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僕は彼女にバッテリーを手渡された。彼女の手は小さくて温かかった。その瞬間、僕の心臓は少し早くなった。
「ねぇねぇ、敵いる」
その言葉に僕は少し驚いた。彼女の表情は真剣そのものだった。
「え？いないよ？」僕は周りを見回しながら答えた。
彼女はしばらく黙ったまま、目を細めて遠くを見つめていた。まるで何かを感じ取ろうとしているかのように。その姿はどこか夢幻的で、僕は思わず見惚れてしまった。
「本当にいない？」彼女の声は少し震えていた。
僕は再び周りを見回し、何も変わったことがないことを確認した。それでも、彼女の不安は伝わってきた。
「大丈夫だよ、今は何もいないよ。」そう言いながら、僕は彼女の肩にそっと手を置いた。
彼女は小さく頷き、微笑んだ。その笑顔には、どこか安心感と同時にまだ消えない不安が混じっているように見えた。
「ねぇ、ケンタ君。敵って、本当にいるのかな？」彼女は少し考え込むように言った。
「どうだろうね。でも、僕たちが一緒にいる限り、大丈夫だと思うよ。」僕はそう言いながら、自分自身もそう信じたいと思った。
その後、僕たちはしばらく黙って歩き続けた。夕暮れの街は静かで、二人の足音だけが響いていた。その静けさが、逆に僕たちの心の中の不安を際立たせるようだった。それでも、彼女と一緒にいることで、その不安も少しずつ和らいでいくのを感じた。
風が少し冷たくなってきたので、僕は彼女の手をそっと握った。彼女の手はまだ温かくて、その温もりが僕たちを繋ぎ止めているような気がした。