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候補者の若狭勝の演説は全く冴えず、小池の応援演説も勢いを見せず惨敗だった
駅前広場に響く聴衆のため息、どこからか聞こえる「これじゃ５０議席も危ないな」の声
無言で帰り始める聴衆達の中、百合子は独り選挙カーで泣いていた
知事選・都議選で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる仲間たち・・・
それを今の希望の党で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」百合子は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、百合子ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい選挙カーの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってパリ行きの準備ををしなくちゃね」百合子は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、百合子はふと気付いた
「あれ・・・？人がいる・・・？」
選挙カーから飛び出した百合子が目にしたのは、駅前広場を埋めつくさんばかりの聴衆だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように希望の党の応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする百合子の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「百合子さん、首班指名ですよ」声の方に振り返った百合子は目を疑った
「わ・・・若狭さん？」 「なんだ小池さん、居眠りでもしてたのか？」
「い・・・石破さん？」 「なんだ小池、勝手に安倍を引退させやがって」
「小泉さん・・・」 百合子は半分パニックになりながら手元の日刊ゲンダイに目を落とした
『希望の党歴史的圧勝。自民党惨敗。小池政権誕生、安倍政権退陣へ。』
暫時、唖然としていた百合子だったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつ無かった
「勝った・・・勝ったのよ！」
天皇から任命書を受け取り、組閣本部へ全力疾走する百合子、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、東京都庁で冷たくなっている百合子が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った