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［値段の真相 シン中古市場］＜１＞
ワールド・ベースボール・クラシック（ＷＢＣ）日本代表の活躍に列島が沸いた３月。フリーマーケットアプリ大手メルカリで野球関連商品の取引価格と数量が急激な伸びをみせていた。
野球が盛り上がる今、出品すれば高く売れるかもしれない――。そう思った利用者がユニホームなどの中古品を大量に出品したのだ。
メルカリ内の取引価格や数量の変動状況を示す「メルカリ物価・数量指数」によると、３月の「野球」の取引価格は前年同月比１・７倍、数量は１・６倍に達した。メルカリ総合研究所の志和あかね研究員は「今まで見たことがない急激な上昇だった」と話す。
企業が決める価格と違い、利用者は需要に応じて柔軟に価格を上げ下げできるため、世相を反映しやすい。個人間取引で生まれる「民意の価格」（志和氏）は、消費行動や価格のあり方を大きく変えようとしている。
メルカリは２０１３年にサービスを始めた。今では約２２００万人の利用者を抱える。個人の出品者を引きつけるため、様々な工夫を凝らしてきた。
その一つが人工知能（ＡＩ）の活用だ。１７年にはＡＩが出品時に売れやすい価格帯を示し、利用者の価格設定を手助けするサービスを導入した。
３０億件超の出品データをＡＩが学習し、過去に売れた価格帯をもとに「相場価格」をはじき出す。「値決めが苦手な人は多く、類似商品の売れた価格を調べるのは手間もかかる。出品を簡単にするために導入した」（メルカリ）という。
中古市場といえば、住宅や自動車など、中古でも買い手がつきやすい高額なものが中心だった。フリマアプリの普及は中古市場の対象を大幅に広げ、「あらゆる物に値札がつくようにした」（経済学者）と言われる。
メルカリでは流木やかまぼこの板、トイレットペーパーの芯まで売られ、実際に買われている。
対象の広がりは中古市場の拡大を先導する。中古市場に詳しい専門紙のリサイクル通信の推計によると、２１年の市場規模は過去最大の約２・７兆円に達した。そのうちフリマアプリなどインターネットを介した個人間取引は約１・２兆円を占めた。これは１６年の２倍を超える規模になる。
拡大する中古市場は、今や新品の市場にも影響を及ぼし始めている。
メルカリを頻繁に使う利用者からは「新品を買うのはもったいないと思うようになった」との声が上がる。消費は中古で済ませ、新品を買い控える動きと言える。
一方、あらゆる商品の中古相場が「見える」ようになったことで、「１０万円の高いコートでも、メルカリに出品して７万円で売れるなら実質３万円で手に入れられる」と皮算用する利用者も出ている。後で売るのを見越して高めの新品を買おうという消費行動だ。
消費者の購買行動を研究する慶応大学の山本晶教授は「中古価格の水準が新品を買う際の予算や、どのブランドを買うかといった消費者の選択に大きな影響を与えるようになっている」と分析する。
中古市場の動向はメーカーにも影響を与えているようだ。メルカリによると、メルカリでの売買数を見て、自社商品の人気度を測っているメーカーもあるという。
人気があるほど、中古品でも売れやすいからだ。メルカリの小泉文明会長は「企業主導で作られてきた価格や流行に対し、個人がより強い影響力を発揮できるようになっている」と話す。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230807-OYT1T50267/
最後に買った人が選するシステムｗ