黄金仮面の微笑―統帥の根源は人格にありアーカイブ最終更新 2019/02/21 16:471.名無しさんjCs8fqoc0この日は晴天で、司令部の附近の草むらではしきりに小鳥の声がしていた。ここでも幕僚の二、三が、この出撃を思い止まれないかと繰り返してみたが、中将は笑ってこれをしりぞけ、すぐさま自動車で飛行場に向かった。飛行場は滑走路だけ残して夏草でいっぱいだった。その夏草を吹き千切るように出撃してゆく彗星が試運転の爆音をひびかせている。数えてみると九機ある。中将は小首を傾げて指揮所の前に立った。十八名の搭乗員が日の丸の鉢巻姿で整列して中将を迎えた。「指揮官! 命令は五機のはずなのだが……」すると、この七百一空の派遣指揮官伊藤大尉は、頬を真っ赤にして怒鳴るような声で答えた。「長官が直接特攻をかけられるというのに、たった五機で出すという法がありますかッ。私の隊は全機でお供いたします!」一瞬、黄金仮面と綽名された中将の顔は硬ばった。まさに統帥の根源は人格であったのだ。まだ停戦命令こそは出ていなかったが、すでにご放送のあと……生が最大の執着ならば、あり得ない事態が眼の前に起こっている。「そうか……皆、私と一緒に行ってくれるか」「はいッ……」十八人の若者たちは、間髪を入れず、声を揃えて右手をあげた。これもまた日本ならではあり得ないことであったろう。「ありがとう」黄金仮面には深い感動の微笑がきざまれ、それから一人ずつ握手してまわって機上の人となった。出典 https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/history2/15507352372019/02/21 16:47:171すべて|最新の50件
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ここでも幕僚の二、三が、この出撃を思い止まれないかと繰り返してみたが、中将は笑ってこれをしりぞけ、
すぐさま自動車で飛行場に向かった。
飛行場は滑走路だけ残して夏草でいっぱいだった。その夏草を吹き千切るように出撃してゆく彗星が試運転の
爆音をひびかせている。
数えてみると九機ある。
中将は小首を傾げて指揮所の前に立った。十八名の搭乗員が日の丸の鉢巻姿で整列して中将を迎えた。
「指揮官! 命令は五機のはずなのだが……」
すると、この七百一空の派遣指揮官伊藤大尉は、頬を真っ赤にして怒鳴るような声で答えた。
「長官が直接特攻をかけられるというのに、たった五機で出すという法がありますかッ。私の隊は全機でお供
いたします!」
一瞬、黄金仮面と綽名された中将の顔は硬ばった。
まさに統帥の根源は人格であったのだ。
まだ停戦命令こそは出ていなかったが、すでにご放送のあと……生が最大の執着ならば、あり得ない事態が
眼の前に起こっている。
「そうか……皆、私と一緒に行ってくれるか」
「はいッ……」
十八人の若者たちは、間髪を入れず、声を揃えて右手をあげた。
これもまた日本ならではあり得ないことであったろう。
「ありがとう」
黄金仮面には深い感動の微笑がきざまれ、それから一人ずつ握手してまわって機上の人となった。