっています。伝統的な大手銀行は生き残れるでしょうか。 「決済などは銀行が唯一の担い手ではなくなっている。確実で安全な取引を提供することをコアのサービスとしつつ、付加価値の高いサービスがより求められている。身軽なネット企業に比べて巨大なシステムや支店網を抱えるため、固定費が高く不利な面はある。デジタル専業銀行、みんなの銀行を始めたふくおかフィナンシャルグループのように、新ブランドでZ世代に訴求するような工夫が必要になってきている」 「(フィンテックのような)新業態の企業とは、競争と協働の両方が必要だ。銀行が金融商品を製造して販売まですべてを担うのではなくフィンテックなどの第三者と協業して新サービスを生み出すオープンバンキングも可能になっている。そういう時代には銀行は(金融機能の基盤を提供する)プラットフォーマーの役割を果たしながら自らもサービスを提供するという両面を求められる。海外から(銀行が黒子として金融機能を提供する)バンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)の提供を目的とした銀行も出てきている」おきな・ゆり 1984年(昭59年)慶大院修了、2011年京大博士。84年日銀へ。92年日本総研副主任研究員、主席研究員などを経て18年から現職。金融システムが専門で、03年に産業再生機構の非常勤取締役を務めたほか、金融審議会、新しい資本主義実現会議など政府の有識者会議にも参加。63歳。2023/07/29 06:53:109.名無しさんeaIKW ――地銀はどのように成長していけばよいでしょうか。再編はまだ進みますか。 「人口が減り、資金需要も減るため、経営環境が厳しいことに変わりはない。低金利で利ざやも稼げない。規模の経済の観点から、一定規模以上の地域金融機関にとっては統合や合併は有力な選択肢になると思う。前向きに広いエリアで連携することで資金需要を取り込んでいくという考え方もあっていい」 「地銀には預貸率がかなり低いところもある。そのため少しでも利益を出すため外債や長期の日本国債を保有している。金利上昇に対してすごく脆弱になっている地銀があることは否めない」 ――将来性のある企業を発掘する目利き力が落ちていませんか。 「不動産担保や経営者保証に依存する融資姿勢が目立つ金融機関もある。中には経営者保証をあまりとらないようにするなど変化も出てきているが、道半ばだ。銀行は単に資金繰りをつけるだけではなく、企業の事業内容をみて、デジタル化やグリーントランスフォーメーション(GX)などの観点でビジネスモデルをどうしていくべきか一緒に考えていく姿勢が求められる時代が来ている」 ――これからの銀行に求められる人材像は。 「専門分野で力を発揮できるような人材が必要。これからはよりクリエーティブな提案力や、地域や異業種とネットワークを構築して新しいことに取り組む力のある人が求められる。こうした優秀な人材をひきつけるため、働きやすく成長実感のある職場にしていかないといけない」 「女性活躍はひとつの鍵になる。昭和時代の年功序列や性別役割分担の発想から来る『おじさん文化』から抜け出さないといけない。若い世代や女性の視点が死角になっていないか点検してほしい。ダイバーシティーの確保は当然のことで、ダイバーシティーこそ価値だ。特に地方の優秀な女性は東京に出てきてしまう面があるので、地銀が魅力ある環境を提供することは大切だ。育児や介護などがあっても無理なく続けられる働きやすさも重要になる。メガバンクでは女性役員も少しずつ出てきて、高知銀行の副頭取に元日銀の河合祐子氏が就くなど変化もある」 ――長く続いた大規模な金融緩和からの転換も意識されています。米欧では金融不安もありました。金融当局に課題はありますか。 「金利動向が変わってくれば、体力が低い金融機関はじわじわ影響を受ける。万が一の破綻処理が早期かつ迅速にできる監督体制かどうかは気にしている。日本では検査マニュアルが廃止され、自己判断で引当金を積むことになった方向はよかったと思っている。ただ、銀行経営が悪化した場合、実質債務超過の状態になる前に破綻処理を準備できなければ大きな損失になりかねない」2023/07/29 06:54:3610.名無しさんeaIKW円安・物価高、日銀動かす 植田総裁「後手なら副作用拡大」2023/07/29 02:00 日経速報ニュース 米欧の利上げが終盤に入るなか、日銀は28日、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正を決めた。長期金利を強引に抑え込まず、緩やかな上昇を容認する。粘り強く緩和を続ける姿勢を貫いてきた日銀の背中を押したのは、国民生活を圧迫している物価高と円安だった。 「為替市場も含めて考えた」 「ボラティリティ―(変動率)をなるべく抑えるというところに為替市場も含めて考えた」。28日の金融政策決定会合後の記者会見で植田和男総裁はYCCが為替相場の変動を助長していることへの懸念をにじませた。 政府が神経をとがらせたのも円安だ。27日まで円相場は1㌦=140円台で推移し、日銀が2022年12月に長期金利の上限を引き上げる前の1㌦=137円台より円安に振れていた。円安は輸入物価の上昇を通じ、物価高を長引かせる要因になる。政府内では「140円台の円安は明らかに行き過ぎ」との声も出ていた。 国内のインフレ率の勢いは弱まっているものの、上昇率は22年4月以降、政府・日銀が目標とする2%を上回り続けている。「物価高は日銀の予想より明らかに上振れているが、大丈夫なのか」。政府内からは日銀の金融政策運営に疑念を呈す声も聞かれていた。 植田総裁を選んだ岸田文雄政権の支持率が下落局面にあることも今回の修正の背景にありそうだ。日本経済新聞の世論調査によると岸田内閣の支持率は4月の52%から2カ月連続で低下。6月は39%となった。政府関係者は「今の物価高が続けば政権には打撃。いま日銀が何もしなければ物価高に無策と映るだろう」と話す。 これまで金利上昇につながる政策修正は家計・中小企業への打撃となり、政権への逆風になると考えられていた。ところが、日銀が動かないことが米欧との金利差を広げ、円安や物価高に拍車をかける構図が強まると状況は一変する。岸田首相が6月に閉幕した通常国会での衆院解散を見送り、早期の総選挙の可能性が遠のいたことも日銀が動きやすい下地となった。 松野博一官房長官は28日の記者会見で、日銀がYCC修正を決めたことについて「金融緩和の持続性を高める」と歓迎した。 金利操作に伴う副作用への懸念もある。日銀は28日に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で23年度の消費者物価の前年度比上昇率の見通しを4月時点の1.8%から2.5%に上方修正した。物価上昇はYCCの副作用を増幅する面がある。 本来、長期金利の水準は実質経済成長率や物価上昇率などを反映して決まるとされ、「経済の体温計」と言われる。物価が上昇する局面では、理論的には金利も上昇する関係だ。 日銀のアンケートでは、個人が予想する1年後の物価上昇率の平均値は10.5%。高めに出る傾向があるとはいえ、家計や企業の物価高に対する懸念が日銀へのプレッシャーになったとみられる。植田総裁は「上振れリスクが顕在化してから何か対応することでは後手に回って副作用が大きくなる」と語った上で、YCCの修正は「前もってリスク対応を考えておく措置」と位置づけた。 国際通貨基金(IMF)のピエール・オリビエ・グランシャ・チーフエコノミストは25日、日銀のYCCについて「金融引き締め開始を準備するためにもう少し柔軟になり、距離を置くことを勧める」と語った。市場で決まる長期金利の水準を中央銀行が完全にコントロールするYCCは海外からは異様に映る。 「植田さん自身、市場原理に反する政策には否定的な見方を持っている」。植田総裁に近い関係者はこう証言する。植田総裁も記者会見で「長期金利の形成を市場にゆだねるという意図があるかだが、それはイエスだ」と市場機能に配慮する姿勢を示した。 YCCの修正は出口に向けた第一歩となるのか。植田総裁は「政策の正常化へ歩みだすということではない」と語り、物価目標達成へまだ距離があると認めた。それでも内田真一副総裁が7月上旬のインタビューで語ったように、「結果として出口に向かうのであれば、あそこが第一歩だったと振り返って言うことはできるかもしれない」。2023/07/29 16:08:3411.名無しさんDRArk日銀政策修正、世界揺さぶる 動きだした市場のアンカー2023/07/30 05:00 日経速報ニュース 【この記事のポイント】・日銀の政策修正受け海外の国債金利に上昇圧力・500兆円の緩和マネーが日本に還流するとの臆測・金融システムの新たな火種になる懸念くすぶる 主要中央銀行で唯一、金融緩和を続けてきた日銀の政策修正に米欧が警戒を強めている。低金利環境下で海外に流出している500兆円の緩和マネーが日本に戻るきっかけになりかねないためだ。緩和継続で金融市場安定の「アンカー」となってきた日銀の動向は世界市場を揺さぶる波乱要因になる。 「世界的に影響を及ぼす大きな変化だ」。米連邦準備理事会(FRB)ウオッチャーとして知られる米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス記者はツイッターで、かつてニューヨーク連銀幹部を務めたクリシュナ・グーハ氏の発言を引用しながら、日銀の政策修正をこう表現した。 実際、28日の世界の債券市場は大きく揺れた。オーストラリアの10年物国債利回りは一時0.55%、フィリピンは同0.1%、マレーシアは同0.035%上昇(価格は下落)した。 日本の政策修正が海を隔てた国々に波及したのはなぜか。財務省の本邦対外資産負債残高によると、国内の投資家による海外の証券投資額は2022年末に531兆円に達する。異次元緩和で国内の低金利環境が常態化した結果、資金流出が加速し、海外投資は10年間で約7割増えた。 日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化したことで、長期金利が13年以来、一度も超えることのなかった1%に到達する可能性が出てきた。 投資に伴う為替リスクもない日本国債の利回りが上昇すれば、海外資産の魅力は相対的に低下する。YCCの柔軟化で日本マネーの「里帰り」が進むとの思惑から世界の金利にも上昇圧力がかかったというわけだ。 世界の金融当局はすでにこうしたリスクに警鐘を鳴らしていた。欧州中央銀行(ECB)は5月に公表した金融システムの安定に関する報告で、日本が金融正常化にかじを切れば、「投資のリパトリエーション(資金回帰)を促進する可能性」があると論じた。 具体的には①金利差収益を狙う「キャリートレード」が減少②国内債券の利回り上昇で、欧米債の魅力が相対的に低下③国内債券が値下がりし、投資家のリスクセンチメントが悪化――することを通じ、日本の投資家が海外の債券に投資していた資金が本国に回帰する可能性があるとした。 国際通貨基金(IMF)も4月にまとめた国際金融安定性報告書で、「日銀による10年来の金融緩和は、日本の投資家を海外投資に駆り立てた」と分析した。オーストラリアやユーロ圏、米国、インドネシアやマレーシアなどを例示し、日銀が金融緩和を見直せば「資金流出に直面する可能性がある」と指摘する。 SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストの集計では、世界の主要84中銀のうち87%が22年に利上げした。一方、日銀は2%の物価目標を持続的・安定的に達成していないとして、主要国の中銀で唯一、金融緩和を続けている。 日銀の政策判断が金融システムに大きな影響を及ぼすのは、日銀がリスクマネーの最後の供給源となっていることと無縁ではない。 ある日銀関係者は「政策を見直す際には、海外にどのように影響が波及するか目配りする」と強調する。一方、「自国の物価の動向をみて金融政策を運営するのが基本」とも話し、日銀の政策修正が金融システムの新たな火種になる懸念は残る。 日銀の植田和男総裁は28日の金融政策決定会合後の記者会見で「政策の正常化へ歩みだすということではない」と語り、今回のYCC柔軟化が金融緩和策の出口につながるとの見方を否定した。とはいえ、国内の長期金利が10年ぶりの水準まで上昇すれば、世界の金融当局が描くシナリオが現実味を帯びてくる。2023/07/30 06:08:2712.名無しさん6MFUA預金神話、崩すのは誰か 37年前の警鐘生かすとき-銀行150年 新たな挑戦 残された論点㊤2023/07/31 05:00 日経速報ニュース 「運用のプロ」として日本に資産運用業の道が本格的に開かれたのは1986年、投資顧問業法の施行だ。米国に遅れること半世紀。当時、三菱銀行は米フィデリティ、住友銀行が米バンカース・トラストと組んでノウハウを得ようとした。 邦銀幹部は米運用会社に当時こう言われた。「銀行とは文化が違う。銀行員を送り込むのではなく、切り離して早く生え抜きを社長にすべきだ」 それから37年。銀行からみた「貯蓄から投資」は未完のままだ。警鐘は当たったと認めざるをえない。運用会社は子会社扱いで、親銀行の経営が苦しいと人員も予算も一律で絞る繰り返し。市場の危機は実は運用の好機になるが、そうしたノウハウ蓄積の場も限られた。 それは株価が如実に示す。33年ぶり高値を回復した日経平均株価に対し、業種別株価でみた「銀行」の指数は停滞したまま。バブルのピークだった89年末の5分の1の水準にとどまる。 これは家計の利子所得の減り方とそのまま重なる。94年に26兆円強あった利子所得は21年に6兆円にまで減少した。超低金利時代に突入するなか、銀行が預金に代わる金融商品を十分提供できなかった結果、家計の資産所得は大きく損なわれ、銀行への市場の評価も厳しいものになったといえる。 銀行は運用や提案力を携え、長期に顧客の資産形成に資する存在となれるか。預金こそ安心安全という預金神話を自ら崩す覚悟が問われる。 三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が突破口として狙う一つはグローバルな運用力だ。3月、英アルバコア・キャピタル・グループの買収を発表した。非伝統的なオルタナティブ投資の会社だ。 従来のような東京主導ではない。19年に約3000億円で買収した豪ファースト・センティア・インベスターズ(FSI)がアルバコアを傘下に入れる。「運用力を磨き、世界の優れた人材を雇う文化や仕組みのプラットフォームをFSIが担う」(安田敬之執行役専務)。運用の最前線での報酬のあり方も実績主義へとシフトしつつある。 国内では24年春から三菱UFJ国際投信を持ち株会社のもとに置く。親会社や販売の論理に縛られない運用会社へ向けた見直しの一歩になる。 個人への向き合い方にも前進がみえる。三井住友フィナンシャルグループでは銀行顧客の投資信託の保有期間が22年度は平均8.4年。4年前より4年近く延びた。「長期に分散して市場に居続けることの重要さを説く姿勢が受け入れられてきた」(三井住友銀行の加藤聡彦執行役員) 預金と異なるリスク資産に顧客も銀行員も不慣れで、市場の変動があればすぐ売買して資産を減らすという時代から徐々に脱しつつある。 スマホで金融サービスを一括管理する「Olive(オリーブ)」は3月のスタートから6月時点で60万口座を獲得。銀行口座と同時に証券口座をつくり、クレジットカードで積み立て投資まで一気に踏み出す顧客の多さに手応えがあるという。2023/07/31 06:22:0513.名無しさん6MFUA みずほフィナンシャルグループは対面を軸に顧客の資産形成ニーズに応える。全国に600人いるライフプランアドバイザー職をさらに増員する構えだ。職域での助言、ネットでの対応も合わせて計200人増やす。プロ向けのノウハウも生かし、グループとして「確定拠出年金などを入り口に、能動的に将来の資産形成に動く層への支援を厚くする」(佐藤紀行執行役)。 しかし米金融大手の背中は遠い。JPモルガン・チェースの4?6月期決算ではアセット・ウェルスマネジメント部門の純利益は前年同期比22%増の12億ドルと全体の利益の1割を稼ぎ、部門の自己資本利益率(ROE)は29%を記録した。 ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は4月に公表した「株主への手紙」で、資産形成など長期に顧客との関係を築いて収益を上げる重要性を説いた。「金利や単純な信用リスクをとるだけなら1人の人間とコンピューター1台で十分。(社員)29万人が地球を回る必要はない」 米国をみれば金融環境が変わるときに主役も変わってきた。80年代に市場金利の優位性を生かしたMMF(マネー・マーケット・ファンド)で証券会社が躍進。その後の米産業の新陳代謝と株高が好循環に入ると、資産運用業が成長分野になった。 米国トップの資産運用会社ブラックロックが生まれたのは88年。37年前には存在していなかった。それが今や時価総額で16兆円という存在になり、14兆円の三菱UFJFGをしのぐ。資金不足時代の発想と組織に縛られ、「貯蓄から投資」のうねりをつくり出せてこなかった日本の銀行。顧客資産の拡大に軸を合わせた経営に今度こそ転じられるか、銀行自身の未来図のカギになる。2023/07/31 06:22:5814.名無しさん6MFUA植田日銀はなぜ豹変したか 政策修正に3つの理由-金融PLUS 金融グループ次長 石川潤2023/07/31 05:00 日経速報ニュース 「待つことのコストは大きくない」。そう繰り返してきた日銀の植田和男総裁が28日、政策修正に動いた。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を柔軟化し、これまで上限としてきた0.5%を超えて長期金利が上昇することを認める。植田氏は前言をあっさり翻し、記者会見で「(政策が後手に回れば)大変なことになる」と語った。何が植田氏を豹変(ひょうへん)させたのか。 ①物価上昇を「過小評価」 日銀が今回、政策修正に動いた理由をひと言で言えば「YCCの効果と副作用が両方とも、ものすごく大きくなる事態」(植田氏)を避けるためだ。 この1年強の間に「物価はどうせ上がらない」というデフレ時代の常識は揺らぎ、日本中で値上げや賃上げの動きが広がった。そうした基調的な物価、いわば経済の体温が上がってきたときに、長期金利を0.5%にむりやり抑え込むという従来通りの緩和策を続けていては、経済や物価を過度に刺激しかねない。 基調的な物価が上昇したのであれば、ある程度はそれにあわせて金利上限も高めていくのが自然――。植田氏が今回明らかにしたこの考え方は、日銀が昨年12月に長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げた際、当時の黒田東彦総裁が記者会見で説明した理屈とも重なる。 足元のインフレについて、植田氏は「(日銀が4月時点では)不確実性を過小評価していた」と率直に認めた。物価は日銀が思っていた以上に上がっているし、これからも想定外の上昇となる可能性がある。「将来の不確実性を今回改めて認識した」ことが豹変の理由のひとつになった。 ②後手に回れば「大変なことに」 もうひとつの理由は、効果と裏表の副作用への警戒だ。経済の体温が上がっている時に無理に金利を低く抑えれば、実態よりも低い金利(高い価格)となった債券を売る動きが広がり、日銀の債券購入額が際限なく増えてしまう。日銀のバランスシートが膨らむだけでなく、金利がゆがんで企業の社債発行などにも影響を与える。 「YCCは昨年来の経験もみると(物価の)上振れリスクが顕在化したあとで対応しようとするとなかなか大変なことになる。副作用をすごく大きくしてしまう」。日銀が昨年12月の政策変更の前後に経験したように、金融政策が後手に回れば、将来の政策変更を見込んだ投機筋の攻勢で市場は大混乱に陥る。債券市場が落ち着いているこのタイミングで、先手を打って動く必要があるというのが植田氏の説明だ。 事実上の長期金利の上限を1%としたのは、次の政策修正を市場から催促されないように「のりしろ」を確保するためだ。日銀の国債買い入れの影響を受けにくい翌日物金利スワップ(OIS)市場では、10年物は0.6%台後半まで上昇した。日銀も長期金利の実力はそのあたりと踏んでいるのではないか。 仮に0.75%のような手の届きやすい水準に上限を設定すると、投機筋の格好の標的となってしまう。日銀はそうした「根拠のない投機的な債券売り」(植田氏)には機動的に対応すると表明。植田氏は長期金利が1%に近づく可能性は低いとし、1%とした国債の無制限買い取りのラインは「念のための上限キャップ」と表現した。2023/07/31 06:26:4115.名無しさん6MFUA ③円安の悪夢を繰り返さない 3番目の理由は、再び進み始めた円安だ。植田氏は「金融市場のボラティリティーをなるべく抑えるというところのなかに為替市場のボラティリティーも含めて考えた」と述べた。日銀が金利を低く抑え続ければ、日米金利差が広がって、円安が進みやすくなる。昨年12月は円安で政府・与党の日銀批判が強まった後、政策変更に追い込まれた。その悪夢を繰り返すわけにはいかない。 日銀は金融政策の独立性を強調するが、人事や予算を握る政府・与党の意向から完全に自由ではいられない。為替相場に敏感な政府・与党から批判を受ければ、日銀の信認が傷つき、政策効果にも影響が出てしまう。政府・与党から介入を受けていると市場に見透かされる前に、先んじて動こうとする習性のようなものが日銀にはある。 今回の政策修正では①値上げや賃上げが広がり、緩和効果が想定外に拡大②金利を抑え続けることで、副作用が今後強まるリスクが浮上③円安が進むなか、政府・与党も政策修正を支持――という3つの条件がそろった。物価の基調がこの先さらに高まれば、追加的な修正が視野に入る。その際には、マイナス金利の廃止も含めた政策全体の見直しが焦点になる。 もっとも、金利上昇は実体経済には大きなマイナスだ。今回の柔軟化について、日銀の9人の政策委員のうち、日立製作所出身の中村豊明委員が「企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」とただ1人反対票を投じたのは示唆に富む。経済や物価の先行きは見通しがたく、マーケットや政治の動向も不透明だ。大規模緩和の出口へ前進したのは間違いないが、先の霧が晴れたわけではない。2023/07/31 06:27:4316.名無しさん6MFUA日銀、企画局長に「エース」正木氏 渦巻く正常化の思惑2023/07/31 14:48 日経速報ニュース 日銀は31日、金融政策の企画・立案を担う企画局長に正木一博・金融機構局長を充てる人事を発表した。正木氏はマイナス金利政策の導入に関わるなど、日銀の「エース」と評される人物だ。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟にする政策修正を決めた直後の人事とあって、市場参加者の間で話題を集めている。 正木氏は量的・質的金融緩和の導入直後の2013年から17年まで、企画局の政策企画課長を務めた。その後高松支店長、金融機構局長などを経て、6年ぶりに企画に戻る。 14年の追加緩和や16年のマイナス金利政策とYCCの導入など、黒田東彦前総裁のもとで繰り出され今も続く重要な政策に深く関与。元副総裁の雨宮正佳氏と現副総裁の内田真一氏とともに、金融政策の立案を主導する「企画ライン」の一角として黒田日銀を支えてきた。ある国内証券の債券ストラテジストは「重要政策に関わってきた正木氏は、遅かれ早かれ必ず企画局長に就くと思っていた」と話す。 大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「いばらの道が予想されるなか、かじ取りは正木氏に託された」としたうえで、「エースの起用で、市場では金融緩和の正常化への思惑が膨らみそうだ」と語る。正木氏は金融政策の考案だけでなく、金融市場局で国債買い入れといったオペ(公開市場操作)を担う市場調節課長も経験してきた。市場調節にも精通する正木氏の登用で「マイナス金利の解除に向けて万全の体制となった」(岩下氏)と評価されている。 日銀は28日まで開いた金融政策決定会合でYCCの運用を柔軟化し、許容する長期金利の変動幅の上限を事実上1%に引き上げた。31日の国内債券市場では長期金利が約9年ぶりに0.6%台に上昇。新発2年物国債の利回りが半年ぶりにプラスとなるなど、マイナス金利解除への思惑が意識されている。 28日の日銀の決定は、将来、出口が近づいた時に柔軟な政策運営ができるようにと備えた対応との見方がある。こうしたなかで正木氏を企画ラインに再登板させたのは、「日銀は出口に向けた準備を着実に進めている」という見方の裏付けとなるのではないか――。市場では早くも正常化に向けた思惑が広がっている。2023/07/31 15:10:0217.名無しさんA04k2スマホ決済、銀行が黒子 三井住友カードがアプリ機能提供 ネット銀先行、参入企業囲い込み2023/08/01 日本経済新聞 朝刊 大手銀行グループや地方銀行が黒子となり、金融事業に参入する企業へ必要な機能を提供する動きが広がってきた。三井住友フィナンシャルグループ(FG)傘下の三井住友カードが企業向けにスマートフォン決済のアプリを開発できるサービスを開発したほか、十六銀行などの地域金融機関も自治体向けに金融機能を提供する。「黒子型金融」はネット銀行が先行しており、銀行間の取り込み競争が一段と激しくなっている。 三井住友カードがシステム構築のTISと提携して企業に提供するのは、決済やポイントの付与、送金、アプリ開発の機能を包含したスマートフォン決済の基盤だ。この基盤を使って開発した決済アプリは、QRコードやクレジットカードのタッチ決済にも対応できる。顧客企業の利用者はクレジットカードや銀行口座からチャージ(入金)し、買い物時に使える利点がある。 必要に応じて、アプリ間の送金や顔認証などの機能を盛り込めるほか、三井住友カードが提携する米ビザの加盟店で使えるため、企業が自ら加盟店を開拓する手間も省ける。基盤を使えば企業が個別にアプリをつくるより開発費を7割減らせ、期間も4割短くできるという。開発資金の捻出が難しい地場の食品スーパーやキャッシュレス化が進まない地方の交通事業者などの利用を想定し、売り込む方針だ。 実用化に先立ち、ANAホールディングスの「ANA Pay(ペイ)」には提供しており、そこで蓄積した技術やノウハウを基に、提供先を一段と広げる。提供側の三井住友カードはシステムの導入料に加え、決済ごとに手数料を受け取ることで収益を確保する。 十六銀行を含む地域金融機関はNTTデータなどと組み、自治体向けに同様のサービスを始める。個人の銀行口座から特定の地域で使える地域通貨に入金したり、地域商品券をアプリで受け取ったりすることができるようになる。 大手銀行では、三菱UFJ銀行もパートやアルバイトが給与の計算やシフトの管理をできるリクルートのアプリで銀行口座を開設できるようにしている。NTTドコモは三菱UFJの機能を使い、昨年12月に「dスマートバンク」を始めた。 銀行やカード会社が持つ金融機能を小売業やサービス業に提供し、スマホのアプリなどで使えるようにするのは、「エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)」の一類型だ。ネット取引が一般化し、商品やサービスの売買と同時に決済も完結させる必要性が高まっているため、組み込み型金融への需要も高まっている。システムを裏側で構築する黒子の金融機関にとっては、新たな収益源となる。 フィンテックなど新たな決済プレーヤーの参入が相次ぐ中で、一方的にシェアを切り崩されるのを防ぐ防衛的な側面もある。決済手段の多様化で、自社のクレジットカードの利用が先細りしたとしても、外販によってプラットフォームの提供事業者としてのシェアを確保すれば、決済分野での主導権を維持できるとの考え方だ。 黒子型金融で先行するのはネット銀行だ。GMOあおぞらネット銀行では、サービスの提供先が2023年6月末時点で累計500件超と3年前の8倍以上になった。動画配信や家計管理のアプリで振り込みなどの金融機能を使えるようにしている。住信SBIネット銀行は「ネオバンク」の提供先が高島屋や第一生命保険など10社を超えた。 航空や通信、小売りなど独自の顧客基盤を抱える企業は、金融サービスを顧客との接点を増やし、関係を強化する一環として捉えている。大手金融機関や地方銀行の参入によって、安いコストで自前の決済基盤が持てることになれば、金融サービスに参入する企業が一段と増える見通しだ。 ただ、ブランド力のある企業の決済アプリが浸透し、シェアが高まれば、銀行やカード会社の伝統的な決済基盤が侵食される恐れもある。金融機関側は「組み込み型金融」によって、企業とウィンウィンの関係を築きたい考えだが、今後の技術の発展によって企業側が自らノウハウを蓄積し、金融機関を頼らなくても済むようになる可能性もある。金融機関は同業間の激しい競争に対応するとともに、技術革新に応じて絶えずサービスを刷新していく必要がある。 2023/08/01 06:36:2918.名無しさん0xj7n野村株が急落 「出資先の損失がサプライズ」「海外が足を引っ張る」 アナリストの見方2023/08/02 13:20 日経速報ニュース 2日午前の東京株式市場で野村ホールディングス(8604)株が急落し、前日比8.5%安となる場面があった。きっかけは1日に発表した2023年4~6月期決算(米国会計基準)。連結純利益は前年同期の14倍の233億円だったものの、ホールセール部門での収益低下などが足かせとなり、市場予想(366億円)を下回った。アナリストの見方をまとめた。■三菱UFJモルガン・スタンレー証券の辻野菜摘シニアアナリスト「出資先の損失はサプライズ」・レーティング=「ニュートラル」(据え置き)・目標株価=590円(据え置き) 営業部門の税引き前利益は229億円と三菱モルガン予想を80億円上回った一方、ホールセール部門は21億円にとどまり、三菱モルガン予想(151億円)を下回った。特に欧州の(金利やクレジット関連を取り扱う)フィクストインカムなどの収益回復が想定ほど出なかったうえ、人件費が高止まりした。7月28日の日銀の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の変更は顧客フローにはポジティブと見ている。 サプライズは出資先の米アメリカン・センチュリー・インベストメンツ(ACI)の損失が130億円を上回ったことだ(三菱モルガン試算)。4~6月期純利益は野村全体で233億円と三菱モルガン予想(435億円)を下回った。主因はACIの評価損約137億円(試算値。従来の三菱モルガンの想定は評価益30億円)による。■大和証券の渡辺和樹氏「決算の印象はややネガティブ」・レーティング=「3(中立)」(据え置き)・目標株価=450円(据え置き) 決算の印象はややネガティブだ。4~6月期の純利益は233億円となり、大和想定(500億円)を下回って着地した。大手米銀との比較では、円安効果を踏まえるとフィクストインカムが軟調に見える。一過性ではあるが、米国株指数が上昇するなか、ヘッジ策を講じるACI関連の多額の評価損(大和試算は130億円)は想定外であった。■SMBC日興証券の村木正雄氏「海外が足を引っ張る構図」・レーティング=「2(中立)」(据え置き)・目標株価=531円(据え置き) 株高でリテールが回復したが、他社と異なり海外が足を引っ張る構図だ。インベストメント・マネジメント部門で7月の収益は4~6月平均を上回ると見られるが、海外の自己資本利益率(ROE)は引き続き課題となるだろう。2023/08/02 14:01:2219.名無しさんfsYGx金利上昇でも円安進行――日銀の政策修正「緩和継続目的」 内田副総裁2023/08/03 日本経済新聞 朝刊 日銀の内田真一副総裁は2日午後に開いた千葉市内での記者会見で、7月28日の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を見直した狙いを「緩和をうまく、粘り強く続けていくため」と説明した。為替市場は「経済物価に対して大きな影響を及ぼす重要なファクター」とし、政府と連携して動向を注視する意向も示した。 内田副総裁は2日午前の千葉県内の経済界関係者らが参加する金融経済懇談会での講演で、政策修正は「混乱なく緩和を続けていくための『備え』」とし、「当然、出口を意識したものではない」と話していた。内田副総裁が金融経済懇談会に出席するのは3月の就任後、初めて。 日銀は7月の決定会合で、長期金利の上限の0.5%程度を「めど」とし事実上1%に引き上げる政策修正に踏み切っている。内田副総裁は会見で1%は「念のための上限キャップ」とし、「金利が大きく上昇することは想定していない。経済を抑えるようなものになるとは考えていない」との考えを示した。住宅ローンについても、多くの人が選択している変動金利型には影響がないとした。2023/08/03 06:06:4220.名無しさんfsYGx金利上昇でも円安進行 10年債利回り9年ぶり水準、急変嫌う日銀を市場見透かす2023/08/03 日本経済新聞 朝刊 金融市場で金利上昇と為替相場の円安・ドル高が同時に進行している。日銀は政策修正に踏み切ったものの、急激な金利上昇を容認しない姿勢が示され、緩和政策自体の撤回には当面踏み切らないと市場が見透かしたためだ。政策修正を通じ、円安抑止を狙ったとされる日銀の思惑とは異なる方向に進んでいる。 長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは2日、一時0.625%まで上昇(債券価格は下落)し、2014年4月以来、9年4カ月ぶりとなる高水準を付けた。 日銀が7月28日に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化を決めて以降、じりじりと金利は上昇している。 さらに、日銀は8月2日、定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)を実施した。オペの中心となる国債の買い入れ額は前回と同額だった。市場では日銀が一定程度の金利上昇を容認した、と受け止められたことも影響した。 一方、外国為替市場で対ドルの円相場は1㌦=143円台前半と、円安・ドル高の傾向が続いている。日銀がYCCの修正を決めた7月28日以降、ほぼ1週間で5円ほど円安・ドル高が進んでいる。 本来、為替市場では金利が高い国の通貨が買われやすい。これまでは長期金利が0.5%以下に抑えられている日本の円に比べ、金利が4%程度の米ドルにお金が流れやすかった。日銀の政策修正で金利が上昇すれば日米の金利差は縮まり、円高・ドル安が進んでもおかしくない状況だ。 金利上昇と円安・ドル高が並走する要因の一つが、日銀は穏やかな金利上昇は容認するものの、急激な動きは許容しない姿勢を示したためだ。 日銀は7月31日、臨時の国債買い入れオペを実施した。YCCの対象となる残存期間「5年超10年以下」の国債を対象に3000億円を買い入れた。当日は10年債利回りが一時前日比0.065%上がるなど、急上昇する場面があった。 日銀の植田和男総裁は7月28日、「根拠のない投機的な債券売りがあまり広がらないよう、コントロールしていく」と市場をけん制していた。 もう一つは日銀の緩和維持のスタンスが変わらないことだ。植田総裁は7月28日、「YCC柔軟化は(金融)政策の正常化へ歩み出すという動きではない」と述べ、YCC修正はあくまで金融緩和を維持するための施策であると強調した。 日銀は最新の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率を24年度で1.9%に引き下げ、25年度で1.6%に据え置いた。目標の2%にはとどかず、市場では「マイナス金利の撤廃はまだ先」との見方が強まった。 金利上昇ペースが鈍いと円安傾向が続き、輸入物価高が再加速する恐れも出てくる。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「日銀が金利の急上昇を許容しない限り、当面の間円安は進んでいくだろう」とみる。 ただ、今後も円安傾向が続くかは不透明だ。「今後は日銀のインフレ見通しの上方修正とともに、長期金利が1%に向けて上昇していく可能性が高く、円高圧力がかかる」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)との見方もある。 物価高に目を配りつつ、金利の急上昇をどう回避していくか。日銀に課された課題は大きい。2023/08/03 06:08:2521.名無しさんfsYGx日銀には低金利政策の説明責任がある 門間一夫氏-みずほリサーチ&テクノロジーズエグゼクティブエコノミスト2023/08/03 10:30 日経速報ニュース 日銀は現在、これまでの金融政策に関する多角的レビューに取り組んでいる。まとまるのは2024年夏以降になりそうだ。ここでは、過去25年の日銀の政策が金融市場や金融システムに及ぼした副作用も分析される。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)が債券市場の機能に与えた影響や、マイナス金利が金融システムに与えた影響は、間違いなく分析の対象になる。 しかし、ほかにも長期にわたる低金利政策が深刻な問題をもたらした、という批判が少なくない。例えば「低金利が財政規律を弱めた」というのは最も多い批判である。また、「非効率な企業を温存してきた」「過度な円安を招いた」「資産価格にバブルを起こした」「緩和の出口で日銀が債務超過になる」等々、日銀はそれこそ多角的に批判されている。 仮に、こうした批判が正しいとすれば事態は深刻である。日銀が続けてきた政策の副作用は、債券市場や金融機関への影響など限られた範囲にとどまらず、資源配分をゆがめて日本経済にダメージを与えた、あるいはこれから与える、ということになるからだ。ただ、筆者はこれらの批判には誤解や言い過ぎの部分もあると考えている。 例えば、「低金利が非効率な企業を温存し経済の成長力を弱める」という批判は、金利を上げれば非効率な企業が退出し、資金や労働者が生産性の高い企業に移動するという前提に基づく。 しかし、金利の影響は非効率な企業だけでなく成長企業にも及ぶ。新しい技術やビジネスモデルを持った企業が、成長していく過程で地域経済や産業構造に化学反応を引き起こし、それが新陳代謝の原動力となる。そうした元気な企業こそ多額の資金を必要とするのだから、低金利は本来、経済を活性化する方向に働くはずである。日本でそれがはっきり見えないのは、他に問題があるからだ。 また、低金利の時の方が国債を発行しやすいのは当たり前の話だ。高金利で発行するより利払い費も軽減されるのだから、低金利のもとでの国債増発を一概に否定はできない。大事なのは、その国債発行やそれに基づく財政支出が、何らかの基準に照らして過大なのかどうかである。 残念ながら、その評価基準には明確なコンセンサスがなく、実際問題として、経済政策を貫く基本精神の影響から逃れることはできない。デフレ脱却や2%物価目標を重視すべきだという思想の前では、低インフレである限り、国債増発にはブレーキがかかりにくくなる。財政規律を左右するのは金利ではなく、政策思想である。 このあと仮に2%物価目標が達成されない場合でも、日銀は多角的レビューを踏まえて、いずれYCCとマイナス金利を撤廃するだろう。それはひとつの前進だが、その後も金融緩和自体は続けなければならないかもしれない。本稿で論じた「非効率の温存」「財政規律の低下」など、もし本当ならきわめて深刻な問題について、日銀自身の考え方を整理し、説明することもまた重要である。 2023/08/03 10:40:0022.名無しさんu6Oy6共通ポイント複数広がる――街中の店舗でためやすく(ポイント賢者)2023/08/05 日経プラスワン 2024年に控える三井住友フィナンシャルグループ(FG)のVポイントとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTポイントの統合に向けて、街中での共通ポイントのため方に変化が出そうです。 ドトールグループのドトールコーヒーショップやエクセルシオールカフェなど約1200店で23年8月、Tポイント、イオングループのWAON(ワオン)ポイント、ロイヤリティマーケティング(東京・渋谷)が運営するPonta(ポンタ)ポイントを導入しました。7月まで共通ポイントはNTTドコモのdポイントのみでしたが、4種類から選べます。 同グループの店舗は19年に、共通ポイントをTポイントからdポイントに切り替えました。Tポイント復活の背景には共通ポイントと加盟店の関係の変化があります。以前、共通ポイントは加盟店が1業種1社に限定されたり、加盟店がほかの共通ポイントを導入できない契約を結ぶ例があったりしました。しかし最近は加盟店側が共通ポイントを選び、入れ替えや複数導入する例が増えています。 共通ポイントは消費者が店に行く動機につながります。会員数が数千万人の共通ポイントは加盟店独自のポイントサービスより集客効果が高いです。統合後の新Vポイントの使い勝手で客が集まる効果への期待が加盟店側にありそうです。 店舗で複数の共通ポイントを選べれば、消費者には便利になります。共通ポイントの競争の中で、TポイントとVポイント以外にも気になる動きがあります。ワオンポイントはイオングループ外へのポイントサービス提供を広げています。JR東日本のJREポイントやJR西日本のWESTERポイントなど自社グループで運営する共通ポイントの動向にも注目したいところです。2023/08/05 06:37:2723.名無しさんu6Oy6海外勢手じまい売り重荷――企業の緩慢な変化に嫌気(スクランブル)2023/08/05 日本経済新聞 朝刊 海外勢の手じまい売りが相場の重荷になっている。日銀の政策修正や米国債の格下げなどをきっかけに海外ヘッジファンドはポジション調整を進めている。本格化した2023年4~6月期決算発表では好業績が多いものの、相場を押し上げるには至っていない。個人の押し目買いだけでは株高相場の「第2幕」は見通せない。 「日銀イベントの通過で、しばらくは新しい買い材料は来ないとみて今週ポジションを落とした」。ある香港のヘッジファンドの運用担当者は話す。脱デフレなどを材料に買い進めてきた海外勢が日本株の持ち高を減らす動きが目立つ。 JPモルガンの試算によると、ヘッジファンドの日本株の持ち高は減少している。中でも世界で4000億ドル超を運用するとされる、ポートフォリオのリスクを一定にするように売買する「リスクパリティー」系の日本株持ち高は7月に理論上の保有最大値の約30%まで上昇した後、24%に下落した。 米インタラクティブ・ブローカーズ証券のダニエル・ケリガン最高経営責任者(CEO)は「日本企業は変化に緩慢でヘッジファンドなどがまた様子見の姿勢になっている」と指摘する。 日経平均株価は6月中旬からもち合い相場が続いてきた。だが3日までの2日間で日経平均は1317円下落。「もち合い放れにつけ」との相場格言がある通り「海外ヘッジファンドが買いポジションを減らす動きにほかの市場参加者が追随し、実際の売りの大きさ以上の値動きになった」(T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダー)。 4日の日経平均は33円(0・1%)高と小動きで終わり、個人の押し目買いの勢いは限定的だった。松井証券の午前の売買代金データでは買いが56%と売りを上回ったものの、午後に売り買いはほぼ同水準となった。 4~6月期決算についても「新たな買いを呼ぶような材料が見当たらない」(SOMPOアセットマネジメントの田中英太郎シニア・インベストメントマネージャー)。業績上振れ要因は値上げ、インバウンド消費や自動車生産の回復など既に織り込まれた材料が大半と同氏は指摘する。 4日に公表された大量保有報告書では英運用会社ベイリー・ギフォードがトプコンの保有比率を引き下げた。リオープン(経済再開)銘柄の一部にも利益確定の売りが出ている。 海外勢の買いが途絶えたわけではない。3日にブラックロックが大成建設などの買い増しを報告した。半導体工場の新設など国内の設備投資の増加も追い風になる。 構造改革を進める銘柄も買われた。花王が3日に中国での紙おむつ生産終了を発表すると、4日の株価は6%上昇した。ただ、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネージャーは花王を評価しつつも「改革の動きは大企業のほんの一部に限られている」と話す。 上値を追う勢いにかけるのは、これまでの株高のテーマの次が見いだせていないためだ。より多くの企業で新たな成長に向けた動きが見えることが株高相場の再始動に必要となる。2023/08/05 06:47:0124.名無しさんhYfPk日本株買い「第2幕」の胎動 海外勢、割安銘柄を選別2023/08/06 04:00 日経速報ニュース 6月、シティグループ証券はジャパン101ミーティングを始めた。「101」とは入門の意味。同社アナリストが推奨する日本株の1つを取り上げ、オンラインで世界の投資家に向けて事業内容や強みなどを基本から解説する。これまで12回開催し、アジアの投資家を中心に毎回20?30人が参加した。 シティには海外投資家から「円安以外に日本株に強気になる材料を教えて欲しい」「東証の低PBR(株価純資産倍率)改革の詳細を知りたい」といった問い合わせが相次ぐ。武田理奈エクイティ営業部共同部長は「日本株を見ていなかった香港やシンガポールの投資家が関心を持ち始めた」と話す。【関連記事】割安日本株の逆襲はまだ続く 日経平均株価が33年ぶりの高値圏にある。その原動力は海外投資家だ。日本取引所グループによると、4月以降の17週間で海外投資家は現物と先物合計で8兆円超の日本株を買い越した。アベノミクスが始まった2012年11月以降の17週間の買越額は6兆円超であり、今回は勢いで勝る。 それでは海外マネーはどんな銘柄に向かったのか。QUICK・ファクトセットのデータを使い、22年末から7月末までに海外投資家(日本以外に本社がある法人)の保有金額が増えた銘柄を抽出したところ、上位には東京エレクトロンやソニーグループなど主力の大型株が並んだ。 その背景には買い手が「指数プレーヤー」だったことがある。4月以降、世界株の中でも日本株の上昇が目立ち始めると、ベンチマーク(運用目標)より少なくしていた日本株の持ち高を増やそうと、株価指数先物や指数連動型ファンドに資金が入った。投資家別で見ても同期間に日本株の保有額が増えたのは米バンガードやブラックロックなど指数連動型運用に強みを持つ運用会社だった。 指数プレーヤー主導の上昇が海外勢の買いの「第1幕」だとすれば、足元では個別株を物色する「第2幕」の兆しが出てきた。 海外投資家の保有比率が上昇した銘柄をみると、上位にはそーせいグループやセントラル硝子など中小型株が目立つ。保有比率が約6ポイント上昇したウシオ電機は英M&Gインベストメンツの日本株ファンドに組み入れられている。日本株のアクティブファンドにも資金が流入し、個別株買いを後押ししている。【関連記事】外国人買い第2波呼ぶのは「高くなるニッポン」 グローバルな投資家による日本株の投資判断の引き上げも相次いでいる。ブラックロックが6月に「弱気」から「中立」に引き上げたほか、英シュローダーや仏アムンディなども「中立」に変更した。こうした投資家の日本株買いが広がれば「個別銘柄の選別が強まる」とシティの武田氏は見る。 「今後10年保有したい」。1250億カナダドル(約13兆円)を運用するカナダのオンタリオ州地方公務員年金基金は6月、高い技術力を持つ日本企業に投資していることを明かした。「日本には優れた事業を展開し、企業統治に注意を払い、高い配当金を出す企業がある」と話す。 日本株に世界のマネーが流入したのは03年からの小泉相場、12年からのアベノミクス相場に続き3回目だ。スパークス・グループの阿部修平社長は過去2回の相場との違いについて、「今回は海外投資家が日本が長いデフレから脱却しつつあることに気づいている」と指摘する。 7月28日には日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化を発表した。市場は「金融緩和継続」と受け止め、外国為替市場では円安が進行。輸出銘柄に追い風が吹く。最低賃金の引き上げが決まり、実質賃金がプラスに転じれば、内需銘柄にも期待が高まる。2023/08/06 10:11:2225.名無しさんhYfPk 足元では海外投資家の日本買いに一服感が出ている。再び買いに動く第2幕はいつ来るのか。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真チーフ・ポートフォリオストラテジストは「早ければ秋にも本格上昇が始まる」とみる。 「インデックス買い」から個別株の物色へ 割安・好業績・中小型株に触手 今回の株高で海外投資家に買われた銘柄は何か。QUICK・ファクトセットのデータを使い、7月末時点の海外投資家(日本以外に本社がある法人)の株式保有比率が2022年末比で上昇した銘柄をランキングしたところ、中小型株や割安株が上位に入った。大型株買いが目立つなかでも、個別銘柄を物色する動きが広がり始めている。 5位のセントラル硝子や9位のイエローハットなど、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割る銘柄に買いが入った。オービス・インベストメンツ日本法人の時国司社長は「東証の是正要請を受け、今度こそ日本企業の資本政策が変わると期待している」と話す。 低PBR改善に向けて動き出している企業もある。7位のウシオ電機は5月、発行済み株式(自己株式を除く)の17%に相当する300億円を上限とする大規模な自社株買いを実施すると発表した。当時0.8倍台だったPBRを引き上げる狙い。英M&Gインベストメンツは7月、同社株を5.2%まで買い増したと大量保有報告書で公表した。 株価が下落し相対的に割安になったタイミングでの買いもある。4位の創薬スタートアップのそーせいグループは6月27日、提携先の米ファイザーが糖尿病薬の開発を中止すると発表したことを受け、株価がストップ安の前日比22%安を付けた。株価下落後の7月、米運用大手キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメントは保有割合を5.9%から7.3%(共同保有を含む)に引き上げたことを明らかにした。 そーせいは海外投資家に向けたIR(投資家向け広報活動)に力を入れている。3月に東証グロースからプライムに移行したことをきっかけに、「欧州と米国で対面でのIRを増やしている」(クリストファー・カーギル社長)。足元ではスイス製薬の日本事業の買収が好感され、株価は回復傾向にある。 円安・ドル高を受けて中小型の輸出銘柄にも買いが入った。14位の小型建機メーカーの竹内製作所は24年2月期の連結純利益が172億円と過去最高を更新する見通し。同社は海外売上高比率が9割超の輸出銘柄として海外投資家にも知られている。米フィデリティ・マネジメント&リサーチは22年から徐々に買い増している。 個別株の物色は地方の中小型株にも及ぶ。三重県菰野町に本社を置くジャパンマテリアルが11位に入った。半導体工場向け特殊ガスを手掛ける予想PER(株価収益率)が52倍台の中型グロース(成長)株だ。22年11月には台湾積体電路製造(TSMC)などが建設を進める熊本県の工場にガスを供給する拠点を設けた。 一方で外国人保有株の金額ベースの増加額のランキングでは、別の景色が見えてくる。1位の東京エレクトロンや4位のキーエンスなど、「海外投資家が好むわかりやすい大型株」(国内証券のストラテジスト)が並ぶ。上位でPBR1倍割れの割安株は三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行と日本製鉄だけだ。 4月以降、日本株の注目が集まると、株価指数先物や指数連動型のファンドに資金が入り、大型株が買われた。例えば東京エレクトロンは米ブラックロックの「iシェアーズMSCIジャパンETF」に組み入れられている。 足元で海外勢による日本株買いは一服しているが、BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは「脱デフレによる賃金上昇や業績の上方修正への期待から、海外勢の買いはじわじわ増えていくだろう」とみる。「第2幕」の主役は個別株になる可能性が高く、各企業の動向に目を凝らすことが重要だ。2023/08/06 10:12:5726.名無しさんhYfPk銀行は成長を切り開けるか 記者はこう考える-銀行150年 新たな挑戦 記者座談会2023/08/06 05:00 日経速報ニュース 日本初の銀行、第一国立銀行(現みずほ銀行)の設立から150年の7月、日本経済新聞は連載企画「銀行150年 新たな挑戦」をスタートした。テクノロジーの進化で金融の境界線が揺らぎ、銀行は成長か衰退かの岐路に立つ。成長を切り開いていくために何が必要か。メガバンクの戦略から人材獲得、金融規制まで6つの論点を取り上げた。 連載を終え、執筆した6人の記者と担当デスクで記者座談会を開いた。取材の現場で記者は何を見聞きし、記事にどんなメッセージを込めたのか。銀行や金融当局への厳しい注文も飛び出した。 みずほ、幻の社名変更 石川潤デスク「150年目の銀行はどう変わろうとしているのか。日本の金融をリードするメガバンクはどうか」 渡辺淳記者(金融機関キャップ)「名は体を表すというが、象徴的なのが、みずほフィナンシャルグループ(FG)が新しい中期経営計画をつくるにあたって、会社名から『フィナンシャル』を削除することを議論していたことだ。企業の課題が高度化し、金融だけではソリューションを提示できなくなっている。結局は法律の縛りもあってお蔵入りとなったが、考えさせられた。三井住友FGの太田純社長も金融だけでは顧客のニーズに応えられないと語っていた。金融グループの中で銀行の位置づけが落ちていると感じた」 玉木淳金融エディター「メガバンクの進む方向の羅針盤として、トップの発言はシャープだ。ただ、思いは伝わるが、重要なのは行動にどう移すか。メガバンクはずっと前から脱銀行と言っているが、スピードが足りない。銀行法の改正を自分たちで働きかけるというところまでやっていないのではないか」 五艘志織記者(日銀担当)「メガバンクの地位低下は若者世代の友人と話していても感じる。取材で東洋大学の野崎浩成教授は(顧客の購買行動の入り口である)カスタマージャーニーが始まるところで負けていると言っていた。私自身は『楽天経済圏』に入り込んでいるが、そこで使える銀行、カードという視点で金融サービスが選ばれていく。銀行はそうした経済圏を持つ企業の裏方に回るのか、戦うのか、岐路に立たされている」 石川「三菱UFJFGの亀澤宏規社長は黒子になると宣言していた。一方で、自分たちで経済圏をつくろうとしている銀行もあるね」 渡辺「メガバンク幹部が注目しているのはJPモルガン・チェースだ。旅行会社を買収し、チェースカードを自分たちのポータルで使ってもらい、利用者を循環させるビジネスモデルだ。練りあがったビジネスだが、難易度は高い。三菱UFJのような割り切りもありだろう。旅行、買い物、ストリーミングとネット上のあらゆるサービスに決済は必要で、金融のフロンティアが広がっている。その裏側を引き受けて、ボリュームをとって稼ぐという道も戦略としてありだ」2023/08/06 19:43:5027.名無しさんhYfPk【記事はこちら】①メガバンク、成長か衰退か 揺らぐ金融の境界線 テクノロジーは武器か、脅威か 石川「銀行はテクノロジーを使いこなせているのだろうか」 北川開記者(大手銀・ネット銀担当)「住信SBIネット銀行は人工知能(AI)を使った自動審査で融資を拡大している。上限3000万円なのでメガバンクにとって脅威ではないが、これまで銀行の手が届いていなかったスタートアップへのファイナンスという意味で社会的に意義がある。数十分かかっていた与信判断が1秒でできる。面白いのは住信SBIがこのシステムを愛媛銀行などの地銀にも提供していることだ」 湯浅兼輔記者(金融庁キャップ)「金融の分野にはフィンテックも入ってきている。銀行も最新のテクノロジーを使わないと対抗していけない。金融庁は銀行法を段階的に改正し、銀行の業務範囲を広げている。武器は提供してやるから、稼げないなら稼げる分野に入っていけというメッセージを常日ごろから出している」 渡辺「QRコード決済大手のPayPayの特許出願数は、メガバンク3つをあわせた数より大きいというデータもある。自分たちで新しいサービスをイノベーティブに作っていく気概を(銀行から)感じられるだろうか。バンク・オブ・アメリカなどの海外大手との差はさらに大きい。日本の銀行はこれでいいのか」 石川「テクノロジーには倫理面の問題もある」 北川「中国のアリババグループのゴマ信用では、資産、収入、属性だけでなく、交友関係や購買履歴などをあわせて個人の信用スコアを算出している。これまでお金を貸せなかった人に貸せるようになる半面、お金を借りられず、なぜ借りられないのかさえ分からない人も出てくるだろう。使う情報が遺伝情報などに広がれば、事態はより深刻になる。人権的にどうなのか。法整備も必要になるだろう」【記事はこちら】②銀行の優勝劣敗、AIが決める 審査1秒で切り開く成長 地域再生、銀行は担えるか 石川「メガバンクだけでなく、地銀がどう成長していくのか。地域活性化の軸になれるかというのも重いテーマだ」 玉木「銀行の原点は地域だ。銀行は1927年に制定された銀行法で兼業が禁じられ、銀行しかやっちゃダメと言われてきた。だが、規制緩和で銀行が人材ビジネスとか、地域商社、発電所を自分でつくるようになっている。地域のインフラを全部背負って、担い手になろうとしている。地銀はもしかしたら『かつて地銀だったね』といわれるような存在になるかもしれない」 渡辺「日本の個人金融資産のうち、現預金が5割以上、1000兆円ある。銀行にお金が集まるのは信用信頼の証といえるが、いつまで続くのか。メガバンクはまだいいが、これから若い世代への資産承継が進んでいけば、地銀から都市部の銀行へとお金が抜けていくことになる。20、30年のスパンで考えたとき、そのうち預金の確保が苦しくなる銀行も出てくるのではないか」 玉木「同感だ。預金は勝手に来るものと思っているが、人口が大幅に減少し、人口の分布が変わってくるなか、地銀は優勝劣敗の敗の方に入る可能性がある。どうやって稼いでいくのか、ビジネスを転換しないと生き残りすら危ぶまれる。そこまでの危機感を持っている銀行は少ない」 湯浅「銀行はストックビジネスで、突然死しないと思っている」 玉木「日本では経営が悪化しても公的資金や他行への吸収などで、潰されることなく温存されている。最後は救ってくれるという感覚ができてしまった。これが銀行の危機感を奪い、進化を止めているのではないか」【記事はこちら】③銀行が主役の地域再生 「5%ルール」例外拡大の光と影2023/08/06 19:45:2828.名無しさんhYfPk 文系エリートの憂鬱 石川「こうした変化に対応できる人材が銀行にはそろっているのか」 五艘「どう人材のポートフォリオを見直していくかがポイントだ。経営陣は東大卒、企画・人事畑、いわゆる文系エリートのような人たちが占めてきた。この人たちがどこまでテックの人材を受け入れながら変わっていけるか。みずほ銀行が21年にシステム障害を起こした際、人材配置のミスマッチが指摘された。みずほではこの反省から、積極的に異色の人材を採ろうとしている。米IT(情報技術)大手のGAFAにいた人、日本マクドナルドでネットマーケティングした人、いろいろな人を受け入れている。一方で中途入社した人からは、銀行はリスクマネジメントの感度が高いこともあって意思決定が遅いので、新しいことにチャレンジするハードルが高いという戸惑いも聞かれる。まさに銀行の覚悟が問われている」 北川「JPモルガンでは全社員の5人の1人がエンジニア。住信SBIは正社員の約半数がITや技術系の業務に携わり、かなり先を行っている。ただ、メガバンクも変わろうとしている。純血主義といわれてきたが、採用数をみると、中途と新卒が半々ぐらいになりそうな銀行もある。かつては銀行を辞めたら裏切り者みたいな扱いを受けたが、いまでは辞めた人材を再び受け入れている。変わる力はあると思う」 玉木「三井住友信託銀行は国際的に活動する環境NGO(非政府組織)の日本代表を雇った。変わらなければいけないという危機感が強まっているのではないか」 石川「理系出身者がメガバンクのトップになる時代になったが、女性や海外出身者のトップも生まれるだろうか」 玉木「(若手行員に占める女性の割合などを考えれば)女性はあるでしょう。海外出身者はどうだろう」 渡辺「海外出身者は、収益の海外比率が高い損害保険会社ではあり得るのではないか。銀行ではそういった気配は感じない」 玉木「みずほの不祥事の時、海外の人をトップにしたらいいという意見が金融庁にあった」 五艘「外からの風を取り込むのは大事だが、専門人材ばかり優遇されているとプロパーが感じ始めたら内部から崩壊しかねない。処遇は丁寧にやっていくべきだ」【記事はこちら】④異才が変える銀行の常識 「人材の宝庫」は輝くか 37年越しの「貯蓄から投資」 石川「これからの成長を考えるときに、資産運用は大きな軸になる」 藤田和明編集委員「印象的なのは37年前のエピソード。投資顧問業法ができたとき、三菱銀行は米フィデリティ、住友銀行は米バンカース・トラストに力を貸してくれという話になった。そのとき受けた警鐘は『銀行員がやるんじゃない。できるだけ早くプロパーを。カルチャーが違うのだから』というものだった。それから37年、金融庁が4月末に公表したプログレスリポートで指摘したように、資産運用会社はガバナンスに課題がある。資産運用で骨をうずめるんだという人が、トップをやっていない」 石川「変わろうとしているのか」 藤田「もちろん変化もあって、三井住友に聞くと、投信の保有期間が8年に延びている。変動するモノを長期で分散して果実を長期的に得られるようにと、徐々に変化は起きている。資産運用部門は財務的にはあまり資本を使わずに収益を上げられる部門だ。ここのボリュームが出てくると銀行の収益性が高まる。JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)が4月の株主への手紙で『金利や単純な信用リスクをとるだけなら1人の人間とコンピューター1台で十分。(社員)29万人が地球を回る必要はない』と顧客との関係構築の重要性を強調していた」 渡辺「金融庁のリポートを受けて、金融機関は改善策を検討しているが、当局の要請にどう応えるかというところに終始している印象がある。形格好だけでなく、本質的な変化をどう生み出すかが重要だ」2023/08/06 19:48:1629.名無しさんhYfPk【記事はこちら】⑤預金神話、崩すのは誰か 37年前の警鐘生かすとき 銀行法の縛りは必要か 湯浅「金融と非金融の垣根が低くなってきたときに、業法で縛りをかけているのが適切なのかという問題もある。金融庁もかつて、業法ではなく、金融サービスの機能によって規制をしていくべきだと主張していたことがある。たとえば決済では、国内為替も含めてすべての決済を統一的に監督するようにすれば、PayPayも管轄できる。資産運用も同じだ。金融庁も問題意識はあるが、業法を少しずつ変えることで対応してきた。ただ、それは弥縫(びほう)策だと思う。業法に縛られない企業が急成長して、縛られている企業が付いていけなくなっている。同じサービスなら同じ土俵で戦うべきで、いまから本格的に議論すべきだ」 渡辺「金融庁は銀行に何を期待しているのか。世界有数の金融機関に成長してほしいのか。日々のオペレーションをしっかりやってほしいのか」 玉木「金融庁は以前にも国際金融都市構想を打ち出したことがある。今回の資産運用立国プランもベースの思想は一緒だが、資産用にシフトして銀行が中心でないというところに時代の転機を感じる。主役が銀行ではないと暗喩されている。規制に関していえば、金融庁には二面性のようなものがある。(成長を唱える一方で)安定を求めたがるのが当局者。ノンバンクが増えるのは困るので、バンクの世界で制御したいのが本音。銀行はある意味、被害者という面もある」 藤田「資産運用を本気でやるなら、金融庁に資産運用課をつくればいい」 湯浅「(肥大化を避けるため)課は増やせない。どこかを潰さなくちゃいけない」 玉木「金融庁自身が銀行を頂点に置くヒエラルキーを壊さないといけない。金融庁で資産運用は大事という人が多いが、結局は歴代本の金融が大きな曲がり角に差し掛かっていることだけは間違いない。我々はよりいっそう取材に力を入れる必要があるということを確認して、本日はお開きとしましょう」【記事はこちら】PayPayは個人送金2億回超え 縦割り規制、誰のため?記者座談会の参加者渡辺淳 金融機関取材を統括するキャップ。日々の取材で念頭に置いている言葉は「神は乗り越えられる試練しか与えない」。北川開 大手銀・ネット銀担当。取材対象の商品・サービスはなるべく試すようにしており、銀行口座は6つ、クレジットカードは10枚以上保有。玉木淳 銀行取材歴20年の金融エディター。毎年、一晩かけて80キロメートルを歩く強歩大会に参加。銀行の生き残りレースの難しさは強歩大会と重なる。五艘志織 大手行担当を経て日銀担当。趣味で所属するオーケストラが人手不足。人材をひきつけるにはまず対話とミスマッチ防止だと実感。藤田和明 編集委員。東京証券部、ニューヨーク駐在などで一貫してマーケットを取材。資産運用分野のカバーは1990年代後半の金融ビッグバンの前から。湯浅兼輔 金融庁キャップ。現勤務地の虎ノ門周辺の再開発は桁違い。日本経済の地力を感じつつ、雑多な街並みがなくなっていくことに一抹の寂しさも。石川潤 今回の企画の担当デスク。日銀、財務省、金融機関などを取材し、2022年までベルリン支局長。モットーは「誠実に、しかし大胆に」。【ビジュアルで振り返る銀行150年】源流は新1万円札の顔・渋沢栄一 銀行150年の栄枯盛衰2023/08/06 19:49:1330.名無しさんTLXqV「超割安株」仕込みの夏――相次ぐ低PBR対策、還元強化が誘う長期株高(スクランブル)2023/08/08 日本経済新聞 朝刊 株式相場が方向感を欠くなか、PBR(株価純資産倍率)が極端に低い「超割安株」が注目され始めている。小泉相場やアベノミクス相場と比べると市場全体に占める超割安株の割合はまだ高く、資金流入の余地が大きいためだ。足元の決算発表では株主還元の強化など企業の低PBR対策が相次ぎ、投資家の期待感が高まっている。 「期待していた内容が出てきた」。三菱UFJ国際投信の友利啓明氏はいう。運用するファンドで保有する日本郵船が3日昼に上限2000億円の自社株買いを発表したためだ。自社株買いの方針は3月に発表した中期経営計画に盛り込まれていたが、市場は「有言実行」を好感。株価は発表から約1割上昇した。 4~6月期決算にあわせた還元強化の発表が目立つ。運輸事業などを手掛けるニッコンホールディングスは4日、毎年の配当を増額または維持し、減配しない「累進配当」の方針を発表。三菱商事系の日本食品化工は7月31日に中間配当を導入するとした。 還元強化の発表は通常、中間期(4~9月期)か通期決算時が多い。しかし、今年は前倒しの発表が相次ぐ。東京証券取引所の低PBR是正要請を受け、対応策は出せるものから出そう、という企業の姿勢が垣間見える。対応策の発表は「これからもっと増え、盛り上がる」(友利氏)。 ゴールドマン・サックス証券のブルース・カーク氏も「市場の注目は再び低PBR対策に移る」と予想する。6月までの日本株ラリーに乗り損ねた海外投資家に推奨するのが、PBRが0・5倍を下回る「超割安株」だ。 背景には過去の大相場の経験がある。2003年からの小泉相場を振り返ると、東証1部全体に占める超割安株の比率は02年末時点で21%だったが、04年3月には5%を下回り、05年9月にはほぼゼロになった。 アベノミクス相場も同様だ。超割安株の比率は12年10月時点で22%だったが14年末には5%まで低下した。株高が続くなかで、出遅れた銘柄に買いが向かったことがうかがえる。 今回はどうか。超割安株の比率は22年末時点の15%からは低下したが、7月下旬でなお9%と高止まる。長期株高を想定するなら「まだ買える銘柄はある」というのがカーク氏の見立てだ。 農林中金全共連アセットマネジメントの山本健豪氏は西日本フィナンシャルホールディングスや七十七銀行など銀行株に注目する。運用するファンドの一つではおよそ1割を銀行株が占める。銀行株は大半がPBR0・5倍未満だが、低PBRでも流動性の乏しい銘柄は避けて選別しているという。 超割安株は主力の大型株に比べ、そもそも保有している機関投資家が少ないため、先物売り主導で相場全体が下げる局面でも影響を受けにくい面がある。7日も日本郵政(PBR0・35倍)や日本製紙(同0・4倍)、日本電気硝子(同0・45倍)などは上昇した。 もっとも、超割安株にまでマネーが浸透するには海外勢の日本株への関心が続く必要がある。企業も低PBRを脱するためには投資家の買いを待つだけでなく、収益改善など実効性のある改革を打ち出す必要がある。還元強化はいわば、その第1段階だ。投資家の期待に応える回答が相次げば、いよいよ長期株高への道筋が開けてくる。2023/08/08 06:38:5831.名無しさんTLXqV日銀のYCC修正後も円安続く、植田総裁が為替相場に異例の言及でもhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-08-07/RYUW9MT0G1KW01?srnd=cojp-v22023/08/08 09:26:1332.名無しさんbRiR0ウェルズFや邦銀系に制裁金、通信記録保持に不備-SECとCFTCSECの制裁金総額は2.89億ドル、CFTCも4行に合計2.6億ドル一連の調査決着のための制裁金は21年12月以降で計25億ドルを超えるウォール街の大手金融機関の通信記録管理に対し、米証券取引委員会(SEC)などが監視を強める中で、米銀ウェルズ・ファーゴやフランスの銀行BNPパリバは、「ワッツアップ」など非公式の通信手段を使うビジネスメッセージのやりとりを巡り、多額の制裁金を支払うことに同意した。 SECと米商品先物取引委員会(CFTC)が8日公表した一連の処分を合わせると、ビジネス関連のメッセージ保全に関係する調査を決着させるための制裁金は、2021年12月以降で総額25億ドル(約3580億円)を上回る。 SECの発表によれば、この問題の決着に向け、ウェルズ・ファーゴの複数の部門が合計1億2500万ドル、BNPパリバは3500万ドルの支払いに応じる。 両行以外の支払額は、BMOキャピタル・マーケッツと米国みずほ証券がそれぞれ2500万ドル、SMBC日興セキュリティーズ・アメリカが900万ドルなど。11社で合計2億8900万ドルをSECに支払う。 これとは別にウェルズ・ファーゴとBNPは、デリバティブ(金融派生商品)ブローカレッジ部門での同様の違反を決着させるため、CFTCへの7500万ドルの支払いにそれぞれ同意した。ソシエテ・ジェネラルとモントリオール銀行を含む4行の支払総額は2億6600万ドルとなる。 無許可の通信アプリや個人の電子メールをビジネスのやりとりに使用することで、監視の目が届かないことにSECとCFTCは不満を募らせ、行員や社員の通信記録保持の不備に対し、取り締まりを強化している。 ウェルズ・ファーゴの広報担当ローリー・カイト氏とBMOの広報担当者は、調査の決着をうれしく思うと回答した。BNPとみずほ、ソシエテ・ジェネラル、SMBC日興はコメントを控えている。2023/08/09 14:26:2433.名無しさんzyzhM長期金利0.565%に低下 日銀政策修正後の上昇一服2023/08/09 19:53 日経速報ニュース 9日の国内債券市場で長期金利が低下(債券価格は上昇)し、0.565%と2週間ぶりの低水準を付けた。30年物国債入札で投資家の需要が確認できたことに加え、海外市場の金利低下が日本にも波及し、日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正して以来の長期金利上昇が一服した。 長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは前日比0.04%低い0.565%と、日銀が政策修正に動いた7月28日以来の低水準を付けた。 財務省が8日実施した30年物国債入札では、応札額を落札額で割った応札倍率が1年7カ月ぶり高水準となった。投資家の需要が強いことが示され、幅広い年限の国債買いにつながった。 厚生労働省が8日発表した6月の毎月勤労統計速報で現金給与総額が市場予想を下回った。日銀は今後の物価動向を見極めるために賃上げ動向を重視する方針を示している。賃金の下振れで日銀の政策修正が遠のいたとの見方も国債買いを誘った。 また、日本時間8日から9日にかけて、一部の大手格付け会社による米銀の格下げを受けたリスク回避の動きで米長期金利が一時4%を下回った。米債利回りの上昇一服を受けて日本の国債に買いが波及した面もある。 東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「日銀の国債買い入れも金利低下に効いている」と指摘する。 日銀は9日、政策修正後では2回目となる通常の国債買い入れオペ(公開市場操作)を実施した。買い入れ額は全ての年限で政策修正前から据え置いており、残存5?10年の国債は1回あたり6750億円を買い入れている。1カ月あたりの買い入れ額は10年債の発行額(2兆7000億円)に匹敵するため、需給が引き締まりやすい状況となっている。 もっとも、金利低下がこのまま続くかは不透明だ。岡三証券の鈴木誠債券シニア・ストラテジストは「日本でも物価上昇が続き、さらなる政策修正観測もくすぶるなか、0.55%を下回る水準でも国債買いに動く投資家は限られるだろう」と指摘する。2023/08/10 04:24:4434.名無しさんY9006日本株、金融不安に動じず――景気堅調、株主還元も支え(スクランブル)2023/08/10 日本経済新聞 朝刊 欧米発の金融不安が悪材料となるなかで、日本株が底堅さを保っている。9日はイタリアの追加課税に端を発した欧州の銀行株安が波及し、メガバンクなど金融株が下げたものの日経平均株価の下げ幅は限られた。日米の景気回復や日本企業による過去最高の株主還元が材料視され、株価を下支えしている。 9日の日経平均は前日比172円安の3万2204円で取引を終えた。下げが目立ったのが三菱UFJフィナンシャル・グループや第一生命ホールディングスといった金融株だ。 背景にあるのは欧米で浮上した金融不安だ。イタリア政府は7日、欧州中央銀行(ECB)の利上げで金利収入が膨らんでいるのに目を付け、銀行への追加課税を発表。伊銀行大手インテーザ・サンパオロは9%安、ウニクレディトも6%下落した。米国でも銀行株が売られた。米格付け会社が一部の米地方銀行を格下げしたためだ。 日本の銀行株は、欧米の銀行株が大きく下げれば連動した売りに押される。ポートフォリオに占める邦銀株の比率が相対的に上がり「比率上昇を抑えるために機械的に邦銀株を売る動きが出る」(外資系証券のトレーダー)ためだ。 金融株は総じて下落したものの、日経平均の下げ幅は小幅にとどまった。3月の米シリコンバレーバンク(SVB)破綻時は日経平均は一時1600円安、先週の米格付け会社フィッチ・レーティングスによる米国債の格下げでは1300円安と急落した。3月のSVB破綻時はショック安から短期間で相場が反転したため「今回も短期で終わる」と投資家に慣れが出てきている面がありそうだ。 日米景気の堅調さも株価の支えとなっている。野村アセットマネジメントの石黒英之シニア・ストラテジストは先行きの世界景気の動向を示す経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数に着目する。4日発表の7月分では日本は好不況の境目となる100を6カ月連続で上回る。米国も4カ月連続で改善し、底入れからの反転が鮮明だ。 さらに、S&P500種株価指数の構成銘柄の1年先予想の1株利益が回復基調にあり「24~25年には過去最高益の更新が見込まれる」(野村アセットの石黒氏)。米景気回復と企業業績の改善という前提が崩れなければ、米株式相場はじり高傾向が続くとみる。日本株も調整が長引くとは想定しづらい。 日本独自の株高要因も健在だ。9日は神戸製鋼所が一時15%高となった。前日に24年3月期の純利益が過去最高となる見通しを示すと同時に、配当性向を従来の15~25%から30%程度に引き上げたのが好感された。 米モルガン・スタンレーのダニエル・ブレイク氏は23年に日本企業は配当と自社株買いで過去最高の30兆円を支出すると試算する。株主還元の拡充というテーマが相場を下支えする。 日経平均は7月3日に年初来高値(3万3753円)を付けて以降、1カ月以上更新が止まっている。一方、東証株価指数(TOPIX)は8月に年初来高値を更新した。市場では「8月後半にかけどちらの指数の力が強いのかが注目される」(みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリスト)との声が出ている。2023/08/11 06:23:4135.名無しさんMQ8OT年金世帯が脱デフレ左右 消費の4割、資産循環重要に-チャートは語る2023/08/12 05:30 日経速報ニュース【この記事のポイント】・国内の消費支出は65歳以上の世帯が4割・年金暮らし世帯がGDPの15%を左右・高齢者の消費活性化がデフレ脱却と連動 賃上げが30年ぶりの高水準となり、消費の押し上げ効果への期待が高まるなか、高齢化社会ならではの課題が浮かび上がってきた。国内の消費支出は65歳以上世帯が4割を占め、年金暮らしの世帯が国内総生産(GDP)の15%に影響する。物価高で賃上げが進んでも年金世帯は恩恵を受けにくい。高齢者の消費活性化がデフレ脱却を左右する。 「将来を考えるとなかなか思い切ってお金を使えない」。横浜市の70代の男性はこう話す。孫へのプレゼントなどには財布のひもは緩むが、大きな買い物は控えがちだ。 高齢者の消費支出に占める存在感は高まっている。世帯主が65歳以上の世帯の2022年の1カ月平均の支出は21万1780円だった。全体に占める割合は約39%になる。少子高齢化に伴い、20年前の約23%からほぼ倍になった。団塊世代の高齢者入りが一巡したことなどから、10年代後半から頭打ち傾向にあるものの、団塊ジュニア世代が高齢者になる30年代からは伸びが再加速する可能性がある。 持ち家を借家とみなした場合に想定される家賃を除いた消費額をもとに第一生命経済研究所の星野卓也氏が試算したところ、年金暮らしと考えられる平均年齢74.5歳の無職世帯の消費額は22年に33%を占めた。 日本の22年の名目GDPの実額は556兆円で、5割を個人消費が占める。GDP全体の15%程度を年金世帯の消費が担っていることになる。 消費者物価指数は生鮮食品を除く総合が6月まで10カ月連続で3%を超えた。今年の春季労使交渉の賃上げ率は連合の最終集計で3.58%と30年ぶりの水準だ。ただ賃上げの恩恵は年金世帯には及ばず、物価高で年金支給額は実質的に減る。 22年の物価上昇などを受け、既に年金を受け取っている68歳以上の人は23年度の支給額が前年度比1.9%増と、3年ぶりに増える。物価の伸び以上に年金額が増えない仕組みになっており、2.5%の物価上昇率を加味すると実質的にマイナス圏に沈む。 日本総合研究所の西岡慎一氏は今後、物価が2%伸びても給付を抑制する「マクロ経済スライド」の発動で受給済みの人の年金の伸びは1%程度にとどまると試算する。この場合、60歳以上で無職の世帯の消費は0.2ポイント押し下げられるという。 一方で高齢世帯は金融資産が多い。日銀の資金循環統計によると23年3月末の家計の金融資産は2043兆円と、過去最高だった。19年の全国家計構造調査では、65歳以上の無職世帯の夫婦の金融資産は1915万円で、全世帯平均より636万円も多い。 65歳以上世帯の金融資産の7割弱は現預金だ。物価高では現預金の価値が目減りする。今年は日経平均株価がバブル崩壊後最高値となるなど株高で「貯蓄から投資」の機運がある中、多くの人が一定の知識を持って適切に資産形成できれば支えになりうる。 問題は将来の不安からお金を使おうとする意欲がそがれていることだ。生きている間に必要になる生活費や医療費が見通しにくいと手元の資産を使って積極的に消費しようという気持ちになりにくい。 人口に占める65歳以上の比率は20年時点で日本が28.6%と突出する。ドイツが21.7%、米国16.6%、韓国15.8%だ。そもそも米国に比べ日本は消費意欲が弱い。 適切に資産形成したり、ライフスタイルにあわせながら可能な範囲で働き続けたりと解はいくつもある。消費のボリュームゾーンとなった高齢者が過度に不安にならずに消費できる前向きな社会観をつくれるか。需要不足を脱しきれない日本がデフレに後戻りしないためのポイントの一つになる。2023/08/12 06:40:0536.名無しさんScucZ海外勢変調、円安でも株安――TOPIX型に売り 「日本優位」吟味始まる(スクランブル)2023/08/15 日本経済新聞 朝刊 東京市場で円安・株高の構図が変化してきた。14日は円相場が対ドルで今年の最安値を付けるなか日経平均株価は413円安となった。背景に海外投資家の変調がある。 「ここまで円安が進むとドル建てのパフォーマンス悪化など悪い面が注目されやすい」。CLSA証券の釜井毅生エグゼキューション・サービス統括本部長は14日の円安・株安をこう解説した。 7月上旬までの日本株の上昇は円安と並行して進んだ。ところが、下旬以降は円安でも株価の上値は重い。14日はトヨタ自動車が1%安と下げた。過度の円安はガソリン高を通じ個人の購買意欲を下げかねない。 別の外資系証券のトレーダーは海外勢の株価指数先物の売買に、上値の重さの原因を嗅ぎ取る。 大阪取引所によると、海外勢は8月第1週に先物を約4000億円売り越した。このトレーダーが「変質」とみるのは売りの内訳。東証株価指数(TOPIX)型が約2800億円で日経平均型の2倍超と大きい。TOPIX型の売越額の方が大きいのは2週連続だ。 TOPIX型主導の売りは何を意味するのか。 「流動性の高い日経平均型はヘッジファンドなど短期勢が主に値幅取りや裁定取引に使う一方、TOPIX型は中長期目線の投資家が使うことが多い」。JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは両者の違いをこう説明する。 海外勢の日本株買いが本格化した4月第2週以降、短期的な過熱感から先物が売られる局面では日経平均先物への売りが大きく、TOPIX型は少額の売りか、むしろ逆行して買われてきた。足元での変化は、中長期の海外マネーが日本株から離れていることを示唆している可能性がある。 8月にTOPIX型の売り越し幅が大きいのはJPモルガン証券やBofA証券など中長期の顧客が多い米系だ。 個別株でも海外勢好みの銘柄は売られやすくなっている。日経500種平均株価の構成銘柄を対象に、外国人持ち株比率の上位100銘柄群と下位100銘柄群の日々の値動きの差を3月末から累積すると足元でマイナスが深まっている。外国人持ち株比率が高いほど下げていることを示す。 代表例が国際競争力が最も高い分野のひとつとされるロボット分野だ。ファナック株は6月に付けた年初来高値から23%下落。ナブテスコはほぼ1年半ぶりの安値に沈む。ともに中国で設備投資需要が予想以上に落ち込んでいることが売りにつながっている。 日本株買いの理由のひとつには経済安全保障などを背景にした中国株から日本株への資金シフトがあった。ただ、中国経済不振は日本株にもはね返ることが4~6月期決算で認識されてきた。 日本株の優位論は全体には揺らいでいない。物価上昇を背景とした名目国内総生産(GDP)の拡大は、企業業績を予想以上に押し上げ、円安はインバウンド(訪日外国人)にはプラスとなる。 ただ、海外勢は優位点のひとつひとつを吟味し始めている。TOPIX先物の売りが膨らんだ7月第4週は、日銀が政策修正したタイミングに重なる。「『緩和姿勢の後退』と受け止められ海外勢の売りにつながっている可能性がある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真チーフ・ポートフォリオストラテジスト) 資本効率の引き上げなど改革の動きが鈍いとの声も聞かれはじめた。株高持続には「変わる日本」の実績を積み上げる必要がある。2023/08/15 06:05:3337.名無しさんScucZGDP上振れ インフレ伴う経済成長に・みずほ証の小林氏2023/08/15 09:50 日経速報ニュース 小林俊介・みずほ証券チーフエコノミスト 4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値はかなり強い内容だった。自動車生産やインバウンド(訪日外国人)の回復で輸出が伸びたほか、経済再開で設備投資も改善が続いている。自動車の生産台数はピーク時を下回ったままで増加余地があるうえ、今年の春季労使交渉(春闘)で確認できた賃上げが反映されるにつれて実質賃金もプラスとなり、個人消費も力強さを取り戻す可能性が高い。 輸入が落ち込み、内需の弱さが目立ったことで市場ではあまり良い内容ではないとの声が出るかもしれない。しかし、賃金上昇を背景に内需は個人消費を中心に伸びていくと考えている。総じてみると日本経済は良好といえる。特に名目成長率が非常に高く、日本は数十年ぶりにインフレを伴う経済成長を実現している。株式市場では景気敏感のバリュー(割安)株に加えて、販売単価の引き上げが可能な(競争力の高い)内需銘柄に対しても物色が向かうだろう。 4~6月期の景気回復で需給ギャップはプラスに転換したとみられ、物価や賃金の上昇圧力がかかっていくとみている。7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しの上振れリスクが大きいとした日銀の見方を裏付けるGDPだった。マイナス金利政策や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の解除といった早期の金融引き締めには引き続き慎重だろうが、物価・賃金が強含むなかで金融政策の自由度は増すと予想している。2023/08/15 09:58:1138.名無しさんDkAIXNYダウ反落、361ドル安 中国景気懸念や銀行株安が響く2023/08/16 05:51 日経速報ニュース 【NQNニューヨーク=戸部実華】15日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前日比361ドル24セント(1.0%)安の3万4946ドル39セントで終えた。中国景気の減速懸念が強まったうえ、米金融セクターを取り巻く不透明感が米株相場全体の重荷となった。米長期金利の上昇も株式の相対的な割高感につながり、幅広い銘柄に売りが出た。 15日発表の中国の7月の工業生産高などの経済指標が軒並み市場予想を下回った。同日には中国人民銀行(中央銀行)が期間1年の中期貸出制度(MLF)金利を引き下げた。中国の不動産大手の経営不安も浮上しており、同国経済の先行き不透明感が高まった。 中国など海外の売上高比率が高い銘柄が売られやすく、ダウ平均の構成銘柄では化学のダウが3%安、工業製品・事務用品のスリーエム(3M)が2%安となった。中国の原油需要が伸び悩むとの観測から米原油先物相場が下落。原油安が業績の逆風になるとみて、石油のシェブロンと建機のキャタピラーも下げが目立った。 米金融株が軒並み売られたことも、投資家心理を悪化させた。格付け会社フィッチ・レーティングスが大手米銀を含む70行以上を格下げする可能性があると米CNBCが15日に報じた。銀行の経営環境の厳しさが改めて意識され、JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスが安かった。ダウ平均の構成銘柄ではないが、バンク・オブ・アメリカやシティグループなどが売られた。地銀も下げ、地銀株で構成する上場投資信託(ETF)「SPDR S&P地銀ETF」は3%安となった。 米長期金利の指標である10年債利回りが一時前日比0.08%高い(債券価格は安い)4.27%と昨年10月以来の高水準を付けた。朝方発表の7月の米小売売上高は前月比0.7%増とダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(0.4%増)を上回った。市場では「良いニュースは(米追加利上げ観測を強める)悪いニュースとして受け止められる局面だ」(LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏)との声も聞かれた。 ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は15日、インフレは依然として高水準との認識を示し「(利上げが)終わったとはまだ言えない」と話したと伝わった。金融引き締めの長期化観測も株売りにつながった。 一方、朝方発表した5?7月期決算が市場予想を上回ったホームセンターのホーム・デポは買われた。 ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反落し、前日比157.284ポイント(1.1%)安の1万3631.047で終えた。電気自動車のテスラは3%、ネット通販のアマゾン・ドット・コムは2%下げた。交流サイトのメタプラットフォームズやネット検索のアルファベットも安い。半面、複数のアナリストが目標株価を引き上げた画像処理半導体のエヌビディアは上昇した。2023/08/16 06:04:1739.名無しさんDkAIX株、下値メドは75日移動平均か・東海東京の中村氏 米銀行株安の影響警戒2023/08/16 08:03 日経速報ニュース 中村貴司・東海東京調査センターシニアストラテジスト 16日の東京株式市場で日経平均株価は反落しそうだ。下値メドは前日終値から400円程度安い水準に位置する75日移動平均(3万1830円、15日時点)近辺を想定している。前日の米株式相場の下落が投資家心理の重荷となる。格付け会社フィッチ・レーティングスが大手米銀を格下げする可能性を示唆したことで米銀行株が下落しており、他業種への影響が出ないか気がかりだ。 足元では売買が細る「夏枯れ」シーズンだが、秋からは投資家も増えてボラティリティー(変動率)が高まる可能性が高い。中国景気減速への警戒感が高まってきているうえ、米国景気に対する楽観的な見方が続くかも不透明感は強い。期待先行で世界の株式相場の上昇が続いてきたが、過度な期待が修正される局面に入れば、国内株式市場でも幅広い銘柄に利益確定売りが出る可能性がある。2023/08/16 08:18:4240.名無しさんDkAIX海外勢の米国債保有額、6月は増加 首位日本が保有拡大https://jp.reuters.com/article/usa-treasury-securities-idJPKBN2ZQ1Q42023/08/16 08:27:0941.名無しさんhc3RB東芝TOB融資1.4兆円、条件厳しく 銀行監視、出資企業に不満(金融取材メモ)2023/08/17 日本経済新聞 朝刊 年内の非公開化をめざす東芝へのTOB(株式公開買い付け)が始まった。投資ファンドを中軸とする企業連合の総額2兆円にのぼる買収資金のうち、大手銀行の融資額は全体の過半を占める。巨額の融資に伴うリスクを拭いきれない銀行団は厳格な条件を盛り込み、出資を決めた企業には不満もくすぶっている。 東芝の資金繰りを支える2000億円のコミットメントライン(融資枠)を含め、融資の総額は1兆4000億円。三井住友銀行が5150億円、みずほ銀行が4600億円を引き受ける。三井住友信託銀行と三菱UFJ銀行、あおぞら銀行を加えた5行で融資団を構成する。相手先の企業が抱える資産を担保に融資を実行するLBOファイナンスとしては国内で最大級だ。 融資が固まるまでには曲折があった。調整が大詰めを迎えた昨年12月。ある大手行の幹部は「非上場化してからの成長戦略がみえない」と融資額の上積みに強い難色を示した。東芝が4割出資する半導体メモリーのキオクシアホールディングス(HD)の業績悪化も鮮明になり、上場廃止後の経営を懸念する声は銀行団に根強くあった。 同じ年の夏に破綻したマレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)で債権放棄を含め、4500億円の金融支援を迫られた記憶も生々しい。巨額の融資に伴うリスクをどこまで引き受けられるか、参加行の協議は難航した。 「オールジャパンで支える構成にしたい。協力をお願いできないだろうか」。事態の打開に動いたのは、協調融資を取りまとめる三井住友銀行の高島誠頭取(当時、現会長)だった。みずから大手行の首脳に協力を要請し、負担額の引き上げを求めて回ったという。 参加行の理解を得るため、最高財務責任者(CFO)など重要な経営判断に携わる役員を銀行団から送ることで東芝側と合意。業績不振が顕在化すれば、東芝が保有するキオクシアHD株を売却したり、非上場企業の株式を第三者へ譲渡したりすることを条件に付けた。経営の進捗状況を点検する会議も3カ月に1度開く。 東芝の業績が銀行側と定めた条件に届かない場合、期限前に一括の返済を求めることができる財務制限条項(コベナンツ)にも厳しい内容を盛り込んだ。一般的な純資産や純利益の維持に加え、負債額をEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で割った値が一定の水準に収まるよう要請。こうした条件に抵触すると、業務改善計画の作成と実行に向けた検討を東芝に義務付ける。 確実な返済を担保したい銀行団にとっては必須の条件だが、銀行の監視が強まれば東芝の大胆な事業展開を縛ることにもなりかねない。リスクを引き受けて東芝に投資する企業が反発を強める可能性がある。実際にオリックスは優先株と普通株で3000億円を拠出する予定だったが、最終的に劣後ローンと普通株の組み合わせで2000億円にとどめるなど不満をあらわにした。 それぞれの思惑を秘めて出資した企業はロームや中部電力、スズキ、パロマ、鹿島、JR東海など幅広い業種の計26社。化学繊維を手掛ける韓国企業も名を連ねる。東芝の再出発と成長という共通の目標に向け、足並みをそろえることができるのか。早くも伝わる不協和音からは多難な船出を予感させる。2023/08/17 06:21:2242.名無しさんyrdxS不動産含み益、眠る23兆円――企業のPBR対策に期待(スクランブル)2023/08/17 日本経済新聞 朝刊 上場企業の保有不動産に対する投資家の関心が高まっている。資本効率改善への要請が強まるなか、含み益を抱える不動産を売却し資金を株主還元や成長投資に回すことへの期待が背景にある。主要企業の不動産含み益は過去最高の約23兆円にのぼる。眠れる資産を有効活用し、企業価値を高める経営への転換が株価を左右する。 「これまでは実現性に欠ける銘柄リストだったが、東証の要請を経て現実味が出てきた」。野村アセットマネジメントの宮崎義弘チーフ・ポートフォリオマネージャーが指し示すのは、企業のPBR(株価純資産倍率)に不動産などの含み益を加味した「実質PBR」を示す一覧表だ。 実質PBRは、PBRの分母の純資産に不動産などの含み益(税引き後)を足して算出する。含み益が大きいほど値が小さくなり、割安感は強まる。ただ、企業が不動産などの資産を売却しない限り、含み益は実際の利益とはならない。 これまで日本企業は資産売却に消極的で、実現益には期待しづらかった。典型的だったのが不動産大手だが、変化の兆しも見える。宮崎氏は「資産を売却して株主還元を強化したり、資本効率を高めたりといった戦略が出始めてきた」と話す。実際、オフィス市況の改善なども材料に不動産株を買い付けたという。 含み益が2500億円強ある野村不動産ホールディングスは「保有ビルの売却に聖域はない。含み益のある物件を一部売却し、株主還元や資本効率向上につなげる」(芳賀真副社長)との姿勢を明確にした。約3・2兆円を抱える三井不動産も「適時売却による含み益実現」を経営方針の一つに掲げる。 企業の不動産含み益は拡大が続いてきた。継続比較できる主要企業の賃貸等不動産の含み益は2022年度末で22兆8203億円にのぼり、10年前比で2・6倍になった。純資産に対する比率も3割弱と10年前の2割弱から拡大した。 直近年度で不動産含み益の比率が高く、実質PBRが1倍を割っている約100社の7月以降の株価騰落率は中央値で2・2%高と、割安株(同0・3%高)や主要企業全体(同0・4%安)を上回る。東証のPBR改善要請を受けた自社株買いや増配が一巡し、「次の一手」として資産売却に動く企業が増えるとの見方がうかがえる。 期待は不動産セクターにとどまらない。三菱UFJ国際投信の末永壮視シニアファンドマネジャーは「倉庫や鉄道などの資産活用にも注目できる」と指摘する。例えば、約1・6兆円の不動産含み益をもつJR東日本は3月に私募REIT(不動産投資信託)を組成。自社の物件を売却して得た資金を、高輪エリアなど成長案件に投じる。 もっとも、含み益の実現可能性には企業によって濃淡があり、過剰な期待は禁物だ。1980年代のバブル期には企業の持つ土地などを時価評価して算出する「Qレシオ」が異常な株価を正当化する指標として注目された例もあった。 それでも、日本企業のPBR改善は息の長いテーマになるとの見方が多い。不動産価格の上昇も続くなか、中期的には含み益を実現益に転換する動きが続くとみられる。「眠れる資産」を持つ銘柄を探る動きは活発になりそうだ。2023/08/18 06:09:3043.名無しさんyrdxSインフレ下の老後をどう生きるか-人生100年こわくない・マネー賢者を目指そう(熊野英生)2023/08/18 04:00 日経速報ニュース 世の中には明らかに弊害が起きているのに、ほとんど誰もが正面切って問題視しないことがある。猛暑の背後に地球温暖化が加速していること。住宅購入費用がコロナ禍で高騰していること。そして、本稿で取り上げる老後の生活費がインフレで増加し、その一方で準備資金が実質的に目減りしていることだ。 日経ヴェリタスの読者には、このインフレリスクのことは説明すれば十分にわかってもらえると思い、少し踏み込んで議論してみる。 「インフレ課税」で割り負け まず日銀は7月の金融政策決定会合で、長期金利が0.50?1.00%へと上昇することを事実上容認した。もう1つ、「展望リポート」を改定して、2023年度の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比見通しを2.5%に上方修正した(前回4月の見通しは1.8%)。 長期金利はその利回りがたとえ1.00%であっても、物価2.5%に割り負けている。つまり、老後資産を日本国債で運用しても、生活費をまかなうだけの収益が得られないことを示している。それどころか、老後資産の元本価値は年間2.5%ほど減価していることになる。物価2.5%と言っても、食料品(含む外食)は10%近く高騰している。厳密に言えば、生活物価は除く帰属家賃でみる必要があるので、消費者物価(除く生鮮食品、帰属家賃)は2.9%へと上がる。目減りを防ぐために老後資産の運用利回りは、税引き前で3.6%はほしいということになる。 もう少し先の期間までみると、23年度2.5%の後は、24年度1.9%、25年度1.6%になっている。3年間平均の消費者物価(除く生鮮食品、帰属家賃)の伸び率は2.3%となる。元本価値を目減りさせないための税引き前運用利回りは、2.9%という計算になる。 筆者は、円資産の価値が運用利回りを含めて考えても、物価上昇率に割り負けていくことを「インフレ課税」と呼んでいる。元々は、経済学者J.M.ケインズがInflation Taxと言っていた言葉だ。Taxと呼んでいるのは、まるで課税されているようだという意味だ。実際、日本の政府債務残高は、長期金利がインフレ率よりも低いことで減価しているから、私たちは「見えない税金」を支払っているのと同じことになる。 君たちは年金をどうするか 私たちが直面している老後のリスクには、年金リスクがある。23年度の年金収入は前年比1.9%と増えた(68歳以上のケース)。しかし、これは22年の物価上昇率2.5%に対して割り負けている。マクロ経済スライドの仕組みによって、年金収入の実質的な伸び率はマイナスになるように運命づけられている。04年の年金改革によってこのルールは決定され、今後の年金は目減りしていくことが避けられない。年金の目減りは明白なリスクである。 これに対して、私たちは就労によって老後の生活を支えることが半ば強制されている。就労しなければ食べていけない。しかし、年金の在職老齢年金システムでは、年金収入+就労収入が48万円を超えると、超過した金額の半分が年金収入からカットされる。シニアは高い給与で働くと何かペナルティーを課されるように感じる。年金をカットされるのを恐れて、自分の能力に比べて低い就労収入しか受け取らない人も少なくない。年金の中には、自分で積み立てている部分が多いのに、自分が稼ぐほどにそれがカットされるのは矛盾していると思う。 非常に良くないのは、企業側はシニアになると年金収入があるからという理由で、能力のある人であっても給与水準を極端に低くすることが多いという点だ。これだけシニアの就労が増えているのに、自由な就労を妨げる仕組みが制度の中にビルトインされている。 この年金カットを避けるためには、支給開始年齢を65歳から例えば70歳あるいは75歳に繰り下げるしかない。70歳を選択すれば、年金収入は42%増、75歳ならば84%増にすることができる(年齢によって増加率は変わる)。その半面、繰り下げをすると生涯の受取期間は短くなる。長生きリスクに備えて繰り下げを検討せよという仕組みは、国が国民に厳しい選択を迫っているのと同じだと感じる。年金支給条件を人質にして、「君たちはどうするのか?」と選択を求めている。2023/08/18 06:14:0444.名無しさんyrdxS 配当・利息収入の第3の道 就労収入に頼ろうとすると在職老齢年金の壁がある。だから、それ以外の選択を考える必要がある。それは配当・利息収入を大きくする余地を考えることだ。配当収入を増やすためには、株価が低いときに高配当銘柄に投資するのが良い。現在のようなタイミングはあまり良くない。利息収入は海外の長期国債に高利回りで投資することで得られる。米国の長期国債は8月に一時4.2%台まで上昇した(図表)。為替リスクはあるが、インカムゲインは十分に得られる。 ここで検討すべきは、①米長期金利(海外金利)がいつ頃ピークをつけるか②今後10年間の為替リスクをどう評価するか、という主に2点であろう。米経済は今のところ堅調で、まだ米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転じるタイミングが読めない。米長期金利は利下げ予想具体的に語られ始めるときにピークアウトするだろう。 米消費者物価は6月に前年比3.0%まで低下してきた。その中身はまだ強いインフレトレンドを感じさせるので、利下げは少し先だと思える。23年9月?24年6月のどこかでいったんピークは来るだろう。ピークがわからないときは、時間分散という手法がある。 次に為替リスクをどうみるか。すでに円安が相当進み、先々は円高とみる人はいると思う。しかし、筆者は長期的にもっと円安は進むと予想する。ドル円レートは12年以降、円安トレンドをたどっている。今後10年間の日本の長期金利は、たとえ日銀がマイナス金利を解除したとしても低位の状態が続くとみる。日本の政府債務は長期のインフレでじわじわと減価していき、同時に家計金融資産も減価するというシナリオだ。 ドル資産を持たないリスク では、米国側にドル価値が急落するリスクはないか。33年までには3回の大統領選挙がある。ちょうど33年は、その前年秋に新大統領が就任する年に当たる。そこまで見通すことは屋上屋を架すことに似て、あまり信頼性のあることは言えない。 むしろ、今後はドルを資産として保有していないことの方が、円安リスクや円資産のインフレリスクを負うことになるのではあるまいか。 最後に日本株はどうか。実は日本で外貨を多く保有するのはグローバル化した製造業である。正確に言えば、外貨保有ではなく、外貨を稼ぐ力を有している。21年度の日本の製造業は、総売上高に占める現地法人売上高が25.8%となっている。製造業の株価には、円安メリットが反映されやすい構造である。2023/08/18 06:15:2345.名無しさんyrdxS東証寄り付き 続落 一時300円超安 安川電など中国関連株が下落2023/08/18 09:22 日経速報ニュース 18日前場寄り付きの東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日に比べ200円ほど安い3万1400円前半で推移している。下げ幅は300円を超える場面もあった。米金融引き締めの長期化懸念から米長期金利が上昇し、前日の米株式相場は下落した。その流れを引き継ぎ、日本株にも売りが先行している。中国景気の先行き不安も相場の重荷となっている。 17日の米株式市場ではダウ工業株30種平均など主要3指数が下落した。米CNNなど複数のメディアが「経営再建中の中国不動産大手、中国恒大集団が17日、ニューヨークで破産を申請した」と報じた。中国の不動産市況および景気全般の先行きへの警戒が高まっている。東京市場では安川電などの中国関連とされる銘柄のほか、三越伊勢丹や資生堂などのインバウンド(訪日外国人)関連の一角も下げている。 東証株価指数(TOPIX)は続落している。フジクラや住友大阪、ZHDが安い。半面、三菱重やJFE、アドテストが高い。2023/08/18 09:24:1746.名無しさんyrdxS株、「中国恒大ショック」恐るるに足らずか 落ちるナイフを拾うか見定め2023/08/18 12:26 日経速報ニュース 18日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前引けは前日比60円安の3万1565円だった。中国不動産大手の中国恒大集団の破産報道を受けて、リスクオフの動きが先行し、日経平均の下げ幅は300円を超える場面があった。売り一巡後は18日の中国・上海株式相場が続伸して始まり、日本の株価指数先物に買い戻しの動きが入ったことから、日経平均は上げに転じる場面もあった。「中国恒大ショック」恐るるに足らずかーー。 18日早朝の日本市場で「経営再建中の中国不動産大手、中国恒大集団が17日、ニューヨークで破産を申請した」と伝わり、多くの市場参加者は身構えた。三菱UFJ国際投信の石金淳チーフファンドマネジャーは「破産は中国政府が不動産会社を救済しない姿勢を示したとも受け止められる」と説明する。「共同富裕(共に豊かになる)」の方針を掲げる習近平(シー・ジンピン)国家主席が特定の不動産会社が信用不安に陥ったからといって支援することはないとの見方が一段と強まった。中国不動産最大手で資金繰り難が表面化している碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)などが連鎖的に破産し、中国不動産発の大きなショックが広がるとの警戒が広がった。 中国リスクがリーマン・ショック級の混乱につながる警戒が漂う。東京市場では朝方には安川電機(6506)や三越伊勢丹ホールディングス(3099)など中国関連銘柄が一時、大幅安となった。 もっとも、その後の反応は冷静だ。中国恒大は2年ほど前から実質的な経営破綻状態であることが顕在化していた。「碧桂園控股の信用不安についても足元までにある程度織り込まれているのでは」(三菱UFJ国際投信の石金氏)。18日の中国・上海株式相場が上昇して始まると過度な警戒が和らぎ、日本株にも買いの勢いが強まった。中国リスクは当面、折に触れて市場を揺るがす場面もありそうだが、きょうの午前の動きをみる限り、それなりに耐性も強いとみられる。 8月に入り調整色を強める日経平均だが、前日も一時450円超下げてから急速に下げ渋るなど、底堅さもみせている。JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは16日付リポートで商品投資顧問(CTA)の持ち高なども加味し、当面の日本株は「重要局面」に向かうと指摘する。 例年8月は相場が下がりやすい傾向にあることで知られる。今月に入ってからの相場下落が通常通り、一時的な要因であれば、持ち高調整の売り一巡後に日経平均は3万2700円までの自律反発の動きが期待できるという。一方、季節的な事象の許容領域を超えて3万0800円割れとなるような展開になれば、株価指数先物へのロスカット(損失覚悟)の売りが大きく膨らみ、調整が長引くとみる。 日経平均は8月末に向けて調整をこなしながら、3万0800円を下回らずに踏みとどまれるか。「落ちるナイフ」を拾いに行くかどうか、悩ましい局面にきている。2023/08/18 13:03:1847.名無しさん48puG鳴り潜める日本株強気論――下落サイン、チャートに点灯(スクランブル)2023/08/19 日本経済新聞 朝刊 日経平均株価の移動平均線が18日、中期トレンドを示すラインを下回った。下落サインとされ、相場の流れに追従する戦略のヘッジファンドから機械的な売りが出やすくなる。株安に勢いがつき3万円の大台割れを警戒する声も出てきた。 18日の日経平均は3日続落し、前日比175円安の3万1450円と約2カ月半ぶりの安値となった。下げ幅は一時は350円を超えた一方、上昇に転じた場面もあった。不動産問題に揺れる中国市場をにらみながらの荒い値動きとなった。 「日本株の組み入れ比率は下げてきた。8月中は調整リスクが高く、あと1000円くらい下げないと積極的な押し目買いを入れにくい」。国内外の株・債券を組み合わせたファンドを運用する三菱UFJ国際投信の石金淳チーフファンドマネジャーは語る。 チャート上に複数点灯した不吉なサインが投資家の不安心理をかき立てる。「中期のモメンタムが崩れてきた」と指摘するのは東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジストだ。14~18日の週の日経平均は13週移動平均線を下回る値動きに終始した。1月下旬以降、初めてだ。 13週線は過去13週(3カ月)に市場参加者が取引した平均コストを示す。株価が上回っていれば下値のメドとなる一方で「明確に割り込むと上値を抑える水準として意識されやすい」(楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリスト)。3カ月前は株高局面だった。13週線自体は当面じりじり上がる。 株価の下放れを示唆する兆候も出た。短期の5週線が、13週線を上から下に突き抜ける「ミニデッドクロス」の発生だ。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「過去には大幅な株安の前兆となったこともある」と警戒する。 春からの日本株高を演出した海外投資家の目線に立つと地合いはより悪い。ドル換算の日経平均(18日時点、QUICK算出の参考値)は216ドルと6月に付けた今年の高値(239ドル)から23ドル低い。1月の安値(193ドル)からの上昇幅(46ドル)の半分を失った。 円相場が対ドルで3週間で8円下落し、ドル建てでみた日経平均を押し下げている。1年間の長期トレンドを示す200日線(213ドル)に迫る。下回れば海外勢がいったん日本株を手放す動きが強まるとの見方もある。 「日経平均は今後3カ月で3万円を割れる場面もある」とみずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストはみる。注視するのは日経平均より現状堅調な東証株価指数(TOPIX)だ。2221ポイントを下回り「ダブルトップ」と呼ばれる軌跡が完成すれば、日本株への売りに弾みが付くという。 チャート分析は単なる経験則ではない。自動取引の存在感が増すなか、CTAといった順張りファンドもトレンドの見極めにテクニカル指標を使う。野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは「CTA勢は1兆円を超える先物のロング(買い持ち)ポジションを淡々と縮小している」と指摘する。 株価に逆風となりうる米長期金利の上昇が止まぬなか、25日のジャクソンホール会議で米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は何を語るのか。中国の不動産問題は「チャイナ・ショック」に発展するのか。市場の懸念は多い。長期的な日本株優位は崩れていないとの見方は多いが、日経平均3万円割れへの備えは杞憂(きゆう)とは言い切れない。2023/08/19 06:31:0248.名無しさん6lks1植田日銀は「禁断の為替」をかじったのか 金利安定に試練-金融PLUS 編集委員 大塚節雄2023/08/21 05:00 日経速報ニュース 日銀は「円安抑止」を政策目的に据えた――。7月の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正を機に市場でこんな思惑が広がり、植田日銀を苦しい立場に追い込んでいる。円安が進むなか、金利上昇の容認や利上げに動かざるを得ないとの見方が広がり、日銀に「金利安定か円安抑止か」という選択を迫りかねない構図にある。 「日銀は円安対応で長期国債買いオペ(公開市場操作)の減額に動くのではないか」。野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストには最近、海外勢を中心にこんな声が寄せられる。円安が日銀を金融政策の正常化の方向に追い込む。そんなストーリーのもと「投資家から具体的なアクションの話まで出るようになった」と松沢氏は驚く。 将来の政策金利予想が織り込まれている翌日物金利スワップ(OIS)市場で3年後の政策金利の予想をみると、YCCの修正を決めた7月の金融政策決定会合以降、0.5%台まで高まっている。 日銀は今回のYCC柔軟化を「金融緩和の出口に直結するものではない」と強調し、0.5%の変動上限を据え置きつつ「メド」と呼んで0.5%超の金利上昇を許容するという複雑な仕組みにした。新たな厳格な上限である1.0%は万が一の安全網と位置づけた。 円相場と長期金利のグラフをみると、長期金利が0.5%超に上がった動きとは裏腹に、円安が加速するという一見、奇妙な構図にある。 当初は「出口は遠い」との説明が効き、日銀が新上限の1.0%のかなり手前で金利上昇を抑制する姿勢もみせたことから、日本発で円安が進展した。だが、ここにきて円安の主導権は米国側に移っている。国債増発や強い景気指標で米長期金利の上昇が勢いづいた。足元では「出口が遠い」との神通力が、米国主導の円安で薄れているといったほうが正確だろう。 「出口が近づく」に2つの要因 ではなぜ「円安が進むと出口が近づく」という見方が市場で広がったのか。今回の措置が円安対応だったと受け止められ、「円安が進めば日銀が動く」との思惑を生んだからだ。 大きな原因の1つは、決定のタイミングだ。債券相場が安定するなか、市場では現状維持の予想も強かった。予想外の決定で「円安進行を警戒する政府に配慮した」との思惑が一気に広がった。 2つ目は、会合後の声明文の書きぶりだ。 「今後も(物価などの)上振れ方向の動きが続く場合には、実質金利の低下によって金融緩和効果が強まる一方、長期金利の上限を厳格に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場におけるボラティリティーに影響が生じるおそれがある」 そのうえで「その他市場」との表記に関し、植田和男総裁は記者会見で「今回は為替市場のボラティリティーも含めて考えている」と語った。これで「日銀が円安対応の柔軟化だったと認めた」との見立てが勢いづいた。2023/08/21 06:22:3849.名無しさん6lks1 市場は日銀を「誤解」? これら2つの反応には、たぶんに「誤解」が含まれている。日銀は円安抑止を直接の目的に動いたわけではない。 まず決定のタイミング。たしかに財務省から円安進行を警戒する声は聞かれてはいた。だが、それに反応して動いたとか、足元の円安を止めようとした、といった見方は皮相的だろう。日銀は植田氏が就任した4月から、「粘り強い金融緩和」をうたいつつも、もはや副作用を放置できないYCCの骨抜きへ準備を進めてきた可能性が高い。 7月に決めたのは、物価や賃金の明るい兆しを受けて2024年度の物価見通しは「上振れリスクの方が大きい」と認識し、事前の対応が必要と判断したためだ。上振れリスクの現実味が増せば、悲願の正常化が近づく半面、その段になってYCCを変更すると金利の急伸などにつながりかねない。黒田日銀時代の末期だった昨年12月のYCCの修正は、出口に直結する措置との思惑を招き、市場が混乱した。これは日銀のトラウマになった。 次に、声明文で間接的ながら「為替市場のボラティリティー」への配慮に触れた点も、現時点の円安に対応する意図ではない。素直に読めば、YCCを柔軟に運営することで、出口がうかがえる状況になった段階で起きるかもしれない円相場の急変動を防ぎたい、という狙いが理解できる。 もちろん今回、円安や政治への配慮がゼロだったと断言するつもりはない。ただし配慮があったとしても、正常化に向かう際、円相場の安定を巡って当局間の足並みが乱れるのを回避したい、という狙いが大きいだろう。 昨年の円急落局面では、黒田東彦総裁(当時)が緩和継続を強調すればするほど円安が進み、財務省が円買い介入によってその尻拭いをする羽目になった。黒田氏はYCCの硬直的な運営が円安を加速させてしまう事実をかたくなに認めようとはしなかった。 今回、声明文で「その他市場のボラティリティー」とわざわざ書いたのは、前体制が否定した「YCC維持による円安促進」の副作用を明確に認めた点に意義がある。野村の松沢氏も「コミュニケーションの正常化」という側面に着目する。 「誤解」生んだ移行期の齟齬 市場に広がった「誤解」は、10年に及んだ黒田体制からの移行期ゆえの市場との対話の齟齬(そご)だといえるだろう。間接的にせよ「為替」に言及したことで結局、円安に絡みやっかいなかたちで出口の思惑を呼び寄せてしまった。 植田日銀は深刻なジレンマに直面する。出口戦略を円滑に進める際に最も重要なのは長期金利の安定だ。目先の円安抑止のために金利上昇を容認してしまうと、金融や経済が耐えられないような水準に急伸し、賃上げ機運を途絶えさせかねない。機が熟さない段階での短期金利の引き上げなど、もってのほかだ。 だが、金利を抑え込もうとすると、今度は市場に「日銀は為替の安定を放棄した」との思惑が広がり、円売りを誘うことになる。日銀発の急激な円安も望ましくない。人々の生活を脅かす輸入インフレを再発させ、賃上げの効果を減らすほか、円安加速を警戒する政治との対立を招く。 長期金利はいま0.6%台でそれなりに落ち着いているようにもみえるが、急激な上昇圧力がかかった場合、日銀は「金利安定か円安阻止か」という難しい判断を迫られる。試されるのは植田氏の対話力だ。その巧拙は今後の出口に向けた歩み、そして植田日銀の5年間そのものを左右する。2023/08/21 06:24:2250.名無しさんyFuI5資産運用立国に挑む(1)2000兆円の機会損失 「ふやす文化」成長の起点に2023/08/21 日本経済新聞 朝刊 日本の個人、政府、金融業界がいっせいに資産運用に力を入れている。お金を「ふやす文化」を日本経済の推進力にする運用立国への挑戦が始まった。年内に改革案 「実現性のある対策を持ってきてくれ」。岸田文雄政権が目指す資産運用立国の実現に向けて、金融庁幹部は運用会社や年金基金、証券会社などに連日のように呼びかけてアイデアを募っている。 栗田照久長官は「年内にプログラムを作る」と語る。どうすれば良い投資信託を運用会社は個人に提供できるのか。年金基金は十分に資金を活用できているか。大きな改革の絵を描く。 改革が本格的に動き出したのは2022年9月、首相がニューヨーク証券取引所での講演に向かう政府専用機内の出来事だった。少額投資非課税制度(NISA)の時限的な仕組みを再考する程度の内容だった草案に、首相が「恒久化が必須」との文言を入れた。側近が出発直前に与党に根回しして首相に提案した。 24年開始が決まった新NISAの枠上限は1800万円。対象となる18歳以上の総枠は約1900兆円と家計金融資産に匹敵する。普及の後押し役と目される「職場つみたてNISA」も各地で広がりをみせる。 「このままでは老後資金が足りない」。徳島市の西精工でナットなどの計量・梱包・出荷を担当する田中一生さん(43)は社内勉強会で将来に備える必要性に気づいた。4月から給与天引きで毎月2万円ずつ外国株投信の積み立てを開始。「定期預金の積み立てを投資に変えた。20年はほったらかしで続ける」 西精工では4月の制度導入から4カ月あまりで社員・パートの244人中26人が加入した。「若手に触発され年配にも広がってきた」(西泰宏社長)と浸透を見込む。説明会では過去10年、毎月1万円を日本株投信に積み立てたら元本120万円が214万円になった試算が示された。 西精工に導入を持ちかけた阿波銀行は野村証券と包括提携して取引先に働きかけている。徳島県など586社、約2100人に成果が広がる。 デフレ下では預貯金が正解とされたが、偏重による「機会損失」は大きい。 02年度から預貯金増加分の半分を日米株に均等に投資した場合の家計金融資産の伸びを試算すると、22年度末で2430兆円と実際より390兆円多い。さらに01年度の株・投信の保有比率が米国並みだった想定にすると3990兆円に膨らむ。2000兆円近い機会損失だったことになる。金の流れ変える 運用立国の狙いは個人の所得増にとどまらない。リスクマネーを増やし経済の成長力を取り戻すことがある。キャッチアップ型の経済では重点産業に資金を集める銀行融資主体の間接金融が効果的だった。成熟経済には試行錯誤や新陳代謝を促す直接金融が合う。 米国も1980年前後まで株・投信の家計金融資産に占める比率は約15%と現在の日本並みだった。年金制度改革などが中流階級を預金者から投資家にし、現在の比率は約5割になった。投資マネーが企業を伸ばし、株高や配当が家計を潤す好循環を築いた。 直接金融にシフトした米国の投信残高は、銀行融資の源泉となる預金の1.8倍の約30兆ドルと巨大だ。日本の投信残高は私募を含めて約310兆円と預金の3分の1ほどにとどまる。 7月8日、個人投資家の集い「インデックス投資ナイト2023」が東京・渋谷で開かれた。「インフレに見合う賃金上昇がないと感じるか」との問いに会場の約6割が挙手した。3%の物価上昇が20年続けば現預金の実質価値は半分近く減る。日本の英知を集めた改革が求められる。2023/08/22 00:48:0351.名無しさんyFuI5物価上昇の基調、衰えず? 日銀の政策判断に影響も2023/08/22 05:00 日経速報ニュース 日銀は22日、7月の基調的なインフレ率の指標を発表する。一時的な変動を除いたより基調に近い物価指標を独自に算出しており、過去最高を更新するとの見方もある。日銀は物価の上振れなどを理由に、7月の金融政策決定会合で長短金利操作の修正に動いた。物価の基調が今後も高止まれば、この先の政策判断にも影響を与えうる。 日銀は物価の基調を正確につかむために「刈り込み平均値」「加重中央値」「最頻値」という3つの指標を算出している。刈り込み平均値は、上昇率と下落率の上位10%の品目を除いて算出するもので、一部の品目の大きな値動きに左右されず、基調をつかみやすいとされる。6月は前年同月比3.0%の上昇と、統計を遡れる2001年1月以降の過去最高(3.1%上昇)に迫る水準だった。 第一生命経済研究所の星野卓也氏は7月の刈り込み平均値が3.2%上昇と過去最高を更新すると予想する。「価格転嫁の継続もあり、変動の大きい品目を除いた全体でみても物価の上昇圧力はまだ根強く残っている」という。 加重中央値は上昇率の高い品目の順に並べ、上から品目のウエートを足していったときに50%近辺に位置する値を示す。最頻値は品目数が最も多い上昇率を示す指標だ。どちらも6月は過去最高に並ぶ水準だった。 7月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は生鮮食品を除くベースで前年同月比3.1%となった。4%を超えていた年初と比べれば、表面上は上昇にブレーキがかかっているようにみえる。だが、物価の基調がまだ下げに転じていないとすれば、日銀が目指す2%を超える物価上昇が当面続く可能性がある。 足元の円安で物価の基調が下がりにくくなる面もある。外国為替市場で円相場は1ドル=145円台で推移し、一時146円台半ばまで下落した。「今の円安水準が続けば、物価の高止まりを長引かせる要因になる」(星野氏) 日銀は7月会合で「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめ、23?25年度の物価見通しを更新した。23年度の見通しは2.5%と、4月から0.7ポイントの大幅な上方修正に踏み切った。植田和男総裁は記者会見で「 4 月時点の見通しはかなり過小であった」と語った。 7月会合の主な意見では、ある政策委員から「『2%の持続的・安定的な物価上昇』の実現が、はっきりと視界に捉えられる状況」との声が上がった。このまま日銀の想定を上回る物価上昇が続き、継続的な賃金の上昇が実現するならば「金融緩和を手じまう方向に動いてもおかしくない」(日銀関係者)との声も出始めている。2023/08/22 06:39:3252.名無しさんyFuI5海外勢、日本国債の売越額1.3兆円――日銀買いオペ、減額観測 政策修正で投資家需要増 円安けん制との思惑も2023/08/22 日本経済新聞 朝刊 債券市場の一部で日銀が国債買い入れオペ(公開市場操作)を減額するとの思惑が浮上している。日銀の政策修正を受けた利回り上昇で投資家需要が強まるなか、日銀への売却が細っているためだ。円安をけん制する目的でも国債の買い入れ減額を見込む声もあり、日銀のオペを巡り神経質な展開となりそうだ。 日銀は現在、1%の利回りで無制限に買い入れる「指し値オペ」と、市場参加者が提示した価格が割安な順に買い入れる従来型の国債買い入れオペを実施している。減額観測が浮上しているのは従来型のオペで、残存5~10年の国債は現在1回あたり6750億円買い入れている。 背景にあるのは日銀への売却意欲の弱まりだ。月間ベースで全年限の応札額の合計を落札額の合計で割った応札倍率を見ると、8月は足元までで2.0倍と日銀が異次元緩和を始めた2013年以降で最も低い。「日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)で抑え込む残存5~10年の国債で流動性低下が顕著だ」(東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト)との声もある。 日銀の臨時オペを受けて外国為替市場で円安に振れる場面があるなど、日銀が金利を抑え込む姿勢を強めれば円安に振れやすくなる。一方、オペが実際に減額されれば円高が進む可能性も市場で意識されている。2023/08/22 08:23:5153.名無しさんyFuI5今日の債券 下落か、米長期金利が一時07年以来の高水準2023/08/22 08:08 日経速報ニュース 22日の国内債券相場は下落(利回りは上昇)しそうだ。前日の米長期金利は、足元の米経済が想定以上に底堅いとの見方などから一時4.35%と15年9月ぶりの高水準をつけた、米長期金利の上昇を受けて22日の国内長期債にも売りが及ぶとみられる。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは0.65%程度で推移しそうだ。 21日のニューヨーク債券市場で米10年物国債利回りは前週末比0.09%高い4.43%で終えた。前週発表の7月の米小売売上高などが市場予想を上回ったほか、雇用関連でも労働需給が引き締まった状態にあることを示す指標が多い。米連邦準備理事会(FRB)が年内に追加利上げに踏み切る可能性や、政策金利を長期にわたって高く維持するとの見方が意識され、米国債相場の重荷となった。 今週は米国で24~26日に国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開かれる。25日にはFRBのパウエル議長が講演する予定で、その中で同氏が金融政策についてどのような姿勢を示すか、見極めようとする市場参加者が多い。ただ、夏季休暇中の市場参加者もいるなかで、国内債も商いが薄くなる可能性がある。売りが一巡すれば、方向感の出にくい展開も予想される。 22日は国内で債券相場に影響しそうなイベントが少ない。財務省による流動性供給入札は残存期間「5年超15.5年以下」が対象で、発行予定額は5000億円程度。市場では「無難に通過する」(国内証券の債券ストラテジスト)との声が聞かれる。日銀による定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)は予定されておらず、需給を左右する材料に乏しい。日本時間22日の取引で米長期金利が一段と上昇すれば、国内債にも売りが広がる公算が多い。 21日の米長期金利の上昇を受けて国内長期金利も急ピッチで上昇すれば、日銀が臨時でオペを通知し、金利上昇を抑制する姿勢を示す可能性がある。長期金利が上昇すれば相場の割安感に注目した買いも入りやすくなるとみられ、長期金利が中心限月として14年1月(0.685%)につけた水準を試す展開とはなりにくそうだ。 国内では日銀が基調的なインフレ率を捕捉するための指標を公表する。日本スーパーマーケット協会などは7月の食品スーパー売上高を発表する。海外では7月の米中古住宅販売件数が発表される。2023/08/22 08:35:5854.名無しさんyFuI5国債利払い、想定金利1.5% 概算要求 財務省、金利上昇反映2023/08/22 日本経済新聞 朝刊 財務省は2024年度予算案の概算要求で、国債の元利払いの想定金利を1.5%とする調整に入った。23年度予算から0.4ポイント引き上げる。日銀の政策修正を受けて長期金利が上昇しているのを踏まえた。概算要求の総額は110兆円を超える見通しだ。 国債の元利払いに充てる国債費は28兆円規模になる見込みだ。23年度予算では25兆円程度だった。社会保障費や防衛費も増え概算要求の総額は3年連続で110兆円を超える見通しになった。 想定金利は年末の予算案編成で最終的に決める。予算案では17年度から23年度まで7年続けて1.1%に据え置いてきた。23年度予算は夏の概算要求段階では1.3%と見積もっていたが金利動向を踏まえて、年末の予算案編成時に1.1%を維持した。 想定金利は通常、直近1年の10年債の平均利回りに、過去の金利急騰時に経験した1.1%の上昇を加味してはじき出す。 日銀が7月下旬に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正して以来の長期金利は0.5%を上回る水準にある。 こうした状況を踏まえて想定金利を引き上げる。2023/08/22 14:30:0455.名無しさんPgPUX「マイナス金利解除、選択肢」日銀・田村審議委員2023/08/31 日本経済新聞 朝刊 日銀の田村直樹審議委員は30日の記者会見で、物価2%目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況になれば「マイナス金利の解除も選択肢の一つに入る」と述べた。政策修正の判断時期については、賃上げや2023年後半の物価動向などのデータが集まる「来年1~3月ごろ」を目安として示した。 北海道釧路市で開いた金融経済懇談会後に記者会見した。田村氏は政府・日銀が掲げる物価2%目標について「実現がはっきりと視界にとらえられる状況になった」とした。 マイナス金利を解除しても金利を低く抑えていれば「金融緩和の継続と理解している」とも話した。 物価2%目標の達成の見極めについて「来年1~3月ごろに(見通しの)解像度が一段と上がる」とした。2023/08/31 06:08:4756.名無しさん8gOQC今週の円 買い先行、日銀の政策修正観測で 米金利先高観で上値重い2023/09/11 07:49 日経速報ニュース 今週(11~15日)の外国為替市場で円相場は上値の重い展開となりそうだ。日銀の植田和男総裁がマイナス金利の解除のタイミングなどに言及したことを受け、金融緩和の修正観測から円買い・ドル売りが先行しそうだ。一方で米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を高い水準で維持するとの観測は根強く、円売り・ドル買いも出やすい。欧州中央銀行(ECB)の追加利上げ観測が強まれば、対ユーロでの円売りが対ドルの取引に波及し、円の上値を抑えそうだ。 前週末のニューヨーク市場で円相場は1ドル=147円70~80銭と東京市場の同日17時時点(147円38~41銭)よりも安く終えたが、日本時間11日早朝には一気に146円台後半まで水準を切り上げた。日銀の植田和男総裁が読売新聞とのインタビューで、マイナス金利の解除時期などに言及。「経済・物価情勢が上振れした場合、いろいろな手段について選択肢はある」とし、「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」と述べた。年内にも判断できる材料が出そろう可能性があるとも示唆し、政策修正が早まるとの思惑から円買い・ドル売りが入った。 政府関係者からの円安けん制も強まっている。鈴木俊一財務相は8日、足元の円安進行について「高い緊張感を持って注視し、過度な動に対してはあらゆる選択肢を排除せず適切な対応を取りたい」と述べた。神田真人財務官も「ファンダメンタルズでは説明できない動きがみられる」と指摘するなど発言トーンを強めており、政府・日銀による円買いの為替介入への警戒感から円買い・ドル売りが入る場面もありそうだ。 それでも、市場心理が円買いに大きく傾く可能性は低い。FRBが政策金利を長期にわたって高い水準で維持するとの見方が強まれば円売り・ドル買いを促しやすい。今週は13日に8月の米消費者物価指数(CPI)、14日には8月の米卸売物価指数(PPI)や米小売売上高など、米経済指標の発表が続く。 19~20日に開催される9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、FRB関係者は金融政策について発言を控えるブラックアウト期間に入っている。9月会合では利上げを見送るとの予想が多いが、今週発表のデータ次第では11月のFOMCで利上げが実施されるとの思惑が高まってもおかしくない。 14日に控えるECB理事会では、政策金利を現行の3.75%に据え置くとの予想が優勢となっている。ただユーロ圏のインフレの高止まりから「ECBの追加利上げ観測が残った場合、ユーロに対する円売りが対ドルの取引にも波及しやすい」(岡三証券の武部力也氏)との指摘も聞かれる。 海外では12日には8月の英失業率や9月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景気予測調査が発表される。15日には中国で8月の工業生産高や小売売上高などの経済指標が、米国では8月の米消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ)が発表になる。2023/09/11 08:06:3557.名無しさんuzKOv長期金利、上昇圧力なお 10年債が一時0.72% 市場、政策修正予想前倒し2023/09/13 日本経済新聞 朝刊 国内金利への上昇圧力が続いている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは12日、0.72%と2014年1月以来の高水準を付けた。市場関係者が日銀による政策修正の予想時期を前倒しする動きが背景にある。デリバティブ(金融派生商品)市場では、23年末にもマイナス金利政策を解除するとの織り込みが進む。 12日の債券市場では長期金利の上昇が続き、前日の0.705%から一段と水準が高まった。日銀の植田和男総裁は、9日付の読売新聞のインタビューでマイナス金利を解除する選択肢に言及。長期金利についても基本的に上昇(債券価格は下落)を容認する姿勢を示し、市場では債券売りが優勢となっている。 幅広い年限で利回りが上昇した。20年債利回りは一時1.47%と9年4カ月ぶり、30年債利回りは1.725%と9年2カ月ぶりの高水準に達した。日銀の政策修正をうけてマイナス金利解除観測が高まった23年1月の水準を上回った。 政策金利の見通しを反映しやすい新発2年物国債利回りも、1月以来の高水準となる0.05%まで上昇する場面があった。1月に付けた0.055%を超えれば2015年2月以来、8年7カ月ぶりの水準となる。 市場参加者の間では見通し修正が相次ぐ。大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、マイナス金利解除予想を「25年半ば以降」から「24年4月」に早めた。「原油高と円安の長期化は日銀にとって想定外だった。年度後半には物価が上振れ、賃上げ機運も継続する」と語る。 ドイツ証券もマイナス金利の解除予想を「24年12月」から「24年1月」に前倒しした。小山賢太郎チーフ・エコノミストは「日銀は10月の展望リポート公表時に物価見通しを上方修正する」とみる。 短期金融市場では、マイナス金利の早期解除を織り込んだ取引も成立し始めた。 金融機関が日々、資金をやりとりする際に使う金利に、無担保コール翌日物金利(TONA)がある。この金利の3カ月物が将来どうなっているかを予測しながら取引する先物では、23年12月限の価格が足元で99.97程度と100を下回る。24年初め時点の3カ月物の金利は年0.03%程度になるとの予想が反映されている。市場は日銀が今冬にマイナス金利を解除するとみていると解釈できる。 固定金利と変動金利を交換する翌日物金利スワップ(OIS)市場でも同様の動きが見られる。 野村証券の中島武信チーフ金利ストラテジストは「市場はマイナス金利解除に加え、1年以内に政策金利が0.1%まで引き上げられることも非常に高い確率で織り込んでいる」と指摘する。 もっとも12日午後には長期金利が前日に比べ横ばいの0.705%まで低下した。2年債利回りは同0.005%低い0.035%、5年債利回りが同0.015%低い0.27%まで下がる場面もあった。5年債入札で小さいほど好調とされる平均落札価格と最低落札価格の差(テール)が前回から縮小した結果、需要の強さに安心した投資家の買いが広がった。 「市場の政策修正観測はやや過度な印象を受ける」(みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジスト)との見方も根強い。一方、21~22日の金融政策決定会合でも何らかの動きがあるのではとの思惑も市場に広がる。政策修正を巡って相場が揺れる展開は続きそうだ。2023/09/13 06:22:2158.名無しさんcg9aC企業物価、30カ月連続上昇 8月は3.2% 価格転嫁、政策修正後押しか2023/09/14 日本経済新聞 朝刊 日銀が13日発表した8月の企業物価指数は前年同月比3.2%上昇し、30カ月連続で前年同月を上回った。伸び率は鈍化しているが、日銀内では物価目標の達成確度が高まってきたとの見方もある。長引く企業の価格転嫁は政策修正の後押しになる可能性もある。 企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。企業は仕入れ価格を販売価格に転嫁するため、消費者物価指数(CPI)の先行指標としても注目される。 企業物価指数の前年同月比上昇率は2022年12月の10.6%をピークに8カ月連続で鈍化した。輸入物価の下落を背景に急ピッチで伸び率は下がってきたが、8月の上昇率は7月(3.4%)から0.2ポイントと小幅な縮小にとどまった。 高水準が続く背景にあるのは原油価格の再上昇だ。8月は石油・石炭製品が前年同月比7.5%と大きく上昇した。政府の補助金縮小の影響も出た。 円ベースの輸入物価は11.8%下落と7月(14.4%下落)よりマイナス幅が縮まった。先行きについても「年末にかけてマイナス幅は縮小方向だろう」(SMBC日興証券の宮前耕也氏)との声が聞かれた。 飲食料品などで価格転嫁の動きは長引いている。チョコレートや米菓といった飲食料品や、パルプ・紙・同製品などで原材料コストを販売価格に転嫁する動きがみられた。 SMBC日興の宮前氏は「企業物価はもうマイナスでもおかしくないが、輸入物価の上昇が非常に大きかったことから価格転嫁が複数回続き、長引いている」と指摘する。日銀も「(消費者に近い)川下ではペースを落としながらもゆるやかな上昇が続いている」とみる。 価格転嫁の力強さは日銀の物価観にも反映されている。日銀の7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で23年度のCPIの見通しについて「価格転嫁が想定を上回って進んでいることなどから、大幅に上振れている」と指摘した。 日銀の田村直樹審議委員は8月の講演で「(物価目標の)実現がはっきりと視界にとらえられる状況になった」と自信を見せた。植田和男総裁も読売新聞のインタビューで将来的なマイナス金利解除の可能性に含みを持たせている。2023/09/14 06:11:1759.名無しさん9MzSQ日米中銀、「次の一手」への距離焦点に 今週相次ぎ会合-FOMCと日銀決定会合のポイント2023/09/19 05:00 日経速報ニュース 【この記事のポイント】・日米の中央銀行が今週、金融政策決定会合・市場はFRBの利上げ見送りを確実視・日銀はマイナス金利解除に向けた総裁発言に注目 日米の中央銀行が今週、相次ぎ金融政策を決める会合を開く。市場は米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見送りを確実視しており、先行きの政策金利見通しを変えるかが最大の焦点だ。7月に政策修正した日銀はマイナス金利政策の解除に向けた植田和男総裁の発言に注目が集まる。日米とも「次の一手」への距離を探る会合となる。 利上げ「あと1回」変わるか FRBは19?20日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。FOMC前の最後の重要経済指標となった8月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は2カ月連続で加速した。米CPIはエネルギー価格の下落を背景に昨年6月の9%台をピークに順調に下がってきていたが、足元ではインフレ再燃の兆しも出ている。 米国市場で14日、国際原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物が一時1バレル90ドル台と約10カ月ぶりの水準に上昇した。サウジアラビアとロシアが12月まで自主減産を続けることで需給の逼迫懸念が台頭したためだ。原油価格の上昇はガソリン価格の高騰を通じてインフレを長引かせる要因になる。 もっとも、現時点で金利先物市場は98%の確率でFRBは利上げを見送るとみている。CPIから極端な値動きの品目を取り除いて物価の基調をみるクリーブランド連銀の「刈り込み指数」は4.5%、動きの遅い品目のみを集めたアトランタ連銀の「粘着インフレ指数」は5.3%といずれも6カ月連続で鈍化しているためだ。 むしろ関心は、同時に公表されるFOMC参加者の先行きの政策金利見通しに向いている。前回6月会合では2023年末の政策金利が中央値で5.1%から5.6%に引き上げられた。現在の政策金利は5.25?5.5%のため、この予想が変わらなければ年内の利上げはあと1回分となる。 24年末の政策金利見通しも注目だ。すでに01年以来の高水準に達している政策金利をいつまで維持するのか、利下げをどの程度進める構えなのかを探る重要な目安になる。6月時点では24年に計1%の利下げをする予測を示していたが、市場では利下げ幅を縮めるとの観測もある。 ただし、高インフレの沈静化への道筋がはっきりしない以上、FOMC参加者も利上げの終結を宣言するような見通しは出しづらいと読む市場関係者が多い。パウエル議長は今後の金融政策について「データ次第だ」と繰り返しており、利上げの選択肢を残しながら時間をかけて終着点を探ることになりそうだ。2023/09/19 06:33:5360.名無しさん9MzSQ マイナス金利の解除いつ? 一方、日銀はFOMC後の21?22日に金融政策決定会合を開く。日銀は7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化し、長期金利の上限を事実上1%に引き上げたばかりだ。足元で長期金利は9年8カ月ぶりの高水準となる0.7%台に上昇しているものの、上限には距離があり、再び修正を迫られる局面ではない。 むしろ、市場の関心はマイナス金利政策をいつ解除するかに向いている。植田和男総裁が読売新聞のインタビューでマイナス金利政策を解除する選択肢に言及したためだ。しかもカギを握る賃金動向について年末までに判断材料がそろう可能性にも触れたため、市場は遠くない時期に日銀が金融正常化に向かう可能性を意識し始めた。 田村直樹審議委員も8月末の講演で、物価目標の実現が見通せれば「マイナス金利の解除も選択肢の一つに入る」と述べ、判断時期の目安として「24年1?3月ごろ」をあげた。高田創審議委員も9月に、特定の時期という議論ではないとした上で「この半年間はよく見ないといけない時期ではないか」と述べていた。 インタビューでの植田総裁の発言は審議委員より踏み込んだことになる。QUICKの外国為替市場の月次調査(8月)の結果によると、次の政策修正時期は2024年4月以降(31%)が最も多いが、「23年12月」と年内の修正を見込む予想も29%あった。会合では金融正常化への道筋も議論する可能性がある。 もっとも、市場では植田総裁の発言は1ドル=147円台後半に下落している円安に歯止めをかけるための「口先介入」との見方もある。末までにそろう可能性に言及した賃金動向も、24年の春季労使交渉前に具体的にどのような材料で判断するのか。植田総裁が記者会見で真意をどう語るかが最大のポイントになる。 会合では7月のYCC修正後の市場動向も点検する。金利上昇を受けて日銀は11日、幅広い担保を裏付けに資金供給する「共通担保資金供給オペ(公開市場操作)」の実施を発表した。ただ、直接的に長期金利を下げる効果がある国債買い入れに踏み込まなかったことで市場では「日銀が為替市場の動向に配慮している」との見方が広がった。 7月のYCC修正は「市場の見方がもう少し長期金利に反映される余地を広げようという措置」(植田総裁)だった。日銀内からは「ある程度の上昇は覚悟の上だった」との声が聞こえるが、足元の金利上昇に植田総裁がどのような見方を示すかも注目だ。 日銀の物価見通しに変化がないかも先行きの政策変更を占う上で重要だ。日銀は23年度後半にCPIの前年同月比上昇率は2%を下回るとしてきたが、植田総裁は鈍化のスピードが日銀の想定よりも遅いことを認めている。 8月の東京都区部の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比2.8%の上昇だった。上昇率は11カ月ぶりに2%台に下がったものの、約8割の品目が前年同月比で上昇した。足元の情勢を踏まえて植田総裁がどのような認識を示すか。物価目標達成への自信度をはかる目安になる。 利上げの終着点を探るFRBと少しずつ金融正常化に向けた歩を進めようとしている日銀の今回の判断や情報発信は、金融市場の前提条件が変わる転機になり得る。2023/09/19 06:39:4061.名無しさんMbjG5弱まる解散風、日銀に好機 市場は脱マイナス金利観測-田村峻久2023/09/19 19:38 日経速報ニュース 債券市場で、日銀によるマイナス金利政策の解除の見方が浮上している。岸田文雄内閣の支持率が伸び悩み、衆院解散・総選挙への警戒感が市場で弱まっているのが要因だ。日銀が選挙日程に配慮する必要性は薄れ、政策修正に踏み切りやすくなるとみる市場参加者は少なくない。 固定金利と変動金利を交換する翌日物金利スワップ(OIS)市場で13日、異変が生じた。先々の政策金利の市場見通しを反映する金融政策決定会合間取引。2023年12月18?19日会合から24年1月22?23日の会合までの期間を対象とした取引レートが、23年7月下旬の会合後初めて0.01%付近まで上昇した。23年9?10月、10?12月の会合間取引の金利はなおマイナス圏だ。市場が今冬のマイナス金利解除観測を織り込み始めた。 今回の金利上昇の背景には、政治的な要因がある。第1に、第2次岸田再改造内閣の発足だ。 岸田首相は13日、新内閣の顔ぶれを発表。過去最多となる5人の女性が入るなど閣僚19人のうち13人を入れ替えたが、サプライズ感は弱く支持率浮揚に対する市場の期待は高まらなかった。日本経済新聞社とテレビ東京が13?14日に実施した緊急世論調査では内閣支持率が42%と前回調査(8月)から横ばいだった。 支持率が上がらなければ、解散・総選挙は難しいとの見方は多い。「次の解散想定時期は24年6月の通常国会会期末が濃厚」(SMBC日興証券の森田長太郎シニアフェロー)など、選挙の実施時期が遠のいたとの声が強まり、マイナス金利の解除の観測を誘発した。 日銀は国政選挙前に金融政策の修正に踏み切りづらいとされる。政策修正が時の政権に利害を生む可能性を排し、政治的な中立性を保つためだ。10月にも召集する臨時国会や24年初めの通常国会で解散・総選挙が実施される可能性が下がれば、今冬にかけ日銀が政治日程に配慮して政策修正を見送る必要性は薄れる。 市場では「日銀は一定期間の『フリーハンド』を得て、マイナス金利解除に踏み切りやすくなった」(SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミスト)、「解散が遠のき海外投機筋がマイナス金利解除を織り込む度合いは強まった」(東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト)との声がある。 第2に、これまで大規模な金融緩和を推進してきたとみられている最大派閥・安倍派の動向だ。植田和男総裁がマイナス金利解除の選択肢に言及したという9日付読売新聞インタビューに関し、安倍派幹部の世耕弘成参院幹事長は12日、「金融緩和の継続が趣旨だと理解している」と記者会見で述べた。 日銀が7月会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正した際、「2%の物価安定目標の達成までは緩和姿勢は変えないというコミットメントが守られるか注視したい」(世耕氏)と述べ早期の引き締めをけん制していた。当時と比べると引き締め警戒のトーンが弱まり、日銀がマイナス金利解除に踏み切る余地を生んでいるという。 野村総合研究所の井上哲也シニアチーフリサーチャーは「円安が消費者に打撃を与えている足元の状況を考えると、リフレ派も一方的な緩和継続を訴えづらい」との見解を示す。今回の内閣改造でも安倍派の入閣は増減なしの4人にとどまった。 当面は、今秋の臨時国会の行く末が焦点だ。大方の予想通り解散・総選挙が見送られれば、脱マイナス金利観測は強まり金利上昇(債券価格は下落)や円高への圧力が生じうる。仮に解散・総選挙が実施されれば、「経験則や経済対策による景気刺激効果から日本株に買いが集まる」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)可能性がある。 選挙の有無や時期を巡る見通しが金融市場の波乱要因となってきた。2023/09/20 00:11:4262.名無しさんqbXip家計の金融資産、株高が押し上げ 2115兆円で最高 6月末2023/09/21 日本経済新聞 朝刊 家計の金融資産が拡大している。日銀が20日発表した2023年4~6月期の資金循環統計によると、23年6月末時点の家計の金融資産は前年同期比4.6%増の2115兆円だった。今春以降の株価上昇が資産を押し上げた。 家計の金融資産は初めて2100兆円を超え、過去最高を更新した。個人の金融資産を最も押し上げたのは株式だ。6月末時点の残高は268兆円と1年前より26%増えた。日経平均株価は4~6月に5147円(18%)上昇して保有時価が膨らんだ。日本株の資本効率改善や割安感に着目した海外投資家の買いが広がった。 ただ4~6月期の個人株式は取引ベースでは2.9兆円の純流出となった。純流出に転じるのは3期ぶり。個人投資家は相場の流れに逆らう「逆張り」傾向が強い。日本株相場が33年ぶりの高値水準に浮上するなか「長く保有して評価益が出た銘柄の利益確定売りが膨らんだ」(みずほ証券の倉持靖彦マーケットストラテジスト)。米国株などを含む対外証券投資も1.4兆円の純流出だった。 投資信託の残高は株高を主因に15.9%増加した。フローでは1.5兆円の純流入となり、株式と対照的に13期連続の流入超だった。インデックス型投信などへの積み立て投資が堅調とみられる。投資信託協会のまとめでも、上場投資信託(ETF)を除く公募株式投信の残高は8月に7カ月連続で過去最高を更新した。 ただ、足元では物価上昇率が高止まりしており、実質で見た金融資産の価値はそれほど増えていないとの見方もできる。 ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストの試算では、1年間の物価上昇を考慮した実質ベースでは個人の金融資産残高は前年同期比0.6%増にとどまるという。上野氏は「資産運用を検討する重要性が高まっている」と指摘した。2023/09/21 06:40:4863.名無しさんqbXip「新NISA普及進める」 官房長官(短信)2023/09/21 日本経済新聞 朝刊 松野博一官房長官は20日の記者会見で、日銀の統計で家計の金融資産が過去最高の2115兆円となったのを受け、新しい少額投資非課税制度(NISA)の普及を訴えた。貯蓄を投資につなげるため「新しいNISAの普及促進、金融経済教育の充実などを進める」と強調した。2023/09/21 06:41:5864.名無しさんqbXipオイルマネー、日本株照準――拠点開設か、脱デフレ・統治改善に期待(スクランブル)2023/09/21 日本経済新聞 朝刊 海外投資家の多くは9月上旬に夏休みを終えたというのに、日本株は方向感の乏しい展開が続く。日経平均株価は3カ月以上も約2000円の狭い値幅で上下する。ただ、日本株の勢いはこれまでかというと、必ずしもそうではなさそうだ。ベールに包まれ外部からは実態が見えにくい中東のオイルマネーが、日本株の本格買いに向けて準備を進めている。 「日本拠点の開設を検討している」。ある証券関係者は最近、中東の政府系ファンド(SWF)からこう告げられた。既に日本人を採用した中東SWFも複数知る。「彼らは情報管理に厳しく、なかなか詳細な手の内を明かさない。しかし日本拠点の開設や日本人採用は隠しようがない事実で、日本株への関心の高まりを示している」 調査会社のグローバルSWFが公表した2023年版のリポートによると、中東SWFの運用残高は計4・8兆ドル(約710兆円)。東証プライム市場の20日時点の時価総額(約870兆円)の8割の規模だ。足元の原油価格の上昇で運用規模は膨らんでいる可能性がある。日本株に向かう資金は一部でも、母数が大きいだけに、多少の売買でも影響は大きい。 なぜいま日本株に関心があるのか。同関係者によると、デフレ脱却とコーポレートガバナンス(企業統治)の劇的な改善の2点への期待が大きいという。 「他の国にはない日本独自の買い材料だ」。大和証券の阿部健児チーフストラテジストもこの2点を評価する。9月に訪日した中東SWFの担当者と会い日本株への関心の高まりを直接感じ「買い増し余地はあるのでは」と話す。10月下旬に複数の中東SWFを出張訪問する予定だ。 世界各国の公的運用機関を顧客に持つシュローダー・インベストメント・マネジメントは8月、日本株の見通しを世界各国の株式のなかで唯一、「強気」に引きあげた。福沢基哉執行役員は「他の国・地域が失速するなか、日本株はライジングスター(新星)として海外投資家の目に留まるようになってきた」と話す。 中東SWFの運用スタイルは5~10年後などのリターンをみる長期運用がほとんどだ。買うときは「短期の値動きやバリュエーション(投資尺度)はあまり気にせず大胆に買ってくることも多い」(大手証券)とされる。直近では2023年春にも買い観測が出たほか、過去を遡ると1980年代や2000年代などにも大きく買う場面があったとされ、いずれも相場を押し上げる原動力となった。 たとえばサウジアラビアのSWFのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)。関東財務局に提出した大量保有報告書をみると、23年春にかけてネクソンや任天堂などの株を買い増している。世界的に脱石油の動きが続くと予想されるなか、同国は石油依存の脱却に動いている。PIFを直轄する同国の実力者、ムハンマド皇太子は日本のアニメやゲームへの造詣が深いとされ、その意向が銘柄選択に表れている可能性がある。 前出の証券関係者によると、複数の中東SWFが年内に訪日を予定しているという。なかには日本のアニメ好きの子どもを連れて、親子で訪日する人もいるようだ。「非常にどっしり構えていて、本格的に日本株を買うとしたらこれから。パッシブ投資も相当程度ある」という。 実際にどれだけのお金が日本株に振り向けられるかは未知数だが、日本株買いをもくろむオイルマネーの胎動は、少なくとも日本のプレゼンスが高まってきた証左であることは読みとれる。膠着が続く相場の転換点は遠くないかもしれない。2023/09/21 06:54:2665.名無しさんKMhvE<東証>東芝が小高い TOB成立は織り込み済み、上場廃止へ2023/09/21 09:36 日経速報ニュース(9時35分、プライム、コード6502)東芝が前日終値(4597円)をやや上回る水準での小動きとなっている。21日朝方、日本産業パートナーズ(JIP)など国内連合によるTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。TOBは1株4620円で8月8日から9月20日まで実施し、成立に必要だった3分の2を上回る応募があった。最近の株価はTOB価格に近い水準での推移が続いており、成立は織り込み済みとの見方から株価の反応は限られている。 株主総会などの手続きを経て、東芝株は年内にも上場廃止となる見通し。証券ジャパンの大谷正之調査情報部部長は「TOB成立は既定路線」と指摘。東芝傘下のキオクシアの人員削減なども一部で報じられているが、TOB成立や上場廃止が既に織り込まれているとあって新たな売買材料と受け止める雰囲気は乏しく、大谷氏は「上場廃止まではTOB価格近辺の水準で推移するだろう」とみていた。2023/09/21 19:52:5566.名無しさんCgKc9外為8時30分 円、上昇し147円台半ば 全国CPI上振れは支え2023/09/22 08:45 日経速報ニュース 22日早朝の東京外国為替市場で、円相場は上昇している。8時30分時点は1ドル=147円53~54銭と前日17時時点と比べて71銭の円高・ドル安だった。日銀がきょうまで開く金融政策決定会合の結果公表や植田和男総裁の記者会見を控え、持ち高調整目的の円買い・ドル売りが優勢となっている。 総務省が8時30分に公表した8月の全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.1%上昇と、QUICKがまとめた市場予想の中央値(3.0%)を上回った。早期の緩和修正への思惑から円は8時30分ごろに一時147円51銭近辺まで買われた。 円は対ユーロでも上昇している。8時30分時点は1ユーロ=157円25~30銭と、同71銭の円高・ユーロ安だった。 ユーロの対ドル相場は横ばい圏で推移している。8時30分時点は1ユーロ=1.0660ドル近辺と同0.0005ドルのユーロ高・ドル安だった。2023/09/22 08:51:2467.名無しさんCgKc9日銀が大規模な金融緩和策の現状維持を決定-円が売られるhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-22/S1BDG0T0AFB401?srnd=cojp-v2日本銀行は22日の金融政策決定会合で、長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)政策を軸とした現行の大規模な金融緩和政策の維持を全員一致で決めた。YCCについては短期政策金利をマイナス0.1%とし、長期金利(10年物国債金利)はゼロ%程度に誘導する方針を維持。長期金利の許容変動幅は上下0.5%程度をめどとし、1.0%の水準で10年物国債を無制限に買い入れる指し値オペを毎営業日実施するなどのオペの運用も据え置いた。先行きの政策指針であるフォワードガイダンスの表現にも変化はなかった。ブルームバーグがエコノミスト46人を対象に6-12日に実施した調査では、全員が今回会合での政策維持を予想していた。今週に入り一時昨年11月以来の1ドル=148円台まで円安が進んだ中で、市場の一部には政策修正の思惑もくすぶっていたが、経済・物価認識に大きな変化はなく、緩和継続姿勢を改めて示した形だ。 植田和男総裁は9日付の読売新聞のインタビューで、賃金と物価の好循環を見極めるのに十分な情報やデータが年末までにそろう可能性はゼロではないと指摘。賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、マイナス金利政策の解除を含めていろいろなオプションがあるとした。市場では早期の政策正常化観測が浮上しており、午後3時半からの記者会見での総裁の発言が注目される。日銀会合結果の発表を受けて、東京外国為替市場では円が売られる展開となっている。発表前のドル・円相場は147円70銭台で推移していた。米連邦公開市場委員会(FOMC)は20日、主要政策金利の据え置きを決めた。一方で、年内あと1回追加で金利を引き上げ、その後は高水準の金利をより長期にわたって維持する公算が大きいことを示唆した。FOMCのタカ派的スタンスを受けた米金利上昇を背景に、外為市場では日米金利差を意識した円売り・ドル買い圧力がかかりやすくなっている。現在の政策運営方針日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用長期金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債を買い入れ長期金利の変動幅は上下0.5%程度をめどとし、長短金利操作についてより柔軟に運用する。10年物国債金利について1.0%での指し値オペを明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日実施する金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買い入れを継続するとともに、各年限で機動的に買い入れ額の増額や指し値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施するETFとJ-REITはそれぞれ年間約12兆円、約1800億円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じて買い入れCPは約2兆円の残高維持。社債は感染症拡大前と同程度のペースで買い入れ、残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へ徐々に戻していく。ただし、社債の買い入れ残高の調整は発行環境に十分配慮して進める2023/09/22 12:12:3268.名無しさんCgKc9植田日銀総裁、政策修正時期「決め打ちは到底できない」2023/09/22 16:52 日経速報ニュース 日銀は22日に開いた金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持を全会一致で決めた。長期金利の事実上の上限を1%とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)や、マイナス金利政策、上場投資信託(ETF)の買い入れなどの現行の緩和策を続ける。記者会見した植田和男総裁は「政策修正時期の決め打ちは到底できない」と述べた。 植田総裁は「物価目標の実現が見通せる状況にはない。粘り強く金融緩和を続けていく」と強調した。日銀は7月会合でYCCを修正し、長期金利の上限を事実上1%に引き上げた。植田総裁は「効果があらわれているのか、あらわれていないのかをみるには時期尚早だ」と指摘した。 円は一時148円台に 大規模緩和を続ける日銀と金融引き締め局面にある欧米中銀との違いが改めて意識され、外国為替市場では記者会見中に円安が進んだ。日銀の発表直前には147円台後半で推移していた円は、一時1ドル=148円台を付けた。植田総裁は「市場の動向だけでなく経済、物価見通しに影響を及ぼすという観点から注視している」と語った。 植田総裁は「賃金上昇を伴う2%の物価上昇は見通せない」と強調し、市場の早期修正観測をけん制。一方で、今後の政策変更について問われ「物価目標の実現が見通せる状況になれば、YCCの撤廃やマイナス金利の修正を検討することになる」と述べた。さらに「どれをどういう順序で変更していくかは、さまざまなオプション(選択肢)がある」と話した。 賃金は「最重要な要素」 総務省が同日発表した8月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比で3.1%の上昇だった。物価上昇の継続性を判断するうえで、賃金の上昇が「最重要な要素の1つ」(植田総裁)となる。日銀は上昇率が一時的に縮小した後、企業の賃金・価格設定行動の変化などを背景に「再びプラス幅を緩やかに拡大していく」とみている。 日銀は国内景気については、企業収益が全体として高水準で推移するもとで、設備投資や個人消費が増加しているとの見方を示した。先行きは海外経済の回復ペースの鈍化で下押し圧力を受ける一方、ペントアップ(先送り)需要の顕在化などに支えられ、緩やかに回復していくとみる。 今後のリスク要因については「海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い」とした。【関連記事】・日銀、追加の緩和修正見送り 金融政策の現状維持を決定・円安対応へ資金拡大方針の撤廃案 日銀の次の一手に思惑・消費者物価、8月3.1%上昇 伸び横ばいで高止まり2023/09/22 22:41:0769.名無しさんvlpJY積極賃上げ銘柄、株上げる――日本株買い・日銀政策を左右(スクランブル)2023/09/23 日本経済新聞 朝刊 日銀がいつ長短金利操作撤廃やマイナス金利解除に踏み切るか。22日の金融政策決定会合では動かなかったが、国内では賃上げが進み本格的なデフレ脱却の芽が出ている。積極的な賃上げに動ける銘柄には業績上振れ期待もあり、買いが集まる。株高の持続力が高まるかは賃上げの裾野の広がりがカギを握る。 「企業の賃金、価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きが見られ始めているが、物価目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至ってない」。植田和男総裁は会合後の記者会見で指摘した。 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「地に足がついた慎重な判断だ。名目賃金が上がっていることもあり、実質賃金がプラス圏に持ち直すまでもう少しの辛抱という考えだろう」と受け止めた。植田氏は賃金動向を政策判断のための最重要要素の一つとしている。 日本労働組合総連合会がまとめた2023年春闘での賃上げ率は3・58%と、30年ぶりの高い伸び率だった。基本給を引き上げるベースアップ(ベア)だけでも2・12%伸びた。日経平均株価は7月3日に3万3753円と33年ぶりの高値をつけ、ともに「失われた30年」からの脱却を印象づけた。ある外資系運用会社幹部は「日銀が政策修正を考慮できるほど日本経済が回復し、外国人投資家のジャパン・パッシングが払拭されつつある」と話す。 賃上げ率と日経平均の年末値の推移をみると、軌道はおおむね重なる。最高値をつけた1989年12月29日から間もない90年春闘での賃上げ率は5・95%と、この35年で最も高い。2000年代に入り賃上げ率が2%を割り込むと、日経平均も低迷した。 足元の賃上げ拡大の背景には、企業が原資となるキャッシュを稼ぐ力を高めたことが大きい。野村証券の清水康弘シニア・クオンツ・アナリストは「業績見通しが良い企業が積極的な賃上げに動く傾向がある」と分析。「積極的に賃上げする企業は経営陣が利益成長を見込んでいると考えられ、業績予想を上方修正する可能性も高い」(清水氏) そんな積極賃上げで買いを集めるのが日東紡だ。23年春闘での賃上げ率はベア部分で3・00%だった。22日時点での株価は3月末比で63%高と日経平均(16%高)を大きく上回る。8月には24年3月期の連結純利益を前期比62%増の45億円に上方修正した。今期に入り、生成AI(人工知能)関連のデータセンター向けに低誘電ガラスの需要が伸びているという。 ほかにも黒崎播磨は3月末比48%高い。主力の耐火物製品でコストアップ分の価格転嫁が進んだことなどから、7月に24年3月期の業績予想を上方修正した。 市場では賃上げの広がりはまだ不十分との見方が大半だ。中小組合の23年春闘での賃上げ率は3・23%と全体より0・35ポイント低い。ニッセイアセットマネジメントの吉野貴晶投資工学開発センター長は「日本株の一段高には出遅れている中小企業でも賃上げが進み、全体が底上げされる必要がある」と話す。 岸田文雄首相は日本時間22日未明、米ニューヨークで投資家向けに講演し「構造的な賃上げ」と「持続可能性強化のための官民投資」に重きを置いた経済対策をまとめると説明。投資家に「日本への投資を強く求めたい」と呼びかけた。賃上げの継続は日本株の行く末を占う重要な要素だ。2023/09/23 06:49:4870.名無しさん3hKmt止まらぬ円安、介入警戒増す 日米金利差10カ月ぶり水準2023/09/24 15:00 日経速報ニュース 日米中央銀行の政策決定会合を終え、今週は円安圧力が高まりそうだ。米金利高を受けて日米金利差が10カ月ぶりの水準まで拡大しており、ドルに資金が流れやすい。1ドル=150円の大台が迫るなか、市場は円買い介入に対する警戒を強めている。株式市場も金利の動きに神経質になっている。 先週までに開かれた一連の中銀会合で、市場に最も大きな驚きを与えたのは米連邦準備理事会(FRB)だった。米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者による2024年末の政策金利の見通しが、中央値で5.1%と前回から0.5%も引き上げられたからだ。米政策金利が当面高止まりするとの見方が広がり、市場参加者の「利下げシナリオ」に狂いが生じた。 米ゴールドマン・サックスは24年4?6月から10?12月に利下げ開始時期の見通しを変更した。米長期金利は22日、16年ぶりに節目となる4.5%まで上昇した。投資家は高金利長期化への備えを急いでいる。 一方、日銀は金融緩和政策の現状維持を決めた。植田和男総裁は次の政策修正の時期について「到底決め打ちできない」とし、市場で浮上していた早期のマイナス金利政策解除の思惑を打ち消した。これを受け、翌日物金利スワップ(OIS)市場が織り込むマイナス金利政策解除の時期は来年の1月から3月にずれ込んでいる。【関連記事】緩和修正「到底決め打ちできぬ」 日銀、賃上げ見極めへ 日米中銀の姿勢の差を映し、日米の長期金利の差は3.7%と昨年11月以来10カ月ぶりの水準まで拡大した。これが円安圧力となり、円相場は1ドル=148円40銭前後と10カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけた。 日本は仮にマイナス金利を脱却しても、潜在成長率の低さなどから利上げの幅は小さくならざるを得ないとの見方が多い。FRBが24年以降も政策金利を高く保つ姿勢を鮮明にするなか、市場参加者の間で円の「売りやすさ」が意識されている。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「米景気の強さもあり、当面は円安・ドル高が進みやすい」とみる。 ここからさらに円安が進むとすると、1ドル=150円の大台が間近に迫ることになる。150円台は、政府・日銀が2営業日にわたり6.3兆円の円買い介入を実施した昨年10月後半以降は一度も付けていない。 政府は口先介入に動いている。財務省の神田真人財務官は20日、「海外の当局とりわけ米当局とは日ごろから極めて緊密に意思疎通を図っており、過度な変動が好ましくないとの認識を共有している」と述べた。 岸田文雄首相も21日、米国の投資家向け講演で為替の動きに言及した。「引き続き高い緊張感を持ち、過度な変動に対してあらゆる選択肢を排除せず、適切な対応を取る」と強いトーンで円売りをけん制した。 こうした動きを受け、市場でも「円相場が150円まで下落するか、1日の相場変動が1%を超えると、政府が為替介入に踏み切る」(りそなホールディングスの石田武為替ストラテジスト)との見方がある。 米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋は対ドルで円を1兆2700億円程度売り越している。一時は1兆円を下回っていた売り越し幅が足元では拡大基調にある。介入があると、この円売りポジションが巻き戻されて急激な円高が進む公算が大きい。 今週は岸田首相が25日にも経済対策の柱を表明する。対策規模によっては「国内のインフレ圧力になる」(みずほ証券の小林俊介チーフエコノミスト)。インフレの高止まりが日銀のマイナス金利脱却の思惑を呼ぶと、円高の要因となりそうだ。 株式市場でもFOMCの結果を受けて、米金利の高止まりが警戒されている。米ダウ工業株30種平均は22日、2カ月半ぶりの安値をつけた。ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジストは「世界の株式相場のけん引役だった米主要ハイテク株の調整が今後も続く」と予想する。 日経平均株価への影響度が大きい半導体関連株は、米ハイテク株との連動性が高い。米国の株式市場が金利動向に敏感な間は、日本でも上値を狙う動きは限定的とみられる。一方、為替の円安は輸出企業の業績にプラスで、相場を売り崩す展開になりにくい。指数は膠着感を強める可能性がある。2023/09/25 06:26:0571.名無しさん3hKmt2%目標へ自信深める日銀 早期出口へ残る変数3つ-金融PLUS 金融部長 河浪武史2023/09/25 05:00 日経速報ニュース 日銀の植田和男総裁は金融緩和の早期縮小観測をひとまず打ち消したが、行内はインフレ目標の安定達成に自信を深めつつある。構造的な人手不足による賃上げが長く続くとみており、年内の追加の緩和縮小も選択肢となる。米連邦準備理事会(FRB)の動向など、3つの変数を見極めながら最終判断することになる。 「現時点では経済・物価を巡る不確実性は極めて高く、政策修正の時期や具体的な対応は到底決め打ちできない」。22日の記者会見で植田総裁は早期の緩和縮小観測を火消しした。 日銀は7月の前回会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を見直し、長期金利の上限を事実上1%に引き上げたばかりだ。この上限をなくすYCCの撤廃観測が強まると、国債売りが殺到して長期金利も一気に上限の1%に達してしまう。 YCCという繊細な政策を抱える日銀は、市場に追い込まれることだけは避けなければならない。植田氏が自らの発言で広がった緩和縮小観測を強く火消しした背景には、こうした事情がある。 ただ、それでも日銀は金融緩和の出口に向けて自信を深めつつある。日銀関係者が注目したのは、植田氏の記者会見があった22日朝に発表された8月の消費者物価指数統計だった。サービス価格の上昇率が2カ月連続で2%を上回り、賃金上昇が物価を安定的に押し上げる構図がみえ始めている。サービス物価の上昇率が2カ月続けて2%を超えるのは、消費増税の時期を除くと29年10カ月ぶりのことになる。 日銀は10月末に次回の金融政策決定会合を開き、そこで「展望リポート」を公表する。焦点は24年度と25年度の物価見通しで、いずれもインフレ率が2%を超える予測となれば、市場は改めて早期のYCC撤廃とマイナス金利解除を織り込むようになるだろう。植田氏の22日の慎重な物言いは、次回会合まで市場を落ち着かせる時間稼ぎにすぎない。 それでも日銀の緩和縮小を左右する変数が3つある。 一つはFRBだ。米国は原油価格の再上昇でインフレが思うように収まってこない。FRBの金融引き締めが長引きそうで、世界的にも長期金利に上昇圧力がかかっている。こうした局面で日銀がYCCを撤廃してしまうと日本の長期金利も想定外に上昇しかねない。日銀は22年12月23年7月とこれまで2回、緩和縮小に踏み切ってきたが、いずれもFRBが利上げペースを緩めた局面だった。日銀の次の判断も、米国の金融政策が左右することになる。 もう一つは円相場だろう。1ドル=148円台という足元の円安水準は、岸田文雄首相が為替介入の可能性をそれとなくほのめかすほど、ギリギリの攻防ラインにある。一段の円安が進むようなら日銀の動きも前倒しとなり、逆に円安が落ち着けば日銀にとっては様子見できる時間が確保できることになる。 見逃せない3つ目の変数は国内政治情勢にある。解散総選挙の機運が出てくれば、日銀は緩和縮小に動けない。それでなくても安倍派はいまなお早期の緩和縮小に反対しており、24年度予算編成を控えて財務省も日銀の動向に神経をとがらせている。日銀は00年のゼロ金利解除、06年の量的緩和解除で政治の反発を招き、安倍晋三氏ら痛烈な日銀批判論者のその後の台頭につながったトラウマもある。 世界の中央銀行は非伝統的な金利や為替のコントロール策を仕掛けたが、その出口で少なからず失敗をおかしている。直近では21年、オーストラリア中銀がYCCの出口で金利制御に失敗して市場が大混乱した。スイス中銀も15年、通貨コントロール策の解除に失敗し、為替レートが急上昇して経済に打撃をもたらした。いずれも市場の攻撃で中央銀行が追い込まれ、金利や通貨のコントロール策を放棄せざるをえなくなったのが実際だ。 日銀は今のところ市場の混乱を招かずにYCCの出口に緩やかに向かっている。それは豪中銀やスイス中銀と異なり、市場に追い込まれる前に動いているからだ。22年12月も23年7月も、いずれも緩和縮小観測が極めて小さいタイミングを見計らって政策変更を決断した。追い込まれる前に動くのがYCCという政策を抱える今の日銀の鉄則だとしたら、市場は次も虚を突かれることになる。2023/09/25 06:31:4172.名無しさん3hKmt今週の債券 弱含み 日銀の政策修正観測は消えず2023/09/25 07:31 日経速報ニュース 今週(25~29日)の債券相場は弱含みそうだ。日銀は21~22日に開いた金融政策決定会合で現行の金融政策を維持した。だが政策修正観測は根強く、引き続き国内金利には上昇圧力がかかりやすいだろう。市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは0.76%程度まで上昇余地があるとの予想が出ていた。 日銀は21~22日の金融政策決定会合で現行の金融緩和政策の維持を決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃やマイナス金利政策の修正については「物価目標の実現が見通せるようになったら考える」と述べた。10月以降の政策修正の思惑は根強く、今週も金利の先高観は残りそうだ。 前週の長期金利は前の週に比べて0.045%高い(債券価格は安い)0.745%で終えた。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの見方から米長期金利が上昇し、国内債にも売り圧力がかかった。日銀の金融政策決定会合の結果発表を控え、国内債には持ち高調整の売りが出やすかった。 財務省は26日に40年債(発行予定額7000億円)、28日に2年債(同2兆9000億円)の入札を実施する。日銀が早期に緩和を修正するとの観測がくすぶり、投資家のリスク許容度は高いとはいいがたい。こうした状況から市場では40年債について、「デュレーション(元利金の平均回収期間)が長いため、需要が集まるか一定の不安がある」(国内銀行の債券担当者)との声があった。29日には3カ月物国庫短期証券(TB)入札が予定されている。 週内は米国でも入札が複数予定されている。26日には2年債、27日には5年債、28日には7年債入札が実施される。米国で債券需給の緩みが意識されやすいのも、国内金利の上昇を促しそうだ。 日銀による国債買い入れオペ(公開市場操作)は27日に予定されており、対象は「3年超5年以下」「5年超10年以下」「10年超25年以下」「25年超」となっている。29日夕には10~12月分の国債買い入れオペの運営方針(オペ紙)を公表する。オペでの買い入れ額を維持すれば、需給の引き締まりが意識されて債券相場の支えとなるだろう。 週内は25日に日銀の植田総裁が大阪経済4団体共催懇談会に出席して記者会見するほか、内田副総裁が全国証券大会であいさつする。総務省は29日に9月の都区部消費者物価指数(CPI)を発表する。海外では29日に9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値や8月の米個人所得・個人消費支出(PCE)が発表になる。 米国でも要人の発言機会が相次ぐ。26日にはボウマンFRB理事、28日にはクックFRB理事がそれぞれ講演する。28日はパウエルFRB議長が討論会に参加し、29日にはウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁があいさつする。2023/09/25 09:11:2773.名無しさん3hKmt長期金利、0.735%に低下 米金利低下と日銀政策維持で2023/09/25 10:24 日経速報ニュース 25日午前の国内債券市場で長期金利は低下(価格は上昇)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.010%低い0.735%をつけた。米国では22日発表の9月の米購買担当者景気指数(PMI)速報値を受けて景気減速が意識された。その後に米金利が低下し、国内債にも買いが及んでいる。日銀が21~22日に開いた金融政策決定会合で現行の金融政策を維持したのを受け、債券に買いが入りやすい面もある。2023/09/25 10:35:1274.名無しさん3hKmt株、日銀緩和維持でバリュー物色に転機か 銀行や海運が逆行安2023/09/25 12:23 日経速報ニュース 25日午前の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前引けは前週末比187円(0.58%)高の3万2590円だった。日銀による早期の金融政策修正の観測が後退し、海外短期筋などによる買いが優勢になった。値がさの半導体株などの上昇が日経平均を押し上げたが、市場ではこれまで強含んでいた銀行などバリュー(割安)株の下落を不安視する声も聞かれる。 前週末の米株式相場が下落したにもかかわらず、午前は東証プライムの7割強にあたる1360銘柄が上昇した。日銀の緩和維持自体は市場予想通りだったが、植田和男総裁は会見で政策修正の時期について「到底決め打ちできない」と述べた。緩和の継続という日本の独自要因が相場全体を押し上げた格好だ。東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリストは「政策修正を見込む関係者は少なかったが、短期的な持ち高の巻き戻しが出た」と話す。 市場では「日本株の上昇基調は崩れない」との見方が再び広がりつつある。目先は3月期決算企業の中間配当の権利付き最終売買日である27日までは配当狙いの買いが支えとなりそうだ。ただ、その後は権利落ちに伴う需給悪化が意識されやすい。 気掛かりなのはバリュー株の先行きだ。今年は特に顕著な上昇を演じてきただけに反動が懸念される。午前は日銀による政策修正の後退も売りに拍車がかかり、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)や三井住友フィナンシャルグループ(8316)など銀行株は全面安となった。配当利回りの高さなども追い風に売り方の買い戻しによる「踏み上げ相場」を演じてきた日本郵船(9101)や川崎汽船(9107)、上場来高値圏のトヨタ自動車(7203)も軟調だった。市場では「高配当銘柄は株価が強含んでいただけに、配当を受け取る前に手じまい売りを出す投資家も多そうだ」(国内証券)との声が聞かれた。 東証株価指数(TOPIX)が33年ぶりの高値圏に浮上してきたけん引役は、時価総額の大きいバリュー株だった。ただ「PER(株価収益率)でみると、バリュー株の一段高を正当化するのが難しくなってきた」(岡三証券の松本史雄チーフストラテジスト)との指摘もある。需給面では月末にかけて配当の再投資といった支援材料もあるが、今後は「配当ラリー」の一巡も含め、物色の転機が訪れるかどうかを見極める局面となりそうだ。2023/09/25 13:11:3675.名無しさんAZAFHドル独歩高にブレーキ――日銀総裁、円安の影響「非常に注意」 会見で言及 「政府と連携し分析」2023/09/26 日本経済新聞 朝刊 日銀の植田和男総裁は25日午後に開いた大阪市内での記者会見で、為替動向について「(日銀の)経済、物価見通しにどういう影響を及ぼしていくかは常に非常に注意して見ている」と述べた。25日の東京外国為替市場で円相場は対ドルで年初来安値をつけている。「政府とも緊密に連絡をとって(影響を)調査、分析する」とした。 日銀は22日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めた。市場が金融引き締め局面が続く米国との違いを改めて意識したことが円売り・ドル買いにつながっている。円安は国民負担となる物価高を後押しする側面もあり、政府内の警戒は根強い。 植田総裁は「為替についてはファンダメンタルズ(経済の基礎的要件)に沿って安定的に推移するのが望ましい」とする一方、「直接為替相場を左右するような金融政策運営はしない」との考えも示した。 岸田文雄首相は25日、円安が進む為替市場について「引き続き高い緊張感を持って注視したい」と語った。首相官邸で記者団の質問に答えた。 「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だ。過度な変動は望ましくない」とも指摘した。2023/09/26 06:41:1576.名無しさん4aUwHコラム:日米逆転した個人のインフレ予想、「新しいノルム」誕生か=大槻奈那氏[東京 27日] - 昨年、インフレに対する初動が遅れた米連邦準備理事会(FRB)の誤算の一つが、人々のインフレ期待の高まりだった。2021年にニューヨーク連銀のラッド氏が「人々のインフレ期待が実際のインフレ率に影響を及ぼすという説は、根拠が弱い」という論文を発表し、話題となった。しかし、現実には期待インフレ率の上昇が自己実現してしまった。人々がインフレを予想することで、企業は値上げしやすくなった。また、インフレへの不安が大幅な賃上げ要求につながり、これを吸収するべく企業は商品やサービスの価格を引き上げた。現在、進行中の全米自動車労組(UAW)が 提示している4年間で36%という賃上げ要求も、人々の将来のインフレ懸念が背景にあると思われる。<日本のインフレ期待計測、データ不足の問題>だが、現在インフレ期待でより大きな問題を抱えるのは、日本かもしれない。まずはデータ不足の問題である。日本には、米ミシガン大学の消費者サーベイのような、詳細で長期にわたる個人のインフレ予想のデータはない。市場のインフレ予想自体は、民間エコノミスト経済予測ESPフォーキャストや、物価連動国債と普通国債の利回り差から求めるブレークイーブン・インフレ(BEI)率がある。しかし、ESPフォーキャストは、専門家であるエコノミストの予想であり、BEIも機関投資家らが売買する国債を用いて計測される。いずれもプロの予想を表すものであり、BEIでは債券の需給も影響する。一般の消費者のインフレの体感の把握には不十分である。消費者向けの物価関連のサーベイ・データとしては、内閣府の「消費動向調査」や日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」がある。だが、米ミシガン大のサーベイが1978年まで遡れるのに対し、これらのデータは歴史が浅い。しかも、「消費動向調査」の物価上昇率は「2%以上5%未満上昇」などレンジでの回答になっている。日銀の調査は具体的な数字での回答を求めているが、この形式になったのは2004年からと蓄積データが少ない。さらに、各解答について年齢・学歴・性別等の属性ごとの内訳開示もない。個人の予想はプロほど適格ではないことが多いことから、予想を詳しく聞いても仕方がないという考え方もあるだろう。しかし、消費を行う主体は個人であり、その予想は、数字が当たるかどうかではなくその変動そのものに意味がある。<1年後の物価予想、日本は10%>そして、足元のデータを見ると、日本のインフレ期待には不安な点がある。直近(7月発表分)の日銀の「生活意識アンケート調査」の1年後の物価予想は、上昇の勢いこそ一服したものの、10%と極めて高い。米ミシガン大学サーベイの中央値3.4%(7月)をはるかに上回っている。米国では、物価が高騰した過去2年近く、人々のインフレ予想はその時点のインフレ率の実績値を若干下回って推移してきた。つまり、極端なインフレは早晩収まると予想されていた。一方、現在の日本の消費者は、足元のインフレ率よりもかなり高い数字を予想している。卵や生鮮食品など、日々目にしている品目の極端な価格上昇に色濃く影響を受け、直観で答えているということだろうか。しかし、それは米国でも多かれ少なかれ見られる現象と言える。あるいは、日本の消費者は、長年、物価下落の基調は変わりにくいとメディア等で見聞きしてきたため、物価上昇も粘着性が高いはずだと推定しているのかもしれない。これに関連して、興味深いデータがある。直近の日銀の「生活意識アンケート調査」では、物価が上昇すると回答した人に対して、そう考える理由も聞いている。最も多い回答は「最近物価が上がっているから」というものだ。やはり、多くの人々が足元の物価上昇が来年もそのまま続くと考えていることになる。問題は、その次に多い回答である。35%の人が「物価は上がるものだから」と回答しているのである。どのような属性の人がこのように回答しているのか、過去デフレ時代はどうだったのか等がわからないため、数字の解釈はまだ難しい。しかし、今後この回答が増えると厄介だ。かつて日本では、物価は下がるものだという「デフレ・ノルム」が生まれてしまったが、今度は、物価は上昇するものだ、という「新しいノルム」が生まれつつあるという可能性も排除できない。仮にそうであるならば、行き過ぎたインフレ予想が定着する前に、日銀は早期の利上げに踏み切るべきかもしれない。2023/09/27 10:25:4377.名無しさんE8yXK物価高巡り、日銀割れる 7月議事要旨 「2%実現、はっきり視界に」「マイナス金利修正に距離」2023/09/28 日本経済新聞 朝刊 物価高や賃金動向を巡って日銀内で見方が割れている。日銀が公表した7月の金融政策決定会合の議事要旨では、2%の物価安定目標の達成について「実現がはっきりと視界に捉えられる」とみる委員がいた一方、「実現は見通せず、マイナス金利政策の修正にはなお大きな距離がある」との声も上がった。 7月の会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を見直し、長期金利の上限を1%に事実上引き上げた。 会合直後に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では2023年度の物価見通しを大幅に上方修正した。今後は「輸入物価の下落に伴う下押しにより、次第に縮小していく」とみる委員がいた。「時間をかけてコスト上昇を価格に転嫁する動きは続く」と述べる委員もいた。 焦点の賃金動向について委員の一人からは「来年度以降の賃上げを検討する企業も増えており、賃上げとサービス価格の上昇が続く新たな局面が見込まれる」との意見が出た。一方で中小企業について「6割が赤字法人で収益力が弱く、賃金上昇の広がりを確認する必要がある」と指摘する委員がいた。2023/09/28 06:09:3078.名無しさんE8yXK海外勢、日本株3週連続売り越し 日銀政策巡り警戒感2023/09/28 20:48 日経速報ニュース 日本取引所グループが28日発表した投資部門別売買動向(東京・名古屋2市場)によると、海外投資家は9月第3週(19?22日)に現物株を9131億円売り越した。売り越しは3週連続で、売越額は3月第2週(1兆1275億円)以来の大きさだった。日銀の金融政策決定会合を控えて政策変更への警戒から持ち高を減らす動きが広がった。 19?22日は米連邦公開市場委員会(FOMC)や日銀の金融政策決定会合が開かれた。米金利の高止まり懸念もあり日経平均株価は週間で1100円超下げ、今年に入り最大の下げ幅だった。週初から4日連続で下落し、1日で450円超下げる場面もみられた。 しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネージャーは「日銀の発表内容によっては円高進行や景気回復の減速が懸念されたことから、リスク回避の動きが広がった」と分析する。FOMCでも金融引き締め長期化を示唆する内容がみられたことから、ハイテク関連などグロース株を中心に売りが広がった。 国内の個人投資家は現物株を6613億円買い越した。買い越しは2週ぶりとなる。株価の急落を受けた逆張りの買いが入ったとみられる。年金基金の売買動向を映すとされる信託銀行は3週連続で売り越した。売越額は3401億円で、約3カ月ぶりの高水準となった。2023/09/28 20:50:3879.名無しさんPywFE日銀の自縄自縛で進む円安-人生100年こわくない・マネー賢者を目指そう(熊野英生)2023/09/29 04:00 日経速報ニュース 9月22日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、植田和男総裁は年内利上げの可能性について否定的であった。それに先だって、「物価・賃金データがそろえば、年内利上げもゼロではない」と新聞取材で発言したとされていただけに、手のひらを返したようだった。 ならば、為替は円安に向かうだろう。円相場は1ドル=150円に接近している(図表)。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2024年末の政策金利見通しが5.1%と前回(4.6%)よりも引き上げられた。米連邦準備理事会(FRB)がそう簡単に利下げをしない構えを鮮明にしたために、米長期金利は4.5%近くまで上がり、ドル高・円安が進んでいるのだ。 政府は行き過ぎた円安望まず 思い出すのは22年10月の円安だ。為替市場では1ドル=151円90銭台まで円安が進行。政府は3度の為替介入に踏み切り、それによって円高に押し戻された。円安は輸入物価を高騰させる。国民は物価上昇の痛みを嫌うから、政府も円安に歯止めをかけるべく、為替介入を実施した。しかし現在、日本は米国から為替操作国の監視対象国から外されている。だからこそ、日本は再び監視対象になることを恐れ、今回は前回ほどの大規模な介入には動けないのだろう。 政府には物価を巡って頭の痛い問題がある。9月末にガソリンなどに対して実施していた補助金の支援策が期限切れになる。ひとまずは12月末まで支援策を延長する。電気・ガス代についても、9月末で終了するはずだった補助金を延長する方針を決めている。 政府の立場は、①これ以上の円安を望まない②物価対策を講じて10月以降のガソリン、電気・ガス代の抑制を行いたい、というものだ。ならば筋を通して考えると、日銀に早急に金融緩和の修正を求めるべきだとなる。日銀に対し安定的に2%の物価上昇を望むとしてきたコミットメントを達成したことにして、マイナス金利の解除へ動くことを要請するのだ。 日銀は政府との間で共同声明を結び、2%のインフレ目標達成を目指してきた。この約束が日銀を過剰に慎重にさせてきたことは明白である。だからこそ、政府が「もう良いです」とお墨付きを与えて、日銀の自縄自縛を解いてやらなくてはいけない。仮に岸田文雄首相が共同声明を結び直すと言えば、それだけで為替レートは円高方向に向かうはずだ。 少し前の経緯を話すと、植田総裁が就任したときに共同声明を結び直すチャンスがあったが、岸田首相はそれを見送った。安倍晋三首相時代のリフレ政策に執着する人々におもねった可能性もある。 これが、岸田政権が政策的矛盾を抱える火種になった。まず、金融緩和によって生じた輸入物価高騰を財政資金で穴埋めしている点が矛盾だ。国民が腹を立てているのは、エネルギーよりも食料品の方だ。こちらは円安である限り価格高騰が続く。 さらにガソリン補助金にも矛盾がある。高騰した輸入コストを補助金で引き下げると、ガソリン消費量は減らなくなる。貿易赤字は拡大して、それが円安を招く。ガソリン価格がまた上昇して、余計に補助金を必要とする。岸田首相が日銀の金融緩和解除を縛る共同声明を見直さない限り、根本的な物価対策にはならない。2023/09/29 06:14:4980.名無しさんPywFE マイナス金利解除の限界 年内利上げは早すぎるとしても、マーケットの投資家たちはそう遠くない将来に、日銀のマイナス金利解除があるとみている(筆者も24年4月末だとみる)。 そのためにはインフレ率が「安定的に2%を上回る」という縛りを解く必要がある。この「安定的に」という日本語は曖昧な言葉である。「2%を上回る」ではなく、「安定的に2%を上回る」とするだけで意味が全く違ってくる。「安定的に」が入ると、今後2%を割ってはいけないという意味に変わる。すでに消費者物価は3?4%もの上昇率でとっくの昔に2%を上回っている。日銀が3?4%ものインフレを無視しているのは、いずれ上昇率が反落する可能性を否定できないからだ。 2%を割り込まないようにするためには、下方硬直的なサービス価格が底上げされ、かつ春闘のベースアップが毎年2%以上の上昇率に高まることが必要になると、筆者は考える。 ただし、マイナス金利解除=円高になるかは不確定だと思われる。それを理解するには議論をもっと深く掘り下げる必要があり、具体的にマイナス金利解除の先の話をすればわかる。もし日銀が安定的に2%の物価上昇を展望できたならば、短期金利をマイナス0.1%から0.1%、その次に0.25%へと引き上げられるだろうか。さらに欧米のように、そこから0.50%、1.00%へと段階的利上げに進めるだろうか。 筆者の見方は、先々の利上げもまた苦難の道というものだ。マイナス0.1%の短期金利を引き上げるとすれば、日銀にとって当座預金の保有者である民間金融機関への利払い費負担はどのくらい生じるだろうか。仮に0.10%までの短期金利の引き上げであれば、0.20ポイントの利上げ幅になる。 短期金利が0.10%になると、今まで水面下にあり意識されなかった問題が浮上してくる。例えば、日銀当座預金への付利を行い0.10%分の利息を金融機関に支払うことになる。500兆円以上もある当座預金のうち、準備預金適用残高(7月末473兆円)に対して0.10%の付利を行うと年間利払費は約5000億円になる。これくらいならば問題はないが、付利を0.50%にすると年間2.4兆円もの負担増になる。22年度の日銀の当期剰余金は2.0兆円なので、計算上、赤字に転落する。 マイナス金利をすぐに解除しても、長期国債を市場で売却しない限り、当座預金の付利による負担増が収益を圧迫するという問題が生じる。だから、日銀の利上げはそれほど大胆にはできない。 また、よく話題にされるのは、長期金利上昇に伴う長期国債の含み損の問題である。もちろん、日銀は保有国債をすべて時価評価する訳ではない。それでも含み損を計算したときに、日銀の自己資本がマイナスになると、バランスシートに穴が開いたように見える。そうすると、円の信用を担保する中央銀行の資産内容が劣化して円安を助長することになりかねない。 もしも日銀がマイナス金利を解除すると、隠れた問題が浮上し、利上げに伴う弊害が意識されて、なかなかそれ以上の利上げは難しいという見方が出てくる。すると、日米金利差が縮小するとしても、その幅は限られるという思惑から、円高よりも円安の方に傾くと筆者は見ている。 おそらく、現在はそうした隠れた問題の存在を、マーケットは十分に気付いていない。まだ「マイナス金利の解除は円高要因だ」という先入観にとらわれている。もしも日銀が本気になって趨勢的な円安を止めようとするなら、欧米ほどではないにせよ、いずれ段階的利上げに動かざるを得ないと思える。2023/09/29 06:16:3681.名無しさんPywFE東証前引け 続落、期末売りへの警戒続く 米株高は支え2023/09/29 11:44 日経速報ニュース 29日午前の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日比36円28銭(0.11%)安の3万1836円24銭で前場を終えた。四半期末に伴う機関投資家によるリバランス(資産配分の調整)に伴う売りや、米政府機関の閉鎖への警戒が投資家心理の重荷だった。ただ前日の米株式相場の上昇は相場全体を下支えし、日経平均は上昇する場面もあった。 きょうの東京市場ではバリュー(割安)株への売りが目立ち、東証株価指数(TOPIX)バリュー指数は前引け時点で1.27%安となった。このところ上昇基調が顕著だったバリュー株にリバランスの売りが出ているとの見方があった。29日午前に国内長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時0.770%と約10年ぶりの高水準まで上昇したことも株式相場の逆風との受け止めがあった。 寄り付き直後は前日の米株式相場が上昇した流れを受けて日本株にも買いが先行し、日経平均は節目の3万2000円を超える場面があった。前日の米株式市場では金利上昇への過度な警戒感の後退からハイテク株を中心に上昇。東京市場ではアドテストや東エレクなど半導体関連銘柄への買いが目立った。 東証株価指数(TOPIX)は続落した。JPXプライム150指数も続落し、前引け時点で4.06ポイント(0.40%)安の1012.85だった。 前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で1兆7668億円、売買高は7億2727万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1185と、全体の6割強を占めた。値上がりは587銘柄、横ばいは59銘柄だった。 デンソーやセコムが安い。豊田通商や東京海上の下げも目立った。一方、TDKやソフトバンクグループ(SBG)が高い。ネクソンやリクルートが堅調に推移した。2023/09/29 12:05:1182.名無しさんjA9EK日銀総裁、赤字でも政策能力に支障なし 緩和「出口」局面https://www.jiji.com/jc/article?k=2023093000363&g=eco&utm_source=top&utm_medium=topics&utm_campaign=edit2023年09月30日16時36分 植田和男日銀総裁は30日、福岡市で講演し、大規模金融緩和の「出口」局面における日銀の財務悪化懸念について、中央銀行は自ら紙幣を発行できることなどから「一時的に赤字や債務超過になっても政策運営能力は損なわれない」との認識を示した。東京株、半年で3816円上昇 改革への期待でバブル後高値 緩和の出口では、金融機関が日銀に預け入れる当座預金の適用金利を引き上げる。このため、日銀の支払利息が増えて、収益が減少する。2023/09/30 18:11:4983.名無しさん3sQLU異次元緩和、3つの柱に同時終了説 日銀正常化一気に?-編集委員 清水功哉2023/10/01 04:00 日経速報ニュース 「(今回決まった政策修正は)出口への一歩ではない」。日銀が9月27日に公表した7月金融政策決定会合の議事要旨にそんな発言が記されていた。同会合では長期金利の上向きの動きをより自由にする政策修正を決めたが、これはあくまで金融緩和政策を円滑に継続するための対応というわけだ。 とはいえ「将来振り返ったとき、あれは出口への動きだったと解釈されるのではないか」という声が日銀関係者にある。今後一段と政策が修正されるなら、そう受け止められる可能性が増すのは事実だ。 物価の基調も「2%」に接近 実際、物価上昇圧力は強く、緩和正常化に追い風が吹く。消費者物価(生鮮食品を除く)の前年同月比上昇率は既に約1年半にわたり日銀目標の2%を超え、物価の基調を示す加重中央値(価格上昇率の高い順に品目を並べた時にウエートベースで上から50%近辺に位置する値)も8月は1.8%と2%に一段と接近した。 そこで関心を集めるのが、異次元緩和の3つの柱が今後どんな手順で解体されるかだ。 3つの柱とは、①具体的な目標を設けて長期金利(10年物国債利回り)を操作する長短金利操作政策②日銀当座預金の一部金利をマイナスにするマイナス金利政策③2%超の物価上昇率の安定的実現まで継続するマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針(オーバーシュート型コミットメント)だ。そして従来は①→②→③の順に終わるとの見方が多かった。理由は以下の通りだ。 まず①の撤廃は2%物価目標の持続的・安定的実現が見通せれば可能なのに対して、②の解除があり得るのは「引き締めが遅れて、2%を超えるインフレ率が持続してしまうリスクの方を、より心配する状況」(8月上旬の内田真一副総裁講演)とされ、終了の条件がより厳しい印象を与えてきた。さらに③の撤廃が可能になるのは「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超える状況」(日銀が掲げてきた政策指針)だから、ハードルが最も高いと受け止められてきた。 3つの出口条件に大差はないとの解釈 ところが、最近では3つの出口条件に大差はないという解釈が出てきた。結果として3つが同時に終了するシナリオが取り沙汰され始めた。 背景にあるのは、9月下旬の植田和男総裁の記者会見だ。長短金利操作の撤廃もマイナス金利の修正も「(2%物価)目標の実現が見通せれば検討する」と説明された。両者の解除条件にあまり違いはないとの見方が出た。2023/10/01 08:58:1084.名無しさん3sQLU マネタリーベースの拡大方針はどうか。上述した通り、消費者物価上昇率の実績値は既に約1年半、2%を超え続けており、「(他の2つに先行して撤廃することも)ロジカルには考えられるかもしれない」(植田総裁)という従来の想定と逆の状況になっている。ただし、総裁は「それ(マネタリーベースの拡大方針の先行的な撤廃)が持つアナウンスメント効果とか、全体をパッケージとして考えてきたというようなことの中で慎重に考え、まず物価目標達成の見通しが持てるようになるかどうかというところを先に考えたい」と述べた。 マネタリーベース拡大方針の撤廃も、2%目標達成の見通しが立ったタイミングで検討するとの示唆に聞こえた。とすると出口の条件は3つとも似たものであり、同時終了もあり得るとの見方につながるのだ。 元日銀理事の門間一夫みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストも「3つとも異例の政策であり、2%物価目標の達成が見通せるようになればまとめてやめるのが論理的」と語る。その時期として、現時点で可能性が相対的に高いのは2024年4月と門間氏はみる。 BNPパリバ証券の河野龍太郎氏も「24年の春季労使交渉で大幅な賃上げが実現したことを確認した上で同年4月に長短金利操作とマイナス金利の撤廃が決まると見ており、同時にオーバーシュート型コミットメントも解除すると予想する」としている。 もちろん、経済・物価情勢や為替相場の動向次第で3つの柱が同時に終了になる時期が1月などになったり、3つの柱が別々に出口を迎えたりする展開もあり得る。植田総裁も「様々なオプションがある」とする。ただ、仮に3つの要素が一気に消えるなら、日銀の金融政策は短期の政策金利のゼロ%への誘導を中心とする比較的シンプルなものになるかもしれない。印象はかなり変わる。 「異次元」の要素は残るものの もっとも日銀は長期金利への関与を完全にはやめないはずだ。高水準の国債買い入れを続けるなどして、金利の跳ね上がりを抑えるだろう。 ちなみに、異次元緩和にはもうひとつ質的緩和という要素がある。その中心が上場投資信託(ETF)の購入であるが、購入額は21年春の政策修正で激減した。ただし巨額の保有残高をどうするかという課題は残る。 このように「異次元」の要素はなお残りそうだが、今の政策の3つの柱が一挙に姿を消すなら、7月の政策修正は「出口への一歩」だったと振り返られるだろう。2023/10/01 08:59:3885.名無しさん3sQLU物価高 追いつけぬ統計 2020年基準はや古く 「体感」との差10ポイント超え(チャートは語る)2023/10/01 日本経済新聞 朝刊 物価高に統計が追いつけていない可能性がある。代表的な消費者物価指数は様々な商品の値段を過去の平均的な買い物の割合に応じて足し上げる仕組み。今のエネルギー高のように消費の比重まで変わるほど急激な動きは反映しにくい。足元の支出実態に基づく別の計算法にすると、日本の直近8月のインフレ率は0.5ポイントも上振れする。異例のズレは景気の把握や政策判断の難しさを映す。 「国民生活や全国の中小企業の事業を守る」。8月末、岸田文雄首相はガソリンの高騰を抑える補助金の延長と拡充を表明した。店頭のレギュラー価格が全国平均で185円を超えて過去最高値を更新した2日後のことだった。 3年前の2020年はコロナ禍で需要が減り、120~130円台で推移していた。その後の原油高にウクライナ危機が拍車をかけ、足元は円安も重なって状況がまるで違う。こうした大きな浮き沈みが物価の統計に収まりきっていないとの見方がある。 総務省の消費者物価指数はモノやサービスの価格を家計の支出の多寡で重みづけして算出する。その比重が今は昔の20年のままだ。5年に一度の改定を前に急変した暮らしの実態とかけ離れつつある。 20年の基準はコロナの特殊要因を相殺するために19年のデータと平均している。全体を1万とした支出のうちガソリンや電気代などを合わせた比重は712だ。エネルギー高の22年は803まで高まった。外食、宿泊料などコロナ禍からの回復が進むジャンルも比重の拡大が鮮明だ。 8月の物価上昇率は20年基準だと生鮮食品を除き3.1%だった。比重を毎年更新して前年に合わせる別手法では3.6%になる。指数のリセットを繰り返す計算法ならではの影響もあり、平時にはない裂け目が23年以降広がる。 かねて統計上の物価と消費者の肌感覚には溝がある。ましてこの1~2年は身の回りで食品などの大幅な値上げが続く。日銀の調査で、一般個人の体感インフレ率は6月に平均14.7%に達した。足元で総務省の統計値との開きは2桁に拡大している。 物価は経済の体温計と呼ばれる。上がりすぎるなら生活に悪影響を及ぼすため、冷ます必要がある。22年以降、米欧などが利上げを急いできたのは年率2桁前後の高インフレに直面したためだ。 日銀は先進国で唯一、物価を押し上げるための金融緩和を続ける。目下のインフレは海外発のコスト高が主因で、長続きしないとの見立てがある。経済が縮小均衡に陥るデフレに戻るのを避けたい思いも強い。緩和策を修正するか悩ましい局面が続き、物価の動向には神経をとがらせる。 「連鎖指数を本系列に格上げする対応も一案」。20年基準を決める過程ではこんな意見も出した。連鎖は基準を毎年更新する方式を指す。総務省は参考値にとどめている。生活の変化を反映しやすいのが長所で英国やフランスが採用している。短所は作業負担の重さやブレの出やすさだ。 経済政策も企業経営もインフレの基調を見極めてこそ成り立つ。成長のカギを握る賃上げの目安も物価次第だ。計算法による違いをどうとらえるべきか。総務省の担当者は「『どちらが良い悪い』ではない」と説明する。日銀関係者も「それぞれバイアスがある。両方みることが大切」と話す。 物価の算定や解釈は一筋縄ではいかない。未曽有の感染症や戦争などのショックを経た後ではなおさらだ。日本経済研究センターが集計する有力エコノミストの予想も20年頃から大きく外れだした。誰しもがインフレの実像をつかみあぐねる難局で、統計の精度が改めて問われている。2023/10/01 09:02:2086.名無しさん3llCW「円キャリー天国」条件整う 政府・日銀に打つ手あるか-編集委員 大塚節雄2023/10/01 17:00 日経速報ニュース 外国為替市場で1ドル=150円という円安の節目を前に攻防が続く。米国は利上げ終結がみえ、日本は金融緩和の出口も意識され始めた。昨年の円安を支えた構図は一変したはずだ。だが、その構図の変化こそが今度は日米金利差からの収益を狙う「円キャリー取引」に理想的な環境をつくり円売りを促し始めた。 9月の円相場は昨年10月の1990年以来の安値(151円94銭)にあと2円あまりに迫る場面があった。昨年をしのぐ円安が意識され始めた。 昨年は米連邦準備理事会(FRB)がインフレ対応に追われ、急激な利上げに突き進んだ。金融政策の影響を強く受ける3カ月物の日米金利差(米国マイナス日本)は勢いよく広がり、円安・ドル高も進んだ。 その後は米利上げ幅の縮小を受けて円安は一服したが、米インフレはしつこく続き、利上げの打ち止めは逃げ水のようにずれ込んだ。今年に入って日米金利差は拡大の勢いこそ鈍くなったものの、足元では5%台半ばと2000年以来の大きさになった。 米利上げの勢いや日米金融政策の方向の違いで円を売る流れは終わった。残ったのは巨大な金利差。まだマイナス金利の円でお金を借り、もはや高金利通貨と化したドルを買う。そんな円キャリー取引にとって天国のような環境にもみえる。 だが、キャリー取引はかなりの危険を伴う。いくら金利差が大きくても、それを打ち消すほどドルが値を下げてしまっては元も子もない。もうけを出し続けるには相場の安定が絶対条件だ。 カギは変動率にある。通貨オプション市場に先行き1カ月の円相場の変動がどのくらい織り込まれているかを示す「予想変動率(ボラティリティー)」は昨年、振れを伴いつつ上昇軌道を描いたが、今年に入り明確に低下に転じた。 米利上げの終わりが鮮明にみえ始めたことが大きい。FRBは丁寧に来年も当分は利下げをしないと予告までして、不透明感を取り除いた。 金利差と変動率。この2つを合成すれば、今が円キャリー取引にどのくらい適した状況かを推し量ることができる。 代表的なのが、金利差を予想変動率で割って指数にしたものだ。分子の金利差が広がるほど、金利収入は増える。分母の変動率が小さいほど、相場変動で金利収入が吹き飛ぶリスクが小さい。つまり値が大きいほど、キャリー取引に有利だ。 ニッセイアセットマネジメントの松波俊哉チーフ・アナリストは「円キャリー取引指数が0.6を超えて上昇すると、経験則として円安に弾みがつく」と語る。 8月以降、指数は0.6超が定着した。信用バブルのなか円キャリー取引が世界に広がったリーマン危機以前以来だ。松波氏は「歴史的に米利上げの停止は変動率の低下につながりやすい」として、今後は円キャリー取引が盛り上がるとみる。 米バンク・オブ・アメリカが世界の機関投資家に聞く為替・金利分野の9月の調査では、「今年最良の日本に関するトレード」に「円キャリー取引」と答えた割合は20%となり、8月の11%から上昇した。ただし為替関連では「米景気後退リスクをヘッジする円買い・ドル売り」(14%)を上回ったばかりだ。 同社の主席日本為替金利ストラテジスト、山田修輔氏は「円キャリーの環境が整っているのは確かだが、投資家の動きは鈍い」と指摘する。 リーマン危機前、円安の勢い自体はゆっくりだった。今回は貿易赤字や高水準の対外直接投資など実需面でも円売り要因がそろうなか、すでに円安はかなり進んでいる。このことが円キャリーの急増を抑えている可能性があるとみる。 もっとも、リーマン危機後は円キャリー取引の巻き戻しが強烈な円買い圧力を生み、市場の波乱要因となった。今回、取引が野放図に膨らまないとすれば、かえって緩やかな円安が長持ちすることにもつながりうる。【関連記事】・円安、既に「2022年の安値下回る」 日経通貨インデックスが過去最低に・日銀の自縄自縛で進む円安2023/10/02 02:40:3087.名無しさん3llCW では日本政府・日銀に打つ手はあるのか。 変動率の低さは財務省にとって円買い介入に動きにくいということを意味する。表向き、為替介入は相場の急変動に対抗する狙いがあるからだ。 日銀の植田和男総裁は金融政策の正常化への歩みも視野に、柔軟な政策運営を強調する。だが、仮に早期にマイナス金利の解除に動いても、短期の政策金利がゼロ%になるだけ。米国との金利差を縮めるような急激な利上げは想定しにくい。 結局、米国側にインフレ収束のメドが立つか景気が急減速するなどして利下げの道筋が明確になる以外、円売りの機運をしぼませることは難しいかもしれない。日本側は昨年以上の厳しい戦いを強いられそうだ。2023/10/02 02:40:4088.名無しさん3llCW下がらない物価予想、日銀の先を行く企業や市場2023/10/02 14:51 日経速報ニュース 国内企業や金融市場参加者の物価予想が下がらない。日銀が2日公表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)における企業の物価見通しは、より長期の予想ほど高止まりしている。債券市場参加者のインフレ予想は徐々に水準が切り上がっている。日銀が2%の物価安定目標の実現に「距離がある」(植田和男総裁)との姿勢を崩さないのに対し、企業や市場の受け止め方は先行して変わりつつある。 「今年度後半は来年に向けた賃上げ動向も含め、見極めの重要な局面となる」。日銀が2日公表した9月21~22日開催分の金融政策決定会合での「主な意見」では政策委員からこんな声があった。この委員が重要局面とみるのは「予想物価上昇率に上昇の動きがみられ、やや距離はあるが、『物価安定の目標』の達成に近づきつつある」と考えているためだ。/home/member/news/202310/ucljpg_5f6039515871dd14ff315af9cce1e691.jpg?format=raw その背景の1つは、9月の日銀短観で明らかになった企業による消費者物価指数(CPI)上昇率予想だ。全規模・全産業の見通しでは前年比での上昇率が1年後は平均で2.5%と前回6月調査(2.6%)をやや下回った。だが、3年後の上昇率予想は2.2%、もっと先の5年後は2.1%と前回調査と同水準だ。日銀が目標とする「安定的、持続的な」2%の達成を見込んでいる。 日本経済の先行きを慎重にみる傾向が強いはずの債券市場の参加者も物価予想を切り上げている。QUICKが2日に公表した9月の債券月次調査によると、生鮮食品を除くCPIの年平均の上昇率は今後1年が2.58%(回答の単純平均ベース)だった。今後2年でみると2.10%と8月(2.01%)を上回り、2014年7月以来の高さとなった。10年間でみても1.50%と前回(1.42%)を上回り、14年11月以来の高水準だ。 予想インフレ率の切り上がりを映し、債券市場では日銀による早期の政策正常化への警戒感が高まっている。QUICKの同調査では日銀が次に政策修正もしくは柔軟化する時期について「24年1~3月」との回答が42%と最も多かった。8月調査(26%)から増え、回答が最も多かった時期は「24年4~6月」から前倒しされた。/home/member/news/202310/ucljpg_4b90c2b64f9a1a7a579d56debf7fd8c0.jpg?format=raw QUICKの調査では「『安定的に2%』を主張し続けることはさすがに難しい状況にあり、早期の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)解除は時間の問題」(投信投資顧問)とのコメントもあった。「まだ安定的ではないから緩和を続けている」という日銀の説明にはもはや無理があるとの見方だ。 2日の国内債券市場で長期金利は一時0.775%と2013年9月以来の高さをつけた。長期金利は日を追うごとに水準を切り上げている。日銀の大規模緩和の正常化に備えた動きはまだ続きそうだ。2023/10/02 15:23:5889.名無しさんKqs0f長期金利、気づけば一足先に正常化(チャートでズバリ!)2023/10/03 06:27 日経速報ニュース/home/member/news/202310/ucljpg_fe65dfa591ccd171df5033b7ec131e00.jpg?format=raw 国内長期金利に上昇圧力がかかっている。指標である新発10年物国債利回りは2日、0.775%まで上昇し2013年9月以来の高さとなった。13年といえば黒田東彦氏が日銀総裁に就任し、異次元緩和に踏み切った年。同年4月に日銀が異次元緩和を決めると長期金利はいったん急上昇し、その後低下に向かった。このため見落としそうだが、気づけば現時点の長期金利はすでに異次元緩和前の水準を上回っている。水準だけみれば、日銀が政策の本格修正に動くより一足先に、長期金利は正常化しているといえるかもしれない。 日銀が異次元緩和を決断したのは黒田氏就任後、初めての金融政策決定会合である13年4月4日だ。決定直前である4月3日の長期金利は0.55%だった。12年末の安倍晋三政権の発足で日銀の追加緩和観測が先行し、長期金利は年初から低下していた。異次元緩和は予想を上回る規模の大きさとなり、金融・資本市場には衝撃が走った。円安と株高が加速して景気回復期待が高まったことなどから、日銀の動きは緩和方向だったにもかかわらず長期金利は急上昇して5月下旬には節目の1%に達した。そこで反転し、その後長期間にわたる低下へ向かった。2023/10/03 06:41:3190.名無しさんKqs0f需給不安を覆す銀行株――設備投資堅調、日本株に上昇期待(スクランブル)2023/10/03 日本経済新聞 朝刊 日本株相場は不安定さが続く。期末前後に特有の売りが上値を抑えているが、10月後半以降にかけて先高期待は根強い。日銀が2日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)でも大企業の景況感は改善が続く。銀行株など好景気の影響を受ける銘柄で下支えができれば、中間決算発表後の上昇期待は高まっていく。 2日の東京株式市場では、米議会が政府機関の閉鎖をひとまず回避したことなどを受けた買い戻しで日経平均株価は前週末比一時544円高となったものの、売りに押されて97円安で引けた。荒い値動きに「期末に絡んで、売らなければいけない分を売るというシステマティックな売りが出て先物だけで動いている」とT&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは話す。 9~10月の需給悪化は「5月に売って9月に買え」や「ハロウィーンに買え」といった相場の格言にあるほどだ。日本株は9月末に向け、年金リバランスや指数の銘柄入れ替えに関する売買や配当の再投資を狙った売りが出やすい。グローバルマクロ系のヘッジファンドなども売りやすい。 ある欧州系のヘッジファンドの運用担当者は「日本株はしばらく売りポジションのまま行く予定だ」と話す。先進国株は売りでポジションを取る。一方で「米金利上昇のヘッジにもなるので日本の銀行株のコールオプション(買う権利)を買い上がっている」という。 業種別日経平均の銀行は前週末比1・6%高と逆行高だった。日経平均が大きく下げた午後もさほど下落しなかった。 銀行株は日銀の政策変更によって金利が上昇すれば業績が改善するという期待から上げている。米金利上昇の負の影響を受けにくく、世界でも米長期金利上昇でメリットが大きい数少ない銘柄だ。日銀短観で示された国内の景況感が改善していることも追い風になる。 2日は千葉興業銀行(6%高)、筑波銀行(5%高)、滋賀銀行(4%高)など地銀株が株価上昇率上位となった。千葉興銀は9月29日に4~9月期業績を上方修正しており、地銀の業績回復期待が波及した可能性がある。 中小企業の先行きも改善の兆しがある。「中小企業でも投資意欲が旺盛で地方の経済状況も良好なことで、地銀にも業績改善期待がある」(国内証券アナリスト)。地方経済回復に伴う融資拡大期待も出始めている。 短観で景況感が改善した自動車のトヨタ自動車やホンダなども逆行高。円安と生産回復を受けて業績期待が高い。日経平均は22年までの10年間で年初を100として指数化、平均すると、中間決算発表が本格的に始まる10月半ば以降に上がる傾向がある。特に今年の上方修正期待は高い。 こうした楽観論を支えたのが、短観の設備投資だ。23年度のソフトウエア・研究開発を含む設備投資額(除く土地投資額)で、大企業は全業種で13・1%増と前回調査から0・7ポイント改善した。 「設備投資が減らずに続いているのは企業が株主還元だけでなく収益力改善の段階に企業改革を進める意思がある証拠」と三井住友DSアセットマネジメントの石山仁チーフストラテジスト。低PBR(株価純資産倍率)の修正など業績以外にも影響していくとみる。 ただ、決算発表までは売りが優勢となる可能性がある。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「米国株では投資信託の決算などの関係で10月は損失確定の売りが出やすい」として日本株への影響を懸念する。2023/10/03 07:21:3591.名無しさんKqs0f日本株にソロスの警告 政府・日銀が陥ったトリレンマ(永井洋一)2023/10/03 07:30 日経速報ニュース 2日の日本株の急変は異様だった。本格的な「日本売り(株式、国債、円の同時売り)」の兆しなのだろうか。 株価と円と金利の安定は3つ同時に成り立たない。トリレンマだ。市場関係者が、それに気が付いたのは、日銀が国債の買い入れオペを追加実施すると伝わった2日午後だ。1ドル=150円をうかがうような円売り圧力が強いなか、日銀は長期金利の上昇抑制姿勢を強化した。朝方に500円以上、上げていた日経平均株価はその後、しばらくして下げに転じた。「金融緩和=株売り」の構図だ。 鈴木俊一財務相が円安けん制発言を繰り返す傍らで、必死に金利上昇を抑えようとする日銀。アクセルとブレーキを同時に踏み込む日本。金利と円の相場形成が政府・日銀に縛られるなか、自由な株式市場に財政破綻リスクが転嫁されても不思議はない。 ヘッジファンドは、経済合理性に反した金融・財政政策がもたらす価格のゆがみをいち早く発見し、それがマーケットメカニズムで修正されるポジションに賭けるのが本分だ。代表的なのは1992年の英ポンド危機だ。自由な金融政策の下で為替相場を固定化するという矛盾に気が付いた著名投資家のジョージ・ソロス氏がポンド売りを仕掛け、英通貨当局を相手に大もうけした。経済史に残る事件だ。 政府・日銀は当時の英当局と同じく、崖っぷちに立たされていると真摯に受け止めるべきだ。市場参加者はすでに政府・日銀のやることの矛盾に気が付いている。 日米金利差の拡大が円安の原因である以上、円安を抑えるには、日銀の利上げが必要だが、日銀は異次元緩和にこだわる。したがって、円安と株高は両立しても、金利形成はゆがむ。 日銀が異次元緩和を撤回し、金利が上がって円が上昇すれば、株式は下落する。 ついには財政不安で金利が上昇すれば、インフレヘッジで株式が買われても、日銀の信認は失墜し、円安に歯止めがかからなくなる。やがて株式も売られる。 2日の日本株の急失速は、「日銀の異次元緩和の解体が予想以上に早い」とシナリオを修正した投資家による売りが原因の可能性もある。事実、「金利上昇=買い」というプログラムがなお健在な銀行株は上昇した。 いずれにしても、異次元緩和を金科玉条としたアベノミクス放任のツケは遠からず回ってくる。2023/10/03 07:48:4892.名無しさんDdchZNYダウ続落、一時500ドル超安 長期金利上昇に警戒拡大2023/10/04 04:27 日経速報ニュース 【NQNニューヨーク=戸部実華】3日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落して始まり、一時前日比517ドル安の3万2916ドルまで下落した。米長期金利が連日でおよそ16年ぶりの高水準を付け、株式の相対的な割高感が相場の重荷となっている。 米長期金利は前日比で約0.1%高い(債券価格は安い)4.8%台まで上昇した。このところ高水準の政策金利をより長く維持する必要性に言及する米連邦準備理事会(FRB)高官が増えている。米経済の底堅さを示す経済指標の発表も目立ち、金融引き締めが長期化するとの観測が根強い。 3日午前には8月の米雇用動態調査(JOLTS)が発表された。非農業部門の求人件数が市場予測を上回るなど、労働市場の逼迫感が改めて確認されたことも、金利上昇につながった。 個別では金融のゴールドマン・サックスやホームセンターのホーム・デポ、バイオ製薬のアムジェンが安い。スマートフォンのアップルやソフトウエアのマイクロソフトなどハイテク株も売りが先行した。半面、航空機のボーイングや半導体のインテルは買われている。 ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は5営業日ぶりに反落している。2023/10/04 04:56:5193.名無しさんDdchZ植田日銀半年、近づく出口(上)物価2%へ揺るがぬ信念 デフレとの戦い総仕上げ 達成確信なら「一気に動く」2023/10/04 日本経済新聞 朝刊 日銀の総裁に植田和男氏が就任して9日で半年となる。7月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化し、黒田東彦前総裁が口をつぐんできた金融緩和の出口にも言及し始めた。持続的・安定的に物価が2%目標を上回る状況を目指す日銀が、四半世紀続いたデフレとの戦いの総仕上げをどう進めるのか。半年の軌跡から読み解く。 「経済物価情勢の動きは半年前に予想していたものとはやや違った動きをしているが、それを捉えたうえで、ある程度適切に金融政策対応ができた」。9月22日、金融政策決定会合後の記者会見で、植田氏は就任からの半年を振り返った。官邸からけん制 日銀は7月の会合でYCCを修正し、長期金利の上限をこれまでの0.5%から事実上1%に引き上げた。長期金利は自由度をある程度取り戻し、2016年から続いたYCCは形骸化が進んだ。 国債の大量購入で長期金利を抑え込んできた日銀にとって、YCCを柔軟化し「金利のある世界」に足を踏み入れたのは大きな変化だ。ある日銀関係者は「YCC修正を市場の混乱を招かずに成功させた中央銀行はほかにない」と力を込める。ただ、マイナス金利の撤廃などの金融政策の正常化はこれからが本番であることも確かだ。 道のりがいかに険しいか、植田氏は4月の就任直後にある洗礼を受けたとされる。関係者によると首相官邸を訪れた植田氏に岸田文雄首相はこんな趣旨のけん制を繰り出した。当面は金融政策の転換と受け止められる動きは避けるように――。 植田氏に総裁が代わり、金融市場では政策転換への期待が高まっていた。だが実際に政策が大きく変われば、黒田氏の後ろ盾だった故安倍晋三元首相に近い議員と官邸とで溝が生じかねない。 2000年のゼロ金利解除の失敗を日銀審議委員として経験した植田氏も、日銀が早く動きすぎるリスクは理解していた。就任当初は慎重な発言に終始し、物価の基調の強さを確かめつつ、世論や政治の変化を待っていた節がある。 実際、円安が長引き、日銀の金融緩和が物価高を招いているとの声が強まった。岸田首相が6月に通常国会中の解散総選挙の見送りを決めたこともあって、7月の政策修正への道は整えられていった。 のろしを上げたのは、日銀の生え抜きトップの内田真一副総裁だった。日本経済新聞との7月上旬のインタビューで「(YCCが)市場機能に影響を与えていることは強く認識している」と発言。「強く」という言葉をわざわざ差し挟むことで、政策修正近しとの観測を高めた。 日銀関係者は「慎重姿勢を強調してきた内田氏の発言だったからこそ、政策修正がありうるとの地ならしにつながった」と明かす。学者出身の植田氏の政策運営には懸念の声もあったが、内田氏が実務を押さえて時には露払いの役割を果たし、植田氏が幅広い意見に目配りしながら総合判断するという二人三脚が機能している。 財務省幹部は「これまでの金融政策運営はうまくいっている。日銀も自信を深めているのではないか」と植田体制のスタートを評価する。一方で、今後想定されるマイナス金利解除などの金融緩和の出口については「これまでとレベルの違う政策の変更だ」とし、真価が問われるのはこれからとの考えをにじませる。 課題もある。強い言葉で政策の方向性を示す黒田氏と違い、協調型のリーダーである植田氏の発言は慎重で時にぶれているような印象を与える。 7月会合の前には「全体のストーリーは不変」と発言し、一部の市場参加者が「修正見送り」と受け止めた。9月9日の読売新聞のインタビューでは「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べ、市場でマイナス金利の年内解除の織り込みが進んだ。 日銀内では「どちらともとれる発言をしているだけ。政策への考えは一貫している」との声がある。この先の政策を縛るような発言は極力抑えているため、発言は総花的になりがちで、ワンフレーズにだけ注目すると真意を捉え損ねてしまう。2023/10/04 06:13:2294.名無しさんDdchZ残すは賃上げ 信念に欠けるわけではない。ある日銀関係者は「優柔不断ではない。過去に政策変更で経済を冷やした経緯もあり、判断に時間をかけているだけだ」と説明。「目標達成を確信すれば一気に動く」という。 「確信」は得られるのか。日本経済の供給力と需要の差を表す「需給ギャップ」は足元プラス圏に浮上し、政府が掲げるデフレ脱却の条件は形式上、満たされた。最後のピースになるのが、企業の賃上げだ。 植田氏は「賃金と物価が好循環を続けるという姿が確認できることが必要」との発言を繰り返してきた。植田氏の東大時代の教え子である金融関係者は「賃上げが物価上昇に追いつく前に金融引き締めに転ずるのは問題だと(就任前に)吐露していた」と話す。 賃金は持続的に上がっていくのか。焦点は来年の春季労使交渉だ。さらなる政策修正の判断時期を「来年1~3月頃」(田村直樹審議委員)とする意見がある。 異例の金融緩和を延々と続けることは望ましくないが、日本経済がデフレに逆戻りするリスクは冒せない。確信を持てれば前進し、そうでなければ踏みとどまる。「到底、決め打ちできない」という言葉にこそ、植田氏の信念がにじむ。2023/10/04 06:14:1195.名無しさんDdchZ株、700円安接近 異次元緩和「依存症」抜け出す苦しみ(永井洋一)2023/10/04 13:46 日経速報ニュース 日経平均株価の下げ幅が後場に一時700円に接近した。日銀の異次元緩和は続き、「実質マイナス金利天国」を謳歌できる数少ない国の株との評価で春から買われてきたが、新たな段階を迎えた。株安・円安・債券安(金利上昇)のトリプル安だ。10年以上に及ぶ「異次元緩和依存症」から東京株式市場が抜け出すためには避けては通れない苦難の局面だ。 日銀が金利を低く抑えたまま、景気が回復し、インフレ期待が上がれば、お金を借りる人は増え銀行はもうかる。投資家も、比較的簡単に投資収益が資金調達コストを上回る。これが「実質マイナス金利天国」だ。 ところが予想に反して、米国の長期金利の上昇が止まらず、副作用が大きくなってきた。日米金利差が拡大し、輸入物価の上昇をもたらす「悪い円安」だ。政府は口先介入や実弾の円買い・ドル売り介入で、過度な円安を阻止するというが、その足を引っ張るように日銀が金融緩和を続ければ、市場参加者や国民は混乱する。 ゼロ金利のままでは、家計の貯蓄が海外に大挙して逃げ出す恐れもある。そうなれば、日本の財政運営は将来、極めて厳しくなる。政治的にも政策協調の観点でも、もはや異次元緩和を続けるのは困難と市場参加者は考え、「モルヒネ停止後」の一時的混乱に備えて日本株を手放している。 日本相互証券のデータによれば、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質長期金利は、3月31日のマイナス0.28%から6月9日にはマイナス0.91%まで低下したが、それをボトムにマイナス幅は縮小に転じ、10月3日はマイナス0.47%だった。この間、日経平均は2万8041円から3万2265円まで上昇し、10月4日は一時3万0500円台に下落した。 いまの実質金利の水準から日経平均の水準を割り出せば、3万0500円前後となり、時価とおおむね一致する。 QUICK・ファクトセットによれば、東証株価指数(TOPIX)のアナリスト予想ベースのPER(株価収益率)は直近で約14倍。20年の新型コロナショック期を除くと、過去10年の上限に近い。 世界の時価総額に対する日本株の割合は9月末時点で5.9%。3月末比でも0.2ポイントしか上昇していない。06年には12%を超えていたが、その後低迷し、22年4月には5.4%まで低下した。ドルベースのため円安だとシェアが下がるという点を割り引いても、世界の資本市場における「ジャパン・パッシング(日本素通り)」はなお鮮明だ。 日銀が国債を買い占めたり、上場投資信託(ETF)を通じて株式市場に介入したりするため、価格形成機能がゆがみ、海外投資家が敬遠しているためだ。 だが、いまはいい機会だ。異次元緩和を一刻も早く解体し、マーケットメカニズムが正常に機能する市場に戻す。そうすれば、当面は生みの苦しみは続くだろうが、日本株に投資しようと考える投資家が国内外で増えるだろう。2023/10/04 14:51:2096.名無しさんDdchZ債券15時 長期金利、0.805%に上昇 10年2カ月ぶり高水準 超長期債にも売り2023/10/04 15:42 日経速報ニュース 4日の国内債券市場で長期金利は上昇(債券価格は下落)した。きょうから新発債となった10年372回債の利回りは前日比0.045%高い0.805%で推移している。新発債として2013年8月以来およそ10年2カ月ぶりの水準に上昇した。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの長期化観測を背景に日本時間4日の取引でも米長期金利の上昇が続き、国内長期債にも売りが出た。 日銀が4日に実施した定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)は、残存期間「10年超25年以下」で応札額を落札額で割った応札倍率が3.88倍と前回(9月27日、3.22倍)から上昇した。超長期債の需給がやや緩んでいることを示す結果だったとの受け止めから超長期債が売られ、長期債に売りが波及した面もあるようだ。 幅広い年限に売りが出た。超長期債では新発30年物国債利回りが一時、前日比0.050%高い1.820%と13年9月以来となる水準に上昇した。新発20年債利回りは同0.055%高の1.580%と13年12月以来の高水準で推移している。新発40年債利回りは同0.045%高の1.960%と、業者間の売買を仲介する日本相互証券によると13年7月以来の高水準をつけた。 中期債は新発2年債利回りが前日比0.015%高の0.060%と15年2月以来、新発5年債利回りは同0.020%高の0.340%と13年7月以来の高水準で推移している。 国内債の先物中心限月の12月物は反落し、前日比54銭安の144円42銭で安値引けした。中心限月として23年1月以来となる安値を更新した。 短期金融市場では東京金融取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である12月物が前日から0.006安い99.980をつけた。大阪取引所のTONA先物は中心限月の12月物が前日から0.0050高い99.9900で終えた。全銀協TIBOR運営機関が発表した海外円の東京銀行間取引金利(TIBOR)3カ月物は横ばいで、前日と同じ0.02400%だった。2023/10/04 16:09:2997.名無しさんDdchZ株急落、逆張り個人も惑う 金利高で揺らぐ「買い場」-篠崎健太2023/10/04 20:30 日経速報ニュース 4日の日経平均株価は前日比711円安と急落し、約4カ月ぶりに終値で3万1000円を下回った。9月半ばの直近高値からの下げ幅は3000円に達し、相場の流れに逆らう「逆張り」個人の買いは健在ながら戸惑いもみられる。節目の3万円への急接近で、短期の調整で済むのか正念場を迎えている。 この日は東証プライム市場の9割超の銘柄が下げるほぼ全面安の展開だった。「米長期金利が4.8%台まで駆け上がり、(ドル建ての運用収益が目減りする)円安も進むなか海外勢が売っている」(外国証券トレーダー)との声が聞かれた。 そんな下げ相場に買い向かうのが個人だ。ネット証券最大手のSBI証券では4日、レーザーテック(買越額63億円)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(同46億円)など大商い上位に買い優勢の銘柄が目立った。 横浜市在住の女性投資家は今週、配当や優待目当てで中国塗料株や霞ヶ関キャピタル株を買った。「(日々の)相場は分からないが長期的には日本株は上がると思っている」。欲しかったが買い遅れていた銘柄を狙っているという。 個人の買いは、投資信託の資金流出入からも明らかだ。 三菱アセット・ブレインズによると、国内株式を中心に運用する公募投信(ETFなどを除く)は9月第4週(25?29日)に1470億円の資金流入超を記録した。純流入額は前週の3.2倍に膨らみ、先進国株投信(1412億円)を上回った。国内株式型は10月2?3日も計約400億円の流入超で、流入傾向に変調はうかがえない。 日経平均の3万?3万1000円は、5月後半にわずか約2週間で駆け抜けた価格帯だ。この程度まで落ちれば買いたいという声は多かった。だが米金利急上昇でリスク回避姿勢が広がり、4日には下げが加速した。一段と下げるようだと、逆張り勢の退潮につながるとの懸念が浮上している。 「同じ3万円でも一度3万3000円を見てからでは景色が違う」。個人の動向に詳しい松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストはこう語り、ここにきて押し目買いの勢いの弱まりが感じられると指摘する。 逆風の一つに挙げるのが、バリュー(割安)株として人気だった顔ぶれの大幅安だ。例えば4日は三菱重工業株が6%安、日本製鉄株は5%安で引け、どちらも9月末から下げ止まらない。「普段は値動きが比較的小さい大型株が急落すると動きにくくなる」(窪田氏)。松井証券店内では4日時点の信用買い残の評価損益率がマイナス12.4%と、2022年10月13日以来約1年ぶりの水準に悪化した。 株安を主導しているのは短期筋のファンドなどとみられ、長期目線の海外勢による日本株への姿勢が変質したとの読みは現時点で乏しい。ゴールドマン・サックス証券の建部和礼・日本株ストラテジストは「ストーリーを変えるような日本固有の要因はない。なぜ日本株が下がっているのかという質問が多い」という。 野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは「あまりに急だったので投資家が動けていない。市場が落ち着けば買いは出てくる」とみる。国内勢では金融機関の期初の益出し売りも株安の一因に指摘されており、個人もしぼめば買い手不在の様相が強まる。日経平均が心理的節目の3万円を維持できるかは大きな意味を持つ。 【関連記事】・株、円安が招く海外投資家の売り ドル建て日経平均下落・円安150円でも買われぬ自動車株 追い風よりリスク回避2023/10/04 22:30:4498.名無しさんcRR83日経平均が今年2度目の売られ過ぎゾーンに、RSIは30を割り込むhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-04/S1ZV1KT0AFB401?srnd=cojp-v2テクニカル指標で見た日経平均株価は売られ過ぎの領域に突入し、過去の歴史に照らすと今後反発する可能性がある。オシレーター(振り子)系分析の一種で、過去一定期間の上げ幅と下げ幅の動向から相場の売られ過ぎ、買われ過ぎを図る株価相対力指数(RSI)を見ると、日経平均のRSI(14日間)が売られ過ぎを示す30を下回ったのは今年2度目。1月のケースでは30を下回った後、6月までに日経平均は30%以上上げた。ブルームバーグが集計したデータによると、過去5年間にRSIが同様のシグナルを点灯させたケースは7度あり、日経平均は点灯後の20営業日でいずれも上昇、平均上昇率は4.2%だった。ただし、足元の米国金利の上昇基調は引き続き日経平均の重しになる可能性がある。その場合は節目の3万円大台のすぐ下方にあり投資家の長期売買コストを示す200日移動平均線(2万9920円83銭)の攻防が一つの目安になる。2023/10/05 03:13:2699.名無しさんcRR83植田日銀半年、近づく出口(中)国債は落ちるナイフか 日銀と市場が再び攻防戦へ 迫る1%、「脱緩和」姿勢試す2023/10/05 日本経済新聞 朝刊 日銀はどこまで長期金利の上昇(国債価格の下落)を容認するのか。債券市場で日銀の植田和男総裁の姿勢を試す動きが目立ち始めた。長期金利は4日に一時、0.8%台と2013年8月以来およそ10年ぶりの水準をつけ、日銀の事実上の上限(1%)にじわり近づいた。緩和の出口を織り込み始めた市場との攻防戦が植田氏を待ち受ける。債券は買えない 「ようやく思い描いてきたように長期金利が上がってきた。日銀が金利の形成を市場に委ねる以上、日銀以外の買い手が少ない10年債の利回りは0.9%程度までは上昇しうる」。ある大手運用会社で債券運用を担うファンドマネジャーはさらなる金利上昇を予想する。10年債の保有比率を抑え、運用リターンを上げる戦略をとるという。 市場には「落ちてくるナイフはつかむな」という急落時の投資を戒める格言がある。目先、長期金利が上がる可能性が高いとすれば、国債は落ちるナイフのようなもの。ある地銀担当者は「次はマイナス金利の解除が視野に入っているはず。当行ではその後の利上げもリスクシナリオに入っており、債券を必要以上に買うことはできない」と話す。 別の地銀の担当者も「マイナス金利解除を控え、まだ(長期金利が)上がるのではと警戒している。今の水準では手を出しづらい」と語る。 債券市場では昨年から今年初めにかけて、投機筋が日銀の政策変更を見込んで国債を空売りする場面が続いた。英ブルーベイ・フィクスト・インカムのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は今でも「ショートスタンス(空売り姿勢)に変更はない」と明かす。7月の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)修正で金利上昇を予想する参加者は増え、国債を買い控える動きが広がる。 日銀はどう動くのか。「ベースとして、市場の見方が長期金利に反映される余地を広げる」(植田氏)というのが公式見解だ。長期国債の買い入れ額は7月の政策修正後も高水準が続くが、金利上昇の速度調整はしつつも、特定の水準の防衛に動くことはなかった。1%が近づくにつれ、この姿勢がどう変わるかが焦点となる。 日銀関係者は「できることなら金利の形成を市場に委ねたいが、一足飛びにはいかない。0.5%で単純に抑え込んでいたときより、いろんな要素を考えないといけない」と複雑な胸中を打ち明ける。長期金利が一気に0.9%に到達するなど、1%に迫る動きが出てきた場合には何らかの対応が必要との声が日銀内にある。 そもそも日銀が長期金利の「念のためのキャップ」(植田氏)を1%としているのは、そこまでが合理的に説明できる金利水準と考えているためだ。ある日銀関係者は、自然利子率と期待インフレ率の合計が名目金利の適当な水準だとする「フィッシャー方程式」を使って、1%上限の正当性を説明する。 自然利子率は景気に対して中立な金利水準のことで、日本の場合、0%程度との見方が多い。長期的な期待インフレ率は政府・日銀が目標とする2%にはまだ達していない。このため両者の合計である名目金利は2%以下が妥当ということになる。さらに日銀の国債大量保有による長期金利の押し下げ効果が1%程度あるため、その分を差し引くと1%以下という水準になる。思惑どう抑える もっとも、日銀がこれからマイナス金利解除などの本格的な出口に進む場合、市場参加者は1%を超えた金利上昇を織り込み始める可能性がある。三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは「(YCC、マイナス金利解除後の)金利上限のめどは政策金利が0.5%程度、長期金利が1.5%程度とみている」。リーマン・ショック前の07年ごろの水準で、一定の目安になるという。 植田日銀は7月、市場に先んじて動くことによって、混乱を引き起こすことなくYCC修正を乗り切った。追い込まれた末に政策を修正して大混乱に陥ったオーストラリア準備銀行などと比べて、植田氏の手法を評価する声は多い。 ただ、日銀はマイナス金利解除については慎重に判断する構えだ。その場合、市場の思惑が先行して相場が揺れ動く展開もあり得る。市場の期待をどう収斂(しゅうれん)させていくのか。金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)などを含めた新たな枠組みづくりも課題となる。2023/10/05 06:10:00100.名無しさんsbJsz植田日銀半年、近づく出口(下)学者総裁 政治口説けるか 鬼門のマイナス金利解除 国債費膨張に厳しい目2023/10/06 日本経済新聞 朝刊 「日本にとって大きな弊害が出ている。日銀が今回も動かなければ確実に(真意が正しく市場に伝わらない)ミスコミュニケーションになる」。日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正を決めた7月会合の直前、財務省幹部は厳しい表情で話した。あうんの呼吸 消費者物価指数の前年比上昇率は7月時点ですでに、政府・日銀が掲げる2%の目標を1年以上上回っていた。日米の金融政策の違いが意識され、円安が急速に進展。日銀が動かなければ市場は円安容認と受け取り、円安と物価高がさらに進むことは目に見えていた。 日銀はこうした懸念にこたえるかのように7月会合で政策修正を決定。植田和男総裁は記者会見で「4月時点の(物価)見通しはやや過小、あるいはかなり過小だった」と従来の見通しが甘かったことを率直に認めた。 3日に円相場が1ドル=150円台まで下落するなど、金融緩和の弊害が目立つなか、政策修正を探る日銀と政府・与党の足並みは今のところそろっている。だが、日銀が本格的に緩和の出口に向かえば、市場や経済を巡って不協和音が生じかねない。そのとき、学者出身の植田氏が官邸や与党、財務省を説得できるかが大きな焦点となる。 「さすがにここまで(需要が)弱いとは思わなかった」。8月17日の20年物国債の入札。大きいほど不調な入札とされる、落札価格の平均と最低の差(テール)は96銭と1987年以来の水準に悪化。財務省幹部は驚きを隠せなかった。 異次元緩和が始まった2013年以降、日銀は国債の保有残高を大幅に増やしてきた。13年3月に128兆円だった保有額(短期国債含む)は23年6月には583兆円と455兆円増え、発行済み国債の半分以上を抱える。日銀が動けば、国債の需給はたちまち不安定化する。 財務省幹部の脳裏には約20年前、2002年9月の10年国債入札での「未達」の記憶がよみがえったという。未達とは、国債入札の応募額が募集額に達しないこと。国債のいわば売れ残りを意味し、市場参加者の財政の持続性への不安を高めかねない。 当時の入札は、日銀が民間銀行が保有する株式を買い取るとの異例の政策を公表した直後に実施された。政策の不透明感が金融機関の応札の手控えにつながったとの見方が多い。 財務省幹部は当時、未達について「事故みたいなもの」だと語った。確かにその後、未達が繰り返されることはなかったが、財務省の国債管理政策が投資家の心理という不確かなものに依存していることが改めて浮き彫りになった。 国債の安定消化の難易度はさらに高まっている。日本の政府債務の国内総生産(GDP)比は2002年に150%程度だったが、足元では250%を上回っている。安倍派は警戒も 浮かび上がるのは、日銀が金融政策の正常化にカジを切った場合、誰が国債の引き受け手になるのかという問題だ。この10年間で保有残高は83兆円から181兆円へと倍増させた海外勢が存在感を高める可能性がある。 金融政策の正常化で金利が上がれば、国の利払い費は膨らむ。財務省の試算によると、2024年度以降の金利が想定よりも1%上振れした場合、24年度の国債費が7000億円増えると見込む。25年度は2兆円、26年度は3.6兆円の増加になる。経済対策などに回せる財源が失われれば、政府・与党の日銀への不満も高まりかねない。 「日銀はこれまでのところよくやっているが、マイナス金利解除はまだできる状況じゃない」。自民党安倍派のある議員は植田日銀に厳しい目を向ける。中小企業の厳しい現状を踏まえれば、緩和継続こそ必要との考えは揺るがない。 歴代日銀総裁は政権との関係に苦しんできた。賃上げなどの政策修正の条件がそろったとき、政治にはどんな風が吹いているのか。金融緩和の出口は近づいているが、その道のりはなお深い霧に覆われている。2023/10/06 06:08:22101.名無しさんsbJsz株、3万1000円挟み一進一退か・大和の木野内氏 地銀株に注目2023/10/06 08:18 日経速報ニュース 木野内栄治・大和証券チーフテクニカルアナリスト 6日の東京株式市場で、日経平均株価は3万1000円を挟んでの展開か。3万0800~3万1200円での推移を見込む。6日に9月の米雇用統計の発表を控えているほか、米下院議長の解任を巡る米政治の不透明感も強い。米長期金利の上昇には一服感もみられるものの、積極的な売買は見送られるだろう。 足元では地銀株に注目している。米金利上昇が一服するなか、国内金利はゆるやかな上昇が続きやすいとみている。日本株のリバウンドを見越してポートフォリオを入れ替える局面では、都市銀行に比べて出遅れ感のある地銀株に買いが入りやすいとみている。2023/10/06 08:35:37102.名無しさんttBsk米金利上昇、日本株をどう見る 中国依存低い銘柄に注目(Foresight)2023/10/07 日本経済新聞 朝刊 米モルガン・スタンレー日本株担当ストラテジスト ダニエル・ブレイク氏 米長期金利の上昇に伴って世界の証券市場の先行きに懸念が浮上する中、海外勢は日本株をどうみているのか。米モルガン・スタンレー日本株担当ストラテジストのダニエル・ブレイク氏は日本の国内景気は底堅く、東京証券取引所の市場改革など日本独自の投資テーマが続いていると指摘。注目する業種に建設・不動産を挙げ、「日本の国内市場に強く、中国依存が低い銘柄を投資家に勧めている」と話した。 ――海外投資家は日本市場をどうみていますか。 「東証の市場改革や日銀の政策修正、日本経済のデフレ脱却など以前からの投資テーマが引き続き注目を集めている。ロングオンリー(買い持ち専門)の投資家は状況を見ながら日本株の比率を高めてきた。一部のヘッジファンドも日本企業の業績の堅調さなどを評価してきた。これまでは期待で株価が上がっていた。これからは個別企業の業績やガバナンス体制の改善具合をより深く分析して投資する段階にある」 ――中国経済の失速が懸念されています。日本企業への影響はどうですか。 「中国経済との関連性を他国と比較すると、実は日本はリスクの低い投資先だ。当社が調査対象としてカバーする企業の中国売上高比率では日本は5%程度にとどまる。米国(16%)や欧州(7%)よりも低い。中国株との相関をみてもオーストラリアや韓国などに比べて低い」 ――日本株のどの業種に注目していますか。 「建設と不動産だ。建材価格や金利上昇への対応を進めてきたほか、足元で割安な水準にある。配当や自社株買いも積極的だ。当社の担当アナリストも日本の建設と不動産の投資判断を最上位の『アトラクティブ』とした」 「個別銘柄では住友不動産や鹿島、三菱重工業など国内市場に強く、中国依存度が低い企業を投資家に勧めている。投資家の注目もファナックやキーエンス、ソニーグループ、任天堂など世界的に影響力がある会社から日本の内需に強い企業にシフトしつつある。投資家と話す際に『for Japan(日本のため)』『in Japan(日本における)』が銘柄選択のキーワードになっている」 ――足元で円安が進んでいます。海外投資家に影響はありませんか。 「今後も円安が進んでしまうと、株価がそれ以上に上昇しなければ含み損になる。円安の進行を上回るパフォーマンスの企業を見つけて投資する必要がある。もっとも、日銀の政策変更などにより円高に転じる可能性が高い。円高期待が高まれば、海外投資家は日本株を買いやすくなる」 「円高は日本企業には大きなリスクではない。来年の年央(6月末)にかけて円の水準は1ドル=133円程度になるとみている。企業の想定為替レートも135円前後が多く、130円前後までの円高であれば業績をそれほど悪化させない。世界的に予想以上の不況に陥り、円高が110円前後まで一気に進んでしまった場合のみ悪影響がある」 ――日本市場で今後注目するポイントは。 「2024年1月に始まる少額投資非課税制度(NISA)の新制度だ。投資に消極的だった日本の個人が積極的になると期待している。個人資産の株式への投資比率は米国で40%、欧州で20%に対し日本は10%程度。この比率が欧州に近づくだけでも株価の大きな上昇につながる。個人の市場参加が広がれば、日本株は次の段階に上がるだろう」2023/10/07 06:45:42103.名無しさんcpSVR2023年10月07日19時30分黒船マネーが日本に襲来!「資産運用特区」関連株は今が仕込み場 <株探トップ特集>―2000兆円超の家計金融資産に外資系が食指、外国金融人材増加で関連サービスも成長へ― 岸田政権が掲げる「資産運用立国」の政策プランに注目が集まっている。国内の大手金融グループの運用力を強化するための支援策に加え、海外の資産運用会社の国内誘致を視野に、外国人金融人材の働き方や生活に配慮した「資産運用特区」の創設に向けた準備が今後、加速する見通しだ。株式市場において特区創設はどの銘柄に恩恵をもたらすことになるのか、掘り下げていく。●競争力強化へ年内に政策プラン 岸田文雄首相は9月21日(日本時間22日未明)、国連総会の出席のために訪問したニューヨークで、米国の経済人らを前に講演し、 資産運用立国に向けた政策の一環として、資産運用特区を創設すると表明した。英語のみで行政対応が完結できるための規制改革を進めるとともに、来日する外国人に対してビジネスや生活環境の整備を進める構想を明らかにした。 これまでも国内では東京都による「国際金融都市・東京」構想など、海外の金融機関に日本市場への参入を働きかける取り組みが進められてきたが、今回は政府の「新しい資本主義実現会議」が昨年11月に決定した「資産所得倍増プラン」が土台となっている。今年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)では、2000兆円の家計金融資産を開放することで持続的な成長につなげる資産運用立国の実現に向け、同プランを実行する方針が示され、更に資産運用会社の運用力の強化などを目的とする政策プランを年内に立案することが明記された。 当然ながら、資産運用会社や年金基金などの運用パフォーマンスの向上は、家計の金融資産所得の増加に直結する。資産運用業界への新規参入を後押ししつつ、プレーヤー間の競争を促し、個々の企業の運用能力を高めることができれば、投資資金のリターン拡大を伴って、金融市場に更なるマネーを呼び込むことが可能になる。●銀行・証券セクターだけではない収益拡大シナリオ こうした資産運用業界への支援策は、中期的な観点では野村ホールディングス <8604> [東証P]や大和証券グループ本社 <8601> [東証P]などの証券各社や、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]といった金融機関の収益力を高めると期待されている。資産運用ビジネスの拡大とともに、新たに日本市場に参入する海外の金融機関が増え、その運用資金が東京市場に流入すれば、日本取引所グループ <8697> [東証P]の収益に大きく貢献することになるだろう。 もっとも、国策の恩恵を享受するのは銀行・証券セクターばかりではなさそうだ。資産運用業界の競争促進策の一つとして検討されているのが資産運用特区だが、その候補として、政府は東京都や大阪府、福岡県と札幌市の4自治体を軸に検討していると報じられている。いずれも訪日外国人に人気の高い都市ではあるものの、実際にその土地で生活するとなれば、東京都であっても、生活面でのさまざまな困難を克服する必要に迫られることとなる。 特区創設を機に、外国人材にとって魅力的なビジネス環境の整備に向けて既存のオフィスの建て替えなどを促す再開発構想が今後、浮上する可能性もあるだろう。海外のIT機器の導入支援を得意とする企業にも、受注の拡大の思惑が広がりそうだ。こうした観点をもとに、資産運用特区の関連銘柄をピックアップしていく。 2023/10/08 05:47:08104.名無しさんcpSVR●「東証の大家」の平和不やITシステム関連に注目 平和不動産 <8803> [東証P]は、東証と大阪取引所、名証、福証が入居するビルの賃貸収入を収益源とし、主要都市でオフィスビル・商業施設事業を展開する。兜町の再開発を推進し、都の国際金融都市構想にも深く関与してきた。特区創設にあわせて、大阪・北浜を含め各都市でオフィス地区の再開発構想が浮上した場合、平和不は大きな役割を担うこととなる公算が大きい。 オフィスの新設という側面では、金融機関向けのシステム構築を展開するシンプレクス・ホールディングス <4373> [東証P]をマークしたい。メガバンクや大手証券など国内の主要金融機関との取引を通じて安定的な成長を果たしており、24年3月期の売上高と利益は再上場後の過去最高を更新する見通し。今年1月にはSBIホールディングス <8473> [東証P]と傘下のSBI証券との資本・業務提携を発表した。そのSBIは欧州大手資産運用会社の英マン・グループとの合弁会社設立を7月に、米KKR<KKR>との日本での資産運用会社の設立を9月に公表するなど、海外金融機関との協業を加速している。SBIの「攻めの姿勢」による需要拡大の思惑にとどまらず、海外運用機関が日本オフィスを新設・増強する流れが本格化すれば、事業にプラス効果をもたらしそうだ。 JTP <2488> [東証S]は外資系IT企業の製品の保守・点検業務を手掛けている。システムの導入から運用までを、バイリンガルでかつワンストップで対応する強みを持つ同社は、27年3月期に売上高92億~100億円(23年3月期73億8100万円)、営業利益7億1000万~10億円(同4億6400万円)に伸ばす目標を掲げている。特区創設による特需が発生した際には、中期計画の上振れに寄与することとなりそうだ。 エックスネット <4762> [東証S]は生損保や投信会社、信託銀行など機関投資家を中心に約180社の顧客に対し、資産運用管理専門のシステム提供と業務サポートを展開。株式の流動性は高くはないが、海外運用会社との取引拡大により事業を成長させられるか注視されそうだ。NTTデータグループ <9613> [東証P]が過半を出資する親子上場銘柄としても押さえておきたい。2023/10/08 05:48:24105.名無しさんcpSVR●広報・PR関連や人材サービスにも追い風か 海外の資産運用会社であっても、顧客の投資資金のリターンの拡大を追求する責任を負うことには変わりがない。企業価値の向上策を巡り投資先との意見の相違が埋まらない場合、株主総会において企業側が提案した議案に反対を余儀なくされ、その理由について、日本のメディアに情報発信をする必要に迫られるケースも出てくる。日本での事業を拡大するうえでは、日本語によるPR戦略の立案も欠かせない視点となるだろう。 プラップジャパン <2449> [東証S]は、外資系企業の日本での広報・PRの支援で確固たるポジショニングを確立する。世界的な資産運用会社やヘッジファンドの広報業務での実績を持ち合わせており、日本に進出する外資企業の増加は、同社の業績に直結してプラス効果をもたらしそうだ。 同業のベクトル <6058> [東証P]もアジア最大級のPR会社として、海外では香港やシンガポールなどで業務を展開する。アジア系の資産運用会社が日本に進出する際には、国内でのPR案件の増加に寄与することが見込まれる。 海外の運用会社が日本拠点を設立する動きが相次げば、高度人材の獲得競争が一段と激しくなるだろう。ハウテレビジョン <7064> [東証G]は、グローバル企業への就職を目指す中途採用プラットフォーム「Liiga」を展開。登録会員のうち金融プロフェッショナルは全体の15%を占める。新卒者向けプラットフォーム「外資就活ドットコム」では、外資系投資銀行の内定を目指すトップクラスの人材が登録する。24年1月期の単体業績予想は、経常利益が前期比12.5%増の4億4500万円と最高益を計画。マーケティング施策が奏功し、取引社数と会員数は順調に拡大している。●外国人への生活サポートも需要拡大へ 生活サポート面では、リログループ <8876> [東証P]に注目したい。同社は借り上げ社宅の管理や日本企業に勤める会社員の海外赴任支援事業とともに、外国籍社員の受け入れ支援サービスを展開。ビザや短期宿泊先、住居の手配のほか、携帯電話の契約などあらゆる支援をワンストップで英語により提供する。現状で2400億円弱の時価総額を45年3月期に10兆円とする野心的なビジョンを掲げる同社にとって、海外からのハイレベル人材の増加は成長加速の重要なドライバーとなるだろう。 子どもの教育面ではAoba-BBT <2464> [東証P]が、オンライン経営大学院「ビジネス・ブレークスルー大学大学院」とともに、インターナショナルスクール事業を展開する。生徒数は1500人弱と、2013年の新規参入時のおよそ6倍の規模にまで増加。金融プロフェッショナル人材の来日に伴って、特区で生活する外国人児童・生徒が増加すれば、同事業の更なる成長に寄与しそうだ。外国人ITエンジニア紹介のビズメイツ <9345> [東証G]は、ビジネス向けのオンライン日本語会話プログラム「Zipan」を提供。外国人による日本語学習の需要拡大による恩恵が期待できる。2023/10/08 05:49:26106.名無しさんcpSVR長短金利操作に早くも再修正観測 市場で浮上、日銀警戒2023/10/08 05:00 日経速報ニュース 市場関係者から日銀が10月の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の再修正に動くのではないかとの声が出ている。米金利の上昇などで国内の長期金利が上昇し、日銀が7月のYCC修正で定めた1%という事実上の上限に近づきつつあるためだ。 「市場環境次第だが、10月会合で10年金利の上限を1.5%まで引き上げる可能性は高まっている」。有力な日銀ウオッチャーのひとり、BNPパリバ証券の河野龍太郎氏はこう指摘する。マイナス金利解除などの緩和の出口を市場が意識すれば、金利上昇は一段と加速しかねない。実際にマイナス金利政策を解除する前に、YCC再修正が必要になりかねないというわけだ。 確かに金利上昇の勢いは強い。海外金利上昇のあおりを受け、6日には長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.805%まで上昇。日銀からも「0.5%程度という水準からはかけ離れている」と、想定外の急上昇を懸念する声が出始めている。 7月のYCC柔軟化は「市場の見方がもう少し長期金利に反映される余地を広げようという措置」(植田和男総裁)だった。だが、日銀は4日の定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)で、当初の予定では対象になかった残存期間「5年超10年以下」を追加。6日には5年物の共通担保資金供給オペも実施し、金利上昇をけん制する姿勢を示した。 日銀にとって悩ましいのは、足元で円安の勢いが強いことだ。米国の長期金利が上昇するなか、YCCを続ける日銀が長期金利を抑え続ければ、日米金利差が広がって円安がさらに進む可能性がある。3日には円相場が一時、1年ぶりに1ドル=150円台を付けた。長期金利の上昇を止めれば円安が加速し、円安を止めようとすれば金利上昇を容認せざるを得ないというジレンマがある。 にわかに浮上したYCCの再修正論について、日銀はどう考えているのか。ある日銀関係者からは「いつも通り、会合までの経済・物価・金融情勢を見極めて決めていくしかない」というやや歯切れの悪い言葉が返ってきた。否定でも肯定でもない、どちらとも取れる言葉だが、全否定できないほどに日銀が金利上昇を重く受け止めているようにも聞こえる。 一方でこの関係者は「(現状の長期金利は)1%にすぐにタッチする水準ではない」とも話した。今後、金利がさらに上昇して上限の1%を試すような局面になれば何らかの対応が必要になるが、まだ若干距離はあるとみている可能性がある。米国発の金利上昇が持続的なものなのかどうか、見極める必要があるのは確かだろう。 金融政策を決める政策委員会のメンバーのYCCに対する考え方も、一枚岩とはいえない。9月会合の「主な意見」では「運用を柔軟化した現行のYCCのもとで、物価動向を見極めることが重要」との意見がある一方で、「柔軟化を経ても副作用は残存している。多くの役割を果たした段階だと考えられる」と撤廃の示唆ともとれる発言もあった。 英ブルーベイ・フィクスト・インカムのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は「日銀が2%に達したと認める瞬間が近い」とし「(国債の)ショートスタンス(空売り姿勢)に変更はない」と明かす。日銀は10月会合で新しい物価見通しを示す。物価見通しがさらに上振れ、金利上昇が一段と進む展開になれば、YCCの再修正や早期撤廃がより現実味を増すことになる。2023/10/08 07:06:53107.名無しさんXfEAh「人の話聞く」総裁、日銀は静かに変化 記者が見た素顔-植田日銀半年 近づく出口 番外編2023/10/09 05:00 日経速報ニュース 日銀総裁に植田和男氏が就任して9日でちょうど半年。就任当初は緩和縮小に慎重なハト派発言が目立ったが、7月の金融政策決定会合では市場の思惑に先手を打つかたちで長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正に動いた。賃上げと安定的な物価上昇の好循環を見極めつつ、金融緩和の出口をどう探っていくかに市場の関心は集中する。 日本経済新聞は連載企画「植田日銀半年 近づく出口」で、初の学者出身の日銀総裁の半年を描いた。政策運営の手法、マーケットとの対話、官邸や財務省、与党との距離感という3つの切り口から、植田日銀とは何かという問いに対する現時点での答えを示すことが狙いだった。【植田日銀半年 近づく出口】㊤植田日銀、2%へ揺るがぬ信念 確信なら「一気に動く」㊥国債は落ちるナイフか 日銀と市場、再び攻防戦へ㊦学者総裁、政治を口説けるか 緩和出口に最大の関門 政策の方向性を大胆に示した前任の黒田東彦氏と比べ、植田氏は何を考えているのか分かりにくい、どこか捉えどころのない存在でもある。植田氏をこの半年、ウオッチし続けてきた日銀取材総括の小野沢健一キャップと三島大地記者に、企画の「あとがき」として植田日銀論を改めて用意してもらった。 企画では描ききれなかった植田日銀の別の側面に光を当てたい。 (金融グループ次長、石川潤) 「冷静な頭脳と温かい心」 総裁就任後、初めて植田和男総裁に接したのは、今年4月、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に参加するため訪れた米ワシントンでのことだった。会議の開幕にあたり、植田氏は手短に、記者団の取材に応じた。 「海外中銀の方たちと密接な関係を築いていく、そういう第一歩にしていきたい」 抱負を問われた植田氏は、後列にいた記者が聞き取れないほどの小さな声でこう答えた。毀誉褒貶(ほうへん)は激しいがぶれずに信念を貫き通す黒田氏を直前まで取材してきた身からすると、少し頼りない印象も受けた。 しかし、同時に記憶に刻まれたのは、植田氏が記者一人ひとりの目をみて自らの言葉で質問に答えていたことだった。官僚出身の黒田氏は手元の想定問答に目を落としながら、日銀の公式見解を読み上げることが少なくなかった。 一つ一つの質問に、丁寧に答えようとすればするほど、発言の細部には微妙なブレも生じる。植田氏のこうした姿勢はときに「発言に一貫性がない」として批判されたり、市場に混乱を招いたりしてきた。 だが、日銀が金融政策の独立性を維持しているのは、政策に対する説明責任と表裏一体。新日銀法成立後の最初の審議委員を務めた植田氏が、立て板に水のような官僚答弁ではなく、相手に合わせて自らの言葉で「わかりやすく伝えること」(植田氏)を意識してきたと考えれば納得がいく。2023/10/09 10:31:19108.名無しさんXfEAh 植田氏の東大教授時代の教え子によると、植田氏は学者時代から様々な人の話をよく聞き、自分の考えを周囲に伝え、議論していたという。 植田氏の信念の固さを象徴するエピソードがある。「皆さんと一緒に物価安定の達成というミッションの総仕上げを行いたい」。総裁就任後初の出勤日となった4月10日、職員を前に植田氏はこう挨拶した。 5年の任期の間に果たすべき自らの役割は異次元緩和からの正常化であり、そこに至るまでのタイミングを慎重に見極めているに過ぎない――。そうした見方を踏まえて植田氏の半年間を振り返ると「頼りない」という印象はもはや持てない。 経済学の大家であるアルフレッド・マーシャルは、経済学者が持つべき資質に「冷静な頭脳と温かい心」があると述べている。日銀初の経済学者出身の総裁として、冷静な頭脳と温かい心を持って政策運営にあたる。そうした決意が植田氏からはにじみ出ていると感じられてならない。 (三島大地) 静かなゲームチェンジ 「金融政策の出口は当然意識していますよ」。ある日銀関係者との会話の中で、ふと違和感を覚えた瞬間があった。「限界はきていない」として異次元緩和継続を強調し続けた黒田前総裁が日銀を去って半年、話題にするのも控えるような雰囲気があった金融正常化に対する空気はいつの間にか変わっていた。 その変化を如実に伝えるのが、今年9月の金融政策決定会合での政策委員の発言を紹介する日銀の「主な意見」だ。 政府・日銀が掲げる物価2%目標の達成状況は「見通せる状況には至っていない」との見方が多いものの、「はっきりと視界に捉えられる状況」との主張が紹介された。マイナス金利政策や長短金利操作の解除・撤廃を意識した発言や上場投資信託(ETF)といった国債購入以外の日銀の市場操作についても「要否について検討すべき」だとの声が上がった。 意見は匿名で紹介され、実際はごく少数の主張である可能性もゼロではないだろう。ただ、人数はどうあれ、こうした意見をきちんとすくい上げて紹介する日銀の姿勢からは、出口を意識する意見を重視し始めたことがうかがえる。 外的環境の要因はもちろん大きい。物価高は日銀の当初想定を超えて長期化し、植田総裁は過去の物価見通しを「やや過小、あるいはかなり過小だった」と認めざるをえなくなった。円相場は対ドルで再び150円台を一時付け、物価高とあいまって国民生活の負担が懸念される。長引く物価高、そして円安が日銀の金融政策運営にじりじりと圧力をかける構図が常態化する。 「異次元緩和は行き詰まっている」。以前に比べ、日銀内である意味タブーともいえる批判的な意見を聞くことが少し増えた印象もある。「きちんと人の話を聞く」(日銀関係者)という植田総裁のもとで、職員がより自由に発言しやすくなったのかもしれない。 緩和継続一辺倒の印象さえあった日銀内の空気が静かに、だが確実に出口を見据えたものに変わりつつある。とはいえ実際に正常化に踏み出すのは困難を伴うだろう。 カギを握る賃上げは大企業を中心に広がる気配を見せるものの、中小への浸透は未知数。総選挙といった政治サイドの動きがあれば、金融政策が影響を受ける可能性もある。 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる大規模攻撃を受け、イスラエルは戦争状態を宣言した。中東情勢の不安定化で世界経済の先行きは再び混沌としつつある。目まぐるしく変わる国内外の動きにどう目配りしていくか、金融正常化へのハードルがまた一段高くなったことは間違いない。2023/10/09 10:33:13109.名無しさんMAjVeNYダウ小反発、39ドル高 金融株高が支えも上値重く2023/10/14 06:13 日経速報ニュース 【NQNニューヨーク=稲場三奈】13日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に反発し、前日比39ドル15セント(0.11%)高の3万3670ドル29セントで終えた。朝発表の四半期決算が好感された金融株などを中心に買いが入った。一方、中東情勢を巡る緊張が一段と高まっており、株式相場全体の重荷となった。 金融のJPモルガン・チェースは前日比2%弱上昇した。朝に発表した2023年7?9月期決算では1株利益などが市場予想を上回り、買いを誘った。ダウ平均の構成銘柄ではないが、同業のシティグループとウェルズ・ファーゴも同日に決算を発表し、市場の想定を上回る内容が評価され、買いが入った。 医療保険のユナイテッドヘルス・グループも3%弱高で終え、指数全体を91ドル押し上げた。朝発表した7?9月期決算は増収増益となり、売上高と1株利益がいずれも市場予想を上回った。ダウ平均は上げ幅が300ドル超となる場面があった。 半面、中東情勢の緊迫化は株式相場の重荷となった。イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突が激化することへの懸念は根強い。積極的な運用するリスクを回避しようと、相対的に安全資産とされる米国債や金に資金を移す動きもみられた。 原油価格の大幅な上昇で、インフレが再燃するとの懸念も株売りを誘った。ミシガン大が13日発表した10月の消費者態度指数(速報値)は63.0と前月(68.1)から悪化。1年先の予想インフレ率は3.8%と前月(3.2%)から上昇し、5カ月ぶりの高水準となった。「様々な不安が市場を取り巻いている」(ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)との声が聞かれた。ハイテク株を中心に売りが出やすく、ダウ平均は下落に転じる場面があった。 JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は13日の決算資料内で、インフレ高止まりのリスクや米金融引き締めの影響、ロシアのウクライナ侵攻の長期化やイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃といった地政学リスクに言及。「世界は過去数十年で最も危険な時期にあるかもしれない」との見解を示し、投資家心理が悪化した面もあった。 個別では、外食のマクドナルドや日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などが買われた。石油のシェブロンも高かった。半面、映画・娯楽のウォルト・ディズニーと航空機のボーイングは下落。顧客情報管理のセールスフォースやスマートフォンのアップルといったハイテク株も安かった。 ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は続落した。前日比166.985ポイント(1.23%)安の1万3407.234で終えた。電気自動車(EV)のテスラや画像処理半導体のエヌビディアが下落。アナリストの投資判断引き下げが伝わった動画配信のネットフリックスも売られた。2023/10/14 07:37:50110.名無しさんg5QUDマイナス金利解除はゴールじゃない 利上げどこまで?-金融PLUS 金融グループ次長 石川潤2023/10/16 05:00 日経速報ニュース 日銀が2007年以来となる利上げ局面に足を踏み入れようとしている。マイナス金利解除の時期は、賃上げの動向を見極めながら慎重に判断する構えだが、市場では「時間の問題」との捉え方が多い。むしろ焦点となるのは、その後どれくらいのペースで、どこまで利上げを進めていくかだろう。日銀はどう考えているのか。 「意図的なビハインド・ザ・カーブ」 「当然、その先も考えている」。日銀関係者にマイナス金利解除後の利上げについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。マイナス金利政策の解除は、これまで四半世紀にわたって続いたデフレとの戦いの総仕上げ。だが、それは日銀にとってゴールではなく、物価を2%近辺で安定させるために最適な政策金利を探るスタートになる。 物価上昇が続くなか、日銀はこれまで粘り強くマイナス金利政策を続けてきた。元日銀理事で東京財団政策研究所主席研究員の早川英男氏はこうした日銀の手法を「意図的なビハインド・ザ・カーブ」と呼ぶ。経済や物価の情勢と比べて金融政策をあえて後手に回らせることで、日本経済がデフレに逆戻りしないように万全を期してきたというわけだ。 問題は、辛抱の結果として物価2%目標の達成がようやく確認された場合にどうするのか。早川氏は「好循環を確認できれば(これまで遅らせていた分だけ)少し速いペースで利上げを進めなければならないだろう」と指摘する。日銀内にも、物価上昇への政策対応が遅れすぎてしまうことへの警戒がある。 政策金利の目安は2%? では、どこまで利上げを進めるのか。参考になるのが、景気を刺激もしなければ冷やしもしない中立金利だ。日本の中立金利はゼロ%程度か小幅なマイナスとの見方が多い。これは物価上昇の影響を除いた実質ベースなので、物価分を加えたものが政策金利のあり得べき水準となる。日銀が物価の基調が2%程度まで高まったと判断するならば、政策金利の目安は2%近くとなるはずだ。 もちろん、そこまで一気に政策金利を引き上げようという考え方は、日銀内には見当たらない。実際には「物価上昇率2%という北極星」(日銀関係者)を目印に、インフレ圧力の強さを確かめながら段階的に利上げを進め、どこまで政策金利を引き上げられるか見定めていくことになる。 日銀が前回利上げを進めたのは、06年3月の量的緩和政策の解除後だ。同年7月に政策金利をゼロから0.25%に引き上げ、07年2月には0.5%へと2回目の利上げに踏み切った。当時と比べれば物価上昇の勢いが強いため、より早いペースで利上げを進める可能性はある。市場参加者からは半年に1回程度の利上げを見込む声が聞かれる。2023/10/16 06:19:10111.名無しさんg5QUD 日本版ドットチャートには及び腰 米国では米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの政策金利見通し(ドットチャート)を公表し、利上げのペースや到達点の目安を明らかにしている。だが、日銀は日本版ドットチャートの作成には今のところ及び腰だ。当たりもしない見通しを示したところで、かえって市場を混乱させるだけとの冷めた見方がある。 長く金利のない世界になれきった日本では、限定的な利上げであっても、経済に思わぬショックを引き起こす恐れがある。さらに、マイナス金利解除はともかく、その先の利上げをあからさまに示唆すれば、政治と無用のあつれきが生じかねない。一歩ずつ着実に、というのが日銀のスタンスといえる。 市場参加者のマイナス金利解除時期の予想は来年4月に集中する。解除が近づけば、その先の利上げが意識されていくことは間違いない。現時点で利上げが十分織り込まれていないとすれば、市場に影響が広がる可能性がある。焦点になるのが、これまで日米金利差の拡大を背景に進んできた円安にブレーキがかかるのかどうか。さらには長期金利の行方だろう。 「米国は九回裏、日本は一回表」 三井住友銀行の専務執行役員で市場営業部門を統括する小池正道氏は「利上げという意味では米国はすでに九回裏だが、日本は一回表。円安はこれ以上続かない」と語る。イエレン米財務長官が日本の円買い介入に理解を示したと報じられており「米国もさらなる円安・ドル高は望んでいないのではないか」とみる。 日本の長期金利は今月、一時0.8%台まで上昇した。日銀の利上げを市場がどんどん織り込んでいく展開になれば、日銀が事実上の上限とする1%で抑え続けることは難しくなる。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は7月に修正したばかりだが、再修正が視野に入ってきてもおかしくはない。好循環の確度が高まることで長期金利が上がるのであれば、日銀としても抑える理屈は見つけにくくなる。2023/10/16 06:20:52112.名無しさんUPdgzマイナス金利の解除時期、「来年4月」予想過半 エコノミスト調査 不透明な世界情勢、指摘も2023/10/18 日本経済新聞 朝刊 日銀はいつ追加の政策修正に動くのか。日本経済新聞がエコノミスト16人に聞き取り調査を実施したところ、9人が2024年4月のマイナス金利解除を予想した。その前に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正があるとの意見もあった。中東情勢の緊迫化で原油高が進むなど、不透明な世界情勢をリスクとして指摘する声もあがった。 10月13日時点でエコノミストの回答をまとめた。日銀の植田和男総裁は9月の記者会見で「政策修正の時期や具体的な対応について到底決め打ちできない」と語り、マイナス金利の早期解除観測をけん制した。今回の聞き取り調査では、解除予想は来年4月に集中。「12月に前倒し(で解除)の可能性もある」(モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅氏)との声もあるが、年内解除論は大きく後退した。 マイナス金利解除の時期を考える上で注目されるのが、物価と賃金の好循環につながるかどうかを占う春季労使交渉(春闘)の動向だ。みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏は「3月ごろから少しずつ(労使交渉の結果が)分かってくる」として、4月にマイナス金利の解除を予想した。 日銀は毎年1、4、7、10月の会合で、数年分の消費者物価上昇率の見通しを示す。四半期に1回の新たな見通しを示すタイミングで、日銀が動くとの見方は多い。来年4月のマイナス金利解除を予想するUBS証券の足立正道氏は「4月会合で日銀は26年度の物価見通しを初めて出す。ここで2%と置き、マイナス金利をやめるのではないか」とみる。 マイナス金利政策を解除する前に、再びYCCを修正するとの見方もある。日本の10年物国債の利回りは米国の金利上昇につれて今月、一時0.8%台まで上昇した。日銀が事実上の上限とする1%とはまだ距離があるが、UBS証券の足立氏は「10月会合で長期金利の誘導目標を(現在のゼロから)0.5%に引き上げ、上限は1.5%まで拡大するのではないか」と予想する。 今回の調査では、マイナス金利の解除とYCC撤廃の順序で見方が分かれた。第一生命経済研究所の藤代宏一氏は「市場が利上げを織り込むと日銀の想定以上に金利が上昇する可能性があるため『保険』としてYCCを残すのではないか」と指摘。JPモルガン証券の藤田亜矢子氏は「総裁、副総裁の発信ではマイナス金利解除の条件はYCC撤廃より高いのではないか」と述べた。 出口に向けて動き始めた日銀だが、世界経済の先行きがリスク要因となる。ウクライナ情勢や米欧の景気動向に加え、パレスチナのイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突も起きた。「(中東情勢は)現時点では金融政策への影響は限定的」(みずほ証券の上野泰也氏)との声が多いが、「植田総裁は下振れリスクを重視するので、海外景気の見極めが難しいうちは判断を先延ばしにする可能性がある」(SMBC日興証券の丸山義正氏)との見方もある。2023/10/18 06:23:52113.名無しさんUPdgz債券寄り付き 長期金利0.810%に上昇 2013年8月以来の高さ2023/10/18 09:08 日経速報ニュース 18日朝方の国内債券市場で長期金利は上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.030%高い0.810%をつけた。2013年8月以来、10年2カ月ぶりの高水準となる。市場予想を上回る米小売統計で17日の米国債相場が下落し、国内債にも売りが及んでいる。 17日のニューヨーク市場で米長期金利の指標となる米10年物国債利回りは前日比0.13%高い4.83%で終えた。同日発表の9月の米小売売上高が前月比0.7%増と、市場予想(0.3%増)を上回った。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの見方が改めて強まり、米長期金利の上昇を促した。 米ブルームバーグ通信は17日、日銀が30~31日に開く金融政策決定会合で議論する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」について、2024年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)上昇率の見通しが「従来の1.9%から2%以上への引き上げが視野に入る」と報じた。市場では「原油価格の影響など既に判明していることが多く、政策正常化の思惑を大幅に高める内容ではないが、ひとまずニュースのヘッドラインに反応しているようだ」(国内証券の債券アナリスト)との声が聞かれた。 18日朝方の国内債券市場で先物相場は続落した。中心限月の12月物は前日比33銭安の144円93銭で寄り付いた。大阪取引所と東京金融取引所の無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である12月物の取引は成立していない。2023/10/18 09:30:43114.名無しさんUPdgz長期金利が10年2カ月ぶり高水準、政策修正警戒ー日銀は臨時オペ通知https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-17/S2NVJVT0G1KW01?srnd=cojp-v22023/10/18 12:17:57115.名無しさんUPdgz長期金利、10年2カ月ぶり高さ 揺るがぬ金利先高観 日銀オペは「受け流し」2023/10/18 16:41 日経速報ニュース 国内債券市場で幅広い年限の利回りが再び上昇基調を強めている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時0.815%と2013年8月以来、10年2カ月ぶりの高水準をつけた。国内外の金利先高観に揺らぎはなく、日銀が18日に実施した2本の臨時の国債買い入れオペ(公開市場操作)も金利低下を促す要因とはみなされなかった。 中期ゾーンの新発2年債利回りは0.065%と15年2月以来、新発5年債利回りは0.350%と13年6月以来の高水準をつけた。超長期の40年債は一時2.045%と、業者間の売買を仲介する日本相互証券によると13年2月以来の高水準をつけた。 これまで国内債の利回り上昇を促してきた「2つのエンジン」は健在だ。1つは米金利上昇。米長期金利の指標となる米10年物国債利回りは17日に一時4.86%と、6日までにつけた今年の最高水準(4.88%)に迫っている。17日発表の9月の米小売売上高が前月比0.7%増と市場予想(0.3%増)を上回り、米景気の強さを示すとともに米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げ観測を再燃させた。米長期金利は5%の大台乗せが改めて視界に入っている。 もう一つのエンジンは言わずと知れた日銀の政策修正観測だ。18日は米ブルームバーグ通信による17日の報道が関心を集めた。日銀が30~31日に開く金融政策決定会合で議論する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」について、2024年度の消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI)上昇率の見通しが「従来の1.9%から2%以上への引き上げが視野に入る」というのだ。 日銀の7月時点の見通しでは、23年度のコアCPIは2.5%と「物価安定の目標」である2%を超えていた。24年度も上方修正されれば連続となり、目標の持続的・安定的な達成を連想させる。岡三証券の鈴木誠氏は「物価見通しが24年度も2%以上とのニュースは日銀による金融政策修正の思惑をより強めたのではないか」と指摘する。 日銀はすかさず金利抑制に動いた。18日午前に残存期間「5年超10年以下」と「10年超25年以下」を対象とする臨時の国債買いオペを実施した。とりわけ「10年超25年以下」は今年の2月以来8カ月ぶりで、「ふだんより強めに金利の上昇を抑えようとするメッセージ」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊氏)との声がある。 一方、もう1本の「5年超10年以下」の予定額は3000億円と、前回の臨時オペ(9月29日)と同額だった。「10年超25年以下」の予定額は1000億円で、規模の面では日銀が金利上昇へのけん制姿勢を強めているとは受け止めにくい。稲留氏は「規模がそれほど大きくないため、あくまで急激な金利上昇に対するスピード調整を狙ったものとして軽く受け流された印象だ」と話す。 こうしたなかで国債保有に慎重なムードが広がりやすくなっている。直近の入札は超長期債を中心に弱い結果が続く。例えば財務省が17日に実施した20年物国債入札は、今月末の日銀会合への警戒や構造的な需給不安などから「不調」に終わった。「国内金利はもうしばらく上振れを覚悟する必要がありそう」(国内証券の債券ストラテジスト)との声は多い。2023/10/18 21:30:48116.名無しさんIt5xN政策保有株に環境リスク――投資先の排出量開示、企業評価揺るがす(スクランブル)2023/10/19 日本経済新聞 朝刊 気候変動の情報開示が企業評価をさらに揺らす。温暖化ガス(GHG)の多排出企業は株価のディスカウントが鮮明だが、今後は供給網上での排出「スコープ3」の開示も広がる。日本企業にとっては事業関連の排出だけでなく、政策保有株式など出資先の排出も大きな火種になりかねず、個別銘柄の株価にも影響しそうだ。 「温暖化ガスがコストとして意識されるなか、座礁資産化の観点でリスクの高い政策保有株式を抱える企業にはより明確な説明を求めたい」。シュローダー・インベストメント・マネジメントの豊田一弘日本株式運用総責任者はこう語る。 かつてCSR(企業の社会的責任)部の管掌だった温暖化ガスは経営の最重要課題に変貌。投資評価にも直結する。野村証券によると、エネルギーや素材などの多排出産業で自社拠点からの排出「スコープ1」と使用エネルギー由来の排出「スコープ2」が多いほど、PER(株価収益率)が低くなる傾向が鮮明だ。 今後は供給網分の排出「スコープ3」が注目を集めそうだ。原材料調達先の排出が多ければ環境規制強化で調達コストが増し、排出が多い製品は消費者に敬遠されやすくなる。シュローダーはスコープ3を含めて企業の環境対応を評価。適正株価算出に使うPERの値を調整する。 「スコープ3も開示を検討してください」。三井住友DSアセットマネジメントの坂口淳一責任投資オフィサーは最近、投資先に対しこうした働きかけを強めている。同社は開示の充実度やアナリストによる気候変動の財務影響評価などを通じて同業種内で偏差値をつける。一部のファンドマネジャーは銘柄選びの判断材料にし始めた。 現状で「3」の企業開示は少なく情報ベンダーが提供する推定値にも差があるが、グローバル開示ルールを策定する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が6月に公表した気候変動基準で、「3」を義務にした。日本でもISSBベースの開示制度が検討され、数年後に義務化される見通しだ。 開示範囲は企業の判断による。気候変動リスクに敏感な投資家は開示の拡充を訴える。「日本企業は政策保有分の気候変動リスクも開示する責任がある」と強調するのがフィデリティ投信の井川智洋ヘッド・オブ・エンゲージメントだ。 井川氏が根拠とするのがスコープ3の一要素の投資先の排出量だ。ISSBの基準では同開示を明確に求める先は商業銀行や運用会社だが、有価証券の価値変動が自社の企業価値を揺らすのは事業会社も一緒だ。 株式保有の規模が大きく、投資先の排出が多いほど抱え込むリスクも大きい。たとえば豊田自動織機の現状のスコープ1~3は4000万トン超だが、政策保有株の排出分を出資比率に応じて足しあわせると全体の排出は2倍。住友不動産は2・6倍だ。 日本企業特有である政策保有関連のリスクが伏せられていれば、日本企業全体のディスカウントにもつながりかねない。 岸田文雄首相は10月初旬、7つの公的年金基金(資産90兆円規模)が新たに国連の責任投資原則(PRI)の署名に向け作業を進めると表明。サステナビリティーに注目する投資マネーは増える。排出量をどこまで開示するか、保有を正当化しにくい資産をどうするか。企業は大きな宿題を抱える。2023/10/19 06:32:26117.名無しさんIt5xN年内のマイナス金利解除も、YCC再修正より前に-桜井元日銀委員https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-18/S2M65NT0G1KW01?srnd=cojp-v22023/10/19 09:40:19118.名無しさんIt5xNコラム:中東発の原油高長期化へ、物価押し上げ 注目される日銀の判断https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/F4QMCSZSRRJZXMCI7NJNGPI2ZM-2023-10-18/2023/10/19 09:52:16119.名無しさんIt5xN債券11時 長期金利、0.825%に上昇 10年2カ月ぶり高さ2023/10/19 11:46 日経速報ニュース 19日午前の国内債券市場で、長期金利は上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.020%高い0.825%と、2013年8月以来10年2カ月ぶりの高水準をつけた。米金利の先高観が強まるなか、インフレ率の高止まりで日銀が早期に政策修正に動くとの思惑もくすぶり、幅広い年限で国内債には売りが出た。 18日発表された9月の米住宅着工件数が市場予想を上回って増えるなど米景気の底堅さを映す経済指標の発表が続いている。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを長引かせるとの見方から米長期金利は約16年ぶりの水準に上昇し、国内金利の上昇を促した。 日銀は10月30~31日開催の金融政策決定会合にあわせて公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しの引き上げを検討しているとの報道が相次いでいる。2%の物価目標の実現が近づけば大規模な金融緩和の正常化に動きやすくなるとの見方が強いのも債券相場の重荷となった。 財務省は19日、残存期間「5年超15.5年以下」の利付国債を対象にした流動性供給入札(発行予定額5000億円程度)を実施する。国内でも金利の先高観が強まっているものの、流動性供給入札では「需給が逼迫している銘柄を発行するので、相場にかかわらず需要が集まりやすい傾向がある」(国内証券)として「無難」な結果を見込む声があった。 中期債では新発5年物国債の利回りが前日比0.015%高い0.360%と13年6月以来の水準に上昇した。新発2年債利回りは同0.010%高い0.075%と14年9月以来の高水準をつけた。超長期債にも売りが優勢で、新発20年債利回りは同0.025%高い1.600%、新発30年債利回りは同0.015%高い1.775%で推移している。 債券先物相場は続落し、中心限月の12月物は前日比28銭安の144円69銭で午前の取引を終えた。 短期金融市場では無担保コール翌日物金利(TONA)が小動きとなっている。マイナス0.015~マイナス0.005%を中心に取引され、加重平均金利は前日の日銀公表値(マイナス0.011%)とほぼ同水準となっているもよう。2023/10/19 12:37:40120.名無しさんIt5xN債券15時 長期金利、0.84%に上昇 13年7月以来の高さ 日銀動かず2023/10/19 15:48 日経速報ニュース 19日の国内債券市場で長期金利の指標である新発10年物国債の利回りは前日を0.035%上回る0.840%に上昇(価格は下落)した。日銀が異次元緩和に踏み出した3カ月後の2013年7月以来、10年3カ月ぶりの高さとなった。18日の米長期金利が4.9%台に上昇し、国内債にも売りが出た。このままなら国内長期金利の前日からの上昇幅は今月4日以来の大きさとなる。 日銀はきょうここまで、臨時の国債買い入れオペ(公開市場操作)などを通知していない。金利上昇を抑える日銀のアクションがみられないことで、午後の取引で利回りは一段と上昇した。午前の長期金利は0.825%だった。 日銀が今月末の金融政策決定会合でまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価見通しを上方修正するとの観測報道が相次いでいる。市場では「金融政策を修正するとの思惑は根強く、債券の買い手は少ない」(国内証券の債券ストラテジスト)との見方があった。 19日の財務省による残存期間「5年超15.5年以下」の国債を対象とした流動性供給入札は、応札額を落札額で割った応札倍率が3.58倍だった。前回(3.29倍)を上回ったが、今年度の平均などと比べれば低く「弱めの結果だった」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジスト)という。1年物TB入札も平均落札利回りが上昇し弱い結果と受け止められた。これも午後の債券相場の重荷になった。 新発40年物国債の利回りが前日比0.030%高い2.060%と13年2月以来の高さとなり、5年債は一時、0.025%高い0.370%と13年5月末以来の高さをつけた。新発2年債利回りは0.010%高い0.075%に上昇した。先物中心限月である12月物の終値は前日比36銭安の144円61銭と3日続落した。一時は144円55銭まで売られた。 短期金融市場では東京金融取引所と大阪取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である12月物は売買が成立していない。全銀協TIBOR運営機関が発表した海外円の東京銀行間取引金利(TIBOR)3カ月物は横ばいで、前日と同じ0.02400%だった。2023/10/19 15:56:04121.名無しさん2XM4q株、米金利高で高まる「恐怖」――市場、日銀政策修正も警戒(スクランブル)2023/10/21 日本経済新聞 朝刊 米金利上昇に歯止めがかからず、相対的な割高感が強まる株式を売る流れが続いている。米長期金利は19日夕の米債券市場で16年ぶりに「ターミナル5」と呼ばれる5%台に上昇する場面があった。円安対策を含め金融緩和政策の修正を目指しているとされる日銀の動き次第では、世界の株式は一段と厳しい状況に置かれる可能性がある。 20日の日経平均株価は続落し、171円(1%)安の3万1259円で終えた。今回の上昇相場が始まった4月以降の日経平均の価格帯別売買高をみると、3万2000~3万2500円が最も膨らんでいる。「日経平均の3万2000円から上は重い」のイメージが強まりそうだ。 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日、経済次第で「さらなる金融引き締めが正当化される可能性がある」との考えを示し、12月以降の米追加利上げの可能性が残された。 これまでの金利上昇で債券投資家は懐を痛めている。デュレーション(元利金の平均回収期間)が長い長期国債に連動する上場投資信託(ETF)の「iシェアーズ 米国国債 20年超」は19日までに年初来で約2割安に沈む。9月後半以降、1日の出来高が増加しながら価格が下落しており、損失覚悟の投げ売りが断続的に出ているとみられている。 債券市場の変調は株式市場にも波及している。19日、「恐怖指数」と呼ばれる米国株の予想変動率を示すVIX指数は前日に比べ11・3%高い21・40と、地銀破綻で金融不安が高まった3月以来、7カ月ぶりの水準まで上昇した。「株式相場の一段の調整を想定したオプションのプット(売る権利)を買う動きが活発化している証左」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)。 20日の日本市場でも、日経平均の予想変動率を示す日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)が23・20と6月につけた年初来高値を上回った。 市場は金融の引き締め過ぎによるオーバーキル(景気の冷やしすぎ)を警戒する。19日は内需の中小型株で構成するラッセル2000株価指数は5カ月ぶりに年初来安値を更新。米ニューバーガー・バーマンでマルチアセット運用部門の最高投資責任者であるエリック・クヌーゼン氏は「中小型株指数の低迷は米経済が見かけほど強くないことを示唆している」と警鐘を鳴らす。 米追加利上げの可能性が高まる局面で、市場は日銀の動きにも警戒を強める。連合は19日、24年の春季労使交渉で、基本給を一律にあげるベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせて「5%以上」の賃上げを求める方針を発表した。物価と賃金上昇の好循環につながり、日銀のマイナス金利政策の早期解除観測が強まる。 30~31日に開かれる日銀の金融政策決定会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を再修正するとの予想も出ている。 野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストはあらゆる金融商品のベースとなる米金利が不安定化している環境下で、「日銀の政策修正は火に油を注ぐことになる」と指摘。同時に「日銀が一段の政策修正に向けて歩を進めるには、米利上げの休止と米金利環境の安定が不可欠」とも説明した。 日銀の政策修正を世界のリスク回避と関連付けてみる米投資家も多い。日銀会合の結果次第ではリスク回避の震源が米国から日本にシフトする可能性に警戒が必要だ。2023/10/21 06:54:25122.名無しさんcCN0j日銀、金利操作の再修正論 米引き締め長期化で 10年債、「上限」1%早くも接近 賃上げ注視の声なお2023/10/22 日本経済新聞 朝刊 日銀で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の再修正論が浮上してきた。米金利上昇に伴い国内の長期金利も上がり、7月の修正で決めた1%という事実上の上限に近づいているためだ。今月末の金融政策決定会合で議論する見通しだが、日銀内には賃上げ動向を見極めたいとの慎重論もある。 日銀は7月の決定会合で長短金利操作の運用を柔軟化し、それまで上限としていた0.5%を「めど」に変えた。さらに大量の国債購入で金利を強制的におさえ込む事実上の上限を1%に引き上げた。市場実勢に応じて金利の変動余地を広げ、ひずみの緩和を狙った。 長期金利は7月の政策修正以降、日銀の想定を上回るペースで上昇している。指標である新発10年物国債の利回りは20日に一時0.845%と2013年以来、約10年ぶりの高水準まで上昇。「念のための上限キャップ」(植田和男総裁)だった1%に迫る。背景にあるのが米金利の動向だ。 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日の講演で、経済の高成長や雇用の逼迫が続けば「さらなる金融引き締めが正当化される」と述べた。 引き締めの長期化観測で米長期金利は19日に一時5%台と16年ぶりの水準まで上昇。国内金利にも波及している。 このため今月の決定会合前に日銀内で浮上しているのが、長短金利操作の再修正論だ。現在1%の金利上限をさらに引き上げたり、運用上の位置づけを変えたりする可能性がある。0.5%の「めど」を撤廃する案なども取り沙汰されている。 7月の政策修正から3カ月で再び修正論が浮上する背景には、日銀が動きやすい環境が整っていることもある。FRBは10月31日~11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で22年3月の利上げ開始以降、初めて2会合連続で利上げを見送る公算が大きい。 米国が利上げを休止している環境で政策変更した方が「国内経済へのリスクが少ない」(日銀関係者)との見方がある。22年6月や同10月の決定会合前のように投機筋が債券を売り浴びせる状況でもなく「追い込まれる前に先手を打てる」(市場関係者)。次の決定会合は12月中旬までない。 日銀は月末の決定会合で、23年度は2.5%、24年度は1.9%としている消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率の見通しを上方修正するか検討する。 24年度も2%台の見通しを示せば、3年連続で2%を超えることになり、「持続的・安定的」に2%を上回るという目標達成が近づく。賃金と物価の好循環が続くか確認するため、賃上げの動向を見極める考えだ。 ただ、金利操作の再修正に対する慎重論は強い。野口旭審議委員は12日の記者会見で「(足元の長期金利は)上限よりは少し余裕はある。何かを慌ててやる必要は今のところない」と述べ、修正は不要との考えを強調した。 米金利の上昇やその余波の持続性を見極め、拙速に修正に動くべきではないとの声も日銀内にある。金利操作の再修正自体が過度な金利上昇を招くリスクもはらむ。 20日の外国為替市場で円は対ドルで下落し、今月3日以来の円安水準となる一時1ドル=150円台を付けた。日銀が長期金利の上昇をおさえ込めば高金利通貨のドルに資金が流れ、円安による物価高を助長する。円安を止めようと金利上昇を容認し緩和姿勢の後退と受け止められれば、政治との関係は難しくなる。 仮に現在の上限である1%を超える金利上昇を容認すれば「粘り強く緩和を続ける」という日銀の従来の主張との整合性も問われる。 日銀内には10月会合時点で「持続的・安定的な物価安定の達成を判断できない」との見方が強い。市場ではマイナス金利政策の解除といった金融政策の出口につながる政策変更は24年以降との見立てに傾く。日銀は正常化のタイミングを慎重に探ることになりそうだ。2023/10/22 06:20:29123.名無しさんn8X6z日銀マイナス金利「解除後」に関心強める市場、金利到達点で議論百出ブルームバーグ 日高正裕2023年10月23日 12:12 JST「中立金利」予想は0.5-2%と幅広い、元日銀マンは2%到達派真実は0.5%と2%の中間ではないか-SMBC日興の奥村氏早期のマイナス金利解除を既に織り込んだ金融市場は、日本銀行がその後どこまで金利を上げるのか長期金利はどこまで上がるのかに関心を向け始めている。2023/10/23 14:50:32124.名無しさんn8X6z日銀のマイナス金利解除時、米国債に最大の痛手か-MLIV調査https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-23/S2YGHMDWX2PS01?srnd=cojp-v22023/10/23 15:20:25125.名無しさんn8X6z日銀会合を前に強まる政策修正観測、円安進み植田総裁は厳しい状況にhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-23/S2YUUWT1UM0W012023/10/23 23:05:40126.名無しさんQAV4s大阪万博の電子マネー、愛称「ミャクペ!」 ポイントは「ミャクポ!」2023/10/24 日本経済新聞 朝刊 2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の運営主体の日本国際博覧会協会は23日、全面導入するキャッシュレス決済について具体的な計画を発表した。公募した独自の電子マネーの愛称は「ミャクペ!」に決めた。会期前の23年11月から順次、関連サービスを始める。 協会の石毛博行事務総長は23日の発表会で、デジタルウォレットを通じて「万博を身近に感じてもらい、オールジャパンで機運を醸成していく」と話した。三井住友フィナンシャルグループがキャッシュレス決済端末を1000台提供するなど官民で連携して進める。 ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使った独自の決済アプリは誰でも使え、電子マネー「ミャクペ!」や利用に応じてたまる「ミャクポ!」といった金融サービスが一覧で見られる。NFT(非代替性トークン)をアプリ同士で送ることも可能だ。電子マネーは銀行口座やクレジットカードから入金する。会場内で現金は使えず、ミャクペ!のほかクレジットカードや交通系ICカード、QRコードなど60種類の支払い方法に対応する。2023/10/24 06:45:27127.名無しさんQAV4s日本株、上昇基調への復帰は近い(石金淳)-〈プロの羅針盤〉三菱UFJアセットマネジメント チーフファンドマネジャー2023/10/24 04:00 日経速報ニュース 8月20日付の前稿では日本株の上昇基調は揺るがないものの、数カ月程度の期間を要する調整局面に差し掛かった可能性があると言及しました。5?6月の急上昇に伴う過熱感を解消するための需給調整や、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)柔軟化による国内の長期金利上昇、それに付随した外国為替市場での円相場の反発などが理由です。 その後、円高には歯止めがかかり、日経平均株価は8月中旬から1カ月ほど反発して年初来高値に接近しました。ただ9月中旬以降は再び反落するなど、調整局面はなお続いていると見受けられます。 短期的な株価圧迫要因 昨今の日本株反落は、米国株の下げに少なからず影響を受けていると考えます。米国株を圧迫する大きな要因としては、米長期金利の上昇が8月以降、次第に顕著となったことがあるでしょう。米長期金利を10年国債利回りでみると、9月下旬に約16年ぶりに4.5%を上回りました。 その背景には9月19?20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)があります。米連邦準備理事会(FRB)は年内の追加利上げの可能性や、来年の利下げ幅の縮小見込みなどを示唆し、改めてタカ派姿勢を堅持しました。 しかしながら、日米株の圧迫要因である米国の長期金利上昇は、インフレ率の動きなどからまもなく歯止めがかかるとみています。そうなれば米国株とともに、日本株は反騰に向かうでしょう。 米国の消費者物価指数(CPI、食品とエネルギーを除くコア指数)は昨年、1980年代初期以来、約40年ぶりの上昇率を記録しました。40年前はイラン革命を発端とした第2次石油危機、直近はロシアのウクライナ侵攻などによる1次産品価格高騰がインフレ圧力を強め、FRBの大規模な利上げを招きました。地政学リスクの顕在化によるコモディティー価格の高騰という共通点があるわけです。 インフレと金利のズレ ここで80年代初期のケースをみると、米国のCPIコア指数上昇率の前年同月比(本稿では、この数値をインフレ率と呼びます)は80年6月に13.6%でピークをつけました。一方10年国債利回り(月末値)が15.8%でピークを打ったのは81年9月で、その後は低下基調に転換しましたが、1年強の時間差があります。 このタイムラグの背景には、FRBがインフレ退治を最優先し、インフレ率のピークアウト後も利上げを進めていたことなどがあるでしょう。 直近のケースでも、インフレ率が昨年9月にピークをつけた後、FRBはインフレ退治のため利上げを継続しました。しかし、今では追加利上げはあっても限定的で、利上げは最終局面であると推察されます。 そしてインフレ率はピークからすでに1年経過し、低下が鮮明化する方向であることも考慮すると、米国の長期金利はまもなくピークアウトすると考えます。それに伴って米国株の波乱は収まり、日本株は反発の契機をつかむことができると思われます。 なお、7月以降、原油高が再発しましたが、昨年前半の勢いに遠く及びません。そして天然ガスや石炭、金属鉱物資源、食料品などの価格は落ち着いています。資源価格を発端とするインフレ再燃の可能性は低いと考えます。2023/10/24 06:48:34128.名無しさんQAV4s 日本企業の底力 ここまでで申し上げてきたことは、比較的短期の視点です。中長期的にも、日本株は一時的な調整を交えながらも、大きな上昇トレンドをたどると考えます。 その要因として、第一に日本企業の収益力の強まりがあると考えます。少し遡りますが、9月の月初に発表された今年4?6月期の法人企業統計によると、金融・保険を除く全産業ベース(季節調整済み)の営業利益は18.5兆円と、19年1?3月期の過去最高(18.8兆円)に迫りました。 経常利益は26.9兆円と2期前続で過去最高を更新しています。増加の勢いは強く、利益水準はバブル期のピーク(1989年1?3月期、10.7兆円)の2.5倍以上に達しています。昨春以降進行した円安により、日本企業の海外資産や売り上げの増価が効いてきたことなどが寄与しています。 また、利益水準だけでなく、収益構造も強化されています。1990年代以前は経常利益が営業利益を下回っていましたが、2010年代以降は営業外の黒字が拡大し、経常利益が営業利益をはっきり上回るようになりました。営業・営業外の双方で経常利益を押し上げる「収益源の複線化」が定着したといえましょう。 第二に、コスト面での改善がみられることです。昨年12月の企業物価指数(企業仕入れ価格の代替データ)の上昇率は前年同月比10%台と約42年ぶりの高さとなる一方、同月の消費者物価指数(企業販売価格の代替データ)の上昇率は同4.0%にとどまりました。一方、今年8月は前者・後者がともに3.2%で並びました(9月は前者が2.0%に低下)。値上げできてもコストがそれ以上にかさむ状態から、企業の負担が相当軽減されてきたことを示唆しています。 生産基地としての復権 第三に、国際的視点から、生産基地としての日本が見直され始めていることがあると考えます。米国では2018年、輸出管理改革法(ECRA)が成立しました。かつての対共産圏輸出統制委員会(COCOM)に匹敵する内容で、対中国を念頭に置いたと見受けられ、「新COCOM」とも呼ばれます。ECRAの導入以降、米中対立・経済デカップリングの動きは顕著になり始めました。 それに伴って、米国のアジア政策の重心は中国から日本に移動しました。サプライチェーン(供給網)の再構築などに絡んで、日本を生産基地として見直すことが次第に明らかとなりつつあります。こうした動きは米国だけにみられるものではなく、日本への投資拡大が期待できます。 このほかに東京証券取引所による資本効率改善要請や、労働力不足に対する合理化・デジタル化などの動きも勘案すると、日本株の大きな上昇基調は容易に揺るがないと考えます。2023/10/24 06:50:07129.名無しさんQAV4s債券11時 長期金利、0.855%に低下 日銀が臨時オペ通知2023/10/24 11:33 日経速報ニュース 24日午前の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは前日を0.005%下回る0.855%に低下(価格は上昇)した。日銀が同日午前に臨時の国債買い入れオペ(公開市場操作)を通知し、長期債に買いが入った。オペ通知前は前日から横ばいの0.860%をつけていた。 日銀は残存期間「5年超10年以下」3000億円、「10年超25年以下」1000億円の臨時オペを通知した。日銀は24日午後には幅広い担保を裏付けに資金を供給する「共通担保資金供給オペ」(公開市場操作)の通知も予定している。先物中心限月である12月物の午前終値は前日比17銭高の144円63銭と反発した。日銀の臨時オペ通知などが支えになった。 23日の米長期金利は低下したが、日銀の政策修正観測は根強く、国内債には売りも出ていた。30年債利回りは朝方に前日を0.010%上回る1.890%と13年7月以来の水準に上昇した。日銀の通知後には買いが入り、0.005%低い1.875%と低下に転じた。20年債も0.015%低い1.665%と買われた。 40年債は前日比0.005%高い2.150%と13年2月以来の水準まで上昇した。2年債は横ばいの0.080%で取引された。 短期金融市場では、無担保コール翌日物金利が横ばい圏となっている。マイナス0.04~マイナス0.005%で、加重平均金利はマイナス0.01%台前半と前日の日銀公表値(マイナス0.012%)とほぼ同水準となっているもようだ。2023/10/24 11:55:51130.名無しさんB2ys2岸田政権下の「トリプル安」、財政拡張・市場関与に警鐘 日経QUICKニュース編集委員 永井洋一2023/10/26 日本経済新聞 朝刊 「現代貨幣理論(MMT)を支持する気には全くなれない」。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏はかつて、海外メディアにこう語った。岸田文雄政権の政策「キシダノミクス」には政府による経済への強い介入に伴うリスクが潜む。 岸田政権の経済運営の背景に、大盤振る舞いをいとわない積極的な財政金融政策で名目GDP(国内総生産)を引き上げ、税収を増やす「高圧経済論」があるのは疑いない。事実、一般会計税収は2021年度、22年度と大幅に増えた。株式市場との親和性も高い。 岸田政権は恒久財源を手当てする前に経常支出を増やし賃上げまでも主導する。国が前面に立ち雇用や投資を動かすやり方はインフレが加速しない限り自国通貨建て国債はいくらでも発行できると主張する異端の経済理論、MMTに通じる面がある。キシダノミクスに潜む1つ目のリスクだ。 問題は持続性だ。岸田政権が21年10月に発足して以降、22年10月までに閣議決定した経済対策は3回、国費は累計100兆円に及ぶ。新型コロナウイルス対策が含まれるにしても、短期間での支出額は歴代政権で突出している。 財政支出を膨らませても、長期金利より経済成長率を高めれば、税収よりも政府の利払い費は少なくて済む。基礎的財政収支が大きな赤字でなければ、政府債務残高のGDP比率はいずれ収束し、財政運営は安定する。成長率が長期金利よりも高ければ高いほど財政の持続可能性は高まる。 だが、そこにはワナがある。日本は潜在成長率が低いため、実質金利との差が小さく、税収と利払い費の差額を確保しにくい。 BNPパリバ証券の河野龍太郎氏によれば、「長期金利が成長率を下回っていても、潜在成長率がゼロ近く、実質金利がマイナス0.5%程度であるため、例えば基礎的財政収支がGDP比2%の赤字なら、政府債務残高のGDP比が400%程度まで膨らむ」。 市場はその危うさを織り込み始めている。株式と国債、円のいずれも売られるトリプル安が増えている。岸田首相就任から23年10月13日までに前の週末比でトリプル安となった週の割合は18%。在任中の割合としては菅義偉氏の13%や安倍晋三氏の6%と比較してはるかに大きい。 岸田政権は資産運用体制を強化し、海外マネーが投資しやすい環境整備を急ぐ。東京証券取引所は企業にPBR(株価純資産倍率)1倍割れを是正するよう強く求めるようになった。ただ、キシダノミクスの一翼をなす資産運用立国論には課題が残る。それはアベノミクスで始まった市場をゆがめる政策を温存している点だ。 QUICKによれば、日銀が上場投資信託(ETF)を通じ保有する割合が発行済み株式数の5%以上の企業数は460を超え、東証プライムの4分の1強に上る。日銀が持つETFの時価総額は9月末時点で60兆円と試算され、東証プライムの7%強に当たる。 政府の介入が見え隠れする市場には、長期の海外マネーは入りにくい。これが第2のリスクだ。アベノミクス開始時の海外勢の買いも結局は売り越しに転じた。今年4月以降の海外投資家の買いも短期筋が中心だ。まずなすべきは日銀が量的・質的金融緩和を見直し、市場を正常化することではないか。 みずほ証券の上野泰也氏は「クライマックスを伴いにくい、じわじわ進行する『スローな危機』がそこにあることを常に忘れてはいけない」と話す。スローな危機は本格的なトリプル安という急性期症状をいつ何時、発症するかわからない。2023/10/26 06:28:23131.名無しさんB2ys2日銀会合、止まらぬ金利上昇にどう対応 上限「1%」の扱い議論か2023/10/26 13:20 日経速報ニュース 日銀は30~31日に金融政策決定会合を開く。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)で1%としている長期金利の事実上の上限を見直すかどうかが焦点だ。2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成にはまだ距離があるとの認識は不変とみられる一方、長期金利が1%に近づくなかでYCC再修正の必要性が論点となりそうだ。 日銀は7月会合でYCCの運用を柔軟化した。長期金利の変動幅は「プラスマイナス0.5%程度」をめどとし、長期債を対象に毎営業日実施する「連続指し値オペ(公開市場操作)」で指定する利回りを1%とした。当時の長期金利は1%から遠く、日銀も連続指し値オペへの「応札は見込まれない」前提だった。 だが米長期金利が一時5%台と急速に上昇するなか、国内金利も大幅に水準を切り上げている。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは26日に一時0.880%と2013年7月以来の高さとなり、1%乗せが現実味を帯びる。野口旭審議委員が12日の新潟県金融経済懇談会で「(YCCは)『先手を打って柔軟化していかないと維持が困難になる』という性質を持つ」と説明していただけに、市場はYCCの再修正を意識せざるをえない。 10月会合では1%の扱いを巡って議論するとみられる。日銀内では「厳格な上限の1%にはまだ距離があり、切迫感は強くない」との見方がある。臨時の国債買い入れや共通担保資金供給オペで金利上昇ペースを調整することにより1%には到達せず、現時点では指し値オペで大量に国債を買い入れる事態に至っていない。1%の上限の存在そのものが金利抑制効果をもたらしており「上限を引き上げればかえって市場金利の上昇を招き、金利の先高観を高めてしまう」リスクを考慮すべきだと慎重な向きもある。 一方、米金利次第で国内金利の上昇圧力が一段と強まる可能性があるのは気がかりだ。米景気は減速する兆しがみられないうえ、米国の財政不安もくすぶり、米長期金利のピークが5%だったとの確信は持てない。日銀の次回の決定会合は12月18~19日と2カ月近く先で、行内では「その間に1%に達する可能性を踏まえた政策判断が必要になる」との見方もある。直前の市場動向を見極めた上で判断することとなりそうだ。 市場の一部では修正観測が根強い。BofA証券は25日付リポートで、望まない国債買い入れの再拡大と円安リスク回避のために「日銀が今会合で再び予防的なYCC修正を余儀なくされる」と見込む。さらなる世界的な金利上昇や、早期の政策正常化への市場期待が一段と高まった場合の対応を考えると、米金利上昇がいったんピークをつけたとして政策を据え置くのは「リスキーな戦略」だと指摘する。 もっとも、日銀は賃金上昇を伴う形で物価目標を持続的・安定的に達成するとの判断には至らない公算が大きい。日銀が19日に開いた支店長会議では、来年の春季労使交渉(春闘)について賃上げの継続を見込むものの、賃上げ幅は「競合他社の動向や物価の推移などを見極めていく姿勢の企業が多い」と報告された。期待インフレ率は緩やかな上昇を続けているが目標達成に十分な賃上げ率を確保できるかは、なお不透明といえる。 会合後に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の見通しに注目が集まる。価格転嫁の流れが長期化しており、23年度については前回のプラス2.5%から上方修正する可能性が高い。ただ日銀が目標達成に向けて注視するのは、企業が将来の価格上昇を見越したフォワードルッキングな賃金・価格設定が定着するかどうかだ。YCCの再修正があったとしても、「粘り強く金融緩和を継続する」との基本姿勢は保たれるとみられる。2023/10/26 13:50:58132.名無しさんLmYjL2023年10月27日17時57分来週の株式相場に向けて=金融政策決定会合で日銀は動くか 今週の日経平均株価は26日に終値で3万601円まで下落し、3万円ラインに接近した。しかし、27日は前日比389円高と急反発した。「3万円に接近する水準では先物などの買い戻しも流入したようだ」(市場関係者)という。チャート的には、来週に反発基調を強めれば今月4日安値(3万526円)とのダブル底の形成期待も出てくる。それだけに、相場は大きなポイントに差し掛かっている。 とりわけ、来週はビッグイベントが目白押しだ。なかでも、日米の金融政策決定会合に視線が集中している。30~31日に日銀金融政策決定会合、31日~11月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。FOMCに関しては、政策金利は据え置かれる見通しだ。となると、関心が高まるのは日銀金融政策決定会合だ。7月の日銀会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)は修正され、長期金利1%が事実上のメドとされた。 今回の会合では「上限1.25%あるいは1.5%への再修正はあり得るのではないか」(アナリスト)との声も出ている。日本の消費者物価指数(CPI)は3%前後の水準が続き、長期金利も0.87%前後に上昇している。それだけに、上限金利のメドの引き上げは考えられる。更に「より注視すべきは展望レポートで、24年度のCPI見通しが前回の1.9%から2%以上に修正されるかが焦点だ」(同)とも指摘されている。来年度のCPI見通しが2%を超えてくれば、マイナス金利政策の根拠が薄れ、マイナス金利解除への思惑が急浮上する。 日銀会合の結果次第では長期金利が上昇し、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>など銀行株は買われるが、全体相場は下落するかもしれない。ただ、それは長期的には正常化に向けた一歩。日経平均株価は今週の下げで、すでに売られ過ぎの水準まで下げたともみられている。米国絡みでは11月3日の米10月雇用統計も注目されている。 上記以外のイベントでは、1日に米10月ISM製造業景況指数、同ADP雇用統計、米9月JOLTS求人件数、3日に米10月ISM非製造業景況指数が発表される。31日にキャタピラー<CAT>、1日にクアルコム<QCOM>、2日にアップル<AAPL>の決算が発表される。 日本では30日にオリエンタルランド<4661>、NEC<6701>、31日にアドバンテスト<6857>、レーザーテック<6920>、デンソー<6902>、1日にトヨタ自動車<7203>、日本製鉄<5401>、2日に三菱商事<8058>、川崎汽船<9107>の決算発表が予定されている。3日は文化の日の祝日で休場となる。来週の日経平均株価の予想レンジは3万600~3万1500円前後。(岡里英幸)出所:MINKABU PRESS2023/10/27 22:42:49133.名無しさんY53c3地銀株にマネー、山梨中央銀など年初来高値 日銀会合控え2023/10/27 19:05 日経速報ニュース 27日の東京株式市場では地方銀行株の上昇が目立った。日銀が週明けに開く会合で、超低金利政策の修正に動くとの観測が強まっている。割安に放置されている地銀株も多く、収益環境の改善期待から物色が広がった。 日経平均株価は反発し、前日比389円(1%)高の3万0991円だった。山梨中央銀行株は5%高となり5年ぶり高値を付けた。同じく5%高の名古屋銀行株や4%高のめぶきフィナンシャルグループなど、地銀6銘柄が27日に年初来の高値を更新した。 9月末比でみても4?9月期の業績見通しを上方修正した九州フィナンシャルグループ株が17%高となるなど、1%安の三菱UFJフィナンシャル・グループなどメガバンク株よりも騰勢が強い地銀株が多い。 地銀は預金と貸し出しの金利差や市場運用で稼ぐ。金利上昇は業績改善につながりやすい。米金利高が波及し、日本の長期金利(新発10年債の利回り)は0.8%台後半と、日銀が「念のための上限キャップ」(植田和男総裁)と位置付ける1%が迫る。 市場では日銀が31日までの会合で政策修正に動くとの見方が出ている。翌日物金利スワップ(OIS)市場では10年物金利が1%を上回って推移する。BofA証券は「国債買い入れの再拡大と円安リスクを回避するため、日銀は今会合で再び予防的な政策修正を余儀なくされる」と予想し、長期金利の実質的な上限を1.5%に上げるとみる。 グローバルに事業展開するメガバンク株は海外金利高を受けて資金流入が先行していた。地銀株は九州FGでもPBR(株価純資産倍率)が0.5倍台と割安感が強い銘柄が多い。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「融資先に乏しい地方基盤の銀行の方が、国内金利上昇が収益環境改善に与える影響は大きい」と指摘する。2023/10/28 00:55:40134.名無しさんY53c3長期金利上昇、10年ぶり高水準 海外勢の国債売り膨張 日銀政策修正を警戒2023/10/28 日本経済新聞 朝刊 国内金利の上昇(債券価格は下落)が止まらない。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時0.885%まで上昇し、およそ10年ぶりの高水準に達した。日銀が30~31日に開く金融政策決定会合で金融政策の再修正に踏み切るとの観測から、海外投資家を中心に債券売りの動きが広がっている。 26日の国内債券市場で新発10年物国債利回りは一時0.885%と、2013年7月以来10年3カ月ぶりの水準を付けた。日銀の植田和男総裁が「念のためのキャップ」とした1%に一段と迫っている。2年債利回りは約9年ぶり、20年債利回りも約10年ぶりの高水準を付けるなど、幅広い年限で国債利回りが上昇傾向にある。 けん引するのは海外勢だ。財務省が26日に発表した対外・対内証券売買契約などの状況によると、海外投資家は10月15~21日に国債など国内の中長期債を9042億円売り越した。前週は9478億円の買い越しだったが、2週ぶりに売り越しに転じた。売り越し幅は4週ぶりの高水準となる。 背景には日銀が今回の決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正に動くとの観測がある。 市場では「長期金利の変動許容上限を1.5%に広げる可能性がある」(SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジスト)といった予想がにわかに浮上し始めた。BofA証券やUBS証券など、いくつかの外資系証券会社も今回会合でのYCC再修正を予想する。 金利上昇リスクが高まる中、金融派生商品(デリバティブ)の一種である翌日物金利スワップ(OIS)市場は活況だ。同商品は変動金利と固定金利を一定期間交換する取引で、金利が上昇した際に損失を回避する手段となりうる。 日本証券クリアリング機構のデータによると、9月の取引高は171兆円と3月(199兆円)以来の高水準となった。特に短い年限の取引が増えており、「それだけ日銀のマイナス金利解除への警戒感が高まったことを反映している」(JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長) マイナス金利の解除を見据え、短期金利の水準を予想して売買する短期金利先物市場も盛況だ。短期金利の上昇局面で事前に先物を売っておけば、実際に金利が上がったタイミングで買い戻すことで利益をあげられる。 東京金融取引所と大阪取引所に上場している無担保コール翌日物金利(TONA)を対象にした3カ月物金利先物の取引高は10月、1日平均で約2600枚に達し8月以来の高水準となった。 東京金融取引所に限れば、10月は同1700枚弱と3月の上場以来で過去最高だった。「アジアに拠点を置くような欧米系の中小ファンドを中心に取引が増えており、徐々に国内金融機関の関心も高まりつつある」(同社の瀬尾亮介ホールセール事業部長) 今回会合で日銀が政策修正を見送ったとしても、金利上昇をにらんだ投資家の動きが債券市場を揺らす展開は当面の間続きそうだ。2023/10/28 06:36:10135.名無しさんb8Pb0「金利1%」低温経済に変化 預金で利子収入、家購入にハードル 不採算事業の再編契機に2023/11/02 日本経済新聞 朝刊 日銀が金融政策を再修正したことで、長らくゼロ%台だった金利の常識が変わる兆しが出てきた。デフレが染みついた「低温経済」の構造が変わり、幅広く金利が上がれば家計は利子収入が増える。お金を借りる企業には重荷だが、採算が合わない事業を再編する契機になる。 日銀は10月31日、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を再修正した。長期金利は1%を一定程度超えることを容認する。物価上昇や米金利上昇を背景に、長らくゼロ%台だった日本の長期金利は債券市場で1%弱に上昇する。10年ぶりの高さだ。 金利上昇が続けば家計にはプラス効果の期待がある。預金金利の上昇で利子所得が増えるからだ。国内総生産(GDP)統計によると家計の利子受取額は1991年に38兆円に達したが、2021年は6兆円弱と5分の1以下に縮んだ。当時の定期預金金利は3.8%だったが、足元は0.003%程度にとどまる。 家計の金融資産は2000兆円を超え、うち半分を現預金が占める。リスクのある資産を持たずとも一定の所得が確保できれば、株式投資などに消極的な世帯で消費意欲の下支えにつながる可能性がある。 住宅ローンを抱えていたり、今後不動産購入を予定したりする現役世代には懸念もある。3メガバンクは11月適用の住宅ローン金利で、固定型を10月比でそろって引き上げた。金利の上昇が続けば住宅購入のハードルが上がり、不動産市況を冷やす恐れもある。 借り入れが多い企業には負担だ。みずほ銀行は貸出金利の指標となる長期プライムレートを10月11日から0.05%引き上げ、年1.5%とした。日本総研の後藤俊平氏の試算によると、企業の平均的な借り入れコストが1%増えると、設備投資を0.5%減少させる。 金利上昇は運用環境の改善を通じ、企業年金の財政状態を改善させる効果もある。支払いに備えて用意すべき負担額は2022年度時点で前の年度から約6兆円減った。各年金が運用目標である予定利率も上げ始めれば、従業員の生涯収入の上昇につながる。 金利上昇で採算の悪い事業を見直す機運が高まり、生産性上昇につながる期待もある。逆に資金調達が難しくなることで起業が停滞する面もある。22年における世界のスタートアップの資金調達総額は35%減った。欧米の急ピッチな政策金利の引き上げが背景だ。 日本にインフレが定着すれば、日銀の政策金利の引き上げも視野に入る。内閣府の短期日本経済マクロ計量モデルによると、短期金利が1%上がると個人消費は1年目に0.2%増加する。一方で設備投資などの減少で全体のGDPは0.3%落ち込む。2023/11/02 06:58:14136.名無しさん2RUxk異次元緩和、薄れる輪郭 正常化へしたたかに布石2023/11/03 05:00 日経速報ニュース 日銀の植田和男総裁は4月の就任以来、2度目となる長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の修正に踏み切った。度重なる修正で「異次元」を掲げた大規模な金融緩和策の輪郭は薄まりつつある。想定外の米金利上昇に振り回された感もある日銀だが、したたかに将来に向けた布石を打った。 日銀は10月の金融政策決定会合で、長期金利の事実上の上限としていた1%を「めど」に変えた。1%以下に厳格に抑え込まず、市場の情勢に応じて一定程度は上振れることを認める仕組みだ。 修正の予兆はあった。「1(%)に非常に近づいていく可能性は低い」(植田総裁の7月会合後記者会見での発言)「(長期金利上昇は)それほど心配する動きではない」(同9月)としてきた日銀の空気が変わったのは10月初めだ。 4日の国内債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.8%とおよそ10年ぶりの高水準をつけた。3日の米債券市場で2007年以来となる4.8%台に上昇した米長期金利の影響だった。「米金利の上昇が論理的に説明できない」という日銀関係者の困惑をよそに、国内長期金利も後を追うように上昇した。次第に日銀内から「(国内長期金利が事実上の上限である)1%に届かないと言い切れなくなった」との声が漏れるようになった。 円安も圧力となった。日銀が金利を強く抑え込もうとすればするほど、市場が米国との金利差を意識し、さらなる円安につながるジレンマがある。 10月中旬には、複数の関係者から「再修正は(10月会合で)議論せざるを得ない」との声が聞かれた。上限の1%から1.5%への引き上げや、上限の撤廃といった案が議論された形跡もうかがえた。 ただ政策が大きく変わったと受け止められれば、金融市場に波乱を起こしたり、経済に思わぬ悪影響をもたらしたりするリスクもあった。「長期金利の状況はファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)から距離がある。米金利はいずれ下落し国内も落ち着く」との見方も根強かった。 最終的には1%を「めど」に変える柔軟化案に落ち着いた。積極的な金融緩和や財政政策を求めるリフレ派からも「現行政策とほぼ変わらない。大きな問題はない」と容認する声が聞こえる。ただ中核ツールである金利操作の修正が重なったことで異次元緩和の輪郭はぼやけ、市場には「形骸化した」との見方が広がる。 10月会合では「次」を見据えた布石も打たれた。 7月会合で設定した事実上の1%の上限には、日銀内からも「むしろ投機を誘う。(上限を)見せる必要はない」との声が当初からあった。植田総裁は10月31日の記者会見で、日銀が国債を無制限に買い取る「指し値オペ」を発動する金利水準への明言は避けた。見直しを契機に上限を隠した、との見方もできる。 上限は隠したが、相場の過度な変動などで「必要性あり」と判断すればいつでもオペを実施し、金利を抑え込める仕組みにした。金利を厳格にコントロールするわけではないが、不測の事態にはしっかり備えておくという長短金利操作の撤廃後の金融市場調節を見据えた決定のようにも映る。 経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、24年度の消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI)の前年度上昇率の見通しを2.8%と7月時点(1.9%)から大きく引き上げた。さらに、25年度も0.1ポイント引き上げて1.7%とした。 25年度は日銀が示す見通し期間の最終年度にあたる。足元の為替やエネルギー価格の影響が小さくなる半面、下落しづらい人件費といった要素が見通しの上でより大きなウエイトを占める。25年度見通しの上昇は、政府・日銀が目指す持続的・安定的な「物価2%目標」達成に近づきつつあることを意味する。 生鮮食品とエネルギーを除く「コアコアCPI」は24年度、25年度とも1.9%とした。いずれも一時的な物価動向に左右されにくく、物価2%目標の達成状況をはかる目安になりうる。 「前回に比べれば少し前進している」「ある程度来年の賃金について期待できる」。慎重に表現を選びつつも、10月31日の記者会見で植田総裁は賃金と物価の好循環実現への期待感をにじませた。市場では早ければ来年1月の決定会合でのマイナス金利解除を見込む声も出ている。10年の時を経た異次元緩和の輪郭が薄らぐ中、「金利ある世界」へのカウントダウンが始まっている。2023/11/03 06:25:48137.名無しさんuog66PayPay 崩すかポイント岩盤 外販に参入、ウエルシアとサイバー獲得 スマホ決済王者 第2幕へ2023/11/03 日経MJ(流通新聞) 共通ポイント業界にPayPayが本格参入した。スマートフォン決済で約7割のシェアを握る王者が次の成長の柱と位置づけるのがポイント事業だ。営業部隊を発足させ、提携先の開拓に本腰を入れる。ただ、共通ポイントは先行陣営が有力企業の大半を囲い込んでいる「岩盤業界」。各陣営はグループの通信や金融などを巻き込んだ総力戦でシェア拡大を狙う。 「Tポイントと関係の深いウエルシアがPayPayと組むとは思わなかった」。8月末、PayPayがドラッグストア大手のウエルシアホールディングス(HD)と提携したことに驚きの声が上がった。ウエルシアはTポイントを活用して積極的な販促策を展開してきたからだ。その蜜月関係にPayPayが割って入った形になる。 こうしたなか、Tポイントは三井住友フィナンシャルグループ(FG)のVポイントと来春統合する。Tポイントを手がけるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が狙うのは決済サービスの強化だ。これまで電子マネー「Tマネー」やクレジット機能付きTカードを展開してきたものの、認知度は高くなかったとみられる。 三井住友FGは「三井住友カード」や対応する「Visaタッチ」など有力な決済サービスを持つ。世界に1億店以上あるVisa加盟店でもポイントが使えるようにして巻き返しを狙う。 野村総合研究所(NRI)の冨田勝己グループマネジャーは今後の共通ポイント業界について「これまでのような会員規模やポイント流通規模といった『量』から、『質』へと争点が変わっていく」と強調する。スマホ決済のように毎日使われるアプリで顧客との接点を増やしたり、加盟店の利益につながる販促を提案したりできるかが問われることになる。2023/11/05 06:17:12138.名無しさんpLszg日銀総裁、物価目標「見通し実現の確度、少しずつ高まる」2023/11/06 10:29 日経速報ニュース 日銀の植田和男総裁は6日、名古屋での金融経済懇談会であいさつした。今年の春季労使交渉における高い賃上げ実現や、人件費の継続的な上昇を前提とする値上げ実施など「最近では、企業の賃金・価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きがみられ始めている」と話した。2%の「物価安定の目標」に向けて「見通し実現の確度が少しずつ高まってきている」と指摘した。もっとも賃金と物価の好循環がどの程度強まるか不確実性が高く、現時点では物価目標の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には「至っていない」とも語った。2023/11/06 10:31:16139.名無しさんCjkjvみずほ、楽天証券に追加出資を発表 上場申請は取り下げ2023/11/09 15:56 日経速報ニュース みずほフィナンシャルグループは9日、傘下のみずほ証券を通じて楽天証券に追加出資すると発表した。金額は約870億円で、出資比率を現在の20%から49%まで高める。楽天証券の持ち株会社は年内にも東京証券取引所へ上場する計画だったが、10月に始めた日本株売買手数料の無料化で収益構造の変化は避けられない。提携強化を契機にひとたび上場の申請を取り下げた。 みずほは2022年に楽天証券の株式20%程度を約800億円で取得した。関係当局の承認を前提に、今年12月半ばに追加で29%分の株式を取得する。みずほにとって持ち分法適用会社の位置付けは変わらない。 今回の追加出資を機に、みずほ銀行の預金口座と楽天証券の口座を連携させるなど提携関係を強化する。9日に記者会見した楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は「対面とリアルで非常に強いみずほグループとさらに強いパートナーシップをつくっていく」と話した。 楽天グループは携帯電話事業の設備投資で財務内容が悪化し、22年12月期まで4期連続で最終赤字を計上した。9日に公表した23年1?9月期も2084億円の最終赤字で、5期連続の赤字となる可能性が強まっている。 24?25年にかけ、8000億円規模の社債償還も控える。楽天証券ホールディングスの上場で1000億円規模の資金調達をめざしていたが、新たな調達策としてみずほの追加出資を仰ぐことになった。みずほは今回の追加出資で約870億円を拠出する。上場の方針そのものは今後も維持し、再申請の時機を探るという。【関連記事】・みずほ、楽天証券に900億円追加出資へ 年内上場困難で・楽天G、迫る8000億円社債償還 綱渡りの証券株追加売却・みずほ、楽天証券と24年春に新会社 ネット顧客取り込み2023/11/09 16:08:00141.名無しさんpTBPk<東証>資生堂が売り気配 今期純利益47%減に下振れ2023/11/13 09:01 日経速報ニュース(9時、プライム、コード4911)【材料】10日に2023年12月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比47%減の180億円になる見通しだと発表した。従来予想を100億円下回る。主力市場の中国での日本製品の買い控えなどが響く。【株価】売り気配で始まる。2023/11/13 13:54:23142.名無しさんpTBPk債券15時 長期金利が上昇、一時0.9%に迫る 米債売りで2023/11/13 15:27 日経速報ニュース 13日の国内債券市場で長期金利の指標である新発10年物国債の利回りが一時、前週末を0.045%上回る0.895%に上昇(価格は下落)した。今月2日以来の高さで、節目の0.9%に迫った。格付け会社による米国の信用格付け見通し引き下げなどをきっかけに米国債が売られ、国内債にも売りが波及した。 15時前の時点では前週末比0.025%高い0.875%で取引された。米国では与野党が9月30日に合意したつなぎ予算が今月17日に期限を迎える。再延長などが決まらず米政府閉鎖が意識されて金利に上昇圧力がかかっている。 長期金利は9日に0.830%と、日銀が10月末の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再柔軟化を決める前の水準まで低下(価格が上昇)していた。このため、目先の利益を確定する売りが膨らんだ面もある。 13日発表の10月の企業物価指数は前年同月比0.8%上昇と市場予想(1.1%上昇)を下回った。日銀が年明けにもマイナス金利解除など政策再修正に動くとの見方は根強いが、物価の弱さはその後の日銀による政策正常化の歩みはゆっくりとの見方にもつながった。 30年債利回りは0.035%高い1.765%、20年債は0.025%高い1.585%にそれぞれ上昇した。5年債は0.010%高い0.430%で、期間の長い債券の利回り上昇幅がより大きくなり、利回り曲線は右肩上がりの傾きが急になるスティープ化した。先物中心限月である12月物の終値は前週末比16銭安の144円38銭と続落した。 短期金融市場では東京金融取引所と大阪取引所では無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である12月物の取引は未成立となっている。全銀協TIBOR運営機関が発表した海外円の東京銀行間取引金利(TIBOR)3カ月物は横ばいで、前週末と同じマイナス0.01200%だった。2023/11/13 15:30:49143.名無しさんIO3u7日銀の次の一手「マイナス金利解除」53% QUICK調査2023/11/13 16:05 日経速報ニュース QUICKは13日、外国為替市場の月次調査の結果を発表した。日銀の金融政策修正・変更の次の一手については「短期金利の政策目標水準を現行のマイナス0.1%から引き上げる(マイナス金利政策の解除)」との回答が53%と最も多かった。解除の時期については「2024年4月」が最多で、「24年後半以降」がこれに続いた。 日銀は10月31日の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を再修正し、長期金利の1%を超える上昇を一定程度容認した。次の一手としては、マイナス金利解除のほか「長期金利の政策目標を撤廃する」(25%)や「長期金利の上限のめどをさらに引き上げる」(17%)といった回答があがった。 「上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)などのリスク資産の購入をやめる」との回答は1%に留まった。 マイナス金利政策の解除時期については「2024年4月」との回答が32%と最も多く、「24年後半以降」が27%で続いた。「24年1月」も20%で、合計で7割の回答者が24年前半でのマイナス金利政策の解除を予想した。 円相場は13日に1ドル=151円台後半と22年10月以来の円安・ドル高水準を付けた。今後の見通しについて、回答者の24年4月時点の予想値は平均で1ドル=144円10銭、中央値で1ドル=145円と、来年春にかけて緩やかに円高・ドル安が進むとの見方が目立った。 調査は6?8日に金融機関や事業会社の外為市場関係者176人を対象に実施し、78人から回答を得た。2023/11/14 00:28:38144.名無しさんIO3u7マイナス金利解除は来年4月、来夏から段階的な利上げへ=早川元日銀理事[東京 14日 ロイター] - 早川英男元日銀理事(東京財団政策研究所主席研究員)は14日、ロイターのインタビューに応じ、日銀は来年4月にマイナス金利を解除したのち、3カ月に1回程度のペースで段階的な利上げ局面に入ると予想した。賃金・物価の好循環はすでに生じており、来年の春闘で賃上げの確証が得られれば、ビハインド・ザ・カーブになっている政策が市場の予想以上に早いペースで修正されていくとの見通しを示した。植田和男日銀総裁は、物価上昇の要因を輸入物価上昇の転嫁に由来する「第1の力」と賃金・物価の好循環による「第2の力」に分類。第2の力が「まだ少し弱い」ことが金融緩和継続の理由だと説明している もっと見る 。これに対して早川氏は、日銀の展望リポートで2023年度の生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数(コアコアCPI)の見通しが段階的に引き上げられ、10月時点で前年度比プラス3.8%と、1月の同プラス1.8%から2%ポイントも引き上げられたことに注目。「足元で物価を押し上げているのは第1の力ではなく第2の力なのが明白だ」と話した。コストに占める人件費の比率が大きいサービス価格は「ここ1年くらいで猛烈に上がっている」とも述べた。早川氏は、賃金上昇を伴う物価目標の実現を掲げる日銀にとって、来年の春闘での賃上げという「物証」だけが必要な状況だと指摘。春闘の集中回答などを踏まえた上で、展望リポートを改訂する4月に、マイナス金利を解除する可能性が高いとの見通しを示した。「経済界から出てくる発言を見ていれば、来年の春闘での賃上げ率が今年より低いという感じではない」と述べた。来年4月にマイナス金利を解除した後は再度「来年の半ばくらいに、市場が思っているより早めの(政策金利)引き上げが必要だと思う」と語った。日銀は「今は意図的にビハインド・ザ・カーブになっている」とし、来年の春闘で賃上げの持続が確認できれば、そこからの利上げペースは早く、3カ月に1回程度の利上げを予想している。市場ではマイナス金利解除後はゼロ金利が続くとの予想が多い。早川氏は日銀と市場のコミュニケーションが重要になり、今年終わりぐらいから、マイナス金利解除やその後の利上げ局面入りに向けた地ならしを進めていくべきだと述べた。10月のイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用再柔軟化については、YCCの「事実上の撤廃」だとした。来年4月にマイナス金利を解除した場合でも、YCCはそのまま維持されるとの見方を示した。連続指し値オペで厳格に10年金利の上限を規定する手法をやめたことで、政府の為替介入のように、急激な上昇が起きれば国債買い入れで金利上昇を抑えに行く仕組みになったと話した。日銀が金融正常化を進めるに当たっての「障害」になりうる事項としては、今年3月に起きた米国の金融不安が再び起きるリスクを挙げた。2023/11/14 14:07:07145.名無しさんWe2v7MSCI、標準指数からサイバーなど10銘柄を除外 新規採用はなし2023/11/15 08:51 日経速報ニュース 株価指数を開発・算出するMSCIは14日(日本時間15日朝)、定例の指数構成銘柄の見直しを発表した。国際分散投資する機関投資家の多くが採用するベンチマーク(運用指標)のうち、大型・中型株からなる「標準指数」で、日本株ではサイバー(4751)やGMO―PG(3769)など10銘柄を除外する。新規採用はゼロだった。2022年5月の22銘柄除外以来の大規模な減少となるもようだ。30日の大引け後に変更する。・除外(10銘柄)サイバー(4751)GMO―PG(3769)博報堂DY(2433)京王(9008)小林製薬(4967)栗田工(6370)LIXIL(5938)ガイシ(5333)パーソルHD(2181)ウエルシア(3141)2023/11/15 09:36:26146.名無しさんdrLY8開国の障壁(1)投資不足の日本企業 海外マネー、脱炭素で誘う(資産運用立国に挑む)2023/11/14 日本経済新聞 朝刊 政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。 10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。10年で150兆円 政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。 海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。 利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。なお半信半疑 日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1~10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。 アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。 ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。 「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。 日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。 GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。2023/11/16 11:23:43147.名無しさんdrLY8開国の障壁(2)非効率な構造、参入阻む 日本株の投資会社「空洞化」(資産運用立国に挑む)2023/11/15 日本経済新聞 朝刊 液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)の経営再建に取り組む運用会社いちごアセットマネジメントは日本株に特化する独立系では最大手の一つだ。スコット・キャロン社長は「日本のために」をモットーとし日本に住む。ところが、約1兆円の資金を運用する拠点はシンガポールにある。 2006年、4人で創業しようと関東財務局に出向くと、30人必要と門前払いだった。1人でも起業できたシンガポールに運用会社を置き、東京拠点はシンガポールに運用をアドバイスする機能にとどめている。拠点回帰進まず 陣容は東京8人、シンガポール11人、米国1人の20人に増えた。かつてに比べ起業の条件も低くなった。政府による資産運用立国の取り組みもあり、東京に拠点を集約する環境が整う。ただ「皆が日本にいるのがよいが、一度つくった拠点を移すと従業員の人生に響く」(キャロン社長)。過去、日本に拠点を戻そうとした際は社員が反対した。 東京・兜町の老舗、山和証券も運用業への進出にシンガポールを選び、18年に山和アセットマネジメントを立ち上げた。 シンガポールを選んだのは「グローバルプレーヤーが集まる」(山和アセットの工藤哲哉最高経営責任者)ため。運用業の集積が進み、人や情報、マネーが行き交う「産業クラスター」ができあがっている。日本からみると日本株の運用会社が海外に集う「空洞化」が深刻だ。 東京都や金融庁は国際金融都市構想を掲げ、運用会社の誘致を進めてきた。資産運用会社の数は5年前比で約60社増え417社となったが、その間、シンガポールは1194社に7割弱増え背中は遠のいた。政情不安が強まった香港から拠点を移す動きの受け皿になったのはシンガポールだ。二重計算是正へ 政府は巻き返しの第一歩として投資信託価格の「二重計算」を見直す。運用会社と信託銀行がそれぞれ計算して照合する慣習を変え、運用会社に計算の負担がなくなれば参入しやすい。 ただ、二重計算は日本独自の業界慣行が抱える非効率さの氷山の一角でしかない。システムなどのコストは重く、投信ビジネスを安定的に営むには1000億円以上の運用資産が必要とされる。参入障壁が高い。 風穴を開けるイノベーションは始まっている。熊本県地盤の肥後銀行子会社の九州みらいインベストメンツは9月、わずか6人、数十億円でプロ向け私募投信の実質的な運用を始めた。可能にしたのは「運用」と「管理」の分離だ。 九州みらいは運用の判断をするだけで、投信価格の計算を含む資産管理は外部に任せる。「管理」を提供する日本資産運用基盤グループの大原啓一社長は「運用に特化できるビジネスモデルが広がれば新規参入は増える」とみる。 海外では運用と管理は分離する方向に発展してきた。ルクセンブルクやアイルランドにはファンドの管理ビジネスが集積する。日本は旧態依然のままだ。 金融庁も規制緩和に乗り出す。法改正で管理を担う会社の設立を可能にし、運用会社が業務を任せられるようにする。国内に運用会社を増やし競争を高めるには、まず産業のアップデートが必要になる。2023/11/16 11:25:33148.名無しさんdrLY8開国の障壁(3)年金、積み立て超過に安住 リスク回避、高度化進まず(資産運用立国に挑む)2023/11/16 日本経済新聞 朝刊 500あまりの中小企業が加入する全国ビジネス企業年金基金(岡山市)は4月から、運用益を企業や従業員に還元し始めた。安全運転シフト 「掛け金引き下げキャンペーン」と称し、掛け金を2%下げた。企業は支出を抑えながら割引前と同水準の年金を従業員に提供できる。年金カット支給の対象だった勤続期間が短い定年退職者の退職一時金も引き上げた。国内では珍しい取り組みだ。 「もっと稼いで還元する。『運用やめた』とはしない」。木口愛友・運用執行理事は強調する。キャンペーンの原資は過去10年で年8%強と、5%強の企業年金全体を上回る高い運用利回り。将来の年金給付などを勘案した必要な積立額の1.4倍の資産を蓄えてもさらに高い成果を目指す。 国内生保や外資系運用コンサルティングで腕を磨いた木口氏は、総務や経理など管理畑の出身者が多い企業年金では珍しい「運用のプロ」。世界を飛び回り、医薬品特許やインフラなど高度な分野も含め41のファンドに分散投資する。 合併や吸収を繰り返し企業年金の運用規模も2年で2倍に引き上げた。国内金利が上がれば、利息を年1.2%から都銀大手3行平均の1年定期預金金利に0.5%乗せた水準にする仕組みも取り入れ「金利ある世界」にも備える。 こうした例は少ない。将来の給付を約束する確定給付年金の大半は「運用やめた」に近い安全運転にシフトしている。 国内では1990年代半ばから、資産ごとの配分上限を定めた「5・3・3・2規制」の撤廃など自由化が進み積極運用を志す年金担当者も多かった。ところが、退職給付会計の導入や運用難で母体企業の負担が重くなり、リスクをとらなくなった。 企業年金が運用の目標とする予定利率は90年代後半の5%台から2%台に下がった。09年ごろから資産が負債を上回る積み立て超過となり、直近の積立比率は120%に高まった。足元の金利上昇で計算上の債務が急減し、積み立て不足が急速に解消した英国(113%)や米国(102%)よりも高水準にある。 「十分な積み立てがあるなかで追加的なリスクをとる必要があるのか。約束した給付を確実に守ることが大事」(企業年金連合会の中村明弘運用執行理事)との声が企業年金に広がる。「監視の目」重要 企業年金の大半は資産規模が100億円以下と小さいが、資産が500億円や1000億円を超える年金は安全運転から高度化へ軸足を移す余地がある。海外との大きな違いは企業年金への「監視の目」の有無だ。海外では株主や労働組合が効率的な運用を求める。 日本も監視の目を取り入れる。政府は運用実績や財務状況を加入者以外にも広く開示させる方針だ。英国では年金担当者の経歴や専門性、役割まで公開する。 大阪ガスの企業年金でいち早く運用の高度化に取り組んだ石田英和氏は「リターンが公表されていないから、健全な競争を生む仕組みが業界に欠けている。どんな運用会社に資金を委託しているかも開示させるべきだ」と話す。 資金を持つアセットオーナーが動き出さなければ運用立国は始まらない。2023/11/16 11:27:14149.名無しさんdrLY8日本国債、国内勢が全員買い 日銀の買い減額も需給盤石-佐伯遼2023/11/16 18:00 日経速報ニュース 国債利回りが低下(債券価格は上昇)するなか、日銀は国債買い入れの減額に動いた。ただ、銀行など国内投資家の買い意欲は非常に強く、需給環境は盤石で金利上昇にはつながらないとの見方も多い。さらなる減額を見込む市場参加者も多いものの、長期金利1%は遠いとの観測が広がりつつある。 「ようやく減額しましたね」。ある外国証券の債券ディーラーは待ちに待った、というように話す。 日銀は15日に実施した国債買い入れオペ(公開市場操作)で、長期金利の指標となる新発10年債も対象となる残存5?10年の買い入れ額を5750億円と、従来の6750億円から減額した。7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正し、長期金利の上限を1%に引き上げた後も6750億円を保ってきた。 月4回の定例オペだけで買い入れ規模が10年債の月間発行額(2兆7000億円)に匹敵していたため、市場機能の回復の観点でも減額を待ちわびる市場参加者が多かった。岡三証券の鈴木誠債券シニア・ストラテジストは「日銀は今後も国債買い入れを一段と減額できるタイミングを探ることになるだろう」とみる。 もっともオペの減額を通知しても国債は買われ、長期金利は0.77%と1カ月ぶりの低い水準まで下がった。米長期金利の上昇もあり16日には0.8%まで戻したものの、再び買いに押され0.785%まで低下した。 背景には10年債の需給逼迫が続くとの見方がある。「1回あたり5750億円」で「月4回」の定例オペのペースが続く場合、月間2兆3000億円の国債を買い入れることになる。2016年のYCC導入から21年までの月間平均である2兆1700億円を上回るペースで買い入れが続くため、需給は逼迫しやすい。 これまでに国債を大量に買い入れたことによる累積効果もある。23年の通常オペを通じた5?10年の国債買い入れ額(指し値オペを除く)は16日時点で、22年の通年と比べて11%増の31兆8600億円と、異次元緩和後の通年の最高を既に更新した。 供給面でも需給は緩まない。23年度の補正予算案では国債の追加発行で8兆8000億円を調達すると決めたが、財投債の減額などで対応する。結果として23年度に市場で発行する各年限の国債発行額は補正後も変わらず、10年債の23年の発行額は32兆4000億円にとどまる見込みだ。日銀が買い入れた5?10年の国債は、同年限で新たに発行される唯一の銘柄である10年債の年間発行額の98%に達する。 金利上昇を受けて国内勢は既に買いに動き始めている。日本証券業協会によると、外国人などを除く国内投資家は10年債など長期国債を5カ月連続で買い越した。ゆうちょ銀行が16日付で公表した投資家向け説明会の資料で「国債残高を今期(24年3月期)で反転・拡大へ」「国債保有残高に大幅な拡大余地」と表明するなど、投資家の買い意欲は非常に強い。 同行によると国債の保有残高は16年3月末の82兆円から足元で38兆円まで落ち込んでいる。大和証券の谷栄一郎チーフストラテジストは「国内最大の預金取扱機関が示した円債ポートフォリオの再構築方針は、日銀が保有する国債の一部の民間移転が進む可能性が出てきたことを示唆している」と指摘する。 長期金利は1日に付けた0.97%をピークに低下に転じている。日銀が購入量を減らしても債券市場の需給環境が揺るがない以上は、日銀がマイナス金利政策を解除し、短期金利を引き上げるまでは、長期金利が1%を超えるのは難しいとの観測が広がりつつある。2023/11/16 22:14:25150.名無しさんTC4aF歴史的円安、近づく最終局面 日米の金融政策転換がカギ(トップストーリー)2023/11/18 日本経済新聞 朝刊 1ドル=150円前後の円安・ドル高が続いている。背景にあるのは日米間の金利差の拡大。低金利の円を売り、高金利のドルを買う動きが三十数年ぶりの円安を招いた。ただ日米の金利水準の決定要因である日銀と米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営に変化の芽が出ており、歴史的な円安は最終局面に入りつつあるとの見方が広がり始めている。 円相場が大きく動き始めたのは2022年初めごろから。FRBが新型コロナウイルス禍などに伴うインフレを抑えるため大幅な連続利上げに踏み切る一方、日銀は大規模な金融緩和政策を維持。日米の金利差は22年秋に4%近辺まで広がり、1ドル=151円台まで下落した。 その後は日銀による大規模金融緩和政策の修正などを背景に円安・ドル高の加速にブレーキがかかり、1ドル=130円を超える水準まで上昇。足元では再び150円前後の水準まで売られている。日米の金利差におおむね連動する傾向がうかがえる。○ ○ 「早ければ日銀は年明け早々にもマイナス金利政策の解除を検討するのでは」。長く日銀の金融政策を分析してきた東短リサーチの加藤出氏はこう漏らす。市場では今年前半まで、マイナス金利政策に手を付けるのはかなり先の話という認識が強かったが、日銀内では消費者物価の前年比上昇率2%という物価目標の実現を意識するムードが染み出しつつある。植田和男総裁は6日の記者会見で、物価目標達成の確度について、以前よりも「上がってきている」との見方を示した。 これまで外国為替市場では、日銀の政策変更には長い時間がかかるとの前提で円売り・ドル買いが活発だった。だがQUICKと日経ヴェリタスが実施した11月の外為月次調査によると、日銀がマイナス金利解除に動く時期は2024年4月が32%で最も多く、1月という回答も20%あった。2023/11/18 06:52:03151.名無しさんTC4aF 日銀が金融緩和政策の転換という段階に進めば、これまで優勢だった円売り・ドル買いの動きが円買い・ドル売りに転じる可能性は大きい。個人にとっても資産運用環境の大きな変化となるため、政策変更の契機となる要因に目配りすることが大切だろう。 日銀の政策転換のカギは新型コロナウイルス禍で生じた「2つのねじれ」が解消に向かうかどうかだ。1つは、日銀が意識する物価と賃金の好循環。賃金上昇分から物価上昇分を差し引いた実質賃金は、23年9月まで1年半にわたってマイナスが続く。プラス転換するには時間を要するとみられるが、マイナス幅が縮小していく過程で好循環に入りつつあるかを確認することはできる。 もう1つのねじれは、値上げラッシュを通じて国民の消費マインドを冷やしている「悪い円安」の解消だ。かつては日本経済にとって有益とされた円安が問題視され始めたのは、コロナ後の急激な消費拡大とロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに起きたエネルギーや穀物などの原材料輸入価格の高騰が原因だ。 輸入価格の上昇が激しかった分、本来は原材料費や製造・輸送のコストを上乗せするはずの製品の輸出価格に転嫁しきれず、製品加工のコストが跳ね上がった。日銀の企業物価指数によると、21年春から23年春にかけて輸入物価の上昇率が輸出物価の上昇率を上回る状態が続いた。 現在は正常化したが、新たに中東情勢の深刻化も加わり、北半球の冬場の需要期に向けて原油などの資源価格が再び急騰するリスクは否めない。 こうした懸念材料が解消すれば、日銀は政策変更に動きやすくなる。ただ日銀が動いても、日本側の要因だけで日米金利差の大幅な縮小は見込めない。カギを握るのは、大幅な利上げで日米金利差を広げてきたFRBの動向だ。○ ○ FRBは11月1日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、2会合連続での政策金利の据え置きを決め、市場参加者の間には「利上げ終結」観測が一気に広がった。12月の次回会合で追加利上げを決める可能性はあるが、利上げの最終局面に入っているというのが市場の共通認識だ。 円相場への影響という面では、FRBが利下げに転じるかが焦点になる。米国の金融市場動向に詳しい野村証券の小清水直和氏は「雇用情勢がコロナ前の水準まで戻れば、利下げが視野に入る」と指摘する。具体的には米労働省が発表する雇用統計のうち、非農業部門の就業者数に注目する。 FRBは金融政策の目的として、物価と並んで雇用の安定を重視しているためだ。小清水氏は増加幅が前月比で15万人を下回る状況が続くようなら、利下げが現実味を帯びるとみる。 国内外の大手金融機関で円相場を見続けてきたマーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏は、日米の金融政策運営に変化の兆しがあることを踏まえて「24年前半は140~150円の範囲、後半は130~140円の範囲へと、緩やかに円高方向に相場が転じていく」と予想する。 こうしたシナリオの波乱要因はこれまでのFRBによる大幅な利上げの影響で、個人消費を中心に米国経済が予想以上に悪化することだ。ニューヨーク連銀によると、7~9月のクレジットカードの支払い延滞率が約12年ぶりの高水準になるなど不安要因も目立ってきた。景気悪化が強まれば「円高・ドル安が予想以上に進む可能性もある」(深谷氏)という。2023/11/18 06:53:46152.名無しさんaJX8Oマイナス金利解除前兆か、日銀「実質金利は低い」強調(ポジション)2023/11/22 日本経済新聞 朝刊 予想物価上昇率を考慮した実質的な金利水準は低い――。日銀がそんな説明に一段と力を入れている。将来、マイナス金利政策の終了を決める際にも、経済・市場に与えるショックを小さくするため、実質金利は低水準で推移し続けると強調する公算が大きく、最近の情報発信は、遠からず決まる可能性があるマイナス金利解除への備えが本格化したものと受け止めることもできる。 「日本経済が緩やかに回復しているという姿は継続している」。7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値がマイナス成長になったことについて植田和男日銀総裁は先週の国会でそう語り、冷静に受け止める姿勢を示した。 消費者物価の基調的な上昇率が2%目標に向けて徐々に高まっていくという日銀のメインシナリオは崩れていないもようだ。日銀は、2024年の春季労使交渉の行方や結果などを見極め、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せれば、マイナス金利政策の解除を検討するという姿勢を維持している。 市場では「24年1月に解除を決めるというのがメインシナリオ」(米金融情報コンサルタント会社、オブザーバトリーグループ)といった指摘も聞かれる。ゼロ金利の終了を同時に決めてしまう展開もあり得るが、普通は両者を分けるだろう。 ただし、長年、極めて低い金利が続いただけに、急激かつ大幅な金利上昇が始まるとの受け止め方が広がれば、政府、企業、家計に不安が広がり、経済やマーケットに混乱が起きかねない。そうしたショックの緩和策のひとつとして、日銀は、実質金利の低さを強調しそうだ。 実質金利とは、普段目にする金利(名目金利)から人々が予想する物価上昇率を差し引いた値。「金融政策が経済・物価に与える効果を捉えるうえでは、予想物価上昇率を勘案した実質金利が重要」(植田日銀総裁)という。金融政策変更で名目金利が上がっても、賃金も上がるなどして人々のインフレ予想が強まっていれば、実質的な金利の負担感はあまり強まらないという理屈だ。 予想物価上昇率には様々な数値があり、厳密な把握は難しいため、物価上昇率の実績値を使って実質金利をとりあえず計算する場合もある。最近の消費者物価上昇率は3%程度だ。 一方、短期の政策金利はマイナス0・1%、長期金利(10年物国債利回り)は0・7%程度であり、実質金利は短期も長期もマイナス圏との見方が日銀にもある。マイナス金利政策をやめて短期の政策金利を0%あるいは0~0・1%程度に上げ、それに応じて長期金利も多少上がるくらいであれば、「十分に緩和的な金融環境」(植田日銀総裁)に大きな影響はないという話になる。 以上の点を踏まえると、「最近の日銀が実質金利の低さを強調しているのは、マイナス金利解除が近づいている兆候と解釈できる」(元日銀調査統計局長の関根敏隆一橋大学教授)わけだ。 緩和的な金融環境に大きな変化がないというロジックは、日銀が過去2回、短期の政策金利引き上げ開始(いずれもゼロ金利政策解除)を決めた時にも使った。 2000年にゼロ金利を終える時の声明では「金融緩和の程度を微調整する措置」と説明。06年にも「緩和的な金融環境が当面維持される」とした。本格的な引き締めではなく、緩和の度合いを調整する程度という意味だ。 日銀は今回も、同様の説明を通じて、非連続的な変化が起きる印象を与えないようにする構え。できるだけ円滑に短期の政策金利の引き上げを進めようとしている。 もっとも、内外の経済・物価情勢、市場環境、政治動向の不確実性は高く、金融政策の転換が思わぬ混乱を引き起こすリスクも消えていないだろう。日銀はマイナス金利の幕引き作業の「ベストタイミング」を慎重に見極める。2023/11/22 06:20:57153.名無しさんRHzJr円高が呼ぶ日本株買い第2幕 海外勢「二重の追い風」-今堀祥和2023/11/22 19:58 日経速報ニュース 日経平均株価が7月初旬以来となるバブル経済崩壊後高値の更新をうかがっている。上昇けん引の主役は今春の株高を演出した海外マネーだ。市場を揺さぶった急激な米金利高と円安進行の「終わり」が見え始め、日本株を素直に評価しやすい。日本株買いの第2幕が始まった可能性がある。 海外勢の回帰は、「いつ日本株が上昇しているか」を見ると鮮明だ。日経平均先物の価格推移をみると午前8時45分から午後3時15分までの値幅(日本時間)は累計で240円安。午後4時半から翌朝6時までの値幅(海外時間)は同1540円高だ。海外時間の上げ幅は5、6月(1300円程度)を上回り、いまのところ今年最大だ。 日本株は7月初旬までの急ピッチな上昇の後、上値が抑えられていた。米長期金利の上昇ペースが加速したのが要因だ。世界でリスク回避が強まったが、米利上げは打ち止めとの見方が広がる。 先発隊はCTAなど海外短期勢だ。野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは、CTAの日経平均先物のロング(買い持ち)ポジションは10月末から急拡大し、足元で8000億円程度と試算。6月は最大2兆5千億円ほどに達し「拡大余地は十分ある」。 ただ短期勢は風向きが変わればすぐ利益を確定し、売り手にまわり相場を押し下げる存在にもなる。株高持続のカギを握るのが中長期勢の動きだ。輸出関連株へのマイナス影響から株式市場で嫌気されやすい円高進行が、海外マネーの呼び水になるとの見方がある。 米運用大手インベスコで世界株ファンドの運用責任者を務めるスティーブン・アネス氏もその見方の1人。「日本経済は堅調で、日銀は緩やかな金融引き締めを続けるだろう。(金利差縮小で)円は強含む可能性がある。海外投資家には株高と通貨高の二重の追い風が吹く可能性があり、日本株への投資妙味は高まっている」と強調する。 東証株価指数(TOPIX)は23年に25%高と、米S&P500種株価指数(18%高)や欧州のストックス600(7%高)を大きく上回る(21日時点)。ドル建てでみると12%高と米株に劣後し、欧州株(ドル建てで10%高)と大差ない。 円相場は対ドルで今年1割強下落。為替ヘッジしないことも多い長期投資家が、ドル建て運用成績のさえない状況を懸念したことが、日本株失速のもう一つの要因だ。 「日本株はファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも評価すべき点が多い」(ドイツ銀行グループの運用大手DWS)。日米欧株の上昇を予想EPS(1株利益)と予想PER(株価収益率)の伸びに分解すると日本は双方、米欧を上回る。DWSは対ユーロでも円安加速はないと見て「日本株に今からでも参入する価値はある」という。 ビヨルン・ジェシュ・グローバルCIO(最高投資責任者)は11月の機動的な資産配分(CIOポートフォリオ)で日本株の割合を5段階中、中立(ニュートラル)からプラス1に引き上げた。「輸出の安定、堅固なバランスシート、予想される収益」を根拠に挙げる。 米運用大手GMOがMSCIのEAFE(北米以外の先進国)指数を参照指標とする225のアクティブ運用戦略を分析したところ、6月末時点では8割強が日本株を基準以下(アンダーウエイト)にしていた。その分、比率引き上げが広がればインパクトは大きい。 アネス氏は「日本にはバランスシートが極めて良好で、資本効率などで改善する潜在力を秘めた企業は多い。(指標対比で現状低い)日本株比率はオーバーウエイトに上がる可能性もある」と話す。「ただ重要なのは、長期投資への確信が持てる企業が見つかるかどうかだ」2023/11/24 08:15:08154.名無しさんCeypO日本の物価上昇、サービスけん引 企業向け10月2.3%プラス 賃金との好循環、日銀注視2023/11/28 日本経済新聞 朝刊 日本の物価上昇のけん引役がモノからサービスに移ってきた。日銀が27日発表した10月の企業向けサービス価格指数は前年同月比で2.3%上昇と3年9カ月ぶりの伸びだった。働き手の不足という構造問題によりサービス価格に上昇圧力がかかる構図は米国でもみられ、日銀の目指す2%の安定的な物価目標を見通す上で重要性が高まっている。 企業向けサービス価格は企業間で取引するサービスの価格変動を表す。上昇率は3カ月連続で2%を超え、10月の伸びは9月(2.0%)より拡大した。調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは100品目と、全体の7割近くにのぼった。 日銀が物価の判断材料にする消費者物価指数(CPI)はモノの価格とサービスの価格を総合的に反映する。モノとサービスの構成比率はほぼ半々だ。人件費の上昇分を転嫁して給与所得を増やし、CPIを上げる循環にはサービスの動向がカギになる。 企業向けサービス価格の内訳をみると、システムエンジニア(SE)の人件費上昇を反映するソフトウエア開発が前年同月比で4.7%、労働者派遣サービスが2.2%上がった。日銀は「(機械修理などの)諸サービスや情報サービスの一部で人件費上昇の転嫁がみられた」と分析する。 企業間で取引するモノの価格変動を表す企業物価指数は下落傾向が鮮明だ。10月は原材料価格の上昇が落ち着いてきたことに加え、政府のガソリン補助金拡充などの影響もあって前年同月比上昇率は0.8%に下がり、2年8カ月ぶりに1%を割った。 サービスが物価上昇をけん引する構図は米国に近い。米国の卸売価格指数(PPI)をみると、モノの価格は上がり下がりが激しく15~16年や19~20年は前年同月比で大きく落ち込んだが、サービス価格は一貫してプラス圏で推移してきた。モノの値下がりが激しい時も、粘着性が高いサービス価格が物価の押し上げに効く構図は明らかだ。 10月の米国のCPIの項目をみても、エネルギー関連を除くサービスが前年同月比5.5%増と物価を押し上げる。一方、食品とエネルギーを除くモノの前年同月比上昇率は0.1%と低調だ。 バークレイズ証券の山川哲史氏は「日本では従来の米国と同様、労働集約的なサービス分野における価格引き上げが物価上昇を下支えする局面に移行しつつある。CPI上昇率も、少なくとも24年半ばまでは高水準で推移する可能性が高い」とみる。 賃金上昇の持続性が注目されるなか、足元では大企業の賃上げ情報が入り始めている。ビックカメラは10月、24年に正社員に7%を超えるベースアップ(ベア)を実施する方針を固めた。サントリーホールディングス(HD)も組合員平均で3%のベアを実施するとの考えを示している。 パートタイムで働く労働者への賃上げも進んでいる。厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(確報、従業員5人以上)によると、パートタイム労働者の名目賃金は9月に前年同月比で1.6%増で、一般労働者(1.2%増)の水準を上回った。日銀関係者は「非正規労働者のほうが(賃金が)上がっている。(正規より)賃金上昇が遅いという認識はない」との見方を示す。 日銀の植田和男総裁は11月6日の講演で、物価2%目標の達成の判断について「確度が少しずつ高まってきている」と話した。比較的安定するサービス価格の上昇傾向はこうした認識を裏付けている。賃上げが続き、円滑に消費者物価に波及する構図が確立すれば、金融政策の正常化はより現実味を増すことになりそうだ。2023/11/28 06:49:24155.名無しさんT70oK日銀の安達委員「長期金利の情報的価値、有効活用すべき余地高まる」2023/11/29 11:50 日経速報ニュース 日銀の安達誠司審議委員は29日、愛媛県金融経済懇談会に出席し挨拶した。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を断続的に柔軟化していることに関連し、長期金利は市場参加者の将来の金融政策予想や、経済・金融市場の動向・先行き見通しなどが反映されるため「金融政策を行う上で非常に高い情報的価値を有する指標だ」と説明した。 物価目標の実現のために長期金利の情報的価値が失われるデメリットを甘受してでも強力な金融緩和の枠組みであるYCC導入に踏み切ったが、「感染症禍以降における物価上昇のもとで、本来、長期金利が持つ情報的価値を有効に活用すべき余地が徐々に高まってきた」との考えを示した。YCC運用による政策効果と、金利形成をある程度市場に委ねることで得られる長期金利の情報的価値のバランスに「変化が生じている」とも述べた。 金融政策運営におけるリスクマネジメントの観点では、内外経済や物価の不確実性が高いなかで「(物価の)上振れリスクへの配慮も必要になっている」と指摘した。一連のYCC運用柔軟化により、市場機能の改善と金融緩和の持続性を高める効果という2つのメリットがあったと話した。2023/11/29 13:34:33156.名無しさんT70oK日銀の安達委員、マイナス金利解除「いつごろという話できる状況ではない」 記者会見2023/11/29 15:06 日経速報ニュース 日銀の安達誠司審議委員は29日、愛媛県金融経済懇談会後に記者会見した。マイナス金利政策について、基本的には賃金と物価の好循環が実現する状況になるまでは「マイナス金利解除は難しいというのが個人的な考えだ」と述べた。来年の春季労使交渉(春闘)を巡り、大企業では前向きな見方がある半面、中小企業を中心に今年度並みの賃上げは厳しいとの声があるなか「いつごろ解除するかという話をできるような状況ではない」との考えを示した。 来年の春闘での賃上げ率については「年度が明けないと実際に(賃金が)どれくらい上がったか、中小企業を含めて分からない」と語り、賃金動向の趨勢を見極めるタイミングとしては「新年度に入ってから」と述べた。賃金次第で重要な政策決定を下す可能性があるだけに「慎重に考えた方がよい」として、賃上げ動向を丹念に見極めるとの姿勢を示した。 大規模緩和の解除と実質賃金の関係性について問われると、安達委員は新型コロナウイルス禍で内外経済が想定しにくい動きをしており「実質賃金が先にプラスになる可能性がある」としたうえで、実質賃金のプラスは「必ずしも(緩和解除の)必要条件ではない」と語った。 金融政策運営のリスクマネジメントの観点でマイナス金利を解除する可能性については「YCC(長短金利操作)で操作目標としていた10年債利回りと政策金利であるマイナス金利では性格が違う」と説明した。マイナス金利は「短期金利を操作するというオーソドックスな金融政策の一面があり根幹だ」と語った。2023/11/29 15:10:05157.名無しさんohf9k日銀・安達委員、賃上げ見極め「新年度明け」 物価高、先行きなお見えず2023/11/30 日本経済新聞 朝刊 日銀の安達誠司審議委員は29日の記者会見で、マイナス金利政策について「賃金と物価の好循環が実現するまでは解除は難しい」との見解を述べた。賃上げの動きについて見極められるのは「新年度明け以降」と述べた。 松山市で開いた金融経済懇談会後に記者会見した。春季労使交渉(春闘)の見極めを巡っては「慎重に考えた方がよい」とし「中小企業が今年度並みの賃上げをするかどうかはかなり厳しいという声がある。(マイナス金利政策を)いつごろ解除するかという話をまだできる状況ではない」と述べた。 現在の大規模な金融緩和策の出口は「(賃金と物価の好循環が)回り始める確率がある程度高まった段階で出口の話をし始める。まだそこまでは行き着いていない状況だ」との見解を述べた。 物価高の長期化で下押しされている実質賃金にも触れた。金融緩和の出口の局面では「実質賃金がプラスになればそれは非常に良いことだが、必要条件ではない」と話した。物価の見通しは、輸入物価の下落の影響が今後出るとし「減速していくとみているがそこがどうなるかで変わってくる」と話した。 長短金利操作の柔軟化など金融政策のリスクマネジメントについても言及した。「イールドカーブがゆがむことの副作用を2~3年前は意識していなかったが、意外と大きい。企業の資金調達に影響を及ぼすことがわかってきたので措置をする必要が出てきたことが主なポイントだ」とした。 金融経済懇談会では参加者から「(中小企業の立場で)将来の金利上昇に対するリスクは思ったよりも大きいかもしれないという切実な訴えもあった」と明かした。「十分考慮しなければならないという印象は受けた」と述べた。2023/11/30 07:23:05158.名無しさんohf9k日銀・中村審議委員 金融政策修正「もう少し時間」2023/11/30 12:28 日経速報ニュース 日銀の中村豊明審議委員は30日、大規模な金融緩和策について「修正にはもう少し時間がかかる」との認識を示した。「(2%の物価目標の)実現に確信を持てる状況ではない」としつつ、「賃金と物価の好循環を実現させる千載一遇のチャンスが到来し、正念場を迎えている」と期待感もにじませた。 神戸市で開いた金融経済懇談会で講演した。現状の物価高については「輸入コストプッシュインフレの色彩が強い」とした上で、「従来にない企業の積極的な価格設定行動がうかがわれる」と述べ、企業の価格戦略が変わりつつあると指摘した。 賃上げにも好感触を示した。政府の取り組みや企業の経営改善努力などが賃上げにつながり、「物価上昇を上回る賃金上昇が実現する兆しが現れている」と述べた。特に大企業では「賃上げモメンタムは強まっている」と話した。 日銀は10月の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を修正し、長期金利が1%を一定程度超えて上昇することを容認した。中村委員は同会合で「企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」として反対票を投じた。 30日の講演では「企業の『稼ぐ力』の強化が進みつつある」との見方を明らかにした。中村委員が注視してきた中小企業の動向についても「賃上げ・投資余力が向上している。(事業承継などで)事業構造改革が進むと期待している」と前向きに評価した。【関連記事】・日銀安達委員、金融緩和策「出口の議論行う段階にない」・日銀・安達委員、賃上げの見極め「新年度明け以降」に2023/11/30 12:52:08159.名無しさんwWamm野村総研・木内登英氏「マイナス金利、金融機能が低下」-異次元緩和 近づく出口 識者に聞く2023/12/01 05:00 日経速報ニュース 金融市場で日銀が近くマイナス金利を解除するとの見方が広がっている。2016年の導入時に日銀審議委員だった野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストにマイナス金利の功罪と解除の見通しを聞いた。 ――日銀はマイナス金利政策をいつ見直すでしょうか。 「解除は2024年後半とみている。物価目標の達成を宣言するのは難しいが、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正した際と同様に副作用を取り除くという説明で事実上の正常化を目指すのではないか。金融緩和を続けながら枠組みを見直していくことになるだろう」 「物価上昇でインフレ期待は上振れしている。春季労使交渉で2%賃上げしたところで、物価上昇に追いつかないと思えば個人は消費を抑えてしまうリスクがある。すでにある意味ではビハインド・ザ・カーブ(政策が後手に回る)になっているとも言える」 ――副作用といえば金融機関収益への影響ですが、それは政策修正の理由になりますか。 「そこが一番だと思う。低金利で収益が厳しいと高リスクの融資を抑制する可能性もあり、金融仲介機能が低下する。日銀が金融システムリポートでも言及しているが、不動産融資への傾倒もリスクだ。将来不動産価格が下落したり空室率が増えたりすればリスクが顕在化する。それを未然に防ぐには、過剰に金利を押し下げるマイナス金利は解除すべきだ」 ――導入当時、国債の大量購入で金融緩和の限界論が広がっていました。マイナス金利以外の選択はなかったのでしょうか。 「起死回生策だった。13年から量的・質的金融緩和を始め、国債の大量買い入れやマネタリーベースの拡大などをしても物価が上がらず、行き詰まっていた。日銀内では(マイナス金利に)否定的意見がやや強かったように思うが、黒田東彦前総裁は金利をもっと下げれば効果が出ると考えていた」 ――導入には反対されましたが、なぜですか。 「私は資産買い入れ方針と整合的でないことと、金融機関収益への影響を理由に反対した。短期金融市場の機能低下も懸念されていた。実際にネガティブサプライズになり、金融機関や市場から強い批判にさらされた。日銀も16年9月にはYCCの導入で軌道修正を余儀なくされた」 「予想以上に金利が下がると生命保険などにも影響が出て、個人が消費を抑えるなど、(利下げの副作用が効果を上回る)リバーサル・レートといった概念が意識され、日銀も認めた。金利は下げれば下げるほど効果があるという発想を見直すことになっていく重要な時期だった」 ――懸念は現実になりましたか。 「本当の評価はもっと時間が経つまでわからないが、とても副作用が大きいというほどではない。低金利下で稼ぐため地銀が運用などで金利リスクを取り過ぎるといった弊害が出ている面はある」 ――日銀は一定の効果があったと評価していますが、経済効果はどうでしょうか。 「マイナス金利で経済効果が大きくなったという証拠はあまりない。効果と副作用で見れば弊害の方が大きかった。貸出金利はそこまで下がらず、銀行だけがマイナスの金利のしわ寄せを受けた」 ――金利のある世界が戻ってくると言われています。金融機関はどう行動すべきでしょうか。 「利ざやが広がっていく期待から預金金利を引き上げる動きが出てきた。ただ、運用利回りの上昇はたかがしれていると思う。現在の低金利はそもそも日本の成長力の弱さに根ざしており、金融政策の正常化だけで経済が劇的に改善することはないだろう。金融機関は構造改革の手を緩めず、手数料収入を増やすなど地道な策も重要だ」2023/12/01 06:22:35160.名無しさんzG9RR後期高齢者の医療費 窓口負担2割に引き上げ案 社保改革の政府工程表2023/12/02 日本経済新聞 朝刊 政府は少子化対策の財源確保に向け、75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担引き上げを社会保障の改革工程の原案に盛り込む。後期高齢者のうち一定の所得がある30%弱をのぞいて原則1割負担だが、2割への引き上げを検討する。給付や費用などの歳出も効率化し、膨張する医療費を抑え、制度の持続性を高める。(関連記事総合3面に) 現在は一定の所得がある人の窓口負担は2~3割だ。原則は1割負担で、2割にすれば公費で年4200億円の歳出を抑えられると経済同友会は試算する。 全世代型社会保障構築会議と経済財政諮問会議を近く合同で開き、有識者らが2028年度までの社会保障改革の工程を示す。与党との調整を経て年内に取りまとめる。与党から慎重な意見が出る可能性もある。 原案は後期高齢者の窓口負担の引き上げを中長期に検討する項目として位置づける方針だ。医療費の窓口負担は現役世代が3割で、後期高齢者は低く抑えられている。年金などに収入が限られるためだが、医療費全体の4割近くを使う。 原案では安価な後発医薬品を使わない場合の追加負担も掲げる。2023/12/02 07:30:30161.名無しさんzG9RR医療費、世代間格差大きく、後期高齢者、窓口負担上げ案 「能力に応じ負担」の指摘2023/12/02 日本経済新聞 朝刊 政府が75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担の引き上げを検討するのは、社会保障の負荷が現役世代に偏っている構図を是正するためだ。高齢化で社会保障費は今後も増加が避けられない。膨らむ給付を抑えつつ、負担を大胆に見直さないと世代間の格差は縮まらない。(1面参照) 差が目立つのは医療の分野だ。現役世代が納める医療保険料は足元で高齢者が支払う分の3・6倍となり、20年前の2・8倍から差が広がった。 2020年度の35~39歳の保険料は1人あたり年間30・8万円だった。会社員は会社と折半するため実質は半分ほどだが、00年度に比べて5割増えた。一方で75~79歳の後期高齢者は年8・5万円と20年間の伸び幅は1割強にとどまる。 今後は支払い能力に応じた負担の見直しが欠かせなくなる。政府は改革工程の原案に75歳以上の後期高齢者の窓口負担引き上げ案などを盛り込む。75歳以上の1人当たり医療費は現役世代の4倍以上で、一定の負担増が必要との指摘は多い。 金融所得・資産を加味した負担も検討課題となる。 高齢者は現役世代に比べて給与などの収入は少ない一方、資産を多く保有するケースがある。能力に応じた負担という観点からきちんと資産などを把握し負担してもらうべきだとの指摘がある。 政府は24年度に診療報酬と介護報酬の同時改定を予定する。診療報酬と医療費の総額は同じになり、23年度は48兆円に上る見込みだ。会社員らが払う保険料で半分をまかない、報酬の上げ下げは国民負担に直結する。 医療費は高齢化で増加が続き、40年度に70兆円台後半まで増えるとの推計もある。国民所得に占める税金と社会保険料をあわせた割合を指す「国民負担率」は20年前は35%だったが、22年度は47・5%になった。 日本の給付と負担の水準は従来、国際的にみて「中福祉・低負担」だった。少子高齢化が進むことで将来に「高福祉・低負担」になる可能性がある。「高福祉・高負担」の北欧などと比べてもバランスを欠く。2023/12/02 07:52:13162.名無しさんzG9RR医療費、世代間格差大きく――歳出改革で少子化対策財源、「最大1.7兆円捻出」、令和臨調2023/12/02 日本経済新聞 朝刊 民間有識者でつくる令和国民会議(令和臨調)は1日、医療・介護分野の歳出改革に関する提言を発表した。少子化対策の財源として後発薬の活用などで3年間で最大年1・7兆円を捻出できると試算した。歳出改革の徹底を政府に求めた。 提言では医療で8項目、介護で4項目の歳出削減の案を挙げた。給付抑制などが可能な金額をそれぞれ試算した。今後3年間程度の目標額は年ベースで計1兆1139億~1兆7203億円にした。 医療では、特許が切れた薬から後発薬(ジェネリック医薬品)への置き換えで2679億~5115億円を抑える。 軽度の不調を自ら治療するセルフメディケーションの推進で2360億~3250億円、繰り返し使えるリフィル処方箋の普及で1319億~1350億円を削減する。 介護では軽度の要介護者への生活援助サービスの給付を市町村事業に移行するなどして500億~1025億円減らす。高齢者の介護計画(ケアプラン)を作るサービスの一部を自己負担にして515億円を削る。 今後10年間で医療のデジタル化などにより追加で年1・5兆円が抑制可能と試算した。 令和臨調の財政・社会保障部会の平野信行共同座長(三菱UFJ銀行特別顧問)は1日の記者会見で「改革案は目新しいものではなく、政府で議論しながら実行されてないものが大半だ」と指摘した。政府に働きかけ、歳出改革の工程表への反映をめざす。 平野氏は中長期的な給付と負担について「給付が増え続けるなかで国民負担の最適化を図っていくべきだ」と強調した。2023/12/02 07:53:44163.名無しさんXnvSV植田日銀は三たび動くのか 12月会合はいつも鬼門-金融PLUS 金融グループ次長 石川潤2023/12/03 05:00 日経速報ニュース 街にジングルベルが鳴り響く。クリスマスの飾り付けもきらびやかだ。浮き立つ心はクリスマスのプレゼントや正月のお節の準備に向かいがち。だが、日銀を長くウオッチしてきた市場参加者であれば、そんな浮かれ気分にはまだなれないかもしれない。日銀は18?19日に今年最後の金融政策決定会合を開く。12月会合は日銀が何度もサプライズを引き起こしてきたいわば「鬼門」だ。 金融市場の関心は、日銀がマイナス金利政策をいつ解除するのかという一点に集中している。市場予想では24年の1月、または4月の解除を予想する声が多い。1月、4月は日銀が「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表する月であり、物価見通しの上方修正とあわせ、金融政策の正常化に踏み出すとみる参加者が多い。 12月に4度の日銀ショック ただ、これまでの日銀の歴史を振り返れば、展望リポートのない12月に動いた例がいくつもある。08年のリーマン・ショック以降では少なくとも4回、金融市場は師走の日銀ショックに揺さぶられた。 08年12月には、日銀が政策金利を0.2%引き下げて0.1%とした。日銀は「最後の利下げ」カードを切ることに慎重とみられていたが、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利下げと円高によって外堀は埋められ、実質的なゼロ金利政策に戻ることを余儀なくされた。 翌09年12月にも日銀は動いた。デフレと円高への警戒が強まるなか、0.1%の低利で3カ月の資金を供給する手段(新型オペ)を導入。期間が長めの金利を日銀の目指す水準に抑えつけるという意味で、現在の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)につながる地平を切り開いた。 追い込まれ続けた日銀の歴史 アベノミクス前夜の12年12月には、追加緩和を決定すると同時に、物価目標の導入検討を決めた。総選挙に勝利して政権獲得を確実にした自民党の安倍晋三総裁(当時)からの圧力で、異次元緩和のベースとなる物価目標2%への道筋が付けられた。 ちょうど1年前、22年12月にYCCが修正され、長期金利の上限が0.25%から0.5%に引き上げられたことは記憶に新しい。当時の黒田東彦総裁のもと、かたくなに金融緩和を継続してきた日銀が、投機筋の債券売りで政策修正に追い込まれた。 師走の日銀会合が金融政策の歴史をつくってきた、と言えばやや大げさかもしれない。ただ、政策の流れを変える重要な決定がたびたび12月になされてきたことは事実だ。マイナス金利解除が焦点のいま、歴史が再び繰り返されるのかという問いは成り立つだろう。 今回の12月会合を読み解くヒントも、上に挙げた4つの会合にあるのではないか。どの会合でも日銀によるサプライズがもたらされた。ただ、日銀が自らの意思で動いたというよりは、マーケットに追い込まれて、あるいは政治からの圧力によってやむにやまれず決定に至ったというのが実際のところだろう。 日銀にとっては、やはり展望リポートがある月に政策を変えるのが常道だ。12月の政策変更は、展望リポートを出す1月を待てないほどに、日銀がそのとき追い詰められていたことを示している。2023/12/03 07:28:30164.名無しさんXnvSV 植田日銀に急ぐ理由はあるか そうした視点で今回12月の会合を眺めるとどうか。すでに2度政策修正に動いている植田日銀に3度目はあるだろうか。 米国の金利低下を受けて、日本の10年債利回りの上昇にもブレーキが掛かっている。日米金利差の縮小で円安圧力も弱まった。政府・与党から日銀に金融政策の変更を求めるような声は上がっていない。少なくとも表面上は、日銀が慌てて動かねばならないような理由はない。 それでも日銀が動くとすれば、次の2つの展開だろう。ひとつは物価上昇が続く中で金融政策の正常化をこれ以上遅らせれば、ビハインド・ザ・カーブに陥る(後手に回る)可能性が高いと判断した場合。もうひとつは、米国の金融政策が変化して円安から円高に流れが変わる前に、金融政策の正常化を進めておきたいと考えた場合だ。 どちらもあり得る理屈だが、これまで慎重に物価目標達成を判断するとしてきた植田日銀が突然動く理由としてはやや弱いかもしれない。 技術的な変更の可能性も 仮に大きな政策変更はないとしても、日銀が金融政策に技術的な変更を加える可能性はある。12月会合ではこれまで、10月や1月といった展望リポートのある月には議論できない制度の微修正など、細かな決定もなされてきた。 たとえば15年12月には、日銀は新たな上場投資信託(ETF)買い入れ枠の設定など、異次元緩和を「補完するための諸処置の導入」を決めた。追加の金融緩和ではないが、金融緩和を円滑に進めるためのものという触れ込みで、翌月(16年1月)のマイナス金利政策の導入決定までのつなぎの役割を果たした。 BNPパリバ証券の河野龍太郎氏はリポートで「(日銀が)マイナス金利の解除などを行う場合、事前にフォワードガイダンスを変更して、近い将来での政策修正の意図について明確なシグナルを発する」可能性が高いと指摘した。12月にそうした措置がとられるリスクも無視できないとの考え方だ。 来年は日本経済が超低金利のぬるま湯から抜け出し、金利のある世界に足を踏み入れる年になる可能性が高い。日銀はいつマイナス金利を抜けだし、どれだけのペースで利上げを進めるのか。日銀が黒田流のサプライズ路線から決別するのであれば、公表文や記者会見を通じ、何らかのヒントが示される可能性はある。2023/12/03 07:29:57165.名無しさんtaopo市場の流動性「総じて悪化」 日銀、政策レビューで報告 緩和に副作用/脱デフレには寄与2023/12/06 日本経済新聞 朝刊 日銀が過去の金融政策を総括する「多角的レビュー」で、日銀の担当者が議論のたたき台として作成した報告の概要がわかった。4日の有識者による初めてのワークショップで示された。報告では2013年に導入した異次元緩和で債券市場の流動性が「総じて悪化した」と指摘した。緩和が長引くなかで、日銀は効果と副作用のバランスにより配慮せざるを得なくなっている。 日銀は副作用を軽減するため、22年12月以降、3回にわたって長短金利操作(YCC)を修正している。報告では政策修正によって、足元の状況は「改善している」とした。 日銀が公表しているプログラムによると、ワークショップには東短リサーチの加藤出社長や、東京大学の星岳雄教授など、金融市場や金融政策に詳しい有識者がパネリストとして参加した。ほかにもエコノミストらがオンラインや会場で議論に加わった。 日銀の金融市場局は異次元緩和が債券市場の機能に与えた影響を評価した。金融緩和を短期決戦型から持久戦型に切り替えた16年9月のYCC導入で、流動性は比較的改善。ただ、22年以降は海外金利の上昇やインフレ予想の引き上げで「市場の金利目線がYCCの変動幅と乖離(かいり)」し、「すべての流動性指標が悪化した」。長短金利曲線のゆがみも目立ったと指摘した。 金融機構局の報告では、緩和的な金融環境のもと、金融活動に「大きな不均衡は認められない」と総括。一方で、本来は一定の上乗せ金利が期待できる、財務状況が中程度のリスク企業向けの貸し出しで、採算が「歴史的な低水準」になっていると副作用にも触れた。 業種別の貸出金利の分析では、不動産で10年度は2.4%超あったが22年度はほぼ半減した。全体の貸出金利が低下するなか、金融機関は低採算でも貸出ボリュームの大きな分野に融資を増やした。報告では「不動産業など特定業種への貸し出し集中を招いている」と指摘した。 参加者からは「副作用の検証の対象が狭すぎる」との声もあがった。財政規律の緩みや円安など為替の動向も、副作用の範囲に入れるべきだとの指摘があった。 物価や経済に及ぼしたプラスの影響も評価した。企画局の報告では、国債買い入れによる量的緩和なども利下げとみなして算出する指標の一種、「影の金利(シャドーレート、報告では潜在金利と呼称)」を使って分析した。 報告では、異次元緩和は「デフレではない状況を作り出すことに寄与した」と評価した。ただ、緩和による物価上昇率の押し上げ幅は「1%程度にとどまる」とし、金融緩和頼みの限界もにじませた。「中長期のインフレ予想の変化や物価・賃金の動向など他の要因について総合的に分析する必要がある」とした。 異次元緩和は金融機関の「貸出残高を大きく押し上げた」とも指摘した。報告に盛り込まれた分析によると、異次元緩和がなかった場合と比べ、貸出残高を2割程度押し上げた。経済に与えた影響では、常時雇用者数を5%以上押し上げたほか、失業率も低下させたと試算した。雇用環境を改善させ、「潜在成長率を下支えしていた」可能性を強調した。 参加者によると、植田和男総裁も会場で質問をした。金融緩和の効果検証は従来も実施してきたが、今回のレビューは「外部の有識者の意見を聞くことに重きを置いている」(日銀関係者)。日銀は今回のワークショップの要旨を今後公表する予定で、有識者との議論の内容などが焦点となる。 日銀は4月に多角的レビューの実施を決めた。第2回のワークショップは24年5月ごろに開催する予定で、海外の有識者との意見交換も検討している。2023/12/06 06:05:17166.名無しさんtaopo日銀の氷見野副総裁、出口「いい結果につなげること十分可能」 粘り強い緩和は継続 大分県金懇2023/12/06 11:26 日経速報ニュース 日銀の氷見野良三副総裁は6日、大分県金融経済懇談会で挨拶した。大規模な金融緩和策の出口について「一番気をつけなければならないのは、賃金と物価の好循環の状況をよく見極めて、出口のタイミングや進め方を適切に判断すること」と語った。判断を誤らない限り、賃金・物価の好循環が強まるメリットが幅広い家計と企業に及ぶと考えられるとして「出口をいい結果につなげることは十分可能だろう」との見方を示した。 氷見野氏が金融経済懇談会に出席するのは3月の副総裁就任後初めて。仮に物価目標の持続的・安定的な達成が見通せるようになり、金融緩和の出口を迎えた場合に何が起こるかにも言及した。「出口の具体的な状況や政策修正の姿にも大きく左右されるので、簡単には論じられない」としたうえで説明した。 金融緩和については「経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えるべく、大規模な金融緩和を粘り強く続けてきた」と話した。「賃上げを伴う形で『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現できると見通せるようになるまで、粘り強く緩和を継続していく」との考えを示した。 金利のない世界から金利のある世界に移った場合、貯蓄超過主体である家計は「総じてみれば収支が改善するのではないか」と指摘。企業は借金を減らし手元資金を積み上げてきたため、金利収支への影響は「手元資金が少なかった時代に想定されたであろうよりは限定的なものとなるかもしれない」と話した。金融機関については「出口局面では経済の改善に伴い企業の投資も活発化しているとすれば、貸し出しの需要も増え、預金と貸し出しの間での利ざやも取りやすくなるだろう」としたうえで、「低金利が続く環境に比べれば銀行経営はずっと成り立ちやすくなると思う」と述べた。2023/12/06 12:51:37167.名無しさんtaopo氷見野日銀副総裁が出口の影響に言及、金利上昇のメリットも賃金・物価の好循環を見極め、出口のタイミングや進め方を適切判断銀行経営、低金利が続く環境に比べればずっと成り立ちやすくなる 日本銀行の氷見野良三副総裁は6日、大規模な金融緩和政策からの正常化の局面で家計や企業、金融機関に与える影響に言及し、賃金と物価の好循環の状況を慎重に見極めた上で出口を適切に判断する考えを示した。大分県金融経済懇談会で講演した。 日銀として最も気を付けなければいけないことは、「賃金と物価の好循環の状況をよく見極めて、出口のタイミングや進め方を適切に判断することだろう」と指摘。そこを間違わなければ好循環が強まっていくこと自体のメリットは幅広い家計と企業に及ぶとし、「出口を良い結果につなげることは十分可能」と語った。 出口の具体的な状況や政策修正の姿にも大きく左右されるとしつつ、金利のある世界に戻る過程での各経済主体への影響についての見解を示した。このうち金融機関に関しては、保有債券の含み損の発生など短期的に一定のストレスがあり得る一方、「低金利が続く環境に比べれば銀行経営はずっと成り立ちやすくなる」と分析した。 3月に副総裁に就任した氷見野氏は金融庁長官を務め、金融システムや国際金融規制に精通している。副総裁として初めてとなった今回の講演では、景気改善に見合った金利上昇のプラス効果を説明することで、金融政策の正常化に向けて前向きな姿勢をにじませたといえそうだ。粘り強く緩和継続 金利上昇の影響は、貯蓄超過主体である家計部門では「総じてみれば収支が改善するのではないか」と指摘。手元資金の厚い企業部門は足元で金利収支が黒字となっており、「借り入れが多く手元資金が少なかった時代に想定されたであろうよりは、限定的なものとなるかもしれない」としている。 日銀は10月の金融政策決定会合で長期金利の1%超えを容認するイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の運用柔軟化を決めた。氷見野氏は金融政策運営について「こうした工夫を行いながら、賃上げを伴う形で物価安定の目標を持続的・安定的に実現できると見通せるようになるまで、粘り強く緩和を継続していく」と語った。 消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)が日銀の目標の2%を上回って推移する中、「足元の物価は何とかしたいが、先行きデフレ的な世界に戻ることも避けたい」という悩みも吐露。賃金から物価への波及も見られつつあり、「デフレ前の時期並みに値段が変わる状態に戻っている」と指摘した。他の発言出口の環境での実質金利上昇、名目金利上昇よりも小さい可能性金利上昇局面では、単純に金融機関の利ざやが拡大するとはいえない金融システム全体としては移行過程のストレス乗り切る頑健性を有している関連記事東京消費者物価2カ月ぶり鈍化、予想下回る-日銀正常化観測後退も政策対応は「拙速よりも慎重に」、緩和修正に時間-中村日銀委員マイナス金利解除議論は尚早、賃上げ見極め来年度-安達日銀委員2023/12/06 13:29:03168.名無しさんtaopo地銀がマイナス金利解除を要望、日銀がレビューで意見聴取-関係者https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-06/S56SI6T1UM0W00利ざや縮小が収益圧迫、時機見極めつつ金融政策の正常化へ歩みを90年以降の金融緩和、相次ぐショックでも潤沢資金が地域経済下支え 日本銀行が地方銀行のトップに対して行った多角的レビューに関するヒアリングで、地銀側がマイナス金利政策の収益への悪影響を指摘し改めて解除を要望していたことが分かった。事情に詳しい関係者への取材で分かった。 日銀本店で11月16日に行われた会合には、植田和男総裁ら日銀の幹部と第二地方銀行協会の熊谷俊行会長(京葉銀行頭取)ら第二地銀のトップが出席。関係者によると、日銀は1990年代後半以降の金融緩和が地域経済や銀行経営に及ぼした影響などについて意見を求め地銀トップから金融緩和の長期化やマイナス金利政策に伴う預貸金利ざやの縮小が、銀行の収益を圧迫しているとの懸念が表明された。 こうした状況を踏まえ、地銀側はマイナス金利政策の見直しを引き続き要望。熊谷会長は政策金利の急激な引き上げは景気に下押し圧力が強まる可能性があるとし、地域経済や金融システム、金融市場に配慮しながら、時機を見極めつつ、金融政策の正常化に向けて歩みを進めていただくことを期待していると語ったという。2023/12/06 14:57:31169.名無しさんEZUaD日銀、金融正常化へ地固め 氷見野副総裁「出口、適切に判断」 物価・賃金、好循環に期待2023/12/07 日本経済新聞 朝刊 日銀がマイナス金利解除への布石を打ち始めた。氷見野良三副総裁は6日、大分市内で開いた金融経済懇談会で、日銀が金融正常化に踏み切った際の経済への悪影響は比較的少ないとの見方を示し、「状況をよく見極めて出口のタイミングや進め方を適切に判断する」と述べた。他の委員の物価・賃上げ動向への評価が前向きに変わりつつあるなか、市場には2024年前半にも日銀がマイナス金利を解除するとの見方がある。 氷見野氏は6日午前の金融経済懇談会で、マイナス金利解除といった出口局面で想定される企業・家計への影響に触れた。家計については「貯蓄超過主体である家計部門は、総じてみれば収支が改善するのではないか」と述べた。 金融機関の経営については「短期的には一定のストレスもありうるが、低金利が続く環境に比べれば金融機関経営はずっと成り立ちやすくなる」と指摘した。企業は「個別には影響は様々」としつつ、「借り入れが多く手元資金が少なかった時代よりは(影響は)限定的」との見方を示した。 異次元緩和の開始以降、日銀副総裁が出口を迎えた際の経済への影響を具体的に示すのは異例だ。氷見野氏は懇談会後の記者会見で「出口ということが起きた場合についても、考えられる点は考えてみようということで申し上げた」とした。 出口の条件となる物価2%目標の達成に向け「好循環が少しずつ起きている。今後さらに強くなっていくことを期待している」と述べた。具体的な判断時期は明言せず、現時点での見極めも「そこまでの判断ができていない」と慎重姿勢を示した。 ただ会見で「それなりにしっかりとした賃上げが来年度も続く可能性はそれなりにある」「(条件が)全部青信号ということはない。どこかで判断することが大事」との持論も示した。 日銀内のムードは徐々に変わりつつある。植田和男総裁は11月に名古屋市で開いた懇談会で、物価目標についての達成の確度が「少しずつ高まってきている」と述べた。 中村豊明審議委員は11月に神戸市で開いた懇談会で「物価上昇を上回る賃金上昇が実現する兆しが現れている」「企業の『稼ぐ力』の強化が進みつつある」と述べた。 中村委員はかねて企業経営への影響を懸念し、政策修正に慎重姿勢を示してきた。7月と10月の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の修正では「企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」として反対票を投じていた。 大規模な金融緩和策の継続を求めるリフレ派の安達誠司委員も11月に松山市で開いた懇談会で「(物価の先行きは)より上振れリスクが高い」「価格競争が優位であったデフレ環境が大きく変わりつつあることを示唆している」との認識を示した。 6月の鹿児島市での懇談会では「長い目でみた場合、下振れリスクの方が大きい」と話していた。今も「まだ出口政策の議論を行う段階にはない」と慎重姿勢を示しながらも、物価への見方は変化しつつある。 日銀は現在、10年に及んだ異次元緩和の総括を進めている。4日に日銀本店で開いた「多角的レビュー」のワークショップで異次元緩和で債券市場の流動性が「総じて悪化した」との報告を出席者に示した。日銀は6日、報告の中身をホームページで公開した。 市場では24年前半にも日銀がマイナス金利を解除するとの観測が広がっており、市場関係者からは「日銀が正常化に向けた地ならしを進めつつある」との声が聞こえる。 日銀は18、19日に金融政策決定会合を控えている。政策委員が外部に意見発信する金融経済懇談会は、今回が現時点で12月会合前の最後の機会となる。副総裁の氷見野氏が正常化に前向きな姿勢を示したことで、市場には政策修正観測がさらに広がる可能性がある。2023/12/07 06:06:35170.名無しさんEZUaD金融政策運営、年末から来年かけ一段とチャレンジングに-日銀総裁https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-07/S59QO5DWX2PS01?srnd=cojp-v2情報管理もきちんと徹底しつつ、丁寧な説明と適切な政策に努めるマイナス金利解除後の金利水準、現時点で決め打ちしたものはない 日本銀行の植田和男総裁は7日、年末から来年にかけて一段と慎重な金融政策運営が求められるとの認識を示した。参院財政金融委員会で答弁した。 植田総裁は4月の就任以降の金融政策運営は、さまざまな不確実性が高い状況の下で「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と語った。その上で、「丁寧な説明、適切な政策に努めていきたい」と語った。 根強いインフレ圧力や賃上げの動きの広がりを背景に市場に早期の政策正常化観測が浮上する中、6日には氷見野良三副総裁が大規模緩和からの出口局面における家計や企業、金融機関への影響に言及したばかり。その翌日の植田総裁の意味深長な発言を受けて、日銀が今月と来月に開催を予定している金融政策決定会合での政策変更を巡る思惑が強まりそうだ。 総裁は国会への半期報告の概要説明で、現時点では物価目標の持続的・安定的な実現を「十分な確度を持って見通せる状況にはなお至っておらず、今後、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要」と指摘。その上で、現在の政策の枠組みの下で「粘り強く金融緩和を継続することで経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく」と語った。 その後の質疑では、「物価目標達成の見通しが立つようになれば、マイナス金利の解除、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)のフレームワークの見直しが視野に入ってくる」と言明。その上で、マイナス金利解除後の金利水準に関しては「現時点でこういう姿であるというふうに決め打ちしたものを、心の中に持ってるというわけでは全くない」と述べた。 日銀は10月会合で、長期金利の1%超えを容認するYCCの運用柔軟化を決めた。2023-25年度の消費者物価見通しも引き上げ、24年度まで3年連続で目標の2%を超える姿となった。他の発言利上げ後の政策金利、当座預金付利かコール翌日物か決めてない当座預金付利使う場合の利上げ、それをゼロや0.1%に引き上げる当座預金の3層構造、利上げの場合どうするかさまざまな選択肢利上げ後の短期政策金利、当座預金付利もコール翌日物も可能関連記事氷見野日銀副総裁が出口の影響に言及、金利上昇のメリットも地銀がマイナス金利解除を要望、日銀がレビューで意見聴取-関係者東京消費者物価2カ月ぶり鈍化、予想下回る-日銀正常化観測後退も政策対応は「拙速よりも慎重に」、緩和修正に時間-中村日銀委員マイナス金利解除議論は尚早、賃上げ見極め来年度-安達日銀委員2023/12/07 12:05:39171.名無しさん2U0Kz日銀12月会合ライブ、正副総裁発言でマイナス金利解除観測が再燃https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-07/S59SGHT0G1KW01OISが織り込む12月のマイナス金利解除の確率は一時40%強に上昇氷見野副総裁の講演は「出口に向けた地ならし」と岡三証・長谷川氏 日本銀行の植田和男総裁と氷見野良三副総裁の発言を受けて、沈静化しつつあった早期のマイナス金利解除観測に再び火が付いた。市場関係者からは、日銀が18、19日に開く金融政策決定会合が政策変更の可能性が意識される「ライブ」な会合に変わったとの声も出ている。 氷見野日銀副総裁が出口の影響に言及、金利上昇のメリットも 氷見野副総裁の6日の講演を受けて、金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は7日、12月会合でのマイナス金利解除(0.1%の利上げ)の確率を一時40%強まで織り込んだ。 30年債入札が不調、テールは過去最大-金利先高観測で生保慎重 大和証券の川原竜馬シニアストラテジストと佐藤一哉ストラテジストは7日付のリポートで、氷見野副総裁の講演は比較的タカ派と受け止められ、市場は12月会合で政策変更がなされる可能性まで一部織り込み始めたようだと指摘。12月会合は「ライブなものへと変化した」と記した。 植田総裁は7日の国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言。正副総裁発言を受けて政策変更を巡る思惑が強まり、長期金利は昨年12月以来となる10ベーシスポイント(bp)超の大幅上昇となり、同日行われた30年債入札は大きいほど不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)が過去最大となるなど不調に終わった。金融政策運営、年末から来年かけ一段とチャレンジングに-日銀総裁 植田総裁はその後、首相官邸で岸田文雄首相と会談。賃金が物価に波及するかどうかなどを点検していきたいと首相に伝えたと語った。 8月以来となる両者の会談を受けて、ドル・円はロンドン時間7日午前に一時1ドル=145円を割り込んだ。145円割れは9月1日以来。レバレッジドファンドがドルをショート、日銀総裁と岸田首相会談受け 日銀は多角的レビューの一環として、過去25年間に実施してきた非伝統的金融政策に関する特別調査を行ったり、異次元緩和の効果と副作用を議論するワークショップを開催するなど、出口に向けた準備を進めている。市場関係者の間では、米国の利下げ前倒し観測の高まりがかえってマイナス金利解除を早める可能性が意識されている。利下げ観測が米欧で台頭、世界の債券相場上昇加速-FRBもECBも「良い出口は可能」 氷見野副総裁は6日の講演で、将来金融政策が出口を迎えた場合の家計や企業、金融機関への影響を詳しく論じた上で、「出口を良い結果につなげることは十分可能だろう」と結論づけた。岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジストは、家計全体で見れば金利上昇はプラスとの評価を丁寧に伝えることで「出口に向けた地ならしを行った」と受け止める。 米国では景気減速を受けて利下げ観測が強まっている。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、利下げが始まると複数回になる可能性が高く、日銀にとっては時間の経過とともにマイナス金利解除後の追加利上げのハードルが高くなっていくと指摘。このため、マイナス金利解除は早いタイミングでやっておきたいという方向に傾きやすく、「来年1月や3月の解除も十分あり得る」とみる。 パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長も「1月であれば米利上げも利下げもないので日銀にとってもやりやすいはずだ」と述べ、早ければ年明けにマイナス金利の解除があると予想している。2023/12/08 05:01:32172.名無しさん2U0Kz株、日銀修正観測で遠のく年初来高値 銀行などには買いか2023/12/08 08:07 日経速報ニュース 7日夕から急激に進んだ円高・ドル安を嫌気するかたちで、きょうの東京株式市場では輸出関連を中心に幅広い銘柄に売りが先行しそうだ。日経平均株価は7月に付けた年初来高値(3万3753円)が一段と遠のくだろう。 日本時間8日早朝の大阪取引所の夜間取引で日経平均先物の2024年3月物は前日の清算値と比べ500円安い3万2360円で終えた。日経平均先物(中心限月ベース)の年初来高値は11月20日に付けた3万3870円。そこから約1500円低い水準まで一気に落とされる格好だ。 「日銀が12月にも金融政策を正常化するとか。その場合の市場へのインパクトを証券会社の債券売買部門にヒアリングしている」――。7日夜の東京市場では不穏な噂が飛び交い、円高・ドル安が一気に進んだ。その流れは米国にも波及し、7日のニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場が一時1ドル=141円台後半と、8月以来4カ月ぶりの円高・ドル安水準を付けた。ロスカット(損失覚悟)の円買い・ドル売りが強まり、夜間取引の日経先物にもヘッジ目的の売りが膨らんだ。 今週に入ってからの日銀の植田和男総裁、氷見野良三副総裁の一連の発言を受け、モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフ・エコノミストは7日付のリポートで「24年1月のマイナス金利政策の解除を基本ケース、12月会合での解除をリスクシナリオとする見方を維持する」と指摘した。「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」との植田総裁の7日の参院財政金融委員会での発言に対し、「これまでの日銀見通しと整合的」との見方を示し、12月会合は「(最後まで結果が分からない)ライブ」になると予想する。12月会合での解除の可能性は2~3割、1月会合までに解除される確率は8割と指摘した。 日銀の政策修正観測の高まりを受けて、きょうの東京市場で買われるセクターの代表は銀行を中心とした金融株となりそうだ。金利上昇に伴う利ざや改善期待から機械的に銀行株には買いが入りやすい。7日の米株式市場ではみずほFGや三菱UFJ、三井住友FGの米預託証券(ADR)が軒並み3%強上昇。野村も上昇した。 日銀の政策修正観測を受けて、国内債券市場では長期金利が上昇基調を強める可能性が高い。株式市場では信託銀行の動きに関心が高まる。日本取引所グループが公表する投資部門別売買動向では年金基金の売買動向を映すとされる信託銀行は11月第5週(11月27~12月1日)まで2週連続で買い越し。現物と株価指数先物の合計で4000億円の買い越しだった。日本株相場が年初来高値圏にあったなかでの、信託の買い越しに違和感を覚える市場参加者が多かった。 11月は欧米の債券相場が大きく上昇(金利は低下)し、「持ち高に占める外国債券のウエートの急上昇を受け、国内年金が外債を売り、国内株を買った可能性がある」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)。日銀の政策修正で国内債券が大きく値崩れした場合、年金勢は再び国内株売りに転じそうだ。2023/12/08 09:54:18173.名無しさん5HbsK日銀、緩和出口へ地ならし課題 慣れぬ対話に危うさも2023/12/11 05:00 日経速報ニュース 日銀は18?19日に金融政策決定会合を開く。市場ではマイナス金利政策の解除観測も浮上するが、緩和方向のこれまでの政策変更と違い17年ぶりの利上げを意味し経済全体に影響が及ぶ。日銀はサプライズ路線から丁寧に地ならしを進める対話重視にかじを切ろうとしているが、不慣れな対話が市場の過剰反応を招く危うさもはらむ。 封印解けた「出口論」 「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」。植田和男総裁が7日の参院財政金融委員会でこう発言すると、「12月会合でのマイナス金利解除もありうる」と受け止めた金融市場は鋭く反応した。同日朝に1ドル=147円台だった円相場は141円台まで急伸。日経平均株価も大幅に下落した。 ある日銀関係者は「時期に触れたことで臆測を招いた」としつつ、「政策的なものを意図した発言ではなかっただろう。市場との対話の難しさが改めて分かった」とこぼす。ただ、「結果として円安が是正され、やや低くなりすぎた長期金利も底上げされた。政策運営はやりやすくなった」と見る向きもある。 「家計部門は、総じてみれば収支が改善する。低金利が続く環境に比べれば銀行経営はずっと成り立ちやすくなる」。6日にも氷見野良三副総裁の大分市での講演が市場にさざ波を広げていた。金融緩和の「出口」の影響を前向きに評価したうえで、「タイミングや進め方を適切に判断する」と語った。 黒田東彦前総裁の体制下では時期尚早として封印し続けていた緩和の出口への言及が増えている。インフレ率は3年連続で目標とする2%を超える見通しで、持続力を左右する賃金も「物価上昇を上回る上昇が実現する兆しがあらわれている」(中村豊明審議委員)ためだ。 日銀が利上げしたのは2007年2月に政策金利を0.25%から0.5%に引き上げたのが最後で、それ以降はひたすら緩和方向の政策修正だった。株式市場が好感し、金利も押し下げる緩和は基本的にサプライズで実施した方が効果的とされる。このため日銀は16年1月のマイナス金利の導入決定を含めてサプライズ路線に傾倒してきた。 日銀は植田総裁体制下で2度、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を修正したが、あくまで「粘り強く緩和を続けるための措置」だった。対照的にマイナス金利解除は「0.1%の利上げ」(内田真一副総裁)で、長期緩和の出口を意味する。 このため、解除を決める会合前に日銀が「事前予告」するとの見方も市場で浮上している。サプライズで実施すると市場にとどまらず、経済全体に思わぬ混乱を招く可能性があるためだ。こうした声は日銀内にもあり、ある日銀関係者は「100%市場に織り込ませた上で実施するだろう」みる。2023/12/11 06:21:51174.名無しさん5HbsK 米欧中銀は利上げは事前予告 海外では引き締め方向の政策修正は事前に織り込ませるのが一般的で、米欧の主要中銀も利上げ局面の開始に先立って利上げを事前予告してきた。 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は22年1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「(次回の22年)3月会合で利上げに適切な条件が整うと想定している」と予告し、実際に3月会合で利上げに踏み切った。金融先物市場も利上げを100%織り込んでいた。 欧州中央銀行(ECB)も6月の理事会後の声明文で次の7月の理事会で「主要金利を0.25%引き上げるつもりだ」と明記し、7月に予告を上回る0.5%の利上げを決めた。 政策金利を上げ下げしてきたFRBは3カ月ごとに政策金利水準の見通しも示し、市場が金融政策の先行きを占えるようにしている。日銀も3カ月ごとに経済・物価情勢の展望(展望リポート)で物価見通しを示しているが、具体的な政策の方向性を示すものではない。 長期緩和を続けてきた間、出口の議論を封じ込んだ結果で、対話の手段はもっぱら総裁の記者会見や国会答弁、講演などがメインになる。言葉は「チャレンジング発言」のように、意図せぬ反応を招くリスクと背中合わせでもある。 今回会合で布石も もっとも、植田氏の発言後も12月会合での解除を見込む声は多くない。「出口政策の議論を行う段階にはない」(安達誠司審議委員)、「修正にはもう少し時間がかかる」(中村委員)。11月下旬に記者会見した2人の審議委員も年内を含む早期解除に否定的な見解を示していた。ただ、無風とは限らない。 市場には12月に解除を事前予告し、政策金利の先行き指針(フォワードガイダンス)を同時に修正するとの見方もある。指針にある「必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」との文言を削除し、緩和方向に傾く指針を中立に戻して将来の引き締めへ布石を打つとの見立てだ。 日銀内からは「指針は今年4月に修正したばかりで、政策変更がないのに指針を先に変える必要はない」「総裁発言で市場はすでに将来の引き締めを意識している」との声も漏れる。 BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「日銀も米欧同様、予見性の高い政策運営を意識するようになっている。事前予告する可能性は高い」と話す。17年ぶりの政策転換に向けて植田総裁のコミュニケーション力が試されることになる。 (小野沢健一)【関連記事】・「超円安」に転機、日米金融政策が変化 経済構造なお弱く・「円を買い遅れるな」円一時141円台 日銀が逆回転誘発・日銀総裁、年末から来年「一段とチャレンジング」2023/12/11 06:23:02175.名無しさん5HbsK長期金利一時0.8%に 日銀の政策修正観測で上昇続く2023/12/11 14:00 日経速報ニュース 国内債券市場で長期金利の上昇(債券価格は下落)が続いている。指標となる新発10年物国債の利回りは一時、前週末比0.03%高の0.8%をつけた。このまま取引を終えれば、3営業日連続の上昇となる。日銀による早期の政策修正観測が浮上し、国内金利に上昇圧力がかかっている。 長期金利は6日、一時0.62%と8月中旬以来およそ4カ月ぶりの低水準をつけていた。前週半ばには米利上げ打ち止め観測から米長期金利が低下し、国内にも債券買いが波及していた。そこからわずか3営業日で0.18%上昇した形だ。 東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「市場の焦点は米金利動向から日銀の金融政策に移りつつある」と指摘する。前週後半以降、植田和男総裁の発言などを背景に日銀による早期のマイナス金利解除への思惑が広がっている。 RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの債券部門最高投資責任者、マーク・ダウディング氏は「日銀は3四半期にわたってインフレ見通しを上方修正している。日銀による金融政策の正常化は不可欠だ」と話す。 円相場は円高の動きに歯止めがかかっている。前週は1日に5円以上の大幅な円高が進む場面があった。11日の東京外国為替市場は円高基調から一転し、一時1ドル=145円台後半と前週末から70銭ほど円安方向に振れた。 SMBC信託銀行の二宮圭子シニアFXマーケットアナリストは「為替相場は先週、急速に日銀の政策修正を織り込んだ」と指摘したうえで、さらなる円買いの動きは出にくくなっているとみていた。【関連記事】・日銀、緩和出口どう地ならし 慣れぬ対話に危うさも・円の乱気流、まだ入り口 「2006年型ドル高」再来も2023/12/11 14:35:58176.名無しさん1xTsWマイナス金利解除、日銀は今月急ぐ必要ほとんどないとの認識-関係者https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-11/S5HJJ3T0AFB400日銀は賃金と物価の好循環実現に向けた確証得られていない-関係者経済・物価情勢や市場動向などを直前まで見極めた上で決定-関係者 日本銀行は、賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていないため、マイナス金利やイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識だ。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。 これは、日銀が18、19日に開く金融政策決定会合では、金融政策の正常化が見送られる可能性が高いことを示している。関係者によると、賃金の堅調な伸びがデータで確認されるまで待つコストはそれほど高くないとみているという。 日銀はマイナス金利などの解除の条件である2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況には依然として至っていないとみている。焦点となる来年の賃上げへの期待感は高まりつつあるが、十分な確証は得られておらず、賃金と物価の好循環の実現をなお見極める必要があるとの声が日銀内に多いとしている。 13日公表の12月の企業短期経済観測調査(短観)を含め、経済・物価情勢や市場動向などを直前まで見極めた上で政策対応の必要性を判断するという。日銀は前回の10月会合で、長期金利の1%超えを容認するYCCの運用柔軟化を決めた。市場では早ければ今月の会合でマイナス金利が解除されるとの観測が広がっている。 金融政策運営を巡っては、植田和男総裁が7日の国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことなどを受けて、市場で早期の正常化観測が急速に強まっている。関係者によると、植田総裁の発言は単なる一般的な見解に過ぎず、差し迫った政策変更を示唆するものではないという。 ブルーバーグによる報道後、外国為替市場では円が対ドルで一時1%安の146円46銭まで下落した。大阪取引所の夜間取引で日経平均先物は上げ幅を拡大し、一時3万2920円を付けた。日経平均の11日の通常取引終値は3万2791円80銭だった。円が対ドルで1%下落、日銀早期マイナス金利解除観測が後退 ブルームバーグがエコノミスト52人を対象に総裁発言前の1-6日に実施した調査では、日銀が現在マイナス0.1%の短期政策金利を引き上げる時期は、来年4月の会合までの予想が67%となった。最多は4月の50%で、前回の10月会合前の調査の29%から大きく上昇。次いで来年1月が15%となったが、今月会合で解除するとの予想はなかった。関連記事植田発言受けた日銀の早期修正を織り込む市場は行き過ぎ-早川元理事日銀マイナス金利の早期解除観測強まる、来年4月まで7割-調査金融政策運営、年末から来年かけ一段とチャレンジングに-日銀総裁氷見野日銀副総裁が出口の影響に言及、金利上昇のメリットも地銀がマイナス金利解除を要望、日銀がレビューで意見聴取-関係者2023/12/12 05:29:42177.名無しさん1xTsW植田総裁の決断は近い…1ドル130円台の「円高反転」、日本株を左右する「大転換」へ!日銀「12・19会合」に備えよ!https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/cd1433a6596aa39c7b2ad3156677814b280651e32023/12/12 09:53:56178.名無しさん1xTsW近づく日銀のマイナス金利解除 投資家の備え本格化2023/12/12 13:35 日経速報ニュース 金融市場で日銀のマイナス金利解除を見据えた取引が盛り上がりを見せている。日銀の正副総裁による直近の発言が政策修正に向けた「地ならし」と受け止められているためだ。固定金利と変動金利を交換する金利スワップ市場では前週から短期金利の上昇に備える動きが目立ち、市場参加者が「厳戒態勢」にあることを映し出している。 日銀の植田和男総裁が7日に「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言し、氷見野良三副総裁は6日の講演で金融緩和の「出口」が経済に与える影響について触れた。いずれも正常化に向けた「重要なシグナル」ととらえる声は多い。大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストはマイナス金利解除の時期の予想を来年4月から来年1月に変更した。 日銀のマイナス金利解除が早まるとの思惑に対し、即座に反応したのがロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の後継指標である東京ターム物リスク・フリー・レート(TORF)だ。TORFは無担保コール翌日物金利を基準とする金利スワップである翌日物金利スワップ(OIS)の取引データに基づいて求める。OIS市場で実際に約定があったり、ブローカーが取引成立を前提にレートを提示したりした場合に限り算出する。 取引開始から終了までが3カ月間のTORFは11月末時点でマイナス0.01%だったが、6日にプラス圏へ浮上し、8日には0.02%台と2021年4月の公表開始後の最高水準まで一気に上昇した。ある国内金融機関の担当者は「OIS市場では7日から8日にかけて、固定金利払い・変動金利受けの取引が急増した」と明かす。日銀総裁の発言を手掛かりに、マイナス金利解除時に利益が得られる持ち高を積み上げる動きが優勢となり、3カ月物TORFの上昇に寄与した可能性が高い。 短期金利の上昇に身構える様子は、金融派生商品(デリバティブ)の決済を保証する日本証券クリアリング機構(JSCC)のデータにも表れる。JSCCが公表する金利スワップの債務負担残高(想定元本ベース、期間2年以下)は7日に11兆1214億円と18年10月以来の高水準だった。12年の金利スワップの清算開始以降でみても3番目の大きさという。マイナス金利解除は近いと嗅ぎ取った市場参加者が大規模な取引に動いたと考えられる。 TORFの変化をつぶさにみると、金融機関が日銀の正常化に向けて着々と準備を進めてきた姿も浮かび上がる。TORFはOISの取引データに基づき算出するため、適切なデータがない場合は前日値を採用する。実際に算出があった日の割合の変化は「(OIS市場における)取引活動の活発さの変化を示す」(QUICKベンチマークスの太田孝治統括役)といえるわけだ。 3カ月物TORFの算出日数をみると、10月が10営業日だったのに対し11月は15営業日に増えた。日銀が10月30?31日の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用をさらに柔軟化し「着実に出口に近づいている」(国内証券のエコノミスト)との受け止めが広がるなかで、金融機関はマイナス金利解除観測が本格化する前に金利上昇の回避(ヘッジ)に動いていたと推察される。12月の算出実績は11日時点で7営業日中6日にのぼり、備えは足元でさらに活発化する。 日経QUICKニュースが日銀ウオッチャーに実施した調査では、日銀が24年末までに何らかの政策修正をするとの予想が26人と全体の92%を占め、修正内容は「マイナス金利解除」が24人(複数回答可)で最多だった。そのうち6人は「24年1?3月」を予想する。債券市場では金融政策の影響を受けやすい短期債の購入に慎重な投資家が増えているとの指摘もある。マイナス金利解除後の波乱を見据えた行動は着実に進んでいるようにみえる。2023/12/12 14:23:47179.名無しさんSnsQ0全銀協会長、日銀は今後の賃金・物価動向を見極める重要な局面にいるhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-14/S5NRI2T0G1KW00 全国銀行協会の加藤勝彦会長(みずほ銀行頭取)は14日の記者会見で、日本銀行の金融政策に関連して、マイナス金利解除は「経済のプラス・マイナス要因を見極めて判断するものと理解している」とし、「日銀は今後の賃金、物価動向を見極める重要な局面にいる」との認識を示した。 加藤氏は、足元の個人消費の動向について、「物価高による節約志向もあるが、インバウンドがけん引している」と分析。来年も「しっかりした賃上げが続くと思われ個人消費は増加する」と見込んでいる。日本経済は「今年より弱いながらも、引き続き回復基調が続く」との見通しを示した。 日銀は10月の金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を再柔軟化し長期金利の1%超えを容認した。10年国債利回りは11月に一時0.974%まで上昇したが、足元では0.6%台で推移している。次回の決定会合は今月18日、19日に開かれる予定。 加藤氏は金利上昇見込みの中、「銀行の個人預金の重要性が高まる」とも指摘。「金利がある世界では顧客がより高い金利を求める動きも予想される」と述べた。日銀の植田和男総裁については「粘り強い金融緩和政策を継続している」とし、「大きな混乱なく金融政策を運営している」と評価した。 政権中枢を含めた自民党幹部の裏金疑惑で揺れる岸田文雄政権については、「政治の信頼回復で安定した政権基盤を構築してもらい、日本経済のさらなる成長のため、引き続き政策の実行に努めてもらいたい」と語った。関連記事:マイナス金利解除、日銀は今月急ぐ必要ほとんどないとの認識-関係者植田発言受けた日銀の早期修正を織り込む市場は行き過ぎ-早川元理事地銀がマイナス金利解除を要望、日銀がレビューで意見聴取-関係者2023/12/15 05:36:58180.名無しさんSnsQ0日銀、賃金・物価情勢点検へ マイナス金利解除になお見極め必要か[東京 14日 ロイター] - 日銀は18、19日に開く金融政策決定会合で、2%物価目標の達成に向け、足元の経済情勢や賃金と物価の状況について議論する。12月日銀短観が強い結果になるなど、好材料が出てきているものの、中小企業を含む賃上げ動向はまだ不透明で、マイナス金利解除に必要な賃金上昇を伴うかたちでの持続的・安定的な物価上昇が実現するかは、なお見極めが必要な情勢とみられる。<企業部門は堅調、消費下振れに警戒感>12月日銀短観は大企業・製造業、非製造業の業況判断DIが市場予想を上回って改善した もっと見る 。価格転嫁の浸透で中小企業の景況感も改善、収益や設備投資計画も強く、企業部門の強さを確認する内容になった。一方、日銀では個人消費の先行きを懸念する声が出ている。7―9月期の実質国内総生産(GDP)2次速報は1次速報から下方修正され、前期比0.7%減となったが、個人消費の弱さが響いた。物価高が続く中、消費抑制傾向が一段と強まれば企業の価格転嫁の足かせになりかねない。日銀では、消費が腰折れする懸念はないとの声が出ているものの、リスク要因として警戒されている。11月の東京都区部消費者物価指数では生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が前年同月比プラス2.3%となり、昨年7月以来の低い伸び率となったが、日銀では輸入物価上昇による物価上昇圧力がはく落しているためであり、日銀の想定した通りの推移だとの声が多い。<物価目標実現へ、十分な材料そろわず>物価目標達成の観点からは、物価上昇の要因が輸入物価から賃上げにバトンタッチされ、賃金・物価の好循環が実現するかがポイントになる。日銀では、好調な企業収益や人手不足を受け、来年の春闘で相応の賃上げ率が実現することへの期待が強い。ただ、中小企業の多くはまだ対応を決めかねているという。一方、サービス価格の上昇については、宿泊料が中心で、人件費のサービス価格への転嫁に広がりは出ていないとの声が根強い。日銀は会合直前まで情報を収集し、情勢を見極める。値上げの動きが中小企業に波及するなど、物価目標達成へ前向きな動きは維持されているものの、今回は賃金・物価の好循環の確度が一段と高まる十分な材料が得られておらず、マイナス金利やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の解除には至らない公算が大きい。<植田総裁の会合後の記者会見が焦点>植田和男総裁が7日の国会で「年末から来年にかけ一段とチャレンジングになるというようにも思っている」と述べ もっと見る 、早期のマイナス金利解除観測が浮上したが、日銀では金融政策の先行きを市場に織り込ませる意図はなかったとの見方が出ている。市場ではその後も早期解除観測がくすぶり、13日までの米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受け、これまでの想定より早期にマイナス金利が解除されるとの見方が浮上。今回の会合でフォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)が修正されるとの予想もある。日銀では、12月会合の声明文でフォワードガイダンスを変更することで、マイナス金利解除のタイミングが迫っていることを示す可能性は低いとの指摘が出ている。一方、決定会合後の記者会見で、植田総裁が先行きの政策修正について何らかの示唆をする可能性があり、市場の注目を集めそうだ。2023/12/15 05:46:41181.名無しさんBrqCX日銀総裁が触れた0%・0.1%・0.25% 利上げのヒントに-編集委員 清水功哉2023/12/16 04:00 日経速報ニュース マイナス金利政策を解除したあとの政策についても、日銀が手の内を明らかにし始めた――。そんな印象を受けた出来事があった。植田和男総裁が7日の参院で、解除後の政策の枠組みに関して具体的な金利水準を例に挙げながら話したのだ。 同日の参院での総裁発言について、市場では「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」という部分が解除時期を示唆したものとして高い関心を集め、相場変動の要因にもなった。だが、筆者にとっては、マイナス金利終了後について語った部分の方がはるかに興味深かった。 総裁は「決め打ちしたものを心の中に持っているわけでは全くない」とクギは刺していたものの、ある日銀OBも「新たな政策作りの検討が内部で進んでいる様子だ」と感想を漏らしていた。 植田総裁は何について語ったのか。整理すると①マイナス金利を終えた後、政策金利(金融政策運営で操作対象とする短期金利)として何を採用するか②政策金利の水準を当初どうするか③それを上げていく際の幅はどの程度か――である。 マイナス金利後、付利か翌日物金利で政策運営 まず、マイナス金利終了後の政策金利に関して、植田総裁はこう語った(以下総裁の発言は趣旨が変わらない範囲で要約した)。「例えば現在のように日銀当座預金の付利を政策金利にしてそれを変えていくのか、あるいはコール市場の翌日物金利を昔のように政策金利として動かしていくのか、様々なオプションがとりあえず2つある」 政策金利の候補は日銀当座預金の付利(超過準備に適用する金利)と無担保コール翌日物金利(借りた翌営業日に返す極めて短い資金の金利で、代表的な短期金利)の2つと考えていいだろう。日銀内でもそういう声を聞く。 もちろん、植田総裁も説明した通り「仮に翌日物金利を政策金利にしたとしても、それを上げていくためには、付利も上げていかないといけないので、どちらをとるかでそれほど大きな相違があるわけではない」のも事実。本質的に重要なのは、新たな政策のもと、長短金利の曲線(イールドカーブ)の起点として重みを持つ翌日物金利がどうなるかだ。 ちなみに、植田総裁の発言通り、今のマイナス金利政策のもとでは付利が政策金利になってきた。ただ付利はマイナス0.1%、0%、0.1%の3層構造になっており、そのうち政策金利になったのは最も低いマイナス0.1%(政策金利残高の適用金利)である。この仕組みのもと、翌日物金利はマイナス0.1?0%程度とマイナス圏を中心に推移してきたのだ。2023/12/16 06:35:18182.名無しさんBrqCX当初の政策金利に関して0%と0.1%に言及 マイナス金利政策を終えた後、日銀は翌日物金利の脱マイナス化を促すはずだ。では、どれくらい浮上するのか。その点を左右する要素のひとつが当初の政策金利の水準であるが、植田総裁はこう述べた。「仮にマイナス金利解除をするとして、(政策金利が)その後0%に行くのか0.1%に行くのかはその時の経済金融情勢次第だ」 解除後の政策金利が付利と翌日物金利のどちらになるにしても、0%と0.1%が重要な数字として意識されている様子だ。ということは、翌日物金利についても、下限0%、上限0.1%というおおよそのイメージを持っているのだろう。そのレンジ内で比較的大きめの変動をするのか、あるいは下限か上限に近い水準での小動きとなるのかは政策の設計次第である。 付利が政策金利になる場合を考えてみよう。付利を0%と0.1%の2層構造(この場合、0%が政策金利になりそうだ)にするか、0%あるいは0.1%に一本化するかの選択肢がありうるが、前者の方が金利の変動を大きめにする仕組みを作りやすそうだ。 同じことは翌日物金利を政策金利に採用し、その誘導目標を示すケースにもいえる。0%あるいは0.1%を目標にするより、0?0.1%程度といった幅を持たせた形にした方が金利は動きやすい。 市場では、日銀が市場機能を重視し、一定の金利変動と取引を促す仕組みを選ぶとの見方が多いが、最終的には経済・物価・金融情勢に基づく政策判断になる。 0.25%幅でのオーソドックスな利上げか では、マイナス金利をやめた後、政策金利をどんな幅で引き上げていくのか。植田総裁の言葉はこうだった。「どれくらいのスピードで0.25%、0.5%に上がっていくのかはその時の経済金融情勢次第だ」。利上げのペースはともかく、1回当たりの上げ幅自体はオーソドックスな0.25%を想定している様子だ。混乱回避のため、もっと細かい刻みにするとの観測もあったが、その可能性は低いように見える。 以上、植田総裁の発言をヒントに、マイナス金利解除以降の利上げのイメージについて考えてみた。今の市場では解除の時期に大きな関心が集まっているが、それ以降の金利の動きがどうなるかも経済や市場にとって重い意味を持つ。今後も日銀の情報発信に注意を払っていきたい。2023/12/16 06:36:28183.名無しさんBrqCX日本国債「猫の目相場」 長期金利変動幅1年ぶり水準 日銀思惑と海外要因が衝突2023/12/16 日本経済新聞 朝刊 長期金利の値動きが激しくなっている。日中の値動きの大きさは約1年ぶりの水準まで拡大した。日銀の緩和修正観測を背景にした金利上昇(債券価格は下落)の圧力と、欧米金利急低下の余波がぶつかっているためだ。日銀が国債を吸収し取引が薄いことも根底にある。金利の乱高下で投資家は売買に慎重になっており、国債や社債発行にも影響が及びつつある。 長期金利の指標となる新発10年債利回りは15日、一時、前日比0.05%上昇し0.705%を付けた。18~19日の日銀金融政策決定会合を控えた持ち高調整の動きとみられる。14日には米連邦公開市場委員会(FOMC)後の米金利低下が波及し、前日比0.06%低下する場面があった。猫の目のような日替わりの荒い動きが続いている。 新発10年債利回りの日中の最高と最低の差(25日平均)を調べたところ、15日時点では0.03%と、日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)における金利の変動幅拡大に踏み切った直後の1月以来およそ1年ぶりの大きさとなっている。差が大きいほど日中の値動きが大きいことを示す。 乱高下の主因は米国など海外金利の低下と日銀の金融引き締め観測をめぐる思惑の綱引きだ。 11月以降、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が高まって海外金利が大きく低下し、債券買いの流れが日本にも波及する日が増えた。国内市場では「(日銀の緩和修正観測を背景に)金利上昇警戒に傾いていた中で金利低下が進み、売り持ちをしていた投資家は買い戻しを迫られた」(JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長)。持ち高解消による国債買いが金利低下に弾みをつけている。 一方、7日には植田和男総裁の「チャレンジングになる」との発言を受けて、長期金利は前日比0.105%上昇した。1日の上昇幅としては1年ぶりの規模だった。日銀の引き締め観測が高まると、金利が急上昇しやすい。 日銀による大量の国債保有が乱高下の原因との指摘もある。日銀は市場から国債を買い入れており、11月末時点での新発10年債(372回債)の保有比率は61%に達した。市場での流通量が減少し、金利が上下に振れやすくなっている。 日銀はこれまでの金融緩和を検証する「多角的レビュー」のワークショップで、日銀の保有比率が5割を超えると市場での売値と買値の差が拡大し、7割を超えると取引高が減るとの分析を示した。22年に発行した10年債は日銀の保有が8~9割を占める銘柄もある。 東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「日銀による国債の大量保有は、材料が少ない相場では市場に安定をもたらす一方で、トレンドが生じれば値動きを増幅させる」と警戒を強める。 海外金利低下の波及による金利低下は国債発行に影響し、12月の国債入札は「不調な結果」が続いている。7日の30年債入札では大きいほど低調な入札とされる落札価格の平均と最低の差(テール)が2007年以降で過去最大だった。5日の10年債や14日の20年債入札でも急低下した利回りに投資家の需要が集まらなかった。 日銀の動きを見据えて金利に先高観があるのに、海外の影響で金利が下がってしまうと発行市場でも流通市場でも投資家の買い意欲は低下してしまう。 社債の発行市場にも影を落とす。国内証券の起債担当者は「社債の条件決定では0.01%上げるか下げるかで何時間も議論しているのに、国債利回りの変動が大きすぎて無駄になってしまう」とこぼす。社債の利回りを決めても、そこから発行までの間に国債利回りが大きく上がってしまえば社債の投資妙味は薄れる。「金利が乱高下している状況では投資家からの買い注文も入りにくく、これが続けば企業の発行計画も影響を受けかねない」(同)という。 金利の乱高下を受けて、投資家は売買を手控えている。太陽生命保険の清友美貴運用企画部長は「金利変動が大きい状況ではどうしても手が出しにくい。マイナス金利解除で金利が上昇する可能性があるなかでは、あえて今買う必要はない」と慎重な姿勢だ。 投資家が売買を控えれば、一段と流動性が低下し、市場の値動きが荒くなる可能性もある。市場は次の日銀の動向に神経をとがらせており、長期金利の激しい値動きには注意が必要だ。2023/12/16 06:39:02184.名無しさんBrqCX株、海外勢先回り買いか――日銀会合、現状維持見込む(スクランブル)2023/12/16 日本経済新聞 朝刊 日本株に再び海外投資家の買い出動機運が出ている。14日の米株式市場で半導体株指数が過去最高値を更新したのを受け、15日の日経平均株価は反発し284円高となった。日銀が18~19日の金融政策決定会合を現状維持ならば、海外投資家が再び日本株買いに動きやすくなる。個人投資家の株式買い意欲も高まる可能性がある。 15日は東京エレクトロンやアドバンテスト、信越化学工業など半導体関連が上昇。円高進行を嫌気して前日まで3日続落していたトヨタ自動車とホンダはともに反発した。 14日の米株式市場ではダウ工業株30種平均が前日に続き過去最高値を更新した。ダウ平均は2013年以降、11年連続で毎年、最高値を更新。「バイ・アンド・ホールド(買い持ち)」の有効性を改めて裏づける。 同日は主要な半導体株で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が前日比2・7%高の4097と6日続伸。2年ぶりに過去最高値を更新した。 SOXは米株式市場に上場する半導体関連30銘柄で構成。生成AI(人工知能)向け需要の取り込み期待から株価が年初来で3倍強となったエヌビディアや半導体製造装置で世界最大手のアプライドマテリアルズ(AMAT)、半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などだ。SOXが最高値を更新したことで、投資家心理は強気に傾く。 日本では米株人気が高まる一方だ。国内公募の追加型株式投資信託の中で最大規模を誇る「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」。米S&P500種株価指数との連動を目指すインデックス型だ。 純資産総額は14日時点で2兆9401億円。昨年末で1兆5980億円だった。24年からの新しい少額投資非課税制度(NISA)でも人気をさらに高めるとみられる。 「18~19日の日銀会合での現状維持を見込んだ先回り買いが入った可能性もある」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)。日経QUICKニュース社(NQN)が実施した金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」28人を対象としたアンケート調査では、27人が同会合で大規模な金融緩和策の維持を決めると答えた。 7日に植田和男日銀総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言。「すわ、マイナス金利政策の解除か」との思惑が強まり、12月第1週(4~8日)の日経平均は週間で1123円(3・4%)下落。同週に海外勢は現物で5868億円の売り越しだった。 野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは植田総裁の発言を受けて「日銀の動向に敏感である海外勢が12月会合への警戒を高めた」と分析する。 前のめり気味に日銀の「金融引き締め」を材料視して売った分、現状維持なら買いが戻りやすい。野村の池田氏も「4月や10月会合後のように、節目の会合を乗り切ると日本買いに動きやすい傾向がある」との見方を示す。日銀の動きは読めない部分があるが、株式市場では12月会合でのマイナス金利政策の解除は時期尚早との見方が多い。 米主要株価指数のように、日経平均も12月に年初来高値を更新し、有終の美を飾れるか――。日銀の現状維持で海外勢の買いが戻れば、その可能性は残されている。2023/12/16 06:41:38185.名無しさん1ub6R日銀、緩和出口へ布石打つか 物価と賃金の好循環見極め-日銀決定会合5つのポイント2023/12/17 05:00 日経速報ニュース 日銀は18?19日に金融政策決定会合を開く。米利上げが事実上終わり、円安基調が転機にさしかかるなか、物価と賃金上昇の好循環は持続力が試される局面に入る。市場ではマイナス金利政策の早期解除への思惑もくすぶる。日銀は何を議論し、どんな結論を出すのか。5つのポイントから読み解く。 ①マイナス金利解除はあるか? 最大の焦点は日銀が2016年1月に導入を決めたマイナス金利政策を解除するかどうかだ。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正と違い「0.1%の利上げ」(内田真一副総裁)で、異次元緩和の出口を意味する。 氷見野良三副総裁は6日の講演で「出口」が家計や企業へ与える影響を前向きに評価し、市場ではマイナス金利解除に向けた地ならしとの受け止めが広がった。植田和男総裁が7日の参院財政金融委員会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことや、同日の岸田文雄首相との面会が一時的に早期解除への思惑に拍車をかけた。 もっとも市場では今回の決定会合でのマイナス金利解除を見込む声は少ない。日銀関係者も「企業が賃上げすることに自信を持っているが、確認はしたい」と話す。賃金が上がり、価格転嫁されて物価も持続的に上がる好循環が続くことをどう見極めるかが焦点だ。 YCCの運用の方向性も焦点だ。日銀は10月会合を含めて過去3回、YCCの運用を柔軟化した。マイナス金利解除の際に「長期金利の急上昇を抑えるツールを持っていたほうが望ましい」(日銀関係者)が、市場は撤廃も織り込み始めている。 ②金融政策の先行きへの言及は 日銀関係者は「利上げに関してはサプライズはないほうがいい」との見方を示す。YCC修正では、事前に織り込まれれば投機筋が一斉に債券を売り浴びせて長期金利が急騰する懸念があるため、一定のサプライズはやむを得なかった。 一方、明確な利上げとなるマイナス金利解除をサプライズで実施すれば経済全体に混乱を招く可能性がある。米欧の主要中銀も利上げ局面の開始前には「事前予告」してきた。 今回の会合でマイナス金利解除を見送った場合、植田総裁が記者会見で今後の政策の方向性についてどこまで言及するかに市場の関心は集中している。仮に年明けの1月会合以降の可能性を探っていれば、なんらかの布石を打つ可能性があるためだ。 ③「賃金と物価の好循環」への評価は 13日の企業短期経済観測調査(短観)では景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業で3期連続で上昇し、中小企業を含め幅広い業種で改善した。人手不足感は9月短観より強まり、財務省の法人企業統計によると7?9月期の企業の経常利益は同四半期として過去最高を更新した。賃上げにつながりやすい環境は整っている。 政府・与党は企業の賃上げを税制で後押しする方針で、2024年の春季労使交渉も徐々に熱を帯びてきた。ただし、インフレを考慮した実質賃金の前年同月比の上昇率は19カ月連続でマイナス圏にとどまったままだ。 10月の毎月勤労統計調査によると、1人あたりの実質賃金は前年同月比2.3%減った。名目賃金は情報通信業や金融業・保険業では5%前後の高い伸び率を示しており、賃上げが幅広い業種に波及するかが重要だ。2023/12/17 07:50:39186.名無しさん1ub6R ④海外リスクと円相場の動きは 重要な論点になるのが米金融政策の転換に伴う影響だ。米連邦準備理事会(FRB)は12?13日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続で利上げを見送った。参加者の政策金利予想では、24年中に3回分の利下げを想定し、22年3月から続けてきた利上げは事実上、終結した。 市場では早期利下げ観測が強まり、14日の東京外国為替相場では前日から5円ほど円高・ドル安が進み、一時1ドル=140円台後半まで急伸した。 24年に世界の中央銀行は利下げ局面に入る。日米金利差が縮小すれば円高・ドル安の力が働く。「超円安」から引き締め局面に入るため「円高への振れをそこまで憂慮せずに正常化ができる」(日銀関係者)との見方はあるが、円安で押し上げられてきた物価には下押し圧力がかかる。 米景気の動向も懸念材料だ。米銀の融資は急減速している。米景気が減速すれば「輸出入などを通じて日本経済にも悪影響を及ぼし、利上げは困難になる」(別の関係者)とみる向きが多い。このため米経済に暗雲が垂れこめる前に日銀が動くとみる向きもあるが、拙速との批判を招くリスクと背中合わせになる。 ⑤政治の混迷の影響は 自民党派閥の政治資金問題を受けた政治の混迷は金融政策に影響するのか。政治との距離は日銀にとっていつも悩みの種だが、金融正常化を探る日銀にとって最大の関心事は物価と賃金上昇の好循環が続くかどうか。もっと言えば、正常化に動いた後の景気の腰折れリスクと責任論だ。一連の問題が重要な要素になることはなさそうだ。 金融市場がほぼ無関心なことも大きい。シティグループ証券の阪上亮太株式ストラテジストは「海外投資家からこの問題への問い合わせは意外とない」と話しており、ロンドンの機関投資家も「政権交代につながらないなら興味はない」と材料視していない。実際、14日の日経平均株価は政治の混迷と関係なく上昇した。 国内の賃上げと物価の好循環の持続性、海外景気の先行きと不確実な要素が多いなかで、日銀は年内最後の決定会合を迎える。【関連記事】・21日から日銀会合 一段の政策修正、市場は見送りの見方・日銀とFRB、今週決定会合 「次の一手」への距離焦点2023/12/17 07:52:21187.名無しさん6e2AT日銀、物価・賃上げの持続力見極め 午後に植田総裁会見2023/12/19 05:00 日経速報ニュース 日銀は19日の金融政策決定会合で賃上げや物価の持続力を見極める。市場でマイナス金利政策を早期に解除するとの観測がくすぶるなか、日銀は経済の実態や先行きを分析して金融政策を修正する必要があるかを議論する。植田和男総裁は午後に記者会見して決定内容を説明する。 市場では早期に金融政策を正常化するとの観測が広がる。氷見野良三副総裁は6日の講演で、金融緩和からの出口が家計や企業へ与える影響を前向きに評価した。7日には植田総裁が国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことも正常化への思惑に拍車をかけた。 具体的にはマイナス金利政策の解除や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃が浮上している。 日銀は2016年1月にマイナス金利政策を導入した。今年7月と10月に実施したYCCの柔軟化と違い、マイナス金利の解除は「0.1%の利上げ」(内田真一副総裁)との位置づけだ。マイナス金利を解除すれば、為替や債券市場だけでなく、貸出金利の引き上げが予想されるため、とりわけ影響が大きい。 政策修正の必要性を判断する材料となるのが賃上げだ。24年の春季労使交渉を前に複数の企業が賃上げを表明した。ただ、交渉が本格化する前の今会合でのマイナス金利解除を見込む市場の声は現時点では少ない。日銀内でも「賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていない」との声が出ている。 総務省が発表した11月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年同月比で2.3%の上昇だった。伸びは2カ月ぶりに縮小し、22年7月(2.3%上昇)に並ぶ16カ月ぶりの低い水準だった。原材料高を起点とする物価上昇が鈍る一方、サービス分野に値上げの裾野が広がっており、物価上昇の持続力を見極める。 植田総裁が記者会見で金融政策の先行きにどう言及するかも焦点だ。マイナス金利解除をサプライズで実施すれば、経済全体に混乱を招く可能性がある。米欧の主要中銀も利上げ局面の開始前には、事前に予告してきた。 米連邦準備理事会(FRB)は12?13日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続で利上げを見送った。今後、米景気の減速を背景に利下げを実施すれば、貿易を通じて日本経済に悪影響を及ぼす可能性がある。海外の中央銀行や景気の動向も重要な論点となる。2023/12/19 06:58:14188.名無しさん6e2AT日銀が大規模緩和の維持を決定、先行きの金融政策指針も変更せずhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-19/S3AHXJT0AFB400?srnd=cojp-v22023/12/19 12:08:39189.名無しさん6e2AT日銀会合後の円安再び、正常化の「布石」見当たらず2023/12/19 14:28 日経速報ニュース 日銀は19日まで開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を維持した。会合後に明らかになった公表文では来年の政策正常化を見据えた「布石」も見当たらず、マイナス金利が早期に解除されるとの思惑はやや後退。外国為替市場では円売り・ドル買いが加速し、会合後に円安・ドル高が進む見慣れた景色が広がっている。 日銀は19日、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)やマイナス金利政策の修正を見送った。会合結果が公表されると、東京市場では円相場が1ドル=142円60銭台から143円台に急落。その後は一時143円78銭近辺まで売られ、前日17時時点と比べて1円40銭の円安・ドル高水準をつけた。 日銀が修正を見送ったのは現在続ける大規模緩和だけではない。公表文では、物価上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を維持する「オーバーシュート型コミットメント」や「必要があれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」との文言も維持した。 いわゆるフォワードガイダンス(政策の先行き指針)がそのまま残る形で、来年の政策正常化に向けた手がかりはない。公表文が政策正常化に対して「ゼロ回答」となったことで、市場では「1月のマイナス金利政策の撤廃はないのではないか」(国内銀行のストラテジスト)などとしてマイナス金利解除は「4月が濃厚」との説が増え始めた。 会合後の円安進行という構図は今回も大きく変わっていない。だが、会合直後に143円台後半まで売られた円は次第に143円台半ばまで持ち直すなど下値を探る動きも鈍い。IG証券の石川順一シニアマーケットアナリストは円相場を下支えする一因として足元で144円程度に位置する10日移動平均を挙げる。 11月中旬に151円台後半と今年の最安値をつけた円相場は、その後はチャート上では10日移動平均が下支えする形で水準を切り上げてきた。10日移動平均に沿って進む円高・ドル安は「短期的なトレンドとしてはドルの弱さを示唆している」(石川氏)といい米連邦準備理事会(FRB)の利下げ転換がテーマとなる外為市場では円に売りが出たとしても、ドルが反発する姿を描きづらいことが相場を支えている。 市場の関心は19日午後に予定される植田和男総裁の記者会見に移る。三菱UFJ信託銀行の酒井基成資金為替部マーケット営業課課長は「物価と賃金上昇の好循環に対する見解に変化がみられるかが注目」だとし、発言次第で円が再び142円を超える可能性があるとみる。日銀正常化の影がちらつき、米利下げ転換が視野に入る現状では、10日移動平均というテクニカル分析面の下値を割り込めない円相場が引き続き底堅く推移する場面は増えそうだ。2023/12/19 14:44:38190.名無しさん6e2AT日銀、マイナス金利解除の「地ならし」せず 修正時期の決め打ち回避2023/12/19 19:09 日経速報ニュース 日銀は19日まで開いた金融政策決定会合で、大規模緩和の維持を決めた。植田和男総裁は記者会見で「物価安定の目標を十分な確度を持って見通せる状態にはまだ至っていない」と語り、賃金と物価の好循環が強まるかどうか見極める必要があると強調した。来年1月にマイナス金利解除といった政策修正に踏み切るなら「今回何らかのメッセージを発信するはず」との予想もあったが、「地ならし」には動かず決め打ちを避けた。 12月に入り、植田総裁や氷見野良三副総裁の発言を手掛かりに早期のマイナス金利解除観測が高まっていた。特に、事前に通知した時点で売りが膨らみかねない長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正とは異なり、「利上げで波風を立てないよう、事前に織り込ませる」(国内証券のエコノミスト)との見方は根強かった。そのため2024年1月会合でのマイナス金利解除を念頭に置いているなら「今会合で政策修正の示唆があるはず」(同)との予想もあり、会見の注目度は高かった。 植田総裁は19日の記者会見で、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現に向けた距離感について、「基調的な物価上昇率が2025年度にかけて目標に向けて徐々に高まる確度は少しずつ高まってきている」との見方を示した。賃上げの原資となる企業業績は良好で、来年の春季労使交渉(春闘)について労使双方が前向きな姿勢で臨む姿勢が垣間見える。賃金と密接に関連するサービス価格が緩やかに上昇しているのも前向きな点という。 もっとも植田総裁は懸念材料も挙げた。企業へのヒアリング情報を踏まえると、先行き不透明感から来年度の賃上げ方針を固められていない企業があるほか、中小企業では人件費の上昇分の価格転嫁は容易ではないとの声もあると指摘。「賃金と物価の好循環が強まるか、なお見極める必要がある」と慎重な構えも崩さなかった。 植田総裁は「(目標達成への)確度は少し上がっているが、(好循環の実現に向けた)閾値(いきち)に達するまでに様々なデータや情報を見たい」とこれまでと同様の発言を繰り返し、まだ材料がそろっていないとの認識を示した。24年1月会合までに得られる情報量についても「ある程度入ってくるが、そこまで多くない」と指摘。さらに「賃金と物価の好循環が実現するか、もう少し情報をみたいというのが現在の政策委員メンバーの大勢だ」と紹介するなど、マイナス金利解除の議論が盛り上がっている様子はみられなかった。 植田総裁が強調したのは日々更新されるデータやヒアリング情報に基づいて政策判断するスタンスだ。「データや情報が連続的に入ってくるので、(どの期間までみれば十分かどうか)前もって分かりにくい」と具体的な期間には触れない。毎会合での判断とすることで、政策運営の「フリーハンド」を手に入れることを念頭に置いたコミュニケーションとも受け取れる。 2%の物価安定の持続的・安定的な目標の達成が「もう一回だめになってしまう可能性を低める選択をできればいいと思っている」として、目標実現の芽を摘んでしまうことは避けたいとの考えをにじませる場面もあった。政策正常化の思惑が完全に消えることはなさそうだが、淡々と記者会見した植田総裁の姿勢から、前のめりな織り込みは一服するかもしれない。2023/12/19 21:32:53191.名無しさんUCxoD日銀、出口の思惑打ち消す深謀 「超円安」収束で余裕-編集委員 大塚節雄2023/12/20 05:00 日経速報ニュース 日銀の今年最後の大仕事は、市場で高まった金融緩和策の早期正常化を巡る思惑を打ち消すことだった。植田和男総裁が国会で放った「チャレンジング」発言で市場が先走ったが、植田氏は政策的な意図を否定した。日銀と市場の間で「2024年前半」を軸に、緩和の出口までの距離感を共有できる素地がおおよそ整ってきた。これ以上、焦って市場をたきつける必要がないと考えた可能性が高い。 主に米国側の要因で「超円安」が解消されつつあり、日銀に余裕が生まれたことも見逃せない。日銀は判断の誤りが許されない重要な局面で賃金上昇の持続性をじっくり見極める「熟柿(じゅくし)作戦」に入る構えだ。だが、市場は生き物。円安がぶり返す兆しもみえる。内外の経済情勢も移ろいやすい。その余裕は最後まで続くだろうか。 「チャレンジング発言」、真意は政策意図なし 19日に終えた年内最後の定例の金融政策決定会合は、事実上の「ゼロ回答」だった。早期の出口へのヒントを待っていた市場参加者は肩すかしに終わったに違いない。さすがに今回の会合でマイナス金利の解除を決めると見込んだ向きは少なかったが、「日銀は公表文の内容変更や会合後の記者会見での植田氏の発言で、早ければ来年1月の次回会合での解除を示唆するのではないか」との見方もくすぶっていた。 フタを開けてみると、緩和策の維持は当然としても、公表文の情勢判断もほとんど変わらず。「必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」などの緩和方針を示すフォワードガイダンス(先行き指針)も、手つかずだった。 それなら、と市場関係者は植田氏の会見に耳をそばだてたが、目立ったタカ派のメッセージはなし。市場を騒がせた7日の国会での「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」との発言に関し、植田氏は「今後の仕事の取り組み姿勢一般について問われた」としたうえで「(総裁就任)2年目にかかるところなので、一段と気を引き締めて、というつもり」だったと説明し、政策的な意図をすげなく否定した。 新藤義孝経済財政・再生相が担当大臣として自ら会合の2日目途中から出席したことから、市場の一部では「早期解除を思いとどまるよう圧力をかけたのではないか」との思惑まで出た。 だが、そもそも日銀としてこれ以上、出口に前のめりな姿勢をとる必要がなかったというのが実態に近いだろう。なぜか。歴史的な緩和解除を試みるうえで最も重要なのは、市場にしっかりと織り込ませて準備を促し、波乱を回避することだ。その点、市場は出口を十分に想定しつつあるといえる。 短期金融市場は会合初日の18日時点で来年1月のマイナス金利の解除を見込み、秋ごろまでに利上げをすませる姿となっていた。もはや市場をせかす必要は薄い。こう判断してもおかしくはない。今回のゼロ回答を受けて多少、織り込みは後退したとみられるが、来年4月のマイナス金利解除の思惑は引き続き強い。2023/12/20 06:10:13192.名無しさんUCxoD 円安で追い込まれ市場の織り込み促す 日銀は最近まで、マイナス金利解除を市場に織り込ませようと焦っていた。話は7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を柔軟化して長期金利の上昇を許容したころにさかのぼる。その直後、内田真一副総裁らが市場を安定させようと「緩和を長持ちさせるための措置でありマイナス金利の解除は遠い」と受け取れる説明に力を入れた。 これが効きすぎ、市場では「解除は来年の春季労使交渉(春闘)の結果を十分に見極めてから」との見方が浸透した。 ちょうどそのころ、円安が再燃する。主に米国のしつこいインフレ圧力と強い経済を受けた反応ではあったが、日銀に対しても「財務省や官邸サイドから円安進行を食い止めるよう強い要請があった」と、政府と日銀の関係に詳しい金融関係者は明かす。 10月のYCC再修正は名目上、7月に続く緩和を長持ちさせる微調整の位置づけだったが、YCCの骨抜きという出口に向けた布石の性格が格段に強まっていた。それでも円安は止まらず、日銀は厳しい立場に追い込まれた。円安は物価高に拍車をかけるだけに、日銀の緩和路線そのものに批判の矛先が向きつつあったからだ。 そして12月。氷見野良三副総裁が6日の講演で、マイナス金利を解除した際に各経済主体に見込まれる影響を詳しく語り、「出口を良い結果につなげることは十分可能だ」と踏み込んだ。すでに円安は峠を越えていたものの、準備は円安にさいなまれていたさなかに進めていた可能性も高い。 ここに植田氏による7日のチャレンジング発言が重なる。あまりに絶妙なタイミングだが、公式説明は、出口論とは無縁の「市場の誤解」。仮にそれが事実だとしても、結果的にみて、市場の出口織り込みの決め手になったのは確かだ。 状況次第では植田氏が市場の思惑を強く否定しない手もあっただろう。否定したのは事実に即した説明をしたいという植田氏の思いもあろうが、単に超円安が収束し、市場の思惑を引きつけておく必要がなくなっていたからかもしれない。 13日に終えた米連邦公開市場委員会(FOMC)後に米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ論が台頭し、市場環境が一変したからだ。 繰り返す「もう少し」 近い未来の出口に手応えも 国内の物価情勢を巡っても、日銀の苦しい立場には変化の兆しがみえる。植田氏は今回の会見で、海外発の物価上昇圧力が起点となった「第1の力」がピークアウトしつつある点を繰り返す一方、サービス価格の上昇継続を賃金と物価の好循環を支える「第2の力」が強まる兆候だとして注視する姿勢を示した。 「好循環が実現するかどうか、もう少し情報を見たいなというのが、現在の政策委員会メンバーの大勢」「(目標達成の)確度は少し上がってきているが、(解除条件が一気に整う境界線である)閾値(いきち)に達するまでには、もう少しデータや様々な情報を見たい」。植田氏の発言をつぶさに確認すると、「もう少し見たい」という言いぶりが目立った。 慎重な物言いに交じり目立たなかったが、近い未来の出口に向けて手応えをつかみつつある様子がわかる。 市場を味方につけ、自然体で出口の是非を見極められるのなら、日銀にとって理想的な状況ともいえる。だが、今回のゼロ回答で外国為替市場では円安がぶり返す兆しもみえる。円安が本格的に再燃すれば日銀は再び厳しい立場に置かれ、最悪の場合、賃金と物価の好循環を確認できぬまま、出口に踏み出さざるを得なくなるリスクも否定できない。 米国に目を転じても、FRB高官らに市場の急激な利下げ織り込みに懸念を示す声が増え始めた。なにより、米利下げがFRBの軟着陸論に反して景気の腰折れによって実現するようなら、日銀も出口どころの話ではなくなる。きたる2024年、物価安定という悲願が波乱なく達成できるのか。まだ何の保証もない。2023/12/20 06:12:32193.名無しさんt1jupコラム:サービス価格上昇に注目した植田総裁、4月政策修正に3つのリスク[東京 20日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は19日の会見で、マイナス金利解除の時期や具体的な要件について言質を与えず、市場の警戒感は大幅に後退した。だが、植田総裁は物価目標達成への確度は少しずつ高まっているとも指摘。注目材料の一つとしてサービス価格の上昇を挙げた。来年の春闘で大幅な賃上げが実現できれば、物価高で伸び悩む動きも見える消費などにも好影響が出るとした。マイナス金利解除への条件が整いつつあることもにじませた。筆者は来年1月解除の可能性は低下したものの、4月解除の可能性は相応にあるとみている。ただ、米利下げの時期や裏金問題で揺れる政局が大幅に混乱した場合は、4月以降に先送りされる波乱要因も残されていると指摘したい。<低下した1月政策修正の可能性>マイナス金利の早期解除の可能性が後退したとみて、20日の東京市場は株高・円安・債券高で反応した。確かに植田総裁は「物価と賃金の好循環については、なお見極めていく必要がある」「(好循環の確度は)総合判断にならざるを得ない」と述べて、慎重に見極める姿勢を示すとともに、いつごろに何を見て判断するかについて明確な言及を避けた。さらに来年1月会合でのマイナス金利解除の可能性については「1月会合までの新しい情報次第にならざるを得ないが、新しいデータはそんなに多くない」とも述べた。1月会合での解除の可能性を全く否定しているわけではないものの、筆者は可能性が大幅に低下したと感じた。<着実に上昇するサービス価格>だが、植田総裁は「目標達成への確度は少しずつ高まっている」と述べつつ、マイナス金利解除への条件が次第に整いつつある現象にも言及した。その一つがサービス価格の上昇。植田総裁は「第2の力は、サービス価格が緩やかに上昇していること等から判断して、少しずつ上昇が継続しているとみている」と指摘した。第2の力とは、物価を押し上げる要因のうち、賃金と物価の好循環を示す部分を指し、日銀が注視している動きだ。10月全国消費者物価指数(CPI)をみると、サービス価格の実勢に近い「持ち家の帰属家賃を除くサービス」は前年比3.1%まで上昇。一般サービスも同2.9%の上昇だった。1年前は1%付近かそれ以下の水準だったことを考えると、サービス価格の上昇は持続性が出てきた可能性がある。また、植田総裁は労働需給の引き締まりや企業収益の拡大にも触れたが、12月日銀短観における雇用人員判断の大幅な不足や高水準になっている売上高経常利益率の来年度計画をみても把握できる状況となっている。さらに実質賃金がマイナスのままでマイナス金利解除の可能性があるのかとの質問に対し、植田総裁は「先行き賃金上昇が続き、インフレ率が低下を続けて実質賃金が好転する見通しが立つのであれば、足元の状況は必ずしもマイナス金利解除の障害にならない」と答えた。他方、植田総裁は「先行きの不確実性が高く、来年の賃上げを固められない先も多い。価格設定行動でも、中小企業などから販売価格転嫁は容易でないとの声もある」と指摘した。こうした発言を総合して判断すると、3月中旬に出る大手製造業の一斉回答の結果などを待って、4月25、26日の金融政策決定会合でマイナス金利解除を決める可能性があると予想する。<米利下げと円高>ただ、このシナリオには三つのリスクがある。一つは米利下げの可能性だ。植田総裁は、米利下げが予想される際は「米国の供給サイドが改善する中で、物価上昇率が低下し続け、所得と支出の好循環でソフトランディング期待もある。それ自体は日本にプラスの影響ある」「各国独自の情勢を踏まえ、日銀としても適切な政策運営をしていく」と述べ、日銀の金融政策の制約要因にはならないとの見解を示した。2023/12/21 05:35:16194.名無しさんt1jupだが、市場が日米金利差の縮小を円高要因としてみているため、米利下げが始まると、その動きを先取りするように円高方向へのシフトが急速に進む可能性がある。そこに日銀のマイナス金利政策解除が加わると、さらに円高が進むとの懸念も生じやすい。もし、3月に米利下げが開始されると、4月の日銀会合前に円高が進む可能性も捨てきれず、日銀が政策変更を先送りする要因の一つにはなり得ると考える。<外需の暗雲と10―12月期GDP>二つ目は、日本の輸出企業の動向に陰りが見え、来年2月に公表予定の2023年10─12月期の国内総生産(GDP)が前期比マイナスになるリスクだ。20日公表の11月貿易収支では、輸出が前年比マイナス0.2%と小幅に落ち込んだが、数量ベースでは同マイナス5.6%と落ち込みが目立った。特に欧州連合(EU)向けは同マイナス11.8%、中国向けが同マイナス7.5%と振るわなかった。このまま輸出不振が継続した場合、10─12月期GDPがマイナスになる可能性もあり、直近のGDPの落ち込みは、日銀の判断に大きな影響を与える可能性がある。<政局大混乱の波紋>三つ目は政局の大混乱だ。東京地検特捜部が自民党の清和政策研究会(安倍派)と志帥会(二階派)の事務所に強制捜査に入り、裏金問題が大疑獄事件に発展しかねない情勢となっており、内閣支持率が急低下している岸田文雄首相の前途にも暗雲が垂れ込めている。仮に来年3月末の2024年度予算案の成立を契機に、自民党内で「人心一新」の声が高まった場合、岸田首相の進退が極まる可能性もゼロとは言い切れない。そうした政局の大混乱時には、日銀が事態を静観するということが予想され、マイナス金利解除の決断は先送りされることもあり得ると筆者は考える。来年の上半期は、日米金融政策の動向と日本の政局の行方が複雑に絡み合いながら、大きなうねりを生じさせる「大転換」の局面を迎える可能性がありそうだ。2023/12/21 05:36:33195.名無しさん3TYFF企業向けサービス価格、上昇続く 4カ月連続2%台 日銀、政策判断で重視 物価高をけん引2023/12/27 日本経済新聞 朝刊 日銀が金融政策の修正判断で重視するサービス価格の上昇が続いている。26日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は4カ月連続で2%台の上昇率を維持した。消費者物価指数(CPI)の伸びは鈍っているが、モノからサービスに物価上昇のけん引役が移っている。 企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともにCPIの先行指標とされる。 日銀によると、11月のサービス価格指数は前年同月比2.3%上昇した。特に上昇が目立ったのは宿泊サービスだ。インバウンド(訪日外国人)など人流の回復で前年同月比51.8%上がった。 道路旅客輸送(6.9%)、土木建築サービス(5.7%)、情報通信(2.4%)といった分野で人件費転嫁による値上げの動きもみられている。調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは108品目、下落は22品目だった。 一方、CPIの伸びは鈍りつつある。総務省が22日公表した11月のCPI(生鮮食品除く)は2.5%上昇と10月(2.9%)より鈍化した。日銀が発表した11月のCPIの基調的な動きを示す「刈り込み平均値」の伸びも2.7%と10月(3.0%)から鈍った。 ただ、11月のCPIからサービス関連の品目だけ集めた伸び率をみると、2.3%と10月(2.1%)から拡大した。原材料高に起因するモノの価格上昇が落ち着く一方、サービス関連は今も安定して伸びている。 「企業の価格設定スタンスや様々な物価指数の動向、特にサービス価格の動向等をみていきたい」。日銀の植田和男総裁は19日の記者会見で「賃金と物価の好循環」を見極めるうえで重視する指標としてサービス価格の重要性を強調した。 金融市場では2024年前半に日銀がマイナス金利政策を解除するとの見方が強い。日銀は春季労使交渉だけでなく、人件費転嫁といった動きを反映しやすいサービス価格の動きなども見極めた上で金融正常化のタイミングを判断する意向だ。2023/12/27 06:08:18196.名無しさん3TYFF円下落、日銀の慎重さ再認識 実質金利の脱マイナス遠く2023/12/27 11:11 日経速報ニュース 「日銀は相変わらず腰が重そうだ」。27日の東京外国為替市場で円相場は下落し、1ドル=142円台後半を中心とする動きとなっている。日銀が同日朝に発表した12月18?19日開催分の金融政策決定会合の主な意見から、政策正常化を急がない日銀の姿勢が浮き彫りとなって円売りが出た。日銀の正常化がスムーズに進むとの前提だった24年の円高シナリオの雲行きは怪しくなってきた。 主な意見で最も注目されたのが「現在、慌てて利上げしないとビハインド・ザ・カーブになってしまう状況にはなく、少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない」との意見だ。金融市場にくすぶっていた年明け1月のマイナス金利解除観測を打ち消す内容と受け止められた。 今月の決定会合の結果は、今後の日銀の政策姿勢を示唆するものではなかった。植田和男総裁は会合前、国会答弁で来年にかけての業務に関して「チャレンジングになる」と述べていたが、会合後の記者会見ではその真意について「一般的な取り組み姿勢」とはぐらかした。 市場の一部では「チャレンジングというからにはデータ次第で1月の政策修正もあり得るはずだ」との声が残っていた。しかし、きょう明らかになった主な意見で「春まで待っても遅くない」と明記されてしまっては、こうした見方は後退せざるを得ない。 市場参加者の関心は、名目金利から物価上昇率を差し引いた「実質金利」の先行きにも向かっている。実質金利は日本の居住者がより高い利回りを求めて海外に資金を移動する動機づけになる。 22日発表の11月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除いた総合指数が前年同月比2.5%上昇だった。伸びは10月から鈍っているが実質金利は低いままだ。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は今月発表したリポートで、日本の実質金利の低さに改めて焦点をあてている。トルコが急ピッチで利上げしても実質金利のマイナスを脱却できないためにリラ安に歯止めがかからないのを引き合いに出して「日銀がマイナス金利を解除しても実質金利はまだマイナスで、大幅な円高要因にはなりにくい」とまとめた。日本とトルコは貿易収支が赤字で、放って置いても通貨安の圧力を受ける点も共通している。 日本の実質金利をプラスに引き上げるにはかなりのハイペースで利上げを続けなければならない。それは無理だろう――。欧米勢が年初に向けて日銀の政策をテーマに円買いを仕掛ける可能性はほぼなくなった。今後は視線を米国に戻し、24年の円高予想のもう一つの軸となる米国の利下げの可能性を占ううえで重要な米経済指標をゆっくりと見極めていくことになりそうだ。2023/12/27 11:41:40197.名無しさんCVlUq来年のマイナス金利解除、可能性はゼロでない=NHKインタビューで日銀総裁[27日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁はNHKのインタビューで、来年にマイナス金利が解除される可能性が「結論的にはゼロではない」と述べた。経済・物価情勢が好転して賃金・物価の好循環が見通せる状況が来年訪れることに期待感を示した。インタビューは26日に行われ、27日に放映された。もっとも、植田総裁は、マイナス金利解除が来年1月なのかについては否定的な見方を示した。1月には支店長会議が開かれ、地方の中小企業の賃上げや価格転嫁の状況についてどのような報告がなされるかが焦点。植田総裁は1月の支店長会議で賃金・物価でかなりの情報が得られる可能性は「今のところそんなに高いとは思っていない」と述べた。植田総裁は賃金・物価の好循環の下での2%インフレの実現について「まだもうひとつ自信が持てない」と述べた。物価が2%をオーバーして際限なく上がっていくリスクは高くなく、「焦っているという気持ちはない」とし、非常に近い将来にデフレに戻るリスクは「非常に低い」と語った。<賃金・物価の好循環、判断基準示す>日銀が注視する賃金と物価の好循環について、植田総裁は具体的な判断基準を示した。来年の春闘については「今年の春と同じか、それを少し上回るくらいの賃上げが決定されると望ましい」と述べた。来年3月には集中回答日があるが「特定のイベントで何か全部決まるというわけではないが、それも含めて大事なイベントはきちんと情報を確認していきたい」と語った。政策委員の中には中小企業の賃上げまで見極める必要があるとの意見が出ているが、植田総裁は中小企業の賃金データがまだ出ていなくても「企業収益などが非常に強く、賃金が期待できるという情勢であれば1つの大きな判断材料になる」と述べた。賃金上昇分のサービス価格への転嫁を巡っては、12月の金融政策決定会合で「企業からは引き続き難しいという声が多く聞かれる」との意見が出ていた もっと見る 。植田総裁は、今年上がった賃金が今年から来年にかけてどの程度サービス価格に反映されるか見たいと述べた。日銀が来年マイナス金利を解除すれば、2007年以来17年ぶりの利上げになる。植田総裁は将来的な金融政策の転換の際には「一部現状のままで行くという部分もあるかもしれないが、それも含めて全体を見直すという作業はしたい」と話した。2023/12/28 05:39:36198.名無しさん7GLfK日銀マイナス解除「4月まで」9割近くに QUICK債券調査2024/01/04 14:52 日経速報ニュース QUICKが4日に公表した2023年12月の債券月次調査によると、日銀がマイナス金利を解除する時期の予想で「24年4月」との回答が111人中68人と61%を占めた。次いで1月(21人)、3月(9人)が多く「4月までに解除」を合計すると88%に達した。調査は昨年12月26?28日に証券会社や銀行などの債券市場関係者を対象に実施した。 調査対象は異なるが、昨年12月18日に公表のQUICKの外為月次調査では、マイナス金利解除の予想時期は「24年4?6月」が43%と最多で「1?3月」が36%だった。日銀の金融政策決定会合前の調査で「年内」との回答も6%あった。今回の債券月次調査では「24年5、6月」との予想が5人おり、「6月まで」を合計すると93%に達する。外為月次調査における85%よりも高い。 1日に発生した能登半島地震により、金融市場では「日銀は経済的な影響を見極めるため、政策修正を急がない」との見方も出ている。債券月次調査の回答時期は地震発生前のため「1月にも解除」との予想が後退するなど、市場の見方は変わっている可能性もある。 1カ月後(24年1月末時点)の新発10年債利回りの見通しは、単純平均で0.699%だった。前回調査における23年12月末予想(0.775%)から低下した。2024/01/04 14:56:17199.名無しさん7GLfK日銀利上げの年、長期金利の上昇限定か FRBが壁に2024/01/04 14:46 日経速報ニュース 2024年は日銀が18年ぶりの利上げに動きそうだ。短期の政策金利のマイナス解除という利上げは長期金利に上昇圧力をかけるものの、その余地は限られそうだ。18年前の利上げ時を振り返ると、日銀が動いたのは米連邦準備理事会(FRB)が政策を転換し利下げへ向かう端境期だった。今回もFRBは利下げが視野に入っており、政策の方向性の違いが日銀の連続利上げの壁になるとみられる。 日銀は06年7月、ゼロ金利を解除する利上げに踏み切った。政策金利はゼロ%から0.25%に引き上げた。それに先立つ同年3月には量的緩和を解除していた。長期金利は同年5月に2.005%へ上昇した。 7月発表の6月の企業短期経済観測調査(短観)で景況感の改善が確認されると日銀はゼロ金利を解除し、それから7カ月後である07年2月にはさらに政策金利を0.5%へ引き上げた。長期金利は2%をわずかに上回った06年5月がピークとなり、その後は低下へ向かった。債券市場は日銀による継続的な利上げは難しいと見透かしていたのを示唆している。 その背景には米国の景気減速があった。FRBは06年6月の利上げで打ち止め、07年9月に利下げへ転じた。状況は今回も重なってみえる。FRBは昨年7月の利上げを最後に3会合連続で政策金利を据え置いている。金融市場では今年前半にもFRBが利下げを開始するとの予想が広がっている。 米国の金融政策のサイクルを考えると、日銀が異次元緩和からの出口へ一気呵成(かせい)に動けば円相場の急激な変動などを招きかねない。マイナス金利を解除したとしても、その後は慎重な姿勢を保つとの見方が優勢だ。 米国の景気減速は、輸出などを通じて日本経済にも影を落とす。厚生労働省が23年12月22日発表した10月の毎月勤労統計調査(確報値)では、物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比で2.3%減少した。明治安田総合研究所の小玉祐一氏は「マイナス金利の解除後に日銀がさらに金利を上げていくのは難しい」とみる。 みずほ証券の上野泰也氏は「マイナス金利解除後は利上げがないとみる人にとって、長期金利が1%まで上昇(債券価格が下落)すれば投資のチャンスとなるのではないか」と話す。 長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは4日、0.615%となっている。1日に石川県・能登半島で大地震が発生し「日銀は今月にもマイナス金利解除」との観測はさらに後退した。早期解除の観測は「FRBが利下げへ転換すれば日銀が動きづらくなる」との読みが背景にあった。遅かれ早かれ今年中にはマイナス解除との予想はなお優勢ながら、その先を見据えると長期金利の上昇余地はあまり残されていないかもしれない。2024/01/04 14:58:03200.名無しさんafg1d日銀、23年に株式の「売り手」に ETF購入開始後で初-編集委員 清水 功哉2024/01/09 02:00 日経速報ニュース 10年以上にわたり上場投資信託(ETF)を購入し、事実上の株価下支えという異例の取り組みをしてきた日銀が、2023年に株式の売り手に転じたもようだ。暦年ベースで株式の売り手になるのは、10年のETF買い入れ開始後では初めてだ。 23年は、日経平均株価が28%上昇するなど日本の株式市場の環境は良好だった。海外投資家の資金のほか日本企業の自社株買いも株価を支えた。日銀の買い手としての存在感が低下する中、民間マネーが主導する株高が実現したと評価できる。株価の下支えは主要中央銀行は普通手掛けない政策。それが減るなら株価のゆがみも縮小し、市場機能が回復する点で望ましいと言える。 株式の処分が上場投信購入上回る 23年に日銀が株式の売り手に転じたと見られるのは、株式を組み込んだETFの購入が株価安定を背景に大きく減る一方、かつて金融システム安定策の一環として銀行から買い取った株式の売却が着実に進み、差し引き売った株式の方が上回ったと見られるためだ。 それぞれの数字を具体的に見てみよう。 日銀のETF購入は、資産価格の下落圧力を和らげ、市場心理の悪化を防ぐため手掛けてきたもの。異次元金融緩和のもと17?20年には年間4兆?7兆円もの巨額の水準に膨れあがっていた。減少が目立ってきたのは、21年春の政策修正で、株価が大きく下落した日に限定した買い入れに方針転換してからだ。21年以降、年間1兆円を割り込み、23年には約2100億円にとどまった。 一方、日銀が売却した株式は02?04年と09?10年に銀行から購入したもの。金融機関経営を保有株式の価格下落の悪影響から遮断するのが狙いだった。その出口政策(買った株式の処分)を16?25年度の10年計画で進めている。 日銀は計画発表当時3兆円程度あった保有額(時価)をおおむね均等なペースで年3000億円ずつ売ると想定していた。実際、22年度末の保有額は約9600億円と公表されており、25年度末までの3年間で均等に売るなら年約3200億円ずつになる計算。当初の計画とほぼ合っている。年度ベースと若干のズレはありそうだが、23年暦年の売却も3000億円前後だったと見られ、ETFの買い入れ額を上回る。同年中は株価が上昇しており、実際の売却はこれを上回った可能性もある。2024/01/09 13:14:47201.名無しさんafg1d 副作用多い株式市場への介入 ETF買い入れは金融政策(日銀企画局が所管)、銀行保有株買い取りは金融システム安定策(金融機構局が所管)と別々の政策。日銀は同じ次元で論じるべきではないと説明するが、お金に色はないため、前者の購入より後者の売却が多ければ、日銀全体としては株式の売り手になるのも事実だ。 日銀は銀行から買い取った株式の処分を07年にいったん始めたことがあるが、08年の世界的な金融危機を受け中断した経緯がある。10年にETFの買い入れを開始し、株価への関与を本格化させていってから、暦年ベースで株式の売り手になるのは初めて。 23年に日銀が株式の売り手になっても株式市場の環境が良好だったことで、ETF買い入れという政策を続けることの是非も問われそうだ。 この異例の政策は「過去、コロナ危機時に市場心理の悪化を防ぐなど一定の効果は発揮した」(元日銀理事でちばぎん総合研究所社長の前田栄治氏)と評価される。ただし、「株式が買い支えられてしまえば、経営者は企業が抱える本質的な問題点に気付きにくくなるし、個人や機関投資家の資産運用の機会を奪っている面もある」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏)といった副作用を指摘する声も根強かった。 市場の安定続くなら幕引きも もちろん、今後市場が大きく混乱すれば再びETF買い入れが膨らむ可能性は残っているが、日銀は「(市場が大きく不安定化してリスクプレミアムが過度に拡大する)心配がある程度なくなる状態になれば、こういう(ETF買い取りという)やり方をやめていく準備が整うと考えている」(植田和男総裁)としている。 24年には新NISA(少額投資非課税制度)開始により個人の株式投資拡大の可能性も指摘されている。石川県能登半島の地震の経済に及ぼす悪影響が深刻化したり、海外経済混乱などのリスクが顕在化したりせず、「民主導」の株価上昇が一段と本格化するなら、日銀によるETF買い入れ自体の幕引き作業も検討対象になるかもしれない。 ただ、フローでの買い入れをやめても、巨額のETF保有(23年9月末で時価約61兆円)は残る。規模が大きいだけに、保有額を一気に減らそうとすれば市場が混乱するリスクもあるなど、その扱いは課題であり続ける。【関連記事】・日銀悩ます「利上げ後の赤字」 水面下で熱帯びる議論・「日本株再興」揺らぐ2024年 相対優位薄れ実力勝負に2024/01/09 13:15:57202.名無しさんLGVaT日本株高、進んだ脱「日銀頼み」 海外勢23年買越額3兆円2024/01/11 02:00 日経速報ニュース 海外投資家と日本企業の変化が歴史的な株高を生んでいる。企業が資本効率改善を狙って自社株買いに取り組み、その姿勢を評価した海外勢が2023年、2年ぶりに買い越しに転じた。両者の合計買越額は8兆円を超え、日経平均株価を33年ぶりの高値圏に押し上げた。日銀に頼らない株高に向けて個人の動向が焦点となる。 東京証券取引所が10日発表した投資部門別売買動向(東京・名古屋2市場)によると、23年通年に海外投資家は3兆1215億円買い越した。買い越し規模としては安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」初期の13年(15兆円)以来の大きさとなる。企業の自社株買いを映す事業法人の買越額は4兆9012億円だった。 日経平均は10日、終値で1990年3月以来となる3万4000円超えを実現した。22年末比の上昇率は30%を超える。東京証券取引所が旗振り役のPBR(株価純資産倍率)改革に企業が呼応し、海外勢による日本株再評価につながった。日銀の上場投資信託(ETF)買いがほぼ止まった状態で歴史的な株高を実現した意味は大きい。 海外投資家と日銀がアベノミクス以降の日本株相場を左右してきた。まず動いたのは海外勢だ。日銀の大規模金融緩和と為替の円安進行、安倍政権の構造改革に期待が高まる中で、13?14年に合計約16兆円を買い越した。ところが規制緩和や企業の収益力改善は海外勢の期待値に届かず、15年以降は売り越しの年が目立つようになった。 デンソーなど自社株買いが呼び水 海外勢の大量売りを吸収したのが日銀だった。金融緩和効果の強化を狙って始まったETF買い入れは13年以降、累計で35兆円を超えた。新型コロナウイルス禍が直撃した20年に株価下支え効果を発揮したが、一部の日本企業では事実上の筆頭株主に浮上するなど「官製相場」の弊害も指摘され始めた。 23年は脱「日銀頼み」に向けて一歩を踏み出した年といえる。日本企業が成長戦略や株主還元策で競い合い、その優劣を投資家が評価し株価が決まるという本来の姿だ。4月に米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が来日し、世界的に日本企業の取り組みに関心が集まるという「追い風」も吹いた。 実際、海外勢は日本企業の変化を目の当たりにしている。例えば日本を代表する企業群であるトヨタ自動車グループ。部品大手デンソーは持ち合い株の売却に併せて、2000億円規模の自社株買いを発表した。23年に自社株買い計画を公表した上場企業のうち、3割弱は過去5年、全く動きがなかった会社だ。 24年も海外投資家の姿勢が株価を左右する。ゴールドマン・サックス証券によると、世界の株式で運用するアクティブ投資家は依然として日本株の保有を少なめの水準にしている。日本株ストラテジストの建部和礼氏は「買い余力は大きい」と指摘する。日本企業の変化が続けば株高のけん引役となりうる。 個人の新NISA活用も焦点に 焦点は個人投資家だ。23年は通年で2兆9192億円の売り越しとなった。持続的な株高に懐疑的な個人は逆張り志向が強く、高値をつけると売りに回りやすい。もっとも歴史的な株高局面を迎えたわりに売りが少なかったともいえる。アベノミクス相場初期の13年には1年間で9兆円近くを売り越していた。 「バブル崩壊後、含み損を抱えたまま日本株を持ち続けた個人の『処分売り』が一巡した」。東海東京調査センターの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリストはこう分析する。さらに23年の上昇局面で買えなかった個人も多く、売りが出にくかったとみる。 24年1月から少額投資非課税制度(NISA)が拡充された。20?30代は成人後の大半が13年以降の株高局面で、株式投資に前向きな特徴がある。将来の社会保障への不安が高まるなかでNISAなどを活用しながら資産を積み上げている。個人の姿勢が変われば、日本株市場は日銀頼みからの完全脱却に近づく。【関連記事】・日本株、売り手不在で独歩高 「逆張り個人」が買い転換・株、「買う権利」の売買急増 投資家の先高観映す・市場関係者、日経平均3月末「3万3000?3万6400円」・日本株高、再点火も 成長戦略・脱デフレに期待2024/01/11 06:34:22203.名無しさんxJaaR日銀1月会合、「政策維持」でほぼ一致 ウオッチャー調査2024/01/18 11:16 日経速報ニュース 日銀は22?23日に金融政策決定会合を開く。金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」28人を対象に日経QUICKニュース社(NQN)が実施したアンケート調査によると、今回の会合で日銀は大規模な金融緩和策の維持を決めるとの予想でほぼ一致した。マイナス金利政策を解除する時期については4?6月との回答が増えている。 政策維持、賃上げの見極め続く 調査は12?16日に実施し、日銀が1月の会合で政策を「現状維持」すると予想したのは28人中27人だった。焦点は今春の賃上げ動向で、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「1月の支店長会議で今年も賃上げの動きが広がっていることを認めつつ、その程度については不確実性が高いとの見方が示されていた」と指摘。政策正常化に至るには賃金の見極めに時間を要するとみる。 現時点では賃上げに関する情報が不足しているとの指摘は多い。決定会合直後の24日には経団連の労使フォーラムが予定されており「春季労使交渉(春闘)が事実上開始される直前、賃上げ動向について日銀が決め打ちして動くことにはやはり無理がある」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)という。 1日発生した能登半島地震の影響も全容はわかっておらず、三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは1月の会合では「地域金融の流動性支援策などが発表される可能性がある」とみる。一方、調査で「修正あり」と回答した1人は金融政策の先行き指針である「フォワードガイダンス」の見直しだった。 マイナス金利解除時期は後ずれ 調査では前回12月に比べ、マイナス金利政策の解除時期が後ずれするとの予想が増えていることも明らかになった。マイナス金利の解除時期について「4?6月」との回答が23人中18人にのぼり、前回調査(24人中12人)から増加。「1?3月」の予想は2人と前回(6人)から大きく減った。 野村証券の森田京平チーフエコノミストは「(集中回答など)3月の春闘関係イベントで企業の賃金設定、(4月初旬に公表される)3月の日銀の企業短期経済観測調査(短観)で企業の価格設定、4月中旬の日銀支店長会議で中小企業の価格・賃金設定を確認できる」と説明。これらを踏まえて賃金・物価の好循環に一定の進捗が認められれば、日銀はマイナス金利を解除するとみる。 年内に「YCC撤廃」「オーバーシュート型コミットメント見直し」も 24年末までに日銀が何らかの政策修正をするとの予想は28人中25人と全体の約9割を占める。修正内容は「マイナス金利政策の解除」が23人(複数回答可)と最も多い。「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃」は21人で「YCCは既に形骸化し、予想物価上昇率が高まったこともあり撤廃しても実質金利を含めて誘導は可能」(農林中金総研の南武志理事研究員)とみるためだ。 物価上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を維持する「オーバーシュート型コミットメント」の見直しも21人が予想する。伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストはコミットメントがデフレ下を想定したもので「デフレ脱却後にも必要かどうか議論の余地あり」とみていた。2024/01/18 12:54:21204.名無しさん2v0iE公的年金、来年度2.7%増 0.4%分目減り 物価伸びより抑制2024/01/20 日本経済新聞 朝刊 物価や賃金の上昇を受けた2024年度の公的年金額は前年度比で2.7%増額となり、1992年度以来32年ぶりの伸びとなった。年金財政の安定のために支給額を抑える「マクロ経済スライド」により、物価の伸びには届かなかった。同スライドはデフレ下で何度も発動が見送られており、抑制の長期化で将来の給付額が想定より減る懸念が高まっている。 厚生労働省が19日、24年度の支給額を発表した。4、5月分をまとめて支給する6月の受け取り分から適用する。 自営業者らが入る国民年金は40年間保険料を納めた場合、68歳以下の人は1人当たり1750円増の月6万8000円になる。厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯は、6001円増の月23万483円になる。モデル世帯は平均的な収入(賞与を含む月額換算で43万9千円)で40年間働いた夫と専業主婦のケースを指す。 年金額は直近1年間の物価変動率と過去3年度分の実質賃金の変動率をもとに、毎年4月に改定する。23年度は厚生年金で月22万4482円、同年度に67歳以下の人の国民年金で月6万6250円だった。 支給額は2年連続で増えたが物価や賃金の上昇分に届いていない。物価や賃金の伸びよりも支給額を抑えるマクロスライドの影響で、国民年金は実質年3600円ほど、厚生年金では同1万1500円ほど目減りする。 24年度の物価や賃金を反映した改定率は3.1%だった。23年の物価上昇率(3.2%)と20~22年度の名目賃金変動率(3.1%)を考慮し賃金が物価を下回ったため賃金の変動率を採用。そこからマクロスライドによる0.4%分の抑制分を差し引き、最終的な改定率は2.7%となった。 公的年金は現役世代から集めた保険料を高齢者に給付する仕組みのため、少子高齢化が進むと年金財政の維持が難しくなる。このためマクロスライドで支給額を抑えている。だが物価や賃金が下落するデフレ下では発動しないルールのため、2004年に導入されてからの20年間で4回しか発動されていない。 支給額の抑制が想定より遅れると、マクロスライドを発動させる期間が長期化し、将来の給付水準が過度に低下する。特に基礎年金の抑制は現行のままなら、46年度まで続く見通しだ。 この結果、現役男性の平均手取り収入に対する年金額の比率を示す基礎年金の「所得代替率」は、19年度の36.4%から46年度には26.5%と約3割も低下する見通しだ。 25年は5年に1回の年金制度改正の年にあたり、24年中に具体的な改革案が示される。厚労省の審議会では財政に余裕のある厚生年金が基礎年金に資金支援して、給付水準の抑制を前倒しで終了する案が出た。 就労を促進して高齢者の手取り収入を増やす方向の改正も議論されている。一定の所得のある高齢者の年金支給を減額する在職老齢年金制度も見直しを求める声が強い。老後の収入を充実させるために、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)など私的年金の活用促進も重要になる。 ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員はマクロスライドについて「抑制期間の長期化を防ぐために、賃金や物価の下落局面でも毎年スライドを発動させるための議論が必要だ」と指摘する。2024/01/20 07:00:45205.名無しさんyjdGA日本株、日銀会合にらみ上値重く 原油はサウジ減産焦点-今週の市場2024/01/21 04:00 日経速報ニュース 日経平均株価、上値重い展開か 今週の東京株式市場は上値が重い展開となりそうだ。22、23日に日銀の政策決定会合が開催される。能登半島地震の影響でマイナス金利解除の観測は後退しているものの、植田和男総裁の発言内容次第では相場の波乱要因になる可能性もある。 株式相場は急ピッチで上昇してきただけに過熱感が意識されている。先週は節目となる3万6000円を試す展開が続き、週間の上昇幅は386円(1%)にとどまった。午前中に大きく上昇し、午後に弱くなる日が多かった。JPモルガン証券の西原里江チーフ株式ストラテジストは「短期筋が利益確定に動いている。国内外の投資家は上昇ペースの速さに警戒感を強めている」とみる。 日銀の政策修正について、市場ではマイナス金利解除の時期は3月か4月との予想が多い。太陽生命保険の清友美貴運用企画部長は「3月にマイナス金利が解除されると企業業績に悪影響を与える」と警戒していた。 国内長期金利、0.6%台で推移か 今週の国内債券市場で、長期金利は0.6%台を中心とした推移になりそうだ。日銀が23日まで開く金融政策決定会合でマイナス金利政策の修正に踏み込むとの見方は乏しい。一方、金利の低下方向への圧力は一時と比べると後退しており、0.5%台への低下(債券価格は上昇)を予想する声は少ない。 前週は長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが0.55%まで下がる場面があった。その後は反発し、0.665%で週内の取引を終えた。売り持ちにしていた債券を買い戻す動きはいったん一巡した。 今週は日銀会合が最大のイベントになる。マイナス金利政策の据え置きは既に織り込まれており、金利の低下余地は限られそうだ。「0.6%台半ばから後半では債券を買いたいという国内投資家は多い」(岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジスト)といい、0.7%台が定着するとの見方も少ない。 円、下値では介入警戒も 今週の外国為替市場で、対ドルの円相場は下値をじりじりと模索する展開か。日米金利差が一時と比べると拡大しており、円に対する下落圧力は高まっている。1ドル=150円が近づくと円買い介入への警戒が強くなり、円を売り込む動きは鈍くなりそうだ。 前週の円相場は週末に148円台後半まで下がり、昨年11月以来2カ月ぶりの円安・ドル高水準を付ける場面があった。米連邦準備理事会(FRB)の3月利下げ期待が小さくなる一方、日銀がマイナス金利政策を修正する時期が見通しにくくなっており、日米金利差が開きやすくなっている。 円相場は年初の3週間で8円近く円安が進み、下落スピードは速い。政府の口先介入のレベルはまだそれほど高くないものの「150円が近づくと介入を意識する投資家が増える」(野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジスト)という声が目立つ。 原油、神経質な動き 要人発言に注目 今週の原油相場は神経質な動きが続きそうだ。石油輸出国機構(OPEC)プラスは2月上旬にも合同閣僚監視委員会(JMMC)を開く。会合に向けてサウジアラビアの閣僚などが追加減産を示唆すれば、原油上昇につながる可能性がある。 24日に米国の1月製造業購買担当者景気指数(PMI)、26日には米国の12月米個人所得・個人消費支出(PCE)の発表を控える。米経済の強さが意識されれば、市場が3月と織り込んでいる利下げ開始時期が後ずれするとの見方が強まり、原油価格には下押し圧力がかかりそうだ。 紅海ではイエメンの親イラン武装組織フーシと米英の対立が激化し、タンカーの運航に支障が出ている。今のところ原油生産への影響は限られているものの、「情勢が一段と緊迫化すれば供給不安から原油価格が押し上げられる可能性がある」(楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリスト)。2024/01/21 06:29:23206.名無しさんdBjI0銀行勢が7年ぶり国債売り越し 23年、金利先高観根強く2024/01/22 19:15 日経速報ニュース 日本証券業協会が22日発表した公社債の投資家別売買動向によると、都市銀行など国内の銀行勢は2023年に国債を1兆6965億円売り越した。売り越しとなったのは16年以来およそ7年ぶり。日銀による金融緩和の修正を背景とした金利上昇(債券価格は下落)を警戒した国債売りが強まった。 都市銀行は23年に短期国債を除く国債を1兆4105億円、地方銀行は3366億円売り越した。第二地銀を含めた銀行勢の売越額は1兆6965億円だった。海外勢は10兆2287億円、生命保険会社・損害保険会社は3兆6696億円とそれぞれ買い越した。 日銀は22年12月、23年7月に長期金利の上限を引き上げ、10月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用を柔軟化した。金利上昇による債券価格の下落の影響を回避したい銀行勢は、日銀による追加の緩和修正を警戒し、年間を通じて国債の売り手に回った。 24年に入っても、早期のマイナス金利解除観測は後退しているものの、市場参加者の金利上昇観測は根強く、国債を積極的に買う動きは乏しい。三井住友DSアセットマネジメントの馬岡憲治ソリューション営業部統括部長は「昨秋に一度1%近い長期金利をみている地銀などは、もう少し長期金利が上がるまでは待ちたいというところが多い」と指摘する。 投資家が年初に国債を買い戻したことから長期金利は15日に一時0.550%まで低下したものの、22日には一時0.665%まで上昇した。2024/01/22 20:15:16207.名無しさんy1r8q日銀、マイナス金利解除見送り 大規模緩和を維持2024/01/23 13:09 日経速報ニュース 日銀は23日に開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めた。マイナス金利政策の解除を見送り、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)や上場投資信託(ETF)買い入れといった措置も現状のまま維持した。賃金と物価の好循環の持続力をさらに見極める必要があると判断した。 短期金利は日銀当座預金の一部にマイナス0.1%のマイナス金利を適用し、長期金利は1%を上限のめどとする現在の政策を維持する。植田和男総裁は23日午後3時半から記者会見し、決定内容や今後の政策運営について説明する。 日銀は会合後に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で2024年度の消費者物価指数(生鮮食品除く)の前年度比上昇率の見通しを前回23年10月時点(2.8%)から2.4%に引き下げた。一方で、25年度は1.8%と前回(1.7%)から引き上げた。23年度は2.8%で維持した。 実質国内総生産(GDP)は23年度を1.8%と前回(2.0%)から下方修正した。24年度は1.2%と前回(1.0%)から上方修正した。25年度は前回と同じ1.0%で据え置いた。 日銀は物価について、24年度は「原油価格下落の影響を主因に下振れとなる」との見通しを示した。25年度は政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策の反動が上昇率の押し上げに作用するという。中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率が高まるもとで「物価安定の目標に向けて(物価上昇率は)徐々に高まる」と指摘した。 企業の賃金・価格設定行動は「従来よりも積極的な動きがみられている」とした。先行きは「物価上昇を反映した賃上げが実現するとともに、賃金上昇が販売価格に反映されていくことを通じて、賃金と物価の好循環は強まっていく」とし、物価安定目標の実現へ「確度は引き続き少しずつ高まっている」との見方を示した。 今後のリスク要因の一つに米欧などの中銀の動向を挙げた。一部に「先行きの利下げを示唆する動きもうかがわれる」とし、「インフレ圧力がさらに減衰した場合、利下げの動きが強まり、それらが経済に影響を及ぼす可能性もある」と指摘した。資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向にも「引き続き注意が必要」とした。 植田総裁は23年12月下旬の都内での講演で、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて「確度は少しずつ高まってきている」と述べていた。金融正常化の判断で「春季労使交渉で、はっきりとした賃上げが続くかが重要なポイント」とも指摘していた。【関連記事】・4月説増えた日銀のマイナス金利解除 3月決定の余地も・賃上げ、名目3.6%が焦点 実質賃金プラス転換に必要2024/01/23 13:36:03208.名無しさんLcTiY長期金利、根強く残る上昇圧力 日銀維持で消えない早期利上げ論2024/01/23 17:26 日経速報ニュース 国内債券市場で長期金利の上昇圧力が根強く残っている。日銀は23日、大規模な金融緩和策を据え置いた。緩和維持を受けて長期金利は低下(債券価格は上昇)したものの、市場参加者の多くは政策正常化への警戒を緩めていない。需給要因を背景にした下押し圧力が一服すれば、長期金利はじりじりと上昇する局面を迎えそうだ。 23日は長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが0.630%と、前日から0.020%低下する場面があった。日銀はこの日まで開いた金融政策決定会合で政策正常化を見送り、あわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では2024年度の物価見通しを下方修正した。マイナス金利解除まで時間を要するとの安心感から長期債には買いが優勢となった。 日銀の緩和維持をきっかけに金利が低下したのは需給面の要因も大きい。日本証券業協会が22日公表した公社債の投資家別売買動向(短期証券を除く)をみると、昨年12月時点で都市銀行は3カ月連続で売り越していた。1676億円だった生損保の買越額も一年前の22年12月(3638億円)と比べると小さい。 今回、日銀が「利上げ」開始を見送ったことで政策正常化はどんなに早くても3月18?19日開催の決定会合まで待たなくてはならない。「日銀の利上げに向けては銀行や生保などの買い持ち高(ポジション)は削減が進んでいるのではないか」(SMBC日興証券の小路薫氏)といい、商いの細さが金利低下を後押ししたとみられる。 日銀が緩和維持を決めても早期の政策正常化の思惑はくすぶったままだ。植田和男総裁は会合後の記者会見で、マイナス金利を解除しても「極めて緩和的な金融環境が当面続く」と説明。マイナス金利解除は連続的な利上げを視野に入れて判断するのかと問われ「当然、そういうことになるかと思う」とも述べ、近い将来の政策正常化に向けて準備を進めている様子がうかがえる。 植田総裁の会見を受け、大阪取引所の夜間取引では前日から上昇して終えていた債券先物相場が急落。政策金利の影響を受けやすい新発2年物国債の利回りは前日比0.035%高い0.055%と昨年12月27日以来およそ1カ月ぶりの水準に上昇する場面もあり、会合後の債券買いは早くも勢いが衰えている。 日経QUICKニュース社(NQN)が金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」を対象として12?16日に実施したアンケート調査では、28人中23人が年内のマイナス金利解除を予想していた。うち「4?6月」との回答が18人で多数を占める。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊氏は「4月のマイナス金利解除を前提とすると、年度末に向けても長期金利は上昇する」とみていた。2024/01/24 00:30:23209.名無しさんLcTiY期金利、根強く残る上昇圧力 日銀維持で消えない早期利上げ論2024/01/23 17:26 日経速報ニュース 国内債券市場で長期金利の上昇圧力が根強く残っている。日銀は23日、大規模な金融緩和策を据え置いた。緩和維持を受けて長期金利は低下(債券価格は上昇)したものの、市場参加者の多くは政策正常化への警戒を緩めていない。需給要因を背景にした下押し圧力が一服すれば、長期金利はじりじりと上昇する局面を迎えそうだ。 23日は長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが0.630%と、前日から0.020%低下する場面があった。日銀はこの日まで開いた金融政策決定会合で政策正常化を見送り、あわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では2024年度の物価見通しを下方修正した。マイナス金利解除まで時間を要するとの安心感から長期債には買いが優勢となった。 日銀の緩和維持をきっかけに金利が低下したのは需給面の要因も大きい。日本証券業協会が22日公表した公社債の投資家別売買動向(短期証券を除く)をみると、昨年12月時点で都市銀行は3カ月連続で売り越していた。1676億円だった生損保の買越額も一年前の22年12月(3638億円)と比べると小さい。 今回、日銀が「利上げ」開始を見送ったことで政策正常化はどんなに早くても3月18?19日開催の決定会合まで待たなくてはならない。「日銀の利上げに向けては銀行や生保などの買い持ち高(ポジション)は削減が進んでいるのではないか」(SMBC日興証券の小路薫氏)といい、商いの細さが金利低下を後押ししたとみられる。 日銀が緩和維持を決めても早期の政策正常化の思惑はくすぶったままだ。植田和男総裁は会合後の記者会見で、マイナス金利を解除しても「極めて緩和的な金融環境が当面続く」と説明。マイナス金利解除は連続的な利上げを視野に入れて判断するのかと問われ「当然、そういうことになるかと思う」とも述べ、近い将来の政策正常化に向けて準備を進めている様子がうかがえる。 植田総裁の会見を受け、大阪取引所の夜間取引では前日から上昇して終えていた債券先物相場が急落。政策金利の影響を受けやすい新発2年物国債の利回りは前日比0.035%高い0.055%と昨年12月27日以来およそ1カ月ぶりの水準に上昇する場面もあり、会合後の債券買いは早くも勢いが衰えている。 日経QUICKニュース社(NQN)が金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」を対象として12?16日に実施したアンケート調査では、28人中23人が年内のマイナス金利解除を予想していた。うち「4?6月」との回答が18人で多数を占める。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊氏は「4月のマイナス金利解除を前提とすると、年度末に向けても長期金利は上昇する」とみていた。2024/01/24 00:31:26210.名無しさんLcTiY物価見通し確度高まる、正常化後も「極めて緩和的な環境」=日銀総裁[東京 23日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は23日、金融政策決定会合後の記者会見で、物価見通し実現の確度は引き続き高まっていると指摘、金融政策の正常化に前向きな姿勢を示した。4月までにマイナス金利が解除されるとみた金融市場では債券先物が下落、外為市場は円高に振れた。植田総裁はまた解除後の際も「大きな不連続性の発生は避ける」とし、「(解除後も)極めて緩和的な金融環境が当面続く」とその先の政策スタンスに踏み込んだ。<マイナス金利解除、時期は明言せず>日銀は決定会合で、金融政策の現状維持を決めると同時に「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を改訂した。消費者物価の基調的な上昇率が見通し期間終盤にかけて「『物価安定の目標』に向けて徐々に高まっていく」と改めて指摘するとともに、「先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている」と明記した もっと見る 。植田総裁は記者会見で、物価目標実現の確度が高まったと考える根拠として、展望リポートで示した2024年度・25年度の生鮮食品とエネルギー価格を除く消費者物価指数(コアコアCPI)の見通しがともに前年度比プラス1.9%で前回と変わらなかったことを挙げた。「(前回は)まだ必ずしも自信が持てないと申し上げてきたが、もう1回点検してみたら同じような見通しになった」と説明した。ただ、物価目標実現の確度が少しずつ高まってきているいうことは好ましいことだが、「どれくらい近づいたかという定量的な把握自体は非常に難しい」と述べた。その上で、マイナス金利の解除時期は明確にしなかった。3月会合前に政策変更に十分な判断材料がそろうかとの質問には「毎回会合時点までに得られた情報をもとに丁寧に判断していく姿勢に変わりはない」と話した。3月会合の前に春闘の集中回答日が予定されている。4月会合の前には日銀短観や支店長会議がある。「もちろん3月に比べれば4月は情報量が増える。そうした中でどういう決断になるかはその時その時、新たに追加された情報をもとに考えていく」と述べるにとどめた。衆院補選が4月会合の直後に予定されているが「選挙の有無に関わらず、適切な金融政策運営をしていきたい」と話した。<異次元緩和の「次」は>一方、植田総裁は異次元緩和の「次」の金融政策の姿については踏み込んだ。「長く続いたマイナス金利がゼロ、ないしプラスに変わるかもしれないところで大きな不連続性が発生するようなことは避ける金融政策運営を、他の政策手段の調整も含めて考えていきたい」と語った。現在見えている経済の姿を踏まえれば、仮にマイナス金利を解除することになっても「極めて緩和的な金融環境が当面続くということは言えるのではないか」とも述べた。長期国債の買い入れについても、「出口の前後で大きな不連続性が発生することがなるべくないように運営したい」とした。市場ではこれまで4月の決定会合でのマイナス金利解除を見込む声が多かったが、こうした見方が一段と強まった。科学技術振興機構の鵜飼博史チーフ・エコノミストは、植田総裁の会見で「タイミングはともかく、遠くない先にマイナス金利を解除するだけでな、その後の政策スタンスまで考えていることが示された」と指摘。マイナス金利解除は4月に実施されてもおかしくないとみている。<中小企業の賃上げ、見極めは「総合判断」>2%物価目標の実現の前提として、日銀は賃金と物価の好循環を掲げている。大企業の一部で積極的な賃上げ方針が出てきているが、日銀では中小企業の賃上げ動向を見極めるべきだとの声が出ている。2024/01/24 05:39:41211.名無しさんLcTiY植田総裁は、中小企業がみなそこそこ賃金が上がらないと金融政策の判断ができないわけではないと強調。「賃金そのものを見なくても、ほかの経済の動きから中小企業の賃金がどうなりそうか類推できるし、ヒアリング情報も入手可能だ」と述べた。大企業の動向や中小企業の中で先行する企業の動き、中小企業の業績やサービス価格の状況などを「総合判断」して見極めていく考えを示した。植田総裁は賃金から物価への波及に期待感を示した。取引先との価格交渉の際に原材料コストの転嫁はできても賃金の上昇分は転嫁しにくいとの声や、価格交渉で使用される算出式に賃金が入っていないなどの話もあるが「賃金上昇がどれくらい続くかによって変わってくるとの見方もある」と指摘。社会で転嫁を許す雰囲気が広まる可能性もあり、「少しずつ転嫁が進むとみている」と述べた。<能登半島地震>植田総裁は記者会見の冒頭、1日に発生した能登半島地震について「金融機能の維持と資金決済の円滑確保に万全を期すとともに、今回の地震の影響に関する情報収集と分析に努めている」と述べた。2024/01/24 05:40:55212.名無しさん6zqgP債券寄り付き 長期金利、一時0.705%に低下 都区部CPI下振れ2024/01/26 09:37 日経速報ニュース 26日朝方の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは一時、前日比0.040%低い0.705%に低下(価格は上昇)した。26日発表の1月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想から下振れし、これまで高まっていた日銀の金融政策正常化観測が和らいだ。このため債券買いが先行している。 1月の都区部CPIの前年同月比上昇率は生鮮食品を除くコア指数で1.6%となり、QUICKがまとめた市場予想の中央値(1.9%)を下回った。上昇率の2%割れは2022年5月以来、1年8カ月ぶりとなった。エネルギーも除くコアコア指数は3.1%上昇で、こちらも鈍化した。 前日比17銭高の146円14銭で夜間取引を終えていた先物中心限月の3月物は、都区部CPIの発表後に始まった日中取引では一時、45銭高の146円42銭まで買われた。米国でもインフレ鈍化が意識され25日の米長期金利は低下しており、これも国内債の買いを誘っている。 日銀は23年12月開催の金融政策決定会合の議事要旨を発表し、マイナス金利やイールドカーブ・コントロール(YCC)の解除について「来春の労使交渉の動向をみてから判断しても遅くはない」などの意見があった。 短期金融市場では大阪取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である3月物は前日の清算値比0.0025高い99.9575をつけた。 東京金融取引所ではTONA先物3月物は前日の清算値比0.005高い99.955で推移している。2024/01/26 10:01:34213.名無しさんIMlEd日銀意見「マイナス金利解除の要件満たされつつある」1月会合2024/01/31 09:29 日経速報ニュース 日銀は31日、1月22?23日に開いた金融政策決定会合での政策委員の「主な意見」を公表した。今春の賃金改定について「過去対比高めの水準で着地する蓋然性が高まっている」としたうえで、経済・物価情勢が改善傾向にあるため「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」との意見があった。物価安定目標の達成が現実味を帯びてきており「出口についての議論を本格化させていくことが必要」との声も聞かれた。 足元は「従来の極めて強い金融緩和からの調整を検討していく重要な局面だ」との見方も出た。この委員は「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)やマイナス金利政策のあり方を議論するほか、オーバーシュート型コミットメントの検討も必要だ」と語り、物価が安定的に2%を超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を維持する現在の政策指針も議論の対象にすべきだとの意見もあった。 政策修正のタイミングを巡っては、「能登半島地震の影響を今後1?2カ月程度フォローし、マクロ経済への影響を確認できれば、金融正常化が可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い」との意見が示された。「金融正常化の第一歩であるマイナス金利の解除に適切なタイミングで踏み切る必要がある」との声も聞かれた。「海外の金融政策転換で政策の自由度が低下することもあり得る」としたうえで「現在は千載一遇の状況にある」として、政策修正の機会を見失うべきではないとの意見もあった。2024/01/31 09:56:02214.名無しさんIMlEd日銀、3度目の「隠れテーパリング」 正常化に地ならし2024/01/30 16:48 日経速報ニュース 日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)導入後、3度目となるステルステーパリング(隠れ量的緩和縮小)が進んでいる。日銀は大規模な国債買い入れを実施する方針を引き続き掲げているものの、国内金利を低位に抑えるための積極的な国債購入の必要性が低下しているためだ。金融政策の正常化に向けた動きが加速している。 「債券市場の機能回復への配慮も買い入れ減少の一因だ」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは指摘する。日銀の1月の国債買い入れオペ(公開市場操作)の購入額は現時点で5兆8567億円。31日に臨時オペがなければ、1年11カ月ぶりに6兆円の大台を割り込む。前月比でみても3カ月連続のマイナスだ。 2023年10月にYCC運用の再柔軟化を決めた後、買い入れ額は減少基調にある。長期金利は1月半ばにつけた0.550%から上昇しているとはいえ、30日時点で0.705%にある。日銀が上限のめどとする1%にはまだ距離があり、金利上昇への緊迫感は高まっていない。 今月からは残存期間「10年超25年以下」「25年超」のオペの月あたり実施回数を昨年12月からそれぞれ1回減らした。ある日銀関係者は「YCC導入当初の考え方にのっとったもの」と話す。債券相場の波乱が収まり、イールドカーブを適切な水準に維持するという本来の導入目的にもとづく運営に戻った。 YCC導入で金融政策の軸足を「量」から「金利」に移した16年9月以降、国債買い入れが減る局面は今回で3度目となる。 まずYCC導入後から始まり、月間購入額は新型コロナウイルス禍直前の20年2月に約4兆8000億円まで落ち込んだ。金融機関の収益悪化といった緩和の副作用を和らげるため、YCC導入に伴い長期金利がゼロ%程度で推移するよう買い入れる方針に転換した。 2度目が長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%程度と明確にした21年3月以降だ。コロナ禍の景気減速懸念がくすぶり、金融緩和の持続性を高めるために金利を変動しやすくした。21年4月?22年2月は国債購入を月間5兆円台に抑えていた。 日銀は4月にもマイナス金利解除に踏み切るとの観測が根強い。今後のオペ運営はどうなるのか。日銀の植田和男総裁は23日の記者会見で、国債買いオペについて「出口の前後で大きな不連続性が発生するということはなるべくないよう金融政策を運営したい」と語った。 昨年12月会合の議事要旨では、物価目標の実現が見通せる状況に至った後も「長期金利の不安定化を避けるための緩やかな枠組みは残しておくことも考え得る」との意見があった。 大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「長期金利のコントロールはすぐに手を放すことはできないことをにじませた」とみて、金利上昇を抑える仕組みは残すと予想する。 日銀内でも「市場への影響を考慮すると、正常化に至ったからといって米連邦準備理事会(FRB)のように保有資産を粛々と縮小するのが適当とは言い切れない」との見方もある。 とはいえ、金融調節の「主軸」が長期金利から短期金利に移っていくとすれば、国債買い入れの存在感は弱まっていく。金利のある世界が近づいているのは確かだ。【関連記事】・日銀は「青信号」を待たず 需要不足もうやむやに・FRB、「債務超過」10兆円でもなぜ無風? 日銀への教訓・日銀テーパリング、NY市場の反応は冷ややか2024/01/31 10:22:39215.名無しさんDyTaU円安呼ぶ新NISA 個人の海外投資「月3250億円外貨需要」2024/02/02 05:00 日経速報ニュース 新しい少額投資非課税制度(NISA)を通じた個人の海外投資が新たな円安圧力になるとの見方が外国為替市場で出てきた。新NISAのもと、個人が毎月3000億円超を株式など海外資産に投じるとの試算がある。円を外貨に替える需要が発生し、円相場を押し下げる方向に働く。特に積立投資が多い月の前半に円が弱含む場面が増えそうだ。 「新NISAは海外投資家の間ではもはや知らない人がいないというレベル。特に円売り・ドル買いの規模に関心を寄せる投資家が多く、日本の貿易赤字と比較する人が目立つ」。ある外資系証券の関係者はこう明かす。 新NISAは個別株にも投資できる「成長投資枠」と投信を毎月積み立てる「つみたて投資枠」がある。日本総合研究所によると、2つの枠を合わせて年間で最大3.9兆円の海外投資が発生する可能性があるという。 月間ベースでは3250億円の円売り・外貨買い需要が発生する。一方、23年12月の貿易赤字は4127億円(季節調整値)だった。円売りの規模は単月貿易赤字の8割に相当するため、海外投資家も新NISAの動向に注目せざるを得なくなっている。 日本総研の立石宗一郎研究員は「特に海外株の積立投資は保有期間が長くなり、利益確定などによる円買いの動きが出てきにくい」と指摘する。政府は27年までにNISAの累計買付額56兆円を目指す。年間の買付額が約5.2兆円ずつ伸びるという前提に立つと、27年までに対ドルの円相場を最大6円ほど押し下げる効果があるという。 新NISAが始まってから1カ月の資金流入の傾向をみると、特に月の前半に円安が進んだり、円高が進みにくくなったりする公算が大きい。 QUICK資産運用研究所がつみたて投資枠の対象となる外国株投信のうち、純資産残高上位5本の資金流入金額(日次ベース)を推計した。三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」など、いずれも米国株や世界株に投資する投信だ。 同研究所の推計によると、1月の資金流入額は前半の15日までが計3391億円と後半の16?31日(2366億円)を大きく上回った。月を3分割すると、1?10日が41%と最大で、11?20日の33%が続いた。年初の1月に成長投資枠の年間上限(240万円)まで購入した個人もいるとみられ、同月の資金流入を押し上げた可能性がある。 資金流入が月の前半に偏る傾向は今年1月特有ではない。22?23年の24カ月でみても、対象投信への資金流入は15日までが68%を占めた。10日まででも全体の過半にのぼった。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「1日に積立投資を設定する人が特に多いほか、5日や10日にも集中している」と指摘する。 足元の円相場は1ドル=146?147円前後で、23年末と比べると5?6円ほど円安・ドル高方向に振れている。日米の長期金利の差は3.2%程度と23年末から大きく変化していない。 22年以降に本格化した円安局面は、国内外の金利差と貿易赤字の拡大という2つの要因が主導してきた。金利差の拡大には歯止めがかかり、貿易赤字も縮小基調にある。それでも円が下落しているため、新NISAによる需給要因が3つ目の円安圧力になっているとの見方がある。 企業業績をベースとする株式などと異なり、為替市場には価格の高低を推し量る指標が少ない。一方向への値動きが発生しやすい特徴もある。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「家計の円売りという事実を認識する人が増えれば、それを材料にした円売りも増えるのが為替市場だ」と明言する。 米連邦準備理事会(FRB)は年央には利下げに転じ、日銀も4月までにマイナス金利を解除するとみられている。金利差縮小に伴い、24年は場合によっては120円台まで円高が進むというのが市場参加者の読みだった。想定を超える個人の海外投資熱によって、そのシナリオが練り直しを迫られる可能性がある。【関連記事】・市場心理、円安に傾く 指数2カ月ぶり低水準・円高シナリオに影落とす中国不安 輸出や訪日客下振れも2024/02/02 06:09:04216.名無しさんUPFAA日銀マイナス金利の解除後、「どんどん利上げ」考えにくい-内田氏https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-08/S8DOGLDWX2PS00?srnd=cojp-v2国債買い入れ不連続にせず、緩和修正時にETF購入やめるのが自然賃金と物価の好循環「素地が整ってきた」、春闘は重要なファクター 日本銀行の内田真一副総裁は8日、マイナス金利解除後の金融政策運営について、短期政策金利の連続的な利上げは想定しておらず緩和的な金融環境を維持していく考えを明確にした。奈良県での金融経済懇談会で講演した。 内田氏は、今後の経済・物価情勢次第としながらも、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」と表明。日本では、欧米と異なり中長期的な予想インフレ率が2%付近で定着していないとし、「再び下がってしまうリスクも意識しながら、緩和的な政策を行う必要がある」と語った。 1月の金融政策決定会合後の植田和男総裁の記者会見や同会合の「主な意見」で政策正常化に前向きな発言が相次いだのを受けて、市場では3月か4月の会合で政策変更が行われるとの見方が大勢を占めている。内田氏は今回の講演で正常化のタイミングには言及しなかったが、個々の政策を修正する場合の基本的な考え方を具体的に説明することで地ならしを進めた形だ。 イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)については、国債買い入れによる量的緩和の一類型だとし、見直し後の国債買い入れや市場の安定確保を考慮しなければならないと指摘。枠組みを廃止あるいは変更の場合でも、「その前後で不連続な形で買い入れ額が大きく変わったり、金利が急激に上昇するといったことがないよう丁寧に対応したい」と語った。 大規模緩和の一環である上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れに関しては、「大規模緩和を修正する時には、この買い入れもやめるのが自然」との考えを示した。一方で、既に保有している分の扱いは別問題だとし、「非常に大きな規模なので、時間をかけて検討していく必要がある」とした。 消費者物価は2025年度にかけて生鮮食品を除くベースとエネルギーも除くベースのどちらもおおむね2%となる見通しで、「賃金上昇を伴う望ましい形で2%の目標を実現する姿となっている」と説明。先行きの不確実性はなお高いとしながらも、「こうした見通しが実現する確度は少しずつ高まっている」と述べた。 8日の金融・証券市場では、内田氏がマイナス金利解除後も緩和的な金融環境を維持する考えを示したことで日米金利差が意識され、円は対ドルで148円台後半に下落した。円安を受けて日本株は上げ幅を拡大し、34年ぶりの高値を更新。債券市場では上昇して取引を開始していた長期金利が低下に転じた。ビハインド・ザ・カーブ 内田氏は午後の会見では、日本でも過去に見られていた賃金と物価が共に上昇する状態に戻っていく「素地がようやく整ってきた」と評価した。賃金と物価の好循環を確認した上で「2%が見通せるようになったと判断するかどうかに向かっていく。当然ながら春闘の状況は重要なファクターの一つになる」と語った。 正常化に踏み出す時期については、今後の経済・物価情勢次第と繰り返した。政策変更の際にマイナス金利やYCC、資産買い入れなどの政策をセットで見直すのか、個別に対応するのかという発想はないと指摘。物価上昇に対して政策が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブに陥っているということはない」との認識を示した。 内田氏は日銀生え抜きの副総裁として昨年3月に就任。植田体制下で金融政策運営の要と言える存在だ。企画局長を5年間務めるなど金融政策の企画・立案を担う企画畑を中心に歩み、黒田東彦前総裁当時の13年4月の量的・質的金融緩和(QQE)や16年1月のマイナス金利、同年9月のYCCの導入に中心的な役割を担った。関連記事日銀総裁、物価目標実現の確度「少しずつ高まっている」-緩和維持日銀のETF買い入れ、緩和見直し時に継続が適当か検討-植田総裁政策正常化へ前向き意見相次ぐ、「要件満たされつつある」-日銀意見日銀マイナス金利解除の判断材料に、市場の注目集める24年春闘賃上げ「6%基準」が重要、実質賃金プラス最低線-UAゼンセン会長2024/02/09 06:09:04217.名無しさんqhSLD1ドル=150円を超える円安も 米物価や小売売上高に注目-今週の市場2024/02/11 04:30 日経速報ニュース 日米株に高値警戒感も 今週の米株式相場は上値の重い展開か。米S&P500種株価指数は5週連続で上昇し5000の大台にのせた。S&P500ベースの予想PER(株価収益率)は20倍を超え高値警戒感も強まっている。 米国では13日に消費者物価指数(CPI)、15日に小売売上高が発表される。市場予想を上回る数値が出た場合には、利下げ期待が後退し米株の逆風になりそうだ。T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは「米市場では巨大ハイテク以外の銘柄でもPERが切り上がっており、いつ調整局面があってもおかしくない」と指摘する。 日経平均株価は前週に739円(2%)上げバブル経済崩壊後の高値を更新した。今週はソニーグループなど主要企業が2023年4?12月期決算を発表する。日経平均ベースの予想PERも約16倍と過去平均を上回り、好業績や還元の拡充が続くかが焦点となる。 米長期金利、上昇基調 米長期金利は4%を上回る水準が続きそうだ。前週は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が「時間をかけてデータを見極めることが賢明だ」として早期の利下げの可能性は低いとの考えを示した。一時7割程度まで織り込まれていた3月会合の利下げ確率は2割まで低下している。 岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジストは「米国景気は市場予想を上回る強さを維持しており、当面は4%を下回る金利低下(債券価格は上昇)は想定しにくい」と指摘する。利下げを見込んだ金利低下余地は限られそうだ。 日本の長期金利は0.7%前後で推移する展開となりそうだ。日銀の内田真一副総裁の発言を受けて、市場では金利上昇警戒が後退した。もっともマイナス金利解除への警戒は根強く、投資家の慎重姿勢は続きそうだ。14日は「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」の初回入札が予定されている。 米消費強ければ一段の円安も 今週の外国為替市場では円安・ドル高の流れが続きそうだ。前週は日銀の内田真一副総裁がマイナス金利解除後も「緩和的な金融環境を維持していくことになる」と発言。日銀による金融緩和の長期化観測を背景に円相場は一時1ドル=149円台半ばと約3カ月ぶりの円安水準をつけた。 米国の堅調な経済指標の発表が相次ぎ、米連邦準備理事会(FRB)による利下げ観測が後退していることも円安・ドル高圧力となっている。 今週は13日発表の1月の米消費者物価指数(CPI)への注目度が高い。市場予想の前月比の伸び率は0.2%と前回から横ばいが予想されている。上振れれば利下げ期待が後退し、円安につながる。 15日発表の米小売売上高にも注目が集まる。三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは「消費の強さが意識されれば、150円を超えて円安が進む可能性がある」と指摘する。 原油、小動きか 今週の原油相場は材料が乏しく小動きか。米国経済指標の結果次第では早期利下げ観測が後退し相場の上値を抑える可能性がある。一方、中東情勢の緊張で下値は限られるとの見方は多い。 13日には石油輸出国機構(OPEC)、15日には国際エネルギー機関(IEA)がそれぞれ月報を公表する。世界の石油需要の見通しの修正をめぐって市場は神経質な展開が予想される。 楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは「足元の相場は中国景気が重荷となっている。中国の石油需要が回復するなどの見通しが出てくれば上値を試す展開になるだろう」と指摘する。 紅海周辺ではイエメンの親イラン武装組織フーシによる商船攻撃が続く。地政学リスクの高まりは安全資産とされる金の買い材料にもなる。国際商品の総合的な値動きを示すFTSE・コアコモディティーCRB指数も堅調に推移しそうだ。2024/02/11 06:39:03218.名無しさんqhSLD脱マイナス金利、退路断った日銀 戦略的曖昧さも2024/02/10 07:29 日経速報ニュース 日銀が金融政策の正常化に向け、手探りの発信を進めている。市場参加者の大半が4月までのマイナス金利解除を見込むなか、市場との対話は詰めの段階に入る。政策判断の時期が近づけば近づくほど、日銀幹部の発言は一言一句が重みを増す。できるだけ具体化した説明をしつつも、あえて曖昧さを残すことで自由度を保とうとする戦略が浮かぶ。 「想定以上に『ハト派』との受け止めだった」。8日、内田真一副総裁が奈良県の金融経済懇談会で講演した後、市場の反応を見守っていた日銀内では意外感が広がっていた。東京外国為替市場では円売りが進み、8日には一時1ドル=149円台と約2カ月半ぶりの円安・ドル高水準となった。長期金利は小幅に低下した。 ある大手銀の債券トレーダーは「解除後の政策を予見させた部分は踏み込んだ。一方で利上げがゆっくりと捉えられた」と指摘した。 近い将来のマイナス金利の解除を既定路線として織り込む市場にとって、関心は解除後の利上げペースに集中した。「どんどん利上げしていくようなパス(道筋)は考えにくい」。内田副総裁は「経済・物価情勢次第」と説明し、具体的な説明は避けた。海外など一部の投資家が想定する、2%程度への急ピッチな利上げは「期待インフレ率が2%で固定されている欧米とは異なる」として否定した。 内田副総裁が言及した「どんどん」は、関係者によれば、内田副総裁はじめ執行部内で話し合うなかで出てきた言葉だった。「曖昧さを残すことが大事だった。目をつぶって、あらかじめ決まったコースに沿って利上げするわけではないということを言いたかった」(日銀関係者) 執行部でもある内田副総裁の講演は、審議委員の講演よりも「(金融政策の企画・立案を担う)企画局の見方をより色濃く示すものになる」(日銀関係者)。植田和男総裁の記者会見での発言を踏み越えない形で「今後の金融政策についてギリギリまで具体的に説明した」(同)との認識が行内にはあった。 例えばマイナス金利解除後の政策金利の設定。「マイナス金利導入前の状態に戻すとすれば」(内田副総裁)と仮定し、「0.1%の利上げになる」と説明した。「短期金融市場の機能をどう維持するかが論点」と述べたうえで、現在3層で設定している日銀当座預金の構造を1層構造にする可能性をもにおわせた。 元日銀審議委員で野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は「金融経済懇談会の挨拶で、金融政策の説明にここまで時間を割くのは珍しい」と指摘する。金融政策の前段では経済情勢や物価見通しの説明をするが、今回の講演ではその部分も日銀の政策判断に直結する「賃金と物価の好循環」の解説に重点を置いた。 木内氏は「政策修正の時が近づいたことと、金利はそこまで上がらないという2つのメッセージを同時に伝えるための講演だった」とみる。 「金融市場に不連続な動きを生じさせることがないよう工夫する」。内田副総裁の説明通り、日銀は段階的に発信を強化してきた。1月会合で発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に、2%物価目標の実現が見通せる「確度が高まっている」と記し「金融正常化に向け退路を断った」(日銀関係者)。 3月18?19日の次回の金融政策決定会合まではまだ1カ月超あり、今後も日銀発信は公開・非公開の場で続く。日銀の正木一博企画局長は8日と9日、都内で金融関係者やエコノミストなどに対して非公開で講演した。 「内田副総裁の講演と同じ内容ではあったが、物価の下振れリスクを注視していることがうかがえた」(正木局長の講演に参加したエコノミスト)。戦略的な曖昧さを残しつつ、徐々に解像度を高めている日銀。様々な場での発信を通じて、日銀の考え方への市場の理解が深まっていけば、実際の正常化局面での混乱は避けられる可能性が高まる。【関連記事】・植田日銀総裁、マイナス金利解除後も「当面は緩和的」・日銀・内田副総裁、マイナス金利解除後も「緩和的環境」・日銀副総裁一問一答、正常化後も「国債買いやめず」・日銀、緩和出口へ対話詰め 急速な利上げ「考えにくい」2024/02/11 06:42:00219.名無しさんbKVpxマイナス金利解除、政府に容認意見 脱デフレと切り分け2024/02/13 05:00 日経速報ニュース 政府内にマイナス金利解除を容認する考えが広がってきた。解除しても緩和的な環境は続くとして認める考え方だ。マイナス金利解除は金融政策が正常化に向かう一方で、日本経済がデフレ脱却に近づいたことを意味する。政府のデフレ脱却の宣言にも関心が集まるが、慎重論もある。 「マイナス金利の解除とデフレ脱却宣言は根は同じだが独立して考えるべきだ」。内閣府幹部は話す。市場では日銀が今春の決定会合でマイナス金利を解除するとの観測が強まっている。その場合でも脱デフレ宣言とは連動しないとの意味だ。 市場には日銀のマイナス金利解除は、政府のデフレ脱却宣言と歩調を合わせるとの見方がある。 マイナス金利の解除を容認する動きが浮上するのは、足元で1ドル140円台後半で推移する為替の水準を政府・日銀が意識しているためだ。 政府はガソリン価格を抑制する補助金を4月末まで延長し、電気・都市ガス代の補助は5月以降に縮小する。こうした措置の効果が薄れ、5月以降に物価の上昇圧力が高まれば、日米の金利差を反映した円安への批判が再燃しかねない。 ある経済官庁幹部は「円安による副作用が大きい状況で、政府がマイナス金利の解除に反対する理由は乏しい」と語る。 政府は日本経済をデフレではない状況だが、脱し切れてはいないとみている。デフレ脱却を、物価が下落する状況を脱し「再びそうした状況に戻る見込みがない」と定義する。現状では後戻りしないとの確証は乏しい。 政府はデフレ脱却の判断に、06年に設定した4つの指標を参考にする。 1つは消費者物価だ。生鮮食品を除く消費者物価指数は23年12月まで21カ月連続で前年同月比2%を超えた。2つ目の国内総生産(GDP)デフレーターも23年7?9月期はプラス圏だ。 残りの2つは改善途上にある。日本経済の供給と需要の差である需給ギャップと、企業が一定のモノをつくるのに必要な単位労働コストは23年7?9月期はマイナスだ。 それゆえ現段階では宣言に至っていない。内閣府内には24年5月に公表する1?3月期のGDPを待つべきだとの見方がある。 財務省には「日銀が解除を探る状況で政府が脱却宣言をすると、日銀に政策変更を促しているように市場に捉えられかねない」との見方もある。 いま脱却宣言すれば、政策の根拠が薄れかねないとの事情もある。6月に予定する定額減税は「デフレ完全脱却」が目的。その前に宣言すれば整合性を取りにくくなる。 岸田文雄首相は1月末の施政方針演説で「24年に物価高を上回る所得を実現する」と表明した。政府は24年度の1人当たり雇用者報酬の伸び率を物価上昇率と同じ2.5%と見込む。定額減税で物価を上回るが、日本経済の実力とはいえない。 首相は周囲に「デフレから脱却すればこれまでやってきたこと以上に大きい」と語る。防衛力の抜本強化や原子力政策の転換などを上回る成果に位置づけられるとみる。官邸内には、宣言自体よりも所得底上げを優先すべきだとの声がある。 内閣府ではゼロ金利に戻す範囲であれば、脱デフレに向けた政府の政策運営と整合性がとれるとの見方が多い。 日銀の決定会合には正副総裁、審議委員らに加え、財務省と内閣府からも閣僚らがそれぞれ出席する。政府は議決の延期を請求する権利を持つ。日銀がマイナス金利解除を提起したとしても権利を行使しない見通しだ。 「マイナス金利を解除することになったとしても極めて緩和的な金融環境が当面続く」。植田和男総裁は1月23日の記者会見でこう述べた。 日銀内では、マイナス金利解除は政府の脱却宣言を伴わずに実施できるとの認識が広がる。政府と日銀の間で解除への歩調が既にあってきているとみることもできる。 一方である関係者は解除と宣言の時期が近接することも有り得るとして「政府と日銀が同じ方向を向いている」と強調する。経済環境がデフレ方向に逆戻りした場合に、日銀だけが責任を負わされる事態は避けたいとの思惑がにじむ。 そもそもデフレ脱却を測る指標は絶対ではない。第一生命経済研究所の熊野英生氏は需給ギャップについて「輸入物価主導の近年のインフレとの連動性が薄まっている」と指摘する。デフレ下で定めた古い指標だとして「幅を持ってみるべきだ」と主張する。2024/02/13 06:29:17220.名無しさんiPgZdマイナス金利解除後も「緩和的な金融環境が当面続く」-植田日銀総裁https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-16/S8X84WT0AFB400?srnd=cojp-v2日本銀行の植田和男総裁は16日、金融政策運営について、マイナス金利解除後も当面は緩和的な金融環境が続くとの見解を改めて示した。衆院財務金融委員会で答弁した。 植田総裁は、物価安定目標の持続的・安定的な実現が通せる状況になれば「マイナス金利を含むさまざまな大規模な緩和政策の継続の是非を検討していく」と説明。具体的な内容はその時の情勢次第としながらも、現時点での経済・物価見通しを前提とすると「先行きマイナス金利の解除などを実施したとしても、緩和的な金融環境が当面続く可能性が高い」と語った。 1月の金融政策決定会合以降、植田総裁や内田真一副総裁らから政策変更への地ならしとも取れる発言が相次ぎ、市場では3月か4月にもマイナス金利解除などの正常化に踏み出すとの観測が広がっている。外国為替市場で再び1ドル=150円を超える円安が進行していることもあり、日銀の情報発信に一段と注目が集まっている。他の発言海外経済・国際的な金融市場の動向、日本の経済・物価に重大な影響一時的に財務が悪化しても政策運営能力に支障を生じない-中央銀行引き続き財務健全性にも留意しつつ適切な政策運営に努めていく保有国債の評価損が発生しても決算上の損益に影響しない関連記事:マイナス金利解除でも「緩和的な金融環境は当面続く」-日銀総裁日銀マイナス金利の解除後、「どんどん利上げ」考えにくい-内田氏日銀総裁、物価目標実現の確度「少しずつ高まっている」-緩和維持2024/02/16 14:46:57221.名無しさんpKkwy日銀政策転換の勝者は株式か、一段の資金流入に期待-ブラックロックhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-18/S8XUKMT0G1KW00?srnd=cojp-v22024/02/19 09:30:27222.名無しさんIBOR4ヘッジファンドが日本に照準-日銀によるマイナス金利解除が視野にhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-20/S95W7XDWRGG000日本株は年初から大幅上昇-賃金の伸びに加速の兆し東京は長期的な強気相場にある世界で唯一の市場かも-ベセント氏マクロヘッジファンドと株式ヘッジファンドは今年、日本に照準を合わせている。日本銀行が約8年間続けているマイナス金利政策を転換するとファンドはみている。 日経平均株価は年初から急伸しており、1989年に付けた史上最高値に近づきつつある。日本経済が2四半期連続のマイナス成長となったことで利上げ時期が先延ばしされる可能性はあるが、投資家は、インフレが加速すれば近くマイナス金利は終了するとなお予想している。 マクロファンドであるキー・スクエア・キャピタル・マネジメントのスコット・ベセント最高経営責任者(CEO)は「東京は、長期的な強気相場の局面にある世界で唯一の市場かもしれない」と指摘した。同氏は日銀が3月ないし4月に利上げする可能性が高いとし、それにより株価と円は上昇すると予想した。 通常、利上げは景気を冷ますが、ベセント氏は1月の投資家宛て書簡で、日銀は利上げにより意図せず成長を刺激する可能性もあるとの見方を示した。 ソロス・ファンド・マネジメントで最高投資責任者(CIO)を務めたベセント氏は日銀の利上げについて、日本の銀行の融資を促すほか、超低金利やマイナス金利の環境に置かれてきた現金の豊富な家計に恩恵をもたらす可能性があると指摘。利上げが日本経済を押し上げるとの見方を基に、ベセント氏は1年物と10年物の利回り上昇を見込んだ金利スワップのポジションを構築している。 株式運用者もまた、日本株の上昇継続を予想している。日本株はこれまでも既に、中国・香港の株式から資金を引き揚げた投資家の恩恵を受けてきた。 インダス・キャピタル・パートナーズのジェームズ・シャノンCEOは、日本の上場株式の長期的な見通しは「われわれの投資キャリアの中で有数の優れた内容になっている」と語った。 インダスの汎アジアヘッジファンドは、ネットエクスポージャーの半分余りが日本となっており、比率は2020年1月の19%から上昇した。4年前は、ネットエクスポージャーの約半分を中国と香港が占めていた。だがその後、中国株が長期低迷する中で比率はゼロとなった。 日本経済は昨年に転換期を迎えたと、シャノン氏は指摘。賃金上昇ペースに加速の兆しが見られ、それがインフレを押し上げると同氏はみている。企業の経営状況は強固で、投資を増やしているほか、配当や自社株買いも拡大している。マクロファンドの動き 多くのマクロファンドは2023年に既に、利上げとそれに続く円の上昇に賭けていた。だが円は昨年、ドルに対して7%下げ、円上昇に賭けた取引は大きな損失を生むこととなった。 システマティック・マクロファンドであるテクメリオン・キャピタル・マネジメントのザッカリー・スクワイアCIOは、昨年同社では逆に円の下落を見込んだ取引を行い利益を上げたことを明らかにした。 日銀の動きに関して「昨年われわれは非常に懐疑的だった」と説明。持続的・安定的な2%の物価目標を実現するまでマイナス金利の解除はないと、日銀は明確にしていたと付け加えた。 スクワイア氏は、日銀がマイナス金利をゼロにまで引き上げる可能性はあるとしつつ、近い将来の本格的な引き締めは見込んでいないと説明。景気は過熱しておらず、低金利環境は株式市場と長期債に恩恵をもたらしていると指摘した。2024/02/21 05:39:39223.名無しさんRhtRWデフレではなくインフレの状態にある-植田日銀総裁https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-22/S7OXM6T1UM0W002024年2月22日 13:31 JST日本銀行の植田和男総裁は22日、足元の物価動向についてインフレの状態にあるとの見解を示した。衆院予算委員会で答弁した。 植田総裁は東京都区部の1月の消費者物価指数が前年比1.6%上昇と1年8カ月ぶりに2%台を割り込んだことに対し、「去年までと同じような右上がりの動きが続くというふうに、一応予想している。そういう意味でデフレではなくインフレの状態にある」と語った。東京消費者物価1年8カ月ぶり2%割れ、宿泊が下押し圧力に拍車 1月の金融政策決定会合以降、植田総裁や内田真一副総裁から政策変更への地ならしとも取れる発言が相次いでいる。市場では早ければ3月の会合で正常化を開始するとの観測が広がっており、日銀による情報発信への注目度が一段と増している。他の発言基調的物価は徐々に高まっていくと判断している輸入物価上昇起点の価格転嫁の影響は徐々に和らぎつつある企業の賃金設定行動も従来より積極的な動きが見られている雇用・賃金増加の中、物価緩やかに上昇する好循環強まっていく関連記事:マイナス金利解除、春闘や景気回復の持続性などで判断-日銀総裁マイナス金利解除でも「緩和的な金融環境は当面続く」-日銀総裁日銀マイナス金利の解除後、「どんどん利上げ」考えにくい-内田氏日銀総裁、物価目標実現の確度「少しずつ高まっている」-緩和維持2024/02/22 13:53:18224.名無しさんJrSCn日銀の高田委員「出口への対応含め検討必要」金融経済懇2024/02/29 10:59 日経速報ニュース 日銀の高田創審議委員は29日、滋賀県の金融経済懇談会で挨拶した。2%の物価安定目標の実現が「ようやく見通せる状況になってきた」と述べ、政策運営について「出口への対応も含め機動的かつ柔軟な対応に向けた検討も必要」だとの考えを示した。賃金や物価は上がらないものと考える「規範(ノルム)」が「ようやく転換する変曲点を迎えている」と語った。 高田氏は「緩和効果と副作用のバランスも念頭に置きながら、今日のきわめて強い金融緩和からのギアシフト」を検討する必要があると指摘。例として「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の枠組みの解除、マイナス金利の解除、オーバーシュート型コミットメントの在り方」などを挙げた。 企業による今春の賃金改定については「昨年以上の賃上げ方針を示す企業が多数みられるなど、賃上げ機運が高まっている」との認識を示した。また、企業部門では利払い負担が低下し、財務が改善傾向にあるとして「金融政策の出口における金利上昇に対し、マクロでみて従前と比べて耐性をもった状況である」と述べた。2024/02/29 13:02:56225.名無しさんPxr9H日経平均4万円接近、「アルケゴス型」投機の影(永井洋一)2024/03/04 07:38 日経速報ニュース 「日経平均株価は、株価平均型のため値がさ株の影響が大きくなる。米ダウ工業株30種平均もそうだが、市場を測るにはあまりにもお粗末だ」。34年ぶりに最高値を更新する直前の2月22日朝、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)で同紙シニアコラムニストのジェーズム・マッキントッシュ氏はこう指摘した。 日経平均はきょうにも4万円の大台を突破する可能性があるが、その「仕組み」は海外投資家の間でも周知の事実だ。足元の急激な上昇は、東京エレクトロンなど一部の値がさ株の急騰による。では、値がさ株のインパクトはどれだけ大きいのか。 日経平均は昨年末から3月1日までに6400円あまり上昇したが、そのうち、東エレクが約1300円、ファーストリテイリングが約900円、アドバンテストが約600円、ソフトバンクグループ(SBG)が約500円、4銘柄で3300円以上(5割以上)押し上げた。 見方を変える。1日の終値3万9910円の内訳は、ざっくりファストリが4400円、東エレクが3800円、アドテストが1900円、SBGが1800円。4社だけで1万2000円近くを占める。かたや三菱自動車工業や東京電力ホールディングスは2円前後にすぎない。 上位4銘柄(225銘柄の1.8%)の占有率は3割に達する。昨年末時点では25%程度だった。「ゆがんだ4万円」の実相だ。 こうした仕組みを逆手にとれば、少ない元手で大きな収益を獲得することは可能だ。「寄与度の高い銘柄を買い、その他の銘柄を同額売れば、買い越しにならなくても日経平均は上昇する」とフィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは指摘する。資金コスト「ゼロ」でも日経平均は上がる。そこに「投機」の素地はないか。ある市場関係者は、「そうした取引は当然あるだろう」と話す。 日経平均が約34年ぶりに最高値を更新した2月22日の週に日本株(現物)を最も買い越したのは証券会社の自己売買部門の5077億円だった。最高値を買いに行ったのは、外国人投資家でも個人でもなく、市場の裏方である「黒子」だった。 これにはいくつかの説がある。一つは、額面通り証券会社が自己勘定でリスクテークに動いたという説。もう一つは、「トータル・リターン・スワップ(TRS)」というデリバティブ(金融派生商品)取引説。これは、投資家自らは株式を保有せず、想定元本に対する金利を払って証券会社に保有してもらい、その損益だけを受け取るいわば「隠れみのスキーム」だ。 少ない資金や担保の提供で大きな利益が狙えることから海外ヘッジファンドが活用するケースが多いが、監督当局や金融機関もリスクを正確に把握しているのか怪しい。3年前のアルケゴス事件では、担保割れを起こした米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとTRS契約を結んでいた国内外の一部大手証券に飛び火し、巨額の損失計上を迫られた。 契約の仕方によっては大量保有報告義務が発生しないことから、人知れず大量に株式を買い付けたいアクティビストが活用するケースもある。こちらは、「隠れた持ち分」として長年、問題視されてきた。 実は、年初来の証券自己の買越額(現物株と日経平均・TOPIX先物及び同ミニ先物の合計)は約1兆8600億円と、外国人(約1兆8000億円)を上回る。特に足元でピッチが上がっている。 例えば、いまのような地合いであれば、米ナスダック総合株価指数が上昇した直後の日本で朝方に日経平均型コールオプションを仕込み、4銘柄を買い上がれば、簡単に大きな利益を手にすることも可能だろう。アクティビストのようなケースもあろうが、投機的な海外マネーの流入が活発化し、火種が膨らんでいる可能性は高い。2024/03/04 07:49:30226.名無しさんdGIvQ日銀当座預金、積み増しへ 大手銀、利息収入に的 マイナス金利解除にらむ2024/03/05 日本経済新聞 朝刊 日銀が金融機関からお金を預かる当座預金の構造をマイナス金利前に戻す案を検討している。マイナス金利の解除後に当座預金の大半に金利がつく公算が大きい。大手銀行は資金運用の見直しに着手しており、日銀当座預金の積み増しに動く方向だ。金融機関が日銀にお金を預けるほど「ペナルティー」として利払いを課されてきた現在の構造は転換することになる。 「2%の物価目標の実現が視野に入ってきている状況だ」。日銀の高田創審議委員が2月29日の金融経済懇談会でこう述べたことで、3月か4月のマイナス金利解除の観測が大きく強まった。 銀行はマイナス金利解除後をにらんだ資金運用の見直しに水面下で動き始めている。「当座預金に多く預けるというインセンティブは働きやすくなる」(大手銀幹部)。大手短資会社幹部は「銀行が資金調達に積極的になり、国債購入で余った資金を当座預金に積む構図が加速する」と指摘する。 金融機関は資金決済を行うため日本銀行に当座預金口座を開設し、資金を預けている。日銀はいわば銀行の銀行といった位置づけだ。 日銀は2016年、その当座預金の一部にマイナス金利を課す仕組みを導入した。当座預金を(1)マイナス0.1%の金利(ペナルティー)が付く政策金利残高(2)金利0%のマクロ加算残高(3)金利0.1%の基礎残高の3階層に分けている。 金融機関は多額のお金を預けて政策金利残高の層まで積むと、日銀にお金を支払う必要があるのが今の構造だ。しかし、市場には日銀が大半の当座預金に金利をつけた昔の構造に戻すとの見方が広がる。内田真一副総裁が2月上旬の金融経済懇談会で「仮にこの状態に戻すとすれば」とし、16年2月のマイナス金利導入前の当座預金構造を紹介したためだ。 マイナス金利導入前の当座預金は、日銀に預けることを法律で定められた最低限額の「法定準備」、それを上回った分の「超過準備」の2つに分け、法定準備の利息はゼロ、超過準備のほうに0.1%の金利を付けていた。 この構造の場合、金融機関は超過準備額が多くなれば多くなるほど、より利息を受け取ることができる。今は当座預金全体の8割超を超過準備が占めている。 野村総合研究所の木内登英氏は、現在の当座預金の規模でマイナス金利導入前の構造に戻すと、銀行などの利息収入は年間で2500億円増えると試算する。 日銀内では、元の構造に戻すのは「金融機関への補助金との批判が出る可能性はある」との懸念があった。「激変を避けるために、解除時には現在の3層構造は維持し、その後従来の当座預金に戻していく」(木内氏)との見方もある。それでも「3層構造よりシンプルな構造にすべき」「(金利支払いは)政策運営には必要なコスト」と支持する声が広がる。 日銀の当座預金は1月時点(平均残高)で536兆円だった。日銀が大量の国債買い入れを進めて市場に資金を供給したことで、マイナス金利を導入した16年2月時点と比べて2.1倍に増えた。金融機関が金利を求めて資金を預けようとすれば、当座預金残高がさらに大きく膨らむ可能性がある。 金融機関の運用にとっては追い風となる当座預金構造の変化だが、日銀にとっては課題もある。当座預金が膨張したなかでの利上げは「不確実性が大きく、オペ(公開市場操作)も手探りとなる」(日銀関係者)。 「逆ざや」のリスクもある。マイナス金利解除後の利上げ局面で、日銀が当座預金に対して支払う利息が国債などの利息収入を上回れば逆ざやとなり、日銀の財務にとってはマイナスだ。中央銀行は赤字や債務超過になっても基本的に政策運営に支障はないが、財務が悪化する過程で信認が揺らげば、思わぬ円安や金利急騰につながる懸念も捨てきれない。 早ければ3月にも、日銀がマイナス金利を解除するとの見方が市場で広がるなか、日銀内外で政策変更を円滑に進めるための備えが着々と進む。2024/03/05 06:56:29227.名無しさん0O6xz日銀総裁 2%の物価安定目標「実現確度少しずつ高まっている」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240307/k10014382481000.html日銀の植田総裁は参議院予算委員会に出席し、マイナス金利の解除など金融政策の転換の前提となる2%の物価安定目標について「実現する確度が少しずつ高まっている」という認識を改めて示しました。金融市場では、日銀が早ければ今月18日からの金融政策決定会合でマイナス金利の解除を決めるのではないかという見方が出ています。こうした中、植田総裁は7日の参議院予算委員会で、2%の物価安定目標について「基調的な物価上昇率が2%に向けて、徐々に高まっていくとの見通しが、実現する確度は少しずつ高まっている」と述べこれまで明らかにしてきた物価に関する認識を改めて示しました。そのうえで「この先、物価目標の持続的安定的な実現が見通せる状況に至れば、マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールの枠組みなど大規模緩和策の修正を検討していくことになる。出口戦略を適切に進めていくことは十分可能だ」と述べました。日銀の金融政策を決める政策委員会のメンバーからは、賃金と物価の好循環の実現に前向きな考えが示されていて、今月の会合への関心が高まっています。2024/03/08 06:49:16228.名無しさんXP7nu日銀、3月のマイナス金利解除に傾く政策委員が増加-報道https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-08/SA0ZWNDWLU6800 賃金上昇加速見通しが理由、円相場上昇で一時146円台回復 日銀が3月に動くか4月に動くかはまだ決まっていない-ロイター 日本銀行では3月のマイナス金利解除に傾く政策委員が増えていると、ロイター通信が報じた。今年の賃金上昇加速が見込まれることが理由だという。 ロイターは、日銀の考えに詳しい関係者4人の話として、3月に動くか4月に動くかは政策委員会でまだ決まっていないと伝えた。 日銀が3月に2007年以来となる利上げに踏み切るのではないかとの観測が高まる中で報じられた。報道を受けて円は1ドル=147円83銭付近から146円88銭まで上昇した。 日本最大の労働組合の全国組織である連合は15日に、2024年春闘の賃金交渉結果の初回集計を発表する予定だ。 連合は7日、今年の春闘における加盟労組の賃上げ要求は平均5.85%で、30年ぶりに5%を上回ったと発表した。 賃金は日銀の政策決定に際し重要な要素に浮上。日本をデフレから脱却させようと何年も取り組んできた日銀は、プラスのインフレサイクルを維持できる賃金の伸びが確認されるまで、金利を最低水準に維持すると主張してきた。 ロイターは匿名の関係者を引用し、春闘の結果が力強い内容であれば、日銀は4月の金融政策決定会合を待たずに利上げに踏み切ることがあり得ると報じた。 4月の全国企業短期経済観測調査(短観)を含むより多くの情報を待つ可能性もあるとしている。2024/03/09 10:21:35229.名無しさんXP7nu国債購入、規模明示へ=YCC撤廃、新「量的」枠組み―円滑な緩和正常化で・日銀検討https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/30a3e4bd3f14c8aeb799592f203f846cfbab138e 日銀が金融緩和の正常化を円滑に進めるため、先行きの国債買い入れ規模をあらかじめ示す、新たな「量的」金融政策の枠組みを検討していることが8日、明らかになった。長期金利を「0%程度」に誘導する「長短金利操作(YCC)」は撤廃する。 早ければ18、19両日に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除とともに決める。長期にわたる異次元の金融緩和の正常化に向け、日銀内の調整が最終段階に入ってきた。 日銀は現在、YCCとして長期金利の指標である新発10年物国債の利回りを0%程度に誘導している。新たな枠組みは、金利を直接操作する手法を撤廃し、国債購入額という「量」を対象とする方向で検討。買い入れ額は当面、現行の月間6兆円弱の規模を軸に調整する。 日銀が大量の国債買い入れを今後も継続すると約束し、マイナス金利解除といった金融正常化に伴う長期金利の急騰(債券価格の急落)などの混乱を防ぐ。同時に、金利の直接操作を撤廃して、一段の金利変動を容認することで、市場機能の回復につなげる狙いもある。 万が一、金利が急騰した場合は、必要に応じて国債買い入れの増額などを通じて機動的に対応する考え。 日銀は黒田東彦前総裁が2013年に導入した異次元緩和下で、国債の買い増し額を操作する量的緩和策を実施していた時期がある。2024/03/09 10:25:08230.名無しさんIu4pF「迫る日銀正常化」 長期金利に先高観、YCC撤廃も織り込み開始2024/03/11 15:02 日経速報ニュース 国内債券市場で長期金利の先高観が強まっている。日銀が18?19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除に加え、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤廃を決めるとの観測が高まったためだ。高い賃上げが実現する公算は大きく、日銀が政策正常化を始める決断を妨げる材料は乏しい。さらにYCC撤廃で長期金利の上限すらもみえなくなれば、投資家心理は弱気に傾きそうだ。 11日は長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.765%と前週末から0.035%上昇(価格は下落)し、2月14日以来およそ1カ月ぶりの高水準をつけた。政策金利の影響を受けやすい新発2年債利回りが前週末と同じ0.195%で推移するなか、超長期債では新発30年債利回りが同0.040%高い1.825%をつける場面があるなどイールドカーブ(利回り曲線)の傾きのスティープ(急勾配)化が目立った。 スティープ化の材料は日銀を巡る報道だ。時事通信は8日に「金融緩和の正常化を円滑に進めるため、先行きの国債買い入れ規模をあらかじめ示す、新たな『量的』金融政策の枠組みを検討していることが明らかになった」と報じた。金利を直接操作する手法を撤廃して国債購入額を対象とし、買い入れ額は「当面、現行の月間6兆円弱の規模を軸に調整する」という。 一見すると同じような正常化を巡る報道に市場が過敏に反応したのはYCCが撤廃される見込みが強まったためだ。QUICKが4日公表した2月の債券月次調査によると、100人を超える回答者の9割が4月までのマイナス金利政策の解除を予想。だが、長期金利を巡ってはマイナス金利解除とあわせてゼロ%程度の操作目標を撤廃すると答えた80人のうち、何らかの形で現在1%とする上限の「メド」を残すとみていたのは28人だった。 報道が正しければ、YCCの枠組みで金利上昇を強くけん制してきた日銀の姿勢が大きく変わることになる。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは「長期金利の明確な上限メドが示されなくなれば心理的な相場の支えがなくなり、(保有期間のリスクに応じた金利の上乗せ分である)タームプレミアムが拡大するとの予想を反映した動きだ」と解説する。 これまで日銀が段階的に上限を引き上げてきたことでYCCは既に形骸化し、長期金利は現在の上限メドである1%を大幅に下回ったままだ。距離があるとはいえ、いざ1%を明確に上回る金利上昇局面では指し値オペ(公開市場操作)などを活用し、上昇を抑制する「安心感」があった。それが「量」に切り替われば、1%を大幅に超える金利上昇の可能性もあるという市場参加者の警戒感が高まっている。 今のところ国債買い入れオペを通じた日銀の月間購入額は約5兆9000億円で、報道の「6兆円弱」とまさに一致する。報道通りの決定ならば債券需給に劇的な変化が起こる可能性は低い。しかし、量を明示して運用する場合には「経済・物価情勢がさらに好調になれば購入額を減らすのかなど、『量』の増減は何で判断するかが現段階では不透明」(三菱モルガンの六車氏)な面も金利上昇を促したようだ。 SMBC日興証券の小路薫金利ストラテジストは11日付のリポートで、既発の10年債の多くで日銀の保有比率が「8?9割に達している」としたうえで、現在の買い入れでは「残存5年や10年付近の一部銘柄に集中してしまっているという問題点もある」と指摘。長期金利の上限のメドがなくなれば、日銀の保有比率が高い5年超10年以下の年限の購入額が「優先的に減らされる」とみる。 いよいよ日銀の決定会合が来週に迫り、政策正常化を巡る報道が相次いでいる。8日にはロイター通信が政策委員の間でマイナス金利解除を「支持する声に広がりが出ているもよう」と伝え、市場では3月の決定が現実味を帯びているとの意識が高まっている。今週は春季労使交渉(春闘)の集中回答のほか、国債入札などの需給イベントも控える。日銀が決定を下すまで債券相場は不安定化しやすくなりそうだ。2024/03/11 15:22:56231.名無しさんERl0e日銀、マイナス金利解除へ 17年ぶり利上げ 賃上げ率5.28%、環境整う2024/03/16 日本経済新聞 朝刊 日銀は18~19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する見通しになった。2024年の賃上げ率は5.28%と33年ぶりの高水準となり、2%の物価目標を持続的・安定的に達成できる環境が整った。日銀が政策金利を引き上げるのは07年2月以来、17年ぶり。金融政策は大規模緩和から正常化に向かい「金利ある世界」に踏み出す。(関連記事総合2面に) マイナス金利政策の解除に向けて15日、日銀内外で調整を始めた。現在の短期の政策金利はマイナス0.1%。これを0.1ポイント以上、引き上げて短期金利を0~0.1%に誘導する案が有力だ。16年2月に開始したマイナス金利政策はこれで終了する。 日銀のマイナス金利政策は金融機関が日銀にあずける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用するしくみ。大規模緩和の象徴的な政策とみなされてきた。日銀が解除すれば世界でマイナス金利政策を採用する中銀はなくなる。 連合が15日発表した24年の春季労使交渉の第1回回答の集計で賃上げ率は平均5.28%となり、焦点の中小企業の賃上げ率も4.42%と32年ぶりの高い水準だった。ベースアップも3.70%(ベアと定期昇給を明確に区別できる654組合が対象)に達し、賃金の持続的上昇で日銀が目指す2%の物価目標を安定的に達成できる見通しがたった。 日銀が春季交渉を「大きなポイント」(植田和男総裁)と位置づけて重視してきたのは、物価上昇の持続力と密接に絡むからだ。賃金が上がれば個人消費に弾みがつくうえ、人件費の増加分はサービス価格への反映を通じて物価の押し上げ要因になる。 植田総裁は12日の国会答弁で春季交渉の結果を踏まえて判断する考えを示したうえで「賃金と物価の好循環がどのくらいうまく回っているか点検している」と発言。マイナス金利解除に向けた見極めが最終段階に入っていることを示唆していた。 日銀内からは24年の賃上げ率は「政策修正に慎重なリフレ派も納得できる水準」(関係者)との声も漏れる。 日銀はマイナス金利政策の解除とあわせて大規模緩和の柱となってきた長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃する方針だ。現在は長期金利の上限のめどを1%としている。 上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の新規買い入れも終える見通しだ。 23年末以降、日銀はマイナス金利の解除に向けた地ならしを進めてきた。 内田真一副総裁は2月8日の講演でマイナス金利を解除しても「緩和的な金融環境を維持していく」と解除後の政策運営に言及。高田創審議委員も同29日の講演で物価2%目標の「実現がようやく見通せる状況になってきた」と踏み込んでいた。 政府内にも3月解除の容認論が広がっている。財務省幹部は「4月まで待つ必要がなく、3月に解除するのが望ましい」と話す。首相周辺も「時期は日銀に任せている」と静観の構えだ。 22年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など世界の中銀はインフレ抑制へ急ピッチで利上げしてきた。 07年2月の利上げを最後に一貫して金融緩和を続けてきた日銀がマイナス金利を解除すれば、企業や家計にとどまらず世界の資金の流れにも大きな影響を与えることになる。2024/03/16 06:50:43232.名無しさんzQcbK日銀が大規模緩和解除へ、19日決定 長短金利操作も撤廃2024/03/19 02:00 日経速報ニュース【この記事のポイント】・政策金利はマイナスから0?0.1%へ転換・長期金利の誘導目標撤廃、YCCは終了・日本株ETFやREITの買い入れも廃止 日銀は19日の金融政策決定会合で大規模緩和の解除を決める方針だ。マイナス金利政策のほか、長期金利を抑え込むための長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)などリスク資産を買い入れる枠組みもなくす。物価2%目標を持続的に達成できる見通しがたったと判断し、17年ぶりの利上げに踏み切る。 日銀は会合初日の18日に国内外の経済・物価情勢について議論した。その結果も踏まえて19日の会合でマイナス金利政策を含む大規模緩和の解除を最終的に決める。政府も「日銀を信頼している。(判断は)任せている」(首相周辺)と容認する構えだ。 日銀は2016年2月にマイナス金利政策を導入した。金融機関が日銀にあずける当座預金の一部にマイナス0.1%を適用している。現在はこのマイナス0.1%を短期の政策金利としているが、0.1ポイント以上引き上げて短期金利を0?0.1%に誘導する案が有力だ。 マイナス金利政策の導入から7カ月後の16年9月に導入したYCCも撤廃する。短期の政策金利をマイナス0.1%、長期金利の誘導目標を「ゼロ%程度」として、金利をその範囲内に抑え込むために大量の国債を買い入れてきた。日銀による国債保有割合(国庫短期証券を除く時価ベース)はすでに発行残高の過半に達している。 YCC撤廃後も金利の急騰を防ぐために一定規模の国債の買い入れは続けるが、市場実勢に反して金利を低く抑え込むための枠組みはなくす。具体的には長期金利の誘導目標と1%としている上限のめどをなくし、市場実勢にあわせた金利変動を容認する案がある。 ETFや不動産投資信託(REIT)の買い入れも終える方向だ。いずれも白川方明総裁時代の10年に始めた。13年に就任した黒田東彦総裁が掲げた異次元緩和でETFの買い入れは増加。日銀によると23年9月末時点の保有ETFの簿価は約37兆円で、株高を背景に含み益は足元で30兆円規模に膨らんでいる。 REITは22年6月(12億円)を最後に買い入れを見送っており、すでに形骸化していた。 日銀は物価2%目標を持続的・安定的に達成できる見通しが立てば緩和策の修正を検討するとしてきた。消費者物価指数の前年同月比上昇率は2%を超え続け、人件費の影響を受けやすいサービス分野の値上げも広がる。日銀内からは物価目標の「実現がようやく見通せる状況になってきた」(高田創審議委員)との声が出ていた。 マイナス金利解除の判断で「大きなポイント」(植田和男総裁)と位置づけてきた24年の春季労使交渉の結果も大規模緩和解除の判断を後押しした。第1回集計結果では基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率が平均5.28%となり、1991年以来33年ぶりに5%を超えた。 組合員数300人未満の中小企業の賃上げも4.42%と32年ぶりの高水準となった。日銀内には「(マイナス金利解除に向けた)条件が整った」との見方が広がっている。【関連記事】・日銀、緩和修正の議論の焦点は? YCC・ETFにも関心・日銀、マイナス金利解除なら何が変わる? 家計にも余波2024/03/19 03:03:04233.名無しさんzQcbK異次元の円安リスク 日銀正常化のパラドックス(永井洋一)2024/03/19 14:36 日経速報ニュース 2024年3月19日。日銀は11年に及んだ異次元緩和の旗を降ろしたものの、国債購入だけは続けることを決めた。「積載超過の巨大トラック」のような日銀のバランスシートをすぐに縮小するのは不可能との判断だが、金融緩和の一手段だった国債購入は、名実ともに財政ファイナンス(中央銀行による財政赤字の補填)の色彩が強まる。日銀正常化のパラドックスだ。 今回の利上げは、かつての利上げとは重みが違う。「2%の物価目標を2年程度で実現する」と宣言した公約を日銀は9年遅れで達成した金字塔ともいうべき利上げだ。「当面、緩和的な金融環境が継続する」とはしているが、公表文の内容はほぼ「勝利宣言」だ。異次元緩和は完全に終わった。引き換えに「国債引き受け機関」としての役割が残った。 日銀が利上げに転じたのに対し、米連邦準備理事会(FRB)は利下げ模索の段階に移行している。当然、日米金利差は縮小し、円の対ドル相場は円高・ドル安に向かうはずだ。実際、2年物国債の利回り差は昨年9月19日の5.1%から3月18日は4.5%に縮小した。ところが円相場は1㌦=147円台から149円台に下落した。金利差以上の「何か」が影響している。 政府のデフレ脱却宣言がないまま、なぜ日銀は異次元緩和の撤収を急いだのか。なぜ政府は、それを容認したのか。賃上げが進み、目標達成が見通せるようになったからというのは表向きだ。本格的なキャピタルフライト(資本逃避、急激な円安)への危機感はあったはずだ。 国債購入については、これまでと同程度(月6兆円)を買い入れ、金利が急騰した場合は増額して対応する。異次元緩和なき国債購入は、正真正銘の財政ファイナンスという「異次元領域」への突入を意味する。東京海上アセットマネジメントの平山賢一氏によれば、戦時期ですら日銀は国債を引き受ける一方で、民間金融機関へ国債を売却し、発行総額の1割強しか保有していなかった。潜在的な円暴落リスクは確実に高まる。 第2次世界大戦時の対応で長期金利を2%台にくぎ付けしたFRBの国債価格支持政策は、朝鮮戦争によるインフレ圧力から1951年3月に財務省との間で解除するとのアコード(政策協定)が結ばれた。この日はFRBの「独立記念日」ともいわれるが、その後、物価が下落に転じ、幸いにして長期金利はあまり上がらなかった。戦争で膨らんだ米国の公的債務は、実質経済成長による税収増で長い期間をかけ返済された。 願わくは、日本の公的債務の解消も、このパターンであって欲しい。だが、潜在成長率が低迷するなか、物価上昇による実質債務負担の軽減という安易な方向に傾く恐れもある。政府・日銀は円安に対して断固とした姿勢に転じ、財政規律にもこれまで以上に配慮する必要がある。株価に下押し圧力がかかっても、甘受せざるを得ない。2024/03/19 14:46:28234.名無しさんzQcbK焦点:日銀、緩和的な環境で模索する利上げ 0.5%超にらむ声も[東京 19日 ロイター] - 日銀がマイナス金利を解除し、大規模な緩和策を修正した。それでもなお物価目標実現への過程との認識のもと「緩和的な金融環境が継続する」(植田和男総裁)としており、当面は緩和的な状況を維持しつつ、政策調整の必要性を検討していくことになる。日銀内では経済・物価見通しが上方修正される状況になれば、早い段階での追加利上げが視野に入るとの声も聞かれ、最終的には前回の利上げ局面のピークである0.5%を超え、潜在成長率を上回る水準まで利上げするのが望ましいとの声も一部に出ている。<消費やサービス価格に不安、次は慎重に>消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比上昇率が2%を上回る期間が長期化し、人手不足や好調な企業収益を背景に昨年を上回る賃金上昇が期待される中でも、日銀は慎重にマイナス金利解除のタイミングを模索してきた。背景には、利上げを開始したら簡単に利下げできないという、金融政策運営上の「常道」が強く意識された側面があった。それでも日銀は、個人消費がぜい弱という不安要素を抱えながらマイナス金利解除を決定した。賃上げ期待が消費マインドを支えており、賃上げが波及していくに従って個人消費は持ち直し、底割れは考えにくいとの見方があるからだ。しかし、中小企業の賃上げがどの程度広がりを見せるのか、なお具体的なデータに乏しい。個人消費の先行きへの警戒感も根強く、個人消費が下振れれば、企業の値上げも進まず、消費者物価の基調的な動きに影を落とす。サービス価格の上昇率拡大が緩やかにしか進まないことに懸念もくすぶっている。賃金と物価の好循環について、物価高を背景に賃上げは2年連続で実現しそうだが、賃上げ率が高くなってもサービス価格が急に上昇率を高めるような展開は想定しにくいとの見方が出ている。日銀では、次の利上げは慎重にすべきだとの声が聞かれる。<2年で0.5%の思惑>「どんどん利上げするような状況ではない」と内田真一副総裁が発言した2月の講演は、マイナス金利解除後の政策のあり方を具体的に論じたことで市場の注目を集めたが、講演で示した図表にも関心が向かった。特に注目を集めたのは政策金利の市場予想を示したことで、2年間で0.5%まで利上げする姿は「日銀が思い描く政策金利のパスではないか」(エコノミスト)との見方も浮上した。しかし、内田副総裁は講演後の記者会見で、マイナス金利解除後の利上げパスは「経済・物価情勢次第」と強調。図表で示した政策金利の市場予想については「endorse(支持)するつもりもないし、違うと言うつもりもない」と述べた。内田副総裁が政策金利の市場予想を示した背景には何があるのか。日銀では2つの「意図」が指摘されている。1つは、欧米の中央銀行とは対照的に、日銀の利上げパスは非常に緩やかなものになるとの市場の見方を海外の市場関係者にアピールすることだ。日銀は1月の展望リポートで、2025年度にかけて基調的な物価上昇率が2%目標に到達する見通しを示したが、この先の2年間で2%超まで政策金利を引き上げること、つまり四半期に1度、0.25%ずつの利上げは想定しづらいとの見方が日銀では出ている。2024/03/19 20:50:36235.名無しさんzQcbKもう1つの意図は、市場が非常に緩やかな利上げパスしか想定できないほど日本の実体経済はぜい弱だということだ。内田副総裁は講演で、日本の予想物価上昇率は「2%に向けて上昇していく過程にある」とも指摘した。日銀では、この観点からも当面は緩和的な金融環境を続けていくことが必要だとの声が多い。<強い賃上げ、経済・物価見通しを変えるか>もっとも、春闘の集中回答や連合の1次集計の強い結果は日銀でもポジティブに受け止められた。連合の1次集計を踏まえ、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストが連合の最終集計について推計したところ、定昇込みの賃上げ率4.8%、ベア3.1%となった。ベア3%はかつて、黒田東彦前総裁が2%物価目標との観点で望ましいとした賃上げ率だ。強い賃上げが中小企業まで波及するのか、個人消費やサービス価格にどう影響するのかは、今後の利上げパスに大きく影響しそうだ。植田総裁は19日の記者会見で今後の利上げに関して「物価見通しがはっきり上振れるとか、上振れリスクが高まれば、政策変更の理由になる」と述べた。日銀の一部には、将来の景気減速への対応余地を確保する観点から、経済環境が許せば前回の利上げ局面のピーク0.5%を上回る水準まで利上げするのが望ましいとの声もある。日銀推計の潜在成長率は0.71%で、実質中立金利は潜在成長率にほぼ近いとの考えに立てば、日銀が0.75%まで利上げすれば緩和的な局面は終わることになる。日銀では、春闘を踏まえ、経済・物価の見通しが1月展望リポートの想定を上回って強くなれば、追加利上げは早くなりそうだとの声も聞かれる。緩和的な環境の下でどういう利上げパスが実現するのか、4月の展望リポートで示される数値が目先の焦点になる。2024/03/19 20:52:10236.名無しさんEZIVr日銀利上げでも円安、一時151円台後半 迫る介入水準2024/03/20 18:32 日経速報ニュース 日銀の利上げを受けても円安が止まらない。20日のアジア市場では一時1ドル=151円台後半と2023年11月以来の円安・ドル高水準を付けた。22年に付けた1990年以来の安値も迫るなか、市場では為替介入への警戒感が急速に増している。 20日の外国為替市場で円相場は1ドル=151円台後半に下落した。19日に日銀がマイナス金利政策の解除を発表する前は149円台前半で推移しており、1日で2円以上も円安・ドル高が進んだことになる。 対ドル以外では一段と円安が進んでいる。対ユーロでは1ユーロ=164円台後半と23年の安値を突破し、08年8月以来の円安・ユーロ高水準を付けた。対ポンドでも1ポンド=192円台と15年8月以来の円安・ポンド高水準となった。 日銀は19日まで開いた金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めた。もっとも政策金利は0?0.1%と、5%超の米連邦準備理事会(FRB)などと比べて大幅に低い状態が続いている。日銀の植田和男総裁が19日の記者会見で追加利上げを示唆せず、海外との金利差が開いた状況が続くとの見方が広がったことで、幅広い通貨に対して円安が進みやすくなった。 米運用大手PGIMフィクスト・インカムのロバート・ティップ氏は「日本の金利が1?2%上昇しないと、円高は進まないかもしれない」と指摘する。日銀の政策先行きの不透明感が解消されたことで、円売りに安心感が広がった面もある。 円売り余地も大きくなっていた。円相場が一時1ドル=146円台まで上昇した3月上旬以降の円高局面で、投機筋の円売りポジションが縮小。米商品先物取引委員会(CFTC)によると12日時点で非商業部門(投機筋)の円売越額は2月末のピークから2割少ない1兆2700億円まで縮んだ。決定会合前に落とした円売りポジションを構築する目的で、改めて積極的な円売りを手がけやすくなっている。 急速な円安進行を受けて、市場では為替介入への警戒感も強まっている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「直近安値の151円90銭台に向けて円安が一段と進めば、為替介入の可能性が意識される」と指摘する。一方で、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示される参加者の政策金利見通しを見極めたいとの雰囲気も強い。 円安の動きに、日銀からは「(植田総裁は)緩和姿勢を打ち出しており、決定会合後に円安が進んだのは想定内だ」との受け止めが聞かれる。ただ、財務省には「(会合後の円相場は)投機的な動き」と急速な値動きを警戒する声が出てきた。 22年9月には黒田東彦総裁(当時)が記者会見で金融緩和の継続を強調したことで円安が進行したことが、円買い介入につながった。151円94銭の直近安値を付けた22年10月21日には5兆6000億円規模の円買い介入を実施している。下値付近では政府関係者による口先介入や介入の前段階である「レートチェック」などの可能性も意識されつつある。【関連記事】・欧米勢、日銀利上げでも円売り 円は151円台に下落・日銀、インフレ率2%への軌跡 揺れ続けた金融政策・日銀緩和「副作用より効果大きく」アダム・ポーゼン氏2024/03/20 21:20:38237.名無しさん2rG2R利上げ「10月」「7月」観測浮上 日銀、円安進行を注視 年内見送りの見方も2024/03/21 日本経済新聞 朝刊 日銀のマイナス金利政策の解除を受けて、市場では日銀が年内にも追加利上げするとの観測が広がる。植田和男総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で「緩和的な環境が続く」と強調したものの、追加利上げは否定しなかった。利上げしても反転しなかった円安で物価高が再燃すれば、早期の政策変更を迫られる可能性がある。 「円安に加え原油価格上昇などもあり、物価上昇は加速する可能性がある。日銀は早期の追加利上げを迫られる」。20日、メガバンク幹部は円安進行が金融政策に影響するとの見立てを示した。 日銀は19日の会合でマイナス金利政策を解除し、短期金利の誘導目標を0~0.1%に引き上げた。17年ぶりの利上げだったが、足元では急速に円安が進んでいる。 20日の外国為替市場で円は対ドルで一時151円台と4カ月ぶりの円安・ドル高水準に下落した。利上げは本来は円高要因になるが、植田総裁の「(追加利上げは)ゆっくり進めていける」といった発言で「ハト派」との受け止めが広がり円売りが加速した。 植田総裁は追加利上げの可能性そのものを否定したわけではない。記者会見では「経済・物価見通し次第」として、インフレ対応などを理由とした利上げに含みを持たせた。決定内容の発表後に円安が進んだことについては「経済・物価見通しに大きな影響を及ぼすとなれば当然、金融政策としての対応を考える」とも語った。 日銀は2%の物価目標を持続的・安定的に達成できる見通しが立ったとしてマイナス金利を解除したため、「当然、追加利上げは視野にある」との声が日銀内にはある。過去の日銀や米欧の中央銀行は0.25%刻みで金利を動かすのが一般的だ。 日銀は2006年3月に量的緩和を解除した後4カ月後の同年7月に政策金利を0.25%に引き上げた。過去の経緯を踏まえ市場では日銀が年内に少なくとも1回は利上げに動くと予想する声が多い。おおむね3つのシナリオが浮上している。 有力視されているのが10月の金融政策決定会合での追加利上げだ。マイナス金利解除後の物価・経済情勢を半年ほどかけて見極め、「急激な利上げという印象を与えずに動くことができる」(日銀関係者)ためだ。 海外情勢も関係する。米大統領選の共和党候補に確定したトランプ前大統領は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長を再任しない考えを示している。11月の大統領選で前大統領が勝利すれば市場の潮目が大きく変わる可能性があり、日銀内には「自由に判断できるうちに動いたほうがよい」との算段も働く。 10月中に公表する全国企業短期経済観測調査(短観)や支店長会議で集めた経済・物価のデータも参考に利上げを判断する流れが想定される。 19日のマイナス金利解除後は日銀が7月会合で判断するとの見方も増えてきた。円安による輸入物価の上昇で物価上昇が加速し、インフレ対応で追加利上げを前倒しするシナリオだ。7月も短観や支店長会議があり、新たな物価見通しも公表する。 24年1月に2.0%だった消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)の前年同月比上昇率が再び加速に転じれば「7月までに追加利上げに動く可能性もある」(メガバンク幹部)。早期に追加利上げに動くことで「年内にもう1段階の利上げの余地を探ることができる」との声も日銀内にはある。 24年中は追加利上げせず25年以降になるとの慎重な見方もある。政府はマイナス金利解除は容認したが、象徴的な意味合いが強いマイナス金利解除と追加利上げでは経済に与える影響が異なるとみている。 海外中銀の動向にも大きく左右される。FRBの利下げのタイミングが日銀の利上げと重なれば、足元の動きとは逆に急激な円高につながる可能性もある。大規模緩和から「普通の金融政策」(植田総裁)に戻った日銀は国内外の情勢に目配りしながら慎重に追加利上げの余地を探ることになる。2024/03/21 06:12:59238.名無しさん2rG2R日銀利上げでも円安止まらず 金利差と無関係の「ステルス円売り」継続2024/03/21 13:15 日経速報ニュース 21日の東京外国為替市場で円相場は下落している。日米の当面の金融政策の結果発表を経て、市場関係者の間では円買い材料が枯渇し円高が進みにくくなったとの見方が一段と強まっている。円安要因は、現在開いたままの日本と欧米などとの金利差だけではない。日本の家計から米国株などへ向かうお金の円売り圧力も無視できなくなっている。 日本が祝日だった20日の海外市場で円相場は一時1ドル=151円82銭近辺と2023年11月以来4カ月ぶりの水準まで売られ、22年と23年につけた151円90銭台に迫った。日銀が19日まで開いた金融政策決定会合で、マイナス金利の解除や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の終了、長期国債以外の資産買い入れの終了など、「およそ市場が想定しうる金融緩和の修正メニューをほぼすべて出し尽くした」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)ことで、海外投機筋は「日本側から円を押し上げる材料は当分あらわれない」と判断し、円売りに大きく傾斜した。 これらの円売り自体は「スピード違反」で、日本政府・日銀による円買いの為替介入への警戒感を誘った面もあるため、円はその後は150円台前半まで急速に値を戻している。それでも円の先安観自体は弱まってはいない。 日銀の植田和男総裁は19日の記者会見や21日の国会答弁で「当面、緩和的な金融環境が継続する」と強調し、利上げペースに関して「急激な上昇は避けられる」とも話している。日銀の緩和の長期化が引き続き予想されている。 米連邦準備理事会(FRB)が20日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の経済見通しで、年内3回としていた利下げ予想が据え置かれた。米利下げ観測の維持は教科書的にはドル安の要因で、事前に利下げ回数が2回に引き下げられるとの警戒感がくすぶっていた反動もある。ただ日本の金利水準が大幅に上昇しなければドル優位の構図は変わりそうにない。 日米の金融政策イベントを通過し、日銀の利上げでも円売りが進んだことに関連し、市場では金利以外の要因での円売り圧力の強さを再認識している。 財務省が毎月公表している投資家部門別対外証券投資によると、投資信託委託会社等による株式・投資ファンド持分の投資は、新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まった今年1月は1兆2104億円の買い越し。2月も1兆106億円の買い越しと2カ月連続で1兆円を上回っていた。21日に日銀が発表した2023年10?12月期の資金循環統計は、新NISA開始前ではあるものの「家計の投資信託のフローの積み上がり方が拡大傾向にあり、今年1月以降はさらに加速したと推察される」(第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミスト)との声があがっている。2024/03/21 13:41:29239.名無しさん2rG2R 三菱モルガンの植野氏は、「毎月の投資信託の積み立ては、金利差や金融政策とは無関係の需給要因で、経済指標の発表などを受けた相場の動きと違って、『ステルス性』が高い円売り・ドル買いになる」と話し、家計の円売り圧力が円の上値抑制に相当程度効いている可能性を否定しない。 複数の外国銀行ディーラーによると2月は日米の長期金利差(10年物国債利回りの差)が縮小した局面でもたびたび円売り・ドル買い注文が厚くなっていたという。日本の外為証拠金(FX)投資家が得意とする相場の流れに逆らう「逆張り」取引かもしれないが、市場ではそれとは別に、外国株投信運用などに絡んだステルス円売りの存在を強く意識しているようだ。 シカゴ通貨先物市場の建玉報告では投機的な円の売り持ち高が10万枚を上回っており、きっかけ次第では持ち高解消の円買い・ドル売りが一気に噴出してもおかしくなかった。ところが、日銀の17年ぶり利上げはその起爆剤とはならなかった。いまや円高をもたらしうるのは日本政府・日銀による為替介入くらいだ。 市場では、介入は22年10月の安値である151円94銭を下回ったうえで、売りに勢いがつくような雰囲気にでもならない限り、実施しないとの声が支配的だ。円安が日本の株高につながっている状況を日本政府は無視できないとの声も目立つ。 円安の進行次第で、日銀が追加利上げを検討するとの観測は高まるかもしれない。だが、市場参加者の多くは「能動的に円高にするための利上げを日銀は選択しないだろう」(三菱モルガンの植野氏)として、追加の利上げはかなり先とみる。 「日銀による断続的な利上げといった金融政策スタンスが変わるくらいでないと円は買われにくい。FOMCの消化にまだしばらく時間がかかる可能性もあるが、きょうのドル売りが一巡した後、円が全面安となる展開も捨てきれない」(みずほ銀行の南英明調査役)。市場が見込む円の「落としどころ」は切り下がっている。2024/03/21 13:42:34240.名無しさんFu0dW「優しい」日銀に緩む市場 株高・円安いつまで2024/03/24 04:00 日経速報ニュース 「異次元の金融緩和政策はその役割を果たした」。日銀は19日の金融政策決定会合で2013年以降に導入した異例の金融緩和策からの脱却を決めた。植田和男総裁は記者会見で「短期金利を主たる政策手段とする『普通』の金融政策となる」と強調した。【関連記事】日銀総裁「賃金と物価の好循環確認」 マイナス金利解除 引き締め方向の政策修正にもかかわらず、円相場は1ドル=151円台に下落。日経平均株価は22日、4万0888円と最高値を更新した。「市場との対話が奏功し修正が前向きに受け止められた」(フィデリティ投信の重見吉徳マクロストラテジスト) 市場が注目したのは声明文の「当面、緩和的な金融環境が継続する」との文言だ。マイナス金利政策を解除するとともに長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃したが、これまでと同程度の月6兆円弱の長期国債買い入れを続けるという方針も市場に「想定以上のハト派だ」(PGIMジャパンの鴨下健株式運用部長)と安心感を呼んだ。 ハト派かタカ派か 市場が受け止めた日銀の「優しさ」は続くだろうか。日銀を異次元緩和からの脱却に駆り立てた背景に目をやれば、想定よりも「タカ派」的な利上げが進むシナリオも浮かび上がる。 「新たな経済社会へのステージ転換の第一歩だ」。連合の芳野友子会長は15日、24年春季労使交渉の1次集計結果を受けた記者会見で驚きを口にした。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は1991年以来33年ぶりに5%を超えた。 賃上げは地方にも波及している。長野県のエムケー精工(5906)は24年度に5000円のベアを決めた。定昇との合計で3%の賃上げとなる。これまでも定昇や賞与で平均給与を引き上げてきた。約20年ぶりのベアに踏み切るのは「インフレ対応に加え、厳しい人材獲得競争が理由だ」と丸山将一社長は明かす。 地域の有力企業でも人材を採用しにくくなっている。ガソリンスタンド向け洗車機を中心に業績は好調となるなか「待遇改善で流出を防ぐ努力が一段と求められそうだ」と話す。 人手不足を背景に中小企業の賃上げ率も4.42%に達した。想定より急激な賃上げで「物価への波及が強まり、利上げペースが加速するリスクもある」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト) 追加利上げへ布石 市場の関心は「日銀はどこまで利上げするのか」だ。日銀は声明文から「必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」との文言を削除。物価上昇率が2%を安定的に超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を続ける「オーバーシュート型コミットメント」も廃止した。引き締めに向けフリーハンドの状態にある。 植田氏は「急激に金利が上がる事態になると、予期せぬ混乱が起きないとも限らない」とクギを刺す。一方、「賃上げで内需拡大につながれば24年に1回以上の利上げの可能性もある」(運用会社ブランディワイン・グローバルのポートフォリオ・マネージャー、キャロル・ライ氏)との見方も広がってきた。翌日物金利スワップ(OIS)市場では、12月時点で政策金利が0.3%程度まで引き上げられるとの織り込みが進む。 日銀がめざす政策金利の水準はどの程度か。キーワードは景気を冷やしもふかしもしない「中立金利」だ。定まった見解はないが「今後5?10年でみれば1.5?2.0%の間ではないか」(野村証券の森田京平チーフエコノミスト)との見方は多い。 「物価上昇が続くなら、その水準まで徐々に引き上げることになるだろう」。元日銀理事で東京財団政策研究所主席研究員の早川英男氏は語る。「これまで日銀は『意図的なビハインド・ザ・カーブ』だった。一度引き上げられると判断すれば利上げペースは早い可能性がある」 マイナス金利から「金利ある世界」に一気に転換させた日銀。想定以上に利上げを進め、緩んだ市場に冷や水を浴びせるリスクへの目配せが必要だ。市場はどう動くのか点検しよう。2024/03/24 10:20:19241.名無しさんFu0dW 金融政策転換、市場の行方 株、内需関連主導に 「優しい」日銀を巡り、株や債券などの市場では見方が割れている。 株式市場では日銀政策修正後も株高基調は続くとの見方が出ている。マイナス金利解除や上場投資信託(ETF)の新規購入停止など想定の範囲内で、早期の追加利上げの示唆もなかったと見たためだ。もっとも、これまでのような急ピッチでの株価上昇を見込む声は少ない。市場の注目業種は年初来の株高をけん引してきた外需関連銘柄から、賃金引き上げの恩恵を受ける内需関連銘柄に移り始めている。 「緩和姿勢を伴う金融政策の正常化」。JPモルガン証券の西原里江チーフ株式ストラテジストは日銀の政策修正をこう表現した。声明文の「緩和的な金融環境が継続する」という文言や、長期国債の買い入れ額を「これまでと概ね同程度の金額」とした点から株式市場は日銀を「ハト派」と受け止めた。 西原氏は日銀が追加の利上げに動くには、実質賃金の上昇と個人消費の拡大を「確認する必要がある」とみる。想定以上に高い賃上げ率となった春季労使交渉の結果が賃金統計に反映され、実質賃金がプラス転換するのは夏ごろになるとみられる。日銀が積極的に利上げに動かないのであれば、投資家は安心して日本株に投資できる。 ETFの買い入れ終了も「影響は小さい」(BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジスト)との見方が多い。ここ数年はほとんど買い入れを実施していないうえ、「日本株の安定的な買い手は日銀から自社株買いに変わっている」と圷氏は指摘する。 「今回の日銀の政策変更を受けて相場見通しを修正する必要はない」とPGIMジャパンの鴨下健株式運用部長はみる。好調な企業業績や資本効率の改善を背景に海外投資家が日本株を選好する構図は変わらない。鴨下氏は「4?6月に日経平均株価は4万2000円まで上昇する可能性がある」という。 市場の注目銘柄はトヨタ自動車(7203)など外需関連株から、内需関連株に移っている。米景気や米金融政策に左右されやすい外需関連株よりも賃上げの追い風が吹く銘柄の方が手掛けやすい。モルガン・スタンレーMUFG証券は物価上昇への期待が高まる中、値上げを継続できそうな企業としてカルビー(2229)やニチレイ(2871)をあげる。市場では「料亭を展開する、うかい(7621)や柿安本店(2294)も高額消費で恩恵を受けそうだ」(国内運用会社)との声もあった。 リスクはないのか。アセットマネジメントOneの岩間恒ソリューション戦略運用グループチーム長は「金利のボラティリティー(変動率)の上昇」をあげる。足元の株高の背景には国内外の債券市場の落ち着きがある。米景気懸念が急速に高まるなど「債券市場発のショックには注意が必要」と話す。2024/03/24 10:21:57242.名無しさんFu0dW 円相場、上昇に警戒 日銀の「異次元緩和」脱却後も外国為替市場では1ドル=151円台の円安水準が続く。株式相場を下支えする役割も果たしているが、日銀が想定以上のペースで利上げを進めれば市場の雰囲気は一変しかねない。 22日の東京外為市場で円相場は一時1ドル=151円台後半まで円安・ドル高が進んだ。「日銀の政策修正を見込んで円を買っていた海外短期筋のポジション調整」(ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジスト)が続いている。 20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で年内の利下げ回数の予想が維持されたこともあり、日銀が引き締め方向に金融政策を修正したにもかかわらず円の地合いの弱さが続いている。 このまま1ドル=150円を超える円安水準が続くとはいえない。金融政策決定会合直後の円安進行は「日銀の決定を『ハト派』に捉えすぎていた」とSMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは指摘する。日銀は声明文に「当面、緩和的な金融環境が継続する」と明記したが「利上げしないとは言っていない」ためだ。 どの程度までの利上げが「緩和的な金融環境」なのか。丸山氏は「(景気を冷やしもふかしもしない)中立金利は0.5?1.5%だと考えられ、その下限の0.5%まで2年以内には政策金利を引き上げるのではないか」とみる。 0.5%の政策金利は最後に利上げを実施した07年2月に到達した金利水準と同じだ。日本では1995年9月に公定歩合を1.0%から0.5%に引き下げてから、政策金利が0.5%を超えたことがない。日銀が利上げを進めても、この水準が一定の目安となるという考えがエコノミストの間では少なくない。 市場では0.5%までの利上げはまだ織り込まれていない。想定以上に日銀が利上げを進めれば債券市場で金利の上昇(債券価格の下落)要因となり、円相場は円高方向に動きやすくなる。 もっとも対ドルの円相場が動くのは米国側の要因も大きい。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は20日の記者会見で「全体的なストーリーは変わっていない」と語り、引き締めからの転換を時間をかけて判断する従来の方針を強調した。 円安は貿易収支の赤字体質などといった構造的な需給要因に加え、米国の引き締めによる日米金利差の拡大とともに進んできた。FRBが利下げを遅らせれば日米金利差は縮まらず、それだけ円の上昇余地は限られる。 ふくおかFGの佐々木氏は「もし夏ごろに早くも日銀の追加利上げが意識されるようになれば、1ドル=140円程度までの円高進行はあり得る」と話す。需給や金利差から新型コロナウイルス禍前の水準には戻りにくいものの、短期的な円高のリスクはある。 [日経ヴェリタス2024年3月24日号から抜粋]【関連記事】・日銀、インフレ率2%への軌跡 揺れ続けた金融政策・マイナス金利解除、家計への影響は 専門家に聞く2024/03/24 10:23:27243.名無しさんCZceP金利、強まる上昇圧力 日銀追加利上げへ警戒にじむ2024/03/25 04:00 日経速報ニュース 3229文字 画像有 日銀のマイナス金利解除を受けて、債券市場では今後の追加の利上げをにらむ動きが出始めている。 日銀、国債購入縮小か 国内債券市場で長期金利の指標となる10年物国債利回りは日銀の政策修正後も0.7%台で推移する。日銀が緩和的な金融環境を当面維持するとの安心感が広がったためだ。ただ、「日銀の発表をよくみると『いずれ国債買い入れを減らす』とのメッセージが垣間見える」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジスト)という指摘もある。 日銀は声明文に「これまでと同程度」の月間6兆円弱の国債買い入れを続けると明記した。一方で、同時に公表された定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)の予定では、残存期間「5年超10年以下」などの買い入れ上限額が大幅に引き下げられた。「夏に入る頃には保有資産を減らす量的引き締め(QT)が始まる可能性もありそうだ」(稲留氏)という。 日銀は大規模な金融緩和に伴って主に長期国債の買い入れを進め、総資産の規模は異次元緩和が始まった2013年4月の174兆円から10年超で760兆円まで大きく増えた。米連邦準備理事会(FRB)も22年3月の利上げに続き、同6月にQTに着手した。利上げの効果を支える観点からも膨張した資産の縮小はいずれ必要になる。 バークレイズ証券は「日銀は当初年間換算で4兆?7兆円のQTを進め、徐々にペースを引き上げる」と予想する。財務省が4月から国債発行を減額する方針のため「ただちに需給が悪化することはなさそう」としつつ、QTの織り込みが市場で十分に進まない場合は金利の上昇(債券価格の低下)圧力となる可能性もあるとみる。 社債、上乗せ金利拡大 社債市場ではスプレッド(国債に対する上乗せ金利)の先行きに警戒感が広がる。シングルA格の5年債のスプレッドは今年、縮小基調にあった。投資家が年度末を前に買いに動いたようだ。だが今回、日銀が決めた社債買い入れの減額・終了を受け、3年債など短期ゾーンを中心にスプレッドが拡大する可能性がある。 「10年以上続いてきた社債買い入れがなくなるなんて」。ある国内のファンドマネジャーは嘆息した。日銀は4月中はこれまで通り1回あたり1000億円を上限とした買い入れを続けるが、5月にも減額が始まると見られる。 現在の社債買い入れのベースは2010年に導入された資産買入等の基金だ。当初、残存1?2年の社債を残高0.5兆円程度まで買い入れるとして始まった。その後、対象を残存1?3年に広げ、金額も3兆円規模に拡大。基金が13年に廃止された後も残高維持のための社債買い入れは続いた。コロナ対策で一時的に買い入れ額や対象債券の年限を拡大した時期もあった。 この間、新発債を買い日銀オペで売って利ざやを稼ぐ「日銀トレード」が定着した。3年債は日銀の買いを織り込んできたため、企業の信用力の実態よりもスプレッドが縮小している可能性がある。日銀の買いが緩めば、「3年債を中心にスプレッドの見直しが進み、5年債などにも拡大圧力がかかる」(国内証券)との見方が多い。 異例の緩和終了 CP・社債購入停止へ 日銀の金融政策は大きく変わる。日銀は2016年9月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を導入し、短期金利と長期金利の両方を金融政策の操作目標としていた。 24年3月21日からは短期金利のみを操作目標とし、伝統的な金融政策にする。これまでは金融機関が日銀にお金を預ける当座預金の一部の「政策金利残高」に適用していたマイナス0.1%の金利を「政策金利」と位置づけていた。政策金利を短期金融市場の代表的な金利である無担保コール翌日物金利に戻したうえで「0?0.1%程度で推移するよう促す」とした。 YCCそのものも撤廃する。長期金利が急上昇(債券価格が急低下)しそうな場合は国債買い入れで抑える。指し値オペ(公開市場操作)や共通担保資金供給オペといった長期金利の上昇時に臨時で国債を買い入れる枠組みは残した。 リスク資産の買い入れは順次終了する。これまでも新規の買い入れを事実上停止していた上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)は即時終了し、買い入れを続けているコマーシャルペーパー(CP)と社債は1年後をめどに終わらせる。 金融政策のフォワードガイダンス(先行き指針)も大きく見直した。物価上昇率が2%を安定的に超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を続けるという「オーバーシュート型コミットメント」は「要件を充足した」として廃止した。2024/03/25 04:45:10244.名無しさんCZceP 主要中銀、割れる方向性 欧米6月に利下げか 世界の中央銀行の金融政策の方向性が割れている。金融緩和からの脱却に動く日銀に対し、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は金融引き締めからの転換時期を探る。市場では米欧とも6月に利下げに転じるとの見方が多い。「とにかく早期に利下げを開始したいというFRBの強い意向がにじみ出ていた」。19?20日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受け、野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストは指摘する。注目はFOMC参加者の経済見通しだ。2024年の経済成長率や物価見通しを昨年12月時点の予想から引き上げた一方、政策金利(中央値)は年末までに計3回の利下げのままだった。一部ではインフレの根強さなどから年内の利下げ回数が2回になるとの見方も出ていた。松沢氏は「大統領選前の9月のFOMCは政策修正しづらいため、6月か7月には利下げに動きたいのだろう」と見る。市場でも6月利下げ開始の織り込みが進んだ。金利先物の動きから政策金利の先行きを予想するフェドウオッチによると3月21日時点でFRBが6月会合までに利下げを実施する確率は7割を超えた。FOMC前の19日時点では6割弱だった。ECBも6月に利下げに転じるとの見方が多い。3月7日の理事会では政策金利を据え置いた。公表したECBスタッフの見通しでは経済成長率や物価見通しを昨年12月から下方修正。「利下げに向け準備が整いつつある」(第一生命経済研究所の田中理主席エコノミスト)との見方が広がる。ユーロ圏では賃金上昇の圧力が根強い。過去の賃金交渉で引き上げが多かった1?3月期の妥結賃金が5月に公表される見通し。妥結賃金を確認して6月に利下げすると市場は見る。 資産圧縮も火種に 国債や住宅ローン担保証券(MBS)など資産の買い入れで膨らんだバランスシートをどうするかも論点の1つだ。FRBは今回のFOMCで量的引き締め(QT)を近く減速する方針を固めた。新型コロナ対応で始めた量的緩和を22年3月に終え、6月からQTを開始。FRBの資産はピークの8.9兆ドル(約1350兆円)から昨年末で7.7兆ドルに縮小。現行ペースのQT継続が金利乱高下を招くリスクがあるとの懸念が浮上し、時間をかけて資産圧縮する。ECBは淡々と資産縮小を進める。コロナ対応の資産買い入れプログラムは7月から満期を迎えた債券の再投資を減らし、24年末に再投資をやめる。日銀も縮小方向だ。19日の記者会見で植田和男総裁は「将来のどこかの時点で買い入れ額を減らしていくということも考えたい」と発言した。米モルガン・スタンレーが日米欧英の4中銀の資産をまとめたところ22年2月に26.5兆ドルのピークをつけた後、緩やかに縮小。同社は25年末に4中銀合計で18.3兆ドルになると予想する。中銀の資産拡大は金利低下を促し株式などリスク資産に追い風となってきた。現在、慎重に資産圧縮を進めており、混乱は起きていない。ただ、金融市場にストレスがかかる局面で中銀の下支え効果が弱まっていることは火種になりかねない。2024/03/25 04:46:23245.名無しさんpB9Hd田村日銀委員「着実に正常化を進め大規模金融緩和を手仕舞いしていく」10:15 配信田村日銀委員「着実に正常化を進め大規模金融緩和を手仕舞いしていく」田村日銀審議委員わが国の景気は一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断現時点の経済物価見通しを前提にすると、当面緩和的な金融環境が継続すると考えている金融政策の枠組みは見直したが、短期金利は「ほとんど金利がない世界」であることに変わりはない着実に金融政策の正常化を進め、大規模金融緩和を手仕舞いしていくみんかぶ(FX)2024/03/27 10:32:08246.名無しさんpB9Hd日銀の田村氏、正常化「まだ一歩目」 追加利上げの覚悟か2024/03/27 13:34 日経速報ニュース 日銀の田村直樹審議委員は27日、マイナス金利解除や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の撤廃の決定で「金融政策の正常化への第一歩を踏み出した」と述べた。金利機能の低下といった副作用はなお残るとも指摘し、最終的なゴールは「金利の上げ下げを通じて需要を調整し、物価に影響させるという金利機能が発揮できるような水準まで戻す」こととも語った。真の正常化へのまだ一歩目であることを強調し、追加利上げへの覚悟を示したとみられる。 田村委員は青森県の金融経済懇談会で挨拶した。18?19日の金融政策決定会合で、無担保コール翌日物金利を0?0.1%程度で推移するよう促す政策への転換を決めた理由を、2025年度にかけて「2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」ためだと説明する。 現状の評価で繰り返し用いたワードが「第一歩」だ。3月会合での決断については「異次元緩和とも評される金融政策を脱し、金融政策の正常化への第一歩」だと指摘する。黒田東彦前総裁の時代に導入した異次元緩和の終了に至ったにすぎず、本当の意味での正常化はまだ先との考えが透ける。 経済や物価、金融情勢に応じた対応が大前提としながらも「ゆっくりと、しかし着実に金融政策の正常化を進め、異例の大規模金融緩和を上手に手じまいしていくために、これからの金融政策の手綱さばきは極めて重要」と語った。先行きの見通しに急激な変化がない限り、今後も正常化路線を進むべきだとの認識だと受け取れる。 銀行出身である田村委員が主張するのは金融緩和の限界だ。1990年代後半以降に短期金利が「ほとんど金利がない世界」に達した後、様々な異例の緩和で株価や不動産価格が上昇し、円高は是正された一方、「設備投資など企業活動が活発化する様子はあまり感じられなかった」と振り返る。長期金利を低く抑え込んだが「金利の上げ下げを通じて需要を調整し、物価に影響させるという金利の機能は限界的だった」と突き放す。 金融緩和の副作用にも言及した。1点目が企業が投資する際に最低限の基準となる利回りである「ハードルレート」の機能低下だ。借入金利の低下で付加価値の低い事業も生き残り、ビジネスの新陳代謝が進まなかった可能性を指摘する。2点目としては、国債の大量購入により市場金利から得られる情報が減る「シグナリング」の機能低下を挙げた。これらの副作用は今回の政策転換後も「残る状況が続いている」とみる。 田村委員が描く正常化の最終的なゴールは何か。「2%の『物価安定の目標』のもとで、金利の上げ下げを通じて需要を調整し、物価に影響させるという金利機能が発揮できるような(政策金利の)水準まで戻す」ことだと語る。具体的な水準こそ示さなかったが、あるべきレートはゼロではないと示唆する発言だ。 27日の外国為替市場では円相場が一時1ドル=151円97銭近辺まで売られ1990年7月以来およそ34年ぶりの安値を更新した。金融引き締めに積極的な「タカ派」とみられている田村氏にしては「思ったほどタカ派ではなかった」との受け止めが、円売り・ドル高を促すきっかけになった。だが、田村氏の発言は正常化は第一歩を踏み出したばかりで正念場はこれから、との意思を感じさせる内容だった。2024/03/27 13:42:14247.名無しさんVcNDZ日銀総裁、マイナス金利解除後の円安進行「内外金融政策の思惑影響」 衆院財金委2024/04/05 10:32 日経速報ニュース 日銀の植田和男総裁は5日、衆議院財務金融委員会に出席し、為替動向について「具体的にコメントすることは控えたい」と述べたうえで「為替はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿って安定的に推移することが重要だ」との考えを示した。マイナス金利解除など大規模な金融緩和の解除後に円安が進行したことについて問われると「様々な要因、内外の金融政策の思惑も影響した可能性がある」と答えた。 長期国債の買い入れについて、3月の金融政策決定会合で「当面、引き続きこれまでと同程度の金額で買い入れを行う」と決めたと説明した。そのうえで「(日銀が)保有する残高は償還との見合いでおおむね横ばいでしばらく推移することになる」との見方を示した。 今後の長期国債の買い入れ方針については「将来的には大規模緩和からの出口をしっかりと進めていく中で、買い入れを減額し保有高が償還に伴って縮小していくように移行したい」と語った。長期金利の水準については「買い入れはしばらく継続するが、金融市場において形成されるものと考える」と述べた。2024/04/05 11:02:40248.名無しさんVcNDZ日銀が保有する日本株ETFのこれから ~神山解説ところで、政策変更で日銀が保有するETFを売り出すのではないか、株価が下がるのではないかとの恐れがあるようです。これについて日銀はあまりヒントを出していません。しかし、これまでの日銀の政策、例えば銀行保有株買い取りの結果として保有していた株式の売却にはずいぶん時間をかけました。現時点は日銀がETFを市場で売却をし始めるとしても、数年後ではなく、かなり先になると考えます。株式の需給に心理的な安心感がまだ残っていても売却を始めれば逆の効果がでてしまうからです。仮に、日銀が売却に影響がないと言ってしまえば、そもそも買い入れに大して影響がなかったことも認めることになってしまいかねません。日銀が株式の大きなリスクを持っていることになるので急いで売るという見方もありますが、すでに大きな評価益を抱えているので、実現損が出るという意味で大きなリスクになるのは、よほど大幅な株価下落の場合だけです。しかもそんな状態で手持ちのETFを日銀が売ることは、これまでの政策を否定することになるので実際には起こらないでしょう。株価が安定した時期を選んで、信託銀行などに売買を委託し、「上がったら売る」ような方法で、長い時間をかけて売却する、しかも売却開始は何年も先になるとみてよいと思います。また、一部で日銀がETFを国民に安く譲る、年金に保有してもらうという案も出されています(日銀以外からの案です)。これは政治がリードすれば不可能ではないかもしれません。いまでも銀行保有株式の買い取りで保有した株式の売却では、いわゆる市場外のブロック取引が使われています。ETFも市場ですべて売る必要はないのであって、ETFに含まれる日本株式を、個々の株式に分けて必要に応じて売却することも技術的には可能です。ただしこのような方向での処理があるかどうか、現時点ではまったく分かりません。提案はあっても日銀が検討したようには見えませんし、まだまだこれからの検討課題のひとつというところでしょう。ひとつ言えることは、日銀が日本株のETFやJリートを買い支えるかどうかよりも、『vol.49 ついに日銀がマイナス金利解除。金利のある世界はどうなる?』で述べたように、日本の経営者が売上げ上昇に自信を持つか、消費者が賃金上昇の継続に自信をもって消費するかのほうが大事ということです。投資家の皆さんは、投資の目的を考えた上で投資対象を定め、投資を続けて行ってほしいと思います。2024/04/05 11:16:57249.名無しさんVcNDZ日銀総裁、ETF処分「すぐ行うことは考えていない」 衆院財金委2024/04/05 10:20 日経速報ニュース 日銀の植田和男総裁は5日、衆議院財務金融委員会に出席した。日銀が保有する上場投資信託(ETF)の処分について、「すぐに行うことは今のところ考えていない。時間をかけて検討したい」と、これまでと同様の見解を示した。不動産投資信託(REIT)の処分についても、「ETFと同様すぐ行うことは考えていない。今後の取り扱いについて、ある程度時間をかけて検討していきたい」との考えを示した。立憲民主党の桜井周氏の質問に答えた。 日銀は3月に開いた金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除などとともに、ETFとREITについて新規の買い入れを終了することを決めている。植田日銀総裁「基調的な物価上昇率、徐々に高まる」2024/04/05 10:55 日経速報ニュース 日銀の植田和男総裁は5日午前の衆院財務金融委員会で、春季労使交渉の結果も踏まえ「(短期的な要因を除いた)基調的な物価上昇率は徐々に今後高まっていくと考えている」と述べた。今後の追加利上げに含みを持たせた。 日銀は3月19日にマイナス金利政策を含む大規模緩和を解除した。同日の会見で植田総裁は「基調的な物価上昇率がもう少し上昇すれば短期金利の水準の引き上げにつながる」と述べていた。 植田総裁は5日の答弁で日銀による国債の買い入れについて「将来的には買い入れを減額し、償還に伴って保有残高が縮小するところに移行したい」と述べた。当面は買い入れの規模をこれまでと同程度で続けるため「保有残高は償還との見合いでおおむね横ばいで推移する」と話した。 長期国債は月6兆円程度の買い入れを継続する。これまでの大規模緩和によって保有残高は600兆円近くにのぼり、どのように縮小させるかが課題となっている。 日銀は3月に上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)は新規の買い入れを終えたものの、保有するETFとREITをどのように処分するかは決まっていない。 植田総裁は「ETFについては様々な議論があることは承知しているが、時間をかけて検討したい」との説明にとどめた。REITについても「ETFと同様、すぐに処分するとは考えていない。今後の取り扱いについてある程度時間をかけて検討したい」と語った。 大規模緩和の解除後、外国為替市場で進む円安については「金融政策は為替を直接コントロールする対象としてしないが、為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因のひとつだ。十分注視したい」と言及した。【関連記事】・日銀4月景気判断、7地域引き下げ 「持ち直し」は続く・日銀の需給ギャップ、15期ぶりプラス転換 10?12月期2024/04/05 13:26:43250.名無しさん7bsJA植田日銀、異次元緩和幕引きの軌跡 1年で変わった空気2024/04/07 05:00 日経速報ニュース 日銀総裁に植田和男氏が就任して9日で1年となる。3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)といった政策を解除・撤廃し、11年に及んだ異次元緩和に幕を引いた。かつて政策変更の話題に口を閉ざしがちだった日銀内の空気はこの1年で大きく変わった。 聞き上手、意見交換しやすく 「話をよく聞く人。日銀内で金融政策について率直に意見交換しやすくなった」。日銀関係者は植田総裁就任以降の雰囲気の変化を実感する。 政府が総裁人事を固めたのは2023年2月だ。財務官出身の黒田東彦前総裁が主導した異次元緩和は市場機能低下といった副作用も指摘されていた。元日銀審議委員で金融政策の理論と実務に通じる植田氏に金融正常化へのかじ取りを託した。 前途は多難だった。自民党の最大派閥だった安倍派を中心に異次元緩和継続を求める声が根強く、日銀内には「異次元緩和について批判的に話すことはタブー」との空気が色濃かった。 植田総裁は初出勤の4月10日、「皆さんと一緒に物価安定の達成というミッションの総仕上げを行いたい」と職員に語りかけた。就任時に「中央銀行の主な使命が物価安定であるならば、日銀は使命を果たしてこなかったことになる」と訓示した黒田前総裁と対照的な出だしとなった。 まず動いたのは4月の決定会合だ。1998年以降の25年間を対象に緩和策を振り返る「多角的なレビュー」の実施を決めたほか、「現在の長短金利、またはそれを下回る水準」としていた政策金利のフォワードガイダンス(先行き指針)の記述を削除し、引き下げの可能性を明示していた政策金利の見通しを中立に戻した。 7月会合からは本格的な政策修正に着手した。長期金利の上限の0.5%を「めど」とし、事実上1%に引き上げた。10月の決定会合では1%を一定程度超えることを容認し、16年から続いたYCCをほぼ形骸化した。相次いで政策修正に踏み切った背景には、異次元緩和を続ける日本と米国との金利差を要因とする円安もあった。 「異次元緩和は行き詰まっている」。黒田体制下でほとんど聞くことがなかった批判的な意見も日銀内で聞かれるようになった。「話をよく聞く」という植田総裁のもとで、職員がより自由に発言しやすくなった気配がうかがえた。 海外でも「親しみやすい総裁」と受け止められた。ポルトガルで6月開かれた欧州中央銀行(ECB)フォーラムでは「(20年以上前に)自分が審議委員だった時の政策金利は0.2?0.3%だった。それが今やマイナス0.1%」と英語で語り、「金融政策が効果を発揮するまで、少なくとも25年の時を要するようだ」とジョークを放った。 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長やラガルドECB総裁ら中銀首脳も笑みをこぼし、世界の中銀コミュニティーで存在感を高めた。 異次元緩和「設計役」も動く 24年に入ると、日銀の最高意思決定機関の政策委員会内で異次元緩和の解除が具体的に議論されるようになった。1月22?23日に開いた金融政策決定会合の発言内容をまとめた「主な意見」では、「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」と金融正常化へ手応えを示す声が多く上がった。 異次元緩和の設計役を担った日銀生え抜きの内田真一副総裁も地ならしに動いた。24年2月の奈良市内の講演で、マイナス金利解除後の具体的な金融政策に言及した上で「(解除後)緩和的な金融環境を維持していくことになる」と市場に解除方針を織り込ませた。 3月会合前には追い風も吹いた。連合の集計で24年春季労使交渉の賃上げ率が33年ぶりの高水準となった。速報値でマイナス成長となり、「政策変更の冷や水」とみられた23年10?12月期の国内総生産(GDP)も改定値でプラス成長に上方修正された。政府・自民党内からも大きな異論は出なくなっていた。 「普通の金融政策を行っていく」。異次元緩和の解除を決めた3月会合後の記者会見で、植田総裁は淡々と語った。ただ国債購入などで膨れ上がったバランスシートを縮小させるメドはつかず、マイナス金利解除後に円安傾向はむしろ強まった。異次元緩和を手じまいした植田日銀だが、試練はこれからも続く。【関連記事】・日銀、金融正常化へ一歩 総裁「緩和的な金融環境継続」・マイナス金利解除、家計への影響は 専門家に聞く2024/04/07 06:59:08251.名無しさんByC7V植田日銀1年、円安が歴代総裁で突出 政策運営の鬼門に-金融PLUS 編集委員 大塚節雄2024/04/08 05:00 日経速報ニュース 日銀の植田和男総裁が就任し9日で1年になる。かなりの難事業とみられた「異次元緩和」の解体にこぎ着けたのは大きな成果だ。市場安定を優先する姿勢が奏功したが、副産物として円安が進行した。この1年の円相場の下落率は13%(5日時点)に及び、変動相場制下の11人の歴代総裁のなかで突出する。日本が長く苦しんだ円高の歴史は過去のものとなり、新たな「円安との闘い」を予感させる。 迷走しつつ10年も続いた黒田東彦前総裁時代の異次元緩和をどう幕引きするか。植田氏の課題は就任当初から明確だった。長短金利操作(YCC)を昨年7月と10月の柔軟化で「骨抜き」にしたあと、マイナス金利政策の解除を周到な情報発信で市場に織り込ませた。3月、春季労使交渉で歴史的な賃上げ率がまとまると、間髪入れずにYCC撤廃や上場投資信託(ETF)購入終了を含む枠組み全体の解除に踏み切った。 正常化を探るなかでも円安が継続 その過程でも続いたのが円安だ。1年目の下落率が大きくなったのには、黒田体制の最終盤、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ減速を織り込むかたちで円が買い戻され、スタート地点が1ドル=132円台と円高ぎみになった影響はある。ただし植田氏が就任当初に「粘り強い緩和姿勢」を強調し、円売りに安心感を与えたのも事実だ。 戦後の変動相場下の総裁を振り返ると、就任1年目で円が下落したのは植田氏に加え、森永貞一郎氏(在任期間1974?79年)、松下康雄氏(94?98年)、黒田氏(2013?23年)のみ。森永氏は変動相場制移行後の円高が一服した時期、松下氏は「超円高」のピークとその後の急激な反転局面にあたった。興味深いのは「2年で2%の物価上昇」を旗印に異次元緩和をぶち上げた黒田氏の1年目(7%下落)に比べても、正常化を探った植田氏の下落率のほうが大きかったことだろう。 歴代10人の任期全体を通じた円相場の騰落をみると、ドル高是正を狙ったプラザ合意後の円の急騰局面に直面した澄田智氏(84?89年)を筆頭に7人までが円高となった。変動相場下の日本経済が長い「円高との闘い」の歴史だったことを映す。円安組はプラザ合意前のドル高期だった前川春雄氏(79?84年)、金融不安による日本売りに遭遇した松下氏、そして10年間で28%の円安を記録した黒田氏だ。 円高に苦しんだ印象の強い白川方明氏(2008?13年)の任期中の円の上昇率は8%と小さいが、12年に安倍晋三元首相が再起をかけた自民党総裁選で金融緩和によるデフレ脱却を打ち出し、先んじて円安に転じた影響が大きい。白川日銀は当初4年間に限れば26%の円高だ。 そう考えると、アベノミクスと黒田緩和による円安の威力の大きさがわかる。黒田日銀は当初こそ円安をテコに株高と景気押し上げを実現したが、日本経済の復活には至らなかった。輸入エネルギーへの依存の高まりと輸出産業の衰退で、円安がいくらグローバル企業の収益に恩恵を与えても効果が内需全体に広く行き渡りにくい経済構造に変わったからだ。黒田日銀の終盤は円安放置という批判にさらされることになった。2024/04/08 06:41:49252.名無しさんByC7V この構図は植田日銀にも一部引き継がれている。植田氏の1年目も、いくたびか円安けん制と思われる発言をするなど、対応に苦慮した。YCCの修正時には円相場の急変動に対処する異例の姿勢を強調してみせた。 一方で異次元緩和の解除に際し、植田氏が円安を追い風として利用した節もうかがえる。経済界や政府は円安が物価高に拍車をかけているとみて、陰に陽に日銀に対応を求めた。そうした空気に押されるかたちで、たいした摩擦もなく歴史的な政策転換を果たしたことは指摘できる。 円安けん制へと軸足を移行か 2年目の植田日銀は円安にどう向き合うのか。異次元緩和の解除時には短期の政策金利の調節を基本とする「普通の金融政策」への回帰を打ち出し、焦点の利上げについて「当面は緩和的な金融環境を維持する」と強調した。この「ハト派寄りの金融引き締め姿勢」が、さらなる円安を呼び込んだ。経済や市場の混乱を避けるため、円相場よりも債券市場の安定を優先したことを意味する。 この姿勢にも変化がみえる。植田氏は5日の国会答弁で「基調的な物価上昇率は徐々に今後高まっていくと考えている」と語った。3月には「基調的な物価上昇率がもう少し上昇すれば短期金利の水準の引き上げにつながる」と述べており、追加利上げを意識したとみられる。緩和解除後の債券市場の安定も踏まえ「為替よりも債券市場」という方針を微修正し、円安をけん制しようとする意図が感じられる。 では円安阻止のための利上げはありうるのか。賃金と物価の好循環が強まれば追加の利上げに動くだろうが、そうした環境が整う前に、円安を阻止するために実行するハードルは低くない。保有国債の削減に着手する手はあるが、当面、利上げに関しては状況が整えば速やかに動くと訴える「口先介入」にとどまるだろう。 ただし中東情勢の緊迫を背景に原油高が進むなか、円安によって海外発の物価高に再び弾みがつく可能性はゼロではない。心配なのは、大幅な賃上げでも物価高に追いつかず、いつまでたっても実質賃金がプラスに転換しない事態だ。消費の低迷が続き、内需には下押し圧力がかかる。 そんな状況で利上げをしたら、金利上昇と物価高のダブルパンチになる。それでも2%を上回る物価上昇がずっと続き、収束の見通しが立たないと判断すれば、景気後退も覚悟のうえで利上げに動かざるを得ないかもしれない。日銀としては最も避けたいパターンだろう。 交易条件の改善がどこまで続くか こうした観点から重要になるのが、企業の輸出入を巡る採算の動向だ。黒田時代の末期、21年から22年にかけて貿易を通じた稼ぎやすさを示す「交易条件(輸出物価指数を輸入物価指数で割った値)」が大きく悪化し、企業収益を傷つけた。 交易条件の前年同月比を簡易的に要因分解すると、この間、円安による影響はさほど大きくなく、主な悪化要因は外貨建て(契約通貨ベース)の輸入価格の急上昇だった。国内の価格転嫁も輸入コスト高騰に追いつかず、企業の採算が悪化した。となると賃上げの機運も十分には高まらない。円安はそうした厳しい状況の主犯ではないのに「円安悪玉論」「悪い円安論」が広がり、日銀を苦境に陥れた。 植田氏が就任した23年以降、交易条件は明確に改善に向かう。輸入物価の急騰が収まるなかで輸出物価が上向いたからだ。軌を一にするように、過去の輸入コスト増を国内の販売価格に転嫁する動きも進んだ。グローバル企業への円安効果もあって企業の賃上げ余力が高まり、2年連続で歴史的な賃上げが実現した。賃金と物価に前向きな力が働いている以上、同じ円安でも黒田時代のようには日銀に批判の矛先は向かいにくい。 ここ数カ月、円安は交易条件を押し下げる方向に作用しているが、その力は小さい。それよりも気になるのが、輸入価格の上昇収束による交易条件の改善効果が弱まりつつある点だ。今後、原油高の再燃が21?22年のように交易条件を悪化させ、そこに円安加速が重なるようなら、またぞろ「円安悪玉論」が浮上しかねない。為替の問題は引き続き政策運営の鬼門になりうる。 いずれにせよ「円安との闘い」の行方が、2年目以降の植田日銀の一つのカギを握ることだけは間違いない。【関連記事】・新興、未上場段階で充実を 急がば回れで脱・上場ゴール・トランプ氏と共鳴する陰謀論、ディープステートとは何か2024/04/08 06:42:55253.名無しさんxw7I0植田日銀1年金融正常化へ歩み(上)学者総裁、千慮で決断 異次元緩和に混乱なく終止符 国債やETF、難局なお2024/04/09 日本経済新聞 朝刊 日銀の植田和男総裁が就任して9日で1年たった。3月の金融政策決定会合では政財界との摩擦や市場の混乱なしに金融正常化へ一歩を踏み出した。異次元緩和の手じまいを託された「学者総裁」の1年目は順調な滑り出しとなったが、緩和下で積み上がった「遺産」(植田総裁)の処理はこれから始まる。 「金利のある世界は国民にとって幸せでしょうか」。約2カ月に1回、日銀本店で開かれる参与の会。植田総裁が参加者らに大きな「お題」を投げかけたのは、2023年12月の金融政策決定会合が迫ったときだった。 参与は財界首脳や有識者ら10人。日銀の業務運営に関する重要事項について正副総裁や審議委員でつくる政策委員会の諮問に応じ、意見も述べる。会には植田総裁のほか内田真一、氷見野良三両副総裁らも参加し、足元の経済情勢などについて意見を交わす。 「イノベーションこそがインフレをつくる」「長らくの低金利でゾンビ企業が生まれた」――。議論は熱を帯びた。参加者の一人は「民間企業の声に耳を傾け、議論することで『金利ある世界』に向かうコンセンサスをつくりたいと感じた」と振り返る。 政府は23年2月に金融政策への理論的な知見を持ち、専門性と国際性を兼ね備えた人材として植田総裁に白羽の矢をたてた。学者らしい振る舞いは日銀職員に安心感を与える一方、「政治と渡り合う胆力に欠けるのでは」との懸念もあった。 就任当初は黒田東彦前総裁の緩和路線を踏襲する意向を強調し、市場には「植田総裁はハト派ではないか」の見方も広がった。 この1年を振り返れば結果は逆だ。歴代まれにみる「決断した総裁」(日銀関係者)となった。 23年7月の決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)で長期金利の上限を引き上げると、同10月の再修正ではYCCを事実上、骨抜きにした。仕上げとなるマイナス金利解除を含め、政策変更は就任1年足らずで3回に及んだ。 「植田さんにはツキが味方した」。経済官庁幹部は振り返る。マイナス金利解除を決めた3月会合直前、連合が発表した24年春季労使交渉の賃上げ率が33年ぶりの高水準となり、政策変更の決め手となった。 自民党安倍派も23年末に発覚した政治資金問題で解散を決め、所属していた議員も異次元緩和の幕引きに表だって異を唱えることはなかった。 植田総裁は会食などの場で自説を披露するより質問することが多い。相手の話に最後まで耳を傾け、聞き終えた後に短めに自身の考えを口にする。関心は政治や雇用、テクノロジー、健康法など幅広く、ときにユーモアを交えて場を和ませる。 国会答弁でも事務方が用意した想定問答を読み上げるのではなく、できる限り自身の言葉で語ろうと意識している。 23年12月には「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と答弁し、政策の早期修正を意識した市場が円高・ドル安に振れる場面もあった。「(チャレンジングという言葉は)前から使っていたのに」と周囲に漏らしたという。 自分の言葉で語るスタイルは波紋を広げるときもあるが、政治家からは「誠実な人柄が感じられる」と好意的な評価が多い。 海外中銀トップとの親交も深まった。米連邦準備理事会(FRB)がホームページに掲載するパウエル議長の動静には、23年11月2日朝(日本時間同日夜)に植田総裁と10分間電話で通話した記録が残る。当時は10月末の決定会合でYCC修正を決めており、関係者は「植田総裁が修正内容を直接自分の言葉で説明したかったのだろう」とみる。 自民党の麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長はかつて日銀総裁の条件に「パウエル議長と直接電話して雑談から入れるような人」を挙げていた。財務官やアジア開発銀行(ADB)総裁を務めた黒田前総裁の存在感は大きかったが、植田総裁も海外中銀首脳と一対一で話せる関係をすでに築いている。2024/04/10 06:26:23254.名無しさんxw7I0 波乱なく日銀の大規模緩和を「普通の金融政策」に戻した植田総裁には、11年続いた異次元緩和が残した遺産処理が待つ。保有する600兆円近い国債は金融正常化を進める過程で財務の悪化要因になり、70兆円規模に膨らんだ上場投資信託(ETF)の処分のメドは立っていない。 「インフレ率が2%近傍で推移することが、ゼロより良いこととは何でしょうか」。23年12月、日銀が主催した非公開の会合で参加者が驚く場面があった。植田総裁自ら、政府・日銀が掲げる「物価2%目標」の妥当性を問う問題設定をしたと受け止められたためだが、「純粋に学者としての問いだった」(参加者)。 前提を根本から覆すような問いを投げかけつつ、議論を呼び起こして解決策を探るのが植田流だ。「反対なのか賛成なのか分からないことがある」。数十年来の知人は語る。限界まで考え続ける植田総裁は今後、金融正常化への道を探ることになる。【図・写真】植田総裁は歴代まれにみる「決断した総裁」となった2024/04/10 06:26:38255.名無しさんxw7I0植田日銀1年金融正常化へ歩み(中)利上げ「次は甘くない」――日銀総裁「緩和の度合い縮小も」 物価の基調で判断2024/04/10 日本経済新聞 朝刊 日銀の植田和男総裁は9日、参院財政金融委員会で半年間の金融政策の概要を報告した。今後について「(物価上昇率から一時的な変動要因を除いた)基調的な物価の上昇率が上がる中で緩和の度合いの縮小も考えないといけない」と述べた。データ次第での追加利上げに含みをもたせた。 植田氏はマイナス金利政策を解除した後の金融政策について「基調的な物価の上昇率はまだ2%を下回っていて、緩和的な金融状態を維持することが大切だ」と話した。「見通しどおりに2%に向けて上がっていけば、金融緩和を少し弱める判断も可能だ」と言及した。 基調的な物価上昇率については「向こう1年半~2年の間に向けて上昇していくと考えている」と語った。「インフレ率が我々の見通しに対し大幅に下振れするリスクはだいぶ低くなってきたとみている」と明かした。 日銀が保有する上場投資信託(ETF)の縮小策について問われ「様々な検討はしているが、具体的なコメントは控える」と答えた。「すぐに処分するとは考えていない。今後、処分するのかしないのか、する場合どういうやり方を取るか、少し時間をかけて検討したい」と説明した。2024/04/10 06:28:00256.名無しさんcRfi234年ぶり円安 152円割れで下値模索・主な節目一覧2024/04/11 07:05 日経速報ニュース 外国為替市場で円安・ドル高が加速している。10日のニューヨーク市場で円相場は一時1ドル=153円24銭と1990年6月以来およそ34年ぶりの安値をつけた。3月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を超えて伸び、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始が先送りされるとの見方から円売り・ドル買いが活発になっている。 日本政府・日銀は円買いの為替介入を示唆することでけん制姿勢を強めてきたため、市場では152円が「防衛ライン」としてみられてきた。だが、この水準を割り込んでも今のところ円買い介入が実施された様子はなく、円相場は節目らしい節目が見当たらず下値を模索する展開となっている。円相場の主な節目は以下の通り。 【対ドル相場の主な節目】 ・160円35銭 1990年の安値(90年4月2日) ・159円60銭 90年5月の安値 ・155円77銭 90年6月の安値 ・154円82銭近辺 ボリンジャーバンド(21日移動平均基準、3σ=シグマ)の円の下限 ・153円53銭近辺 ボリンジャーバンド(21日移動平均基準、2σ=シグマ)の円の下限 ★153円24銭 10日のニューヨーク市場でつけた安値 ・152円02銭近辺 一目均衡表(日足)の転換線 ・151円94銭 政府・日銀が円買い介入を実施した22年10月21日の安値(22年の安値) ・150円97銭近辺 21日移動平均線 ・150円 心理的節目 ・149円86銭近辺 一目均衡表(日足)の基準線 ・149円70銭 政府・日銀が円買い介入を実施した22年10月24日の安値 ・147円14銭近辺 200日移動平均線 ・145円90銭 政府・日銀が円買い介入を実施した22年9月22日の安値 ・145円 心理的節目 ・144円10銭 日米が円買いの協調介入をした98年6月17日の安値 ・140円40銭 大企業・製造業の24年度通期の想定為替レート(24年3月短観) ・135円20銭 日銀の黒田東彦前総裁が財務官だった02年1月31日につけた安値 ・133円台後半 98年4月9?10日に円買い・ドル売り介入を実施した際の水準 ・127円22銭 23年の高値(1月16日) ・121円70銭 日銀がマイナス金利の導入を決めた後につけた安値(16年1月29日) ・118円66銭 16年11月の米大統領選後につけた円の安値(12月15日) ・113円47銭 22年の高値(1月24日) ・101円18銭 コロナショック後の高値(20年3月9日) (注)チャート上の節目は11日早朝時点。一部データ元はLSEG。2024/04/11 08:39:15257.名無しさんcRfi2長期金利が0.8%超に上昇、昨年11月以来の水準-日銀追加利上げ観測https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-11/SAD0ALT0G1KW00 長期金利が昨年11月以来となる0.8%超えの水準に上昇した。日本銀行の追加利上げ観測が高まっている上、米国の長期金利が消費者物価指数(CPI)の上振れを受けて大幅に上昇したため売りが優勢となっている。 11日の債券市場で長期金利の指標となる新発10年国債利回りは0.83%と、2023年11月14日以来の高さになった。 日銀が3月に17年ぶりの利上げに踏み切った後も金融緩和環境を継続していることから長期金利の上昇は鈍かったが、ここにきて追加利上げを織り込む形で水準を切り上げてきた。世界が日銀の一挙手一投足を注視しており、長期金利上昇は投資マネーの国内回帰を促す大きな転換になる可能性がある。 日銀の植田和男総裁は先週の朝日新聞とのインタビューで、2%の物価目標達成に向けた「確度」がさらに高まれば、追加利上げを検討する考えを表明した。植田総裁は10日の国会では、円安進行で輸入物価が大幅に上昇し基調的物価が2%を超えて上昇するリスクが高まる場合、「金融政策の変更も考えないといけない」との見解を示した。 外国為替市場の円相場は、10日に発表された3月の米CPIを受けて一時1ドル=153円台に下落し、約34年ぶりの安値を更新。日米の金利差を意識した円売りドル買いが止まらず、トレーダーが警戒する為替介入レベルに突入した。日銀は好調な賃上げなどを受け、今月の金融政策決定会合で24年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しの上方修正を議論する公算が大きいという。2024/04/11 09:18:45258.名無しさんcRfi2債券寄り付き 長期金利、0.830%に上昇 5カ月ぶり高さ2024/04/11 09:13 日経速報ニュース 11日朝方の国内債券市場で、長期金利が大きく上昇(債券価格が下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.035%高い0.830%と、2023年11月上旬以来5カ月ぶりの高水準をつけた。3月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る伸びとなり、米利下げ観測が一段と後退。外国為替市場での急速な円安進行が日銀に追加利上げを促すとの見方も国内債の売りを促した。 10日発表された米CPIの上昇率は前年同月比3.5%と市場予想を上回った。変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数の上昇率も市場予想を超え、インフレが長期化するとの見方が強まった。米連邦準備理事会(FRB)の6月利下げは難しいとの見方から米長期金利は一時4.56%と23年11月中旬以来の高水準をつけ、国内金利の上昇圧力となった。 10日のニューヨーク外為市場では円相場が一時1ドル=153円台前半まで下落し、1990年6月以来およそ34年ぶりの円安・ドル高水準をつけた。円安に伴う輸入物価の上昇が国内のインフレ率を押し上げる可能性がある。日銀が2%の物価目標実現の確信を深め、円安進行を阻止する意味でも追加利上げに動くとの思惑が高まりやすいのも国内債の売りにつながった。 債券先物相場が大きく下落した。中心限月の6月物は前日比37銭安の144円75銭で寄り付いた。その後は一時144円65銭まで売られ、中心限月としては23年12月以来の安値をつけた。短期金融市場では大阪取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である6月物は取引が成立していない。2024/04/11 10:29:13259.名無しさん9ULsV企業の関心「金利より円安」 日銀マイナス金利解除1カ月 ドル高「想定外」の154円台 住宅ローン繰り上げ返済は限定的2024/04/19 日本経済新聞 朝刊 日銀がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切ってから19日で1カ月になる。預金などの金利上昇は小幅で「金利ある世界」に対し、企業や個人は冷静にそろり対応している。ただ外為市場では、日銀の利上げにもかかわらず円安・ドル高が進行する「想定外」の展開となっている。 日銀のマイナス金利解除後、金融機関は相次いで預金金利を引き上げた。三菱UFJ銀行などが先んじて普通預金金利を0.001%から0.02%に引き上げた。地銀は17日時点で全99行が追随し、普通預金金利を引き上げた。 明治安田生命保険が企業年金の予定利率を2025年4月に年1.25%から1.30%へ実質的に引き上げるなど、銀行以外にも影響が広がりつつある。 多くの銀行が支店を評価する項目に預金の増量を加えるなど、あまり力を入れてこなかった預金の獲得に乗り出している。ただ現段階では「普通預金の金利を上げても預金量が大きく伸びているわけではない」との声が多い。 金利が上がると返済の負担が重くなる住宅ローン。みずほ銀行の担当者は「繰り上げ返済など金利上昇を見越した動きは現時点で限定的」と話す。マイナス金利の解除が決まっても「今後の金利負担を心配するコールセンターへの入電は数十件程度にとどまった」という。 金利上昇を懸念する企業は、変動金利の借り入れを足元の金利水準で固定化する金利スワップを活用する。それでも大手行の営業担当者は「目立って利用が増えているわけではない」と明かす。 この担当者は「金利の見通しを尋ねられると思っていたら、むしろ為替を懸念する声が多くて驚いた」と語る。とりわけ卸売業など海外からの輸入に頼る企業は、金利上昇より円安がいつまで続くのかに神経をとがらせる。 マイナス金利解除前日の3月18日には1ドル=149円台だった。マイナス金利の解除で為替市場は円高に動くとの見方が強かったが、1カ月間強で約5円も円安が進み、15日には154円台まで下落し、34年ぶりの安値を更新した。 日銀が「当面緩和的な金融環境が続く」(植田和男総裁)という姿勢を強調しているのに対し、米景気が底堅くインフレの鈍化も緩やかなため、米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測が後退している。このため、日銀のマイナス金利解除でも日米の金利差が縮まらないとの見方が円安進行につながっている。2024/04/19 06:37:14260.名無しさん9ULsV 日銀からも「米国が利下げ局面にならないと円安・ドル高の構図は変わらない」(関係者)との声がもれる。 財務省・日銀による為替介入観測も強まっているが、抜本的な解決策にはならない可能性がある。円安が経済物価情勢に無視できない影響を与える状況になれば「金融政策の対応をもちろん考える」(植田総裁)。 為替政策は日銀の所管ではないが、動向を注視している。植田総裁は9日の国会答弁で一般論としながらも「金融政策は為替レートを決めるファンダメンタルズ(基礎的条件)の一つだと認識している」と説明した。 大幅な円安で、輸入物価の上昇が加速する可能性もある。中東の地政学リスクの高まりから原油価格にも上昇圧力がかかる。「先行きの物価見通しを引き上げ、追加利上げを後押しすることになる」(野村総合研究所の木内登英氏) 日銀がマイナス金利を解除して以降、金融政策の影響を受けやすい2年債金利は足元で0.28%台に上昇し、09年10月以来の高さとなった。足元の翌日物金利スワップ(OIS)市場では、7割程度の確率で7月に日銀が追加利上げに動くと予想している。 住信SBIネット銀行は17日、短期融資の基準となる短期プライムレート(短プラ)を0.1%引き上げて1.775%にすると発表した。 日銀が追加利上げに動けば、大手銀行(現在1.475%)も短プラを引き上げる可能性が高い。個人の住宅ローンの変動金利や中小企業向けの融資金利の基準となっており、「国民の生活に影響が出てくる」(財務省幹部)。このため、次の利上げはマイナス金利解除とは別の難しさがある。 金利の先高観を受け、新株予約権付社債(転換社債=CB)の発行に動く企業が増えている。CBは一定の条件で株式に転換できる権利が付いた社債だ。このオプションがあるため、一般的に利率は普通社債より低くなる。英LSEGによると、今年1~3月の発行額は約4500億円と04年以来の高水準だった。大和ハウス工業は1月に2000億円の発行を決めた。 日銀は追加利上げを急がない方針だ。「利上げの工程表があるわけではない。データを確認しながら、景気の基調を見極めていく」(関係者)。為替は注視しているが「円安が進んだから利上げに動くわけではない」(同)。円安が物価上昇をもたらしたとしても、日銀が重視する基調的な物価を押し上げているとはいえないとの見方だ。 FRBの利下げ観測が後退し、長期金利が約5カ月ぶりの高水準に上昇している。為替動向次第では市場が追加利上げを催促するように長期金利が上昇する可能性もある。2024/04/19 06:38:18261.名無しさん9ULsV日本でも予想インフレ率が上昇 日銀政策修正に追い風?-Up&Down2024/04/19 20:35 日経速報ニュース 国債の値動きを分析すると、市場関係者が見込んでいる物価予想をはじくことができる。今後10年間の物価上昇率の予想が15?16日には年1.499%まで上昇してきた。過去10年間ではみられなかった水準だ。円安や賃上げが物価の先高観を生んでいる。 国債には物価が上がると元本と利息が増える物価連動債がある。償還日など条件が同じ一般の国債と物価連動債の利回りの差には、売買する投資家の物価予想が反映されており、「ブレークイーブン・インフレ率(BEI)」と呼ばれる。 BEIは23年末には1.1%台で推移していた。3月末には1.3%台まで上昇したのち、4月に入って1.5%近くまで急速に上げ幅を広げている。 理論的には予想インフレ率は実際のインフレ率に影響を及ぼす。米連邦準備理事会(FRB)などの中央銀行が金融政策を決める際の参考情報となる。日本でも、海外市場のようにBEIが中銀の政策を読み解くうえでの重要指標になる局面が来たようにみえる。 もっとも、そう言い切れない面がある。日本の物価連動債は投資家層が限られているため流通市場での売買が低調なことだ。財務省の会合では証券会社から「一部の海外勢からは新規投資が見られるものの、裾野拡大とは言いがたい状況だ」との指摘もあった。 日本でもインフレが定着すればインフレをヘッジ(回避)する手段として物価連動債の需要が高まり、市場拡大につながる可能性もある。BEIが指標として成長するかどうか注目される。2024/04/19 23:39:27262.名無しさんZbOSW植田日銀総裁、物価上昇続けば「利上げ可能性高く」2024/04/21 日本経済新聞 朝刊 【ワシントン=新井惇太郎】日銀の植田和男総裁は米ワシントンで19日、「基調的な物価の上昇が続けば、金利を引き上げる可能性が非常に高くなる」と述べた。長期国債の買い入れ減額については「どのようなタイミングで、どのようなスピードで減らすかは時間をかけて検討し判断したい」と語った。 マイナス金利政策を含む大規模緩和の解除など日銀による最近の金融政策の変更をテーマに、米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長と対談した。同研究所は定期的に政策立案者や有識者を呼び対談イベントを開催している。 日銀は3月にマイナス金利を含む異次元緩和策を解除した。今後の金融政策運営では、賃金上昇を通じて物価が基調的に上昇するかを見極めようとしている。最近の円安が輸入品価格の上昇を通じ、国内の物価に与える影響も分析する方針だ。 植田氏は日本のこれまでの金融政策の教訓について「物価が上がらないという期待が定着すると、経済はその均衡から抜け出すのが難しくなる。そのような状態に陥らないようにするのが最善だ」と語った。2024/04/21 06:09:22263.名無しさん17sJJ債券寄り付き 長期金利、0.860%に上昇 中東の緊迫緩和や日銀利上げを意識2024/04/22 09:13 日経速報ニュース 22日朝方の国内債券市場で長期金利が上昇(債券価格が下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.015%高い0.860%をつけた。中東情勢の緊迫感がいったん和らいだのに加え、日銀による早期の追加利上げ観測が意識されて長期債には売りが優勢となった。 21日にはイラン最高指導者のハメネイ師が19日のイスラエルによるとみられる攻撃への報復などは言及しなかったと伝わった。イラン側が再び報復し、中東情勢が一段と緊張感を増すとの警戒が後退した。前週末に日経平均株価が急落するなか、相対的に安全な資産として買われていた債券には売りが出た。 日銀による追加利上げ観測も金利の上昇圧力となった。19日には日銀の植田和男総裁が米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長との対談で「基調的な物価の上昇が続けば、金利を引き上げる可能性が非常に高くなる」と語った。25?26日に開く金融政策決定会合で物価見通しを上方修正するとみられるなか、早期の追加利上げが意識されて国内債相場の重荷となった。 超長期債にも売りが優勢で、新発30年物国債の利回りは前週末比0.015%高い1.900%をつけた。債券先物相場は大幅に反落し、中心限月の6月物は前週末比35銭安の144円32銭で寄り付いた。 短期金融市場では大阪取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である6月物は取引が成立していない。2024/04/22 09:16:11264.名無しさんA1EUR日銀は金融政策維持との見方、タカ派的発信あるか注視-根強い円安でhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-22/SCBSUWT0G1KW00?srnd=cojp-v2市場は利上げ前倒し意識、展望リポートの物価見通しとリスクに関心国債買い入れ減額にも関心、「円安けん制の次の一手に」-野村証 日本銀行は今週の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決めるとみられている。34年ぶりの水準まで円安が進行する中植田和男総裁の記者会見などで追加利上げに向けたタカ派的な発信があるかが市場の関心事の一つになっている。 ブルームバーグが12-17日に実施したエコノミスト調査では、日銀が25、26日に開く会合について、ほぼ全員が金融政策の据え置きを予想した。次回の利上げ予想は10月会合が最多の41%となっているが、リスクシナリオでは最も早いタイミングとして52%が7月と回答した。 日銀は3月会合で17年ぶりの利上げなどを決め、大規模緩和から転換。当面は緩和的な金融環境が継続するとしたが、利上げ後も根強い円安圧力を背景に、市場では追加利上げの前倒しリスクが意識されている。円安が物価の基調に影響すれば政策変更の理由になり得るとする植田総裁の発言もあり、今回は総裁会見や声明文、新たな物価見通しとリスク動向から今後の政策展開の手掛かりを探る会合となりそうだ。2024/04/23 09:29:35265.名無しさんVsmri日銀会合注目点:新たな物価見通しと総裁会見、円安けん制の有無https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-24/SCDR34T1UM0W00?srnd=cojp-v2政策は現状維持の公算大、展望リポート基準に追加利上げの時期探る円は対ドルで34年ぶり155円台、円安対応で国債購入減額との見方も 日本銀行が26日に結果を発表する金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が見込まれている。34年ぶりの水準にある円安の影響を含めてインフレ圧力が意識される中、新たな経済・物価見通しと植田和男総裁の記者会見から追加利上げや国債買い入れなどの政策展開のヒントを探ることになる。2024/04/26 04:48:13266.名無しさんVsmriコラム:円安の背景に日米金利差、違和感覚える国力低下論=尾河眞樹氏https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/VZK6SLY3QJJDXPSLXLPKT4NHNU-2024-04-25/2024/04/26 04:50:58267.名無しさんVsmri日銀、国債購入縮小の方法検討 事実上の量的引き締めへ移行時事通信 経済部2024年04月26日07時58分配信 日銀が26日に開く金融政策決定会合の2日目の議論で、国債買い入れ縮小の方法を検討することが25日、明らかになった。3月にマイナス金利政策の解除など大規模緩和の正常化に踏みだしたが、国債買い入れについては減額を見送っていた。縮小すれば、日銀が保有する国債の償還ペースは、新規買い入れを上回ることになりそうで、国債保有残高を減らしていく事実上の量的引き締め局面へ移行することになる。大手生保、国債投資で判断割れる 日銀利上げ見極め―24年度運用計画 日銀は3月に17年ぶりに利上げに踏み切った。しかし、国債の大量購入を続けて潤沢にマネーを供給する金融緩和環境を維持しているため外国為替市場で円安が進む一因となっている。 3月に政策変更を決めた際の声明文で、日銀は国債について「これまでとおおむね同程度の金額(月間6兆円程度)で買い入れを継続する」と明記。実際の買い入れは、市場の動向や国債の需給を踏まえて実施していく方針を示していた。 25日に始まった今回の会合では、3月に決めた国債買い入れ方針の下で、実際に購入額を縮小していく方策を議論。日銀が公表している月間の国債購入予定額(約5兆~7兆円)についても、引き下げを含め見直す可能性がある。 長期金利は、3月の政策変更後も比較的安定的に推移している。4月から国債入札が減額されたこともあり、日銀は今後買い入れを多少減らしても金利の急騰は避けられると判断しているもようだ。3月に長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作を撤廃したことを踏まえ、金利の形成をより市場に委ねる狙いもある。2024/04/26 08:45:59268.名無しさんVsmri34年ぶり156円台 円安是正、介入に委ねた日銀2024/04/26 14:39 日経速報ニュース 外国為替市場で円安・ドル高が加速している。26日には円相場が約34年ぶりに1ドル=156円台に下落した。この日まで開かれた金融政策決定会合を受け、歴史的な円安を是正するために日銀が「タカ派」に傾くとの思惑が肩透かしに終わり円売り・ドル買いに拍車がかかった。日銀は円安対策を円買いの為替介入に委ねた格好だ。 /home/member/news/202404/ucljpg_36b7d31552f4676aaaa0aae966035f78.jpg?format=raw 26日午後の東京市場で円は一時156円21銭近辺まで売られ、1990年5月以来の円安・ドル高水準をつけた。円安は対ドルだけにとどまらない。対ユーロでは1ユーロ=167円48銭近辺と08年8月以来の安値を更新。対オーストラリア(豪)ドルでも1豪ドル=102円台と14年以来の安値圏で推移するなど円は全面安の様相を呈している。 歴史的な円安に歯止めをかけるため日銀が一段の正常化に動くのではないか――。今回の決定会合ではこんな思惑が実現することはなかった。日銀は政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0?0.1%で維持。減額が噂された国債買い入れについては「3月に決定された方針に沿って実施する」と説明した。 あわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では「当面、緩和的な金融環境が継続する」とも説明。日米金利差がドライバーとなっている円安・ドル高を止めるため、日銀が政策正常化の歩みを進めるとの市場の見方に反し、「追加利上げに対する明確なヒントはなかった」(三菱UFJ銀行の井野鉄兵氏)といえる。 2%の物価安定目標の実現にまい進する日銀が対応を見送ったことで円安に歯止めを掛けるのは財務省など日本政府側に責任が委ねられた形になる。しかし、市場では円買い介入で円安・ドル高が止められるかどうかに懐疑的な声はなお多い。 ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融氏は「足元の円安・ドル高は、米連邦準備理事会(FRB)による利下げが後退するなかでの『ドル高』の面が強い」と指摘する。たとえ介入で一時的に円相場を押し上げたとしても、大きく開いた金利差を頼りにした円売り・ドル買いが根強く「介入は効かないと露呈しかねない」と懸念する。 イエレン米財務長官は25日、ロイター通信のインタビューで足元のドル高について「米経済の強さと金利の高さ」を反映したものだと説明。為替介入は「極めてまれで例外的な場合に限る」とクギを刺しつつ、米政府としては積極的にドル高を是正しない考えだ。 ドルの買い意欲の高さはあちこちで聞かれる。BofA証券の山田修輔氏は最近の面談を踏まえ、ヘッジファンドなど海外投資家が「ほぼドルに強気の姿勢だが、まだ買ってはいない」と話す。東京市場では「中小企業を中心に輸入企業は開店休業状態」(国内銀行の為替担当者)だといい、ドル資金の手当てが追いついていない国内の実需筋も一定数いるとみられる。 26日午後には日銀の植田和男総裁が記者会見に臨む。さらなる円安進行を受けて追加利上げの思惑を強めるような発言をすれば円買い・ドル売りが活発となる可能性は残り、もちろん日本の通貨当局が日銀総裁の会見が終わるとともに円買い介入を実施する22年9月の再来を見込む声はある。しかし、ドル高という要因が変わらないなかでは円相場が上昇したとしても短命に終わりそうな気配だ。2024/04/26 14:45:06269.名無しさん76wpH日銀総裁、円安「政策の判断材料に」 物価影響を見極め 追加利上げ見送り2024/04/27 日本経済新聞 朝刊 日銀は26日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、最近の円安進行について基調的な物価動向に大きな影響が生じれば「政策の判断材料になる」と語った。物価への影響を見極める姿勢も示したが、外国為替市場では早期利上げにつながるような発言がなかったとの見方から一時、円売り圧力が強まった。(関連記事総合2、総合4面に) 日銀は政策金利を0~0.1%程度(無担保コール翌日物レート)に据え置き、追加利上げを見送った。 同日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート=総合2面きょうのことば)」では、消費者物価指数(CPI)の前年度比上昇率は変動の大きい生鮮食品を除いて24年度は2.4%から2.8%、25年度も1.8%から1.9%に引き上げた。初めて示した26年度は1.9%と見通した。 金融政策の現状維持が予想されていたことから、市場参加者は植田総裁による記者会見での発言に注目していた。記者会見では、円安進行やその影響に関する質問が集中した。 植田総裁は「金融政策は為替レートを対象にしていない」との立場を明確にしたうえで「円安で(一時的な変動要因を取り除いた)基調的な物価上昇率に無視できない影響が発生すれば政策の判断材料になる」と述べた。 一方で最近の円安について「基調的な物価上昇率への大きな影響はないと判断した」と話した。影響は無視できる範囲だったかと問われ「はい」と答えた。そのうえで今回利上げを見送った理由を「基調的な物価上昇率は2%を下回っている。3月から4月にかけてはっきり高まったとは考えていない」と説明した。 日銀は追加利上げの時期について、基調的な物価上昇率が2%に達する可能性が高まっていくか見極めたうえで判断する方針だ。 今後の金融政策を巡っては「賃上げがサービス価格にどう反映されるか。円安や原油高に伴う輸入価格の上昇が広い物価の水準にどう影響していくか。今後の賃上げの展開を見つつ、基調的な物価上昇率の動きを判断する」との考えを示した。 植田総裁は「基調的な物価の上昇率が見通しに沿って上昇すれば政策金利を引き上げる」とも話した。 ただ市場では、植田総裁が「当面は緩和的な金融環境が続く」と発言したことなどから日米金利差が開いた状態が長期化するとの観測が強まり、記者会見中に円売りの勢いが増した。 国債の買い入れについては、声明文で「3月会合で決定された方針に沿って実施する」と明記し、現状維持となった。 日銀は3月会合でマイナス金利政策を含む大規模緩和を解除し、17年ぶりの利上げとなった。2024/04/27 06:42:00270.名無しさんX70iM植田日銀、円安騒動の陰で研ぐタカの爪 利上げ4?9回?-編集委員 大塚節雄2024/04/27 07:49 日経速報ニュース 植田日銀が26日の金融政策決定会合で政策金利を据え置き、国債の購入方針も変えなかった。何らかの円安への対応に期待していた市場は「ゼロ回答」を吹聴し、一段の円売りに走った。だが、円安騒ぎの陰で日銀は連続利上げに向けた布石を着実に打っている。向こう2?3年をメドに1?2%の利上げすら示唆してみせた。 円安騒ぎがなかったら、市場はむしろ植田日銀の「タカ派ぶり」に驚いていたかもしれない。仮に円安で追い込まれたふりをしながら金融政策の正常化への舞台を整えているのだとしたら、かなりの高等戦術と言えまいか。 「基調的」を巡るすれ違い機に158円台 「基調的な物価上昇率」という言葉の分かりにくさが、すれ違いと混乱を呼び込んだのかもしれない。26日のニューヨーク外国為替市場で円相場は1ドル=158円台前半まで下落した。 植田和男総裁は18日のワシントンでの記者会見で、円安について「基調的な物価上昇率に影響を与えるという可能性はありうる」と前置きしたうえで、「無視できない大きさの影響が発生した場合は、場合によっては金融政策の変更もありうる」と語った。「基調的」という言葉に注意を払わなかった市場関係者は、円安に対応した利上げを視野に入れていると解釈した。 そして今回の決定会合。 「仮に基調的な物価上昇率に無視し得ない影響が発生するということであれば、金融政策上の考慮、あるいは判断材料になる」 「基調的な物価上昇率に、ここまでの円安が今のところ大きな影響を与えているということではない」 植田氏は会見で、ワシントンでの発言の意味するところを詳しく解説した。ところが説明をすればするほど、「円安に金融政策で直接対応するつもりはない」という日銀にとっての「正論」がクローズアップされ、円売り勢を勇気づける結果となった。 植田氏が会見で何度も言及した「基調的」という言葉は、一時的な要因を除いた、長い目で見た「物価の実力」のこと。表面上の物価上昇率は目標の2%を超える期間が続くが、基調はまだ2%を下回るとみている。 円安は、まずは輸入物価を押し上げ、国内で価格転嫁が進むにつれ、消費者物価に上昇圧力をかける。日銀が「第1の力」と呼ぶものだ。次に、この物価高の圧力が賃金上昇に波及すれば、国内需要に根ざす「第2の力」が働き始める。やがて賃上げが今度は物価を押し上げ、賃金上昇を伴う緩やかな物価上昇が自己回転する「好循環」につながる。このメカニズムによって動くのが、基調的な物価上昇率だ。 つまり円安という要素は、最終的に好循環のさらなる進展をもたらし、基調的な2%の物価上昇の定着に向けて寄与していると確信できて初めて、利上げの判断に関わってくる。円安が金融政策を動かすとすれば、そんな回りくどい道のりになる。「円安が進んでいるせいで消費者の生活が大変だから、物価高を止めるために利上げをする」と言っているわけではない。 利上げシナリオの「本丸」は円安にあらず 気をつけたいのは、日銀が実際に見据える「本丸」の利上げシナリオは、必ずしも円安とは直接の関係がないことだ。円安の影響に配慮する姿勢をみせつつも、日銀が金融政策の「次の一手」の機を探るうえで決定的に重要だとみているのは、今回の円安よりも前からすでに進み始めている好循環の見極めだ。 今年の春季労使交渉では大企業を中心に歴史的な賃上げがまとまりつつある。中小企業への波及がしっかりとみえ、人件費増が適正に販売価格へと転嫁される流れが確認できれば、好循環が続く確度が高まる。追加の利上げは十分に正当化される。 ここに円安の影響が加わると、好循環の起点である第1の力に、もう一回、上向きの力が加わる。うまくいけば賃金上昇に「プラスアルファ」の効果があるかもしれないが、本丸である好循環の見極め作業のなかでは、主役ではない。2024/04/28 06:22:28271.名無しさんX70iM 植田日銀は今回の一連の説明で、為替や円安というキーワードをちりばめつつ、ウソのない範囲で円安のけん制を試みたのか。あるいは、円安に背中を押された構図を演出しながら、本丸の利上げに向けた布石を打とうとしたのか。考えられる経路を客観的に語ったまでだと日銀関係者は深読みを制するが、ひょっとしたら両方を狙ったのかもしれない。 それよりも注目すべきなのは、日銀が円安は関係なく、基調的な物価上昇率が2%に上向いていく可能性に自信を示したことだ。 今回から2026年度まで予測期間を延ばした「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、基調的な物価上昇率が「見通し期間後半には『物価安定の目標』とおおむね整合的な水準で推移する」と判断を進めた。 植田氏は会見で、その意味するところを踏み込んで語った。 「基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えている」 そのうえで、利上げの終着点に関して重要な示唆を示した。 「とくに見通し期間後半について、この(見通し)通りの姿になっていくということであれば、政策金利は、ほぼ中立金利の近辺にあるという状態にあるんだろうなという展望は持っている」 中立金利とは、現在の日本経済にとってちょうどよい、「景気をふかしも冷ましもしない政策金利」のことだ。植田氏は「中立金利の水準についてかなりの不確定性がある」としつつ、「なるべく早い期間にもう少し絞るという作業を続けたい」と語った。しかも「少しずつ金利が上がっていく際に、それに対して経済がどういう反応を示すかということに関する情報が非常に重要になる」とも言及し、連続的な利上げのなかで中立金利を探っていこうとする姿勢をみせた。 中立金利は「1.1?2.4%」を想定? 植田氏の頭にある数字を類推しよう。日銀の企画局が昨年12月の多角的レビューのワークショップで示した内外5つの推計によると、実質値でみた中立金利は「マイナス1.0%からプラス0.5%」の範囲内にある。 日銀内からは、もう少し狭く「マイナス0.4?プラス0.4%」という相場観も聞かれる。この推計は23年1?3月期が最新値。現時点で改めて推計すれば、もっと高まっている可能性もあるようだが、保守的にみて「0%」と置いてもおかしくはないだろう。 名目の中立金利を導くには、ここに予想インフレ率を加える必要がある。予想インフレ率は今回、植田氏がヒントを出している。家計や市場、企業のデータを加重平均した値は「少しずつ上昇を続けてきていて、まあ1%台半ばくらいにあるのかな」という。 だとすれば、現時点では1.5%前後。予測期間の後半にかけては2%程度で固定(アンカー)されるとみられるので、「1.5?2.0%」の間ということだろう。 この結果、名目の中立金利(実質金利+予想インフレ率)は、広くとれば「1.1?2.4%」ということになる。もちろん日銀の公式見解ではないが、植田氏がこの範囲から「もう少し絞る」意向を持っているという推論は一応成り立つ。 26年度までの見通し期間の後半に政策金利が中立金利に到達するとみているとすれば、向こう2?3年に4?9回ほどの利上げを実施する計算になる。いくら今回の円安がインフレ圧力の強い米国発のものだとはいえ、市場がこのシナリオを完全に織り込めば、日米金利差もさすがに縮小しそうだ。今回もっと強調していれば、円安けん制の材料として、明確な「タカ派パワー」を持ったかもしれない。 もちろん計画がこの通りに進む保証はないが、円安に追い込まれたように見える構図のなかで植田日銀が着々と練る利上げ計画にも注意を払ったほうがよいだろう。【関連記事】・円安加速、34年ぶり158円台 米「3高」に歯止め利かず・日銀、くすぶる早期利上げ観測 米との金利差縮まらず2024/04/28 06:23:24272.名無しさん5WwCq円買い介入観測、29日に5兆円規模か 市場推計2024/04/30 19:40 日経速報ニュース 市場参加者の間で30日、政府・日銀が29日に5兆円規模の円買い介入を実施したとの観測が広がった。日銀が30日発表した5月1日の当座預金残高の見通しによると、29日の為替介入を反映する「財政等要因」による減少額が7兆5600億円で、為替介入を反映していない市場の当初予想とずれが生じたためだ。 為替介入は財務省が判断し、日銀が実行する。円買い介入を実施すると、民間金融機関が日銀に預ける当座預金から円が国庫に移動し、当座預金が減少する。決済は一般に2営業日後になるため、29日の介入が5月1日の残高に反映される。銀行間の資金のやりとりを仲介する短資会社の予想(2兆500億?2兆3000億円減少)との差額が介入の実施額と推測できる。 29日は円相場が一時1ドル=160円まで急落した後、154円台まで円高が進んだ。断続的な円買いが続いたことで、市場では為替介入との観測が強まった。財務省の神田真人財務官は30日、介入の有無について「私から申し上げることはない」と語った。 日銀が公表する当座預金残高の見通しを使う推計には誤差もありうる。財務省は1カ月ごとに為替介入の実績を公表している。介入を実施したかどうかは、5月31日に公表される、4月26日から5月29日分の合計介入額で正式に明らかになる予定だ。【関連記事】・円取引量、22年介入に匹敵か 「激しい値動きに声失った」・円急落で遠のく実質賃金プラス 1ドル170円なら暗雲・神田財務官「国際ルールに則し対応」 介入有無は話さず・「為替介入騒ぎ」でしたり顔 円乱高下を乗り切るFX投資家2024/04/30 21:05:16273.名無しさんkyxQz日銀、国債「変動幅もち柔軟に」 3月会合議事要旨2024/05/03 日本経済新聞 朝刊 日銀が2日公表した3月の金融政策決定会合の議事要旨で、今後の国債の買い入れ額について複数の政策委員が「上下に多少の変動幅をもつ形で柔軟に決めていくべきだ」と指摘していたことが明らかになった。このうち一人は「例えば上下に1兆~2兆円程度の幅が適当」との見解を示した。 日銀は3月会合で長期金利を低く抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃し、国債買い入れは「これまでとおおむね同程度の金額」で続けると決めた。声明文の脚注で「足もとの月間買い入れ額は、6兆円程度」とも示したが、既にこの3月会合で委員の間で将来の減額を見据えた議論が起きていた。 複数の委員が「将来的にはどこかのタイミングで国債の買い入れを減額し、保有残高も償還に伴い縮小させていくことが望ましい」と指摘した。異次元緩和下での買い入れで国債保有割合(国庫短期証券を除く時価ベース)は発行残高の過半に達する。市場流動性の低下といった副作用の懸念から減額を求める声が出ているようだ。 その一方、複数の委員が「流動性の回復過程で、経済・物価情勢の変化を受けて長期金利のボラティリティー(変動率)が高まりやすくなる」とし、国債買い入れを当面続けて金利急騰に備える重要性を強調した。 「急激な市場変動を避ける観点から時間をかけて対応することが適当だ。その間に債券市場の参加者が拡大することを期待する」との意見もあった。 日銀によると、3月の買い入れ実績は5.9兆円、4月は5.8兆円だった。3月会合後に公表した買い入れ計画では4~6月は月あたり計4.8兆~7兆円の範囲内で購入するとしている。市場からは下限の規模の購入額が続けば、宣言なく緩和を縮小する「ステルステーパリング」になるとの見方がでている。2024/05/03 06:37:38274.名無しさんlSsk0「日銀は対話できない」 円急落で変わる政府との距離感-竹内宏介2024/05/20 05:00 日経速報ニュース 「日銀は円安圧力を緩和してほしい」「円安による過度な物価上昇も懸念されるなか、政府・日銀は適度な物価上昇の実現を」――。岸田文雄首相と植田和男日銀総裁がそろって出席した10日の経済財政諮問会議。民間議員から日銀に為替に絡めた注文が相次いだ。 発端は植田氏による4月26日の金融政策決定会合後の記者会見だ。いまの円安について、基調的な物価上昇率への影響を無視できる範囲だとの見解を示した。これが円安容認発言ととられて円相場は1ドル=160円まで急落し、数兆円規模の為替介入を引き起こしたとみられている。 安倍・菅政権で官邸官僚と呼ばれた人物は「日銀に独立性があるとはいえ擦り合わせなくあの発言をしたとすれば、普通は責任問題だ」と断言する。諮問会議に参加している経済官庁のトップも「日銀は対話ができていない」と評した。 3月までは日銀のやり方に公然と文句をつける動きはなかった。「国会議員の大半が『日銀でうまくやってくれ』という思いだった」(財務省幹部)。緩和的環境の維持を求めながら金融政策の正常化は黙認した。 その後しばらく市場が安定したことで「日銀は万能」との期待度を高めてしまったのかもしれない。4月中旬、ある閣僚経験者は日銀幹部から「米国がここまで利下げできない環境になると思っていなかった」との説明を受け、周囲に「日銀が利上げして円安・物価高に対応するのだろう」と漏らした。 その後、日銀発ともいえる円急落で経済再生を売りにする政権のスタンスは変わった。3泊6日の海外訪問を終えた直後に首相が公邸に呼んだのは政治資金規正法の改正作業を手掛ける自民党議員だったが、翌日の7日には植田氏と向き合った。 植田氏は首相との面会後、記者団に「円安については日銀の政策運営上、十分注視をしていくことを確認した」と述べた。政府内では「官邸が呼び出して発言を修正させた」「日銀に弁明の機会を与えた」と様々な解釈が飛び交う。 見方が一致するのは、いまこの瞬間は政治とカネに並び「円安」が官邸の関心事項であるということだ。円安は原材料価格の上昇を通じて国民負担を増やすものと受け止められている。 ただ円安是正のための利上げはハードルが高い。内閣府副大臣として日銀の政策決定会合に出たこともある越智隆雄衆院議員は「歴史的に日銀は為替と絡んで動いたとみられるのを嫌がる」と話す。 しかも利上げとなれば住宅ローンや中小企業の資金繰りへの影響を不安視する声が高まる。政治情勢は少なくとも9月の党総裁選まで落ち着かない公算が大きく、首相官邸や政治家が利上げに表立って賛成すると考えにくい。 政権幹部は「当面は利上げはできない。大事なのは日本が成長する可能性を示して、いつか利上げが起きると思わせることだ」と本音を語る。 「円安是正」と「利上げの回避」を同時に求める政権と与党の姿勢は身勝手ともいえる。霞が関では「いまの官邸が骨を拾ってくれるとは思えない」との見方も広がる。日銀が市場と政府との対話をより求められるようになったことで、金融政策の行く末は見通しにくくなった。【関連記事】・植田日銀総裁、為替変動「過去より物価に影響しやすく」・日銀総裁、円安「政策の判断材料に」 物価影響見極め・「歴史的円安」解消、なお時間 金利差より厚い需給の壁2024/05/20 06:12:42275.名無しさんlSsk0長期金利、11年ぶり高さ 日銀利上げよりQTに身構え2024/05/20 12:06 日経速報ニュース 国内債券市場は、日銀の次の一手を巡って利上げよりも先に量的引き締め(QT)に身構えている。それを示唆するのが2年物と10年物の国債利回り差の拡大傾向だ。長期金利の指標となる新発10年債利回りは20日午前、前週末を0.025%上回る0.975%に上昇(価格は下落)し2013年5月以来、11年ぶりの高水準をつけた。政策金利の影響を受けやすい2年債利回りより、資産残高を縮小するQTが響く10年債利回りの上昇ペースが速くなっている。 /home/member/news/202405/ucljpg_4e948a751d26885c3be9364db330ceda.jpg?format=raw 2年債利回りも前週末を0.005%上回る0.335%に上昇したが、2年と10年の利回り差は複利で0.632%に広がった。利回り差は3月末時点の0.546%から拡大傾向が強まっている。 岡三証券のチーフ債券ストラテジスト、長谷川直也氏は「日銀の国債購入減額がどのようなペースでどこまで減額されるかの不確実性の高まりが金利上昇を招いている」と指摘する。そのうえで2?10年債利回り差の拡大について「購入減額の影響が効きやすい10年債利回りの上昇ペースが速いのは『利上げより国債購入減額が先』という市場の見方を映している」とみていた。 日銀が今月9日に公表した4月の金融政策決定会合の「主な意見」では、追加利上げに向けた意見があったのと同時に国債買い入れの減額を支持する見解も相次いだ。国債購入に関しては「どこかで削減の方向性を示すのが良い」「バランスシートの圧縮を進めていく必要がある」などといった声があった。 日銀はさっそく地ならし的な動きをみせている。13日の国債買い入れオペ(公開市場操作)では「5年超10年以下」の1回あたりの通知額を4250億円と前の回の4750億円から500億円減らした。17日のオペも5?10年はこの額を維持した。月内に予定する23、31日のオペでも同額なら5?10年に限ると5月の月間購入額は1兆7000億円程度と4月の1兆9022億円(落札ベース)から2000億円減る。 みずほ証券のチーフエコノミスト、小林俊介氏は「量的縮小政策は準備万端」とみる一方、「代わりに追加利上げは遠ざかった公算が大きい」と話す。仮に6月13?14日の決定会合でQTを決めた場合「日銀はひとまず経過観察する誘因に駆られ、(次の)7月会合で連続的に政策修正(利上げ)する可能性は低下する」という。2024/05/20 13:11:08276.名無しさんFp0Z3長期金利、0.985%に上昇 2013年5月以来の高水準2024/05/22 09:57 日経速報ニュース2024/05/22 10:03:13277.名無しさんtn4Co金利上昇 試される耐性 企業・家計、借り入れコスト増 金融正常化織り込む2024/05/23 日本経済新聞 朝刊 国内債券市場で長期金利は2013年以来11年ぶりに1%台に上昇した。この間、日銀の金融緩和を通じた低金利や円安の恩恵を受けて企業は稼ぐ力を高めてきた。30年あまり続いた経済停滞から脱却しつつある局面で、日本経済は金利上昇に対する耐性が試される。(1面参照) 長期金利が最後に1%台をつけた13年当時と比べると日経平均株価は1万6200円(13年末)だったのに対し、23年末は3万3400円まで上昇した。今年に入って史上最高値を記録している。 堅調な上場企業の業績が株高をけん引する。24年3月期の純利益(金融など除く)は前の期比16%増の約39兆円と3年連続で過去最高となった。 雇用環境も軒並み改善している。完全失業率は23年平均で2.6%と13年平均(4.0%)より低下した。1倍を割り込んでいた有効求人倍率は1.3倍に上昇した。24年春季労使交渉(春闘)では賃上げ率が33年ぶりに5%を超えた。 企業は金利上昇を前提とした行動に動きつつある。上場企業の有利子負債は23年3月末で263兆円と14年3月末から4割増えたものの資産全体や自己資本の伸びに比べれば緩やかだ。自己資本に対する有利子負債の比率は低下傾向にある。手元資金も23年3月末で約105兆円と積み上がっており、財務基盤は強固だ。 設備投資意欲はなお強い。日銀の3月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の24年度の設備投資額は前年度比8.5%増とバブル期だった1989年以来の高い伸び率を見込む。 経団連の十倉雅和会長は21日の記者会見で「企業は多かれ少なかれ有利子負債を抱えているので損益にインパクトはある」と語った。一方で「金利のある世界によって、むしろ事業の優先順位付けや規律ある投資が進む」とも述べた。 長期金利の上昇は、金融機関による資金運用の改善につながるため、銀行の定期預金金利や生命保険の一部商品の利回りなどが上がる要因になる。一方で銀行が提供している固定型の住宅ローン金利の引き上げにつながる。大手銀行は5月にそろって10年固定型の金利を引き上げた。 みずほリサーチ&テクノロジーズによると、家計では長期金利が仮に3.3%まで上昇した場合、26年度に全世帯平均で年間7.7万円のプラス効果があると見込む。 世帯や世代によっては住宅ローンにかかる金利の上昇でマイナス効果になる場合もある。それでも金利のある世界は「現預金が1000兆円あるのに対し、住宅ローンのような借り入れは400兆円に満たない」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)ため、家計に追い風とみる向きが多い。 家計はインフレ圧力も見越して行動している。家計資産の株式・投資信託比率は13年末の13.8%から23年末に17.8%まで上昇した。現預金の資産価値が目減りすることへの対応ととれる。 今後、重要になるのは物価上昇が賃上げにつながり、その分をさらにモノの価格に転嫁する「賃金と物価の好循環」を続けられるかどうかだ。 賃金から物価の影響を除いた実質賃金は3月まで24カ月連続のマイナスを記録した。今秋ごろにプラス転換を見込む声が多いが、円安や原油高によるコストプッシュ型の物価高の再来が懸念材料だ。 政府部門には逆風となる。国債残高は22年度末で約1000兆円と13年度比で300兆円ほど増えた。国債は60年かけて償還するルールがあり、低金利で発行した国債を借り換える際に高い金利の国債に置き換わる。当面はインフレに伴う名目経済成長による税収増が先行するものの、財政健全化への対応はいっそう重要になる。 日銀は3月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃し、長期金利の水準について「金融市場において形成されることが基本」(植田和男総裁)との姿勢をとる。当面は異次元緩和下と同程度の額での長期国債の買い入れを続ける方針を示しているが、日銀として目指す長期金利の水準はなくなった。 金利先高観があるなかで銀行などは国債保有の積み増しには慎重だ。あるメガバンクの運用責任者は「10年物は1.2~1.5%にならないと買わない」と語る。日銀が追加の金融政策修正に動くという市場の思惑も長期金利の押し上げ圧力になっている。2024/05/23 06:24:47278.名無しさんtn4Co円相場、無視できぬ国内金利の上昇 「逆相関」終了も2024/05/23 09:51 日経速報ニュース 外国為替市場で円相場がじりじりと下値を切り下げている。日銀の利上げ観測や国内債利回りの上昇にもかかわらず、金融引き締めが長引きそうな米国との金利格差が縮まらないためだ。円を元手にドル建て資産などで運用する円キャリー取引も継続しているが、これまで数年にわたり続いた円と国内金利の「逆相関」が終わる局面に備える市場参加者もじわりと広がってきた。 23日朝方の東京市場で円は1ドル=156円70銭台で推移している。米連邦準備理事会(FRB)が22日に明らかにした4月30日?5月1日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けて米長期金利が上昇し、円売り・ドル買いにつながった。 一方、22日に日本の長期金利が節目の1%に達したことは海外でも多数の報道があった。円相場の反応は今のところ鈍いものの、投機筋を中心に日本の金利上昇への認識は広がっている。 あるヘッジファンドでは先日、日本の新発30年物国債利回りとドルの対円相場の日足チャートを並べ、今後の運用方針を協議した。2022年以降の2つのチャートは極めて似た形をしており、主に米国側の要因で円安・ドル高が進んだのを象徴する。このファンドでは「日銀の追加利上げや米国の利下げ開始が視野に入り、(主に短期金利差の影響を受ける)円キャリー取引をこれまでのようには積み増せないだろう」との考えに傾きつつある。 市場では「日銀が円安対応として利上げを急ぐ」との予想も多い。日銀の政策正常化が進むとの警戒感が強まれば、国内株式相場がダメージを受ける公算が大きい。今週は米ゴールドマン・サックスが「日銀は持続的な利上げサイクルに入った」「26年末に国内長期金利は2%まで上がる」との見通しを示し、話題になった。株安で海外勢を含む投資家の体力が奪われると、円キャリー取引の圧縮を伴う日本への資金還流が加速しかねないというのが外為市場の「常識」だ。 日銀利上げや国内債利回りの上昇を日本国債と円の信認低下に結びつける声もあるが、日本経済の弱さが意識される事態になれば日本株にはマイナスだ。これもめぐりめぐって円高要因になる。 日本株安と円高の同時進行は今のところリスクシナリオの1つに過ぎない。ただ、投機筋などが取引に用いるコンピューターにはこうしたリスクシナリオが常にインプットされ、市場に流れてくる材料と結びつけて人工知能(AI)などが投資判断をする。タイミング次第では国内金利の上昇が突然、教科書的な円高要因として復権するかもしれない――。円の弱気派の緊張感は徐々に高まっている。2024/05/23 10:12:46279.名無しさんO758M日銀国債オペ、驚きの「札割れ」 減額後押しか2024/05/23 16:04 日経速報ニュース 日銀が23日に実施した国債買い入れオペ(公開市場操作)で、残存期間「1年超3年以下」の応札額が通知額に届かない「札割れ」となった。日銀が異次元緩和を導入した2013年4月以降で初めてとなる。日銀に急いで国債を売りたいという投資家が乏しかったのを示す。需給の引き締まりは日銀による国債購入減額を後押しすることになりそうだ。 /home/member/news/202405/ucljpg_10bb5d495bc15997a6f8891f2e9e286d.jpg?format=raw 日銀が23日に実施した定例の国債買い入れオペ3本のうち1?3年については、3750億円の購入予定の通知額に対し、応札額は3564億円にとどまった。応札額すべてを落札した。市場関係者からは札割れという結果は「想定外だった」との声があがった。 23年以降の1?3年のオペを振り返ると、同1月は1回あたり5000億円で月4回だった。当時は長短金利操作(YCC)のもとで金利上昇圧力が高まったため、日銀は定例オペ以外にも臨時オペを打って金利上昇を抑えた。同2月からは1回あたり4250億円(月4回)となり、同11月の後半からは3750億円(同)として現在に至る。 三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊氏はきょうの札割れについて「投資家が2年債を手放したくないという需給の引き締まりを意識させる結果だった」と話す。 短期の政策金利の影響を受けやすい2年債利回りは今年に入り、ほぼ一本調子で上昇(価格は下落)してきた。日銀のマイナス金利解除を経た4月以降も追加利上げ観測が2年債利回りを押し上げた。4月初めには0.2%を下回っていた2年債利回りは22日に0.35%と09年6月以来、約15年ぶりの高水準に上昇した。 ここまで利回り上昇の結果、日銀の追加利上げの織り込みが進んだとの見方は増えている。このため「金利の先高観が和らぎ、2年債は(日銀に売却せず)保有していた方がいいと考える投資家がいた可能性が高い」(稲留氏)という。 札割れをきっかけに需給の引き締まりが意識され、23日の流通市場で新発2年債利回りは前日を0.010%下回る0.340%に低下した。 2年債の需給を巡っては別の見方もある。SMBC日興証券の奥村任氏は「5年債や10年債などと比べデュレーション(期間)リスクを低く抑えることができるため、保有したいという投資家の需要は高い」と分析する。 デュレーションは保有する債券の元本と利息を回収するまでにかかる年限を示し、それが短いほど保有債券の含み損が膨らむリスクを抑えられる。2年債利回りではだいぶ織り込んだといっても日銀による追加利上げや国債買い入れ減額への思惑はくすぶり続けている。22日に11年ぶりに1%ちょうどへ上昇した長期金利などをみると、国内債全般の価格下落リスクは小さくない。それが期間の短い2年債への需要を増やしている側面があるというわけだ。 2年債を中心とするこの残存期間の債券需給の引き締まりは、少なくとも1?3年のオペでは、長期的な方向としては明らかにしている国債買い入れの減額へ日銀が動きやすくなったとの見方がある。SMBC日興証券の奥村氏はきょうの札割れに関し「日銀の買い入れが過剰で減額すべきだ、というサインとも受け取ることができる」と指摘する。 日銀は13日に「5?10年」については1回あたりの国債購入額を500億円減らしたが、その他の期間は購入額を据え置いている。1?3年の4月の購入額は約1.5兆円で5?10年(約1.9兆円)、3?5年(約1.7兆円)に次いで多い。日銀は国債発行額に対する日銀の購入比率が高い期間で減額を進めるとの予想も市場にはある。2024/05/24 08:23:02280.名無しさんO758M今日の債券 長期金利、1%超えか 米金利上昇、日銀正常化も意識2024/05/24 08:01 日経速報ニュース 24日の国内債券市場で、長期金利は上昇(債券価格は下落)しそうだ。指標となる新発10年物国債の利回りは節目の1%を超え、2012年4月以来の高水準をつける可能性がある。米景気の底堅さを受けて前日に米長期金利が上昇したほか、日銀による追加利上げや国債購入の減額といった政策正常化が根強く意識されているのも長期金利の上昇圧力となるだろう。 23日のニューヨーク債券市場で、長期金利の指標となる米10年物国債利回りは前日比0.06%高い4.48%で終えた。この日発表された週間の米新規失業保険申請件数が21万5000件と市場予想よりも減った。米S&Pグローバルが公表した5月の米購買担当者景気指数(PMI)速報値は総合が54.4と約2年ぶりの高さとなり、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに慎重になるとの見方が米金利上昇につながった。 大阪取引所の夜間取引では債券先物が下落している。5営業日ぶりに反発していた中心限月の6月物は夜間取引では143円57銭で終え、23日の清算値を16銭下回った。米金利上昇を受け、24日の国内市場では相場が底堅く推移していた中長期債にも改めて売りが広がるとみられ、長期金利の上昇圧力となるだろう。 日銀が政策正常化のペースを速めるとの思惑が日本国債の買いづらさにつながっている。日銀が23日実施した定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)では残存期間「1年超3年以下」で、13年4月の「異次元緩和」の導入後で初めて購入予定額を応札額が下回る「札割れ」となった。中期債の需給逼迫を映す結果と言え、市場では日銀が国債購入額を減らしやすくなるとの観測が高まっている。 総務省は24日8時半に4月の全国消費者物価指数(CPI)を発表する。QUICKがまとめた市場予想によると生鮮食品を除いた総合は前年同期比2.2%上昇し、上昇率は3月(2.6%)を下回る見込みだ。生鮮食品とエネルギーを除く指数(日銀版コア)の伸び率も2.4%と、3月(2.9%)から鈍化するとみられており、物価の騰勢一服は国内債相場の支えとなる可能性がある。 24日は国内では財務省が3カ月物の国庫短期証券(TB)の入札を実施する。日銀の追加利上げを巡る警戒感が残る中で、期間の短いTBは相対的に金利リスクが低いうえ「(銀行勢の)担保需要も強い」(国内金融機関)という。海外では4月の米耐久財受注額や5月の米消費者態度指数(ミシガン大学調べ)確報値が発表されるほか、FRBのウォラー理事が講演する。2024/05/24 08:25:02281.名無しさんvPyID長期金利、1.01%に上昇 12年4月以来の高水準2024/05/27 12:41 日経速報ニュース 27日午後の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが前週末を0.005%上回る1.010%へ上昇(債券価格は下落)した。2012年4月以来およそ12年ぶりの高さをつけた。日銀による国債買い入れの減額や追加利上げなど早期の政策正常化が意識され、国内長期債に売りが優勢となっている。 政策金利の影響を受けやすい新発2年債利回りも午後の取引では前週末比0.005%高い0.34%に上昇した。2024/05/27 12:51:14282.名無しさんvPyID債券12時50分 長期金利、1.02%に上昇 12年4月以来の高さ2024/05/27 13:26 日経速報ニュース 27日午後の国内債券市場で、長期金利が上昇(債券価格は下落)している。指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.015%高い1.020%をつけた。2012年4月以来およそ12年ぶりとなる高水準。日銀の内田真一副総裁が27日の講演で「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉(しゅうえん)は視野に入った」などと述べ、日銀の政策正常化が意識されて国内債への売りを促した。 28日に財務省が実施する10年物クライメート・トランジション(CT)利付国債入札に一定の警戒感があるとの見方があった。10年物CT国債(発行予定額3500億円程度)の入札について、市場では「(金利水準が)1%を超えてもはっきりとした買いがみられない状況で、CT債は通常の国債と比べ流動性に難がある」(国内証券ストラテジスト)として、需要動向を不安視する声がある。 日銀の内田副総裁の講演を巡っては、長期的な視点に基づくもので短期的な政策運営への示唆は限られるとの受け止めもあった。先物中心限月である6月物は143円52銭と午前終値を7銭下回って午後の取引が始まり、その後先週末比15銭安の143円44銭まで売られる場面もあった。 短期金融市場では、現金担保付き債券貸借(レポ)金利が低下した。日本証券業協会がまとめた東京レポ・レートで、翌営業日に始まる翌日物(トムネ)金利は前週末比0.031%低い0.048%だった。2024/05/27 14:15:51283.名無しさんKtiNu三菱UFJ市場本部長「国債、持ち高復元検討」 7月にも利上げ、念頭に2024/05/29 日本経済新聞 朝刊 三菱UFJフィナンシャル・グループの関浩之市場事業本部長が日本経済新聞の取材に応じ、日本国債について「金利上昇が本格的に進めば利回りの最高水準を見極めながらポジション(持ち高)を復元していく方針だ」と運用の見通しを明らかにした。日銀が「早ければ7月にも政策金利を0.25%程度へ引き上げる可能性がある」とも述べた。 関氏は今後の運用について、金利の上昇に応じ、国債と比べ利回りが相対的に高い「円金利スワップ取引」での固定金利の受けと呼ばれる、国債の購入に類似した取引をしていくとした。その後は粘着性の高い預金の水準をみながら「(償還まで持ちきることを前提とした)満期保有目的」勘定で債券を購入する方針を明らかにした。 さらに金利水準が相応に上がれば「(期中での売買が可能な)その他有価証券」勘定での債券購入で対応するという。 関氏は「まだ金利上昇余地は相応にある」と述べた。本格的な復元開始時期は「10年の円金利スワップの固定金利の利回りが1.20%以上に上がってくるなど、もう少し金利が上がるまで先送りせざるを得ない」との認識を示した。 三菱UFJが徐々に国債の持ち高復元を検討する背景には、日銀が段階的に利上げするとみていることがある。関氏は2025年3月までに「(政策金利を)0.5%以上に引き上げる可能性がある」とも述べた。 日銀は3月にマイナス金利を含む異次元緩和政策を解除した。三菱UFJ銀行は政策変更の翌営業日から円の普通預金金利を0.001%から0.02%へと引き上げた。関氏は日銀が追加利上げした場合は「預金金利の引き上げを検討する」と明らかにした。 次の利上げ後には、変動金利型住宅ローンなどの指標となる短期プライムレート(短プラ)も引き上げる銀行が多いとみられている。関氏は短プラの引き上げは「(日銀の)利上げ幅次第では検討することになるだろう」とし、明言しなかった。 対ドルで1ドル=150円台半ばで推移する円相場について関氏は「過度な円安の状態にある」との認識を示した。輸入物価の上昇を通じたコスト増が物価上昇率全体を押し上げ「家計の実質所得の低下による消費マインドの悪化や、中堅・中小企業をはじめとする輸入企業の収益悪化による設備投資の手控えなど、負の側面が相対的に大きい」と指摘した。 関氏は、円安などによる基調的な物価上昇率の上振れリスクを「日銀はこれまで以上に強く懸念し始めている」とみる。日銀が利上げの家計や企業への影響を考慮しつつ「一段の円安の影響を少しでも回避するため、利上げや国債買い入れ減額などの政策修正を徐々に進めることを優先するだろう」と強調した。2024/05/29 06:25:03284.名無しさんKtiNu長期金利、12年半ぶり高さ あすの2年債入札も警戒2024/05/29 11:30 日経速報ニュース 日銀の政策修正に身構えるような国債売りが止まらない。29日は長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時、前日を0.030%上回る1.065%へ上昇(価格は下落)して2011年12月以来、12年半ぶりの高さとなった。あす30日に財務省による入札がある2年物国債は10年債と比べた価格の割高さが目立つ。入札で需要がどの程度集まるかには警戒感がくすぶる。 /home/member/news/202405/ucljpg_fb01ca82cf7334c9eab846927b3f412a.jpg?format=raw 過去1年の2年債入札前日の2年と10年の利回り差と入札における応札倍率を振り返ると、利回り差の拡大(縮小)と応札倍率の低下(上昇)の連動がみてとれる。2年債の利回り上昇(価格の下落)が10年債より限定的なら利回り差は拡大し、2年債の価格は割高となる。割高だと入札における応札が弱まり、応札額を落札額で割った応札倍率は低下するという関係にある。 現時点で新発である2年物460回債の利回りは29日、前日を0.015%上回る0.365%に上昇した。こちらは09年6月以来、ほぼ15年ぶりの高さながら、10年債との利回り差は1カ月前と比べ大きく広がって価格は割高になっている。29日時点の複利の利回り差は0.689%と前回4月の2年債入札前の0.596%から拡大し、入札前としては昨年10月の入札前以来、7カ月ぶりの大きさとなっている。 日銀の政策修正観測を巡っては、利上げより国債購入減額が先との見方が市場には多い。それが減額の影響をより受けやすい10年債の利回りが、政策金利の予想に左右されやすい2年債に先行して上昇している背景の1つになっている。 日銀の政策修正観測は利回り曲線(イールドカーブ)全体を押し上げており、こうした局面では「デュレーション(保有債券の平均残存期間)を短くしたい投資家の需要が中長期債から2年債に移動する」(SMBC日興証券のシニア金利ストラテジスト、田未来氏)というのも大きい。長い年限の債券ほど利回り上昇に伴う価格下落が大きくなるので、リスク回避のため保有債券を短期化しようとするからだ。 「仮に日銀が6月の金融政策決定会合で国債減額方針を決めると、債券市場では次は利上げ時期を探っていくだろう」(岡三証券のチーフ債券ストラテジスト、長谷川直也氏)との声もある。日銀の利上げ観測が利回りをより押し上げる2年債について、長谷川氏は「いったん待機資金を集めているが、需要が強いというのはあくまでも他の年限の債券に比べて『相対的に』ということ」と指摘する。 日銀の内田真一副総裁は今月27日、「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉(しゅうえん)は視野に入った」としたうえで「今回こそはこれまでと違う」と金融政策の正常化への意欲を示した。岡三の長谷川氏は「(内田氏が)ここまで自信を示している以上、債券市場の警戒感は高まる」と話す。 国債の「短期化需要」で2年債入札が大崩れすることはないとの見方も少なくないが、日銀をにらんだ債券市場の動揺は強まっている。2024/05/29 11:47:52285.名無しさんKtiNu債券12時50分 長期金利、1.070%に一段と上昇 12年5カ月ぶり高さ2024/05/29 13:15 日経速報ニュース 29日午後の国内債券市場で、長期金利が一段と上昇している。指標となる新発10年債利回りは前日比0.035%高い(価格は安い)1.070%と2011年12月以来、約12年5カ月ぶりの高水準をつけた。日本時間29日の取引で米長期金利が上昇し、国内債利回りの上昇圧力が強まっている。 中期ゾーンの国債利回りも上昇している。新発2年債利回りは前日比0.020%高い0.370%、新発5年債利回りは0.035%高い0.625%とそれぞれ上昇幅を広げた。先物相場は一段安となり、中心限月である6月物は前日比41銭安の143円09銭まで下落する場面があった。 短期金融市場では、現金担保付き債券貸借(レポ)金利が上昇した。日本証券業協会がまとめた東京レポ・レートで、翌営業日に始まる翌日物(トムネ)金利は前日比0.010%高い0.051%だった。2024/05/29 13:21:51286.名無しさんKtiNu長期金利上昇、メガバンク幹部発言で債券売りに拍車2024/05/29 14:19 日経速報ニュース 債券市場で幅広い年限の国債利回りが上昇ペースを速めている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは29日午後に一時1.070%と2011年12月以来、約12年5カ月ぶりの高水準をつけた。日銀による国債買い入れの減額観測が根強く、将来の需給不安が重くのしかかる。「金利変動リスクを急いで取る必要はない」。そんな腰の引けた姿勢を代弁するかのようなメガバンク幹部の発言が伝わったのも債券売りの背中を押した。 市場できょう注目されたのは、29日付の日本経済新聞朝刊が掲載した三菱UFJフィナンシャル・グループの関浩之市場事業本部長のインタビューだ。傘下2行合算の国債保有残高は24年3月末時点で約36兆円にのぼる。債券市場における存在感は大きく、発言から投資行動を推し量ろうとする参加者は多い。【関連記事】金利上昇で「国債保有の復元検討」 三菱UFJ市場本部長2024/05/29 14:35:27287.名無しさんgpwYx長期金利、13年ぶり1.1%台 日銀正常化に思惑2024/05/30 10:11 日経速報ニュース 30日午前の国内債券市場で長期金利が一段と上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債利回りは前日比0.025%高い1.100%をつける場面があった。長期金利が1.1%台に乗せるのは2011年7月以来およそ13年ぶりとなる。日銀が近く追加利上げや国債買い入れの減額など政策正常化に動くとの思惑から金利の先高観が強く、長期金利の上昇を促している。 日銀は31日に国債買い入れオペ(公開市場操作)の運営方針を更新し、6月のオペ実施日程を公表する予定だ。さらに6月4日には財務省が10年物国債入札を予定している。市場では「日銀の国債買いオペの不透明感に加え、10年債入札への警戒感もあって売りが出やすくなっている」(国内証券ストラテジスト)との指摘があった。 さらに足元では欧米で長期金利が上昇基調となっているのも国内金利の上昇圧力となった。米国では底堅い景気が米連邦準備理事会(FRB)の利下げ転換を遅らせるとの観測がくすぶり、29日には米長期金利が4.6%台に上昇。根強いインフレで欧州中央銀行(ECB)が利下げに慎重になるとの見方も広がり、欧州ではドイツの長期金利も上昇している。2024/05/30 10:40:52288.名無しさんVzczq「金利ある世界」、広がる裾野 長期金利一時1.1% 生保の予定利率上げ、住宅ローンには上昇圧力2024/05/31 日本経済新聞 朝刊 金融商品の金利引き上げの裾野が広がってきた。長期金利が一時、13年ぶりに1.1%に上昇した30日、住友生命保険は契約者に約束する利回りを約11年ぶりの高水準に上げると発表した。6月適用分の固定型住宅ローンの金利も13年ぶりの高水準をうかがう。実生活に「金利ある世界」の恩恵と負担増双方の波が押し寄せている。 住友生命は30日、契約時に保険料をまとめて払い込む一時払い終身保険の予定利率を6月から引き上げると発表した。国内の長期金利の上昇を踏まえ、契約者に約束する利回りを現行の1.0%から1.1%に改める。 同保険では予定利率の引き上げが相次ぐ。明治安田生命保険が5月に1.1%に、日本生命保険も1月に1.0%に引き上げた。各社は金利環境に応じて予定利率を見直しており、金利上昇が続けばさらに引き上げる可能性がある。 預金金利にも上昇圧力がかかっている。東京スター銀行は7月から普通預金の金利を条件に応じて最大年0.3%に引き上げる。現在は給与振り込みか年金の受け取りを条件に年0.25%としているが、預金獲得の競争が始まるなかネット銀行などに対抗する。 日銀がマイナス金利政策を解除した3月以降、メガバンクが先陣を切って普通預金の金利を上げた。普通預金の金利はそれまでの20倍の0.02%とし、一部は定期預金の金利も引き上げた。 長期金利の上昇で社債に投資妙味を感じる個人も増えそうだ。機関投資家は利回り上昇(価格の下落)による評価損を警戒して社債に積極的に投資しづらいが、個人は償還まで持ちきるのが前提で評価損を気にせずに済むためだ。 ソフトバンクグループは6月14日に5500億円規模の個人向け普通社債を発行する。2031年償還の7年債で、利率は年2.65~3.25%を仮条件とし、5月31日に決める。3月に発行した同じく5500億円の個人向け社債は7年債で年3.04%だった。金利水準に注目が集まる。 金利上昇は恩恵をもたらす半面、借り入れがある個人や企業にとっては負担増につながる。代表格は住宅ローンだ。固定金利型の住宅ローンは長期金利と連動する。足元の長期金利の上昇で、比較可能な10年固定型の基準金利は5月の大手銀行5行の平均で3.85%と直近で最も高かった23年11月の3.87%に近い水準だ。 大手行が31日に公表する6月の住宅ローン金利は5月に比べて上昇が優勢になるとの見方が強く、11年以来、13年ぶりの高い水準になる可能性がある。 住宅ローン市場は短期金利に連動する変動型が約7割を占めている。ネット銀などが低金利を提示しているのも変動型が多く、大手行は変動型の基準金利は据え置いている。当面は住宅の購入者の大きな負担増にはつながらないとの見方が多いが、足元ではじわり固定型への関心も高まっているという。 短期金利に連動しやすい日本円東京銀行間取引金利(TIBOR)も30日、3カ月物が前日比0.01%高い0.28%台後半と約11年ぶりの高水準に上昇した。3月のマイナス金利解除前後で急騰し、いったん落ち着いていたが5月に入り再び上昇している。 TIBORは銀行が融資する際の基準になる金利の一つ。楽天銀行は住宅ローンの変動金利の指標にしており、同行は変動基準金利を6月に1.333%と、5月に比べて0.02%高い水準に設定する予定だ。 企業の金利負担も増え始めている。日銀がまとめた国内銀行の新規貸し出しの平均金利は3月に0.803%と、2月から0.1ポイント以上、上がった。最後に1%を超えたのは2014年4月で、長年貸出金利は低くとどまってきた。適用する変動金利は数カ月ごとに見直す例が多く、金利上昇の波は少しずつ広がりそうだ。 メガバンクは融資残高の大半が変動金利型とみられ、指標の一つであるTIBORの上昇が貸出金利上昇の一因になっている。 東京商工リサーチが4月に実施したアンケート調査では、借入金利が前年と比べて「すでに上昇」と答えた企業が17.7%だった。メインバンクから金利の引き上げ意向を伝えられるなど「引き上げ」の説明を受けたという企業は30.8%と2月調査の25.6%から増えた。2024/05/31 06:13:22289.名無しさんVzczq東京消費者物価は3カ月ぶり伸び拡大、2カ月連続で2%下回る2024年5月31日 8:32 JST 更新日時 2024年5月31日 8:39 JSTコアCPIは1.9%上昇、市場予想と同じ-コアコア1.7%上昇電気代を含むエネルギーが上昇けん引、食料品は伸び横ばい全国の物価の先行指標となる5月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は3カ月ぶりにプラス幅が拡大した。食料品価格の伸びが引き続き鈍化した一方、電気代を中心にエネルギーが上昇し、全体を押し上げた。 総務省の31日の発表によると、コアCPIは前年同月比1.9%上昇と伸び率は前月の1.6%から拡大した。市場予想と同じだった。再生可能エネルギー発電促進賦課金の引き上げに伴う電気代の上昇などがけん引した。一方、生鮮食品を除く食料は3.2%上昇と横ばいだった。日本銀行が目標とする2%は2カ月連続で下回った。 生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは1.7%上昇と前月の1.8%上昇から伸びが縮小した。市場予想は1.8%上昇だった。 日銀が3月に17年ぶりの利上げに踏み切り、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を廃止した後も、円安傾向に歯止めがかかっていない。国債買い入れ減額の思惑も加わって長期金利は1%台で13年ぶりの高水準に達している。追加利上げのタイミングに市場の注目が集まる中、足元の物価上昇の鈍さから慎重に経済・物価情勢を見極めていく展開が続きそうだ。 賃金動向を反映しやすいサービス価格は0.7%上昇となり、大きく鈍化した前月の0.8%上昇から縮小した。今年の春闘で平均賃上げ率が33年ぶりに5%を超える中、賃上げ分を価格に転嫁する動きの広がりが注目されている。関連記事長期金利は一時1.1%に上昇、日銀政策修正を警戒-2年債入札は無難企業向けサービス価格が32年半ぶり高水準、賃金転嫁に広がり-日銀低価格志向や低インフレ予想に変化の兆し-日銀が第2回レビュー利上げペース早める必要も、円安で物価再上昇なら-安達日銀委員2024/05/31 08:45:10290.名無しさんFTgpX日銀総裁「見通しに沿って基調的物価上昇率が高まれば金融度合い調整」2024/06/04 12:00 日経速報ニュース 日銀の植田和男総裁は4日、参院財政金融委員会に出席した。金融政策運営を巡り「先行き見通しに沿って基調的物価上昇率が高まれば金融度合いを調整する」と述べた。また「経済・物価見通しのリスクが変化しても金利を動かす理由になる」との認識を示した。 日本維新の会の藤巻健史氏の質問に答えた。植田総裁は、長期金利について「金融市場で形成されることが基本だ」と話した。その上で「長期金利が急激に上昇する場合には市場における安定的な金利形成を促す観点から機動的にオペを実施する」との考えを示した。2024/06/04 13:02:53291.名無しさんNufpS日銀修正に不安と楽観 債券市場、日銀の情報発信に疑念解けず2024/06/05 13:59 日経速報ニュース 5日の国内債券市場で、長期金利は低下した。低調な米経済指標を受けた米利下げ観測の再燃と米長期金利の低下が国内債の買いにつながっている。さらに日銀がかねて示している国債の減額方針について、緩やかなペースで進めるとの見方がやや勢いを取り戻したのも相場の支援材料となった。とはいえ市場参加者は日銀の政策修正がどうなるかについて依然として確信をもてていない。不安と楽観とが複雑に絡み合う構図になっている。 5日の長期金利は一時0.990%と1%の節目を下回り、5月23日以来ほぼ2週間ぶりの低水準をつけた。4日発表の米雇用指標が労働需給の緩和を示し、年内の米利下げ観測を改めて強めた。5月下旬に4.6%台まで上昇していた米長期金利は4.3%台まで低下。外国為替市場では前週に1ドル=157円台後半まで下落していた円相場が154円台まで持ち直した。外部環境は日本の金利低下に追い風だ。 問題は国内要因をどうみるかだ。市場では日銀が円安を抑制するために、量的な金融引き締めをイメージさせる国債買い入れの減額を速いペースで大幅に進めるのではないかとの思惑が根強い。それだけに、円安一服が減額への警戒感を抑えている面は大きい。4日夕にはブルームバーグ通信が、日銀は早ければ来週の金融政策決定会合で国債購入の減額について「より具体的な方針を示すことの是非を含めて議論する可能性が大きい」などと伝えた。みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは「報道が正しいとすれば、減額は(段階を踏みながら)極めて慎重に進められていくとの印象を受ける」と話す。 折しも日銀の氷見野良三副総裁が4日夕、国債購入の減額について「非連続的な変化や不測のことを起こすのは避けなければならない」と述べていた。日銀は債券市場からの緩やかな退出を望んでいる――。岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「オペ(公開市場操作)を巡る不透明感は残りつつも、債券需給の悪化度合いは限られそうで、金利上昇が一方的に続くことはなさそうだ」と幾分安堵したように語った。 だが、過去に複雑に張り巡らされた金融緩和の糸をほどくのは容易ではない。しかも為替が絡むと複雑さは格段に増す。市場には「日銀自体もどんな出口に向かうのか試行錯誤しているところで、その過程で出てくる情報発信をうのみにするのは危険だ」との疑念が根強い。岡三の長谷川氏も「最終的に月間の買い入れ額がどこまで引き下げられるのか、日銀のバランスシート(資産規模)を最終的にどうしていくかといった不透明感は残り続ける」と指摘する。 短期金融市場の関係者は、あくまで例えとしつつ「2年後に、資産残高を新型コロナウイルス感染拡大前の水準にすることを目指す、といった緩やかなバランスシートの着地点を示すのも1つ」と提言する。一方、日銀内部からは、先々の経済情勢が不確実であることを考えると、中長期的な残高見通しを示すことにはやや消極的な声が聞かれる。 日銀は、長期国債の買い入れは「これまでとおおむね同程度の金額」で継続するとしており、足元の長期国債の月間買い入れ額は6兆円程度と示している。5月月間の買い入れ額は5.7兆円だった。ブルームバーグ通信によれば「例えば月間5兆円などが次の買い入れの目安として考慮される可能性がある」と伝えており、このことが「想定を上回るような減額規模ではなく、1つの具体的な数字が出てきたことも債券市場に安心感をもたらした」(国内証券のストラテジスト)という。それでも債券投資家は半身の姿勢を崩せていない。 イールドカーブ・コントロール(YCC)を撤廃し、金融政策の調節手段を翌日物の無担保コールレートにした後も、市場の国債買い入れへの関心は続いたままだ。日銀が国債買い入れ運営の柔軟性を重視するのであれば、減額方針を具体化しても、内容はふわっとしたものにとどめたい。これに対し、いままで大量の買い入れに直面していた市場関係者は「発行に対してどのくらいの吸収があるのか」といった踏み込んだ情報が欲しい。 振り返ると日銀が3月にマイナス金利政策の解除を決めて以降、市場では日銀の情報発信に振り回される傾向が続いている。調節手段ではなくなった国債買い入れの「次の一手」を巡って関心をそらしたい日銀と、それに疑心暗鬼を募らせる市場。両者の溝が埋まるにはまだだいぶ時間がかかりそうだ。2024/06/05 14:23:55292.名無しさんxJijh長期金利、一段と低下 一時0.970% 30年債入札受け2024/06/06 12:462024/06/06 13:16:40293.名無しさんJs4uH国債買い入れ、出口進める中で減額が適当と考えている-植田日銀総裁https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-06/SD6X8AT1UM0W00?srnd=cojp-v23月の金融政策の枠組み変更後の金融市場の状況を確認している4月会合では3月会合で決まった月間6兆円程度の買い入れ継続確認 日本銀行の植田和男総裁は6日、金融政策の正常化を進めていく際には国債買い入れの減額が適当との認識を改めて示した。参院財政金融委員会で答弁した。 植田総裁は3月の金融政策の枠組み変更後の金融市場の状況を確認しているとした上で、「今後大規模な金融緩和からの出口を進めていく中で、減額することが適当であるというふうに考えている」と述べた。 複数の関係者によると、日銀は早ければ来週の金融政策決定会合で、長期国債の買い入れの減額についてより具体的な方針を示すことの是非を含めて議論する可能性が大きい。月間6兆円程度の買い入れを継続するとしている現在の長期国債の買い入れについて、減額が適切な市場環境かどうかを慎重に見極める。 4月会合では、国債購入も含めて3月会合で決めた方針の継続を確認。同会合の声明文では、「これまでとおおむね同程度の金額を継続する」とし、注記では足元の購入額は「6兆円程度」としていた。 中村豊明審議委員は同日、国債買い入れについて「経済の回復状況に応じて出口に向けて時間をかけて減額を進めていくことが適当だ」と指摘。日本経済が強い状況にはない中で、「どのように経済が改善していくかを見ながら決めていく。私自身はニュートラルだ」と述べた。来週の日銀会合、利上げの話題出ると思うが「まだ早い」-中村委員2%目標達成には少し距離 植田総裁は日銀が掲げる2%の物価目標の実現に向けて「インフレ予想も2%近辺のところで安定的に推移するということがまず必要」と指摘。その上で、さまざまなインフレ予想の関連指標が最近になって少し上昇してきているが、「まだ2%には達していないと、少し距離があるという動きになっている」と語った。 植田総裁の発言を受け、為替相場は上下に振れる動きとなっている。2%目標の達成を巡る発言が利上げに慎重と受け取られ、一時1ドル=155円90銭台まで円は売り戻されたが、国債買い入れ減額についての発言で円売り戻しは一服。その後、再び円売りが進み、156円台前半で推移している。関連記事円は上下に振れる展開、植田日銀総裁発言で1ドル=155円台後半日銀、早ければ今月会合で国債購入減額を具体的に検討も-関係者国債減額、政策意図持って行ったわけではない-安達日銀審議委員日銀総裁、円安が基調物価に影響なら判断材料に-金融政策は維持2024/06/07 05:28:31294.名無しさんWUf4c日銀会合にじわり円高備え 米雇用統計が変えた景色2024/06/10 14:24 日経速報ニュース 今週に相次ぐ重要イベントを前に外国為替市場ではじわりと円高進行への備えが進んでいる。通貨オプション市場の動向をみると、米金利を左右する米連邦公開市場委員会(FOMC)よりも日銀の金融政策決定会合への注目度が高まりつつある。5月の米雇用統計が円買い・ドル売りを誘うきっかけとならず、オプション市場からみえる景色も少し様子が変わっている。 今週は12日に5月の米消費者物価指数(CPI)の発表とFOMCの結果公表が重なり、14日には日銀が金融政策決定会合の結果を公表する。通貨オプション市場でドルの対円相場の予想変動率(インプライド・ボラティリティー)は1週間物が10%前後と、日本政府・日銀の為替介入観測で大幅な円高・ドル安が進んでいた5月初旬以来の高さだ。 ドルに対する円のプット(売る権利)からコール(買う権利)の需要を差し引いた「リスクリバーサル」をみると、市場参加者が円高と円安のどちらに備えているかが分かりやすい。この指標はマイナス幅が大きいと円買い・ドル売りの需要が強いのを示し、1週間物は足元でマイナス2%台と4月下旬以来の低さだ。 オプション市場の参加者はどのイベントに焦点を当てているのか。SBIリクイディティ・マーケット(SBILM)の鈴木亮常務取締役によると、予想変動率に基づいて上乗せされるオプション料から試算した「イベントプレミアム」は日銀決定会合は通常の日の3.5日分となっている。5月の米CPI(1.1日分)やFOMC(1.5日分)よりも大きく、日銀会合を週内で最大のイベントとして捉えている。 通常であれば絶対水準の高い米金利の方が日本の金利よりも大きく動きやすく、外為市場では円相場を方向付ける材料として米国発のイベントが注目されやすい。にもかかわらず、足元で日銀の決定会合への関心が高まっているのは5月の米雇用統計がきっかけだ。 このところ発表された米経済指標は市場予想よりも下振れする結果が目立っていたが、7日発表の5月の米雇用統計では雇用者数や平均時給の伸びが市場予想を上回った。米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げ転換するのは難しいとの見方が改めて広がり、市場では年内の利下げ回数が1?2回にとどまるとの予想が大勢を占めるようになった。 FRBが12日に結果を公表するFOMCでは参加者らの政策金利見通し(ドットチャート)が焦点となり、年内の利下げ回数の予測は前回3月時点(3回)から減らされるとみる市場参加者は多い。5月の米雇用統計を踏まえて大幅利下げの思惑がついえたことで「FRBの『ハト派』を見込んだ円高・ドル安観測は後退した」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)という。 SBILMの鈴木氏の分析では、米CPIやFOMCを意識したオプション取引に偏りがない半面、日銀会合ではやや円コール・ドルプットに傾いているという。日銀は今回の会合で国債買い入れの減額方針を具体的に議論するとみられ、日本の金利上昇が円高につながるリスクをはらむ。しかし、鈴木氏は「従来の会合と比べると円コール・ドルプットの偏りは小さい」とも話す。 10日の東京外為市場で円相場は一時1ドル=157円19銭近辺と3日以来1週間ぶりの安値をつけた。前週末の17時時点と比べると一気に1円70銭あまりの円安・ドル高が進んだ格好だ。前週には154円台に上昇する場面もあり、市場では「国内輸入企業などのドル買い意欲がみられ、円の上値は重そう」(市場関係者)との声も聞かれる。備えは進んでいるとはいえ、円高・ドル安の警戒感が一層高まる様子は今のところ乏しい。2024/06/10 14:46:43295.名無しさん2EpSVあすから日銀会合 国債買い入れの減額議論が焦点2024/06/12 12:01 日経速報ニュース 日銀は13?14日に金融政策決定会合を開く。春季労使交渉(春闘)結果の給与への反映が十分に確認されておらず、個人消費の動向などにも懸念が残るとあって利上げは見送られるとの予想が多い。一方、国債買い入れは長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤廃に伴って役割が変わった。植田和男総裁は「金融政策の能動的な手段としては使いたくない」と述べ、いずれかの時点で金額を減らすとの姿勢を明確にしている。今回会合では新たな減額方針が示されるかが焦点だ。 ■日銀6月会合のポイント ・国債買い入れ減額方針の決定の有無とその示し方 ・先行きの利上げ方針や円安を巡る植田総裁の見解 ・国内の景気認識は維持されるか 前回会合から変更の可能性が意識されるのは、国債買い入れの方針だ。植田総裁は6日にも、大規模緩和からの出口を進めていく中で「減額することが適当」との考えを改めて示した。日銀内では相場環境が不安定な状況下での決定には慎重な見方が根強く、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受けた債券市場の反応なども勘案したうえで判断を下すと考えられる。政策運営の不連続性を避けるため、減額を決めた場合でもその程度は緩やかなものとなる可能性が高い。 市場では、3月会合時に「6兆円程度」としていた月間購入額を「5兆円程度」とするなどの予想が出ている。長期金利の急騰時に「機動的に」対応するとの文言を含めて日々のオペ(公開市場操作)運営に関する金融市場局の裁量を残すか、先行きのさらなる減額について予見性を高めるための措置を取るか、といった点も債券需給を占ううえでポイントになる。 日銀ウオッチャーの間でも予想は様々だ。額ではなく定性的な表現にとどまる可能性も残るなど、想定されるケースは多岐にわたる。 明治安田総合研究所の小玉祐一氏は、円安基調が続くもとで「最低でも減額方針は示すだろう」と予測する。購入額を単純に減らす方法もあるとしたうえで、メインの政策手段である短期金利以上に市場の関心を集めている状況を変えるために「(当面の)月間購入額を4?7兆円と広めのレンジで示すなど、思い切って柔軟化する可能性も捨てきれない」と話していた。 一方、伊藤忠総研の武田淳氏は、今会合では利上げ判断と減額方針の決定のいずれも見送られると予想する。現時点では「ホームメード(国内要因)のインフレ圧力が加速する気配は全く見られていない」と指摘。こうした中で長期金利の上昇圧力が強まれば「景気の腰折れリスクを高めかねない」として、日銀は政策修正の判断を急がないとみる。 短期政策金利について、市場では「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0?0.1%程度で推移するよう促す」方針を据え置くとの声が支配的だ。厚生労働省が5日に発表した4月の毎月勤労統計調査(速報)では、共通事業所ベースでの名目賃金の伸び率が前年同月比1.7%増と、3月確報(1.9%増)からむしろ縮小した。現時点で春闘の結果が十分に反映されているとはいえず、日銀は賃金や消費など物価動向につながるデータの確認を続けるとの観測が多い。 会合後の記者会見で植田総裁が先行きの利上げについてヒントを示すかも重要だ。7月にかけては「賞与支給後の消費動向について、民間のオルタナティブ(代替)データも確認できる」(明治安田総研の小玉氏)など、ひと月とはいえ判断材料が増える。7月会合は6月と打って変わって利上げを予想する市場関係者が少なくない。 円安を巡る認識も引き続き注目される。4月会合後の記者会見では、円安による基調的な物価への影響は無視できる範囲だったか、との問いに「はい」と回答し、円安容認ではないかとの思惑を呼んだ。対して8日に「過去の局面と比べ為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっているリスクは意識する必要がある」と述べるなど、5月以降は発言内容を変えてきている。 6月は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の発表はないが、今後の政策運営を見通すうえで国内の景気判断に変化がみられるかもポイントだ。行内では物価や経済の基調について、4月会合時の想定から大きな変化は生じていないとの評価が多い。「一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」との総合的な判断を維持した場合も、消費者心理の改善一服や自動車の認証不正などを背景に個別項目は表現が修正される可能性もある。2024/06/12 15:01:51296.名無しさんZUIor日銀、緩和転換第2段階へ 国債買い入れ減額検討 金利・円相場両にらみ2024/06/13 日本経済新聞 朝刊 日銀による金融正常化が第2段階に入る。長期国債の買い入れ額を減らす検討に入るのは、追加利上げよりもハードルが低い上に円安抑止に一定の効果が期待できるとみているためだ。マイナス金利政策を解除して「金利ある世界」の入り口に立った日銀は、円安もにらみながら「量」の面でも正常化に踏み出すことになる。(1面参照) 日銀の保有資産は2001年の量的緩和開始以降、増加傾向が続き、13年の異次元緩和の開始に伴って増加ペースが加速した。国債買い入れを減額すれば、中央銀行が国債発行残高の過半を抱える異常な状態は少しずつ正常化に向かうことになる。 日銀は3月にマイナス金利政策を解除した。政策金利をそれまでの当座預金の一部に適用していたマイナス0.1%から、無担保コール翌日物金利の誘導目標に修正したうえで0~0.1%程度へ引き上げた。 同時に長期金利を低く抑え込むためのイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)も撤廃したが、金利の急変動を避けるために長期国債は3月以前と同程度の量の買い入れを続けてきた。 世界の中銀は利上げ局面で保有資産の圧縮も同時に進めてきた。米連邦準備理事会(FRB)は22年3月に利上げを開始し、同年6月から保有資産を圧縮する量的引き締め(QT)も並行して進めてきた。同年7月に利上げを始めた欧州中央銀行(ECB)も23年3月からQTを開始。日銀はECBより早い段階で保有資産の減額に踏み出すことになる。 背景にあるのは異常に膨らんでいる国債保有残高だ。日銀は23年末時点で581兆円の国債を保有しており、市場における保有比率は過半に達している。FRBは2割弱、欧州の主要中銀でも2~3割程度にとどまっているのと対照的だ。 3月の異次元緩和解除後に、外国為替市場で円安・ドル高が進んだことも日銀の判断に影響を与えているとみられる。異次元緩和解除前は1ドル=140円台後半で推移していたが、4月末には一時160円台まで円安が進んだ。 植田和男総裁は5月7日に岸田文雄首相と面会し、円安について「政策運営上、十分注視をしていく」と発言。市場で円安軽視とも受け止められたそれまでの発言を軌道修正した。 市場では過度な円安を防ぐために日銀が早期の政策修正に動くとの見方が強まっていた。日銀の主要な政策手段は短期金利の調節だが、追加利上げは変動型の住宅ローン金利の上昇などにつながる可能性があり、家計への影響が大きい。 一方、長期国債の減額は「家計への影響はほぼなく円安に歯止めをかけられる可能性がある」(関係者)とみる。 5月にQUICKが実施した市場参加者への調査によると、65%が6月の金融政策決定会合で減額方針を決定すると見込んでいた。こうした市場観測を受けて、長期金利は上昇基調にあった。5月末には一時1.1%と約13年ぶりの水準をつける場面があった。2024/06/13 06:08:24297.名無しさんZUIor日銀会合注目点:追加利上げ巡る植田総裁発言、国債購入減額の具体策https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-12/SEY1LLT1UM0W00金融政策は現状維持の見方、自動車メーカーの認証不正も不透明感総裁会見は円安の影響や利上げペースなどに関心、長期金利動向も 日本銀行が14日に結果を発表する金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が見込まれており、植田和男総裁の発言などから追加利上げのタイミングを探ることになる。国債買い入れ減額の有無と具体策も焦点だ。 植田総裁は、日銀の見通しに沿って消費者物価が上昇していけば、金融緩和の度合いを調整していく方針を表明している。前回4月会合以降の経済・物価は日銀の想定内の動きとみられるが、個人消費が力強さを欠く中、トヨタ自動車などで新たに発覚した認証不正の影響といった不透明感もあり、現在の金融緩和策を維持して賃金上昇の広がりや物価への反映などを見極めていく局面とみられる。 ブルームバーグがエコノミスト51人を対象に実施した調査では、50人が日銀は今会合で政策金利を0-0.1%に据え置くと予想した。一方で最多の33%が10月会合と並んで7月会合での追加利上げを見込んでおり、植田総裁の記者会見でヒントが得られるかを固唾(かたず)を飲んで見守ることになる。 為替相場に関する総裁の評価も引き続きポイントとなる。4月会合後の会見では、円安の影響は大きくないとの認識を示したことを受けて円安が進行し、日本の大型連休中に財務省は大規模な円買いの市場介入を迫られた。総裁は円安が基調的な物価上昇率に影響すれば政策対応すると発言しており、改めて見解を問われそうだ。 注目された12日の米国市場は乱高下。朝方に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことを受けて米金利が低下し、円相場は一時1ドル=155円台に上昇。その後の米連邦公開市場委員会(FOMC)で今年の利下げ回数が1回に減少するとの予想が示されたことで、円は上げ幅を縮めた。13日朝は156円台後半で取引されている。 総裁は4月の会見で、日銀の物価見通しが実現していけば、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示した2026年度までの見通し期間の後半に、政策金利は「中立金利の近辺にある」と言及。中立金利の水準自体は示されていないが、市場が想定するターミナルレート(利上げの最終到達点)が着実に切り上がる中、利上げペースを示唆するような発言があるかも注目される。国債減額 国債買い入れを巡っては、植田総裁が「今後大規模な金融緩和からの出口を進めていく中で、減額することが適当だ」と繰り返しており、焦点は減額のタイミングと手法に絞られている。減額すれば、政策金利に続いてバランスシートも正常化に向けた一歩を踏み出すことになる。 複数の関係者によると、日銀は国債買い入れの減額について、今会合で具体的な方針を示すことの是非を含めて議論する。市場動向などを会合直前まで見極めた上で、新たな方針を示すことが適切かを判断するという。 買い入れを縮小する場合でも、市場の大きな変動を回避する観点から、緩やかで段階的な減額の方向性が示されるとみられる。長期金利が急激に上昇する場合には機動的なオペ運営で抑制する方針は維持される可能性が大きいという。 日銀の国債保有額は600兆円に迫り、国内総生産(GDP)を上回る規模だ。市場での存在感の大きさを踏まえると、減額が市場の不安定化を招く恐れもあり、予見可能性と柔軟性のバランスに配慮することが不可欠となる。米連邦準備制度理事会(FRB)などと同様に、バランスシートの最終的な規模なども示さないとみられる。2024/06/13 08:42:07298.名無しさんt5C1j実現した「日銀会合は円安」の経験則 国債減額に慎重さ消えず2024/06/14 14:06 日経速報ニュース 日銀は14日まで開いた金融政策決定会合で、国債買い入れの減額方針を決めた。だが、具体的な減額の計画は市場参加者の意見を踏まえて次回7月の会合で決める。金融政策の正常化はあくまで慎重に進める姿勢を強く印象づける内容で、外国為替市場では「会合結果発表後は円安」とのアノマリー(経験則)が再び実現することとなった。 14日午後の東京市場で円相場は一時1ドル=157円98銭近辺と5月1日以来1カ月半ぶりの安値をつけた。決定会合後に円売り・ドル買いが膨らんだのは日銀が国債減額の具体策を先送りしたためだ。「日銀内で減額を巡る議論が煮詰まっていないのではないか」(ステート・ストリート銀行東京支店の貝田和重金融市場部長)といい、しばらく低金利環境が続くとして円相場は157円台前半から下げが加速した。 日銀が国債買い入れの減額方針を決めたのは「金融市場において長期金利がより自由な形で形成される」のを目指すためだ。債券市場参加者会合などを踏まえ、次回7月30?31日に開く決定会合で今後1?2年程度の具体的な計画を決める。すぐに減額するとみていた市場の観測は肩透かしに終わった格好だ。 2013年の量的・質的金融緩和の導入以降、日銀にとって国債買い入れは金融緩和策の主軸だった。それが量的引き締め(QT)に向かうとなれば大きな節目となるのは確か。だが、減額を急がない姿勢は「正常化はあくまで慎重に」といったイメージを生む。そう捉えた市場参加者が一気に円売りに傾いたと考えられる。 会合結果が明らかになる前から、外為市場では「追加利上げなどさらなる金融引き締めに前向きな考えを示さないと、材料出尽くしで円売りが優勢になる」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)との声は多かった。 /home/member/news/202406/ucljpg_3bbd8c76593fe8e71623db09a19809ca.jpg?format=raw 植田総裁が就任して以降、決定会合の結果公表日の東京市場における円相場をみると、今年1月を除いて円安・ドル高が進行していた。今回も経験則が当てはまりそうで「日銀会合は円安イベント」との印象を強める可能性がある。 目先の焦点は植田総裁の記者会見に移る。4月会合後の会見では、円安による物価への影響は無視できるかとの記者の問いに植田総裁が「はい」と答えたことで円安が加速していた。その流れも踏まえて「『円安が基調的物価に与える影響を注視する』などと多少なりとも配慮した発言があれば、いったん円売りの勢いは止まる」(ステート・ストリート銀の貝田氏)との声もある。 しかし、14日午後の国内債券市場では長期金利が1カ月ぶりの低水準をつけるなど日米で大きく開いた金利差は縮小する気配に乏しく、円売り・ドル買いの口実は残り続ける。日本政府・日銀の円買いの為替介入について「160円が接近するまで警戒感は強まらない」(国内銀行の為替ディーラー)との観測もあるなか、円相場の軟調な動きがしばらく続くかもしれない。2024/06/14 14:12:14299.名無しさん64B6d日銀が国債購入を減額へ、相応の規模と植田総裁-7月利上げ排除せずhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-14/SEYGD1T0AFB400?srnd=cojp-v22024/06/15 05:03:25300.名無しさんf8yAX日銀版「量的引き締め」の効能 円安癒やす漢方薬になるか-編集委員 大塚節雄2024/06/15 09:21 日経速報ニュース 「時間稼ぎ」「先送り」「引き延ばし」「肩すかし」――。さまざまな悪評が寄せられた。日銀が14日の金融政策決定会合で国債購入の減額方針を決めた半面、具体的な計画は7月末の次回会合で固めると表明したことに対しての市場関係者らの反応だ。 それでも日銀の植田和男総裁や執行部の事務方が一安心したのは間違いない。総裁の記者会見中、円安がどんどん進む事態は避けられたからだ。 要所にちりばめたタカ派発言 4月の前回会合後は植田氏の会見でのやり取りが円安の影響を軽視するかのような印象を持たれ、円安が加速した。一時1ドル=160円台まで下落し、財務省が円買い介入に動くきっかけとなった。 今回はこの轍(てつ)を踏まなかった。植田氏はとくに円相場の問題で揚げ足をとられぬよう、ひと言ひと言に細心の注意を払った。事務方も相当、神経を使って会見を準備したようだ。 意識的にタカ派的な発言も要所要所にちりばめた。 国債買い入れについては「減額する以上、相応の規模になると考えている」と語り、大規模な減額になることをにおわせた。 次回7月会合での利上げは減額計画の決定と重なるため見送り観測が強まったが、「当然ありうる話」と踏み込んでみせた。 決定内容の発表後、市場は「具体的な内容がなかった」とみて円相場は一時158円台まで下落した。だが会見中には円売りの勢いが鈍り、夜にかけて156円台後半まで円が買われる場面もあった。 重要なのはファイティングポーズ 一時、政府との協調のあり方すら問われた今の日銀にとって重要なのは、円安に対して明確なファイティングポーズをとり続けることだ。 もちろんポーズだけではすぐに行き詰まる。そこで、3月に異次元緩和を解除した際に金融政策の本筋から外した「長期国債の買い入れ」について、少しずつ減らしていく量的引き締め(QT)が俎上(そじょう)に上がった。 日銀もQTに動いたところで円売り勢に「勝てる」とは思っていない。それでも、せっかく何かをするのであれば、ある程度の耐久力のある枠組みをつくる必要があると考えたようだ。 2013年から11年続いた量的緩和の末に、日銀が持つ長期国債は590兆円と発行残高の5割超に及ぶ規模に膨らんだ。財政と金融政策の事実上の一体化は、黒田東彦前総裁が率いていた時代の日銀が残した負の遺産だ。この異常事態が続く限り、日銀による債券市場の支配は変わらないし、本当の意味での金融政策の正常化も訪れない。市場を大混乱に陥れることなく少しずつ残高を落としていく作業は、いつかは始めなければならないものだった。 ただし、いま急いで着手する必要があったかどうかは微妙なところだ。いみじくも総裁自身が会見で語ったように、「望ましい国債保有残高とか(それに対応する)超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかるので、(方針決定が)短期的に1カ月、2カ月後先になること自体のコストはそれほどない」からだ。 日銀はむしろ円安対応を迫られた事態を奇貨として、早いうちからQTの本格的な枠組みを整える道を選んだともいえる。2024/06/16 06:20:34301.名無しさんf8yAX 金融政策の予見性高める 異次元緩和を解除した際、日銀は国債買い入れの規模をひとまず解除直前と同じくらいの月6兆円規模に据えた。ならしてみると償還とほぼ同じ規模のため、保有国債の残高はおおむね保たれる。 ここから月間の購入額を減らしていくと、購入が償還をはっきりと下回り、保有残高が徐々に減っていくことになる。これが日銀版QTだ。会合に先立ち、市場では月間の購入額を6兆円から5兆円に減らす案がささやかれたが、市場との対話を経てじっくり仕組みをつくる以上、もっと複雑なものになる可能性もある。 「具体的な減額の幅やペース、減額の枠組みなどについて市場参加者の意見も確認しながら、しっかりとした減額計画をつくっていきたい」。植田氏もこう語った。 たとえば、数カ月に1度の頻度で削減幅を段階的に広げていき、月間購入額を1年ほどかけて2?3兆円規模まで縮小させるといった案もありうる。 7月に固まる減額計画の期間は1?2年程度。本当に重要なのはそのあとだ。「長期的に望ましい状態にまで1?2年で到達できるとは思っていない」と植田氏。日銀には、その後継としてもっと期間の長い計画をつくり、望ましい資産規模の最終形を探るアイデアもある。 正常化への工程表が定まれば、市場にとって日銀の金融政策の予見可能性が高まる。円安が収まらない日本側の要因の一つは、海外の投資家に「日銀はインフレ下でも超緩和状態を放置したまま、何もしようとしない」という見方が広まったこともあった。 日銀の政策を巡る投資家の予想が安定すれば、やがては円相場の落ち着きにもつながりうる。円安圧力への無力ぶりをさらけ出しつつ船出する日銀版QT。もっと長い時間軸でみれば、意外にも漢方薬のようにじわじわと円安を癒やす効果が出てくるかもしれない。2024/06/16 06:21:23302.名無しさんw8vvz「動けぬ日銀」160円試す市場 円安圧力なお、視線は7月2024/06/17 02:00 日経速報ニュース 金融市場では週明け以降も円安圧力が残るとの見方が広がっている。国内景気の弱さから日銀は追加利上げに踏み切りづらく、日米金利差が開いた状況が続くとの思惑があるためだ。7月末の金融政策決定会合へ向け、1ドル=160円を試す展開となりそうだ。 日銀は14日の決定会合で長期国債の買い入れを減らしていく方針を決めた。具体的な減額計画は次の会合で決めることになった。市場では「日銀はかなり慎重な姿勢だ。米連邦準備理事会(FRB)が利下げを始めるまでは円安・ドル高基調が続く」(りそなホールディングスの井口慶一シニアストラテジスト)との受け止めが広がった。 低金利の円を調達してドルなど高金利の外貨で運用する「円キャリー取引」が円安をけん引してきた。日本とは対照的に、FRBは2023年7月まで利上げを続け、政策金利は5.25?5.5%と高水準で維持する。複数の主要通貨に対するドルの強さを示すドル指数は14日、一時105台と5月上旬以来、約1カ月半ぶりの高水準をつけた。 主要な米経済指標の多くが足元で弱含み、市場では年内2回の米利下げ予想が最多だ。ただ12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBは利下げに慎重なタカ派姿勢を示した。利下げ時期が後にずれれば、ドル高圧力が残ることになる。 日銀の追加利上げも焦点だが、市場では「今回慎重な運営をとった日銀が、次回会合で減額の具体策と利上げを同時に決めるような大胆な運営はとらないのではないか」(三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジスト)との見方が少なくない。 「日米の政策金利差が開いた状態のままでは、円キャリー取引も続きやすい」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)。円安基調がすぐに反転する状況は見込みづらい。 厚生労働省が5日発表した4月の毎月勤労統計調査(速報)では、物価変動の影響を除いた実質賃金が25カ月連続でマイナスとなった。内閣府が10日発表した1?3月の国内総生産(GDP)改定値も年率換算で1.8%減と低迷する。 岡三証券の武部力也シニアストラテジストは「景気停滞とインフレが共存するスタグフレーションに陥る可能性がある」と指摘。「政府がデフレ脱却を宣言していない状況で日銀が利上げに打って出るとは考えにくい」とみる。 日本経済の停滞感は日本株の足も引っ張っている。「海外投資家の日本のマクロ経済への期待感はかなり落ちた。消費の弱さへの懸念は強い」。UBSが香港で5月下旬に開いた投資カンファレンスに参加した同社の足立正道チーフエコノミストは指摘する。 東京証券取引所が公表する投資部門別売買動向によると、海外投資家は6月第1週(3?7日)までの3週連続で日本株を売り越した。トヨタ自動車株は14日、4カ月ぶりの安値に沈んだ。3月の最高値比で2割安い。円安はトヨタのような輸出企業にとって為替換算による収益押し上げ要因となるが、株価には追い風となっていない。 大和証券の阿部健児チーフストラテジストは「米国ではインフレ鈍化を示す指標が相次ぎ、金利は低下傾向だ。バリュー(割安)株の色彩が強い日本株よりも、金利低下の恩恵を受けやすいグロース(成長)株がけん引する米国株の方が優位になりやすい環境が続く」とみる。 BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは「日本株への買いは手控えられ、次の日銀会合までに日経平均株価が4万円の大台を回復することはない」とみる。 市場では4月29日に政府・日銀による為替介入とみられる円急騰が起きる前の1ドル=160円前後の水準が当面の節目とみる向きが多い。ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジストは「エネルギー関連の輸入に伴う円売りなど、実需の円安要因も大きい」と指摘する。 日銀の植田和男総裁は14日の記者会見で「経済・物価情勢に関するデータや情報次第で短期金利を引き上げて、緩和の度合いを調整することは当然あり得る」と7月会合での追加利上げに含みを持たせた。 日米ともに次回の金融政策決定会合は7月30?31日に開く。「日銀としては過度な円安も、急激な金利上昇も避けたいというのが本音だろう」(邦銀ディーラー)。景気の腰折れを防ぎつつ段階を踏んで量的引き締め(QT)を進める日銀の足元を市場は見透かしている。【関連記事】・米国株は堅調、日経平均株価はボックス圏で推移の公算・市場は「タカ派FRBよりCPI減速」 米利下げ2回見透かす・日銀、買い入れ減額で国債市場どう変わる?・日銀総裁、国債購入減額「相応の規模」 保有額は減少へ2024/06/17 06:09:55303.名無しさんXib3O「隠れ円安」進行、英ポンド200円突破 及ばぬ介入神通力-神山美輝、生田弦己2024/06/19 05:00 日経速報ニュース 外国為替市場で円が幅広い通貨に対して下落している。対ドルでは1ドル=158円台まで下落した。スイスフランや英ポンドなどに対しては4?5月に政府・日銀が為替介入に踏み切る前の安値をすでに突破している。対ドルでは介入への警戒感が円安進行のスピードを抑えているものの、介入の神通力が及ばないその他の通貨では「隠れ円安」が着々と進む構図だ。 「日銀が(先週末の金融政策決定会合で)『何もやらなかった』という市場の評価が、円売り圧力になっている」。三井住友銀行為替トレーディンググループの納谷巧グループ長はこう話す。 18日の外為市場では円が一時1ドル=158円台に再び下落した。14日の決定会合で日銀は国債買い入れの減額開始を7月以降に先送りした。すでに5%超の水準まで金利を引き上げている米国との差が改めて意識された。 円売りがなかなか止まらない。6月上旬に付けた1ドル=154円台半ばからじりじりと円安が進む。今後の焦点は4月29日につけた160円を探る展開になるかどうかだ。同日に今年に入って1回目の為替介入が入ったとみられている。 4?5月に政府・日銀が9.7兆円と過去最大規模の円買い為替介入に動いたと判明した。160円に向けて円安が進めば再介入により円が押し上げられかねない――。そんな警戒感から下値では買い戻しが入りやすくなっている。為替介入の効果により円が2円ほど円高の水準にとどまっているともいえる。 ただドル以外の通貨に対しては、既に介入効果を喪失しつつある。米ドル以外の通貨に対する「隠れ円安」が進み始めたからだ。基軸通貨のドル以外に対しては、円安が進んでも政府が円買い為替介入に動く可能性は低いとの見方から、円売りの安心感がより大きい。 18日には対スイスフランで一時1スイスフラン=178円台と、英LSEGで遡れる1982年以来の最安値を更新した。対英ポンドでも1ポンド=200円台と約16年ぶりの安値圏に沈んだ。 対ニュージーランド(NZ)ドルでは14日に一時1NZドル=97円台と、2007年7月以来およそ17年ぶりの円安・NZドル高水準を付けた。オーストラリア(豪)ドルに対しても1豪ドル=105円台と約11年ぶりの安値圏で推移している。 フランスの右派台頭で政治的リスクが意識される対ユーロでは1ユーロ=169円台と介入前に付けた171円台半ばよりは円高水準にある。もっとも14日に付けた167円台からは円安に振れるなど、円安圧力は根強い。 新興国通貨に対しても円安進行が鮮明だ。南アフリカランドに対しては1ランド=8円台後半と2年ぶり円安水準を付けた。中国人民元やタイバーツなどに対しても2024年の最安値圏で推移する。 「隠れ円安」の背景には低金利の円を借りて高金利通貨で運用し、金利差で収益を得る「円キャリー取引」を継続しやすい環境になっていることがある。 あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは「日銀が次回7月の会合までは減額や利上げなど金融引き締めに動かないことが安心材料となり、少なくとも1カ月程度は円キャリー取引をしやすい環境が整った」と話す。 キャリー取引は相場の変動率が下がるほど魅力度が増す。仮に円高が急激に進むと金利収益以上に相場変動で損失を出しかねないからだ。 米連邦準備理事会(FRB)による利下げも秋以降との見方が大勢だ。日米の金融政策を巡っては円相場を大きく動かすイベントがしばらくないとの見立てから、キャリー取引を手がけやすい環境との認識が広がる。 日米の3カ月金利差を予想為替変動率で割った「キャリー・リスク比率」をみると、17日には0.61と3週間ぶり高水準で推移する。対ドルでのキャリー取引の魅力度上昇は、基軸通貨のドルを介して取引することが多い他通貨にも広がりやすい。 直近では想定外の政治イベントで巻き戻しの動きもあった。ここ数年の円安局面でキャリー取引の相手通貨として人気となってきた対メキシコペソでは、与党連合の大勝を受けた財政懸念の強まりを受けて5月末比で一時10%超も円高・ペソ安に振れる場面もあった。 11月には米大統領選を控えるなど政治リスクが一段と強まる。とはいえ現時点でキャリー取引の巻き戻しはメキシコペソなど一部の通貨にとどまる。幅広い通貨で円が安値を更新する「隠れ円安」の継続は、市場参加者に低金利を背景とした円安圧力が根強いことを強く印象づけている。2024/06/19 06:05:18
【国民民主党】玉木代表 加熱する不倫報道に「家族の心理的負担は極めて大きい」「テレビや週刊誌やネットも見てしまって、その都度傷ついている」ニュース速報+811754.42024/11/21 19:39:35
徒然なるままにコピペ日記 第7章
https://egg.5ch.net/test/read.cgi/cafe60/1538643191/
2023/07/27 日本経済新聞 朝刊
株式相場の方向感が乏しいなかで、投資家の目線が中小型株に移りはじめた。にわかに注目されるのが割安株としては利益成長率が
高いものの、注目度が低いため埋もれている銘柄、いわば「ゆる成長株」だ。春先からの株高を主導した海外勢が休暇に入り「夏枯れ相場
」の様相が強まるなか、中小型株シフトは当分の間続きそうだ。
26日の東京株式市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて売買を手控えるムードが広がるなかで、好決算を発表した銘柄の
上昇が目立った。前日の取引終了後に23年1~6月期が大幅増益になったと発表した大塚ホールディングスは、一時前日比6%高まで
買われた。
この日は中小型株の一角が相次ぎ年初来高値をつけた。代表例は16年ぶりの高値をつけたタムロンだ。14日付でSMBC日興証券が
新規に調査を開始したことが手がかりとなり、株価は14日比で1割高となっている。高い価格決定力があるカメラ向け交換用レンズで得た
収益を株主還元や成長事業への投資に活用することが期待されている。
「タムロンはブランド力を確立していながら必需品ではなく、成長イメージも描きにくい点から割安だった」。三井住友DSアセットマネジメン
トの苦瓜達郎チーフファンドマネージャーはこう話す。運用する「ニッポン中小型株ファンド」に6月末時点でタムロンを組み入れていた。
同ファンドの組み入れ銘柄では製鉄所向けの耐火物を手がける黒崎播磨も、26日に33年ぶりの高値を更新した。両社は「高成長すぎ
ない中途半端な立ち位置の銘柄」(苦瓜氏)で、いわば「ゆる成長株」だ。春先からの株高の波に乗れず割安に放置されていたが直近の
決算は好調で、業績の先行きに安定感がある点が評価され始めている。
市場全体の目線も割安な中小型株に向かっている。6月末と比べて東証株価指数(TOPIX)が0・2%安となる一方で、小型バリュー株で
構成する指数は2%高となり、25日には算出来の高値をつけた。インバウンドや半導体関連といったテーマから、個別の企業業績へと関心
が変化していることがうかがえる。
目線の先には4~6月期の決算発表がある。夏枯れが強まり、海外マネーの流入が一層細るなかでは、サプライズ決算を示した銘柄が
一躍脚光を浴びる可能性は高い。
「稼ぐ力を高めているのに割安に放置されている中小型株は多い。流動性に配慮しながら時間を分散して買う」。明治安田アセットマネジ
メントの永田芳樹シニア・ポートフォリオ・マネジャーは暑さの増す7月も企業訪問を続ける。
こうして見つけた企業の1つが切断機などを手がける小池酸素工業だ。5月の決算発表時点でPBR(株価純資産倍率)は0・3倍台だっ
たが、23年3月期の連結純利益が前期比で2倍に成長したことを受け、株価は4割高になった。
ファンドマネジャーだけでなく、個人も「ゆる成長株」の発掘に動く。ある60代の個人投資家は「自己資本利益率(ROE)や個別企業の稼
ぐ力に着目して銘柄選別を進める」と話す。
今週の「中銀ウィーク」を通過した後も、日本企業の4~6月期決算発表は続く。中小型株を主戦場とし、株高に乗れなかった個人には外
国人不在の夏枯れ相場はむしろ好都合。銘柄選別の暑い夏は、これから本格化していきそうだ。
2023/07/27 13:30 日経速報ニュース
米連邦公開市場委員会(FOMC)が終わり、市場の視線は日銀の動向に移った。通貨オプション市場では円高への警戒を示す指標が
4カ月ぶりの水準となった。日銀が28日に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正に動くことに備える動きが広がっている。
27日の東京外国為替市場で円相場は一時、1ドル=139円台前半と1週間ぶりの円高・ドル安水準をつけた。FOMCを通過し、日銀が
28日まで開く金融政策決定会合でYCCを修正することを警戒した円買いが進んだ。
米連邦準備理事会(FRB)は26日のFOMCで0.25%の利上げを決めた。市場予想通りで、先行きも「9月に利上げをする可能性もあるし、
ないかもしれない。会合ごとに決める」(パウエル議長)とデータ次第という従来通りの立場を強調した。
このため、国内外の市場ではFOMCは「無難な結果で、むしろ日銀会合への相対的な注目度を高めることになった」(三菱UFJモルガン・
スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)との受け止めが広がった。
特にYCC修正への警戒の高まりを映しているのは、通貨オプション市場だ。円の対ドル取引で「プット(売る権利)」と「コール(買う権利)」
の需要の偏りを示すリスクリバーサルをみると、1週間物はマイナス4.4%台と3月以来およそ4カ月ぶりの水準をつけた。
マイナス幅が大きいほど円買い・ドル売りの需要が強いことを示し、市場の円高警戒の強さを映す。3月は米シリコンバレーバンク(SVB)
の経営破綻で急速な円高・ドル安が進んだ局面だ。4月に植田和男氏が日銀総裁に就いてからは最も円高への警戒が高まっているといえる。
SBIリクイディティ・マーケットの鈴木亮常務は「1ドル=137円を行使価格とする円コール・ドルプットの大口買いが入っている」と明かす。
137円を超えて円高・ドル安が進むと、利益を得られる取引だ。
こうした動きの背景にあるのは、金融政策の正常化に必要な材料がそろいつつあるとの見方だ。厚生労働省の毎月勤労統計調査による
と、直近5月の基本給にあたる所定内給与は前年同月比1.7%増(確報値)と約26年ぶりの伸びだった。6月の消費者物価指数(生鮮食品
を除く=コアCPI)は同3.3%の上昇と政府・日銀が目標とする2%を1年以上にわたり上回る。
日銀は28日、経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表する。23年度だけでなく、24年度以降の物価見通しも引き上げる観測もある。
24年度以降も2%を超えて推移するとなれば、目指す「2%の物価安定目標」の達成に近づく。
日銀は2022年12月、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に拡大した。突然の政策修正に、日銀が金融正常化にカ
ジを切ったとの見方を強めた市場では23年1月、一時1ドル=127円台まで円高が進んだ。
今回は22年末と比べても円買いのエネルギーが大きくなる可能性がある。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋による円の
ドルに対する売り越しは約9万枚と22年末比でおよそ2.4倍の高水準に達する。YCC修正があれば、円安に賭けた持ち高の解消が急速な
円高を生みやすい。
日銀は28日昼ごろに金融政策決定会合の結果を公表する見通しだ。鈴木氏によると、オプション市場では28日に円相場が最大4円程度
変動することを織り込んでいる。YCC修正の有無にかかわらず、28日の相場急変動には備える必要がある。
2023/07/28 04:00 日経速報ニュース
海外投資家の買いを背景に日本株の上昇率が高い。筆者は日経ヴェリタス2月26日号の本欄「割安日本株の逆襲が始まる」において
世界の中で日本株が著しく割安であり、とりわけ低PBR(株価純資産倍率)株の投資妙味が強いことを指摘した。ここまでは想定通りとし
て、問題は株価上昇の持続性である。5?10年に1度、日本株は大きく上がることがあるものの、上昇は長続きせず、その度に「今度こそ
は」と期待した投資家を落胆させてきた。
しかし、今回の株価上昇は過去とは大きく異なると考えられる。以下、日本株の歴史を振り返りつつ、今回の株価上昇の持続性を分析
する。
海外投資家が株高をけん引
バブル崩壊後、日本株上昇は常に海外投資家の買いによって起きた。1999年のITバブル時は海外投資家の買い越しが東証株価指数
(TOPIX)を58.4%押し上げた。2005年に小泉純一郎首相(当時)が「郵政解散」を断行して圧勝すると、これを好感した海外投資家が10.3
兆円買い越して、TOPIXは43.5%上昇した。2013年はアベノミクスや「黒田バズーカ(日銀による異次元の金融緩和)」を好感して、海外
投資家は15.1兆円(史上最高)買い越し、TOPIXは51.5%上昇した。
しかし、これらの株価上昇は持続しなかった。いずれも海外投資家が「いよいよ日本が構造的に変わる」と勘違いして大量に日本株を
買ったものの、「さっぱり変わらないではないか」と気が付いて売りに回った、という見方がある。たとえば、2012?14年に海外投資家は
18.8兆円買い越したが、15?22年に15.0兆円売り越した。
過去10年間の投資収益率は米国の199.3%、欧州の89.1%と比較すると、日本は69.7%と劣る(現地通貨ベース、出所はQUICK・ファク
トセット、7月14日現在)。自己資本利益率(ROE、6月末時点)は米国15.5%、欧州13.1%だが、日本は8.3%と低水準だ。社外取締役が
増えたものの、東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件、電力会社談合などに見られるように、コーポレートガバナンス(企業統治)は
問題が多い。
このように日本株は不振が長く続いただけに、株価純資産倍率(PBR)が米国の3.8倍、欧州の1.8倍に対して1.3倍と圧倒的に低い。
今年4?6月期に海外投資家は6.1兆円買い越してTOPIXは14.2%上がった。今回、海外投資家には「いよいよ日本が変わる」などとい
う勘違いはなく、日本株が世界の中で著しく割安であるからこそ大量に買い付けているものと思われる。
日本株の割安是正相場を引き起こした要因、あるいはきっかけは、以下の通りである。
第1に、ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイによる商社株の買いである。バリュー投資家で知られるバフ
ェット氏の投資は、世界の投資家に対して日本株が著しく割安であるというシグナルとなった。
21年にバフェット氏は総合商社大手5社の株式取得を開始し、現在、これらの発行済み株式の7.5?8.3%を保有している。今後、最大
9.9%まで購入するという。過去1年間の株価上昇率は三井物産が80.4%、三菱商事が76.6%、伊藤忠商事が43.2%と、TOPIXの18.3%を大
きく上回る(7月14日時点)。それでも大手商社のPBRは1.2?1.7倍と高くはない。
第2に、東京証券取引所が上場企業に対して、資本コストや資本収益性(例えばROE)を意識した経営を要請したことがある。また、東証
プライム市場の上場基準を満たさない企業の経過措置を2025年までとして、市場の規律を強化した。こうした取り組みによって、PBR1倍
を目指す企業が増加した。
第3に、アクティビスト(物言う投資家)の活躍である。スチュワードシップ・コード導入などによって機関投資家の圧力が高まり、株式持ち
合いが減りつつある。加えて機関投資家の議決権行使基準が厳格化された。これにより、アクティビストの提案であっても合理的なもので
あれば、機関投資家が賛成するようになった。
東洋建設はアクティビストの取締役選任議案が可決承認され、事実上の敵対的買収が成立した。世界最大級のアクティビストファンドで
ある米エリオット・マネジメントが株式を取得した大日本印刷の株価は、今年の安値から高値まで66.6%上昇し、PBRは0.6倍から1倍近くに
上昇した。バリューアクト・キャピタルが株式を取得したセブン&アイ・ホールディングスの株価は21年1月安値から23年3月高値まで84.5%
上昇した。
自動車への波及が焦点
日本株の割安修正の相場はまだまだ続くものと思われる。東証上場企業のPBRの分布を分析すると、0.6倍台が最も多く、次いで0.7倍
台、0.8倍台の順である(0.1倍刻み、6月末時点)。データ取得可能な企業3767社のうち46%が1倍未満である(マイナス含む)。
商社に続く割安株は銀行である。過去1年間の株価上昇率は三菱UFJフィナンシャル・グループが51.0%、三井住友フィナンシャルグルー
プが57.2%、みずほフィナンシャルグループが43.9%と高い(7月14日時点)。ところが、それでもPBRは0.6?0.7倍と低い。まだ上値の余地
があるとも考えられる。
これに続くのが不動産である。東急不動産ホールディングスの株価は3月末から7月14日までに25.4%上昇し、TOPIXの11.8%を大きく上
回る。住友不動産は同18.7%、野村不動産ホールディングスも同15.6%上昇するなど、オフィスビル事業の依存度が低い不動産会社の株
価が上昇しつつある。オリエンタルランド(同23.3%)、日本航空(同16.4%)、と、インバウンド関連も好調である。
以上を総合すると、日本株が年内上昇を続ける可能性は高い。ただし、来年以降も上昇相場が持続するためには、最後に残った割安株
である自動車の持続的上昇が不可欠であると思われる。自動車は時価総額が大きく、かつ産業の裾野が広い。
電気自動車(EV)の開発で先行するテスラ(米国)のPBRは20.6倍、ポルシェAG(ドイツ)は6.1倍と高い。一方、日本ではトヨタ自動車こ
そPBRが1倍を超えたが、ホンダは0.6倍、日産自動車は0.4倍と低い。トヨタ自動車の佐藤恒治社長はEVに大きくシフトする方針を明確に
している。日本の自動車業界がEVに思い切ってシフトできれば、バリュエーションの上昇が期待できる。結論として、割安日本株の逆襲は
まだまだ続くと考えられる。
2023/07/28 13:30 日経速報ニュース
日銀による長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化報道をきっかけに、27日の米金融・資本市場から始まった
株安・円高・金利上昇は、28日の東京市場へと引き継がれた。「YCCショック」の様相を呈するなか、日銀は動じずに28日まで開かれ
た金融政策決定会合で柔軟化を決定した。日銀は金融主権を守ったと同時に、3つの代償を抱え込んだかもしれない。
第1の代償は国際金融資本市場の不安定化リスクだ。柔軟化に伴う市場調節運営の変更で、10年物国債の利回りは現在の0.5%
程度から理論上は約2倍の1%まで上昇する可能性がある。
日米欧で中央銀行の資金供給量が過去最高水準に近いのは日銀だけだ。いまや日本は世界のリスクマネーの一大供給源だが、
その日本の大幅な金利変動は米国から日本へ、株式から債券へ、ドルやユーロから円へというようにマネーの逆流を引き起こしかね
ない。日本の長期金利が上がり、日本の機関投資家が米国債から日本国債に資金シフトすれば、米国の長期金利も上がる。
心配なのは割高感が強い米国株だ。債券との比較で割高・割安を判断する株式リスクプレミアムは、米S&P500種株価指数が1%
程度と過去20年で最低。米ナスダック総合株価指数に至ってはマイナス0.4%と株式益回り(3.6%)が10年物国債の利回り(4%)を
大幅に下回る「超割高状態」だ。
S&P500種の予想EPS(1株利益)は切り上がっているが、実績EPSは低位で底ばいが続き、ワニの口のように広がっている。株
式市場の期待が先走っている証拠だが、こうした現象はリーマン・ショック前や新型コロナショック前にもみられた。
世界の株式市場を取り巻く環境は株式の割高化や実質政策金利の高さという点で、1987年10月のブラックマンデー(世界同時株
価暴落)前に似ている。YCCショックが世界に広がった場合、それがトラウマとなって逆に日銀の金融政策正常化が遅れる可能性も
ある。これが第2の代償だ。
類例は87年8月。日銀は資産価格の高騰対策で短期金利の高め誘導を開始したが、その直後の10月、ブラックマンデー(世界同
時株価暴落)が発生。超低金利が長期化し、バブルとその崩壊を招いた。
第3の代償は政治の圧力で金融政策の手足が縛られるリスクだ。防衛費の増額や子育て支援の財源捻出で自民党は「埋蔵金」
活用に傾いている。その柱は時価で4.7兆円にのぼる政府保有のNTT株の売却だ。日銀保有の上場投資信託(ETF)の含み益は
20兆円をゆうに上回るとみられ、少子化対策の財源として政府が簿価で買い取る可能性を探っているともいわれる。株安は政府・
自民党にとって望ましい話ではない。
いずれにしても、2023年7月28日は経済・金融史に大きく刻まれる一日になる可能性がある。
[東京 28日 ロイター] - 28日の東京市場で大幅な債券安、株安が進行している。日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール
YCC)の運用柔軟化を決めたことで、債券売りが強まり、為替市場での円高と株安がそれぞれ深まる「玉突き」が生じた。
国債先物は、日銀会合の結果発表後に下げ幅を拡大。中心限月9月限は一時前営業日比1円62銭安の146円79銭に下落した。新発
10年国債利回り(長期金利)は同14.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.575%と、2014年9月以来の水準まで上昇した。
日銀が長期金利の変動幅について上下0.5%を「目途」としたことに加え、連続指し値を1%に引き上げたことを背景に、売り圧力が強ま
った。市場では「0.5%は目途という日銀が得意とする曖昧な表現にして残し、事実上は上限を1.0%まで拡大したことになる」(三井住
友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジスト)との見方が聞かれる。同様の観点から「YCC自体を形骸化させつつある
のだろう」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミスト)との声が聞かれた。
為替や株式市場では、結果発表の直後こそ、事前の観測報道の範囲を出ないとの受け止めから、出尽くしが意識された。ドル/円はいっ
たん上昇し、日経平均は下げ幅を縮小した。ただ、長期金利の上昇が勢いづく中で、流れが一変し、それぞれ再び下げを強めた。日経平
均は先物が主導する形で一時800円超安に下落。会合結果を消化する中で、目先は不安定な値動きが続く可能性がある。
もっとも、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは、日本株は割高とまではみられておらず、米株のよう
には金利上昇を受けた株安の余地は大きくないと指摘、「押し目を買いたいニーズは根強く、日米の中銀会合の通過を待ってエントリーす
るにはいいタイミングとの判断があってもおかしくない」と話す。金利の上昇が一服すると、株価は500円安程度に下げ幅を縮めた。
目先の焦点は、植田和男総裁の記者会見に移る。仮にタカ派姿勢が明確に確認されれば、さらなる円高進行の可能性もあると、トレイダ
ーズ証券の井口喜雄市場部長は話す。「植田総裁がどのようなスタンスをみせるかで、今後のドル/円の方向性が決まりそうだ」(トレイダ
ーズ証券の井口氏)として、関心が寄せられている。
2023/07/29 05:00 日経速報ニュース
フィンテックの台頭などで金融サービスを巡る競争が激しくなり、銀行はより高い付加価値を求められるようになった。そんな時代を勝ち
抜くためには、働きやすく成長を実感できる職場を整え、専門性と提案力をもった人材を引き付けることが不可欠だ。日本総合研究所の
翁百合理事長は「おじさん文化」と決別せよと訴える。
――150年の歴史を振り返って、銀行の役割はどう変わりましたか。
「決済と資金仲介という主要な銀行の機能はまったく変わらない。戦後から高度経済成長期にかけて間接金融は日本経済の成長を支
えた。設備投資需要が高まった資金不足の時代で、銀行は旺盛な資金需要に応えていれば十分な収益を上げられた。その後低成長に
なって資金需要は減退し、大企業は社債や(株式などの)エクイティでの調達も増えたが、引き続き銀行融資が大きい中小企業にとって
は特に、銀行は重要な役割を担う。中小企業をいかに成長させられるかが問われている」
――中小企業、スタートアップに銀行は何ができますか。
「銀行は顧客の預金を預かっていることからあまりリスクの高いものに投資してこなかったが、できる範囲でリスクをとっていくことが求め
られている。人材も(融資中心の)デットカルチャーの銀行員が多いので、エクイティの人材を獲得し、利益相反などのリスクはコントロール
しつつ成長に寄与する支援をしていくことが必要だ」
――ネット専業銀行やフィンテックとの競争も激しくなっています。伝統的な大手銀行は生き残れるでしょうか。
「決済などは銀行が唯一の担い手ではなくなっている。確実で安全な取引を提供することをコアのサービスとしつつ、付加価値の高いサ
ービスがより求められている。身軽なネット企業に比べて巨大なシステムや支店網を抱えるため、固定費が高く不利な面はある。デジタル
専業銀行、みんなの銀行を始めたふくおかフィナンシャルグループのように、新ブランドでZ世代に訴求するような工夫が必要になってきて
いる」
「(フィンテックのような)新業態の企業とは、競争と協働の両方が必要だ。銀行が金融商品を製造して販売まですべてを担うのではなく
フィンテックなどの第三者と協業して新サービスを生み出すオープンバンキングも可能になっている。そういう時代には銀行は(金融機能の
基盤を提供する)プラットフォーマーの役割を果たしながら自らもサービスを提供するという両面を求められる。海外から(銀行が黒子として
金融機能を提供する)バンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)の提供を目的とした銀行も出てきている」
おきな・ゆり 1984年(昭59年)慶大院修了、2011年京大博士。84年日銀へ。92年日本総研副主任研究員、主席研究員などを経て18年
から現職。金融システムが専門で、03年に産業再生機構の非常勤取締役を務めたほか、金融審議会、新しい資本主義実現会議など政
府の有識者会議にも参加。63歳。
「人口が減り、資金需要も減るため、経営環境が厳しいことに変わりはない。低金利で利ざやも稼げない。規模の経済の観点から、一
定規模以上の地域金融機関にとっては統合や合併は有力な選択肢になると思う。前向きに広いエリアで連携することで資金需要を取り
込んでいくという考え方もあっていい」
「地銀には預貸率がかなり低いところもある。そのため少しでも利益を出すため外債や長期の日本国債を保有している。金利上昇に対
してすごく脆弱になっている地銀があることは否めない」
――将来性のある企業を発掘する目利き力が落ちていませんか。
「不動産担保や経営者保証に依存する融資姿勢が目立つ金融機関もある。中には経営者保証をあまりとらないようにするなど変化も出
てきているが、道半ばだ。銀行は単に資金繰りをつけるだけではなく、企業の事業内容をみて、デジタル化やグリーントランスフォーメーシ
ョン(GX)などの観点でビジネスモデルをどうしていくべきか一緒に考えていく姿勢が求められる時代が来ている」
――これからの銀行に求められる人材像は。
「専門分野で力を発揮できるような人材が必要。これからはよりクリエーティブな提案力や、地域や異業種とネットワークを構築して新しい
ことに取り組む力のある人が求められる。こうした優秀な人材をひきつけるため、働きやすく成長実感のある職場にしていかないといけない」
「女性活躍はひとつの鍵になる。昭和時代の年功序列や性別役割分担の発想から来る『おじさん文化』から抜け出さないといけない。
若い世代や女性の視点が死角になっていないか点検してほしい。ダイバーシティーの確保は当然のことで、ダイバーシティーこそ価値だ。
特に地方の優秀な女性は東京に出てきてしまう面があるので、地銀が魅力ある環境を提供することは大切だ。育児や介護などがあっても
無理なく続けられる働きやすさも重要になる。メガバンクでは女性役員も少しずつ出てきて、高知銀行の副頭取に元日銀の河合祐子氏が
就くなど変化もある」
――長く続いた大規模な金融緩和からの転換も意識されています。米欧では金融不安もありました。金融当局に課題はありますか。
「金利動向が変わってくれば、体力が低い金融機関はじわじわ影響を受ける。万が一の破綻処理が早期かつ迅速にできる監督体制か
どうかは気にしている。日本では検査マニュアルが廃止され、自己判断で引当金を積むことになった方向はよかったと思っている。ただ、
銀行経営が悪化した場合、実質債務超過の状態になる前に破綻処理を準備できなければ大きな損失になりかねない」
2023/07/29 02:00 日経速報ニュース
米欧の利上げが終盤に入るなか、日銀は28日、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正を決めた。長期金利を強引
に抑え込まず、緩やかな上昇を容認する。粘り強く緩和を続ける姿勢を貫いてきた日銀の背中を押したのは、国民生活を圧迫している物
価高と円安だった。
「為替市場も含めて考えた」
「ボラティリティ―(変動率)をなるべく抑えるというところに為替市場も含めて考えた」。28日の金融政策決定会合後の記者会見で植田
和男総裁はYCCが為替相場の変動を助長していることへの懸念をにじませた。
政府が神経をとがらせたのも円安だ。27日まで円相場は1㌦=140円台で推移し、日銀が2022年12月に長期金利の上限を引き上げる
前の1㌦=137円台より円安に振れていた。円安は輸入物価の上昇を通じ、物価高を長引かせる要因になる。政府内では「140円台の
円安は明らかに行き過ぎ」との声も出ていた。
国内のインフレ率の勢いは弱まっているものの、上昇率は22年4月以降、政府・日銀が目標とする2%を上回り続けている。「物価高は日
銀の予想より明らかに上振れているが、大丈夫なのか」。政府内からは日銀の金融政策運営に疑念を呈す声も聞かれていた。
植田総裁を選んだ岸田文雄政権の支持率が下落局面にあることも今回の修正の背景にありそうだ。日本経済新聞の世論調査によると
岸田内閣の支持率は4月の52%から2カ月連続で低下。6月は39%となった。政府関係者は「今の物価高が続けば政権には打撃。いま日
銀が何もしなければ物価高に無策と映るだろう」と話す。
これまで金利上昇につながる政策修正は家計・中小企業への打撃となり、政権への逆風になると考えられていた。ところが、日銀が動
かないことが米欧との金利差を広げ、円安や物価高に拍車をかける構図が強まると状況は一変する。岸田首相が6月に閉幕した通常国
会での衆院解散を見送り、早期の総選挙の可能性が遠のいたことも日銀が動きやすい下地となった。
松野博一官房長官は28日の記者会見で、日銀がYCC修正を決めたことについて「金融緩和の持続性を高める」と歓迎した。
金利操作に伴う副作用への懸念もある。日銀は28日に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で23年度の消費者物価の前年
度比上昇率の見通しを4月時点の1.8%から2.5%に上方修正した。物価上昇はYCCの副作用を増幅する面がある。
本来、長期金利の水準は実質経済成長率や物価上昇率などを反映して決まるとされ、「経済の体温計」と言われる。物価が上昇する
局面では、理論的には金利も上昇する関係だ。
日銀のアンケートでは、個人が予想する1年後の物価上昇率の平均値は10.5%。高めに出る傾向があるとはいえ、家計や企業の物価
高に対する懸念が日銀へのプレッシャーになったとみられる。植田総裁は「上振れリスクが顕在化してから何か対応することでは後手に
回って副作用が大きくなる」と語った上で、YCCの修正は「前もってリスク対応を考えておく措置」と位置づけた。
国際通貨基金(IMF)のピエール・オリビエ・グランシャ・チーフエコノミストは25日、日銀のYCCについて「金融引き締め開始を準備する
ためにもう少し柔軟になり、距離を置くことを勧める」と語った。市場で決まる長期金利の水準を中央銀行が完全にコントロールするYCC
は海外からは異様に映る。
「植田さん自身、市場原理に反する政策には否定的な見方を持っている」。植田総裁に近い関係者はこう証言する。植田総裁も記者会
見で「長期金利の形成を市場にゆだねるという意図があるかだが、それはイエスだ」と市場機能に配慮する姿勢を示した。
YCCの修正は出口に向けた第一歩となるのか。植田総裁は「政策の正常化へ歩みだすということではない」と語り、物価目標達成へ
まだ距離があると認めた。それでも内田真一副総裁が7月上旬のインタビューで語ったように、「結果として出口に向かうのであれば、あ
そこが第一歩だったと振り返って言うことはできるかもしれない」。
2023/07/30 05:00 日経速報ニュース
【この記事のポイント】
・日銀の政策修正受け海外の国債金利に上昇圧力
・500兆円の緩和マネーが日本に還流するとの臆測
・金融システムの新たな火種になる懸念くすぶる
主要中央銀行で唯一、金融緩和を続けてきた日銀の政策修正に米欧が警戒を強めている。低金利環境下で海外に流出している500兆円
の緩和マネーが日本に戻るきっかけになりかねないためだ。緩和継続で金融市場安定の「アンカー」となってきた日銀の動向は世界市場を
揺さぶる波乱要因になる。
「世界的に影響を及ぼす大きな変化だ」。米連邦準備理事会(FRB)ウオッチャーとして知られる米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのニッ
ク・ティミラオス記者はツイッターで、かつてニューヨーク連銀幹部を務めたクリシュナ・グーハ氏の発言を引用しながら、日銀の政策修正をこ
う表現した。
実際、28日の世界の債券市場は大きく揺れた。オーストラリアの10年物国債利回りは一時0.55%、フィリピンは同0.1%、マレーシアは同
0.035%上昇(価格は下落)した。
日本の政策修正が海を隔てた国々に波及したのはなぜか。財務省の本邦対外資産負債残高によると、国内の投資家による海外の証券
投資額は2022年末に531兆円に達する。異次元緩和で国内の低金利環境が常態化した結果、資金流出が加速し、海外投資は10年間で
約7割増えた。
日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化したことで、長期金利が13年以来、一度も超えることのなか
った1%に到達する可能性が出てきた。
投資に伴う為替リスクもない日本国債の利回りが上昇すれば、海外資産の魅力は相対的に低下する。YCCの柔軟化で日本マネーの
「里帰り」が進むとの思惑から世界の金利にも上昇圧力がかかったというわけだ。
世界の金融当局はすでにこうしたリスクに警鐘を鳴らしていた。欧州中央銀行(ECB)は5月に公表した金融システムの安定に関する報
告で、日本が金融正常化にかじを切れば、「投資のリパトリエーション(資金回帰)を促進する可能性」があると論じた。
具体的には①金利差収益を狙う「キャリートレード」が減少②国内債券の利回り上昇で、欧米債の魅力が相対的に低下③国内債券が値
下がりし、投資家のリスクセンチメントが悪化――することを通じ、日本の投資家が海外の債券に投資していた資金が本国に回帰する可能
性があるとした。
国際通貨基金(IMF)も4月にまとめた国際金融安定性報告書で、「日銀による10年来の金融緩和は、日本の投資家を海外投資に駆り立
てた」と分析した。オーストラリアやユーロ圏、米国、インドネシアやマレーシアなどを例示し、日銀が金融緩和を見直せば「資金流出に直面
する可能性がある」と指摘する。
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストの集計では、世界の主要84中銀のうち87%が22年に利上げした。一方、日銀
は2%の物価目標を持続的・安定的に達成していないとして、主要国の中銀で唯一、金融緩和を続けている。
日銀の政策判断が金融システムに大きな影響を及ぼすのは、日銀がリスクマネーの最後の供給源となっていることと無縁ではない。
ある日銀関係者は「政策を見直す際には、海外にどのように影響が波及するか目配りする」と強調する。一方、「自国の物価の動向をみ
て金融政策を運営するのが基本」とも話し、日銀の政策修正が金融システムの新たな火種になる懸念は残る。
日銀の植田和男総裁は28日の金融政策決定会合後の記者会見で「政策の正常化へ歩みだすということではない」と語り、今回のYCC
柔軟化が金融緩和策の出口につながるとの見方を否定した。とはいえ、国内の長期金利が10年ぶりの水準まで上昇すれば、世界の金
融当局が描くシナリオが現実味を帯びてくる。
2023/07/31 05:00 日経速報ニュース
「運用のプロ」として日本に資産運用業の道が本格的に開かれたのは1986年、投資顧問業法の施行だ。米国に遅れること半世紀。
当時、三菱銀行は米フィデリティ、住友銀行が米バンカース・トラストと組んでノウハウを得ようとした。
邦銀幹部は米運用会社に当時こう言われた。「銀行とは文化が違う。銀行員を送り込むのではなく、切り離して早く生え抜きを社長
にすべきだ」
それから37年。銀行からみた「貯蓄から投資」は未完のままだ。警鐘は当たったと認めざるをえない。運用会社は子会社扱いで、
親銀行の経営が苦しいと人員も予算も一律で絞る繰り返し。市場の危機は実は運用の好機になるが、そうしたノウハウ蓄積の場も
限られた。
それは株価が如実に示す。33年ぶり高値を回復した日経平均株価に対し、業種別株価でみた「銀行」の指数は停滞したまま。バブ
ルのピークだった89年末の5分の1の水準にとどまる。
これは家計の利子所得の減り方とそのまま重なる。94年に26兆円強あった利子所得は21年に6兆円にまで減少した。超低金利
時代に突入するなか、銀行が預金に代わる金融商品を十分提供できなかった結果、家計の資産所得は大きく損なわれ、銀行への
市場の評価も厳しいものになったといえる。
銀行は運用や提案力を携え、長期に顧客の資産形成に資する存在となれるか。預金こそ安心安全という預金神話を自ら崩す覚悟
が問われる。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が突破口として狙う一つはグローバルな運用力だ。3月、英アルバコア・キャピタル・グループ
の買収を発表した。非伝統的なオルタナティブ投資の会社だ。
従来のような東京主導ではない。19年に約3000億円で買収した豪ファースト・センティア・インベスターズ(FSI)がアルバコアを傘下
に入れる。「運用力を磨き、世界の優れた人材を雇う文化や仕組みのプラットフォームをFSIが担う」(安田敬之執行役専務)。運用の
最前線での報酬のあり方も実績主義へとシフトしつつある。
国内では24年春から三菱UFJ国際投信を持ち株会社のもとに置く。親会社や販売の論理に縛られない運用会社へ向けた見直しの
一歩になる。
個人への向き合い方にも前進がみえる。三井住友フィナンシャルグループでは銀行顧客の投資信託の保有期間が22年度は平均
8.4年。4年前より4年近く延びた。「長期に分散して市場に居続けることの重要さを説く姿勢が受け入れられてきた」(三井住友銀行
の加藤聡彦執行役員)
預金と異なるリスク資産に顧客も銀行員も不慣れで、市場の変動があればすぐ売買して資産を減らすという時代から徐々に脱しつ
つある。
スマホで金融サービスを一括管理する「Olive(オリーブ)」は3月のスタートから6月時点で60万口座を獲得。銀行口座と同時に証券
口座をつくり、クレジットカードで積み立て投資まで一気に踏み出す顧客の多さに手応えがあるという。
増員する構えだ。職域での助言、ネットでの対応も合わせて計200人増やす。プロ向けのノウハウも生かし、グループとして「確定拠出
年金などを入り口に、能動的に将来の資産形成に動く層への支援を厚くする」(佐藤紀行執行役)。
しかし米金融大手の背中は遠い。JPモルガン・チェースの4?6月期決算ではアセット・ウェルスマネジメント部門の純利益は前年同
期比22%増の12億ドルと全体の利益の1割を稼ぎ、部門の自己資本利益率(ROE)は29%を記録した。
ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は4月に公表した「株主への手紙」で、資産形成など長期に顧客との関係を築いて収益を
上げる重要性を説いた。「金利や単純な信用リスクをとるだけなら1人の人間とコンピューター1台で十分。(社員)29万人が地球を回る
必要はない」
米国をみれば金融環境が変わるときに主役も変わってきた。80年代に市場金利の優位性を生かしたMMF(マネー・マーケット・ファン
ド)で証券会社が躍進。その後の米産業の新陳代謝と株高が好循環に入ると、資産運用業が成長分野になった。
米国トップの資産運用会社ブラックロックが生まれたのは88年。37年前には存在していなかった。それが今や時価総額で16兆円と
いう存在になり、14兆円の三菱UFJFGをしのぐ。資金不足時代の発想と組織に縛られ、「貯蓄から投資」のうねりをつくり出せてこなか
った日本の銀行。顧客資産の拡大に軸を合わせた経営に今度こそ転じられるか、銀行自身の未来図のカギになる。
2023/07/31 05:00 日経速報ニュース
「待つことのコストは大きくない」。そう繰り返してきた日銀の植田和男総裁が28日、政策修正に動いた。長短金利操作(イールドカーブ・
コントロール、YCC)を柔軟化し、これまで上限としてきた0.5%を超えて長期金利が上昇することを認める。植田氏は前言をあっさり翻し、
記者会見で「(政策が後手に回れば)大変なことになる」と語った。何が植田氏を豹変(ひょうへん)させたのか。
①物価上昇を「過小評価」
日銀が今回、政策修正に動いた理由をひと言で言えば「YCCの効果と副作用が両方とも、ものすごく大きくなる事態」(植田氏)を避け
るためだ。
この1年強の間に「物価はどうせ上がらない」というデフレ時代の常識は揺らぎ、日本中で値上げや賃上げの動きが広がった。そうした
基調的な物価、いわば経済の体温が上がってきたときに、長期金利を0.5%にむりやり抑え込むという従来通りの緩和策を続けていては
、経済や物価を過度に刺激しかねない。
基調的な物価が上昇したのであれば、ある程度はそれにあわせて金利上限も高めていくのが自然――。植田氏が今回明らかにし
たこの考え方は、日銀が昨年12月に長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げた際、当時の黒田東彦総裁が記者会見で説明
した理屈とも重なる。
足元のインフレについて、植田氏は「(日銀が4月時点では)不確実性を過小評価していた」と率直に認めた。物価は日銀が思って
いた以上に上がっているし、これからも想定外の上昇となる可能性がある。「将来の不確実性を今回改めて認識した」ことが豹変の
理由のひとつになった。
②後手に回れば「大変なことに」
もうひとつの理由は、効果と裏表の副作用への警戒だ。経済の体温が上がっている時に無理に金利を低く抑えれば、実態よりも低
い金利(高い価格)となった債券を売る動きが広がり、日銀の債券購入額が際限なく増えてしまう。日銀のバランスシートが膨らむだけ
でなく、金利がゆがんで企業の社債発行などにも影響を与える。
「YCCは昨年来の経験もみると(物価の)上振れリスクが顕在化したあとで対応しようとするとなかなか大変なことになる。副作用を
すごく大きくしてしまう」。日銀が昨年12月の政策変更の前後に経験したように、金融政策が後手に回れば、将来の政策変更を見込ん
だ投機筋の攻勢で市場は大混乱に陥る。債券市場が落ち着いているこのタイミングで、先手を打って動く必要があるというのが植田
氏の説明だ。
事実上の長期金利の上限を1%としたのは、次の政策修正を市場から催促されないように「のりしろ」を確保するためだ。日銀の国債
買い入れの影響を受けにくい翌日物金利スワップ(OIS)市場では、10年物は0.6%台後半まで上昇した。日銀も長期金利の実力は
そのあたりと踏んでいるのではないか。
仮に0.75%のような手の届きやすい水準に上限を設定すると、投機筋の格好の標的となってしまう。日銀はそうした「根拠のない
投機的な債券売り」(植田氏)には機動的に対応すると表明。植田氏は長期金利が1%に近づく可能性は低いとし、1%とした国債
の無制限買い取りのラインは「念のための上限キャップ」と表現した。
3番目の理由は、再び進み始めた円安だ。植田氏は「金融市場のボラティリティーをなるべく抑えるというところのなかに為替市場の
ボラティリティーも含めて考えた」と述べた。日銀が金利を低く抑え続ければ、日米金利差が広がって、円安が進みやすくなる。昨年12
月は円安で政府・与党の日銀批判が強まった後、政策変更に追い込まれた。その悪夢を繰り返すわけにはいかない。
日銀は金融政策の独立性を強調するが、人事や予算を握る政府・与党の意向から完全に自由ではいられない。為替相場に敏感な
政府・与党から批判を受ければ、日銀の信認が傷つき、政策効果にも影響が出てしまう。政府・与党から介入を受けていると市場に
見透かされる前に、先んじて動こうとする習性のようなものが日銀にはある。
今回の政策修正では①値上げや賃上げが広がり、緩和効果が想定外に拡大②金利を抑え続けることで、副作用が今後強まるリ
スクが浮上③円安が進むなか、政府・与党も政策修正を支持――という3つの条件がそろった。物価の基調がこの先さらに高まれば
、追加的な修正が視野に入る。その際には、マイナス金利の廃止も含めた政策全体の見直しが焦点になる。
もっとも、金利上昇は実体経済には大きなマイナスだ。今回の柔軟化について、日銀の9人の政策委員のうち、日立製作所出身の
中村豊明委員が「企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」とただ1人反対票を投じたのは示唆に富む。経済
や物価の先行きは見通しがたく、マーケットや政治の動向も不透明だ。大規模緩和の出口へ前進したのは間違いないが、先の霧が
晴れたわけではない。
2023/07/31 14:48 日経速報ニュース
日銀は31日、金融政策の企画・立案を担う企画局長に正木一博・金融機構局長を充てる人事を発表した。正木氏はマイナス金利政策
の導入に関わるなど、日銀の「エース」と評される人物だ。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟にする政策
修正を決めた直後の人事とあって、市場参加者の間で話題を集めている。
正木氏は量的・質的金融緩和の導入直後の2013年から17年まで、企画局の政策企画課長を務めた。その後高松支店長、金融機構
局長などを経て、6年ぶりに企画に戻る。
14年の追加緩和や16年のマイナス金利政策とYCCの導入など、黒田東彦前総裁のもとで繰り出され今も続く重要な政策に深く関与。
元副総裁の雨宮正佳氏と現副総裁の内田真一氏とともに、金融政策の立案を主導する「企画ライン」の一角として黒田日銀を支えてきた。
ある国内証券の債券ストラテジストは「重要政策に関わってきた正木氏は、遅かれ早かれ必ず企画局長に就くと思っていた」と話す。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「いばらの道が予想されるなか、かじ取りは正木氏に託された」としたうえで、「エー
スの起用で、市場では金融緩和の正常化への思惑が膨らみそうだ」と語る。正木氏は金融政策の考案だけでなく、金融市場局で国債
買い入れといったオペ(公開市場操作)を担う市場調節課長も経験してきた。市場調節にも精通する正木氏の登用で「マイナス金利の
解除に向けて万全の体制となった」(岩下氏)と評価されている。
日銀は28日まで開いた金融政策決定会合でYCCの運用を柔軟化し、許容する長期金利の変動幅の上限を事実上1%に引き上げた。
31日の国内債券市場では長期金利が約9年ぶりに0.6%台に上昇。新発2年物国債の利回りが半年ぶりにプラスとなるなど、マイナス
金利解除への思惑が意識されている。
28日の日銀の決定は、将来、出口が近づいた時に柔軟な政策運営ができるようにと備えた対応との見方がある。こうしたなかで正木
氏を企画ラインに再登板させたのは、「日銀は出口に向けた準備を着実に進めている」という見方の裏付けとなるのではないか――。
市場では早くも正常化に向けた思惑が広がっている。
2023/08/01 日本経済新聞 朝刊
大手銀行グループや地方銀行が黒子となり、金融事業に参入する企業へ必要な機能を提供する動きが広がってきた。三井住友フィナン
シャルグループ(FG)傘下の三井住友カードが企業向けにスマートフォン決済のアプリを開発できるサービスを開発したほか、十六銀行な
どの地域金融機関も自治体向けに金融機能を提供する。「黒子型金融」はネット銀行が先行しており、銀行間の取り込み競争が一段と激
しくなっている。
三井住友カードがシステム構築のTISと提携して企業に提供するのは、決済やポイントの付与、送金、アプリ開発の機能を包含したスマ
ートフォン決済の基盤だ。この基盤を使って開発した決済アプリは、QRコードやクレジットカードのタッチ決済にも対応できる。顧客企業の
利用者はクレジットカードや銀行口座からチャージ(入金)し、買い物時に使える利点がある。
必要に応じて、アプリ間の送金や顔認証などの機能を盛り込めるほか、三井住友カードが提携する米ビザの加盟店で使えるため、企業
が自ら加盟店を開拓する手間も省ける。基盤を使えば企業が個別にアプリをつくるより開発費を7割減らせ、期間も4割短くできるという。
開発資金の捻出が難しい地場の食品スーパーやキャッシュレス化が進まない地方の交通事業者などの利用を想定し、売り込む方針だ。
実用化に先立ち、ANAホールディングスの「ANA Pay(ペイ)」には提供しており、そこで蓄積した技術やノウハウを基に、提供先を一段
と広げる。提供側の三井住友カードはシステムの導入料に加え、決済ごとに手数料を受け取ることで収益を確保する。
十六銀行を含む地域金融機関はNTTデータなどと組み、自治体向けに同様のサービスを始める。個人の銀行口座から特定の地域で使
える地域通貨に入金したり、地域商品券をアプリで受け取ったりすることができるようになる。
大手銀行では、三菱UFJ銀行もパートやアルバイトが給与の計算やシフトの管理をできるリクルートのアプリで銀行口座を開設できるよう
にしている。NTTドコモは三菱UFJの機能を使い、昨年12月に「dスマートバンク」を始めた。
銀行やカード会社が持つ金融機能を小売業やサービス業に提供し、スマホのアプリなどで使えるようにするのは、「エンベデッドファイナ
ンス(組み込み型金融)」の一類型だ。ネット取引が一般化し、商品やサービスの売買と同時に決済も完結させる必要性が高まっている
ため、組み込み型金融への需要も高まっている。システムを裏側で構築する黒子の金融機関にとっては、新たな収益源となる。
フィンテックなど新たな決済プレーヤーの参入が相次ぐ中で、一方的にシェアを切り崩されるのを防ぐ防衛的な側面もある。決済手段の
多様化で、自社のクレジットカードの利用が先細りしたとしても、外販によってプラットフォームの提供事業者としてのシェアを確保すれば
、決済分野での主導権を維持できるとの考え方だ。
黒子型金融で先行するのはネット銀行だ。GMOあおぞらネット銀行では、サービスの提供先が2023年6月末時点で累計500件超と
3年前の8倍以上になった。動画配信や家計管理のアプリで振り込みなどの金融機能を使えるようにしている。住信SBIネット銀行は
「ネオバンク」の提供先が高島屋や第一生命保険など10社を超えた。
航空や通信、小売りなど独自の顧客基盤を抱える企業は、金融サービスを顧客との接点を増やし、関係を強化する一環として捉えて
いる。大手金融機関や地方銀行の参入によって、安いコストで自前の決済基盤が持てることになれば、金融サービスに参入する企業が
一段と増える見通しだ。
ただ、ブランド力のある企業の決済アプリが浸透し、シェアが高まれば、銀行やカード会社の伝統的な決済基盤が侵食される恐れもあ
る。金融機関側は「組み込み型金融」によって、企業とウィンウィンの関係を築きたい考えだが、今後の技術の発展によって企業側が自ら
ノウハウを蓄積し、金融機関を頼らなくても済むようになる可能性もある。金融機関は同業間の激しい競争に対応するとともに、技術革新
に応じて絶えずサービスを刷新していく必要がある。
2023/08/02 13:20 日経速報ニュース
2日午前の東京株式市場で野村ホールディングス(8604)株が急落し、前日比8.5%安となる場面があった。きっかけは1日に発表
した2023年4~6月期決算(米国会計基準)。連結純利益は前年同期の14倍の233億円だったものの、ホールセール部門での収益
低下などが足かせとなり、市場予想(366億円)を下回った。アナリストの見方をまとめた。
■三菱UFJモルガン・スタンレー証券の辻野菜摘シニアアナリスト「出資先の損失はサプライズ」
・レーティング=「ニュートラル」(据え置き)
・目標株価=590円(据え置き)
営業部門の税引き前利益は229億円と三菱モルガン予想を80億円上回った一方、ホールセール部門は21億円にとどまり、三菱モル
ガン予想(151億円)を下回った。特に欧州の(金利やクレジット関連を取り扱う)フィクストインカムなどの収益回復が想定ほど出なかっ
たうえ、人件費が高止まりした。7月28日の日銀の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の変更は顧客フローにはポジ
ティブと見ている。
サプライズは出資先の米アメリカン・センチュリー・インベストメンツ(ACI)の損失が130億円を上回ったことだ(三菱モルガン試算)。
4~6月期純利益は野村全体で233億円と三菱モルガン予想(435億円)を下回った。主因はACIの評価損約137億円(試算値。従来
の三菱モルガンの想定は評価益30億円)による。
■大和証券の渡辺和樹氏「決算の印象はややネガティブ」
・レーティング=「3(中立)」(据え置き)
・目標株価=450円(据え置き)
決算の印象はややネガティブだ。4~6月期の純利益は233億円となり、大和想定(500億円)を下回って着地した。大手米銀との
比較では、円安効果を踏まえるとフィクストインカムが軟調に見える。一過性ではあるが、米国株指数が上昇するなか、ヘッジ策を講
じるACI関連の多額の評価損(大和試算は130億円)は想定外であった。
■SMBC日興証券の村木正雄氏「海外が足を引っ張る構図」
・レーティング=「2(中立)」(据え置き)
・目標株価=531円(据え置き)
株高でリテールが回復したが、他社と異なり海外が足を引っ張る構図だ。インベストメント・マネジメント部門で7月の収益は4~6月
平均を上回ると見られるが、海外の自己資本利益率(ROE)は引き続き課題となるだろう。
2023/08/03 日本経済新聞 朝刊
日銀の内田真一副総裁は2日午後に開いた千葉市内での記者会見で、7月28日の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ
・コントロール、YCC)を見直した狙いを「緩和をうまく、粘り強く続けていくため」と説明した。為替市場は「経済物価に対して大きな影響を及
ぼす重要なファクター」とし、政府と連携して動向を注視する意向も示した。
内田副総裁は2日午前の千葉県内の経済界関係者らが参加する金融経済懇談会での講演で、政策修正は「混乱なく緩和を続けていく
ための『備え』」とし、「当然、出口を意識したものではない」と話していた。内田副総裁が金融経済懇談会に出席するのは3月の就任後、
初めて。
日銀は7月の決定会合で、長期金利の上限の0.5%程度を「めど」とし事実上1%に引き上げる政策修正に踏み切っている。内田副総
裁は会見で1%は「念のための上限キャップ」とし、「金利が大きく上昇することは想定していない。経済を抑えるようなものになるとは考え
ていない」との考えを示した。住宅ローンについても、多くの人が選択している変動金利型には影響がないとした。
2023/08/03 日本経済新聞 朝刊
金融市場で金利上昇と為替相場の円安・ドル高が同時に進行している。日銀は政策修正に踏み切ったものの、急激な金利上昇を容認
しない姿勢が示され、緩和政策自体の撤回には当面踏み切らないと市場が見透かしたためだ。政策修正を通じ、円安抑止を狙ったとされ
る日銀の思惑とは異なる方向に進んでいる。
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは2日、一時0.625%まで上昇(債券価格は下落)し、2014年4月以来、9年4カ月
ぶりとなる高水準を付けた。
日銀が7月28日に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化を決めて以降、じりじりと金利は上昇している。
さらに、日銀は8月2日、定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)を実施した。オペの中心となる国債の買い入れ額は前回と同額だ
った。市場では日銀が一定程度の金利上昇を容認した、と受け止められたことも影響した。
一方、外国為替市場で対ドルの円相場は1㌦=143円台前半と、円安・ドル高の傾向が続いている。日銀がYCCの修正を決めた7月
28日以降、ほぼ1週間で5円ほど円安・ドル高が進んでいる。
本来、為替市場では金利が高い国の通貨が買われやすい。これまでは長期金利が0.5%以下に抑えられている日本の円に比べ、
金利が4%程度の米ドルにお金が流れやすかった。日銀の政策修正で金利が上昇すれば日米の金利差は縮まり、円高・ドル安が進ん
でもおかしくない状況だ。
金利上昇と円安・ドル高が並走する要因の一つが、日銀は穏やかな金利上昇は容認するものの、急激な動きは許容しない姿勢を示し
たためだ。
日銀は7月31日、臨時の国債買い入れオペを実施した。YCCの対象となる残存期間「5年超10年以下」の国債を対象に3000億
円を買い入れた。当日は10年債利回りが一時前日比0.065%上がるなど、急上昇する場面があった。
日銀の植田和男総裁は7月28日、「根拠のない投機的な債券売りがあまり広がらないよう、コントロールしていく」と市場をけん制し
ていた。
もう一つは日銀の緩和維持のスタンスが変わらないことだ。植田総裁は7月28日、「YCC柔軟化は(金融)政策の正常化へ歩み出す
という動きではない」と述べ、YCC修正はあくまで金融緩和を維持するための施策であると強調した。
日銀は最新の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率を24年度で
1.9%に引き下げ、25年度で1.6%に据え置いた。目標の2%にはとどかず、市場では「マイナス金利の撤廃はまだ先」との見方が
強まった。
金利上昇ペースが鈍いと円安傾向が続き、輸入物価高が再加速する恐れも出てくる。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミ
ストは「日銀が金利の急上昇を許容しない限り、当面の間円安は進んでいくだろう」とみる。
ただ、今後も円安傾向が続くかは不透明だ。「今後は日銀のインフレ見通しの上方修正とともに、長期金利が1%に向けて上昇して
いく可能性が高く、円高圧力がかかる」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)との見方もある。
物価高に目を配りつつ、金利の急上昇をどう回避していくか。日銀に課された課題は大きい。
2023/08/03 10:30 日経速報ニュース
日銀は現在、これまでの金融政策に関する多角的レビューに取り組んでいる。まとまるのは2024年夏以降になりそうだ。ここでは、過去
25年の日銀の政策が金融市場や金融システムに及ぼした副作用も分析される。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)が
債券市場の機能に与えた影響や、マイナス金利が金融システムに与えた影響は、間違いなく分析の対象になる。
しかし、ほかにも長期にわたる低金利政策が深刻な問題をもたらした、という批判が少なくない。例えば「低金利が財政規律を弱めた」と
いうのは最も多い批判である。また、「非効率な企業を温存してきた」「過度な円安を招いた」「資産価格にバブルを起こした」「緩和の出口
で日銀が債務超過になる」等々、日銀はそれこそ多角的に批判されている。
仮に、こうした批判が正しいとすれば事態は深刻である。日銀が続けてきた政策の副作用は、債券市場や金融機関への影響など限ら
れた範囲にとどまらず、資源配分をゆがめて日本経済にダメージを与えた、あるいはこれから与える、ということになるからだ。ただ、筆者
はこれらの批判には誤解や言い過ぎの部分もあると考えている。
例えば、「低金利が非効率な企業を温存し経済の成長力を弱める」という批判は、金利を上げれば非効率な企業が退出し、資金や労働
者が生産性の高い企業に移動するという前提に基づく。
しかし、金利の影響は非効率な企業だけでなく成長企業にも及ぶ。新しい技術やビジネスモデルを持った企業が、成長していく過程で
地域経済や産業構造に化学反応を引き起こし、それが新陳代謝の原動力となる。そうした元気な企業こそ多額の資金を必要とするのだ
から、低金利は本来、経済を活性化する方向に働くはずである。日本でそれがはっきり見えないのは、他に問題があるからだ。
また、低金利の時の方が国債を発行しやすいのは当たり前の話だ。高金利で発行するより利払い費も軽減されるのだから、低金利の
もとでの国債増発を一概に否定はできない。大事なのは、その国債発行やそれに基づく財政支出が、何らかの基準に照らして過大なの
かどうかである。
残念ながら、その評価基準には明確なコンセンサスがなく、実際問題として、経済政策を貫く基本精神の影響から逃れることはできない。
デフレ脱却や2%物価目標を重視すべきだという思想の前では、低インフレである限り、国債増発にはブレーキがかかりにくくなる。財政規
律を左右するのは金利ではなく、政策思想である。
このあと仮に2%物価目標が達成されない場合でも、日銀は多角的レビューを踏まえて、いずれYCCとマイナス金利を撤廃するだろう。
それはひとつの前進だが、その後も金融緩和自体は続けなければならないかもしれない。本稿で論じた「非効率の温存」「財政規律の低
下」など、もし本当ならきわめて深刻な問題について、日銀自身の考え方を整理し、説明することもまた重要である。
2023/08/05 日経プラスワン
2024年に控える三井住友フィナンシャルグループ(FG)のVポイントとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTポイントの統合に
向けて、街中での共通ポイントのため方に変化が出そうです。
ドトールグループのドトールコーヒーショップやエクセルシオールカフェなど約1200店で23年8月、Tポイント、イオングループのWAO
N(ワオン)ポイント、ロイヤリティマーケティング(東京・渋谷)が運営するPonta(ポンタ)ポイントを導入しました。7月まで共通ポイント
はNTTドコモのdポイントのみでしたが、4種類から選べます。
同グループの店舗は19年に、共通ポイントをTポイントからdポイントに切り替えました。Tポイント復活の背景には共通ポイントと加盟
店の関係の変化があります。以前、共通ポイントは加盟店が1業種1社に限定されたり、加盟店がほかの共通ポイントを導入できない
契約を結ぶ例があったりしました。しかし最近は加盟店側が共通ポイントを選び、入れ替えや複数導入する例が増えています。
共通ポイントは消費者が店に行く動機につながります。会員数が数千万人の共通ポイントは加盟店独自のポイントサービスより集客
効果が高いです。統合後の新Vポイントの使い勝手で客が集まる効果への期待が加盟店側にありそうです。
店舗で複数の共通ポイントを選べれば、消費者には便利になります。共通ポイントの競争の中で、TポイントとVポイント以外にも気に
なる動きがあります。ワオンポイントはイオングループ外へのポイントサービス提供を広げています。JR東日本のJREポイントやJR西
日本のWESTERポイントなど自社グループで運営する共通ポイントの動向にも注目したいところです。
2023/08/05 日本経済新聞 朝刊
海外勢の手じまい売りが相場の重荷になっている。日銀の政策修正や米国債の格下げなどをきっかけに海外ヘッジファンドはポジション
調整を進めている。本格化した2023年4~6月期決算発表では好業績が多いものの、相場を押し上げるには至っていない。個人の押し
目買いだけでは株高相場の「第2幕」は見通せない。
「日銀イベントの通過で、しばらくは新しい買い材料は来ないとみて今週ポジションを落とした」。ある香港のヘッジファンドの運用担当者
は話す。脱デフレなどを材料に買い進めてきた海外勢が日本株の持ち高を減らす動きが目立つ。
JPモルガンの試算によると、ヘッジファンドの日本株の持ち高は減少している。中でも世界で4000億ドル超を運用するとされる、ポート
フォリオのリスクを一定にするように売買する「リスクパリティー」系の日本株持ち高は7月に理論上の保有最大値の約30%まで上昇した
後、24%に下落した。
米インタラクティブ・ブローカーズ証券のダニエル・ケリガン最高経営責任者(CEO)は「日本企業は変化に緩慢でヘッジファンドなどが
また様子見の姿勢になっている」と指摘する。
日経平均株価は6月中旬からもち合い相場が続いてきた。だが3日までの2日間で日経平均は1317円下落。「もち合い放れにつけ」
との相場格言がある通り「海外ヘッジファンドが買いポジションを減らす動きにほかの市場参加者が追随し、実際の売りの大きさ以上の
値動きになった」(T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダー)。
4日の日経平均は33円(0・1%)高と小動きで終わり、個人の押し目買いの勢いは限定的だった。松井証券の午前の売買代金データ
では買いが56%と売りを上回ったものの、午後に売り買いはほぼ同水準となった。
4~6月期決算についても「新たな買いを呼ぶような材料が見当たらない」(SOMPOアセットマネジメントの田中英太郎シニア・インベ
ストメントマネージャー)。業績上振れ要因は値上げ、インバウンド消費や自動車生産の回復など既に織り込まれた材料が大半と同氏は
指摘する。
4日に公表された大量保有報告書では英運用会社ベイリー・ギフォードがトプコンの保有比率を引き下げた。リオープン(経済再開)銘
柄の一部にも利益確定の売りが出ている。
海外勢の買いが途絶えたわけではない。3日にブラックロックが大成建設などの買い増しを報告した。半導体工場の新設など国内の
設備投資の増加も追い風になる。
構造改革を進める銘柄も買われた。花王が3日に中国での紙おむつ生産終了を発表すると、4日の株価は6%上昇した。ただ、しんき
んアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネージャーは花王を評価しつつも「改革の動きは大企業のほんの一部に限られ
ている」と話す。
上値を追う勢いにかけるのは、これまでの株高のテーマの次が見いだせていないためだ。より多くの企業で新たな成長に向けた動き
が見えることが株高相場の再始動に必要となる。
2023/08/06 04:00 日経速報ニュース
6月、シティグループ証券はジャパン101ミーティングを始めた。「101」とは入門の意味。同社アナリストが推奨する日本株の1つを取り上
げ、オンラインで世界の投資家に向けて事業内容や強みなどを基本から解説する。これまで12回開催し、アジアの投資家を中心に毎回
20?30人が参加した。
シティには海外投資家から「円安以外に日本株に強気になる材料を教えて欲しい」「東証の低PBR(株価純資産倍率)改革の詳細を知り
たい」といった問い合わせが相次ぐ。武田理奈エクイティ営業部共同部長は「日本株を見ていなかった香港やシンガポールの投資家が関
心を持ち始めた」と話す。
【関連記事】割安日本株の逆襲はまだ続く
日経平均株価が33年ぶりの高値圏にある。その原動力は海外投資家だ。日本取引所グループによると、4月以降の17週間で海外投資
家は現物と先物合計で8兆円超の日本株を買い越した。アベノミクスが始まった2012年11月以降の17週間の買越額は6兆円超であり、今
回は勢いで勝る。
それでは海外マネーはどんな銘柄に向かったのか。QUICK・ファクトセットのデータを使い、22年末から7月末までに海外投資家(日本以
外に本社がある法人)の保有金額が増えた銘柄を抽出したところ、上位には東京エレクトロンやソニーグループなど主力の大型株が並んだ。
その背景には買い手が「指数プレーヤー」だったことがある。4月以降、世界株の中でも日本株の上昇が目立ち始めると、ベンチマーク
(運用目標)より少なくしていた日本株の持ち高を増やそうと、株価指数先物や指数連動型ファンドに資金が入った。投資家別で見ても同
期間に日本株の保有額が増えたのは米バンガードやブラックロックなど指数連動型運用に強みを持つ運用会社だった。
指数プレーヤー主導の上昇が海外勢の買いの「第1幕」だとすれば、足元では個別株を物色する「第2幕」の兆しが出てきた。
海外投資家の保有比率が上昇した銘柄をみると、上位にはそーせいグループやセントラル硝子など中小型株が目立つ。保有比率が約
6ポイント上昇したウシオ電機は英M&Gインベストメンツの日本株ファンドに組み入れられている。日本株のアクティブファンドにも資金が流
入し、個別株買いを後押ししている。
【関連記事】外国人買い第2波呼ぶのは「高くなるニッポン」
グローバルな投資家による日本株の投資判断の引き上げも相次いでいる。ブラックロックが6月に「弱気」から「中立」に引き上げたほか
、英シュローダーや仏アムンディなども「中立」に変更した。こうした投資家の日本株買いが広がれば「個別銘柄の選別が強まる」とシテ
ィの武田氏は見る。
「今後10年保有したい」。1250億カナダドル(約13兆円)を運用するカナダのオンタリオ州地方公務員年金基金は6月、高い技術力を持
つ日本企業に投資していることを明かした。「日本には優れた事業を展開し、企業統治に注意を払い、高い配当金を出す企業がある」と話す。
日本株に世界のマネーが流入したのは03年からの小泉相場、12年からのアベノミクス相場に続き3回目だ。スパークス・グループの阿
部修平社長は過去2回の相場との違いについて、「今回は海外投資家が日本が長いデフレから脱却しつつあることに気づいている」と指摘
する。
7月28日には日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化を発表した。市場は「金融緩和継続」と受け止め、外国
為替市場では円安が進行。輸出銘柄に追い風が吹く。最低賃金の引き上げが決まり、実質賃金がプラスに転じれば、内需銘柄にも期待
が高まる。
川真チーフ・ポートフォリオストラテジストは「早ければ秋にも本格上昇が始まる」とみる。
「インデックス買い」から個別株の物色へ 割安・好業績・中小型株に触手
今回の株高で海外投資家に買われた銘柄は何か。QUICK・ファクトセットのデータを使い、7月末時点の海外投資家(日本以外に本社が
ある法人)の株式保有比率が2022年末比で上昇した銘柄をランキングしたところ、中小型株や割安株が上位に入った。大型株買いが目立
つなかでも、個別銘柄を物色する動きが広がり始めている。
5位のセントラル硝子や9位のイエローハットなど、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割る銘柄に買いが入った。オービス・インベストメンツ
日本法人の時国司社長は「東証の是正要請を受け、今度こそ日本企業の資本政策が変わると期待している」と話す。
低PBR改善に向けて動き出している企業もある。7位のウシオ電機は5月、発行済み株式(自己株式を除く)の17%に相当する300億円を
上限とする大規模な自社株買いを実施すると発表した。当時0.8倍台だったPBRを引き上げる狙い。英M&Gインベストメンツは7月、同社株
を5.2%まで買い増したと大量保有報告書で公表した。
株価が下落し相対的に割安になったタイミングでの買いもある。4位の創薬スタートアップのそーせいグループは6月27日、提携先の米
ファイザーが糖尿病薬の開発を中止すると発表したことを受け、株価がストップ安の前日比22%安を付けた。株価下落後の7月、米運用大
手キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメントは保有割合を5.9%から7.3%(共同保有を含む)に引き上げたことを明らかにした。
そーせいは海外投資家に向けたIR(投資家向け広報活動)に力を入れている。3月に東証グロースからプライムに移行したことをきっか
けに、「欧州と米国で対面でのIRを増やしている」(クリストファー・カーギル社長)。足元ではスイス製薬の日本事業の買収が好感され、
株価は回復傾向にある。
円安・ドル高を受けて中小型の輸出銘柄にも買いが入った。14位の小型建機メーカーの竹内製作所は24年2月期の連結純利益が
172億円と過去最高を更新する見通し。同社は海外売上高比率が9割超の輸出銘柄として海外投資家にも知られている。米フィデリティ
・マネジメント&リサーチは22年から徐々に買い増している。
個別株の物色は地方の中小型株にも及ぶ。三重県菰野町に本社を置くジャパンマテリアルが11位に入った。半導体工場向け特殊ガス
を手掛ける予想PER(株価収益率)が52倍台の中型グロース(成長)株だ。22年11月には台湾積体電路製造(TSMC)などが建設を進める
熊本県の工場にガスを供給する拠点を設けた。
一方で外国人保有株の金額ベースの増加額のランキングでは、別の景色が見えてくる。1位の東京エレクトロンや4位のキーエンスな
ど、「海外投資家が好むわかりやすい大型株」(国内証券のストラテジスト)が並ぶ。上位でPBR1倍割れの割安株は三菱UFJフィナンシャ
ル・グループなどの銀行と日本製鉄だけだ。
4月以降、日本株の注目が集まると、株価指数先物や指数連動型のファンドに資金が入り、大型株が買われた。例えば東京エレクト
ロンは米ブラックロックの「iシェアーズMSCIジャパンETF」に組み入れられている。
足元で海外勢による日本株買いは一服しているが、BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは「脱デフレによる賃金上昇や業績
の上方修正への期待から、海外勢の買いはじわじわ増えていくだろう」とみる。「第2幕」の主役は個別株になる可能性が高く、各企業の
動向に目を凝らすことが重要だ。
2023/08/06 05:00 日経速報ニュース
日本初の銀行、第一国立銀行(現みずほ銀行)の設立から150年の7月、日本経済新聞は連載企画「銀行150年 新たな挑戦」を
スタートした。テクノロジーの進化で金融の境界線が揺らぎ、銀行は成長か衰退かの岐路に立つ。成長を切り開いていくために何が
必要か。メガバンクの戦略から人材獲得、金融規制まで6つの論点を取り上げた。
連載を終え、執筆した6人の記者と担当デスクで記者座談会を開いた。取材の現場で記者は何を見聞きし、記事にどんなメッセージ
を込めたのか。銀行や金融当局への厳しい注文も飛び出した。
みずほ、幻の社名変更
石川潤デスク「150年目の銀行はどう変わろうとしているのか。日本の金融をリードするメガバンクはどうか」
渡辺淳記者(金融機関キャップ)「名は体を表すというが、象徴的なのが、みずほフィナンシャルグループ(FG)が新しい中期経営計画
をつくるにあたって、会社名から『フィナンシャル』を削除することを議論していたことだ。企業の課題が高度化し、金融だけではソリュー
ションを提示できなくなっている。結局は法律の縛りもあってお蔵入りとなったが、考えさせられた。三井住友FGの太田純社長も金融だ
けでは顧客のニーズに応えられないと語っていた。金融グループの中で銀行の位置づけが落ちていると感じた」
玉木淳金融エディター「メガバンクの進む方向の羅針盤として、トップの発言はシャープだ。ただ、思いは伝わるが、重要なのは行動に
どう移すか。メガバンクはずっと前から脱銀行と言っているが、スピードが足りない。銀行法の改正を自分たちで働きかけるというところま
でやっていないのではないか」
五艘志織記者(日銀担当)「メガバンクの地位低下は若者世代の友人と話していても感じる。取材で東洋大学の野崎浩成教授は(顧
客の購買行動の入り口である)カスタマージャーニーが始まるところで負けていると言っていた。私自身は『楽天経済圏』に入り込んで
いるが、そこで使える銀行、カードという視点で金融サービスが選ばれていく。銀行はそうした経済圏を持つ企業の裏方に回るのか、戦
うのか、岐路に立たされている」
石川「三菱UFJFGの亀澤宏規社長は黒子になると宣言していた。一方で、自分たちで経済圏をつくろうとしている銀行もあるね」
渡辺「メガバンク幹部が注目しているのはJPモルガン・チェースだ。旅行会社を買収し、チェースカードを自分たちのポータルで使って
もらい、利用者を循環させるビジネスモデルだ。練りあがったビジネスだが、難易度は高い。三菱UFJのような割り切りもありだろう。旅
行、買い物、ストリーミングとネット上のあらゆるサービスに決済は必要で、金融のフロンティアが広がっている。その裏側を引き受けて、
ボリュームをとって稼ぐという道も戦略としてありだ」
テクノロジーは武器か、脅威か
石川「銀行はテクノロジーを使いこなせているのだろうか」
北川開記者(大手銀・ネット銀担当)「住信SBIネット銀行は人工知能(AI)を使った自動審査で融資を拡大している。上限3000万円
なのでメガバンクにとって脅威ではないが、これまで銀行の手が届いていなかったスタートアップへのファイナンスという意味で社会的
に意義がある。数十分かかっていた与信判断が1秒でできる。面白いのは住信SBIがこのシステムを愛媛銀行などの地銀にも提供し
ていることだ」
湯浅兼輔記者(金融庁キャップ)「金融の分野にはフィンテックも入ってきている。銀行も最新のテクノロジーを使わないと対抗してい
けない。金融庁は銀行法を段階的に改正し、銀行の業務範囲を広げている。武器は提供してやるから、稼げないなら稼げる分野に
入っていけというメッセージを常日ごろから出している」
渡辺「QRコード決済大手のPayPayの特許出願数は、メガバンク3つをあわせた数より大きいというデータもある。自分たちで新しい
サービスをイノベーティブに作っていく気概を(銀行から)感じられるだろうか。バンク・オブ・アメリカなどの海外大手との差はさらに大きい。
日本の銀行はこれでいいのか」
石川「テクノロジーには倫理面の問題もある」
北川「中国のアリババグループのゴマ信用では、資産、収入、属性だけでなく、交友関係や購買履歴などをあわせて個人の信用
スコアを算出している。これまでお金を貸せなかった人に貸せるようになる半面、お金を借りられず、なぜ借りられないのかさえ分から
ない人も出てくるだろう。使う情報が遺伝情報などに広がれば、事態はより深刻になる。人権的にどうなのか。法整備も必要になるだろう」
【記事はこちら】②銀行の優勝劣敗、AIが決める 審査1秒で切り開く成長
地域再生、銀行は担えるか
石川「メガバンクだけでなく、地銀がどう成長していくのか。地域活性化の軸になれるかというのも重いテーマだ」
玉木「銀行の原点は地域だ。銀行は1927年に制定された銀行法で兼業が禁じられ、銀行しかやっちゃダメと言われてきた。だが、
規制緩和で銀行が人材ビジネスとか、地域商社、発電所を自分でつくるようになっている。地域のインフラを全部背負って、担い手
になろうとしている。地銀はもしかしたら『かつて地銀だったね』といわれるような存在になるかもしれない」
渡辺「日本の個人金融資産のうち、現預金が5割以上、1000兆円ある。銀行にお金が集まるのは信用信頼の証といえるが、いつ
まで続くのか。メガバンクはまだいいが、これから若い世代への資産承継が進んでいけば、地銀から都市部の銀行へとお金が抜けて
いくことになる。20、30年のスパンで考えたとき、そのうち預金の確保が苦しくなる銀行も出てくるのではないか」
玉木「同感だ。預金は勝手に来るものと思っているが、人口が大幅に減少し、人口の分布が変わってくるなか、地銀は優勝劣敗の
敗の方に入る可能性がある。どうやって稼いでいくのか、ビジネスを転換しないと生き残りすら危ぶまれる。そこまでの危機感を持って
いる銀行は少ない」
湯浅「銀行はストックビジネスで、突然死しないと思っている」
玉木「日本では経営が悪化しても公的資金や他行への吸収などで、潰されることなく温存されている。最後は救ってくれるという感覚
ができてしまった。これが銀行の危機感を奪い、進化を止めているのではないか」
【記事はこちら】③銀行が主役の地域再生 「5%ルール」例外拡大の光と影
石川「こうした変化に対応できる人材が銀行にはそろっているのか」
五艘「どう人材のポートフォリオを見直していくかがポイントだ。経営陣は東大卒、企画・人事畑、いわゆる文系エリートのような人たち
が占めてきた。この人たちがどこまでテックの人材を受け入れながら変わっていけるか。みずほ銀行が21年にシステム障害を起こした
際、人材配置のミスマッチが指摘された。みずほではこの反省から、積極的に異色の人材を採ろうとしている。米IT(情報技術)大手の
GAFAにいた人、日本マクドナルドでネットマーケティングした人、いろいろな人を受け入れている。一方で中途入社した人からは、銀行
はリスクマネジメントの感度が高いこともあって意思決定が遅いので、新しいことにチャレンジするハードルが高いという戸惑いも聞かれ
る。まさに銀行の覚悟が問われている」
北川「JPモルガンでは全社員の5人の1人がエンジニア。住信SBIは正社員の約半数がITや技術系の業務に携わり、かなり先を行
っている。ただ、メガバンクも変わろうとしている。純血主義といわれてきたが、採用数をみると、中途と新卒が半々ぐらいになりそうな
銀行もある。かつては銀行を辞めたら裏切り者みたいな扱いを受けたが、いまでは辞めた人材を再び受け入れている。変わる力はある
と思う」
玉木「三井住友信託銀行は国際的に活動する環境NGO(非政府組織)の日本代表を雇った。変わらなければいけないという危機感
が強まっているのではないか」
石川「理系出身者がメガバンクのトップになる時代になったが、女性や海外出身者のトップも生まれるだろうか」
玉木「(若手行員に占める女性の割合などを考えれば)女性はあるでしょう。海外出身者はどうだろう」
渡辺「海外出身者は、収益の海外比率が高い損害保険会社ではあり得るのではないか。銀行ではそういった気配は感じない」
玉木「みずほの不祥事の時、海外の人をトップにしたらいいという意見が金融庁にあった」
五艘「外からの風を取り込むのは大事だが、専門人材ばかり優遇されているとプロパーが感じ始めたら内部から崩壊しかねない。処
遇は丁寧にやっていくべきだ」
【記事はこちら】④異才が変える銀行の常識 「人材の宝庫」は輝くか
37年越しの「貯蓄から投資」
石川「これからの成長を考えるときに、資産運用は大きな軸になる」
藤田和明編集委員「印象的なのは37年前のエピソード。投資顧問業法ができたとき、三菱銀行は米フィデリティ、住友銀行は米バ
ンカース・トラストに力を貸してくれという話になった。そのとき受けた警鐘は『銀行員がやるんじゃない。できるだけ早くプロパーを。
カルチャーが違うのだから』というものだった。それから37年、金融庁が4月末に公表したプログレスリポートで指摘したように、資産
運用会社はガバナンスに課題がある。資産運用で骨をうずめるんだという人が、トップをやっていない」
石川「変わろうとしているのか」
藤田「もちろん変化もあって、三井住友に聞くと、投信の保有期間が8年に延びている。変動するモノを長期で分散して果実を長期
的に得られるようにと、徐々に変化は起きている。資産運用部門は財務的にはあまり資本を使わずに収益を上げられる部門だ。ここ
のボリュームが出てくると銀行の収益性が高まる。JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)が4月の株主への手紙で『金利や
単純な信用リスクをとるだけなら1人の人間とコンピューター1台で十分。(社員)29万人が地球を回る必要はない』と顧客との関係構
築の重要性を強調していた」
渡辺「金融庁のリポートを受けて、金融機関は改善策を検討しているが、当局の要請にどう応えるかというところに終始している印
象がある。形格好だけでなく、本質的な変化をどう生み出すかが重要だ」
銀行法の縛りは必要か
湯浅「金融と非金融の垣根が低くなってきたときに、業法で縛りをかけているのが適切なのかという問題もある。金融庁もかつて、業
法ではなく、金融サービスの機能によって規制をしていくべきだと主張していたことがある。たとえば決済では、国内為替も含めてすべ
ての決済を統一的に監督するようにすれば、PayPayも管轄できる。資産運用も同じだ。金融庁も問題意識はあるが、業法を少しずつ変
えることで対応してきた。ただ、それは弥縫(びほう)策だと思う。業法に縛られない企業が急成長して、縛られている企業が付いていけ
なくなっている。同じサービスなら同じ土俵で戦うべきで、いまから本格的に議論すべきだ」
渡辺「金融庁は銀行に何を期待しているのか。世界有数の金融機関に成長してほしいのか。日々のオペレーションをしっかりやって
ほしいのか」
玉木「金融庁は以前にも国際金融都市構想を打ち出したことがある。今回の資産運用立国プランもベースの思想は一緒だが、資産
用にシフトして銀行が中心でないというところに時代の転機を感じる。主役が銀行ではないと暗喩されている。規制に関していえば、金
融庁には二面性のようなものがある。(成長を唱える一方で)安定を求めたがるのが当局者。ノンバンクが増えるのは困るので、バンクの
世界で制御したいのが本音。銀行はある意味、被害者という面もある」
藤田「資産運用を本気でやるなら、金融庁に資産運用課をつくればいい」
湯浅「(肥大化を避けるため)課は増やせない。どこかを潰さなくちゃいけない」
玉木「金融庁自身が銀行を頂点に置くヒエラルキーを壊さないといけない。金融庁で資産運用は大事という人が多いが、結局は歴代
本の金融が大きな曲がり角に差し掛かっていることだけは間違いない。我々はよりいっそう取材に力を入れる必要があるということを
確認して、本日はお開きとしましょう」
【記事はこちら】PayPayは個人送金2億回超え 縦割り規制、誰のため?
記者座談会の参加者
渡辺淳 金融機関取材を統括するキャップ。日々の取材で念頭に置いている言葉は「神は乗り越えられる試練しか与えない」。
北川開 大手銀・ネット銀担当。取材対象の商品・サービスはなるべく試すようにしており、銀行口座は6つ、クレジットカードは10枚
以上保有。
玉木淳 銀行取材歴20年の金融エディター。毎年、一晩かけて80キロメートルを歩く強歩大会に参加。銀行の生き残りレースの難し
さは強歩大会と重なる。
五艘志織 大手行担当を経て日銀担当。趣味で所属するオーケストラが人手不足。人材をひきつけるにはまず対話とミスマッチ防止
だと実感。
藤田和明 編集委員。東京証券部、ニューヨーク駐在などで一貫してマーケットを取材。資産運用分野のカバーは1990年代後半の
金融ビッグバンの前から。
湯浅兼輔 金融庁キャップ。現勤務地の虎ノ門周辺の再開発は桁違い。日本経済の地力を感じつつ、雑多な街並みがなくなってい
くことに一抹の寂しさも。
石川潤 今回の企画の担当デスク。日銀、財務省、金融機関などを取材し、2022年までベルリン支局長。モットーは「誠実に、しかし
大胆に」。
【ビジュアルで振り返る銀行150年】
源流は新1万円札の顔・渋沢栄一 銀行150年の栄枯盛衰
2023/08/08 日本経済新聞 朝刊
株式相場が方向感を欠くなか、PBR(株価純資産倍率)が極端に低い「超割安株」が注目され始めている。小泉相場やアベノミクス相場
と比べると市場全体に占める超割安株の割合はまだ高く、資金流入の余地が大きいためだ。足元の決算発表では株主還元の強化など企
業の低PBR対策が相次ぎ、投資家の期待感が高まっている。
「期待していた内容が出てきた」。三菱UFJ国際投信の友利啓明氏はいう。運用するファンドで保有する日本郵船が3日昼に上限2000
億円の自社株買いを発表したためだ。自社株買いの方針は3月に発表した中期経営計画に盛り込まれていたが、市場は「有言実行」を好
感。株価は発表から約1割上昇した。
4~6月期決算にあわせた還元強化の発表が目立つ。運輸事業などを手掛けるニッコンホールディングスは4日、毎年の配当を増額ま
たは維持し、減配しない「累進配当」の方針を発表。三菱商事系の日本食品化工は7月31日に中間配当を導入するとした。
還元強化の発表は通常、中間期(4~9月期)か通期決算時が多い。しかし、今年は前倒しの発表が相次ぐ。東京証券取引所の低PBR
是正要請を受け、対応策は出せるものから出そう、という企業の姿勢が垣間見える。対応策の発表は「これからもっと増え、盛り上がる」(
友利氏)。
ゴールドマン・サックス証券のブルース・カーク氏も「市場の注目は再び低PBR対策に移る」と予想する。6月までの日本株ラリーに乗り
損ねた海外投資家に推奨するのが、PBRが0・5倍を下回る「超割安株」だ。
背景には過去の大相場の経験がある。2003年からの小泉相場を振り返ると、東証1部全体に占める超割安株の比率は02年末時点
で21%だったが、04年3月には5%を下回り、05年9月にはほぼゼロになった。
アベノミクス相場も同様だ。超割安株の比率は12年10月時点で22%だったが14年末には5%まで低下した。株高が続くなかで、出
遅れた銘柄に買いが向かったことがうかがえる。
今回はどうか。超割安株の比率は22年末時点の15%からは低下したが、7月下旬でなお9%と高止まる。長期株高を想定するなら
「まだ買える銘柄はある」というのがカーク氏の見立てだ。
農林中金全共連アセットマネジメントの山本健豪氏は西日本フィナンシャルホールディングスや七十七銀行など銀行株に注目する。運用
するファンドの一つではおよそ1割を銀行株が占める。銀行株は大半がPBR0・5倍未満だが、低PBRでも流動性の乏しい銘柄は避けて
選別しているという。
超割安株は主力の大型株に比べ、そもそも保有している機関投資家が少ないため、先物売り主導で相場全体が下げる局面でも影響を
受けにくい面がある。7日も日本郵政(PBR0・35倍)や日本製紙(同0・4倍)、日本電気硝子(同0・45倍)などは上昇した。
もっとも、超割安株にまでマネーが浸透するには海外勢の日本株への関心が続く必要がある。企業も低PBRを脱するためには投資家の
買いを待つだけでなく、収益改善など実効性のある改革を打ち出す必要がある。還元強化はいわば、その第1段階だ。投資家の期待に応
える回答が相次げば、いよいよ長期株高への道筋が開けてくる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-08-07/RYUW9MT0G1KW01?srnd=cojp-v2
SECの制裁金総額は2.89億ドル、CFTCも4行に合計2.6億ドル
一連の調査決着のための制裁金は21年12月以降で計25億ドルを超える
ウォール街の大手金融機関の通信記録管理に対し、米証券取引委員会(SEC)などが監視を強める中で、米銀ウェルズ・ファーゴや
フランスの銀行BNPパリバは、「ワッツアップ」など非公式の通信手段を使うビジネスメッセージのやりとりを巡り、多額の制裁金を支
払うことに同意した。
SECと米商品先物取引委員会(CFTC)が8日公表した一連の処分を合わせると、ビジネス関連のメッセージ保全に関係する調査
を決着させるための制裁金は、2021年12月以降で総額25億ドル(約3580億円)を上回る。
SECの発表によれば、この問題の決着に向け、ウェルズ・ファーゴの複数の部門が合計1億2500万ドル、BNPパリバは3500万ドル
の支払いに応じる。
両行以外の支払額は、BMOキャピタル・マーケッツと米国みずほ証券がそれぞれ2500万ドル、SMBC日興セキュリティーズ・アメ
リカが900万ドルなど。11社で合計2億8900万ドルをSECに支払う。
これとは別にウェルズ・ファーゴとBNPは、デリバティブ(金融派生商品)ブローカレッジ部門での同様の違反を決着させるため、CF
TCへの7500万ドルの支払いにそれぞれ同意した。ソシエテ・ジェネラルとモントリオール銀行を含む4行の支払総額は2億6600万ドル
となる。
無許可の通信アプリや個人の電子メールをビジネスのやりとりに使用することで、監視の目が届かないことにSECとCFTCは不満
を募らせ、行員や社員の通信記録保持の不備に対し、取り締まりを強化している。
ウェルズ・ファーゴの広報担当ローリー・カイト氏とBMOの広報担当者は、調査の決着をうれしく思うと回答した。BNPとみずほ、
ソシエテ・ジェネラル、SMBC日興はコメントを控えている。
2023/08/09 19:53 日経速報ニュース
9日の国内債券市場で長期金利が低下(債券価格は上昇)し、0.565%と2週間ぶりの低水準を付けた。30年物国債入札で投資家の
需要が確認できたことに加え、海外市場の金利低下が日本にも波及し、日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を
修正して以来の長期金利上昇が一服した。
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは前日比0.04%低い0.565%と、日銀が政策修正に動いた7月28日以来の低水準を付
けた。
財務省が8日実施した30年物国債入札では、応札額を落札額で割った応札倍率が1年7カ月ぶり高水準となった。投資家の需要が強
いことが示され、幅広い年限の国債買いにつながった。
厚生労働省が8日発表した6月の毎月勤労統計速報で現金給与総額が市場予想を下回った。日銀は今後の物価動向を見極めるため
に賃上げ動向を重視する方針を示している。賃金の下振れで日銀の政策修正が遠のいたとの見方も国債買いを誘った。
また、日本時間8日から9日にかけて、一部の大手格付け会社による米銀の格下げを受けたリスク回避の動きで米長期金利が一時4%
を下回った。米債利回りの上昇一服を受けて日本の国債に買いが波及した面もある。
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「日銀の国債買い入れも金利低下に効いている」と指摘する。
日銀は9日、政策修正後では2回目となる通常の国債買い入れオペ(公開市場操作)を実施した。買い入れ額は全ての年限で政策修正
前から据え置いており、残存5?10年の国債は1回あたり6750億円を買い入れている。1カ月あたりの買い入れ額は10年債の発行額(2
兆7000億円)に匹敵するため、需給が引き締まりやすい状況となっている。
もっとも、金利低下がこのまま続くかは不透明だ。岡三証券の鈴木誠債券シニア・ストラテジストは「日本でも物価上昇が続き、さらなる
政策修正観測もくすぶるなか、0.55%を下回る水準でも国債買いに動く投資家は限られるだろう」と指摘する。
2023/08/10 日本経済新聞 朝刊
欧米発の金融不安が悪材料となるなかで、日本株が底堅さを保っている。9日はイタリアの追加課税に端を発した欧州の銀行株安が
波及し、メガバンクなど金融株が下げたものの日経平均株価の下げ幅は限られた。日米の景気回復や日本企業による過去最高の株主
還元が材料視され、株価を下支えしている。
9日の日経平均は前日比172円安の3万2204円で取引を終えた。下げが目立ったのが三菱UFJフィナンシャル・グループや第一生命
ホールディングスといった金融株だ。
背景にあるのは欧米で浮上した金融不安だ。イタリア政府は7日、欧州中央銀行(ECB)の利上げで金利収入が膨らんでいるのに目を
付け、銀行への追加課税を発表。伊銀行大手インテーザ・サンパオロは9%安、ウニクレディトも6%下落した。米国でも銀行株が売られた。
米格付け会社が一部の米地方銀行を格下げしたためだ。
日本の銀行株は、欧米の銀行株が大きく下げれば連動した売りに押される。ポートフォリオに占める邦銀株の比率が相対的に上がり
「比率上昇を抑えるために機械的に邦銀株を売る動きが出る」(外資系証券のトレーダー)ためだ。
金融株は総じて下落したものの、日経平均の下げ幅は小幅にとどまった。3月の米シリコンバレーバンク(SVB)破綻時は日経平均は
一時1600円安、先週の米格付け会社フィッチ・レーティングスによる米国債の格下げでは1300円安と急落した。3月のSVB破綻時は
ショック安から短期間で相場が反転したため「今回も短期で終わる」と投資家に慣れが出てきている面がありそうだ。
日米景気の堅調さも株価の支えとなっている。野村アセットマネジメントの石黒英之シニア・ストラテジストは先行きの世界景気の動向を
示す経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数に着目する。4日発表の7月分では日本は好不況の境目となる100を6カ月連続で上
回る。米国も4カ月連続で改善し、底入れからの反転が鮮明だ。
さらに、S&P500種株価指数の構成銘柄の1年先予想の1株利益が回復基調にあり「24~25年には過去最高益の更新が見込まれる
」(野村アセットの石黒氏)。米景気回復と企業業績の改善という前提が崩れなければ、米株式相場はじり高傾向が続くとみる。日本株も
調整が長引くとは想定しづらい。
日本独自の株高要因も健在だ。9日は神戸製鋼所が一時15%高となった。前日に24年3月期の純利益が過去最高となる見通しを示す
と同時に、配当性向を従来の15~25%から30%程度に引き上げたのが好感された。
米モルガン・スタンレーのダニエル・ブレイク氏は23年に日本企業は配当と自社株買いで過去最高の30兆円を支出すると試算する。株
主還元の拡充というテーマが相場を下支えする。
日経平均は7月3日に年初来高値(3万3753円)を付けて以降、1カ月以上更新が止まっている。一方、東証株価指数(TOPIX)は8月
に年初来高値を更新した。市場では「8月後半にかけどちらの指数の力が強いのかが注目される」(みずほ証券の三浦豊シニアテクニカル
アナリスト)との声が出ている。
2023/08/12 05:30 日経速報ニュース
【この記事のポイント】
・国内の消費支出は65歳以上の世帯が4割
・年金暮らし世帯がGDPの15%を左右
・高齢者の消費活性化がデフレ脱却と連動
賃上げが30年ぶりの高水準となり、消費の押し上げ効果への期待が高まるなか、高齢化社会ならではの課題が浮かび上がってきた。
国内の消費支出は65歳以上世帯が4割を占め、年金暮らしの世帯が国内総生産(GDP)の15%に影響する。物価高で賃上げが進んでも
年金世帯は恩恵を受けにくい。高齢者の消費活性化がデフレ脱却を左右する。
「将来を考えるとなかなか思い切ってお金を使えない」。横浜市の70代の男性はこう話す。孫へのプレゼントなどには財布のひもは緩む
が、大きな買い物は控えがちだ。
高齢者の消費支出に占める存在感は高まっている。世帯主が65歳以上の世帯の2022年の1カ月平均の支出は21万1780円だった。
全体に占める割合は約39%になる。少子高齢化に伴い、20年前の約23%からほぼ倍になった。団塊世代の高齢者入りが一巡したことな
どから、10年代後半から頭打ち傾向にあるものの、団塊ジュニア世代が高齢者になる30年代からは伸びが再加速する可能性がある。
持ち家を借家とみなした場合に想定される家賃を除いた消費額をもとに第一生命経済研究所の星野卓也氏が試算したところ、年金暮
らしと考えられる平均年齢74.5歳の無職世帯の消費額は22年に33%を占めた。
日本の22年の名目GDPの実額は556兆円で、5割を個人消費が占める。GDP全体の15%程度を年金世帯の消費が担っていることになる。
消費者物価指数は生鮮食品を除く総合が6月まで10カ月連続で3%を超えた。今年の春季労使交渉の賃上げ率は連合の最終集計で
3.58%と30年ぶりの水準だ。ただ賃上げの恩恵は年金世帯には及ばず、物価高で年金支給額は実質的に減る。
22年の物価上昇などを受け、既に年金を受け取っている68歳以上の人は23年度の支給額が前年度比1.9%増と、3年ぶりに増える。
物価の伸び以上に年金額が増えない仕組みになっており、2.5%の物価上昇率を加味すると実質的にマイナス圏に沈む。
日本総合研究所の西岡慎一氏は今後、物価が2%伸びても給付を抑制する「マクロ経済スライド」の発動で受給済みの人の年金の伸
びは1%程度にとどまると試算する。この場合、60歳以上で無職の世帯の消費は0.2ポイント押し下げられるという。
一方で高齢世帯は金融資産が多い。日銀の資金循環統計によると23年3月末の家計の金融資産は2043兆円と、過去最高だった。
19年の全国家計構造調査では、65歳以上の無職世帯の夫婦の金融資産は1915万円で、全世帯平均より636万円も多い。
65歳以上世帯の金融資産の7割弱は現預金だ。物価高では現預金の価値が目減りする。今年は日経平均株価がバブル崩壊後最高
値となるなど株高で「貯蓄から投資」の機運がある中、多くの人が一定の知識を持って適切に資産形成できれば支えになりうる。
問題は将来の不安からお金を使おうとする意欲がそがれていることだ。生きている間に必要になる生活費や医療費が見通しにくいと
手元の資産を使って積極的に消費しようという気持ちになりにくい。
人口に占める65歳以上の比率は20年時点で日本が28.6%と突出する。ドイツが21.7%、米国16.6%、韓国15.8%だ。そもそも米国に比べ
日本は消費意欲が弱い。
適切に資産形成したり、ライフスタイルにあわせながら可能な範囲で働き続けたりと解はいくつもある。消費のボリュームゾーンとなった
高齢者が過度に不安にならずに消費できる前向きな社会観をつくれるか。需要不足を脱しきれない日本がデフレに後戻りしないための
ポイントの一つになる。
2023/08/15 日本経済新聞 朝刊
東京市場で円安・株高の構図が変化してきた。14日は円相場が対ドルで今年の最安値を付けるなか日経平均株価は413円安となっ
た。背景に海外投資家の変調がある。
「ここまで円安が進むとドル建てのパフォーマンス悪化など悪い面が注目されやすい」。CLSA証券の釜井毅生エグゼキューション・サー
ビス統括本部長は14日の円安・株安をこう解説した。
7月上旬までの日本株の上昇は円安と並行して進んだ。ところが、下旬以降は円安でも株価の上値は重い。14日はトヨタ自動車が1%
安と下げた。過度の円安はガソリン高を通じ個人の購買意欲を下げかねない。
別の外資系証券のトレーダーは海外勢の株価指数先物の売買に、上値の重さの原因を嗅ぎ取る。
大阪取引所によると、海外勢は8月第1週に先物を約4000億円売り越した。このトレーダーが「変質」とみるのは売りの内訳。東証株
価指数(TOPIX)型が約2800億円で日経平均型の2倍超と大きい。TOPIX型の売越額の方が大きいのは2週連続だ。
TOPIX型主導の売りは何を意味するのか。
「流動性の高い日経平均型はヘッジファンドなど短期勢が主に値幅取りや裁定取引に使う一方、TOPIX型は中長期目線の投資家が使
うことが多い」。JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは両者の違いをこう説明する。
海外勢の日本株買いが本格化した4月第2週以降、短期的な過熱感から先物が売られる局面では日経平均先物への売りが大きく、
TOPIX型は少額の売りか、むしろ逆行して買われてきた。足元での変化は、中長期の海外マネーが日本株から離れていることを示唆し
ている可能性がある。
8月にTOPIX型の売り越し幅が大きいのはJPモルガン証券やBofA証券など中長期の顧客が多い米系だ。
個別株でも海外勢好みの銘柄は売られやすくなっている。日経500種平均株価の構成銘柄を対象に、外国人持ち株比率の上位100
銘柄群と下位100銘柄群の日々の値動きの差を3月末から累積すると足元でマイナスが深まっている。外国人持ち株比率が高いほど
下げていることを示す。
代表例が国際競争力が最も高い分野のひとつとされるロボット分野だ。ファナック株は6月に付けた年初来高値から23%下落。ナブテ
スコはほぼ1年半ぶりの安値に沈む。ともに中国で設備投資需要が予想以上に落ち込んでいることが売りにつながっている。
日本株買いの理由のひとつには経済安全保障などを背景にした中国株から日本株への資金シフトがあった。ただ、中国経済不振は日
本株にもはね返ることが4~6月期決算で認識されてきた。
日本株の優位論は全体には揺らいでいない。物価上昇を背景とした名目国内総生産(GDP)の拡大は、企業業績を予想以上に押し
上げ、円安はインバウンド(訪日外国人)にはプラスとなる。
ただ、海外勢は優位点のひとつひとつを吟味し始めている。TOPIX先物の売りが膨らんだ7月第4週は、日銀が政策修正したタイミン
グに重なる。「『緩和姿勢の後退』と受け止められ海外勢の売りにつながっている可能性がある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の
古川真チーフ・ポートフォリオストラテジスト)
資本効率の引き上げなど改革の動きが鈍いとの声も聞かれはじめた。株高持続には「変わる日本」の実績を積み上げる必要がある。
2023/08/15 09:50 日経速報ニュース
小林俊介・みずほ証券チーフエコノミスト 4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値はかなり強い内容だった。自動車生産やインバ
ウンド(訪日外国人)の回復で輸出が伸びたほか、経済再開で設備投資も改善が続いている。自動車の生産台数はピーク時を下回った
ままで増加余地があるうえ、今年の春季労使交渉(春闘)で確認できた賃上げが反映されるにつれて実質賃金もプラスとなり、個人消費
も力強さを取り戻す可能性が高い。
輸入が落ち込み、内需の弱さが目立ったことで市場ではあまり良い内容ではないとの声が出るかもしれない。しかし、賃金上昇を背景
に内需は個人消費を中心に伸びていくと考えている。総じてみると日本経済は良好といえる。特に名目成長率が非常に高く、日本は数十
年ぶりにインフレを伴う経済成長を実現している。株式市場では景気敏感のバリュー(割安)株に加えて、販売単価の引き上げが可能な
(競争力の高い)内需銘柄に対しても物色が向かうだろう。
4~6月期の景気回復で需給ギャップはプラスに転換したとみられ、物価や賃金の上昇圧力がかかっていくとみている。7月の「経済
・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しの上振れリスクが大きいとした日銀の見方を裏付けるGDPだった。マイナス金利政策
や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の解除といった早期の金融引き締めには引き続き慎重だろうが、物価・賃金が強含む
なかで金融政策の自由度は増すと予想している。
2023/08/16 05:51 日経速報ニュース
【NQNニューヨーク=戸部実華】15日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前日比361ドル24セント(1.0%)安の
3万4946ドル39セントで終えた。中国景気の減速懸念が強まったうえ、米金融セクターを取り巻く不透明感が米株相場全体の重荷となっ
た。米長期金利の上昇も株式の相対的な割高感につながり、幅広い銘柄に売りが出た。
15日発表の中国の7月の工業生産高などの経済指標が軒並み市場予想を下回った。同日には中国人民銀行(中央銀行)が期間1年の
中期貸出制度(MLF)金利を引き下げた。中国の不動産大手の経営不安も浮上しており、同国経済の先行き不透明感が高まった。
中国など海外の売上高比率が高い銘柄が売られやすく、ダウ平均の構成銘柄では化学のダウが3%安、工業製品・事務用品のスリー
エム(3M)が2%安となった。中国の原油需要が伸び悩むとの観測から米原油先物相場が下落。原油安が業績の逆風になるとみて、石油
のシェブロンと建機のキャタピラーも下げが目立った。
米金融株が軒並み売られたことも、投資家心理を悪化させた。格付け会社フィッチ・レーティングスが大手米銀を含む70行以上を格下げ
する可能性があると米CNBCが15日に報じた。銀行の経営環境の厳しさが改めて意識され、JPモルガン・チェースとゴールドマン・サック
スが安かった。ダウ平均の構成銘柄ではないが、バンク・オブ・アメリカやシティグループなどが売られた。地銀も下げ、地銀株で構成する
上場投資信託(ETF)「SPDR S&P地銀ETF」は3%安となった。
米長期金利の指標である10年債利回りが一時前日比0.08%高い(債券価格は安い)4.27%と昨年10月以来の高水準を付けた。朝方発
表の7月の米小売売上高は前月比0.7%増とダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(0.4%増)を上回った。市場では「良いニュースは(
米追加利上げ観測を強める)悪いニュースとして受け止められる局面だ」(LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏)との声も聞か
れた。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は15日、インフレは依然として高水準との認識を示し「(利上げが)終わったとはまだ言えない」と話し
たと伝わった。金融引き締めの長期化観測も株売りにつながった。
一方、朝方発表した5?7月期決算が市場予想を上回ったホームセンターのホーム・デポは買われた。
ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反落し、前日比157.284ポイント(1.1%)安の1万3631.047で終えた。電気自動車の
テスラは3%、ネット通販のアマゾン・ドット・コムは2%下げた。交流サイトのメタプラットフォームズやネット検索のアルファベットも安い。
半面、複数のアナリストが目標株価を引き上げた画像処理半導体のエヌビディアは上昇した。
2023/08/16 08:03 日経速報ニュース
中村貴司・東海東京調査センターシニアストラテジスト 16日の東京株式市場で日経平均株価は反落しそうだ。下値メドは前日終値
から400円程度安い水準に位置する75日移動平均(3万1830円、15日時点)近辺を想定している。前日の米株式相場の下落が投資
家心理の重荷となる。格付け会社フィッチ・レーティングスが大手米銀を格下げする可能性を示唆したことで米銀行株が下落しており、
他業種への影響が出ないか気がかりだ。
足元では売買が細る「夏枯れ」シーズンだが、秋からは投資家も増えてボラティリティー(変動率)が高まる可能性が高い。中国景気
減速への警戒感が高まってきているうえ、米国景気に対する楽観的な見方が続くかも不透明感は強い。期待先行で世界の株式相場
の上昇が続いてきたが、過度な期待が修正される局面に入れば、国内株式市場でも幅広い銘柄に利益確定売りが出る可能性がある。
https://jp.reuters.com/article/usa-treasury-securities-idJPKBN2ZQ1Q4
2023/08/17 日本経済新聞 朝刊
年内の非公開化をめざす東芝へのTOB(株式公開買い付け)が始まった。投資ファンドを中軸とする企業連合の総額2兆円にのぼる
買収資金のうち、大手銀行の融資額は全体の過半を占める。巨額の融資に伴うリスクを拭いきれない銀行団は厳格な条件を盛り込み、
出資を決めた企業には不満もくすぶっている。
東芝の資金繰りを支える2000億円のコミットメントライン(融資枠)を含め、融資の総額は1兆4000億円。三井住友銀行が5150億
円、みずほ銀行が4600億円を引き受ける。三井住友信託銀行と三菱UFJ銀行、あおぞら銀行を加えた5行で融資団を構成する。相手
先の企業が抱える資産を担保に融資を実行するLBOファイナンスとしては国内で最大級だ。
融資が固まるまでには曲折があった。調整が大詰めを迎えた昨年12月。ある大手行の幹部は「非上場化してからの成長戦略がみえ
ない」と融資額の上積みに強い難色を示した。東芝が4割出資する半導体メモリーのキオクシアホールディングス(HD)の業績悪化も鮮
明になり、上場廃止後の経営を懸念する声は銀行団に根強くあった。
同じ年の夏に破綻したマレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)で債権放棄を含め、4500億円の金融支援を迫られた記憶も
生々しい。巨額の融資に伴うリスクをどこまで引き受けられるか、参加行の協議は難航した。
「オールジャパンで支える構成にしたい。協力をお願いできないだろうか」。事態の打開に動いたのは、協調融資を取りまとめる三井住
友銀行の高島誠頭取(当時、現会長)だった。みずから大手行の首脳に協力を要請し、負担額の引き上げを求めて回ったという。
参加行の理解を得るため、最高財務責任者(CFO)など重要な経営判断に携わる役員を銀行団から送ることで東芝側と合意。業績不
振が顕在化すれば、東芝が保有するキオクシアHD株を売却したり、非上場企業の株式を第三者へ譲渡したりすることを条件に付けた。
経営の進捗状況を点検する会議も3カ月に1度開く。
東芝の業績が銀行側と定めた条件に届かない場合、期限前に一括の返済を求めることができる財務制限条項(コベナンツ)にも厳しい
内容を盛り込んだ。一般的な純資産や純利益の維持に加え、負債額をEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で割った値が一定の水
準に収まるよう要請。こうした条件に抵触すると、業務改善計画の作成と実行に向けた検討を東芝に義務付ける。
確実な返済を担保したい銀行団にとっては必須の条件だが、銀行の監視が強まれば東芝の大胆な事業展開を縛ることにもなりかねな
い。リスクを引き受けて東芝に投資する企業が反発を強める可能性がある。実際にオリックスは優先株と普通株で3000億円を拠出する
予定だったが、最終的に劣後ローンと普通株の組み合わせで2000億円にとどめるなど不満をあらわにした。
それぞれの思惑を秘めて出資した企業はロームや中部電力、スズキ、パロマ、鹿島、JR東海など幅広い業種の計26社。化学繊維を
手掛ける韓国企業も名を連ねる。東芝の再出発と成長という共通の目標に向け、足並みをそろえることができるのか。早くも伝わる不協和
音からは多難な船出を予感させる。
2023/08/17 日本経済新聞 朝刊
上場企業の保有不動産に対する投資家の関心が高まっている。資本効率改善への要請が強まるなか、含み益を抱える不動産を売却し
資金を株主還元や成長投資に回すことへの期待が背景にある。主要企業の不動産含み益は過去最高の約23兆円にのぼる。眠れる資産
を有効活用し、企業価値を高める経営への転換が株価を左右する。
「これまでは実現性に欠ける銘柄リストだったが、東証の要請を経て現実味が出てきた」。野村アセットマネジメントの宮崎義弘チーフ・ポ
ートフォリオマネージャーが指し示すのは、企業のPBR(株価純資産倍率)に不動産などの含み益を加味した「実質PBR」を示す一覧表だ。
実質PBRは、PBRの分母の純資産に不動産などの含み益(税引き後)を足して算出する。含み益が大きいほど値が小さくなり、割安感
は強まる。ただ、企業が不動産などの資産を売却しない限り、含み益は実際の利益とはならない。
これまで日本企業は資産売却に消極的で、実現益には期待しづらかった。典型的だったのが不動産大手だが、変化の兆しも見える。宮
崎氏は「資産を売却して株主還元を強化したり、資本効率を高めたりといった戦略が出始めてきた」と話す。実際、オフィス市況の改善など
も材料に不動産株を買い付けたという。
含み益が2500億円強ある野村不動産ホールディングスは「保有ビルの売却に聖域はない。含み益のある物件を一部売却し、株主還元
や資本効率向上につなげる」(芳賀真副社長)との姿勢を明確にした。約3・2兆円を抱える三井不動産も「適時売却による含み益実現」を
経営方針の一つに掲げる。
企業の不動産含み益は拡大が続いてきた。継続比較できる主要企業の賃貸等不動産の含み益は2022年度末で22兆8203億円にの
ぼり、10年前比で2・6倍になった。純資産に対する比率も3割弱と10年前の2割弱から拡大した。
直近年度で不動産含み益の比率が高く、実質PBRが1倍を割っている約100社の7月以降の株価騰落率は中央値で2・2%高と、割安
株(同0・3%高)や主要企業全体(同0・4%安)を上回る。東証のPBR改善要請を受けた自社株買いや増配が一巡し、「次の一手」として
資産売却に動く企業が増えるとの見方がうかがえる。
期待は不動産セクターにとどまらない。三菱UFJ国際投信の末永壮視シニアファンドマネジャーは「倉庫や鉄道などの資産活用にも注目
できる」と指摘する。例えば、約1・6兆円の不動産含み益をもつJR東日本は3月に私募REIT(不動産投資信託)を組成。自社の物件を売
却して得た資金を、高輪エリアなど成長案件に投じる。
もっとも、含み益の実現可能性には企業によって濃淡があり、過剰な期待は禁物だ。1980年代のバブル期には企業の持つ土地などを
時価評価して算出する「Qレシオ」が異常な株価を正当化する指標として注目された例もあった。
それでも、日本企業のPBR改善は息の長いテーマになるとの見方が多い。不動産価格の上昇も続くなか、中期的には含み益を実現益に
転換する動きが続くとみられる。「眠れる資産」を持つ銘柄を探る動きは活発になりそうだ。
2023/08/18 04:00 日経速報ニュース
世の中には明らかに弊害が起きているのに、ほとんど誰もが正面切って問題視しないことがある。猛暑の背後に地球温暖化が加速して
いること。住宅購入費用がコロナ禍で高騰していること。そして、本稿で取り上げる老後の生活費がインフレで増加し、その一方で準備資
金が実質的に目減りしていることだ。
日経ヴェリタスの読者には、このインフレリスクのことは説明すれば十分にわかってもらえると思い、少し踏み込んで議論してみる。
「インフレ課税」で割り負け
まず日銀は7月の金融政策決定会合で、長期金利が0.50?1.00%へと上昇することを事実上容認した。もう1つ、「展望リポート」を改定し
て、2023年度の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比見通しを2.5%に上方修正した(前回4月の見通しは1.8%)。
長期金利はその利回りがたとえ1.00%であっても、物価2.5%に割り負けている。つまり、老後資産を日本国債で運用しても、生活費をまか
なうだけの収益が得られないことを示している。それどころか、老後資産の元本価値は年間2.5%ほど減価していることになる。物価2.5%と
言っても、食料品(含む外食)は10%近く高騰している。厳密に言えば、生活物価は除く帰属家賃でみる必要があるので、消費者物価(除
く生鮮食品、帰属家賃)は2.9%へと上がる。目減りを防ぐために老後資産の運用利回りは、税引き前で3.6%はほしいということになる。
もう少し先の期間までみると、23年度2.5%の後は、24年度1.9%、25年度1.6%になっている。3年間平均の消費者物価(除く生鮮食品、帰
属家賃)の伸び率は2.3%となる。元本価値を目減りさせないための税引き前運用利回りは、2.9%という計算になる。
筆者は、円資産の価値が運用利回りを含めて考えても、物価上昇率に割り負けていくことを「インフレ課税」と呼んでいる。元々は、経済
学者J.M.ケインズがInflation Taxと言っていた言葉だ。Taxと呼んでいるのは、まるで課税されているようだという意味だ。実際、日本の政
府債務残高は、長期金利がインフレ率よりも低いことで減価しているから、私たちは「見えない税金」を支払っているのと同じことになる。
君たちは年金をどうするか
私たちが直面している老後のリスクには、年金リスクがある。23年度の年金収入は前年比1.9%と増えた(68歳以上のケース)。しかし、
これは22年の物価上昇率2.5%に対して割り負けている。マクロ経済スライドの仕組みによって、年金収入の実質的な伸び率はマイナスに
なるように運命づけられている。04年の年金改革によってこのルールは決定され、今後の年金は目減りしていくことが避けられない。年金
の目減りは明白なリスクである。
これに対して、私たちは就労によって老後の生活を支えることが半ば強制されている。就労しなければ食べていけない。しかし、年金の
在職老齢年金システムでは、年金収入+就労収入が48万円を超えると、超過した金額の半分が年金収入からカットされる。シニアは高
い給与で働くと何かペナルティーを課されるように感じる。年金をカットされるのを恐れて、自分の能力に比べて低い就労収入しか受け取ら
ない人も少なくない。年金の中には、自分で積み立てている部分が多いのに、自分が稼ぐほどにそれがカットされるのは矛盾していると思う。
非常に良くないのは、企業側はシニアになると年金収入があるからという理由で、能力のある人であっても給与水準を極端に低くすること
が多いという点だ。これだけシニアの就労が増えているのに、自由な就労を妨げる仕組みが制度の中にビルトインされている。
この年金カットを避けるためには、支給開始年齢を65歳から例えば70歳あるいは75歳に繰り下げるしかない。70歳を選択すれば、年金収
入は42%増、75歳ならば84%増にすることができる(年齢によって増加率は変わる)。その半面、繰り下げをすると生涯の受取期間は短くなる。
長生きリスクに備えて繰り下げを検討せよという仕組みは、国が国民に厳しい選択を迫っているのと同じだと感じる。年金支給条件を人質
にして、「君たちはどうするのか?」と選択を求めている。
就労収入に頼ろうとすると在職老齢年金の壁がある。だから、それ以外の選択を考える必要がある。それは配当・利息収入を大きくする
余地を考えることだ。配当収入を増やすためには、株価が低いときに高配当銘柄に投資するのが良い。現在のようなタイミングはあまり良
くない。利息収入は海外の長期国債に高利回りで投資することで得られる。米国の長期国債は8月に一時4.2%台まで上昇した(図表)。為
替リスクはあるが、インカムゲインは十分に得られる。
ここで検討すべきは、①米長期金利(海外金利)がいつ頃ピークをつけるか②今後10年間の為替リスクをどう評価するか、という主に2点
であろう。米経済は今のところ堅調で、まだ米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転じるタイミングが読めない。米長期金利は利下げ予想
具体的に語られ始めるときにピークアウトするだろう。
米消費者物価は6月に前年比3.0%まで低下してきた。その中身はまだ強いインフレトレンドを感じさせるので、利下げは少し先だと思える。
23年9月?24年6月のどこかでいったんピークは来るだろう。ピークがわからないときは、時間分散という手法がある。
次に為替リスクをどうみるか。すでに円安が相当進み、先々は円高とみる人はいると思う。しかし、筆者は長期的にもっと円安は進むと予
想する。ドル円レートは12年以降、円安トレンドをたどっている。今後10年間の日本の長期金利は、たとえ日銀がマイナス金利を解除したと
しても低位の状態が続くとみる。日本の政府債務は長期のインフレでじわじわと減価していき、同時に家計金融資産も減価するというシナ
リオだ。
ドル資産を持たないリスク
では、米国側にドル価値が急落するリスクはないか。33年までには3回の大統領選挙がある。ちょうど33年は、その前年秋に新大統領
が就任する年に当たる。そこまで見通すことは屋上屋を架すことに似て、あまり信頼性のあることは言えない。
むしろ、今後はドルを資産として保有していないことの方が、円安リスクや円資産のインフレリスクを負うことになるのではあるまいか。
最後に日本株はどうか。実は日本で外貨を多く保有するのはグローバル化した製造業である。正確に言えば、外貨保有ではなく、外貨
を稼ぐ力を有している。21年度の日本の製造業は、総売上高に占める現地法人売上高が25.8%となっている。製造業の株価には、円安メリ
ットが反映されやすい構造である。
2023/08/18 09:22 日経速報ニュース
18日前場寄り付きの東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日に比べ200円ほど安い3万1400円前半で推移している。下げ幅は
300円を超える場面もあった。米金融引き締めの長期化懸念から米長期金利が上昇し、前日の米株式相場は下落した。その流れを引
き継ぎ、日本株にも売りが先行している。中国景気の先行き不安も相場の重荷となっている。
17日の米株式市場ではダウ工業株30種平均など主要3指数が下落した。米CNNなど複数のメディアが「経営再建中の中国不動産
大手、中国恒大集団が17日、ニューヨークで破産を申請した」と報じた。中国の不動産市況および景気全般の先行きへの警戒が高まっ
ている。東京市場では安川電などの中国関連とされる銘柄のほか、三越伊勢丹や資生堂などのインバウンド(訪日外国人)関連の一角
も下げている。
東証株価指数(TOPIX)は続落している。フジクラや住友大阪、ZHDが安い。半面、三菱重やJFE、アドテストが高い。
2023/08/18 12:26 日経速報ニュース
18日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前引けは前日比60円安の3万1565円だった。中国不動産大手の中国恒大集団の
破産報道を受けて、リスクオフの動きが先行し、日経平均の下げ幅は300円を超える場面があった。売り一巡後は18日の中国・上海株
式相場が続伸して始まり、日本の株価指数先物に買い戻しの動きが入ったことから、日経平均は上げに転じる場面もあった。「中国恒
大ショック」恐るるに足らずかーー。
18日早朝の日本市場で「経営再建中の中国不動産大手、中国恒大集団が17日、ニューヨークで破産を申請した」と伝わり、多くの市
場参加者は身構えた。三菱UFJ国際投信の石金淳チーフファンドマネジャーは「破産は中国政府が不動産会社を救済しない姿勢を示
したとも受け止められる」と説明する。「共同富裕(共に豊かになる)」の方針を掲げる習近平(シー・ジンピン)国家主席が特定の不動産
会社が信用不安に陥ったからといって支援することはないとの見方が一段と強まった。中国不動産最大手で資金繰り難が表面化して
いる碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)などが連鎖的に破産し、中国不動産発の大きなショックが広がるとの警戒が
広がった。
中国リスクがリーマン・ショック級の混乱につながる警戒が漂う。東京市場では朝方には安川電機(6506)や三越伊勢丹ホールディン
グス(3099)など中国関連銘柄が一時、大幅安となった。
もっとも、その後の反応は冷静だ。中国恒大は2年ほど前から実質的な経営破綻状態であることが顕在化していた。「碧桂園控股の
信用不安についても足元までにある程度織り込まれているのでは」(三菱UFJ国際投信の石金氏)。18日の中国・上海株式相場が上
昇して始まると過度な警戒が和らぎ、日本株にも買いの勢いが強まった。中国リスクは当面、折に触れて市場を揺るがす場面もありそ
うだが、きょうの午前の動きをみる限り、それなりに耐性も強いとみられる。
8月に入り調整色を強める日経平均だが、前日も一時450円超下げてから急速に下げ渋るなど、底堅さもみせている。JPモルガン証
券の高田将成クオンツストラテジストは16日付リポートで商品投資顧問(CTA)の持ち高なども加味し、当面の日本株は「重要局面」に
向かうと指摘する。
例年8月は相場が下がりやすい傾向にあることで知られる。今月に入ってからの相場下落が通常通り、一時的な要因であれば、持ち
高調整の売り一巡後に日経平均は3万2700円までの自律反発の動きが期待できるという。一方、季節的な事象の許容領域を超えて
3万0800円割れとなるような展開になれば、株価指数先物へのロスカット(損失覚悟)の売りが大きく膨らみ、調整が長引くとみる。
日経平均は8月末に向けて調整をこなしながら、3万0800円を下回らずに踏みとどまれるか。「落ちるナイフ」を拾いに行くかどうか、悩
ましい局面にきている。
2023/08/19 日本経済新聞 朝刊
日経平均株価の移動平均線が18日、中期トレンドを示すラインを下回った。下落サインとされ、相場の流れに追従する戦略のヘッジファン
ドから機械的な売りが出やすくなる。株安に勢いがつき3万円の大台割れを警戒する声も出てきた。
18日の日経平均は3日続落し、前日比175円安の3万1450円と約2カ月半ぶりの安値となった。下げ幅は一時は350円を超えた一方
、上昇に転じた場面もあった。不動産問題に揺れる中国市場をにらみながらの荒い値動きとなった。
「日本株の組み入れ比率は下げてきた。8月中は調整リスクが高く、あと1000円くらい下げないと積極的な押し目買いを入れにくい」。
国内外の株・債券を組み合わせたファンドを運用する三菱UFJ国際投信の石金淳チーフファンドマネジャーは語る。
チャート上に複数点灯した不吉なサインが投資家の不安心理をかき立てる。「中期のモメンタムが崩れてきた」と指摘するのは東海東京
調査センターの中村貴司シニアストラテジストだ。14~18日の週の日経平均は13週移動平均線を下回る値動きに終始した。1月下旬
以降、初めてだ。
13週線は過去13週(3カ月)に市場参加者が取引した平均コストを示す。株価が上回っていれば下値のメドとなる一方で「明確に割り込
むと上値を抑える水準として意識されやすい」(楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリスト)。3カ月前は株高局面だった。
13週線自体は当面じりじり上がる。
株価の下放れを示唆する兆候も出た。短期の5週線が、13週線を上から下に突き抜ける「ミニデッドクロス」の発生だ。大和証券の木野
内栄治チーフテクニカルアナリストは「過去には大幅な株安の前兆となったこともある」と警戒する。
春からの日本株高を演出した海外投資家の目線に立つと地合いはより悪い。ドル換算の日経平均(18日時点、QUICK算出の参考値
)は216ドルと6月に付けた今年の高値(239ドル)から23ドル低い。1月の安値(193ドル)からの上昇幅(46ドル)の半分を失った。
円相場が対ドルで3週間で8円下落し、ドル建てでみた日経平均を押し下げている。1年間の長期トレンドを示す200日線(213ドル)に
迫る。下回れば海外勢がいったん日本株を手放す動きが強まるとの見方もある。
「日経平均は今後3カ月で3万円を割れる場面もある」とみずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストはみる。注視するのは日経平
均より現状堅調な東証株価指数(TOPIX)だ。2221ポイントを下回り「ダブルトップ」と呼ばれる軌跡が完成すれば、日本株への売りに
弾みが付くという。
チャート分析は単なる経験則ではない。自動取引の存在感が増すなか、CTAといった順張りファンドもトレンドの見極めにテクニカル指
標を使う。野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは「CTA勢は1兆円を超える先物のロング(買い持ち)ポジションを淡々と
縮小している」と指摘する。
株価に逆風となりうる米長期金利の上昇が止まぬなか、25日のジャクソンホール会議で米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長
は何を語るのか。中国の不動産問題は「チャイナ・ショック」に発展するのか。市場の懸念は多い。長期的な日本株優位は崩れていない
との見方は多いが、日経平均3万円割れへの備えは杞憂(きゆう)とは言い切れない。
2023/08/21 05:00 日経速報ニュース
日銀は「円安抑止」を政策目的に据えた――。7月の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正を機に市場でこんな思惑
が広がり、植田日銀を苦しい立場に追い込んでいる。円安が進むなか、金利上昇の容認や利上げに動かざるを得ないとの見方が広がり、
日銀に「金利安定か円安抑止か」という選択を迫りかねない構図にある。
「日銀は円安対応で長期国債買いオペ(公開市場操作)の減額に動くのではないか」。野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストには最近
、海外勢を中心にこんな声が寄せられる。円安が日銀を金融政策の正常化の方向に追い込む。そんなストーリーのもと「投資家から具体的
なアクションの話まで出るようになった」と松沢氏は驚く。
将来の政策金利予想が織り込まれている翌日物金利スワップ(OIS)市場で3年後の政策金利の予想をみると、YCCの修正を決めた7月
の金融政策決定会合以降、0.5%台まで高まっている。
日銀は今回のYCC柔軟化を「金融緩和の出口に直結するものではない」と強調し、0.5%の変動上限を据え置きつつ「メド」と呼んで0.5%
超の金利上昇を許容するという複雑な仕組みにした。新たな厳格な上限である1.0%は万が一の安全網と位置づけた。
円相場と長期金利のグラフをみると、長期金利が0.5%超に上がった動きとは裏腹に、円安が加速するという一見、奇妙な構図にある。
当初は「出口は遠い」との説明が効き、日銀が新上限の1.0%のかなり手前で金利上昇を抑制する姿勢もみせたことから、日本発で円安
が進展した。だが、ここにきて円安の主導権は米国側に移っている。国債増発や強い景気指標で米長期金利の上昇が勢いづいた。足元で
は「出口が遠い」との神通力が、米国主導の円安で薄れているといったほうが正確だろう。
「出口が近づく」に2つの要因
ではなぜ「円安が進むと出口が近づく」という見方が市場で広がったのか。今回の措置が円安対応だったと受け止められ、「円安が進めば
日銀が動く」との思惑を生んだからだ。
大きな原因の1つは、決定のタイミングだ。債券相場が安定するなか、市場では現状維持の予想も強かった。予想外の決定で「円安進行
を警戒する政府に配慮した」との思惑が一気に広がった。
2つ目は、会合後の声明文の書きぶりだ。
「今後も(物価などの)上振れ方向の動きが続く場合には、実質金利の低下によって金融緩和効果が強まる一方、長期金利の上限を厳格
に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場におけるボラティリティーに影響が生じるおそれがある」
そのうえで「その他市場」との表記に関し、植田和男総裁は記者会見で「今回は為替市場のボラティリティーも含めて考えている」と語った。
これで「日銀が円安対応の柔軟化だったと認めた」との見立てが勢いづいた。
これら2つの反応には、たぶんに「誤解」が含まれている。日銀は円安抑止を直接の目的に動いたわけではない。
まず決定のタイミング。たしかに財務省から円安進行を警戒する声は聞かれてはいた。だが、それに反応して動いたとか、足元の円安を
止めようとした、といった見方は皮相的だろう。日銀は植田氏が就任した4月から、「粘り強い金融緩和」をうたいつつも、もはや副作用を放
置できないYCCの骨抜きへ準備を進めてきた可能性が高い。
7月に決めたのは、物価や賃金の明るい兆しを受けて2024年度の物価見通しは「上振れリスクの方が大きい」と認識し、事前の対応が
必要と判断したためだ。上振れリスクの現実味が増せば、悲願の正常化が近づく半面、その段になってYCCを変更すると金利の急伸など
につながりかねない。黒田日銀時代の末期だった昨年12月のYCCの修正は、出口に直結する措置との思惑を招き、市場が混乱した。これ
は日銀のトラウマになった。
次に、声明文で間接的ながら「為替市場のボラティリティー」への配慮に触れた点も、現時点の円安に対応する意図ではない。素直に読
めば、YCCを柔軟に運営することで、出口がうかがえる状況になった段階で起きるかもしれない円相場の急変動を防ぎたい、という狙いが
理解できる。
もちろん今回、円安や政治への配慮がゼロだったと断言するつもりはない。ただし配慮があったとしても、正常化に向かう際、円相場の安
定を巡って当局間の足並みが乱れるのを回避したい、という狙いが大きいだろう。
昨年の円急落局面では、黒田東彦総裁(当時)が緩和継続を強調すればするほど円安が進み、財務省が円買い介入によってその尻拭
いをする羽目になった。黒田氏はYCCの硬直的な運営が円安を加速させてしまう事実をかたくなに認めようとはしなかった。
今回、声明文で「その他市場のボラティリティー」とわざわざ書いたのは、前体制が否定した「YCC維持による円安促進」の副作用を明確
に認めた点に意義がある。野村の松沢氏も「コミュニケーションの正常化」という側面に着目する。
「誤解」生んだ移行期の齟齬
市場に広がった「誤解」は、10年に及んだ黒田体制からの移行期ゆえの市場との対話の齟齬(そご)だといえるだろう。間接的にせよ
「為替」に言及したことで結局、円安に絡みやっかいなかたちで出口の思惑を呼び寄せてしまった。
植田日銀は深刻なジレンマに直面する。出口戦略を円滑に進める際に最も重要なのは長期金利の安定だ。目先の円安抑止のために
金利上昇を容認してしまうと、金融や経済が耐えられないような水準に急伸し、賃上げ機運を途絶えさせかねない。機が熟さない段階で
の短期金利の引き上げなど、もってのほかだ。
だが、金利を抑え込もうとすると、今度は市場に「日銀は為替の安定を放棄した」との思惑が広がり、円売りを誘うことになる。日銀発の
急激な円安も望ましくない。人々の生活を脅かす輸入インフレを再発させ、賃上げの効果を減らすほか、円安加速を警戒する政治との対
立を招く。
長期金利はいま0.6%台でそれなりに落ち着いているようにもみえるが、急激な上昇圧力がかかった場合、日銀は「金利安定か円安阻
止か」という難しい判断を迫られる。試されるのは植田氏の対話力だ。その巧拙は今後の出口に向けた歩み、そして植田日銀の5年間
そのものを左右する。
2023/08/21 日本経済新聞 朝刊
日本の個人、政府、金融業界がいっせいに資産運用に力を入れている。お金を「ふやす文化」を日本経済の推進力にする運用立国へ
の挑戦が始まった。
年内に改革案
「実現性のある対策を持ってきてくれ」。岸田文雄政権が目指す資産運用立国の実現に向けて、金融庁幹部は運用会社や年金基金、
証券会社などに連日のように呼びかけてアイデアを募っている。
栗田照久長官は「年内にプログラムを作る」と語る。どうすれば良い投資信託を運用会社は個人に提供できるのか。年金基金は十分に
資金を活用できているか。大きな改革の絵を描く。
改革が本格的に動き出したのは2022年9月、首相がニューヨーク証券取引所での講演に向かう政府専用機内の出来事だった。少額
投資非課税制度(NISA)の時限的な仕組みを再考する程度の内容だった草案に、首相が「恒久化が必須」との文言を入れた。側近が出
発直前に与党に根回しして首相に提案した。
24年開始が決まった新NISAの枠上限は1800万円。対象となる18歳以上の総枠は約1900兆円と家計金融資産に匹敵する。普及
の後押し役と目される「職場つみたてNISA」も各地で広がりをみせる。
「このままでは老後資金が足りない」。徳島市の西精工でナットなどの計量・梱包・出荷を担当する田中一生さん(43)は社内勉強会で
将来に備える必要性に気づいた。4月から給与天引きで毎月2万円ずつ外国株投信の積み立てを開始。「定期預金の積み立てを投資に
変えた。20年はほったらかしで続ける」
西精工では4月の制度導入から4カ月あまりで社員・パートの244人中26人が加入した。「若手に触発され年配にも広がってきた」(西
泰宏社長)と浸透を見込む。説明会では過去10年、毎月1万円を日本株投信に積み立てたら元本120万円が214万円になった試算が
示された。
西精工に導入を持ちかけた阿波銀行は野村証券と包括提携して取引先に働きかけている。徳島県など586社、約2100人に成果が広
がる。
デフレ下では預貯金が正解とされたが、偏重による「機会損失」は大きい。
02年度から預貯金増加分の半分を日米株に均等に投資した場合の家計金融資産の伸びを試算すると、22年度末で2430兆円と実際
より390兆円多い。さらに01年度の株・投信の保有比率が米国並みだった想定にすると3990兆円に膨らむ。2000兆円近い機会損失
だったことになる。
金の流れ変える
運用立国の狙いは個人の所得増にとどまらない。リスクマネーを増やし経済の成長力を取り戻すことがある。キャッチアップ型の経済で
は重点産業に資金を集める銀行融資主体の間接金融が効果的だった。成熟経済には試行錯誤や新陳代謝を促す直接金融が合う。
米国も1980年前後まで株・投信の家計金融資産に占める比率は約15%と現在の日本並みだった。年金制度改革などが中流階級を
預金者から投資家にし、現在の比率は約5割になった。投資マネーが企業を伸ばし、株高や配当が家計を潤す好循環を築いた。
直接金融にシフトした米国の投信残高は、銀行融資の源泉となる預金の1.8倍の約30兆ドルと巨大だ。日本の投信残高は私募を含
めて約310兆円と預金の3分の1ほどにとどまる。
7月8日、個人投資家の集い「インデックス投資ナイト2023」が東京・渋谷で開かれた。「インフレに見合う賃金上昇がないと感じるか」
との問いに会場の約6割が挙手した。3%の物価上昇が20年続けば現預金の実質価値は半分近く減る。日本の英知を集めた改革が
求められる。
2023/08/22 05:00 日経速報ニュース
日銀は22日、7月の基調的なインフレ率の指標を発表する。一時的な変動を除いたより基調に近い物価指標を独自に算出しており、過去
最高を更新するとの見方もある。日銀は物価の上振れなどを理由に、7月の金融政策決定会合で長短金利操作の修正に動いた。物価の
基調が今後も高止まれば、この先の政策判断にも影響を与えうる。
日銀は物価の基調を正確につかむために「刈り込み平均値」「加重中央値」「最頻値」という3つの指標を算出している。刈り込み平均値は
、上昇率と下落率の上位10%の品目を除いて算出するもので、一部の品目の大きな値動きに左右されず、基調をつかみやすいとされる。
6月は前年同月比3.0%の上昇と、統計を遡れる2001年1月以降の過去最高(3.1%上昇)に迫る水準だった。
第一生命経済研究所の星野卓也氏は7月の刈り込み平均値が3.2%上昇と過去最高を更新すると予想する。「価格転嫁の継続もあり、変
動の大きい品目を除いた全体でみても物価の上昇圧力はまだ根強く残っている」という。
加重中央値は上昇率の高い品目の順に並べ、上から品目のウエートを足していったときに50%近辺に位置する値を示す。最頻値は品目数
が最も多い上昇率を示す指標だ。どちらも6月は過去最高に並ぶ水準だった。
7月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は生鮮食品を除くベースで前年同月比3.1%となった。4%を超えていた年初と比べれば、表面
上は上昇にブレーキがかかっているようにみえる。だが、物価の基調がまだ下げに転じていないとすれば、日銀が目指す2%を超える物
価上昇が当面続く可能性がある。
足元の円安で物価の基調が下がりにくくなる面もある。外国為替市場で円相場は1ドル=145円台で推移し、一時146円台半ばまで下
落した。「今の円安水準が続けば、物価の高止まりを長引かせる要因になる」(星野氏)
日銀は7月会合で「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめ、23?25年度の物価見通しを更新した。23年度の見通しは2.5%と、
4月から0.7ポイントの大幅な上方修正に踏み切った。植田和男総裁は記者会見で「 4 月時点の見通しはかなり過小であった」と語った。
7月会合の主な意見では、ある政策委員から「『2%の持続的・安定的な物価上昇』の実現が、はっきりと視界に捉えられる状況」との
声が上がった。このまま日銀の想定を上回る物価上昇が続き、継続的な賃金の上昇が実現するならば「金融緩和を手じまう方向に動い
てもおかしくない」(日銀関係者)との声も出始めている。
2023/08/22 日本経済新聞 朝刊
債券市場の一部で日銀が国債買い入れオペ(公開市場操作)を減額するとの思惑が浮上している。日銀の政策修正を受けた利回り
上昇で投資家需要が強まるなか、日銀への売却が細っているためだ。円安をけん制する目的でも国債の買い入れ減額を見込む声もあ
り、日銀のオペを巡り神経質な展開となりそうだ。
日銀は現在、1%の利回りで無制限に買い入れる「指し値オペ」と、市場参加者が提示した価格が割安な順に買い入れる従来型の
国債買い入れオペを実施している。減額観測が浮上しているのは従来型のオペで、残存5~10年の国債は現在1回あたり6750億円
買い入れている。
背景にあるのは日銀への売却意欲の弱まりだ。月間ベースで全年限の応札額の合計を落札額の合計で割った応札倍率を見ると、
8月は足元までで2.0倍と日銀が異次元緩和を始めた2013年以降で最も低い。「日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、
YCC)で抑え込む残存5~10年の国債で流動性低下が顕著だ」(東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト)との声もある。
日銀の臨時オペを受けて外国為替市場で円安に振れる場面があるなど、日銀が金利を抑え込む姿勢を強めれば円安に振れやすく
なる。一方、オペが実際に減額されれば円高が進む可能性も市場で意識されている。
2023/08/22 08:08 日経速報ニュース
22日の国内債券相場は下落(利回りは上昇)しそうだ。前日の米長期金利は、足元の米経済が想定以上に底堅いとの見方などから
一時4.35%と15年9月ぶりの高水準をつけた、米長期金利の上昇を受けて22日の国内長期債にも売りが及ぶとみられる。長期金利の
指標となる新発10年物国債の利回りは0.65%程度で推移しそうだ。
21日のニューヨーク債券市場で米10年物国債利回りは前週末比0.09%高い4.43%で終えた。前週発表の7月の米小売売上高など
が市場予想を上回ったほか、雇用関連でも労働需給が引き締まった状態にあることを示す指標が多い。米連邦準備理事会(FRB)が
年内に追加利上げに踏み切る可能性や、政策金利を長期にわたって高く維持するとの見方が意識され、米国債相場の重荷となった。
今週は米国で24~26日に国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開かれる。25日にはFRBのパウエル議長が講演する
予定で、その中で同氏が金融政策についてどのような姿勢を示すか、見極めようとする市場参加者が多い。ただ、夏季休暇中の市場
参加者もいるなかで、国内債も商いが薄くなる可能性がある。売りが一巡すれば、方向感の出にくい展開も予想される。
22日は国内で債券相場に影響しそうなイベントが少ない。財務省による流動性供給入札は残存期間「5年超15.5年以下」が対象で、
発行予定額は5000億円程度。市場では「無難に通過する」(国内証券の債券ストラテジスト)との声が聞かれる。日銀による定例の
国債買い入れオペ(公開市場操作)は予定されておらず、需給を左右する材料に乏しい。日本時間22日の取引で米長期金利が一段
と上昇すれば、国内債にも売りが広がる公算が多い。
21日の米長期金利の上昇を受けて国内長期金利も急ピッチで上昇すれば、日銀が臨時でオペを通知し、金利上昇を抑制する姿勢
を示す可能性がある。長期金利が上昇すれば相場の割安感に注目した買いも入りやすくなるとみられ、長期金利が中心限月として
14年1月(0.685%)につけた水準を試す展開とはなりにくそうだ。
国内では日銀が基調的なインフレ率を捕捉するための指標を公表する。日本スーパーマーケット協会などは7月の食品スーパー売
上高を発表する。海外では7月の米中古住宅販売件数が発表される。
2023/08/22 日本経済新聞 朝刊
財務省は2024年度予算案の概算要求で、国債の元利払いの想定金利を1.5%とする調整に入った。23年度予算から0.4ポイント
引き上げる。日銀の政策修正を受けて長期金利が上昇しているのを踏まえた。概算要求の総額は110兆円を超える見通しだ。
国債の元利払いに充てる国債費は28兆円規模になる見込みだ。23年度予算では25兆円程度だった。社会保障費や防衛費も増え
概算要求の総額は3年連続で110兆円を超える見通しになった。
想定金利は年末の予算案編成で最終的に決める。予算案では17年度から23年度まで7年続けて1.1%に据え置いてきた。23年度
予算は夏の概算要求段階では1.3%と見積もっていたが金利動向を踏まえて、年末の予算案編成時に1.1%を維持した。
想定金利は通常、直近1年の10年債の平均利回りに、過去の金利急騰時に経験した1.1%の上昇を加味してはじき出す。
日銀が7月下旬に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正して以来の長期金利は0.5%を上回る水準にある。
こうした状況を踏まえて想定金利を引き上げる。
2023/08/31 日本経済新聞 朝刊
日銀の田村直樹審議委員は30日の記者会見で、物価2%目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況になれば「マイナス金利の
解除も選択肢の一つに入る」と述べた。政策修正の判断時期については、賃上げや2023年後半の物価動向などのデータが集まる
「来年1~3月ごろ」を目安として示した。
北海道釧路市で開いた金融経済懇談会後に記者会見した。田村氏は政府・日銀が掲げる物価2%目標について「実現がはっきりと
視界にとらえられる状況になった」とした。
マイナス金利を解除しても金利を低く抑えていれば「金融緩和の継続と理解している」とも話した。
物価2%目標の達成の見極めについて「来年1~3月ごろに(見通しの)解像度が一段と上がる」とした。
2023/09/11 07:49 日経速報ニュース
今週(11~15日)の外国為替市場で円相場は上値の重い展開となりそうだ。日銀の植田和男総裁がマイナス金利の解除のタイミング
などに言及したことを受け、金融緩和の修正観測から円買い・ドル売りが先行しそうだ。一方で米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を
高い水準で維持するとの観測は根強く、円売り・ドル買いも出やすい。欧州中央銀行(ECB)の追加利上げ観測が強まれば、対ユーロで
の円売りが対ドルの取引に波及し、円の上値を抑えそうだ。
前週末のニューヨーク市場で円相場は1ドル=147円70~80銭と東京市場の同日17時時点(147円38~41銭)よりも安く終えたが、日本
時間11日早朝には一気に146円台後半まで水準を切り上げた。日銀の植田和男総裁が読売新聞とのインタビューで、マイナス金利の解除
時期などに言及。「経済・物価情勢が上振れした場合、いろいろな手段について選択肢はある」とし、「マイナス金利の解除後も物価目標の
達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」と述べた。年内にも判断できる材料が出そろう可能性があるとも示唆し、政策修正が早まるとの
思惑から円買い・ドル売りが入った。
政府関係者からの円安けん制も強まっている。鈴木俊一財務相は8日、足元の円安進行について「高い緊張感を持って注視し、過度な
動に対してはあらゆる選択肢を排除せず適切な対応を取りたい」と述べた。神田真人財務官も「ファンダメンタルズでは説明できない動きが
みられる」と指摘するなど発言トーンを強めており、政府・日銀による円買いの為替介入への警戒感から円買い・ドル売りが入る場面もあり
そうだ。
それでも、市場心理が円買いに大きく傾く可能性は低い。FRBが政策金利を長期にわたって高い水準で維持するとの見方が強まれば
円売り・ドル買いを促しやすい。今週は13日に8月の米消費者物価指数(CPI)、14日には8月の米卸売物価指数(PPI)や米小売売上高
など、米経済指標の発表が続く。
19~20日に開催される9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、FRB関係者は金融政策について発言を控えるブラックアウト期間
に入っている。9月会合では利上げを見送るとの予想が多いが、今週発表のデータ次第では11月のFOMCで利上げが実施されるとの思惑
が高まってもおかしくない。
14日に控えるECB理事会では、政策金利を現行の3.75%に据え置くとの予想が優勢となっている。ただユーロ圏のインフレの高止まりか
ら「ECBの追加利上げ観測が残った場合、ユーロに対する円売りが対ドルの取引にも波及しやすい」(岡三証券の武部力也氏)との指摘も
聞かれる。
海外では12日には8月の英失業率や9月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景気予測調査が発表される。15日には中国で8月の工業生産高や小売売上高などの経済指標が、米国では8月の米消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ)が発表になる。
2023/09/13 日本経済新聞 朝刊
国内金利への上昇圧力が続いている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは12日、0.72%と2014年1月以来の高水準を
付けた。市場関係者が日銀による政策修正の予想時期を前倒しする動きが背景にある。デリバティブ(金融派生商品)市場では、23年末に
もマイナス金利政策を解除するとの織り込みが進む。
12日の債券市場では長期金利の上昇が続き、前日の0.705%から一段と水準が高まった。日銀の植田和男総裁は、9日付の読売新
聞のインタビューでマイナス金利を解除する選択肢に言及。長期金利についても基本的に上昇(債券価格は下落)を容認する姿勢を示し、
市場では債券売りが優勢となっている。
幅広い年限で利回りが上昇した。20年債利回りは一時1.47%と9年4カ月ぶり、30年債利回りは1.725%と9年2カ月ぶりの高水準
に達した。日銀の政策修正をうけてマイナス金利解除観測が高まった23年1月の水準を上回った。
政策金利の見通しを反映しやすい新発2年物国債利回りも、1月以来の高水準となる0.05%まで上昇する場面があった。1月に付けた
0.055%を超えれば2015年2月以来、8年7カ月ぶりの水準となる。
市場参加者の間では見通し修正が相次ぐ。大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、マイナス金利解除予想を「25年半ば以
降」から「24年4月」に早めた。「原油高と円安の長期化は日銀にとって想定外だった。年度後半には物価が上振れ、賃上げ機運も継続す
る」と語る。
ドイツ証券もマイナス金利の解除予想を「24年12月」から「24年1月」に前倒しした。小山賢太郎チーフ・エコノミストは「日銀は10月の
展望リポート公表時に物価見通しを上方修正する」とみる。
短期金融市場では、マイナス金利の早期解除を織り込んだ取引も成立し始めた。
金融機関が日々、資金をやりとりする際に使う金利に、無担保コール翌日物金利(TONA)がある。この金利の3カ月物が将来どうなって
いるかを予測しながら取引する先物では、23年12月限の価格が足元で99.97程度と100を下回る。24年初め時点の3カ月物の金利は
年0.03%程度になるとの予想が反映されている。市場は日銀が今冬にマイナス金利を解除するとみていると解釈できる。
固定金利と変動金利を交換する翌日物金利スワップ(OIS)市場でも同様の動きが見られる。
野村証券の中島武信チーフ金利ストラテジストは「市場はマイナス金利解除に加え、1年以内に政策金利が0.1%まで引き上げられる
ことも非常に高い確率で織り込んでいる」と指摘する。
もっとも12日午後には長期金利が前日に比べ横ばいの0.705%まで低下した。2年債利回りは同0.005%低い0.035%、5年債
利回りが同0.015%低い0.27%まで下がる場面もあった。5年債入札で小さいほど好調とされる平均落札価格と最低落札価格の差(
テール)が前回から縮小した結果、需要の強さに安心した投資家の買いが広がった。
「市場の政策修正観測はやや過度な印象を受ける」(みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジスト)との見方も根強い。一方、21~
22日の金融政策決定会合でも何らかの動きがあるのではとの思惑も市場に広がる。政策修正を巡って相場が揺れる展開は続きそうだ。
2023/09/14 日本経済新聞 朝刊
日銀が13日発表した8月の企業物価指数は前年同月比3.2%上昇し、30カ月連続で前年同月を上回った。伸び率は鈍化しているが、
日銀内では物価目標の達成確度が高まってきたとの見方もある。長引く企業の価格転嫁は政策修正の後押しになる可能性もある。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。企業は仕入れ価格を販売価格に転嫁するため、消費者物価指数(CPI)の先
行指標としても注目される。
企業物価指数の前年同月比上昇率は2022年12月の10.6%をピークに8カ月連続で鈍化した。輸入物価の下落を背景に急ピッチで
伸び率は下がってきたが、8月の上昇率は7月(3.4%)から0.2ポイントと小幅な縮小にとどまった。
高水準が続く背景にあるのは原油価格の再上昇だ。8月は石油・石炭製品が前年同月比7.5%と大きく上昇した。政府の補助金縮小
の影響も出た。
円ベースの輸入物価は11.8%下落と7月(14.4%下落)よりマイナス幅が縮まった。先行きについても「年末にかけてマイナス幅は
縮小方向だろう」(SMBC日興証券の宮前耕也氏)との声が聞かれた。
飲食料品などで価格転嫁の動きは長引いている。チョコレートや米菓といった飲食料品や、パルプ・紙・同製品などで原材料コストを販
売価格に転嫁する動きがみられた。
SMBC日興の宮前氏は「企業物価はもうマイナスでもおかしくないが、輸入物価の上昇が非常に大きかったことから価格転嫁が複数
回続き、長引いている」と指摘する。日銀も「(消費者に近い)川下ではペースを落としながらもゆるやかな上昇が続いている」とみる。
価格転嫁の力強さは日銀の物価観にも反映されている。日銀の7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で23年度のCPIの見
通しについて「価格転嫁が想定を上回って進んでいることなどから、大幅に上振れている」と指摘した。
日銀の田村直樹審議委員は8月の講演で「(物価目標の)実現がはっきりと視界にとらえられる状況になった」と自信を見せた。植田
和男総裁も読売新聞のインタビューで将来的なマイナス金利解除の可能性に含みを持たせている。
2023/09/19 05:00 日経速報ニュース
【この記事のポイント】
・日米の中央銀行が今週、金融政策決定会合
・市場はFRBの利上げ見送りを確実視
・日銀はマイナス金利解除に向けた総裁発言に注目
日米の中央銀行が今週、相次ぎ金融政策を決める会合を開く。市場は米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見送りを確実視しており、
先行きの政策金利見通しを変えるかが最大の焦点だ。7月に政策修正した日銀はマイナス金利政策の解除に向けた植田和男総裁の
発言に注目が集まる。日米とも「次の一手」への距離を探る会合となる。
利上げ「あと1回」変わるか
FRBは19?20日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。FOMC前の最後の重要経済指標となった8月の米消費者物価指数
(CPI)の前年同月比上昇率は2カ月連続で加速した。米CPIはエネルギー価格の下落を背景に昨年6月の9%台をピークに順調に下
がってきていたが、足元ではインフレ再燃の兆しも出ている。
米国市場で14日、国際原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物が一時1バレル90ドル台と約10カ月ぶりの水準
に上昇した。サウジアラビアとロシアが12月まで自主減産を続けることで需給の逼迫懸念が台頭したためだ。原油価格の上昇はガソリ
ン価格の高騰を通じてインフレを長引かせる要因になる。
もっとも、現時点で金利先物市場は98%の確率でFRBは利上げを見送るとみている。CPIから極端な値動きの品目を取り除いて物価
の基調をみるクリーブランド連銀の「刈り込み指数」は4.5%、動きの遅い品目のみを集めたアトランタ連銀の「粘着インフレ指数」は5.3%と
いずれも6カ月連続で鈍化しているためだ。
むしろ関心は、同時に公表されるFOMC参加者の先行きの政策金利見通しに向いている。前回6月会合では2023年末の政策金利が
中央値で5.1%から5.6%に引き上げられた。現在の政策金利は5.25?5.5%のため、この予想が変わらなければ年内の利上げはあと1回
分となる。
24年末の政策金利見通しも注目だ。すでに01年以来の高水準に達している政策金利をいつまで維持するのか、利下げをどの程度進
める構えなのかを探る重要な目安になる。6月時点では24年に計1%の利下げをする予測を示していたが、市場では利下げ幅を縮める
との観測もある。
ただし、高インフレの沈静化への道筋がはっきりしない以上、FOMC参加者も利上げの終結を宣言するような見通しは出しづらいと読む
市場関係者が多い。パウエル議長は今後の金融政策について「データ次第だ」と繰り返しており、利上げの選択肢を残しながら時間をか
けて終着点を探ることになりそうだ。
一方、日銀はFOMC後の21?22日に金融政策決定会合を開く。日銀は7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の
運用を柔軟化し、長期金利の上限を事実上1%に引き上げたばかりだ。足元で長期金利は9年8カ月ぶりの高水準となる0.7%台に上昇
しているものの、上限には距離があり、再び修正を迫られる局面ではない。
むしろ、市場の関心はマイナス金利政策をいつ解除するかに向いている。植田和男総裁が読売新聞のインタビューでマイナス金利政
策を解除する選択肢に言及したためだ。しかもカギを握る賃金動向について年末までに判断材料がそろう可能性にも触れたため、市場
は遠くない時期に日銀が金融正常化に向かう可能性を意識し始めた。
田村直樹審議委員も8月末の講演で、物価目標の実現が見通せれば「マイナス金利の解除も選択肢の一つに入る」と述べ、判断時
期の目安として「24年1?3月ごろ」をあげた。高田創審議委員も9月に、特定の時期という議論ではないとした上で「この半年間はよく
見ないといけない時期ではないか」と述べていた。
インタビューでの植田総裁の発言は審議委員より踏み込んだことになる。QUICKの外国為替市場の月次調査(8月)の結果によると、
次の政策修正時期は2024年4月以降(31%)が最も多いが、「23年12月」と年内の修正を見込む予想も29%あった。会合では金融正常化
への道筋も議論する可能性がある。
もっとも、市場では植田総裁の発言は1ドル=147円台後半に下落している円安に歯止めをかけるための「口先介入」との見方もある。
末までにそろう可能性に言及した賃金動向も、24年の春季労使交渉前に具体的にどのような材料で判断するのか。植田総裁が記者会
見で真意をどう語るかが最大のポイントになる。
会合では7月のYCC修正後の市場動向も点検する。金利上昇を受けて日銀は11日、幅広い担保を裏付けに資金供給する「共通担保
資金供給オペ(公開市場操作)」の実施を発表した。ただ、直接的に長期金利を下げる効果がある国債買い入れに踏み込まなかったこと
で市場では「日銀が為替市場の動向に配慮している」との見方が広がった。
7月のYCC修正は「市場の見方がもう少し長期金利に反映される余地を広げようという措置」(植田総裁)だった。日銀内からは「ある
程度の上昇は覚悟の上だった」との声が聞こえるが、足元の金利上昇に植田総裁がどのような見方を示すかも注目だ。
日銀の物価見通しに変化がないかも先行きの政策変更を占う上で重要だ。日銀は23年度後半にCPIの前年同月比上昇率は2%を
下回るとしてきたが、植田総裁は鈍化のスピードが日銀の想定よりも遅いことを認めている。
8月の東京都区部の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比2.8%の上昇だった。上昇率は11カ月ぶりに2%台に下がった
ものの、約8割の品目が前年同月比で上昇した。足元の情勢を踏まえて植田総裁がどのような認識を示すか。物価目標達成への自信
度をはかる目安になる。
利上げの終着点を探るFRBと少しずつ金融正常化に向けた歩を進めようとしている日銀の今回の判断や情報発信は、金融市場の前
提条件が変わる転機になり得る。
2023/09/19 19:38 日経速報ニュース
債券市場で、日銀によるマイナス金利政策の解除の見方が浮上している。岸田文雄内閣の支持率が伸び悩み、衆院解散・総選挙への
警戒感が市場で弱まっているのが要因だ。日銀が選挙日程に配慮する必要性は薄れ、政策修正に踏み切りやすくなるとみる市場参加者
は少なくない。
固定金利と変動金利を交換する翌日物金利スワップ(OIS)市場で13日、異変が生じた。先々の政策金利の市場見通しを反映する金融
政策決定会合間取引。2023年12月18?19日会合から24年1月22?23日の会合までの期間を対象とした取引レートが、23年7月下旬の
会合後初めて0.01%付近まで上昇した。23年9?10月、10?12月の会合間取引の金利はなおマイナス圏だ。市場が今冬のマイナス金利
解除観測を織り込み始めた。
今回の金利上昇の背景には、政治的な要因がある。第1に、第2次岸田再改造内閣の発足だ。
岸田首相は13日、新内閣の顔ぶれを発表。過去最多となる5人の女性が入るなど閣僚19人のうち13人を入れ替えたが、サプライズ感は
弱く支持率浮揚に対する市場の期待は高まらなかった。日本経済新聞社とテレビ東京が13?14日に実施した緊急世論調査では内閣支
持率が42%と前回調査(8月)から横ばいだった。
支持率が上がらなければ、解散・総選挙は難しいとの見方は多い。「次の解散想定時期は24年6月の通常国会会期末が濃厚」(SMBC
日興証券の森田長太郎シニアフェロー)など、選挙の実施時期が遠のいたとの声が強まり、マイナス金利の解除の観測を誘発した。
日銀は国政選挙前に金融政策の修正に踏み切りづらいとされる。政策修正が時の政権に利害を生む可能性を排し、政治的な中立性を
保つためだ。10月にも召集する臨時国会や24年初めの通常国会で解散・総選挙が実施される可能性が下がれば、今冬にかけ日銀が政
治日程に配慮して政策修正を見送る必要性は薄れる。
市場では「日銀は一定期間の『フリーハンド』を得て、マイナス金利解除に踏み切りやすくなった」(SMBC日興証券の丸山義正チーフマー
ケットエコノミスト)、「解散が遠のき海外投機筋がマイナス金利解除を織り込む度合いは強まった」(東海東京証券の佐野一彦チーフ債券
ストラテジスト)との声がある。
第2に、これまで大規模な金融緩和を推進してきたとみられている最大派閥・安倍派の動向だ。植田和男総裁がマイナス金利解除の選
択肢に言及したという9日付読売新聞インタビューに関し、安倍派幹部の世耕弘成参院幹事長は12日、「金融緩和の継続が趣旨だと理解
している」と記者会見で述べた。
日銀が7月会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正した際、「2%の物価安定目標の達成までは緩和姿勢は変え
ないというコミットメントが守られるか注視したい」(世耕氏)と述べ早期の引き締めをけん制していた。当時と比べると引き締め警戒のトーン
が弱まり、日銀がマイナス金利解除に踏み切る余地を生んでいるという。
野村総合研究所の井上哲也シニアチーフリサーチャーは「円安が消費者に打撃を与えている足元の状況を考えると、リフレ派も一方的な
緩和継続を訴えづらい」との見解を示す。今回の内閣改造でも安倍派の入閣は増減なしの4人にとどまった。
当面は、今秋の臨時国会の行く末が焦点だ。大方の予想通り解散・総選挙が見送られれば、脱マイナス金利観測は強まり金利上昇(債
券価格は下落)や円高への圧力が生じうる。仮に解散・総選挙が実施されれば、「経験則や経済対策による景気刺激効果から日本株に買
いが集まる」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)可能性がある。
選挙の有無や時期を巡る見通しが金融市場の波乱要因となってきた。
2023/09/21 日本経済新聞 朝刊
家計の金融資産が拡大している。日銀が20日発表した2023年4~6月期の資金循環統計によると、23年6月末時点の家計の金融
資産は前年同期比4.6%増の2115兆円だった。今春以降の株価上昇が資産を押し上げた。
家計の金融資産は初めて2100兆円を超え、過去最高を更新した。個人の金融資産を最も押し上げたのは株式だ。6月末時点の残高
は268兆円と1年前より26%増えた。日経平均株価は4~6月に5147円(18%)上昇して保有時価が膨らんだ。日本株の資本効率改
善や割安感に着目した海外投資家の買いが広がった。
ただ4~6月期の個人株式は取引ベースでは2.9兆円の純流出となった。純流出に転じるのは3期ぶり。個人投資家は相場の流れに
逆らう「逆張り」傾向が強い。日本株相場が33年ぶりの高値水準に浮上するなか「長く保有して評価益が出た銘柄の利益確定売りが膨
らんだ」(みずほ証券の倉持靖彦マーケットストラテジスト)。米国株などを含む対外証券投資も1.4兆円の純流出だった。
投資信託の残高は株高を主因に15.9%増加した。フローでは1.5兆円の純流入となり、株式と対照的に13期連続の流入超だった。
インデックス型投信などへの積み立て投資が堅調とみられる。投資信託協会のまとめでも、上場投資信託(ETF)を除く公募株式投信の
残高は8月に7カ月連続で過去最高を更新した。
ただ、足元では物価上昇率が高止まりしており、実質で見た金融資産の価値はそれほど増えていないとの見方もできる。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストの試算では、1年間の物価上昇を考慮した実質ベースでは個人の金融資産残高は前年
同期比0.6%増にとどまるという。上野氏は「資産運用を検討する重要性が高まっている」と指摘した。
2023/09/21 日本経済新聞 朝刊
松野博一官房長官は20日の記者会見で、日銀の統計で家計の金融資産が過去最高の2115兆円となったのを受け、新しい少額
投資非課税制度(NISA)の普及を訴えた。貯蓄を投資につなげるため「新しいNISAの普及促進、金融経済教育の充実などを進める」
と強調した。
2023/09/21 日本経済新聞 朝刊
海外投資家の多くは9月上旬に夏休みを終えたというのに、日本株は方向感の乏しい展開が続く。日経平均株価は3カ月以上も約2000円
の狭い値幅で上下する。ただ、日本株の勢いはこれまでかというと、必ずしもそうではなさそうだ。ベールに包まれ外部からは実態が見えにくい
中東のオイルマネーが、日本株の本格買いに向けて準備を進めている。
「日本拠点の開設を検討している」。ある証券関係者は最近、中東の政府系ファンド(SWF)からこう告げられた。既に日本人を採用した中東
SWFも複数知る。「彼らは情報管理に厳しく、なかなか詳細な手の内を明かさない。しかし日本拠点の開設や日本人採用は隠しようがない事
実で、日本株への関心の高まりを示している」
調査会社のグローバルSWFが公表した2023年版のリポートによると、中東SWFの運用残高は計4・8兆ドル(約710兆円)。東証プライム
市場の20日時点の時価総額(約870兆円)の8割の規模だ。足元の原油価格の上昇で運用規模は膨らんでいる可能性がある。日本株に向
かう資金は一部でも、母数が大きいだけに、多少の売買でも影響は大きい。
なぜいま日本株に関心があるのか。同関係者によると、デフレ脱却とコーポレートガバナンス(企業統治)の劇的な改善の2点への期待が大
きいという。
「他の国にはない日本独自の買い材料だ」。大和証券の阿部健児チーフストラテジストもこの2点を評価する。9月に訪日した中東SWFの担
当者と会い日本株への関心の高まりを直接感じ「買い増し余地はあるのでは」と話す。10月下旬に複数の中東SWFを出張訪問する予定だ。
世界各国の公的運用機関を顧客に持つシュローダー・インベストメント・マネジメントは8月、日本株の見通しを世界各国の株式のなかで唯一
、「強気」に引きあげた。福沢基哉執行役員は「他の国・地域が失速するなか、日本株はライジングスター(新星)として海外投資家の目に留ま
るようになってきた」と話す。
中東SWFの運用スタイルは5~10年後などのリターンをみる長期運用がほとんどだ。買うときは「短期の値動きやバリュエーション(投資尺
度)はあまり気にせず大胆に買ってくることも多い」(大手証券)とされる。直近では2023年春にも買い観測が出たほか、過去を遡ると1980
年代や2000年代などにも大きく買う場面があったとされ、いずれも相場を押し上げる原動力となった。
たとえばサウジアラビアのSWFのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)。関東財務局に提出した大量保有報告書をみると、23年春にか
けてネクソンや任天堂などの株を買い増している。世界的に脱石油の動きが続くと予想されるなか、同国は石油依存の脱却に動いている。PIF
を直轄する同国の実力者、ムハンマド皇太子は日本のアニメやゲームへの造詣が深いとされ、その意向が銘柄選択に表れている可能性がある。
前出の証券関係者によると、複数の中東SWFが年内に訪日を予定しているという。なかには日本のアニメ好きの子どもを連れて、親子で訪日
する人もいるようだ。「非常にどっしり構えていて、本格的に日本株を買うとしたらこれから。パッシブ投資も相当程度ある」という。
実際にどれだけのお金が日本株に振り向けられるかは未知数だが、日本株買いをもくろむオイルマネーの胎動は、少なくとも日本のプレゼンス
が高まってきた証左であることは読みとれる。膠着が続く相場の転換点は遠くないかもしれない。
2023/09/21 09:36 日経速報ニュース
(9時35分、プライム、コード6502)東芝が前日終値(4597円)をやや上回る水準での小動きとなっている。21日朝方、日本産業パートナーズ
(JIP)など国内連合によるTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。TOBは1株4620円で8月8日から9月20日まで実施し、成立
に必要だった3分の2を上回る応募があった。最近の株価はTOB価格に近い水準での推移が続いており、成立は織り込み済みとの見方
から株価の反応は限られている。
株主総会などの手続きを経て、東芝株は年内にも上場廃止となる見通し。証券ジャパンの大谷正之調査情報部部長は「TOB成立は既定
路線」と指摘。東芝傘下のキオクシアの人員削減なども一部で報じられているが、TOB成立や上場廃止が既に織り込まれているとあって新
たな売買材料と受け止める雰囲気は乏しく、大谷氏は「上場廃止まではTOB価格近辺の水準で推移するだろう」とみていた。
2023/09/22 08:45 日経速報ニュース
22日早朝の東京外国為替市場で、円相場は上昇している。8時30分時点は1ドル=147円53~54銭と前日17時時点と比べて71銭の
円高・ドル安だった。日銀がきょうまで開く金融政策決定会合の結果公表や植田和男総裁の記者会見を控え、持ち高調整目的の円買い
・ドル売りが優勢となっている。
総務省が8時30分に公表した8月の全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.1%上昇と、QUICKがまとめた市場予想の中央値
(3.0%)を上回った。早期の緩和修正への思惑から円は8時30分ごろに一時147円51銭近辺まで買われた。
円は対ユーロでも上昇している。8時30分時点は1ユーロ=157円25~30銭と、同71銭の円高・ユーロ安だった。
ユーロの対ドル相場は横ばい圏で推移している。8時30分時点は1ユーロ=1.0660ドル近辺と同0.0005ドルのユーロ高・ドル安だった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-22/S1BDG0T0AFB401?srnd=cojp-v2
日本銀行は22日の金融政策決定会合で、長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)政策を軸とした現行の大規模な金融緩和
政策の維持を全員一致で決めた。
YCCについては短期政策金利をマイナス0.1%とし、長期金利(10年物国債金利)はゼロ%程度に誘導する方針を維持。長期金利の許容変
動幅は上下0.5%程度をめどとし、1.0%の水準で10年物国債を無制限に買い入れる指し値オペを毎営業日実施するなどのオペの運用も据
え置いた。先行きの政策指針であるフォワードガイダンスの表現にも変化はなかった。
ブルームバーグがエコノミスト46人を対象に6-12日に実施した調査では、全員が今回会合での政策維持を予想していた。今週に入り一時
昨年11月以来の1ドル=148円台まで円安が進んだ中で、市場の一部には政策修正の思惑もくすぶっていたが、経済・物価認識に大きな
変化はなく、緩和継続姿勢を改めて示した形だ。
植田和男総裁は9日付の読売新聞のインタビューで、賃金と物価の好循環を見極めるのに十分な情報やデータが年末までにそろう可能性
はゼロではないと指摘。賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、マイナス金利政策の解除を含めていろいろな
オプションがあるとした。市場では早期の政策正常化観測が浮上しており、午後3時半からの記者会見での総裁の発言が注目される。
日銀会合結果の発表を受けて、東京外国為替市場では円が売られる展開となっている。発表前のドル・円相場は147円70銭台で推移し
ていた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は20日、主要政策金利の据え置きを決めた。一方で、年内あと1回追加で金利を引き上げ、その後は
高水準の金利をより長期にわたって維持する公算が大きいことを示唆した。FOMCのタカ派的スタンスを受けた米金利上昇を背景に、外
為市場では日米金利差を意識した円売り・ドル買い圧力がかかりやすくなっている。
現在の政策運営方針
日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用
長期金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債を買い入れ
長期金利の変動幅は上下0.5%程度をめどとし、長短金利操作についてより柔軟に運用する。10年物国債金利について1.0%での指し値
オペを明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日実施する
金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買い入れを継続するとともに、各年限で機動的に買い入れ
額の増額や指し値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する
ETFとJ-REITはそれぞれ年間約12兆円、約1800億円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じて買い入れ
CPは約2兆円の残高維持。社債は感染症拡大前と同程度のペースで買い入れ、残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へ徐々に戻して
いく。ただし、社債の買い入れ残高の調整は発行環境に十分配慮して進める
2023/09/22 16:52 日経速報ニュース
日銀は22日に開いた金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持を全会一致で決めた。長期金利の事実上の上限を1%とする長短金利
操作(イールドカーブ・コントロール)や、マイナス金利政策、上場投資信託(ETF)の買い入れなどの現行の緩和策を続ける。記者会見した
植田和男総裁は「政策修正時期の決め打ちは到底できない」と述べた。
植田総裁は「物価目標の実現が見通せる状況にはない。粘り強く金融緩和を続けていく」と強調した。日銀は7月会合でYCCを修正し、
長期金利の上限を事実上1%に引き上げた。植田総裁は「効果があらわれているのか、あらわれていないのかをみるには時期尚早だ」と指
摘した。
円は一時148円台に
大規模緩和を続ける日銀と金融引き締め局面にある欧米中銀との違いが改めて意識され、外国為替市場では記者会見中に円安が進ん
だ。日銀の発表直前には147円台後半で推移していた円は、一時1ドル=148円台を付けた。植田総裁は「市場の動向だけでなく経済、物価
見通しに影響を及ぼすという観点から注視している」と語った。
植田総裁は「賃金上昇を伴う2%の物価上昇は見通せない」と強調し、市場の早期修正観測をけん制。一方で、今後の政策変更につい
て問われ「物価目標の実現が見通せる状況になれば、YCCの撤廃やマイナス金利の修正を検討することになる」と述べた。さらに「どれを
どういう順序で変更していくかは、さまざまなオプション(選択肢)がある」と話した。
賃金は「最重要な要素」
総務省が同日発表した8月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比で3.1%の上昇だった。物価上昇の継続性を判断するう
えで、賃金の上昇が「最重要な要素の1つ」(植田総裁)となる。日銀は上昇率が一時的に縮小した後、企業の賃金・価格設定行動の変化
などを背景に「再びプラス幅を緩やかに拡大していく」とみている。
日銀は国内景気については、企業収益が全体として高水準で推移するもとで、設備投資や個人消費が増加しているとの見方を示した。
先行きは海外経済の回復ペースの鈍化で下押し圧力を受ける一方、ペントアップ(先送り)需要の顕在化などに支えられ、緩やかに回復し
ていくとみる。
今後のリスク要因については「海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確
実性はきわめて高い」とした。
【関連記事】
・日銀、追加の緩和修正見送り 金融政策の現状維持を決定
・円安対応へ資金拡大方針の撤廃案 日銀の次の一手に思惑
・消費者物価、8月3.1%上昇 伸び横ばいで高止まり
2023/09/23 日本経済新聞 朝刊
日銀がいつ長短金利操作撤廃やマイナス金利解除に踏み切るか。22日の金融政策決定会合では動かなかったが、国内では賃上げが進み
本格的なデフレ脱却の芽が出ている。積極的な賃上げに動ける銘柄には業績上振れ期待もあり、買いが集まる。株高の持続力が高まるかは
賃上げの裾野の広がりがカギを握る。
「企業の賃金、価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きが見られ始めているが、物価目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況に
は至ってない」。植田和男総裁は会合後の記者会見で指摘した。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「地に足がついた慎重な判断だ。名目賃金が上がっていることもあり、実質賃金がプラス
圏に持ち直すまでもう少しの辛抱という考えだろう」と受け止めた。植田氏は賃金動向を政策判断のための最重要要素の一つとしている。
日本労働組合総連合会がまとめた2023年春闘での賃上げ率は3・58%と、30年ぶりの高い伸び率だった。基本給を引き上げるベースアッ
プ(ベア)だけでも2・12%伸びた。日経平均株価は7月3日に3万3753円と33年ぶりの高値をつけ、ともに「失われた30年」からの脱却を印
象づけた。ある外資系運用会社幹部は「日銀が政策修正を考慮できるほど日本経済が回復し、外国人投資家のジャパン・パッシングが払拭さ
れつつある」と話す。
賃上げ率と日経平均の年末値の推移をみると、軌道はおおむね重なる。最高値をつけた1989年12月29日から間もない90年春闘での賃
上げ率は5・95%と、この35年で最も高い。2000年代に入り賃上げ率が2%を割り込むと、日経平均も低迷した。
足元の賃上げ拡大の背景には、企業が原資となるキャッシュを稼ぐ力を高めたことが大きい。野村証券の清水康弘シニア・クオンツ・アナリス
トは「業績見通しが良い企業が積極的な賃上げに動く傾向がある」と分析。「積極的に賃上げする企業は経営陣が利益成長を見込んでいると考
えられ、業績予想を上方修正する可能性も高い」(清水氏)
そんな積極賃上げで買いを集めるのが日東紡だ。23年春闘での賃上げ率はベア部分で3・00%だった。22日時点での株価は3月末比で6
3%高と日経平均(16%高)を大きく上回る。8月には24年3月期の連結純利益を前期比62%増の45億円に上方修正した。今期に入り、生
成AI(人工知能)関連のデータセンター向けに低誘電ガラスの需要が伸びているという。
ほかにも黒崎播磨は3月末比48%高い。主力の耐火物製品でコストアップ分の価格転嫁が進んだことなどから、7月に24年3月期の業績予
想を上方修正した。
市場では賃上げの広がりはまだ不十分との見方が大半だ。中小組合の23年春闘での賃上げ率は3・23%と全体より0・35ポイント低い。ニ
ッセイアセットマネジメントの吉野貴晶投資工学開発センター長は「日本株の一段高には出遅れている中小企業でも賃上げが進み、全体が底
上げされる必要がある」と話す。
岸田文雄首相は日本時間22日未明、米ニューヨークで投資家向けに講演し「構造的な賃上げ」と「持続可能性強化のための官民投資」に重
きを置いた経済対策をまとめると説明。投資家に「日本への投資を強く求めたい」と呼びかけた。賃上げの継続は日本株の行く末を占う重要な
要素だ。
2023/09/24 15:00 日経速報ニュース
日米中央銀行の政策決定会合を終え、今週は円安圧力が高まりそうだ。米金利高を受けて日米金利差が10カ月ぶりの水準まで拡大して
おり、ドルに資金が流れやすい。1ドル=150円の大台が迫るなか、市場は円買い介入に対する警戒を強めている。株式市場も金利の動きに
神経質になっている。
先週までに開かれた一連の中銀会合で、市場に最も大きな驚きを与えたのは米連邦準備理事会(FRB)だった。米連邦公開市場委員会(F
OMC)参加者による2024年末の政策金利の見通しが、中央値で5.1%と前回から0.5%も引き上げられたからだ。米政策金利が当面高止まり
するとの見方が広がり、市場参加者の「利下げシナリオ」に狂いが生じた。
米ゴールドマン・サックスは24年4?6月から10?12月に利下げ開始時期の見通しを変更した。米長期金利は22日、16年ぶりに節目となる
4.5%まで上昇した。投資家は高金利長期化への備えを急いでいる。
一方、日銀は金融緩和政策の現状維持を決めた。植田和男総裁は次の政策修正の時期について「到底決め打ちできない」とし、市場で浮
上していた早期のマイナス金利政策解除の思惑を打ち消した。これを受け、翌日物金利スワップ(OIS)市場が織り込むマイナス金利政策解
除の時期は来年の1月から3月にずれ込んでいる。
【関連記事】緩和修正「到底決め打ちできぬ」 日銀、賃上げ見極めへ
日米中銀の姿勢の差を映し、日米の長期金利の差は3.7%と昨年11月以来10カ月ぶりの水準まで拡大した。これが円安圧力となり、円相
場は1ドル=148円40銭前後と10カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけた。
日本は仮にマイナス金利を脱却しても、潜在成長率の低さなどから利上げの幅は小さくならざるを得ないとの見方が多い。FRBが24年以降
も政策金利を高く保つ姿勢を鮮明にするなか、市場参加者の間で円の「売りやすさ」が意識されている。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ス
トラテジストは「米景気の強さもあり、当面は円安・ドル高が進みやすい」とみる。
ここからさらに円安が進むとすると、1ドル=150円の大台が間近に迫ることになる。150円台は、政府・日銀が2営業日にわたり6.3兆円の円
買い介入を実施した昨年10月後半以降は一度も付けていない。
政府は口先介入に動いている。財務省の神田真人財務官は20日、「海外の当局とりわけ米当局とは日ごろから極めて緊密に意思疎通を
図っており、過度な変動が好ましくないとの認識を共有している」と述べた。
岸田文雄首相も21日、米国の投資家向け講演で為替の動きに言及した。「引き続き高い緊張感を持ち、過度な変動に対してあらゆる選択
肢を排除せず、適切な対応を取る」と強いトーンで円売りをけん制した。
こうした動きを受け、市場でも「円相場が150円まで下落するか、1日の相場変動が1%を超えると、政府が為替介入に踏み切る」(りそなホ
ールディングスの石田武為替ストラテジスト)との見方がある。
米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋は対ドルで円を1兆2700億円程度売り越している。一時は1兆円を下回っていた売り越し
幅が足元では拡大基調にある。介入があると、この円売りポジションが巻き戻されて急激な円高が進む公算が大きい。
今週は岸田首相が25日にも経済対策の柱を表明する。対策規模によっては「国内のインフレ圧力になる」(みずほ証券の小林俊介チーフ
エコノミスト)。インフレの高止まりが日銀のマイナス金利脱却の思惑を呼ぶと、円高の要因となりそうだ。
株式市場でもFOMCの結果を受けて、米金利の高止まりが警戒されている。米ダウ工業株30種平均は22日、2カ月半ぶりの安値をつけた。
ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジストは「世界の株式相場のけん引役だった米主要ハイテク株の調整が今後も続く」と予想する。
日経平均株価への影響度が大きい半導体関連株は、米ハイテク株との連動性が高い。米国の株式市場が金利動向に敏感な間は、日本
でも上値を狙う動きは限定的とみられる。一方、為替の円安は輸出企業の業績にプラスで、相場を売り崩す展開になりにくい。指数は膠着
感を強める可能性がある。
2023/09/25 05:00 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は金融緩和の早期縮小観測をひとまず打ち消したが、行内はインフレ目標の安定達成に自信を深めつつある。構造
的な人手不足による賃上げが長く続くとみており、年内の追加の緩和縮小も選択肢となる。米連邦準備理事会(FRB)の動向など、3つの
変数を見極めながら最終判断することになる。
「現時点では経済・物価を巡る不確実性は極めて高く、政策修正の時期や具体的な対応は到底決め打ちできない」。22日の記者会見で
植田総裁は早期の緩和縮小観測を火消しした。
日銀は7月の前回会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を見直し、長期金利の上限を事実上1%に引き上げたばか
りだ。この上限をなくすYCCの撤廃観測が強まると、国債売りが殺到して長期金利も一気に上限の1%に達してしまう。
YCCという繊細な政策を抱える日銀は、市場に追い込まれることだけは避けなければならない。植田氏が自らの発言で広がった緩和縮小
観測を強く火消しした背景には、こうした事情がある。
ただ、それでも日銀は金融緩和の出口に向けて自信を深めつつある。日銀関係者が注目したのは、植田氏の記者会見があった22日朝に
発表された8月の消費者物価指数統計だった。サービス価格の上昇率が2カ月連続で2%を上回り、賃金上昇が物価を安定的に押し上げる
構図がみえ始めている。サービス物価の上昇率が2カ月続けて2%を超えるのは、消費増税の時期を除くと29年10カ月ぶりのことになる。
日銀は10月末に次回の金融政策決定会合を開き、そこで「展望リポート」を公表する。焦点は24年度と25年度の物価見通しで、いずれも
インフレ率が2%を超える予測となれば、市場は改めて早期のYCC撤廃とマイナス金利解除を織り込むようになるだろう。植田氏の22日の
慎重な物言いは、次回会合まで市場を落ち着かせる時間稼ぎにすぎない。
それでも日銀の緩和縮小を左右する変数が3つある。
一つはFRBだ。米国は原油価格の再上昇でインフレが思うように収まってこない。FRBの金融引き締めが長引きそうで、世界的にも長期金
利に上昇圧力がかかっている。こうした局面で日銀がYCCを撤廃してしまうと日本の長期金利も想定外に上昇しかねない。日銀は22年12月
23年7月とこれまで2回、緩和縮小に踏み切ってきたが、いずれもFRBが利上げペースを緩めた局面だった。日銀の次の判断も、米国の金融
政策が左右することになる。
もう一つは円相場だろう。1ドル=148円台という足元の円安水準は、岸田文雄首相が為替介入の可能性をそれとなくほのめかすほど、ギリ
ギリの攻防ラインにある。一段の円安が進むようなら日銀の動きも前倒しとなり、逆に円安が落ち着けば日銀にとっては様子見できる時間が
確保できることになる。
見逃せない3つ目の変数は国内政治情勢にある。解散総選挙の機運が出てくれば、日銀は緩和縮小に動けない。それでなくても安倍派は
いまなお早期の緩和縮小に反対しており、24年度予算編成を控えて財務省も日銀の動向に神経をとがらせている。日銀は00年のゼロ金利
解除、06年の量的緩和解除で政治の反発を招き、安倍晋三氏ら痛烈な日銀批判論者のその後の台頭につながったトラウマもある。
世界の中央銀行は非伝統的な金利や為替のコントロール策を仕掛けたが、その出口で少なからず失敗をおかしている。直近では21年、オ
ーストラリア中銀がYCCの出口で金利制御に失敗して市場が大混乱した。スイス中銀も15年、通貨コントロール策の解除に失敗し、為替レー
トが急上昇して経済に打撃をもたらした。いずれも市場の攻撃で中央銀行が追い込まれ、金利や通貨のコントロール策を放棄せざるをえなくな
ったのが実際だ。
日銀は今のところ市場の混乱を招かずにYCCの出口に緩やかに向かっている。それは豪中銀やスイス中銀と異なり、市場に追い込まれる
前に動いているからだ。22年12月も23年7月も、いずれも緩和縮小観測が極めて小さいタイミングを見計らって政策変更を決断した。追い込
まれる前に動くのがYCCという政策を抱える今の日銀の鉄則だとしたら、市場は次も虚を突かれることになる。
2023/09/25 07:31 日経速報ニュース
今週(25~29日)の債券相場は弱含みそうだ。日銀は21~22日に開いた金融政策決定会合で現行の金融政策を維持した。だが政策修正
観測は根強く、引き続き国内金利には上昇圧力がかかりやすいだろう。市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは0.76%
程度まで上昇余地があるとの予想が出ていた。
日銀は21~22日の金融政策決定会合で現行の金融緩和政策の維持を決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、長短金利操作(イ
ールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃やマイナス金利政策の修正については「物価目標の実現が見通せるようになったら考える」と述べ
た。10月以降の政策修正の思惑は根強く、今週も金利の先高観は残りそうだ。
前週の長期金利は前の週に比べて0.045%高い(債券価格は安い)0.745%で終えた。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期
化するとの見方から米長期金利が上昇し、国内債にも売り圧力がかかった。日銀の金融政策決定会合の結果発表を控え、国内債には持ち
高調整の売りが出やすかった。
財務省は26日に40年債(発行予定額7000億円)、28日に2年債(同2兆9000億円)の入札を実施する。日銀が早期に緩和を修正するとの
観測がくすぶり、投資家のリスク許容度は高いとはいいがたい。こうした状況から市場では40年債について、「デュレーション(元利金の平均
回収期間)が長いため、需要が集まるか一定の不安がある」(国内銀行の債券担当者)との声があった。29日には3カ月物国庫短期証券(T
B)入札が予定されている。
週内は米国でも入札が複数予定されている。26日には2年債、27日には5年債、28日には7年債入札が実施される。米国で債券需給の
緩みが意識されやすいのも、国内金利の上昇を促しそうだ。
日銀による国債買い入れオペ(公開市場操作)は27日に予定されており、対象は「3年超5年以下」「5年超10年以下」「10年超25年以下」
「25年超」となっている。29日夕には10~12月分の国債買い入れオペの運営方針(オペ紙)を公表する。オペでの買い入れ額を維持すれば、
需給の引き締まりが意識されて債券相場の支えとなるだろう。
週内は25日に日銀の植田総裁が大阪経済4団体共催懇談会に出席して記者会見するほか、内田副総裁が全国証券大会であいさつする。
総務省は29日に9月の都区部消費者物価指数(CPI)を発表する。海外では29日に9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値や8月の
米個人所得・個人消費支出(PCE)が発表になる。
米国でも要人の発言機会が相次ぐ。26日にはボウマンFRB理事、28日にはクックFRB理事がそれぞれ講演する。28日はパウエルFRB
議長が討論会に参加し、29日にはウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁があいさつする。
2023/09/25 10:24 日経速報ニュース
25日午前の国内債券市場で長期金利は低下(価格は上昇)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.010%低い0.735%を
つけた。米国では22日発表の9月の米購買担当者景気指数(PMI)速報値を受けて景気減速が意識された。その後に米金利が低下し、国内
債にも買いが及んでいる。日銀が21~22日に開いた金融政策決定会合で現行の金融政策を維持したのを受け、債券に買いが入りやすい面
もある。
2023/09/25 12:23 日経速報ニュース
25日午前の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前引けは前週末比187円(0.58%)高の3万2590円だった。日銀による早期の金融
政策修正の観測が後退し、海外短期筋などによる買いが優勢になった。値がさの半導体株などの上昇が日経平均を押し上げたが、市場で
はこれまで強含んでいた銀行などバリュー(割安)株の下落を不安視する声も聞かれる。
前週末の米株式相場が下落したにもかかわらず、午前は東証プライムの7割強にあたる1360銘柄が上昇した。日銀の緩和維持自体は市
場予想通りだったが、植田和男総裁は会見で政策修正の時期について「到底決め打ちできない」と述べた。緩和の継続という日本の独自要
因が相場全体を押し上げた格好だ。東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリストは「政策修正を見込む関係者は少
なかったが、短期的な持ち高の巻き戻しが出た」と話す。
市場では「日本株の上昇基調は崩れない」との見方が再び広がりつつある。目先は3月期決算企業の中間配当の権利付き最終売買日で
ある27日までは配当狙いの買いが支えとなりそうだ。ただ、その後は権利落ちに伴う需給悪化が意識されやすい。
気掛かりなのはバリュー株の先行きだ。今年は特に顕著な上昇を演じてきただけに反動が懸念される。午前は日銀による政策修正の後退
も売りに拍車がかかり、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)や三井住友フィナンシャルグループ(8316)など銀行株は全面安となった。
配当利回りの高さなども追い風に売り方の買い戻しによる「踏み上げ相場」を演じてきた日本郵船(9101)や川崎汽船(9107)、上場来高値圏
のトヨタ自動車(7203)も軟調だった。市場では「高配当銘柄は株価が強含んでいただけに、配当を受け取る前に手じまい売りを出す投資家も
多そうだ」(国内証券)との声が聞かれた。
東証株価指数(TOPIX)が33年ぶりの高値圏に浮上してきたけん引役は、時価総額の大きいバリュー株だった。ただ「PER(株価収益率)で
みると、バリュー株の一段高を正当化するのが難しくなってきた」(岡三証券の松本史雄チーフストラテジスト)との指摘もある。需給面では月末
にかけて配当の再投資といった支援材料もあるが、今後は「配当ラリー」の一巡も含め、物色の転機が訪れるかどうかを見極める局面となりそ
うだ。
2023/09/26 日本経済新聞 朝刊
日銀の植田和男総裁は25日午後に開いた大阪市内での記者会見で、為替動向について「(日銀の)経済、物価見通しにどういう影響を
及ぼしていくかは常に非常に注意して見ている」と述べた。25日の東京外国為替市場で円相場は対ドルで年初来安値をつけている。「政
府とも緊密に連絡をとって(影響を)調査、分析する」とした。
日銀は22日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めた。市場が金融引き締め局面が続く米国との違いを改めて意識
したことが円売り・ドル買いにつながっている。円安は国民負担となる物価高を後押しする側面もあり、政府内の警戒は根強い。
植田総裁は「為替についてはファンダメンタルズ(経済の基礎的要件)に沿って安定的に推移するのが望ましい」とする一方、「直接為替
相場を左右するような金融政策運営はしない」との考えも示した。
岸田文雄首相は25日、円安が進む為替市場について「引き続き高い緊張感を持って注視したい」と語った。首相官邸で記者団の質問
に答えた。
「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だ。過度な変動は望ましくない」とも指摘した。
[東京 27日] - 昨年、インフレに対する初動が遅れた米連邦準備理事会(FRB)の誤算の一つが、人々のインフレ期待の高まりだった。
2021年にニューヨーク連銀のラッド氏が「人々のインフレ期待が実際のインフレ率に影響を及ぼすという説は、根拠が弱い」という論文を
発表し、話題となった。
しかし、現実には期待インフレ率の上昇が自己実現してしまった。人々がインフレを予想することで、企業は値上げしやすくなった。また、
インフレへの不安が大幅な賃上げ要求につながり、これを吸収するべく企業は商品やサービスの価格を引き上げた。現在、進行中の全米
自動車労組(UAW)が 提示している4年間で36%という賃上げ要求も、人々の将来のインフレ懸念が背景にあると思われる。
<日本のインフレ期待計測、データ不足の問題>
だが、現在インフレ期待でより大きな問題を抱えるのは、日本かもしれない。まずはデータ不足の問題である。日本には、米ミシガン大学
の消費者サーベイのような、詳細で長期にわたる個人のインフレ予想のデータはない。
市場のインフレ予想自体は、民間エコノミスト経済予測ESPフォーキャストや、物価連動国債と普通国債の利回り差から求めるブレークイ
ーブン・インフレ(BEI)率がある。しかし、ESPフォーキャストは、専門家であるエコノミストの予想であり、BEIも機関投資家らが売買する
国債を用いて計測される。いずれもプロの予想を表すものであり、BEIでは債券の需給も影響する。一般の消費者のインフレの体感の把
握には不十分である。
消費者向けの物価関連のサーベイ・データとしては、内閣府の「消費動向調査」や日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」がある。
だが、米ミシガン大のサーベイが1978年まで遡れるのに対し、これらのデータは歴史が浅い。
しかも、「消費動向調査」の物価上昇率は「2%以上5%未満上昇」などレンジでの回答になっている。日銀の調査は具体的な数字での
回答を求めているが、この形式になったのは2004年からと蓄積データが少ない。
さらに、各解答について年齢・学歴・性別等の属性ごとの内訳開示もない。個人の予想はプロほど適格ではないことが多いことから、予想
を詳しく聞いても仕方がないという考え方もあるだろう。しかし、消費を行う主体は個人であり、その予想は、数字が当たるかどうかではなく
その変動そのものに意味がある。
<1年後の物価予想、日本は10%>
そして、足元のデータを見ると、日本のインフレ期待には不安な点がある。直近(7月発表分)の日銀の「生活意識アンケート調査」の1年後
の物価予想は、上昇の勢いこそ一服したものの、10%と極めて高い。米ミシガン大学サーベイの中央値3.4%(7月)をはるかに上回って
いる。
米国では、物価が高騰した過去2年近く、人々のインフレ予想はその時点のインフレ率の実績値を若干下回って推移してきた。つまり、極端
なインフレは早晩収まると予想されていた。
一方、現在の日本の消費者は、足元のインフレ率よりもかなり高い数字を予想している。卵や生鮮食品など、日々目にしている品目の極端
な価格上昇に色濃く影響を受け、直観で答えているということだろうか。
しかし、それは米国でも多かれ少なかれ見られる現象と言える。あるいは、日本の消費者は、長年、物価下落の基調は変わりにくいとメディ
ア等で見聞きしてきたため、物価上昇も粘着性が高いはずだと推定しているのかもしれない。
これに関連して、興味深いデータがある。直近の日銀の「生活意識アンケート調査」では、物価が上昇すると回答した人に対して、そう考
える理由も聞いている。
最も多い回答は「最近物価が上がっているから」というものだ。やはり、多くの人々が足元の物価上昇が来年もそのまま続くと考えている
ことになる。
問題は、その次に多い回答である。35%の人が「物価は上がるものだから」と回答しているのである。どのような属性の人がこのように回
答しているのか、過去デフレ時代はどうだったのか等がわからないため、数字の解釈はまだ難しい。
しかし、今後この回答が増えると厄介だ。かつて日本では、物価は下がるものだという「デフレ・ノルム」が生まれてしまったが、今度は、物
価は上昇するものだ、という「新しいノルム」が生まれつつあるという可能性も排除できない。
仮にそうであるならば、行き過ぎたインフレ予想が定着する前に、日銀は早期の利上げに踏み切るべきかもしれない。
2023/09/28 日本経済新聞 朝刊
物価高や賃金動向を巡って日銀内で見方が割れている。日銀が公表した7月の金融政策決定会合の議事要旨では、2%の物価安定目標
の達成について「実現がはっきりと視界に捉えられる」とみる委員がいた一方、「実現は見通せず、マイナス金利政策の修正にはなお大きな
距離がある」との声も上がった。
7月の会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を見直し、長期金利の上限を1%に事実上引き上げた。
会合直後に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では2023年度の物価見通しを大幅に上方修正した。今後は「輸入物価の下
落に伴う下押しにより、次第に縮小していく」とみる委員がいた。「時間をかけてコスト上昇を価格に転嫁する動きは続く」と述べる委員もいた。
焦点の賃金動向について委員の一人からは「来年度以降の賃上げを検討する企業も増えており、賃上げとサービス価格の上昇が続く新た
な局面が見込まれる」との意見が出た。一方で中小企業について「6割が赤字法人で収益力が弱く、賃金上昇の広がりを確認する必要があ
る」と指摘する委員がいた。
2023/09/28 20:48 日経速報ニュース
日本取引所グループが28日発表した投資部門別売買動向(東京・名古屋2市場)によると、海外投資家は9月第3週(19?22日)に現物
株を9131億円売り越した。売り越しは3週連続で、売越額は3月第2週(1兆1275億円)以来の大きさだった。日銀の金融政策決定会合を
控えて政策変更への警戒から持ち高を減らす動きが広がった。
19?22日は米連邦公開市場委員会(FOMC)や日銀の金融政策決定会合が開かれた。米金利の高止まり懸念もあり日経平均株価は
週間で1100円超下げ、今年に入り最大の下げ幅だった。週初から4日連続で下落し、1日で450円超下げる場面もみられた。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネージャーは「日銀の発表内容によっては円高進行や景気回復の減速が懸
念されたことから、リスク回避の動きが広がった」と分析する。FOMCでも金融引き締め長期化を示唆する内容がみられたことから、ハイテク
関連などグロース株を中心に売りが広がった。
国内の個人投資家は現物株を6613億円買い越した。買い越しは2週ぶりとなる。株価の急落を受けた逆張りの買いが入ったとみられる。
年金基金の売買動向を映すとされる信託銀行は3週連続で売り越した。売越額は3401億円で、約3カ月ぶりの高水準となった。
2023/09/29 04:00 日経速報ニュース
9月22日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、植田和男総裁は年内利上げの可能性について否定的であった。それに先だって
、「物価・賃金データがそろえば、年内利上げもゼロではない」と新聞取材で発言したとされていただけに、手のひらを返したようだった。
ならば、為替は円安に向かうだろう。円相場は1ドル=150円に接近している(図表)。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2024
年末の政策金利見通しが5.1%と前回(4.6%)よりも引き上げられた。米連邦準備理事会(FRB)がそう簡単に利下げをしない構えを鮮明に
したために、米長期金利は4.5%近くまで上がり、ドル高・円安が進んでいるのだ。
政府は行き過ぎた円安望まず
思い出すのは22年10月の円安だ。為替市場では1ドル=151円90銭台まで円安が進行。政府は3度の為替介入に踏み切り、それによっ
て円高に押し戻された。円安は輸入物価を高騰させる。国民は物価上昇の痛みを嫌うから、政府も円安に歯止めをかけるべく、為替介入
を実施した。しかし現在、日本は米国から為替操作国の監視対象国から外されている。だからこそ、日本は再び監視対象になることを恐れ
、今回は前回ほどの大規模な介入には動けないのだろう。
政府には物価を巡って頭の痛い問題がある。9月末にガソリンなどに対して実施していた補助金の支援策が期限切れになる。ひとまずは
12月末まで支援策を延長する。電気・ガス代についても、9月末で終了するはずだった補助金を延長する方針を決めている。
政府の立場は、①これ以上の円安を望まない②物価対策を講じて10月以降のガソリン、電気・ガス代の抑制を行いたい、というものだ。
ならば筋を通して考えると、日銀に早急に金融緩和の修正を求めるべきだとなる。日銀に対し安定的に2%の物価上昇を望むとしてきたコミ
ットメントを達成したことにして、マイナス金利の解除へ動くことを要請するのだ。
日銀は政府との間で共同声明を結び、2%のインフレ目標達成を目指してきた。この約束が日銀を過剰に慎重にさせてきたことは明白で
ある。だからこそ、政府が「もう良いです」とお墨付きを与えて、日銀の自縄自縛を解いてやらなくてはいけない。仮に岸田文雄首相が共同
声明を結び直すと言えば、それだけで為替レートは円高方向に向かうはずだ。
少し前の経緯を話すと、植田総裁が就任したときに共同声明を結び直すチャンスがあったが、岸田首相はそれを見送った。安倍晋三首相
時代のリフレ政策に執着する人々におもねった可能性もある。
これが、岸田政権が政策的矛盾を抱える火種になった。まず、金融緩和によって生じた輸入物価高騰を財政資金で穴埋めしている点が
矛盾だ。国民が腹を立てているのは、エネルギーよりも食料品の方だ。こちらは円安である限り価格高騰が続く。
さらにガソリン補助金にも矛盾がある。高騰した輸入コストを補助金で引き下げると、ガソリン消費量は減らなくなる。貿易赤字は拡大して
、それが円安を招く。ガソリン価格がまた上昇して、余計に補助金を必要とする。岸田首相が日銀の金融緩和解除を縛る共同声明を見直さ
ない限り、根本的な物価対策にはならない。
年内利上げは早すぎるとしても、マーケットの投資家たちはそう遠くない将来に、日銀のマイナス金利解除があるとみている(筆者も24年
4月末だとみる)。
そのためにはインフレ率が「安定的に2%を上回る」という縛りを解く必要がある。この「安定的に」という日本語は曖昧な言葉である。「2%を
上回る」ではなく、「安定的に2%を上回る」とするだけで意味が全く違ってくる。「安定的に」が入ると、今後2%を割ってはいけないという意味
に変わる。すでに消費者物価は3?4%もの上昇率でとっくの昔に2%を上回っている。日銀が3?4%ものインフレを無視しているのは、いず
れ上昇率が反落する可能性を否定できないからだ。
2%を割り込まないようにするためには、下方硬直的なサービス価格が底上げされ、かつ春闘のベースアップが毎年2%以上の上昇率に高
まることが必要になると、筆者は考える。
ただし、マイナス金利解除=円高になるかは不確定だと思われる。それを理解するには議論をもっと深く掘り下げる必要があり、具体的に
マイナス金利解除の先の話をすればわかる。もし日銀が安定的に2%の物価上昇を展望できたならば、短期金利をマイナス0.1%から0.1%、
その次に0.25%へと引き上げられるだろうか。さらに欧米のように、そこから0.50%、1.00%へと段階的利上げに進めるだろうか。
筆者の見方は、先々の利上げもまた苦難の道というものだ。マイナス0.1%の短期金利を引き上げるとすれば、日銀にとって当座預金の
保有者である民間金融機関への利払い費負担はどのくらい生じるだろうか。仮に0.10%までの短期金利の引き上げであれば、0.20ポイント
の利上げ幅になる。
短期金利が0.10%になると、今まで水面下にあり意識されなかった問題が浮上してくる。例えば、日銀当座預金への付利を行い0.10%分
の利息を金融機関に支払うことになる。500兆円以上もある当座預金のうち、準備預金適用残高(7月末473兆円)に対して0.10%の付利を
行うと年間利払費は約5000億円になる。これくらいならば問題はないが、付利を0.50%にすると年間2.4兆円もの負担増になる。22年度の
日銀の当期剰余金は2.0兆円なので、計算上、赤字に転落する。
マイナス金利をすぐに解除しても、長期国債を市場で売却しない限り、当座預金の付利による負担増が収益を圧迫するという問題が生
じる。だから、日銀の利上げはそれほど大胆にはできない。
また、よく話題にされるのは、長期金利上昇に伴う長期国債の含み損の問題である。もちろん、日銀は保有国債をすべて時価評価する
訳ではない。それでも含み損を計算したときに、日銀の自己資本がマイナスになると、バランスシートに穴が開いたように見える。そうする
と、円の信用を担保する中央銀行の資産内容が劣化して円安を助長することになりかねない。
もしも日銀がマイナス金利を解除すると、隠れた問題が浮上し、利上げに伴う弊害が意識されて、なかなかそれ以上の利上げは難しいと
いう見方が出てくる。すると、日米金利差が縮小するとしても、その幅は限られるという思惑から、円高よりも円安の方に傾くと筆者は見て
いる。
おそらく、現在はそうした隠れた問題の存在を、マーケットは十分に気付いていない。まだ「マイナス金利の解除は円高要因だ」という先入
観にとらわれている。もしも日銀が本気になって趨勢的な円安を止めようとするなら、欧米ほどではないにせよ、いずれ段階的利上げに動
かざるを得ないと思える。
2023/09/29 11:44 日経速報ニュース
29日午前の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日比36円28銭(0.11%)安の3万1836円24銭で前場を終えた。四半期末に伴う
機関投資家によるリバランス(資産配分の調整)に伴う売りや、米政府機関の閉鎖への警戒が投資家心理の重荷だった。ただ前日の米株
式相場の上昇は相場全体を下支えし、日経平均は上昇する場面もあった。
きょうの東京市場ではバリュー(割安)株への売りが目立ち、東証株価指数(TOPIX)バリュー指数は前引け時点で1.27%安となった。こ
のところ上昇基調が顕著だったバリュー株にリバランスの売りが出ているとの見方があった。29日午前に国内長期金利の指標となる新発
10年物国債利回りが一時0.770%と約10年ぶりの高水準まで上昇したことも株式相場の逆風との受け止めがあった。
寄り付き直後は前日の米株式相場が上昇した流れを受けて日本株にも買いが先行し、日経平均は節目の3万2000円を超える場面があ
った。前日の米株式市場では金利上昇への過度な警戒感の後退からハイテク株を中心に上昇。東京市場ではアドテストや東エレクなど半
導体関連銘柄への買いが目立った。
東証株価指数(TOPIX)は続落した。JPXプライム150指数も続落し、前引け時点で4.06ポイント(0.40%)安の1012.85だった。
前引け時点の東証プライムの売買代金は概算で1兆7668億円、売買高は7億2727万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は1185と
、全体の6割強を占めた。値上がりは587銘柄、横ばいは59銘柄だった。
デンソーやセコムが安い。豊田通商や東京海上の下げも目立った。一方、TDKやソフトバンクグループ(SBG)が高い。ネクソンやリクルー
トが堅調に推移した。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023093000363&g=eco&utm_source=top&utm_medium=topics&utm_campaign=edit
2023年09月30日16時36分
植田和男日銀総裁は30日、福岡市で講演し、大規模金融緩和の「出口」局面における日銀の財務悪化懸念について、中央銀行は自ら
紙幣を発行できることなどから「一時的に赤字や債務超過になっても政策運営能力は損なわれない」との認識を示した。
東京株、半年で3816円上昇 改革への期待でバブル後高値
緩和の出口では、金融機関が日銀に預け入れる当座預金の適用金利を引き上げる。このため、日銀の支払利息が増えて、収益が減少
する。
2023/10/01 04:00 日経速報ニュース
「(今回決まった政策修正は)出口への一歩ではない」。日銀が9月27日に公表した7月金融政策決定会合の議事要旨にそんな発言が
記されていた。同会合では長期金利の上向きの動きをより自由にする政策修正を決めたが、これはあくまで金融緩和政策を円滑に継続す
るための対応というわけだ。
とはいえ「将来振り返ったとき、あれは出口への動きだったと解釈されるのではないか」という声が日銀関係者にある。今後一段と政策が
修正されるなら、そう受け止められる可能性が増すのは事実だ。
物価の基調も「2%」に接近
実際、物価上昇圧力は強く、緩和正常化に追い風が吹く。消費者物価(生鮮食品を除く)の前年同月比上昇率は既に約1年半にわたり
日銀目標の2%を超え、物価の基調を示す加重中央値(価格上昇率の高い順に品目を並べた時にウエートベースで上から50%近辺に位置
する値)も8月は1.8%と2%に一段と接近した。
そこで関心を集めるのが、異次元緩和の3つの柱が今後どんな手順で解体されるかだ。
3つの柱とは、①具体的な目標を設けて長期金利(10年物国債利回り)を操作する長短金利操作政策②日銀当座預金の一部金利をマイ
ナスにするマイナス金利政策③2%超の物価上昇率の安定的実現まで継続するマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針(オーバーシュ
ート型コミットメント)だ。そして従来は①→②→③の順に終わるとの見方が多かった。理由は以下の通りだ。
まず①の撤廃は2%物価目標の持続的・安定的実現が見通せれば可能なのに対して、②の解除があり得るのは「引き締めが遅れて、2%
を超えるインフレ率が持続してしまうリスクの方を、より心配する状況」(8月上旬の内田真一副総裁講演)とされ、終了の条件がより厳しい印
象を与えてきた。さらに③の撤廃が可能になるのは「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超える状
況」(日銀が掲げてきた政策指針)だから、ハードルが最も高いと受け止められてきた。
3つの出口条件に大差はないとの解釈
ところが、最近では3つの出口条件に大差はないという解釈が出てきた。結果として3つが同時に終了するシナリオが取り沙汰され始めた。
背景にあるのは、9月下旬の植田和男総裁の記者会見だ。長短金利操作の撤廃もマイナス金利の修正も「(2%物価)目標の実現が見通
せれば検討する」と説明された。両者の解除条件にあまり違いはないとの見方が出た。
先行して撤廃することも)ロジカルには考えられるかもしれない」(植田総裁)という従来の想定と逆の状況になっている。ただし、総裁は「そ
れ(マネタリーベースの拡大方針の先行的な撤廃)が持つアナウンスメント効果とか、全体をパッケージとして考えてきたというようなことの
中で慎重に考え、まず物価目標達成の見通しが持てるようになるかどうかというところを先に考えたい」と述べた。
マネタリーベース拡大方針の撤廃も、2%目標達成の見通しが立ったタイミングで検討するとの示唆に聞こえた。とすると出口の条件は
3つとも似たものであり、同時終了もあり得るとの見方につながるのだ。
元日銀理事の門間一夫みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストも「3つとも異例の政策であり、2%物価目標の達成
が見通せるようになればまとめてやめるのが論理的」と語る。その時期として、現時点で可能性が相対的に高いのは2024年4月と門間氏
はみる。
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏も「24年の春季労使交渉で大幅な賃上げが実現したことを確認した上で同年4月に長短金利操作とマイ
ナス金利の撤廃が決まると見ており、同時にオーバーシュート型コミットメントも解除すると予想する」としている。
もちろん、経済・物価情勢や為替相場の動向次第で3つの柱が同時に終了になる時期が1月などになったり、3つの柱が別々に出口を
迎えたりする展開もあり得る。植田総裁も「様々なオプションがある」とする。ただ、仮に3つの要素が一気に消えるなら、日銀の金融政策は
短期の政策金利のゼロ%への誘導を中心とする比較的シンプルなものになるかもしれない。印象はかなり変わる。
「異次元」の要素は残るものの
もっとも日銀は長期金利への関与を完全にはやめないはずだ。高水準の国債買い入れを続けるなどして、金利の跳ね上がりを抑えるだろ
う。
ちなみに、異次元緩和にはもうひとつ質的緩和という要素がある。その中心が上場投資信託(ETF)の購入であるが、購入額は21年春の
政策修正で激減した。ただし巨額の保有残高をどうするかという課題は残る。
このように「異次元」の要素はなお残りそうだが、今の政策の3つの柱が一挙に姿を消すなら、7月の政策修正は「出口への一歩」だったと
振り返られるだろう。
2023/10/01 日本経済新聞 朝刊
物価高に統計が追いつけていない可能性がある。代表的な消費者物価指数は様々な商品の値段を過去の平均的な買い物の割合に応じ
て足し上げる仕組み。今のエネルギー高のように消費の比重まで変わるほど急激な動きは反映しにくい。足元の支出実態に基づく別の計
算法にすると、日本の直近8月のインフレ率は0.5ポイントも上振れする。異例のズレは景気の把握や政策判断の難しさを映す。
「国民生活や全国の中小企業の事業を守る」。8月末、岸田文雄首相はガソリンの高騰を抑える補助金の延長と拡充を表明した。店頭の
レギュラー価格が全国平均で185円を超えて過去最高値を更新した2日後のことだった。
3年前の2020年はコロナ禍で需要が減り、120~130円台で推移していた。その後の原油高にウクライナ危機が拍車をかけ、足元は
円安も重なって状況がまるで違う。こうした大きな浮き沈みが物価の統計に収まりきっていないとの見方がある。
総務省の消費者物価指数はモノやサービスの価格を家計の支出の多寡で重みづけして算出する。その比重が今は昔の20年のままだ。
5年に一度の改定を前に急変した暮らしの実態とかけ離れつつある。
20年の基準はコロナの特殊要因を相殺するために19年のデータと平均している。全体を1万とした支出のうちガソリンや電気代などを合
わせた比重は712だ。エネルギー高の22年は803まで高まった。外食、宿泊料などコロナ禍からの回復が進むジャンルも比重の拡大が
鮮明だ。
8月の物価上昇率は20年基準だと生鮮食品を除き3.1%だった。比重を毎年更新して前年に合わせる別手法では3.6%になる。指数の
リセットを繰り返す計算法ならではの影響もあり、平時にはない裂け目が23年以降広がる。
かねて統計上の物価と消費者の肌感覚には溝がある。ましてこの1~2年は身の回りで食品などの大幅な値上げが続く。日銀の調査で、
一般個人の体感インフレ率は6月に平均14.7%に達した。足元で総務省の統計値との開きは2桁に拡大している。
物価は経済の体温計と呼ばれる。上がりすぎるなら生活に悪影響を及ぼすため、冷ます必要がある。22年以降、米欧などが利上げを急
いできたのは年率2桁前後の高インフレに直面したためだ。
日銀は先進国で唯一、物価を押し上げるための金融緩和を続ける。目下のインフレは海外発のコスト高が主因で、長続きしないとの見立て
がある。経済が縮小均衡に陥るデフレに戻るのを避けたい思いも強い。緩和策を修正するか悩ましい局面が続き、物価の動向には神経をと
がらせる。
「連鎖指数を本系列に格上げする対応も一案」。20年基準を決める過程ではこんな意見も出した。連鎖は基準を毎年更新する方式を指す。
総務省は参考値にとどめている。生活の変化を反映しやすいのが長所で英国やフランスが採用している。短所は作業負担の重さやブレの出
やすさだ。
経済政策も企業経営もインフレの基調を見極めてこそ成り立つ。成長のカギを握る賃上げの目安も物価次第だ。計算法による違いをどうと
らえるべきか。総務省の担当者は「『どちらが良い悪い』ではない」と説明する。日銀関係者も「それぞれバイアスがある。両方みることが大
切」と話す。
物価の算定や解釈は一筋縄ではいかない。未曽有の感染症や戦争などのショックを経た後ではなおさらだ。日本経済研究センターが集計
する有力エコノミストの予想も20年頃から大きく外れだした。誰しもがインフレの実像をつかみあぐねる難局で、統計の精度が改めて問われ
ている。
2023/10/01 17:00 日経速報ニュース
外国為替市場で1ドル=150円という円安の節目を前に攻防が続く。米国は利上げ終結がみえ、日本は金融緩和の出口も意識され始めた。
昨年の円安を支えた構図は一変したはずだ。だが、その構図の変化こそが今度は日米金利差からの収益を狙う「円キャリー取引」に理想
的な環境をつくり円売りを促し始めた。
9月の円相場は昨年10月の1990年以来の安値(151円94銭)にあと2円あまりに迫る場面があった。昨年をしのぐ円安が意識され始めた。
昨年は米連邦準備理事会(FRB)がインフレ対応に追われ、急激な利上げに突き進んだ。金融政策の影響を強く受ける3カ月物の日米金
利差(米国マイナス日本)は勢いよく広がり、円安・ドル高も進んだ。
その後は米利上げ幅の縮小を受けて円安は一服したが、米インフレはしつこく続き、利上げの打ち止めは逃げ水のようにずれ込んだ。今年
に入って日米金利差は拡大の勢いこそ鈍くなったものの、足元では5%台半ばと2000年以来の大きさになった。
米利上げの勢いや日米金融政策の方向の違いで円を売る流れは終わった。残ったのは巨大な金利差。まだマイナス金利の円でお金を借り
、もはや高金利通貨と化したドルを買う。そんな円キャリー取引にとって天国のような環境にもみえる。
だが、キャリー取引はかなりの危険を伴う。いくら金利差が大きくても、それを打ち消すほどドルが値を下げてしまっては元も子もない。もう
けを出し続けるには相場の安定が絶対条件だ。
カギは変動率にある。通貨オプション市場に先行き1カ月の円相場の変動がどのくらい織り込まれているかを示す「予想変動率(ボラティリ
ティー)」は昨年、振れを伴いつつ上昇軌道を描いたが、今年に入り明確に低下に転じた。
米利上げの終わりが鮮明にみえ始めたことが大きい。FRBは丁寧に来年も当分は利下げをしないと予告までして、不透明感を取り除いた。
金利差と変動率。この2つを合成すれば、今が円キャリー取引にどのくらい適した状況かを推し量ることができる。
代表的なのが、金利差を予想変動率で割って指数にしたものだ。分子の金利差が広がるほど、金利収入は増える。分母の変動率が小さ
いほど、相場変動で金利収入が吹き飛ぶリスクが小さい。つまり値が大きいほど、キャリー取引に有利だ。
ニッセイアセットマネジメントの松波俊哉チーフ・アナリストは「円キャリー取引指数が0.6を超えて上昇すると、経験則として円安に弾みがつ
く」と語る。
8月以降、指数は0.6超が定着した。信用バブルのなか円キャリー取引が世界に広がったリーマン危機以前以来だ。松波氏は「歴史的に
米利上げの停止は変動率の低下につながりやすい」として、今後は円キャリー取引が盛り上がるとみる。
米バンク・オブ・アメリカが世界の機関投資家に聞く為替・金利分野の9月の調査では、「今年最良の日本に関するトレード」に「円キャリー
取引」と答えた割合は20%となり、8月の11%から上昇した。ただし為替関連では「米景気後退リスクをヘッジする円買い・ドル売り」(14%)を上
回ったばかりだ。
同社の主席日本為替金利ストラテジスト、山田修輔氏は「円キャリーの環境が整っているのは確かだが、投資家の動きは鈍い」と指摘する。
リーマン危機前、円安の勢い自体はゆっくりだった。今回は貿易赤字や高水準の対外直接投資など実需面でも円売り要因がそろうなか、
すでに円安はかなり進んでいる。このことが円キャリーの急増を抑えている可能性があるとみる。
もっとも、リーマン危機後は円キャリー取引の巻き戻しが強烈な円買い圧力を生み、市場の波乱要因となった。今回、取引が野放図に膨ら
まないとすれば、かえって緩やかな円安が長持ちすることにもつながりうる。
【関連記事】
・円安、既に「2022年の安値下回る」 日経通貨インデックスが過去最低に
・日銀の自縄自縛で進む円安
変動率の低さは財務省にとって円買い介入に動きにくいということを意味する。表向き、為替介入は相場の急変動に対抗する狙いがある
からだ。
日銀の植田和男総裁は金融政策の正常化への歩みも視野に、柔軟な政策運営を強調する。だが、仮に早期にマイナス金利の解除に動
いても、短期の政策金利がゼロ%になるだけ。米国との金利差を縮めるような急激な利上げは想定しにくい。
結局、米国側にインフレ収束のメドが立つか景気が急減速するなどして利下げの道筋が明確になる以外、円売りの機運をしぼませること
は難しいかもしれない。日本側は昨年以上の厳しい戦いを強いられそうだ。
2023/10/02 14:51 日経速報ニュース
国内企業や金融市場参加者の物価予想が下がらない。日銀が2日公表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)における企業の
物価見通しは、より長期の予想ほど高止まりしている。債券市場参加者のインフレ予想は徐々に水準が切り上がっている。日銀が2%の
物価安定目標の実現に「距離がある」(植田和男総裁)との姿勢を崩さないのに対し、企業や市場の受け止め方は先行して変わりつつある。
「今年度後半は来年に向けた賃上げ動向も含め、見極めの重要な局面となる」。日銀が2日公表した9月21~22日開催分の金融政策
決定会合での「主な意見」では政策委員からこんな声があった。この委員が重要局面とみるのは「予想物価上昇率に上昇の動きがみら
れ、やや距離はあるが、『物価安定の目標』の達成に近づきつつある」と考えているためだ。
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その背景の1つは、9月の日銀短観で明らかになった企業による消費者物価指数(CPI)上昇率予想だ。全規模・全産業の見通しでは
前年比での上昇率が1年後は平均で2.5%と前回6月調査(2.6%)をやや下回った。だが、3年後の上昇率予想は2.2%、もっと先の5年
後は2.1%と前回調査と同水準だ。日銀が目標とする「安定的、持続的な」2%の達成を見込んでいる。
日本経済の先行きを慎重にみる傾向が強いはずの債券市場の参加者も物価予想を切り上げている。QUICKが2日に公表した9月の
債券月次調査によると、生鮮食品を除くCPIの年平均の上昇率は今後1年が2.58%(回答の単純平均ベース)だった。今後2年でみると
2.10%と8月(2.01%)を上回り、2014年7月以来の高さとなった。10年間でみても1.50%と前回(1.42%)を上回り、14年11月以来の高
水準だ。
予想インフレ率の切り上がりを映し、債券市場では日銀による早期の政策正常化への警戒感が高まっている。QUICKの同調査では
日銀が次に政策修正もしくは柔軟化する時期について「24年1~3月」との回答が42%と最も多かった。8月調査(26%)から増え、回答
が最も多かった時期は「24年4~6月」から前倒しされた。
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QUICKの調査では「『安定的に2%』を主張し続けることはさすがに難しい状況にあり、早期の長短金利操作(イールドカーブ・コントロ
ール、YCC)解除は時間の問題」(投信投資顧問)とのコメントもあった。「まだ安定的ではないから緩和を続けている」という日銀の説明
にはもはや無理があるとの見方だ。
2日の国内債券市場で長期金利は一時0.775%と2013年9月以来の高さをつけた。長期金利は日を追うごとに水準を切り上げている。
日銀の大規模緩和の正常化に備えた動きはまだ続きそうだ。
2023/10/03 06:27 日経速報ニュース
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国内長期金利に上昇圧力がかかっている。指標である新発10年物国債利回りは2日、0.775%まで上昇し2013年9月以来の高さとなった。
13年といえば黒田東彦氏が日銀総裁に就任し、異次元緩和に踏み切った年。同年4月に日銀が異次元緩和を決めると長期金利はいったん
急上昇し、その後低下に向かった。このため見落としそうだが、気づけば現時点の長期金利はすでに異次元緩和前の水準を上回っている。
水準だけみれば、日銀が政策の本格修正に動くより一足先に、長期金利は正常化しているといえるかもしれない。
日銀が異次元緩和を決断したのは黒田氏就任後、初めての金融政策決定会合である13年4月4日だ。決定直前である4月3日の長期
金利は0.55%だった。12年末の安倍晋三政権の発足で日銀の追加緩和観測が先行し、長期金利は年初から低下していた。異次元緩和
は予想を上回る規模の大きさとなり、金融・資本市場には衝撃が走った。円安と株高が加速して景気回復期待が高まったことなどから、
日銀の動きは緩和方向だったにもかかわらず長期金利は急上昇して5月下旬には節目の1%に達した。そこで反転し、その後長期間に
わたる低下へ向かった。
2023/10/03 日本経済新聞 朝刊
日本株相場は不安定さが続く。期末前後に特有の売りが上値を抑えているが、10月後半以降にかけて先高期待は根強い。日銀が2日
発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)でも大企業の景況感は改善が続く。銀行株など好景気の影響を受ける銘柄で下支え
ができれば、中間決算発表後の上昇期待は高まっていく。
2日の東京株式市場では、米議会が政府機関の閉鎖をひとまず回避したことなどを受けた買い戻しで日経平均株価は前週末比一時
544円高となったものの、売りに押されて97円安で引けた。荒い値動きに「期末に絡んで、売らなければいけない分を売るというシステマ
ティックな売りが出て先物だけで動いている」とT&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは話す。
9~10月の需給悪化は「5月に売って9月に買え」や「ハロウィーンに買え」といった相場の格言にあるほどだ。日本株は9月末に向け、
年金リバランスや指数の銘柄入れ替えに関する売買や配当の再投資を狙った売りが出やすい。グローバルマクロ系のヘッジファンドなども
売りやすい。
ある欧州系のヘッジファンドの運用担当者は「日本株はしばらく売りポジションのまま行く予定だ」と話す。先進国株は売りでポジションを
取る。一方で「米金利上昇のヘッジにもなるので日本の銀行株のコールオプション(買う権利)を買い上がっている」という。
業種別日経平均の銀行は前週末比1・6%高と逆行高だった。日経平均が大きく下げた午後もさほど下落しなかった。
銀行株は日銀の政策変更によって金利が上昇すれば業績が改善するという期待から上げている。米金利上昇の負の影響を受けにくく、
世界でも米長期金利上昇でメリットが大きい数少ない銘柄だ。日銀短観で示された国内の景況感が改善していることも追い風になる。
2日は千葉興業銀行(6%高)、筑波銀行(5%高)、滋賀銀行(4%高)など地銀株が株価上昇率上位となった。千葉興銀は9月29日に
4~9月期業績を上方修正しており、地銀の業績回復期待が波及した可能性がある。
中小企業の先行きも改善の兆しがある。「中小企業でも投資意欲が旺盛で地方の経済状況も良好なことで、地銀にも業績改善期待があ
る」(国内証券アナリスト)。地方経済回復に伴う融資拡大期待も出始めている。
短観で景況感が改善した自動車のトヨタ自動車やホンダなども逆行高。円安と生産回復を受けて業績期待が高い。日経平均は22年まで
の10年間で年初を100として指数化、平均すると、中間決算発表が本格的に始まる10月半ば以降に上がる傾向がある。特に今年の上方
修正期待は高い。
こうした楽観論を支えたのが、短観の設備投資だ。23年度のソフトウエア・研究開発を含む設備投資額(除く土地投資額)で、大企業は全
業種で13・1%増と前回調査から0・7ポイント改善した。
「設備投資が減らずに続いているのは企業が株主還元だけでなく収益力改善の段階に企業改革を進める意思がある証拠」と三井住友DS
アセットマネジメントの石山仁チーフストラテジスト。低PBR(株価純資産倍率)の修正など業績以外にも影響していくとみる。
ただ、決算発表までは売りが優勢となる可能性がある。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「米国株では投資信託の決
算などの関係で10月は損失確定の売りが出やすい」として日本株への影響を懸念する。
2023/10/03 07:30 日経速報ニュース
2日の日本株の急変は異様だった。本格的な「日本売り(株式、国債、円の同時売り)」の兆しなのだろうか。
株価と円と金利の安定は3つ同時に成り立たない。トリレンマだ。市場関係者が、それに気が付いたのは、日銀が国債の買い入れオペを
追加実施すると伝わった2日午後だ。1ドル=150円をうかがうような円売り圧力が強いなか、日銀は長期金利の上昇抑制姿勢を強化した。
朝方に500円以上、上げていた日経平均株価はその後、しばらくして下げに転じた。「金融緩和=株売り」の構図だ。
鈴木俊一財務相が円安けん制発言を繰り返す傍らで、必死に金利上昇を抑えようとする日銀。アクセルとブレーキを同時に踏み込む日本。
金利と円の相場形成が政府・日銀に縛られるなか、自由な株式市場に財政破綻リスクが転嫁されても不思議はない。
ヘッジファンドは、経済合理性に反した金融・財政政策がもたらす価格のゆがみをいち早く発見し、それがマーケットメカニズムで修正され
るポジションに賭けるのが本分だ。代表的なのは1992年の英ポンド危機だ。自由な金融政策の下で為替相場を固定化するという矛盾に
気が付いた著名投資家のジョージ・ソロス氏がポンド売りを仕掛け、英通貨当局を相手に大もうけした。経済史に残る事件だ。
政府・日銀は当時の英当局と同じく、崖っぷちに立たされていると真摯に受け止めるべきだ。市場参加者はすでに政府・日銀のやることの
矛盾に気が付いている。
日米金利差の拡大が円安の原因である以上、円安を抑えるには、日銀の利上げが必要だが、日銀は異次元緩和にこだわる。したがって、
円安と株高は両立しても、金利形成はゆがむ。
日銀が異次元緩和を撤回し、金利が上がって円が上昇すれば、株式は下落する。
ついには財政不安で金利が上昇すれば、インフレヘッジで株式が買われても、日銀の信認は失墜し、円安に歯止めがかからなくなる。や
がて株式も売られる。
2日の日本株の急失速は、「日銀の異次元緩和の解体が予想以上に早い」とシナリオを修正した投資家による売りが原因の可能性もある。
事実、「金利上昇=買い」というプログラムがなお健在な銀行株は上昇した。
いずれにしても、異次元緩和を金科玉条としたアベノミクス放任のツケは遠からず回ってくる。
2023/10/04 04:27 日経速報ニュース
【NQNニューヨーク=戸部実華】3日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落して始まり、一時前日比517ドル安の3万2916ドルまで
下落した。米長期金利が連日でおよそ16年ぶりの高水準を付け、株式の相対的な割高感が相場の重荷となっている。
米長期金利は前日比で約0.1%高い(債券価格は安い)4.8%台まで上昇した。このところ高水準の政策金利をより長く維持する必要性に言及
する米連邦準備理事会(FRB)高官が増えている。米経済の底堅さを示す経済指標の発表も目立ち、金融引き締めが長期化するとの観測が
根強い。
3日午前には8月の米雇用動態調査(JOLTS)が発表された。非農業部門の求人件数が市場予測を上回るなど、労働市場の逼迫感が改め
て確認されたことも、金利上昇につながった。
個別では金融のゴールドマン・サックスやホームセンターのホーム・デポ、バイオ製薬のアムジェンが安い。スマートフォンのアップルやソフ
トウエアのマイクロソフトなどハイテク株も売りが先行した。半面、航空機のボーイングや半導体のインテルは買われている。
ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は5営業日ぶりに反落している。
2023/10/04 日本経済新聞 朝刊
日銀の総裁に植田和男氏が就任して9日で半年となる。7月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化し、
黒田東彦前総裁が口をつぐんできた金融緩和の出口にも言及し始めた。持続的・安定的に物価が2%目標を上回る状況を目指す日銀が、
四半世紀続いたデフレとの戦いの総仕上げをどう進めるのか。半年の軌跡から読み解く。
「経済物価情勢の動きは半年前に予想していたものとはやや違った動きをしているが、それを捉えたうえで、ある程度適切に金融政策対
応ができた」。9月22日、金融政策決定会合後の記者会見で、植田氏は就任からの半年を振り返った。
官邸からけん制
日銀は7月の会合でYCCを修正し、長期金利の上限をこれまでの0.5%から事実上1%に引き上げた。長期金利は自由度をある程度
取り戻し、2016年から続いたYCCは形骸化が進んだ。
国債の大量購入で長期金利を抑え込んできた日銀にとって、YCCを柔軟化し「金利のある世界」に足を踏み入れたのは大きな変化だ。
ある日銀関係者は「YCC修正を市場の混乱を招かずに成功させた中央銀行はほかにない」と力を込める。ただ、マイナス金利の撤廃など
の金融政策の正常化はこれからが本番であることも確かだ。
道のりがいかに険しいか、植田氏は4月の就任直後にある洗礼を受けたとされる。関係者によると首相官邸を訪れた植田氏に岸田文雄
首相はこんな趣旨のけん制を繰り出した。当面は金融政策の転換と受け止められる動きは避けるように――。
植田氏に総裁が代わり、金融市場では政策転換への期待が高まっていた。だが実際に政策が大きく変われば、黒田氏の後ろ盾だった
故安倍晋三元首相に近い議員と官邸とで溝が生じかねない。
2000年のゼロ金利解除の失敗を日銀審議委員として経験した植田氏も、日銀が早く動きすぎるリスクは理解していた。就任当初は慎重
な発言に終始し、物価の基調の強さを確かめつつ、世論や政治の変化を待っていた節がある。
実際、円安が長引き、日銀の金融緩和が物価高を招いているとの声が強まった。岸田首相が6月に通常国会中の解散総選挙の見送り
を決めたこともあって、7月の政策修正への道は整えられていった。
のろしを上げたのは、日銀の生え抜きトップの内田真一副総裁だった。日本経済新聞との7月上旬のインタビューで「(YCCが)市場機能
に影響を与えていることは強く認識している」と発言。「強く」という言葉をわざわざ差し挟むことで、政策修正近しとの観測を高めた。
日銀関係者は「慎重姿勢を強調してきた内田氏の発言だったからこそ、政策修正がありうるとの地ならしにつながった」と明かす。学者出
身の植田氏の政策運営には懸念の声もあったが、内田氏が実務を押さえて時には露払いの役割を果たし、植田氏が幅広い意見に目配り
しながら総合判断するという二人三脚が機能している。
財務省幹部は「これまでの金融政策運営はうまくいっている。日銀も自信を深めているのではないか」と植田体制のスタートを評価する。
一方で、今後想定されるマイナス金利解除などの金融緩和の出口については「これまでとレベルの違う政策の変更だ」とし、真価が問われ
るのはこれからとの考えをにじませる。
課題もある。強い言葉で政策の方向性を示す黒田氏と違い、協調型のリーダーである植田氏の発言は慎重で時にぶれているような印象
を与える。
7月会合の前には「全体のストーリーは不変」と発言し、一部の市場参加者が「修正見送り」と受け止めた。9月9日の読売新聞のインタ
ビューでは「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べ、市場でマイナス金利の年内解除の織り込みが進んだ。
日銀内では「どちらともとれる発言をしているだけ。政策への考えは一貫している」との声がある。この先の政策を縛るような発言は極力
抑えているため、発言は総花的になりがちで、ワンフレーズにだけ注目すると真意を捉え損ねてしまう。
信念に欠けるわけではない。ある日銀関係者は「優柔不断ではない。過去に政策変更で経済を冷やした経緯もあり、判断に時間をかけ
ているだけだ」と説明。「目標達成を確信すれば一気に動く」という。
「確信」は得られるのか。日本経済の供給力と需要の差を表す「需給ギャップ」は足元プラス圏に浮上し、政府が掲げるデフレ脱却の条
件は形式上、満たされた。最後のピースになるのが、企業の賃上げだ。
植田氏は「賃金と物価が好循環を続けるという姿が確認できることが必要」との発言を繰り返してきた。植田氏の東大時代の教え子で
ある金融関係者は「賃上げが物価上昇に追いつく前に金融引き締めに転ずるのは問題だと(就任前に)吐露していた」と話す。
賃金は持続的に上がっていくのか。焦点は来年の春季労使交渉だ。さらなる政策修正の判断時期を「来年1~3月頃」(田村直樹審議
委員)とする意見がある。
異例の金融緩和を延々と続けることは望ましくないが、日本経済がデフレに逆戻りするリスクは冒せない。確信を持てれば前進し、そう
でなければ踏みとどまる。「到底、決め打ちできない」という言葉にこそ、植田氏の信念がにじむ。
2023/10/04 13:46 日経速報ニュース
日経平均株価の下げ幅が後場に一時700円に接近した。日銀の異次元緩和は続き、「実質マイナス金利天国」を謳歌できる数少ない国
の株との評価で春から買われてきたが、新たな段階を迎えた。株安・円安・債券安(金利上昇)のトリプル安だ。10年以上に及ぶ「異次元
緩和依存症」から東京株式市場が抜け出すためには避けては通れない苦難の局面だ。
日銀が金利を低く抑えたまま、景気が回復し、インフレ期待が上がれば、お金を借りる人は増え銀行はもうかる。投資家も、比較的簡単に
投資収益が資金調達コストを上回る。これが「実質マイナス金利天国」だ。
ところが予想に反して、米国の長期金利の上昇が止まらず、副作用が大きくなってきた。日米金利差が拡大し、輸入物価の上昇をもたら
す「悪い円安」だ。政府は口先介入や実弾の円買い・ドル売り介入で、過度な円安を阻止するというが、その足を引っ張るように日銀が金
融緩和を続ければ、市場参加者や国民は混乱する。
ゼロ金利のままでは、家計の貯蓄が海外に大挙して逃げ出す恐れもある。そうなれば、日本の財政運営は将来、極めて厳しくなる。政
治的にも政策協調の観点でも、もはや異次元緩和を続けるのは困難と市場参加者は考え、「モルヒネ停止後」の一時的混乱に備えて日
本株を手放している。
日本相互証券のデータによれば、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質長期金利は、3月31日のマイナス0.28%から6月9日
にはマイナス0.91%まで低下したが、それをボトムにマイナス幅は縮小に転じ、10月3日はマイナス0.47%だった。この間、日経平均は2
万8041円から3万2265円まで上昇し、10月4日は一時3万0500円台に下落した。
いまの実質金利の水準から日経平均の水準を割り出せば、3万0500円前後となり、時価とおおむね一致する。
QUICK・ファクトセットによれば、東証株価指数(TOPIX)のアナリスト予想ベースのPER(株価収益率)は直近で約14倍。20年の新型
コロナショック期を除くと、過去10年の上限に近い。
世界の時価総額に対する日本株の割合は9月末時点で5.9%。3月末比でも0.2ポイントしか上昇していない。06年には12%を超えてい
たが、その後低迷し、22年4月には5.4%まで低下した。ドルベースのため円安だとシェアが下がるという点を割り引いても、世界の資本
市場における「ジャパン・パッシング(日本素通り)」はなお鮮明だ。
日銀が国債を買い占めたり、上場投資信託(ETF)を通じて株式市場に介入したりするため、価格形成機能がゆがみ、海外投資家が敬
遠しているためだ。
だが、いまはいい機会だ。異次元緩和を一刻も早く解体し、マーケットメカニズムが正常に機能する市場に戻す。そうすれば、当面は生
みの苦しみは続くだろうが、日本株に投資しようと考える投資家が国内外で増えるだろう。
2023/10/04 15:42 日経速報ニュース
4日の国内債券市場で長期金利は上昇(債券価格は下落)した。きょうから新発債となった10年372回債の利回りは前日比0.045%高い
0.805%で推移している。新発債として2013年8月以来およそ10年2カ月ぶりの水準に上昇した。米連邦準備理事会(FRB)による金融
引き締めの長期化観測を背景に日本時間4日の取引でも米長期金利の上昇が続き、国内長期債にも売りが出た。
日銀が4日に実施した定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)は、残存期間「10年超25年以下」で応札額を落札額で割った応札倍
率が3.88倍と前回(9月27日、3.22倍)から上昇した。超長期債の需給がやや緩んでいることを示す結果だったとの受け止めから超長期
債が売られ、長期債に売りが波及した面もあるようだ。
幅広い年限に売りが出た。超長期債では新発30年物国債利回りが一時、前日比0.050%高い1.820%と13年9月以来となる水準に上
昇した。新発20年債利回りは同0.055%高の1.580%と13年12月以来の高水準で推移している。新発40年債利回りは同0.045%高の
1.960%と、業者間の売買を仲介する日本相互証券によると13年7月以来の高水準をつけた。
中期債は新発2年債利回りが前日比0.015%高の0.060%と15年2月以来、新発5年債利回りは同0.020%高の0.340%と13年7月以
来の高水準で推移している。
国内債の先物中心限月の12月物は反落し、前日比54銭安の144円42銭で安値引けした。中心限月として23年1月以来となる安値
を更新した。
短期金融市場では東京金融取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である12月物が前日から0.006安い99.980
をつけた。大阪取引所のTONA先物は中心限月の12月物が前日から0.0050高い99.9900で終えた。全銀協TIBOR運営機関が発表
した海外円の東京銀行間取引金利(TIBOR)3カ月物は横ばいで、前日と同じ0.02400%だった。
2023/10/04 20:30 日経速報ニュース
4日の日経平均株価は前日比711円安と急落し、約4カ月ぶりに終値で3万1000円を下回った。9月半ばの直近高値からの下げ幅は
3000円に達し、相場の流れに逆らう「逆張り」個人の買いは健在ながら戸惑いもみられる。節目の3万円への急接近で、短期の調整で
済むのか正念場を迎えている。
この日は東証プライム市場の9割超の銘柄が下げるほぼ全面安の展開だった。「米長期金利が4.8%台まで駆け上がり、(ドル建ての
運用収益が目減りする)円安も進むなか海外勢が売っている」(外国証券トレーダー)との声が聞かれた。
そんな下げ相場に買い向かうのが個人だ。ネット証券最大手のSBI証券では4日、レーザーテック(買越額63億円)、三菱UFJフィナン
シャル・グループ(同46億円)など大商い上位に買い優勢の銘柄が目立った。
横浜市在住の女性投資家は今週、配当や優待目当てで中国塗料株や霞ヶ関キャピタル株を買った。「(日々の)相場は分からないが
長期的には日本株は上がると思っている」。欲しかったが買い遅れていた銘柄を狙っているという。
個人の買いは、投資信託の資金流出入からも明らかだ。
三菱アセット・ブレインズによると、国内株式を中心に運用する公募投信(ETFなどを除く)は9月第4週(25?29日)に1470億円の資金
流入超を記録した。純流入額は前週の3.2倍に膨らみ、先進国株投信(1412億円)を上回った。国内株式型は10月2?3日も計約400億
円の流入超で、流入傾向に変調はうかがえない。
日経平均の3万?3万1000円は、5月後半にわずか約2週間で駆け抜けた価格帯だ。この程度まで落ちれば買いたいという声は多かっ
た。だが米金利急上昇でリスク回避姿勢が広がり、4日には下げが加速した。一段と下げるようだと、逆張り勢の退潮につながるとの懸
念が浮上している。
「同じ3万円でも一度3万3000円を見てからでは景色が違う」。個人の動向に詳しい松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト
はこう語り、ここにきて押し目買いの勢いの弱まりが感じられると指摘する。
逆風の一つに挙げるのが、バリュー(割安)株として人気だった顔ぶれの大幅安だ。例えば4日は三菱重工業株が6%安、日本製鉄株
は5%安で引け、どちらも9月末から下げ止まらない。「普段は値動きが比較的小さい大型株が急落すると動きにくくなる」(窪田氏)。松井
証券店内では4日時点の信用買い残の評価損益率がマイナス12.4%と、2022年10月13日以来約1年ぶりの水準に悪化した。
株安を主導しているのは短期筋のファンドなどとみられ、長期目線の海外勢による日本株への姿勢が変質したとの読みは現時点で
乏しい。ゴールドマン・サックス証券の建部和礼・日本株ストラテジストは「ストーリーを変えるような日本固有の要因はない。なぜ日本株
が下がっているのかという質問が多い」という。
野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは「あまりに急だったので投資家が動けていない。市場が落ち着けば買いは
出てくる」とみる。国内勢では金融機関の期初の益出し売りも株安の一因に指摘されており、個人もしぼめば買い手不在の様相が強ま
る。日経平均が心理的節目の3万円を維持できるかは大きな意味を持つ。
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・株、円安が招く海外投資家の売り ドル建て日経平均下落
・円安150円でも買われぬ自動車株 追い風よりリスク回避
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-04/S1ZV1KT0AFB401?srnd=cojp-v2
テクニカル指標で見た日経平均株価は売られ過ぎの領域に突入し、過去の歴史に照らすと今後反発する可能性がある。
オシレーター(振り子)系分析の一種で、過去一定期間の上げ幅と下げ幅の動向から相場の売られ過ぎ、買われ過ぎを図る株価相対力
指数(RSI)を見ると、日経平均のRSI(14日間)が売られ過ぎを示す30を下回ったのは今年2度目。1月のケースでは30を下回った後、
6月までに日経平均は30%以上上げた。
ブルームバーグが集計したデータによると、過去5年間にRSIが同様のシグナルを点灯させたケースは7度あり、日経平均は点灯後の
20営業日でいずれも上昇、平均上昇率は4.2%だった。
ただし、足元の米国金利の上昇基調は引き続き日経平均の重しになる可能性がある。その場合は節目の3万円大台のすぐ下方にあり
投資家の長期売買コストを示す200日移動平均線(2万9920円83銭)の攻防が一つの目安になる。
2023/10/05 日本経済新聞 朝刊
日銀はどこまで長期金利の上昇(国債価格の下落)を容認するのか。債券市場で日銀の植田和男総裁の姿勢を試す動きが目立ち始めた。
長期金利は4日に一時、0.8%台と2013年8月以来およそ10年ぶりの水準をつけ、日銀の事実上の上限(1%)にじわり近づいた。緩和
の出口を織り込み始めた市場との攻防戦が植田氏を待ち受ける。
債券は買えない
「ようやく思い描いてきたように長期金利が上がってきた。日銀が金利の形成を市場に委ねる以上、日銀以外の買い手が少ない10年債
の利回りは0.9%程度までは上昇しうる」。ある大手運用会社で債券運用を担うファンドマネジャーはさらなる金利上昇を予想する。10年
債の保有比率を抑え、運用リターンを上げる戦略をとるという。
市場には「落ちてくるナイフはつかむな」という急落時の投資を戒める格言がある。目先、長期金利が上がる可能性が高いとすれば、国債
は落ちるナイフのようなもの。ある地銀担当者は「次はマイナス金利の解除が視野に入っているはず。当行ではその後の利上げもリスクシ
ナリオに入っており、債券を必要以上に買うことはできない」と話す。
別の地銀の担当者も「マイナス金利解除を控え、まだ(長期金利が)上がるのではと警戒している。今の水準では手を出しづらい」と語る。
債券市場では昨年から今年初めにかけて、投機筋が日銀の政策変更を見込んで国債を空売りする場面が続いた。英ブルーベイ・フィクス
ト・インカムのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は今でも「ショートスタンス(空売り姿勢)に変更はない」と明かす。7月の長短金
利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)修正で金利上昇を予想する参加者は増え、国債を買い控える動きが広がる。
日銀はどう動くのか。「ベースとして、市場の見方が長期金利に反映される余地を広げる」(植田氏)というのが公式見解だ。長期国債の
買い入れ額は7月の政策修正後も高水準が続くが、金利上昇の速度調整はしつつも、特定の水準の防衛に動くことはなかった。1%が
近づくにつれ、この姿勢がどう変わるかが焦点となる。
日銀関係者は「できることなら金利の形成を市場に委ねたいが、一足飛びにはいかない。0.5%で単純に抑え込んでいたときより、いろ
んな要素を考えないといけない」と複雑な胸中を打ち明ける。長期金利が一気に0.9%に到達するなど、1%に迫る動きが出てきた場合
には何らかの対応が必要との声が日銀内にある。
そもそも日銀が長期金利の「念のためのキャップ」(植田氏)を1%としているのは、そこまでが合理的に説明できる金利水準と考えている
ためだ。ある日銀関係者は、自然利子率と期待インフレ率の合計が名目金利の適当な水準だとする「フィッシャー方程式」を使って、1%
上限の正当性を説明する。
自然利子率は景気に対して中立な金利水準のことで、日本の場合、0%程度との見方が多い。長期的な期待インフレ率は政府・日銀
が目標とする2%にはまだ達していない。このため両者の合計である名目金利は2%以下が妥当ということになる。さらに日銀の国債大
量保有による長期金利の押し下げ効果が1%程度あるため、その分を差し引くと1%以下という水準になる。
思惑どう抑える
もっとも、日銀がこれからマイナス金利解除などの本格的な出口に進む場合、市場参加者は1%を超えた金利上昇を織り込み始める可
能性がある。三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは「(YCC、マイナス金利解除後の)金利上限のめどは政策金利が0.5
%程度、長期金利が1.5%程度とみている」。リーマン・ショック前の07年ごろの水準で、一定の目安になるという。
植田日銀は7月、市場に先んじて動くことによって、混乱を引き起こすことなくYCC修正を乗り切った。追い込まれた末に政策を修正して
大混乱に陥ったオーストラリア準備銀行などと比べて、植田氏の手法を評価する声は多い。
ただ、日銀はマイナス金利解除については慎重に判断する構えだ。その場合、市場の思惑が先行して相場が揺れ動く展開もあり得る。
市場の期待をどう収斂(しゅうれん)させていくのか。金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)などを含めた新たな枠組みづくりも課
題となる。
2023/10/06 日本経済新聞 朝刊
「日本にとって大きな弊害が出ている。日銀が今回も動かなければ確実に(真意が正しく市場に伝わらない)ミスコミュニケーションになる」。
日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正を決めた7月会合の直前、財務省幹部は厳しい表情で話した。
あうんの呼吸
消費者物価指数の前年比上昇率は7月時点ですでに、政府・日銀が掲げる2%の目標を1年以上上回っていた。日米の金融政策の違い
が意識され、円安が急速に進展。日銀が動かなければ市場は円安容認と受け取り、円安と物価高がさらに進むことは目に見えていた。
日銀はこうした懸念にこたえるかのように7月会合で政策修正を決定。植田和男総裁は記者会見で「4月時点の(物価)見通しはやや過
小、あるいはかなり過小だった」と従来の見通しが甘かったことを率直に認めた。
3日に円相場が1ドル=150円台まで下落するなど、金融緩和の弊害が目立つなか、政策修正を探る日銀と政府・与党の足並みは今の
ところそろっている。だが、日銀が本格的に緩和の出口に向かえば、市場や経済を巡って不協和音が生じかねない。そのとき、学者出身の
植田氏が官邸や与党、財務省を説得できるかが大きな焦点となる。
「さすがにここまで(需要が)弱いとは思わなかった」。8月17日の20年物国債の入札。大きいほど不調な入札とされる、落札価格の平
均と最低の差(テール)は96銭と1987年以来の水準に悪化。財務省幹部は驚きを隠せなかった。
異次元緩和が始まった2013年以降、日銀は国債の保有残高を大幅に増やしてきた。13年3月に128兆円だった保有額(短期国債含
む)は23年6月には583兆円と455兆円増え、発行済み国債の半分以上を抱える。日銀が動けば、国債の需給はたちまち不安定化する。
財務省幹部の脳裏には約20年前、2002年9月の10年国債入札での「未達」の記憶がよみがえったという。未達とは、国債入札の応
募額が募集額に達しないこと。国債のいわば売れ残りを意味し、市場参加者の財政の持続性への不安を高めかねない。
当時の入札は、日銀が民間銀行が保有する株式を買い取るとの異例の政策を公表した直後に実施された。政策の不透明感が金融機関
の応札の手控えにつながったとの見方が多い。
財務省幹部は当時、未達について「事故みたいなもの」だと語った。確かにその後、未達が繰り返されることはなかったが、財務省の国債
管理政策が投資家の心理という不確かなものに依存していることが改めて浮き彫りになった。
国債の安定消化の難易度はさらに高まっている。日本の政府債務の国内総生産(GDP)比は2002年に150%程度だったが、足元では
250%を上回っている。
安倍派は警戒も
浮かび上がるのは、日銀が金融政策の正常化にカジを切った場合、誰が国債の引き受け手になるのかという問題だ。この10年間で保有
残高は83兆円から181兆円へと倍増させた海外勢が存在感を高める可能性がある。
金融政策の正常化で金利が上がれば、国の利払い費は膨らむ。財務省の試算によると、2024年度以降の金利が想定よりも1%上振れ
した場合、24年度の国債費が7000億円増えると見込む。25年度は2兆円、26年度は3.6兆円の増加になる。経済対策などに回せる
財源が失われれば、政府・与党の日銀への不満も高まりかねない。
「日銀はこれまでのところよくやっているが、マイナス金利解除はまだできる状況じゃない」。自民党安倍派のある議員は植田日銀に厳し
い目を向ける。中小企業の厳しい現状を踏まえれば、緩和継続こそ必要との考えは揺るがない。
歴代日銀総裁は政権との関係に苦しんできた。賃上げなどの政策修正の条件がそろったとき、政治にはどんな風が吹いているのか。金融
緩和の出口は近づいているが、その道のりはなお深い霧に覆われている。
2023/10/06 08:18 日経速報ニュース
木野内栄治・大和証券チーフテクニカルアナリスト 6日の東京株式市場で、日経平均株価は3万1000円を挟んでの展開か。3万0800
~3万1200円での推移を見込む。6日に9月の米雇用統計の発表を控えているほか、米下院議長の解任を巡る米政治の不透明感も強い。
米長期金利の上昇には一服感もみられるものの、積極的な売買は見送られるだろう。
足元では地銀株に注目している。米金利上昇が一服するなか、国内金利はゆるやかな上昇が続きやすいとみている。日本株のリバウ
ンドを見越してポートフォリオを入れ替える局面では、都市銀行に比べて出遅れ感のある地銀株に買いが入りやすいとみている。
2023/10/07 日本経済新聞 朝刊
米モルガン・スタンレー日本株担当ストラテジスト ダニエル・ブレイク氏
米長期金利の上昇に伴って世界の証券市場の先行きに懸念が浮上する中、海外勢は日本株をどうみているのか。米モルガン・スタンレー
日本株担当ストラテジストのダニエル・ブレイク氏は日本の国内景気は底堅く、東京証券取引所の市場改革など日本独自の投資テーマが続
いていると指摘。注目する業種に建設・不動産を挙げ、「日本の国内市場に強く、中国依存が低い銘柄を投資家に勧めている」と話した。
――海外投資家は日本市場をどうみていますか。
「東証の市場改革や日銀の政策修正、日本経済のデフレ脱却など以前からの投資テーマが引き続き注目を集めている。ロングオンリー(
買い持ち専門)の投資家は状況を見ながら日本株の比率を高めてきた。一部のヘッジファンドも日本企業の業績の堅調さなどを評価してき
た。これまでは期待で株価が上がっていた。これからは個別企業の業績やガバナンス体制の改善具合をより深く分析して投資する段階に
ある」
――中国経済の失速が懸念されています。日本企業への影響はどうですか。
「中国経済との関連性を他国と比較すると、実は日本はリスクの低い投資先だ。当社が調査対象としてカバーする企業の中国売上高比
率では日本は5%程度にとどまる。米国(16%)や欧州(7%)よりも低い。中国株との相関をみてもオーストラリアや韓国などに比べて低い」
――日本株のどの業種に注目していますか。
「建設と不動産だ。建材価格や金利上昇への対応を進めてきたほか、足元で割安な水準にある。配当や自社株買いも積極的だ。当社の
担当アナリストも日本の建設と不動産の投資判断を最上位の『アトラクティブ』とした」
「個別銘柄では住友不動産や鹿島、三菱重工業など国内市場に強く、中国依存度が低い企業を投資家に勧めている。投資家の注目もフ
ァナックやキーエンス、ソニーグループ、任天堂など世界的に影響力がある会社から日本の内需に強い企業にシフトしつつある。投資家と
話す際に『for Japan(日本のため)』『in Japan(日本における)』が銘柄選択のキーワードになっている」
――足元で円安が進んでいます。海外投資家に影響はありませんか。
「今後も円安が進んでしまうと、株価がそれ以上に上昇しなければ含み損になる。円安の進行を上回るパフォーマンスの企業を見つけて
投資する必要がある。もっとも、日銀の政策変更などにより円高に転じる可能性が高い。円高期待が高まれば、海外投資家は日本株を買い
やすくなる」
「円高は日本企業には大きなリスクではない。来年の年央(6月末)にかけて円の水準は1ドル=133円程度になるとみている。企業の
想定為替レートも135円前後が多く、130円前後までの円高であれば業績をそれほど悪化させない。世界的に予想以上の不況に陥り、
円高が110円前後まで一気に進んでしまった場合のみ悪影響がある」
――日本市場で今後注目するポイントは。
「2024年1月に始まる少額投資非課税制度(NISA)の新制度だ。投資に消極的だった日本の個人が積極的になると期待している。個
人資産の株式への投資比率は米国で40%、欧州で20%に対し日本は10%程度。この比率が欧州に近づくだけでも株価の大きな上昇に
つながる。個人の市場参加が広がれば、日本株は次の段階に上がるだろう」
黒船マネーが日本に襲来!「資産運用特区」関連株は今が仕込み場 <株探トップ特集>
―2000兆円超の家計金融資産に外資系が食指、外国金融人材増加で関連サービスも成長へ―
岸田政権が掲げる「資産運用立国」の政策プランに注目が集まっている。国内の大手金融グループの運用力を強化するための支援策に
加え、海外の資産運用会社の国内誘致を視野に、外国人金融人材の働き方や生活に配慮した「資産運用特区」の創設に向けた準備が
今後、加速する見通しだ。株式市場において特区創設はどの銘柄に恩恵をもたらすことになるのか、掘り下げていく。
●競争力強化へ年内に政策プラン
岸田文雄首相は9月21日(日本時間22日未明)、国連総会の出席のために訪問したニューヨークで、米国の経済人らを前に講演し、 資産
運用立国に向けた政策の一環として、資産運用特区を創設すると表明した。英語のみで行政対応が完結できるための規制改革を進めると
ともに、来日する外国人に対してビジネスや生活環境の整備を進める構想を明らかにした。
これまでも国内では東京都による「国際金融都市・東京」構想など、海外の金融機関に日本市場への参入を働きかける取り組みが進めら
れてきたが、今回は政府の「新しい資本主義実現会議」が昨年11月に決定した「資産所得倍増プラン」が土台となっている。今年6月に閣議
決定された経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)では、2000兆円の家計金融資産を開放することで持続的な成長につなげる資産
運用立国の実現に向け、同プランを実行する方針が示され、更に資産運用会社の運用力の強化などを目的とする政策プランを年内に立案
することが明記された。
当然ながら、資産運用会社や年金基金などの運用パフォーマンスの向上は、家計の金融資産所得の増加に直結する。資産運用業界へ
の新規参入を後押ししつつ、プレーヤー間の競争を促し、個々の企業の運用能力を高めることができれば、投資資金のリターン拡大を伴っ
て、金融市場に更なるマネーを呼び込むことが可能になる。
●銀行・証券セクターだけではない収益拡大シナリオ
こうした資産運用業界への支援策は、中期的な観点では野村ホールディングス <8604> [東証P]や大和証券グループ本社 <8601> [東証
P]などの証券各社や、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]、みずほフィ
ナンシャルグループ <8411> [東証P]といった金融機関の収益力を高めると期待されている。資産運用ビジネスの拡大とともに、新たに日本
市場に参入する海外の金融機関が増え、その運用資金が東京市場に流入すれば、日本取引所グループ <8697> [東証P]の収益に大きく
貢献することになるだろう。
もっとも、国策の恩恵を享受するのは銀行・証券セクターばかりではなさそうだ。資産運用業界の競争促進策の一つとして検討されている
のが資産運用特区だが、その候補として、政府は東京都や大阪府、福岡県と札幌市の4自治体を軸に検討していると報じられている。いず
れも訪日外国人に人気の高い都市ではあるものの、実際にその土地で生活するとなれば、東京都であっても、生活面でのさまざまな困難を
克服する必要に迫られることとなる。
特区創設を機に、外国人材にとって魅力的なビジネス環境の整備に向けて既存のオフィスの建て替えなどを促す再開発構想が今後、浮上
する可能性もあるだろう。海外のIT機器の導入支援を得意とする企業にも、受注の拡大の思惑が広がりそうだ。こうした観点をもとに、資産
運用特区の関連銘柄をピックアップしていく。
平和不動産 <8803> [東証P]は、東証と大阪取引所、名証、福証が入居するビルの賃貸収入を収益源とし、主要都市でオフィスビル・商
業施設事業を展開する。兜町の再開発を推進し、都の国際金融都市構想にも深く関与してきた。特区創設にあわせて、大阪・北浜を含め
各都市でオフィス地区の再開発構想が浮上した場合、平和不は大きな役割を担うこととなる公算が大きい。
オフィスの新設という側面では、金融機関向けのシステム構築を展開するシンプレクス・ホールディングス <4373> [東証P]をマークしたい。
メガバンクや大手証券など国内の主要金融機関との取引を通じて安定的な成長を果たしており、24年3月期の売上高と利益は再上場後の
過去最高を更新する見通し。今年1月にはSBIホールディングス <8473> [東証P]と傘下のSBI証券との資本・業務提携を発表した。その
SBIは欧州大手資産運用会社の英マン・グループとの合弁会社設立を7月に、米KKR<KKR>との日本での資産運用会社の設立を9月に
公表するなど、海外金融機関との協業を加速している。SBIの「攻めの姿勢」による需要拡大の思惑にとどまらず、海外運用機関が日本オフ
ィスを新設・増強する流れが本格化すれば、事業にプラス効果をもたらしそうだ。
JTP <2488> [東証S]は外資系IT企業の製品の保守・点検業務を手掛けている。システムの導入から運用までを、バイリンガルでかつワ
ンストップで対応する強みを持つ同社は、27年3月期に売上高92億~100億円(23年3月期73億8100万円)、営業利益7億1000万~10億円
(同4億6400万円)に伸ばす目標を掲げている。特区創設による特需が発生した際には、中期計画の上振れに寄与することとなりそうだ。
エックスネット <4762> [東証S]は生損保や投信会社、信託銀行など機関投資家を中心に約180社の顧客に対し、資産運用管理専門のシ
ステム提供と業務サポートを展開。株式の流動性は高くはないが、海外運用会社との取引拡大により事業を成長させられるか注視されそう
だ。NTTデータグループ <9613> [東証P]が過半を出資する親子上場銘柄としても押さえておきたい。
海外の資産運用会社であっても、顧客の投資資金のリターンの拡大を追求する責任を負うことには変わりがない。企業価値の向上策を
巡り投資先との意見の相違が埋まらない場合、株主総会において企業側が提案した議案に反対を余儀なくされ、その理由について、日本
のメディアに情報発信をする必要に迫られるケースも出てくる。日本での事業を拡大するうえでは、日本語によるPR戦略の立案も欠かせな
い視点となるだろう。
プラップジャパン <2449> [東証S]は、外資系企業の日本での広報・PRの支援で確固たるポジショニングを確立する。世界的な資産運用
会社やヘッジファンドの広報業務での実績を持ち合わせており、日本に進出する外資企業の増加は、同社の業績に直結してプラス効果を
もたらしそうだ。
同業のベクトル <6058> [東証P]もアジア最大級のPR会社として、海外では香港やシンガポールなどで業務を展開する。アジア系の資産
運用会社が日本に進出する際には、国内でのPR案件の増加に寄与することが見込まれる。
海外の運用会社が日本拠点を設立する動きが相次げば、高度人材の獲得競争が一段と激しくなるだろう。ハウテレビジョン <7064> [東
証G]は、グローバル企業への就職を目指す中途採用プラットフォーム「Liiga」を展開。登録会員のうち金融プロフェッショナルは全体の15%
を占める。新卒者向けプラットフォーム「外資就活ドットコム」では、外資系投資銀行の内定を目指すトップクラスの人材が登録する。24年1月
期の単体業績予想は、経常利益が前期比12.5%増の4億4500万円と最高益を計画。マーケティング施策が奏功し、取引社数と会員数は
順調に拡大している。
●外国人への生活サポートも需要拡大へ
生活サポート面では、リログループ <8876> [東証P]に注目したい。同社は借り上げ社宅の管理や日本企業に勤める会社員の海外赴任
支援事業とともに、外国籍社員の受け入れ支援サービスを展開。ビザや短期宿泊先、住居の手配のほか、携帯電話の契約などあらゆる支
援をワンストップで英語により提供する。現状で2400億円弱の時価総額を45年3月期に10兆円とする野心的なビジョンを掲げる同社にとって
、海外からのハイレベル人材の増加は成長加速の重要なドライバーとなるだろう。
子どもの教育面ではAoba-BBT <2464> [東証P]が、オンライン経営大学院「ビジネス・ブレークスルー大学大学院」とともに、インターナ
ショナルスクール事業を展開する。生徒数は1500人弱と、2013年の新規参入時のおよそ6倍の規模にまで増加。金融プロフェッショナル人
材の来日に伴って、特区で生活する外国人児童・生徒が増加すれば、同事業の更なる成長に寄与しそうだ。外国人ITエンジニア紹介のビ
ズメイツ <9345> [東証G]は、ビジネス向けのオンライン日本語会話プログラム「Zipan」を提供。外国人による日本語学習の需要拡大による
恩恵が期待できる。
2023/10/08 05:00 日経速報ニュース
市場関係者から日銀が10月の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の再修正に動くのではないかと
の声が出ている。米金利の上昇などで国内の長期金利が上昇し、日銀が7月のYCC修正で定めた1%という事実上の上限に近づきつつ
あるためだ。
「市場環境次第だが、10月会合で10年金利の上限を1.5%まで引き上げる可能性は高まっている」。有力な日銀ウオッチャーのひとり、
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏はこう指摘する。マイナス金利解除などの緩和の出口を市場が意識すれば、金利上昇は一段と加速しか
ねない。実際にマイナス金利政策を解除する前に、YCC再修正が必要になりかねないというわけだ。
確かに金利上昇の勢いは強い。海外金利上昇のあおりを受け、6日には長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.805%
まで上昇。日銀からも「0.5%程度という水準からはかけ離れている」と、想定外の急上昇を懸念する声が出始めている。
7月のYCC柔軟化は「市場の見方がもう少し長期金利に反映される余地を広げようという措置」(植田和男総裁)だった。だが、日銀は4日
の定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)で、当初の予定では対象になかった残存期間「5年超10年以下」を追加。6日には5年物の共
通担保資金供給オペも実施し、金利上昇をけん制する姿勢を示した。
日銀にとって悩ましいのは、足元で円安の勢いが強いことだ。米国の長期金利が上昇するなか、YCCを続ける日銀が長期金利を抑え続
ければ、日米金利差が広がって円安がさらに進む可能性がある。3日には円相場が一時、1年ぶりに1ドル=150円台を付けた。長期金利の
上昇を止めれば円安が加速し、円安を止めようとすれば金利上昇を容認せざるを得ないというジレンマがある。
にわかに浮上したYCCの再修正論について、日銀はどう考えているのか。ある日銀関係者からは「いつも通り、会合までの経済・物価・
金融情勢を見極めて決めていくしかない」というやや歯切れの悪い言葉が返ってきた。否定でも肯定でもない、どちらとも取れる言葉だが、
全否定できないほどに日銀が金利上昇を重く受け止めているようにも聞こえる。
一方でこの関係者は「(現状の長期金利は)1%にすぐにタッチする水準ではない」とも話した。今後、金利がさらに上昇して上限の1%を
試すような局面になれば何らかの対応が必要になるが、まだ若干距離はあるとみている可能性がある。米国発の金利上昇が持続的なもの
なのかどうか、見極める必要があるのは確かだろう。
金融政策を決める政策委員会のメンバーのYCCに対する考え方も、一枚岩とはいえない。9月会合の「主な意見」では「運用を柔軟化した
現行のYCCのもとで、物価動向を見極めることが重要」との意見がある一方で、「柔軟化を経ても副作用は残存している。多くの役割を果た
した段階だと考えられる」と撤廃の示唆ともとれる発言もあった。
英ブルーベイ・フィクスト・インカムのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は「日銀が2%に達したと認める瞬間が近い」とし「(国債の
)ショートスタンス(空売り姿勢)に変更はない」と明かす。日銀は10月会合で新しい物価見通しを示す。物価見通しがさらに上振れ、金利上
昇が一段と進む展開になれば、YCCの再修正や早期撤廃がより現実味を増すことになる。
2023/10/09 05:00 日経速報ニュース
日銀総裁に植田和男氏が就任して9日でちょうど半年。就任当初は緩和縮小に慎重なハト派発言が目立ったが、7月の金融政策決定会合
では市場の思惑に先手を打つかたちで長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正に動いた。賃上げと安定的な物価上昇の
好循環を見極めつつ、金融緩和の出口をどう探っていくかに市場の関心は集中する。
日本経済新聞は連載企画「植田日銀半年 近づく出口」で、初の学者出身の日銀総裁の半年を描いた。政策運営の手法、マーケットとの対
話、官邸や財務省、与党との距離感という3つの切り口から、植田日銀とは何かという問いに対する現時点での答えを示すことが狙いだった。
【植田日銀半年 近づく出口】
㊤植田日銀、2%へ揺るがぬ信念 確信なら「一気に動く」
㊥国債は落ちるナイフか 日銀と市場、再び攻防戦へ
㊦学者総裁、政治を口説けるか 緩和出口に最大の関門
政策の方向性を大胆に示した前任の黒田東彦氏と比べ、植田氏は何を考えているのか分かりにくい、どこか捉えどころのない存在でもある。
植田氏をこの半年、ウオッチし続けてきた日銀取材総括の小野沢健一キャップと三島大地記者に、企画の「あとがき」として植田日銀論を改め
て用意してもらった。
企画では描ききれなかった植田日銀の別の側面に光を当てたい。
(金融グループ次長、石川潤)
「冷静な頭脳と温かい心」
総裁就任後、初めて植田和男総裁に接したのは、今年4月、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に参加するため訪れた米ワシント
ンでのことだった。会議の開幕にあたり、植田氏は手短に、記者団の取材に応じた。
「海外中銀の方たちと密接な関係を築いていく、そういう第一歩にしていきたい」
抱負を問われた植田氏は、後列にいた記者が聞き取れないほどの小さな声でこう答えた。毀誉褒貶(ほうへん)は激しいがぶれずに信念を
貫き通す黒田氏を直前まで取材してきた身からすると、少し頼りない印象も受けた。
しかし、同時に記憶に刻まれたのは、植田氏が記者一人ひとりの目をみて自らの言葉で質問に答えていたことだった。官僚出身の黒田氏は
手元の想定問答に目を落としながら、日銀の公式見解を読み上げることが少なくなかった。
一つ一つの質問に、丁寧に答えようとすればするほど、発言の細部には微妙なブレも生じる。植田氏のこうした姿勢はときに「発言に一貫性
がない」として批判されたり、市場に混乱を招いたりしてきた。
だが、日銀が金融政策の独立性を維持しているのは、政策に対する説明責任と表裏一体。新日銀法成立後の最初の審議委員を務めた植
田氏が、立て板に水のような官僚答弁ではなく、相手に合わせて自らの言葉で「わかりやすく伝えること」(植田氏)を意識してきたと考えれば
納得がいく。
植田氏の信念の固さを象徴するエピソードがある。「皆さんと一緒に物価安定の達成というミッションの総仕上げを行いたい」。総裁就任後初
の出勤日となった4月10日、職員を前に植田氏はこう挨拶した。
5年の任期の間に果たすべき自らの役割は異次元緩和からの正常化であり、そこに至るまでのタイミングを慎重に見極めているに過ぎない
――。そうした見方を踏まえて植田氏の半年間を振り返ると「頼りない」という印象はもはや持てない。
経済学の大家であるアルフレッド・マーシャルは、経済学者が持つべき資質に「冷静な頭脳と温かい心」があると述べている。日銀初の経済
学者出身の総裁として、冷静な頭脳と温かい心を持って政策運営にあたる。そうした決意が植田氏からはにじみ出ていると感じられてならない。
(三島大地)
静かなゲームチェンジ
「金融政策の出口は当然意識していますよ」。ある日銀関係者との会話の中で、ふと違和感を覚えた瞬間があった。「限界はきていない」と
して異次元緩和継続を強調し続けた黒田前総裁が日銀を去って半年、話題にするのも控えるような雰囲気があった金融正常化に対する空気
はいつの間にか変わっていた。
その変化を如実に伝えるのが、今年9月の金融政策決定会合での政策委員の発言を紹介する日銀の「主な意見」だ。
政府・日銀が掲げる物価2%目標の達成状況は「見通せる状況には至っていない」との見方が多いものの、「はっきりと視界に捉えられる状
況」との主張が紹介された。マイナス金利政策や長短金利操作の解除・撤廃を意識した発言や上場投資信託(ETF)といった国債購入以外
の日銀の市場操作についても「要否について検討すべき」だとの声が上がった。
意見は匿名で紹介され、実際はごく少数の主張である可能性もゼロではないだろう。ただ、人数はどうあれ、こうした意見をきちんとすくい
上げて紹介する日銀の姿勢からは、出口を意識する意見を重視し始めたことがうかがえる。
外的環境の要因はもちろん大きい。物価高は日銀の当初想定を超えて長期化し、植田総裁は過去の物価見通しを「やや過小、あるいはか
なり過小だった」と認めざるをえなくなった。円相場は対ドルで再び150円台を一時付け、物価高とあいまって国民生活の負担が懸念される。
長引く物価高、そして円安が日銀の金融政策運営にじりじりと圧力をかける構図が常態化する。
「異次元緩和は行き詰まっている」。以前に比べ、日銀内である意味タブーともいえる批判的な意見を聞くことが少し増えた印象もある。「き
ちんと人の話を聞く」(日銀関係者)という植田総裁のもとで、職員がより自由に発言しやすくなったのかもしれない。
緩和継続一辺倒の印象さえあった日銀内の空気が静かに、だが確実に出口を見据えたものに変わりつつある。とはいえ実際に正常化に
踏み出すのは困難を伴うだろう。
カギを握る賃上げは大企業を中心に広がる気配を見せるものの、中小への浸透は未知数。総選挙といった政治サイドの動きがあれば、金
融政策が影響を受ける可能性もある。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる大規模攻撃を受け、イスラエルは戦争状態を宣言した。中東情勢の不安
定化で世界経済の先行きは再び混沌としつつある。目まぐるしく変わる国内外の動きにどう目配りしていくか、金融正常化へのハードルが
また一段高くなったことは間違いない。
2023/10/14 06:13 日経速報ニュース
【NQNニューヨーク=稲場三奈】13日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に反発し、前日比39ドル15セント(0.11%)高の3万3670ドル
29セントで終えた。朝発表の四半期決算が好感された金融株などを中心に買いが入った。一方、中東情勢を巡る緊張が一段と高まっており、
株式相場全体の重荷となった。
金融のJPモルガン・チェースは前日比2%弱上昇した。朝に発表した2023年7?9月期決算では1株利益などが市場予想を上回り、買いを誘っ
た。ダウ平均の構成銘柄ではないが、同業のシティグループとウェルズ・ファーゴも同日に決算を発表し、市場の想定を上回る内容が評価され
、買いが入った。
医療保険のユナイテッドヘルス・グループも3%弱高で終え、指数全体を91ドル押し上げた。朝発表した7?9月期決算は増収増益となり、売上
高と1株利益がいずれも市場予想を上回った。ダウ平均は上げ幅が300ドル超となる場面があった。
半面、中東情勢の緊迫化は株式相場の重荷となった。イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突が激化することへの懸念は根強い。積極
的な運用するリスクを回避しようと、相対的に安全資産とされる米国債や金に資金を移す動きもみられた。
原油価格の大幅な上昇で、インフレが再燃するとの懸念も株売りを誘った。ミシガン大が13日発表した10月の消費者態度指数(速報値)は6
3.0と前月(68.1)から悪化。1年先の予想インフレ率は3.8%と前月(3.2%)から上昇し、5カ月ぶりの高水準となった。「様々な不安が市場を取り
巻いている」(ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)との声が聞かれた。ハイテク株を中心に売りが出やすく、ダウ平均は下落に転じる場面が
あった。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は13日の決算資料内で、インフレ高止まりのリスクや米金融引き締めの影響、ロ
シアのウクライナ侵攻の長期化やイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃といった地政学リスクに言及。「世界は過去数十年で最も危険な時
期にあるかもしれない」との見解を示し、投資家心理が悪化した面もあった。
個別では、外食のマクドナルドや日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などが買われた。石油のシェブロンも高かった。半面、映画
・娯楽のウォルト・ディズニーと航空機のボーイングは下落。顧客情報管理のセールスフォースやスマートフォンのアップルといったハイテク株
も安かった。
ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は続落した。前日比166.985ポイント(1.23%)安の1万3407.234で終えた。電気自動車(EV)
のテスラや画像処理半導体のエヌビディアが下落。アナリストの投資判断引き下げが伝わった動画配信のネットフリックスも売られた。
2023/10/16 05:00 日経速報ニュース
日銀が2007年以来となる利上げ局面に足を踏み入れようとしている。マイナス金利解除の時期は、賃上げの動向を見極めながら慎重に判断
する構えだが、市場では「時間の問題」との捉え方が多い。むしろ焦点となるのは、その後どれくらいのペースで、どこまで利上げを進めていく
かだろう。日銀はどう考えているのか。
「意図的なビハインド・ザ・カーブ」
「当然、その先も考えている」。日銀関係者にマイナス金利解除後の利上げについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。マイナス金利政策の
解除は、これまで四半世紀にわたって続いたデフレとの戦いの総仕上げ。だが、それは日銀にとってゴールではなく、物価を2%近辺で安定さ
せるために最適な政策金利を探るスタートになる。
物価上昇が続くなか、日銀はこれまで粘り強くマイナス金利政策を続けてきた。元日銀理事で東京財団政策研究所主席研究員の早川英男氏
はこうした日銀の手法を「意図的なビハインド・ザ・カーブ」と呼ぶ。経済や物価の情勢と比べて金融政策をあえて後手に回らせることで、日本経
済がデフレに逆戻りしないように万全を期してきたというわけだ。
問題は、辛抱の結果として物価2%目標の達成がようやく確認された場合にどうするのか。早川氏は「好循環を確認できれば(これまで遅らせ
ていた分だけ)少し速いペースで利上げを進めなければならないだろう」と指摘する。日銀内にも、物価上昇への政策対応が遅れすぎてしまうこ
とへの警戒がある。
政策金利の目安は2%?
では、どこまで利上げを進めるのか。参考になるのが、景気を刺激もしなければ冷やしもしない中立金利だ。日本の中立金利はゼロ%程度か
小幅なマイナスとの見方が多い。これは物価上昇の影響を除いた実質ベースなので、物価分を加えたものが政策金利のあり得べき水準となる。
日銀が物価の基調が2%程度まで高まったと判断するならば、政策金利の目安は2%近くとなるはずだ。
もちろん、そこまで一気に政策金利を引き上げようという考え方は、日銀内には見当たらない。実際には「物価上昇率2%という北極星」(日銀
関係者)を目印に、インフレ圧力の強さを確かめながら段階的に利上げを進め、どこまで政策金利を引き上げられるか見定めていくことになる。
日銀が前回利上げを進めたのは、06年3月の量的緩和政策の解除後だ。同年7月に政策金利をゼロから0.25%に引き上げ、07年2月には0.5
%へと2回目の利上げに踏み切った。当時と比べれば物価上昇の勢いが強いため、より早いペースで利上げを進める可能性はある。市場参加
者からは半年に1回程度の利上げを見込む声が聞かれる。
米国では米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの政策金利見通し(ドットチャート)を公表し、利上げのペー
スや到達点の目安を明らかにしている。だが、日銀は日本版ドットチャートの作成には今のところ及び腰だ。当たりもしない見通しを示したとこ
ろで、かえって市場を混乱させるだけとの冷めた見方がある。
長く金利のない世界になれきった日本では、限定的な利上げであっても、経済に思わぬショックを引き起こす恐れがある。さらに、マイナス金
利解除はともかく、その先の利上げをあからさまに示唆すれば、政治と無用のあつれきが生じかねない。一歩ずつ着実に、というのが日銀のス
タンスといえる。
市場参加者のマイナス金利解除時期の予想は来年4月に集中する。解除が近づけば、その先の利上げが意識されていくことは間違いない。
現時点で利上げが十分織り込まれていないとすれば、市場に影響が広がる可能性がある。焦点になるのが、これまで日米金利差の拡大を背
景に進んできた円安にブレーキがかかるのかどうか。さらには長期金利の行方だろう。
「米国は九回裏、日本は一回表」
三井住友銀行の専務執行役員で市場営業部門を統括する小池正道氏は「利上げという意味では米国はすでに九回裏だが、日本は一回表。
円安はこれ以上続かない」と語る。イエレン米財務長官が日本の円買い介入に理解を示したと報じられており「米国もさらなる円安・ドル高は
望んでいないのではないか」とみる。
日本の長期金利は今月、一時0.8%台まで上昇した。日銀の利上げを市場がどんどん織り込んでいく展開になれば、日銀が事実上の上限と
する1%で抑え続けることは難しくなる。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は7月に修正したばかりだが、再修正が視野に入ってきて
もおかしくはない。好循環の確度が高まることで長期金利が上がるのであれば、日銀としても抑える理屈は見つけにくくなる。
2023/10/18 日本経済新聞 朝刊
日銀はいつ追加の政策修正に動くのか。日本経済新聞がエコノミスト16人に聞き取り調査を実施したところ、9人が2024年4月のマイナス
金利解除を予想した。その前に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正があるとの意見もあった。中東情勢の緊迫化で
原油高が進むなど、不透明な世界情勢をリスクとして指摘する声もあがった。
10月13日時点でエコノミストの回答をまとめた。日銀の植田和男総裁は9月の記者会見で「政策修正の時期や具体的な対応について到底
決め打ちできない」と語り、マイナス金利の早期解除観測をけん制した。今回の聞き取り調査では、解除予想は来年4月に集中。「12月に前
倒し(で解除)の可能性もある」(モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅氏)との声もあるが、年内解除論は大きく後退した。
マイナス金利解除の時期を考える上で注目されるのが、物価と賃金の好循環につながるかどうかを占う春季労使交渉(春闘)の動向だ。みず
ほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏は「3月ごろから少しずつ(労使交渉の結果が)分かってくる」として、4月にマイナス金利の解除を
予想した。
日銀は毎年1、4、7、10月の会合で、数年分の消費者物価上昇率の見通しを示す。四半期に1回の新たな見通しを示すタイミングで、日銀
が動くとの見方は多い。来年4月のマイナス金利解除を予想するUBS証券の足立正道氏は「4月会合で日銀は26年度の物価見通しを初めて
出す。ここで2%と置き、マイナス金利をやめるのではないか」とみる。
マイナス金利政策を解除する前に、再びYCCを修正するとの見方もある。日本の10年物国債の利回りは米国の金利上昇につれて今月、一時
0.8%台まで上昇した。日銀が事実上の上限とする1%とはまだ距離があるが、UBS証券の足立氏は「10月会合で長期金利の誘導目標を
(現在のゼロから)0.5%に引き上げ、上限は1.5%まで拡大するのではないか」と予想する。
今回の調査では、マイナス金利の解除とYCC撤廃の順序で見方が分かれた。第一生命経済研究所の藤代宏一氏は「市場が利上げを織り
込むと日銀の想定以上に金利が上昇する可能性があるため『保険』としてYCCを残すのではないか」と指摘。JPモルガン証券の藤田亜矢子
氏は「総裁、副総裁の発信ではマイナス金利解除の条件はYCC撤廃より高いのではないか」と述べた。
出口に向けて動き始めた日銀だが、世界経済の先行きがリスク要因となる。ウクライナ情勢や米欧の景気動向に加え、パレスチナのイスラム
組織ハマスとイスラエルの衝突も起きた。「(中東情勢は)現時点では金融政策への影響は限定的」(みずほ証券の上野泰也氏)との声が多い
が、「植田総裁は下振れリスクを重視するので、海外景気の見極めが難しいうちは判断を先延ばしにする可能性がある」(SMBC日興証券の
丸山義正氏)との見方もある。
2023/10/18 09:08 日経速報ニュース
18日朝方の国内債券市場で長期金利は上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.030%高い0.810%
をつけた。2013年8月以来、10年2カ月ぶりの高水準となる。市場予想を上回る米小売統計で17日の米国債相場が下落し、国内債にも売り
が及んでいる。
17日のニューヨーク市場で米長期金利の指標となる米10年物国債利回りは前日比0.13%高い4.83%で終えた。同日発表の9月の米小売
売上高が前月比0.7%増と、市場予想(0.3%増)を上回った。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの見方が改めて
強まり、米長期金利の上昇を促した。
米ブルームバーグ通信は17日、日銀が30~31日に開く金融政策決定会合で議論する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」について、
2024年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)上昇率の見通しが「従来の1.9%から2%以上への引き上げが視野に入る」と報じた。
市場では「原油価格の影響など既に判明していることが多く、政策正常化の思惑を大幅に高める内容ではないが、ひとまずニュースのヘッド
ラインに反応しているようだ」(国内証券の債券アナリスト)との声が聞かれた。
18日朝方の国内債券市場で先物相場は続落した。中心限月の12月物は前日比33銭安の144円93銭で寄り付いた。大阪取引所と東京
金融取引所の無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である12月物の取引は成立していない。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-17/S2NVJVT0G1KW01?srnd=cojp-v2
2023/10/18 16:41 日経速報ニュース
国内債券市場で幅広い年限の利回りが再び上昇基調を強めている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時0.815%と
2013年8月以来、10年2カ月ぶりの高水準をつけた。国内外の金利先高観に揺らぎはなく、日銀が18日に実施した2本の臨時の国債買
い入れオペ(公開市場操作)も金利低下を促す要因とはみなされなかった。
中期ゾーンの新発2年債利回りは0.065%と15年2月以来、新発5年債利回りは0.350%と13年6月以来の高水準をつけた。超長期の
40年債は一時2.045%と、業者間の売買を仲介する日本相互証券によると13年2月以来の高水準をつけた。
これまで国内債の利回り上昇を促してきた「2つのエンジン」は健在だ。1つは米金利上昇。米長期金利の指標となる米10年物国債利
回りは17日に一時4.86%と、6日までにつけた今年の最高水準(4.88%)に迫っている。17日発表の9月の米小売売上高が前月比0.7%
増と市場予想(0.3%増)を上回り、米景気の強さを示すとともに米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げ観測を再燃させた。米長期金利
は5%の大台乗せが改めて視界に入っている。
もう一つのエンジンは言わずと知れた日銀の政策修正観測だ。18日は米ブルームバーグ通信による17日の報道が関心を集めた。日銀が
30~31日に開く金融政策決定会合で議論する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」について、2024年度の消費者物価指数(生鮮食品
除くコアCPI)上昇率の見通しが「従来の1.9%から2%以上への引き上げが視野に入る」というのだ。
日銀の7月時点の見通しでは、23年度のコアCPIは2.5%と「物価安定の目標」である2%を超えていた。24年度も上方修正されれば連続
となり、目標の持続的・安定的な達成を連想させる。岡三証券の鈴木誠氏は「物価見通しが24年度も2%以上とのニュースは日銀による金
融政策修正の思惑をより強めたのではないか」と指摘する。
日銀はすかさず金利抑制に動いた。18日午前に残存期間「5年超10年以下」と「10年超25年以下」を対象とする臨時の国債買いオペを実
施した。とりわけ「10年超25年以下」は今年の2月以来8カ月ぶりで、「ふだんより強めに金利の上昇を抑えようとするメッセージ」(三井住友
トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊氏)との声がある。
一方、もう1本の「5年超10年以下」の予定額は3000億円と、前回の臨時オペ(9月29日)と同額だった。「10年超25年以下」の予定額は
1000億円で、規模の面では日銀が金利上昇へのけん制姿勢を強めているとは受け止めにくい。稲留氏は「規模がそれほど大きくないため、
あくまで急激な金利上昇に対するスピード調整を狙ったものとして軽く受け流された印象だ」と話す。
こうしたなかで国債保有に慎重なムードが広がりやすくなっている。直近の入札は超長期債を中心に弱い結果が続く。例えば財務省が17
日に実施した20年物国債入札は、今月末の日銀会合への警戒や構造的な需給不安などから「不調」に終わった。「国内金利はもうしばらく
上振れを覚悟する必要がありそう」(国内証券の債券ストラテジスト)との声は多い。
2023/10/19 日本経済新聞 朝刊
気候変動の情報開示が企業評価をさらに揺らす。温暖化ガス(GHG)の多排出企業は株価のディスカウントが鮮明だが、今後は供給網
上での排出「スコープ3」の開示も広がる。日本企業にとっては事業関連の排出だけでなく、政策保有株式など出資先の排出も大きな火種
になりかねず、個別銘柄の株価にも影響しそうだ。
「温暖化ガスがコストとして意識されるなか、座礁資産化の観点でリスクの高い政策保有株式を抱える企業にはより明確な説明を求めた
い」。シュローダー・インベストメント・マネジメントの豊田一弘日本株式運用総責任者はこう語る。
かつてCSR(企業の社会的責任)部の管掌だった温暖化ガスは経営の最重要課題に変貌。投資評価にも直結する。野村証券によると
、エネルギーや素材などの多排出産業で自社拠点からの排出「スコープ1」と使用エネルギー由来の排出「スコープ2」が多いほど、PER(
株価収益率)が低くなる傾向が鮮明だ。
今後は供給網分の排出「スコープ3」が注目を集めそうだ。原材料調達先の排出が多ければ環境規制強化で調達コストが増し、排出が多
い製品は消費者に敬遠されやすくなる。シュローダーはスコープ3を含めて企業の環境対応を評価。適正株価算出に使うPERの値を調整する。
「スコープ3も開示を検討してください」。三井住友DSアセットマネジメントの坂口淳一責任投資オフィサーは最近、投資先に対しこうした働
きかけを強めている。同社は開示の充実度やアナリストによる気候変動の財務影響評価などを通じて同業種内で偏差値をつける。一部のフ
ァンドマネジャーは銘柄選びの判断材料にし始めた。
現状で「3」の企業開示は少なく情報ベンダーが提供する推定値にも差があるが、グローバル開示ルールを策定する国際サステナビリティ
基準審議会(ISSB)が6月に公表した気候変動基準で、「3」を義務にした。日本でもISSBベースの開示制度が検討され、数年後に義務化
される見通しだ。
開示範囲は企業の判断による。気候変動リスクに敏感な投資家は開示の拡充を訴える。「日本企業は政策保有分の気候変動リスクも開
示する責任がある」と強調するのがフィデリティ投信の井川智洋ヘッド・オブ・エンゲージメントだ。
井川氏が根拠とするのがスコープ3の一要素の投資先の排出量だ。ISSBの基準では同開示を明確に求める先は商業銀行や運用会社だ
が、有価証券の価値変動が自社の企業価値を揺らすのは事業会社も一緒だ。
株式保有の規模が大きく、投資先の排出が多いほど抱え込むリスクも大きい。たとえば豊田自動織機の現状のスコープ1~3は4000万ト
ン超だが、政策保有株の排出分を出資比率に応じて足しあわせると全体の排出は2倍。住友不動産は2・6倍だ。
日本企業特有である政策保有関連のリスクが伏せられていれば、日本企業全体のディスカウントにもつながりかねない。
岸田文雄首相は10月初旬、7つの公的年金基金(資産90兆円規模)が新たに国連の責任投資原則(PRI)の署名に向け作業を進めると
表明。サステナビリティーに注目する投資マネーは増える。排出量をどこまで開示するか、保有を正当化しにくい資産をどうするか。企業は大
きな宿題を抱える。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-18/S2M65NT0G1KW01?srnd=cojp-v2
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/F4QMCSZSRRJZXMCI7NJNGPI2ZM-2023-10-18/
2023/10/19 11:46 日経速報ニュース
19日午前の国内債券市場で、長期金利は上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.020%高い0.825%
と、2013年8月以来10年2カ月ぶりの高水準をつけた。米金利の先高観が強まるなか、インフレ率の高止まりで日銀が早期に政策修正に動く
との思惑もくすぶり、幅広い年限で国内債には売りが出た。
18日発表された9月の米住宅着工件数が市場予想を上回って増えるなど米景気の底堅さを映す経済指標の発表が続いている。米連邦準備
理事会(FRB)が金融引き締めを長引かせるとの見方から米長期金利は約16年ぶりの水準に上昇し、国内金利の上昇を促した。
日銀は10月30~31日開催の金融政策決定会合にあわせて公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しの引き上げを検
討しているとの報道が相次いでいる。2%の物価目標の実現が近づけば大規模な金融緩和の正常化に動きやすくなるとの見方が強いのも債
券相場の重荷となった。
財務省は19日、残存期間「5年超15.5年以下」の利付国債を対象にした流動性供給入札(発行予定額5000億円程度)を実施する。国内でも
金利の先高観が強まっているものの、流動性供給入札では「需給が逼迫している銘柄を発行するので、相場にかかわらず需要が集まりやすい
傾向がある」(国内証券)として「無難」な結果を見込む声があった。
中期債では新発5年物国債の利回りが前日比0.015%高い0.360%と13年6月以来の水準に上昇した。新発2年債利回りは同0.010%高い
0.075%と14年9月以来の高水準をつけた。超長期債にも売りが優勢で、新発20年債利回りは同0.025%高い1.600%、新発30年債利回りは
同0.015%高い1.775%で推移している。
債券先物相場は続落し、中心限月の12月物は前日比28銭安の144円69銭で午前の取引を終えた。
短期金融市場では無担保コール翌日物金利(TONA)が小動きとなっている。マイナス0.015~マイナス0.005%を中心に取引され、加重平均
金利は前日の日銀公表値(マイナス0.011%)とほぼ同水準となっているもよう。
2023/10/19 15:48 日経速報ニュース
19日の国内債券市場で長期金利の指標である新発10年物国債の利回りは前日を0.035%上回る0.840%に上昇(価格は下落)した。日銀
が異次元緩和に踏み出した3カ月後の2013年7月以来、10年3カ月ぶりの高さとなった。18日の米長期金利が4.9%台に上昇し、国内債に
も売りが出た。このままなら国内長期金利の前日からの上昇幅は今月4日以来の大きさとなる。
日銀はきょうここまで、臨時の国債買い入れオペ(公開市場操作)などを通知していない。金利上昇を抑える日銀のアクションがみられない
ことで、午後の取引で利回りは一段と上昇した。午前の長期金利は0.825%だった。
日銀が今月末の金融政策決定会合でまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価見通しを上方修正するとの観測報道が
相次いでいる。市場では「金融政策を修正するとの思惑は根強く、債券の買い手は少ない」(国内証券の債券ストラテジスト)との見方があった。
19日の財務省による残存期間「5年超15.5年以下」の国債を対象とした流動性供給入札は、応札額を落札額で割った応札倍率が3.58倍だ
った。前回(3.29倍)を上回ったが、今年度の平均などと比べれば低く「弱めの結果だった」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊
シニアストラテジスト)という。1年物TB入札も平均落札利回りが上昇し弱い結果と受け止められた。これも午後の債券相場の重荷になった。
新発40年物国債の利回りが前日比0.030%高い2.060%と13年2月以来の高さとなり、5年債は一時、0.025%高い0.370%と13年5月末以
来の高さをつけた。新発2年債利回りは0.010%高い0.075%に上昇した。先物中心限月である12月物の終値は前日比36銭安の144円61銭
と3日続落した。一時は144円55銭まで売られた。
短期金融市場では東京金融取引所と大阪取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である12月物は売買が成立してい
ない。全銀協TIBOR運営機関が発表した海外円の東京銀行間取引金利(TIBOR)3カ月物は横ばいで、前日と同じ0.02400%だった。
2023/10/21 日本経済新聞 朝刊
米金利上昇に歯止めがかからず、相対的な割高感が強まる株式を売る流れが続いている。米長期金利は19日夕の米債券市場で16年ぶり
に「ターミナル5」と呼ばれる5%台に上昇する場面があった。円安対策を含め金融緩和政策の修正を目指しているとされる日銀の動き次第では
、世界の株式は一段と厳しい状況に置かれる可能性がある。
20日の日経平均株価は続落し、171円(1%)安の3万1259円で終えた。今回の上昇相場が始まった4月以降の日経平均の価格帯別売
買高をみると、3万2000~3万2500円が最も膨らんでいる。「日経平均の3万2000円から上は重い」のイメージが強まりそうだ。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日、経済次第で「さらなる金融引き締めが正当化される可能性がある」との考えを示し、12
月以降の米追加利上げの可能性が残された。
これまでの金利上昇で債券投資家は懐を痛めている。デュレーション(元利金の平均回収期間)が長い長期国債に連動する上場投資信託
(ETF)の「iシェアーズ 米国国債 20年超」は19日までに年初来で約2割安に沈む。9月後半以降、1日の出来高が増加しながら価格が
下落しており、損失覚悟の投げ売りが断続的に出ているとみられている。
債券市場の変調は株式市場にも波及している。19日、「恐怖指数」と呼ばれる米国株の予想変動率を示すVIX指数は前日に比べ11・3
%高い21・40と、地銀破綻で金融不安が高まった3月以来、7カ月ぶりの水準まで上昇した。「株式相場の一段の調整を想定したオプショ
ンのプット(売る権利)を買う動きが活発化している証左」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)。
20日の日本市場でも、日経平均の予想変動率を示す日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)が23・20と6月につけた年初来高値を
上回った。
市場は金融の引き締め過ぎによるオーバーキル(景気の冷やしすぎ)を警戒する。19日は内需の中小型株で構成するラッセル2000株価
指数は5カ月ぶりに年初来安値を更新。米ニューバーガー・バーマンでマルチアセット運用部門の最高投資責任者であるエリック・クヌーゼン
氏は「中小型株指数の低迷は米経済が見かけほど強くないことを示唆している」と警鐘を鳴らす。
米追加利上げの可能性が高まる局面で、市場は日銀の動きにも警戒を強める。連合は19日、24年の春季労使交渉で、基本給を一律に
あげるベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせて「5%以上」の賃上げを求める方針を発表した。物価と賃金上昇の好循環につなが
り、日銀のマイナス金利政策の早期解除観測が強まる。
30~31日に開かれる日銀の金融政策決定会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を再修正するとの予想も出ている。
野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストはあらゆる金融商品のベースとなる米金利が不安定化している環境下で、「日銀の政策修正は
火に油を注ぐことになる」と指摘。同時に「日銀が一段の政策修正に向けて歩を進めるには、米利上げの休止と米金利環境の安定が不可
欠」とも説明した。
日銀の政策修正を世界のリスク回避と関連付けてみる米投資家も多い。日銀会合の結果次第ではリスク回避の震源が米国から日本に
シフトする可能性に警戒が必要だ。
2023/10/22 日本経済新聞 朝刊
日銀で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の再修正論が浮上してきた。米金利上昇に伴い国内の長期金利も上がり、7月の
修正で決めた1%という事実上の上限に近づいているためだ。今月末の金融政策決定会合で議論する見通しだが、日銀内には賃上げ動向を見
極めたいとの慎重論もある。
日銀は7月の決定会合で長短金利操作の運用を柔軟化し、それまで上限としていた0.5%を「めど」に変えた。さらに大量の国債購入で金利
を強制的におさえ込む事実上の上限を1%に引き上げた。市場実勢に応じて金利の変動余地を広げ、ひずみの緩和を狙った。
長期金利は7月の政策修正以降、日銀の想定を上回るペースで上昇している。指標である新発10年物国債の利回りは20日に一時0.845
%と2013年以来、約10年ぶりの高水準まで上昇。「念のための上限キャップ」(植田和男総裁)だった1%に迫る。背景にあるのが米金利の動
向だ。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日の講演で、経済の高成長や雇用の逼迫が続けば「さらなる金融引き締めが正当化される」
と述べた。
引き締めの長期化観測で米長期金利は19日に一時5%台と16年ぶりの水準まで上昇。国内金利にも波及している。
このため今月の決定会合前に日銀内で浮上しているのが、長短金利操作の再修正論だ。現在1%の金利上限をさらに引き上げたり、運用上の
位置づけを変えたりする可能性がある。0.5%の「めど」を撤廃する案なども取り沙汰されている。
7月の政策修正から3カ月で再び修正論が浮上する背景には、日銀が動きやすい環境が整っていることもある。FRBは10月31日~11月1日
の米連邦公開市場委員会(FOMC)で22年3月の利上げ開始以降、初めて2会合連続で利上げを見送る公算が大きい。
米国が利上げを休止している環境で政策変更した方が「国内経済へのリスクが少ない」(日銀関係者)との見方がある。22年6月や同10月の
決定会合前のように投機筋が債券を売り浴びせる状況でもなく「追い込まれる前に先手を打てる」(市場関係者)。次の決定会合は12月中旬ま
でない。
日銀は月末の決定会合で、23年度は2.5%、24年度は1.9%としている消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率
の見通しを上方修正するか検討する。
24年度も2%台の見通しを示せば、3年連続で2%を超えることになり、「持続的・安定的」に2%を上回るという目標達成が近づく。賃金と物価
の好循環が続くか確認するため、賃上げの動向を見極める考えだ。
ただ、金利操作の再修正に対する慎重論は強い。野口旭審議委員は12日の記者会見で「(足元の長期金利は)上限よりは少し余裕はある。
何かを慌ててやる必要は今のところない」と述べ、修正は不要との考えを強調した。
米金利の上昇やその余波の持続性を見極め、拙速に修正に動くべきではないとの声も日銀内にある。金利操作の再修正自体が過度な金利上
昇を招くリスクもはらむ。
20日の外国為替市場で円は対ドルで下落し、今月3日以来の円安水準となる一時1ドル=150円台を付けた。日銀が長期金利の上昇をおさ
え込めば高金利通貨のドルに資金が流れ、円安による物価高を助長する。円安を止めようと金利上昇を容認し緩和姿勢の後退と受け止められれ
ば、政治との関係は難しくなる。
仮に現在の上限である1%を超える金利上昇を容認すれば「粘り強く緩和を続ける」という日銀の従来の主張との整合性も問われる。
日銀内には10月会合時点で「持続的・安定的な物価安定の達成を判断できない」との見方が強い。市場ではマイナス金利政策の解除といった
金融政策の出口につながる政策変更は24年以降との見立てに傾く。日銀は正常化のタイミングを慎重に探ることになりそうだ。
ブルームバーグ 日高正裕
2023年10月23日 12:12 JST
「中立金利」予想は0.5-2%と幅広い、元日銀マンは2%到達派
真実は0.5%と2%の中間ではないか-SMBC日興の奥村氏
早期のマイナス金利解除を既に織り込んだ金融市場は、日本銀行がその後どこまで金利を上げるのか
長期金利はどこまで上がるのかに関心を向け始めている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-23/S2YGHMDWX2PS01?srnd=cojp-v2
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-23/S2YUUWT1UM0W01
2023/10/24 日本経済新聞 朝刊
2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の運営主体の日本国際博覧会協会は23日、全面導入するキャッシュレス決済について具体的な
計画を発表した。公募した独自の電子マネーの愛称は「ミャクペ!」に決めた。会期前の23年11月から順次、関連サービスを始める。
協会の石毛博行事務総長は23日の発表会で、デジタルウォレットを通じて「万博を身近に感じてもらい、オールジャパンで機運を醸成して
いく」と話した。三井住友フィナンシャルグループがキャッシュレス決済端末を1000台提供するなど官民で連携して進める。
ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使った独自の決済アプリは誰でも使え、電子マネー「ミャクペ!」や利用に応じてたまる「ミャクポ!」
といった金融サービスが一覧で見られる。NFT(非代替性トークン)をアプリ同士で送ることも可能だ。電子マネーは銀行口座やクレジットカ
ードから入金する。会場内で現金は使えず、ミャクペ!のほかクレジットカードや交通系ICカード、QRコードなど60種類の支払い方法に対応
する。
2023/10/24 04:00 日経速報ニュース
8月20日付の前稿では日本株の上昇基調は揺るがないものの、数カ月程度の期間を要する調整局面に差し掛かった可能性があると言及しま
した。5?6月の急上昇に伴う過熱感を解消するための需給調整や、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)柔軟化による国内の長期金利上
昇、それに付随した外国為替市場での円相場の反発などが理由です。
その後、円高には歯止めがかかり、日経平均株価は8月中旬から1カ月ほど反発して年初来高値に接近しました。ただ9月中旬以降は再び反
落するなど、調整局面はなお続いていると見受けられます。
短期的な株価圧迫要因
昨今の日本株反落は、米国株の下げに少なからず影響を受けていると考えます。米国株を圧迫する大きな要因としては、米長期金利の上昇
が8月以降、次第に顕著となったことがあるでしょう。米長期金利を10年国債利回りでみると、9月下旬に約16年ぶりに4.5%を上回りました。
その背景には9月19?20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)があります。米連邦準備理事会(FRB)は年内の追加利上げの可能性や、来
年の利下げ幅の縮小見込みなどを示唆し、改めてタカ派姿勢を堅持しました。
しかしながら、日米株の圧迫要因である米国の長期金利上昇は、インフレ率の動きなどからまもなく歯止めがかかるとみています。そうなれば
米国株とともに、日本株は反騰に向かうでしょう。
米国の消費者物価指数(CPI、食品とエネルギーを除くコア指数)は昨年、1980年代初期以来、約40年ぶりの上昇率を記録しました。40年前はイラン革命を発端とした第2次石油危機、直近はロシアのウクライナ侵攻などによる1次産品価格高騰がインフレ圧力を強め、FRBの大規模な利上げを招きました。地政学リスクの顕在化によるコモディティー価格の高騰という共通点があるわけです。
インフレと金利のズレ
ここで80年代初期のケースをみると、米国のCPIコア指数上昇率の前年同月比(本稿では、この数値をインフレ率と呼びます)は80年6月に13
.6%でピークをつけました。一方10年国債利回り(月末値)が15.8%でピークを打ったのは81年9月で、その後は低下基調に転換しましたが、1年
強の時間差があります。
このタイムラグの背景には、FRBがインフレ退治を最優先し、インフレ率のピークアウト後も利上げを進めていたことなどがあるでしょう。
直近のケースでも、インフレ率が昨年9月にピークをつけた後、FRBはインフレ退治のため利上げを継続しました。しかし、今では追加利上げは
あっても限定的で、利上げは最終局面であると推察されます。
そしてインフレ率はピークからすでに1年経過し、低下が鮮明化する方向であることも考慮すると、米国の長期金利はまもなくピークアウトする
と考えます。それに伴って米国株の波乱は収まり、日本株は反発の契機をつかむことができると思われます。
なお、7月以降、原油高が再発しましたが、昨年前半の勢いに遠く及びません。そして天然ガスや石炭、金属鉱物資源、食料品などの価格は
落ち着いています。資源価格を発端とするインフレ再燃の可能性は低いと考えます。
ここまでで申し上げてきたことは、比較的短期の視点です。中長期的にも、日本株は一時的な調整を交えながらも、大きな上昇トレンドをたど
ると考えます。
その要因として、第一に日本企業の収益力の強まりがあると考えます。少し遡りますが、9月の月初に発表された今年4?6月期の法人企業
統計によると、金融・保険を除く全産業ベース(季節調整済み)の営業利益は18.5兆円と、19年1?3月期の過去最高(18.8兆円)に迫りました。
経常利益は26.9兆円と2期前続で過去最高を更新しています。増加の勢いは強く、利益水準はバブル期のピーク(1989年1?3月期、10.7兆
円)の2.5倍以上に達しています。昨春以降進行した円安により、日本企業の海外資産や売り上げの増価が効いてきたことなどが寄与していま
す。
また、利益水準だけでなく、収益構造も強化されています。1990年代以前は経常利益が営業利益を下回っていましたが、2010年代以降は
営業外の黒字が拡大し、経常利益が営業利益をはっきり上回るようになりました。営業・営業外の双方で経常利益を押し上げる「収益源の複
線化」が定着したといえましょう。
第二に、コスト面での改善がみられることです。昨年12月の企業物価指数(企業仕入れ価格の代替データ)の上昇率は前年同月比10%台と
約42年ぶりの高さとなる一方、同月の消費者物価指数(企業販売価格の代替データ)の上昇率は同4.0%にとどまりました。一方、今年8月は
前者・後者がともに3.2%で並びました(9月は前者が2.0%に低下)。値上げできてもコストがそれ以上にかさむ状態から、企業の負担が相当軽
減されてきたことを示唆しています。
生産基地としての復権
第三に、国際的視点から、生産基地としての日本が見直され始めていることがあると考えます。米国では2018年、輸出管理改革法(ECRA)
が成立しました。かつての対共産圏輸出統制委員会(COCOM)に匹敵する内容で、対中国を念頭に置いたと見受けられ、「新COCOM」とも
呼ばれます。ECRAの導入以降、米中対立・経済デカップリングの動きは顕著になり始めました。
それに伴って、米国のアジア政策の重心は中国から日本に移動しました。サプライチェーン(供給網)の再構築などに絡んで、日本を生産基
地として見直すことが次第に明らかとなりつつあります。こうした動きは米国だけにみられるものではなく、日本への投資拡大が期待できます。
このほかに東京証券取引所による資本効率改善要請や、労働力不足に対する合理化・デジタル化などの動きも勘案すると、日本株の大き
な上昇基調は容易に揺るがないと考えます。
2023/10/24 11:33 日経速報ニュース
24日午前の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは前日を0.005%下回る0.855%に低下(価格は上昇)した。
日銀が同日午前に臨時の国債買い入れオペ(公開市場操作)を通知し、長期債に買いが入った。オペ通知前は前日から横ばいの0.860%を
つけていた。
日銀は残存期間「5年超10年以下」3000億円、「10年超25年以下」1000億円の臨時オペを通知した。日銀は24日午後には幅広い担保を
裏付けに資金を供給する「共通担保資金供給オペ」(公開市場操作)の通知も予定している。先物中心限月である12月物の午前終値は前日
比17銭高の144円63銭と反発した。日銀の臨時オペ通知などが支えになった。
23日の米長期金利は低下したが、日銀の政策修正観測は根強く、国内債には売りも出ていた。30年債利回りは朝方に前日を0.010%上回
る1.890%と13年7月以来の水準に上昇した。日銀の通知後には買いが入り、0.005%低い1.875%と低下に転じた。20年債も0.015%低い
1.665%と買われた。
40年債は前日比0.005%高い2.150%と13年2月以来の水準まで上昇した。2年債は横ばいの0.080%で取引された。
短期金融市場では、無担保コール翌日物金利が横ばい圏となっている。マイナス0.04~マイナス0.005%で、加重平均金利はマイナス0.01
%台前半と前日の日銀公表値(マイナス0.012%)とほぼ同水準となっているもようだ。
2023/10/26 日本経済新聞 朝刊
「現代貨幣理論(MMT)を支持する気には全くなれない」。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏はかつて、海外メディアにこう語った。岸田
文雄政権の政策「キシダノミクス」には政府による経済への強い介入に伴うリスクが潜む。
岸田政権の経済運営の背景に、大盤振る舞いをいとわない積極的な財政金融政策で名目GDP(国内総生産)を引き上げ、税収を増やす「高
圧経済論」があるのは疑いない。事実、一般会計税収は2021年度、22年度と大幅に増えた。株式市場との親和性も高い。
岸田政権は恒久財源を手当てする前に経常支出を増やし賃上げまでも主導する。国が前面に立ち雇用や投資を動かすやり方はインフレが加
速しない限り自国通貨建て国債はいくらでも発行できると主張する異端の経済理論、MMTに通じる面がある。キシダノミクスに潜む1つ目のリ
スクだ。
問題は持続性だ。岸田政権が21年10月に発足して以降、22年10月までに閣議決定した経済対策は3回、国費は累計100兆円に及ぶ。
新型コロナウイルス対策が含まれるにしても、短期間での支出額は歴代政権で突出している。
財政支出を膨らませても、長期金利より経済成長率を高めれば、税収よりも政府の利払い費は少なくて済む。基礎的財政収支が大きな赤字
でなければ、政府債務残高のGDP比率はいずれ収束し、財政運営は安定する。成長率が長期金利よりも高ければ高いほど財政の持続可能
性は高まる。
だが、そこにはワナがある。日本は潜在成長率が低いため、実質金利との差が小さく、税収と利払い費の差額を確保しにくい。
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏によれば、「長期金利が成長率を下回っていても、潜在成長率がゼロ近く、実質金利がマイナス0.5%程
度であるため、例えば基礎的財政収支がGDP比2%の赤字なら、政府債務残高のGDP比が400%程度まで膨らむ」。
市場はその危うさを織り込み始めている。株式と国債、円のいずれも売られるトリプル安が増えている。岸田首相就任から23年10月13日
までに前の週末比でトリプル安となった週の割合は18%。在任中の割合としては菅義偉氏の13%や安倍晋三氏の6%と比較してはるかに
大きい。
岸田政権は資産運用体制を強化し、海外マネーが投資しやすい環境整備を急ぐ。東京証券取引所は企業にPBR(株価純資産倍率)1倍
割れを是正するよう強く求めるようになった。ただ、キシダノミクスの一翼をなす資産運用立国論には課題が残る。それはアベノミクスで始ま
った市場をゆがめる政策を温存している点だ。
QUICKによれば、日銀が上場投資信託(ETF)を通じ保有する割合が発行済み株式数の5%以上の企業数は460を超え、東証プライム
の4分の1強に上る。日銀が持つETFの時価総額は9月末時点で60兆円と試算され、東証プライムの7%強に当たる。
政府の介入が見え隠れする市場には、長期の海外マネーは入りにくい。これが第2のリスクだ。アベノミクス開始時の海外勢の買いも結局
は売り越しに転じた。今年4月以降の海外投資家の買いも短期筋が中心だ。まずなすべきは日銀が量的・質的金融緩和を見直し、市場を正
常化することではないか。
みずほ証券の上野泰也氏は「クライマックスを伴いにくい、じわじわ進行する『スローな危機』がそこにあることを常に忘れてはいけない」と
話す。スローな危機は本格的なトリプル安という急性期症状をいつ何時、発症するかわからない。
2023/10/26 13:20 日経速報ニュース
日銀は30~31日に金融政策決定会合を開く。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)で1%としている長期金利の事実上の上限
を見直すかどうかが焦点だ。2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成にはまだ距離があるとの認識は不変とみられる一方、長期金利
が1%に近づくなかでYCC再修正の必要性が論点となりそうだ。
日銀は7月会合でYCCの運用を柔軟化した。長期金利の変動幅は「プラスマイナス0.5%程度」をめどとし、長期債を対象に毎営業日実施する
「連続指し値オペ(公開市場操作)」で指定する利回りを1%とした。当時の長期金利は1%から遠く、日銀も連続指し値オペへの「応札は見込
まれない」前提だった。
だが米長期金利が一時5%台と急速に上昇するなか、国内金利も大幅に水準を切り上げている。長期金利の指標となる新発10年物国債の利
回りは26日に一時0.880%と2013年7月以来の高さとなり、1%乗せが現実味を帯びる。野口旭審議委員が12日の新潟県金融経済懇談会で
「(YCCは)『先手を打って柔軟化していかないと維持が困難になる』という性質を持つ」と説明していただけに、市場はYCCの再修正を意識せざ
るをえない。
10月会合では1%の扱いを巡って議論するとみられる。日銀内では「厳格な上限の1%にはまだ距離があり、切迫感は強くない」との見方があ
る。臨時の国債買い入れや共通担保資金供給オペで金利上昇ペースを調整することにより1%には到達せず、現時点では指し値オペで大量に
国債を買い入れる事態に至っていない。1%の上限の存在そのものが金利抑制効果をもたらしており「上限を引き上げればかえって市場金利の
上昇を招き、金利の先高観を高めてしまう」リスクを考慮すべきだと慎重な向きもある。
一方、米金利次第で国内金利の上昇圧力が一段と強まる可能性があるのは気がかりだ。米景気は減速する兆しがみられないうえ、米国の財
政不安もくすぶり、米長期金利のピークが5%だったとの確信は持てない。日銀の次回の決定会合は12月18~19日と2カ月近く先で、行内では
「その間に1%に達する可能性を踏まえた政策判断が必要になる」との見方もある。直前の市場動向を見極めた上で判断することとなりそうだ。
市場の一部では修正観測が根強い。BofA証券は25日付リポートで、望まない国債買い入れの再拡大と円安リスク回避のために「日銀が今会
合で再び予防的なYCC修正を余儀なくされる」と見込む。さらなる世界的な金利上昇や、早期の政策正常化への市場期待が一段と高まった場合
の対応を考えると、米金利上昇がいったんピークをつけたとして政策を据え置くのは「リスキーな戦略」だと指摘する。
もっとも、日銀は賃金上昇を伴う形で物価目標を持続的・安定的に達成するとの判断には至らない公算が大きい。日銀が19日に開いた支店長
会議では、来年の春季労使交渉(春闘)について賃上げの継続を見込むものの、賃上げ幅は「競合他社の動向や物価の推移などを見極めていく
姿勢の企業が多い」と報告された。期待インフレ率は緩やかな上昇を続けているが目標達成に十分な賃上げ率を確保できるかは、なお不透明と
いえる。
会合後に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の見通しに注目が集まる。価格転
嫁の流れが長期化しており、23年度については前回のプラス2.5%から上方修正する可能性が高い。ただ日銀が目標達成に向けて注視するのは
、企業が将来の価格上昇を見越したフォワードルッキングな賃金・価格設定が定着するかどうかだ。YCCの再修正があったとしても、「粘り強く金
融緩和を継続する」との基本姿勢は保たれるとみられる。
来週の株式相場に向けて=金融政策決定会合で日銀は動くか
今週の日経平均株価は26日に終値で3万601円まで下落し、3万円ラインに接近した。しかし、27日は前日比389円高と急反発した。
「3万円に接近する水準では先物などの買い戻しも流入したようだ」(市場関係者)という。チャート的には、来週に反発基調を強めれば今月
4日安値(3万526円)とのダブル底の形成期待も出てくる。それだけに、相場は大きなポイントに差し掛かっている。
とりわけ、来週はビッグイベントが目白押しだ。なかでも、日米の金融政策決定会合に視線が集中している。30~31日に日銀金融政策
決定会合、31日~11月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。FOMCに関しては、政策金利は据え置かれる見通しだ。
となると、関心が高まるのは日銀金融政策決定会合だ。7月の日銀会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)は修正
され、長期金利1%が事実上のメドとされた。
今回の会合では「上限1.25%あるいは1.5%への再修正はあり得るのではないか」(アナリスト)との声も出ている。日本の消費者物
価指数(CPI)は3%前後の水準が続き、長期金利も0.87%前後に上昇している。それだけに、上限金利のメドの引き上げは考えられる。
更に「より注視すべきは展望レポートで、24年度のCPI見通しが前回の1.9%から2%以上に修正されるかが焦点だ」(同)とも指摘され
ている。来年度のCPI見通しが2%を超えてくれば、マイナス金利政策の根拠が薄れ、マイナス金利解除への思惑が急浮上する。
日銀会合の結果次第では長期金利が上昇し、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>など銀行株は買われるが、全体相場は下落す
るかもしれない。ただ、それは長期的には正常化に向けた一歩。日経平均株価は今週の下げで、すでに売られ過ぎの水準まで下げたと
もみられている。米国絡みでは11月3日の米10月雇用統計も注目されている。
上記以外のイベントでは、1日に米10月ISM製造業景況指数、同ADP雇用統計、米9月JOLTS求人件数、3日に米10月ISM非製造
業景況指数が発表される。31日にキャタピラー<CAT>、1日にクアルコム<QCOM>、2日にアップル<AAPL>の決算が発表される。
日本では30日にオリエンタルランド<4661>、NEC<6701>、31日にアドバンテスト<6857>、レーザーテック<6920>、デンソー<6902>、
1日にトヨタ自動車<7203>、日本製鉄<5401>、2日に三菱商事<8058>、川崎汽船<9107>の決算発表が予定されている。3日は文化の
日の祝日で休場となる。来週の日経平均株価の予想レンジは3万600~3万1500円前後。(岡里英幸)
出所:MINKABU PRESS
2023/10/27 19:05 日経速報ニュース
27日の東京株式市場では地方銀行株の上昇が目立った。日銀が週明けに開く会合で、超低金利政策の修正に動くとの観測が強まって
いる。割安に放置されている地銀株も多く、収益環境の改善期待から物色が広がった。
日経平均株価は反発し、前日比389円(1%)高の3万0991円だった。山梨中央銀行株は5%高となり5年ぶり高値を付けた。同じく5%高の
名古屋銀行株や4%高のめぶきフィナンシャルグループなど、地銀6銘柄が27日に年初来の高値を更新した。
9月末比でみても4?9月期の業績見通しを上方修正した九州フィナンシャルグループ株が17%高となるなど、1%安の三菱UFJフィナンシャ
ル・グループなどメガバンク株よりも騰勢が強い地銀株が多い。
地銀は預金と貸し出しの金利差や市場運用で稼ぐ。金利上昇は業績改善につながりやすい。米金利高が波及し、日本の長期金利(新発
10年債の利回り)は0.8%台後半と、日銀が「念のための上限キャップ」(植田和男総裁)と位置付ける1%が迫る。
市場では日銀が31日までの会合で政策修正に動くとの見方が出ている。翌日物金利スワップ(OIS)市場では10年物金利が1%を上回って
推移する。BofA証券は「国債買い入れの再拡大と円安リスクを回避するため、日銀は今会合で再び予防的な政策修正を余儀なくされる」と
予想し、長期金利の実質的な上限を1.5%に上げるとみる。
グローバルに事業展開するメガバンク株は海外金利高を受けて資金流入が先行していた。地銀株は九州FGでもPBR(株価純資産倍率)が
0.5倍台と割安感が強い銘柄が多い。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「融資先に乏しい地方基盤の銀行の方が、国内
金利上昇が収益環境改善に与える影響は大きい」と指摘する。
2023/10/28 日本経済新聞 朝刊
国内金利の上昇(債券価格は下落)が止まらない。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時0.885%まで上昇し、およそ10年
ぶりの高水準に達した。日銀が30~31日に開く金融政策決定会合で金融政策の再修正に踏み切るとの観測から、海外投資家を中心に債券
売りの動きが広がっている。
26日の国内債券市場で新発10年物国債利回りは一時0.885%と、2013年7月以来10年3カ月ぶりの水準を付けた。日銀の植田和男
総裁が「念のためのキャップ」とした1%に一段と迫っている。2年債利回りは約9年ぶり、20年債利回りも約10年ぶりの高水準を付けるなど、
幅広い年限で国債利回りが上昇傾向にある。
けん引するのは海外勢だ。財務省が26日に発表した対外・対内証券売買契約などの状況によると、海外投資家は10月15~21日に国債
など国内の中長期債を9042億円売り越した。前週は9478億円の買い越しだったが、2週ぶりに売り越しに転じた。売り越し幅は4週ぶりの
高水準となる。
背景には日銀が今回の決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正に動くとの観測がある。
市場では「長期金利の変動許容上限を1.5%に広げる可能性がある」(SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジスト)といった予想
がにわかに浮上し始めた。BofA証券やUBS証券など、いくつかの外資系証券会社も今回会合でのYCC再修正を予想する。
金利上昇リスクが高まる中、金融派生商品(デリバティブ)の一種である翌日物金利スワップ(OIS)市場は活況だ。同商品は変動金利と固
定金利を一定期間交換する取引で、金利が上昇した際に損失を回避する手段となりうる。
日本証券クリアリング機構のデータによると、9月の取引高は171兆円と3月(199兆円)以来の高水準となった。特に短い年限の取引が増
えており、「それだけ日銀のマイナス金利解除への警戒感が高まったことを反映している」(JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長)
マイナス金利の解除を見据え、短期金利の水準を予想して売買する短期金利先物市場も盛況だ。短期金利の上昇局面で事前に先物を売っ
ておけば、実際に金利が上がったタイミングで買い戻すことで利益をあげられる。
東京金融取引所と大阪取引所に上場している無担保コール翌日物金利(TONA)を対象にした3カ月物金利先物の取引高は10月、1日平
均で約2600枚に達し8月以来の高水準となった。
東京金融取引所に限れば、10月は同1700枚弱と3月の上場以来で過去最高だった。「アジアに拠点を置くような欧米系の中小ファンドを
中心に取引が増えており、徐々に国内金融機関の関心も高まりつつある」(同社の瀬尾亮介ホールセール事業部長)
今回会合で日銀が政策修正を見送ったとしても、金利上昇をにらんだ投資家の動きが債券市場を揺らす展開は当面の間続きそうだ。
2023/11/02 日本経済新聞 朝刊
日銀が金融政策を再修正したことで、長らくゼロ%台だった金利の常識が変わる兆しが出てきた。デフレが染みついた「低温経済」の構造
が変わり、幅広く金利が上がれば家計は利子収入が増える。お金を借りる企業には重荷だが、採算が合わない事業を再編する契機になる。
日銀は10月31日、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を再修正した。長期金利は1%を一定程度超えることを容認する。物価上
昇や米金利上昇を背景に、長らくゼロ%台だった日本の長期金利は債券市場で1%弱に上昇する。10年ぶりの高さだ。
金利上昇が続けば家計にはプラス効果の期待がある。預金金利の上昇で利子所得が増えるからだ。国内総生産(GDP)統計によると家
計の利子受取額は1991年に38兆円に達したが、2021年は6兆円弱と5分の1以下に縮んだ。当時の定期預金金利は3.8%だったが、
足元は0.003%程度にとどまる。
家計の金融資産は2000兆円を超え、うち半分を現預金が占める。リスクのある資産を持たずとも一定の所得が確保できれば、株式投資
などに消極的な世帯で消費意欲の下支えにつながる可能性がある。
住宅ローンを抱えていたり、今後不動産購入を予定したりする現役世代には懸念もある。3メガバンクは11月適用の住宅ローン金利で、固
定型を10月比でそろって引き上げた。金利の上昇が続けば住宅購入のハードルが上がり、不動産市況を冷やす恐れもある。
借り入れが多い企業には負担だ。みずほ銀行は貸出金利の指標となる長期プライムレートを10月11日から0.05%引き上げ、年1.5%
とした。日本総研の後藤俊平氏の試算によると、企業の平均的な借り入れコストが1%増えると、設備投資を0.5%減少させる。
金利上昇は運用環境の改善を通じ、企業年金の財政状態を改善させる効果もある。支払いに備えて用意すべき負担額は2022年度時点
で前の年度から約6兆円減った。各年金が運用目標である予定利率も上げ始めれば、従業員の生涯収入の上昇につながる。
金利上昇で採算の悪い事業を見直す機運が高まり、生産性上昇につながる期待もある。逆に資金調達が難しくなることで起業が停滞する
面もある。22年における世界のスタートアップの資金調達総額は35%減った。欧米の急ピッチな政策金利の引き上げが背景だ。
日本にインフレが定着すれば、日銀の政策金利の引き上げも視野に入る。内閣府の短期日本経済マクロ計量モデルによると、短期金利が
1%上がると個人消費は1年目に0.2%増加する。一方で設備投資などの減少で全体のGDPは0.3%落ち込む。
2023/11/03 05:00 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は4月の就任以来、2度目となる長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の修正に踏み切った。度重なる修正で
「異次元」を掲げた大規模な金融緩和策の輪郭は薄まりつつある。想定外の米金利上昇に振り回された感もある日銀だが、したたかに将来
に向けた布石を打った。
日銀は10月の金融政策決定会合で、長期金利の事実上の上限としていた1%を「めど」に変えた。1%以下に厳格に抑え込まず、市場の
情勢に応じて一定程度は上振れることを認める仕組みだ。
修正の予兆はあった。「1(%)に非常に近づいていく可能性は低い」(植田総裁の7月会合後記者会見での発言)「(長期金利上昇は)それ
ほど心配する動きではない」(同9月)としてきた日銀の空気が変わったのは10月初めだ。
4日の国内債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.8%とおよそ10年ぶりの高水準をつけた。3日の米債券
市場で2007年以来となる4.8%台に上昇した米長期金利の影響だった。「米金利の上昇が論理的に説明できない」という日銀関係者の困惑
をよそに、国内長期金利も後を追うように上昇した。次第に日銀内から「(国内長期金利が事実上の上限である)1%に届かないと言い切れ
なくなった」との声が漏れるようになった。
円安も圧力となった。日銀が金利を強く抑え込もうとすればするほど、市場が米国との金利差を意識し、さらなる円安につながるジレンマが
ある。
10月中旬には、複数の関係者から「再修正は(10月会合で)議論せざるを得ない」との声が聞かれた。上限の1%から1.5%への引き上げや
、上限の撤廃といった案が議論された形跡もうかがえた。
ただ政策が大きく変わったと受け止められれば、金融市場に波乱を起こしたり、経済に思わぬ悪影響をもたらしたりするリスクもあった。「長
期金利の状況はファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)から距離がある。米金利はいずれ下落し国内も落ち着く」との見方も根強かった。
最終的には1%を「めど」に変える柔軟化案に落ち着いた。積極的な金融緩和や財政政策を求めるリフレ派からも「現行政策とほぼ変わら
ない。大きな問題はない」と容認する声が聞こえる。ただ中核ツールである金利操作の修正が重なったことで異次元緩和の輪郭はぼやけ、市
場には「形骸化した」との見方が広がる。
10月会合では「次」を見据えた布石も打たれた。
7月会合で設定した事実上の1%の上限には、日銀内からも「むしろ投機を誘う。(上限を)見せる必要はない」との声が当初からあった。
植田総裁は10月31日の記者会見で、日銀が国債を無制限に買い取る「指し値オペ」を発動する金利水準への明言は避けた。見直しを契機
に上限を隠した、との見方もできる。
上限は隠したが、相場の過度な変動などで「必要性あり」と判断すればいつでもオペを実施し、金利を抑え込める仕組みにした。金利を厳
格にコントロールするわけではないが、不測の事態にはしっかり備えておくという長短金利操作の撤廃後の金融市場調節を見据えた決定の
ようにも映る。
経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、24年度の消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI)の前年度上昇率の見通しを2.8%と7月時
点(1.9%)から大きく引き上げた。さらに、25年度も0.1ポイント引き上げて1.7%とした。
25年度は日銀が示す見通し期間の最終年度にあたる。足元の為替やエネルギー価格の影響が小さくなる半面、下落しづらい人件費といっ
た要素が見通しの上でより大きなウエイトを占める。25年度見通しの上昇は、政府・日銀が目指す持続的・安定的な「物価2%目標」達成に
近づきつつあることを意味する。
生鮮食品とエネルギーを除く「コアコアCPI」は24年度、25年度とも1.9%とした。いずれも一時的な物価動向に左右されにくく、物価2%目標
の達成状況をはかる目安になりうる。
「前回に比べれば少し前進している」「ある程度来年の賃金について期待できる」。慎重に表現を選びつつも、10月31日の記者会見で植田
総裁は賃金と物価の好循環実現への期待感をにじませた。市場では早ければ来年1月の決定会合でのマイナス金利解除を見込む声も出て
いる。10年の時を経た異次元緩和の輪郭が薄らぐ中、「金利ある世界」へのカウントダウンが始まっている。
2023/11/03 日経MJ(流通新聞)
共通ポイント業界にPayPayが本格参入した。スマートフォン決済で約7割のシェアを握る王者が次の成長の柱と位置づけるのがポイント事業
だ。営業部隊を発足させ、提携先の開拓に本腰を入れる。ただ、共通ポイントは先行陣営が有力企業の大半を囲い込んでいる「岩盤業界」。各
陣営はグループの通信や金融などを巻き込んだ総力戦でシェア拡大を狙う。
「Tポイントと関係の深いウエルシアがPayPayと組むとは思わなかった」。8月末、PayPayがドラッグストア大手のウエルシアホールディングス
(HD)と提携したことに驚きの声が上がった。ウエルシアはTポイントを活用して積極的な販促策を展開してきたからだ。その蜜月関係にPayPa
yが割って入った形になる。
こうしたなか、Tポイントは三井住友フィナンシャルグループ(FG)のVポイントと来春統合する。Tポイントを手がけるカルチュア・コンビニエンス・
クラブ(CCC)が狙うのは決済サービスの強化だ。これまで電子マネー「Tマネー」やクレジット機能付きTカードを展開してきたものの、認知度は
高くなかったとみられる。
三井住友FGは「三井住友カード」や対応する「Visaタッチ」など有力な決済サービスを持つ。世界に1億店以上あるVisa加盟店でもポイントが
使えるようにして巻き返しを狙う。
野村総合研究所(NRI)の冨田勝己グループマネジャーは今後の共通ポイント業界について「これまでのような会員規模やポイント流通規模
といった『量』から、『質』へと争点が変わっていく」と強調する。スマホ決済のように毎日使われるアプリで顧客との接点を増やしたり、加盟店の
利益につながる販促を提案したりできるかが問われることになる。
2023/11/06 10:29 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は6日、名古屋での金融経済懇談会であいさつした。今年の春季労使交渉における高い賃上げ実現や、人件費の継続
的な上昇を前提とする値上げ実施など「最近では、企業の賃金・価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きがみられ始めている」と話した。
2%の「物価安定の目標」に向けて「見通し実現の確度が少しずつ高まってきている」と指摘した。もっとも賃金と物価の好循環がどの程度強ま
るか不確実性が高く、現時点では物価目標の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には「至っていない」とも語った。
2023/11/09 15:56 日経速報ニュース
みずほフィナンシャルグループは9日、傘下のみずほ証券を通じて楽天証券に追加出資すると発表した。金額は約870億円で、出資比率を現在
の20%から49%まで高める。楽天証券の持ち株会社は年内にも東京証券取引所へ上場する計画だったが、10月に始めた日本株売買手数料の
無料化で収益構造の変化は避けられない。提携強化を契機にひとたび上場の申請を取り下げた。
みずほは2022年に楽天証券の株式20%程度を約800億円で取得した。関係当局の承認を前提に、今年12月半ばに追加で29%分の株式を取得
する。みずほにとって持ち分法適用会社の位置付けは変わらない。
今回の追加出資を機に、みずほ銀行の預金口座と楽天証券の口座を連携させるなど提携関係を強化する。9日に記者会見した楽天グループの
三木谷浩史会長兼社長は「対面とリアルで非常に強いみずほグループとさらに強いパートナーシップをつくっていく」と話した。
楽天グループは携帯電話事業の設備投資で財務内容が悪化し、22年12月期まで4期連続で最終赤字を計上した。9日に公表した23年1?9月
期も2084億円の最終赤字で、5期連続の赤字となる可能性が強まっている。
24?25年にかけ、8000億円規模の社債償還も控える。楽天証券ホールディングスの上場で1000億円規模の資金調達をめざしていたが、新た
な調達策としてみずほの追加出資を仰ぐことになった。みずほは今回の追加出資で約870億円を拠出する。上場の方針そのものは今後も維持し
、再申請の時機を探るという。
【関連記事】
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・楽天G、迫る8000億円社債償還 綱渡りの証券株追加売却
・みずほ、楽天証券と24年春に新会社 ネット顧客取り込み
2023/11/13 09:01 日経速報ニュース
(9時、プライム、コード4911)
【材料】10日に2023年12月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比47%減の180億円になる見通しだと発表した。従来予想を100億円下回る。
主力市場の中国での日本製品の買い控えなどが響く。
【株価】売り気配で始まる。
2023/11/13 15:27 日経速報ニュース
13日の国内債券市場で長期金利の指標である新発10年物国債の利回りが一時、前週末を0.045%上回る0.895%に上昇(価格は下落)した。
今月2日以来の高さで、節目の0.9%に迫った。格付け会社による米国の信用格付け見通し引き下げなどをきっかけに米国債が売られ、国内債
にも売りが波及した。
15時前の時点では前週末比0.025%高い0.875%で取引された。米国では与野党が9月30日に合意したつなぎ予算が今月17日に期限を迎え
る。再延長などが決まらず米政府閉鎖が意識されて金利に上昇圧力がかかっている。
長期金利は9日に0.830%と、日銀が10月末の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再柔軟化を決める
前の水準まで低下(価格が上昇)していた。このため、目先の利益を確定する売りが膨らんだ面もある。
13日発表の10月の企業物価指数は前年同月比0.8%上昇と市場予想(1.1%上昇)を下回った。日銀が年明けにもマイナス金利解除など政策
再修正に動くとの見方は根強いが、物価の弱さはその後の日銀による政策正常化の歩みはゆっくりとの見方にもつながった。
30年債利回りは0.035%高い1.765%、20年債は0.025%高い1.585%にそれぞれ上昇した。5年債は0.010%高い0.430%で、期間の長い債
券の利回り上昇幅がより大きくなり、利回り曲線は右肩上がりの傾きが急になるスティープ化した。先物中心限月である12月物の終値は前週
末比16銭安の144円38銭と続落した。
短期金融市場では東京金融取引所と大阪取引所では無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である12月物の取引は未成立と
なっている。全銀協TIBOR運営機関が発表した海外円の東京銀行間取引金利(TIBOR)3カ月物は横ばいで、前週末と同じマイナス0.01200
%だった。
2023/11/13 16:05 日経速報ニュース
QUICKは13日、外国為替市場の月次調査の結果を発表した。日銀の金融政策修正・変更の次の一手については「短期金利の政策目標水
準を現行のマイナス0.1%から引き上げる(マイナス金利政策の解除)」との回答が53%と最も多かった。解除の時期については「2024年4月」
が最多で、「24年後半以降」がこれに続いた。
日銀は10月31日の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を再修正し、長期金利の1%を超える上昇を一定
程度容認した。次の一手としては、マイナス金利解除のほか「長期金利の政策目標を撤廃する」(25%)や「長期金利の上限のめどをさらに引
き上げる」(17%)といった回答があがった。
「上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)などのリスク資産の購入をやめる」との回答は1%に留まった。
マイナス金利政策の解除時期については「2024年4月」との回答が32%と最も多く、「24年後半以降」が27%で続いた。「24年1月」も20%で、
合計で7割の回答者が24年前半でのマイナス金利政策の解除を予想した。
円相場は13日に1ドル=151円台後半と22年10月以来の円安・ドル高水準を付けた。今後の見通しについて、回答者の24年4月時点の予
想値は平均で1ドル=144円10銭、中央値で1ドル=145円と、来年春にかけて緩やかに円高・ドル安が進むとの見方が目立った。
調査は6?8日に金融機関や事業会社の外為市場関係者176人を対象に実施し、78人から回答を得た。
[東京 14日 ロイター] - 早川英男元日銀理事(東京財団政策研究所主席研究員)は14日、ロイターのインタビューに応じ、日銀は来年4月に
マイナス金利を解除したのち、3カ月に1回程度のペースで段階的な利上げ局面に入ると予想した。
賃金・物価の好循環はすでに生じており、来年の春闘で賃上げの確証が得られれば、ビハインド・ザ・カーブになっている政策が市場の予想以上
に早いペースで修正されていくとの見通しを示した。
植田和男日銀総裁は、物価上昇の要因を輸入物価上昇の転嫁に由来する「第1の力」と賃金・物価の好循環による「第2の力」に分類。第2の力
が「まだ少し弱い」ことが金融緩和継続の理由だと説明している もっと見る 。
これに対して早川氏は、日銀の展望リポートで2023年度の生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数(コアコアCPI)の見通しが段階的に引
き上げられ、10月時点で前年度比プラス3.8%と、1月の同プラス1.8%から2%ポイントも引き上げられたことに注目。「足元で物価を押し上げ
ているのは第1の力ではなく第2の力なのが明白だ」と話した。コストに占める人件費の比率が大きいサービス価格は「ここ1年くらいで猛烈に上
がっている」とも述べた。
早川氏は、賃金上昇を伴う物価目標の実現を掲げる日銀にとって、来年の春闘での賃上げという「物証」だけが必要な状況だと指摘。春闘の集中
回答などを踏まえた上で、展望リポートを改訂する4月に、マイナス金利を解除する可能性が高いとの見通しを示した。「経済界から出てくる発言を
見ていれば、来年の春闘での賃上げ率が今年より低いという感じではない」と述べた。
来年4月にマイナス金利を解除した後は再度「来年の半ばくらいに、市場が思っているより早めの(政策金利)引き上げが必要だと思う」と語った。
日銀は「今は意図的にビハインド・ザ・カーブになっている」とし、来年の春闘で賃上げの持続が確認できれば、そこからの利上げペースは早く、3
カ月に1回程度の利上げを予想している。
市場ではマイナス金利解除後はゼロ金利が続くとの予想が多い。早川氏は日銀と市場のコミュニケーションが重要になり、今年終わりぐらいから
、マイナス金利解除やその後の利上げ局面入りに向けた地ならしを進めていくべきだと述べた。
10月のイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用再柔軟化については、YCCの「事実上の撤廃」だとした。来年4月にマイナス金利を解除した
場合でも、YCCはそのまま維持されるとの見方を示した。
連続指し値オペで厳格に10年金利の上限を規定する手法をやめたことで、政府の為替介入のように、急激な上昇が起きれば国債買い入れで金
利上昇を抑えに行く仕組みになったと話した。
日銀が金融正常化を進めるに当たっての「障害」になりうる事項としては、今年3月に起きた米国の金融不安が再び起きるリスクを挙げた。
2023/11/15 08:51 日経速報ニュース
株価指数を開発・算出するMSCIは14日(日本時間15日朝)、定例の指数構成銘柄の見直しを発表した。国際分散投資する機関投資家の
多くが採用するベンチマーク(運用指標)のうち、大型・中型株からなる「標準指数」で、日本株ではサイバー(4751)やGMO―PG(3769)など
10銘柄を除外する。新規採用はゼロだった。2022年5月の22銘柄除外以来の大規模な減少となるもようだ。30日の大引け後に変更する。
・除外(10銘柄)
サイバー(4751)
GMO―PG(3769)
博報堂DY(2433)
京王(9008)
小林製薬(4967)
栗田工(6370)
LIXIL(5938)
ガイシ(5333)
パーソルHD(2181)
ウエルシア(3141)
2023/11/14 日本経済新聞 朝刊
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に
投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約2
0人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
10年で150兆円
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような
一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファ
ンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ量から質
へ転換する」。調達先を海外に絞り欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金
を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高
まった。
なお半信半疑
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1~10月に1兆6000億円超と、年間で最
高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、ア
ジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が
寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降
の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除
く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。
2023/11/15 日本経済新聞 朝刊
液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)の経営再建に取り組む運用会社いちごアセットマネジメントは日本株に特化する独立系では最大手の一つ
だ。スコット・キャロン社長は「日本のために」をモットーとし日本に住む。ところが、約1兆円の資金を運用する拠点はシンガポールにある。
2006年、4人で創業しようと関東財務局に出向くと、30人必要と門前払いだった。1人でも起業できたシンガポールに運用会社を置き、東京拠
点はシンガポールに運用をアドバイスする機能にとどめている。
拠点回帰進まず
陣容は東京8人、シンガポール11人、米国1人の20人に増えた。かつてに比べ起業の条件も低くなった。政府による資産運用立国の取り組み
もあり、東京に拠点を集約する環境が整う。ただ「皆が日本にいるのがよいが、一度つくった拠点を移すと従業員の人生に響く」(キャロン社長)。
過去、日本に拠点を戻そうとした際は社員が反対した。
東京・兜町の老舗、山和証券も運用業への進出にシンガポールを選び、18年に山和アセットマネジメントを立ち上げた。
シンガポールを選んだのは「グローバルプレーヤーが集まる」(山和アセットの工藤哲哉最高経営責任者)ため。運用業の集積が進み、人や情
報、マネーが行き交う「産業クラスター」ができあがっている。日本からみると日本株の運用会社が海外に集う「空洞化」が深刻だ。
東京都や金融庁は国際金融都市構想を掲げ、運用会社の誘致を進めてきた。資産運用会社の数は5年前比で約60社増え417社となったが
、その間、シンガポールは1194社に7割弱増え背中は遠のいた。政情不安が強まった香港から拠点を移す動きの受け皿になったのはシンガポ
ールだ。
二重計算是正へ
政府は巻き返しの第一歩として投資信託価格の「二重計算」を見直す。運用会社と信託銀行がそれぞれ計算して照合する慣習を変え、運用会
社に計算の負担がなくなれば参入しやすい。
ただ、二重計算は日本独自の業界慣行が抱える非効率さの氷山の一角でしかない。システムなどのコストは重く、投信ビジネスを安定的に営
むには1000億円以上の運用資産が必要とされる。参入障壁が高い。
風穴を開けるイノベーションは始まっている。熊本県地盤の肥後銀行子会社の九州みらいインベストメンツは9月、わずか6人、数十億円でプロ
向け私募投信の実質的な運用を始めた。可能にしたのは「運用」と「管理」の分離だ。
九州みらいは運用の判断をするだけで、投信価格の計算を含む資産管理は外部に任せる。「管理」を提供する日本資産運用基盤グループの大
原啓一社長は「運用に特化できるビジネスモデルが広がれば新規参入は増える」とみる。
海外では運用と管理は分離する方向に発展してきた。ルクセンブルクやアイルランドにはファンドの管理ビジネスが集積する。日本は旧態依然
のままだ。
金融庁も規制緩和に乗り出す。法改正で管理を担う会社の設立を可能にし、運用会社が業務を任せられるようにする。国内に運用会社を増やし
競争を高めるには、まず産業のアップデートが必要になる。
2023/11/16 日本経済新聞 朝刊
500あまりの中小企業が加入する全国ビジネス企業年金基金(岡山市)は4月から、運用益を企業や従業員に還元し始めた。
安全運転シフト
「掛け金引き下げキャンペーン」と称し、掛け金を2%下げた。企業は支出を抑えながら割引前と同水準の年金を従業員に提供できる。年金カット
支給の対象だった勤続期間が短い定年退職者の退職一時金も引き上げた。国内では珍しい取り組みだ。
「もっと稼いで還元する。『運用やめた』とはしない」。木口愛友・運用執行理事は強調する。キャンペーンの原資は過去10年で年8%強と、5%
強の企業年金全体を上回る高い運用利回り。将来の年金給付などを勘案した必要な積立額の1.4倍の資産を蓄えてもさらに高い成果を目指す。
国内生保や外資系運用コンサルティングで腕を磨いた木口氏は、総務や経理など管理畑の出身者が多い企業年金では珍しい「運用のプロ」。
世界を飛び回り、医薬品特許やインフラなど高度な分野も含め41のファンドに分散投資する。
合併や吸収を繰り返し企業年金の運用規模も2年で2倍に引き上げた。国内金利が上がれば、利息を年1.2%から都銀大手3行平均の1年定
期預金金利に0.5%乗せた水準にする仕組みも取り入れ「金利ある世界」にも備える。
こうした例は少ない。将来の給付を約束する確定給付年金の大半は「運用やめた」に近い安全運転にシフトしている。
国内では1990年代半ばから、資産ごとの配分上限を定めた「5・3・3・2規制」の撤廃など自由化が進み積極運用を志す年金担当者も多かっ
た。ところが、退職給付会計の導入や運用難で母体企業の負担が重くなり、リスクをとらなくなった。
企業年金が運用の目標とする予定利率は90年代後半の5%台から2%台に下がった。09年ごろから資産が負債を上回る積み立て超過となり
、直近の積立比率は120%に高まった。足元の金利上昇で計算上の債務が急減し、積み立て不足が急速に解消した英国(113%)や米国(10
2%)よりも高水準にある。
「十分な積み立てがあるなかで追加的なリスクをとる必要があるのか。約束した給付を確実に守ることが大事」(企業年金連合会の中村明弘運
用執行理事)との声が企業年金に広がる。
「監視の目」重要
企業年金の大半は資産規模が100億円以下と小さいが、資産が500億円や1000億円を超える年金は安全運転から高度化へ軸足を移す余
地がある。海外との大きな違いは企業年金への「監視の目」の有無だ。海外では株主や労働組合が効率的な運用を求める。
日本も監視の目を取り入れる。政府は運用実績や財務状況を加入者以外にも広く開示させる方針だ。英国では年金担当者の経歴や専門性、
役割まで公開する。
大阪ガスの企業年金でいち早く運用の高度化に取り組んだ石田英和氏は「リターンが公表されていないから、健全な競争を生む仕組みが業界
に欠けている。どんな運用会社に資金を委託しているかも開示させるべきだ」と話す。
資金を持つアセットオーナーが動き出さなければ運用立国は始まらない。
2023/11/16 18:00 日経速報ニュース
国債利回りが低下(債券価格は上昇)するなか、日銀は国債買い入れの減額に動いた。ただ、銀行など国内投資家の買い意欲は非常に強く、
需給環境は盤石で金利上昇にはつながらないとの見方も多い。さらなる減額を見込む市場参加者も多いものの、長期金利1%は遠いとの観測
が広がりつつある。
「ようやく減額しましたね」。ある外国証券の債券ディーラーは待ちに待った、というように話す。
日銀は15日に実施した国債買い入れオペ(公開市場操作)で、長期金利の指標となる新発10年債も対象となる残存5?10年の買い入れ額を
5750億円と、従来の6750億円から減額した。7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正し、長期金利の上限を1%に引き
上げた後も6750億円を保ってきた。
月4回の定例オペだけで買い入れ規模が10年債の月間発行額(2兆7000億円)に匹敵していたため、市場機能の回復の観点でも減額を待ち
わびる市場参加者が多かった。岡三証券の鈴木誠債券シニア・ストラテジストは「日銀は今後も国債買い入れを一段と減額できるタイミングを探
ることになるだろう」とみる。
もっともオペの減額を通知しても国債は買われ、長期金利は0.77%と1カ月ぶりの低い水準まで下がった。米長期金利の上昇もあり16日には
0.8%まで戻したものの、再び買いに押され0.785%まで低下した。
背景には10年債の需給逼迫が続くとの見方がある。「1回あたり5750億円」で「月4回」の定例オペのペースが続く場合、月間2兆3000億円の
国債を買い入れることになる。2016年のYCC導入から21年までの月間平均である2兆1700億円を上回るペースで買い入れが続くため、需給は
逼迫しやすい。
これまでに国債を大量に買い入れたことによる累積効果もある。23年の通常オペを通じた5?10年の国債買い入れ額(指し値オペを除く)は16
日時点で、22年の通年と比べて11%増の31兆8600億円と、異次元緩和後の通年の最高を既に更新した。
供給面でも需給は緩まない。23年度の補正予算案では国債の追加発行で8兆8000億円を調達すると決めたが、財投債の減額などで対応す
る。結果として23年度に市場で発行する各年限の国債発行額は補正後も変わらず、10年債の23年の発行額は32兆4000億円にとどまる見込み
だ。日銀が買い入れた5?10年の国債は、同年限で新たに発行される唯一の銘柄である10年債の年間発行額の98%に達する。
金利上昇を受けて国内勢は既に買いに動き始めている。日本証券業協会によると、外国人などを除く国内投資家は10年債など長期国債を5カ
月連続で買い越した。ゆうちょ銀行が16日付で公表した投資家向け説明会の資料で「国債残高を今期(24年3月期)で反転・拡大へ」「国債保有
残高に大幅な拡大余地」と表明するなど、投資家の買い意欲は非常に強い。
同行によると国債の保有残高は16年3月末の82兆円から足元で38兆円まで落ち込んでいる。大和証券の谷栄一郎チーフストラテジストは「国
内最大の預金取扱機関が示した円債ポートフォリオの再構築方針は、日銀が保有する国債の一部の民間移転が進む可能性が出てきたことを
示唆している」と指摘する。
長期金利は1日に付けた0.97%をピークに低下に転じている。日銀が購入量を減らしても債券市場の需給環境が揺るがない以上は、日銀がマ
イナス金利政策を解除し、短期金利を引き上げるまでは、長期金利が1%を超えるのは難しいとの観測が広がりつつある。
2023/11/18 日本経済新聞 朝刊
1ドル=150円前後の円安・ドル高が続いている。背景にあるのは日米間の金利差の拡大。低金利の円を売り、高金利のドルを買う動きが三
十数年ぶりの円安を招いた。ただ日米の金利水準の決定要因である日銀と米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営に変化の芽が出ており
、歴史的な円安は最終局面に入りつつあるとの見方が広がり始めている。
円相場が大きく動き始めたのは2022年初めごろから。FRBが新型コロナウイルス禍などに伴うインフレを抑えるため大幅な連続利上げに踏
み切る一方、日銀は大規模な金融緩和政策を維持。日米の金利差は22年秋に4%近辺まで広がり、1ドル=151円台まで下落した。
その後は日銀による大規模金融緩和政策の修正などを背景に円安・ドル高の加速にブレーキがかかり、1ドル=130円を超える水準まで上
昇。足元では再び150円前後の水準まで売られている。日米の金利差におおむね連動する傾向がうかがえる。
○ ○
「早ければ日銀は年明け早々にもマイナス金利政策の解除を検討するのでは」。長く日銀の金融政策を分析してきた東短リサーチの加藤出
氏はこう漏らす。市場では今年前半まで、マイナス金利政策に手を付けるのはかなり先の話という認識が強かったが、日銀内では消費者物価
の前年比上昇率2%という物価目標の実現を意識するムードが染み出しつつある。植田和男総裁は6日の記者会見で、物価目標達成の確度
について、以前よりも「上がってきている」との見方を示した。
これまで外国為替市場では、日銀の政策変更には長い時間がかかるとの前提で円売り・ドル買いが活発だった。だがQUICKと日経ヴェリタ
スが実施した11月の外為月次調査によると、日銀がマイナス金利解除に動く時期は2024年4月が32%で最も多く、1月という回答も20%あ
った。
個人にとっても資産運用環境の大きな変化となるため、政策変更の契機となる要因に目配りすることが大切だろう。
日銀の政策転換のカギは新型コロナウイルス禍で生じた「2つのねじれ」が解消に向かうかどうかだ。1つは、日銀が意識する物価と賃金の
好循環。賃金上昇分から物価上昇分を差し引いた実質賃金は、23年9月まで1年半にわたってマイナスが続く。プラス転換するには時間を要
するとみられるが、マイナス幅が縮小していく過程で好循環に入りつつあるかを確認することはできる。
もう1つのねじれは、値上げラッシュを通じて国民の消費マインドを冷やしている「悪い円安」の解消だ。かつては日本経済にとって有益とされ
た円安が問題視され始めたのは、コロナ後の急激な消費拡大とロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに起きたエネルギーや穀物などの原材
料輸入価格の高騰が原因だ。
輸入価格の上昇が激しかった分、本来は原材料費や製造・輸送のコストを上乗せするはずの製品の輸出価格に転嫁しきれず、製品加工の
コストが跳ね上がった。日銀の企業物価指数によると、21年春から23年春にかけて輸入物価の上昇率が輸出物価の上昇率を上回る状態が
続いた。
現在は正常化したが、新たに中東情勢の深刻化も加わり、北半球の冬場の需要期に向けて原油などの資源価格が再び急騰するリスクは否
めない。
こうした懸念材料が解消すれば、日銀は政策変更に動きやすくなる。ただ日銀が動いても、日本側の要因だけで日米金利差の大幅な縮小は
見込めない。カギを握るのは、大幅な利上げで日米金利差を広げてきたFRBの動向だ。
○ ○
FRBは11月1日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、2会合連続での政策金利の据え置きを決め、市場参加者の間には「利上げ
終結」観測が一気に広がった。12月の次回会合で追加利上げを決める可能性はあるが、利上げの最終局面に入っているというのが市場の共
通認識だ。
円相場への影響という面では、FRBが利下げに転じるかが焦点になる。米国の金融市場動向に詳しい野村証券の小清水直和氏は「雇用情
勢がコロナ前の水準まで戻れば、利下げが視野に入る」と指摘する。具体的には米労働省が発表する雇用統計のうち、非農業部門の就業者
数に注目する。
FRBは金融政策の目的として、物価と並んで雇用の安定を重視しているためだ。小清水氏は増加幅が前月比で15万人を下回る状況が続く
ようなら、利下げが現実味を帯びるとみる。
国内外の大手金融機関で円相場を見続けてきたマーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司氏は、日米の金融政策運営に変化の兆しがあ
ることを踏まえて「24年前半は140~150円の範囲、後半は130~140円の範囲へと、緩やかに円高方向に相場が転じていく」と予想する。
こうしたシナリオの波乱要因はこれまでのFRBによる大幅な利上げの影響で、個人消費を中心に米国経済が予想以上に悪化することだ。ニ
ューヨーク連銀によると、7~9月のクレジットカードの支払い延滞率が約12年ぶりの高水準になるなど不安要因も目立ってきた。景気悪化が
強まれば「円高・ドル安が予想以上に進む可能性もある」(深谷氏)という。
2023/11/22 日本経済新聞 朝刊
予想物価上昇率を考慮した実質的な金利水準は低い――。日銀がそんな説明に一段と力を入れている。将来、マイナス金利政策の終了を決め
る際にも、経済・市場に与えるショックを小さくするため、実質金利は低水準で推移し続けると強調する公算が大きく、最近の情報発信は、遠からず
決まる可能性があるマイナス金利解除への備えが本格化したものと受け止めることもできる。
「日本経済が緩やかに回復しているという姿は継続している」。7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値がマイナス成長になったことについて
植田和男日銀総裁は先週の国会でそう語り、冷静に受け止める姿勢を示した。
消費者物価の基調的な上昇率が2%目標に向けて徐々に高まっていくという日銀のメインシナリオは崩れていないもようだ。日銀は、2024年の
春季労使交渉の行方や結果などを見極め、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せれば、マイナス金利政策の解除を検討するという姿勢を維
持している。
市場では「24年1月に解除を決めるというのがメインシナリオ」(米金融情報コンサルタント会社、オブザーバトリーグループ)といった指摘も聞かれ
る。ゼロ金利の終了を同時に決めてしまう展開もあり得るが、普通は両者を分けるだろう。
ただし、長年、極めて低い金利が続いただけに、急激かつ大幅な金利上昇が始まるとの受け止め方が広がれば、政府、企業、家計に不安が広
がり、経済やマーケットに混乱が起きかねない。そうしたショックの緩和策のひとつとして、日銀は、実質金利の低さを強調しそうだ。
実質金利とは、普段目にする金利(名目金利)から人々が予想する物価上昇率を差し引いた値。「金融政策が経済・物価に与える効果を捉えるう
えでは、予想物価上昇率を勘案した実質金利が重要」(植田日銀総裁)という。金融政策変更で名目金利が上がっても、賃金も上がるなどして人々
のインフレ予想が強まっていれば、実質的な金利の負担感はあまり強まらないという理屈だ。
予想物価上昇率には様々な数値があり、厳密な把握は難しいため、物価上昇率の実績値を使って実質金利をとりあえず計算する場合もある。
最近の消費者物価上昇率は3%程度だ。
一方、短期の政策金利はマイナス0・1%、長期金利(10年物国債利回り)は0・7%程度であり、実質金利は短期も長期もマイナス圏との見方が
日銀にもある。マイナス金利政策をやめて短期の政策金利を0%あるいは0~0・1%程度に上げ、それに応じて長期金利も多少上がるくらいであれ
ば、「十分に緩和的な金融環境」(植田日銀総裁)に大きな影響はないという話になる。
以上の点を踏まえると、「最近の日銀が実質金利の低さを強調しているのは、マイナス金利解除が近づいている兆候と解釈できる」(元日銀調査
統計局長の関根敏隆一橋大学教授)わけだ。
緩和的な金融環境に大きな変化がないというロジックは、日銀が過去2回、短期の政策金利引き上げ開始(いずれもゼロ金利政策解除)を決めた
時にも使った。
2000年にゼロ金利を終える時の声明では「金融緩和の程度を微調整する措置」と説明。06年にも「緩和的な金融環境が当面維持される」とした
。本格的な引き締めではなく、緩和の度合いを調整する程度という意味だ。
日銀は今回も、同様の説明を通じて、非連続的な変化が起きる印象を与えないようにする構え。できるだけ円滑に短期の政策金利の引き上げを
進めようとしている。
もっとも、内外の経済・物価情勢、市場環境、政治動向の不確実性は高く、金融政策の転換が思わぬ混乱を引き起こすリスクも消えていないだろ
う。日銀はマイナス金利の幕引き作業の「ベストタイミング」を慎重に見極める。
2023/11/22 19:58 日経速報ニュース
日経平均株価が7月初旬以来となるバブル経済崩壊後高値の更新をうかがっている。上昇けん引の主役は今春の株高を演出した海外マネーだ。
市場を揺さぶった急激な米金利高と円安進行の「終わり」が見え始め、日本株を素直に評価しやすい。日本株買いの第2幕が始まった可能性がある。
海外勢の回帰は、「いつ日本株が上昇しているか」を見ると鮮明だ。日経平均先物の価格推移をみると午前8時45分から午後3時15分までの値幅
(日本時間)は累計で240円安。午後4時半から翌朝6時までの値幅(海外時間)は同1540円高だ。海外時間の上げ幅は5、6月(1300円程度)を上
回り、いまのところ今年最大だ。
日本株は7月初旬までの急ピッチな上昇の後、上値が抑えられていた。米長期金利の上昇ペースが加速したのが要因だ。世界でリスク回避が
強まったが、米利上げは打ち止めとの見方が広がる。
先発隊はCTAなど海外短期勢だ。野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは、CTAの日経平均先物のロング(買い持ち)ポジションは
10月末から急拡大し、足元で8000億円程度と試算。6月は最大2兆5千億円ほどに達し「拡大余地は十分ある」。
ただ短期勢は風向きが変わればすぐ利益を確定し、売り手にまわり相場を押し下げる存在にもなる。株高持続のカギを握るのが中長期勢の動き
だ。輸出関連株へのマイナス影響から株式市場で嫌気されやすい円高進行が、海外マネーの呼び水になるとの見方がある。
米運用大手インベスコで世界株ファンドの運用責任者を務めるスティーブン・アネス氏もその見方の1人。「日本経済は堅調で、日銀は緩やかな
金融引き締めを続けるだろう。(金利差縮小で)円は強含む可能性がある。海外投資家には株高と通貨高の二重の追い風が吹く可能性があり、日
本株への投資妙味は高まっている」と強調する。
東証株価指数(TOPIX)は23年に25%高と、米S&P500種株価指数(18%高)や欧州のストックス600(7%高)を大きく上回る(21日時点)。ドル建
てでみると12%高と米株に劣後し、欧州株(ドル建てで10%高)と大差ない。
円相場は対ドルで今年1割強下落。為替ヘッジしないことも多い長期投資家が、ドル建て運用成績のさえない状況を懸念したことが、日本株失速
のもう一つの要因だ。
「日本株はファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも評価すべき点が多い」(ドイツ銀行グループの運用大手DWS)。日米欧株の上昇を予想EPS
(1株利益)と予想PER(株価収益率)の伸びに分解すると日本は双方、米欧を上回る。DWSは対ユーロでも円安加速はないと見て「日本株に今か
らでも参入する価値はある」という。
ビヨルン・ジェシュ・グローバルCIO(最高投資責任者)は11月の機動的な資産配分(CIOポートフォリオ)で日本株の割合を5段階中、中立(ニュー
トラル)からプラス1に引き上げた。「輸出の安定、堅固なバランスシート、予想される収益」を根拠に挙げる。
米運用大手GMOがMSCIのEAFE(北米以外の先進国)指数を参照指標とする225のアクティブ運用戦略を分析したところ、6月末時点では8割強
が日本株を基準以下(アンダーウエイト)にしていた。その分、比率引き上げが広がればインパクトは大きい。
アネス氏は「日本にはバランスシートが極めて良好で、資本効率などで改善する潜在力を秘めた企業は多い。(指標対比で現状低い)日本株比
率はオーバーウエイトに上がる可能性もある」と話す。「ただ重要なのは、長期投資への確信が持てる企業が見つかるかどうかだ」
2023/11/28 日本経済新聞 朝刊
日本の物価上昇のけん引役がモノからサービスに移ってきた。日銀が27日発表した10月の企業向けサービス価格指数は前年同月比で2.3%
上昇と3年9カ月ぶりの伸びだった。働き手の不足という構造問題によりサービス価格に上昇圧力がかかる構図は米国でもみられ、日銀の目指す
2%の安定的な物価目標を見通す上で重要性が高まっている。
企業向けサービス価格は企業間で取引するサービスの価格変動を表す。上昇率は3カ月連続で2%を超え、10月の伸びは9月(2.0%)より拡
大した。調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは100品目と、全体の7割近くにのぼった。
日銀が物価の判断材料にする消費者物価指数(CPI)はモノの価格とサービスの価格を総合的に反映する。モノとサービスの構成比率はほぼ半
々だ。人件費の上昇分を転嫁して給与所得を増やし、CPIを上げる循環にはサービスの動向がカギになる。
企業向けサービス価格の内訳をみると、システムエンジニア(SE)の人件費上昇を反映するソフトウエア開発が前年同月比で4.7%、労働者派
遣サービスが2.2%上がった。日銀は「(機械修理などの)諸サービスや情報サービスの一部で人件費上昇の転嫁がみられた」と分析する。
企業間で取引するモノの価格変動を表す企業物価指数は下落傾向が鮮明だ。10月は原材料価格の上昇が落ち着いてきたことに加え、政府の
ガソリン補助金拡充などの影響もあって前年同月比上昇率は0.8%に下がり、2年8カ月ぶりに1%を割った。
サービスが物価上昇をけん引する構図は米国に近い。米国の卸売価格指数(PPI)をみると、モノの価格は上がり下がりが激しく15~16年や1
9~20年は前年同月比で大きく落ち込んだが、サービス価格は一貫してプラス圏で推移してきた。モノの値下がりが激しい時も、粘着性が高いサ
ービス価格が物価の押し上げに効く構図は明らかだ。
10月の米国のCPIの項目をみても、エネルギー関連を除くサービスが前年同月比5.5%増と物価を押し上げる。一方、食品とエネルギーを除
くモノの前年同月比上昇率は0.1%と低調だ。
バークレイズ証券の山川哲史氏は「日本では従来の米国と同様、労働集約的なサービス分野における価格引き上げが物価上昇を下支えする局
面に移行しつつある。CPI上昇率も、少なくとも24年半ばまでは高水準で推移する可能性が高い」とみる。
賃金上昇の持続性が注目されるなか、足元では大企業の賃上げ情報が入り始めている。ビックカメラは10月、24年に正社員に7%を超えるベ
ースアップ(ベア)を実施する方針を固めた。サントリーホールディングス(HD)も組合員平均で3%のベアを実施するとの考えを示している。
パートタイムで働く労働者への賃上げも進んでいる。厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(確報、従業員5人以上)によると、パートタイム
労働者の名目賃金は9月に前年同月比で1.6%増で、一般労働者(1.2%増)の水準を上回った。日銀関係者は「非正規労働者のほうが(賃
金が)上がっている。(正規より)賃金上昇が遅いという認識はない」との見方を示す。
日銀の植田和男総裁は11月6日の講演で、物価2%目標の達成の判断について「確度が少しずつ高まってきている」と話した。比較的安定す
るサービス価格の上昇傾向はこうした認識を裏付けている。賃上げが続き、円滑に消費者物価に波及する構図が確立すれば、金融政策の正常化
はより現実味を増すことになりそうだ。
2023/11/29 11:50 日経速報ニュース
日銀の安達誠司審議委員は29日、愛媛県金融経済懇談会に出席し挨拶した。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を
断続的に柔軟化していることに関連し、長期金利は市場参加者の将来の金融政策予想や、経済・金融市場の動向・先行き見通しなどが反映
されるため「金融政策を行う上で非常に高い情報的価値を有する指標だ」と説明した。
物価目標の実現のために長期金利の情報的価値が失われるデメリットを甘受してでも強力な金融緩和の枠組みであるYCC導入に踏み切っ
たが、「感染症禍以降における物価上昇のもとで、本来、長期金利が持つ情報的価値を有効に活用すべき余地が徐々に高まってきた」との考
えを示した。YCC運用による政策効果と、金利形成をある程度市場に委ねることで得られる長期金利の情報的価値のバランスに「変化が生じ
ている」とも述べた。
金融政策運営におけるリスクマネジメントの観点では、内外経済や物価の不確実性が高いなかで「(物価の)上振れリスクへの配慮も必要に
なっている」と指摘した。一連のYCC運用柔軟化により、市場機能の改善と金融緩和の持続性を高める効果という2つのメリットがあったと話し
た。
2023/11/29 15:06 日経速報ニュース
日銀の安達誠司審議委員は29日、愛媛県金融経済懇談会後に記者会見した。マイナス金利政策について、基本的には賃金と物価の好循環
が実現する状況になるまでは「マイナス金利解除は難しいというのが個人的な考えだ」と述べた。来年の春季労使交渉(春闘)を巡り、大企業で
は前向きな見方がある半面、中小企業を中心に今年度並みの賃上げは厳しいとの声があるなか「いつごろ解除するかという話をできるような状
況ではない」との考えを示した。
来年の春闘での賃上げ率については「年度が明けないと実際に(賃金が)どれくらい上がったか、中小企業を含めて分からない」と語り、賃金動
向の趨勢を見極めるタイミングとしては「新年度に入ってから」と述べた。賃金次第で重要な政策決定を下す可能性があるだけに「慎重に考えた
方がよい」として、賃上げ動向を丹念に見極めるとの姿勢を示した。
大規模緩和の解除と実質賃金の関係性について問われると、安達委員は新型コロナウイルス禍で内外経済が想定しにくい動きをしており「実
質賃金が先にプラスになる可能性がある」としたうえで、実質賃金のプラスは「必ずしも(緩和解除の)必要条件ではない」と語った。
金融政策運営のリスクマネジメントの観点でマイナス金利を解除する可能性については「YCC(長短金利操作)で操作目標としていた10年債利
回りと政策金利であるマイナス金利では性格が違う」と説明した。マイナス金利は「短期金利を操作するというオーソドックスな金融政策の一面が
あり根幹だ」と語った。
2023/11/30 日本経済新聞 朝刊
日銀の安達誠司審議委員は29日の記者会見で、マイナス金利政策について「賃金と物価の好循環が実現するまでは解除は難しい」との見解
を述べた。賃上げの動きについて見極められるのは「新年度明け以降」と述べた。
松山市で開いた金融経済懇談会後に記者会見した。春季労使交渉(春闘)の見極めを巡っては「慎重に考えた方がよい」とし「中小企業が今年
度並みの賃上げをするかどうかはかなり厳しいという声がある。(マイナス金利政策を)いつごろ解除するかという話をまだできる状況ではない」と
述べた。
現在の大規模な金融緩和策の出口は「(賃金と物価の好循環が)回り始める確率がある程度高まった段階で出口の話をし始める。まだそこまで
は行き着いていない状況だ」との見解を述べた。
物価高の長期化で下押しされている実質賃金にも触れた。金融緩和の出口の局面では「実質賃金がプラスになればそれは非常に良いことだ
が、必要条件ではない」と話した。物価の見通しは、輸入物価の下落の影響が今後出るとし「減速していくとみているがそこがどうなるかで変わっ
てくる」と話した。
長短金利操作の柔軟化など金融政策のリスクマネジメントについても言及した。「イールドカーブがゆがむことの副作用を2~3年前は意識してい
なかったが、意外と大きい。企業の資金調達に影響を及ぼすことがわかってきたので措置をする必要が出てきたことが主なポイントだ」とした。
金融経済懇談会では参加者から「(中小企業の立場で)将来の金利上昇に対するリスクは思ったよりも大きいかもしれないという切実な訴えもあ
った」と明かした。「十分考慮しなければならないという印象は受けた」と述べた。
2023/11/30 12:28 日経速報ニュース
日銀の中村豊明審議委員は30日、大規模な金融緩和策について「修正にはもう少し時間がかかる」との認識を示した。「(2%の物価目標の)
実現に確信を持てる状況ではない」としつつ、「賃金と物価の好循環を実現させる千載一遇のチャンスが到来し、正念場を迎えている」と期待感
もにじませた。
神戸市で開いた金融経済懇談会で講演した。現状の物価高については「輸入コストプッシュインフレの色彩が強い」とした上で、「従来にない
企業の積極的な価格設定行動がうかがわれる」と述べ、企業の価格戦略が変わりつつあると指摘した。
賃上げにも好感触を示した。政府の取り組みや企業の経営改善努力などが賃上げにつながり、「物価上昇を上回る賃金上昇が実現する兆しが
現れている」と述べた。特に大企業では「賃上げモメンタムは強まっている」と話した。
日銀は10月の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を修正し、長期金利が1%を一定程度超えて上昇するこ
とを容認した。中村委員は同会合で「企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」として反対票を投じた。
30日の講演では「企業の『稼ぐ力』の強化が進みつつある」との見方を明らかにした。中村委員が注視してきた中小企業の動向についても「賃
上げ・投資余力が向上している。(事業承継などで)事業構造改革が進むと期待している」と前向きに評価した。
【関連記事】
・日銀安達委員、金融緩和策「出口の議論行う段階にない」
・日銀・安達委員、賃上げの見極め「新年度明け以降」に
2023/12/01 05:00 日経速報ニュース
金融市場で日銀が近くマイナス金利を解除するとの見方が広がっている。2016年の導入時に日銀審議委員だった野村総合研究所の木内登英
エグゼクティブ・エコノミストにマイナス金利の功罪と解除の見通しを聞いた。
――日銀はマイナス金利政策をいつ見直すでしょうか。
「解除は2024年後半とみている。物価目標の達成を宣言するのは難しいが、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正した際と
同様に副作用を取り除くという説明で事実上の正常化を目指すのではないか。金融緩和を続けながら枠組みを見直していくことになるだろう」
「物価上昇でインフレ期待は上振れしている。春季労使交渉で2%賃上げしたところで、物価上昇に追いつかないと思えば個人は消費を抑えてし
まうリスクがある。すでにある意味ではビハインド・ザ・カーブ(政策が後手に回る)になっているとも言える」
――副作用といえば金融機関収益への影響ですが、それは政策修正の理由になりますか。
「そこが一番だと思う。低金利で収益が厳しいと高リスクの融資を抑制する可能性もあり、金融仲介機能が低下する。日銀が金融システムリポー
トでも言及しているが、不動産融資への傾倒もリスクだ。将来不動産価格が下落したり空室率が増えたりすればリスクが顕在化する。それを未然
に防ぐには、過剰に金利を押し下げるマイナス金利は解除すべきだ」
――導入当時、国債の大量購入で金融緩和の限界論が広がっていました。マイナス金利以外の選択はなかったのでしょうか。
「起死回生策だった。13年から量的・質的金融緩和を始め、国債の大量買い入れやマネタリーベースの拡大などをしても物価が上がらず、行き詰
まっていた。日銀内では(マイナス金利に)否定的意見がやや強かったように思うが、黒田東彦前総裁は金利をもっと下げれば効果が出ると考え
ていた」
――導入には反対されましたが、なぜですか。
「私は資産買い入れ方針と整合的でないことと、金融機関収益への影響を理由に反対した。短期金融市場の機能低下も懸念されていた。実際
にネガティブサプライズになり、金融機関や市場から強い批判にさらされた。日銀も16年9月にはYCCの導入で軌道修正を余儀なくされた」
「予想以上に金利が下がると生命保険などにも影響が出て、個人が消費を抑えるなど、(利下げの副作用が効果を上回る)リバーサル・レートと
いった概念が意識され、日銀も認めた。金利は下げれば下げるほど効果があるという発想を見直すことになっていく重要な時期だった」
――懸念は現実になりましたか。
「本当の評価はもっと時間が経つまでわからないが、とても副作用が大きいというほどではない。低金利下で稼ぐため地銀が運用などで金利リス
クを取り過ぎるといった弊害が出ている面はある」
――日銀は一定の効果があったと評価していますが、経済効果はどうでしょうか。
「マイナス金利で経済効果が大きくなったという証拠はあまりない。効果と副作用で見れば弊害の方が大きかった。貸出金利はそこまで下がら
ず、銀行だけがマイナスの金利のしわ寄せを受けた」
――金利のある世界が戻ってくると言われています。金融機関はどう行動すべきでしょうか。
「利ざやが広がっていく期待から預金金利を引き上げる動きが出てきた。ただ、運用利回りの上昇はたかがしれていると思う。現在の低金利はそ
もそも日本の成長力の弱さに根ざしており、金融政策の正常化だけで経済が劇的に改善することはないだろう。金融機関は構造改革の手を緩め
ず、手数料収入を増やすなど地道な策も重要だ」
2023/12/02 日本経済新聞 朝刊
政府は少子化対策の財源確保に向け、75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担引き上げを社会保障の改革工程の原案に盛り込む。
後期高齢者のうち一定の所得がある30%弱をのぞいて原則1割負担だが、2割への引き上げを検討する。給付や費用などの歳出も効率化
し、膨張する医療費を抑え、制度の持続性を高める。(関連記事総合3面に)
現在は一定の所得がある人の窓口負担は2~3割だ。原則は1割負担で、2割にすれば公費で年4200億円の歳出を抑えられると経済
同友会は試算する。
全世代型社会保障構築会議と経済財政諮問会議を近く合同で開き、有識者らが2028年度までの社会保障改革の工程を示す。与党と
の調整を経て年内に取りまとめる。与党から慎重な意見が出る可能性もある。
原案は後期高齢者の窓口負担の引き上げを中長期に検討する項目として位置づける方針だ。医療費の窓口負担は現役世代が3割で、
後期高齢者は低く抑えられている。年金などに収入が限られるためだが、医療費全体の4割近くを使う。
原案では安価な後発医薬品を使わない場合の追加負担も掲げる。
2023/12/02 日本経済新聞 朝刊
政府が75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担の引き上げを検討するのは、社会保障の負荷が現役世代に偏っている構図を是正するため
だ。高齢化で社会保障費は今後も増加が避けられない。膨らむ給付を抑えつつ、負担を大胆に見直さないと世代間の格差は縮まらない。(1面参照)
差が目立つのは医療の分野だ。現役世代が納める医療保険料は足元で高齢者が支払う分の3・6倍となり、20年前の2・8倍から差が広がった。
2020年度の35~39歳の保険料は1人あたり年間30・8万円だった。会社員は会社と折半するため実質は半分ほどだが、00年度に比べて5
割増えた。一方で75~79歳の後期高齢者は年8・5万円と20年間の伸び幅は1割強にとどまる。
今後は支払い能力に応じた負担の見直しが欠かせなくなる。政府は改革工程の原案に75歳以上の後期高齢者の窓口負担引き上げ案などを盛
り込む。75歳以上の1人当たり医療費は現役世代の4倍以上で、一定の負担増が必要との指摘は多い。
金融所得・資産を加味した負担も検討課題となる。
高齢者は現役世代に比べて給与などの収入は少ない一方、資産を多く保有するケースがある。能力に応じた負担という観点からきちんと資産な
どを把握し負担してもらうべきだとの指摘がある。
政府は24年度に診療報酬と介護報酬の同時改定を予定する。診療報酬と医療費の総額は同じになり、23年度は48兆円に上る見込みだ。会
社員らが払う保険料で半分をまかない、報酬の上げ下げは国民負担に直結する。
医療費は高齢化で増加が続き、40年度に70兆円台後半まで増えるとの推計もある。国民所得に占める税金と社会保険料をあわせた割合を指
す「国民負担率」は20年前は35%だったが、22年度は47・5%になった。
日本の給付と負担の水準は従来、国際的にみて「中福祉・低負担」だった。少子高齢化が進むことで将来に「高福祉・低負担」になる可能性があ
る。「高福祉・高負担」の北欧などと比べてもバランスを欠く。
2023/12/02 日本経済新聞 朝刊
民間有識者でつくる令和国民会議(令和臨調)は1日、医療・介護分野の歳出改革に関する提言を発表した。少子化対策の財源として後発薬の
活用などで3年間で最大年1・7兆円を捻出できると試算した。歳出改革の徹底を政府に求めた。
提言では医療で8項目、介護で4項目の歳出削減の案を挙げた。給付抑制などが可能な金額をそれぞれ試算した。今後3年間程度の目標額は
年ベースで計1兆1139億~1兆7203億円にした。
医療では、特許が切れた薬から後発薬(ジェネリック医薬品)への置き換えで2679億~5115億円を抑える。
軽度の不調を自ら治療するセルフメディケーションの推進で2360億~3250億円、繰り返し使えるリフィル処方箋の普及で1319億~1350億
円を削減する。
介護では軽度の要介護者への生活援助サービスの給付を市町村事業に移行するなどして500億~1025億円減らす。高齢者の介護計画(ケア
プラン)を作るサービスの一部を自己負担にして515億円を削る。
今後10年間で医療のデジタル化などにより追加で年1・5兆円が抑制可能と試算した。
令和臨調の財政・社会保障部会の平野信行共同座長(三菱UFJ銀行特別顧問)は1日の記者会見で「改革案は目新しいものではなく、政府で
議論しながら実行されてないものが大半だ」と指摘した。政府に働きかけ、歳出改革の工程表への反映をめざす。
平野氏は中長期的な給付と負担について「給付が増え続けるなかで国民負担の最適化を図っていくべきだ」と強調した。
2023/12/03 05:00 日経速報ニュース
街にジングルベルが鳴り響く。クリスマスの飾り付けもきらびやかだ。浮き立つ心はクリスマスのプレゼントや正月のお節の準備に向かいがち。
だが、日銀を長くウオッチしてきた市場参加者であれば、そんな浮かれ気分にはまだなれないかもしれない。日銀は18?19日に今年最後の金融
政策決定会合を開く。12月会合は日銀が何度もサプライズを引き起こしてきたいわば「鬼門」だ。
金融市場の関心は、日銀がマイナス金利政策をいつ解除するのかという一点に集中している。市場予想では24年の1月、または4月の解除を
予想する声が多い。1月、4月は日銀が「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表する月であり、物価見通しの上方修正とあわせ、金融政
策の正常化に踏み出すとみる参加者が多い。
12月に4度の日銀ショック
ただ、これまでの日銀の歴史を振り返れば、展望リポートのない12月に動いた例がいくつもある。08年のリーマン・ショック以降では少なくとも
4回、金融市場は師走の日銀ショックに揺さぶられた。
08年12月には、日銀が政策金利を0.2%引き下げて0.1%とした。日銀は「最後の利下げ」カードを切ることに慎重とみられていたが、米連邦準
備理事会(FRB)の大幅利下げと円高によって外堀は埋められ、実質的なゼロ金利政策に戻ることを余儀なくされた。
翌09年12月にも日銀は動いた。デフレと円高への警戒が強まるなか、0.1%の低利で3カ月の資金を供給する手段(新型オペ)を導入。期間が
長めの金利を日銀の目指す水準に抑えつけるという意味で、現在の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)につながる地平を切り開
いた。
追い込まれ続けた日銀の歴史
アベノミクス前夜の12年12月には、追加緩和を決定すると同時に、物価目標の導入検討を決めた。総選挙に勝利して政権獲得を確実にした
自民党の安倍晋三総裁(当時)からの圧力で、異次元緩和のベースとなる物価目標2%への道筋が付けられた。
ちょうど1年前、22年12月にYCCが修正され、長期金利の上限が0.25%から0.5%に引き上げられたことは記憶に新しい。当時の黒田東彦総
裁のもと、かたくなに金融緩和を継続してきた日銀が、投機筋の債券売りで政策修正に追い込まれた。
師走の日銀会合が金融政策の歴史をつくってきた、と言えばやや大げさかもしれない。ただ、政策の流れを変える重要な決定がたびたび12月
になされてきたことは事実だ。マイナス金利解除が焦点のいま、歴史が再び繰り返されるのかという問いは成り立つだろう。
今回の12月会合を読み解くヒントも、上に挙げた4つの会合にあるのではないか。どの会合でも日銀によるサプライズがもたらされた。ただ、日
銀が自らの意思で動いたというよりは、マーケットに追い込まれて、あるいは政治からの圧力によってやむにやまれず決定に至ったというのが実
際のところだろう。
日銀にとっては、やはり展望リポートがある月に政策を変えるのが常道だ。12月の政策変更は、展望リポートを出す1月を待てないほどに、日銀
がそのとき追い詰められていたことを示している。
そうした視点で今回12月の会合を眺めるとどうか。すでに2度政策修正に動いている植田日銀に3度目はあるだろうか。
米国の金利低下を受けて、日本の10年債利回りの上昇にもブレーキが掛かっている。日米金利差の縮小で円安圧力も弱まった。政府・与党か
ら日銀に金融政策の変更を求めるような声は上がっていない。少なくとも表面上は、日銀が慌てて動かねばならないような理由はない。
それでも日銀が動くとすれば、次の2つの展開だろう。ひとつは物価上昇が続く中で金融政策の正常化をこれ以上遅らせれば、ビハインド・ザ・
カーブに陥る(後手に回る)可能性が高いと判断した場合。もうひとつは、米国の金融政策が変化して円安から円高に流れが変わる前に、金融
政策の正常化を進めておきたいと考えた場合だ。
どちらもあり得る理屈だが、これまで慎重に物価目標達成を判断するとしてきた植田日銀が突然動く理由としてはやや弱いかもしれない。
技術的な変更の可能性も
仮に大きな政策変更はないとしても、日銀が金融政策に技術的な変更を加える可能性はある。12月会合ではこれまで、10月や1月といった展
望リポートのある月には議論できない制度の微修正など、細かな決定もなされてきた。
たとえば15年12月には、日銀は新たな上場投資信託(ETF)買い入れ枠の設定など、異次元緩和を「補完するための諸処置の導入」を決めた。
追加の金融緩和ではないが、金融緩和を円滑に進めるためのものという触れ込みで、翌月(16年1月)のマイナス金利政策の導入決定までのつ
なぎの役割を果たした。
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏はリポートで「(日銀が)マイナス金利の解除などを行う場合、事前にフォワードガイダンスを変更して、近い将
来での政策修正の意図について明確なシグナルを発する」可能性が高いと指摘した。12月にそうした措置がとられるリスクも無視できないとの
考え方だ。
来年は日本経済が超低金利のぬるま湯から抜け出し、金利のある世界に足を踏み入れる年になる可能性が高い。日銀はいつマイナス金利を
抜けだし、どれだけのペースで利上げを進めるのか。日銀が黒田流のサプライズ路線から決別するのであれば、公表文や記者会見を通じ、何ら
かのヒントが示される可能性はある。
2023/12/06 日本経済新聞 朝刊
日銀が過去の金融政策を総括する「多角的レビュー」で、日銀の担当者が議論のたたき台として作成した報告の概要がわかった。4日の有識
者による初めてのワークショップで示された。報告では2013年に導入した異次元緩和で債券市場の流動性が「総じて悪化した」と指摘した。
緩和が長引くなかで、日銀は効果と副作用のバランスにより配慮せざるを得なくなっている。
日銀は副作用を軽減するため、22年12月以降、3回にわたって長短金利操作(YCC)を修正している。報告では政策修正によって、足元の状
況は「改善している」とした。
日銀が公表しているプログラムによると、ワークショップには東短リサーチの加藤出社長や、東京大学の星岳雄教授など、金融市場や金融政
策に詳しい有識者がパネリストとして参加した。ほかにもエコノミストらがオンラインや会場で議論に加わった。
日銀の金融市場局は異次元緩和が債券市場の機能に与えた影響を評価した。金融緩和を短期決戦型から持久戦型に切り替えた16年9月の
YCC導入で、流動性は比較的改善。ただ、22年以降は海外金利の上昇やインフレ予想の引き上げで「市場の金利目線がYCCの変動幅と乖離
(かいり)」し、「すべての流動性指標が悪化した」。長短金利曲線のゆがみも目立ったと指摘した。
金融機構局の報告では、緩和的な金融環境のもと、金融活動に「大きな不均衡は認められない」と総括。一方で、本来は一定の上乗せ金利
が期待できる、財務状況が中程度のリスク企業向けの貸し出しで、採算が「歴史的な低水準」になっていると副作用にも触れた。
業種別の貸出金利の分析では、不動産で10年度は2.4%超あったが22年度はほぼ半減した。全体の貸出金利が低下するなか、金融機関
は低採算でも貸出ボリュームの大きな分野に融資を増やした。報告では「不動産業など特定業種への貸し出し集中を招いている」と指摘した。
参加者からは「副作用の検証の対象が狭すぎる」との声もあがった。財政規律の緩みや円安など為替の動向も、副作用の範囲に入れるべき
だとの指摘があった。
物価や経済に及ぼしたプラスの影響も評価した。企画局の報告では、国債買い入れによる量的緩和なども利下げとみなして算出する指標の
一種、「影の金利(シャドーレート、報告では潜在金利と呼称)」を使って分析した。
報告では、異次元緩和は「デフレではない状況を作り出すことに寄与した」と評価した。ただ、緩和による物価上昇率の押し上げ幅は「1%程
度にとどまる」とし、金融緩和頼みの限界もにじませた。「中長期のインフレ予想の変化や物価・賃金の動向など他の要因について総合的に分析
する必要がある」とした。
異次元緩和は金融機関の「貸出残高を大きく押し上げた」とも指摘した。報告に盛り込まれた分析によると、異次元緩和がなかった場合と比
べ、貸出残高を2割程度押し上げた。経済に与えた影響では、常時雇用者数を5%以上押し上げたほか、失業率も低下させたと試算した。雇用
環境を改善させ、「潜在成長率を下支えしていた」可能性を強調した。
参加者によると、植田和男総裁も会場で質問をした。金融緩和の効果検証は従来も実施してきたが、今回のレビューは「外部の有識者の意見
を聞くことに重きを置いている」(日銀関係者)。日銀は今回のワークショップの要旨を今後公表する予定で、有識者との議論の内容などが焦点と
なる。
日銀は4月に多角的レビューの実施を決めた。第2回のワークショップは24年5月ごろに開催する予定で、海外の有識者との意見交換も検討
している。
2023/12/06 11:26 日経速報ニュース
日銀の氷見野良三副総裁は6日、大分県金融経済懇談会で挨拶した。大規模な金融緩和策の出口について「一番気をつけなければならない
のは、賃金と物価の好循環の状況をよく見極めて、出口のタイミングや進め方を適切に判断すること」と語った。判断を誤らない限り、賃金・物価
の好循環が強まるメリットが幅広い家計と企業に及ぶと考えられるとして「出口をいい結果につなげることは十分可能だろう」との見方を示した。
氷見野氏が金融経済懇談会に出席するのは3月の副総裁就任後初めて。仮に物価目標の持続的・安定的な達成が見通せるようになり、金融
緩和の出口を迎えた場合に何が起こるかにも言及した。「出口の具体的な状況や政策修正の姿にも大きく左右されるので、簡単には論じられな
い」としたうえで説明した。
金融緩和については「経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えるべく、大規模な金融緩和を粘り強く続けてきた」と話した。「賃上げを
伴う形で『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現できると見通せるようになるまで、粘り強く緩和を継続していく」との考えを示した。
金利のない世界から金利のある世界に移った場合、貯蓄超過主体である家計は「総じてみれば収支が改善するのではないか」と指摘。企業は
借金を減らし手元資金を積み上げてきたため、金利収支への影響は「手元資金が少なかった時代に想定されたであろうよりは限定的なものとな
るかもしれない」と話した。金融機関については「出口局面では経済の改善に伴い企業の投資も活発化しているとすれば、貸し出しの需要も増え
、預金と貸し出しの間での利ざやも取りやすくなるだろう」としたうえで、「低金利が続く環境に比べれば銀行経営はずっと成り立ちやすくなると思
う」と述べた。
賃金・物価の好循環を見極め、出口のタイミングや進め方を適切判断
銀行経営、低金利が続く環境に比べればずっと成り立ちやすくなる
日本銀行の氷見野良三副総裁は6日、大規模な金融緩和政策からの正常化の局面で家計や企業、金融機関に与える影響に言及し、賃金と
物価の好循環の状況を慎重に見極めた上で出口を適切に判断する考えを示した。大分県金融経済懇談会で講演した。
日銀として最も気を付けなければいけないことは、「賃金と物価の好循環の状況をよく見極めて、出口のタイミングや進め方を適切に判断する
ことだろう」と指摘。そこを間違わなければ好循環が強まっていくこと自体のメリットは幅広い家計と企業に及ぶとし、「出口を良い結果につなげる
ことは十分可能」と語った。
出口の具体的な状況や政策修正の姿にも大きく左右されるとしつつ、金利のある世界に戻る過程での各経済主体への影響についての見解を
示した。このうち金融機関に関しては、保有債券の含み損の発生など短期的に一定のストレスがあり得る一方、「低金利が続く環境に比べれば
銀行経営はずっと成り立ちやすくなる」と分析した。
3月に副総裁に就任した氷見野氏は金融庁長官を務め、金融システムや国際金融規制に精通している。副総裁として初めてとなった今回の
講演では、景気改善に見合った金利上昇のプラス効果を説明することで、金融政策の正常化に向けて前向きな姿勢をにじませたといえそうだ。
粘り強く緩和継続
金利上昇の影響は、貯蓄超過主体である家計部門では「総じてみれば収支が改善するのではないか」と指摘。手元資金の厚い企業部門は
足元で金利収支が黒字となっており、「借り入れが多く手元資金が少なかった時代に想定されたであろうよりは、限定的なものとなるかもしれ
ない」としている。
日銀は10月の金融政策決定会合で長期金利の1%超えを容認するイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の運用柔軟化を決め
た。氷見野氏は金融政策運営について「こうした工夫を行いながら、賃上げを伴う形で物価安定の目標を持続的・安定的に実現できると見通せ
るようになるまで、粘り強く緩和を継続していく」と語った。
消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)が日銀の目標の2%を上回って推移する中、「足元の物価は何とかしたいが、先行きデフレ的な世界に
戻ることも避けたい」という悩みも吐露。賃金から物価への波及も見られつつあり、「デフレ前の時期並みに値段が変わる状態に戻っている」と指
摘した。
他の発言
出口の環境での実質金利上昇、名目金利上昇よりも小さい可能性
金利上昇局面では、単純に金融機関の利ざやが拡大するとはいえない
金融システム全体としては移行過程のストレス乗り切る頑健性を有している
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マイナス金利解除議論は尚早、賃上げ見極め来年度-安達日銀委員
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-06/S56SI6T1UM0W00
利ざや縮小が収益圧迫、時機見極めつつ金融政策の正常化へ歩みを
90年以降の金融緩和、相次ぐショックでも潤沢資金が地域経済下支え
日本銀行が地方銀行のトップに対して行った多角的レビューに関するヒアリングで、地銀側がマイナス金利政策の収益への悪影響を指摘し
改めて解除を要望していたことが分かった。事情に詳しい関係者への取材で分かった。
日銀本店で11月16日に行われた会合には、植田和男総裁ら日銀の幹部と第二地方銀行協会の熊谷俊行会長(京葉銀行頭取)ら第二地
銀のトップが出席。関係者によると、日銀は1990年代後半以降の金融緩和が地域経済や銀行経営に及ぼした影響などについて意見を求め
地銀トップから金融緩和の長期化やマイナス金利政策に伴う預貸金利ざやの縮小が、銀行の収益を圧迫しているとの懸念が表明された。
こうした状況を踏まえ、地銀側はマイナス金利政策の見直しを引き続き要望。熊谷会長は政策金利の急激な引き上げは景気に下押し圧力
が強まる可能性があるとし、地域経済や金融システム、金融市場に配慮しながら、時機を見極めつつ、金融政策の正常化に向けて歩みを進
めていただくことを期待していると語ったという。
2023/12/07 日本経済新聞 朝刊
日銀がマイナス金利解除への布石を打ち始めた。氷見野良三副総裁は6日、大分市内で開いた金融経済懇談会で、日銀が金融正常化に踏み
切った際の経済への悪影響は比較的少ないとの見方を示し、「状況をよく見極めて出口のタイミングや進め方を適切に判断する」と述べた。他の委
員の物価・賃上げ動向への評価が前向きに変わりつつあるなか、市場には2024年前半にも日銀がマイナス金利を解除するとの見方がある。
氷見野氏は6日午前の金融経済懇談会で、マイナス金利解除といった出口局面で想定される企業・家計への影響に触れた。家計については
「貯蓄超過主体である家計部門は、総じてみれば収支が改善するのではないか」と述べた。
金融機関の経営については「短期的には一定のストレスもありうるが、低金利が続く環境に比べれば金融機関経営はずっと成り立ちやすくなる」
と指摘した。企業は「個別には影響は様々」としつつ、「借り入れが多く手元資金が少なかった時代よりは(影響は)限定的」との見方を示した。
異次元緩和の開始以降、日銀副総裁が出口を迎えた際の経済への影響を具体的に示すのは異例だ。氷見野氏は懇談会後の記者会見で「出口
ということが起きた場合についても、考えられる点は考えてみようということで申し上げた」とした。
出口の条件となる物価2%目標の達成に向け「好循環が少しずつ起きている。今後さらに強くなっていくことを期待している」と述べた。具体的な
判断時期は明言せず、現時点での見極めも「そこまでの判断ができていない」と慎重姿勢を示した。
ただ会見で「それなりにしっかりとした賃上げが来年度も続く可能性はそれなりにある」「(条件が)全部青信号ということはない。どこかで判断す
ることが大事」との持論も示した。
日銀内のムードは徐々に変わりつつある。植田和男総裁は11月に名古屋市で開いた懇談会で、物価目標についての達成の確度が「少しずつ
高まってきている」と述べた。
中村豊明審議委員は11月に神戸市で開いた懇談会で「物価上昇を上回る賃金上昇が実現する兆しが現れている」「企業の『稼ぐ力』の強化が
進みつつある」と述べた。
中村委員はかねて企業経営への影響を懸念し、政策修正に慎重姿勢を示してきた。7月と10月の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
の修正では「企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」として反対票を投じていた。
大規模な金融緩和策の継続を求めるリフレ派の安達誠司委員も11月に松山市で開いた懇談会で「(物価の先行きは)より上振れリスクが高い
」「価格競争が優位であったデフレ環境が大きく変わりつつあることを示唆している」との認識を示した。
6月の鹿児島市での懇談会では「長い目でみた場合、下振れリスクの方が大きい」と話していた。今も「まだ出口政策の議論を行う段階にはな
い」と慎重姿勢を示しながらも、物価への見方は変化しつつある。
日銀は現在、10年に及んだ異次元緩和の総括を進めている。4日に日銀本店で開いた「多角的レビュー」のワークショップで異次元緩和で債券
市場の流動性が「総じて悪化した」との報告を出席者に示した。日銀は6日、報告の中身をホームページで公開した。
市場では24年前半にも日銀がマイナス金利を解除するとの観測が広がっており、市場関係者からは「日銀が正常化に向けた地ならしを進めつ
つある」との声が聞こえる。
日銀は18、19日に金融政策決定会合を控えている。政策委員が外部に意見発信する金融経済懇談会は、今回が現時点で12月会合前の最
後の機会となる。副総裁の氷見野氏が正常化に前向きな姿勢を示したことで、市場には政策修正観測がさらに広がる可能性がある。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-07/S59QO5DWX2PS01?srnd=cojp-v2
情報管理もきちんと徹底しつつ、丁寧な説明と適切な政策に努める
マイナス金利解除後の金利水準、現時点で決め打ちしたものはない
日本銀行の植田和男総裁は7日、年末から来年にかけて一段と慎重な金融政策運営が求められるとの認識を示した。参院財政金融委員会で
答弁した。
植田総裁は4月の就任以降の金融政策運営は、さまざまな不確実性が高い状況の下で「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年
にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と語った。その上で、「丁寧な説明、適切な政策に努めていきたい」と語った。
根強いインフレ圧力や賃上げの動きの広がりを背景に市場に早期の政策正常化観測が浮上する中、6日には氷見野良三副総裁が大規模緩
和からの出口局面における家計や企業、金融機関への影響に言及したばかり。その翌日の植田総裁の意味深長な発言を受けて、日銀が今月
と来月に開催を予定している金融政策決定会合での政策変更を巡る思惑が強まりそうだ。
総裁は国会への半期報告の概要説明で、現時点では物価目標の持続的・安定的な実現を「十分な確度を持って見通せる状況にはなお至って
おらず、今後、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要」と指摘。その上で、現在の政策の枠組みの下で「粘り強く金融緩和
を継続することで経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく」と語った。
その後の質疑では、「物価目標達成の見通しが立つようになれば、マイナス金利の解除、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の
フレームワークの見直しが視野に入ってくる」と言明。その上で、マイナス金利解除後の金利水準に関しては「現時点でこういう姿であるというふう
に決め打ちしたものを、心の中に持ってるというわけでは全くない」と述べた。
日銀は10月会合で、長期金利の1%超えを容認するYCCの運用柔軟化を決めた。2023-25年度の消費者物価見通しも引き上げ、24年度ま
で3年連続で目標の2%を超える姿となった。
他の発言
利上げ後の政策金利、当座預金付利かコール翌日物か決めてない
当座預金付利使う場合の利上げ、それをゼロや0.1%に引き上げる
当座預金の3層構造、利上げの場合どうするかさまざまな選択肢
利上げ後の短期政策金利、当座預金付利もコール翌日物も可能
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東京消費者物価2カ月ぶり鈍化、予想下回る-日銀正常化観測後退も
政策対応は「拙速よりも慎重に」、緩和修正に時間-中村日銀委員
マイナス金利解除議論は尚早、賃上げ見極め来年度-安達日銀委員
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-07/S59SGHT0G1KW01
OISが織り込む12月のマイナス金利解除の確率は一時40%強に上昇
氷見野副総裁の講演は「出口に向けた地ならし」と岡三証・長谷川氏
日本銀行の植田和男総裁と氷見野良三副総裁の発言を受けて、沈静化しつつあった早期のマイナス金利解除観測に再び火が付いた。市場関
係者からは、日銀が18、19日に開く金融政策決定会合が政策変更の可能性が意識される「ライブ」な会合に変わったとの声も出ている。
氷見野日銀副総裁が出口の影響に言及、金利上昇のメリットも
氷見野副総裁の6日の講演を受けて、金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は7日、12月会合でのマイナス金
利解除(0.1%の利上げ)の確率を一時40%強まで織り込んだ。
30年債入札が不調、テールは過去最大-金利先高観測で生保慎重
大和証券の川原竜馬シニアストラテジストと佐藤一哉ストラテジストは7日付のリポートで、氷見野副総裁の講演は比較的タカ派と受け止めら
れ、市場は12月会合で政策変更がなされる可能性まで一部織り込み始めたようだと指摘。12月会合は「ライブなものへと変化した」と記した。
植田総裁は7日の国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言。正副総裁発言を受けて政策変更を巡る思
惑が強まり、長期金利は昨年12月以来となる10ベーシスポイント(bp)超の大幅上昇となり、同日行われた30年債入札は大きいほど不調を示
すテール(落札価格の最低と平均の差)が過去最大となるなど不調に終わった。
金融政策運営、年末から来年かけ一段とチャレンジングに-日銀総裁
植田総裁はその後、首相官邸で岸田文雄首相と会談。賃金が物価に波及するかどうかなどを点検していきたいと首相に伝えたと語った。
8月以来となる両者の会談を受けて、ドル・円はロンドン時間7日午前に一時1ドル=145円を割り込んだ。145円割れは9月1日以来。
レバレッジドファンドがドルをショート、日銀総裁と岸田首相会談受け
日銀は多角的レビューの一環として、過去25年間に実施してきた非伝統的金融政策に関する特別調査を行ったり、異次元緩和の効果と副作
用を議論するワークショップを開催するなど、出口に向けた準備を進めている。市場関係者の間では、米国の利下げ前倒し観測の高まりがかえ
ってマイナス金利解除を早める可能性が意識されている。
利下げ観測が米欧で台頭、世界の債券相場上昇加速-FRBもECBも
「良い出口は可能」
氷見野副総裁は6日の講演で、将来金融政策が出口を迎えた場合の家計や企業、金融機関への影響を詳しく論じた上で、「出口を良い結果
につなげることは十分可能だろう」と結論づけた。岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジストは、家計全体で見れば金利上昇はプラスとの
評価を丁寧に伝えることで「出口に向けた地ならしを行った」と受け止める。
米国では景気減速を受けて利下げ観測が強まっている。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、利下げが始まると複数回に
なる可能性が高く、日銀にとっては時間の経過とともにマイナス金利解除後の追加利上げのハードルが高くなっていくと指摘。このため、マイナ
ス金利解除は早いタイミングでやっておきたいという方向に傾きやすく、「来年1月や3月の解除も十分あり得る」とみる。
パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長も「1月であれば米利上げも利下げもないので日銀にとってもやりやすいはずだ」と
述べ、早ければ年明けにマイナス金利の解除があると予想している。
2023/12/08 08:07 日経速報ニュース
7日夕から急激に進んだ円高・ドル安を嫌気するかたちで、きょうの東京株式市場では輸出関連を中心に幅広い銘柄に売りが先行しそうだ。
日経平均株価は7月に付けた年初来高値(3万3753円)が一段と遠のくだろう。
日本時間8日早朝の大阪取引所の夜間取引で日経平均先物の2024年3月物は前日の清算値と比べ500円安い3万2360円で終えた。日経
平均先物(中心限月ベース)の年初来高値は11月20日に付けた3万3870円。そこから約1500円低い水準まで一気に落とされる格好だ。
「日銀が12月にも金融政策を正常化するとか。その場合の市場へのインパクトを証券会社の債券売買部門にヒアリングしている」――。7日
夜の東京市場では不穏な噂が飛び交い、円高・ドル安が一気に進んだ。その流れは米国にも波及し、7日のニューヨーク外国為替市場で対
ドルの円相場が一時1ドル=141円台後半と、8月以来4カ月ぶりの円高・ドル安水準を付けた。ロスカット(損失覚悟)の円買い・ドル売りが強
まり、夜間取引の日経先物にもヘッジ目的の売りが膨らんだ。
今週に入ってからの日銀の植田和男総裁、氷見野良三副総裁の一連の発言を受け、モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフ・エコ
ノミストは7日付のリポートで「24年1月のマイナス金利政策の解除を基本ケース、12月会合での解除をリスクシナリオとする見方を維持する」
と指摘した。「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」との植田総裁の7日の参院財政金融委員会での発言に対し、「これまでの
日銀見通しと整合的」との見方を示し、12月会合は「(最後まで結果が分からない)ライブ」になると予想する。12月会合での解除の可能性は
2~3割、1月会合までに解除される確率は8割と指摘した。
日銀の政策修正観測の高まりを受けて、きょうの東京市場で買われるセクターの代表は銀行を中心とした金融株となりそうだ。金利上昇に
伴う利ざや改善期待から機械的に銀行株には買いが入りやすい。7日の米株式市場ではみずほFGや三菱UFJ、三井住友FGの米預託証券
(ADR)が軒並み3%強上昇。野村も上昇した。
日銀の政策修正観測を受けて、国内債券市場では長期金利が上昇基調を強める可能性が高い。株式市場では信託銀行の動きに関心が
高まる。日本取引所グループが公表する投資部門別売買動向では年金基金の売買動向を映すとされる信託銀行は11月第5週(11月27~
12月1日)まで2週連続で買い越し。現物と株価指数先物の合計で4000億円の買い越しだった。日本株相場が年初来高値圏にあったなかで
の、信託の買い越しに違和感を覚える市場参加者が多かった。
11月は欧米の債券相場が大きく上昇(金利は低下)し、「持ち高に占める外国債券のウエートの急上昇を受け、国内年金が外債を売り、国内
株を買った可能性がある」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)。日銀の政策修正で国内債券が大きく値崩れした場合、年
金勢は再び国内株売りに転じそうだ。
2023/12/11 05:00 日経速報ニュース
日銀は18?19日に金融政策決定会合を開く。市場ではマイナス金利政策の解除観測も浮上するが、緩和方向のこれまでの政策変更と違い
17年ぶりの利上げを意味し経済全体に影響が及ぶ。日銀はサプライズ路線から丁寧に地ならしを進める対話重視にかじを切ろうとしているが、
不慣れな対話が市場の過剰反応を招く危うさもはらむ。
封印解けた「出口論」
「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」。植田和男総裁が7日の参院財政金融委員会でこう発言すると、「12月会合でのマイナス
金利解除もありうる」と受け止めた金融市場は鋭く反応した。同日朝に1ドル=147円台だった円相場は141円台まで急伸。日経平均株価も大
幅に下落した。
ある日銀関係者は「時期に触れたことで臆測を招いた」としつつ、「政策的なものを意図した発言ではなかっただろう。市場との対話の難しさが
改めて分かった」とこぼす。ただ、「結果として円安が是正され、やや低くなりすぎた長期金利も底上げされた。政策運営はやりやすくなった」と見
る向きもある。
「家計部門は、総じてみれば収支が改善する。低金利が続く環境に比べれば銀行経営はずっと成り立ちやすくなる」。6日にも氷見野良三副総
裁の大分市での講演が市場にさざ波を広げていた。金融緩和の「出口」の影響を前向きに評価したうえで、「タイミングや進め方を適切に判断す
る」と語った。
黒田東彦前総裁の体制下では時期尚早として封印し続けていた緩和の出口への言及が増えている。インフレ率は3年連続で目標とする2%を
超える見通しで、持続力を左右する賃金も「物価上昇を上回る上昇が実現する兆しがあらわれている」(中村豊明審議委員)ためだ。
日銀が利上げしたのは2007年2月に政策金利を0.25%から0.5%に引き上げたのが最後で、それ以降はひたすら緩和方向の政策修正だった。株
式市場が好感し、金利も押し下げる緩和は基本的にサプライズで実施した方が効果的とされる。このため日銀は16年1月のマイナス金利の導入
決定を含めてサプライズ路線に傾倒してきた。
日銀は植田総裁体制下で2度、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を修正したが、あくまで「粘り強く緩和を続けるための措置」だった。
対照的にマイナス金利解除は「0.1%の利上げ」(内田真一副総裁)で、長期緩和の出口を意味する。
このため、解除を決める会合前に日銀が「事前予告」するとの見方も市場で浮上している。サプライズで実施すると市場にとどまらず、経済全体
に思わぬ混乱を招く可能性があるためだ。こうした声は日銀内にもあり、ある日銀関係者は「100%市場に織り込ませた上で実施するだろう」
みる。
海外では引き締め方向の政策修正は事前に織り込ませるのが一般的で、米欧の主要中銀も利上げ局面の開始に先立って利上げを事前予告
してきた。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は22年1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「(次回の22年)3月会合で利上げ
に適切な条件が整うと想定している」と予告し、実際に3月会合で利上げに踏み切った。金融先物市場も利上げを100%織り込んでいた。
欧州中央銀行(ECB)も6月の理事会後の声明文で次の7月の理事会で「主要金利を0.25%引き上げるつもりだ」と明記し、7月に予告を上回る
0.5%の利上げを決めた。
政策金利を上げ下げしてきたFRBは3カ月ごとに政策金利水準の見通しも示し、市場が金融政策の先行きを占えるようにしている。日銀も3カ月
ごとに経済・物価情勢の展望(展望リポート)で物価見通しを示しているが、具体的な政策の方向性を示すものではない。
長期緩和を続けてきた間、出口の議論を封じ込んだ結果で、対話の手段はもっぱら総裁の記者会見や国会答弁、講演などがメインになる。言
葉は「チャレンジング発言」のように、意図せぬ反応を招くリスクと背中合わせでもある。
今回会合で布石も
もっとも、植田氏の発言後も12月会合での解除を見込む声は多くない。「出口政策の議論を行う段階にはない」(安達誠司審議委員)、「修正に
はもう少し時間がかかる」(中村委員)。11月下旬に記者会見した2人の審議委員も年内を含む早期解除に否定的な見解を示していた。ただ、無
風とは限らない。
市場には12月に解除を事前予告し、政策金利の先行き指針(フォワードガイダンス)を同時に修正するとの見方もある。指針にある「必要があ
れば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」との文言を削除し、緩和方向に傾く指針を中立に戻して将来の引き締めへ布石を打
つとの見立てだ。
日銀内からは「指針は今年4月に修正したばかりで、政策変更がないのに指針を先に変える必要はない」「総裁発言で市場はすでに将来の引
き締めを意識している」との声も漏れる。
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「日銀も米欧同様、予見性の高い政策運営を意識するようになっている。事前予告する可能性は高い」と
話す。17年ぶりの政策転換に向けて植田総裁のコミュニケーション力が試されることになる。
(小野沢健一)
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2023/12/11 14:00 日経速報ニュース
国内債券市場で長期金利の上昇(債券価格は下落)が続いている。指標となる新発10年物国債の利回りは一時、前週末比0.03%高の0.8%を
つけた。このまま取引を終えれば、3営業日連続の上昇となる。日銀による早期の政策修正観測が浮上し、国内金利に上昇圧力がかかっている。
長期金利は6日、一時0.62%と8月中旬以来およそ4カ月ぶりの低水準をつけていた。前週半ばには米利上げ打ち止め観測から米長期金利が低
下し、国内にも債券買いが波及していた。そこからわずか3営業日で0.18%上昇した形だ。
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「市場の焦点は米金利動向から日銀の金融政策に移りつつある」と指摘する。前週後半以
降、植田和男総裁の発言などを背景に日銀による早期のマイナス金利解除への思惑が広がっている。
RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの債券部門最高投資責任者、マーク・ダウディング氏は「日銀は3四半期にわたってインフレ見通しを上方
修正している。日銀による金融政策の正常化は不可欠だ」と話す。
円相場は円高の動きに歯止めがかかっている。前週は1日に5円以上の大幅な円高が進む場面があった。11日の東京外国為替市場は円高基
調から一転し、一時1ドル=145円台後半と前週末から70銭ほど円安方向に振れた。
SMBC信託銀行の二宮圭子シニアFXマーケットアナリストは「為替相場は先週、急速に日銀の政策修正を織り込んだ」と指摘したうえで、さらな
る円買いの動きは出にくくなっているとみていた。
【関連記事】
・日銀、緩和出口どう地ならし 慣れぬ対話に危うさも
・円の乱気流、まだ入り口 「2006年型ドル高」再来も
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-11/S5HJJ3T0AFB400
日銀は賃金と物価の好循環実現に向けた確証得られていない-関係者
経済・物価情勢や市場動向などを直前まで見極めた上で決定-関係者
日本銀行は、賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていないため、マイナス金利やイールドカーブコントロール(長短金利
操作、YCC)の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識だ。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。
これは、日銀が18、19日に開く金融政策決定会合では、金融政策の正常化が見送られる可能性が高いことを示している。関係者によると、賃
金の堅調な伸びがデータで確認されるまで待つコストはそれほど高くないとみているという。
日銀はマイナス金利などの解除の条件である2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況には依然として至っていないとみている。
焦点となる来年の賃上げへの期待感は高まりつつあるが、十分な確証は得られておらず、賃金と物価の好循環の実現をなお見極める必要が
あるとの声が日銀内に多いとしている。
13日公表の12月の企業短期経済観測調査(短観)を含め、経済・物価情勢や市場動向などを直前まで見極めた上で政策対応の必要性を判断
するという。日銀は前回の10月会合で、長期金利の1%超えを容認するYCCの運用柔軟化を決めた。市場では早ければ今月の会合でマイナス
金利が解除されるとの観測が広がっている。
金融政策運営を巡っては、植田和男総裁が7日の国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことなど
を受けて、市場で早期の正常化観測が急速に強まっている。関係者によると、植田総裁の発言は単なる一般的な見解に過ぎず、差し迫った政
策変更を示唆するものではないという。
ブルーバーグによる報道後、外国為替市場では円が対ドルで一時1%安の146円46銭まで下落した。大阪取引所の夜間取引で日経平均先
物は上げ幅を拡大し、一時3万2920円を付けた。日経平均の11日の通常取引終値は3万2791円80銭だった。
円が対ドルで1%下落、日銀早期マイナス金利解除観測が後退
ブルームバーグがエコノミスト52人を対象に総裁発言前の1-6日に実施した調査では、日銀が現在マイナス0.1%の短期政策金利を引き上
げる時期は、来年4月の会合までの予想が67%となった。最多は4月の50%で、前回の10月会合前の調査の29%から大きく上昇。次いで来
年1月が15%となったが、今月会合で解除するとの予想はなかった。
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植田発言受けた日銀の早期修正を織り込む市場は行き過ぎ-早川元理事
日銀マイナス金利の早期解除観測強まる、来年4月まで7割-調査
金融政策運営、年末から来年かけ一段とチャレンジングに-日銀総裁
氷見野日銀副総裁が出口の影響に言及、金利上昇のメリットも
地銀がマイナス金利解除を要望、日銀がレビューで意見聴取-関係者
https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/cd1433a6596aa39c7b2ad3156677814b280651e3
2023/12/12 13:35 日経速報ニュース
金融市場で日銀のマイナス金利解除を見据えた取引が盛り上がりを見せている。日銀の正副総裁による直近の発言が政策修正に向けた「地な
らし」と受け止められているためだ。固定金利と変動金利を交換する金利スワップ市場では前週から短期金利の上昇に備える動きが目立ち、市場
参加者が「厳戒態勢」にあることを映し出している。
日銀の植田和男総裁が7日に「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言し、氷見野良三副総裁は6日の講演で金融緩和の「出
口」が経済に与える影響について触れた。いずれも正常化に向けた「重要なシグナル」ととらえる声は多い。大和証券の岩下真理チーフマーケット
エコノミストはマイナス金利解除の時期の予想を来年4月から来年1月に変更した。
日銀のマイナス金利解除が早まるとの思惑に対し、即座に反応したのがロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の後継指標である東京ターム物リス
ク・フリー・レート(TORF)だ。TORFは無担保コール翌日物金利を基準とする金利スワップである翌日物金利スワップ(OIS)の取引データに基づい
て求める。OIS市場で実際に約定があったり、ブローカーが取引成立を前提にレートを提示したりした場合に限り算出する。
取引開始から終了までが3カ月間のTORFは11月末時点でマイナス0.01%だったが、6日にプラス圏へ浮上し、8日には0.02%台と2021年4月
の公表開始後の最高水準まで一気に上昇した。ある国内金融機関の担当者は「OIS市場では7日から8日にかけて、固定金利払い・変動金利
受けの取引が急増した」と明かす。日銀総裁の発言を手掛かりに、マイナス金利解除時に利益が得られる持ち高を積み上げる動きが優勢となり、
3カ月物TORFの上昇に寄与した可能性が高い。
短期金利の上昇に身構える様子は、金融派生商品(デリバティブ)の決済を保証する日本証券クリアリング機構(JSCC)のデータにも表れる。
JSCCが公表する金利スワップの債務負担残高(想定元本ベース、期間2年以下)は7日に11兆1214億円と18年10月以来の高水準だった。12
年の金利スワップの清算開始以降でみても3番目の大きさという。マイナス金利解除は近いと嗅ぎ取った市場参加者が大規模な取引に動いたと
考えられる。
TORFの変化をつぶさにみると、金融機関が日銀の正常化に向けて着々と準備を進めてきた姿も浮かび上がる。TORFはOISの取引データに
基づき算出するため、適切なデータがない場合は前日値を採用する。実際に算出があった日の割合の変化は「(OIS市場における)取引活動の
活発さの変化を示す」(QUICKベンチマークスの太田孝治統括役)といえるわけだ。
3カ月物TORFの算出日数をみると、10月が10営業日だったのに対し11月は15営業日に増えた。日銀が10月30?31日の金融政策決定会合
で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用をさらに柔軟化し「着実に出口に近づいている」(国内証券のエコノミスト)との受け
止めが広がるなかで、金融機関はマイナス金利解除観測が本格化する前に金利上昇の回避(ヘッジ)に動いていたと推察される。12月の算出
実績は11日時点で7営業日中6日にのぼり、備えは足元でさらに活発化する。
日経QUICKニュースが日銀ウオッチャーに実施した調査では、日銀が24年末までに何らかの政策修正をするとの予想が26人と全体の92%を
占め、修正内容は「マイナス金利解除」が24人(複数回答可)で最多だった。そのうち6人は「24年1?3月」を予想する。債券市場では金融政策
の影響を受けやすい短期債の購入に慎重な投資家が増えているとの指摘もある。マイナス金利解除後の波乱を見据えた行動は着実に進んでい
るようにみえる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-14/S5NRI2T0G1KW00
全国銀行協会の加藤勝彦会長(みずほ銀行頭取)は14日の記者会見で、日本銀行の金融政策に関連して、マイナス金利解除は「経済の
プラス・マイナス要因を見極めて判断するものと理解している」とし、「日銀は今後の賃金、物価動向を見極める重要な局面にいる」との認識
を示した。
加藤氏は、足元の個人消費の動向について、「物価高による節約志向もあるが、インバウンドがけん引している」と分析。来年も「しっかりし
た賃上げが続くと思われ個人消費は増加する」と見込んでいる。日本経済は「今年より弱いながらも、引き続き回復基調が続く」との見通し
を示した。
日銀は10月の金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を再柔軟化し長期金利の1%超えを容認した。10
年国債利回りは11月に一時0.974%まで上昇したが、足元では0.6%台で推移している。次回の決定会合は今月18日、19日に開かれる予定。
加藤氏は金利上昇見込みの中、「銀行の個人預金の重要性が高まる」とも指摘。「金利がある世界では顧客がより高い金利を求める動きも
予想される」と述べた。日銀の植田和男総裁については「粘り強い金融緩和政策を継続している」とし、「大きな混乱なく金融政策を運営してい
る」と評価した。
政権中枢を含めた自民党幹部の裏金疑惑で揺れる岸田文雄政権については、「政治の信頼回復で安定した政権基盤を構築してもらい、日
本経済のさらなる成長のため、引き続き政策の実行に努めてもらいたい」と語った。
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[東京 14日 ロイター] - 日銀は18、19日に開く金融政策決定会合で、2%物価目標の達成に向け、足元の経済情勢や賃金と物価の状
況について議論する。12月日銀短観が強い結果になるなど、好材料が出てきているものの、中小企業を含む賃上げ動向はまだ不透明で、
マイナス金利解除に必要な賃金上昇を伴うかたちでの持続的・安定的な物価上昇が実現するかは、なお見極めが必要な情勢とみられる。
<企業部門は堅調、消費下振れに警戒感>
12月日銀短観は大企業・製造業、非製造業の業況判断DIが市場予想を上回って改善した もっと見る 。価格転嫁の浸透で中小企業の景況
感も改善、収益や設備投資計画も強く、企業部門の強さを確認する内容になった。
一方、日銀では個人消費の先行きを懸念する声が出ている。7―9月期の実質国内総生産(GDP)2次速報は1次速報から下方修正され、
前期比0.7%減となったが、個人消費の弱さが響いた。物価高が続く中、消費抑制傾向が一段と強まれば企業の価格転嫁の足かせになり
かねない。日銀では、消費が腰折れする懸念はないとの声が出ているものの、リスク要因として警戒されている。
11月の東京都区部消費者物価指数では生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が前年同月比プラス2.3%となり、昨年7月以来の低い伸び
率となったが、日銀では輸入物価上昇による物価上昇圧力がはく落しているためであり、日銀の想定した通りの推移だとの声が多い。
<物価目標実現へ、十分な材料そろわず>
物価目標達成の観点からは、物価上昇の要因が輸入物価から賃上げにバトンタッチされ、賃金・物価の好循環が実現するかがポイントになる。
日銀では、好調な企業収益や人手不足を受け、来年の春闘で相応の賃上げ率が実現することへの期待が強い。ただ、中小企業の多くはま
だ対応を決めかねているという。
一方、サービス価格の上昇については、宿泊料が中心で、人件費のサービス価格への転嫁に広がりは出ていないとの声が根強い。
日銀は会合直前まで情報を収集し、情勢を見極める。値上げの動きが中小企業に波及するなど、物価目標達成へ前向きな動きは維持されて
いるものの、今回は賃金・物価の好循環の確度が一段と高まる十分な材料が得られておらず、マイナス金利やイールドカーブ・コントロール
(長短金利操作、YCC)の解除には至らない公算が大きい。
<植田総裁の会合後の記者会見が焦点>
植田和男総裁が7日の国会で「年末から来年にかけ一段とチャレンジングになるというようにも思っている」と述べ もっと見る 、早期のマイナス
金利解除観測が浮上したが、日銀では金融政策の先行きを市場に織り込ませる意図はなかったとの見方が出ている。
市場ではその後も早期解除観測がくすぶり、13日までの米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受け、これまでの想定より早期にマイナ
ス金利が解除されるとの見方が浮上。今回の会合でフォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)が修正されるとの予想もある。
日銀では、12月会合の声明文でフォワードガイダンスを変更することで、マイナス金利解除のタイミングが迫っていることを示す可能性は低い
との指摘が出ている。一方、決定会合後の記者会見で、植田総裁が先行きの政策修正について何らかの示唆をする可能性があり、市場の注
目を集めそうだ。
2023/12/16 04:00 日経速報ニュース
マイナス金利政策を解除したあとの政策についても、日銀が手の内を明らかにし始めた――。そんな印象を受けた出来事があった。植田和男
総裁が7日の参院で、解除後の政策の枠組みに関して具体的な金利水準を例に挙げながら話したのだ。
同日の参院での総裁発言について、市場では「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」という部分が解除時期を示唆したものとし
て高い関心を集め、相場変動の要因にもなった。だが、筆者にとっては、マイナス金利終了後について語った部分の方がはるかに興味深かった。
総裁は「決め打ちしたものを心の中に持っているわけでは全くない」とクギは刺していたものの、ある日銀OBも「新たな政策作りの検討が内部
で進んでいる様子だ」と感想を漏らしていた。
植田総裁は何について語ったのか。整理すると①マイナス金利を終えた後、政策金利(金融政策運営で操作対象とする短期金利)として何を
採用するか②政策金利の水準を当初どうするか③それを上げていく際の幅はどの程度か――である。
マイナス金利後、付利か翌日物金利で政策運営
まず、マイナス金利終了後の政策金利に関して、植田総裁はこう語った(以下総裁の発言は趣旨が変わらない範囲で要約した)。「例えば現在
のように日銀当座預金の付利を政策金利にしてそれを変えていくのか、あるいはコール市場の翌日物金利を昔のように政策金利として動かして
いくのか、様々なオプションがとりあえず2つある」
政策金利の候補は日銀当座預金の付利(超過準備に適用する金利)と無担保コール翌日物金利(借りた翌営業日に返す極めて短い資金の
金利で、代表的な短期金利)の2つと考えていいだろう。日銀内でもそういう声を聞く。
もちろん、植田総裁も説明した通り「仮に翌日物金利を政策金利にしたとしても、それを上げていくためには、付利も上げていかないといけない
ので、どちらをとるかでそれほど大きな相違があるわけではない」のも事実。本質的に重要なのは、新たな政策のもと、長短金利の曲線(イール
ドカーブ)の起点として重みを持つ翌日物金利がどうなるかだ。
ちなみに、植田総裁の発言通り、今のマイナス金利政策のもとでは付利が政策金利になってきた。ただ付利はマイナス0.1%、0%、0.1%の3
層構造になっており、そのうち政策金利になったのは最も低いマイナス0.1%(政策金利残高の適用金利)である。この仕組みのもと、翌日物金
利はマイナス0.1?0%程度とマイナス圏を中心に推移してきたのだ。
マイナス金利政策を終えた後、日銀は翌日物金利の脱マイナス化を促すはずだ。では、どれくらい浮上するのか。その点を左右する要素のひと
つが当初の政策金利の水準であるが、植田総裁はこう述べた。「仮にマイナス金利解除をするとして、(政策金利が)その後0%に行くのか0.1%
に行くのかはその時の経済金融情勢次第だ」
解除後の政策金利が付利と翌日物金利のどちらになるにしても、0%と0.1%が重要な数字として意識されている様子だ。ということは、翌日物
金利についても、下限0%、上限0.1%というおおよそのイメージを持っているのだろう。そのレンジ内で比較的大きめの変動をするのか、あるいは
下限か上限に近い水準での小動きとなるのかは政策の設計次第である。
付利が政策金利になる場合を考えてみよう。付利を0%と0.1%の2層構造(この場合、0%が政策金利になりそうだ)にするか、0%あるいは0.1
%に一本化するかの選択肢がありうるが、前者の方が金利の変動を大きめにする仕組みを作りやすそうだ。
同じことは翌日物金利を政策金利に採用し、その誘導目標を示すケースにもいえる。0%あるいは0.1%を目標にするより、0?0.1%程度といっ
た幅を持たせた形にした方が金利は動きやすい。
市場では、日銀が市場機能を重視し、一定の金利変動と取引を促す仕組みを選ぶとの見方が多いが、最終的には経済・物価・金融情勢に基
づく政策判断になる。
0.25%幅でのオーソドックスな利上げか
では、マイナス金利をやめた後、政策金利をどんな幅で引き上げていくのか。植田総裁の言葉はこうだった。「どれくらいのスピードで0.25%、0.5
%に上がっていくのかはその時の経済金融情勢次第だ」。利上げのペースはともかく、1回当たりの上げ幅自体はオーソドックスな0.25%を想定
している様子だ。混乱回避のため、もっと細かい刻みにするとの観測もあったが、その可能性は低いように見える。
以上、植田総裁の発言をヒントに、マイナス金利解除以降の利上げのイメージについて考えてみた。今の市場では解除の時期に大きな関心が
集まっているが、それ以降の金利の動きがどうなるかも経済や市場にとって重い意味を持つ。今後も日銀の情報発信に注意を払っていきたい。
2023/12/16 日本経済新聞 朝刊
長期金利の値動きが激しくなっている。日中の値動きの大きさは約1年ぶりの水準まで拡大した。日銀の緩和修正観測を背景にした金利上昇
(債券価格は下落)の圧力と、欧米金利急低下の余波がぶつかっているためだ。日銀が国債を吸収し取引が薄いことも根底にある。金利の乱高
下で投資家は売買に慎重になっており、国債や社債発行にも影響が及びつつある。
長期金利の指標となる新発10年債利回りは15日、一時、前日比0.05%上昇し0.705%を付けた。18~19日の日銀金融政策決定会合
を控えた持ち高調整の動きとみられる。14日には米連邦公開市場委員会(FOMC)後の米金利低下が波及し、前日比0.06%低下する場面が
あった。猫の目のような日替わりの荒い動きが続いている。
新発10年債利回りの日中の最高と最低の差(25日平均)を調べたところ、15日時点では0.03%と、日銀が長短金利操作(イールドカーブ・
コントロール、YCC)における金利の変動幅拡大に踏み切った直後の1月以来およそ1年ぶりの大きさとなっている。差が大きいほど日中の値動
きが大きいことを示す。
乱高下の主因は米国など海外金利の低下と日銀の金融引き締め観測をめぐる思惑の綱引きだ。
11月以降、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が高まって海外金利が大きく低下し、債券買いの流れが日本にも波及する日が増えた。
国内市場では「(日銀の緩和修正観測を背景に)金利上昇警戒に傾いていた中で金利低下が進み、売り持ちをしていた投資家は買い戻しを迫
られた」(JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長)。持ち高解消による国債買いが金利低下に弾みをつけている。
一方、7日には植田和男総裁の「チャレンジングになる」との発言を受けて、長期金利は前日比0.105%上昇した。1日の上昇幅としては1年
ぶりの規模だった。日銀の引き締め観測が高まると、金利が急上昇しやすい。
日銀による大量の国債保有が乱高下の原因との指摘もある。日銀は市場から国債を買い入れており、11月末時点での新発10年債(372回
債)の保有比率は61%に達した。市場での流通量が減少し、金利が上下に振れやすくなっている。
日銀はこれまでの金融緩和を検証する「多角的レビュー」のワークショップで、日銀の保有比率が5割を超えると市場での売値と買値の差が拡
大し、7割を超えると取引高が減るとの分析を示した。22年に発行した10年債は日銀の保有が8~9割を占める銘柄もある。
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「日銀による国債の大量保有は、材料が少ない相場では市場に安定をもたらす一方で、ト
レンドが生じれば値動きを増幅させる」と警戒を強める。
海外金利低下の波及による金利低下は国債発行に影響し、12月の国債入札は「不調な結果」が続いている。7日の30年債入札では大きいほ
ど低調な入札とされる落札価格の平均と最低の差(テール)が2007年以降で過去最大だった。5日の10年債や14日の20年債入札でも急低下
した利回りに投資家の需要が集まらなかった。
日銀の動きを見据えて金利に先高観があるのに、海外の影響で金利が下がってしまうと発行市場でも流通市場でも投資家の買い意欲は低下し
てしまう。
社債の発行市場にも影を落とす。国内証券の起債担当者は「社債の条件決定では0.01%上げるか下げるかで何時間も議論しているのに、国
債利回りの変動が大きすぎて無駄になってしまう」とこぼす。社債の利回りを決めても、そこから発行までの間に国債利回りが大きく上がってしまえ
ば社債の投資妙味は薄れる。「金利が乱高下している状況では投資家からの買い注文も入りにくく、これが続けば企業の発行計画も影響を受けか
ねない」(同)という。
金利の乱高下を受けて、投資家は売買を手控えている。太陽生命保険の清友美貴運用企画部長は「金利変動が大きい状況ではどうしても手
が出しにくい。マイナス金利解除で金利が上昇する可能性があるなかでは、あえて今買う必要はない」と慎重な姿勢だ。
投資家が売買を控えれば、一段と流動性が低下し、市場の値動きが荒くなる可能性もある。市場は次の日銀の動向に神経をとがらせており、長
期金利の激しい値動きには注意が必要だ。
2023/12/16 日本経済新聞 朝刊
日本株に再び海外投資家の買い出動機運が出ている。14日の米株式市場で半導体株指数が過去最高値を更新したのを受け、15日の日経
平均株価は反発し284円高となった。日銀が18~19日の金融政策決定会合を現状維持ならば、海外投資家が再び日本株買いに動きやすく
なる。個人投資家の株式買い意欲も高まる可能性がある。
15日は東京エレクトロンやアドバンテスト、信越化学工業など半導体関連が上昇。円高進行を嫌気して前日まで3日続落していたトヨタ自動車
とホンダはともに反発した。
14日の米株式市場ではダウ工業株30種平均が前日に続き過去最高値を更新した。ダウ平均は2013年以降、11年連続で毎年、最高値を
更新。「バイ・アンド・ホールド(買い持ち)」の有効性を改めて裏づける。
同日は主要な半導体株で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が前日比2・7%高の4097と6日続伸。2年ぶりに過去最高値を更新
した。
SOXは米株式市場に上場する半導体関連30銘柄で構成。生成AI(人工知能)向け需要の取り込み期待から株価が年初来で3倍強となった
エヌビディアや半導体製造装置で世界最大手のアプライドマテリアルズ(AMAT)、半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)
などだ。SOXが最高値を更新したことで、投資家心理は強気に傾く。
日本では米株人気が高まる一方だ。国内公募の追加型株式投資信託の中で最大規模を誇る「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」。米
S&P500種株価指数との連動を目指すインデックス型だ。
純資産総額は14日時点で2兆9401億円。昨年末で1兆5980億円だった。24年からの新しい少額投資非課税制度(NISA)でも人気をさら
に高めるとみられる。
「18~19日の日銀会合での現状維持を見込んだ先回り買いが入った可能性もある」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)。
日経QUICKニュース社(NQN)が実施した金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」28人を対象としたアンケート調査では、27人が同会合で大
規模な金融緩和策の維持を決めると答えた。
7日に植田和男日銀総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言。「すわ、マイナス金利政策の解除か」との思惑が強ま
り、12月第1週(4~8日)の日経平均は週間で1123円(3・4%)下落。同週に海外勢は現物で5868億円の売り越しだった。
野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは植田総裁の発言を受けて「日銀の動向に敏感である海外勢が12月会合への警戒を
高めた」と分析する。
前のめり気味に日銀の「金融引き締め」を材料視して売った分、現状維持なら買いが戻りやすい。野村の池田氏も「4月や10月会合後のように、
節目の会合を乗り切ると日本買いに動きやすい傾向がある」との見方を示す。日銀の動きは読めない部分があるが、株式市場では12月会合での
マイナス金利政策の解除は時期尚早との見方が多い。
米主要株価指数のように、日経平均も12月に年初来高値を更新し、有終の美を飾れるか――。日銀の現状維持で海外勢の買いが戻れば、その
可能性は残されている。
2023/12/17 05:00 日経速報ニュース
日銀は18?19日に金融政策決定会合を開く。米利上げが事実上終わり、円安基調が転機にさしかかるなか、物価と賃金上昇の好循環は持続
力が試される局面に入る。市場ではマイナス金利政策の早期解除への思惑もくすぶる。日銀は何を議論し、どんな結論を出すのか。5つのポイン
トから読み解く。
①マイナス金利解除はあるか?
最大の焦点は日銀が2016年1月に導入を決めたマイナス金利政策を解除するかどうかだ。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の
修正と違い「0.1%の利上げ」(内田真一副総裁)で、異次元緩和の出口を意味する。
氷見野良三副総裁は6日の講演で「出口」が家計や企業へ与える影響を前向きに評価し、市場ではマイナス金利解除に向けた地ならしとの受
け止めが広がった。植田和男総裁が7日の参院財政金融委員会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことや、同日
の岸田文雄首相との面会が一時的に早期解除への思惑に拍車をかけた。
もっとも市場では今回の決定会合でのマイナス金利解除を見込む声は少ない。日銀関係者も「企業が賃上げすることに自信を持っているが、確
認はしたい」と話す。賃金が上がり、価格転嫁されて物価も持続的に上がる好循環が続くことをどう見極めるかが焦点だ。
YCCの運用の方向性も焦点だ。日銀は10月会合を含めて過去3回、YCCの運用を柔軟化した。マイナス金利解除の際に「長期金利の急上昇
を抑えるツールを持っていたほうが望ましい」(日銀関係者)が、市場は撤廃も織り込み始めている。
②金融政策の先行きへの言及は
日銀関係者は「利上げに関してはサプライズはないほうがいい」との見方を示す。YCC修正では、事前に織り込まれれば投機筋が一斉に債券を
売り浴びせて長期金利が急騰する懸念があるため、一定のサプライズはやむを得なかった。
一方、明確な利上げとなるマイナス金利解除をサプライズで実施すれば経済全体に混乱を招く可能性がある。米欧の主要中銀も利上げ局面の
開始前には「事前予告」してきた。
今回の会合でマイナス金利解除を見送った場合、植田総裁が記者会見で今後の政策の方向性についてどこまで言及するかに市場の関心は集
中している。仮に年明けの1月会合以降の可能性を探っていれば、なんらかの布石を打つ可能性があるためだ。
③「賃金と物価の好循環」への評価は
13日の企業短期経済観測調査(短観)では景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業で3期連続で上昇し、中小企業を含め幅広い業
種で改善した。人手不足感は9月短観より強まり、財務省の法人企業統計によると7?9月期の企業の経常利益は同四半期として過去最高を更
新した。賃上げにつながりやすい環境は整っている。
政府・与党は企業の賃上げを税制で後押しする方針で、2024年の春季労使交渉も徐々に熱を帯びてきた。ただし、インフレを考慮した実質賃金
の前年同月比の上昇率は19カ月連続でマイナス圏にとどまったままだ。
10月の毎月勤労統計調査によると、1人あたりの実質賃金は前年同月比2.3%減った。名目賃金は情報通信業や金融業・保険業では5%前後の
高い伸び率を示しており、賃上げが幅広い業種に波及するかが重要だ。
重要な論点になるのが米金融政策の転換に伴う影響だ。米連邦準備理事会(FRB)は12?13日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で
3会合連続で利上げを見送った。参加者の政策金利予想では、24年中に3回分の利下げを想定し、22年3月から続けてきた利上げは事実上、終
結した。
市場では早期利下げ観測が強まり、14日の東京外国為替相場では前日から5円ほど円高・ドル安が進み、一時1ドル=140円台後半まで急
伸した。
24年に世界の中央銀行は利下げ局面に入る。日米金利差が縮小すれば円高・ドル安の力が働く。「超円安」から引き締め局面に入るため「円
高への振れをそこまで憂慮せずに正常化ができる」(日銀関係者)との見方はあるが、円安で押し上げられてきた物価には下押し圧力がかかる。
米景気の動向も懸念材料だ。米銀の融資は急減速している。米景気が減速すれば「輸出入などを通じて日本経済にも悪影響を及ぼし、利上げ
は困難になる」(別の関係者)とみる向きが多い。このため米経済に暗雲が垂れこめる前に日銀が動くとみる向きもあるが、拙速との批判を招くリス
クと背中合わせになる。
⑤政治の混迷の影響は
自民党派閥の政治資金問題を受けた政治の混迷は金融政策に影響するのか。政治との距離は日銀にとっていつも悩みの種だが、金融正常化
を探る日銀にとって最大の関心事は物価と賃金上昇の好循環が続くかどうか。もっと言えば、正常化に動いた後の景気の腰折れリスクと責任論だ。
一連の問題が重要な要素になることはなさそうだ。
金融市場がほぼ無関心なことも大きい。シティグループ証券の阪上亮太株式ストラテジストは「海外投資家からこの問題への問い合わせは意外
とない」と話しており、ロンドンの機関投資家も「政権交代につながらないなら興味はない」と材料視していない。実際、14日の日経平均株価は政
治の混迷と関係なく上昇した。
国内の賃上げと物価の好循環の持続性、海外景気の先行きと不確実な要素が多いなかで、日銀は年内最後の決定会合を迎える。
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2023/12/19 05:00 日経速報ニュース
日銀は19日の金融政策決定会合で賃上げや物価の持続力を見極める。市場でマイナス金利政策を早期に解除するとの観測がくすぶるなか、
日銀は経済の実態や先行きを分析して金融政策を修正する必要があるかを議論する。植田和男総裁は午後に記者会見して決定内容を説明する。
市場では早期に金融政策を正常化するとの観測が広がる。氷見野良三副総裁は6日の講演で、金融緩和からの出口が家計や企業へ与える
影響を前向きに評価した。7日には植田総裁が国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことも正常化への思惑に
拍車をかけた。
具体的にはマイナス金利政策の解除や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃が浮上している。
日銀は2016年1月にマイナス金利政策を導入した。今年7月と10月に実施したYCCの柔軟化と違い、マイナス金利の解除は「0.1%の利上げ」
(内田真一副総裁)との位置づけだ。マイナス金利を解除すれば、為替や債券市場だけでなく、貸出金利の引き上げが予想されるため、とりわけ
影響が大きい。
政策修正の必要性を判断する材料となるのが賃上げだ。24年の春季労使交渉を前に複数の企業が賃上げを表明した。ただ、交渉が本格化
する前の今会合でのマイナス金利解除を見込む市場の声は現時点では少ない。日銀内でも「賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証
が得られていない」との声が出ている。
総務省が発表した11月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年同月比で2.3%の上昇だった。伸びは2カ月ぶりに縮小し、22
年7月(2.3%上昇)に並ぶ16カ月ぶりの低い水準だった。原材料高を起点とする物価上昇が鈍る一方、サービス分野に値上げの裾野が広がっ
ており、物価上昇の持続力を見極める。
植田総裁が記者会見で金融政策の先行きにどう言及するかも焦点だ。マイナス金利解除をサプライズで実施すれば、経済全体に混乱を招く
可能性がある。米欧の主要中銀も利上げ局面の開始前には、事前に予告してきた。
米連邦準備理事会(FRB)は12?13日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続で利上げを見送った。今後、米景気の減速を背
景に利下げを実施すれば、貿易を通じて日本経済に悪影響を及ぼす可能性がある。海外の中央銀行や景気の動向も重要な論点となる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-19/S3AHXJT0AFB400?srnd=cojp-v2
2023/12/19 14:28 日経速報ニュース
日銀は19日まで開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を維持した。会合後に明らかになった公表文では来年の政策正常化を見据え
た「布石」も見当たらず、マイナス金利が早期に解除されるとの思惑はやや後退。外国為替市場では円売り・ドル買いが加速し、会合後に円安・ド
ル高が進む見慣れた景色が広がっている。
日銀は19日、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)やマイナス金利政策の修正を見送った。会合結果が公表されると、東京市場で
は円相場が1ドル=142円60銭台から143円台に急落。その後は一時143円78銭近辺まで売られ、前日17時時点と比べて1円40銭の円安・ドル高
水準をつけた。
日銀が修正を見送ったのは現在続ける大規模緩和だけではない。公表文では、物価上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベース(資金
供給量)の拡大方針を維持する「オーバーシュート型コミットメント」や「必要があれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」との文言も維
持した。
いわゆるフォワードガイダンス(政策の先行き指針)がそのまま残る形で、来年の政策正常化に向けた手がかりはない。公表文が政策正常化に
対して「ゼロ回答」となったことで、市場では「1月のマイナス金利政策の撤廃はないのではないか」(国内銀行のストラテジスト)などとしてマイナス
金利解除は「4月が濃厚」との説が増え始めた。
会合後の円安進行という構図は今回も大きく変わっていない。だが、会合直後に143円台後半まで売られた円は次第に143円台半ばまで持ち直
すなど下値を探る動きも鈍い。IG証券の石川順一シニアマーケットアナリストは円相場を下支えする一因として足元で144円程度に位置する10日
移動平均を挙げる。
11月中旬に151円台後半と今年の最安値をつけた円相場は、その後はチャート上では10日移動平均が下支えする形で水準を切り上げてきた。
10日移動平均に沿って進む円高・ドル安は「短期的なトレンドとしてはドルの弱さを示唆している」(石川氏)といい米連邦準備理事会(FRB)の利
下げ転換がテーマとなる外為市場では円に売りが出たとしても、ドルが反発する姿を描きづらいことが相場を支えている。
市場の関心は19日午後に予定される植田和男総裁の記者会見に移る。三菱UFJ信託銀行の酒井基成資金為替部マーケット営業課課長は「物
価と賃金上昇の好循環に対する見解に変化がみられるかが注目」だとし、発言次第で円が再び142円を超える可能性があるとみる。日銀正常化の
影がちらつき、米利下げ転換が視野に入る現状では、10日移動平均というテクニカル分析面の下値を割り込めない円相場が引き続き底堅く推移す
る場面は増えそうだ。
2023/12/19 19:09 日経速報ニュース
日銀は19日まで開いた金融政策決定会合で、大規模緩和の維持を決めた。植田和男総裁は記者会見で「物価安定の目標を十分な確度を持っ
て見通せる状態にはまだ至っていない」と語り、賃金と物価の好循環が強まるかどうか見極める必要があると強調した。来年1月にマイナス金利
解除といった政策修正に踏み切るなら「今回何らかのメッセージを発信するはず」との予想もあったが、「地ならし」には動かず決め打ちを避けた。
12月に入り、植田総裁や氷見野良三副総裁の発言を手掛かりに早期のマイナス金利解除観測が高まっていた。特に、事前に通知した時点で
売りが膨らみかねない長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正とは異なり、「利上げで波風を立てないよう、事前に織り込ませ
る」(国内証券のエコノミスト)との見方は根強かった。そのため2024年1月会合でのマイナス金利解除を念頭に置いているなら「今会合で政策修
正の示唆があるはず」(同)との予想もあり、会見の注目度は高かった。
植田総裁は19日の記者会見で、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現に向けた距離感について、「基調的な物価上昇率が2025年
度にかけて目標に向けて徐々に高まる確度は少しずつ高まってきている」との見方を示した。賃上げの原資となる企業業績は良好で、来年の春
季労使交渉(春闘)について労使双方が前向きな姿勢で臨む姿勢が垣間見える。賃金と密接に関連するサービス価格が緩やかに上昇している
のも前向きな点という。
もっとも植田総裁は懸念材料も挙げた。企業へのヒアリング情報を踏まえると、先行き不透明感から来年度の賃上げ方針を固められていない
企業があるほか、中小企業では人件費の上昇分の価格転嫁は容易ではないとの声もあると指摘。「賃金と物価の好循環が強まるか、なお見
極める必要がある」と慎重な構えも崩さなかった。
植田総裁は「(目標達成への)確度は少し上がっているが、(好循環の実現に向けた)閾値(いきち)に達するまでに様々なデータや情報を見
たい」とこれまでと同様の発言を繰り返し、まだ材料がそろっていないとの認識を示した。24年1月会合までに得られる情報量についても「ある
程度入ってくるが、そこまで多くない」と指摘。さらに「賃金と物価の好循環が実現するか、もう少し情報をみたいというのが現在の政策委員メン
バーの大勢だ」と紹介するなど、マイナス金利解除の議論が盛り上がっている様子はみられなかった。
植田総裁が強調したのは日々更新されるデータやヒアリング情報に基づいて政策判断するスタンスだ。「データや情報が連続的に入ってくる
ので、(どの期間までみれば十分かどうか)前もって分かりにくい」と具体的な期間には触れない。毎会合での判断とすることで、政策運営の
「フリーハンド」を手に入れることを念頭に置いたコミュニケーションとも受け取れる。
2%の物価安定の持続的・安定的な目標の達成が「もう一回だめになってしまう可能性を低める選択をできればいいと思っている」として、目標
実現の芽を摘んでしまうことは避けたいとの考えをにじませる場面もあった。政策正常化の思惑が完全に消えることはなさそうだが、淡々と記者
会見した植田総裁の姿勢から、前のめりな織り込みは一服するかもしれない。
2023/12/20 05:00 日経速報ニュース
日銀の今年最後の大仕事は、市場で高まった金融緩和策の早期正常化を巡る思惑を打ち消すことだった。植田和男総裁が国会で放った「チャ
レンジング」発言で市場が先走ったが、植田氏は政策的な意図を否定した。日銀と市場の間で「2024年前半」を軸に、緩和の出口までの距離感
を共有できる素地がおおよそ整ってきた。これ以上、焦って市場をたきつける必要がないと考えた可能性が高い。
主に米国側の要因で「超円安」が解消されつつあり、日銀に余裕が生まれたことも見逃せない。日銀は判断の誤りが許されない重要な局面で
賃金上昇の持続性をじっくり見極める「熟柿(じゅくし)作戦」に入る構えだ。だが、市場は生き物。円安がぶり返す兆しもみえる。内外の経済情勢
も移ろいやすい。その余裕は最後まで続くだろうか。
「チャレンジング発言」、真意は政策意図なし
19日に終えた年内最後の定例の金融政策決定会合は、事実上の「ゼロ回答」だった。早期の出口へのヒントを待っていた市場参加者は肩すか
しに終わったに違いない。さすがに今回の会合でマイナス金利の解除を決めると見込んだ向きは少なかったが、「日銀は公表文の内容変更や会
合後の記者会見での植田氏の発言で、早ければ来年1月の次回会合での解除を示唆するのではないか」との見方もくすぶっていた。
フタを開けてみると、緩和策の維持は当然としても、公表文の情勢判断もほとんど変わらず。「必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金
融緩和措置を講じる」などの緩和方針を示すフォワードガイダンス(先行き指針)も、手つかずだった。
それなら、と市場関係者は植田氏の会見に耳をそばだてたが、目立ったタカ派のメッセージはなし。市場を騒がせた7日の国会での「年末から
来年にかけて一段とチャレンジングになる」との発言に関し、植田氏は「今後の仕事の取り組み姿勢一般について問われた」としたうえで「(総裁
就任)2年目にかかるところなので、一段と気を引き締めて、というつもり」だったと説明し、政策的な意図をすげなく否定した。
新藤義孝経済財政・再生相が担当大臣として自ら会合の2日目途中から出席したことから、市場の一部では「早期解除を思いとどまるよう圧力
をかけたのではないか」との思惑まで出た。
だが、そもそも日銀としてこれ以上、出口に前のめりな姿勢をとる必要がなかったというのが実態に近いだろう。なぜか。歴史的な緩和解除を試
みるうえで最も重要なのは、市場にしっかりと織り込ませて準備を促し、波乱を回避することだ。その点、市場は出口を十分に想定しつつあるとい
える。
短期金融市場は会合初日の18日時点で来年1月のマイナス金利の解除を見込み、秋ごろまでに利上げをすませる姿となっていた。もはや市場
をせかす必要は薄い。こう判断してもおかしくはない。今回のゼロ回答を受けて多少、織り込みは後退したとみられるが、来年4月のマイナス金利
解除の思惑は引き続き強い。
日銀は最近まで、マイナス金利解除を市場に織り込ませようと焦っていた。話は7月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を柔軟
化して長期金利の上昇を許容したころにさかのぼる。その直後、内田真一副総裁らが市場を安定させようと「緩和を長持ちさせるための措置であり
マイナス金利の解除は遠い」と受け取れる説明に力を入れた。
これが効きすぎ、市場では「解除は来年の春季労使交渉(春闘)の結果を十分に見極めてから」との見方が浸透した。
ちょうどそのころ、円安が再燃する。主に米国のしつこいインフレ圧力と強い経済を受けた反応ではあったが、日銀に対しても「財務省や官邸サイ
ドから円安進行を食い止めるよう強い要請があった」と、政府と日銀の関係に詳しい金融関係者は明かす。
10月のYCC再修正は名目上、7月に続く緩和を長持ちさせる微調整の位置づけだったが、YCCの骨抜きという出口に向けた布石の性格が格段
に強まっていた。それでも円安は止まらず、日銀は厳しい立場に追い込まれた。円安は物価高に拍車をかけるだけに、日銀の緩和路線そのもの
に批判の矛先が向きつつあったからだ。
そして12月。氷見野良三副総裁が6日の講演で、マイナス金利を解除した際に各経済主体に見込まれる影響を詳しく語り、「出口を良い結果に
つなげることは十分可能だ」と踏み込んだ。すでに円安は峠を越えていたものの、準備は円安にさいなまれていたさなかに進めていた可能性も高
い。
ここに植田氏による7日のチャレンジング発言が重なる。あまりに絶妙なタイミングだが、公式説明は、出口論とは無縁の「市場の誤解」。仮にそ
れが事実だとしても、結果的にみて、市場の出口織り込みの決め手になったのは確かだ。
状況次第では植田氏が市場の思惑を強く否定しない手もあっただろう。否定したのは事実に即した説明をしたいという植田氏の思いもあろうが、
単に超円安が収束し、市場の思惑を引きつけておく必要がなくなっていたからかもしれない。
13日に終えた米連邦公開市場委員会(FOMC)後に米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ論が台頭し、市場環境が一変したからだ。
繰り返す「もう少し」 近い未来の出口に手応えも
国内の物価情勢を巡っても、日銀の苦しい立場には変化の兆しがみえる。植田氏は今回の会見で、海外発の物価上昇圧力が起点となった「第
1の力」がピークアウトしつつある点を繰り返す一方、サービス価格の上昇継続を賃金と物価の好循環を支える「第2の力」が強まる兆候だとして注
視する姿勢を示した。
「好循環が実現するかどうか、もう少し情報を見たいなというのが、現在の政策委員会メンバーの大勢」「(目標達成の)確度は少し上がってきて
いるが、(解除条件が一気に整う境界線である)閾値(いきち)に達するまでには、もう少しデータや様々な情報を見たい」。植田氏の発言をつぶさ
に確認すると、「もう少し見たい」という言いぶりが目立った。
慎重な物言いに交じり目立たなかったが、近い未来の出口に向けて手応えをつかみつつある様子がわかる。
市場を味方につけ、自然体で出口の是非を見極められるのなら、日銀にとって理想的な状況ともいえる。だが、今回のゼロ回答で外国為替市場
では円安がぶり返す兆しもみえる。円安が本格的に再燃すれば日銀は再び厳しい立場に置かれ、最悪の場合、賃金と物価の好循環を確認できぬ
まま、出口に踏み出さざるを得なくなるリスクも否定できない。
米国に目を転じても、FRB高官らに市場の急激な利下げ織り込みに懸念を示す声が増え始めた。なにより、米利下げがFRBの軟着陸論に反して
景気の腰折れによって実現するようなら、日銀も出口どころの話ではなくなる。きたる2024年、物価安定という悲願が波乱なく達成できるのか。ま
だ何の保証もない。
[東京 20日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は19日の会見で、マイナス金利解除の時期や具体的な要件について言質を与えず、市場の警
戒感は大幅に後退した。だが、植田総裁は物価目標達成への確度は少しずつ高まっているとも指摘。注目材料の一つとしてサービス価格の上昇
を挙げた。来年の春闘で大幅な賃上げが実現できれば、物価高で伸び悩む動きも見える消費などにも好影響が出るとした。マイナス金利解除へ
の条件が整いつつあることもにじませた。
筆者は来年1月解除の可能性は低下したものの、4月解除の可能性は相応にあるとみている。ただ、米利下げの時期や裏金問題で揺れる政局
が大幅に混乱した場合は、4月以降に先送りされる波乱要因も残されていると指摘したい。
<低下した1月政策修正の可能性>
マイナス金利の早期解除の可能性が後退したとみて、20日の東京市場は株高・円安・債券高で反応した。確かに植田総裁は「物価と賃金の好
循環については、なお見極めていく必要がある」「(好循環の確度は)総合判断にならざるを得ない」と述べて、慎重に見極める姿勢を示すととも
に、いつごろに何を見て判断するかについて明確な言及を避けた。
さらに来年1月会合でのマイナス金利解除の可能性については「1月会合までの新しい情報次第にならざるを得ないが、新しいデータはそんなに
多くない」とも述べた。1月会合での解除の可能性を全く否定しているわけではないものの、筆者は可能性が大幅に低下したと感じた。
<着実に上昇するサービス価格>
だが、植田総裁は「目標達成への確度は少しずつ高まっている」と述べつつ、マイナス金利解除への条件が次第に整いつつある現象にも言及した。
その一つがサービス価格の上昇。植田総裁は「第2の力は、サービス価格が緩やかに上昇していること等から判断して、少しずつ上昇が継続して
いるとみている」と指摘した。第2の力とは、物価を押し上げる要因のうち、賃金と物価の好循環を示す部分を指し、日銀が注視している動きだ。
10月全国消費者物価指数(CPI)をみると、サービス価格の実勢に近い「持ち家の帰属家賃を除くサービス」は前年比3.1%まで上昇。一般サ
ービスも同2.9%の上昇だった。1年前は1%付近かそれ以下の水準だったことを考えると、サービス価格の上昇は持続性が出てきた可能性が
ある。
また、植田総裁は労働需給の引き締まりや企業収益の拡大にも触れたが、12月日銀短観における雇用人員判断の大幅な不足や高水準になっ
ている売上高経常利益率の来年度計画をみても把握できる状況となっている。
さらに実質賃金がマイナスのままでマイナス金利解除の可能性があるのかとの質問に対し、植田総裁は「先行き賃金上昇が続き、インフレ率が
低下を続けて実質賃金が好転する見通しが立つのであれば、足元の状況は必ずしもマイナス金利解除の障害にならない」と答えた。
他方、植田総裁は「先行きの不確実性が高く、来年の賃上げを固められない先も多い。価格設定行動でも、中小企業などから販売価格転嫁は
容易でないとの声もある」と指摘した。
こうした発言を総合して判断すると、3月中旬に出る大手製造業の一斉回答の結果などを待って、4月25、26日の金融政策決定会合でマイナ
ス金利解除を決める可能性があると予想する。
<米利下げと円高>
ただ、このシナリオには三つのリスクがある。一つは米利下げの可能性だ。植田総裁は、米利下げが予想される際は「米国の供給サイドが改善
する中で、物価上昇率が低下し続け、所得と支出の好循環でソフトランディング期待もある。それ自体は日本にプラスの影響ある」「各国独自
の情勢を踏まえ、日銀としても適切な政策運営をしていく」と述べ、日銀の金融政策の制約要因にはならないとの見解を示した。
進む可能性がある。そこに日銀のマイナス金利政策解除が加わると、さらに円高が進むとの懸念も生じやすい。
もし、3月に米利下げが開始されると、4月の日銀会合前に円高が進む可能性も捨てきれず、日銀が政策変更を先送りする要因の一つにはなり得
ると考える。
<外需の暗雲と10―12月期GDP>
二つ目は、日本の輸出企業の動向に陰りが見え、来年2月に公表予定の2023年10─12月期の国内総生産(GDP)が前期比マイナスになる
リスクだ。20日公表の11月貿易収支では、輸出が前年比マイナス0.2%と小幅に落ち込んだが、数量ベースでは同マイナス5.6%と落ち込み
が目立った。特に欧州連合(EU)向けは同マイナス11.8%、中国向けが同マイナス7.5%と振るわなかった。
このまま輸出不振が継続した場合、10─12月期GDPがマイナスになる可能性もあり、直近のGDPの落ち込みは、日銀の判断に大きな影響を
与える可能性がある。
<政局大混乱の波紋>
三つ目は政局の大混乱だ。東京地検特捜部が自民党の清和政策研究会(安倍派)と志帥会(二階派)の事務所に強制捜査に入り、裏金問題が
大疑獄事件に発展しかねない情勢となっており、内閣支持率が急低下している岸田文雄首相の前途にも暗雲が垂れ込めている。
仮に来年3月末の2024年度予算案の成立を契機に、自民党内で「人心一新」の声が高まった場合、岸田首相の進退が極まる可能性もゼロとは
言い切れない。そうした政局の大混乱時には、日銀が事態を静観するということが予想され、マイナス金利解除の決断は先送りされることもあり
得ると筆者は考える。
来年の上半期は、日米金融政策の動向と日本の政局の行方が複雑に絡み合いながら、大きなうねりを生じさせる「大転換」の局面を迎える可能
性がありそうだ。
2023/12/27 日本経済新聞 朝刊
日銀が金融政策の修正判断で重視するサービス価格の上昇が続いている。26日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2015年平均
=100)は4カ月連続で2%台の上昇率を維持した。消費者物価指数(CPI)の伸びは鈍っているが、モノからサービスに物価上昇のけん引役が
移っている。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともにCPIの先行指標
とされる。
日銀によると、11月のサービス価格指数は前年同月比2.3%上昇した。特に上昇が目立ったのは宿泊サービスだ。インバウンド(訪日外国人)
など人流の回復で前年同月比51.8%上がった。
道路旅客輸送(6.9%)、土木建築サービス(5.7%)、情報通信(2.4%)といった分野で人件費転嫁による値上げの動きもみられている。調
査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは108品目、下落は22品目だった。
一方、CPIの伸びは鈍りつつある。総務省が22日公表した11月のCPI(生鮮食品除く)は2.5%上昇と10月(2.9%)より鈍化した。日銀が発
表した11月のCPIの基調的な動きを示す「刈り込み平均値」の伸びも2.7%と10月(3.0%)から鈍った。
ただ、11月のCPIからサービス関連の品目だけ集めた伸び率をみると、2.3%と10月(2.1%)から拡大した。原材料高に起因するモノの価格
上昇が落ち着く一方、サービス関連は今も安定して伸びている。
「企業の価格設定スタンスや様々な物価指数の動向、特にサービス価格の動向等をみていきたい」。日銀の植田和男総裁は19日の記者会見で
「賃金と物価の好循環」を見極めるうえで重視する指標としてサービス価格の重要性を強調した。
金融市場では2024年前半に日銀がマイナス金利政策を解除するとの見方が強い。日銀は春季労使交渉だけでなく、人件費転嫁といった動きを
反映しやすいサービス価格の動きなども見極めた上で金融正常化のタイミングを判断する意向だ。
2023/12/27 11:11 日経速報ニュース
「日銀は相変わらず腰が重そうだ」。27日の東京外国為替市場で円相場は下落し、1ドル=142円台後半を中心とする動きとなっている。日銀
が同日朝に発表した12月18?19日開催分の金融政策決定会合の主な意見から、政策正常化を急がない日銀の姿勢が浮き彫りとなって円売り
が出た。日銀の正常化がスムーズに進むとの前提だった24年の円高シナリオの雲行きは怪しくなってきた。
主な意見で最も注目されたのが「現在、慌てて利上げしないとビハインド・ザ・カーブになってしまう状況にはなく、少なくとも来春の賃金交渉の
動向を見てから判断しても遅くはない」との意見だ。金融市場にくすぶっていた年明け1月のマイナス金利解除観測を打ち消す内容と受け止めら
れた。
今月の決定会合の結果は、今後の日銀の政策姿勢を示唆するものではなかった。植田和男総裁は会合前、国会答弁で来年にかけての業務
に関して「チャレンジングになる」と述べていたが、会合後の記者会見ではその真意について「一般的な取り組み姿勢」とはぐらかした。
市場の一部では「チャレンジングというからにはデータ次第で1月の政策修正もあり得るはずだ」との声が残っていた。しかし、きょう明らかにな
った主な意見で「春まで待っても遅くない」と明記されてしまっては、こうした見方は後退せざるを得ない。
市場参加者の関心は、名目金利から物価上昇率を差し引いた「実質金利」の先行きにも向かっている。実質金利は日本の居住者がより高い
利回りを求めて海外に資金を移動する動機づけになる。
22日発表の11月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除いた総合指数が前年同月比2.5%上昇だった。伸びは10月から鈍っているが
実質金利は低いままだ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券は今月発表したリポートで、日本の実質金利の低さに改めて焦点をあてている。トルコが急ピッチで利上げ
しても実質金利のマイナスを脱却できないためにリラ安に歯止めがかからないのを引き合いに出して「日銀がマイナス金利を解除しても実質金
利はまだマイナスで、大幅な円高要因にはなりにくい」とまとめた。日本とトルコは貿易収支が赤字で、放って置いても通貨安の圧力を受ける点
も共通している。
日本の実質金利をプラスに引き上げるにはかなりのハイペースで利上げを続けなければならない。それは無理だろう――。欧米勢が年初に向
けて日銀の政策をテーマに円買いを仕掛ける可能性はほぼなくなった。今後は視線を米国に戻し、24年の円高予想のもう一つの軸となる米国の
利下げの可能性を占ううえで重要な米経済指標をゆっくりと見極めていくことになりそうだ。
[27日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁はNHKのインタビューで、来年にマイナス金利が解除される可能性が「結論的にはゼロではない」と
述べた。経済・物価情勢が好転して賃金・物価の好循環が見通せる状況が来年訪れることに期待感を示した。
インタビューは26日に行われ、27日に放映された。
もっとも、植田総裁は、マイナス金利解除が来年1月なのかについては否定的な見方を示した。1月には支店長会議が開かれ、地方の中小企
業の賃上げや価格転嫁の状況についてどのような報告がなされるかが焦点。
植田総裁は1月の支店長会議で賃金・物価でかなりの情報が得られる可能性は「今のところそんなに高いとは思っていない」と述べた。
植田総裁は賃金・物価の好循環の下での2%インフレの実現について「まだもうひとつ自信が持てない」と述べた。物価が2%をオーバーして
際限なく上がっていくリスクは高くなく、「焦っているという気持ちはない」とし、非常に近い将来にデフレに戻るリスクは「非常に低い」と語った。
<賃金・物価の好循環、判断基準示す>
日銀が注視する賃金と物価の好循環について、植田総裁は具体的な判断基準を示した。
来年の春闘については「今年の春と同じか、それを少し上回るくらいの賃上げが決定されると望ましい」と述べた。来年3月には集中回答日が
あるが「特定のイベントで何か全部決まるというわけではないが、それも含めて大事なイベントはきちんと情報を確認していきたい」と語った。
政策委員の中には中小企業の賃上げまで見極める必要があるとの意見が出ているが、植田総裁は中小企業の賃金データがまだ出ていなく
ても「企業収益などが非常に強く、賃金が期待できるという情勢であれば1つの大きな判断材料になる」と述べた。
賃金上昇分のサービス価格への転嫁を巡っては、12月の金融政策決定会合で「企業からは引き続き難しいという声が多く聞かれる」との意
見が出ていた もっと見る 。植田総裁は、今年上がった賃金が今年から来年にかけてどの程度サービス価格に反映されるか見たいと述べた。
日銀が来年マイナス金利を解除すれば、2007年以来17年ぶりの利上げになる。植田総裁は将来的な金融政策の転換の際には「一部現状
のままで行くという部分もあるかもしれないが、それも含めて全体を見直すという作業はしたい」と話した。
2024/01/04 14:52 日経速報ニュース
QUICKが4日に公表した2023年12月の債券月次調査によると、日銀がマイナス金利を解除する時期の予想で「24年4月」との回答が111人中
68人と61%を占めた。次いで1月(21人)、3月(9人)が多く「4月までに解除」を合計すると88%に達した。調査は昨年12月26?28日に証券会社
や銀行などの債券市場関係者を対象に実施した。
調査対象は異なるが、昨年12月18日に公表のQUICKの外為月次調査では、マイナス金利解除の予想時期は「24年4?6月」が43%と最多で
「1?3月」が36%だった。日銀の金融政策決定会合前の調査で「年内」との回答も6%あった。今回の債券月次調査では「24年5、6月」との予想
が5人おり、「6月まで」を合計すると93%に達する。外為月次調査における85%よりも高い。
1日に発生した能登半島地震により、金融市場では「日銀は経済的な影響を見極めるため、政策修正を急がない」との見方も出ている。債券月次
調査の回答時期は地震発生前のため「1月にも解除」との予想が後退するなど、市場の見方は変わっている可能性もある。
1カ月後(24年1月末時点)の新発10年債利回りの見通しは、単純平均で0.699%だった。前回調査における23年12月末予想(0.775%)から低下
した。
2024/01/04 14:46 日経速報ニュース
2024年は日銀が18年ぶりの利上げに動きそうだ。短期の政策金利のマイナス解除という利上げは長期金利に上昇圧力をかけるものの、その
余地は限られそうだ。18年前の利上げ時を振り返ると、日銀が動いたのは米連邦準備理事会(FRB)が政策を転換し利下げへ向かう端境期だ
った。今回もFRBは利下げが視野に入っており、政策の方向性の違いが日銀の連続利上げの壁になるとみられる。
日銀は06年7月、ゼロ金利を解除する利上げに踏み切った。政策金利はゼロ%から0.25%に引き上げた。それに先立つ同年3月には量的緩
和を解除していた。長期金利は同年5月に2.005%へ上昇した。
7月発表の6月の企業短期経済観測調査(短観)で景況感の改善が確認されると日銀はゼロ金利を解除し、それから7カ月後である07年2月
にはさらに政策金利を0.5%へ引き上げた。長期金利は2%をわずかに上回った06年5月がピークとなり、その後は低下へ向かった。債券市場は
日銀による継続的な利上げは難しいと見透かしていたのを示唆している。
その背景には米国の景気減速があった。FRBは06年6月の利上げで打ち止め、07年9月に利下げへ転じた。状況は今回も重なってみえる。
FRBは昨年7月の利上げを最後に3会合連続で政策金利を据え置いている。金融市場では今年前半にもFRBが利下げを開始するとの予想が
広がっている。
米国の金融政策のサイクルを考えると、日銀が異次元緩和からの出口へ一気呵成(かせい)に動けば円相場の急激な変動などを招きかねな
い。マイナス金利を解除したとしても、その後は慎重な姿勢を保つとの見方が優勢だ。
米国の景気減速は、輸出などを通じて日本経済にも影を落とす。厚生労働省が23年12月22日発表した10月の毎月勤労統計調査(確報値)で
は、物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比で2.3%減少した。明治安田総合研究所の小玉祐一氏は「マイナス金利の解除後に日銀が
さらに金利を上げていくのは難しい」とみる。
みずほ証券の上野泰也氏は「マイナス金利解除後は利上げがないとみる人にとって、長期金利が1%まで上昇(債券価格が下落)すれば投資
のチャンスとなるのではないか」と話す。
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは4日、0.615%となっている。1日に石川県・能登半島で大地震が発生し「日銀は今月にもマイ
ナス金利解除」との観測はさらに後退した。早期解除の観測は「FRBが利下げへ転換すれば日銀が動きづらくなる」との読みが背景にあった。
遅かれ早かれ今年中にはマイナス解除との予想はなお優勢ながら、その先を見据えると長期金利の上昇余地はあまり残されていないかもしれ
ない。
2024/01/09 02:00 日経速報ニュース
10年以上にわたり上場投資信託(ETF)を購入し、事実上の株価下支えという異例の取り組みをしてきた日銀が、2023年に株式の売り手に転
じたもようだ。暦年ベースで株式の売り手になるのは、10年のETF買い入れ開始後では初めてだ。
23年は、日経平均株価が28%上昇するなど日本の株式市場の環境は良好だった。海外投資家の資金のほか日本企業の自社株買いも株価を
支えた。日銀の買い手としての存在感が低下する中、民間マネーが主導する株高が実現したと評価できる。株価の下支えは主要中央銀行は普
通手掛けない政策。それが減るなら株価のゆがみも縮小し、市場機能が回復する点で望ましいと言える。
株式の処分が上場投信購入上回る
23年に日銀が株式の売り手に転じたと見られるのは、株式を組み込んだETFの購入が株価安定を背景に大きく減る一方、かつて金融システム
安定策の一環として銀行から買い取った株式の売却が着実に進み、差し引き売った株式の方が上回ったと見られるためだ。
それぞれの数字を具体的に見てみよう。
日銀のETF購入は、資産価格の下落圧力を和らげ、市場心理の悪化を防ぐため手掛けてきたもの。異次元金融緩和のもと17?20年には年間
4兆?7兆円もの巨額の水準に膨れあがっていた。減少が目立ってきたのは、21年春の政策修正で、株価が大きく下落した日に限定した買い入
れに方針転換してからだ。21年以降、年間1兆円を割り込み、23年には約2100億円にとどまった。
一方、日銀が売却した株式は02?04年と09?10年に銀行から購入したもの。金融機関経営を保有株式の価格下落の悪影響から遮断するの
が狙いだった。その出口政策(買った株式の処分)を16?25年度の10年計画で進めている。
日銀は計画発表当時3兆円程度あった保有額(時価)をおおむね均等なペースで年3000億円ずつ売ると想定していた。実際、22年度末の保有
額は約9600億円と公表されており、25年度末までの3年間で均等に売るなら年約3200億円ずつになる計算。当初の計画とほぼ合っている。年
度ベースと若干のズレはありそうだが、23年暦年の売却も3000億円前後だったと見られ、ETFの買い入れ額を上回る。同年中は株価が上昇し
ており、実際の売却はこれを上回った可能性もある。
ETF買い入れは金融政策(日銀企画局が所管)、銀行保有株買い取りは金融システム安定策(金融機構局が所管)と別々の政策。日銀は同
じ次元で論じるべきではないと説明するが、お金に色はないため、前者の購入より後者の売却が多ければ、日銀全体としては株式の売り手にな
るのも事実だ。
日銀は銀行から買い取った株式の処分を07年にいったん始めたことがあるが、08年の世界的な金融危機を受け中断した経緯がある。10年にE
TFの買い入れを開始し、株価への関与を本格化させていってから、暦年ベースで株式の売り手になるのは初めて。
23年に日銀が株式の売り手になっても株式市場の環境が良好だったことで、ETF買い入れという政策を続けることの是非も問われそうだ。
この異例の政策は「過去、コロナ危機時に市場心理の悪化を防ぐなど一定の効果は発揮した」(元日銀理事でちばぎん総合研究所社長の前田
栄治氏)と評価される。ただし、「株式が買い支えられてしまえば、経営者は企業が抱える本質的な問題点に気付きにくくなるし、個人や機関投資
家の資産運用の機会を奪っている面もある」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏)といった副作用を指摘する声も根強かった。
市場の安定続くなら幕引きも
もちろん、今後市場が大きく混乱すれば再びETF買い入れが膨らむ可能性は残っているが、日銀は「(市場が大きく不安定化してリスクプレミ
アムが過度に拡大する)心配がある程度なくなる状態になれば、こういう(ETF買い取りという)やり方をやめていく準備が整うと考えている」(植
田和男総裁)としている。
24年には新NISA(少額投資非課税制度)開始により個人の株式投資拡大の可能性も指摘されている。石川県能登半島の地震の経済に及ぼ
す悪影響が深刻化したり、海外経済混乱などのリスクが顕在化したりせず、「民主導」の株価上昇が一段と本格化するなら、日銀によるETF買
い入れ自体の幕引き作業も検討対象になるかもしれない。
ただ、フローでの買い入れをやめても、巨額のETF保有(23年9月末で時価約61兆円)は残る。規模が大きいだけに、保有額を一気に減らそう
とすれば市場が混乱するリスクもあるなど、その扱いは課題であり続ける。
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2024/01/11 02:00 日経速報ニュース
海外投資家と日本企業の変化が歴史的な株高を生んでいる。企業が資本効率改善を狙って自社株買いに取り組み、その姿勢を評価した海外
勢が2023年、2年ぶりに買い越しに転じた。両者の合計買越額は8兆円を超え、日経平均株価を33年ぶりの高値圏に押し上げた。日銀に頼らな
い株高に向けて個人の動向が焦点となる。
東京証券取引所が10日発表した投資部門別売買動向(東京・名古屋2市場)によると、23年通年に海外投資家は3兆1215億円買い越した。
買い越し規模としては安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」初期の13年(15兆円)以来の大きさとなる。企業の自社株買いを映す事業法人
の買越額は4兆9012億円だった。
日経平均は10日、終値で1990年3月以来となる3万4000円超えを実現した。22年末比の上昇率は30%を超える。東京証券取引所が旗振り役
のPBR(株価純資産倍率)改革に企業が呼応し、海外勢による日本株再評価につながった。日銀の上場投資信託(ETF)買いがほぼ止まった状
態で歴史的な株高を実現した意味は大きい。
海外投資家と日銀がアベノミクス以降の日本株相場を左右してきた。まず動いたのは海外勢だ。日銀の大規模金融緩和と為替の円安進行、
安倍政権の構造改革に期待が高まる中で、13?14年に合計約16兆円を買い越した。ところが規制緩和や企業の収益力改善は海外勢の期待
値に届かず、15年以降は売り越しの年が目立つようになった。
デンソーなど自社株買いが呼び水
海外勢の大量売りを吸収したのが日銀だった。金融緩和効果の強化を狙って始まったETF買い入れは13年以降、累計で35兆円を超えた。新
型コロナウイルス禍が直撃した20年に株価下支え効果を発揮したが、一部の日本企業では事実上の筆頭株主に浮上するなど「官製相場」の
弊害も指摘され始めた。
23年は脱「日銀頼み」に向けて一歩を踏み出した年といえる。日本企業が成長戦略や株主還元策で競い合い、その優劣を投資家が評価し株
価が決まるという本来の姿だ。4月に米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が来日し、世界的に日本企業の取り組みに関心が集まるという
「追い風」も吹いた。
実際、海外勢は日本企業の変化を目の当たりにしている。例えば日本を代表する企業群であるトヨタ自動車グループ。部品大手デンソーは持
ち合い株の売却に併せて、2000億円規模の自社株買いを発表した。23年に自社株買い計画を公表した上場企業のうち、3割弱は過去5年、全
く動きがなかった会社だ。
24年も海外投資家の姿勢が株価を左右する。ゴールドマン・サックス証券によると、世界の株式で運用するアクティブ投資家は依然として日本
株の保有を少なめの水準にしている。日本株ストラテジストの建部和礼氏は「買い余力は大きい」と指摘する。日本企業の変化が続けば株高の
けん引役となりうる。
個人の新NISA活用も焦点に
焦点は個人投資家だ。23年は通年で2兆9192億円の売り越しとなった。持続的な株高に懐疑的な個人は逆張り志向が強く、高値をつけると売
りに回りやすい。もっとも歴史的な株高局面を迎えたわりに売りが少なかったともいえる。アベノミクス相場初期の13年には1年間で9兆円近くを売
り越していた。
「バブル崩壊後、含み損を抱えたまま日本株を持ち続けた個人の『処分売り』が一巡した」。東海東京調査センターの鈴木誠一チーフエクイティ
マーケットアナリストはこう分析する。さらに23年の上昇局面で買えなかった個人も多く、売りが出にくかったとみる。
24年1月から少額投資非課税制度(NISA)が拡充された。20?30代は成人後の大半が13年以降の株高局面で、株式投資に前向きな特徴があ
る。将来の社会保障への不安が高まるなかでNISAなどを活用しながら資産を積み上げている。個人の姿勢が変われば、日本株市場は日銀頼み
からの完全脱却に近づく。
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2024/01/18 11:16 日経速報ニュース
日銀は22?23日に金融政策決定会合を開く。金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」28人を対象に日経QUICKニュース社(NQN)が実施
したアンケート調査によると、今回の会合で日銀は大規模な金融緩和策の維持を決めるとの予想でほぼ一致した。マイナス金利政策を解除す
る時期については4?6月との回答が増えている。
政策維持、賃上げの見極め続く
調査は12?16日に実施し、日銀が1月の会合で政策を「現状維持」すると予想したのは28人中27人だった。焦点は今春の賃上げ動向で、BN
Pパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「1月の支店長会議で今年も賃上げの動きが広がっていることを認めつつ、その程度については
不確実性が高いとの見方が示されていた」と指摘。政策正常化に至るには賃金の見極めに時間を要するとみる。
現時点では賃上げに関する情報が不足しているとの指摘は多い。決定会合直後の24日には経団連の労使フォーラムが予定されており「春季
労使交渉(春闘)が事実上開始される直前、賃上げ動向について日銀が決め打ちして動くことにはやはり無理がある」(みずほ証券の上野泰也
チーフマーケットエコノミスト)という。
1日発生した能登半島地震の影響も全容はわかっておらず、三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは1月の会合では「地域金
融の流動性支援策などが発表される可能性がある」とみる。一方、調査で「修正あり」と回答した1人は金融政策の先行き指針である「フォワー
ドガイダンス」の見直しだった。
マイナス金利解除時期は後ずれ
調査では前回12月に比べ、マイナス金利政策の解除時期が後ずれするとの予想が増えていることも明らかになった。マイナス金利の解除時期
について「4?6月」との回答が23人中18人にのぼり、前回調査(24人中12人)から増加。「1?3月」の予想は2人と前回(6人)から大きく減った。
野村証券の森田京平チーフエコノミストは「(集中回答など)3月の春闘関係イベントで企業の賃金設定、(4月初旬に公表される)3月の日銀の
企業短期経済観測調査(短観)で企業の価格設定、4月中旬の日銀支店長会議で中小企業の価格・賃金設定を確認できる」と説明。これらを踏
まえて賃金・物価の好循環に一定の進捗が認められれば、日銀はマイナス金利を解除するとみる。
年内に「YCC撤廃」「オーバーシュート型コミットメント見直し」も
24年末までに日銀が何らかの政策修正をするとの予想は28人中25人と全体の約9割を占める。修正内容は「マイナス金利政策の解除」が23
人(複数回答可)と最も多い。「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃」は21人で「YCCは既に形骸化し、予想物価上昇率
が高まったこともあり撤廃しても実質金利を含めて誘導は可能」(農林中金総研の南武志理事研究員)とみるためだ。
物価上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を維持する「オーバーシュート型コミットメント」の見直しも
21人が予想する。伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストはコミットメントがデフレ下を想定したもので「デフレ脱却後にも必要かどうか議論の余地
あり」とみていた。
2024/01/20 日本経済新聞 朝刊
物価や賃金の上昇を受けた2024年度の公的年金額は前年度比で2.7%増額となり、1992年度以来32年ぶりの伸びとなった。年金財政
の安定のために支給額を抑える「マクロ経済スライド」により、物価の伸びには届かなかった。同スライドはデフレ下で何度も発動が見送られてお
り、抑制の長期化で将来の給付額が想定より減る懸念が高まっている。
厚生労働省が19日、24年度の支給額を発表した。4、5月分をまとめて支給する6月の受け取り分から適用する。
自営業者らが入る国民年金は40年間保険料を納めた場合、68歳以下の人は1人当たり1750円増の月6万8000円になる。厚生年金を受
け取る夫婦2人のモデル世帯は、6001円増の月23万483円になる。モデル世帯は平均的な収入(賞与を含む月額換算で43万9千円)で40
年間働いた夫と専業主婦のケースを指す。
年金額は直近1年間の物価変動率と過去3年度分の実質賃金の変動率をもとに、毎年4月に改定する。23年度は厚生年金で月22万4482
円、同年度に67歳以下の人の国民年金で月6万6250円だった。
支給額は2年連続で増えたが物価や賃金の上昇分に届いていない。物価や賃金の伸びよりも支給額を抑えるマクロスライドの影響で、国民年
金は実質年3600円ほど、厚生年金では同1万1500円ほど目減りする。
24年度の物価や賃金を反映した改定率は3.1%だった。23年の物価上昇率(3.2%)と20~22年度の名目賃金変動率(3.1%)を考慮
し賃金が物価を下回ったため賃金の変動率を採用。そこからマクロスライドによる0.4%分の抑制分を差し引き、最終的な改定率は2.7%とな
った。
公的年金は現役世代から集めた保険料を高齢者に給付する仕組みのため、少子高齢化が進むと年金財政の維持が難しくなる。このためマク
ロスライドで支給額を抑えている。だが物価や賃金が下落するデフレ下では発動しないルールのため、2004年に導入されてからの20年間で4
回しか発動されていない。
支給額の抑制が想定より遅れると、マクロスライドを発動させる期間が長期化し、将来の給付水準が過度に低下する。特に基礎年金の抑制は
現行のままなら、46年度まで続く見通しだ。
この結果、現役男性の平均手取り収入に対する年金額の比率を示す基礎年金の「所得代替率」は、19年度の36.4%から46年度には26.
5%と約3割も低下する見通しだ。
25年は5年に1回の年金制度改正の年にあたり、24年中に具体的な改革案が示される。厚労省の審議会では財政に余裕のある厚生年金が
基礎年金に資金支援して、給付水準の抑制を前倒しで終了する案が出た。
就労を促進して高齢者の手取り収入を増やす方向の改正も議論されている。一定の所得のある高齢者の年金支給を減額する在職老齢年金
制度も見直しを求める声が強い。老後の収入を充実させるために、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)など私的年金の活用促進も重要になる。
ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員はマクロスライドについて「抑制期間の長期化を防ぐために、賃金や物価の下落局面でも毎年スラ
イドを発動させるための議論が必要だ」と指摘する。
2024/01/21 04:00 日経速報ニュース
日経平均株価、上値重い展開か
今週の東京株式市場は上値が重い展開となりそうだ。22、23日に日銀の政策決定会合が開催される。能登半島地震の影響でマイナス金利
解除の観測は後退しているものの、植田和男総裁の発言内容次第では相場の波乱要因になる可能性もある。
株式相場は急ピッチで上昇してきただけに過熱感が意識されている。先週は節目となる3万6000円を試す展開が続き、週間の上昇幅は386円
(1%)にとどまった。午前中に大きく上昇し、午後に弱くなる日が多かった。JPモルガン証券の西原里江チーフ株式ストラテジストは「短期筋が利
益確定に動いている。国内外の投資家は上昇ペースの速さに警戒感を強めている」とみる。
日銀の政策修正について、市場ではマイナス金利解除の時期は3月か4月との予想が多い。太陽生命保険の清友美貴運用企画部長は「3月
にマイナス金利が解除されると企業業績に悪影響を与える」と警戒していた。
国内長期金利、0.6%台で推移か
今週の国内債券市場で、長期金利は0.6%台を中心とした推移になりそうだ。日銀が23日まで開く金融政策決定会合でマイナス金利政策の
修正に踏み込むとの見方は乏しい。一方、金利の低下方向への圧力は一時と比べると後退しており、0.5%台への低下(債券価格は上昇)を予
想する声は少ない。
前週は長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが0.55%まで下がる場面があった。その後は反発し、0.665%で週内の取引を終えた。
売り持ちにしていた債券を買い戻す動きはいったん一巡した。
今週は日銀会合が最大のイベントになる。マイナス金利政策の据え置きは既に織り込まれており、金利の低下余地は限られそうだ。「0.6%台
半ばから後半では債券を買いたいという国内投資家は多い」(岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジスト)といい、0.7%台が定着するとの
見方も少ない。
円、下値では介入警戒も
今週の外国為替市場で、対ドルの円相場は下値をじりじりと模索する展開か。日米金利差が一時と比べると拡大しており、円に対する下落圧
力は高まっている。1ドル=150円が近づくと円買い介入への警戒が強くなり、円を売り込む動きは鈍くなりそうだ。
前週の円相場は週末に148円台後半まで下がり、昨年11月以来2カ月ぶりの円安・ドル高水準を付ける場面があった。米連邦準備理事会(F
RB)の3月利下げ期待が小さくなる一方、日銀がマイナス金利政策を修正する時期が見通しにくくなっており、日米金利差が開きやすくなっている。
円相場は年初の3週間で8円近く円安が進み、下落スピードは速い。政府の口先介入のレベルはまだそれほど高くないものの「150円が近づく
と介入を意識する投資家が増える」(野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジスト)という声が目立つ。
原油、神経質な動き 要人発言に注目
今週の原油相場は神経質な動きが続きそうだ。石油輸出国機構(OPEC)プラスは2月上旬にも合同閣僚監視委員会(JMMC)を開く。会合に
向けてサウジアラビアの閣僚などが追加減産を示唆すれば、原油上昇につながる可能性がある。
24日に米国の1月製造業購買担当者景気指数(PMI)、26日には米国の12月米個人所得・個人消費支出(PCE)の発表を控える。米経済の強
さが意識されれば、市場が3月と織り込んでいる利下げ開始時期が後ずれするとの見方が強まり、原油価格には下押し圧力がかかりそうだ。
紅海ではイエメンの親イラン武装組織フーシと米英の対立が激化し、タンカーの運航に支障が出ている。今のところ原油生産への影響は限ら
れているものの、「情勢が一段と緊迫化すれば供給不安から原油価格が押し上げられる可能性がある」(楽天証券経済研究所の吉田哲コモデ
ィティアナリスト)。
2024/01/22 19:15 日経速報ニュース
日本証券業協会が22日発表した公社債の投資家別売買動向によると、都市銀行など国内の銀行勢は2023年に国債を1兆6965億円売り
越した。売り越しとなったのは16年以来およそ7年ぶり。日銀による金融緩和の修正を背景とした金利上昇(債券価格は下落)を警戒した国
債売りが強まった。
都市銀行は23年に短期国債を除く国債を1兆4105億円、地方銀行は3366億円売り越した。第二地銀を含めた銀行勢の売越額は1兆6965
億円だった。海外勢は10兆2287億円、生命保険会社・損害保険会社は3兆6696億円とそれぞれ買い越した。
日銀は22年12月、23年7月に長期金利の上限を引き上げ、10月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用を柔軟化した。金
利上昇による債券価格の下落の影響を回避したい銀行勢は、日銀による追加の緩和修正を警戒し、年間を通じて国債の売り手に回った。
24年に入っても、早期のマイナス金利解除観測は後退しているものの、市場参加者の金利上昇観測は根強く、国債を積極的に買う動きは
乏しい。三井住友DSアセットマネジメントの馬岡憲治ソリューション営業部統括部長は「昨秋に一度1%近い長期金利をみている地銀などは、
もう少し長期金利が上がるまでは待ちたいというところが多い」と指摘する。
投資家が年初に国債を買い戻したことから長期金利は15日に一時0.550%まで低下したものの、22日には一時0.665%まで上昇した。
2024/01/23 13:09 日経速報ニュース
日銀は23日に開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めた。マイナス金利政策の解除を見送り、長短金利操作(イールド
カーブ・コントロール)や上場投資信託(ETF)買い入れといった措置も現状のまま維持した。賃金と物価の好循環の持続力をさらに見極める必要
があると判断した。
短期金利は日銀当座預金の一部にマイナス0.1%のマイナス金利を適用し、長期金利は1%を上限のめどとする現在の政策を維持する。植田和
男総裁は23日午後3時半から記者会見し、決定内容や今後の政策運営について説明する。
日銀は会合後に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で2024年度の消費者物価指数(生鮮食品除く)の前年度比上昇率の見通
しを前回23年10月時点(2.8%)から2.4%に引き下げた。一方で、25年度は1.8%と前回(1.7%)から引き上げた。23年度は2.8%で維持した。
実質国内総生産(GDP)は23年度を1.8%と前回(2.0%)から下方修正した。24年度は1.2%と前回(1.0%)から上方修正した。25年度は前回と同
じ1.0%で据え置いた。
日銀は物価について、24年度は「原油価格下落の影響を主因に下振れとなる」との見通しを示した。25年度は政府によるガソリン・電気・ガス
代の負担緩和策の反動が上昇率の押し上げに作用するという。中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率が高まるもとで「物価安定の目標に
向けて(物価上昇率は)徐々に高まる」と指摘した。
企業の賃金・価格設定行動は「従来よりも積極的な動きがみられている」とした。先行きは「物価上昇を反映した賃上げが実現するとともに、
賃金上昇が販売価格に反映されていくことを通じて、賃金と物価の好循環は強まっていく」とし、物価安定目標の実現へ「確度は引き続き少し
ずつ高まっている」との見方を示した。
今後のリスク要因の一つに米欧などの中銀の動向を挙げた。一部に「先行きの利下げを示唆する動きもうかがわれる」とし、「インフレ圧力が
さらに減衰した場合、利下げの動きが強まり、それらが経済に影響を及ぼす可能性もある」と指摘した。資源・穀物価格を中心とした輸入物価
の動向にも「引き続き注意が必要」とした。
植田総裁は23年12月下旬の都内での講演で、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて「確度は少しずつ高まってきている」と述べ
ていた。金融正常化の判断で「春季労使交渉で、はっきりとした賃上げが続くかが重要なポイント」とも指摘していた。
【関連記事】
・4月説増えた日銀のマイナス金利解除 3月決定の余地も
・賃上げ、名目3.6%が焦点 実質賃金プラス転換に必要
2024/01/23 17:26 日経速報ニュース
国内債券市場で長期金利の上昇圧力が根強く残っている。日銀は23日、大規模な金融緩和策を据え置いた。緩和維持を受けて長期金利
は低下(債券価格は上昇)したものの、市場参加者の多くは政策正常化への警戒を緩めていない。需給要因を背景にした下押し圧力が一服
すれば、長期金利はじりじりと上昇する局面を迎えそうだ。
23日は長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが0.630%と、前日から0.020%低下する場面があった。日銀はこの日まで開いた金融
政策決定会合で政策正常化を見送り、あわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では2024年度の物価見通しを下方修正した。マイナス金利解除まで時間を要するとの安心感から長期債には買いが優勢となった。
日銀の緩和維持をきっかけに金利が低下したのは需給面の要因も大きい。日本証券業協会が22日公表した公社債の投資家別売買動向(
短期証券を除く)をみると、昨年12月時点で都市銀行は3カ月連続で売り越していた。1676億円だった生損保の買越額も一年前の22年12月
(3638億円)と比べると小さい。
今回、日銀が「利上げ」開始を見送ったことで政策正常化はどんなに早くても3月18?19日開催の決定会合まで待たなくてはならない。「日
銀の利上げに向けては銀行や生保などの買い持ち高(ポジション)は削減が進んでいるのではないか」(SMBC日興証券の小路薫氏)といい
、商いの細さが金利低下を後押ししたとみられる。
日銀が緩和維持を決めても早期の政策正常化の思惑はくすぶったままだ。植田和男総裁は会合後の記者会見で、マイナス金利を解除して
も「極めて緩和的な金融環境が当面続く」と説明。マイナス金利解除は連続的な利上げを視野に入れて判断するのかと問われ「当然、そうい
うことになるかと思う」とも述べ、近い将来の政策正常化に向けて準備を進めている様子がうかがえる。
植田総裁の会見を受け、大阪取引所の夜間取引では前日から上昇して終えていた債券先物相場が急落。政策金利の影響を受けやすい新
発2年物国債の利回りは前日比0.035%高い0.055%と昨年12月27日以来およそ1カ月ぶりの水準に上昇する場面もあり、会合後の債券買い
は早くも勢いが衰えている。
日経QUICKニュース社(NQN)が金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」を対象として12?16日に実施したアンケート調査では、28人中23
人が年内のマイナス金利解除を予想していた。うち「4?6月」との回答が18人で多数を占める。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留
克俊氏は「4月のマイナス金利解除を前提とすると、年度末に向けても長期金利は上昇する」とみていた。
2024/01/23 17:26 日経速報ニュース
国内債券市場で長期金利の上昇圧力が根強く残っている。日銀は23日、大規模な金融緩和策を据え置いた。緩和維持を受けて長期金利
は低下(債券価格は上昇)したものの、市場参加者の多くは政策正常化への警戒を緩めていない。需給要因を背景にした下押し圧力が一服
すれば、長期金利はじりじりと上昇する局面を迎えそうだ。
23日は長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが0.630%と、前日から0.020%低下する場面があった。日銀はこの日まで開いた金融
政策決定会合で政策正常化を見送り、あわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では2024年度の物価見通しを下方修正した。
マイナス金利解除まで時間を要するとの安心感から長期債には買いが優勢となった。
日銀の緩和維持をきっかけに金利が低下したのは需給面の要因も大きい。日本証券業協会が22日公表した公社債の投資家別売買動向(
短期証券を除く)をみると、昨年12月時点で都市銀行は3カ月連続で売り越していた。1676億円だった生損保の買越額も一年前の22年12月
(3638億円)と比べると小さい。
今回、日銀が「利上げ」開始を見送ったことで政策正常化はどんなに早くても3月18?19日開催の決定会合まで待たなくてはならない。「日
銀の利上げに向けては銀行や生保などの買い持ち高(ポジション)は削減が進んでいるのではないか」(SMBC日興証券の小路薫氏)といい
、商いの細さが金利低下を後押ししたとみられる。
日銀が緩和維持を決めても早期の政策正常化の思惑はくすぶったままだ。植田和男総裁は会合後の記者会見で、マイナス金利を解除して
も「極めて緩和的な金融環境が当面続く」と説明。マイナス金利解除は連続的な利上げを視野に入れて判断するのかと問われ「当然、そうい
うことになるかと思う」とも述べ、近い将来の政策正常化に向けて準備を進めている様子がうかがえる。
植田総裁の会見を受け、大阪取引所の夜間取引では前日から上昇して終えていた債券先物相場が急落。政策金利の影響を受けやすい新
発2年物国債の利回りは前日比0.035%高い0.055%と昨年12月27日以来およそ1カ月ぶりの水準に上昇する場面もあり、会合後の債券買い
は早くも勢いが衰えている。
日経QUICKニュース社(NQN)が金融政策を分析する「日銀ウオッチャー」を対象として12?16日に実施したアンケート調査では、28人中23
人が年内のマイナス金利解除を予想していた。うち「4?6月」との回答が18人で多数を占める。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留
克俊氏は「4月のマイナス金利解除を前提とすると、年度末に向けても長期金利は上昇する」とみていた。
[東京 23日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は23日、金融政策決定会合後の記者会見で、物価見通し実現の確度は引き続き高まっている
と指摘、金融政策の正常化に前向きな姿勢を示した。4月までにマイナス金利が解除されるとみた金融市場では債券先物が下落、外為市場は
円高に振れた。植田総裁はまた解除後の際も「大きな不連続性の発生は避ける」とし、「(解除後も)極めて緩和的な金融環境が当面続く」とその
先の政策スタンスに踏み込んだ。
<マイナス金利解除、時期は明言せず>
日銀は決定会合で、金融政策の現状維持を決めると同時に「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を改訂した。消費者物価の基調的な上昇
率が見通し期間終盤にかけて「『物価安定の目標』に向けて徐々に高まっていく」と改めて指摘するとともに、「先行きの不確実性はなお高いも
のの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている」と明記した もっと見る 。
植田総裁は記者会見で、物価目標実現の確度が高まったと考える根拠として、展望リポートで示した2024年度・25年度の生鮮食品とエネル
ギー価格を除く消費者物価指数(コアコアCPI)の見通しがともに前年度比プラス1.9%で前回と変わらなかったことを挙げた。「(前回は)まだ
必ずしも自信が持てないと申し上げてきたが、もう1回点検してみたら同じような見通しになった」と説明した。
ただ、物価目標実現の確度が少しずつ高まってきているいうことは好ましいことだが、「どれくらい近づいたかという定量的な把握自体は非常に
難しい」と述べた。その上で、マイナス金利の解除時期は明確にしなかった。
3月会合前に政策変更に十分な判断材料がそろうかとの質問には「毎回会合時点までに得られた情報をもとに丁寧に判断していく姿勢に変わ
りはない」と話した。3月会合の前に春闘の集中回答日が予定されている。
4月会合の前には日銀短観や支店長会議がある。「もちろん3月に比べれば4月は情報量が増える。そうした中でどういう決断になるかはその
時その時、新たに追加された情報をもとに考えていく」と述べるにとどめた。衆院補選が4月会合の直後に予定されているが「選挙の有無に関
わらず、適切な金融政策運営をしていきたい」と話した。
<異次元緩和の「次」は>
一方、植田総裁は異次元緩和の「次」の金融政策の姿については踏み込んだ。「長く続いたマイナス金利がゼロ、ないしプラスに変わるかもしれ
ないところで大きな不連続性が発生するようなことは避ける金融政策運営を、他の政策手段の調整も含めて考えていきたい」と語った。
現在見えている経済の姿を踏まえれば、仮にマイナス金利を解除することになっても「極めて緩和的な金融環境が当面続くということは言えるの
ではないか」とも述べた。長期国債の買い入れについても、「出口の前後で大きな不連続性が発生することがなるべくないように運営したい」とし
た。
市場ではこれまで4月の決定会合でのマイナス金利解除を見込む声が多かったが、こうした見方が一段と強まった。
科学技術振興機構の鵜飼博史チーフ・エコノミストは、植田総裁の会見で「タイミングはともかく、遠くない先にマイナス金利を解除するだけでな
、その後の政策スタンスまで考えていることが示された」と指摘。マイナス金利解除は4月に実施されてもおかしくないとみている。
<中小企業の賃上げ、見極めは「総合判断」>
2%物価目標の実現の前提として、日銀は賃金と物価の好循環を掲げている。大企業の一部で積極的な賃上げ方針が出てきているが、日銀
では中小企業の賃上げ動向を見極めるべきだとの声が出ている。
の経済の動きから中小企業の賃金がどうなりそうか類推できるし、ヒアリング情報も入手可能だ」と述べた。大企業の動向や中小企業の中で先
行する企業の動き、中小企業の業績やサービス価格の状況などを「総合判断」して見極めていく考えを示した。
植田総裁は賃金から物価への波及に期待感を示した。取引先との価格交渉の際に原材料コストの転嫁はできても賃金の上昇分は転嫁しにくい
との声や、価格交渉で使用される算出式に賃金が入っていないなどの話もあるが「賃金上昇がどれくらい続くかによって変わってくるとの見方も
ある」と指摘。社会で転嫁を許す雰囲気が広まる可能性もあり、「少しずつ転嫁が進むとみている」と述べた。
<能登半島地震>
植田総裁は記者会見の冒頭、1日に発生した能登半島地震について「金融機能の維持と資金決済の円滑確保に万全を期すとともに、今回の
地震の影響に関する情報収集と分析に努めている」と述べた。
2024/01/26 09:37 日経速報ニュース
26日朝方の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは一時、前日比0.040%低い0.705%に低下(価格は上昇)した。
26日発表の1月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想から下振れし、これまで高まっていた日銀の金融政策正常化観
測が和らいだ。このため債券買いが先行している。
1月の都区部CPIの前年同月比上昇率は生鮮食品を除くコア指数で1.6%となり、QUICKがまとめた市場予想の中央値(1.9%)を下回った。
上昇率の2%割れは2022年5月以来、1年8カ月ぶりとなった。エネルギーも除くコアコア指数は3.1%上昇で、こちらも鈍化した。
前日比17銭高の146円14銭で夜間取引を終えていた先物中心限月の3月物は、都区部CPIの発表後に始まった日中取引では一時、45銭高
の146円42銭まで買われた。米国でもインフレ鈍化が意識され25日の米長期金利は低下しており、これも国内債の買いを誘っている。
日銀は23年12月開催の金融政策決定会合の議事要旨を発表し、マイナス金利やイールドカーブ・コントロール(YCC)の解除について「来春の
労使交渉の動向をみてから判断しても遅くはない」などの意見があった。
短期金融市場では大阪取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である3月物は前日の清算値比0.0025高い99.9575を
つけた。 東京金融取引所ではTONA先物3月物は前日の清算値比0.005高い99.955で推移している。
2024/01/31 09:29 日経速報ニュース
日銀は31日、1月22?23日に開いた金融政策決定会合での政策委員の「主な意見」を公表した。今春の賃金改定について「過去対比高めの
水準で着地する蓋然性が高まっている」としたうえで、経済・物価情勢が改善傾向にあるため「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満
たされつつある」との意見があった。物価安定目標の達成が現実味を帯びてきており「出口についての議論を本格化させていくことが必要」との
声も聞かれた。
足元は「従来の極めて強い金融緩和からの調整を検討していく重要な局面だ」との見方も出た。この委員は「イールドカーブ・コントロール(長短
金利操作、YCC)やマイナス金利政策のあり方を議論するほか、オーバーシュート型コミットメントの検討も必要だ」と語り、物価が安定的に2%を
超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を維持する現在の政策指針も議論の対象にすべきだとの意見もあった。
政策修正のタイミングを巡っては、「能登半島地震の影響を今後1?2カ月程度フォローし、マクロ経済への影響を確認できれば、金融正常化が
可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い」との意見が示された。「金融正常化の第一歩であるマイナス金利の解除に適切なタイミングで踏
み切る必要がある」との声も聞かれた。「海外の金融政策転換で政策の自由度が低下することもあり得る」としたうえで「現在は千載一遇の状況
にある」として、政策修正の機会を見失うべきではないとの意見もあった。
2024/01/30 16:48 日経速報ニュース
日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)導入後、3度目となるステルステーパリング(隠れ量的緩和縮小)が進んでいる。
日銀は大規模な国債買い入れを実施する方針を引き続き掲げているものの、国内金利を低位に抑えるための積極的な国債購入の必要性が
低下しているためだ。金融政策の正常化に向けた動きが加速している。
「債券市場の機能回復への配慮も買い入れ減少の一因だ」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは指摘
する。日銀の1月の国債買い入れオペ(公開市場操作)の購入額は現時点で5兆8567億円。31日に臨時オペがなければ、1年11カ月ぶりに6兆
円の大台を割り込む。前月比でみても3カ月連続のマイナスだ。
2023年10月にYCC運用の再柔軟化を決めた後、買い入れ額は減少基調にある。長期金利は1月半ばにつけた0.550%から上昇しているとは
いえ、30日時点で0.705%にある。日銀が上限のめどとする1%にはまだ距離があり、金利上昇への緊迫感は高まっていない。
今月からは残存期間「10年超25年以下」「25年超」のオペの月あたり実施回数を昨年12月からそれぞれ1回減らした。ある日銀関係者は「YC
C導入当初の考え方にのっとったもの」と話す。債券相場の波乱が収まり、イールドカーブを適切な水準に維持するという本来の導入目的にもと
づく運営に戻った。
YCC導入で金融政策の軸足を「量」から「金利」に移した16年9月以降、国債買い入れが減る局面は今回で3度目となる。
まずYCC導入後から始まり、月間購入額は新型コロナウイルス禍直前の20年2月に約4兆8000億円まで落ち込んだ。金融機関の収益悪化と
いった緩和の副作用を和らげるため、YCC導入に伴い長期金利がゼロ%程度で推移するよう買い入れる方針に転換した。
2度目が長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%程度と明確にした21年3月以降だ。コロナ禍の景気減速懸念がくすぶり、金融緩和の
持続性を高めるために金利を変動しやすくした。21年4月?22年2月は国債購入を月間5兆円台に抑えていた。
日銀は4月にもマイナス金利解除に踏み切るとの観測が根強い。今後のオペ運営はどうなるのか。日銀の植田和男総裁は23日の記者会見
で、国債買いオペについて「出口の前後で大きな不連続性が発生するということはなるべくないよう金融政策を運営したい」と語った。
昨年12月会合の議事要旨では、物価目標の実現が見通せる状況に至った後も「長期金利の不安定化を避けるための緩やかな枠組みは残し
ておくことも考え得る」との意見があった。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「長期金利のコントロールはすぐに手を放すことはできないことをにじませた」とみて、金利
上昇を抑える仕組みは残すと予想する。
日銀内でも「市場への影響を考慮すると、正常化に至ったからといって米連邦準備理事会(FRB)のように保有資産を粛々と縮小するのが適当
とは言い切れない」との見方もある。
とはいえ、金融調節の「主軸」が長期金利から短期金利に移っていくとすれば、国債買い入れの存在感は弱まっていく。金利のある世界が近づ
いているのは確かだ。
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2024/02/02 05:00 日経速報ニュース
新しい少額投資非課税制度(NISA)を通じた個人の海外投資が新たな円安圧力になるとの見方が外国為替市場で出てきた。新NISAのもと、
個人が毎月3000億円超を株式など海外資産に投じるとの試算がある。円を外貨に替える需要が発生し、円相場を押し下げる方向に働く。特に
積立投資が多い月の前半に円が弱含む場面が増えそうだ。
「新NISAは海外投資家の間ではもはや知らない人がいないというレベル。特に円売り・ドル買いの規模に関心を寄せる投資家が多く、日本の
貿易赤字と比較する人が目立つ」。ある外資系証券の関係者はこう明かす。
新NISAは個別株にも投資できる「成長投資枠」と投信を毎月積み立てる「つみたて投資枠」がある。日本総合研究所によると、2つの枠を合わ
せて年間で最大3.9兆円の海外投資が発生する可能性があるという。
月間ベースでは3250億円の円売り・外貨買い需要が発生する。一方、23年12月の貿易赤字は4127億円(季節調整値)だった。円売りの規模
は単月貿易赤字の8割に相当するため、海外投資家も新NISAの動向に注目せざるを得なくなっている。
日本総研の立石宗一郎研究員は「特に海外株の積立投資は保有期間が長くなり、利益確定などによる円買いの動きが出てきにくい」と指摘
する。政府は27年までにNISAの累計買付額56兆円を目指す。年間の買付額が約5.2兆円ずつ伸びるという前提に立つと、27年までに対ドルの
円相場を最大6円ほど押し下げる効果があるという。
新NISAが始まってから1カ月の資金流入の傾向をみると、特に月の前半に円安が進んだり、円高が進みにくくなったりする公算が大きい。
QUICK資産運用研究所がつみたて投資枠の対象となる外国株投信のうち、純資産残高上位5本の資金流入金額(日次ベース)を推計した。
三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」など、いずれも米国株や世界株に投資する投信だ。
同研究所の推計によると、1月の資金流入額は前半の15日までが計3391億円と後半の16?31日(2366億円)を大きく上回った。月を3分割す
ると、1?10日が41%と最大で、11?20日の33%が続いた。年初の1月に成長投資枠の年間上限(240万円)まで購入した個人もいるとみられ
、同月の資金流入を押し上げた可能性がある。
資金流入が月の前半に偏る傾向は今年1月特有ではない。22?23年の24カ月でみても、対象投信への資金流入は15日までが68%を占めた。
10日まででも全体の過半にのぼった。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「1日に積立投資を設定する人が特に多いほか、5
日や10日にも集中している」と指摘する。
足元の円相場は1ドル=146?147円前後で、23年末と比べると5?6円ほど円安・ドル高方向に振れている。日米の長期金利の差は3.2%程
度と23年末から大きく変化していない。
22年以降に本格化した円安局面は、国内外の金利差と貿易赤字の拡大という2つの要因が主導してきた。金利差の拡大には歯止めがかかり
、貿易赤字も縮小基調にある。それでも円が下落しているため、新NISAによる需給要因が3つ目の円安圧力になっているとの見方がある。
企業業績をベースとする株式などと異なり、為替市場には価格の高低を推し量る指標が少ない。一方向への値動きが発生しやすい特徴もある。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「家計の円売りという事実を認識する人が増えれば、それを材料にした円売りも増えるの
が為替市場だ」と明言する。
米連邦準備理事会(FRB)は年央には利下げに転じ、日銀も4月までにマイナス金利を解除するとみられている。金利差縮小に伴い、24年は場
合によっては120円台まで円高が進むというのが市場参加者の読みだった。想定を超える個人の海外投資熱によって、そのシナリオが練り直し
を迫られる可能性がある。
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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-08/S8DOGLDWX2PS00?srnd=cojp-v2
国債買い入れ不連続にせず、緩和修正時にETF購入やめるのが自然
賃金と物価の好循環「素地が整ってきた」、春闘は重要なファクター
日本銀行の内田真一副総裁は8日、マイナス金利解除後の金融政策運営について、短期政策金利の連続的な利上げは想定しておらず
緩和的な金融環境を維持していく考えを明確にした。奈良県での金融経済懇談会で講演した。
内田氏は、今後の経済・物価情勢次第としながらも、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく
」と表明。日本では、欧米と異なり中長期的な予想インフレ率が2%付近で定着していないとし、「再び下がってしまうリスクも意識しながら、
緩和的な政策を行う必要がある」と語った。
1月の金融政策決定会合後の植田和男総裁の記者会見や同会合の「主な意見」で政策正常化に前向きな発言が相次いだのを受けて、
市場では3月か4月の会合で政策変更が行われるとの見方が大勢を占めている。内田氏は今回の講演で正常化のタイミングには言及し
なかったが、個々の政策を修正する場合の基本的な考え方を具体的に説明することで地ならしを進めた形だ。
イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)については、国債買い入れによる量的緩和の一類型だとし、見直し後の国債買い入
れや市場の安定確保を考慮しなければならないと指摘。枠組みを廃止あるいは変更の場合でも、「その前後で不連続な形で買い入れ額が
大きく変わったり、金利が急激に上昇するといったことがないよう丁寧に対応したい」と語った。
大規模緩和の一環である上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れに関しては、「大規模緩和を修正する時には、
この買い入れもやめるのが自然」との考えを示した。一方で、既に保有している分の扱いは別問題だとし、「非常に大きな規模なので、時間
をかけて検討していく必要がある」とした。
消費者物価は2025年度にかけて生鮮食品を除くベースとエネルギーも除くベースのどちらもおおむね2%となる見通しで、「賃金上昇を伴
う望ましい形で2%の目標を実現する姿となっている」と説明。先行きの不確実性はなお高いとしながらも、「こうした見通しが実現する確度は
少しずつ高まっている」と述べた。
8日の金融・証券市場では、内田氏がマイナス金利解除後も緩和的な金融環境を維持する考えを示したことで日米金利差が意識され、円
は対ドルで148円台後半に下落した。円安を受けて日本株は上げ幅を拡大し、34年ぶりの高値を更新。債券市場では上昇して取引を開始し
ていた長期金利が低下に転じた。
ビハインド・ザ・カーブ
内田氏は午後の会見では、日本でも過去に見られていた賃金と物価が共に上昇する状態に戻っていく「素地がようやく整ってきた」と評価
した。賃金と物価の好循環を確認した上で「2%が見通せるようになったと判断するかどうかに向かっていく。当然ながら春闘の状況は重要
なファクターの一つになる」と語った。
正常化に踏み出す時期については、今後の経済・物価情勢次第と繰り返した。政策変更の際にマイナス金利やYCC、資産買い入れなど
の政策をセットで見直すのか、個別に対応するのかという発想はないと指摘。物価上昇に対して政策が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブに
陥っているということはない」との認識を示した。
内田氏は日銀生え抜きの副総裁として昨年3月に就任。植田体制下で金融政策運営の要と言える存在だ。企画局長を5年間務めるなど
金融政策の企画・立案を担う企画畑を中心に歩み、黒田東彦前総裁当時の13年4月の量的・質的金融緩和(QQE)や16年1月のマイナス
金利、同年9月のYCCの導入に中心的な役割を担った。
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賃上げ「6%基準」が重要、実質賃金プラス最低線-UAゼンセン会長
2024/02/11 04:30 日経速報ニュース
日米株に高値警戒感も
今週の米株式相場は上値の重い展開か。米S&P500種株価指数は5週連続で上昇し5000の大台にのせた。S&P500ベースの予想PER(株価
収益率)は20倍を超え高値警戒感も強まっている。
米国では13日に消費者物価指数(CPI)、15日に小売売上高が発表される。市場予想を上回る数値が出た場合には、利下げ期待が後退し米
株の逆風になりそうだ。T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは「米市場では巨大ハイテク以外の銘柄でもPERが切り上がって
おり、いつ調整局面があってもおかしくない」と指摘する。
日経平均株価は前週に739円(2%)上げバブル経済崩壊後の高値を更新した。今週はソニーグループなど主要企業が2023年4?12月期決算
を発表する。日経平均ベースの予想PERも約16倍と過去平均を上回り、好業績や還元の拡充が続くかが焦点となる。
米長期金利、上昇基調
米長期金利は4%を上回る水準が続きそうだ。前週は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が「時間をかけてデータを見極めることが賢明
だ」として早期の利下げの可能性は低いとの考えを示した。一時7割程度まで織り込まれていた3月会合の利下げ確率は2割まで低下している。
岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジストは「米国景気は市場予想を上回る強さを維持しており、当面は4%を下回る金利低下(債券価
格は上昇)は想定しにくい」と指摘する。利下げを見込んだ金利低下余地は限られそうだ。
日本の長期金利は0.7%前後で推移する展開となりそうだ。日銀の内田真一副総裁の発言を受けて、市場では金利上昇警戒が後退した。もっ
ともマイナス金利解除への警戒は根強く、投資家の慎重姿勢は続きそうだ。14日は「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」の初回
入札が予定されている。
米消費強ければ一段の円安も
今週の外国為替市場では円安・ドル高の流れが続きそうだ。前週は日銀の内田真一副総裁がマイナス金利解除後も「緩和的な金融環境を維
持していくことになる」と発言。日銀による金融緩和の長期化観測を背景に円相場は一時1ドル=149円台半ばと約3カ月ぶりの円安水準をつけた。
米国の堅調な経済指標の発表が相次ぎ、米連邦準備理事会(FRB)による利下げ観測が後退していることも円安・ドル高圧力となっている。
今週は13日発表の1月の米消費者物価指数(CPI)への注目度が高い。市場予想の前月比の伸び率は0.2%と前回から横ばいが予想されてい
る。上振れれば利下げ期待が後退し、円安につながる。
15日発表の米小売売上高にも注目が集まる。三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは「消費の強さが意識されれば、150円を
超えて円安が進む可能性がある」と指摘する。
原油、小動きか
今週の原油相場は材料が乏しく小動きか。米国経済指標の結果次第では早期利下げ観測が後退し相場の上値を抑える可能性がある。一方
、中東情勢の緊張で下値は限られるとの見方は多い。
13日には石油輸出国機構(OPEC)、15日には国際エネルギー機関(IEA)がそれぞれ月報を公表する。世界の石油需要の見通しの修正をめぐ
って市場は神経質な展開が予想される。
楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは「足元の相場は中国景気が重荷となっている。中国の石油需要が回復するなどの見通
しが出てくれば上値を試す展開になるだろう」と指摘する。
紅海周辺ではイエメンの親イラン武装組織フーシによる商船攻撃が続く。地政学リスクの高まりは安全資産とされる金の買い材料にもなる。国
際商品の総合的な値動きを示すFTSE・コアコモディティーCRB指数も堅調に推移しそうだ。
2024/02/10 07:29 日経速報ニュース
日銀が金融政策の正常化に向け、手探りの発信を進めている。市場参加者の大半が4月までのマイナス金利解除を見込むなか、市場との
対話は詰めの段階に入る。政策判断の時期が近づけば近づくほど、日銀幹部の発言は一言一句が重みを増す。できるだけ具体化した説明を
しつつも、あえて曖昧さを残すことで自由度を保とうとする戦略が浮かぶ。
「想定以上に『ハト派』との受け止めだった」。8日、内田真一副総裁が奈良県の金融経済懇談会で講演した後、市場の反応を見守っていた
日銀内では意外感が広がっていた。東京外国為替市場では円売りが進み、8日には一時1ドル=149円台と約2カ月半ぶりの円安・ドル高水
準となった。長期金利は小幅に低下した。
ある大手銀の債券トレーダーは「解除後の政策を予見させた部分は踏み込んだ。一方で利上げがゆっくりと捉えられた」と指摘した。
近い将来のマイナス金利の解除を既定路線として織り込む市場にとって、関心は解除後の利上げペースに集中した。「どんどん利上げしていく
ようなパス(道筋)は考えにくい」。内田副総裁は「経済・物価情勢次第」と説明し、具体的な説明は避けた。海外など一部の投資家が想定する、
2%程度への急ピッチな利上げは「期待インフレ率が2%で固定されている欧米とは異なる」として否定した。
内田副総裁が言及した「どんどん」は、関係者によれば、内田副総裁はじめ執行部内で話し合うなかで出てきた言葉だった。「曖昧さを残すこと
が大事だった。目をつぶって、あらかじめ決まったコースに沿って利上げするわけではないということを言いたかった」(日銀関係者)
執行部でもある内田副総裁の講演は、審議委員の講演よりも「(金融政策の企画・立案を担う)企画局の見方をより色濃く示すものになる」(日
銀関係者)。植田和男総裁の記者会見での発言を踏み越えない形で「今後の金融政策についてギリギリまで具体的に説明した」(同)との認識
が行内にはあった。
例えばマイナス金利解除後の政策金利の設定。「マイナス金利導入前の状態に戻すとすれば」(内田副総裁)と仮定し、「0.1%の利上げにな
る」と説明した。「短期金融市場の機能をどう維持するかが論点」と述べたうえで、現在3層で設定している日銀当座預金の構造を1層構造にす
る可能性をもにおわせた。
元日銀審議委員で野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は「金融経済懇談会の挨拶で、金融政策の説明にここまで時間
を割くのは珍しい」と指摘する。金融政策の前段では経済情勢や物価見通しの説明をするが、今回の講演ではその部分も日銀の政策判断に直
結する「賃金と物価の好循環」の解説に重点を置いた。
木内氏は「政策修正の時が近づいたことと、金利はそこまで上がらないという2つのメッセージを同時に伝えるための講演だった」とみる。
「金融市場に不連続な動きを生じさせることがないよう工夫する」。内田副総裁の説明通り、日銀は段階的に発信を強化してきた。1月会合で
発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に、2%物価目標の実現が見通せる「確度が高まっている」と記し「金融正常化に向け退路を
断った」(日銀関係者)。
3月18?19日の次回の金融政策決定会合まではまだ1カ月超あり、今後も日銀発信は公開・非公開の場で続く。日銀の正木一博企画局
長は8日と9日、都内で金融関係者やエコノミストなどに対して非公開で講演した。
「内田副総裁の講演と同じ内容ではあったが、物価の下振れリスクを注視していることがうかがえた」(正木局長の講演に参加したエコノミス
ト)。戦略的な曖昧さを残しつつ、徐々に解像度を高めている日銀。様々な場での発信を通じて、日銀の考え方への市場の理解が深まっていけ
ば、実際の正常化局面での混乱は避けられる可能性が高まる。
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2024/02/13 05:00 日経速報ニュース
政府内にマイナス金利解除を容認する考えが広がってきた。解除しても緩和的な環境は続くとして認める考え方だ。マイナス金利解除は金融
政策が正常化に向かう一方で、日本経済がデフレ脱却に近づいたことを意味する。政府のデフレ脱却の宣言にも関心が集まるが、慎重論もある。
「マイナス金利の解除とデフレ脱却宣言は根は同じだが独立して考えるべきだ」。内閣府幹部は話す。市場では日銀が今春の決定会合でマイ
ナス金利を解除するとの観測が強まっている。その場合でも脱デフレ宣言とは連動しないとの意味だ。
市場には日銀のマイナス金利解除は、政府のデフレ脱却宣言と歩調を合わせるとの見方がある。
マイナス金利の解除を容認する動きが浮上するのは、足元で1ドル140円台後半で推移する為替の水準を政府・日銀が意識しているためだ。
政府はガソリン価格を抑制する補助金を4月末まで延長し、電気・都市ガス代の補助は5月以降に縮小する。こうした措置の効果が薄れ、5月
以降に物価の上昇圧力が高まれば、日米の金利差を反映した円安への批判が再燃しかねない。
ある経済官庁幹部は「円安による副作用が大きい状況で、政府がマイナス金利の解除に反対する理由は乏しい」と語る。
政府は日本経済をデフレではない状況だが、脱し切れてはいないとみている。デフレ脱却を、物価が下落する状況を脱し「再びそうした状況に
戻る見込みがない」と定義する。現状では後戻りしないとの確証は乏しい。
政府はデフレ脱却の判断に、06年に設定した4つの指標を参考にする。
1つは消費者物価だ。生鮮食品を除く消費者物価指数は23年12月まで21カ月連続で前年同月比2%を超えた。2つ目の国内総生産(GDP)デフ
レーターも23年7?9月期はプラス圏だ。
残りの2つは改善途上にある。日本経済の供給と需要の差である需給ギャップと、企業が一定のモノをつくるのに必要な単位労働コストは23年
7?9月期はマイナスだ。
それゆえ現段階では宣言に至っていない。内閣府内には24年5月に公表する1?3月期のGDPを待つべきだとの見方がある。
財務省には「日銀が解除を探る状況で政府が脱却宣言をすると、日銀に政策変更を促しているように市場に捉えられかねない」との見方もある。
いま脱却宣言すれば、政策の根拠が薄れかねないとの事情もある。6月に予定する定額減税は「デフレ完全脱却」が目的。その前に宣言すれ
ば整合性を取りにくくなる。
岸田文雄首相は1月末の施政方針演説で「24年に物価高を上回る所得を実現する」と表明した。政府は24年度の1人当たり雇用者報酬の伸
び率を物価上昇率と同じ2.5%と見込む。定額減税で物価を上回るが、日本経済の実力とはいえない。
首相は周囲に「デフレから脱却すればこれまでやってきたこと以上に大きい」と語る。防衛力の抜本強化や原子力政策の転換などを上回る成
果に位置づけられるとみる。官邸内には、宣言自体よりも所得底上げを優先すべきだとの声がある。
内閣府ではゼロ金利に戻す範囲であれば、脱デフレに向けた政府の政策運営と整合性がとれるとの見方が多い。
日銀の決定会合には正副総裁、審議委員らに加え、財務省と内閣府からも閣僚らがそれぞれ出席する。政府は議決の延期を請求する権利を
持つ。日銀がマイナス金利解除を提起したとしても権利を行使しない見通しだ。
「マイナス金利を解除することになったとしても極めて緩和的な金融環境が当面続く」。植田和男総裁は1月23日の記者会見でこう述べた。
日銀内では、マイナス金利解除は政府の脱却宣言を伴わずに実施できるとの認識が広がる。政府と日銀の間で解除への歩調が既にあってき
ているとみることもできる。
一方である関係者は解除と宣言の時期が近接することも有り得るとして「政府と日銀が同じ方向を向いている」と強調する。経済環境がデフレ
方向に逆戻りした場合に、日銀だけが責任を負わされる事態は避けたいとの思惑がにじむ。
そもそもデフレ脱却を測る指標は絶対ではない。第一生命経済研究所の熊野英生氏は需給ギャップについて「輸入物価主導の近年のインフレ
との連動性が薄まっている」と指摘する。デフレ下で定めた古い指標だとして「幅を持ってみるべきだ」と主張する。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-16/S8X84WT0AFB400?srnd=cojp-v2
日本銀行の植田和男総裁は16日、金融政策運営について、マイナス金利解除後も当面は緩和的な金融環境が続くとの見解を改めて示した。
衆院財務金融委員会で答弁した。
植田総裁は、物価安定目標の持続的・安定的な実現が通せる状況になれば「マイナス金利を含むさまざまな大規模な緩和政策の継続の
是非を検討していく」と説明。具体的な内容はその時の情勢次第としながらも、現時点での経済・物価見通しを前提とすると「先行きマイナス金
利の解除などを実施したとしても、緩和的な金融環境が当面続く可能性が高い」と語った。
1月の金融政策決定会合以降、植田総裁や内田真一副総裁らから政策変更への地ならしとも取れる発言が相次ぎ、市場では3月か4月に
もマイナス金利解除などの正常化に踏み出すとの観測が広がっている。外国為替市場で再び1ドル=150円を超える円安が進行していることも
あり、日銀の情報発信に一段と注目が集まっている。
他の発言
海外経済・国際的な金融市場の動向、日本の経済・物価に重大な影響
一時的に財務が悪化しても政策運営能力に支障を生じない-中央銀行
引き続き財務健全性にも留意しつつ適切な政策運営に努めていく
保有国債の評価損が発生しても決算上の損益に影響しない
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日銀マイナス金利の解除後、「どんどん利上げ」考えにくい-内田氏
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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-18/S8XUKMT0G1KW00?srnd=cojp-v2
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-20/S95W7XDWRGG000
日本株は年初から大幅上昇-賃金の伸びに加速の兆し
東京は長期的な強気相場にある世界で唯一の市場かも-ベセント氏
マクロヘッジファンドと株式ヘッジファンドは今年、日本に照準を合わせている。日本銀行が約8年間続けているマイナス金利政策を転換すると
ファンドはみている。
日経平均株価は年初から急伸しており、1989年に付けた史上最高値に近づきつつある。日本経済が2四半期連続のマイナス成長となった
ことで利上げ時期が先延ばしされる可能性はあるが、投資家は、インフレが加速すれば近くマイナス金利は終了するとなお予想している。
マクロファンドであるキー・スクエア・キャピタル・マネジメントのスコット・ベセント最高経営責任者(CEO)は「東京は、長期的な強気相場の
局面にある世界で唯一の市場かもしれない」と指摘した。同氏は日銀が3月ないし4月に利上げする可能性が高いとし、それにより株価と円は
上昇すると予想した。
通常、利上げは景気を冷ますが、ベセント氏は1月の投資家宛て書簡で、日銀は利上げにより意図せず成長を刺激する可能性もあるとの
見方を示した。
ソロス・ファンド・マネジメントで最高投資責任者(CIO)を務めたベセント氏は日銀の利上げについて、日本の銀行の融資を促すほか、超低
金利やマイナス金利の環境に置かれてきた現金の豊富な家計に恩恵をもたらす可能性があると指摘。利上げが日本経済を押し上げるとの
見方を基に、ベセント氏は1年物と10年物の利回り上昇を見込んだ金利スワップのポジションを構築している。
株式運用者もまた、日本株の上昇継続を予想している。日本株はこれまでも既に、中国・香港の株式から資金を引き揚げた投資家の恩恵
を受けてきた。
インダス・キャピタル・パートナーズのジェームズ・シャノンCEOは、日本の上場株式の長期的な見通しは「われわれの投資キャリアの中で
有数の優れた内容になっている」と語った。
インダスの汎アジアヘッジファンドは、ネットエクスポージャーの半分余りが日本となっており、比率は2020年1月の19%から上昇した。
4年前は、ネットエクスポージャーの約半分を中国と香港が占めていた。だがその後、中国株が長期低迷する中で比率はゼロとなった。
日本経済は昨年に転換期を迎えたと、シャノン氏は指摘。賃金上昇ペースに加速の兆しが見られ、それがインフレを押し上げると同氏は
みている。企業の経営状況は強固で、投資を増やしているほか、配当や自社株買いも拡大している。
マクロファンドの動き
多くのマクロファンドは2023年に既に、利上げとそれに続く円の上昇に賭けていた。だが円は昨年、ドルに対して7%下げ、円上昇に賭けた
取引は大きな損失を生むこととなった。
システマティック・マクロファンドであるテクメリオン・キャピタル・マネジメントのザッカリー・スクワイアCIOは、昨年同社では逆に円の下落
を見込んだ取引を行い利益を上げたことを明らかにした。
日銀の動きに関して「昨年われわれは非常に懐疑的だった」と説明。持続的・安定的な2%の物価目標を実現するまでマイナス金利の
解除はないと、日銀は明確にしていたと付け加えた。
スクワイア氏は、日銀がマイナス金利をゼロにまで引き上げる可能性はあるとしつつ、近い将来の本格的な引き締めは見込んでいないと
説明。景気は過熱しておらず、低金利環境は株式市場と長期債に恩恵をもたらしていると指摘した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-22/S7OXM6T1UM0W00
2024年2月22日 13:31 JST
日本銀行の植田和男総裁は22日、足元の物価動向についてインフレの状態にあるとの見解を示した。衆院予算委員会で答弁した。
植田総裁は東京都区部の1月の消費者物価指数が前年比1.6%上昇と1年8カ月ぶりに2%台を割り込んだことに対し、「去年までと
同じような右上がりの動きが続くというふうに、一応予想している。そういう意味でデフレではなくインフレの状態にある」と語った。
東京消費者物価1年8カ月ぶり2%割れ、宿泊が下押し圧力に拍車
1月の金融政策決定会合以降、植田総裁や内田真一副総裁から政策変更への地ならしとも取れる発言が相次いでいる。市場では
早ければ3月の会合で正常化を開始するとの観測が広がっており、日銀による情報発信への注目度が一段と増している。
他の発言
基調的物価は徐々に高まっていくと判断している
輸入物価上昇起点の価格転嫁の影響は徐々に和らぎつつある
企業の賃金設定行動も従来より積極的な動きが見られている
雇用・賃金増加の中、物価緩やかに上昇する好循環強まっていく
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日銀総裁、物価目標実現の確度「少しずつ高まっている」-緩和維持
2024/02/29 10:59 日経速報ニュース
日銀の高田創審議委員は29日、滋賀県の金融経済懇談会で挨拶した。2%の物価安定目標の実現が「ようやく見通せる状況になってきた」
と述べ、政策運営について「出口への対応も含め機動的かつ柔軟な対応に向けた検討も必要」だとの考えを示した。賃金や物価は上がらない
ものと考える「規範(ノルム)」が「ようやく転換する変曲点を迎えている」と語った。
高田氏は「緩和効果と副作用のバランスも念頭に置きながら、今日のきわめて強い金融緩和からのギアシフト」を検討する必要があると指摘。
例として「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の枠組みの解除、マイナス金利の解除、オーバーシュート型コミットメントの在り方」
などを挙げた。
企業による今春の賃金改定については「昨年以上の賃上げ方針を示す企業が多数みられるなど、賃上げ機運が高まっている」との認識を示し
た。また、企業部門では利払い負担が低下し、財務が改善傾向にあるとして「金融政策の出口における金利上昇に対し、マクロでみて従前と比
べて耐性をもった状況である」と述べた。
2024/03/04 07:38 日経速報ニュース
「日経平均株価は、株価平均型のため値がさ株の影響が大きくなる。米ダウ工業株30種平均もそうだが、市場を測るにはあまりにもお粗末だ」。
34年ぶりに最高値を更新する直前の2月22日朝、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)で同紙シニアコラムニストのジェーズム・マ
ッキントッシュ氏はこう指摘した。
日経平均はきょうにも4万円の大台を突破する可能性があるが、その「仕組み」は海外投資家の間でも周知の事実だ。足元の急激な上昇は、東
京エレクトロンなど一部の値がさ株の急騰による。では、値がさ株のインパクトはどれだけ大きいのか。
日経平均は昨年末から3月1日までに6400円あまり上昇したが、そのうち、東エレクが約1300円、ファーストリテイリングが約900円、アドバンテス
トが約600円、ソフトバンクグループ(SBG)が約500円、4銘柄で3300円以上(5割以上)押し上げた。
見方を変える。1日の終値3万9910円の内訳は、ざっくりファストリが4400円、東エレクが3800円、アドテストが1900円、SBGが1800円。4社だけ
で1万2000円近くを占める。かたや三菱自動車工業や東京電力ホールディングスは2円前後にすぎない。
上位4銘柄(225銘柄の1.8%)の占有率は3割に達する。昨年末時点では25%程度だった。「ゆがんだ4万円」の実相だ。
こうした仕組みを逆手にとれば、少ない元手で大きな収益を獲得することは可能だ。「寄与度の高い銘柄を買い、その他の銘柄を同額売れば、買
い越しにならなくても日経平均は上昇する」とフィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは指摘する。資金コスト「ゼロ」でも日経平均は
上がる。そこに「投機」の素地はないか。ある市場関係者は、「そうした取引は当然あるだろう」と話す。
日経平均が約34年ぶりに最高値を更新した2月22日の週に日本株(現物)を最も買い越したのは証券会社の自己売買部門の5077億円だった。
最高値を買いに行ったのは、外国人投資家でも個人でもなく、市場の裏方である「黒子」だった。
これにはいくつかの説がある。一つは、額面通り証券会社が自己勘定でリスクテークに動いたという説。もう一つは、「トータル・リターン・スワップ
(TRS)」というデリバティブ(金融派生商品)取引説。これは、投資家自らは株式を保有せず、想定元本に対する金利を払って証券会社に保有して
もらい、その損益だけを受け取るいわば「隠れみのスキーム」だ。
少ない資金や担保の提供で大きな利益が狙えることから海外ヘッジファンドが活用するケースが多いが、監督当局や金融機関もリスクを正確に
把握しているのか怪しい。3年前のアルケゴス事件では、担保割れを起こした米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとTRS契約を結んで
いた国内外の一部大手証券に飛び火し、巨額の損失計上を迫られた。
契約の仕方によっては大量保有報告義務が発生しないことから、人知れず大量に株式を買い付けたいアクティビストが活用するケースもある。こ
ちらは、「隠れた持ち分」として長年、問題視されてきた。
実は、年初来の証券自己の買越額(現物株と日経平均・TOPIX先物及び同ミニ先物の合計)は約1兆8600億円と、外国人(約1兆8000億円)を上
回る。特に足元でピッチが上がっている。
例えば、いまのような地合いであれば、米ナスダック総合株価指数が上昇した直後の日本で朝方に日経平均型コールオプションを仕込み、4銘
柄を買い上がれば、簡単に大きな利益を手にすることも可能だろう。アクティビストのようなケースもあろうが、投機的な海外マネーの流入が活発化
し、火種が膨らんでいる可能性は高い。
2024/03/05 日本経済新聞 朝刊
日銀が金融機関からお金を預かる当座預金の構造をマイナス金利前に戻す案を検討している。マイナス金利の解除後に当座預金の大半に
金利がつく公算が大きい。大手銀行は資金運用の見直しに着手しており、日銀当座預金の積み増しに動く方向だ。金融機関が日銀にお金を
預けるほど「ペナルティー」として利払いを課されてきた現在の構造は転換することになる。
「2%の物価目標の実現が視野に入ってきている状況だ」。日銀の高田創審議委員が2月29日の金融経済懇談会でこう述べたことで、3月
か4月のマイナス金利解除の観測が大きく強まった。
銀行はマイナス金利解除後をにらんだ資金運用の見直しに水面下で動き始めている。「当座預金に多く預けるというインセンティブは働きや
すくなる」(大手銀幹部)。大手短資会社幹部は「銀行が資金調達に積極的になり、国債購入で余った資金を当座預金に積む構図が加速す
る」と指摘する。
金融機関は資金決済を行うため日本銀行に当座預金口座を開設し、資金を預けている。日銀はいわば銀行の銀行といった位置づけだ。
日銀は2016年、その当座預金の一部にマイナス金利を課す仕組みを導入した。当座預金を(1)マイナス0.1%の金利(ペナルティー)が
付く政策金利残高(2)金利0%のマクロ加算残高(3)金利0.1%の基礎残高の3階層に分けている。
金融機関は多額のお金を預けて政策金利残高の層まで積むと、日銀にお金を支払う必要があるのが今の構造だ。しかし、市場には日銀が
大半の当座預金に金利をつけた昔の構造に戻すとの見方が広がる。内田真一副総裁が2月上旬の金融経済懇談会で「仮にこの状態に戻す
とすれば」とし、16年2月のマイナス金利導入前の当座預金構造を紹介したためだ。
マイナス金利導入前の当座預金は、日銀に預けることを法律で定められた最低限額の「法定準備」、それを上回った分の「超過準備」の2つ
に分け、法定準備の利息はゼロ、超過準備のほうに0.1%の金利を付けていた。
この構造の場合、金融機関は超過準備額が多くなれば多くなるほど、より利息を受け取ることができる。今は当座預金全体の8割超を超過
準備が占めている。
野村総合研究所の木内登英氏は、現在の当座預金の規模でマイナス金利導入前の構造に戻すと、銀行などの利息収入は年間で2500億
円増えると試算する。
日銀内では、元の構造に戻すのは「金融機関への補助金との批判が出る可能性はある」との懸念があった。「激変を避けるために、解除時
には現在の3層構造は維持し、その後従来の当座預金に戻していく」(木内氏)との見方もある。それでも「3層構造よりシンプルな構造にすべ
き」「(金利支払いは)政策運営には必要なコスト」と支持する声が広がる。
日銀の当座預金は1月時点(平均残高)で536兆円だった。日銀が大量の国債買い入れを進めて市場に資金を供給したことで、マイナス金
利を導入した16年2月時点と比べて2.1倍に増えた。金融機関が金利を求めて資金を預けようとすれば、当座預金残高がさらに大きく膨らむ
可能性がある。
金融機関の運用にとっては追い風となる当座預金構造の変化だが、日銀にとっては課題もある。当座預金が膨張したなかでの利上げは「不
確実性が大きく、オペ(公開市場操作)も手探りとなる」(日銀関係者)。
「逆ざや」のリスクもある。マイナス金利解除後の利上げ局面で、日銀が当座預金に対して支払う利息が国債などの利息収入を上回れば逆
ざやとなり、日銀の財務にとってはマイナスだ。中央銀行は赤字や債務超過になっても基本的に政策運営に支障はないが、財務が悪化する
過程で信認が揺らげば、思わぬ円安や金利急騰につながる懸念も捨てきれない。
早ければ3月にも、日銀がマイナス金利を解除するとの見方が市場で広がるなか、日銀内外で政策変更を円滑に進めるための備えが着々
と進む。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240307/k10014382481000.html
日銀の植田総裁は参議院予算委員会に出席し、マイナス金利の解除など金融政策の転換の前提となる2%の物価安定目標について「実現する
確度が少しずつ高まっている」という認識を改めて示しました。
金融市場では、日銀が早ければ今月18日からの金融政策決定会合でマイナス金利の解除を決めるのではないかという見方が出ています。
こうした中、植田総裁は7日の参議院予算委員会で、2%の物価安定目標について「基調的な物価上昇率が2%に向けて、徐々に高まっていくと
の見通しが、実現する確度は少しずつ高まっている」と述べこれまで明らかにしてきた物価に関する認識を改めて示しました。
そのうえで「この先、物価目標の持続的安定的な実現が見通せる状況に至れば、マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールの枠組みなど
大規模緩和策の修正を検討していくことになる。出口戦略を適切に進めていくことは十分可能だ」と述べました。
日銀の金融政策を決める政策委員会のメンバーからは、賃金と物価の好循環の実現に前向きな考えが示されていて、今月の会合への関心が
高まっています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-08/SA0ZWNDWLU6800
賃金上昇加速見通しが理由、円相場上昇で一時146円台回復
日銀が3月に動くか4月に動くかはまだ決まっていない-ロイター
日本銀行では3月のマイナス金利解除に傾く政策委員が増えていると、ロイター通信が報じた。今年の賃金上昇加速が見込まれることが
理由だという。
ロイターは、日銀の考えに詳しい関係者4人の話として、3月に動くか4月に動くかは政策委員会でまだ決まっていないと伝えた。
日銀が3月に2007年以来となる利上げに踏み切るのではないかとの観測が高まる中で報じられた。報道を受けて円は1ドル=147円83銭
付近から146円88銭まで上昇した。
日本最大の労働組合の全国組織である連合は15日に、2024年春闘の賃金交渉結果の初回集計を発表する予定だ。
連合は7日、今年の春闘における加盟労組の賃上げ要求は平均5.85%で、30年ぶりに5%を上回ったと発表した。
賃金は日銀の政策決定に際し重要な要素に浮上。日本をデフレから脱却させようと何年も取り組んできた日銀は、プラスのインフレサイクル
を維持できる賃金の伸びが確認されるまで、金利を最低水準に維持すると主張してきた。
ロイターは匿名の関係者を引用し、春闘の結果が力強い内容であれば、日銀は4月の金融政策決定会合を待たずに利上げに踏み切ること
があり得ると報じた。
4月の全国企業短期経済観測調査(短観)を含むより多くの情報を待つ可能性もあるとしている。
https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/30a3e4bd3f14c8aeb799592f203f846cfbab138e
日銀が金融緩和の正常化を円滑に進めるため、先行きの国債買い入れ規模をあらかじめ示す、新たな「量的」金融政策の枠組みを検討して
いることが8日、明らかになった。長期金利を「0%程度」に誘導する「長短金利操作(YCC)」は撤廃する。
早ければ18、19両日に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除とともに決める。長期にわたる異次元の金融緩和の正常化に向
け、日銀内の調整が最終段階に入ってきた。
日銀は現在、YCCとして長期金利の指標である新発10年物国債の利回りを0%程度に誘導している。新たな枠組みは、金利を直接操作する
手法を撤廃し、国債購入額という「量」を対象とする方向で検討。買い入れ額は当面、現行の月間6兆円弱の規模を軸に調整する。
日銀が大量の国債買い入れを今後も継続すると約束し、マイナス金利解除といった金融正常化に伴う長期金利の急騰(債券価格の急落)な
どの混乱を防ぐ。同時に、金利の直接操作を撤廃して、一段の金利変動を容認することで、市場機能の回復につなげる狙いもある。
万が一、金利が急騰した場合は、必要に応じて国債買い入れの増額などを通じて機動的に対応する考え。
日銀は黒田東彦前総裁が2013年に導入した異次元緩和下で、国債の買い増し額を操作する量的緩和策を実施していた時期がある。
2024/03/11 15:02 日経速報ニュース
国内債券市場で長期金利の先高観が強まっている。日銀が18?19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除に加え、長短金利
操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤廃を決めるとの観測が高まったためだ。高い賃上げが実現する公算は大きく、日銀が政策正常化を
始める決断を妨げる材料は乏しい。さらにYCC撤廃で長期金利の上限すらもみえなくなれば、投資家心理は弱気に傾きそうだ。
11日は長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.765%と前週末から0.035%上昇(価格は下落)し、2月14日以来およそ1カ月
ぶりの高水準をつけた。政策金利の影響を受けやすい新発2年債利回りが前週末と同じ0.195%で推移するなか、超長期債では新発30年債利回
りが同0.040%高い1.825%をつける場面があるなどイールドカーブ(利回り曲線)の傾きのスティープ(急勾配)化が目立った。
スティープ化の材料は日銀を巡る報道だ。時事通信は8日に「金融緩和の正常化を円滑に進めるため、先行きの国債買い入れ規模をあらかじめ
示す、新たな『量的』金融政策の枠組みを検討していることが明らかになった」と報じた。金利を直接操作する手法を撤廃して国債購入額を対象と
し、買い入れ額は「当面、現行の月間6兆円弱の規模を軸に調整する」という。
一見すると同じような正常化を巡る報道に市場が過敏に反応したのはYCCが撤廃される見込みが強まったためだ。QUICKが4日公表した2月
の債券月次調査によると、100人を超える回答者の9割が4月までのマイナス金利政策の解除を予想。だが、長期金利を巡ってはマイナス金利解
除とあわせてゼロ%程度の操作目標を撤廃すると答えた80人のうち、何らかの形で現在1%とする上限の「メド」を残すとみていたのは28人だった。
報道が正しければ、YCCの枠組みで金利上昇を強くけん制してきた日銀の姿勢が大きく変わることになる。三菱UFJモルガン・スタンレー証券
の六車治美チーフ債券ストラテジストは「長期金利の明確な上限メドが示されなくなれば心理的な相場の支えがなくなり、(保有期間のリスクに応
じた金利の上乗せ分である)タームプレミアムが拡大するとの予想を反映した動きだ」と解説する。
これまで日銀が段階的に上限を引き上げてきたことでYCCは既に形骸化し、長期金利は現在の上限メドである1%を大幅に下回ったままだ。
距離があるとはいえ、いざ1%を明確に上回る金利上昇局面では指し値オペ(公開市場操作)などを活用し、上昇を抑制する「安心感」があった。
それが「量」に切り替われば、1%を大幅に超える金利上昇の可能性もあるという市場参加者の警戒感が高まっている。
今のところ国債買い入れオペを通じた日銀の月間購入額は約5兆9000億円で、報道の「6兆円弱」とまさに一致する。報道通りの決定ならば債
券需給に劇的な変化が起こる可能性は低い。しかし、量を明示して運用する場合には「経済・物価情勢がさらに好調になれば購入額を減らすの
かなど、『量』の増減は何で判断するかが現段階では不透明」(三菱モルガンの六車氏)な面も金利上昇を促したようだ。
SMBC日興証券の小路薫金利ストラテジストは11日付のリポートで、既発の10年債の多くで日銀の保有比率が「8?9割に達している」としたう
えで、現在の買い入れでは「残存5年や10年付近の一部銘柄に集中してしまっているという問題点もある」と指摘。長期金利の上限のメドがなくな
れば、日銀の保有比率が高い5年超10年以下の年限の購入額が「優先的に減らされる」とみる。
いよいよ日銀の決定会合が来週に迫り、政策正常化を巡る報道が相次いでいる。8日にはロイター通信が政策委員の間でマイナス金利解除を
「支持する声に広がりが出ているもよう」と伝え、市場では3月の決定が現実味を帯びているとの意識が高まっている。今週は春季労使交渉(春
闘)の集中回答のほか、国債入札などの需給イベントも控える。日銀が決定を下すまで債券相場は不安定化しやすくなりそうだ。
2024/03/16 日本経済新聞 朝刊
日銀は18~19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する見通しになった。2024年の賃上げ率は5.28%と33年ぶりの高
水準となり、2%の物価目標を持続的・安定的に達成できる環境が整った。日銀が政策金利を引き上げるのは07年2月以来、17年ぶり。金融
政策は大規模緩和から正常化に向かい「金利ある世界」に踏み出す。(関連記事総合2面に)
マイナス金利政策の解除に向けて15日、日銀内外で調整を始めた。現在の短期の政策金利はマイナス0.1%。これを0.1ポイント以上、引き
上げて短期金利を0~0.1%に誘導する案が有力だ。16年2月に開始したマイナス金利政策はこれで終了する。
日銀のマイナス金利政策は金融機関が日銀にあずける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用するしくみ。大規模緩和の象徴的な
政策とみなされてきた。日銀が解除すれば世界でマイナス金利政策を採用する中銀はなくなる。
連合が15日発表した24年の春季労使交渉の第1回回答の集計で賃上げ率は平均5.28%となり、焦点の中小企業の賃上げ率も4.42%
と32年ぶりの高い水準だった。ベースアップも3.70%(ベアと定期昇給を明確に区別できる654組合が対象)に達し、賃金の持続的上昇で
日銀が目指す2%の物価目標を安定的に達成できる見通しがたった。
日銀が春季交渉を「大きなポイント」(植田和男総裁)と位置づけて重視してきたのは、物価上昇の持続力と密接に絡むからだ。賃金が上がれ
ば個人消費に弾みがつくうえ、人件費の増加分はサービス価格への反映を通じて物価の押し上げ要因になる。
植田総裁は12日の国会答弁で春季交渉の結果を踏まえて判断する考えを示したうえで「賃金と物価の好循環がどのくらいうまく回っている
か点検している」と発言。マイナス金利解除に向けた見極めが最終段階に入っていることを示唆していた。
日銀内からは24年の賃上げ率は「政策修正に慎重なリフレ派も納得できる水準」(関係者)との声も漏れる。
日銀はマイナス金利政策の解除とあわせて大規模緩和の柱となってきた長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃する方針
だ。現在は長期金利の上限のめどを1%としている。
上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の新規買い入れも終える見通しだ。
23年末以降、日銀はマイナス金利の解除に向けた地ならしを進めてきた。
内田真一副総裁は2月8日の講演でマイナス金利を解除しても「緩和的な金融環境を維持していく」と解除後の政策運営に言及。高田創審議
委員も同29日の講演で物価2%目標の「実現がようやく見通せる状況になってきた」と踏み込んでいた。
政府内にも3月解除の容認論が広がっている。財務省幹部は「4月まで待つ必要がなく、3月に解除するのが望ましい」と話す。首相周辺も
「時期は日銀に任せている」と静観の構えだ。
22年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など世界の中銀はインフレ抑制へ急ピッチで
利上げしてきた。
07年2月の利上げを最後に一貫して金融緩和を続けてきた日銀がマイナス金利を解除すれば、企業や家計にとどまらず世界の資金の流れに
も大きな影響を与えることになる。
2024/03/19 02:00 日経速報ニュース
【この記事のポイント】
・政策金利はマイナスから0?0.1%へ転換
・長期金利の誘導目標撤廃、YCCは終了
・日本株ETFやREITの買い入れも廃止
日銀は19日の金融政策決定会合で大規模緩和の解除を決める方針だ。マイナス金利政策のほか、長期金利を抑え込むための長短金利操作
(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)などリスク資産を買い入れる枠組みもなくす。物価2%目標を持続的に達成できる見
通しがたったと判断し、17年ぶりの利上げに踏み切る。
日銀は会合初日の18日に国内外の経済・物価情勢について議論した。その結果も踏まえて19日の会合でマイナス金利政策を含む大規模緩
和の解除を最終的に決める。政府も「日銀を信頼している。(判断は)任せている」(首相周辺)と容認する構えだ。
日銀は2016年2月にマイナス金利政策を導入した。金融機関が日銀にあずける当座預金の一部にマイナス0.1%を適用している。現在はこのマ
イナス0.1%を短期の政策金利としているが、0.1ポイント以上引き上げて短期金利を0?0.1%に誘導する案が有力だ。
マイナス金利政策の導入から7カ月後の16年9月に導入したYCCも撤廃する。短期の政策金利をマイナス0.1%、長期金利の誘導目標を「ゼロ%
程度」として、金利をその範囲内に抑え込むために大量の国債を買い入れてきた。日銀による国債保有割合(国庫短期証券を除く時価ベース)は
すでに発行残高の過半に達している。
YCC撤廃後も金利の急騰を防ぐために一定規模の国債の買い入れは続けるが、市場実勢に反して金利を低く抑え込むための枠組みはなくす。
具体的には長期金利の誘導目標と1%としている上限のめどをなくし、市場実勢にあわせた金利変動を容認する案がある。
ETFや不動産投資信託(REIT)の買い入れも終える方向だ。いずれも白川方明総裁時代の10年に始めた。13年に就任した黒田東彦総裁が掲
げた異次元緩和でETFの買い入れは増加。日銀によると23年9月末時点の保有ETFの簿価は約37兆円で、株高を背景に含み益は足元で30兆
円規模に膨らんでいる。
REITは22年6月(12億円)を最後に買い入れを見送っており、すでに形骸化していた。
日銀は物価2%目標を持続的・安定的に達成できる見通しが立てば緩和策の修正を検討するとしてきた。消費者物価指数の前年同月比上昇率
は2%を超え続け、人件費の影響を受けやすいサービス分野の値上げも広がる。日銀内からは物価目標の「実現がようやく見通せる状況になって
きた」(高田創審議委員)との声が出ていた。
マイナス金利解除の判断で「大きなポイント」(植田和男総裁)と位置づけてきた24年の春季労使交渉の結果も大規模緩和解除の判断を後押し
した。第1回集計結果では基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率が平均5.28%となり、1991年以来33年
ぶりに5%を超えた。
組合員数300人未満の中小企業の賃上げも4.42%と32年ぶりの高水準となった。日銀内には「(マイナス金利解除に向けた)条件が整った」との
見方が広がっている。
【関連記事】
・日銀、緩和修正の議論の焦点は? YCC・ETFにも関心
・日銀、マイナス金利解除なら何が変わる? 家計にも余波
2024/03/19 14:36 日経速報ニュース
2024年3月19日。日銀は11年に及んだ異次元緩和の旗を降ろしたものの、国債購入だけは続けることを決めた。「積載超過の巨大トラック」の
ような日銀のバランスシートをすぐに縮小するのは不可能との判断だが、金融緩和の一手段だった国債購入は、名実ともに財政ファイナンス(中
央銀行による財政赤字の補填)の色彩が強まる。日銀正常化のパラドックスだ。
今回の利上げは、かつての利上げとは重みが違う。「2%の物価目標を2年程度で実現する」と宣言した公約を日銀は9年遅れで達成した金字
塔ともいうべき利上げだ。「当面、緩和的な金融環境が継続する」とはしているが、公表文の内容はほぼ「勝利宣言」だ。異次元緩和は完全に終
わった。引き換えに「国債引き受け機関」としての役割が残った。
日銀が利上げに転じたのに対し、米連邦準備理事会(FRB)は利下げ模索の段階に移行している。当然、日米金利差は縮小し、円の対ドル相
場は円高・ドル安に向かうはずだ。実際、2年物国債の利回り差は昨年9月19日の5.1%から3月18日は4.5%に縮小した。ところが円相場は1㌦
=147円台から149円台に下落した。金利差以上の「何か」が影響している。
政府のデフレ脱却宣言がないまま、なぜ日銀は異次元緩和の撤収を急いだのか。なぜ政府は、それを容認したのか。賃上げが進み、目標達
成が見通せるようになったからというのは表向きだ。本格的なキャピタルフライト(資本逃避、急激な円安)への危機感はあったはずだ。
国債購入については、これまでと同程度(月6兆円)を買い入れ、金利が急騰した場合は増額して対応する。異次元緩和なき国債購入は、正真
正銘の財政ファイナンスという「異次元領域」への突入を意味する。東京海上アセットマネジメントの平山賢一氏によれば、戦時期ですら日銀は国
債を引き受ける一方で、民間金融機関へ国債を売却し、発行総額の1割強しか保有していなかった。潜在的な円暴落リスクは確実に高まる。
第2次世界大戦時の対応で長期金利を2%台にくぎ付けしたFRBの国債価格支持政策は、朝鮮戦争によるインフレ圧力から1951年3月に財務
省との間で解除するとのアコード(政策協定)が結ばれた。この日はFRBの「独立記念日」ともいわれるが、その後、物価が下落に転じ、幸いに
して長期金利はあまり上がらなかった。戦争で膨らんだ米国の公的債務は、実質経済成長による税収増で長い期間をかけ返済された。
願わくは、日本の公的債務の解消も、このパターンであって欲しい。だが、潜在成長率が低迷するなか、物価上昇による実質債務負担の軽減
という安易な方向に傾く恐れもある。政府・日銀は円安に対して断固とした姿勢に転じ、財政規律にもこれまで以上に配慮する必要がある。株価
に下押し圧力がかかっても、甘受せざるを得ない。
[東京 19日 ロイター] - 日銀がマイナス金利を解除し、大規模な緩和策を修正した。それでもなお物価目標実現への過程との認識のもと
「緩和的な金融環境が継続する」(植田和男総裁)としており、当面は緩和的な状況を維持しつつ、政策調整の必要性を検討していくことにな
る。日銀内では経済・物価見通しが上方修正される状況になれば、早い段階での追加利上げが視野に入るとの声も聞かれ、最終的には前
回の利上げ局面のピークである0.5%を超え、潜在成長率を上回る水準まで利上げするのが望ましいとの声も一部に出ている。
<消費やサービス価格に不安、次は慎重に>
消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比上昇率が2%を上回る期間が長期化し、人手不足や好調な企業収益を背景に昨年を上
回る賃金上昇が期待される中でも、日銀は慎重にマイナス金利解除のタイミングを模索してきた。背景には、利上げを開始したら簡単に利下
げできないという、金融政策運営上の「常道」が強く意識された側面があった。
それでも日銀は、個人消費がぜい弱という不安要素を抱えながらマイナス金利解除を決定した。賃上げ期待が消費マインドを支えており、賃
上げが波及していくに従って個人消費は持ち直し、底割れは考えにくいとの見方があるからだ。
しかし、中小企業の賃上げがどの程度広がりを見せるのか、なお具体的なデータに乏しい。個人消費の先行きへの警戒感も根強く、個人消
費が下振れれば、企業の値上げも進まず、消費者物価の基調的な動きに影を落とす。
サービス価格の上昇率拡大が緩やかにしか進まないことに懸念もくすぶっている。賃金と物価の好循環について、物価高を背景に賃上げは
2年連続で実現しそうだが、賃上げ率が高くなってもサービス価格が急に上昇率を高めるような展開は想定しにくいとの見方が出ている。日
銀では、次の利上げは慎重にすべきだとの声が聞かれる。
<2年で0.5%の思惑>
「どんどん利上げするような状況ではない」と内田真一副総裁が発言した2月の講演は、マイナス金利解除後の政策のあり方を具体的に論じ
たことで市場の注目を集めたが、講演で示した図表にも関心が向かった。
特に注目を集めたのは政策金利の市場予想を示したことで、2年間で0.5%まで利上げする姿は「日銀が思い描く政策金利のパスではない
か」(エコノミスト)との見方も浮上した。
しかし、内田副総裁は講演後の記者会見で、マイナス金利解除後の利上げパスは「経済・物価情勢次第」と強調。図表で示した政策金利の
市場予想については「endorse(支持)するつもりもないし、違うと言うつもりもない」と述べた。
内田副総裁が政策金利の市場予想を示した背景には何があるのか。
日銀では2つの「意図」が指摘されている。1つは、欧米の中央銀行とは対照的に、日銀の利上げパスは非常に緩やかなものになるとの市場
の見方を海外の市場関係者にアピールすることだ。
日銀は1月の展望リポートで、2025年度にかけて基調的な物価上昇率が2%目標に到達する見通しを示したが、この先の2年間で2%超ま
で政策金利を引き上げること、つまり四半期に1度、0.25%ずつの利上げは想定しづらいとの見方が日銀では出ている。
内田副総裁は講演で、日本の予想物価上昇率は「2%に向けて上昇していく過程にある」とも指摘した。日銀では、この観点からも当面は緩
和的な金融環境を続けていくことが必要だとの声が多い。
<強い賃上げ、経済・物価見通しを変えるか>
もっとも、春闘の集中回答や連合の1次集計の強い結果は日銀でもポジティブに受け止められた。連合の1次集計を踏まえ、みずほリサーチ
&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストが連合の最終集計について推計したところ、定昇込みの賃上げ率4.8%、ベア3.1%となった。
ベア3%はかつて、黒田東彦前総裁が2%物価目標との観点で望ましいとした賃上げ率だ。
強い賃上げが中小企業まで波及するのか、個人消費やサービス価格にどう影響するのかは、今後の利上げパスに大きく影響しそうだ。植田
総裁は19日の記者会見で今後の利上げに関して「物価見通しがはっきり上振れるとか、上振れリスクが高まれば、政策変更の理由になる」
と述べた。
日銀の一部には、将来の景気減速への対応余地を確保する観点から、経済環境が許せば前回の利上げ局面のピーク0.5%を上回る水準
まで利上げするのが望ましいとの声もある。日銀推計の潜在成長率は0.71%で、実質中立金利は潜在成長率にほぼ近いとの考えに立て
ば、日銀が0.75%まで利上げすれば緩和的な局面は終わることになる。
日銀では、春闘を踏まえ、経済・物価の見通しが1月展望リポートの想定を上回って強くなれば、追加利上げは早くなりそうだとの声も聞かれ
る。緩和的な環境の下でどういう利上げパスが実現するのか、4月の展望リポートで示される数値が目先の焦点になる。
2024/03/20 18:32 日経速報ニュース
日銀の利上げを受けても円安が止まらない。20日のアジア市場では一時1ドル=151円台後半と2023年11月以来の円安・ドル高水準を付け
た。22年に付けた1990年以来の安値も迫るなか、市場では為替介入への警戒感が急速に増している。
20日の外国為替市場で円相場は1ドル=151円台後半に下落した。19日に日銀がマイナス金利政策の解除を発表する前は149円台前半で
推移しており、1日で2円以上も円安・ドル高が進んだことになる。
対ドル以外では一段と円安が進んでいる。対ユーロでは1ユーロ=164円台後半と23年の安値を突破し、08年8月以来の円安・ユーロ高水準
を付けた。対ポンドでも1ポンド=192円台と15年8月以来の円安・ポンド高水準となった。
日銀は19日まで開いた金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めた。もっとも政策金利は0?0.1%と、5%超の米連邦準備理事
会(FRB)などと比べて大幅に低い状態が続いている。日銀の植田和男総裁が19日の記者会見で追加利上げを示唆せず、海外との金利差が
開いた状況が続くとの見方が広がったことで、幅広い通貨に対して円安が進みやすくなった。
米運用大手PGIMフィクスト・インカムのロバート・ティップ氏は「日本の金利が1?2%上昇しないと、円高は進まないかもしれない」と指摘する。
日銀の政策先行きの不透明感が解消されたことで、円売りに安心感が広がった面もある。
円売り余地も大きくなっていた。円相場が一時1ドル=146円台まで上昇した3月上旬以降の円高局面で、投機筋の円売りポジションが縮小。
米商品先物取引委員会(CFTC)によると12日時点で非商業部門(投機筋)の円売越額は2月末のピークから2割少ない1兆2700億円まで縮ん
だ。決定会合前に落とした円売りポジションを構築する目的で、改めて積極的な円売りを手がけやすくなっている。
急速な円安進行を受けて、市場では為替介入への警戒感も強まっている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテ
ジストは「直近安値の151円90銭台に向けて円安が一段と進めば、為替介入の可能性が意識される」と指摘する。一方で、20日の米連邦公開
市場委員会(FOMC)で示される参加者の政策金利見通しを見極めたいとの雰囲気も強い。
円安の動きに、日銀からは「(植田総裁は)緩和姿勢を打ち出しており、決定会合後に円安が進んだのは想定内だ」との受け止めが聞かれる。
ただ、財務省には「(会合後の円相場は)投機的な動き」と急速な値動きを警戒する声が出てきた。
22年9月には黒田東彦総裁(当時)が記者会見で金融緩和の継続を強調したことで円安が進行したことが、円買い介入につながった。151円
94銭の直近安値を付けた22年10月21日には5兆6000億円規模の円買い介入を実施している。下値付近では政府関係者による口先介入や
介入の前段階である「レートチェック」などの可能性も意識されつつある。
【関連記事】
・欧米勢、日銀利上げでも円売り 円は151円台に下落
・日銀、インフレ率2%への軌跡 揺れ続けた金融政策
・日銀緩和「副作用より効果大きく」アダム・ポーゼン氏
2024/03/21 日本経済新聞 朝刊
日銀のマイナス金利政策の解除を受けて、市場では日銀が年内にも追加利上げするとの観測が広がる。植田和男総裁は19日の金融政策
決定会合後の記者会見で「緩和的な環境が続く」と強調したものの、追加利上げは否定しなかった。利上げしても反転しなかった円安で物価
高が再燃すれば、早期の政策変更を迫られる可能性がある。
「円安に加え原油価格上昇などもあり、物価上昇は加速する可能性がある。日銀は早期の追加利上げを迫られる」。20日、メガバンク幹部
は円安進行が金融政策に影響するとの見立てを示した。
日銀は19日の会合でマイナス金利政策を解除し、短期金利の誘導目標を0~0.1%に引き上げた。17年ぶりの利上げだったが、足元で
は急速に円安が進んでいる。
20日の外国為替市場で円は対ドルで一時151円台と4カ月ぶりの円安・ドル高水準に下落した。利上げは本来は円高要因になるが、植田
総裁の「(追加利上げは)ゆっくり進めていける」といった発言で「ハト派」との受け止めが広がり円売りが加速した。
植田総裁は追加利上げの可能性そのものを否定したわけではない。記者会見では「経済・物価見通し次第」として、インフレ対応などを理由
とした利上げに含みを持たせた。決定内容の発表後に円安が進んだことについては「経済・物価見通しに大きな影響を及ぼすとなれば当然、
金融政策としての対応を考える」とも語った。
日銀は2%の物価目標を持続的・安定的に達成できる見通しが立ったとしてマイナス金利を解除したため、「当然、追加利上げは視野にある」
との声が日銀内にはある。過去の日銀や米欧の中央銀行は0.25%刻みで金利を動かすのが一般的だ。
日銀は2006年3月に量的緩和を解除した後4カ月後の同年7月に政策金利を0.25%に引き上げた。過去の経緯を踏まえ市場では日銀
が年内に少なくとも1回は利上げに動くと予想する声が多い。おおむね3つのシナリオが浮上している。
有力視されているのが10月の金融政策決定会合での追加利上げだ。マイナス金利解除後の物価・経済情勢を半年ほどかけて見極め、
「急激な利上げという印象を与えずに動くことができる」(日銀関係者)ためだ。
海外情勢も関係する。米大統領選の共和党候補に確定したトランプ前大統領は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長を再任しない考
えを示している。11月の大統領選で前大統領が勝利すれば市場の潮目が大きく変わる可能性があり、日銀内には「自由に判断できるうちに
動いたほうがよい」との算段も働く。
10月中に公表する全国企業短期経済観測調査(短観)や支店長会議で集めた経済・物価のデータも参考に利上げを判断する流れが想定
される。
19日のマイナス金利解除後は日銀が7月会合で判断するとの見方も増えてきた。円安による輸入物価の上昇で物価上昇が加速し、インフ
レ対応で追加利上げを前倒しするシナリオだ。7月も短観や支店長会議があり、新たな物価見通しも公表する。
24年1月に2.0%だった消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)の前年同月比上昇率が再び加速に転じれば「7月までに追加利上げに動く
可能性もある」(メガバンク幹部)。早期に追加利上げに動くことで「年内にもう1段階の利上げの余地を探ることができる」との声も日銀内には
ある。
24年中は追加利上げせず25年以降になるとの慎重な見方もある。政府はマイナス金利解除は容認したが、象徴的な意味合いが強いマ
イナス金利解除と追加利上げでは経済に与える影響が異なるとみている。
海外中銀の動向にも大きく左右される。FRBの利下げのタイミングが日銀の利上げと重なれば、足元の動きとは逆に急激な円高につながる
可能性もある。大規模緩和から「普通の金融政策」(植田総裁)に戻った日銀は国内外の情勢に目配りしながら慎重に追加利上げの余地を
探ることになる。
2024/03/21 13:15 日経速報ニュース
21日の東京外国為替市場で円相場は下落している。日米の当面の金融政策の結果発表を経て、市場関係者の間では円買い材料が枯渇し
円高が進みにくくなったとの見方が一段と強まっている。円安要因は、現在開いたままの日本と欧米などとの金利差だけではない。日本の家
計から米国株などへ向かうお金の円売り圧力も無視できなくなっている。
日本が祝日だった20日の海外市場で円相場は一時1ドル=151円82銭近辺と2023年11月以来4カ月ぶりの水準まで売られ、22年と23年に
つけた151円90銭台に迫った。日銀が19日まで開いた金融政策決定会合で、マイナス金利の解除や長短金利操作(イールドカーブ・コントロー
ル)の終了、長期国債以外の資産買い入れの終了など、「およそ市場が想定しうる金融緩和の修正メニューをほぼすべて出し尽くした」(三菱
UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)ことで、海外投機筋は「日本側から円を押し上げる材料は当分あらわれ
ない」と判断し、円売りに大きく傾斜した。
これらの円売り自体は「スピード違反」で、日本政府・日銀による円買いの為替介入への警戒感を誘った面もあるため、円はその後は150円
台前半まで急速に値を戻している。それでも円の先安観自体は弱まってはいない。
日銀の植田和男総裁は19日の記者会見や21日の国会答弁で「当面、緩和的な金融環境が継続する」と強調し、利上げペースに関して「急
激な上昇は避けられる」とも話している。日銀の緩和の長期化が引き続き予想されている。
米連邦準備理事会(FRB)が20日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の経済見通しで、年内3回としていた利下げ予想が据え置か
れた。米利下げ観測の維持は教科書的にはドル安の要因で、事前に利下げ回数が2回に引き下げられるとの警戒感がくすぶっていた反動も
ある。ただ日本の金利水準が大幅に上昇しなければドル優位の構図は変わりそうにない。
日米の金融政策イベントを通過し、日銀の利上げでも円売りが進んだことに関連し、市場では金利以外の要因での円売り圧力の強さを再認
識している。
財務省が毎月公表している投資家部門別対外証券投資によると、投資信託委託会社等による株式・投資ファンド持分の投資は、新しい
少額投資非課税制度(NISA)が始まった今年1月は1兆2104億円の買い越し。2月も1兆106億円の買い越しと2カ月連続で1兆円を上回っ
ていた。21日に日銀が発表した2023年10?12月期の資金循環統計は、新NISA開始前ではあるものの「家計の投資信託のフローの積み
上がり方が拡大傾向にあり、今年1月以降はさらに加速したと推察される」(第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミスト)との声があ
がっている。
相場の動きと違って、『ステルス性』が高い円売り・ドル買いになる」と話し、家計の円売り圧力が円の上値抑制に相当程度効いている可能
性を否定しない。
複数の外国銀行ディーラーによると2月は日米の長期金利差(10年物国債利回りの差)が縮小した局面でもたびたび円売り・ドル買い注文
が厚くなっていたという。日本の外為証拠金(FX)投資家が得意とする相場の流れに逆らう「逆張り」取引かもしれないが、市場ではそれとは
別に、外国株投信運用などに絡んだステルス円売りの存在を強く意識しているようだ。
シカゴ通貨先物市場の建玉報告では投機的な円の売り持ち高が10万枚を上回っており、きっかけ次第では持ち高解消の円買い・ドル売り
が一気に噴出してもおかしくなかった。ところが、日銀の17年ぶり利上げはその起爆剤とはならなかった。いまや円高をもたらしうるのは日本
政府・日銀による為替介入くらいだ。
市場では、介入は22年10月の安値である151円94銭を下回ったうえで、売りに勢いがつくような雰囲気にでもならない限り、実施しないとの
声が支配的だ。円安が日本の株高につながっている状況を日本政府は無視できないとの声も目立つ。
円安の進行次第で、日銀が追加利上げを検討するとの観測は高まるかもしれない。だが、市場参加者の多くは「能動的に円高にするための
利上げを日銀は選択しないだろう」(三菱モルガンの植野氏)として、追加の利上げはかなり先とみる。
「日銀による断続的な利上げといった金融政策スタンスが変わるくらいでないと円は買われにくい。FOMCの消化にまだしばらく時間がかか
る可能性もあるが、きょうのドル売りが一巡した後、円が全面安となる展開も捨てきれない」(みずほ銀行の南英明調査役)。市場が見込む円
の「落としどころ」は切り下がっている。
2024/03/24 04:00 日経速報ニュース
「異次元の金融緩和政策はその役割を果たした」。日銀は19日の金融政策決定会合で2013年以降に導入した異例の金融緩和策からの脱却
を決めた。植田和男総裁は記者会見で「短期金利を主たる政策手段とする『普通』の金融政策となる」と強調した。
【関連記事】日銀総裁「賃金と物価の好循環確認」 マイナス金利解除
引き締め方向の政策修正にもかかわらず、円相場は1ドル=151円台に下落。日経平均株価は22日、4万0888円と最高値を更新した。「市場と
の対話が奏功し修正が前向きに受け止められた」(フィデリティ投信の重見吉徳マクロストラテジスト)
市場が注目したのは声明文の「当面、緩和的な金融環境が継続する」との文言だ。マイナス金利政策を解除するとともに長短金利操作(イール
ドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃したが、これまでと同程度の月6兆円弱の長期国債買い入れを続けるという方針も市場に「想定以上のハト
派だ」(PGIMジャパンの鴨下健株式運用部長)と安心感を呼んだ。
ハト派かタカ派か
市場が受け止めた日銀の「優しさ」は続くだろうか。日銀を異次元緩和からの脱却に駆り立てた背景に目をやれば、想定よりも「タカ派」的な利
上げが進むシナリオも浮かび上がる。
「新たな経済社会へのステージ転換の第一歩だ」。連合の芳野友子会長は15日、24年春季労使交渉の1次集計結果を受けた記者会見で驚
きを口にした。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は1991年以来33年ぶりに5%を超えた。
賃上げは地方にも波及している。長野県のエムケー精工(5906)は24年度に5000円のベアを決めた。定昇との合計で3%の賃上げとなる。これ
までも定昇や賞与で平均給与を引き上げてきた。約20年ぶりのベアに踏み切るのは「インフレ対応に加え、厳しい人材獲得競争が理由だ」と丸
山将一社長は明かす。
地域の有力企業でも人材を採用しにくくなっている。ガソリンスタンド向け洗車機を中心に業績は好調となるなか「待遇改善で流出を防ぐ努力
が一段と求められそうだ」と話す。
人手不足を背景に中小企業の賃上げ率も4.42%に達した。想定より急激な賃上げで「物価への波及が強まり、利上げペースが加速するリスク
もある」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)
追加利上げへ布石
市場の関心は「日銀はどこまで利上げするのか」だ。日銀は声明文から「必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じ
る」との文言を削除。物価上昇率が2%を安定的に超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を続ける「オーバーシュート型コミット
メント」も廃止した。引き締めに向けフリーハンドの状態にある。
植田氏は「急激に金利が上がる事態になると、予期せぬ混乱が起きないとも限らない」とクギを刺す。一方、「賃上げで内需拡大につながれ
ば24年に1回以上の利上げの可能性もある」(運用会社ブランディワイン・グローバルのポートフォリオ・マネージャー、キャロル・ライ氏)との見方
も広がってきた。翌日物金利スワップ(OIS)市場では、12月時点で政策金利が0.3%程度まで引き上げられるとの織り込みが進む。
日銀がめざす政策金利の水準はどの程度か。キーワードは景気を冷やしもふかしもしない「中立金利」だ。定まった見解はないが「今後5?
10年でみれば1.5?2.0%の間ではないか」(野村証券の森田京平チーフエコノミスト)との見方は多い。
「物価上昇が続くなら、その水準まで徐々に引き上げることになるだろう」。元日銀理事で東京財団政策研究所主席研究員の早川英男氏は語
る。「これまで日銀は『意図的なビハインド・ザ・カーブ』だった。一度引き上げられると判断すれば利上げペースは早い可能性がある」
マイナス金利から「金利ある世界」に一気に転換させた日銀。想定以上に利上げを進め、緩んだ市場に冷や水を浴びせるリスクへの目配せが
必要だ。市場はどう動くのか点検しよう。
株、内需関連主導に
「優しい」日銀を巡り、株や債券などの市場では見方が割れている。
株式市場では日銀政策修正後も株高基調は続くとの見方が出ている。マイナス金利解除や上場投資信託(ETF)の新規購入停止など想定の
範囲内で、早期の追加利上げの示唆もなかったと見たためだ。もっとも、これまでのような急ピッチでの株価上昇を見込む声は少ない。市場の
注目業種は年初来の株高をけん引してきた外需関連銘柄から、賃金引き上げの恩恵を受ける内需関連銘柄に移り始めている。
「緩和姿勢を伴う金融政策の正常化」。JPモルガン証券の西原里江チーフ株式ストラテジストは日銀の政策修正をこう表現した。声明文の
「緩和的な金融環境が継続する」という文言や、長期国債の買い入れ額を「これまでと概ね同程度の金額」とした点から株式市場は日銀を「
ハト派」と受け止めた。
西原氏は日銀が追加の利上げに動くには、実質賃金の上昇と個人消費の拡大を「確認する必要がある」とみる。想定以上に高い賃上げ率
となった春季労使交渉の結果が賃金統計に反映され、実質賃金がプラス転換するのは夏ごろになるとみられる。日銀が積極的に利上げに動
かないのであれば、投資家は安心して日本株に投資できる。
ETFの買い入れ終了も「影響は小さい」(BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジスト)との見方が多い。ここ数年はほとんど買い入れを実
施していないうえ、「日本株の安定的な買い手は日銀から自社株買いに変わっている」と圷氏は指摘する。
「今回の日銀の政策変更を受けて相場見通しを修正する必要はない」とPGIMジャパンの鴨下健株式運用部長はみる。好調な企業業績や
資本効率の改善を背景に海外投資家が日本株を選好する構図は変わらない。鴨下氏は「4?6月に日経平均株価は4万2000円まで上昇する
可能性がある」という。
市場の注目銘柄はトヨタ自動車(7203)など外需関連株から、内需関連株に移っている。米景気や米金融政策に左右されやすい外需関連株
よりも賃上げの追い風が吹く銘柄の方が手掛けやすい。モルガン・スタンレーMUFG証券は物価上昇への期待が高まる中、値上げを継続でき
そうな企業としてカルビー(2229)やニチレイ(2871)をあげる。市場では「料亭を展開する、うかい(7621)や柿安本店(2294)も高額消費で恩恵
を受けそうだ」(国内運用会社)との声もあった。
リスクはないのか。アセットマネジメントOneの岩間恒ソリューション戦略運用グループチーム長は「金利のボラティリティー(変動率)の上昇」
をあげる。足元の株高の背景には国内外の債券市場の落ち着きがある。米景気懸念が急速に高まるなど「債券市場発のショックには注意が
必要」と話す。
日銀の「異次元緩和」脱却後も外国為替市場では1ドル=151円台の円安水準が続く。株式相場を下支えする役割も果たしているが、日銀が
想定以上のペースで利上げを進めれば市場の雰囲気は一変しかねない。
22日の東京外為市場で円相場は一時1ドル=151円台後半まで円安・ドル高が進んだ。「日銀の政策修正を見込んで円を買っていた海外短
期筋のポジション調整」(ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジスト)が続いている。
20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で年内の利下げ回数の予想が維持されたこともあり、日銀が引き締め方向に金融政策を修正した
にもかかわらず円の地合いの弱さが続いている。
このまま1ドル=150円を超える円安水準が続くとはいえない。金融政策決定会合直後の円安進行は「日銀の決定を『ハト派』に捉えすぎてい
た」とSMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは指摘する。日銀は声明文に「当面、緩和的な金融環境が継続する」と明記した
が「利上げしないとは言っていない」ためだ。
どの程度までの利上げが「緩和的な金融環境」なのか。丸山氏は「(景気を冷やしもふかしもしない)中立金利は0.5?1.5%だと考えられ、そ
の下限の0.5%まで2年以内には政策金利を引き上げるのではないか」とみる。
0.5%の政策金利は最後に利上げを実施した07年2月に到達した金利水準と同じだ。日本では1995年9月に公定歩合を1.0%から0.5%に引き
下げてから、政策金利が0.5%を超えたことがない。日銀が利上げを進めても、この水準が一定の目安となるという考えがエコノミストの間では
少なくない。
市場では0.5%までの利上げはまだ織り込まれていない。想定以上に日銀が利上げを進めれば債券市場で金利の上昇(債券価格の下落)
要因となり、円相場は円高方向に動きやすくなる。
もっとも対ドルの円相場が動くのは米国側の要因も大きい。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は20日の記者会見で「全体的なスト
ーリーは変わっていない」と語り、引き締めからの転換を時間をかけて判断する従来の方針を強調した。
円安は貿易収支の赤字体質などといった構造的な需給要因に加え、米国の引き締めによる日米金利差の拡大とともに進んできた。FRBが
利下げを遅らせれば日米金利差は縮まらず、それだけ円の上昇余地は限られる。
ふくおかFGの佐々木氏は「もし夏ごろに早くも日銀の追加利上げが意識されるようになれば、1ドル=140円程度までの円高進行はあり得る」
と話す。需給や金利差から新型コロナウイルス禍前の水準には戻りにくいものの、短期的な円高のリスクはある。
[日経ヴェリタス2024年3月24日号から抜粋]
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2024/03/25 04:00 日経速報ニュース 3229文字 画像有
日銀のマイナス金利解除を受けて、債券市場では今後の追加の利上げをにらむ動きが出始めている。
日銀、国債購入縮小か
国内債券市場で長期金利の指標となる10年物国債利回りは日銀の政策修正後も0.7%台で推移する。日銀が緩和的な金融環境を当面維持
するとの安心感が広がったためだ。ただ、「日銀の発表をよくみると『いずれ国債買い入れを減らす』とのメッセージが垣間見える」(三井住友ト
ラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジスト)という指摘もある。
日銀は声明文に「これまでと同程度」の月間6兆円弱の国債買い入れを続けると明記した。一方で、同時に公表された定例の国債買い入れ
オペ(公開市場操作)の予定では、残存期間「5年超10年以下」などの買い入れ上限額が大幅に引き下げられた。「夏に入る頃には保有資産
を減らす量的引き締め(QT)が始まる可能性もありそうだ」(稲留氏)という。
日銀は大規模な金融緩和に伴って主に長期国債の買い入れを進め、総資産の規模は異次元緩和が始まった2013年4月の174兆円から10年
超で760兆円まで大きく増えた。米連邦準備理事会(FRB)も22年3月の利上げに続き、同6月にQTに着手した。利上げの効果を支える観点か
らも膨張した資産の縮小はいずれ必要になる。
バークレイズ証券は「日銀は当初年間換算で4兆?7兆円のQTを進め、徐々にペースを引き上げる」と予想する。財務省が4月から国債発行
を減額する方針のため「ただちに需給が悪化することはなさそう」としつつ、QTの織り込みが市場で十分に進まない場合は金利の上昇(債券
価格の低下)圧力となる可能性もあるとみる。
社債、上乗せ金利拡大
社債市場ではスプレッド(国債に対する上乗せ金利)の先行きに警戒感が広がる。シングルA格の5年債のスプレッドは今年、縮小基調にあ
った。投資家が年度末を前に買いに動いたようだ。だが今回、日銀が決めた社債買い入れの減額・終了を受け、3年債など短期ゾーンを中心に
スプレッドが拡大する可能性がある。
「10年以上続いてきた社債買い入れがなくなるなんて」。ある国内のファンドマネジャーは嘆息した。日銀は4月中はこれまで通り1回あたり
1000億円を上限とした買い入れを続けるが、5月にも減額が始まると見られる。
現在の社債買い入れのベースは2010年に導入された資産買入等の基金だ。当初、残存1?2年の社債を残高0.5兆円程度まで買い入れると
して始まった。その後、対象を残存1?3年に広げ、金額も3兆円規模に拡大。基金が13年に廃止された後も残高維持のための社債買い入れは
続いた。コロナ対策で一時的に買い入れ額や対象債券の年限を拡大した時期もあった。
この間、新発債を買い日銀オペで売って利ざやを稼ぐ「日銀トレード」が定着した。3年債は日銀の買いを織り込んできたため、企業の信用力
の実態よりもスプレッドが縮小している可能性がある。日銀の買いが緩めば、「3年債を中心にスプレッドの見直しが進み、5年債などにも拡大
圧力がかかる」(国内証券)との見方が多い。
異例の緩和終了 CP・社債購入停止へ
日銀の金融政策は大きく変わる。日銀は2016年9月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を導入し、短期金利と長期金利の
両方を金融政策の操作目標としていた。
24年3月21日からは短期金利のみを操作目標とし、伝統的な金融政策にする。これまでは金融機関が日銀にお金を預ける当座預金の一部
の「政策金利残高」に適用していたマイナス0.1%の金利を「政策金利」と位置づけていた。政策金利を短期金融市場の代表的な金利である無
担保コール翌日物金利に戻したうえで「0?0.1%程度で推移するよう促す」とした。
YCCそのものも撤廃する。長期金利が急上昇(債券価格が急低下)しそうな場合は国債買い入れで抑える。指し値オペ(公開市場操作)や共
通担保資金供給オペといった長期金利の上昇時に臨時で国債を買い入れる枠組みは残した。
リスク資産の買い入れは順次終了する。これまでも新規の買い入れを事実上停止していた上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)は
即時終了し、買い入れを続けているコマーシャルペーパー(CP)と社債は1年後をめどに終わらせる。
金融政策のフォワードガイダンス(先行き指針)も大きく見直した。物価上昇率が2%を安定的に超えるまでマネタリーベース(資金供給量)の拡
大方針を続けるという「オーバーシュート型コミットメント」は「要件を充足した」として廃止した。
世界の中央銀行の金融政策の方向性が割れている。金融緩和からの脱却に動く日銀に対し、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行
(ECB)は金融引き締めからの転換時期を探る。市場では米欧とも6月に利下げに転じるとの見方が多い。
「とにかく早期に利下げを開始したいというFRBの強い意向がにじみ出ていた」。19?20日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の結
果を受け、野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストは指摘する。
注目はFOMC参加者の経済見通しだ。2024年の経済成長率や物価見通しを昨年12月時点の予想から引き上げた一方、政策金利(中央値)
は年末までに計3回の利下げのままだった。
一部ではインフレの根強さなどから年内の利下げ回数が2回になるとの見方も出ていた。松沢氏は「大統領選前の9月のFOMCは政策修正し
づらいため、6月か7月には利下げに動きたいのだろう」と見る。
市場でも6月利下げ開始の織り込みが進んだ。金利先物の動きから政策金利の先行きを予想するフェドウオッチによると3月21日時点でFRB
が6月会合までに利下げを実施する確率は7割を超えた。FOMC前の19日時点では6割弱だった。
ECBも6月に利下げに転じるとの見方が多い。3月7日の理事会では政策金利を据え置いた。公表したECBスタッフの見通しでは経済成長率や
物価見通しを昨年12月から下方修正。「利下げに向け準備が整いつつある」(第一生命経済研究所の田中理主席エコノミスト)との見方が広がる。
ユーロ圏では賃金上昇の圧力が根強い。過去の賃金交渉で引き上げが多かった1?3月期の妥結賃金が5月に公表される見通し。妥結賃金
を確認して6月に利下げすると市場は見る。
資産圧縮も火種に
国債や住宅ローン担保証券(MBS)など資産の買い入れで膨らんだバランスシートをどうするかも論点の1つだ。
FRBは今回のFOMCで量的引き締め(QT)を近く減速する方針を固めた。新型コロナ対応で始めた量的緩和を22年3月に終え、6月からQTを
開始。FRBの資産はピークの8.9兆ドル(約1350兆円)から昨年末で7.7兆ドルに縮小。現行ペースのQT継続が金利乱高下を招くリスクがある
との懸念が浮上し、時間をかけて資産圧縮する。
ECBは淡々と資産縮小を進める。コロナ対応の資産買い入れプログラムは7月から満期を迎えた債券の再投資を減らし、24年末に再投資をやめる。
日銀も縮小方向だ。19日の記者会見で植田和男総裁は「将来のどこかの時点で買い入れ額を減らしていくということも考えたい」と発言した。
米モルガン・スタンレーが日米欧英の4中銀の資産をまとめたところ22年2月に26.5兆ドルのピークをつけた後、緩やかに縮小。同社は25年末
に4中銀合計で18.3兆ドルになると予想する。
中銀の資産拡大は金利低下を促し株式などリスク資産に追い風となってきた。現在、慎重に資産圧縮を進めており、混乱は起きていない。
ただ、金融市場にストレスがかかる局面で中銀の下支え効果が弱まっていることは火種になりかねない。
10:15 配信
田村日銀委員「着実に正常化を進め大規模金融緩和を手仕舞いしていく」
田村日銀審議委員
わが国の景気は一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断
現時点の経済物価見通しを前提にすると、当面緩和的な金融環境が継続すると考えている
金融政策の枠組みは見直したが、短期金利は「ほとんど金利がない世界」であることに変わりはない
着実に金融政策の正常化を進め、大規模金融緩和を手仕舞いしていく
みんかぶ(FX)
2024/03/27 13:34 日経速報ニュース
日銀の田村直樹審議委員は27日、マイナス金利解除や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の撤廃の決定で「金融政策の正常化へ
の第一歩を踏み出した」と述べた。金利機能の低下といった副作用はなお残るとも指摘し、最終的なゴールは「金利の上げ下げを通じて需要を
調整し、物価に影響させるという金利機能が発揮できるような水準まで戻す」こととも語った。真の正常化へのまだ一歩目であることを強調し、
追加利上げへの覚悟を示したとみられる。
田村委員は青森県の金融経済懇談会で挨拶した。18?19日の金融政策決定会合で、無担保コール翌日物金利を0?0.1%程度で推移する
よう促す政策への転換を決めた理由を、2025年度にかけて「2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に
至ったと判断した」ためだと説明する。
現状の評価で繰り返し用いたワードが「第一歩」だ。3月会合での決断については「異次元緩和とも評される金融政策を脱し、金融政策の正
常化への第一歩」だと指摘する。黒田東彦前総裁の時代に導入した異次元緩和の終了に至ったにすぎず、本当の意味での正常化はまだ先と
の考えが透ける。
経済や物価、金融情勢に応じた対応が大前提としながらも「ゆっくりと、しかし着実に金融政策の正常化を進め、異例の大規模金融緩和を
上手に手じまいしていくために、これからの金融政策の手綱さばきは極めて重要」と語った。先行きの見通しに急激な変化がない限り、今後
も正常化路線を進むべきだとの認識だと受け取れる。
銀行出身である田村委員が主張するのは金融緩和の限界だ。1990年代後半以降に短期金利が「ほとんど金利がない世界」に達した後、
様々な異例の緩和で株価や不動産価格が上昇し、円高は是正された一方、「設備投資など企業活動が活発化する様子はあまり感じられな
かった」と振り返る。長期金利を低く抑え込んだが「金利の上げ下げを通じて需要を調整し、物価に影響させるという金利の機能は限界的だ
った」と突き放す。
金融緩和の副作用にも言及した。1点目が企業が投資する際に最低限の基準となる利回りである「ハードルレート」の機能低下だ。借入
金利の低下で付加価値の低い事業も生き残り、ビジネスの新陳代謝が進まなかった可能性を指摘する。2点目としては、国債の大量購入
により市場金利から得られる情報が減る「シグナリング」の機能低下を挙げた。これらの副作用は今回の政策転換後も「残る状況が続いて
いる」とみる。
田村委員が描く正常化の最終的なゴールは何か。「2%の『物価安定の目標』のもとで、金利の上げ下げを通じて需要を調整し、物価に
影響させるという金利機能が発揮できるような(政策金利の)水準まで戻す」ことだと語る。具体的な水準こそ示さなかったが、あるべきレ
ートはゼロではないと示唆する発言だ。
27日の外国為替市場では円相場が一時1ドル=151円97銭近辺まで売られ1990年7月以来およそ34年ぶりの安値を更新した。金融引
き締めに積極的な「タカ派」とみられている田村氏にしては「思ったほどタカ派ではなかった」との受け止めが、円売り・ドル高を促すきっか
けになった。だが、田村氏の発言は正常化は第一歩を踏み出したばかりで正念場はこれから、との意思を感じさせる内容だった。
2024/04/05 10:32 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は5日、衆議院財務金融委員会に出席し、為替動向について「具体的にコメントすることは控えたい」と述べたうえで
「為替はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿って安定的に推移することが重要だ」との考えを示した。マイナス金利解除など大規模
な金融緩和の解除後に円安が進行したことについて問われると「様々な要因、内外の金融政策の思惑も影響した可能性がある」と答えた。
長期国債の買い入れについて、3月の金融政策決定会合で「当面、引き続きこれまでと同程度の金額で買い入れを行う」と決めたと説明
した。そのうえで「(日銀が)保有する残高は償還との見合いでおおむね横ばいでしばらく推移することになる」との見方を示した。
今後の長期国債の買い入れ方針については「将来的には大規模緩和からの出口をしっかりと進めていく中で、買い入れを減額し保有高が
償還に伴って縮小していくように移行したい」と語った。長期金利の水準については「買い入れはしばらく継続するが、金融市場において形成
されるものと考える」と述べた。
ところで、政策変更で日銀が保有するETFを売り出すのではないか、株価が下がるのではないかとの恐れがあるようです。これについて日銀は
あまりヒントを出していません。
しかし、これまでの日銀の政策、例えば銀行保有株買い取りの結果として保有していた株式の売却にはずいぶん時間をかけました。現時点は
日銀がETFを市場で売却をし始めるとしても、数年後ではなく、かなり先になると考えます。株式の需給に心理的な安心感がまだ残っていても
売却を始めれば逆の効果がでてしまうからです。仮に、日銀が売却に影響がないと言ってしまえば、そもそも買い入れに大して影響がなかっ
たことも認めることになってしまいかねません。
日銀が株式の大きなリスクを持っていることになるので急いで売るという見方もありますが、すでに大きな評価益を抱えているので、実現損が
出るという意味で大きなリスクになるのは、よほど大幅な株価下落の場合だけです。しかもそんな状態で手持ちのETFを日銀が売ることは、これ
までの政策を否定することになるので実際には起こらないでしょう。
株価が安定した時期を選んで、信託銀行などに売買を委託し、「上がったら売る」ような方法で、長い時間をかけて売却する、しかも売却開始
は何年も先になるとみてよいと思います。
また、一部で日銀がETFを国民に安く譲る、年金に保有してもらうという案も出されています(日銀以外からの案です)。これは政治がリードす
れば不可能ではないかもしれません。いまでも銀行保有株式の買い取りで保有した株式の売却では、いわゆる市場外のブロック取引が使わ
れています。ETFも市場ですべて売る必要はないのであって、ETFに含まれる日本株式を、個々の株式に分けて必要に応じて売却することも
技術的には可能です。ただしこのような方向での処理があるかどうか、現時点ではまったく分かりません。提案はあっても日銀が検討したよう
には見えませんし、まだまだこれからの検討課題のひとつというところでしょう。
ひとつ言えることは、日銀が日本株のETFやJリートを買い支えるかどうかよりも、『vol.49 ついに日銀がマイナス金利解除。金利のある世界
はどうなる?』で述べたように、日本の経営者が売上げ上昇に自信を持つか、消費者が賃金上昇の継続に自信をもって消費するかのほうが
大事ということです。投資家の皆さんは、投資の目的を考えた上で投資対象を定め、投資を続けて行ってほしいと思います。
2024/04/05 10:20 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は5日、衆議院財務金融委員会に出席した。日銀が保有する上場投資信託(ETF)の処分について、「すぐに行うことは
今のところ考えていない。時間をかけて検討したい」と、これまでと同様の見解を示した。不動産投資信託(REIT)の処分についても、「ETFと
同様すぐ行うことは考えていない。今後の取り扱いについて、ある程度時間をかけて検討していきたい」との考えを示した。立憲民主党の桜井
周氏の質問に答えた。
日銀は3月に開いた金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除などとともに、ETFとREITについて新規の買い入れを終了することを
決めている。
植田日銀総裁「基調的な物価上昇率、徐々に高まる」
2024/04/05 10:55 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は5日午前の衆院財務金融委員会で、春季労使交渉の結果も踏まえ「(短期的な要因を除いた)基調的な物価上昇率
は徐々に今後高まっていくと考えている」と述べた。今後の追加利上げに含みを持たせた。
日銀は3月19日にマイナス金利政策を含む大規模緩和を解除した。同日の会見で植田総裁は「基調的な物価上昇率がもう少し上昇すれば
短期金利の水準の引き上げにつながる」と述べていた。
植田総裁は5日の答弁で日銀による国債の買い入れについて「将来的には買い入れを減額し、償還に伴って保有残高が縮小するところに
移行したい」と述べた。当面は買い入れの規模をこれまでと同程度で続けるため「保有残高は償還との見合いでおおむね横ばいで推移する」
と話した。
長期国債は月6兆円程度の買い入れを継続する。これまでの大規模緩和によって保有残高は600兆円近くにのぼり、どのように縮小させる
かが課題となっている。
日銀は3月に上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)は新規の買い入れを終えたものの、保有するETFとREITをどのように処分する
かは決まっていない。
植田総裁は「ETFについては様々な議論があることは承知しているが、時間をかけて検討したい」との説明にとどめた。REITについても「ETF
と同様、すぐに処分するとは考えていない。今後の取り扱いについてある程度時間をかけて検討したい」と語った。
大規模緩和の解除後、外国為替市場で進む円安については「金融政策は為替を直接コントロールする対象としてしないが、為替は経済・物
価に影響を及ぼす重要な要因のひとつだ。十分注視したい」と言及した。
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2024/04/07 05:00 日経速報ニュース
日銀総裁に植田和男氏が就任して9日で1年となる。3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策と長短金利操作(イールドカーブ・コントロ
ール、YCC)といった政策を解除・撤廃し、11年に及んだ異次元緩和に幕を引いた。かつて政策変更の話題に口を閉ざしがちだった日銀内の
空気はこの1年で大きく変わった。
聞き上手、意見交換しやすく
「話をよく聞く人。日銀内で金融政策について率直に意見交換しやすくなった」。日銀関係者は植田総裁就任以降の雰囲気の変化を実感す
る。
政府が総裁人事を固めたのは2023年2月だ。財務官出身の黒田東彦前総裁が主導した異次元緩和は市場機能低下といった副作用も指摘
されていた。元日銀審議委員で金融政策の理論と実務に通じる植田氏に金融正常化へのかじ取りを託した。
前途は多難だった。自民党の最大派閥だった安倍派を中心に異次元緩和継続を求める声が根強く、日銀内には「異次元緩和について批判
的に話すことはタブー」との空気が色濃かった。
植田総裁は初出勤の4月10日、「皆さんと一緒に物価安定の達成というミッションの総仕上げを行いたい」と職員に語りかけた。就任時に「
中央銀行の主な使命が物価安定であるならば、日銀は使命を果たしてこなかったことになる」と訓示した黒田前総裁と対照的な出だしとなった。
まず動いたのは4月の決定会合だ。1998年以降の25年間を対象に緩和策を振り返る「多角的なレビュー」の実施を決めたほか、「現在の長
短金利、またはそれを下回る水準」としていた政策金利のフォワードガイダンス(先行き指針)の記述を削除し、引き下げの可能性を明示して
いた政策金利の見通しを中立に戻した。
7月会合からは本格的な政策修正に着手した。長期金利の上限の0.5%を「めど」とし、事実上1%に引き上げた。10月の決定会合では1%を一
定程度超えることを容認し、16年から続いたYCCをほぼ形骸化した。相次いで政策修正に踏み切った背景には、異次元緩和を続ける日本と
米国との金利差を要因とする円安もあった。
「異次元緩和は行き詰まっている」。黒田体制下でほとんど聞くことがなかった批判的な意見も日銀内で聞かれるようになった。「話をよく
聞く」という植田総裁のもとで、職員がより自由に発言しやすくなった気配がうかがえた。
海外でも「親しみやすい総裁」と受け止められた。ポルトガルで6月開かれた欧州中央銀行(ECB)フォーラムでは「(20年以上前に)自分が
審議委員だった時の政策金利は0.2?0.3%だった。それが今やマイナス0.1%」と英語で語り、「金融政策が効果を発揮するまで、少なくとも25年
の時を要するようだ」とジョークを放った。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長やラガルドECB総裁ら中銀首脳も笑みをこぼし、世界の中銀コミュニティーで存在感を高めた。
異次元緩和「設計役」も動く
24年に入ると、日銀の最高意思決定機関の政策委員会内で異次元緩和の解除が具体的に議論されるようになった。1月22?23日に開いた
金融政策決定会合の発言内容をまとめた「主な意見」では、「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」と金融正常化
へ手応えを示す声が多く上がった。
異次元緩和の設計役を担った日銀生え抜きの内田真一副総裁も地ならしに動いた。24年2月の奈良市内の講演で、マイナス金利解除後
の具体的な金融政策に言及した上で「(解除後)緩和的な金融環境を維持していくことになる」と市場に解除方針を織り込ませた。
3月会合前には追い風も吹いた。連合の集計で24年春季労使交渉の賃上げ率が33年ぶりの高水準となった。速報値でマイナス成長とな
り、「政策変更の冷や水」とみられた23年10?12月期の国内総生産(GDP)も改定値でプラス成長に上方修正された。政府・自民党内からも
大きな異論は出なくなっていた。
「普通の金融政策を行っていく」。異次元緩和の解除を決めた3月会合後の記者会見で、植田総裁は淡々と語った。ただ国債購入などで膨
れ上がったバランスシートを縮小させるメドはつかず、マイナス金利解除後に円安傾向はむしろ強まった。異次元緩和を手じまいした植田日
銀だが、試練はこれからも続く。
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・日銀、金融正常化へ一歩 総裁「緩和的な金融環境継続」
・マイナス金利解除、家計への影響は 専門家に聞く
2024/04/08 05:00 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁が就任し9日で1年になる。かなりの難事業とみられた「異次元緩和」の解体にこぎ着けたのは大きな成果だ。市場安定
を優先する姿勢が奏功したが、副産物として円安が進行した。この1年の円相場の下落率は13%(5日時点)に及び、変動相場制下の11人の
歴代総裁のなかで突出する。日本が長く苦しんだ円高の歴史は過去のものとなり、新たな「円安との闘い」を予感させる。
迷走しつつ10年も続いた黒田東彦前総裁時代の異次元緩和をどう幕引きするか。植田氏の課題は就任当初から明確だった。長短金利操作
(YCC)を昨年7月と10月の柔軟化で「骨抜き」にしたあと、マイナス金利政策の解除を周到な情報発信で市場に織り込ませた。3月、春季労使
交渉で歴史的な賃上げ率がまとまると、間髪入れずにYCC撤廃や上場投資信託(ETF)購入終了を含む枠組み全体の解除に踏み切った。
正常化を探るなかでも円安が継続
その過程でも続いたのが円安だ。1年目の下落率が大きくなったのには、黒田体制の最終盤、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ減速を織り
込むかたちで円が買い戻され、スタート地点が1ドル=132円台と円高ぎみになった影響はある。ただし植田氏が就任当初に「粘り強い緩和姿
勢」を強調し、円売りに安心感を与えたのも事実だ。
戦後の変動相場下の総裁を振り返ると、就任1年目で円が下落したのは植田氏に加え、森永貞一郎氏(在任期間1974?79年)、松下康雄氏
(94?98年)、黒田氏(2013?23年)のみ。森永氏は変動相場制移行後の円高が一服した時期、松下氏は「超円高」のピークとその後の急激
な反転局面にあたった。興味深いのは「2年で2%の物価上昇」を旗印に異次元緩和をぶち上げた黒田氏の1年目(7%下落)に比べても、正常
化を探った植田氏の下落率のほうが大きかったことだろう。
歴代10人の任期全体を通じた円相場の騰落をみると、ドル高是正を狙ったプラザ合意後の円の急騰局面に直面した澄田智氏(84?89年)を
筆頭に7人までが円高となった。変動相場下の日本経済が長い「円高との闘い」の歴史だったことを映す。円安組はプラザ合意前のドル高期だ
った前川春雄氏(79?84年)、金融不安による日本売りに遭遇した松下氏、そして10年間で28%の円安を記録した黒田氏だ。
円高に苦しんだ印象の強い白川方明氏(2008?13年)の任期中の円の上昇率は8%と小さいが、12年に安倍晋三元首相が再起をかけた自
民党総裁選で金融緩和によるデフレ脱却を打ち出し、先んじて円安に転じた影響が大きい。白川日銀は当初4年間に限れば26%の円高だ。
そう考えると、アベノミクスと黒田緩和による円安の威力の大きさがわかる。黒田日銀は当初こそ円安をテコに株高と景気押し上げを実現し
たが、日本経済の復活には至らなかった。輸入エネルギーへの依存の高まりと輸出産業の衰退で、円安がいくらグローバル企業の収益に
恩恵を与えても効果が内需全体に広く行き渡りにくい経済構造に変わったからだ。黒田日銀の終盤は円安放置という批判にさらされることに
なった。
YCCの修正時には円相場の急変動に対処する異例の姿勢を強調してみせた。
一方で異次元緩和の解除に際し、植田氏が円安を追い風として利用した節もうかがえる。経済界や政府は円安が物価高に拍車をかけている
とみて、陰に陽に日銀に対応を求めた。そうした空気に押されるかたちで、たいした摩擦もなく歴史的な政策転換を果たしたことは指摘できる。
円安けん制へと軸足を移行か
2年目の植田日銀は円安にどう向き合うのか。異次元緩和の解除時には短期の政策金利の調節を基本とする「普通の金融政策」への回帰
を打ち出し、焦点の利上げについて「当面は緩和的な金融環境を維持する」と強調した。この「ハト派寄りの金融引き締め姿勢」が、さらなる円
安を呼び込んだ。経済や市場の混乱を避けるため、円相場よりも債券市場の安定を優先したことを意味する。
この姿勢にも変化がみえる。植田氏は5日の国会答弁で「基調的な物価上昇率は徐々に今後高まっていくと考えている」と語った。3月には
「基調的な物価上昇率がもう少し上昇すれば短期金利の水準の引き上げにつながる」と述べており、追加利上げを意識したとみられる。緩和
解除後の債券市場の安定も踏まえ「為替よりも債券市場」という方針を微修正し、円安をけん制しようとする意図が感じられる。
では円安阻止のための利上げはありうるのか。賃金と物価の好循環が強まれば追加の利上げに動くだろうが、そうした環境が整う前に、円安
を阻止するために実行するハードルは低くない。保有国債の削減に着手する手はあるが、当面、利上げに関しては状況が整えば速やかに動く
と訴える「口先介入」にとどまるだろう。
ただし中東情勢の緊迫を背景に原油高が進むなか、円安によって海外発の物価高に再び弾みがつく可能性はゼロではない。心配なのは、
大幅な賃上げでも物価高に追いつかず、いつまでたっても実質賃金がプラスに転換しない事態だ。消費の低迷が続き、内需には下押し圧力
がかかる。
そんな状況で利上げをしたら、金利上昇と物価高のダブルパンチになる。それでも2%を上回る物価上昇がずっと続き、収束の見通しが立た
ないと判断すれば、景気後退も覚悟のうえで利上げに動かざるを得ないかもしれない。日銀としては最も避けたいパターンだろう。
交易条件の改善がどこまで続くか
こうした観点から重要になるのが、企業の輸出入を巡る採算の動向だ。黒田時代の末期、21年から22年にかけて貿易を通じた稼ぎやすさを
示す「交易条件(輸出物価指数を輸入物価指数で割った値)」が大きく悪化し、企業収益を傷つけた。
交易条件の前年同月比を簡易的に要因分解すると、この間、円安による影響はさほど大きくなく、主な悪化要因は外貨建て(契約通貨ベース
)の輸入価格の急上昇だった。国内の価格転嫁も輸入コスト高騰に追いつかず、企業の採算が悪化した。となると賃上げの機運も十分には高
まらない。円安はそうした厳しい状況の主犯ではないのに「円安悪玉論」「悪い円安論」が広がり、日銀を苦境に陥れた。
植田氏が就任した23年以降、交易条件は明確に改善に向かう。輸入物価の急騰が収まるなかで輸出物価が上向いたからだ。軌を一にする
ように、過去の輸入コスト増を国内の販売価格に転嫁する動きも進んだ。グローバル企業への円安効果もあって企業の賃上げ余力が高まり、
2年連続で歴史的な賃上げが実現した。賃金と物価に前向きな力が働いている以上、同じ円安でも黒田時代のようには日銀に批判の矛先は
向かいにくい。
ここ数カ月、円安は交易条件を押し下げる方向に作用しているが、その力は小さい。それよりも気になるのが、輸入価格の上昇収束による交
易条件の改善効果が弱まりつつある点だ。今後、原油高の再燃が21?22年のように交易条件を悪化させ、そこに円安加速が重なるようなら、
またぞろ「円安悪玉論」が浮上しかねない。為替の問題は引き続き政策運営の鬼門になりうる。
いずれにせよ「円安との闘い」の行方が、2年目以降の植田日銀の一つのカギを握ることだけは間違いない。
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2024/04/09 日本経済新聞 朝刊
日銀の植田和男総裁が就任して9日で1年たった。3月の金融政策決定会合では政財界との摩擦や市場の混乱なしに金融正常化へ一歩を
踏み出した。異次元緩和の手じまいを託された「学者総裁」の1年目は順調な滑り出しとなったが、緩和下で積み上がった「遺産」(植田総裁)
の処理はこれから始まる。
「金利のある世界は国民にとって幸せでしょうか」。約2カ月に1回、日銀本店で開かれる参与の会。植田総裁が参加者らに大きな「お題」を
投げかけたのは、2023年12月の金融政策決定会合が迫ったときだった。
参与は財界首脳や有識者ら10人。日銀の業務運営に関する重要事項について正副総裁や審議委員でつくる政策委員会の諮問に応じ、意
見も述べる。会には植田総裁のほか内田真一、氷見野良三両副総裁らも参加し、足元の経済情勢などについて意見を交わす。
「イノベーションこそがインフレをつくる」「長らくの低金利でゾンビ企業が生まれた」――。議論は熱を帯びた。参加者の一人は「民間企業の声
に耳を傾け、議論することで『金利ある世界』に向かうコンセンサスをつくりたいと感じた」と振り返る。
政府は23年2月に金融政策への理論的な知見を持ち、専門性と国際性を兼ね備えた人材として植田総裁に白羽の矢をたてた。学者らしい
振る舞いは日銀職員に安心感を与える一方、「政治と渡り合う胆力に欠けるのでは」との懸念もあった。
就任当初は黒田東彦前総裁の緩和路線を踏襲する意向を強調し、市場には「植田総裁はハト派ではないか」の見方も広がった。
この1年を振り返れば結果は逆だ。歴代まれにみる「決断した総裁」(日銀関係者)となった。
23年7月の決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)で長期金利の上限を引き上げると、同10月の再修正ではYC
Cを事実上、骨抜きにした。仕上げとなるマイナス金利解除を含め、政策変更は就任1年足らずで3回に及んだ。
「植田さんにはツキが味方した」。経済官庁幹部は振り返る。マイナス金利解除を決めた3月会合直前、連合が発表した24年春季労使交渉
の賃上げ率が33年ぶりの高水準となり、政策変更の決め手となった。
自民党安倍派も23年末に発覚した政治資金問題で解散を決め、所属していた議員も異次元緩和の幕引きに表だって異を唱えることはなか
った。
植田総裁は会食などの場で自説を披露するより質問することが多い。相手の話に最後まで耳を傾け、聞き終えた後に短めに自身の考えを口
にする。関心は政治や雇用、テクノロジー、健康法など幅広く、ときにユーモアを交えて場を和ませる。
国会答弁でも事務方が用意した想定問答を読み上げるのではなく、できる限り自身の言葉で語ろうと意識している。
23年12月には「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と答弁し、政策の早期修正を意識した市場が円高・ドル安に振れる場面
もあった。「(チャレンジングという言葉は)前から使っていたのに」と周囲に漏らしたという。
自分の言葉で語るスタイルは波紋を広げるときもあるが、政治家からは「誠実な人柄が感じられる」と好意的な評価が多い。
海外中銀トップとの親交も深まった。米連邦準備理事会(FRB)がホームページに掲載するパウエル議長の動静には、23年11月2日朝(日
本時間同日夜)に植田総裁と10分間電話で通話した記録が残る。当時は10月末の決定会合でYCC修正を決めており、関係者は「植田総裁
が修正内容を直接自分の言葉で説明したかったのだろう」とみる。
自民党の麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長はかつて日銀総裁の条件に「パウエル議長と直接電話して雑談から入れるような人」を挙げて
いた。財務官やアジア開発銀行(ADB)総裁を務めた黒田前総裁の存在感は大きかったが、植田総裁も海外中銀首脳と一対一で話せる関
係をすでに築いている。
兆円近い国債は金融正常化を進める過程で財務の悪化要因になり、70兆円規模に膨らんだ上場投資信託(ETF)の処分のメドは立っていない。
「インフレ率が2%近傍で推移することが、ゼロより良いこととは何でしょうか」。23年12月、日銀が主催した非公開の会合で参加者が驚く場
面があった。植田総裁自ら、政府・日銀が掲げる「物価2%目標」の妥当性を問う問題設定をしたと受け止められたためだが、「純粋に学者として
の問いだった」(参加者)。
前提を根本から覆すような問いを投げかけつつ、議論を呼び起こして解決策を探るのが植田流だ。「反対なのか賛成なのか分からないことが
ある」。数十年来の知人は語る。限界まで考え続ける植田総裁は今後、金融正常化への道を探ることになる。
【図・写真】植田総裁は歴代まれにみる「決断した総裁」となった
2024/04/10 日本経済新聞 朝刊
日銀の植田和男総裁は9日、参院財政金融委員会で半年間の金融政策の概要を報告した。今後について「(物価上昇率から一時的な変動
要因を除いた)基調的な物価の上昇率が上がる中で緩和の度合いの縮小も考えないといけない」と述べた。データ次第での追加利上げに含み
をもたせた。
植田氏はマイナス金利政策を解除した後の金融政策について「基調的な物価の上昇率はまだ2%を下回っていて、緩和的な金融状態を維持
することが大切だ」と話した。「見通しどおりに2%に向けて上がっていけば、金融緩和を少し弱める判断も可能だ」と言及した。
基調的な物価上昇率については「向こう1年半~2年の間に向けて上昇していくと考えている」と語った。「インフレ率が我々の見通しに対し大
幅に下振れするリスクはだいぶ低くなってきたとみている」と明かした。
日銀が保有する上場投資信託(ETF)の縮小策について問われ「様々な検討はしているが、具体的なコメントは控える」と答えた。「すぐに処分
するとは考えていない。今後、処分するのかしないのか、する場合どういうやり方を取るか、少し時間をかけて検討したい」と説明した。
2024/04/11 07:05 日経速報ニュース
外国為替市場で円安・ドル高が加速している。10日のニューヨーク市場で円相場は一時1ドル=153円24銭と1990年6月以来およそ34年
ぶりの安値をつけた。3月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を超えて伸び、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始が先送りされる
との見方から円売り・ドル買いが活発になっている。
日本政府・日銀は円買いの為替介入を示唆することでけん制姿勢を強めてきたため、市場では152円が「防衛ライン」としてみられてきた。
だが、この水準を割り込んでも今のところ円買い介入が実施された様子はなく、円相場は節目らしい節目が見当たらず下値を模索する展開
となっている。円相場の主な節目は以下の通り。
【対ドル相場の主な節目】
・160円35銭 1990年の安値(90年4月2日)
・159円60銭 90年5月の安値
・155円77銭 90年6月の安値
・154円82銭近辺 ボリンジャーバンド(21日移動平均基準、3σ=シグマ)の円の下限
・153円53銭近辺 ボリンジャーバンド(21日移動平均基準、2σ=シグマ)の円の下限
★153円24銭 10日のニューヨーク市場でつけた安値
・152円02銭近辺 一目均衡表(日足)の転換線
・151円94銭 政府・日銀が円買い介入を実施した22年10月21日の安値(22年の安値)
・150円97銭近辺 21日移動平均線
・150円 心理的節目
・149円86銭近辺 一目均衡表(日足)の基準線
・149円70銭 政府・日銀が円買い介入を実施した22年10月24日の安値
・147円14銭近辺 200日移動平均線
・145円90銭 政府・日銀が円買い介入を実施した22年9月22日の安値
・145円 心理的節目
・144円10銭 日米が円買いの協調介入をした98年6月17日の安値
・140円40銭 大企業・製造業の24年度通期の想定為替レート(24年3月短観)
・135円20銭 日銀の黒田東彦前総裁が財務官だった02年1月31日につけた安値
・133円台後半 98年4月9?10日に円買い・ドル売り介入を実施した際の水準
・127円22銭 23年の高値(1月16日)
・121円70銭 日銀がマイナス金利の導入を決めた後につけた安値(16年1月29日)
・118円66銭 16年11月の米大統領選後につけた円の安値(12月15日)
・113円47銭 22年の高値(1月24日)
・101円18銭 コロナショック後の高値(20年3月9日)
(注)チャート上の節目は11日早朝時点。一部データ元はLSEG。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-11/SAD0ALT0G1KW00
長期金利が昨年11月以来となる0.8%超えの水準に上昇した。日本銀行の追加利上げ観測が高まっている上、米国の長期金利が消費者
物価指数(CPI)の上振れを受けて大幅に上昇したため売りが優勢となっている。
11日の債券市場で長期金利の指標となる新発10年国債利回りは0.83%と、2023年11月14日以来の高さになった。
日銀が3月に17年ぶりの利上げに踏み切った後も金融緩和環境を継続していることから長期金利の上昇は鈍かったが、ここにきて追加利
上げを織り込む形で水準を切り上げてきた。世界が日銀の一挙手一投足を注視しており、長期金利上昇は投資マネーの国内回帰を促す大
きな転換になる可能性がある。
日銀の植田和男総裁は先週の朝日新聞とのインタビューで、2%の物価目標達成に向けた「確度」がさらに高まれば、追加利上げを検討
する考えを表明した。植田総裁は10日の国会では、円安進行で輸入物価が大幅に上昇し基調的物価が2%を超えて上昇するリスクが高ま
る場合、「金融政策の変更も考えないといけない」との見解を示した。
外国為替市場の円相場は、10日に発表された3月の米CPIを受けて一時1ドル=153円台に下落し、約34年ぶりの安値を更新。日米の
金利差を意識した円売りドル買いが止まらず、トレーダーが警戒する為替介入レベルに突入した。日銀は好調な賃上げなどを受け、今月の
金融政策決定会合で24年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しの上方修正を議論する公算が大きいという。
2024/04/11 09:13 日経速報ニュース
11日朝方の国内債券市場で、長期金利が大きく上昇(債券価格が下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.035%高い
0.830%と、2023年11月上旬以来5カ月ぶりの高水準をつけた。3月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る伸びとなり、米利下げ
観測が一段と後退。外国為替市場での急速な円安進行が日銀に追加利上げを促すとの見方も国内債の売りを促した。
10日発表された米CPIの上昇率は前年同月比3.5%と市場予想を上回った。変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数の上昇率も
市場予想を超え、インフレが長期化するとの見方が強まった。米連邦準備理事会(FRB)の6月利下げは難しいとの見方から米長期金利は
一時4.56%と23年11月中旬以来の高水準をつけ、国内金利の上昇圧力となった。
10日のニューヨーク外為市場では円相場が一時1ドル=153円台前半まで下落し、1990年6月以来およそ34年ぶりの円安・ドル高水準を
つけた。円安に伴う輸入物価の上昇が国内のインフレ率を押し上げる可能性がある。日銀が2%の物価目標実現の確信を深め、円安進行
を阻止する意味でも追加利上げに動くとの思惑が高まりやすいのも国内債の売りにつながった。
債券先物相場が大きく下落した。中心限月の6月物は前日比37銭安の144円75銭で寄り付いた。その後は一時144円65銭まで売られ、
中心限月としては23年12月以来の安値をつけた。短期金融市場では大阪取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月
である6月物は取引が成立していない。
2024/04/19 日本経済新聞 朝刊
日銀がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切ってから19日で1カ月になる。預金などの金利上昇は小幅で「金利ある世界」
に対し、企業や個人は冷静にそろり対応している。ただ外為市場では、日銀の利上げにもかかわらず円安・ドル高が進行する「想定外」の展開と
なっている。
日銀のマイナス金利解除後、金融機関は相次いで預金金利を引き上げた。三菱UFJ銀行などが先んじて普通預金金利を0.001%から0.0
2%に引き上げた。地銀は17日時点で全99行が追随し、普通預金金利を引き上げた。
明治安田生命保険が企業年金の予定利率を2025年4月に年1.25%から1.30%へ実質的に引き上げるなど、銀行以外にも影響が広がり
つつある。
多くの銀行が支店を評価する項目に預金の増量を加えるなど、あまり力を入れてこなかった預金の獲得に乗り出している。ただ現段階では「普
通預金の金利を上げても預金量が大きく伸びているわけではない」との声が多い。
金利が上がると返済の負担が重くなる住宅ローン。みずほ銀行の担当者は「繰り上げ返済など金利上昇を見越した動きは現時点で限定的」と
話す。マイナス金利の解除が決まっても「今後の金利負担を心配するコールセンターへの入電は数十件程度にとどまった」という。
金利上昇を懸念する企業は、変動金利の借り入れを足元の金利水準で固定化する金利スワップを活用する。それでも大手行の営業担当者は
「目立って利用が増えているわけではない」と明かす。
この担当者は「金利の見通しを尋ねられると思っていたら、むしろ為替を懸念する声が多くて驚いた」と語る。とりわけ卸売業など海外からの輸
入に頼る企業は、金利上昇より円安がいつまで続くのかに神経をとがらせる。
マイナス金利解除前日の3月18日には1ドル=149円台だった。マイナス金利の解除で為替市場は円高に動くとの見方が強かったが、1カ月
間強で約5円も円安が進み、15日には154円台まで下落し、34年ぶりの安値を更新した。
日銀が「当面緩和的な金融環境が続く」(植田和男総裁)という姿勢を強調しているのに対し、米景気が底堅くインフレの鈍化も緩やかなため、
米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測が後退している。このため、日銀のマイナス金利解除でも日米の金利差が縮まらないとの見方
が円安進行につながっている。
財務省・日銀による為替介入観測も強まっているが、抜本的な解決策にはならない可能性がある。円安が経済物価情勢に無視できない影響
を与える状況になれば「金融政策の対応をもちろん考える」(植田総裁)。
為替政策は日銀の所管ではないが、動向を注視している。植田総裁は9日の国会答弁で一般論としながらも「金融政策は為替レートを決める
ファンダメンタルズ(基礎的条件)の一つだと認識している」と説明した。
大幅な円安で、輸入物価の上昇が加速する可能性もある。中東の地政学リスクの高まりから原油価格にも上昇圧力がかかる。「先行きの物価
見通しを引き上げ、追加利上げを後押しすることになる」(野村総合研究所の木内登英氏)
日銀がマイナス金利を解除して以降、金融政策の影響を受けやすい2年債金利は足元で0.28%台に上昇し、09年10月以来の高さとなった。
足元の翌日物金利スワップ(OIS)市場では、7割程度の確率で7月に日銀が追加利上げに動くと予想している。
住信SBIネット銀行は17日、短期融資の基準となる短期プライムレート(短プラ)を0.1%引き上げて1.775%にすると発表した。
日銀が追加利上げに動けば、大手銀行(現在1.475%)も短プラを引き上げる可能性が高い。個人の住宅ローンの変動金利や中小企業向け
の融資金利の基準となっており、「国民の生活に影響が出てくる」(財務省幹部)。このため、次の利上げはマイナス金利解除とは別の難しさが
ある。
金利の先高観を受け、新株予約権付社債(転換社債=CB)の発行に動く企業が増えている。CBは一定の条件で株式に転換できる権利が付
いた社債だ。このオプションがあるため、一般的に利率は普通社債より低くなる。英LSEGによると、今年1~3月の発行額は約4500億円と04
年以来の高水準だった。大和ハウス工業は1月に2000億円の発行を決めた。
日銀は追加利上げを急がない方針だ。「利上げの工程表があるわけではない。データを確認しながら、景気の基調を見極めていく」(関係者)。
為替は注視しているが「円安が進んだから利上げに動くわけではない」(同)。円安が物価上昇をもたらしたとしても、日銀が重視する基調的な
物価を押し上げているとはいえないとの見方だ。
FRBの利下げ観測が後退し、長期金利が約5カ月ぶりの高水準に上昇している。為替動向次第では市場が追加利上げを催促するように長期
金利が上昇する可能性もある。
2024/04/19 20:35 日経速報ニュース
国債の値動きを分析すると、市場関係者が見込んでいる物価予想をはじくことができる。今後10年間の物価上昇率の予想が15?16日には
年1.499%まで上昇してきた。過去10年間ではみられなかった水準だ。円安や賃上げが物価の先高観を生んでいる。
国債には物価が上がると元本と利息が増える物価連動債がある。償還日など条件が同じ一般の国債と物価連動債の利回りの差には、売
買する投資家の物価予想が反映されており、「ブレークイーブン・インフレ率(BEI)」と呼ばれる。
BEIは23年末には1.1%台で推移していた。3月末には1.3%台まで上昇したのち、4月に入って1.5%近くまで急速に上げ幅を広げている。
理論的には予想インフレ率は実際のインフレ率に影響を及ぼす。米連邦準備理事会(FRB)などの中央銀行が金融政策を決める際の参考
情報となる。日本でも、海外市場のようにBEIが中銀の政策を読み解くうえでの重要指標になる局面が来たようにみえる。
もっとも、そう言い切れない面がある。日本の物価連動債は投資家層が限られているため流通市場での売買が低調なことだ。財務省の会
合では証券会社から「一部の海外勢からは新規投資が見られるものの、裾野拡大とは言いがたい状況だ」との指摘もあった。
日本でもインフレが定着すればインフレをヘッジ(回避)する手段として物価連動債の需要が高まり、市場拡大につながる可能性もある。BEI
が指標として成長するかどうか注目される。
2024/04/21 日本経済新聞 朝刊
【ワシントン=新井惇太郎】日銀の植田和男総裁は米ワシントンで19日、「基調的な物価の上昇が続けば、金利を引き上げる可能性が非常に
高くなる」と述べた。長期国債の買い入れ減額については「どのようなタイミングで、どのようなスピードで減らすかは時間をかけて検討し判断し
たい」と語った。
マイナス金利政策を含む大規模緩和の解除など日銀による最近の金融政策の変更をテーマに、米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポ
ーゼン所長と対談した。同研究所は定期的に政策立案者や有識者を呼び対談イベントを開催している。
日銀は3月にマイナス金利を含む異次元緩和策を解除した。今後の金融政策運営では、賃金上昇を通じて物価が基調的に上昇するかを見極
めようとしている。最近の円安が輸入品価格の上昇を通じ、国内の物価に与える影響も分析する方針だ。
植田氏は日本のこれまでの金融政策の教訓について「物価が上がらないという期待が定着すると、経済はその均衡から抜け出すのが難しく
なる。そのような状態に陥らないようにするのが最善だ」と語った。
2024/04/22 09:13 日経速報ニュース
22日朝方の国内債券市場で長期金利が上昇(債券価格が下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.015%高い0.860%
をつけた。中東情勢の緊迫感がいったん和らいだのに加え、日銀による早期の追加利上げ観測が意識されて長期債には売りが優勢となった。
21日にはイラン最高指導者のハメネイ師が19日のイスラエルによるとみられる攻撃への報復などは言及しなかったと伝わった。イラン側が再び
報復し、中東情勢が一段と緊張感を増すとの警戒が後退した。前週末に日経平均株価が急落するなか、相対的に安全な資産として買われてい
た債券には売りが出た。
日銀による追加利上げ観測も金利の上昇圧力となった。19日には日銀の植田和男総裁が米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン
所長との対談で「基調的な物価の上昇が続けば、金利を引き上げる可能性が非常に高くなる」と語った。25?26日に開く金融政策決定会合で
物価見通しを上方修正するとみられるなか、早期の追加利上げが意識されて国内債相場の重荷となった。
超長期債にも売りが優勢で、新発30年物国債の利回りは前週末比0.015%高い1.900%をつけた。債券先物相場は大幅に反落し、中心限月
の6月物は前週末比35銭安の144円32銭で寄り付いた。
短期金融市場では大阪取引所で無担保コール翌日物金利(TONA)先物の中心限月である6月物は取引が成立していない。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-22/SCBSUWT0G1KW00?srnd=cojp-v2
市場は利上げ前倒し意識、展望リポートの物価見通しとリスクに関心
国債買い入れ減額にも関心、「円安けん制の次の一手に」-野村証
日本銀行は今週の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決めるとみられている。34年ぶりの水準まで円安が進行する中
植田和男総裁の記者会見などで追加利上げに向けたタカ派的な発信があるかが市場の関心事の一つになっている。
ブルームバーグが12-17日に実施したエコノミスト調査では、日銀が25、26日に開く会合について、ほぼ全員が金融政策の据え
置きを予想した。次回の利上げ予想は10月会合が最多の41%となっているが、リスクシナリオでは最も早いタイミングとして52%が
7月と回答した。
日銀は3月会合で17年ぶりの利上げなどを決め、大規模緩和から転換。当面は緩和的な金融環境が継続するとしたが、利上げ後
も根強い円安圧力を背景に、市場では追加利上げの前倒しリスクが意識されている。円安が物価の基調に影響すれば政策変更の
理由になり得るとする植田総裁の発言もあり、今回は総裁会見や声明文、新たな物価見通しとリスク動向から今後の政策展開の
手掛かりを探る会合となりそうだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-24/SCDR34T1UM0W00?srnd=cojp-v2
政策は現状維持の公算大、展望リポート基準に追加利上げの時期探る
円は対ドルで34年ぶり155円台、円安対応で国債購入減額との見方も
日本銀行が26日に結果を発表する金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が見込まれている。34年ぶりの水準にある円安の影響を
含めてインフレ圧力が意識される中、新たな経済・物価見通しと植田和男総裁の記者会見から追加利上げや国債買い入れなどの政策展開の
ヒントを探ることになる。
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/VZK6SLY3QJJDXPSLXLPKT4NHNU-2024-04-25/
時事通信 経済部2024年04月26日07時58分配信
日銀が26日に開く金融政策決定会合の2日目の議論で、国債買い入れ縮小の方法を検討することが25日、明らかになった。3月にマイナス
金利政策の解除など大規模緩和の正常化に踏みだしたが、国債買い入れについては減額を見送っていた。縮小すれば、日銀が保有する国債
の償還ペースは、新規買い入れを上回ることになりそうで、国債保有残高を減らしていく事実上の量的引き締め局面へ移行することになる。
大手生保、国債投資で判断割れる 日銀利上げ見極め―24年度運用計画
日銀は3月に17年ぶりに利上げに踏み切った。しかし、国債の大量購入を続けて潤沢にマネーを供給する金融緩和環境を維持しているため
外国為替市場で円安が進む一因となっている。
3月に政策変更を決めた際の声明文で、日銀は国債について「これまでとおおむね同程度の金額(月間6兆円程度)で買い入れを継続する」と
明記。実際の買い入れは、市場の動向や国債の需給を踏まえて実施していく方針を示していた。
25日に始まった今回の会合では、3月に決めた国債買い入れ方針の下で、実際に購入額を縮小していく方策を議論。日銀が公表している月
間の国債購入予定額(約5兆~7兆円)についても、引き下げを含め見直す可能性がある。
長期金利は、3月の政策変更後も比較的安定的に推移している。4月から国債入札が減額されたこともあり、日銀は今後買い入れを多少減ら
しても金利の急騰は避けられると判断しているもようだ。3月に長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作を撤廃したことを踏まえ、金利の形
成をより市場に委ねる狙いもある。
2024/04/26 14:39 日経速報ニュース
外国為替市場で円安・ドル高が加速している。26日には円相場が約34年ぶりに1ドル=156円台に下落した。この日まで開かれた金融政策
決定会合を受け、歴史的な円安を是正するために日銀が「タカ派」に傾くとの思惑が肩透かしに終わり円売り・ドル買いに拍車がかかった。日
銀は円安対策を円買いの為替介入に委ねた格好だ。
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26日午後の東京市場で円は一時156円21銭近辺まで売られ、1990年5月以来の円安・ドル高水準をつけた。円安は対ドルだけにとどまらな
い。対ユーロでは1ユーロ=167円48銭近辺と08年8月以来の安値を更新。対オーストラリア(豪)ドルでも1豪ドル=102円台と14年以来の安
値圏で推移するなど円は全面安の様相を呈している。
歴史的な円安に歯止めをかけるため日銀が一段の正常化に動くのではないか――。今回の決定会合ではこんな思惑が実現することはなか
った。日銀は政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0?0.1%で維持。減額が噂された国債買い入れについては「3月に決定
された方針に沿って実施する」と説明した。
あわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では「当面、緩和的な金融環境が継続する」とも説明。日米金利差がドライバーと
なっている円安・ドル高を止めるため、日銀が政策正常化の歩みを進めるとの市場の見方に反し、「追加利上げに対する明確なヒントはなかっ
た」(三菱UFJ銀行の井野鉄兵氏)といえる。
2%の物価安定目標の実現にまい進する日銀が対応を見送ったことで円安に歯止めを掛けるのは財務省など日本政府側に責任が委ねられ
た形になる。しかし、市場では円買い介入で円安・ドル高が止められるかどうかに懐疑的な声はなお多い。
ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融氏は「足元の円安・ドル高は、米連邦準備理事会(FRB)による利下げが後退するなかでの『ドル
高』の面が強い」と指摘する。たとえ介入で一時的に円相場を押し上げたとしても、大きく開いた金利差を頼りにした円売り・ドル買いが根強く
「介入は効かないと露呈しかねない」と懸念する。
イエレン米財務長官は25日、ロイター通信のインタビューで足元のドル高について「米経済の強さと金利の高さ」を反映したものだと説明。為
替介入は「極めてまれで例外的な場合に限る」とクギを刺しつつ、米政府としては積極的にドル高を是正しない考えだ。
ドルの買い意欲の高さはあちこちで聞かれる。BofA証券の山田修輔氏は最近の面談を踏まえ、ヘッジファンドなど海外投資家が「ほぼドルに
強気の姿勢だが、まだ買ってはいない」と話す。東京市場では「中小企業を中心に輸入企業は開店休業状態」(国内銀行の為替担当者)だと
いい、ドル資金の手当てが追いついていない国内の実需筋も一定数いるとみられる。
26日午後には日銀の植田和男総裁が記者会見に臨む。さらなる円安進行を受けて追加利上げの思惑を強めるような発言をすれば円買い
・ドル売りが活発となる可能性は残り、もちろん日本の通貨当局が日銀総裁の会見が終わるとともに円買い介入を実施する22年9月の再来を
見込む声はある。しかし、ドル高という要因が変わらないなかでは円相場が上昇したとしても短命に終わりそうな気配だ。
2024/04/27 日本経済新聞 朝刊
日銀は26日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、最近の円安進行について基調
的な物価動向に大きな影響が生じれば「政策の判断材料になる」と語った。物価への影響を見極める姿勢も示したが、外国為替市場では早期
利上げにつながるような発言がなかったとの見方から一時、円売り圧力が強まった。(関連記事総合2、総合4面に)
日銀は政策金利を0~0.1%程度(無担保コール翌日物レート)に据え置き、追加利上げを見送った。
同日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート=総合2面きょうのことば)」では、消費者物価指数(CPI)の前年度比上昇率は変動の大
きい生鮮食品を除いて24年度は2.4%から2.8%、25年度も1.8%から1.9%に引き上げた。初めて示した26年度は1.9%と見通した。
金融政策の現状維持が予想されていたことから、市場参加者は植田総裁による記者会見での発言に注目していた。記者会見では、円安進行
やその影響に関する質問が集中した。
植田総裁は「金融政策は為替レートを対象にしていない」との立場を明確にしたうえで「円安で(一時的な変動要因を取り除いた)基調的な物価
上昇率に無視できない影響が発生すれば政策の判断材料になる」と述べた。
一方で最近の円安について「基調的な物価上昇率への大きな影響はないと判断した」と話した。影響は無視できる範囲だったかと問われ「は
い」と答えた。そのうえで今回利上げを見送った理由を「基調的な物価上昇率は2%を下回っている。3月から4月にかけてはっきり高まったとは
考えていない」と説明した。
日銀は追加利上げの時期について、基調的な物価上昇率が2%に達する可能性が高まっていくか見極めたうえで判断する方針だ。
今後の金融政策を巡っては「賃上げがサービス価格にどう反映されるか。円安や原油高に伴う輸入価格の上昇が広い物価の水準にどう影響
していくか。今後の賃上げの展開を見つつ、基調的な物価上昇率の動きを判断する」との考えを示した。
植田総裁は「基調的な物価の上昇率が見通しに沿って上昇すれば政策金利を引き上げる」とも話した。
ただ市場では、植田総裁が「当面は緩和的な金融環境が続く」と発言したことなどから日米金利差が開いた状態が長期化するとの観測が強
まり、記者会見中に円売りの勢いが増した。
国債の買い入れについては、声明文で「3月会合で決定された方針に沿って実施する」と明記し、現状維持となった。
日銀は3月会合でマイナス金利政策を含む大規模緩和を解除し、17年ぶりの利上げとなった。
2024/04/27 07:49 日経速報ニュース
植田日銀が26日の金融政策決定会合で政策金利を据え置き、国債の購入方針も変えなかった。何らかの円安への対応に期待していた市場
は「ゼロ回答」を吹聴し、一段の円売りに走った。だが、円安騒ぎの陰で日銀は連続利上げに向けた布石を着実に打っている。向こう2?3年を
メドに1?2%の利上げすら示唆してみせた。
円安騒ぎがなかったら、市場はむしろ植田日銀の「タカ派ぶり」に驚いていたかもしれない。仮に円安で追い込まれたふりをしながら金融政策
の正常化への舞台を整えているのだとしたら、かなりの高等戦術と言えまいか。
「基調的」を巡るすれ違い機に158円台
「基調的な物価上昇率」という言葉の分かりにくさが、すれ違いと混乱を呼び込んだのかもしれない。26日のニューヨーク外国為替市場で円相
場は1ドル=158円台前半まで下落した。
植田和男総裁は18日のワシントンでの記者会見で、円安について「基調的な物価上昇率に影響を与えるという可能性はありうる」と前置きした
うえで、「無視できない大きさの影響が発生した場合は、場合によっては金融政策の変更もありうる」と語った。「基調的」という言葉に注意を払わ
なかった市場関係者は、円安に対応した利上げを視野に入れていると解釈した。
そして今回の決定会合。
「仮に基調的な物価上昇率に無視し得ない影響が発生するということであれば、金融政策上の考慮、あるいは判断材料になる」
「基調的な物価上昇率に、ここまでの円安が今のところ大きな影響を与えているということではない」
植田氏は会見で、ワシントンでの発言の意味するところを詳しく解説した。ところが説明をすればするほど、「円安に金融政策で直接対応するつ
もりはない」という日銀にとっての「正論」がクローズアップされ、円売り勢を勇気づける結果となった。
植田氏が会見で何度も言及した「基調的」という言葉は、一時的な要因を除いた、長い目で見た「物価の実力」のこと。表面上の物価上昇率は
目標の2%を超える期間が続くが、基調はまだ2%を下回るとみている。
円安は、まずは輸入物価を押し上げ、国内で価格転嫁が進むにつれ、消費者物価に上昇圧力をかける。日銀が「第1の力」と呼ぶものだ。次に
、この物価高の圧力が賃金上昇に波及すれば、国内需要に根ざす「第2の力」が働き始める。やがて賃上げが今度は物価を押し上げ、賃金上昇
を伴う緩やかな物価上昇が自己回転する「好循環」につながる。このメカニズムによって動くのが、基調的な物価上昇率だ。
つまり円安という要素は、最終的に好循環のさらなる進展をもたらし、基調的な2%の物価上昇の定着に向けて寄与していると確信できて初め
て、利上げの判断に関わってくる。円安が金融政策を動かすとすれば、そんな回りくどい道のりになる。「円安が進んでいるせいで消費者の生活
が大変だから、物価高を止めるために利上げをする」と言っているわけではない。
利上げシナリオの「本丸」は円安にあらず
気をつけたいのは、日銀が実際に見据える「本丸」の利上げシナリオは、必ずしも円安とは直接の関係がないことだ。円安の影響に配慮する
姿勢をみせつつも、日銀が金融政策の「次の一手」の機を探るうえで決定的に重要だとみているのは、今回の円安よりも前からすでに進み始め
ている好循環の見極めだ。
今年の春季労使交渉では大企業を中心に歴史的な賃上げがまとまりつつある。中小企業への波及がしっかりとみえ、人件費増が適正に販売
価格へと転嫁される流れが確認できれば、好循環が続く確度が高まる。追加の利上げは十分に正当化される。
ここに円安の影響が加わると、好循環の起点である第1の力に、もう一回、上向きの力が加わる。うまくいけば賃金上昇に「プラスアルファ」の
効果があるかもしれないが、本丸である好循環の見極め作業のなかでは、主役ではない。
安に背中を押された構図を演出しながら、本丸の利上げに向けた布石を打とうとしたのか。考えられる経路を客観的に語ったまでだと日銀関係
者は深読みを制するが、ひょっとしたら両方を狙ったのかもしれない。
それよりも注目すべきなのは、日銀が円安は関係なく、基調的な物価上昇率が2%に上向いていく可能性に自信を示したことだ。
今回から2026年度まで予測期間を延ばした「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、基調的な物価上昇率が「見通し期間後半には『物
価安定の目標』とおおむね整合的な水準で推移する」と判断を進めた。
植田氏は会見で、その意味するところを踏み込んで語った。
「基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考え
ている」
そのうえで、利上げの終着点に関して重要な示唆を示した。
「とくに見通し期間後半について、この(見通し)通りの姿になっていくということであれば、政策金利は、ほぼ中立金利の近辺にあるという状態
にあるんだろうなという展望は持っている」
中立金利とは、現在の日本経済にとってちょうどよい、「景気をふかしも冷ましもしない政策金利」のことだ。植田氏は「中立金利の水準につい
てかなりの不確定性がある」としつつ、「なるべく早い期間にもう少し絞るという作業を続けたい」と語った。しかも「少しずつ金利が上がっていく際
に、それに対して経済がどういう反応を示すかということに関する情報が非常に重要になる」とも言及し、連続的な利上げのなかで中立金利を探
っていこうとする姿勢をみせた。
中立金利は「1.1?2.4%」を想定?
植田氏の頭にある数字を類推しよう。日銀の企画局が昨年12月の多角的レビューのワークショップで示した内外5つの推計によると、実質値
でみた中立金利は「マイナス1.0%からプラス0.5%」の範囲内にある。
日銀内からは、もう少し狭く「マイナス0.4?プラス0.4%」という相場観も聞かれる。この推計は23年1?3月期が最新値。現時点で改めて推計
すれば、もっと高まっている可能性もあるようだが、保守的にみて「0%」と置いてもおかしくはないだろう。
名目の中立金利を導くには、ここに予想インフレ率を加える必要がある。予想インフレ率は今回、植田氏がヒントを出している。家計や市場、企
業のデータを加重平均した値は「少しずつ上昇を続けてきていて、まあ1%台半ばくらいにあるのかな」という。
だとすれば、現時点では1.5%前後。予測期間の後半にかけては2%程度で固定(アンカー)されるとみられるので、「1.5?2.0%」の間ということ
だろう。
この結果、名目の中立金利(実質金利+予想インフレ率)は、広くとれば「1.1?2.4%」ということになる。もちろん日銀の公式見解ではないが、
植田氏がこの範囲から「もう少し絞る」意向を持っているという推論は一応成り立つ。
26年度までの見通し期間の後半に政策金利が中立金利に到達するとみているとすれば、向こう2?3年に4?9回ほどの利上げを実施する計
算になる。いくら今回の円安がインフレ圧力の強い米国発のものだとはいえ、市場がこのシナリオを完全に織り込めば、日米金利差もさすがに
縮小しそうだ。今回もっと強調していれば、円安けん制の材料として、明確な「タカ派パワー」を持ったかもしれない。
もちろん計画がこの通りに進む保証はないが、円安に追い込まれたように見える構図のなかで植田日銀が着々と練る利上げ計画にも注意を
払ったほうがよいだろう。
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2024/04/30 19:40 日経速報ニュース
市場参加者の間で30日、政府・日銀が29日に5兆円規模の円買い介入を実施したとの観測が広がった。日銀が30日発表した5月1日の当座
預金残高の見通しによると、29日の為替介入を反映する「財政等要因」による減少額が7兆5600億円で、為替介入を反映していない市場の当
初予想とずれが生じたためだ。
為替介入は財務省が判断し、日銀が実行する。円買い介入を実施すると、民間金融機関が日銀に預ける当座預金から円が国庫に移動し、
当座預金が減少する。決済は一般に2営業日後になるため、29日の介入が5月1日の残高に反映される。銀行間の資金のやりとりを仲介する
短資会社の予想(2兆500億?2兆3000億円減少)との差額が介入の実施額と推測できる。
29日は円相場が一時1ドル=160円まで急落した後、154円台まで円高が進んだ。断続的な円買いが続いたことで、市場では為替介入との
観測が強まった。財務省の神田真人財務官は30日、介入の有無について「私から申し上げることはない」と語った。
日銀が公表する当座預金残高の見通しを使う推計には誤差もありうる。財務省は1カ月ごとに為替介入の実績を公表している。介入を実施
したかどうかは、5月31日に公表される、4月26日から5月29日分の合計介入額で正式に明らかになる予定だ。
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2024/05/03 日本経済新聞 朝刊
日銀が2日公表した3月の金融政策決定会合の議事要旨で、今後の国債の買い入れ額について複数の政策委員が「上下に多少の変動幅を
もつ形で柔軟に決めていくべきだ」と指摘していたことが明らかになった。このうち一人は「例えば上下に1兆~2兆円程度の幅が適当」との見解
を示した。
日銀は3月会合で長期金利を低く抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃し、国債買い入れは「これまでとおおむね
同程度の金額」で続けると決めた。声明文の脚注で「足もとの月間買い入れ額は、6兆円程度」とも示したが、既にこの3月会合で委員の間で
将来の減額を見据えた議論が起きていた。
複数の委員が「将来的にはどこかのタイミングで国債の買い入れを減額し、保有残高も償還に伴い縮小させていくことが望ましい」と指摘した。
異次元緩和下での買い入れで国債保有割合(国庫短期証券を除く時価ベース)は発行残高の過半に達する。市場流動性の低下といった副作
用の懸念から減額を求める声が出ているようだ。
その一方、複数の委員が「流動性の回復過程で、経済・物価情勢の変化を受けて長期金利のボラティリティー(変動率)が高まりやすくなる」
とし、国債買い入れを当面続けて金利急騰に備える重要性を強調した。
「急激な市場変動を避ける観点から時間をかけて対応することが適当だ。その間に債券市場の参加者が拡大することを期待する」との意見も
あった。
日銀によると、3月の買い入れ実績は5.9兆円、4月は5.8兆円だった。3月会合後に公表した買い入れ計画では4~6月は月あたり計4.8
兆~7兆円の範囲内で購入するとしている。市場からは下限の規模の購入額が続けば、宣言なく緩和を縮小する「ステルステーパリング」になる
との見方がでている。
2024/05/20 05:00 日経速報ニュース
「日銀は円安圧力を緩和してほしい」「円安による過度な物価上昇も懸念されるなか、政府・日銀は適度な物価上昇の実現を」――。岸田文雄
首相と植田和男日銀総裁がそろって出席した10日の経済財政諮問会議。民間議員から日銀に為替に絡めた注文が相次いだ。
発端は植田氏による4月26日の金融政策決定会合後の記者会見だ。いまの円安について、基調的な物価上昇率への影響を無視できる範囲
だとの見解を示した。これが円安容認発言ととられて円相場は1ドル=160円まで急落し、数兆円規模の為替介入を引き起こしたとみられている。
安倍・菅政権で官邸官僚と呼ばれた人物は「日銀に独立性があるとはいえ擦り合わせなくあの発言をしたとすれば、普通は責任問題だ」と断
言する。諮問会議に参加している経済官庁のトップも「日銀は対話ができていない」と評した。
3月までは日銀のやり方に公然と文句をつける動きはなかった。「国会議員の大半が『日銀でうまくやってくれ』という思いだった」(財務省幹部)。
緩和的環境の維持を求めながら金融政策の正常化は黙認した。
その後しばらく市場が安定したことで「日銀は万能」との期待度を高めてしまったのかもしれない。4月中旬、ある閣僚経験者は日銀幹部から
「米国がここまで利下げできない環境になると思っていなかった」との説明を受け、周囲に「日銀が利上げして円安・物価高に対応するのだろう」
と漏らした。
その後、日銀発ともいえる円急落で経済再生を売りにする政権のスタンスは変わった。3泊6日の海外訪問を終えた直後に首相が公邸に呼ん
だのは政治資金規正法の改正作業を手掛ける自民党議員だったが、翌日の7日には植田氏と向き合った。
植田氏は首相との面会後、記者団に「円安については日銀の政策運営上、十分注視をしていくことを確認した」と述べた。政府内では「官邸が
呼び出して発言を修正させた」「日銀に弁明の機会を与えた」と様々な解釈が飛び交う。
見方が一致するのは、いまこの瞬間は政治とカネに並び「円安」が官邸の関心事項であるということだ。円安は原材料価格の上昇を通じて国
民負担を増やすものと受け止められている。
ただ円安是正のための利上げはハードルが高い。内閣府副大臣として日銀の政策決定会合に出たこともある越智隆雄衆院議員は「歴史的に
日銀は為替と絡んで動いたとみられるのを嫌がる」と話す。
しかも利上げとなれば住宅ローンや中小企業の資金繰りへの影響を不安視する声が高まる。政治情勢は少なくとも9月の党総裁選まで落ち
着かない公算が大きく、首相官邸や政治家が利上げに表立って賛成すると考えにくい。
政権幹部は「当面は利上げはできない。大事なのは日本が成長する可能性を示して、いつか利上げが起きると思わせることだ」と本音を語る。
「円安是正」と「利上げの回避」を同時に求める政権と与党の姿勢は身勝手ともいえる。霞が関では「いまの官邸が骨を拾ってくれるとは思え
ない」との見方も広がる。日銀が市場と政府との対話をより求められるようになったことで、金融政策の行く末は見通しにくくなった。
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2024/05/20 12:06 日経速報ニュース
国内債券市場は、日銀の次の一手を巡って利上げよりも先に量的引き締め(QT)に身構えている。それを示唆するのが2年物と10年物の国債
利回り差の拡大傾向だ。長期金利の指標となる新発10年債利回りは20日午前、前週末を0.025%上回る0.975%に上昇(価格は下落)し2013年
5月以来、11年ぶりの高水準をつけた。政策金利の影響を受けやすい2年債利回りより、資産残高を縮小するQTが響く10年債利回りの上昇ペー
スが速くなっている。
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2年債利回りも前週末を0.005%上回る0.335%に上昇したが、2年と10年の利回り差は複利で0.632%に広がった。利回り差は3月末時点の0
.546%から拡大傾向が強まっている。
岡三証券のチーフ債券ストラテジスト、長谷川直也氏は「日銀の国債購入減額がどのようなペースでどこまで減額されるかの不確実性の高ま
りが金利上昇を招いている」と指摘する。そのうえで2?10年債利回り差の拡大について「購入減額の影響が効きやすい10年債利回りの上昇ペ
ースが速いのは『利上げより国債購入減額が先』という市場の見方を映している」とみていた。
日銀が今月9日に公表した4月の金融政策決定会合の「主な意見」では、追加利上げに向けた意見があったのと同時に国債買い入れの減額
を支持する見解も相次いだ。国債購入に関しては「どこかで削減の方向性を示すのが良い」「バランスシートの圧縮を進めていく必要がある」など
といった声があった。
日銀はさっそく地ならし的な動きをみせている。13日の国債買い入れオペ(公開市場操作)では「5年超10年以下」の1回あたりの通知額を42
50億円と前の回の4750億円から500億円減らした。17日のオペも5?10年はこの額を維持した。月内に予定する23、31日のオペでも同額なら
5?10年に限ると5月の月間購入額は1兆7000億円程度と4月の1兆9022億円(落札ベース)から2000億円減る。
みずほ証券のチーフエコノミスト、小林俊介氏は「量的縮小政策は準備万端」とみる一方、「代わりに追加利上げは遠ざかった公算が大きい」
と話す。仮に6月13?14日の決定会合でQTを決めた場合「日銀はひとまず経過観察する誘因に駆られ、(次の)7月会合で連続的に政策修
正(利上げ)する可能性は低下する」という。
2024/05/22 09:57 日経速報ニュース
2024/05/23 日本経済新聞 朝刊
国内債券市場で長期金利は2013年以来11年ぶりに1%台に上昇した。この間、日銀の金融緩和を通じた低金利や円安の恩恵を受けて
企業は稼ぐ力を高めてきた。30年あまり続いた経済停滞から脱却しつつある局面で、日本経済は金利上昇に対する耐性が試される。
(1面参照)
長期金利が最後に1%台をつけた13年当時と比べると日経平均株価は1万6200円(13年末)だったのに対し、23年末は3万3400円ま
で上昇した。今年に入って史上最高値を記録している。
堅調な上場企業の業績が株高をけん引する。24年3月期の純利益(金融など除く)は前の期比16%増の約39兆円と3年連続で過去最高
となった。
雇用環境も軒並み改善している。完全失業率は23年平均で2.6%と13年平均(4.0%)より低下した。1倍を割り込んでいた有効求人倍
率は1.3倍に上昇した。24年春季労使交渉(春闘)では賃上げ率が33年ぶりに5%を超えた。
企業は金利上昇を前提とした行動に動きつつある。上場企業の有利子負債は23年3月末で263兆円と14年3月末から4割増えたものの
資産全体や自己資本の伸びに比べれば緩やかだ。自己資本に対する有利子負債の比率は低下傾向にある。手元資金も23年3月末で約105
兆円と積み上がっており、財務基盤は強固だ。
設備投資意欲はなお強い。日銀の3月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の24年度の設備投資額は前年度比
8.5%増とバブル期だった1989年以来の高い伸び率を見込む。
経団連の十倉雅和会長は21日の記者会見で「企業は多かれ少なかれ有利子負債を抱えているので損益にインパクトはある」と語った。一方
で「金利のある世界によって、むしろ事業の優先順位付けや規律ある投資が進む」とも述べた。
長期金利の上昇は、金融機関による資金運用の改善につながるため、銀行の定期預金金利や生命保険の一部商品の利回りなどが上がる
要因になる。一方で銀行が提供している固定型の住宅ローン金利の引き上げにつながる。大手銀行は5月にそろって10年固定型の金利を引き
上げた。
みずほリサーチ&テクノロジーズによると、家計では長期金利が仮に3.3%まで上昇した場合、26年度に全世帯平均で年間7.7万円のプ
ラス効果があると見込む。
世帯や世代によっては住宅ローンにかかる金利の上昇でマイナス効果になる場合もある。それでも金利のある世界は「現預金が1000兆
円あるのに対し、住宅ローンのような借り入れは400兆円に満たない」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)ため、家計に追い風とみる向きが多い。
家計はインフレ圧力も見越して行動している。家計資産の株式・投資信託比率は13年末の13.8%から23年末に17.8%まで上昇した。
現預金の資産価値が目減りすることへの対応ととれる。
今後、重要になるのは物価上昇が賃上げにつながり、その分をさらにモノの価格に転嫁する「賃金と物価の好循環」を続けられるかどうかだ。
賃金から物価の影響を除いた実質賃金は3月まで24カ月連続のマイナスを記録した。今秋ごろにプラス転換を見込む声が多いが、円安や
原油高によるコストプッシュ型の物価高の再来が懸念材料だ。
政府部門には逆風となる。国債残高は22年度末で約1000兆円と13年度比で300兆円ほど増えた。国債は60年かけて償還するルール
があり、低金利で発行した国債を借り換える際に高い金利の国債に置き換わる。当面はインフレに伴う名目経済成長による税収増が先行する
ものの、財政健全化への対応はいっそう重要になる。
日銀は3月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃し、長期金利の水準について「金融市場において形成されることが
基本」(植田和男総裁)との姿勢をとる。当面は異次元緩和下と同程度の額での長期国債の買い入れを続ける方針を示しているが、日銀とし
て目指す長期金利の水準はなくなった。
金利先高観があるなかで銀行などは国債保有の積み増しには慎重だ。あるメガバンクの運用責任者は「10年物は1.2~1.5%にならない
と買わない」と語る。日銀が追加の金融政策修正に動くという市場の思惑も長期金利の押し上げ圧力になっている。
2024/05/23 09:51 日経速報ニュース
外国為替市場で円相場がじりじりと下値を切り下げている。日銀の利上げ観測や国内債利回りの上昇にもかかわらず、金融引き締めが長引
きそうな米国との金利格差が縮まらないためだ。円を元手にドル建て資産などで運用する円キャリー取引も継続しているが、これまで数年にわ
たり続いた円と国内金利の「逆相関」が終わる局面に備える市場参加者もじわりと広がってきた。
23日朝方の東京市場で円は1ドル=156円70銭台で推移している。米連邦準備理事会(FRB)が22日に明らかにした4月30日?5月1日開
催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けて米長期金利が上昇し、円売り・ドル買いにつながった。
一方、22日に日本の長期金利が節目の1%に達したことは海外でも多数の報道があった。円相場の反応は今のところ鈍いものの、投機筋を
中心に日本の金利上昇への認識は広がっている。
あるヘッジファンドでは先日、日本の新発30年物国債利回りとドルの対円相場の日足チャートを並べ、今後の運用方針を協議した。2022年以
降の2つのチャートは極めて似た形をしており、主に米国側の要因で円安・ドル高が進んだのを象徴する。このファンドでは「日銀の追加利上げ
や米国の利下げ開始が視野に入り、(主に短期金利差の影響を受ける)円キャリー取引をこれまでのようには積み増せないだろう」との考えに
傾きつつある。
市場では「日銀が円安対応として利上げを急ぐ」との予想も多い。日銀の政策正常化が進むとの警戒感が強まれば、国内株式相場がダメー
ジを受ける公算が大きい。今週は米ゴールドマン・サックスが「日銀は持続的な利上げサイクルに入った」「26年末に国内長期金利は2%まで
上がる」との見通しを示し、話題になった。株安で海外勢を含む投資家の体力が奪われると、円キャリー取引の圧縮を伴う日本への資金還流
が加速しかねないというのが外為市場の「常識」だ。
日銀利上げや国内債利回りの上昇を日本国債と円の信認低下に結びつける声もあるが、日本経済の弱さが意識される事態になれば日本株
にはマイナスだ。これもめぐりめぐって円高要因になる。
日本株安と円高の同時進行は今のところリスクシナリオの1つに過ぎない。ただ、投機筋などが取引に用いるコンピューターにはこうしたリス
クシナリオが常にインプットされ、市場に流れてくる材料と結びつけて人工知能(AI)などが投資判断をする。タイミング次第では国内金利の上昇
が突然、教科書的な円高要因として復権するかもしれない――。円の弱気派の緊張感は徐々に高まっている。
2024/05/23 16:04 日経速報ニュース
日銀が23日に実施した国債買い入れオペ(公開市場操作)で、残存期間「1年超3年以下」の応札額が通知額に届かない「札割れ」となった。
日銀が異次元緩和を導入した2013年4月以降で初めてとなる。日銀に急いで国債を売りたいという投資家が乏しかったのを示す。需給の引き
締まりは日銀による国債購入減額を後押しすることになりそうだ。
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日銀が23日に実施した定例の国債買い入れオペ3本のうち1?3年については、3750億円の購入予定の通知額に対し、応札額は3564億円
にとどまった。応札額すべてを落札した。市場関係者からは札割れという結果は「想定外だった」との声があがった。
23年以降の1?3年のオペを振り返ると、同1月は1回あたり5000億円で月4回だった。当時は長短金利操作(YCC)のもとで金利上昇圧力
が高まったため、日銀は定例オペ以外にも臨時オペを打って金利上昇を抑えた。同2月からは1回あたり4250億円(月4回)となり、同11月の
後半からは3750億円(同)として現在に至る。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊氏はきょうの札割れについて「投資家が2年債を手放したくないという需給の引き締まりを
意識させる結果だった」と話す。
短期の政策金利の影響を受けやすい2年債利回りは今年に入り、ほぼ一本調子で上昇(価格は下落)してきた。日銀のマイナス金利解除を
経た4月以降も追加利上げ観測が2年債利回りを押し上げた。4月初めには0.2%を下回っていた2年債利回りは22日に0.35%と09年6月以来
、約15年ぶりの高水準に上昇した。
ここまで利回り上昇の結果、日銀の追加利上げの織り込みが進んだとの見方は増えている。このため「金利の先高観が和らぎ、2年債は(日
銀に売却せず)保有していた方がいいと考える投資家がいた可能性が高い」(稲留氏)という。
札割れをきっかけに需給の引き締まりが意識され、23日の流通市場で新発2年債利回りは前日を0.010%下回る0.340%に低下した。
2年債の需給を巡っては別の見方もある。SMBC日興証券の奥村任氏は「5年債や10年債などと比べデュレーション(期間)リスクを低く抑え
ることができるため、保有したいという投資家の需要は高い」と分析する。
デュレーションは保有する債券の元本と利息を回収するまでにかかる年限を示し、それが短いほど保有債券の含み損が膨らむリスクを抑えら
れる。2年債利回りではだいぶ織り込んだといっても日銀による追加利上げや国債買い入れ減額への思惑はくすぶり続けている。22日に11年
ぶりに1%ちょうどへ上昇した長期金利などをみると、国内債全般の価格下落リスクは小さくない。それが期間の短い2年債への需要を増やし
ている側面があるというわけだ。
2年債を中心とするこの残存期間の債券需給の引き締まりは、少なくとも1?3年のオペでは、長期的な方向としては明らかにしている国債
買い入れの減額へ日銀が動きやすくなったとの見方がある。SMBC日興証券の奥村氏はきょうの札割れに関し「日銀の買い入れが過剰で減
額すべきだ、というサインとも受け取ることができる」と指摘する。
日銀は13日に「5?10年」については1回あたりの国債購入額を500億円減らしたが、その他の期間は購入額を据え置いている。1?3年の
4月の購入額は約1.5兆円で5?10年(約1.9兆円)、3?5年(約1.7兆円)に次いで多い。日銀は国債発行額に対する日銀の購入比率が高い
期間で減額を進めるとの予想も市場にはある。
2024/05/24 08:01 日経速報ニュース
24日の国内債券市場で、長期金利は上昇(債券価格は下落)しそうだ。指標となる新発10年物国債の利回りは節目の1%を超え、2012年
4月以来の高水準をつける可能性がある。米景気の底堅さを受けて前日に米長期金利が上昇したほか、日銀による追加利上げや国債購入の
減額といった政策正常化が根強く意識されているのも長期金利の上昇圧力となるだろう。
23日のニューヨーク債券市場で、長期金利の指標となる米10年物国債利回りは前日比0.06%高い4.48%で終えた。この日発表された週間
の米新規失業保険申請件数が21万5000件と市場予想よりも減った。米S&Pグローバルが公表した5月の米購買担当者景気指数(PMI)速
報値は総合が54.4と約2年ぶりの高さとなり、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに慎重になるとの見方が米金利上昇につながった。
大阪取引所の夜間取引では債券先物が下落している。5営業日ぶりに反発していた中心限月の6月物は夜間取引では143円57銭で終え、
23日の清算値を16銭下回った。米金利上昇を受け、24日の国内市場では相場が底堅く推移していた中長期債にも改めて売りが広がるとみら
れ、長期金利の上昇圧力となるだろう。
日銀が政策正常化のペースを速めるとの思惑が日本国債の買いづらさにつながっている。日銀が23日実施した定例の国債買い入れオペ(公
開市場操作)では残存期間「1年超3年以下」で、13年4月の「異次元緩和」の導入後で初めて購入予定額を応札額が下回る「札割れ」となった。
中期債の需給逼迫を映す結果と言え、市場では日銀が国債購入額を減らしやすくなるとの観測が高まっている。
総務省は24日8時半に4月の全国消費者物価指数(CPI)を発表する。QUICKがまとめた市場予想によると生鮮食品を除いた総合は前年
同期比2.2%上昇し、上昇率は3月(2.6%)を下回る見込みだ。生鮮食品とエネルギーを除く指数(日銀版コア)の伸び率も2.4%と、3月(2.9%)
から鈍化するとみられており、物価の騰勢一服は国内債相場の支えとなる可能性がある。
24日は国内では財務省が3カ月物の国庫短期証券(TB)の入札を実施する。日銀の追加利上げを巡る警戒感が残る中で、期間の短いTBは
相対的に金利リスクが低いうえ「(銀行勢の)担保需要も強い」(国内金融機関)という。海外では4月の米耐久財受注額や5月の米消費者態度
指数(ミシガン大学調べ)確報値が発表されるほか、FRBのウォラー理事が講演する。
2024/05/27 12:41 日経速報ニュース
27日午後の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが前週末を0.005%上回る1.010%へ上昇(債券価格は下落)した。
2012年4月以来およそ12年ぶりの高さをつけた。日銀による国債買い入れの減額や追加利上げなど早期の政策正常化が意識され、国内長期
債に売りが優勢となっている。
政策金利の影響を受けやすい新発2年債利回りも午後の取引では前週末比0.005%高い0.34%に上昇した。
2024/05/27 13:26 日経速報ニュース
27日午後の国内債券市場で、長期金利が上昇(債券価格は下落)している。指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.015%高い
1.020%をつけた。2012年4月以来およそ12年ぶりとなる高水準。日銀の内田真一副総裁が27日の講演で「デフレとゼロ金利制約との闘いの
終焉(しゅうえん)は視野に入った」などと述べ、日銀の政策正常化が意識されて国内債への売りを促した。
28日に財務省が実施する10年物クライメート・トランジション(CT)利付国債入札に一定の警戒感があるとの見方があった。10年物CT国債
(発行予定額3500億円程度)の入札について、市場では「(金利水準が)1%を超えてもはっきりとした買いがみられない状況で、CT債は通
常の国債と比べ流動性に難がある」(国内証券ストラテジスト)として、需要動向を不安視する声がある。
日銀の内田副総裁の講演を巡っては、長期的な視点に基づくもので短期的な政策運営への示唆は限られるとの受け止めもあった。先物中
心限月である6月物は143円52銭と午前終値を7銭下回って午後の取引が始まり、その後先週末比15銭安の143円44銭まで売られる場面
もあった。
短期金融市場では、現金担保付き債券貸借(レポ)金利が低下した。日本証券業協会がまとめた東京レポ・レートで、翌営業日に始まる
翌日物(トムネ)金利は前週末比0.031%低い0.048%だった。
2024/05/29 日本経済新聞 朝刊
三菱UFJフィナンシャル・グループの関浩之市場事業本部長が日本経済新聞の取材に応じ、日本国債について「金利上昇が本格的に進めば
利回りの最高水準を見極めながらポジション(持ち高)を復元していく方針だ」と運用の見通しを明らかにした。日銀が「早ければ7月にも政策金
利を0.25%程度へ引き上げる可能性がある」とも述べた。
関氏は今後の運用について、金利の上昇に応じ、国債と比べ利回りが相対的に高い「円金利スワップ取引」での固定金利の受けと呼ばれる、
国債の購入に類似した取引をしていくとした。その後は粘着性の高い預金の水準をみながら「(償還まで持ちきることを前提とした)満期保有目
的」勘定で債券を購入する方針を明らかにした。
さらに金利水準が相応に上がれば「(期中での売買が可能な)その他有価証券」勘定での債券購入で対応するという。
関氏は「まだ金利上昇余地は相応にある」と述べた。本格的な復元開始時期は「10年の円金利スワップの固定金利の利回りが1.20%以上
に上がってくるなど、もう少し金利が上がるまで先送りせざるを得ない」との認識を示した。
三菱UFJが徐々に国債の持ち高復元を検討する背景には、日銀が段階的に利上げするとみていることがある。関氏は2025年3月までに
「(政策金利を)0.5%以上に引き上げる可能性がある」とも述べた。
日銀は3月にマイナス金利を含む異次元緩和政策を解除した。三菱UFJ銀行は政策変更の翌営業日から円の普通預金金利を0.001%から
0.02%へと引き上げた。関氏は日銀が追加利上げした場合は「預金金利の引き上げを検討する」と明らかにした。
次の利上げ後には、変動金利型住宅ローンなどの指標となる短期プライムレート(短プラ)も引き上げる銀行が多いとみられている。関氏は短
プラの引き上げは「(日銀の)利上げ幅次第では検討することになるだろう」とし、明言しなかった。
対ドルで1ドル=150円台半ばで推移する円相場について関氏は「過度な円安の状態にある」との認識を示した。輸入物価の上昇を通じた
コスト増が物価上昇率全体を押し上げ「家計の実質所得の低下による消費マインドの悪化や、中堅・中小企業をはじめとする輸入企業の収益
悪化による設備投資の手控えなど、負の側面が相対的に大きい」と指摘した。
関氏は、円安などによる基調的な物価上昇率の上振れリスクを「日銀はこれまで以上に強く懸念し始めている」とみる。日銀が利上げの家計
や企業への影響を考慮しつつ「一段の円安の影響を少しでも回避するため、利上げや国債買い入れ減額などの政策修正を徐々に進めることを
優先するだろう」と強調した。
2024/05/29 11:30 日経速報ニュース
日銀の政策修正に身構えるような国債売りが止まらない。29日は長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時、前日を0.030%
上回る1.065%へ上昇(価格は下落)して2011年12月以来、12年半ぶりの高さとなった。あす30日に財務省による入札がある2年物国債は
10年債と比べた価格の割高さが目立つ。入札で需要がどの程度集まるかには警戒感がくすぶる。
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過去1年の2年債入札前日の2年と10年の利回り差と入札における応札倍率を振り返ると、利回り差の拡大(縮小)と応札倍率の低下(上
昇)の連動がみてとれる。2年債の利回り上昇(価格の下落)が10年債より限定的なら利回り差は拡大し、2年債の価格は割高となる。割高
だと入札における応札が弱まり、応札額を落札額で割った応札倍率は低下するという関係にある。
現時点で新発である2年物460回債の利回りは29日、前日を0.015%上回る0.365%に上昇した。こちらは09年6月以来、ほぼ15年ぶりの
高さながら、10年債との利回り差は1カ月前と比べ大きく広がって価格は割高になっている。29日時点の複利の利回り差は0.689%と前回
4月の2年債入札前の0.596%から拡大し、入札前としては昨年10月の入札前以来、7カ月ぶりの大きさとなっている。
日銀の政策修正観測を巡っては、利上げより国債購入減額が先との見方が市場には多い。それが減額の影響をより受けやすい10年債の
利回りが、政策金利の予想に左右されやすい2年債に先行して上昇している背景の1つになっている。
日銀の政策修正観測は利回り曲線(イールドカーブ)全体を押し上げており、こうした局面では「デュレーション(保有債券の平均残存期間
)を短くしたい投資家の需要が中長期債から2年債に移動する」(SMBC日興証券のシニア金利ストラテジスト、田未来氏)というのも大きい。
長い年限の債券ほど利回り上昇に伴う価格下落が大きくなるので、リスク回避のため保有債券を短期化しようとするからだ。
「仮に日銀が6月の金融政策決定会合で国債減額方針を決めると、債券市場では次は利上げ時期を探っていくだろう」(岡三証券のチーフ
債券ストラテジスト、長谷川直也氏)との声もある。日銀の利上げ観測が利回りをより押し上げる2年債について、長谷川氏は「いったん待機
資金を集めているが、需要が強いというのはあくまでも他の年限の債券に比べて『相対的に』ということ」と指摘する。
日銀の内田真一副総裁は今月27日、「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉(しゅうえん)は視野に入った」としたうえで「今回こそはこれま
でと違う」と金融政策の正常化への意欲を示した。岡三の長谷川氏は「(内田氏が)ここまで自信を示している以上、債券市場の警戒感は高
まる」と話す。
国債の「短期化需要」で2年債入札が大崩れすることはないとの見方も少なくないが、日銀をにらんだ債券市場の動揺は強まっている。
2024/05/29 13:15 日経速報ニュース
29日午後の国内債券市場で、長期金利が一段と上昇している。指標となる新発10年債利回りは前日比0.035%高い(価格は安い)1.070%と
2011年12月以来、約12年5カ月ぶりの高水準をつけた。日本時間29日の取引で米長期金利が上昇し、国内債利回りの上昇圧力が強まってい
る。
中期ゾーンの国債利回りも上昇している。新発2年債利回りは前日比0.020%高い0.370%、新発5年債利回りは0.035%高い0.625%とそれぞ
れ上昇幅を広げた。先物相場は一段安となり、中心限月である6月物は前日比41銭安の143円09銭まで下落する場面があった。
短期金融市場では、現金担保付き債券貸借(レポ)金利が上昇した。日本証券業協会がまとめた東京レポ・レートで、翌営業日に始まる翌日
物(トムネ)金利は前日比0.010%高い0.051%だった。
2024/05/29 14:19 日経速報ニュース
債券市場で幅広い年限の国債利回りが上昇ペースを速めている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは29日午後に一時1.070%
と2011年12月以来、約12年5カ月ぶりの高水準をつけた。日銀による国債買い入れの減額観測が根強く、将来の需給不安が重くのしかかる。
「金利変動リスクを急いで取る必要はない」。そんな腰の引けた姿勢を代弁するかのようなメガバンク幹部の発言が伝わったのも債券売りの背中
を押した。
市場できょう注目されたのは、29日付の日本経済新聞朝刊が掲載した三菱UFJフィナンシャル・グループの関浩之市場事業本部長のインタビ
ューだ。傘下2行合算の国債保有残高は24年3月末時点で約36兆円にのぼる。債券市場における存在感は大きく、発言から投資行動を推し量
ろうとする参加者は多い。
【関連記事】金利上昇で「国債保有の復元検討」 三菱UFJ市場本部長
2024/05/30 10:11 日経速報ニュース
30日午前の国内債券市場で長期金利が一段と上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債利回りは前日比0.025%高い1.100%
をつける場面があった。長期金利が1.1%台に乗せるのは2011年7月以来およそ13年ぶりとなる。日銀が近く追加利上げや国債買い入れの減額
など政策正常化に動くとの思惑から金利の先高観が強く、長期金利の上昇を促している。
日銀は31日に国債買い入れオペ(公開市場操作)の運営方針を更新し、6月のオペ実施日程を公表する予定だ。さらに6月4日には財務省が10
年物国債入札を予定している。市場では「日銀の国債買いオペの不透明感に加え、10年債入札への警戒感もあって売りが出やすくなっている」
(国内証券ストラテジスト)との指摘があった。
さらに足元では欧米で長期金利が上昇基調となっているのも国内金利の上昇圧力となった。米国では底堅い景気が米連邦準備理事会(FRB)
の利下げ転換を遅らせるとの観測がくすぶり、29日には米長期金利が4.6%台に上昇。根強いインフレで欧州中央銀行(ECB)が利下げに慎重に
なるとの見方も広がり、欧州ではドイツの長期金利も上昇している。
2024/05/31 日本経済新聞 朝刊
金融商品の金利引き上げの裾野が広がってきた。長期金利が一時、13年ぶりに1.1%に上昇した30日、住友生命保険は契約者に約束
する利回りを約11年ぶりの高水準に上げると発表した。6月適用分の固定型住宅ローンの金利も13年ぶりの高水準をうかがう。実生活に
「金利ある世界」の恩恵と負担増双方の波が押し寄せている。
住友生命は30日、契約時に保険料をまとめて払い込む一時払い終身保険の予定利率を6月から引き上げると発表した。国内の長期金利の
上昇を踏まえ、契約者に約束する利回りを現行の1.0%から1.1%に改める。
同保険では予定利率の引き上げが相次ぐ。明治安田生命保険が5月に1.1%に、日本生命保険も1月に1.0%に引き上げた。各社は金利
環境に応じて予定利率を見直しており、金利上昇が続けばさらに引き上げる可能性がある。
預金金利にも上昇圧力がかかっている。東京スター銀行は7月から普通預金の金利を条件に応じて最大年0.3%に引き上げる。現在は給
与振り込みか年金の受け取りを条件に年0.25%としているが、預金獲得の競争が始まるなかネット銀行などに対抗する。
日銀がマイナス金利政策を解除した3月以降、メガバンクが先陣を切って普通預金の金利を上げた。普通預金の金利はそれまでの20倍の
0.02%とし、一部は定期預金の金利も引き上げた。
長期金利の上昇で社債に投資妙味を感じる個人も増えそうだ。機関投資家は利回り上昇(価格の下落)による評価損を警戒して社債に積極
的に投資しづらいが、個人は償還まで持ちきるのが前提で評価損を気にせずに済むためだ。
ソフトバンクグループは6月14日に5500億円規模の個人向け普通社債を発行する。2031年償還の7年債で、利率は年2.65~3.25%
を仮条件とし、5月31日に決める。3月に発行した同じく5500億円の個人向け社債は7年債で年3.04%だった。金利水準に注目が集まる。
金利上昇は恩恵をもたらす半面、借り入れがある個人や企業にとっては負担増につながる。代表格は住宅ローンだ。固定金利型の住宅ロー
ンは長期金利と連動する。足元の長期金利の上昇で、比較可能な10年固定型の基準金利は5月の大手銀行5行の平均で3.85%と直近で
最も高かった23年11月の3.87%に近い水準だ。
大手行が31日に公表する6月の住宅ローン金利は5月に比べて上昇が優勢になるとの見方が強く、11年以来、13年ぶりの高い水準になる
可能性がある。
住宅ローン市場は短期金利に連動する変動型が約7割を占めている。ネット銀などが低金利を提示しているのも変動型が多く、大手行は変動
型の基準金利は据え置いている。当面は住宅の購入者の大きな負担増にはつながらないとの見方が多いが、足元ではじわり固定型への関心
も高まっているという。
短期金利に連動しやすい日本円東京銀行間取引金利(TIBOR)も30日、3カ月物が前日比0.01%高い0.28%台後半と約11年ぶりの高
水準に上昇した。3月のマイナス金利解除前後で急騰し、いったん落ち着いていたが5月に入り再び上昇している。
TIBORは銀行が融資する際の基準になる金利の一つ。楽天銀行は住宅ローンの変動金利の指標にしており、同行は変動基準金利を6月に
1.333%と、5月に比べて0.02%高い水準に設定する予定だ。
企業の金利負担も増え始めている。日銀がまとめた国内銀行の新規貸し出しの平均金利は3月に0.803%と、2月から0.1ポイント以上、
上がった。最後に1%を超えたのは2014年4月で、長年貸出金利は低くとどまってきた。適用する変動金利は数カ月ごとに見直す例が多く、
金利上昇の波は少しずつ広がりそうだ。
メガバンクは融資残高の大半が変動金利型とみられ、指標の一つであるTIBORの上昇が貸出金利上昇の一因になっている。
東京商工リサーチが4月に実施したアンケート調査では、借入金利が前年と比べて「すでに上昇」と答えた企業が17.7%だった。メインバンク
から金利の引き上げ意向を伝えられるなど「引き上げ」の説明を受けたという企業は30.8%と2月調査の25.6%から増えた。
2024年5月31日 8:32 JST 更新日時 2024年5月31日 8:39 JST
コアCPIは1.9%上昇、市場予想と同じ-コアコア1.7%上昇
電気代を含むエネルギーが上昇けん引、食料品は伸び横ばい
全国の物価の先行指標となる5月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は3カ月ぶりにプラス幅が拡大した。食料品
価格の伸びが引き続き鈍化した一方、電気代を中心にエネルギーが上昇し、全体を押し上げた。
総務省の31日の発表によると、コアCPIは前年同月比1.9%上昇と伸び率は前月の1.6%から拡大した。市場予想と同じだった。再生可
能エネルギー発電促進賦課金の引き上げに伴う電気代の上昇などがけん引した。一方、生鮮食品を除く食料は3.2%上昇と横ばいだった。
日本銀行が目標とする2%は2カ月連続で下回った。
生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは1.7%上昇と前月の1.8%上昇から伸びが縮小した。市場予想は1.8%上昇だった。
日銀が3月に17年ぶりの利上げに踏み切り、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を廃止した後も、円安傾向に歯止めがかか
っていない。国債買い入れ減額の思惑も加わって長期金利は1%台で13年ぶりの高水準に達している。追加利上げのタイミングに市場の注
目が集まる中、足元の物価上昇の鈍さから慎重に経済・物価情勢を見極めていく展開が続きそうだ。
賃金動向を反映しやすいサービス価格は0.7%上昇となり、大きく鈍化した前月の0.8%上昇から縮小した。今年の春闘で平均賃上げ率
が33年ぶりに5%を超える中、賃上げ分を価格に転嫁する動きの広がりが注目されている。
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利上げペース早める必要も、円安で物価再上昇なら-安達日銀委員
2024/06/04 12:00 日経速報ニュース
日銀の植田和男総裁は4日、参院財政金融委員会に出席した。金融政策運営を巡り「先行き見通しに沿って基調的物価上昇率が高まれば
金融度合いを調整する」と述べた。また「経済・物価見通しのリスクが変化しても金利を動かす理由になる」との認識を示した。
日本維新の会の藤巻健史氏の質問に答えた。植田総裁は、長期金利について「金融市場で形成されることが基本だ」と話した。その上で
「長期金利が急激に上昇する場合には市場における安定的な金利形成を促す観点から機動的にオペを実施する」との考えを示した。
2024/06/05 13:59 日経速報ニュース
5日の国内債券市場で、長期金利は低下した。低調な米経済指標を受けた米利下げ観測の再燃と米長期金利の低下が国内債の買いに
つながっている。さらに日銀がかねて示している国債の減額方針について、緩やかなペースで進めるとの見方がやや勢いを取り戻したのも
相場の支援材料となった。とはいえ市場参加者は日銀の政策修正がどうなるかについて依然として確信をもてていない。不安と楽観とが複
雑に絡み合う構図になっている。
5日の長期金利は一時0.990%と1%の節目を下回り、5月23日以来ほぼ2週間ぶりの低水準をつけた。4日発表の米雇用指標が労働需
給の緩和を示し、年内の米利下げ観測を改めて強めた。5月下旬に4.6%台まで上昇していた米長期金利は4.3%台まで低下。外国為替市
場では前週に1ドル=157円台後半まで下落していた円相場が154円台まで持ち直した。外部環境は日本の金利低下に追い風だ。
問題は国内要因をどうみるかだ。市場では日銀が円安を抑制するために、量的な金融引き締めをイメージさせる国債買い入れの減額を速い
ペースで大幅に進めるのではないかとの思惑が根強い。それだけに、円安一服が減額への警戒感を抑えている面は大きい。4日夕にはブル
ームバーグ通信が、日銀は早ければ来週の金融政策決定会合で国債購入の減額について「より具体的な方針を示すことの是非を含めて議
論する可能性が大きい」などと伝えた。みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは「報道が正しいとすれば、減額は(段階を踏み
ながら)極めて慎重に進められていくとの印象を受ける」と話す。
折しも日銀の氷見野良三副総裁が4日夕、国債購入の減額について「非連続的な変化や不測のことを起こすのは避けなければならない」と
述べていた。日銀は債券市場からの緩やかな退出を望んでいる――。岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「オペ(公開市場
操作)を巡る不透明感は残りつつも、債券需給の悪化度合いは限られそうで、金利上昇が一方的に続くことはなさそうだ」と幾分安堵したよう
に語った。
だが、過去に複雑に張り巡らされた金融緩和の糸をほどくのは容易ではない。しかも為替が絡むと複雑さは格段に増す。市場には「日銀自
体もどんな出口に向かうのか試行錯誤しているところで、その過程で出てくる情報発信をうのみにするのは危険だ」との疑念が根強い。岡三
の長谷川氏も「最終的に月間の買い入れ額がどこまで引き下げられるのか、日銀のバランスシート(資産規模)を最終的にどうしていくかとい
った不透明感は残り続ける」と指摘する。
短期金融市場の関係者は、あくまで例えとしつつ「2年後に、資産残高を新型コロナウイルス感染拡大前の水準にすることを目指す、といっ
た緩やかなバランスシートの着地点を示すのも1つ」と提言する。一方、日銀内部からは、先々の経済情勢が不確実であることを考えると、
中長期的な残高見通しを示すことにはやや消極的な声が聞かれる。
日銀は、長期国債の買い入れは「これまでとおおむね同程度の金額」で継続するとしており、足元の長期国債の月間買い入れ額は6兆円
程度と示している。5月月間の買い入れ額は5.7兆円だった。ブルームバーグ通信によれば「例えば月間5兆円などが次の買い入れの目安と
して考慮される可能性がある」と伝えており、このことが「想定を上回るような減額規模ではなく、1つの具体的な数字が出てきたことも債券
市場に安心感をもたらした」(国内証券のストラテジスト)という。それでも債券投資家は半身の姿勢を崩せていない。
イールドカーブ・コントロール(YCC)を撤廃し、金融政策の調節手段を翌日物の無担保コールレートにした後も、市場の国債買い入れへの
関心は続いたままだ。日銀が国債買い入れ運営の柔軟性を重視するのであれば、減額方針を具体化しても、内容はふわっとしたものにとど
めたい。これに対し、いままで大量の買い入れに直面していた市場関係者は「発行に対してどのくらいの吸収があるのか」といった踏み込ん
だ情報が欲しい。
振り返ると日銀が3月にマイナス金利政策の解除を決めて以降、市場では日銀の情報発信に振り回される傾向が続いている。調節手段で
はなくなった国債買い入れの「次の一手」を巡って関心をそらしたい日銀と、それに疑心暗鬼を募らせる市場。両者の溝が埋まるにはまだだい
ぶ時間がかかりそうだ。
2024/06/06 12:46
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-06/SD6X8AT1UM0W00?srnd=cojp-v2
3月の金融政策の枠組み変更後の金融市場の状況を確認している
4月会合では3月会合で決まった月間6兆円程度の買い入れ継続確認
日本銀行の植田和男総裁は6日、金融政策の正常化を進めていく際には国債買い入れの減額が適当との認識を改めて示した。参院財政
金融委員会で答弁した。
植田総裁は3月の金融政策の枠組み変更後の金融市場の状況を確認しているとした上で、「今後大規模な金融緩和からの出口を進めて
いく中で、減額することが適当であるというふうに考えている」と述べた。
複数の関係者によると、日銀は早ければ来週の金融政策決定会合で、長期国債の買い入れの減額についてより具体的な方針を示すこと
の是非を含めて議論する可能性が大きい。月間6兆円程度の買い入れを継続するとしている現在の長期国債の買い入れについて、減額が
適切な市場環境かどうかを慎重に見極める。
4月会合では、国債購入も含めて3月会合で決めた方針の継続を確認。同会合の声明文では、「これまでとおおむね同程度の金額を継続
する」とし、注記では足元の購入額は「6兆円程度」としていた。
中村豊明審議委員は同日、国債買い入れについて「経済の回復状況に応じて出口に向けて時間をかけて減額を進めていくことが適当だ」
と指摘。日本経済が強い状況にはない中で、「どのように経済が改善していくかを見ながら決めていく。私自身はニュートラルだ」と述べた。
来週の日銀会合、利上げの話題出ると思うが「まだ早い」-中村委員
2%目標達成には少し距離
植田総裁は日銀が掲げる2%の物価目標の実現に向けて「インフレ予想も2%近辺のところで安定的に推移するということがまず必要」と
指摘。その上で、さまざまなインフレ予想の関連指標が最近になって少し上昇してきているが、「まだ2%には達していないと、少し距離があ
るという動きになっている」と語った。
植田総裁の発言を受け、為替相場は上下に振れる動きとなっている。2%目標の達成を巡る発言が利上げに慎重と受け取られ、一時1ドル
=155円90銭台まで円は売り戻されたが、国債買い入れ減額についての発言で円売り戻しは一服。その後、再び円売りが進み、156円台前
半で推移している。
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2024/06/10 14:24 日経速報ニュース
今週に相次ぐ重要イベントを前に外国為替市場ではじわりと円高進行への備えが進んでいる。通貨オプション市場の動向をみると、米金利を
左右する米連邦公開市場委員会(FOMC)よりも日銀の金融政策決定会合への注目度が高まりつつある。5月の米雇用統計が円買い・ドル売
りを誘うきっかけとならず、オプション市場からみえる景色も少し様子が変わっている。
今週は12日に5月の米消費者物価指数(CPI)の発表とFOMCの結果公表が重なり、14日には日銀が金融政策決定会合の結果を公表する。
通貨オプション市場でドルの対円相場の予想変動率(インプライド・ボラティリティー)は1週間物が10%前後と、日本政府・日銀の為替介入観測
で大幅な円高・ドル安が進んでいた5月初旬以来の高さだ。
ドルに対する円のプット(売る権利)からコール(買う権利)の需要を差し引いた「リスクリバーサル」をみると、市場参加者が円高と円安のどちら
に備えているかが分かりやすい。この指標はマイナス幅が大きいと円買い・ドル売りの需要が強いのを示し、1週間物は足元でマイナス2%台と
4月下旬以来の低さだ。
オプション市場の参加者はどのイベントに焦点を当てているのか。SBIリクイディティ・マーケット(SBILM)の鈴木亮常務取締役によると、予想
変動率に基づいて上乗せされるオプション料から試算した「イベントプレミアム」は日銀決定会合は通常の日の3.5日分となっている。5月の米
CPI(1.1日分)やFOMC(1.5日分)よりも大きく、日銀会合を週内で最大のイベントとして捉えている。
通常であれば絶対水準の高い米金利の方が日本の金利よりも大きく動きやすく、外為市場では円相場を方向付ける材料として米国発のイベ
ントが注目されやすい。にもかかわらず、足元で日銀の決定会合への関心が高まっているのは5月の米雇用統計がきっかけだ。
このところ発表された米経済指標は市場予想よりも下振れする結果が目立っていたが、7日発表の5月の米雇用統計では雇用者数や平均時
給の伸びが市場予想を上回った。米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げ転換するのは難しいとの見方が改めて広がり、市場では年内の
利下げ回数が1?2回にとどまるとの予想が大勢を占めるようになった。
FRBが12日に結果を公表するFOMCでは参加者らの政策金利見通し(ドットチャート)が焦点となり、年内の利下げ回数の予測は前回3月時
点(3回)から減らされるとみる市場参加者は多い。5月の米雇用統計を踏まえて大幅利下げの思惑がついえたことで「FRBの『ハト派』を見込
んだ円高・ドル安観測は後退した」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)という。
SBILMの鈴木氏の分析では、米CPIやFOMCを意識したオプション取引に偏りがない半面、日銀会合ではやや円コール・ドルプットに傾いて
いるという。日銀は今回の会合で国債買い入れの減額方針を具体的に議論するとみられ、日本の金利上昇が円高につながるリスクをはらむ。
しかし、鈴木氏は「従来の会合と比べると円コール・ドルプットの偏りは小さい」とも話す。
10日の東京外為市場で円相場は一時1ドル=157円19銭近辺と3日以来1週間ぶりの安値をつけた。前週末の17時時点と比べると一気に
1円70銭あまりの円安・ドル高が進んだ格好だ。前週には154円台に上昇する場面もあり、市場では「国内輸入企業などのドル買い意欲がみ
られ、円の上値は重そう」(市場関係者)との声も聞かれる。備えは進んでいるとはいえ、円高・ドル安の警戒感が一層高まる様子は今のところ
乏しい。
2024/06/12 12:01 日経速報ニュース
日銀は13?14日に金融政策決定会合を開く。春季労使交渉(春闘)結果の給与への反映が十分に確認されておらず、個人消費の動向など
にも懸念が残るとあって利上げは見送られるとの予想が多い。一方、国債買い入れは長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤廃
に伴って役割が変わった。植田和男総裁は「金融政策の能動的な手段としては使いたくない」と述べ、いずれかの時点で金額を減らすとの姿勢
を明確にしている。今回会合では新たな減額方針が示されるかが焦点だ。
■日銀6月会合のポイント
・国債買い入れ減額方針の決定の有無とその示し方
・先行きの利上げ方針や円安を巡る植田総裁の見解
・国内の景気認識は維持されるか
前回会合から変更の可能性が意識されるのは、国債買い入れの方針だ。植田総裁は6日にも、大規模緩和からの出口を進めていく中で「減
額することが適当」との考えを改めて示した。日銀内では相場環境が不安定な状況下での決定には慎重な見方が根強く、米連邦公開市場委
員会(FOMC)の結果を受けた債券市場の反応なども勘案したうえで判断を下すと考えられる。政策運営の不連続性を避けるため、減額を決め
た場合でもその程度は緩やかなものとなる可能性が高い。
市場では、3月会合時に「6兆円程度」としていた月間購入額を「5兆円程度」とするなどの予想が出ている。長期金利の急騰時に「機動的に」
対応するとの文言を含めて日々のオペ(公開市場操作)運営に関する金融市場局の裁量を残すか、先行きのさらなる減額について予見性を高
めるための措置を取るか、といった点も債券需給を占ううえでポイントになる。
日銀ウオッチャーの間でも予想は様々だ。額ではなく定性的な表現にとどまる可能性も残るなど、想定されるケースは多岐にわたる。
明治安田総合研究所の小玉祐一氏は、円安基調が続くもとで「最低でも減額方針は示すだろう」と予測する。購入額を単純に減らす方法も
あるとしたうえで、メインの政策手段である短期金利以上に市場の関心を集めている状況を変えるために「(当面の)月間購入額を4?7兆円と
広めのレンジで示すなど、思い切って柔軟化する可能性も捨てきれない」と話していた。
一方、伊藤忠総研の武田淳氏は、今会合では利上げ判断と減額方針の決定のいずれも見送られると予想する。現時点では「ホームメード(国
内要因)のインフレ圧力が加速する気配は全く見られていない」と指摘。こうした中で長期金利の上昇圧力が強まれば「景気の腰折れリスクを高
めかねない」として、日銀は政策修正の判断を急がないとみる。
短期政策金利について、市場では「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0?0.1%程度で推移するよう促す」方針を据え置くとの声が
支配的だ。厚生労働省が5日に発表した4月の毎月勤労統計調査(速報)では、共通事業所ベースでの名目賃金の伸び率が前年同月比
1.7%増と、3月確報(1.9%増)からむしろ縮小した。現時点で春闘の結果が十分に反映されているとはいえず、日銀は賃金や消費など物価
動向につながるデータの確認を続けるとの観測が多い。
会合後の記者会見で植田総裁が先行きの利上げについてヒントを示すかも重要だ。7月にかけては「賞与支給後の消費動向について、民間
のオルタナティブ(代替)データも確認できる」(明治安田総研の小玉氏)など、ひと月とはいえ判断材料が増える。7月会合は6月と打って変わ
って利上げを予想する市場関係者が少なくない。
円安を巡る認識も引き続き注目される。4月会合後の記者会見では、円安による基調的な物価への影響は無視できる範囲だったか、との問
いに「はい」と回答し、円安容認ではないかとの思惑を呼んだ。対して8日に「過去の局面と比べ為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなって
いるリスクは意識する必要がある」と述べるなど、5月以降は発言内容を変えてきている。
6月は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の発表はないが、今後の政策運営を見通すうえで国内の景気判断に変化がみられるかもポ
イントだ。行内では物価や経済の基調について、4月会合時の想定から大きな変化は生じていないとの評価が多い。「一部に弱めの動きもみ
られるが、緩やかに回復している」との総合的な判断を維持した場合も、消費者心理の改善一服や自動車の認証不正などを背景に個別項目
は表現が修正される可能性もある。
2024/06/13 日本経済新聞 朝刊
日銀による金融正常化が第2段階に入る。長期国債の買い入れ額を減らす検討に入るのは、追加利上げよりもハードルが低い上に円安抑止
に一定の効果が期待できるとみているためだ。マイナス金利政策を解除して「金利ある世界」の入り口に立った日銀は、円安もにらみながら「量」
の面でも正常化に踏み出すことになる。(1面参照)
日銀の保有資産は2001年の量的緩和開始以降、増加傾向が続き、13年の異次元緩和の開始に伴って増加ペースが加速した。国債買い
入れを減額すれば、中央銀行が国債発行残高の過半を抱える異常な状態は少しずつ正常化に向かうことになる。
日銀は3月にマイナス金利政策を解除した。政策金利をそれまでの当座預金の一部に適用していたマイナス0.1%から、無担保コール翌日
物金利の誘導目標に修正したうえで0~0.1%程度へ引き上げた。
同時に長期金利を低く抑え込むためのイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)も撤廃したが、金利の急変動を避けるために長期
国債は3月以前と同程度の量の買い入れを続けてきた。
世界の中銀は利上げ局面で保有資産の圧縮も同時に進めてきた。米連邦準備理事会(FRB)は22年3月に利上げを開始し、同年6月から
保有資産を圧縮する量的引き締め(QT)も並行して進めてきた。同年7月に利上げを始めた欧州中央銀行(ECB)も23年3月からQTを開始。
日銀はECBより早い段階で保有資産の減額に踏み出すことになる。
背景にあるのは異常に膨らんでいる国債保有残高だ。日銀は23年末時点で581兆円の国債を保有しており、市場における保有比率は過
半に達している。FRBは2割弱、欧州の主要中銀でも2~3割程度にとどまっているのと対照的だ。
3月の異次元緩和解除後に、外国為替市場で円安・ドル高が進んだことも日銀の判断に影響を与えているとみられる。異次元緩和解除前は
1ドル=140円台後半で推移していたが、4月末には一時160円台まで円安が進んだ。
植田和男総裁は5月7日に岸田文雄首相と面会し、円安について「政策運営上、十分注視をしていく」と発言。市場で円安軽視とも受け止め
られたそれまでの発言を軌道修正した。
市場では過度な円安を防ぐために日銀が早期の政策修正に動くとの見方が強まっていた。日銀の主要な政策手段は短期金利の調節だが、
追加利上げは変動型の住宅ローン金利の上昇などにつながる可能性があり、家計への影響が大きい。
一方、長期国債の減額は「家計への影響はほぼなく円安に歯止めをかけられる可能性がある」(関係者)とみる。
5月にQUICKが実施した市場参加者への調査によると、65%が6月の金融政策決定会合で減額方針を決定すると見込んでいた。こうした
市場観測を受けて、長期金利は上昇基調にあった。5月末には一時1.1%と約13年ぶりの水準をつける場面があった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-12/SEY1LLT1UM0W00
金融政策は現状維持の見方、自動車メーカーの認証不正も不透明感
総裁会見は円安の影響や利上げペースなどに関心、長期金利動向も
日本銀行が14日に結果を発表する金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が見込まれており、植田和男総裁の発言などから追加
利上げのタイミングを探ることになる。国債買い入れ減額の有無と具体策も焦点だ。
植田総裁は、日銀の見通しに沿って消費者物価が上昇していけば、金融緩和の度合いを調整していく方針を表明している。前回4月会合
以降の経済・物価は日銀の想定内の動きとみられるが、個人消費が力強さを欠く中、トヨタ自動車などで新たに発覚した認証不正の影響と
いった不透明感もあり、現在の金融緩和策を維持して賃金上昇の広がりや物価への反映などを見極めていく局面とみられる。
ブルームバーグがエコノミスト51人を対象に実施した調査では、50人が日銀は今会合で政策金利を0-0.1%に据え置くと予想した。一方
で最多の33%が10月会合と並んで7月会合での追加利上げを見込んでおり、植田総裁の記者会見でヒントが得られるかを固唾(かたず)を
飲んで見守ることになる。
為替相場に関する総裁の評価も引き続きポイントとなる。4月会合後の会見では、円安の影響は大きくないとの認識を示したことを受けて
円安が進行し、日本の大型連休中に財務省は大規模な円買いの市場介入を迫られた。総裁は円安が基調的な物価上昇率に影響すれば
政策対応すると発言しており、改めて見解を問われそうだ。
注目された12日の米国市場は乱高下。朝方に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことを受けて米金利が
低下し、円相場は一時1ドル=155円台に上昇。その後の米連邦公開市場委員会(FOMC)で今年の利下げ回数が1回に減少するとの予
想が示されたことで、円は上げ幅を縮めた。13日朝は156円台後半で取引されている。
総裁は4月の会見で、日銀の物価見通しが実現していけば、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示した2026年度までの見通し期間
の後半に、政策金利は「中立金利の近辺にある」と言及。中立金利の水準自体は示されていないが、市場が想定するターミナルレート(利
上げの最終到達点)が着実に切り上がる中、利上げペースを示唆するような発言があるかも注目される。
国債減額
国債買い入れを巡っては、植田総裁が「今後大規模な金融緩和からの出口を進めていく中で、減額することが適当だ」と繰り返しており、
焦点は減額のタイミングと手法に絞られている。減額すれば、政策金利に続いてバランスシートも正常化に向けた一歩を踏み出すことになる。
複数の関係者によると、日銀は国債買い入れの減額について、今会合で具体的な方針を示すことの是非を含めて議論する。市場動向
などを会合直前まで見極めた上で、新たな方針を示すことが適切かを判断するという。
買い入れを縮小する場合でも、市場の大きな変動を回避する観点から、緩やかで段階的な減額の方向性が示されるとみられる。長期金利
が急激に上昇する場合には機動的なオペ運営で抑制する方針は維持される可能性が大きいという。
日銀の国債保有額は600兆円に迫り、国内総生産(GDP)を上回る規模だ。市場での存在感の大きさを踏まえると、減額が市場の不安定
化を招く恐れもあり、予見可能性と柔軟性のバランスに配慮することが不可欠となる。米連邦準備制度理事会(FRB)などと同様に、バランス
シートの最終的な規模なども示さないとみられる。
2024/06/14 14:06 日経速報ニュース
日銀は14日まで開いた金融政策決定会合で、国債買い入れの減額方針を決めた。だが、具体的な減額の計画は市場参加者の意見を踏ま
えて次回7月の会合で決める。金融政策の正常化はあくまで慎重に進める姿勢を強く印象づける内容で、外国為替市場では「会合結果発表
後は円安」とのアノマリー(経験則)が再び実現することとなった。
14日午後の東京市場で円相場は一時1ドル=157円98銭近辺と5月1日以来1カ月半ぶりの安値をつけた。決定会合後に円売り・ドル買い
が膨らんだのは日銀が国債減額の具体策を先送りしたためだ。「日銀内で減額を巡る議論が煮詰まっていないのではないか」(ステート・ス
トリート銀行東京支店の貝田和重金融市場部長)といい、しばらく低金利環境が続くとして円相場は157円台前半から下げが加速した。
日銀が国債買い入れの減額方針を決めたのは「金融市場において長期金利がより自由な形で形成される」のを目指すためだ。債券市場
参加者会合などを踏まえ、次回7月30?31日に開く決定会合で今後1?2年程度の具体的な計画を決める。すぐに減額するとみていた市場
の観測は肩透かしに終わった格好だ。
2013年の量的・質的金融緩和の導入以降、日銀にとって国債買い入れは金融緩和策の主軸だった。それが量的引き締め(QT)に向かうと
なれば大きな節目となるのは確か。だが、減額を急がない姿勢は「正常化はあくまで慎重に」といったイメージを生む。そう捉えた市場参加者
が一気に円売りに傾いたと考えられる。
会合結果が明らかになる前から、外為市場では「追加利上げなどさらなる金融引き締めに前向きな考えを示さないと、材料出尽くしで円売り
が優勢になる」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)との声は多かった。
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植田総裁が就任して以降、決定会合の結果公表日の東京市場における円相場をみると、今年1月を除いて円安・ドル高が進行していた。今
回も経験則が当てはまりそうで「日銀会合は円安イベント」との印象を強める可能性がある。
目先の焦点は植田総裁の記者会見に移る。4月会合後の会見では、円安による物価への影響は無視できるかとの記者の問いに植田総裁
が「はい」と答えたことで円安が加速していた。その流れも踏まえて「『円安が基調的物価に与える影響を注視する』などと多少なりとも配慮し
た発言があれば、いったん円売りの勢いは止まる」(ステート・ストリート銀の貝田氏)との声もある。
しかし、14日午後の国内債券市場では長期金利が1カ月ぶりの低水準をつけるなど日米で大きく開いた金利差は縮小する気配に乏しく、円
売り・ドル買いの口実は残り続ける。日本政府・日銀の円買いの為替介入について「160円が接近するまで警戒感は強まらない」(国内銀行の
為替ディーラー)との観測もあるなか、円相場の軟調な動きがしばらく続くかもしれない。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-14/SEYGD1T0AFB400?srnd=cojp-v2
2024/06/15 09:21 日経速報ニュース
「時間稼ぎ」「先送り」「引き延ばし」「肩すかし」――。さまざまな悪評が寄せられた。日銀が14日の金融政策決定会合で国債購入の減額
方針を決めた半面、具体的な計画は7月末の次回会合で固めると表明したことに対しての市場関係者らの反応だ。
それでも日銀の植田和男総裁や執行部の事務方が一安心したのは間違いない。総裁の記者会見中、円安がどんどん進む事態は避けら
れたからだ。
要所にちりばめたタカ派発言
4月の前回会合後は植田氏の会見でのやり取りが円安の影響を軽視するかのような印象を持たれ、円安が加速した。一時1ドル=160円台
まで下落し、財務省が円買い介入に動くきっかけとなった。
今回はこの轍(てつ)を踏まなかった。植田氏はとくに円相場の問題で揚げ足をとられぬよう、ひと言ひと言に細心の注意を払った。事務方も
相当、神経を使って会見を準備したようだ。
意識的にタカ派的な発言も要所要所にちりばめた。
国債買い入れについては「減額する以上、相応の規模になると考えている」と語り、大規模な減額になることをにおわせた。
次回7月会合での利上げは減額計画の決定と重なるため見送り観測が強まったが、「当然ありうる話」と踏み込んでみせた。
決定内容の発表後、市場は「具体的な内容がなかった」とみて円相場は一時158円台まで下落した。だが会見中には円売りの勢いが鈍り、
夜にかけて156円台後半まで円が買われる場面もあった。
重要なのはファイティングポーズ
一時、政府との協調のあり方すら問われた今の日銀にとって重要なのは、円安に対して明確なファイティングポーズをとり続けることだ。
もちろんポーズだけではすぐに行き詰まる。そこで、3月に異次元緩和を解除した際に金融政策の本筋から外した「長期国債の買い入れ」に
ついて、少しずつ減らしていく量的引き締め(QT)が俎上(そじょう)に上がった。
日銀もQTに動いたところで円売り勢に「勝てる」とは思っていない。それでも、せっかく何かをするのであれば、ある程度の耐久力のある枠組
みをつくる必要があると考えたようだ。
2013年から11年続いた量的緩和の末に、日銀が持つ長期国債は590兆円と発行残高の5割超に及ぶ規模に膨らんだ。財政と金融政策の
事実上の一体化は、黒田東彦前総裁が率いていた時代の日銀が残した負の遺産だ。この異常事態が続く限り、日銀による債券市場の支配
は変わらないし、本当の意味での金融政策の正常化も訪れない。市場を大混乱に陥れることなく少しずつ残高を落としていく作業は、いつか
は始めなければならないものだった。
ただし、いま急いで着手する必要があったかどうかは微妙なところだ。いみじくも総裁自身が会見で語ったように、「望ましい国債保有残高と
か(それに対応する)超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかるので、(方針決定が)短期的に1カ月、2カ月後先になること
自体のコストはそれほどない」からだ。
日銀はむしろ円安対応を迫られた事態を奇貨として、早いうちからQTの本格的な枠組みを整える道を選んだともいえる。
異次元緩和を解除した際、日銀は国債買い入れの規模をひとまず解除直前と同じくらいの月6兆円規模に据えた。ならしてみると償還とほぼ
同じ規模のため、保有国債の残高はおおむね保たれる。
ここから月間の購入額を減らしていくと、購入が償還をはっきりと下回り、保有残高が徐々に減っていくことになる。これが日銀版QTだ。会合
に先立ち、市場では月間の購入額を6兆円から5兆円に減らす案がささやかれたが、市場との対話を経てじっくり仕組みをつくる以上、もっと
複雑なものになる可能性もある。
「具体的な減額の幅やペース、減額の枠組みなどについて市場参加者の意見も確認しながら、しっかりとした減額計画をつくっていきたい」。
植田氏もこう語った。
たとえば、数カ月に1度の頻度で削減幅を段階的に広げていき、月間購入額を1年ほどかけて2?3兆円規模まで縮小させるといった案もあ
りうる。
7月に固まる減額計画の期間は1?2年程度。本当に重要なのはそのあとだ。「長期的に望ましい状態にまで1?2年で到達できるとは思っ
ていない」と植田氏。日銀には、その後継としてもっと期間の長い計画をつくり、望ましい資産規模の最終形を探るアイデアもある。
正常化への工程表が定まれば、市場にとって日銀の金融政策の予見可能性が高まる。円安が収まらない日本側の要因の一つは、海外の
投資家に「日銀はインフレ下でも超緩和状態を放置したまま、何もしようとしない」という見方が広まったこともあった。
日銀の政策を巡る投資家の予想が安定すれば、やがては円相場の落ち着きにもつながりうる。円安圧力への無力ぶりをさらけ出しつつ船出
する日銀版QT。もっと長い時間軸でみれば、意外にも漢方薬のようにじわじわと円安を癒やす効果が出てくるかもしれない。
2024/06/17 02:00 日経速報ニュース
金融市場では週明け以降も円安圧力が残るとの見方が広がっている。国内景気の弱さから日銀は追加利上げに踏み切りづらく、日米金利
差が開いた状況が続くとの思惑があるためだ。7月末の金融政策決定会合へ向け、1ドル=160円を試す展開となりそうだ。
日銀は14日の決定会合で長期国債の買い入れを減らしていく方針を決めた。具体的な減額計画は次の会合で決めることになった。市場では
「日銀はかなり慎重な姿勢だ。米連邦準備理事会(FRB)が利下げを始めるまでは円安・ドル高基調が続く」(りそなホールディングスの井口慶
一シニアストラテジスト)との受け止めが広がった。
低金利の円を調達してドルなど高金利の外貨で運用する「円キャリー取引」が円安をけん引してきた。日本とは対照的に、FRBは2023年7月
まで利上げを続け、政策金利は5.25?5.5%と高水準で維持する。複数の主要通貨に対するドルの強さを示すドル指数は14日、一時105台と5
月上旬以来、約1カ月半ぶりの高水準をつけた。
主要な米経済指標の多くが足元で弱含み、市場では年内2回の米利下げ予想が最多だ。ただ12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFR
Bは利下げに慎重なタカ派姿勢を示した。利下げ時期が後にずれれば、ドル高圧力が残ることになる。
日銀の追加利上げも焦点だが、市場では「今回慎重な運営をとった日銀が、次回会合で減額の具体策と利上げを同時に決めるような大胆
な運営はとらないのではないか」(三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジスト)との見方が少なくない。
「日米の政策金利差が開いた状態のままでは、円キャリー取引も続きやすい」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)。
円安基調がすぐに反転する状況は見込みづらい。
厚生労働省が5日発表した4月の毎月勤労統計調査(速報)では、物価変動の影響を除いた実質賃金が25カ月連続でマイナスとなった。内
閣府が10日発表した1?3月の国内総生産(GDP)改定値も年率換算で1.8%減と低迷する。
岡三証券の武部力也シニアストラテジストは「景気停滞とインフレが共存するスタグフレーションに陥る可能性がある」と指摘。「政府がデフレ
脱却を宣言していない状況で日銀が利上げに打って出るとは考えにくい」とみる。
日本経済の停滞感は日本株の足も引っ張っている。「海外投資家の日本のマクロ経済への期待感はかなり落ちた。消費の弱さへの懸念
は強い」。UBSが香港で5月下旬に開いた投資カンファレンスに参加した同社の足立正道チーフエコノミストは指摘する。
東京証券取引所が公表する投資部門別売買動向によると、海外投資家は6月第1週(3?7日)までの3週連続で日本株を売り越した。トヨタ
自動車株は14日、4カ月ぶりの安値に沈んだ。3月の最高値比で2割安い。円安はトヨタのような輸出企業にとって為替換算による収益押し上
げ要因となるが、株価には追い風となっていない。
大和証券の阿部健児チーフストラテジストは「米国ではインフレ鈍化を示す指標が相次ぎ、金利は低下傾向だ。バリュー(割安)株の色彩が
強い日本株よりも、金利低下の恩恵を受けやすいグロース(成長)株がけん引する米国株の方が優位になりやすい環境が続く」とみる。
BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは「日本株への買いは手控えられ、次の日銀会合までに日経平均株価が4万円の大台を回
復することはない」とみる。
市場では4月29日に政府・日銀による為替介入とみられる円急騰が起きる前の1ドル=160円前後の水準が当面の節目とみる向きが多い。
ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジストは「エネルギー関連の輸入に伴う円売りなど、実需の円安要因も大きい」と
指摘する。
日銀の植田和男総裁は14日の記者会見で「経済・物価情勢に関するデータや情報次第で短期金利を引き上げて、緩和の度合いを調整する
ことは当然あり得る」と7月会合での追加利上げに含みを持たせた。
日米ともに次回の金融政策決定会合は7月30?31日に開く。「日銀としては過度な円安も、急激な金利上昇も避けたいというのが本音だろう
」(邦銀ディーラー)。景気の腰折れを防ぎつつ段階を踏んで量的引き締め(QT)を進める日銀の足元を市場は見透かしている。
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2024/06/19 05:00 日経速報ニュース
外国為替市場で円が幅広い通貨に対して下落している。対ドルでは1ドル=158円台まで下落した。スイスフランや英ポンドなどに対しては
4?5月に政府・日銀が為替介入に踏み切る前の安値をすでに突破している。対ドルでは介入への警戒感が円安進行のスピードを抑えてい
るものの、介入の神通力が及ばないその他の通貨では「隠れ円安」が着々と進む構図だ。
「日銀が(先週末の金融政策決定会合で)『何もやらなかった』という市場の評価が、円売り圧力になっている」。三井住友銀行為替トレーデ
ィンググループの納谷巧グループ長はこう話す。
18日の外為市場では円が一時1ドル=158円台に再び下落した。14日の決定会合で日銀は国債買い入れの減額開始を7月以降に先送り
した。すでに5%超の水準まで金利を引き上げている米国との差が改めて意識された。
円売りがなかなか止まらない。6月上旬に付けた1ドル=154円台半ばからじりじりと円安が進む。今後の焦点は4月29日につけた160円を
探る展開になるかどうかだ。同日に今年に入って1回目の為替介入が入ったとみられている。
4?5月に政府・日銀が9.7兆円と過去最大規模の円買い為替介入に動いたと判明した。160円に向けて円安が進めば再介入により円が押
し上げられかねない――。そんな警戒感から下値では買い戻しが入りやすくなっている。為替介入の効果により円が2円ほど円高の水準にと
どまっているともいえる。
ただドル以外の通貨に対しては、既に介入効果を喪失しつつある。米ドル以外の通貨に対する「隠れ円安」が進み始めたからだ。基軸通貨
のドル以外に対しては、円安が進んでも政府が円買い為替介入に動く可能性は低いとの見方から、円売りの安心感がより大きい。
18日には対スイスフランで一時1スイスフラン=178円台と、英LSEGで遡れる1982年以来の最安値を更新した。対英ポンドでも1ポンド=200
円台と約16年ぶりの安値圏に沈んだ。
対ニュージーランド(NZ)ドルでは14日に一時1NZドル=97円台と、2007年7月以来およそ17年ぶりの円安・NZドル高水準を付けた。オースト
ラリア(豪)ドルに対しても1豪ドル=105円台と約11年ぶりの安値圏で推移している。
フランスの右派台頭で政治的リスクが意識される対ユーロでは1ユーロ=169円台と介入前に付けた171円台半ばよりは円高水準にある。
もっとも14日に付けた167円台からは円安に振れるなど、円安圧力は根強い。
新興国通貨に対しても円安進行が鮮明だ。南アフリカランドに対しては1ランド=8円台後半と2年ぶり円安水準を付けた。中国人民元やタイ
バーツなどに対しても2024年の最安値圏で推移する。
「隠れ円安」の背景には低金利の円を借りて高金利通貨で運用し、金利差で収益を得る「円キャリー取引」を継続しやすい環境になっている
ことがある。
あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは「日銀が次回7月の会合までは減額や利上げなど金融引き締めに動かないことが
安心材料となり、少なくとも1カ月程度は円キャリー取引をしやすい環境が整った」と話す。
キャリー取引は相場の変動率が下がるほど魅力度が増す。仮に円高が急激に進むと金利収益以上に相場変動で損失を出しかねないからだ。
米連邦準備理事会(FRB)による利下げも秋以降との見方が大勢だ。日米の金融政策を巡っては円相場を大きく動かすイベントがしばらくない
との見立てから、キャリー取引を手がけやすい環境との認識が広がる。
日米の3カ月金利差を予想為替変動率で割った「キャリー・リスク比率」をみると、17日には0.61と3週間ぶり高水準で推移する。対ドルでの
キャリー取引の魅力度上昇は、基軸通貨のドルを介して取引することが多い他通貨にも広がりやすい。
直近では想定外の政治イベントで巻き戻しの動きもあった。ここ数年の円安局面でキャリー取引の相手通貨として人気となってきた対メキシコ
ペソでは、与党連合の大勝を受けた財政懸念の強まりを受けて5月末比で一時10%超も円高・ペソ安に振れる場面もあった。
11月には米大統領選を控えるなど政治リスクが一段と強まる。とはいえ現時点でキャリー取引の巻き戻しはメキシコペソなど一部の通貨に
とどまる。幅広い通貨で円が安値を更新する「隠れ円安」の継続は、市場参加者に低金利を背景とした円安圧力が根強いことを強く印象づけ
ている。