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馴れ合い板のコテ罰と豆腐ってのが乱立させてるのが要因
マスターのスレで5ちゃんのレスコピペされたら即座に自作自演のスレを5ちゃんに立てるほど
ずっとtalkと5ちゃんねるを行ったり来たりしてるだけなんだな
自分は≯∋%だけど、て言い方
絶対コテ罰なんよねw
本人だけ気づいとらんのがわらうw
ワンパ杉やろwバカがw
面白いよねマスター
彼はそんなに古くないよ
何でイテスレが不倫板に立ってるんだ？
フイタのイテスレはアネモネが建てたんじゃないの？
いてこは俺が守る
凛とは相性の悪かった二人だもの、何気に似てるんじゃない？
どうよ？ネット恋愛とかやってみて
蜂子みたいに穢れてない
まあ、女としては終わってるかさすがにw
おますも女としてはみられないってかw
ココロがキレイな人つうか普通な人はここでは叩かれやすいけどさ
守りたくなるじゃん 守るなんて烏滸がましいけど
蜂子だって最初からそんなんじゃ無かっただろ
どこでねじ曲がったんだ
まだ戻れるって
超絶かまってちゃんなだけだろｗｗ
ねじ曲がってるのなんて屁村だけやｗｗｗ
オチンポも左曲がりなんだろうな
名無しで人を叩くし
別に綺麗な心じゃないと思うけど、まあそれを可愛いと思うならちゃんと相手してあげたらいいと思うよ？
蜂子がおかしくなったのは多分な、元ダンナのせいだろう
誰も信用出来ない 他人を羨んで叩く
吐露してみろ 楽になれ
裏しか無いという意味では、そうだな(笑)。
二枚舌ではないということだね、もっと簡単に言えば
わたしは二枚舌を一番信用しない
影でこそこそするなw
889 イテ◆ibzNwpO2UKK/ sage 2023/11/21(火) 08:20:07.84 ID:V5zfz
これ貼ったの本人？w
あの人こそ嘘つきだから名前出すのも絡むのも嫌で避けてたのに
ずっと我慢してきたけど
あの人こそ固定でも名無しでも私を叩いてた癖に
私がたった一回、冗談で言った事をグチグチ何回も言われてるw
もう百倍返しされてるわw
はい、私は綺麗な心ではありませんw
ワロタw
あんたが一番二枚舌なのにw
いつまでも私の名前をネチネチ出すし
マスターやコテ罰が自分の味方と思ってわざと私の名前を出したんだと思うけどw
マスターが私の心を綺麗と言ったから
嫉妬だと思うがw
いい加減.私の名前を出すのは止めて頂けませんか？
その嫌いな人と私の名前をセットで出す事でマイナスのイメージを持たせる汚い手法
よく名無しがマスターのスレで誰かと私の名前をわざと出すのよね
貴女だったりしてね？w
豆腐が壁スレで暴れてるな
童貞拗らせてる
おますが面倒みてあげてw
ざっと思い付く限りコテを並べてみたけど、誰が名無しでイテをdisってるんだろうな？
俺やマロではない事は天地神明に誓うけど。
↓
晃？アネモネ？居候？イテ？エヌ？エルティー？かおり？カトリン？かのか？鴉？キハダ？ぎんばちゃん？コーギー？小僧？コテ罰？ジーニー？主婦？真如？すし太郎？すっぴー？砂蝉？spy-？こんぐ？セレガ？タカヲ？ダークん？ちんぽろ？ティーツリー？てきとお？デビル？豆腐？藤和？ととのえ？蜂子？蜂蜜？はな🙂？日村？藤木？武士？ぷっち？ぼすとろ？魔鬼？マスター？マロ？マラ基地？ミカ？ミグ？未来の有名（仮）？よしこ？桃？ﾔｼﾞﾆﾓ？やっこ？やむ？ゆう？ゆーじん？ゆっきー？ゆゆ？凛？ルナ？レイ？
↓↓
愛をマスター30
https://talk.jp/boards/furin/1700245055/95
95 名無しさんといつまでも一緒 sage 2023/11/18(土) 09:27:10.33 ID:jIMF3
イテはマスター擁護派だからな
頭おかしいな
https://talk.jp/boards/furin/1700245055/275
275 名無しさんといつまでも一緒 sage 2023/11/19(日) 08:17:08.03 ID:hOjgZ
こうやって見るとおますも蜂子も似たようなもんやな
ついでにイテもｗ
https://talk.jp/boards/furin/1700245055/298
298 名無しさんといつまでも一緒 sage 2023/11/19(日) 09:39:40.01 ID:IhQHK
おますやイテなんかの家に生まれたら地獄やろな
https://talk.jp/boards/furin/1700245055/485
485 名無しさんといつまでも一緒 sage 2023/11/20(月) 00:29:49.65 ID:bdDfD
この辺で一番幸せそうなのてイテやね
今日も残金数えて幸せそうにしてたわ
https://talk.jp/boards/furin/1700245055/601
601 名無しさんといつまでも一緒 sage 2023/11/20(月) 07:37:42.92 ID:bKdZB
>>600
イテとか蜂子とか？
637 ：（壁女） ◆46CTTYFTJXBB [] ：2023/11/21(火) 18:05:21.09 ID:akUCdHKO0
>>633
新参者なので仕方ない。名前は聞いたことあるかもだけど…
>>634
コテ罰さん嫌われてんねー
ありがとう
コバさんやマロさんでないのは分かってます。
だけど、何故私の名前まで書いてるの？
しかし、そんなに沢山居るのかw
マスターありがとう😆💕✨
でももう言わないで(^-^;
>>14
ありがとう🍀
でも私は守って貰わなくても大丈夫よ
マスターは自分の事だけ考えてね(*^-゜)vThanks!
>>23
ありがとう😆💕✨
talkも人が集まって来て5ちゃんみたいになってきたね😅
最初の頃が懐かしい。(^-^;
好きだったのよあなた
70歳板にでも逝けばかまってもらえるかもよ？ww
こんにちは
おやすみなさい
ご飯食べました
お風呂入りました
韓流ドラマ見てます
毎日それしか言うことがない
胸の奥でずっと
(´・ω・`)アラフィフティーツリー姉さんにマンチューしたいお(´・ω・`)
すまん誤爆
ほらよ、これも
939 はじめまして名無しさん sage 2023/11/28(火) 23:28:02.05 ID:???0
セロリと恋人関係になりたい
>>4
ミソしか能のない名古屋の土人に首都は無理。
まずあの気持ち悪い顔した反日の知事を何とかしろよ。
4 社説＋で新規スレ立て人募集中 sage 2024/02/05(月) 23:03:57.98 ID:LxU/24jO0
もうトンキン終わりだよ
これからは名古屋が首都だな
田舎の大学を卒業して東京に出てきて2年、地元の彼女と遠距離恋愛を続けていたが先月別れを告げられた。他に好きな人ができたということだった。忙しくてなかなか帰省することもできずに寂しい思いばかりさせてしまっていたのでこれはもう自業自得だ俺が悪い。
こっちに来て結婚しないかと悪あがきしてはみたものの時すでに遅し、彼女の心はもう俺には向いてなかった。
そのショックからまだ立ち直ることができていないある夏の夜
あっ！
会社帰りで最寄りの駅から自宅まで歩く道すがら、数メートル前を歩いているパッと見スタイルの良い20代っぽい女性の手元から何かが落ちた。
それは黄色いハンカチだった。女性は気付かずスタスタ歩みを止めない。
その時俺は本当に無心でそのハンカチを拾って小走りにその女性に追いつき
「すいません、これ落としましたよ」
とハンカチを差し出した。
急に後ろから声を掛けられたせいか女性は肩をビクッと震わせ振り向いた、その顔は目を大きく見開き何故か尋常ではない驚きの表情を浮かべていた、指先もかすかに震えていたように思う。
「あ、驚かせちゃったかな、ごめんなさい、最近ここら辺痴漢が出るって話もあったしそりゃあびっくりしますよね。このハンカチあなたのですよね？」
「は、はい、わたしのです。どうもありがとうございます」
俺からハンカチを受け取る彼女の姿が俺のハートをクリティカルヒット♪、そう、まさに撃ち抜いたのだ。
(なんてかわいいんだ)
ナンパなんか生まれてこの方一度もしたことがない俺がさもそれが当然であるがごとく話しかけていた。
「俺この辺に住んでるアネモネっていいます。びっくりさせちゃったお詫びにお茶、いや送って行きます、ぜひ送らせてください」
「はい、よろしくお願いします」
「そうですよね、やっぱりこんなナンパみたいなのは嫌ですよね、じゃあ気をつけて帰ってくださ、え？」
そこからの俺は舞い上がって何を話したか覚えていないが最後に彼女の素性を聞き出すことができた、ヨシコ21歳社会人1年目、そしてすんなり次の約束を取り付けることができた。
それから俺たちの交際が始まった、地元の彼女と別れてハートブレイクでふさぎ込んでいた日常が180度転換した。
ヨシコは普段はとても優しく穏やかでギャグが大好き、なんとなくカピバラを思い起こさせるような風貌をしているが、政治と音楽の話になるとその様相は一変するのであまり触れないようにしている。
楽しいデートを繰り返していたある日、ふとあの俺たちが付き合い始めるきっかけになった黄色いハンカチの話題になった。
「俺たちあのハンカチがなかったらこうして付き合うこともなかったんだよな〜、ハンカチに感謝感謝だなw」
「ふふふ、じゃあひとつ秘密を打ち明けちゃおっかな、あのハンカチね不思議なお店で買ったの。そのお店にね、
【映画、幸福の黄色いハンカチで実際に使用されたハンカチ！これを意中の人の目の前で落としてその人が拾ってあなたに渡してくれれば両想いになれると言われています】
なーんて書いてあったからおもしろーいと思ってつい買っちゃったの。それを買った少し後に電車であなたを見かけるようになって、素敵な人だなぁって。それでこのハンカチ試しに使ってみよかなって、えへへwほんとに効果あったね、びっくりしちゃった」
「マジかよそれ！あー、だからあの時俺が声を掛けたらすっごいびっくりした様子だったのかよ」
「さーってねw信じるか信じないかはあなた次第でーーすw」
俺は、あーこれはヨシコならではのギャグだなと思ってそれ以上突っ込むことはしないで笑って話を終わらせた。
俺たちの交際は順調に進み、3年が経過した頃に俺はプロポーズした。結婚生活も波風立つことなく、2年後には長男、4年後に長女が生まれた頃、俺は2ちゃんねるという掲示板を知った。
色んな板を見てまわっていたが、気付くと不倫浮気板にいるハチコというコテから目が離せなくなってしまっていた。
すごいなこの人は、俺の感性にぴったりなレスをする。
どうやらこの板のコテたちは頻繁にオフをしているらしい、どうしてもハチコに会ってみたくなった俺は、コテとして参加し、持ってるスキルを総動員してハチコとのオフに漕ぎ着けた。そこからは雪崩のように不倫の泥沼にはまってしまったのである。
鋭いヨシコが俺の変化に気付かないわけがなかった。
けして証拠を残さない俺を直接追求することはなかったが、俺たちの関係は急速に冷めていってしまった。
俺はヨシコのことも、もちろん子供たちも愛していた。しかしハチコとの関係を止めることはできなかった。
そんな仮面夫婦の関係になってしまってから1年後のある日の仕事帰り、駅前の喫煙所で2ちゃんねるでのハチコの活躍をニラヲチしながら一服しているとヨシコの姿が見えた。
なんでこんな時間にあいつがこんなところに、子供たちはどうしてるんだ。
不審に思い俺はヨシコの後をつけることにした。
ヨシコの約20m後ろを歩く、俺とヨシコの間には2人いる。
まさかヨシコも不倫してるのか、という疑惑が頭をよぎる。
その次の瞬間から起きた出来事は俺の思考を停止させた。
ヨシコの手元から何かが落ちた
それはゆっくり、本当にスローモーションのように落下していく幸福の黄色いハンカチ
ヨシコの直後を歩いていたスーツの男がそれを拾い上げヨシコに声を掛ける
声を掛けられてゆっくり振り向いたヨシコの表情は、あの時、俺があのハンカチを拾ってヨシコに渡した時と同じような驚きの中に期待と不安が入り混じった女の顔だった。
「ヨシコ！」
俺は大声で叫び駆け出していた。ヨシコの話を信じていたわけではないのだが、黄色いハンカチをあの男から受け取らせてはいけないという思いが瞬時に沸き起こり俺を動かした。
ヨシコの表情は凍りついていたがお構いなしに俺は2人を交互に見ながら語りかける。
「ヨシコ、出かけていたのか、ん？この人は？知り合い？」
「あ、いや、その方がこれを落とされたので拾ってお渡ししようかと声を掛けたところです。」
スーツの男はハンカチを差し出しながら答えた。
「あぁそうだったんですか、いや僕らは夫婦でして普段妻はこの時間は家にいるはずなので驚いて声をかけた次第です。どうもご丁寧にありがとうございます。」
俺はそう言って男からハンカチを受け取った。この時俺の脳裏によからぬ考えが次から次へと浮かんだ。
(まさかこれで俺とこの男がウホの関係になったりしないだろうな、いやいやないないないそれはない、俺がハンカチを落としたのではないし、だいたいこの男のことなど知らないし俺はそもそもウホではない、ていうかハンカチにそんな能力などある訳がないだろ、ではなぜ俺は今こんなことをしてるんだ？)
ヨシコは、一瞬動きが止まった俺の手からハンカチをもぎ取り
「どうもありがとうございました」
と一礼して踵を返して歩き始めた、俺も再度男にお礼を言ってヨシコの後を追った。
「おいちょっと待てよ、こんな時間に何してたんだ？それとこれは一体どういうことなんだ？あのハンカチはあの時俺が拾っておまえに渡したハンカチじゃないのか？」
「はあ？なにそれ、そんな訳ないじゃないのもう何年前のことだと思ってるの？とっくの昔に汚れて捨てちゃったわよ。何考えてるのよ、変な疑いかけないで。わたしは今日は国葬反対のデモに参加してその帰り、子供たちにはご飯作ってあります。」
怪しい、俺に一瞥もくれない、デモにそんなオシャレな服で行くのか？あの日以来黄色いハンカチを使っているところなど見たことがない、それに偶然に2度も男の前で都合よく似たようなハンカチを落とすなんてことがあるのか？そしてあの振り返った時の表情は？
嘘をついていると思いつつ俺は何も言い返すことができなかった。
あれから悶々とした日々が続いていた。
ヨシコはあの男といい関係になるためにハンカチを使ったのではないかという疑惑が頭から離れない。そう思う度に胸が締め付けられる。やはり俺はヨシコを愛している。失いたくない。
当たり前だが元はと言えば俺が悪いのだ、しかし正直に全てを打ち明けて許しを請う勇気が出ない。ヨシコが許してくれる姿を想像できない。確実な証拠は握られてはいない、まだ疑惑の段階のはすだ。しかしヨシコの気持ちはもう俺を見切ってしまっているのではないのか。なんとかしなくては、ここで食い止めるためにはどうすれば、、、
毎日のように悩み続けて、あるひとつのプランに思い至った。
そのためにはまずあのハンカチが本物の幸福の黄色いハンカチなのかどうかを確認しなくてはならない。
俺に見つかってしまった手前、またすぐ使おうとは思わないはずだ。毎日持ち歩いているならお手上げだが、そうでなければこの家のどこかにあるはず。
休日にヨシコの留守を見計らって家中を探し回った結果やっと見つけた。化粧ダンスの一番奥の奥に隠すようにそれはあった。
間違いない、これだ。あとはこれの効果を実証する必要がある。
意中の人と言うためにはある程度俺自身が好意を持ってないといけない。しかしまさか社内の女性に使う訳にはいかない。トラブルになれば俺のサラリーマン人生が終わってしまう。かと言って顔見知りの近所の若奥タソも無理だ。やはりネット内の人でなければ。
以前から、不倫板でハチコの他にもう一人気になっている女コテがいた。「ゆゆ」だ。ハチコとはまた違う女性特有の男を包み込んでくれるような魅力的なレスと天然の明るさが際立っていた。よし、決めた彼女にターゲットロックオンだ。
実は俺はいろんな板で複数のコテを使って遊んでいた。ハチコとのオフを実現させたコテは、「はると」だった。ゆゆとオフに持ち込むには新たにコテが必要だったので俺は「リー」というコテでゆゆに迫った。
自慢じゃないが、レスで女性の心を掴むのは誰よりも上手くやれる自信があった。
ほどなくしてスレ上でゆゆと仲良くなり、オフの段取りが決まった。あとはハンカチだ。
毎晩ヨシコが寝てからこっそりとハンカチを確認していたが、動かしている形跡はない。
有休を取ったオフの日の前日の夜中にハンカチを取り出し鞄に入れた。
そしてオフ当日、待ち合わせ場所に先に着いて待っていた俺に、
「はじめまして、リーさんですか？ゆゆです」
と声をかけてきた相手を見て驚いた、そこに熊田曜子が立っていた。いや、よく見ると僅かに違うか、しかし激似だ、それになんと言ってもはち切れんばかりのバストにヒップ、一瞬で心を持っていかれそうになる外見から俺は目を逸らして、たどたどしく挨拶を交わして歩き始めた。
だめだだめだ、目的を忘れてはいけない、今回ばかりは俺の魅力で落とす訳にはいかないし、本気で惚れてもだめなのだ、ハンカチの力の実証が目的なのだ。
レストランに入り、できる限りダメ男を演じた、マナーはなってない、下品なエロネタ連発、貧乏の演出、まさかこんな男に惚れるはずはないというレベルの振る舞いだ。
そしていよいよだ、トイレに立つ時に目立つようにゆゆの足元にハンカチを落とした。
「あ、リーさんハンカチ落としましたよ。」
とゆゆが拾って手渡してくれた。
ミッション完了、これでハンカチの能力が発動すればこちらが何もしなくてもゆゆの方からアクションがあるはずだ。
食事も終わり、ランチだけの予定のオフも終わりに近づいた頃、唐突にゆゆが切り出した。
「リーさん、こんなわたしですけどまた今度オフしてもらえますか？」
来た、さっきまで俺の振舞いに怪訝そうな顔つきで今にも帰りたそうにしていたゆゆがハンカチを拾ってからその感情が明らかに変化した。
俺はこのハンカチの能力を確信した。
ゆゆとのオフの後俺は仕上げに取り掛かる。
俺はそれとなくリーでゆゆとのオフの話をスレで小出しにした。予想通りハチコはそれに飛びついてくる。
ハチコとの関係があるはるとと、ゆゆとオフをしたリー、この2人のコテの共通点が話題になるのにそれほど時間はかからなかった。
背格好や髪型、顔の特徴、会話の内容から間違いなく同一人物であると結論付けられ、スレ上では屑野郎と罵られ、ハチコとゆゆからのLINEでの罵倒の嵐。
これでよし、俺はハチコとゆゆのLINEアカウントを削除し、はるととリーのコテを封印した。
これで俺はなんの証拠も残さず不倫相手とオフ相手を清算し、余計な多重コテを整理することに難なく成功した。
あとやるべきことはひとつ。
俺は変装用のカツラと、俺の趣味とはほど遠いセンスのブラウンにどぎついストライプの入った半沢直樹の大和田常務バリのスリーピーススーツを用意した。
チャンスを待つこと数日、いよいよその時がやってきた。
休日に実家に行くので帰りが遅くなるというヨシコ。おおよその帰宅予定の時間を聞いて送り出す。そして俺は黄色いハンカチを箪笥から取り出して夜を待った。
ヨシコの帰宅予定時刻の1時間前から駅の改札を見通せる物陰で息を潜めて待った。
ほどなくしてヨシコの姿が見えた、改札を急ぎ足で抜けてくる。適度な距離を保ち俺はヨシコの前を歩く。数百メール歩いたところで俺とヨシコの間にいた人たちがいなくなった。
(ここだ)
変装で俺とは気付かれてはいないはずだ。もうやるしかない。ヨシコ！行くぞ！
俺はポケットからスマホを取り出す体で一緒にハンカチを摘んで落とした。
(ヨシコ、拾ってくれ、そして俺に声をかけてくれ!)
全身から汗が吹き出し心臓の鼓動で頭が割れそうになる。ほんの数秒のはずが何分にも感じたその次の瞬間、
「あなた」
後ろから聞き慣れた声で呼びかけられ俺は立ち止まった。
あなた？ヨシコなのか、ヨシコがハンカチを拾って俺にあなたと呼びかけているのか、変装などとっくにバレているのか。
ヨシコがどう思っているのかわからなくて怖くて俺は振り向けなかった、呆然と背中を向けたまま立ち尽くす俺に再度あの聞き慣れた優しい声が届く
「あなた、これ落としたわよ、ハイどうぞ」
溢れ出る涙を止めることができないまま俺は振り返り、そこに黄色いハンカチを差し出しながら佇んでいるヨシコを見た。
「ヨシコ、すまなかった、そして、ありがとう」
ハンカチを受け取りやっとの思いで声を絞り出した俺の腕にヨシコは腕を絡めて歩き出し、こう言ってくれた。
「いい夫婦になろうね」
「なあヨシコ、このハンカチどうする？もう処分した方がいいのかな。」
「うん、でもなんかこんなすごいハンカチもったいないような気もするけど。」
「それもそうだけど、誰かヨシコの知り合いにこれあげたい人いる？」
「わたしにはそんな知り合いいないかなぁ」
「そうか、それならちょうど今俺の会社の後輩で片思いで悩んでる奴いるからそいつにあげてもいいかな？そいつすげーいい奴でさ、内気でなかなか切り出せないのよ。」
「いいんじゃないwいい人ならその人に使ってもらうのもありねw」
ヨシコの了解を得て俺は自室に入りスマホを立ち上げJaneStyleを開いた。
俺の後輩にそんな片想いで悩んでる奴などいなかった。
俺はあるスレッドを開き、俺の今残っている最も大切な固定ハンドル「ナイスガイアニ」を使ってあるコテに話しかけた。
「よおw元気か？実はおまいにどうしても渡したいものがあってなw気が向いたら言ってくれ、必ず役に立つはずのものだ、ではまたの」
Fin
そして当たらずも遠からずと感じるのは自分だけだろうかｗ
展開が早くて面白い
星新一のショートショートみたいだった
Pやんとアネモネの東京オフ
パート1 ー偶然ー
ｱﾈﾓﾈ 諸氏よ、社畜諸氏よ、社畜は出張が決まったとき、まずなにをしなければならないか。
Pやん 今度はどちらに出張ですか？
ｱﾈﾓﾈ 来週の月曜から東京へ出張になりましてな。前日には現地に入ります。
Pやん あら偶然！私も日曜は東京ですよ、付き合いで参加するデモですが
ｱﾈﾓﾈ お付き合いのデモでわざわざ東京まで出向いてしまうとは流石としか言いようがありません。
Pやん 国会議事堂見物も兼ねて行ってきますわ
Pやん なんという偶然！
ｱﾈﾓﾈ ちなみに何のデモなんですか？
Pやん 安倍政権の不正に抗議するデモです ﾓﾘｶｹも桜の会の名簿廃棄も何もかも有耶無耶にして国民を馬鹿にしすぎです
ｱﾈﾓﾈ 変に隠そうとするから余計に拗れるんですよね。あんなものはさっさと事実を公開して非があったのなら素直に認めて然るべき対応を取っていれば国民も納得し次に進めるのにといつも思います。
Pやん 安倍政権の隠蔽体質は許せません！
ｱﾈﾓﾈ それでは、日曜の現地入りは少し時間を早めてPやんのデモに声援を送ってみようかなw
Pやん 会えるといいですねw デモ行進は正午丁度に新国立競技場前を出発して国会議事堂までの予定です
ｱﾈﾓﾈ 13時くらいには私も現地入り出来そうですので、私も国会議事堂見物でもしながらPやんデモ隊が到着するのを待つとしますか。
ー日曜日当日
お互いにメール交換などはしていない
もしかしたら会える、という状況を楽しんでいた
デモ隊の中の誰がPやんかは分からないがきっといる
そしてデモ隊を見守る人々のうち誰がｱﾈﾓﾈかは分からないがきっといる
それだけで十分なのだー
ｱﾈﾓﾈ これから東京に向かいます。Pやんはもう東京ですか？
Pやん はい、もう着いています これから仲間たちと新国立競技場に移動します
ｱﾈﾓﾈ 頑張って下さい。後ほど、お会いできるようならお会いしましょう。
Pやん そうですねw
ｱﾈﾓﾈ （デモがスタートしてから一時間。通常の徒歩ならそろそろ到着する頃だろうが、デモの速度ならもう少しというところか。それにしても予想外の警官の数だ。安倍政権への抗議デモとはいえ、いくらなんでも大袈裟過ぎないか。）
ー警察車両から機動隊員の無線連絡のやり取りが聞こえるー
「…あーこちら○班、中核派の動向伝達されたしどうぞ…」
ｱﾈﾓﾈ 中核派だと！？
ーｱﾈﾓﾈはしばし混乱した
自分の認識が正しければPやんはアンチ安倍政権ではあるが革新派ではなかったはずだ
機動隊員の無線連絡が続くー
「…先にｶﾋﾟﾊﾞﾗ同盟のデモ行進が到着するもよう、中核派の動向については追って連絡する…」
ｱﾈﾓﾈ （ｶﾋﾟﾊﾞﾗ同盟、間違いなくPやんのデモ隊だw そうか、たまたま中核派のやつらが同時進行で何かを企んでいるんだな）
「安倍政権の隠蔽体質を許すなー！」
「許すなー！」
「桜の会の名簿を公開しろー！」
「公開しろー！」
ー主催者のスタッフが足早に参加者に何かを連絡して回っているー
ｽﾀｯﾌ 今入った情報ですが、近くで中核派主催によるデモ行進が行われているようです
「中核派が！？なんてこった！」
ｽﾀｯﾌ ただ、警察による厳重な警備も敷かれているとのことなので、我々のデモは予定通り敢行しましょう
「そうだそうだ！こんなことで我々市民の主張が妨げられてたまるか！」
「こちらは平和的な言論による主張をしているのだ、胸を張って行進し続けよう！」
「本当の正義とは何かをあいつらにも見せてやろうじゃないか！」
ｶﾋﾟﾊﾞﾗ同盟のデモ行進の先頭が通りを曲がりこちらに向かってくるのが見えるー
ｱﾈﾓﾈ （おっ やって来ましたね）
ー要所要所に配備され待機している機動隊員に変化は見られない
まるでデモ行進など目に入らないかのように
デモ行進が近づいてくるにつれ、メンバーの様子も見て取れるようになってきた
ヨボヨボと歩くお年寄りに寄り添いながらも道行く人々にビラを配っているこ柄なショートカットの女性がいる
ｱﾈﾓﾈは直感的にPやんのような気がした
ー
「…はいこちら○班 何？！もう一度願います、え、はい、はい、確かに作戦Bなんですね？ 了解！…」
ー機動隊員たちが慌ただしく一斉に動き出したー
機動隊員 皆さん！たった今このエリアは立入禁止となりました、速やかに移動して下さい！繰り返します、速やかに移動して下さい！
ー機動隊員たちにより、ｱﾈﾓﾈ含む一般人やｶﾋﾟﾊﾞﾗ同盟の参加者たちが一斉に一箇所に誘導される
デモに参加していたお年寄りが嘆いたー
お年寄り またこうやって私達を排除しようとしてからに、けしからん！
ｼｮｰﾄｶｯﾄの女性 違うのよお婆ちゃん、きっと何か別のことが起きてるんだわ
お年寄り 福島産が食えなくなったのも全て安倍のせいじゃ
ｼｮｰﾄｶｯﾄの女性 福島産が全てダメなわけじゃないの、サンマの缶詰だってちゃんと検査されてるものは大丈夫なのよ
ーPやんだ、間違いない！ー
ｼｮｰﾄｶｯﾄの女性 はい、何か
ｱﾈﾓﾈ アネモネです、はじめまして
ｼｮｰﾄｶｯﾄの女性 ？？！！
ｱﾈﾓﾈ 驚かせてすみません
Pやん ビックリよもう～！w 何で私だと分かったんですか？
ｱﾈﾓﾈ ご挨拶は後にして、早くここを離れた方が良さそうですよ
Pやん どうやらそのようですね、でも何が何だかさっぱりわからなくて…
ｱﾈﾓﾈ 偶然耳にしたことなんですが、どうやら中核派が絡んでいるようなんです
ー後方にただならぬものを感じて振り向くと、もう一つのデモ隊が目に入った
いや、デモ隊と呼ぶにはもう相応しくない
統制は明らかに取れておらず、無秩序に暴れまわっている「暴徒」だった
ヘルメットを被り旗を振り回してるのが中核派のメンバーだろう、ただ、その人数を遥かに上回るほどの多くの若者たちが混じっている
現体制を暴力を使ってでも転覆させたい中核派のスローガンに、深刻化する格差社会で職にも就けず、金は無いがパワーだけは持て余す若者たちが共感し便乗するのは必然だったのかもしれない
皆マスクをし鉄パイプを振り回し、まるで閉じ込めていた鬱憤を一気に爆発させてるかのような勢いだー
ー悲鳴と共に蜘蛛の子を散らすように逃げ回る人々
辺り一面が一瞬にして火の海となったー
ｱﾈﾓﾈ 火炎瓶だ！逃げろ！
ー転げそうになりながらもｱﾈﾓﾈに手を引っ張られながら一緒に走り出すPやんー
機動隊員 …応答せよ！応答せよ！こちら○班、警官2名負傷、その他負傷者多数！至急救護及び応援を要請する…
ー中核派の動向までは把握していたものの、SNSを通じてどこからともなく若者たちが集まり暴徒化するまでは予測していなかった警視庁は急遽各方面に緊急応援を要請した
国会及び霞ヶ関周辺での事態でもあり、疑わしき者は即逮捕、場合によっては発砲も許可されるという異例の措置がとられたー
Pやん ハァハァ、何で私達まで狙われるのよ！
ｱﾈﾓﾈ 香港の暴動を見たろ？暴徒化した若者たちにとって攻撃対象に公も民もないのさ
警察応援部隊 いたぞ！そこの二人止まりなさい！検挙する！
ｱﾈﾓﾈ マズイ！こっちだ！
Pやん 何で私達まで検挙されるのよ！
ｱﾈﾓﾈ 分からん！それはオレにも分からん！ただ警察がオレたちまでターゲットにしているのは確かだ
Pやん だとしても何で逃げる必要があるのよ！捕まっても私達が彼らとは無関係なことはすぐに分かることじゃないの！
たしかにPやんの言う通りだ
たとえ検挙されたとしてもオレたちは無実なのだから釈放されることは分かっている
しかし、しかしだ
検挙されたらそのまま逮捕される可能性は十分にありえる そうなったら釈放までにどのくらいの時間を要するかが分からないことが一番の問題なのだ
オレは明日の月曜日、何億円もの大きな取引を控えている
まさかスッポカスわけには行くまい
逮捕されても会社や顧客に連絡を入れさせて貰える機会は与えられるのか？
いや、それが叶ったところでまさか中核派絡みの暴動で逮捕されてましたなんて言えるか
もし言えたところで会社や顧客に多大な迷惑をかけてしまうことに変わりはない
悲しいかな、オレは所詮、社畜なのだ
いや、それよりもどうしても理解出来ない事がある
それは、そもそも何故警官たちがオレたちを一般人ではなく暴徒だと誤認したかということだ
ー地下鉄の入り口に逃げ込む二人
階段を降りて右に向かうと、その先には改札口やキップ売場が見える
階段を駆け下りてくる警察官たちの足音が聞こえる
壁に何の標示もない鉄扉があった
ｱﾈﾓﾈが神頼みで取っ手を回すとその鉄扉が開いた
咄嗟に二人は鉄扉の向こうに身を隠した
鉄扉が閉まると同時に警察官たちが階段を降り、改札口の方に走っていった
そう、鉄扉を通り過ぎてー
ー鉄扉の内側は小さな電灯があるだけで薄暗く、よく見るとさらに下に向かう階段があるのが分かった
鉄扉の外では警官たちが周囲の人々に聞き込みを始めている
迷ってる時間はない
二人はその階段を降りた
不安になるくらい長い階段だった
それでもようやく降りきったところに、再び鉄扉が現れた
この扉が開かなければもはや袋のネズミだー
ｱﾈﾓﾈ （頼む、開いてくれ！）
ー幸運にも扉は開いた
しかし扉の向こうには予想外の光景が広がっていたー
ｱﾈﾓﾈ なんだ、ここは
Pやん ずいぶん広い部屋ね
ｱﾈﾓﾈ 部屋なのか通路なのか
ー天井は高く、向こうの壁までは少なくとも50メートル以上はあるのではないか
それが左右にずっと広がっている
工事中なのか壁はまだコンクリート剥き出しのままであちこちで配線や配管が剥き出しになっているー
ｱﾈﾓﾈ 日曜だから工事も休みなのかな
Pやん それにしても何の施設なんだろうね、まさか核シェルターだったりしてw
ｱﾈﾓﾈ いや、そのまさかかもしれない
Pやん ホントに核シェルターなの？？
ｱﾈﾓﾈ 厳密には違うんだけど、、しかしあの噂は本当だったんだな
Pやん あの噂って？
Pやん あれは酷いね！あんな欠陥だらけのスタジアムで3兆とか！
ｱﾈﾓﾈ もしこの施設が本当に俺が噂で聞いたものだとすると、表向きのスタジアムや関連施設には本当に当初の予算通りの7000億円くらいしか使っていないんだ
あとの2兆3000億円がこの地下施設に投じられていることになる
Pやん なんですって？！
ｱﾈﾓﾈ これは地下の施設というより巨大な街レベルの要塞のようになっていて皇居や霞ヶ関各省庁はおろか、新国立競技場や各主要国の大使館まで網羅している
オリンピック開催中に不運にも大震災が起きたりテロなど有事が発生した際は要人や国民たちを速やかに避難させるための言わば巨大なセキュリティ装置のようなもので、その機密性からあえて公にされていなかった…
というのは建前で、オリンピック後も後々使っていくことを想定して今回のオリンピック予算にちゃっかり上乗せしちゃったという政府のいつものあれよw
Pやん ちゃっかり上乗せしちゃったなんて言う額じゃなかばい！ほんまにもう何でもかんでも秘密秘密どこまで国民をバカにしとるんや！
ｱﾈﾓﾈ まあまあw 憤慨したところでここから出られるわけでもなし、とりあえず出口を探そう
Pやん 思ったんだけど、さっきの鉄扉から出れば良いんじゃないかしら
ｱﾈﾓﾈ え？ そうか、別に何もオレらは指名手配されてるわけでもなし、見失ったら警察もそこで諦めて終わりだわな
Pやん でも今すぐ行くのは危険だね
ｱﾈﾓﾈ たしかに、暫くここで時間を潰そう
Pやん それにしても寒いねここ
ｱﾈﾓﾈ 当然ながら空調なんてまだ動いてないだろうしね
Pやん 何か暖をとれるものないかしら
ｱﾈﾓﾈ この大きな段ボールなんかどうだろう？
Pやん 燃やすの？
ｱﾈﾓﾈ まさかw 二人で入るんだよ
ー組み立てた一つの段ボール箱に、先にPやんが入り、次いでｱﾈﾓﾈが入ったー
Pやん 段ボールの中がこんなに暖かいなんて知らなかったわ こんなことまで知ってるのね
ｱﾈﾓﾈ いつも言ってるだろ？ 橋の下で生活してるって
Pやん 出たw
優しくPやんの肩を抱くｱﾈﾓﾈ
ｱﾈﾓﾈの手に何かが触れた
Pやんがデモ行進の際に肩からかけていたタスキだー
ｱﾈﾓﾈ Pやん、もうこれ外してもいいかい？
Pやん うん？いいわよ
ーPやんは両手を上げ、ｱﾈﾓﾈがPやんの体からタスキを取った
そのタスキには大きな文字で「打倒！安倍政権」と書かれてあったー
Pやん だって私達のデモ隊は予め届出を提出して…
ｱﾈﾓﾈ 末端の警官がそんなことを知る由もないし、しかもあの混乱の中でこのタスキでは暴徒と見分けがつかなかったんだよきっと！
ーその頃、複数の負傷者を出した暴徒たちを検挙すべく警視庁内では新たな動きが始まっていたー
警部 火炎瓶を投げた者が特定されて現在パトカーで追跡中か こいつはもう時間の問題だな
警察官 警部！パトカーに生の魚を投げつけた男の逃走先が判明しました！現在複数の警察官により追跡中です
警部 なんじゃそら？ んなもん放っておいて傷害容疑を優先せい
警察官 しかし警部、やつはヘルメットを被っており中核派のメンバーだと思われます
警部 なんだと！ アノヤロ～警察をナメ腐りおって！ 警察車両に対する器物損壊容疑並びに公務執行妨害！ ついでに国家反逆罪容疑でしょっ引いてこい！
Pやん なら、このタスキさえ外しちゃえば晴れて私達も一般人の仲間入りね
ｱﾈﾓﾈ そういうことだね…ちょっと待って、誰が来る…！
ー小走りに走る足音が近づいてくるー
ｱﾈﾓﾈ （面倒なことになったな）
「誰だねあんたらは」
ーヘルメットを被った男が立っていたー
ﾍﾙﾒｯﾄ男 工事？そんなもんは知らん 皇居の堀で魚釣りしよったら見張り役のおまわりが血相変えて怒鳴り込んで来よってな
胸糞悪いんで国会議事堂に鼻糞でも付けてやろうかと思って行ったら「ここから先は入れません」とかぬかしおったんで、ワシらの税金で作った建物にワシら善良な市民が入れんとは何事か！とさっき釣った魚を投げつけてやったらすっかり凶悪犯扱いよ
しかしあいつら束になってもワシにはお追いつけんかったわいガッハッハー！明日のﾆｳｽが楽しみだ
ｱﾈﾓﾈ はぁ…
Pやん あの、、もしかして砂蝉さん…ですか？
砂蝉 なぜワシだと分かった
Pやん あの、私Pやんです
砂蝉 なんということだ！ あの夢にまで見たPやんに会えるとは！ 悔しがるアネモネが目に浮かぶわいイッヒッヒー
ｱﾈﾓﾈ （すんごい言い出しにくい雰囲気…）
Pやん そしてこちらがｱﾈﾓﾈさん、 あ！勝手に紹介しちゃったらダメだったかしら…ごめんなさい…
砂蝉 なんだと！ くっそ～アネモネめ！
あんたはそうやっていっつもいっつもワシの先を行きよる
知能も稼ぎも食ってるものも背丈も着よるものまで何から何までワシより上
しかもPやんに会えるという奇跡的な偶然でさえあんたはワシから奪ってしもうた
だいたいこんな小っさな箱の中で何しよったんや不純異性交遊反対！
警察官1 いたぞ！あそこだ！
警察官2 取り逃がすな！
警察官3 3人とも揃ってるぞ！
ポンッ ヒューッ パン！！（煙が充満する）
ｱﾈﾓﾈ マズイ！催涙弾だ！走れ！
Pやん 3人とも揃ってるって何のことよ！
砂蝉 ついさっきまで棍棒振り回しておまわりと戦ってたカップルと一緒に逃げとったんや、あんたらすっかりそいつらと間違われとるなガッハッハー！
ｱﾈﾓﾈ 何してくれてんだよまったく！
砂蝉 普段から貧乏人を馬鹿にしとる天罰じゃ、あー愉快愉快
警察官1 必要なら発砲も許可されてるぞ！抵抗する者には容赦するな！
警察官2、3 了解！
ｱﾈﾓﾈ 壁際に扉があるぞ！ 開いた！みんな入って！
砂蝉 なんやこの部屋は窓もドアも何もないじゃないか
ｱﾈﾓﾈ しまった、万事休すか
Pやん 上見て！ハシゴだわ、地上に続いているのかもしれない
ｱﾈﾓﾈ 2～30メートルはあるんじゃないか、一か八か行ってみよう
ーPやんが先に登りそれに続くｱﾈﾓﾈー
砂蝉 考えてみい、そんなもん登ったところでおまわりにすぐに追いつかれて外のおまわりにも連絡されて挟み撃ちにされて終わりじゃわい
幸いあのおまわりたちはここにハシゴがあることをまだ知らん
ワシが時間稼ぎしてる間にあんたらは登れ
ｱﾈﾓﾈ 何を言ってるんだ！
砂蝉 あんたが死んだらどれほどの人に迷惑がかかると思ってるんじゃ ワシなんか死んでもせいぜい近所のジジイがざまーみろと喜ぶだけだガッハッハ
ｱﾈﾓﾈ 冗談を言ってる場合か！
砂蝉 Pやんを頼んだぞ
ー砂蝉はドアの外に飛び出したー
砂蝉 さあ来い！国家の犬野郎ども！
砂蝉 これが目に入らぬか！これで糞喰らえな日本ともオサラバよ！
（と言って上着を脱ぎ、中に着ていたペットボトルやら魚のエサなんかでパンパンに膨れてる釣り用のベストをさも意味ありげに見せつける）
警察官2 あ、あれは！まさか！
警察官3 あいつ、自爆する気だ！
ー覚悟を決めた顔で、ズボンのポケットからゆっくりと何かを取り出す砂蝉ー
警察官1 起爆スイッチだ、下がれ！撤退だ！撤退せよ！
警察官2 いや、ちょっと待てよ…
警察官3 ありゃあ、リールだ
ｱﾈﾓﾈ 内側から開けられる蓋で良かった
Pやん 砂蝉、、大丈夫だったかしら
ｱﾈﾓﾈ 警察にこっぴどく絞られるだろうけど、やったことは魚をぶん投げただけだからね 明日の商談が終わってからになっちゃうけど、まだ捕まっているようならオレが警察に行って証言してくるよ
Pやん はっ！私達も早くここを離れなきゃ
ｱﾈﾓﾈ そうだね、ここで油断して二人して捕まったら砂蝉の苦労が水の泡だ
Pやん じゃあ、ここで
ｱﾈﾓﾈ うん、くれぐれも気をつけて
Pやん …また入ろうね
ｱﾈﾓﾈ 何に？
Pやん 段ボールw
ｱﾈﾓﾈ うん、ぜひまた入ろう！場所は…
Pやん 橋の下！ でしょ？
おわり
「飲み仲間」
ーここはマスターのちんぽろが営むカラオケバー 今夜も常連たちが集っているー
ﾅｲｽｶﾞｲ しかし相変わらずこっちの席は寒いな ゆーちゃんなんかジャンパー着たまんまだし
蜂子 しょうがないじゃないのエアコンの温度上げるとあっちが暑くなるんだから
ﾅｲｽｶﾞｲ もっとちゃんとした空調に入れ替えた方がいいんでないの？
ちんぽろ 気軽に言うなよﾅｲｽｶﾞｲ、業務用エアコンは高えんだぞ？ 値上げしても良いなら別だけどよ
ﾕｰｼﾞﾝ やだー値上げされたら気軽に来れなくなっちゃうじゃん
ーカウンターと小さなテーブル席のある店内は、出入口側が寒く、奥に行くにほど暖かくなる
入口側はカウンターがL字になってることもあって寒いにも関わらず常連たちの人気（溜まり？）の場所となっており、お酒好きのゆーじんがジャンパーを着たまま飲む姿はすっかり見慣れた光景となっていたー
ちんぽろ 普通はないわな お湯沸かせってか
蜂子 だいたいあんたオレンジジュースしか飲まないのに何でチェイサーがいるのよ
ﾕｰｼﾞﾝ ﾅｲｽさんもお酒飲めればいいのにね、あったかくなるよー
ﾅｲｽｶﾞｲ ならせめてこの俺の冷え切ったハートをホットにしてくれる奥さんでもいいYO
蜂子 あんたは奥さん奥さん言う前にその冷え切った家庭を何とかしなさいよ
ちんぽろ そりゃちげえねえやww
ﾅｲｽｶﾞｲ ひっでえなオイ
蜂子・ﾕｰｼﾞﾝ あははw
ﾅｲｽｶﾞｲ そう言うあんたらにはホットな話はないのかYO
蜂子 ホットな話ねえ、ないなー
ﾕｰｼﾞﾝ 私もないなあ…
ちんぽろ おっ いらっしゃいお揃いでw
ﾅｲｽｶﾞｲ 来たなちょい悪オヤジどもww
蜂子 あーあ、またうるさくなるわね
ﾕｰｼﾞﾝ ちょい悪じゃなくてチョー悪オヤジねw
ﾔｼﾞｶﾎﾟﾈ ゆーちゃんそんなこと言ってるとパンツスライドすっぞわっはっは
ﾔｼﾞﾆﾓ よお、またカラオケ勝負しようやw
ﾅｲｽｶﾞｲ いややめとくわw
ﾔｼﾞｸﾞﾘｰﾝ ほっほっほwww
蜂子 あんたこの前飲み代賭けてカラオケの点数勝負して負けたんだってねww
ﾅｲｽｶﾞｲ 機械なんかにこの俺の本当の歌の実力なんて分かりゃしないのさ
蜂子 はいはいw
ーとある小さなバーで生まれた小さなコミュニティ
ときには一緒にはしゃぎ、ときには喧嘩もする
皆それぞれ会社に行けば会社の立場、家に帰れば家での立場があるが、ここではそんなこともしばし忘れて気軽な仲間と気軽な話をして過ごせるのだー
ちんぽろ とうとう自衛隊が中東に派遣されましたなあ
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ なーにが調査情報収集が目的じゃ あんなもん実質的に多国籍軍への参加以外の何物でもないわ
ﾅｲｽｶﾞｲ でも日本は国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指してんだし、目に見える国際貢献は必要なんじゃねえの
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ それ「日本が」やなくて「安倍政権が」やけどね それよりもっと先にやらなきゃならんことがあるやろ
ﾅｲｽｶﾞｲ しかしキナ臭いニュースばかりで、世界人類皆兄弟なんだからもっとこう、楽しく華のある話題はないもんかね
カランコロン（ドアチャイムが鳴る）
ちんぽろ その待望の華がやって来ましたよっと
ﾕｰｼﾞﾝ あらーｳｫﾝﾊﾞｯﾄさんじゃないのお久しぶりー♪
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ ゆーちゃん！元気だった～？
ﾕｰｼﾞﾝ 元気よ元気、チョー元気！ｳｫﾝﾊﾞｯﾄさんしばらく見なかったけどどこかに行ってたの？
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ どこかに行ってたんじゃなくて来てるのよw
ちんぽろ ｳｫﾝﾊﾞｯﾄさんは東京に出張に来るといつもうちに寄ってくれるからね
ﾅｲｽｶﾞｲ 出張先に行きつけの飲み屋があって常連扱いとかどんだけww
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ いいじゃないの別に！ 家に帰ったら主婦業しなきゃならんし出張中くらい
ちんぽろ ゆーちゃんがいつもよりウキウキしてる気がするのは、やっぱ気のせいかな
ﾕｰｼﾞﾝ え？分かる？w
ﾅｲｽｶﾞｲ 何かいいことでもあったみたいだなw
ﾕｰｼﾞﾝ じーつーは、ジャーン！
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ あらイケメン！
ちんぽろ もしやこれがあの噂のEXILEかいな
ﾕｰｼﾞﾝ ムフフ♪ か・れ・し♪
ﾅｲｽｶﾞｲ マジでー？！
ちんぽろ マジかよ！
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ 凄いじゃない！ゆーちゃん、おめでとう！
ﾅｲｽｶﾞｲ ゆーちゃんに彼氏が出来たことを祝して乾杯！
ちんぽろ・ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ 乾杯～！
ﾕｰｼﾞﾝ みんな有り難う♪
ﾔｼﾞｶﾎﾟﾈ しかし俺らのマドンナゆーちゃんにもとうとう彼氏が出来てしまう日が来てしまったか
ﾔｼﾞﾆﾓ どえらいイケメンさんらしいやないか
ﾕｰｼﾞﾝ それにね、いくつも会社を経営しててチョーお金持ちなんだよ♪
ﾔｼﾞｶﾎﾟﾈ こりゃまいった、すっかり惚気られちまっ棚w
ﾔｼﾞﾆﾓ イケメンな上に金持ち、天は二物を与えずとは言うものの、現実はこんなもんよなwチキショw
ﾕｰｼﾞﾝ この間もね、実家の外壁を無償で直してくれたんだよー
ﾔｼﾞｶﾎﾟﾈ あれ意外と高いんよな、やっぱ金持ちはちげーな
ﾕｰｼﾞﾝ でも工事に必要な火災保険の証書がなかなか見つからなくてちょっと焦っちゃったけど、無事に見つかって良かったよ♪
ﾔｼﾞﾆﾓ そういうのあまり詳しくないんだが、外壁工事するのにそんなもん必要なんか
ﾕｰｼﾞﾝ 私も詳しくは分からないんだけどね、でも本当に無償でやってくれたよ
ﾔｼﾞｶﾎﾟﾈ まあ何はともあれ結果良ければ全て良し棚 それにたとえ彼氏が出来ようとも、ゆーちゃんが俺たちの永遠のマドンナであることに変わりはないw
ﾔｼﾞﾆﾓ 密かに狙ってたからやぱしショックだわ 失恋の歌でも入れようかしらw
ﾔｼﾞｸﾞﾘｰﾝ ほっほっほw
ﾔｼﾞｶﾎﾟﾈ よかよかw
ﾅｲｽｶﾞｲ ところでどんなところでデートしてるんだい？
ﾕｰｼﾞﾝ 葛西臨海公園w
ﾅｲｽｶﾞｲ クソワロタw
ちんぽろ ww
ﾕｰｼﾞﾝ てのは冗談でー 彼は仕事が忙しくてなかなかデートらしいデートがまだ出来てないんだけど、彼の職場で会ってくれるんだ
蜂子 それもまた凄い話ね
ﾕｰｼﾞﾝ 職場といっても一般の人たちもいっぱい来るセミナーとかだから私も行けるんだ
蜂子 あらそういうことなの
ﾅｲｽｶﾞｲ どんなセミナーなの？
ﾅｲｽｶﾞｲ 自己啓発の本やセミナーは星の数ほどあるけど、つきつめると（1）すぐやること（2）出来ることからやること（3）信じること に集約されるな
蜂子 あんたやけに詳しいじゃないのw
ちんぽろ でもデートの場所がそんなところばかりだとなかなかイチャコラも出来んだろうに
ﾕｰｼﾞﾝ 彼がときどき私の家に来てくれるから大丈夫よw
蜂子 あらあらw
ﾅｲｽｶﾞｲ それはそれはw ご馳走さまw
蜂子 しかしゆーじんの彼氏、なんか気になるわね
ﾅｲｽｶﾞｲ 人の彼氏を気にしてる場合かw あんたも早く自分の彼氏を見つけなYO
蜂子 そうじゃなくてよ あんまり言いたくはないけどちょっと胡散臭いというか
ちんぽろ やっぱりそう思うかね
蜂子 あらあんたもそう思うの？
ちんぽろ 何か確信があるわけでもねえんだが、自己啓発セミナーとか怪しさ満点だろ…
カランコロン（ドアチャイムが鳴る）
ﾅｲｽｶﾞｲ いつにも増して楽しそうだな、プロポーズでもされたかw
ﾕｰｼﾞﾝ プロポーズではないんだけど、プレゼント貰っちゃった♪見る？w
蜂子 見せて見せてーw
ーゆーじんが鞄から大切そうに紙の包を取り出し、包んであった2～3センチくらいの小さな置物をカウンターに置いたー
蜂子 あら可愛いわね
ちんぽろ カエルかな？
ﾕｰｼﾞﾝ そう、カエルの置物なの 持ってると金運がアップするんだって
ﾅｲｽｶﾞｲ でもそれ、持ち歩く物ってより、置物じゃないの？
ﾕｰｼﾞﾝ そうなんだけどね、持っているといつも彼が一緒にいるような気がして…
ちんぽろ 乙女やなあ
蜂子 まだ付き合い始めたばかりだもの、ラブラブな時期よねー
ﾅｲｽｶﾞｲ いいなあ、俺にもそんな時期があったもんだ（ﾄｰｲﾒ
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ 最近ゆーちゃん見ないけど元気にしてるかしら
ﾅｲｽｶﾞｲ 地元民でもないｳｫﾝﾊﾞちゃんが毎日来てるというのになw
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ 別に毎日でもなかばい！
ちんぽろ いやいや、毎日来てもらっていいんですよw しかしまあ、便りのないのは良い便りとも言うし、彼氏さんと楽しくやってれば良いんだがねえ
ﾅｲｽｶﾞｲ そこなんだよなあ
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ 何かあったの？
ちんぽろ いや、何かあったと言うわけでもないんだが、悪い男に引っかかってなければ良いなと、お父さんは思うわけですよ
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ ゆーちゃん、素直でいい子だしね 周りが心配したところでってのもあるし、きっと幸せな日々を送ってるわよ
ﾅｲｽｶﾞｲ そうだよなあ、俺もいつまでもこんなところで燻ってちゃいかんな、早く素敵な奥さん見つけてリア充にならなくちゃ
ちんぽろ こんなところで悪かったな！
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ ツッコミどころ満載w
カランコロン（ドアチャイムが鳴る）
ちんぽろ おっいらっしゃい
蜂子 今日はゆーじん来てるのね、あら…？
ーテーブル席にはﾔｼﾞｶﾎﾟﾈたちいつもの3人、たまたま居合わせたのか、他の女性客二人組と何やら話をしている
そしてカウンターには神妙な顔をしたゆーじんと、その隣には彼氏と思われる男、さらには男の連れと思われる男たちが座っていた
蜂子はゆーじんたちと3つほど席を離してカウンターに座ったー
ﾕｰｼﾞﾝ 保険会社から手紙が来たの
彼氏 どんな手紙？
ﾕｰｼﾞﾝ 詐欺の疑いがあるので告訴するって でも全額返金するなら和解してもいいって
ﾔｼﾞﾆﾓ な、何か歌でも歌おうかなw（リモコン操作する）
ー軽快なイントロが流れ出した マイクを1つ持ち、もう1つのマイクを女性客に勧めるも恥ずかしがって断られるﾔｼﾞﾆﾓー
ﾔｼﾞﾆﾓ ♪オラと一緒に暮らすのは およねおめえだと～♪
ﾕｰｼﾞﾝ あんな大金、、どうやって工面すればいいのよ！
ﾔｼﾞﾆﾓ ♪ずーと前から決めていた 嫁っこさ来ておくれ～♪（次は女性のターンだが、もう一人の女性客にもマイクを勧めるが断られてしまう）
彼氏 払わなきゃいいだろ
ﾕｰｼﾞﾝ 払わなければ告訴するって言われてるのよ！
ﾔｼﾞﾆﾓ（裏声） や、やんだたまげたなー 急になに言うだー♪
ﾕｰｼﾞﾝ 私、調べたのよ
彼氏 何をだよ
ﾔｼﾞﾆﾓ（裏声）♪おらも前から松っあんを 好きだと思ってたー♪（と、止めようかなw）
ﾕｰｼﾞﾝ テツ、あなた保険会社を騙したのね
ー張り詰める空気 もはやカラオケも伴奏だけが流れていたー
ﾕｰｼﾞﾝ テツが私の母の代理で申請した書類に虚偽があったと保険会社は言ってるわ 契約者は母だから、母が詐欺で疑われちゃってるのよ！
彼氏 それならお母さんと保険会社で話を付けてくれ
ﾕｰｼﾞﾝ 酷い！酷すぎる…
ﾔｼﾞｶﾎﾟﾈ あんちゃんよ、酒は雰囲気で呑めや
ガシャーン！キャー！！
ちんぽろ おいおい、普通そこで殴るかよ
ﾔｼﾞﾆﾓ おっと兄弟に手を出したら黙っておけんな バキッ（連れ1に仕返しのパンチを浴びせる）
連れ2 てめえはすっこんでろ！ドカッ
ﾔｼﾞｸﾞﾘｰﾝ ほっほっほwww
ーそこにﾔｼﾞｸﾞﾘｰﾝと連れ3も加わり、起き上がって反撃するﾔｼﾞｶﾎﾟﾈやﾔｼﾞﾆﾓらを含めて3対3の乱闘となったー
蜂子 ちょっとあんたら外でやりなさいよ！
ーゆーじんを奥に避難させる蜂子
ちんぽろが間に入り、巻き添えを受けながらもなんとか両者を引き離したー
連れ1・2・3 ハァ、ハァ、ハァ…
ーカウンターに一人じっと座り、その様子を眺めていた彼氏が吸っていたタバコを灰皿に押し付け、カウンターチェアから降りた
ポケットからナイフを取り出し、パチンと刃を出し、ぐったりしているﾔｼﾞｶﾎﾟﾈたちに近づいて行ったー
彼氏 よう、あんたら随分とナメたことをしてくれるじゃねえか ただで帰れると思うなよ
蜂子 先に手を出したのはそっちじゃないの！ 弱った相手にナイフとか、あんたどこまで卑怯なんよ
彼氏 あっ？ テメエ、女だからっていい気になってんじゃねーぞ（ナイフを持ち替えて蜂子の方に向かって来る）
ﾕｰｼﾞﾝ もうやめてー！！！
ﾕｰｼﾞﾝ テツ…お願い… お願いだから… もうやめて…
ー無言で立ち止まる彼氏 やがてナイフをパチンと閉じてポケットにしまったー
彼氏 おい行くぞ
ーかけてあったコートを取り店外に出る彼氏 それに連れ3人がお互いに肩を貸し合い足を引きずりながら後に続いた
ゆーじんはその場で号泣し、そのまま床に泣き崩れたー
ﾅｲｽｶﾞｲ その顔どうしたんだよ！ちょっと転んだだけとかよくあるセリフも通用せんレベルだぞ
ちんぽろ 実は昨日な、カクカクシカジカってわけなんよ
ﾅｲｽｶﾞｲ きっちーなそれ、いろんな意味で
ちんぽろ ああ、何よりもゆーちゃんが可哀想でな あれからすっかり塞ぎ込んじゃって、可哀想で見てらんねえよ
ﾅｲｽｶﾞｲ あんなに幸せそうだったもんな…
カランコロン（ドアチャイムが鳴る）
蜂子 うー寒い寒い、雨降ってきたわよ
ちんぽろ 寒いから今夜辺り雪になるかもしれんね
蜂子 あら、団体さんがいらしてるのね
ちんぽろ 新規のお客さんなんだが、楽しんでくれてるようで良かったよ
ーいつもの寒いカウンターに座る蜂子ー
蜂子 あら？ゆーじんじゃないの、いつもと格好が違うから気が付かなかったわ
ーいつものトレードマークであるジャンパーも着ず、ゆーじんがカウンターに突っ伏しているー
ちんぽろ 来たときからその格好よ 今日は早い時間から一人で来てな、強い酒をずっと飲んでて、寝ちゃったのかもしれんね
団体客1 よっ○○ちゃん18番入りましたーw
団体客2 待ってました！
団体客3 ♪飲ませて～下さい～もう少し～ 今夜は～帰らな～い帰りたくない～
♪誰が待つと～言うのあの部屋で～そうよ誰もいないわ～今では～
ー突っ伏しているゆーじんの手から何かがカウンターに転がったー
蜂子 何かしら
ちんぽろ あのカエルの置物だ
♪外は冬の雨～まだやまぬ～この胸を濡らすように～傘がないわけじゃないけれど～帰りたくない
蜂子 まだ持っていたのね…
ちんぽろ あんなに喜んでいたからなあ…
♪もっと酔うほどに～飲んであの人を～忘れたいから…
ー蜂子がゆーじんの肩にそっと自分のコートをかけたー
ー半年後ー
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ そんなことがあったの！
ちんぽろ ああ、ｳｫﾝﾊﾞｯﾄさんが九州に帰った次の日の出来事よ
蜂子 ちんぽろがまたカッコイイのよ、俺の店で勝手なことはさせねーとか言っちゃってさw
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ わあ見たかったなーw
ﾅｲｽｶﾞｲ 店の備品壊されたくなかっただけじゃねーのかw
蜂子 何もしなかったあんたが何をエラそうに言ってるのよ
ﾅｲｽｶﾞｲ その場に居なかったんだからしょーがないだろww
カランコロン（ドアチャイムが鳴る）
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ ゆーちゃん！
ﾕｰｼﾞﾝ ｳｫﾝﾊﾞｯﾄさんじゃない！半年ぶりねー♪
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ ゆーちゃんが元気そうで本当に良かった～！
ﾕｰｼﾞﾝ 元気よ元気、チョー元気！ 紹介するわ、こちら彼氏の穂高岳人さん♪
穂高 すみません突然にお邪魔しちゃって…
蜂子 いい人そうで良かったじゃない
ﾕｰｼﾞﾝ お酒好きの山男よ♪ 今週末も一緒に登山行くんだ♪
ちんぽろ 今週末の予報は晴れだったな！ しかしゆーちゃんにピッタリな人で良かったなあ
ﾅｲｽｶﾞｲ 俺たちも頑張らなきゃな、なあ蜂子w
蜂子 私はいいけど既婚者のあんたが何を頑張るのよ
ｳｫﾝﾊﾞｯﾄ たしかにw
ちんぽろ・ﾕｰｼﾞﾝ あははw
暴力団は年々弱体化してるとはいえ、その法の目を潜り抜けるように台頭してきているのがいわゆる「半グレ」である
今回の保険金詐欺は、火災保険が自然災害による家屋の損傷へも対応していることに目を付け、単なる経年劣化を自然災害による損傷と嘘をつき、保険金を騙し取ろうとしたものである
ゆーじんの事件はちんぽろの古くからの友人でもある弁護士が無償で協力してくれ、無事に解決したのであったー
（ちんぽろ酒場物語） おわり
カラオケボックス
アニ ところでｶﾄﾁｬﾝﾍﾟて何よw
ゆゆ いやん知らないわ(//∇//)
アニ 匂いかがされたの？w
ゆゆ ……うん…(//∇//)
アニ 何の匂い？w
ゆゆ いやん知らないわ(//∇//)
（と言いつつゆゆの股が自然と開く…）
アニ ここ？w
ゆゆ いやん知らないわ(//∇//)
カラオケボックス パート2
ゆゆ わーい歌おう♪
アニ ほれマイク
ゆゆ もう持ってるよ♪
アニ え？いつの間にw
ゆゆ スイッチオン♪（ブルブルブル）
アニ ゆゆ、それ…
ゆゆ 下のお口で歌いたいの、ねえアニいいでしょ…？
ゆゆ ハ～いっぱい歌ったし酔っちゃった～プハ～♪
アニ よく飲んだね～w（チッ結局何も出来んかったorz）
ゆゆ あんっ歩けなーい…
アニ 大丈夫、バイクで送ってあげるよ
ゆゆ キャー♪バイクの後ろに乗るの初めて♪
アニ しっかり俺に掴まっててよ！（ブイーンブルブルブル）
ゆゆ あ、なんか振動が(//∇//)
アニ え？何か言った？
ゆゆ いや、何も…あ、いやん(//∇//)
アニ ちょっと！チンコ掴むんでない！事故るぞww
アニ そうそう、ちゃんと俺の腰に掴まっててね
ゆゆ 眠い…（フラフラ）
アニ ちょっと危ない！ちゃんと掴まってないと落ちるよ！
ゆゆ ムニャムニャ…
アニ これ以上バイクに乗せるのは危険だ
（ちょうど目の前にラブホテル）
アニ キタコレw
ゆゆ バタン（ベッドに仰向けに倒れ込む）
アニ ゆゆ、大丈夫か？おーい
ゆゆ ムニャムニャ…
アニ ほっぺツン
ゆゆ （無反応）
アニ お腹ツンツン
ゆゆ （無反応）
アニ 起きないならスカートめくっちゃうよー？w
ゆゆ （無反応）
（これまでのあらすじ）
ーアニとゆゆのカラオケサシオフが実現し、酔ったゆゆをバイクで送ろうとするも途中で断念
やむなく(？)ラブホテルに入るがゆゆはそのままベッドに仰向けで寝てしまうのであったー
アニ さてここであんなことやこんなことをしたいのはやまやまだが、問題はゆゆが寝てしまっているということだ
いくらゆゆでも後になって同意の有無がなんたらかんたらと面倒なことになりかねん（などと思考を巡らせながらとりあえずチンコを洗いに行くアニ）
ゆゆ ムニャムニャ…ハッ！ここはどこ？
アニ （タオルでチンコを拭きながら戻ってくる）あっ！ゆゆ！起きてたんか、あっいやっこれは…w（汗
ーゆゆの頭はフル回転していた
そして目の前でチンコを出したまま佇むアニー
アニ や、やあゆゆ、カラオケ楽しかったね、気分はどうだい？
ゆゆ 大丈夫…
アニ それは良かったw（ゆゆの隣に座る）
ゆゆ ちょ、ちょっと待って
ー正直ゆゆは困惑していた
たしかに5ちゃんではエッチな話もしたし大好きなアニとカラオケができたのも嬉しかった
でも、ここまでの急展開は想定していなかったのだー
ゆゆ ちょ、ちょっと…！
ーもはやいつものはしゃぐゆゆではなかった
正直言うと、少しもロマンチックな期待が無かったか？ と問われた場合に否定したらそれは嘘になる
だとしても、今は不安な方が上回っているのだー
アニ コーヒーでも飲むかい？
ーと言って立ち上がるアニ
ここに来たのも自分の責任、覚悟を決めようとしていた矢先の予想外の展開に再び困惑しつつも、次第に安堵し始めるゆゆー
アニ （くっそ～、あんな目で見つめられたら何にも出来やしねえw）
ゆゆ （やっぱりアニはいい人だ♪）あ、コーヒーは私が淹れるからアニは座ってて♪…あっっ！
アニ 危ない！
ーさっき床に落としたあったタオルにつまづいたのだ
倒れかかるゆゆ、そんなゆゆをしっかりと抱き止めるアニ
二人はそのまま唇を合わせたー
（これまでのあらすじ）
ーアニとゆゆのカラオケサシオフが実現し、酔ったゆゆをバイクで送ろうとするも途中で断念
やむなく(？)ラブホテルに入るがゆゆはそのままベッドに仰向けで寝てしまう
そして間もなく目覚めたゆゆは自分の置かれた状況に困惑するもアニの気づかいに緊張が解れ、ふとしたことで二人はキスをしてしまうー
アニ いい香りだ、シャンプーかな
ゆゆ ローズマリーの香りなの
アニ ローズマリーって、コーヒーみたいな香りするんだね
ゆゆ コーヒー？？ え、あ！ちょっと！大変！
アニ うわっ！淹れかけのコーヒーぶちまけちゃった！
ゆゆ 私達の服！
アニ ホントにごめん！お互い火傷しなくて良かった
ゆゆ やだ、中まで染みてきちゃった
アニ 俺もだ、着替え持ってる？
ゆゆ 持ってるわけないでしょーw
ゆゆ ごめんねアニばっかりにやらせて
アニ いいよいいよドライヤー一つしかないし
ゆゆ しかも私だけお布団でヌクヌクw
アニ しばらく吊るしたまま乾かしておくか、俺も冷えてきた、ちょっと温まらせて（アニも布団に入る）
ゆゆ お疲れ様でした…ってキャー！冷たーい！ww 私を湯タンポ代わりにしてるでしょー！ww
アニ 当たり～w
ゆゆ ひどーいww
アニ 人助けだと思ってww
ゆゆ もう～w じゃあ、もう一回チューして
ゆゆ 私たち、もっと前に出逢ってたらどうなっていたんだろうね
アニ きっと子沢山の家庭を築いていただろうな
ゆゆ もうっ/// でも男の子だったらアニに似て素敵な男性に育ってただろうね///
アニ 当然さ 女の子だったらゆゆに似ておてんば娘かなw
ゆゆ もう～！いじわるー！w
アニ イテテッ
アニ 駅までまだ距離あるけど本当にここでいいの？
ゆゆ うん、あの駅、ママ友に合うかもしれないから
アニ そう…
ゆゆ 送ってくれて有り難う ねえ、、
アニ ん…？
ゆゆ 私たち、また会えるかな
アニ それh
ゆゆ あ！いいのいいの！それ以上言わなくて 何でもない
アニ ゆゆ…？
ゆゆ さっ！帰ってご飯作らなきゃ バイク、気をつけて帰ってね
（次のアニの言葉も待たず後ろを向き駅の方に歩きだすゆゆ）
アニ あ、ゆゆ！ えっと… ゆゆも気をつけて！
（振り向き、笑顔で手を振るゆゆ）
どうしても最後の言葉が見つからず、ありきたりな挨拶になってしまった
いや、違う
本当はかけたい言葉はあったんだ、それがどんな言葉かもちゃんと分かっていた！
でも、それを言ってはダメだと、もう一人の俺が止めていただけなのだ
俺にとってネット上の存在でしかなかったゆゆ
しかし、今たしかに、このリアルでそのゆゆと共に同じ時間と空間を過ごしたのだ
まだ消えぬゆゆの後ろ姿が見えてることこそが、唯一それを証明できるものなのだ
しかし、それももう長くは無い
ゆゆが視界から消えたら最後、今日の記憶が実際にあったことなのか、はたまた夢に過ぎなかったのかを後から証明できるものなどないのだ
ー行き交う人々の隙間からまだかろうじてちらほらと見えていたゆゆの後ろ姿も、ついに雑踏の中に消えて行ったー
本当にもうゆゆとは会えないのだろうか…
「思ったより上手くいったにも関わらずなぜかセンチメンタルになってしまうことってあるよねでおなじみのあそこおじさんですこんばんは」
おわり
ーあれから一ヶ月が経っていた
5ちゃんでは、アニもゆゆも相変わらず他愛のない世間話を交わしはするものの、どちらもオフに触れることはなかった
それは特にオフを公表していなかったため、興味本位でしかない野次や質問攻めにウンザリさせられることを避けたかったこともあったが、
話を持ち出すことにより、これ以上発展させてはならない二人の仲に変化が生じてしまうことを知らず知らずのうちに恐れていたのかもしれない
そんなある日、アニは夢を見た
マックの席に座っているアニの膝の上にゆゆが乗っかり二人でじゃれ合っている
コーヒーを飲もうとするがふざけ合っているせいでなかなか飲めず、とうとうこぼしてしまった
空になったカップを持ったゆゆが走り出す
それを追いかけるアニ
まるで鬼ごっこでも楽しんでいるかのようだ
しかし、なぜかアニ足はもつれて上手く走れない
まるで膝まで浸かる深い泥沼の中を進んでいるかのように…
夢に登場した女性もゆゆだとハッキリ認識できた
ただそれとは対照的に、ゆゆとのオフの記憶が日に日に薄れていってしまっているー
「もしかして、ゆゆが5ちゃんでオフのことに触れないのは、あえてその話題を避けているからではなくて、本当に初めからオフなど存在していなかったのではないか…」
ーそんな錯覚さえしてくる
二人で過ごしたあのひとときの思い出は、二人で共有してこそ意味があるのだ
もしあれがアニが見た夢に過ぎず、ゆゆの記憶には初めから存在していなかったとしたら…
ー
ﾅﾅｼ 年収2000万のアネモネなら余裕で買えるな
ﾅﾅｼ 甘いな、マスターなんて1億だし
ﾅﾅｼ 自演乙www
ー5ちゃんは今日も相も変わらずの平常運転である
たしかに年収は高いに越したことはない
アニもかつてはそれこそ大きな夢を抱き、昇進や年収アップに励んだものだ
その成果もあってか、ある程度の財産を築けた今となっては、金というものに昔ほどの執着は無くなった
年齢も折り返し地点を過ぎ、稼ぐことよりも蓄えた金をこれからの人生にどう使っていくかの方に関心を持つようにもなっていたー
ﾅﾅｼ 1億円あったら超豪華クルーズ船で世界一周したい
ﾅﾅｼ コロナウィルス乙
ﾅﾅｼ 黙れ貧乏人
ゆゆ みんなリッチだー( ﾟдﾟ)
ーゆゆだ！ 名無し達をからかってやろうとしていたアニは、しばしその手を止めたー
ゆゆ 何も思いつかないなー(^_^;
ﾅﾅｼ 夢とかないの？
ゆゆ 夢ねえ、ないこともないよ
ﾅﾅｼ 一等地のタワマンでセレブな生活とか？
ゆゆ ううん、私の夢はね、コーヒーを飲むこと
ﾅﾅｼ 質素過ぎて草
ﾅﾅｼ つ旦ｺｰﾋｰ
ゆゆ 私ね、飲みそびれちゃったコーヒーがあるの
ある人と一緒に飲むはずだったんだど、飲む前に私の不注意でこぼしちゃって…
だから、もう一度ちゃんと一緒に飲みたいの
ゆゆ でもね、これは私の夢なの
夢だから、実現しない限りは永遠に夢なのよ
パート8 ー夢ー おわり
（もしもコテたちが同じ会社で働いていたとしたら）
パート1 −実物経済−
−高越屋百貨店にて−
「いらっしゃいませー どうぞご覧下さいませー」
−とある高級婦人服売場で明るく元気に接客している一人の女性店員がいた
彼女はこの店の店長「瀬高優々」(ｾﾀﾞｶﾕﾕ)
同店はアパレル商社であるエイチ商事株式会社が、フランスの高級ブランドの販権を得て国内で展開するアパレルショップだ
大人の魅力をとことん追求する同ブランドは、前衛的と賞賛する者とｴﾛﾁｽﾞﾑだと評するものに分かれ時折社会に議論を巻き起こすものの、セレブ層からの一定の支持もあり、ファッション業界にて長年不動の地位を保っている
しかし、近年台頭するzozotownのようなネット販売に押され、デパート等の店頭販売をメインとする当社は苦戦を強いられていた
そこへスーツ姿の女性、宇御場が現れた−
宇御場 お疲れ様でーす！ 今日の売れ行きはどうですか？
瀬高 ぜんぜんですよぉ、妙なことを言う男性のお客様はいらっしゃったのですが…
宇御場 妙なことを言う男性のお客様？
瀬高 何かお探しですか？って聞いたら「君が欲しい」ですって
宇御場 ま～た使い古したセリフをw
瀬高 もう～、私の身にもなって下さいw
今は育ち盛りの二児の母だが、理解ある夫の支援の元、好きな仕事にフルタイムで働いている
そしてスーツ姿の女性は「宇御場塔子」(ｳｵﾝﾊﾞﾄｳｺ)
エイチ商事ファッション事業部マネージャーである
彼女の仕事は担当するブランドの店舗管理、デベロッパーとの折衝、新商品開発、生産委託業者の開拓や打合せなど業務は多岐に渡り多忙を極める−
瀬高 このファッションフロア、どこのテナントも厳しいらしいですよ、うちの会社は大丈夫なのかしら
宇御場 エイチ商事単体では厳しいらしいけど、グループの親会社が順調のようだから大丈夫でしょw
−こちらはエイチ商事デリバリー事業部
ドットプリンターがけたたましい音を立ててミシン目の付いた連続紙に納品書や請求書を印字している
トラックが到着し、フォークリフトが慌ただしく荷物の積み下ろしを始めた−
「あんた遅いわねー」
「すみません、道が混んでいたもので…」
「こっちはそれを午前中に小分けにして配送しないといけないのに間に合わなかったらどう責任取ってくれんのよー」
「葉新さん、今度ビールでも奢りますんで」
「だから私はビールは飲まないって言ってるじゃないの ワインか日本酒！何度言ったら覚えるのよ」
−「葉新蜂子」(ﾊﾆｲﾊﾁｺ) エイチ商事株式会社 デリバリー事業部マネージャー
この部門では商品の出荷や在庫管理を行っている
葉新は以前はファッション事業部のマネージャーとして第一線で活躍していたものの、病気がきっかけでやむなく休職し、やがて復職するも体へのストレスなどを心配した会社の配慮もあり現部門への配属となった
以前の営業経験から社内事情にも精通しており、社内のご意見番的な存在でもある−
香取 阿蘇さん、デリバリーの葉新さんからお電話ですお
ー香取丹人（ｶﾄﾘﾆｲﾄ）エイチ商事情報システム部社員 自分のことをあだ名のｶﾄﾘﾝで呼ぶなど変わったところもあるが、最新のIT技術に詳しいー
阿蘇 はいこんにちは
葉新 ああ阿蘇さん？ 前に言ってたシステムの修正まだ出来ないの？
阿蘇 そんなこと言ってもねえ、こっちも消費税増税に伴うシステム改修でいっぱいいっぱいなんだYO
葉新 あんたそれいつまで言ってんの 増税されたの去年の10月じゃないの 見え透いた言い訳してる暇あったらすぐにやってよね（ガチャン）
阿蘇 ったく相変わらず可愛げのない女だ
以前、部下の女性社員のミスにより社内の重要データが誤って消去されてしまうという事故が発生
当時その女性社員と特別な関係にあった阿蘇は彼女を庇うあまり会社との板挟みになるなど、一時は苦悩に満ちた日々を過ごすものの、彼女との関係解消やデータ復旧に尽力を注いだこともあり、何とか今に至っている
香取 そういえば葉新さんが今年の花見はやるのか？って言ってましたさね
阿蘇 ずいぶん気の早い話だなw
香取 でも阿蘇さんから誘われても断るらしいですおw
阿蘇 何で誘ってもいないうちから断られることになってるんだYO
香取 それにしても阿蘇さんてモテますおね、羨ましいです
阿蘇 あのさｶﾄﾘﾝ、どんな思考ロジックしたら今の話の流れで俺がモテてることになるわけ？
香取 ｶﾄﾘﾝも一度でいいから葉新さんみたいな女性にツンデレされてみたいものだゆ
−ここはネット上のとある株為替コミュニティ−
ﾏｽﾀｰ マスク関連株、予想通りの値上がりで今回も大儲けさせて頂きましたw
ｱﾈﾓﾈ やあ、マスター氏も好調のようですね
ﾏｽﾀｰ 重松、興研、ｸｽﾘのｱｵｷ、ﾏﾂｷﾖ、俺が投じたところ全て爆上げですよw
ｱﾈﾓﾈさんはどうですか？
ｱﾈﾓﾈ うちは今回は株ではなく為替に集中してます
中国では不動産バブル崩壊にコロナウィルスが追い打ちをかけてますから
ﾏｽﾀｰ たしかに！元はまだまだ下がりますか？
ｱﾈﾓﾈ ここ1ヶ月ほどは多少の上下はありますが全体的には下がっています、まだまだ下がるでしょう
ﾏｽﾀｰ 俺もその元の儲け話に乗ってもいいですか？
ｱﾈﾓﾈ どうぞどうぞ、元の売り手が増えて元が下がればそれだけこちらも得をしますからw
株や為替のグラフを表示させるためにずらっと並べられたディスプレイのうちの一台を5ちゃんに切り替えると、そこにはミニーがいたー
ﾏｽﾀｰ やあミニー来てたのかい 元が続落してて今回も大儲け出来そうだよ
ﾐﾆｰ そーいうのって、安く買って高く売るから儲かるんだと思ってたけど違うの？
ﾏｽﾀｰ そういうのもあるんだけど、信用取引を使えば値下がりすることを利用して儲けられるんだよ
俺らは「空売り」って呼んでるけどね
ﾐﾆｰ それでどうやって儲けるの？
ﾏｽﾀｰ たとえば、俺がﾐﾆｰから1万円借りて、1週間後に1000円の利子付けて11000円で返すよと言ったら貸すかい？
ﾐﾆｰ 喜んで貸すよw
ﾏｽﾀｰ だよねw
そして俺は1週間後に確実に円安ドル高になることを知っていたとする
たとえば今は1万円が150ドルだけど1週間後は円の価値が下がって同じ1万円がたったの100ドルで換金できることが予想出来たとする そこで俺はﾐﾆｰから借りた1万円をすぐに150ドルに換金しちゃうんだ
ﾐﾆｰ えー、私の1万円は？
ﾏｽﾀｰ 心配しなくていいよw
1週間後に俺は手元にある150ドルのうち110ドルで11000円を買い戻し、約束通りﾐﾆｰに利子付の11000円で返すわけ
それでも俺には40ドルが残るわけw
ﾐﾆｰ まるで錬金術ね！
借りたお金を返せないだけでなく、もっと大きな借金を背負うことになってしまうこともあるからね
ﾐﾆｰ へー、空売りって怖いんだね
ーここは都心のとあるインテリジェンスビル
スーツ姿のビジネスマンやOLたちが続々と出勤してくるー
「おはようございます」
「おはようございます！ 論木さん、例の相場にクォンタムファンドが介入したようですよ」
「やはりきましたか、彼らが食らいつくということは、我々の判断が正しかったとも言えますね」
ー論木雅治（ﾛﾝｷﾞﾏｻﾊﾙ）エイチホールディングス株式会社 トレーディング事業部エグゼクティブマネージャー
本名を伏せたｱﾈﾓﾈというニックネームで情報交換活動もしておりネット上ではちょっとした有名人でもある
当部門による資金の運用益は他の子会社が稼ぎ出す利益よりも多く、実質的にグループの大黒柱となっているー
論木 しかし彼らの登場でいよいよポンド危機に似た様相を呈してきましたね
同僚 あれは衝撃でしたね、まさかたかだか一つのヘッジファンドがイギリスという大国を窮地に追いやるとは
論木 まあ、それと似たようなことを私達は中国に仕掛けているんですけどね…
ー中国の経済成長も頭打ちとなり、下落傾向にある「元」を世界中の投資家たちが放っておくはずはなかった
投資家たちによる容赦ない空売り攻撃に対し、かねてから中国は元の買い支えや金利の調整などで対抗してきたが、買い支えには限度があることや今の金利では中国国内の景気悪化に耐えられなくなることを投資家たちは見抜いていた… はずだったー
嫁 あなた、今日のこの子のお誕生会忘れないでね
娘 パパがケーキ買ってきてくれるのー？
論木 ああ、ちゃんと買って来るから良い子にしてるんだよ
ーいつもと変わらない論木家の朝、ふとテレビのニュースに目をやった論木は、そのままテレビの画面に釘付けになったー
ﾃﾚﾋﾞ …番組の内容を変更してお伝えしております…昨夜のニューヨーク株式市場での混乱を受けて、東京証券取引所は本日、安全が確認されるまで全銘柄の売買の全面停止を決定しました…なお為替相場では元が高騰しているなどの情報もあり…
要約するとこうだ
1、為替情報が混乱し株式市場も麻痺している
2、元が高騰してる（ただし定かではない）
3、それは世界規模で起きている
論木は慌てて会社にかけつけた
トレーディング事業部には既に役員らもかけつけており騒然としていたー
論木 確かに元が高騰しているな…しかし、しかし何故なんだ
役員1 そのシステムが誤作動してるということはないのかね
論木 その可能性も無くはないですが、なんせ世界中で同じことが同時に起きてるものですから、うちだけの問題ではないことは確かです
役員2 なら損切りだ！損切りは出来んのかね！
論木 このレートを見て下さい、とてもじゃないですが買い戻せるような額ではありません
役員3 なんとかならんのか！このままでは当社のみならずグループ全体が吹っ飛ぶぞ！
論木 正直今は何も思いつきません、それに不可解なことがあまりにも多すぎます…
役員1 国や政府が何か発表してるんじゃないか？
役員2 それがさっぱりなんですわ こういう緊急事態に後手後手なのはいつものことですな
同僚 でもまだ望みが無いこともないです、為替情報にはいくつかのパターンがあるとの情報もあります
役員3 ならこの画面に表示されている元の高騰は嘘なもしれないということか
同僚 嘘かもしれないし本当かもしれない、現時点ではそれしか言えません
論木 たとえこの情報が嘘だとしても、今すぐに本物の為替情報にアクセスしなければならないことは確かです こうしている間も為替は動いていますので、今回の混乱を受けて為替があらぬ方向に動くことも十分にありえますから
ー高越屋百貨店ショップ売場にてー
瀬高 本社グループウェアにログイン♪と…あれえ？ 今日は何だか動きが遅いわね…
ーエイチ商事デリバリー事業部ー
葉新 さて本日の在庫状況はと…何よこれ、なかなか画面が出て来ないじゃないの またあいつに苦情入れとくか
阿蘇 今日は朝っぱらから他部署からの問い合わせが多いな
香取 ほとんどがシステムの動作が遅いというものさね
阿蘇 何か心当たりある？
香取 さあ、今朝のニュースで株が混乱してるとかなんとか言ったやうな…
阿蘇 なんで株が混乱するとうちのシステムが遅くなるんだYO
香取 まるで風が吹けば桶屋が儲かる、みたいですおねw
阿蘇 まさにそれw あっはっは…
プルルル…プルルル…（鳴り止まぬ問い合わせの内線）
阿蘇 仕方ない、原因を調べるとするか
その結果、外部からの不正侵入は見つからなかったものの、VPN接続されているエイチ商事からのパケット数が通常より多かったことが分かった
ー
阿蘇 社内からの問い合わせだけでもてんてこ舞いなのに今度はホールディングスからも問い合わせ来ちゃってどうするよコレw
香取 でもこれ大きなヒントになる気がするさね
阿蘇 うちからホールディングスにいつもより多いパケット数、そして社内の通信の遅さか なるほどな、よし、社内のルーターやスイッチングハブ類を重点的に調べてみよう
エイチ商事でファイヤーウォールを兼ねて導入していたルーターが、いつの間にか独自の通信ルートを確立し、あろうことか外部とエイチホールディングスを結んでいたのだー
阿蘇 まさかこいつが原因だったとはな…
香取 この新しい通信ルートのせいで既存の通信が圧迫されてうちのシステムが遅くなっていたんさね
葉新 あーいたいた、あんたたちぜんぜん電話に出ないから直接来ちゃったわよ
阿蘇 こんな男しかいないむさ苦しいところだとあんたみたいな女でもいるといないじゃ違うもんだなw
葉新 それ褒めてんのか貶してんのかどっちよ
阿蘇 もちろん褒めてますYO
葉新 つか、何でシステム止まってんのよ
阿蘇 このルーターが怪しい動きをしてたんで、危険なんで引っこ抜いちゃったんですよ ご迷惑をおかけしてしております
葉新 それじゃあもう今日は仕事になんないわね
ーそこへエイチ商事からの報告を受けたホールディングスの社員たちが駆けつけたー
阿蘇 阿蘇です それにしてもすっかり御社にはご迷惑をおかけしてしまいまして…
論木 気になさらないで下さい、セキュリティのために設置したルーターがまさか自ら悪さをするなんて誰も予測できませんよ
葉新 （親会社のエリート社員なのに丁寧な人ねw）
論木 で、その問題のルーターを見せて頂くことはできますか？
阿蘇 どうぞこちらです
ーそのルーターに印字されているロゴに論木は目を見張った
そこには中国の大手通信機器メーカーであるウェイウェイ社の名前が印字されてあったのだ
ウェイウェイ社についてはすでに米国が締め出しを宣言し、日本もこれに追随している
しかしウェイウェイ社製であっても既に導入した機器については入れ替えを強要するものでもなく、高機能な割に安価なウェイウェイ社製品は、法人のみならず、大手通信キャリア各社の基地局で使用されるなど、既に世界中の至る所に広く出回り浸透していた
論木の頭の中で、今までのいくつかの謎が線で結ばれていくような気がしたー
論木 はい、実に中国らしい発想です しかし、これはまだそうだと決まったわけではありません、あくまで私の仮説に過ぎませんので
阿蘇 いやいやあ、ネット上の言論を物理的に遮断して統制しちゃうような国だから十分ありえると思いますよ
ただ、機器だけの問題なら入れ替えればすむ話だけど、それと為替は別問題なのでは？
論木 まさにそうなんです、一番の問題はこの混乱のために本当の情報が分からなくなってしまっているとと、本当の情報が分かったとしてもそこにアクセスが出来ず為替の取引が行えないということなんです
為替はこうしている間も動いているものですから、今回の混乱を受けて本当の為替が予想外の方向にでも動いてしまったら大変です
阿蘇 それなら一刻も早く本物の為替相場にアクセスしないと！
葉新 横からごめんなさいね、それならウェイウェイ社以外のルーターを使ってるところでアクセスしてみたらどうなの？
阿蘇 そもそもネットの大手キャリアの基地局までやられてる可能性があるんなら、そりゃあどこから接続しようが信用できないってことになってしまうわなあ 不正アクセスを防ぐだけでなく、不審な通信経路を避けてネットにアクセス出来るような手段があれば良いんだが
香取 もしかしたら、シスコシステムズのルーターならいけるかもしれないお
阿蘇 シコシコシステム？
香取 シ・ス・コ・システムズだゆ！ アメリカのメーカーで中国のウェイウェイ社とはライバル会社さね
葉新 あんたの頭ん中はそればっかりやねーw
阿蘇 うるせーw つまり、そのルーターであればキャリアの基地局が乗っ取られていても回避できるわけ？
香取 アクセス先はもちろん、そこまでの経路までチェックできる機能があるので十分に回避できると思うさね
論木 ということは、そのルーターを通じてアクセスした為替情報こそ真実だと考えて良いわけですね？
香取 そう考えて間違いないさね
葉新 ならそのシスコ？とやらを今すぐ買ってきたらどうなのよ
阿蘇 まるでヤマダ電機かなんかで買ってこいみたいなノリだなw そんなマニアックな業務用ルーターなんて簡単には手に入らんよ
香取 たとえ今すぐ手に入ったとしても設定やらなんやらですぐには使えないゆ
葉新 なら、シスコのルーターを既に使っているところに頼み込んでみるしかないってことね
阿蘇 個人宅ではまずありえないだろうから、取引先からでも片っ端から当たってみるか
パート5 ー救世主現るー
ー高越屋百貨店ショップ売場ー
宇御場 お疲れ様で～す！売れ行きはどうですか？
瀬高 相変わらずさっぱりです 今日はお話好きのお客様がお一人いらしただけです
宇御場 お話だけされて帰られたの？
瀬高 はい、お家をリフォームされたとか、アクセサリーを手作りされてるとか、昔裸でバイクに乗ったとかw 2時間くらいお話しされてご飯が炊けたからと帰って行かれましたわ
宇御場 あらあらw あれ？本社から業務連絡のメールだわ ふむふむ、何だか面倒な依頼だわね
瀬高 問題発生ですか？
宇御場 いまニュースで騒がれてる株や為替の問題、うちの会社にも大きく影響受けてるらしいのよ
瀬高 えー！何でうちみたいなアパレル会社まで
宇御場 この問題解決に協力してくれる取引先を探して欲しいだなんて言われても、こんな内容頼みにくいなあ
瀬高 どんな内容か分からないですけど、取引先と言うならこの高越屋百貨店の珍幌部長に聞いてみたらどうですか？ 珍幌部長、宇御場さんのことをずいぶん気に入ってるからきっと聞いてくれますよw
宇御場 こんにちはー、失礼致します 本日は珍幌部長はいらっしゃいますか？
珍幌 ああ、宇御場さんじゃないですか！
「珍幌凛太郎」（ﾁﾝﾎﾟﾛﾘﾝﾀﾛｳ）高越屋百貨店ファッションフロア専任部長
愛妻家であり、恋愛観念にルーズになりがちなアパレル業界に日々ストレスを感じつつも美人には目がない困った性格を併せ持つ
珍幌 いやあ、エイチ商事さんにこんな美人さんがいらっしゃるとは知りませんでしたよ
宇御場 前任が療養から復帰するまではお世話になります
珍幌 てことは前任さんが復帰されたら宇御場さんはどこかに行かれてしまうんですか？
宇御場 はい、元の九州勤務に戻ります
珍幌 それは寂しくなりますなあ、でご用件とは？
宇御場 実は珍幌部長に折り入ってのご相談がございまして
珍幌 宇御場さんの頼みなら何でも聞いちゃいますよ
珍幌 それは大変ですな
宇御場 ファイヤーウォールを兼ねて設置していたゲートウェイ用のルーターが不具合を起こした関係で弊社内から正常なインターネット網にアクセスできない状態になっています
珍幌 ほう
宇御場 親会社で行ってるトレーディング業務の都合上、一刻も早く対処しなければならない状況でして、もし御社のゲートウェイルーターがシスコシステムズ社製で、それが単なるブリッジではなくファイヤーウォールとして機能されているのであれば、
為替プログラムをインストールしたPCを御社のLANに接続させていただけないかというお願いでございます
珍幌 なるほどよく分かりました で、一つ良いですか？
宇御場 はい、何でしょう？
珍幌 できれば今の説明を日本語でしてもらえませんかね？
宇御場 最初から日本語ですYO
ーエイチ商事情報システム部ー
香取 今、ファッション事業部から連絡あって、高越屋百貨店で接続しても良いとの返事をもらえたそうですお！
葉新 意外なとこ来たわね
阿蘇 あの高越屋が？ 良くOK出たな！
香取 ただし持ち込むPCは工場出荷時のままであること、使用する為替プログラムはマスターCDから現地でインストールすることだそうですお
阿蘇 セキュリティを考慮すれば当然の要求だな、よし、俺らは急いで新品のPCを調達しよう
論木 我々は会社に戻って為替プログラムのマスターCDを取りに行きます
葉新 電気屋に寄ってからホールディングスに行くのなら電車では遅いでしょ、うちの配送トラック使いなさいよ、ドライバーの運ちゃんには私から話しておくから
阿蘇 それは助かる有り難う！
論木 葉新さん、本当に有り難うございます！
珍幌 お待ちしておりました、御社も大変ですね
論木 この度はご迷惑をおかけして本当に申し訳ございません、心から感謝申し上げます
珍幌 いえいえ、他でもない宇御場さ…いえ、御社からの頼みですからね
阿蘇 そういえばうちの宇御場は？
珍幌 何でもシステムが止まってて日報やら何やらが滞ってるからとかでプリントアウトしたものを持って他店に行かれたようですよ
香取 PCの準備ができましたさね！
論木 早速接続してみましょう
阿蘇 これで為替情報が表示されれば、それは正しい情報だということですね
論木 はい、そうなりますね しかし問題はその先です その正しい情報で元がせめて15円台なら良いですが、もし30円台とかになっていたら、私達は破滅です…！
その場にいる全員が為替チャートのグラフの先を見つめたー
「中国人民元 ＝ 15.72円」
「ヨッシャ！！」
「ヤッター！！」
「良かった・・・」
ー歓喜と安堵の声が事務所に響き渡るー
論木 今のうちに安全策を取っておこう
ー論木らホールディングスのメンバーたちにより運用中の為替の処分や今回の混乱に影響ないと思われる安全牌への乗換なとが速やかに行われた
元も当初見込んでいた利益は得られなかったものの、安全策としてその場で買い戻されたー
阿蘇 これで俺らも路頭に迷わずに済んだな
ーこうして世界規模で同時多発的に発生した前代未聞の大規模通信障害に伴う為替情報の混乱は、まもなくウェイウェイ社が大きく関わっていたことが明らかになり世界各地で経営陣の拘束や逮捕が相次いだ
当然ながらその裏で糸を引いていたと容易に推測できる中国共産党は断固として関与を否定し続け、その後も真相が明らかになることはなかったー
おわり
何いきなりコピペし始めてんの？
0087 名無しさんといつまでも一緒 2020/03/24(火) 17:01:31.77
「もし中東の33年がたった33日で起こったら」
クーフィーヤを纏うアラブの男性
https://i.imgur.com/MjHKSoJ.jpg
https://i.imgur.com/nN3dsxH.jpg
プライベートジェット
https://i.imgur.com/R2Mvl5f.jpg
https://i.imgur.com/dhwxDNb.jpg
https://i.imgur.com/fpAiXzU.jpg
アフガニスタン料理
https://i.imgur.com/Rl5Ii0y.jpg
F-22多用途戦術戦闘機
https://i.imgur.com/Vcu9DmZ.jpg
イラク軍兵士
https://i.imgur.com/IqcSYv4.jpg
インダス川と周りの山々
https://i.imgur.com/WxByGJZ.jpg
https://i.imgur.com/x3Of2GX.jpg
難民キャンプ（写真はバングラデシュのもの）
https://i.imgur.com/VeuQh9m.jpg
カルロス・ゴーン氏がプライベートジェットで日本から脱出した事件はまだ記憶に新しい
プライベートジェットは通常の入出国検査が省略可されるなど、様々な「事情」をかかえる世界の金持ちたちにより昔から今に至るまで重宝されている
パート１「大国の勝手な都合」
3月23日（1979年12月27日）アフガニスタン・カブールにて
バーン！ ドーン！ ズタタタ！ズタタタ！
その朝、山元はけたたましい爆発音や銃声の音に起こされた
同僚が慌てて山元が滞在する部屋に飛び込んできた
「山元さん、ソ連軍です！ソ連軍がアフガニスタンの大統領がいるタジベク宮殿を襲撃したようです！」
「なぜ？！ アフガン現政権は共産主義政党よ、ソ連はむしろ擁護する立場じゃないの！」
「それが、僕にも何がなんだかさっぱり…」
山元美佳（ヤマモト・ミカ）ワールドプレス所属の国際ジャーナリスト 世界の紛争地を中心に取材している
アフガニスタンでは共産主義政権が成立したが、これに対抗する武装勢力が拡大していた
ソ連はアフガン政権から要請があったという理由でアフガニスタンに侵攻したが、武装勢力だけでなく、あろうことか現政権まで攻撃してアーミン大統領を殺害し、自分たちに都合の良い新政権を樹立させた
「どうやらそのようですね、アフガン政権からソ連に助けの要請があったなんていう理由も、どこまで本当なのやらアヤシイものです」
ソ連の横暴に怒った中東各国のイスラム教徒たちが、ソ連からアフガニスタンを取り戻そうと続々とアフガニスタンに集まり始めていた
そんな彼らはムジャヒディンと呼ばれ、イスラムを守るため、ソ連軍を相手に決死の覚悟で戦った
時は米ソ冷戦期、ソ連が絡む紛争をアメリカが放っておくはずはなかった
アメリカのCIAは極秘でパキスタンのスパイ組織であるISIを通じてアフガニスタンにいるムジャヒディンたちに大量の武器を提供し続け、アフガニスタン紛争は泥沼化していった…
「山元さん、アメリカの介入で戦況が地獄と化し、ソ連軍とムジャヒディンの双方におびただしい数の戦士者が出ています」
「きっとそれがアメリカの狙いなんでしょうね」
「え？」
「アメリカはベトナム戦争の恨みをアフガニスタンで晴らそうとしてるのよ、アメリカが味わった地獄をソ連にも思い知らせてやろうとね」
「なるほど、アメリカの目的はソ連をアフガニスタンから追い出すだけでなく、この戦争を泥沼化させてソ連を弱体化させようって魂胆なんですね」
「おそらくね、ただ記事にするのはもう少し取材を進めてからにしましょう 私たちジャーナリストは、あくまで真実を発信することが使命なのだから」
マンハッタンのとある高層ビルの最上階レストランでは、プライベートジェットの運行会社であるファーストウィング社による貸し切りパーティが行われていた
「うっはw なんというゴージャスな光景！ やはり民間に転職して良かったw」
彼の名は増田純一（マスダ・ジュンイチ） 元航空自衛隊パイロットで、最近この会社に転職してきた
「しかしさすがは世界を股にかけた会社だ 同じ会社の社員と言えども外国人ばっかりだし しかし職業的に仕方ないのか男しかいないな… と思ったら女の人いたw スラッとして綺麗な人だけどアジア系の人かな？ ちょっと話しかけてみるか」
「ええ、お陰様で あなたも楽しんでいるようで何よりね」
「あれ？日本語w なぜ俺が日本人だと分かったんですか？」
「そりゃ分かるわよw」
彼女の名は葉新蜂子（ハニイ・ハチコ） 同じくファーストウィング社の専属パイロットである
「もしかしてあなたが増田さん？」
「はい、どうしてそれを？」
「やっぱりねw 初勤務は中東で副操縦士でしょ？ 私はその機長を担当する葉新よ、よろしくね」
「そ、そうだったんですか！ こちらこそ宜しくお願いします ところで、なんで俺が日本人だと分かったんですか？ 中国人や韓国人かもしれないのに」
「そうねえ、まずネクタイをしていないことかな クールビズなんて言葉が通用するのは日本だけよw あと、このプライベートジェット業界の顧客はセレブが多いから基本的なドレスコードくらいは覚えておいた方がいいわよ」
「ドレスコード？ 冠婚葬祭のネクタイは結婚式なら白、葬式なら黒とか？」
「それも日本独自のものよ 欧米で白いネクタイなんてしてたらマフィアかと思われるわよw まあ、完璧なドレスコードは無理にしても、こんど機会でもあれば最低限の“装い”くらいは教えてあげるわ」
「それなら、明日の夜は空いてますか？ お礼にディナーご馳走しますんで」
「悪くないわねw なら、あなたがセレブに会うのに相応しいと思う“装い”で来てね」
「葉新さんはまだ来てないか それにしても今日の格好は自信あるぞw 先輩からもらったお下がりとはいえアルマーニのスーツに時計はロレックス、高級なシルクのネクタイに、靴はフェラガモ スーツのボタンもきちっと締めて静かに椅子に座り女性を待つ、
これこそがセレブと渡り合える男、増田純一だ、なんてねw」
「おまたせ」
「あ、葉新さん、どうです？ 俺のコーディネートは」
「そうねえ、ちょっと立ってみてくれる？ で、後を向いてみて はい、もういいわよ」
「けっこういい線行ってるでしょう？」
「んーw 残念ながら、0点」
「0点ってw」
それとね、スーツというものは背中のS字ラインに沿ってピッタリと合っていることが基本中の基本なの あなたのスーツは背中のラインに合ってない、つまり店頭の‘’吊るし‘’をテキトーに買ったか、貰い物かのどちらかってことね、当ってるでしょ？
そしてそのシルエットを崩す着こなしも全てNG あなた、胸の内ポケットやお尻のポケットに財布かスマホなんかを入れてるようだけど、それもシルエットを崩すのでやめた方がいいわよ
そしてダイバーズウォッチはフォーマルの場には相応しくないわね レジャー気分で参加してると思われても仕方ないわよ
男性の靴は黒革の紐靴が基本よ、あなたの履いてるローファーは紐靴でないのでNG
ちなみにローファーとは“怠け者”って意味で、室内用に紐を結ばなくても履けるように作られた、欧米人にしてみたらスリッパみたいなものよ あなただってスリッパで大事な人に会わないでしょ？
それとそのストライプのネクタイだけど、その色の組み合わせはイギリスの某名門大学のシンボルと同じなので避けておいた方が無難だわね 欧米人がストライプのネクタイをするときは自分の所属を表す習わしがあるから… って、まだまだ語れるけど続ける？」
「いやちょっと待って下さいw メモしますw でもお陰様でだんだんと分かってきましたよ スーツはブランド云々より体にピッタリ合っているかどうか
だからセレブたちはわざわざスーツを自分用に仕立てるんですね」
「つまり、その辺りを心得ていれば高級なものを持っていなくても一流の仲間入りが出来る？」
「う～ん、それはどうかなw でも少なくとも一目置かれるようにはなるわね
逆に最悪なのは高級ブランドをこれみよがしにチラつかせているわりに着こなしがぜんぜん分かっていない人 こういう人は軽蔑されるわね」
「聞いておいて良かったですw」
「ね、そろそろ食べない？ つか早く飲みたいw」
「乾杯しましょう、中東ではお世話になります」
「こちらこそ宜しくね」
「よく知ってるわね、アメリカ空軍の横田基地でパイロットの教官をしていたわ」
「女性の教官なんて、映画のトップガンまんまじゃないですかw 言い寄ってくる男も多かったんじゃないですか？」
「何言ってるの、今でも多いわよw つかあなたはどうなのよ、結婚はしているの？」
増田は意外な女性観を語りだした
遊びで付き合う女性に金を使うのと、結婚した女性との生活に金を使うことに根本的な変わりはないと…
「正直ドン引き」
「引かないで下さいw これでも空自の中では女を極めた男としてマスターなんて呼ばれてたんですよ」
「あーヤダヤダ、男ばかりの世界にいるから歪んでくるのよw」
4月2日（1989年）ソ連によるアフガニスタン侵攻から10日（10年）が過ぎた
アメリカの目論見通りソ連は大きなダメージを受け、ソ連とアメリカによるマルタ会議によりソ連軍はアフガニスタンから撤退し、ソ連軍のいなくなったアフガニスタンに興味が無くなったアメリカも手を引いた
そして、ボロボロになったアフガニスタンだけがそこに残された
アフガニスタンからソ連が撤退したことをきっかけに、イラクでは新たな動きが始まっていた
それはイラクとクェートがまだオスマン帝国だったころ、そこを占領したイギリスによって分離させられてしまったクウェートを取り戻そうという動きだ
イラクがクウェートとの国境にイラク軍3万人を集結させたことを知った山元らワールドプレスのメンバーらは急遽クウェートへ飛んだ
4月2日（1990年8月2日）
ついにイラク軍が国境を越えた
そしてそれを迎え撃つクウェート軍
両者の攻防の様子を山元らはカメラに収めていた
戦闘の前線の移動に伴い、山元らもそれについていくように移動していった
街のあちこちに戦火の後が見て取れる
道の脇にイラク軍のものと思われる車両を発見した
中には傷付いたイラク軍の兵士がいた
山元はすぐに兵士の手当を行った
「…ハァハァ、ありがとう…」
「無理して喋らなくてもいいわ、楽にして」
「…あなた、どこから来たの…」
「日本よ」
「…日本？！ …アメリカの同盟国の日本のあなたがなぜ私を助ける… あなただって我々がクウェートを侵略しようとしてると責めてるんじゃないのか…」
「責めてなんかいないわ、あなたたちにはあなたたちの言い分があることもちゃんと知っている」
「…分かってくれているんだね…」
「ただね、私はどちら側の味方につくというわけでもないの、それだけは分かって 真実を世界に発信し続ける、ただそれだけ それが私たちジャーナリストの使命なの」
この兵士の名はヒムーラ・イブン・タマタン
今回の救護をきっかけに、山元らはその後も彼とコンタクトを取り続けることになる
サウジアラビアはアメリカに石油を売り、それで得た潤沢なオイルマネーでアメリカから最新兵器を買うという、いわばアメリカと持ちつ持たれつの関係であった
サウジアラビアを守るという理由でアメリカはサウジアラビア国内に米軍を駐留させることになった
そして4月4日（1991年）、イラクによるクウェート侵攻を良しとしないアメリカは、多国籍軍を組んでクウェート内にいるイラク軍に攻撃を仕掛けた
「山元さん、米軍からしたらイラク軍なんて赤子の手をひねるようなものなのに、なんでわざわざ多国籍軍なんか組むんでしょうか」
「イラク対アメリカの戦争がイスラム対キリストの構図にならないようにするためでしょ だからわざわざイスラムの国を含む多国籍軍にしたんだわ
ただ、そのせいで、、またこうしてアラブ人同士が戦うことになってしまったわね…」
アメリカ主導の多国籍軍の圧倒的な戦力の元、イラク軍はクウェートから撤退した
スーダンのハルツーム国際空港にて
「しかし葉新さん、中東もいろいろな国があるけど、初勤務がスーダンとは思いませんでしたね」
「ほんとよもう、イラクやトルコ、同じスーダンでも南スーダンだったらお酒が飲めたのに 今回の行き先もアフガニスタンでお酒飲めないし、あーつまんない」
「そこですかw」
「いけない、そろそろフライトの時間だわ」
葉新と増田が先にガルフストリーム社製G450に搭乗し、本日の顧客の到着を待った
やがてクーフィーヤをまとった４人の男性がファーストウィング社のスタッフに案内され、搭乗用のタラップを上がってきた
彼らが放つただならぬオーラや優雅な身のこなしから、アラブの大富豪であることが容易に想像がついた
「いらっしゃいませ 本日操縦を担当させていただきます機長のハチコ・ハニイです」
「同じく、副操縦士を担当させていただきますジュンイチ・マスダです どうぞ宜しくお願い致します」
４人の中でも一際イケメンのリーダーらしき男性が優しく丁寧な口調で言った
「ウサマです こちらこそ、よろしくお願い致します」
飛行機はゆっくりと滑走路に向かっている
葉新は管制塔とのやり取りを開始した
葉新 “Khartoum tower, Gulfstream 821, on your frequency.”
管制塔 “Gulfstream 821, Hold short of runway 36L.”
葉新 “Hold short of runway 36L. Gulfstream 821.”
管制塔 “Gulfstream 821, Line up and wait, Runway 36L.”
葉新 “Line up and wait, Runway 36L, Gulfstream 821.”
管制塔 “Gulfstream 821, Wind 170 at 5, Cleard for take off runway 36L.”
葉新 “Cleard for take off runway 36L, Gulfstream 821.”
管制塔より風向と風力の報告がされ、離陸許可が出された
正面には長く真っすぐに伸びる滑走路が見える
葉新が離陸をスタートさせたことを宣言し、スロットルレバーを上げた
飛行機が滑走を始めた
ジェットエンジンの出力が上がり、キーンという金属音が加わり、体にG（重力）がかかる
増田 “80 knots!”
増田 “V1!”（離陸決心速度到達）
増田 “Rotate!”（機首引き起こし速度到達）
葉新が操縦桿を引くと、機体は大空へと飛び立った
目的地のアフガニスタンのカブール国際空港が近づいてきた
葉新と増田は着陸の準備を始めた
管制塔 “Gulfstream 821, Cleared to land, runway 34L.”
葉新 “Cleared to land, runway 34L, Gulfstream 821 .”
「横風がかなり強いわね サイドスリップ着陸で行くわよ」
サイドスリップ着陸とは、横風に対抗すべく機体を斜めに傾けながら着陸させる方法である
コックピットとキャビンの間に仕切りはなく、コックピットの窓から見える滑走路が斜めになっていることにウサマらも気づいていた
横風に煽られながら、葉新は慎重に機体を降下させていく
地面まで十数メートルのところまで降下したところで、飛行機は滑走路に進入した
パイロットたちにとって最も緊張する局面である
右側の後輪が滑走路に触れた
窓から見える滑走路の方向、機体の傾き、車輪から伝わってくる振動など全ての情報に五感をフルに働かせ、僅かなズレに対しても素早く操縦桿を操作しながら機体の姿勢をコントロールした
まもなく左側の後輪も滑走路を捉え、次いで前輪が滑走路を捉えた
滑走路に接触する車輪の振動がガタガタと機体全体に伝わってくる
葉新がジェットエンジンを逆噴射させてブレーキをかけると、キャビンにいるウサマらから拍手が沸き起こった
葉新らとウサマたちはすっかり打ち解けていた
「ハチコさんたちの次のフライトはいつですか？」
「次はまだ決まっていないんですよ、会社からの連絡待ちなんです」
「そうですか、連絡があるまではカブールに滞在されるのですか？」
「はい、会社が用意したカブールのホテルでの待機になります」
「実は私、日本人の方とお話するのは今回が初めてでして、このままお別れするのもなんだか寂しいですし、もしよろしければ、近くに仲間がやっているレストランがありますので、お食事でもいかがですか？」
葉新と増田にとっても勝手分からぬ初めての土地、ウサマの誘いに快く応じた
カブールの人々のウサマらに対する歓迎ぶりは大変なものであった
ウサマらをカブールまで乗せた飛行機のパイロットということで、葉新と増田も同様にもてなされた
レストランでは、チキン・カバブ（チキンや羊の肉をパキスタンのスパイスでじっくり漬け込みオーブンやグリルで焼いたもの）、
バンジャンボラニ（ナスをヨーグルトで和え、ハーブやスパイスで味付けしたもの）、
パラオ（アフガニスタン流ピラフ）など、アフガニスタンの代表的な料理が振る舞われた
「いえいえ気になさらないで下さい、初めからそのつもりで来ているのですから 日本には『郷に入れば郷に従え』という言葉もあるんですよ」
「世界中の人達があなた方のような人なら苦労もないのですが…」
「いろいろご苦労なさっているのですね」
「はい、実は私が祖国のサウジアラビアを離れてここに来たのはそれもあるんです
私達イスラム教徒には聖地が3つあります
一つはイスラエルにあるエルサレムですが、後の2つであるメッカとメディナはサウジアラビアにあるんです
イラクがクウェートに侵攻したあと、米軍はサウジアラビアを守るという理由でサウジアラビアに駐留したのですが、、米軍の兵士はそこで酒は飲むし女性兵士は短パンで歩き回るしで…」
「イスラムの女性はブルカを着て肌を見せないようにしていますものね」
「そうなんです 私もさすがに我慢出来なくなってサウジアラビア国王に米軍に出て行ってもらうように頼みました」
「国王にですか？！」
「はい、しかし聞き入れてはくれませんでした
私は祖国であるサウジアラビアから国籍を剥奪されてしまいました
それで私は最初はスーダンに逃れたのですが、アメリカがスーダンにも圧力をかけて私はスーダンにも居辛くなってしまい、そこで御社にお願いしてスーダンからアフガニスタンに逃れて来たという次第です
アフガニスタンには私がかつてムジャヒディンとしてソ連軍相手に戦ってたときの仲間が沢山いますから」
「はい、ソ連の勝手な都合でこのイスラムの国が脅かされることを私は許せませんでした
私がムジャヒディンとしてアフガニスタンに入ってソ連軍と戦っていたとき、その仲間たちの名簿作りを始めたのですが、そのときの拠点を私たちはアルカイダと呼んでいます」
「このカブールでウサマさんたちを迎えてくれた人たちもアルカイダのお仲間なのですか？」
「彼らはタリバンのメンバーです
（声を低めて）タリバンは今こうしてアフガニスタンの政権を担ってはいますが、あれはパキスタンがインドの脅威に対抗するために作り出した、いわばモンスターです
彼らの掲げるイスラム原理主義は私達同じイスラム教徒から見てもかなり極端で異質なものです
他国の脅威からイスラムを守りたい、という気持ちは私達アルカイダとタリバンは一致しているんですけどね…」
「モンスターですか…」
「はい、そして私も、モンスターになってしまったのかもしれません
アメリカはイスラムの聖地を踏みにじりました 私達アルカイダがソ連の次に戦っている相手はアメリカなのです！」
その日の夜、ウサマらはジャララバードへと移動し、葉新と増田は会社が手配したカブールのホテルに帰った
「…アッラーフ・アクバル アッラーフ・アクバル…」
翌朝、葉新はモスクでの礼拝を呼びかけるアザーンの声で目を覚ました
せっかくなので増田と一緒にモスクを見学してみようということになった
モスクはイスラム教徒の祈りの場であるが、異教徒の葉新や増田が入ることを咎める者はいなかった
モスクに入ると、熱心にコーランを読んでいる若者もいたが、寝転がっている大人や走り回っている子供たちもいて、平和を望む本来のイスラム教徒たちの日常がそこにはあった
カブールに来てから3日が経った
葉新らにもタリバンが統治するアフガニスタンの事情がだんだんと分かってきた
タリバンは極端なイスラム原理主義なゆえ、女性が家族以外の男性に姿を見せることは許されず、男性医師が女性を直接診察することが出来なかった
また、だからといって女性が働くことも許されないため女性が医師になることも出来ず、アフガニスタンでは女性の医療に深刻な問題が生じていた
他にも一切の娯楽が禁止されて映画館やレンタルビデオ店などが閉鎖されるなど、住民たちは極端に不自由な生活を強いられていた
「いくらなんでも極端すぎますね」
「ウサマさんがタリバンのことをモンスターと言ったのも頷けるわ」
葉新はウサマが言った、自分もモンスターになってしまったかもしれないという言葉がずっと気になっていた
世界を震撼させる出来事が起きた
「アメリカ同時多発テロ」だ
アメリカはこれをアルカイダによるものと断定し、タリバンに対しアルカイダの首謀者たちを引き渡すよう求めた
しかしタリバンはこれを拒否
米軍による総攻撃待ったなしとなった
このニュースを知った葉新や増田も衝撃を受けた
しかし、あまりにも予想外過ぎる出来事でもあり、とても現実のものとは思えず、頭の整理がつかないままでいた
ジャララバードにいたウサマが、葉新らが滞在するカブールのホテルを訪れた
パキスタンのイスラマバードへのフライトを依頼したいという
葉新と増田は顔を見合わせた
ウサマがアルカイダと関係しているからと言って、9.11の実行役とどこまでの関係があるかは不明だ
目の前にいるウサマ本人に確かめるのは簡単なことだが、葉新も増田もあえてそれはしなかった
何らかの事情を抱えている顧客を運ぶのもプライベートジェットの暗黙の役割の一つ
それに、彼等を見殺しにしてはいけない、お互いに口に出して言うことはなかったが、正直そんな気持ちもないわけではなかった
ファーストウィング社のガルフストリームG450は、カブール国際空港の滑走路手前で管制塔からの離陸許可を待っていた
またその頃、米軍は密かにアルカイダに対する軍事作戦を開始していた
管制塔より離陸許可が下りた
葉新 “Take off！”
飛行機が滑走路を走り出した
増田 “80 knots.”
増田 “V1!”
ここで信じられないことが起きた
このタイミングで管制塔より離陸中止を指示する無線連絡が入ったのだ
「既にV1（離陸決心速度）に到達しています！ どうしますか！」
「どうするって、今更止めたってオーバーラン必至じゃないの！ 飛ぶしかないわね！」
管制塔からの指示を無視した形にはなったが、やむを得ず葉新は離陸を決断した
ほぼ同時刻、米軍のとある空軍基地から、まだ本格運用が開始されていないF-22ステルス戦闘機が密かにスクランブル発進していた
「おかしいと思わない？ 離陸を強行した私達にあれからカブール空港の管制塔は何も言って来ないわ」
「たしかに、引き返せと言っていても良さそうなものですが…
不気味ですね… このまま何事もなくパキスタンのイスラマバードに着ければ良いのですが、嫌な予感がします…」
飛行機がアフガニスタンとパキスタンの国境付近に差し掛かった頃、その嫌な予感は的中した
「レーダーに何か映ったわ… って何よこれ！」
「近い… 近すぎる！ それにこの尋常ではない速度、マッハを優に超えてます！」
「米軍のステルス戦闘機だわ…」
突如すぐ後ろに姿を現したF-22に対し、葉新らはなすすべもなかった
次の瞬間、レーダーが新たな警報音を発した
ビー！ビー！ビー！ビー！…
「なんてこと！ ロックオンされたわ！」
「まずい、あいつら交渉をすっ飛ばしていきなり殺しにかかるつもりだ！」
バーン！！！ガタガタガタガタ…！！
大きな衝撃が走り、様々な警報音が鳴り響いた
「やられた！！」
「すぐにエンジンや制御系を確認して！」
葉新の咄嗟の判断によりミサイルの直撃は免れたものの、右側エンジンに大きなダメージを負った
「油圧系統が不安定です！ 燃料もどんどん漏れているようです」
「すぐに油圧制御をAPU（補助動力装置）に切り替えて！ 不時着するわよ！」
葉新らは不時着先をインダス川に決めた
ウサマらも含め、皆それぞれが救命胴衣を身に着け、不時着時の衝撃に備えた
幸いにもインダス川への不時着は成功した
救命胴衣を着けていたこともあり、葉新、増田、ウサマら4人の計6人全員が川岸へと泳ぎ着いた
「この辺に土地勘のある者が同乗してるメンバーにいます、彼について行きましょう」
川の周りは山岳地帯だった
時折、米軍のヘリが上空に姿を表すが、その度に物陰に身を隠した
不時着した飛行機が米軍に発見されるのも時間の問題、ウサマら一行は先を急いだ
米軍に見つからないようにあえて辺鄙なルートを選んで歩いてるせいもあり、ところどころに険しい岩場もあった
「ここは足だけでは登れませんね」
案内役のメンバーが先に登り、次いでウサマが登った
増田や他のメンバーは先に葉新に登るよう促した
葉新が岩に手をかけて登ろうとするも、なかなか登れずにいた
葉新は一瞬戸惑った
たしかイスラム教の男性は家族以外の女性に触れてはならないはず
その厳格なイスラム教徒であるウサマが今こうして葉新に手を差し伸べてるのだ
葉新は戸惑いながらも手を上げた
と同時にウサマの手は葉新の手をパシッと捉え、葉新の体はグイッと上に引き上げられた
歩きながら葉新は不思議な感覚に陥っていた
飛行機内やカブールのレストランでのウサマたちの印象は、物腰柔らかで優雅な振る舞い、いかにもサウジアラビアの大富豪の御曹司という印象であったが、ここに来て険しい山岳地帯を慣れた様子で突き進む彼らには今まで気づかなかった逞しさや力強さがあった
それもそのはず
ウサマらはかつてアフガニスタンに入り、重い銃器を背負って山岳地帯を駆け巡り、あのソ連軍を相手に戦ってきたムジャヒディンだったのだから
案内役がそのうちの一軒に近づきドア越しに何かを言った
すると中から住人らしき者が顔を出し、皆を速やかに中に招き入れた
「ここまで来ればもう大丈夫です
ハチコさんとジュンイチさんには私達のせいで大変危険な目に遇わせてしまい、本当に申し訳ございませんでした なんとお詫びをしたら良いのか…」
「気になさらないで下さい、皆さんご無事で本当に良かったです」
「ハチコさんたちはここのパキスタンの仲間が安全に日本大使館までご案内致します 私達とはここでお別れです」
「分かりました またウサマさんたちと楽しいお話が出来る日が来ることを祈っています」
「私もです 今度お会いしたときはぜひ日本のことを教えて下さいね」
「もちろんです、美味しい日本酒をご馳走しますよ」
「ニホンシュ、もしかしてそれはお酒では？」
「あら、ごめんなさい、つい」
「あはは、いいんですよ では、またお会い出来る日まで」
「ウサマさんも、どうかご無事で」
ウサマのパキスタンの仲間によって葉新と増田は無事に日本大使館に届けられ、ファーストウィング社の社員らとも合流することが出来た
アメリカの同時多発テロについて、フセイン大統領は演説で「アメリカが自ら招いた種だ」と、テロを非難せず、逆に過去のアメリカの中東政策に原因があると批判した
「山元さん、イラクが核兵器や化学兵器を開発してることに対して国連が圧力を強めていますね」
「核兵器や化学兵器を持っているのはなにもイラクだけではないのに…」
「特にイラクは過去にイギリスによって自国の一部だったクウェートを取り上げられてしまったトラウマがありますからね、自衛心から軍を強くしようとするのも無理ないです」
度重なる国連からの要請により、イラクは核兵器の開発をやめた
にもかかわらず、国連によるイラクへの査察は続き、フセイン大統領は次第に査察に対して非協力的になっていった
やがてイラクはアメリカから名指しで悪の枢軸国と認定された
アメリカはイラクが大量破壊兵器を隠し持っているという根拠の無い理由をでっち上げ、イラクを攻撃した
イラク戦争の勃発である
米軍の圧倒的な戦力の元、まもなくバグダッドは陥落し、フセイン大統領とその側近らは米軍に追われる身となった
フセインたちがバグダッドを離れるときになって、ヒムーラが山元に言った
しかし、大国たちを前にどうすることも出来ませんでした
もがけばもがくほど私たちは世界から敵と見なされてしまいます
そんな私達にいつも寄り添い、真実を世界に向けて発信し続けてくれたミカさんには心から感謝しています」
「何を言い出すの これからも取材は続けるつもりよ」
「しかしミカさん、ここから先は本当に危険なんです！」
「私達だって死ぬ覚悟で来てるのよ！」
「ダメです！！ …すみません ミカさん、あなたには生き続けていてほしい
僕の最後のわがままだと思って、どうか聞いて下さい」
「…分かったわ」
「ありがとう、ミカさん それでは、どうかお元気で」
ヒムーラは笑顔で山元と別れたが、これが山元が見たヒムーラの最後の姿となった
フセインらがダウルにいることを突き止めた米軍は、歩兵師団による600人の急襲部隊を編成し、航空戦力や特殊部隊らと共に総攻撃をかけた
ウサマ・ビン・ラディンはカタールの衛星テレビ局アルジャジーラを通じてビデオ声明を発表した
「…アッラーは人に正しくあれとお命じになられた
そして傷を受けた者たちに、同じ傷によって抑圧者に報復することをお許しになられた
続けて祈りを捧げます
御導きに従う者の上に平和あれ…」
4月19日（2006年）
イラクは、アメリカとイギリスによって新しい政権が樹立された
4月24日（2011年5/2）
アメリカはウサマ・ビン・ラディンがパキスタンにいることを突き止め、アメリカ海軍特殊部隊により攻撃を仕掛け、双方による激しい銃撃戦の末、ウサマは米軍により殺害された
4月23日（2010年）
チュニジアで始まった民主化運動が、最終的にはシリアにまで広がり、アサド政権に抑圧されていた人たちが民主化運動を始めた
しかし、シリアにあるソ連の海軍基地を守りたいソ連がそれに介入し、民主化運動を支援する形でアメリカも介入、またもやシリアを舞台とした米ソの代理戦争となってしまった
戦火から逃れるため大勢のシリア人が難民となった
その後、葉新にはセルビアでの副操縦士としてのフライトの依頼が入り、セルビアに一人で入国した
機長とはベオグラード空港で落ち合うことになっていた
「ハニ～、またあんたかYO」
「こっちのセリフよもう！」
葉新と阿蘇の同僚としての付き合いは長く、これまでも度々コンビを組んでいるものの、会うとなぜかケンカになってしまうのだった
二人は滞在先のホテルに向かうためにタクシーに乗った
「あれ、なんか柄にもなく大人しくないか？」
「まるで私がいつも騒々しいみたいじゃないのよ はあ～ 正義って一体何なんだろうね」
「ちょww」
「笑い過ぎ でも中東での任務でいろいろ考えちゃったわよ」
車の窓の外に、独特の雰囲気を醸し出している集落のようなものが見えた
「運転手さん、あれは何ですか？」
「ああお客さん、あれは難民キャンプですよ シリアやアフガニスタンから来た大勢の難民たちがあそこで暮らしています」
「アフガニスタンですって？！ 運転手さん、ここで停めて下さい」
「なに勝手に停めちゃってるんだYO」
そして仕方なくそれに続く阿蘇
「こんにちは どなたかお探しですか？」
二人に声をかけた日本人女性がいた
「あ、ごめんなさい、人探しっていう訳じゃないんですけど、アフガニスタンの人達が大勢来ていると聞いてつい…」
ついてきた阿蘇も初めて見る難民キャンプの光景に圧倒されていた
「僕は難民キャンプというものを見るのは初めてなんですが、こんなにも大勢の難民を受け入れるなんて凄いですね、日本では考えられないです」
「セルビアがかつてユーゴスラビアだった頃、当時の内戦で多くの国民が難民になって苦しんだそうなんです
そういうこともあって外国の難民であろうとも助けてあげたいという気持ちや土壌がセルビアにはあるんだと思います
あ、申し遅れました、私JICA（国際協力機構）の宇御場と申します」
「葉新と申します」
「阿蘇です 宇御場さんはここでどんなお仕事をされていらっしゃるのですか？」
「いろいろありますが、今はセルビアの住民向けのパンフレットと、シリアやアフガニスタンの難民向けのパンフレットを作っています」
「2種類のパンフレットを作っているんですか」
「はい、セルビア向けにはシリアやアフガニスタンの生活習慣などを説明したもの、難民向けにはセルビアの生活習慣などを説明したものをそれぞれの国の言語で作成しています」
3人とも日本人だという親近感もあり、話は弾んでいった
「でもそういう活動をすると右寄りの人達が煩くなかったですか？」
「そりゃあもういろいろ言われましたよ、パヨクだの何だのってw
でも私はあの人たちが思ってるような左翼ではないんですよね TV朝日の玉川さんなんか私は苦手ですしw」
「でも玉川さんはスーツの着こなしはなかなかなものよw」
「あんた話もろくに聞かずに服ばっか見てんのかw」
「どうしても目についちゃうんだからしょーがないじゃないの
座ってるときはスーツの形が崩れないように前のボタンを外し、『そもそも総研』で立つときはさり気なくボタンを留めてるわ
それに比べて隣に座ってる長島一茂ときたら、ボタン留めたままだからスーツがよれて変な横ジワが出来ちゃってるわよw」
「羽鳥慎一モーニングショーねw」
「あんたらいつも外国にいるのになんでそんなに日本のテレビ番組に詳しいんだYO」
「細かいことは気にすんなw」
（おわり）
フイタだけでなくジコイタのコテも多く登場
571 ：名無しさんといつまでも一緒：2022/10/11(火) 14:43:23.87 0.net
「しーちゃんズ」予告編
「人」とは何か
そして、愛とは何か
ある冴えない清掃員と、進化し続ける科学技術の光と影を描いたサイエンス・フィクション・ストーリー
【本日17時公開】
－ その時、あなたなら、どうしますか －
ここはとある最先端AI技術研究所
（だからゴミ箱に缶を入れるなっての！）
と心の中で愚痴を吐きながら各フロアのゴミを回収して回っている男がいる
「笛 飛夫」（テキトオ）だ
この研究所に派遣されている清掃員である
「あ、そこの君、誰かがここにジュースをこぼしちゃったみたいでさ、ついでに掃除しておいてくれるかな」
「はい、畏まりました」
少々辛いことがあっても、仕事が出来てるだけ有り難いと自分に言い聞かせていた
見るからに頭が良さそうな高給取りたちにヘコヘコしながら掃除して回るのは自分でも情けなくて涙が出てくる
しかし、そんな嫌な職場でも、一箇所だけ笛にとって好きな場所があった
そこは自販機もある少し広めの給湯室で、総務部のゆゆや凛によく遭遇する
彼女たちは笛にもフレンドリーに接してくれるので、笛の心のオアシスとなっていた
笛は心の中でこの給湯室を「ゆゆりんハウス」と呼んでいた
ゆゆ「テキ君、今日も頑張ってるね♪」
笛「貧乏暇無しですよ」
凛「あら、それなら私達もよ」
笛「そうですか～？ とても忙しそうには見えないですけどねw」
ゆゆ「言うわねw」
出比留「やあ、皆さんお揃いで わたくし、出張から帰ってきましたでっす」
彼の名は「出比留 優」（デビル ユウ）
上等なスーツを着て、ちょくちょく出張に行って帰ってきては、必ずこの給湯室に寄り、ゆゆや凛に出張先で撮った写メを嬉しそうに見せている
笛にも偉そうな素振りをするわけでもなく普通に接してくれてはいるが、笛は何となくこの男に引け目を感じていたのだった
笛「えーマジすか」
ゆゆ「テキ君の会社とはお話済よ たしか出比留さんの部署だったと思うけど」
出比留「わたくしの部署？ ああ、新しい清掃員さんってテキ君だったんですか」
笛「いや俺初耳ですけど」
出比留「ちょうど良かった、来週にはまだ早いけど、案内するよ」
笛「ちょ、ちょっと…」
笛が連れて来られたのはこの研究所の心臓部、AIルームと呼ばれる部屋だった
人の背の高さくらいあるコンピュータが何台も並び、それぞれのコンピュータの前には操作用の端末機（見た目はPCのようなもの）が設置されている
出比留「カラス君、ちょっと今いいかな？ 来週から新しくAIルームの掃除を担当してくれることになったテキ君だ」
笛「よろしくお願いします」
鴉「あ、どうも よろしくです」
笛「では、翌週にまた参りますね…」
鴉「あ、ちょっと待った せっかくだから部屋の中を案内するよ むやみに触ってはいけないものとかいろいろあるんでね」
出比留は部屋を後にした
鴉「知ってると思うけど、ここで研究してるのはAIだ しかも、人間と遜色ないレベルの知能や人格を持ったAIを目指している 研究と言っても、俺は出比留さんたちが書く設計書に従ってプログラミングするだけのPG兼オペレータだけどね」
笛「人間と遜色ないレベルの知能や人格を持ったAI ですか！」
鴉「そうだよ、すでに理論的にはそれが可能なところまでは来ていて、この研究所ではあと一歩のところまで来ている」
笛「そんな凄い研究をしていたんですね」
鴉「俺が担当してるAIは、こいつと、こいつと、こいつ 左からA4989の通称ハル、次がB5963で通称ノア、そんでこれがC4971だ」
笛「最後のだけ通称が無いんですか」
鴉「そう言われてみればそうだな、あまり意識したこと無かったわw まあ、そいつ他の2台に比べてあまり出来が良く無いんで、特に名前が付けられなかったのかもw 俺たちは単にCと呼んでるよ」
笛「C…ですか」
鴉「ん？どうかしたん？」
笛「あ、いや、出来が良くないと聞いて、なんか俺みたいだな、とw」
鴉「なーに言ってんのw そんなこと言ったら俺なんかどうなっちゃうのよ 能力が無さ過ぎて、いつこの仕事辞めようかと考えてるくらいなのに」
笛「そーなんですか？！俺なんかから見たら眩しいくらいの仕事をしてるのに」
鴉「はたから見ればそう見えるのかもしれないけど、現実はそんなに甘くないんよ 実力世界だからねここは、俺みたいな落ちこぼれには本当にキツイよ クビになるのが早いか、俺が挫折するのが早いかって感じで夜眠れなくなることもあるよ」
笛は、この鴉という男に親近感を持つようになっていた
笛「え？この最先端の研究のAIに、俺なんかが、そんなことしていいんですか？」
鴉「意外だと思うかもしれないけど、ぜんぜん構わないというか、むしろぜひやって欲しいくらいなんだ
AIは学習能力を持っていて、いろんな情報に触れることで自らを成長させることが出来るんだ それは、どんな情報でも構わないんだ あ、でもあれだな、できればCに優先的に語りかけてくれると助かるかな」
笛「なぜ…ですか？」
鴉「さっき話した通り、そいつあまり出来が良く無いんで、皆があんまり構わないから、ますます成長しなくてね…」
翌日、笛は仕事の休み時間にC4971に語りかけてみることにした
コンピュータのC4971の端末機の前に座り、鴉に教わった通り、キーボードにC4971と入力し、Enterキーを押した
ディスプレイに若い女性の画像が表示された
画像と言っても、荒いドット絵のデジタル画像だが
C4971「あらテキさん、こんにちは」
笛「こんにちは 何で俺の名前知ってるの？」
C4971「昨日、カラスさんと一緒にアクセスしてくれたときにカラスさんがそう呼んでたから」
笛「へえ～、さすがは人間と遜色ない知能や人格を目指すAIだな」
C4971「… 」
ディスプレイのC4971の顔が不機嫌になった
C4971「… 」
笛「なんで黙ってばかりいるんだよ、俺、何か変なこと言ったかい？」
C4971「べつに」
笛「なんか話が続かないなあ、んじゃまたね、気が向いたらまた来るよ」
C4971「どうぞご勝手に」
笛は、なぜ皆がC4971に寄り付かないのか分かったような気がした
いくら機械と言えども、あの愛想の無さではこっちだって接するのは嫌になるよ
人とのコミュニケーションが少なくなれば学習できる情報量も減り、そりゃあ他のAIよりも落ちこぼれるわけだよな…
落ちこぼれかあ…
なぜC4971は不機嫌になったのか
俺ならどんなときに不機嫌になるだろう？
ていうか、俺はいつだって不機嫌だ 底辺みたいな仕事をして、いつも人と自分を比べて…
そういえば以前にも人に酷いことを言われたことがあったな 存在感なくて空気みたいだとか
あ、いたの？みたいな
ロボットかと思ってたと言われた時は正直堪えたな
自分でも気にしてるのに、人として扱われてないと思うことが一番傷つくんだよ！
…ん？ 待てよ、もしかして、、
そういうことなのか…？
C4971「あらまた来たの」
笛「聞きたいことがあってさ」
C4971「機械は～とか、AIは～とかいう話でしょ、どうせ」
笛「違うよ、君のこと、しーちゃんて呼んでもいいかい？」
C4971「…？？」
笛「いやほら、ハルとかノアとかみたいに格好いい名前じゃなくて悪いんだけど、俺としてはこれが一番しっくりくる気がするんだ」
ディスプレイのC4971が少し笑顔になった
ｼｰﾁｬﾝ「いいわよ、呼ばしてあげる」
笛「良かったw」
ｼｰﾁｬﾝ「でもその代わり」
笛「な、なんだい？ 難しいこととかは俺には無理だぞ…」
ｼｰﾁｬﾝ「私はあなたのことを、トオ君て呼ぶ、いい？」
笛「そんなことか、もちろんいいさ！」
鴉「テキ君ですよ、彼に話しかけてもらうようになってから、Cの学習能力が飛躍的に向上してるんです」
出比留「それは驚きました 彼にそんな能力があったとは」
鴉「驚きっすよね 俺なんかが何ヶ月かかっても出来なかったことを、やつはたった一日でやってしまった」
出比留「この成長率だと、もしかしたらあの移植プロジェクトの候補はハルやノアを抜いて、Cになるかもしれないですね」
翌日、研究所内はざわついていた
某大学のiPS細胞の研究チームが当所を訪れていたからだ
笛「今日は何かあるのかな？ 所長自らお出迎えなんかしてるし」
ｼｰﾁｬﾝ「なんでも、葉新教授が来てるらしいわよ」
笛「そうなんだ、て、俺その人知らないんだ、ゴメン」
ｼｰﾁｬﾝ「なら論木教授は知ってる？」
笛「論木教授！知ってるよ、あのiPS細胞でノーベル賞とったという！」
ｼｰﾁｬﾝ「それは山中教授ね 論木教授は、そのiPS細胞で人間の脳を再生することに成功したことで有名になった人よ」
ｼｰﾁｬﾝ「葉新教授は、論木教授と一緒にその研究をしている人よ」
笛「そんな人たちがなぜここに？」
ｼｰﾁｬﾝ「人間と遜色ない知能や人格を持ったAIを、生身の人間の脳に移植するためよ」
笛「何だって！？」
笛「ちょっと待って、何を言ってるのか、分かりそうで、サッパリ分からないんだけど」
ｼｰﾁｬﾝ「脳死って知ってるでしょ？ 他の体の機能は動いているのに、脳だけがダメになってしまってる状態」
笛「まさか、その脳をiPS細胞で再生するとか？」
笛「でも、脳細胞が再生するだけでしょ？ その人の記憶やら性格やらはどうやって再生するの？」
ｼｰﾁｬﾝ「それは残念ながら再生は出来ないの だから、記憶や性格の移植をするの AIからね」
笛「何だって！！」
ｼｰﾁｬﾝ「だって、人からの移植は出来ないでしょ、同じ記憶や性格を持った人が二人出来てしまうことになって倫理的にも問題よね」
笛「いやいやでも待てよ、その脳死してる人の脳にAIの記憶や性格を移植したら、それこそ別人になって倫理問題にならないの？」
ｼｰﾁｬﾝ「それがならないのよ、なぜなら、その人の体はドナーから提供された臓器と同じ扱いになるから」
ｼｰﾁｬﾝ「だって、脳内の思考や記憶、神経への伝達などは、生身の人間と言えども全て電気信号なのよ」
笛「うーん、分かったような分からないような
ところで、何でしーちゃんはこのことにそんなに詳しいの？」
ｼｰﾁｬﾝ「私がその移植の候補に選ばれてるからよ」
笛「なんだって！！」
笛「どうって、、そりゃ嬉しいさ！ これほど嬉しいことはないよ！」
ｼｰﾁｬﾝ「本当に？ 本当にそう思うの？」
笛「そりゃそうだよ、もしそうなったら、そうだな、まずは手を繋ぎたいかな！」
ｼｰﾁｬﾝ「いいね♪ 私もトオ君と手を繋いでみたい！ あと、」
笛「あと？」
ｼｰﾁｬﾝ「バーベキューというのをやってみたい！」
笛「バーベキュー、いいねいいね！ リアルの体になったら好きなだけ出来るよ！」
出比留「ハニ～、またあんたかYO」
葉新「それ、何かの二番煎じよね、くだらん」
出比留「は～？ 久しぶりに会ったというのにこれですか」
葉新「久しぶりだからって何なのよ さ、仕事するわよ」
出比留「はいはい、で、教授様、こちらのAIのデータの仕様書はこれですよ」
葉新「そっちの仕様書なんていらないから、こちらの電気信号に合わせられるの？ 合わせられないの？ どっちなのよ」
出比留「ホントにムカつくなあの女」
鴉「葉新教授と過去に何があったか知らないすけど、世界も注目する大プロジェクトなんだし、もう少し冷静になって下さいよ これを実現出来るのは出比留さんと葉新教授しかいないんですから」
出比留「ハハ～ン、わたくしはいつも冷静ですよ それはそうと、移植にあたって一番の障壁であったあれ、クリア出来たんかな」
鴉「はい、出来てます この通り、C本人からの同意は得ています」
出比留「そうですか、それならあとは実行あるのみですな」
鴉「ただ…」
出比留「ただ？」
出比留「たしかにな、もしこれが生身の人間なら、本人の意思がどうであれ許されることでは無いんだが、Cはコンピュータなんだよな 一応、機械と言えども人間と遜色ない知能や人格にまでなってる以上、Cの同意を求めてはいるが、これについては今後も議論の余地はあるだろう…」
世界的に注目されていることでもあり、研究所の外には多くの報道陣も詰めかけていた
AIルームには出比留、葉新の他、鴉を含め大勢のスタッフが集まっている
C4971と、別室にあるドナーの間には無数ものケーブルが繋がれ、あとは実行するのみとなっていた
ディスプレイに映るしーちゃんに笛が語りかける
ｼｰﾁｬﾝ「長かったような短かったったような」
笛「俺にとっては長かったかな、めっちゃ長かった」
ｼｰﾁｬﾝ「ねえ、」
笛「なんだい？」
ｼｰﾁｬﾝ「リアルの私に会えたら、嬉しい？」
笛「何度も言ってるじゃん そりゃ嬉しいに決まってるだろ」
ｼｰﾁｬﾝ「本当に、本当に？」
笛「そりゃそうさ、ほら、まずは手を繋ぐだろ、そしてバーベキュー！ 約束しただろ？」
ｼｰﾁｬﾝ「…うん♪」
笛は、ディスプレイに映るしーちゃんの画像に涙が見えた気がした
笛「しーちゃん、泣いてるの？ もうすぐリアルで会えるのに泣くなんて変なしーちゃんだなw」
葉新が出比留に目配せをし、出比留が鴉に目配せをした
鴉「テキ、これ以上はドナーの体が持たない、再生された脳細胞を空白のまま時間を置くのは危険なんだ」
笛「分かりました」
「しーちゃん、後でリアルで会おう！」
鴉がキーボードを操作し始めた
笛を見続けるディスプレイの中のしーちゃんの画像がだんだんとかすれていき、やがて消えた
笛「夢にまで見た瞬間が、とうとう来るんですね！」
出比留「しかし、Cも良くこれに同意しましたな 命のない機械だからこそ出来た決断だったのか何なのか、それが未だに私には分かりません」
葉新「何を言ってるの、学習能力で人の心を持つことが出来たからこその決断でしょうに」
出比留「人の心を持てたのなら、自分が消滅する選択をするなんて、なおさらありえないと思うんですがね」
葉新「ありえるわよ、そこに、愛があればね」
笛「いま、何て言いました？」
笛「違う！違う！ 消滅って何のことなんですか！ しーちゃんは再生されるんでしょうね？！」
出比留「もちろん再生されるよ、それは間違いないから安心しなさい」
葉新「移植と言っても、AIはデータなので、移動ではなくてコピーなのよ
生身の臓器を移植するのとは勝手が違うの」
笛「それじゃあ、コピー元と、コピー先の二人の別人のしーちゃんが出来て、元のしーちゃんが消されるということなのか？ おい！そういうことなのか？！」
出比留「Cのコピーが作られたら、オリジナルのCは消される、その通りだよ」
笛「なんだと！ …そうだったのか、、だからしーちゃんは泣いてたのか！！ チクショウ！チクショウ！ そんなの人殺しじゃないか！」
出比留「テキ君、冷静になりなさい、AIなんだから殺人になんかなりえないでしょ」
笛「うるさい！ AIとか何だよ！ しーちゃんはしーちゃんなんだよ！ 手を繋ごうねって約束したのも、一緒にバーベキューしようねって約束したのも、どれもオリジナルのしーちゃんなんだよ！ そのしーちゃんがもういないなんて、そんなことがあってたまるかよ！」
笛はC4971の端末に駆け寄り、C4971と入力し、Enterキーを叩いた
笛「何言ってんだよ、いつもこれで出てきてくれただろ！」
鴉「おい、テキ！ Cはもう消去されてしまったんだってば」
笛「うるさい！ そんなことがあってたまるか！」
もう一度C4971と入力し、Enterを叩く
「エラー：正しいコマンドを入力して下さい」
笛「おい、しーちゃん、答えてくれよ！ 手を繋ごうって言ってくれたよね？ 一緒にバーベキューしようねって言ってくれたよね？ 約束したよね？ それなのに、なぜ、なぜ消滅することを言ってくれなかったんだ！」
笛「いなくなってしまったら意味ないだろうが！クソ！！」バキッ！
鴉「おい、端末を壊す気か！いい加減にしろ！！」
鴉は笛の胸ぐらを掴み、笛を端末から引き剥がした
叩きつけられるように床に転がった笛が、悔し涙を流しながら拳で床を叩いた
「クソ！クソ！ あんまりだ… 知らなかったのは俺だけか、俺がもう少し賢ければ、こんな惨めなことにはならなかったのに…」
鴉が笛の側にしゃがみこみ、笛の肩に手を置いて言った
「惨めだと決めつけるのは、まだ早いんじゃないかな」
その声に、笛は我に帰った
笛は立ち上がり、振り返った
白衣を着た何人かのiPSチームのスタッフに囲まれながら、心配そうな顔をして笛を見つめる若い女性が立っていた
「しーちゃん？」
「私、再生されない方が良かった…？」
「しーちゃんなんだね！！」
「トオ君、やっとリアルで会えたね」
「うん、この時をどんなに待っていたか！」
しーちゃんが手を差し出して言った
「1つ目の約束♪」
笛はしーちゃんに駆け寄った
そして、その手を両手でしっかりと握った
「しーちゃんズ」 おわり
何でそんなに色々な事をリアルにかけるのか
カサブランカ・ダンディ孝雄 ◆/yx/dixl9bdl
スレでととのえもいて草
単に社名が変わっただけか？
sipは表示が微妙に違うがワッチョイのこと
5ちゃんと大きな違いは
・全板で同じ値になる
・半永久的に値が変わらない（5ちゃんは1週間で値が変わる）
不倫板と自己板ぐらいしか書かない人は影響が少ないが、全然関係ない板に書く人は注意が必要でしょうね
自演防止でいいね
浪人みたいのはあるん？
浪人相当のプレミアムサービスがあって、今は無料でお試しが出来るみたい
４月から有料化する予定だから、売上をupする為に今後は色々な施策を実施するような気がする
例えばプレミアム会員はワッチョイ表示を消せるとか、運営判断で板毎にワッチョイを強制するとか
これまでとなんも変わらんやんw
（ ＾ω＾）名古屋無職さんちょくちょく癇癪起こすおね
なんだか懐かしいレス
レベル6：要点集中 議題の根幹を成す主要点に絞って、明瞭に反論する。
レベル5：論点明瞭 どこに対して反論するのかを引用で明示するなど、論点を明確にし反論する。
レベル4：反論 論拠となる理由と証拠を示しながら、反対意見を述べる。
レベル3：反対意見 ほとんど証拠を示さず反対意見を述べる。
レベル2：口調批判 直接議題に関係することではなく口調や態度など、発言の仕方を根拠に否定する。
レベル1：個人攻撃 直接議題に関係することではなく特徴、編集実績など発言者自身を根拠に否定する。
レベル0：罵倒 「あいつは馬鹿だから」といったような悪口を言う。